JP3499275B2 - 析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents
析出硬化型ステンレス鋼Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、優れた耐食性および
強度を有するとともに、靱性を向上させた析出硬化型ス
テンレス鋼に関するものである。 【0002】 【従来の技術】周知のように、Crを多量に添加したス
テンレス鋼は、他の鉄鋼材料に比べ耐食性が優れてお
り、腐食環境下で、広く使用されている。一般にステン
レス鋼は、マルテンサイト系を除いて、引張強度は40
〜60Kg/mm2 程度であり、比較的強度が低い。ま
た、マルテンサイト系ステンレス鋼は、高い強度を有す
るものの、耐食性の点では、他のステンレス鋼に比べ大
きく劣っている。 【0003】上述の観点から、耐食性の犠牲をできるだ
け小さくして、強度を向上させた材料が望まれ、その要
望に沿った材料として、時効硬化を利用して強度を向上
させた析出硬化型ステンレス鋼が開発されている。その
一例であるマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼
は、優れた強度と耐食性を有しており、引張強度が14
0Kg/mm2以上で、耐食性も18−8ステンレス鋼
と同等のものが開発されている。そして、このステンレ
ス鋼は、上記特性を生かして、特に耐食性が必要で、な
おかつ強度が必要な部材として有効に利用されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記したように、析出
硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼によれば、強度の
点で他の高強度鋼に比べても遜色のない、十分に満足で
きる特性が得られている。しかし、シャルピー衝撃値で
代表される靱性値においては、他の高強度鋼に比べて、
その値はかなり低く靱性の点で劣っている。このため、
使用条件の厳しい構造用鋼への採用や大きな衝撃的外力
を受ける用途への利用は困難であり、使用分野が制限さ
れるという問題点がある。この発明は、上記課題を解決
することを基本的な目的とし、析出硬化型ステンレス鋼
として本来有する耐食性および強度を損なうことなく、
靱性の向上を図った新規な析出硬化型ステンレス鋼を提
供しようとするものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本願発明の析出硬化型ステンレス鋼は、重量%で
C:0.05%以下,Cr:12.5〜13.5% N
i:7.5〜8.6% Mo:2〜2.5%,Al:
0.75〜1.3%,Mg:0.01%以下を含有し残
部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。 【0006】 【作用】本願発明は、ASTM規格A693XM−13
の析出硬化型ステンレス鋼の組成をベースとしてこれに
Mgを添加することにより、靱性の向上を図ったもので
ある。以下に成分範囲限定の理由を述べる。 C:0.05%以下 本願発明鋼において、C含有量が0.05%を越えると
時効処理により、結晶粒界に炭化物を過剰に析出して、
靱性および耐食性を劣化させるのでC含有量の上限を
0.05%に限定した。 【0007】Cr:12.5〜13.5% Crは本願発明鋼における基本構成成分であって、十分
な耐食性を得るためには、12.5%以上含有させる必
要がある。また、δ−フェライトの晶出を抑制して脆化
を防止するためにはCr含有量を13.5%以下に抑え
る必要がある。 Ni:7.5〜8.6% Niは耐食性を維持し、さらに靱性を向上させるため
に、7.5%以上含有させなければならない。また、マ
ルテンサイト変態点の低下と残留オーステナイトの生成
を抑えるためにNi含有量の上限を8.6%とした。 Mo:2〜2.5% 所望の強度を確保するためにはMoを2%以上含有させ
る必要がある。一方、靱性の低下を防止するためにその
含有量の上限を2.5%に限定した。 【0008】Al:0.75〜1.3% Alはオーステナイト結晶粒を細粒化する作用があると
ともに、時効処理により、Alの析出物を生成して強度
上昇に寄与する。Al含有量が0.75%未満ではこれ
らの両作用を十分に発揮できない。また、1.3%を越
えて含有させるとδ−フェライトを晶出して靱性を低下
させるので上記範囲に限定した。 Mg:0.01%以下 Mgは微量に含有させることにより、靱性を向上させる
作用があるが、0.01%をこえて含有させると偏析し
て、むしろ靱性を低下させるのでMg含有量を0.01
%とした。 【0009】 【実施例】以下に、本発明の実施例を比較例と対比しつ
つ説明する。表1に示すように、Mgを添加した本発明
鋼(試材No.1〜5)とMg無添加の比較鋼(試材N
o.6,7)とを真空溶解炉でそれぞれ溶解し、50K
gの鋼塊を溶製した。得られた鋼塊を鍛伸後、焼入、深
冷処理、時効処理の熱処理を施して供試材とした。この
供試材にて、引張試験及びシャルピー衝撃試験を行な
い、表2の結果を得た。表2から明らかなように、Mg
を添加した本願発明鋼はMg無添加の比較鋼と強度レベ
ルはほぼ同等であるが、切欠き靱性(シャルピー吸収エ
ネルギー)は比較鋼よりも優れている。 【0010】 【表1】【0011】 【表2】 【0012】 【発明の効果】以上説明したように、本願発明の析出硬
化型ステンレス鋼によれば、析出硬化型ステンレス鋼と
して従来得られていた強度を損なうことなく、靱性を向
上させることができる。
強度を有するとともに、靱性を向上させた析出硬化型ス
テンレス鋼に関するものである。 【0002】 【従来の技術】周知のように、Crを多量に添加したス
テンレス鋼は、他の鉄鋼材料に比べ耐食性が優れてお
り、腐食環境下で、広く使用されている。一般にステン
レス鋼は、マルテンサイト系を除いて、引張強度は40
〜60Kg/mm2 程度であり、比較的強度が低い。ま
た、マルテンサイト系ステンレス鋼は、高い強度を有す
るものの、耐食性の点では、他のステンレス鋼に比べ大
きく劣っている。 【0003】上述の観点から、耐食性の犠牲をできるだ
け小さくして、強度を向上させた材料が望まれ、その要
望に沿った材料として、時効硬化を利用して強度を向上
させた析出硬化型ステンレス鋼が開発されている。その
一例であるマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼
は、優れた強度と耐食性を有しており、引張強度が14
0Kg/mm2以上で、耐食性も18−8ステンレス鋼
と同等のものが開発されている。そして、このステンレ
ス鋼は、上記特性を生かして、特に耐食性が必要で、な
おかつ強度が必要な部材として有効に利用されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記したように、析出
硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼によれば、強度の
点で他の高強度鋼に比べても遜色のない、十分に満足で
きる特性が得られている。しかし、シャルピー衝撃値で
代表される靱性値においては、他の高強度鋼に比べて、
その値はかなり低く靱性の点で劣っている。このため、
使用条件の厳しい構造用鋼への採用や大きな衝撃的外力
を受ける用途への利用は困難であり、使用分野が制限さ
れるという問題点がある。この発明は、上記課題を解決
することを基本的な目的とし、析出硬化型ステンレス鋼
として本来有する耐食性および強度を損なうことなく、
靱性の向上を図った新規な析出硬化型ステンレス鋼を提
供しようとするものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本願発明の析出硬化型ステンレス鋼は、重量%で
C:0.05%以下,Cr:12.5〜13.5% N
i:7.5〜8.6% Mo:2〜2.5%,Al:
0.75〜1.3%,Mg:0.01%以下を含有し残
部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。 【0006】 【作用】本願発明は、ASTM規格A693XM−13
の析出硬化型ステンレス鋼の組成をベースとしてこれに
Mgを添加することにより、靱性の向上を図ったもので
ある。以下に成分範囲限定の理由を述べる。 C:0.05%以下 本願発明鋼において、C含有量が0.05%を越えると
時効処理により、結晶粒界に炭化物を過剰に析出して、
靱性および耐食性を劣化させるのでC含有量の上限を
0.05%に限定した。 【0007】Cr:12.5〜13.5% Crは本願発明鋼における基本構成成分であって、十分
な耐食性を得るためには、12.5%以上含有させる必
要がある。また、δ−フェライトの晶出を抑制して脆化
を防止するためにはCr含有量を13.5%以下に抑え
る必要がある。 Ni:7.5〜8.6% Niは耐食性を維持し、さらに靱性を向上させるため
に、7.5%以上含有させなければならない。また、マ
ルテンサイト変態点の低下と残留オーステナイトの生成
を抑えるためにNi含有量の上限を8.6%とした。 Mo:2〜2.5% 所望の強度を確保するためにはMoを2%以上含有させ
る必要がある。一方、靱性の低下を防止するためにその
含有量の上限を2.5%に限定した。 【0008】Al:0.75〜1.3% Alはオーステナイト結晶粒を細粒化する作用があると
ともに、時効処理により、Alの析出物を生成して強度
上昇に寄与する。Al含有量が0.75%未満ではこれ
らの両作用を十分に発揮できない。また、1.3%を越
えて含有させるとδ−フェライトを晶出して靱性を低下
させるので上記範囲に限定した。 Mg:0.01%以下 Mgは微量に含有させることにより、靱性を向上させる
作用があるが、0.01%をこえて含有させると偏析し
て、むしろ靱性を低下させるのでMg含有量を0.01
%とした。 【0009】 【実施例】以下に、本発明の実施例を比較例と対比しつ
つ説明する。表1に示すように、Mgを添加した本発明
鋼(試材No.1〜5)とMg無添加の比較鋼(試材N
o.6,7)とを真空溶解炉でそれぞれ溶解し、50K
gの鋼塊を溶製した。得られた鋼塊を鍛伸後、焼入、深
冷処理、時効処理の熱処理を施して供試材とした。この
供試材にて、引張試験及びシャルピー衝撃試験を行な
い、表2の結果を得た。表2から明らかなように、Mg
を添加した本願発明鋼はMg無添加の比較鋼と強度レベ
ルはほぼ同等であるが、切欠き靱性(シャルピー吸収エ
ネルギー)は比較鋼よりも優れている。 【0010】 【表1】【0011】 【表2】 【0012】 【発明の効果】以上説明したように、本願発明の析出硬
化型ステンレス鋼によれば、析出硬化型ステンレス鋼と
して従来得られていた強度を損なうことなく、靱性を向
上させることができる。
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フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平5−125490(JP,A)
特開 昭60−155653(JP,A)
特開 平4−268040(JP,A)
特公 昭42−11896(JP,B1)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量%でC:0.05%以下,Cr:1
2.5〜13.5%,Ni:7.5〜8.6%,Mo:
2〜2.5%,Al:0.75〜1.3%,Mg:0.
01%以下を含有し残部がFeおよび不可避的不純物か
らなる析出硬化型ステンレス鋼
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33901393A JP3499275B2 (ja) | 1993-12-03 | 1993-12-03 | 析出硬化型ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33901393A JP3499275B2 (ja) | 1993-12-03 | 1993-12-03 | 析出硬化型ステンレス鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07157849A JPH07157849A (ja) | 1995-06-20 |
JP3499275B2 true JP3499275B2 (ja) | 2004-02-23 |
Family
ID=18323450
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33901393A Expired - Fee Related JP3499275B2 (ja) | 1993-12-03 | 1993-12-03 | 析出硬化型ステンレス鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3499275B2 (ja) |
-
1993
- 1993-12-03 JP JP33901393A patent/JP3499275B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH07157849A (ja) | 1995-06-20 |
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