[go: up one dir, main page]

JP3314551B2 - 制動力制御装置 - Google Patents

制動力制御装置

Info

Publication number
JP3314551B2
JP3314551B2 JP24538494A JP24538494A JP3314551B2 JP 3314551 B2 JP3314551 B2 JP 3314551B2 JP 24538494 A JP24538494 A JP 24538494A JP 24538494 A JP24538494 A JP 24538494A JP 3314551 B2 JP3314551 B2 JP 3314551B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pressure
braking force
braking
fluid pressure
rear wheel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP24538494A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08108836A (ja
Inventor
敏夫 萩野
昭彦 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP24538494A priority Critical patent/JP3314551B2/ja
Publication of JPH08108836A publication Critical patent/JPH08108836A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3314551B2 publication Critical patent/JP3314551B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Hydraulic Control Valves For Brake Systems (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に後輪の制動力を制
御可能な制動力制御装置に関し、特に後輪を駆動する後
輪駆動車両で良好な制動力配分を得るのに好適なもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来,既知のように車両の各車輪の制動
力は、路面摩擦係数状態(以下,単に路面μとも記す)
と当該車輪の荷重量(以下,単に輪荷重とも記す)との
積に依存するため、制動時に荷重が車両前方に移動する
ことによって後輪の輪荷重が小さくなると,当該後輪が
早期にロックする又はロック傾向となって走行安定性が
損なわれる虞れがある。そこで、荷重移動量は車両減速
度に比例し且つ車両減速度が前輪への制動力に依存する
と考えて,上記を抑制防止するために前輪への制動力が
増加するにつれて後輪への制動力は、その増加傾きを次
第に小さくしながら増加するようにした,所謂理想制動
力配分という概念がある。この理想制動力配分について
簡潔に説明すると、当該制動力配分を満足するように各
車輪への制動力を調整すれば,全車輪が同時にロックす
る或いはロック傾向となって制動距離を確保可能であ
り、またこれ以下の制動力では,後輪による走行安定性
や前輪による舵取り効果も確保することができるという
考えである。なお、この理想制動力配分には,前述のよ
うに当該路面μがパラメータとして介在しており、更に
積載可能重量が大きな車両にあっては,空車か積車かと
いう積載重量のパラメータも存在している。
【0003】そして、このような理想制動力配分の概念
の下に,各車輪の制動力が当該理想制動力配分を端的に
満足するために、当該車輪に備えられた制動用シリンダ
への作動流体圧を伝達する制動力伝達系,具体的にはマ
スタシリンダと後輪ホイールシリンダとの間に,所謂プ
ロポーショナルバルブとかリミッタバルブと称される圧
力調整弁を介装した制動力制御装置がある。この圧力調
整弁は、マスタシリンダからのブレーキ液圧(以下,単
にマスタシリンダ圧とも記す)が或る所定液圧に到達す
るまでは,当該マスタシリンダ圧と同等又はほぼ同等の
液圧をホイールシリンダ側へのブレーキ液圧(以下,単
にホイールシリンダ圧とも記す)として供給するが、マ
スタシリンダ圧が前記或る所定液圧以上になると,液圧
を小さくする,即ちマスタシリンダ圧にフィルタリング
を施し(リミッタバルブにあってはリミッタをかけ
る)、その小さく調整された液圧がホイールシリンダ圧
として供給されるようにしたものである。つまり、この
或る所定液圧を境に,後輪のホイールシリンダ圧は、マ
スタシリンダ圧に対して,その増加傾きが小さくなる。
ここでは、前記ブレーキ液圧の増圧傾きが変化する前記
或る所定液圧を,ブレーキ液圧のバルブ折れ点と称する
こととし、前後輪への制動力配分を前記理想制動力配分
に近づけることに着目すると、まず,このバルブ折れ点
でのブレーキ液圧による制動力を,前記理想制動力配分
の後輪制動力以下又はその近傍とする。そして、前記バ
ルブ折れ点以上でのブレーキ液圧による後輪の制動力
が,前記理想制動力配分の後輪制動力以下又はその近傍
になるように、当該バルブ折れ点以上の後輪ブレーキ液
圧の増圧傾きを設定することで、前後輪への制動力を当
該理想制動力配分に近づけることができる。なお、積載
可能重量が大きな車両にあっては、後輪の輪荷重が大き
くなるに従って,前記バルブ折れ点のブレーキ液圧を高
く変更設定可能な、ロードセンシングプロポーショナル
バルブと称する圧力調整弁を備えた制動力制御装置も開
発されており、この制動力制御装置によれば、積載重量
の増加に伴って前後輪共に高くなる理想制動力配分と各
車輪の制動力配分とを近づけるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、自動変速機
を搭載した車両,所謂A/T車では一般に既知のよう
に、アクセルペダルを踏込んでいなくても、機関,即ち
エンジンの回転数や回転速度等の回転状態が小さく、且
つ車速が或る速度以下であって,当該自動変速機が比較
的小さい変速比(実質的には,所謂1速とか2速といっ
たように,減速比に相当するギヤ比が大きい状態を示す
が、ここでは慣例に従って変速比が小さいと表すものと
する)を選定しているときには、駆動輪に対して比較的
小さな駆動力が付与されている。ここでは、アクセルペ
ダルを踏込んでいなくても,この種のA/T車がゆっく
り進む,所謂クリープ現象にあやかって、この駆動輪に
係る駆動力をクリープトルクと称することとする。
【0005】また、このようなA/T車の自動変速機
は、車速とエンジンの回転状態とを変数とし且つアクセ
ルペダルの踏込み量(具体的にはスロットルバルブの開
度等)をパラメータとして変速比の選定をしている。具
体的に前記変速比の選定がギヤ比の選定であると考える
と、アクセルペダルを踏込んで或いはアクセルペダルを
踏込むことなく車速が増速しているときには,当該アク
セルペダルの踏込み量に応じ且つ車速の増速に伴って変
速比が大きくなるようにギヤ比を選定し(以下,アップ
シフトとも記す)、制動中のようにアクセルペダルの踏
込みがない状態で車速が減速しているときには,エンジ
ンブレーキによる制動効果を得るためにエンジンの回転
状態がより低い状態で変速比が小さくなるようにギヤ比
を選定する(以下,ダウンシフトとも記す)。
【0006】さて、前記従来の制動力制御装置を搭載し
た後輪駆動のA/T車において、氷雪路面等の比較的路
面μの小さい(低い)低μ路面で,比較的低速時に,ブ
レーキペダルを大きく踏込んで比較的大きな制動力を付
与した場合について考察してみる。このような低μ路面
でブレーキペダルを大きく踏込むと、マスタシリンダ圧
の増加に伴って単純増加する前輪のホイールシリンダ圧
により、当該前輪は比較的早期にロックする或いはロッ
ク傾向となる。一方、このような低速時には,自動変速
機が1速とか2速といった比較的小さい変速比を選定し
ている。これは前述のように、エンジンブレーキによる
効率的な制動効果を合わせて発現するための対応である
のだが、このような制動中に前記自動変速機が小さな変
速比を選定して,エンジンブレーキによる制動効果を得
るためには、エンジンの回転状態も小さい状態であるこ
とが想定される。従って、この状態では,駆動輪である
後輪に前記クリープトルクが付与されていると考えら
れ、後輪の制動力は,当該クリープトルク分だけ小さく
なっていると考えられる。
【0007】しかしながら、前記従来の制動力制御装置
のリミッタバルブやプロポーショナルバルブ等の圧力調
整弁では,前記バルブ折れ点に相当するブレーキ液圧が
所定液圧のまま一定であるし、またロードセンシングプ
ロポーショナルバルブ等の圧力調整弁でも,前記輪荷重
以外の変数に対しては前記バルブ折れ点に相当するブレ
ーキ液圧は変化しない。従って、前述のように駆動輪で
ある後輪にクリープトルクが付与されていて,後輪の制
動力が小さくなっている状態で、マスタシリンダ圧がバ
ルブ折れ点に相当するブレーキ液圧を越えて,後輪のホ
イールシリンダ圧の増圧傾きが小さくなると、ブレーキ
ペダルを少し踏み増ししても,前輪のホイールシリンダ
圧が増圧するばかりで,後輪のホイールシリンダ圧は増
圧しない又は少ししか増圧しないことになる。従って、
前輪は大きな制動力を発現して早期にロックする或いは
ロック傾向となるので、ブレーキペダルの踏力を,前輪
がロックしない程度に調節すると,後輪は制動力が小さ
く或いは前記クリープトルクによって駆動力が優った状
態となり、結果的に制動距離が長じてしまう虞れがあ
る。従って、この傾向は、後輪のグリップ力が大きい状
態,具体的には氷雪路面で、後輪にのみスタッドレスタ
イヤ等のグリップ力の大きいタイヤを装着していると
か,後輪にのみチェーンを装着しているといった状況で
顕著となる。
【0008】このような問題を解決するためには、例え
ば後輪のホイールシリンダ圧に対する制動力の効率,つ
まり後輪ブレーキの効きを高めて、後輪ホイールシリン
ダ圧の小さな増圧量に対しても相対的に大きな後輪制動
力が得られるようにすることが考えられ、そのようにす
ればバルブ折れ点以上に相当するブレーキ液圧がマスタ
シリンダ圧に発生した場合でも,後輪の制動力は速やか
に大きくなることになるから、そのような状況でブレー
キペダルを踏み増しすれば前記クリープトルクより大き
な後輪の制動力を得ることも可能となろう。しかし、こ
のようにすると,前述のようなクリープトルクが発生す
る以前の制動状態で、後輪が早期にロックする或いはロ
ック傾向となるため、これを回避するためにバルブ折れ
点に相当するブレーキ液圧を小さな値に設定しなければ
ならず、また前記理想制動力配分を満足するためには,
バルブ折れ点に相当するブレーキ液圧以上のブレーキ液
圧がマスタシリンダ圧に発生したときの後輪ホイールシ
リンダ圧の増圧率を小さくしなければならないから、そ
のようにしたのでは当該バルブ折れ点に相当するブレー
キ液圧より小さなマスタシリンダ圧の場合には,ブレー
キペダルを踏み増しすれば後輪の制動力が大きく増加す
るが、バルブ折れ点に相当するブレーキ液圧を越えるマ
スタシリンダ圧が発生している場合には,ブレーキペダ
ルを踏み増ししても後輪のホイールシリンダ圧の増圧量
は小さいから後輪の制動力をさほど増加させることがで
きず、従って前記諸問題の根本的な解決にはならない。
【0009】また、このような問題を解決するためには
前記クリープトルクを小さくするために,減速に伴うダ
ウンシフト時に同等の車速又は同等のエンジン回転状態
における選定変速比をより大きく(減速比をより小さ
く)することが考えられるが、そのようにしたのでは,
特に高μ路面でのエンジンブレーキによる制動効果が犠
牲となるなど、種々のトレードオフが発生するため,車
両性能として好ましくない。
【0010】本発明はこれらの諸問題を解決すべく開発
されたものであり、自動変速機を搭載した後輪駆動車両
にあっても,後輪に必要且つ十分な制動力を発現させて
制動距離を短縮可能な制動力制御装置を提供することを
目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明のうち請
求項1に係る制動力制御装置は、図1の基本構成図に示
すように、少なくともアクセルペダルの操作量に応じた
回転駆動力を出力する機関と、少なくとも車速に応じた
変速比を設定して当該変速比で前記機関の回転駆動力を
変換する自動変速機と、前記自動変速機で変換された前
記機関の回転駆動力を後輪に伝達する後輪駆動力伝達装
置とを備えた車両にあって、少なくともブレーキペダル
の操作量に応じた制動用作動流体圧を発生する流体圧発
生装置と、前記流体圧発生装置で発生した制動用作動流
体圧が所定の流体圧値以上となったときに,後輪の制動
力が理想制動力配分より小さくなるように,当該制動用
作動流体圧を小さく調整して当該後輪の制動用シリンダ
に供給する後輪制動圧調整装置とを備えた制動力制御装
置において、前記後輪制動圧調整装置は、前記所定の流
体圧値を制御信号に応じて調整可能な所定流体圧値調整
手段を備え、車両が所定の車速以下で低速走行している
ことを検出する低速走行検出手段と、前記自動変速機で
設定された変速比が小さい変速比であることを検出する
小変速比検出手段と、前記低速走行検出手段で検出され
た低速走行検出値及び前記小変速比検出手段で検出され
た小変速比検出値に応じて,前記所定流体圧値調整手段
で調整される所定の流体圧値を所定量だけ大きく設定す
る制御信号を出力する所定流体圧値制御手段とを備えた
ことを特徴とするものである。
【0012】また、本発明のうち請求項2に係る制動力
制御装置は、前記所定流体圧値制御手段で,所定の流体
圧値を大きく設定する所定量は、クリープトルクに応じ
て設定されることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】而して、本発明のうち請求項1に係る制動力制
御装置では、図1の基本構成図に示すように、自動変速
機を搭載した後輪駆動車両にあって,例えばマスタシリ
ンダ等からなる流体圧発生装置とホイールシリンダ等か
らなる後輪制動用シリンダとの間の例えばプロポーショ
ナルバルブ等からなる後輪制動圧調整装置に、前記流体
圧発生装置で発生した制動用作動流体圧を小さく調整す
るための,例えば前記バルブ折れ点等に相当する所定の
流体圧値を変更調整可能なアクチュエータとしての所定
流体圧値調整手段を備える。そして、例えば車速検出手
段等で検出された車速検出値が所定の車速以下であるこ
となどから,前記低速走行検出手段が所定の車速以下で
低速走行していることを検出し、例えば自動変速制御手
段等が制御している自動変速機の変速比が所定の変速比
よりも小さいことなどから,前記小変速比検出手段が小
さい変速比が設定されていることを検出し、これらの検
出値に基づいて例えば前記クリープトルクに相当する駆
動力が,駆動輪である後輪に付与されていると考えられ
るときに、前記所定流体圧値制御手段が,前記所定流体
圧値調整手段に向けて,例えば前記バルブ折れ点等に相
当する前記所定の流体圧値を所定量だけ大きく設定する
制御信号を出力する構成としたため、この所定の流体圧
値を大きく設定する所定量を,例えば本発明のうち請求
項2に係る制動力制御装置に記載されるように前記クリ
ープトルクを相殺する程度の制動力を発現する大きさの
制動用作動流体圧に設定すれば、前記制御信号が出力さ
れているときの後輪制動圧調整装置のバルブ折れ点等の
所定の流体圧値は,当該クリープトルクを相殺するに足
る制動用作動流体圧分だけ高くなり、この所定の流体圧
値に相当する制動用作動流体圧まで,例えば前記マスタ
シリンダ圧と同等に後輪の制動用シリンダへの制動用作
動流体圧,例えば前記後輪ホイールシリンダ圧が増圧す
ることになるから、ブレーキペダルを踏込む又はブレー
キペダルを踏み増しすることによって,前輪の不要なロ
ック傾向を回避しながら後輪の制動力を前記クリープト
ルクを上回る以上に発現することができ、従って特に低
μ路面における走行安定性を確保すると共に制動距離を
短縮することができる。勿論、前述のような自動変速機
によるダウンシフトに係る車速やエンジン回転状態は変
化しないから、路面μを問わず,エンジンブレーキによ
る制動効果が損なわれることはない。
【0014】
【実施例】以下、本発明の制動力制御装置の実施例を図
面を用いて詳細に説明する。図2〜図7は本発明の制動
力制御装置を,その前提である後輪駆動車両に展開した
一実施例を示すものである。本実施例に適用された車両
は後輪駆動の前置きエンジン,所謂FR車両をベースと
している。図中、10FL,10FRは非駆動輪となる
前左輪,前右輪、10RL,10RRは駆動輪となる後
左輪,後右輪を示す。その基本的な構造を概略説明する
と、機関(エンジン)20は車両の前方で縦置き,つま
り出力軸が車両の前後方向に一致又はほぼ一致するよう
に配設されており、このエンジン20の後方には自動変
速機14,所謂オートマティックトランスミッション
が,図示されないトルクコンバータ等のカップリングを
介して,当該エンジン20に直列に配設されている。こ
の自動変速機14は、後述するように車速とエンジン回
転速度とを変数とし、後述するアクセルペダルの踏込み
量,即ちアクセル開度,更に具体的にはスロットルバル
ブの開度(以下,スロットル開度とも記す)をパラメー
タとして,現在車速を満足し且つ当該アクセル開度又は
スロットル開度による運転者の加速又は減速意思を反映
したエンジン回転速度が達成されるように変速比,具体
的にはギヤ比を選択設定する。この自動変速機14によ
り自動的に選択設定されたギヤ比で適宜減速されたエン
ジン20の回転駆動力は、車両前後方向又はほぼ前後方
向に向けて配設されたプロペラシャフト22、後輪差動
装置24,所謂リヤディファレンシャルを介して後左右
のドライブシャフト12に伝達され、これらのドライブ
シャフト12に連結された各後左右輪10RL,10R
Rを回転駆動する。なお、前述のように自動変速機14
で選択設定されるギヤ比は,主としてエンジン20の出
力軸回転速度を減速する(所謂オーバドライブギヤ比を
除く)減速比であり、一般に“1”速とか“2”速とか
で表される減速比は,“3”速とか“4”速として表さ
れる減速比に比して,数値的に大きなものであるが、こ
こでは慣例に従って“1”速側の変速比を小さいと表
し、“3”速とか“4”速側の変速比を大きいと表すも
のとする。
【0015】一方、各前左右輪10FL,10FRには
図示されない転舵装置が連結されている。前記エンジン
20には、当該エンジン20の回転数又は回転速度を制
御することによって出力を制御可能とするためのエンジ
ン回転制御装置が設けられている。このエンジン回転制
御装置は、アクセルペダルの踏込み量に応じたスロット
ルバルブの開度(スロットル開度)とは個別に、アイド
ルバルブ開度を調整制御する機能,空燃比を制御する機
能,点火プラグによる点火時期を調整制御する機能,或
いは過給器を搭載する車両にあってはその過給圧を制御
する機能等を備えており、所望とする車速,加速度等に
必要な駆動力をエンジン20に発揮させることができ
る。その具体的且つ代表的な構成について簡潔に説明す
ると、前記エンジン20の吸気管路(具体的にはインテ
ークマニホールド)36には、主としてアクセルペダル
46の踏込み量に応じて常時閉から開き方向への開度が
調整制御されるスロットルバルブ44が備えられている
が、このスロットルバルブ46の開度をスロットルセン
サ42で検出し、そのスロットル開度検出値からエンジ
ン回転コントロールユニット21が、運転者の加減速意
思を推定或いは車速の推移を算出して,前述のように図
示されないアイドルバルブ開度,空燃比,点火プラグに
よる点火時期等を調整制御することにより、所望するエ
ンジン20の回転駆動出力が達成されるようにする。
【0016】なお、前記アクセルペダル46には、当該
アクセルペダル46の踏込み量を検出するアクセルセン
サ47が備えられており、当該アクセルペダルの踏込み
量に応じたアクセル開度検出値(以下,単にアクセル開
度とも記す)SACC が,後述する制動力コントロールユ
ニット30に向けて出力される。ちなみに、本実施例に
おいて前記アクセルセンサ47から出力されるアクセル
開度SACC は、後述するA/D変換器83でディジタル
変換されたときに,ディジタル値で0/8〜8/8と表
れ、ディジタル値0/8のアクセル開度SACC で全閉状
態を,ディジタル値8/8のアクセル開度SACC で全開
状態を表す。
【0017】前記自動変速機14は、所謂既存のものと
同等又はほぼ同等の構成となっており、当該自動変速機
14には、設定されるギヤ比を選択設定する,所謂シフ
ティング及びそのタイミングを制御するための自動変速
制御装置が設けられている。この自動変速制御装置は、
大まかに自動変速コントロールユニット34と油圧アク
チュエータユニット32とから構成されており、自動変
速コントロールユニット34からの制御信号又は駆動信
号によってアクチュエータユニット32を駆動し、これ
により自動変速機14内のギヤ比,即ち変速比は、原理
的に車速センサ28で検出された車速検出値(以下,単
に車速とも記す)及び前記スロットルセンサ42で検出
されたスロットル開度を変数とし且つ機関回転速度(エ
ンジン回転速度)に応じた最適な車両減速比が達成され
るように制御される。前記自動変速コントロールユニッ
ト34は、本実施例では,前記スロットル開度を含めて
前記エンジン回転コントロールユニット21と相互に情
報の授受を行って、前記エンジン20及び自動変速機1
4の通常走行時における最適化制御を実施しており、前
記所望とする車速,加速度等に必要な駆動力をエンジン
20に発揮させるための当該エンジン回転コントロール
ユニット21の制御内容を受取り、これを効率よく達成
するために必要として当該自動変速コントロールユニッ
ト34内で算出設定され,制御されるバルブコントロー
ルのための作動流体の各ライン圧,シフトアップ,シフ
トダウンに代表されるシフティングの状態,シフトロッ
ク,各シフトを有効に作動させるクラッチ,及びこれら
のタイミング等の情報を,前記エンジン回転コントロー
ルユニット21に伝送する。なお、この自動変速機14
では,所謂1速から4速までの変速比を選択設定可能で
あり、前記自動変速コントロールユニット34は,現在
選択設定されている変速比1〜4速に相当するギヤ比i
を、後述する前記制動力コントロールユニット30に伝
達出力する。また、前記車速センサ28で検出された車
速VC も後述する前記制動力コントロールユニット30
に伝達出力される。
【0018】一方、前記各前後左右輪10FL〜10R
Rには,夫々制動装置としてのホイールシリンダ52F
L〜52RR及びロータ53FL〜53RRが設けられ
ている。そして、このうち,特に後左右輪の制動装置に
よる当該後左右輪10RL,10RRの制動力は,後左
右輪ホイールシリンダ52RL,52RRへの作動流体
の流体圧(制動圧)を制御する制動力制御装置によって
制御される。この制動力制御装置は、主としてブレーキ
ペダル50の踏込み量に応じた作動流体圧(マスタシリ
ンダ圧)PM を発生するマスタシリンダ51と,後左右
輪ホイールシリンダ52RL,52RRとの間の液路に
介装されたバルブ折れ点調整プロポーショナルバルブ4
9と、制動力コントロールユニット30とから構成され
る。このうち、バルブ折れ点調整プロポーショナルバル
ブ49は、所定のマスタシリンダ圧(単に液圧とも記
す)をバルブ折れ点として,それ以上のマスタシリンダ
圧に対してはフィルタリングを施して増圧傾きを小さく
調整し、これを後左右輪ホイールシリンダ52RL,5
2RRの作動流体圧(ホイールシリンダ圧)PRL,P RR
として供給するが、制動力コントロールユニット30か
らの駆動信号CACT がアクチュエータであるソレノイド
58に供給されると,前記バルブ折れ点に相当する液圧
を所定量だけ大きく変更設定するものである。
【0019】このバルブ折れ点調整プロポーショナルバ
ルブ49は、従来のロードセンシングプロポーショナル
バルブの輪荷重検出部にアクチュエータを備えたもので
あると考えればよい。このバルブ折れ点調整プロポーシ
ョナルバルブ49は、具体的には図3のような構成とな
っているが、このうち約図左半部が従来のプロポーショ
ナルバルブに相当し、約図右半部がバルブ折れ点を調整
するアクチュエータに相当する。まず、従来のプロポー
ショナルバルブに相当する構成について簡潔に説明す
る。バルブボディ101に形成されているシリンダ室1
02は,ピストン57によって図3の下方に相当するマ
スタシリンダ側液室103と図3の上方に相当するホイ
ールシリンダ側液室104とに区分され、このうちマス
タシリンダ側液室103に連通するバルブボディ101
の連通孔54がマスタシリンダ51の一方の系統に接続
され、ホイールシリンダ側液室104に連通するバルブ
ボディ101の連通孔55RL,55RRが,夫々後左
右輪ホイールシリンダ52RL,52RRに接続されて
いる。従って、マスタシリンダ側液室103内の作動流
体圧が前記マスタシリンダ圧PM となり、ホイールシリ
ンダ側液室104内の作動流体圧が前記各後左右輪ホイ
ールシリンダ圧PRL,PRRとなる。なお、マスタシリン
ダ51の他方の系統は前左右輪ホイールシリンダ52F
L,52FRに直接的に接続されている。
【0020】そして、ピストン57の中央部において,
前記マスタシリンダ側液室103からホイールシリンダ
側液室104まで貫通する貫通孔105内には、その中
間部にボール収納室105aが形成され、このボール収
納室105aには、リターンスプリング106によって
常時ホイールシリンダ側液室104側に付勢されるボー
ルバルブ56が内装されており、このボールバルブ56
が,前記貫通孔105に形成されている座面108に当
接していない通常時は、当該ボールバルブ56は,バル
ブボディ101から前記貫通孔105内に突設されたガ
イド杆107に突き当たって停止している。なお、前記
ボールバルブ56を付勢するリターンスプリング106
の付勢力(物理学的な評価としてはバネ定数となろう)
は,比較的小さいものとする。
【0021】一方、前記シリンダ室102の下部,即ち
前記マスタシリンダ側液室103には、バルブボディ1
01を貫通してその外方まで突出するバルブ折れ点調整
用ピストン63が,当該マスタシリンダ側液室103の
内外に向けて摺動可能に設けられている。従って、今,
このバルブ折れ点調整用ピストン63がマスタシリンダ
側液室103の作動流体圧,即ちマスタシリンダ圧PM
によって摺動自在であるとすると、当該バルブ折れ点調
整用ピストン63の受圧面63a面積と前記貫通孔10
5の断面積との差分だけ、前記ピストン57のマスタシ
リンダ側液室103に形成されたマスタシリンダ圧PM
の受圧面109は,ホイールシリンダ側液室104に形
成されたホイールシリンダ圧PRL,PRRの受圧面110
より広いことになり、ここでは前記バルブ折れ点調整用
ピストン63の受圧面63a面積と前記貫通孔105の
断面積との差を,当該ピストン57のマスタシリンダ圧
M の受圧面109とホイールシリンダ圧PRL,PRR
受圧面110との受圧面積差と定義する。
【0022】次に、このバルブ折れ点調整用プロポーシ
ョナルバルブ49のアクチュエータ部について説明する
と、前記バルブボディ101のシリンダ室102の側
方,図3においては右側方には、プランジャ58aとコ
イル58bとからなるソレノイド58が組込まれてお
り、そのプランジャ58aから突設されたロッド111
は,バルブボディ101を貫通して図3の上方まで突出
している。そして、前記ソレノイド58のプランジャ5
8a及びロッド111は,図3の上下方向に移動可能に
配設されているが、同時にそれらは,リターンスプリン
グ59によって常時図3の上方に付勢されているから、
前記ソレノイド58のコイル58bに通電がなく,当該
コイル58bが励磁されていない状態では、前記プラン
ジャ58aの上端面112が,プランジャ内装孔113
の下端面114に当接して、当該プランジャ58a及び
ロッド111は停止している。一方、コイル58bが通
電によって励磁されると、その励磁力によってプランジ
ャ58aは,リターンスプリング59の付勢力に抗して
図3の下方に引下げられて、所定量だけ移動する。な
お、前記プランジャ58aを付勢するリターンスプリン
グ59の付勢力(バネ定数)は,比較的小さいものであ
るとする。
【0023】更に、前記ロッド111の上端部は,当該
ロッド111より図3の右方に設けられた回転軸114
を回転中心として回転可能な駆動アーム60の左端部6
0Lに連結され、一方,この駆動アーム60の右端部6
0Rは,引張バネ61の上端部61Uに連結されてい
る。なお、前記引張バネ61の付勢力(バネ定数)は比
較的大きなものであるとする。また、前記駆動アーム6
0のうち,前記引張バネ61との連結点から回転軸11
4までの距離Lo を,前記ロッド111との連結点から
回転軸114までの距離Li で除した値を、駆動アーム
比(Lo /Li )と定義する。
【0024】また、この引張バネ61の下端部61L
は,前記バルブ折れ点調整用ピストン63より図3の左
方に設けられた回転軸115を回転中心として回転可能
な作用アーム62の右端部62Rに連結されており、当
該作用アーム62の左方端部中央寄りから上方に向けて
突設された押圧部62Pが前記バルブ折れ点調整用ピス
トン62の下端部に当接している。なお、前記作用アー
ム62のうち,前記引張バネ61との連結点から回転軸
115までの距離Ln を,前記バルブ折れ点調整用ピス
トン63との当接点から回転軸115までの距離Lf
除した値を、作用アーム比(Ln /Lf )と定義する。
【0025】従って、前記ソレノイド58のコイル58
bが通電励磁されていない状態では、前記引張バネ61
のイニシャルロードとしてのプリテンション(初期引張
力)をf0 とすると、前記バルブ折れ点調整用ピストン
63は、当該引張バネ61の初期引張力f0 に前記作用
アーム比(Ln /Lf )を乗じた下記1式で表される初
期押圧力F0 で,常時図3の上方に押し上げられてお
り、実質的に,前記ブレーキペダル50の踏込みがなく
とも、前記マスタシリンダ側液室113の液圧は,当該
初期押圧力F0 を当該バルブ折れ点調整用ピストン63
の受圧面63a面積で除した液圧初期値P0 だけ高くな
っている。
【0026】 F0 =(Ln /Lf )・f0 ……… (1) また、前記ソレノイド58のコイル58bが通電励磁さ
れると、そのプランジャ58a及びロッド111は,リ
ターンスプリング59の付勢力に抗して図3の下方に移
動されるから、駆動アーム60は図3の反時計回りに回
転して引張バネ61は伸び方向に変形する(実際には,
引張バネ61のバネ定数に応じて駆動アーム60が回転
しない場合もある)。従って、このプランジャ58a又
はロッド111の移動量が,リターンスプリング59の
付勢力及び引張バネ61の引張力に応じた所定量xで表
されるとすると、引張バネ61の引張力fは前記初期引
張力f0 よりも,所定量xに前記駆動アーム比(Lo
i )を乗じ,更に引張バネ定数kを乗じた値分だけ大
きくなる。従って、前記バルブ折れ点調整用ピストン6
3にかかる押圧力Fは,この引張力fに前記作用アーム
比(Ln /Lf )を乗じた下記2式で表される値とな
り、その押圧力増加量ΔFは下記3式で表される。従っ
て、前記マスタシリンダ側液室113の液圧は,前記液
圧初期値P0 よりも,当該押圧力増加量ΔFを当該バル
ブ折れ点調整用ピストン63の受圧面63a面積で除し
た液圧増加量だけ高くなっている。
【0027】 F=(Ln /Lf )・f=F0 +ΔF ……… (2) ΔF=k・(Ln /Lf )・(Lo /Li )・x ……… (3) 従って、今,前記ソレノイド58が通電励磁されていな
い状態で、ブレーキペダル50の踏込みがなく,マスタ
シリンダ51内の図示されないピストンに係る液圧が大
気圧又はほぼ大気圧(便宜上,“0”又はほぼ“0”と
も記す)であっても、実質的なマスタシリンダ圧PM
前記液圧初期値P0 であり、前記バルブ折れ点調整プロ
ポーショナルバルブ49のピストン57を図3の上方に
押し上げる力は前記初期押圧力F0 であるから、この初
期押圧力F0 が前記ピストンリターンスプリング106
の付勢力よりも大きいとすると,前記ピストン57は上
方に押し上げられていて、ボールバルブ56は,図3の
分割左半部に示すように座面108から隙間をあけて離
間している。なお、この状態では,前記バルブ折れ点調
整用ピストン63がピストン57を直接押圧するように
設定して、結果的に,前記貫通孔105が当該バルブ折
れ点調整用ピストン36により閉塞され且つホイールシ
リンダ側液室104の液圧,即ち後左右輪ホイールシリ
ンダ圧PRL,PRRは実質的に“0”又はほぼ“0”とな
るのが望ましい。
【0028】この状態からブレーキペダル50を徐々に
踏込むと,真のマスタシリンダ圧P M が高くなるが、こ
のマスタシリンダ圧PM が,後段に詳述する或る所定液
圧P 1 となるまでは、前記バルブ折れ点調整用ピストン
63の押圧力F及びピストン57のマスタシリンダ圧受
圧面109面積とマスタシリンダ圧PM との積で表され
るマスタシリンダ圧押圧力が,前記リターンスプリング
106の付勢力及びピストン57のホイールシリンダ圧
受圧面110面積とホイールシリンダ圧PRL,PRRとの
積で表されるホイールシリンダ圧押圧力を上回って、結
果的にボールバルブ56が,図3の分割左半部に示すよ
うに座面108から隙間をあけて離間しているから、当
該マスタシリンダ圧PM は前記貫通孔105を通じて,
そのままホイールシリンダ圧PRL,PRRとして供給され
る。
【0029】一方、マスタシリンダ圧PM が前記或る所
定液圧P1 となると、前述のようにピストン57のホイ
ールシリンダ圧受圧面110面積は,マスタシリンダ圧
受圧面109面積よりも,前記受圧面積差分だけ大きい
ために、前記リターンスプリング106の付勢力及び当
該ピストン57のホイールシリンダ圧受圧面110面積
とホイールシリンダ圧PRL,PRRとの積で表されるホイ
ールシリンダ圧押圧力が,前記バルブ折れ点調整用ピス
トン63の押圧力F及びピストン57のマスタシリンダ
圧受圧面109面積とマスタシリンダ圧PM との積で表
されるマスタシリンダ圧押圧力と同等又は前者が後者を
上回って、図3の分割右半部に示すようにボールバルブ
56が座面108に当接して貫通孔105が遮断閉塞さ
れ、ホイールシリンダ圧PRL,PRRは,そのときのマス
タシリンダ圧PM と釣り合う。
【0030】この状態から,マスタシリンダ圧PM が前
記或る所定液圧P1 を越えて更に増圧すると、ミクロ時
系列的に,一旦,前記バルブ折れ点調整用ピストン63
の押圧力F及びマスタシリンダ圧押圧力が,前記リター
ンスプリング106の付勢力及びホイールシリンダ圧押
圧力を上回って、ピストン57が図3の上方に移動され
て,前記ボールバルブ56が座面108から離間して隙
間ができるため、当該マスタシリンダ圧PM は少しだけ
ホイールシリンダ圧PRL,PRRを増圧するが、前記ホイ
ールシリンダ圧受圧面110面積とマスタシリンダ圧受
圧面109面積との受圧面積差により、再び前記リター
ンスプリング106の付勢力及びホイールシリンダ圧押
圧力が,前記バルブ折れ点調整用ピストン63の押圧力
F及びマスタシリンダ圧押圧力を上回って、ピストン5
7が図3の下方に移動されて,前記ボールバルブ56が
座面108に当接するため、貫通孔105は再び遮断閉
塞されて,ホイールシリンダ圧PRL,PRRは,そのとき
のマスタシリンダ圧PM と釣り合い、以後、マスタシリ
ンダPM の増圧と共に,これを繰り返してホイールシリ
ンダ圧PRL,PRRは,その増圧傾きを小さくして少しず
つ増圧する。以上より、前記或る所定液圧をバルブ折れ
点として、このバルブ折れ点以上のマスタシリンダ圧P
M に対し,ホイールシリンダ圧PRL,PRRの増圧傾きを
決定するのは、前記ホイールシリンダ圧受圧面110面
積とマスタシリンダ圧受圧面109面積との受圧面積差
であることが分かる。
【0031】一方、前記或る所定液圧P1 について考察
すると、マスタシリンダ圧PM が当該或る所定液圧P1
まで増圧したときに初めて,前記バルブ折れ点調整用ピ
ストン63の押圧力F及びピストン57のマスタシリン
ダ圧受圧面109面積とマスタシリンダ圧PM との積で
表されるマスタシリンダ圧押圧力が,前記リターンスプ
リング106の付勢力及びピストン57のホイールシリ
ンダ圧受圧面110面積とホイールシリンダ圧PRL,P
RRとの積で表されるホイールシリンダ圧押圧力に釣り合
うと考え、更に前記貫通孔105の内径,即ち断面積
も,ピストン57の外径も一定であるとし、一旦,バル
ブ折れ点調整用ピストン63の存在を無視すると、実質
的にマスタシリンダ圧PM を受圧する受圧面積とホイー
ルシリンダ圧PRL,PRRを受圧する受圧面積とは同等で
あるはずであるから、このときバランスするのは、前記
バルブ折れ点調整用ピストン63の押圧力Fと,リター
ンスプリング106の付勢力及び前記受圧面積差にホイ
ールシリンダ圧PRL,PRRを乗じた押圧力とであると考
えられる。従って、前記或る所定液圧P1 は,前記バル
ブ折れ点調整用ピストン63の押圧力Fからリターンス
プリング106の付勢力を減じた値を前記受圧面積差で
除した圧力であることが分かる。
【0032】ところが、前記バルブ折れ点調整用ピスト
ン63の押圧力Fは,前記ソレノイド58が通電励磁さ
れていない初期押圧力F0 よりも通電励磁されている押
圧力Fの方が,前記押圧力増加量ΔFだけ大きいため
に、前記或る所定液圧P1 は,当該ソレノイド58を通
電励磁するか否かで,当該押圧力増加量ΔFを前記受圧
面積差で除した液圧差ΔPが生じ、従ってこの液圧差Δ
Pの設定は,前記受圧面積差を始め,引張バネ61のバ
ネ定数k,駆動アーム60の駆動アーム比(Lo
i ),作用アーム62の作用アーム比(Ln
f ),プランジャ58a及びロッド111の移動量
x,即ちソレノイド58の励磁力等の変数があることが
分かる。
【0033】一方、前記制動力コントロールユニット3
0は、図4に示すように、前記車速センサ28で検出さ
れた車速VC をディジタル値に変換するA/D変換器8
2と、前記アクセルセンサ47で検出されたアクセル開
度SACC をディジタル値に変換するA/D変換器83
と、各A/D変換器82,83の変換出力信号及び前記
自動変速コントロールユニット34との相互通信機能で
通信されるギヤ比i及び前記ブレーキスイッチ45のブ
レーキ信号SBRK が入力されるマイクロコンピュータ8
4と、このマイクロコンピュータ84から出力されるソ
レノイド制御アナログ信号SACT を,前記バルブ折れ点
調整プロポーショナルバルブ49のソレノイド駆動信号
ACT に変換する駆動回路85とを備えており、この駆
動回路85から出力されるソレノイド駆動信号CACT
より,前記バルブ折れ点調整プロポーショナルバルブ4
9のソレノイド58がON/OFF制御される。
【0034】ここで、制動力コントロールユニット30
内のマイクロコンピュータ84は、少なくとも各種の信
号整合機能を有する入力インタフェース回路84a、D
/A変換機能を始めとする各種の信号整合機能を有する
出力インタフェース回路84b、演算処理装置84c及
び記憶装置84dを備え、前記演算処理装置84cは,
後述する図7の演算処理等に従って、前記ブレーキスイ
ッチ45からのブレーキ信号SBRK がON状態を示す論
理値“1”のときであって且つアクセルセンサ47から
のアクセル開度SACC が全閉状態を示すディジタル値0
/8であり、しかも前記車速センサ28からの車速VC
が予め設定された低速走行状態を示す所定車速値VC0
下であり且つ自動変速コントロールユニット34からの
ギヤ比iが“1”速を示すギヤ比i1 であるときに、論
理値“1”のソレノイド制御信号SACT を駆動回路85
に出力することで,前記バルブ折れ点調整プロポーショ
ナルバルブ49のソレノイド58を通電励磁し、以上の
条件が全て満足されないときには、論理値“0”のソレ
ノイド制御信号SACT を駆動回路85に出力すること
で,前記バルブ折れ点調整プロポーショナルバルブ49
のソレノイド58の通電励磁を解除し、これにより前述
のようにバルブ折れ点調整プロポーショナルバルブ49
のバルブ折れ点を調整制御して,後左右輪ホイールシリ
ンダ圧PRL,P RRを制御することにより、当該後左右輪
10RL,10RRの制動力を調整制御する。
【0035】前記記憶装置84dは、演算処理装置84
cの演算処理に必要な処理プログラムや制御マップを予
め記憶していると共に、演算処理装置84cとの相互通
信機能によって当該演算処理装置84cの処理結果を逐
次記憶し、また記憶されている種々の上方を演算処理装
置84cのバッファ等の逐次記憶装置に伝送する。次
に、前記制動力コントロールユニット30のマイクロコ
ンピュータ84で実行される制動力制御の基本原理につ
いて説明する。
【0036】まず、本実施例のプロポーショナルバルブ
49は,前述のようにバルブ折れ点に相当するマスタシ
リンダ圧PM ,即ち前記或る所定液圧P1 を任意に設定
変更可能なのであるが、ここではこのバルブ折れ点に相
当するマスタシリンダ圧PMを任意には設定変更できな
い,従来のプロポーショナルバルブについて考察してみ
る。また、前述のように積載可能重量の大きい車両で採
用されているロードセンシングプロポーショナルバルブ
は,単に前記バルブ折れ点に相当するマスタシリンダ圧
M を後輪荷重の大きさに応じて変化させるものである
ため、その詳細な説明を省略する。このバルブ折れ点に
相当するマスタシリンダ圧PM (=或る所定液圧P1
と,マスタシリンダ圧PM と等価である前輪ホイールシ
リンダ圧PF とにより、前輪ホイールシリンダ圧PF
後輪ホイールシリンダ圧PR とは,図5の細い実線dで
示すように,バルブ折れ点に相当する或る所定液圧P1
までは同等に増圧するが、それよりマスタシリンダ圧P
M ,即ち前輪ホイールシリンダ圧PF が増圧すると,後
輪ホイールシリンダ圧PR は増圧傾きを小さくして増圧
する。従って、当該車両における前輪制動力FF と後輪
制動力FR との理想制動力配分が,図5の太い一点鎖線
で表れるものであるとし、前輪ホイールシリンダ圧PF
による前輪制動力FF の出力特性,即ちゲイン特性が図
5の細い実線bであり、後輪ホイールシリンダ圧PR
よる後輪制動力FR の出力特性,即ちゲイン特性が図5
の細い実線cであるとき、図5の細い実線aで示すよう
に前記バルブ折れ点に相当する通常時制動力折れ点にお
ける前輪制動力FF は折れ点前輪制動力FF01 となり,
後輪制動力FR は折れ点後輪制動力FR01 となり、この
通常時制動力折れ点を越えるマスタシリンダ圧PM ,即
ち前輪制動力FF の増加に対して、後輪制動力FR は,
それよりも小さな増加傾きで増加する。ここで、前記前
後輪制動力特性は,前述のように当該路面μをパラメー
タとして考察することができるから、当該路面μにおけ
る制動力の流れは,図5に細い矢印で示すように,まず
通常時制動力折れ点までは前輪制動力FF も後輪制動力
R もブレーキペダルの踏込み量,即ちマスタシリンダ
圧PM の増圧量に応じて同等又はほぼ同等に増加し、こ
の通常時制動力折れ点を越えてからは前輪制動力FF
ブレーキペダルの踏込み量,即ちマスタシリンダ圧PM
の増圧量に応じて同等又はほぼ同等に増加するのに対し
て後輪制動力FR はそれよりも小さい増加傾きで増加
し、やがて前記当該路面μパラメータ曲線との交点で通
常時前輪ロック点となって前輪のロックにより前輪制動
力FF が飽和するから、後輪制動力FR は,前記当該路
面μパラメータ曲線に沿って増加し、やがて当該路面μ
パラメータ曲線と理想制動力配分曲線との交点で後輪ロ
ック点となって後輪がロックする。従って、少なくとも
通常時前輪ロック点で前輪がロックする或いはロック傾
向となっても,後輪ロック点になるまで後輪はロックし
ない或いはロック傾向とならないから、走行安定性は向
上することが分かる。なお、前記後輪ロック点における
後輪ホイールシリンダ圧PR は通常時後輪ロックホイー
ルシリンダ圧PR0となるから、このとき必要な前輪ホイ
ールシリンダ圧PF (マスタシリンダ圧PM )は通常時
前輪ロックホイールシリンダ圧PF0となる。また本来
は、車両に応じた前記理想制動力配分曲線があって、こ
れに前後輪制動力特性曲線を近づけるように,前記通常
時制動力折れ点やそれ以後の後輪制動力増加傾きを設定
し、これと各輪の制動力ゲイン特性とから前後輪ホイー
ルシリンダ圧特性曲線を設定し、そのバルブ折れ点や後
輪ホイールシリンダ圧の増加傾きに応じて,前述したプ
ロポーショナルバルブの各変数を設定すべきであること
も理解できよう。
【0037】一方、アクセルペダルを踏込んでいないと
き,即ち前記アクセルセンサ47によるアクセル開度S
ACC がディジタル値0/8であるときのエンジン回転速
度N E とエンジン出力軸トルクとの相関は図6aのよう
に表れ、具体的にエンジン回転速度NE が所定エンジン
回転速度値NE0より大きいときは,バックトルクとして
負の出力軸トルクが発生するが、エンジン回転速度NE
が当該所定エンジン回転速度値NE0以下のときは,正の
出力軸トルクが発生する。
【0038】また、自動変速機では、制動中のようにア
クセルペダルの踏込みがない状態で車速が減速している
ときには,エンジンブレーキによる制動効果を得るため
にエンジンの回転状態がより低い状態で変速比が小さく
なるようにギヤ比を選定してダウンシフトしてゆくか
ら、これを前記エンジン回転速度−エンジン出力軸トル
ク特性と重ね合わせると、アクセル開度0/8のときの
車速と駆動輪への駆動トルクとの相関は,図6bのよう
に表れる。即ち、本実施例の車両では、車速VCが所定
車速値VC0より大きいときには,駆動輪である後輪10
RL,10RRに負の駆動トルクが付与されて,所謂エ
ンジンブレーキによる制動効果が得られるが、車速VC
が当該所定車速値VC0以下で且つ1速が選定されている
ときには,当該駆動輪である後輪10RL,10RRに
正の駆動トルクが付与されることになって,制動力はそ
の分だけ小さくなることが予想される。ここでは、前述
と同様に,このアクセルオフのときの正の駆動トルクを
クリープトルクTD と表し、特に車速VC の低下に伴っ
て発生するクリープトルクTD の最大値を最大クリープ
トルクTDMAXと称することにする。
【0039】ここで、このようなクリープトルクTD
駆動輪である後輪10RL,10RRに作用すると、後
輪制動力FR が当該クリープトルクTD 分だけ小さくな
ることから、前記前後輪制動力特性は,図5に細い二点
鎖線a’のように,黒塗りの太い矢印に沿って同図の下
方に移動してしまい、これに伴って後輪制動力ゲイン特
性も,図5に細い二点鎖線c’のように,黒塗りの太い
矢印に沿って同図の下方に移動してしまう。従って、当
然の如く,前記当該路面μパラメータ曲線と前記クリー
プ時前後輪制動力特性曲線との交点であるクリープ時前
輪ロック点Aで前輪10FL,10FRがロックする或
いはロック傾向となってから,後輪ロック点で後輪10
RL,10RRがロックする或いはロック傾向となるま
でに必要な制動力の増加量が大きくなる。また、当然の
如く,後輪ロック点における後輪ホイールシリンダ圧P
R は,図5に示すように前記通常時後輪ロックホイール
シリンダ圧PR0より大きいクリープ時後輪ロックホイー
ルシリンダ圧PR1となる。ところが、このクリープ時後
輪ロックホイールシリンダ圧PR1が前記通常時バルブ折
れ点に相当する前記或る所定液圧P1 より大きいとする
と、前記クリープ時後輪ロックホイールシリンダ圧PR1
の通常時後輪ロックホイールシリンダ圧PR0からの増圧
量を得るためには,マスタシリンダ圧PM を大幅に増圧
する必要があると考えられ、実質的に,当該クリープ時
後輪ロックホイールシリンダ圧PR1における当該マスタ
シリンダ圧PM と等価な前輪ホイールシリンダ圧P
F は,図5の黒塗りの矢印に沿って前記通常時前輪ロッ
クホイールシリンダ圧PF0よりも遙に大きなクリープ時
A前輪ロックホイールシリンダ圧PF01 となり、例えば
氷雪路面等の低μ路面では前輪10FL,10FRが既
にロックする或いはロック傾向であるのに対して,ブレ
ーキペダル50を少しばかり踏み増ししても後輪10R
L,10RRの制動力はさほど増加せず、結果的に舵取
り効果が低下しているのに制動距離を短縮することがで
きないことなどが想定される。また、この傾向は、後輪
10RL,10RRのグリップ力が大きい状態,具体的
には氷雪路面で、後輪10RL,10RRにのみスタッ
ドレスタイヤ等のグリップ力の大きいタイヤを装着して
いるとか,後輪10RL,10RRにのみチェーンを装
着しているといった状況で顕著となる。
【0040】そこで、本発明では,前述のようにクリー
プトルクTD が駆動輪である後輪10RL,10RRに
作用していると考えられる状況下で、前記バルブ折れ点
に相当する所定液圧P1 を大きな所定液圧(P1 )に設
定変更し、これにより通常時バルブ折れ点から図5に白
抜きの太い矢印で示すようにクリープ時バルブ折れ点を
上昇させ、前後輪ホイールシリンダ圧特性を,図5の太
い実線fのように変更設定できるようにする。なお、本
実施例では,前記バルブ折れ点調整プロポーショナルバ
ルブ49のピストン57の受圧面積差が変わらないた
め、当該クリープ時バルブ折れ点以上のマスタシリンダ
圧PM 又は前輪ホイールシリンダ圧PF に対する後輪ホ
イールシリンダ圧PR の増圧傾きは変わらない。従っ
て、これによるクリープ時制動力折れ点の前輪制動力F
F は,図5に示すようにクリープ時折れ点前輪制動力F
F1まで増加し、またクリープ時制動力折れ点の後輪制動
力FRもクリープ時折れ点後輪制動力FR1まで増加する
ために、このクリープ時の前後輪制動力特性は,図5の
太い実線eのように制動力折れ点が上昇する。
【0041】従って、前記当該路面μパラメータ曲線と
この変更設定されたクリープ時前後輪制動力特性曲線と
の交点であるクリープ時前輪ロック点Bは,少なくとも
前記クリープ時前輪ロック点Aより上昇するため、当該
クリープ時前輪ロック点Bで前輪10FL,10FRが
ロックする或いはロック傾向となってから,後輪ロック
点で後輪10RL,10RRがロックする或いはロック
傾向となるまでに必要な制動力の増加量は、バルブ折れ
点又は制動力折れ点を変更設定する以前よりも小さくな
ることが想定される。また、後輪ロック点における後輪
ホイールシリンダ圧PR が前記クリープ時後輪ロックホ
イールシリンダ圧PR1であることは変わらないが、この
クリープ時後輪ロックホイールシリンダ圧PR1における
当該マスタシリンダ圧PM と等価な前輪ホイールシリン
ダ圧PF は,図5の白抜きの太い矢印のように前記クリ
ープ時A前輪ロックホイールシリンダ圧PF01 よりも小
さなクリープ時B前輪ロックホイールシリンダ圧PF1
なるから、例えば前記氷雪路面等の低μ路面で前輪10
FL,10FRが既にロックする或いはロック傾向であ
るのに対して,ブレーキペダル50を少しばかり踏み増
ししても後輪10RL,10RRの制動力はさほど増加
しないという問題を抑制防止でき、結果的に舵取り効果
と共に制動距離の短縮が可能であろうと想定される。な
お、バルブ折れ点の変更設定量に相当する所定液圧P1
の増圧量,即ち前記液圧差ΔPは、前述のようにバルブ
折れ点調整プロポーショナルバルブ49の引張バネ61
のバネ定数k,駆動アーム60の駆動アーム比(Lo
i ),作用アーム62の作用アーム比(Ln
f ),プランジャ58a及びロッド111の移動量
x,即ちソレノイド58の励磁力等を変数として適宜選
定することができるが、これは所望する前記クリープ時
B前輪ロックホイールシリンダ圧PF1の大きさやクリー
プトルクTD の大きさ等に応じて設定すべきものであ
り、ここではクリープトルクTD を前記最大クリープト
ルクTDMAXに設定して,前記各変数を設定した。
【0042】それでは次に、前記発明原理に基づいてク
リープトルクの作用時に前後輪ホイールシリンダ圧特性
を変更設定することで,前後輪制動力特性を設定変更す
るために、前記制動力コントロールユニット30のマイ
クロコンピュータ84で実行される演算処理を図7のフ
ローチャートに従って説明する。なお、特に記憶データ
や算出データの授受のためのステップは設けていない
が、この演算処理で算出されるデータは前記記憶装置8
4cに随時更新され、当該演算処理の実行開始と共に,
それらの最新データが演算処理装置84cのバッファ等
に伝送されるものとする。また、本実施例では,ブレー
キペダル50は踏込まれているが,アクセルペダル46
も踏込まれているような場合は、運転者が何らかの危険
回避操作をしている可能性があるとして,前記前後輪ホ
イールシリンダ圧特性の変更設定制御を行わないことと
した。
【0043】この演算処理は、例えば前記マイクロコン
ピュータ84の演算処理装置84cにおいて、例えば5
msec. 程度の所定時間ΔT毎にタイマ割込み処理によっ
て実行され、まずステップS1で前記ブレーキセンサ4
5からのブレーキ信号SBRKを読込む。次にステップS
2に移行して、前記ステップS1で読込まれたブレーキ
信号S BRK が踏込み状態を示す論理値“1”であるか否
かを判定し、当該ブレーキ信号SBRK が論理値“1”で
ある場合にはステップS3に移行し、そうでない場合に
はステップS4に移行する。
【0044】前記ステップS3では、前記アクセルセン
サ47で検出されたアクセル開度S ACC を読込んでから
ステップS5に移行する。前記ステップS5では、前記
ステップS3で読込まれたアクセル開度SACC がディジ
タル値0/8であるか否かを判定し、当該アクセル開度
ACC がディジタル値0/8である場合にはステップS
6に移行し、そうでない場合には前記ステップS4に移
行する。
【0045】前記ステップS6では、前記車速センサ2
8で検出された車速VC を読込んでからステップS7に
移行する。前記ステップS7では、前記ステップS6で
読込まれた車速VC が前記所定車速値VC0以下であるか
否かを判定し、当該車速VC が所定車速値VC0以下であ
る場合にはステップS8に移行し、そうでない場合には
前記ステップS4に移行する。
【0046】前記ステップS8では、自動変速コントロ
ールユニット34からのギヤ比iを読込んでからステッ
プS9に移行する。前記ステップS9では、前記ステッ
プS8で読込まれたギヤ比iが前記1速ギヤ比i1 であ
るか否かを判定し、当該ギヤ比iが1速ギヤ比i1 であ
る場合にはステップS10に移行し、そうでない場合に
は前記ステップS4に移行する。
【0047】そして、前記ステップS4では、バルブ折
れ点上昇に相当するソレノイド制御信号SACT を論理値
“0”に設定してからステップS11に移行する。一
方、前記ステップS10では、バルブ折れ点上昇に相当
するソレノイド制御信号SACT を論理値“1”に設定し
てから前記ステップS11に移行する。前記ステップS
11では、前記ステップS4又はステップS10で設定
されたソレノイド制御信号SACT を,前記バルブ折れ点
調整プロポーショナルバルブ49のソレノイド58に向
けて出力してから、メインプログラムに復帰する。
【0048】この演算処理によれば、ブレーキ信号S
BRK が,ブレーキペダル50の踏込み状態を示す論理値
“1”であり且つアクセル開度SACC が,アクセルペダ
ル46の全閉状態を示すディジタル値0/8であるとき
にステップS6に移行し、車速VC が前記所定車速値V
C0以下であり且つギヤ比iが1速ギヤ比i1 であると
き,即ち前記図6bでクリープトルクTD が発生する条
件が全て満足されたときにのみ、ステップS10に移行
してソレノイド制御信号SACT が“1”に設定され、次
いでステップS11でこのソレノイド制御信号SACT
駆動回路85を経て,バルブ折れ点調整プロポーショナ
ルバルブ49のソレノイド58に出力される。従って、
この時点でソレノイド58のコイル58bが通電励磁さ
れ、前述のようにバルブ折れ点調整用ピストン63の押
圧力Fが押圧力増加量ΔFだけ大きくなり、その結果,
前記バルブ折れ点に相当する所定液圧P1 が前記最大ク
リープトルクTDMAXに応じた液圧差ΔPだけ大きくな
る。従って、前述のように後輪ロック点におけるクリー
プ時後輪ロックホイールシリンダ圧PR1を得るための前
輪ホイールシリンダ圧PF ,即ちマスタシリンダ圧PM
は、前記クリープ時A前輪ロックホイールシリンダ圧P
F01 よりも小さなクリープ時B前輪ロックホイールシリ
ンダ圧PF1となり、しかも前記液圧差ΔPが,想定され
る最大クリープトルクTDMAXであるために、これよりも
小さなクリープトルクTD に応じて達成されるクリープ
時B前輪ロックホイールシリンダ圧よりも,本実施例の
クリープ時B前輪ロックホイールシリンダ圧PF1は小さ
な液圧値となるから、当該路面μでの前記クリープ時後
輪ロックホイールシリンダ圧PR1が,クリープ時バルブ
折れ点に相当する所定液圧(P1 )を越えている場合に
も、ブレーキペダル50の比較的小さな踏み増し量でク
リープ時B前輪ロックホイールシリンダ圧PF1となるマ
スタシリンダ圧PM を達成でき、従って後輪10RL,
10RRの制動効率,即ち後輪のブレーキの効きが向上
する。
【0049】従って、本実施例の制動力制御装置によれ
ば、例えば前記氷雪路面等の低μ路面で前輪10FL,
10FRが既にロックする或いはロック傾向となって
も,ブレーキペダル50を少しばかり踏み増しすれば後
輪10RL,10RRがロックする或いはロック傾向と
なるから、この閾値よりもやや小さい程度のブレーキペ
ダル50の踏込み量近傍で制動力を制御すれば,最大の
制動効果を得て制動距離を短縮することができ、またこ
れ以下のブレーキペダル50の踏込み量近傍で制動力を
制御すれば,舵取り効果を損なうことなく制動距離を確
保することができる。
【0050】以上より本実施例の制動力制御装置のうち
の前記車速センサ28及び図7の演算処理のステップS
6及びステップS7が,本発明の制動力制御装置の低速
走行検出手段に相当し、以下同様に,前記自動変速コン
トロールユニット34及び図7の演算処理のステップS
8及びステップS9が小変速比検出手段に相当し、前記
図7の演算処理全体及び制動力コントロールユニット3
0が所定流体圧値制御手段に相当し、前記バルブ折れ点
調整プロポーショナルバルブ49のソレノイド58が所
定流体圧値調整手段に相当し、前記バルブ折れ点調整プ
ロポーショナルバルブ49そのものが後輪制動圧調整装
置に相当する。
【0051】なお、上記実施例においては、クリープト
ルク発生時に増圧側に変更設定されるバルブ折れ点の液
圧差ΔPを最大クリープトルクTDMAXに応じて一定値と
したが、前記図6bのように検出される車速VC からク
リープトルクTD の現在値が算出又は推定できるから、
このクリープトルクTD の現在値に応じてバルブ折れ点
の液圧差ΔPを設定し、このバルブ折れ点の液圧差ΔP
が達成できるようにアクチュエータであるソレノイド5
8の制御量を調整出力することも勿論可能であり、具体
的にはアクチュエータであるソレノイド58の駆動をチ
ョッピング制御して,その制御信号をデューティ比制御
することなどで達成できる。
【0052】また、上記実施例においては、クリープト
ルクが発生する条件として自動変速機で選定される変速
比が1速である場合を想定したが、車両特性によって
は,例えば2速でもクリープトルクが発生することもあ
り得るから、当該クリープトルク発生条件としての変速
比は,当該車両特性に応じて適宜選定すべきであること
は言うまでもない。
【0053】また、上記実施例においては、車速VC
変速機の出力軸回転速度を変換して検出したが、この車
速は,例えばアンチスキッド制御装置等で用いられる車
輪速から変換された疑似車速等の真の車体速(或いはそ
れに近い車体速)を用いることも勿論可能である。但
し、自動変速機においては,一般に前記変速機の出力軸
回転速度を変換して得られる車速をもって変速比制御を
行っているため、前記図6bのクリープトルク発生車速
と真の車体速との相関に注意する必要がある。
【0054】また、上記実施例においては、ブレーキペ
ダルが踏込まれ且つアクセルペダルが踏込まれていない
状態でのみ,前記バルブ折れ点に相当する液圧を増圧側
に変更設定することとしたが、本発明の制動力制御装置
では,これらの前提条件は,基本的に必ずしも必要とし
ない。また、上記実施例においては、コントロールユニ
ット30としてマイクロコンピュータを適用した場合に
ついて説明したが、これに限定されるものではなく、関
数発生器、演算回路等の電子回路を組み合わせて構成す
ることもできる。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の制動力制
御装置によれば、後輪制動圧調整装置の所定流体圧値を
可変調整制御することにより、クリープトルクが後輪に
付与されたときに,当該後輪がロックするために必要な
マスタシリンダ圧等の流体圧発生装置での流体圧を小さ
くすることができるから、後輪の制動力を高めて車両全
体の制動効果が向上し、従って制動距離を短縮可能であ
ると共に,これよりも小さな制動力では前輪による舵取
り効果を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制動力制御装置の概要を示す基本構成
図である。
【図2】本発明の制動力制御装置を,その前提である後
輪駆動車両に展開した一実施例を示す概略構成図であ
る。
【図3】図2に示すバルブ折れ点調整プロポーショナル
バルブの一例を示す説明図である。
【図4】図2に示す制動力コントロールユニットの一例
を示すブロック図である。
【図5】図3に示すバルブ折れ点調整プロポーショナル
バルブによる前後輪ホイールシリンダ圧と前後輪制動力
との相関説明図である。
【図6】図2の車両における出力説明図であり、(a)
はアクセルオフのエンジン回転速度とエンジン出力軸ト
ルクとの相関説明図,(b)はアクセルオフの車速と駆
動トルクとの相関説明図である。
【図7】図2の制動力コントロールユニットで実行され
る制動力制御のための演算処理のフローチャートであ
る。
【符号の説明】
10FL,10FRは前輪(非駆動輪) 10RL,10RRは後輪(駆動輪) 14は自動変速機 20はエンジン 21はエンジン回転コントロールユニット 28は車速センサ(低車速検出手段) 30は制動力コントロールユニット 34は自動変速コントロールユニット 42はスロットルセンサ 44はスロットルバルブ 45はブレーキセンサ 46はアクセルペダル 47はアクセルセンサ 49はバルブ折れ点調整プロポーショナルバルブ 50はブレーキペダル 51はブレーキマスターシリンダ 52FL〜52RRはホイールシリンダ 56はボールバルブ 57はピストン 58はソレノイド 61は引張バネ 63はバルブ折れ点調整用ピストン 84はマイクロコンピュータ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−32217(JP,A) 特開 平4−39133(JP,A) 特開 平5−147521(JP,A) 特開 昭63−227454(JP,A) 実開 昭64−21054(JP,U) 実開 昭63−58058(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/00 - 8/96

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともアクセルペダルの操作量に応
    じた回転駆動力を出力する機関と、少なくとも車速に応
    じた変速比を設定して当該変速比で前記機関の回転駆動
    力を変換する自動変速機と、前記自動変速機で変換され
    た前記機関の回転駆動力を後輪に伝達する後輪駆動力伝
    達装置とを備えた車両にあって、少なくともブレーキペ
    ダルの操作量に応じた制動用作動流体圧を発生する流体
    圧発生装置と、前記流体圧発生装置で発生した制動用作
    動流体圧が所定の流体圧値以上となったときに,後輪の
    制動力が理想制動力配分より小さくなるように,当該制
    動用作動流体圧を小さく調整して当該後輪の制動用シリ
    ンダに供給する後輪制動圧調整装置とを備えた制動力制
    御装置において、前記後輪制動圧調整装置は、前記所定
    の流体圧値を制御信号に応じて調整可能な所定流体圧値
    調整手段を備え、車両が所定の車速以下で低速走行して
    いることを検出する低速走行検出手段と、前記自動変速
    機で設定された変速比が小さい変速比であることを検出
    する小変速比検出手段と、前記低速走行検出手段で検出
    された低速走行検出値及び前記小変速比検出手段で検出
    された小変速比検出値に応じて,前記所定流体圧値調整
    手段で調整される所定の流体圧値を所定量だけ大きく設
    定する制御信号を出力する所定流体圧値制御手段とを備
    えたことを特徴とする制動力制御装置。
  2. 【請求項2】 前記所定流体圧値制御手段で,所定の流
    体圧値を大きく設定する所定量は、クリープトルクに応
    じて設定されることを特徴とする請求項1に記載の制動
    力制御装置。
JP24538494A 1994-10-11 1994-10-11 制動力制御装置 Expired - Fee Related JP3314551B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24538494A JP3314551B2 (ja) 1994-10-11 1994-10-11 制動力制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24538494A JP3314551B2 (ja) 1994-10-11 1994-10-11 制動力制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08108836A JPH08108836A (ja) 1996-04-30
JP3314551B2 true JP3314551B2 (ja) 2002-08-12

Family

ID=17132863

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP24538494A Expired - Fee Related JP3314551B2 (ja) 1994-10-11 1994-10-11 制動力制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3314551B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4581816B2 (ja) * 2005-04-27 2010-11-17 トヨタ自動車株式会社 駆動系にトルクコンバータを備えた車輌の制駆動力制御装置
JP2007331755A (ja) * 2007-08-27 2007-12-27 Toyota Motor Corp 車輌用制動制御装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08108836A (ja) 1996-04-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6454364B1 (en) Braking force control apparatus and method of motor vehicle
US7125085B2 (en) Braking force retaining unit
US5056637A (en) System for controlling speed of an engine for a motor vehicle having a continuously variable transmission
KR950002001B1 (ko) 차량의 슬립제어장치
JP3542158B2 (ja) 電動車両の制動装置
US5357435A (en) Traction control system for automotive vehicles
US6478716B2 (en) Vehicle deceleration controller
US6269297B1 (en) Traction control apparatus and method for vehicles
US6334500B1 (en) Slip control method for traction control system
KR20000028856A (ko) 차량 주행시에 변속비 변화에 연관된 전위 과정을제어하는 방법
JPH0751903B2 (ja) 車両用エンジン出力制御装置
JP4289294B2 (ja) トラクション制御装置
US6189642B1 (en) Vehicle drive torque distribution control system
JP3314551B2 (ja) 制動力制御装置
JP2002095106A (ja) 車輌の制動力制御装置
JP2003336666A (ja) オートマチックトランスミッションに配属されたクラッチのスリップを調整する方法
JP3663972B2 (ja) 車両の走行制御装置
JP2527034B2 (ja) 車両用無段変速機の変速比制御装置
JPH03103660A (ja) 車両用無段変速機の変速比制御装置
JPH07144624A (ja) 制動装置制御装置
JPH1191410A (ja) 車両用出力トルク制御装置
JP2580788B2 (ja) 車両用無段変速機の速度比制御装置
JP4254428B2 (ja) 四輪駆動車の駆動力配分制御装置
WO2003091057A1 (fr) Dispositif et procede de commande de la distribution de la force motrice d'un vehicule a quatre roues
JPH112317A (ja) アンチロックブレーキ装置付車両の自動変速機制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080607

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090607

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090607

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100607

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110607

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees