JP3243329B2 - 熱処理生産性ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼 - Google Patents
熱処理生産性ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼Info
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Description
受といった転がり軸受の要素部材として用いられる軸受
鋼に関し、とくに熱処理時に起こる脱炭層の生成を抑制
する効果ならびに軸受使用環境の過酷化に伴って生ずる
特有の劣化, すなわち繰り返し応力負荷によって転動接
触面下に発生するミクロ組織変化(劣化)に対する遅延
特性とに優れた軸受鋼についての提案である。
ころがり軸受としては、従来、高炭素クロム軸受鋼(JI
S:SUJ 2)が最も多く使用されている。一般に軸受鋼と
いうのは、転動疲労寿命の長いことが重要な性質の1つ
であるが、この転動疲労寿命に与える要因としては、鋼
中非金属介在物の影響が最も大きいと考えられていた。
そのため、最近の研究の主流は、鋼中酸素量の低減を通
じて非金属介在物の量, 大きさを制御することによって
軸受寿命を向上させる方策がとられてきた。例えば、軸
受の転動疲労寿命の一層の向上を目指して開発されたも
のとしては、特開平1−306542号公報や特開平3−1268
39号公報などの提案があり、これらは、鋼中の酸化物系
非金属介在物の組成, 形状あるいは分布状態をコントロ
ールする技術である。しかしながら、非金属介在物の少
ない軸受鋼を製造するには、高価な溶製設備の設置ある
いは従来設備の大幅な改良が必要であり、経済的な負担
が大きいという問題があった。
性改善を図るためのもう1つの動きは、加工性、特に熱
処理時の脱炭層の生成を抑制することの研究である。一
般に、上記JIS-SUJ 2 に規定された軸受鋼は、0.95〜1.
10wt%のCを含むことから、非常に硬質であり、それ故
に、球状化焼なましを行って加工性を向上させた後に成
形加工し、その後焼入れ, 焼もどし処理を施すことによ
って、転がり軸受に必要な強度と靱性を得ていた。とこ
ろが、このような特性改善のための熱処理が何回もかさ
なると、素材表面には、Cと雰囲気ガスとの反応によっ
て、脱炭層と呼ばれる“低C濃度領域”が発生すること
が知られている。この脱炭層は、転がり軸受の硬さ低下
のみならず転動疲労寿命劣化の原因となることから、切
削または研削加工により除去するのが普通であった。そ
のために材料歩留り、さらには生産性の低下を余儀なく
されていたのである。これに対して従来、上記脱炭層の
生成を防止する手段として、熱処理時における炉内の雰
囲気ガス中のカーボンポテンシャルをコントロールする
方法や、特開平2−54717 号公報に開示されている, 球
状化焼なましの初期段階に浸炭処理を施す方法などが提
案されている。しかし、上記の各方法はいずれも、熱処
理あるいはその前処理時の雰囲気清浄によるものである
ことから、熱処理コストが嵩むのみならず、材料の組成
や熱処理時間等に応じた適切なガス組成の設定といった
煩雑な操作を必要とするところに問題があった。
いて発明者らは最近、種々の研究を行った。その結果、
意外にも転動寿命を決めている要因としては、従来から
一般に論じられてきた上述した現象;すなわち、上述し
た“非金属介在物”の存在や熱処理時に生じる“脱炭
層”(低C濃度領域)の生成以外の要因があるというこ
とを突き止めた。というのは、従来技術の下で単に非金
属介在物や脱炭層を減少させても、軸受の転動疲労寿
命、特に、高負荷あるいは高温といった過酷な条件下で
の軸受寿命の向上に対しては大きな効果が得られないと
いうケースを多く経験したからである。このことから、
軸受寿命を律する他の要因の存在を確信したのである。
境を考慮した上での軸受寿命、とくに転がり軸受の剥離
の発生原因についての調査を行った。その結果、軸受使
用環境の激化に伴って、軸受の内・外輪と転動体と転動
体との接触転動時に発生する剪断応力により、転動接触
面の下層部分(表層部)に、図1(a) の写真に示すよう
な、帯状の白色生成物と棒状の析出物からなるミクロ組
織変化層が発生することが判った。そして、このミクロ
組織変化層は転動回数を増すにつれて次第に成長し、終
いには、図1(b)に示すような, このミクロ組織変化部か
ら疲労剥離が生じて軸受寿命につながることがわかっ
た。さらに、軸受使用環境の過酷化すなわち, 高面圧化
(小型化), 使用温度の上昇は、これらミクロ組織変化
が発生するまでの時間を縮め、著しい軸受寿命の低下を
招くことになるということを突き止めた。すなわち、使
用環境の過酷化に伴う軸受寿命というのは、従来技術の
ような、単に脱炭層や非金属介在物を制御するだけでは
不十分である。例えば、単に非金属介在物を低減させた
だけでは、上述した転動接触面下で発生するミクロ組織
変化が発生するまでの時間を遅延させることはできな
い。その結果として、軸受寿命の今まで以上の向上は図
り得ないということを知見したのである。
の下での軸受使用中に発生が予想されるミクロ組織変化
を遅延させて軸受寿命の著しい向上をもたらすと共に、
熱処理時の脱炭層の形成を抑えて熱処理生産性( 加工除
去量を減少させることによる効果)の向上が得られる軸
受鋼を提供することにある。
述した知見に基づき軸受寿命として新たに“ミクロ組織
変化遅延特性”というものに着目し、これの向上を図る
には、当然そのための新たな合金設計(成分組成)が必
要であり、このことの実現なくして軸受のより一層の寿
命向上は図れないという認識に立ち、さらに、脱炭層の
形成を抑制することを併せ達成する種々の実験と検討と
を行った。その結果、意外にも、SiおよびSbを適正量複
合添加すれば、繰り返し応力負荷による転動接触面下に
生成する上述したミクロ組織変化を著しく遅延できると
同時に、熱処理時の脱炭層の発生抑制もできることを見
い出し、本発明軸受鋼を開発した。
旨構成を有するものである。 (1) C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5 wt%, Al:0.005 〜0.07wt%,Sb:0.001 〜0.005 wt%未満, O:0.0020wt%以下 を含有し、残部がFe および不可避的不純物からなる熱
処理生産性ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第1発明)。 (2) C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5 wt%, Al:0.005 〜0.07wt%, Sb:0.001 〜0.005 wt%未
満, O:0.0020wt%以下 を含有し、さらに Mn:0.05〜2.0 wt%, Ni:0.05〜1.0 wt%, Mo:0.05〜0.5 wt%, Cu:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt%及びN:0.0005〜0.012 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、熱処理生
産性ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の
遅延特性に優れた軸受鋼(第2発明)。 (3) C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5 wt%, Al:0.005 〜0.07wt%, Sb:0.001 〜0.005 wt%未
満, O:0.0020wt%以下 を含有し、さらに Zr:0.02〜0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt%, Hf:0.02〜0.5 wt%, Co:0.05〜1.5 wt% 及びN:0.012 超〜0.050 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、熱処理生
産性ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の
遅延特性に優れた軸受鋼(第3発明)。 (4) C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5 wt%, Al:0.005 〜0.07wt%, Sb:0.001 〜0.005 wt%未
満, O:0.0020wt%以下 を含有し、さらに Mn:0.05〜2.0 wt%, Ni:0.05〜1.0 wt%, Mo:0.05〜0.5 wt%, Cu:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt% 及びN:0.0005〜0.012 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、さらにまた、 Zr:0.02〜0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt%, Hf:0.02〜0.5 wt%, Co:0.05〜1.5 wt% 及びN:0.012 超〜0.050 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、熱処理生
産性ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の
遅延特性に優れた軸受鋼(第4発明)。
到した背景につき、本発明者らが行った実験結果に基づ
いて説明する。まず、実験に当たり、 SUJ 2 ( C:1.02wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.45wt
%, Cr:1.35wt%, N:0.0040wt%, O:0.0012wt%)
と、NiとSbとを添加した2種の材料 (C:1.00wt%, Si:0.75wt%, Al:0.042 wt%,
Mn:0.40wt%, Cr:1.33wt%, O:0.0009wt%, Sb:0.
0018wt%, N:0.0042wt%) (C:1.00wt%, , Si:1.58wt%, Al:0.048 wt
%, Mn:0.38wt%, Cr:1.30wt%, Ni:2.5 wt%, O:
0.0008wt%, Sb:0.0040wt%, N:0.0032wt%) についての供試鋼材を作製した。ついで、これらの供試
材を焼ならし、球状化焼ならし、焼入れ焼もどしの各処
理を施したのち、それぞれの供試材から15mmφ×22mmの
円筒型の試験片と、12mmφ×22mmの転動疲労試験用試験
片とを作製した。
用試験片をラジアルタイプ型の転動疲労寿命試験機を用
い、ヘルツ最大接触応力:60kgf/mm2 , 46500 cpm の負
荷条件の下で試験したものである。試験の結果は、ワイ
ブル分布確立紙上にプロットし, 材料強度の上昇による
転動疲労寿命の向上を示す数値と見られるB10(10%累
積破損確率) と高負荷転動時の繰り返し応力負荷による
ミクロ組織変化発生を遅延させることによる転動疲労寿
命の向上を示す数値と見られるB50(50%累積破損確
率)とを求めた。また、脱炭層の試験については、上記
の円筒状試験片を10mmの位置で高さ方向に垂直に切断
後、ナイタールにて腐食し、ミクロ組織変化による円周
上の全脱炭層の最大値( 以後、「最大脱炭層」という)
で評価した。
果から判るように、SiとSbの複合添加材については、前
記B10値についての改善はそれほど大きくないが、B50
値については著しく高い数値を示し、軸受平均寿命はSU
J 2 に比べてB10値で約 倍、B50値で約 倍もの改
善を示すことが認められた。とくに、多量のSiとSbとの
複合添加は高負荷転動中に生成するミクロ組織変化の遅
延特性に対して顕著な効果を示し、その分破損(寿命)
を遅延させることが期待できる。また、最大脱炭層に関
しては、SUJ 2が0.10mmであったが、Sb:0.0018wt%含
むものでは0.03mm、Sb:0.0040wt%含むものでは0.01mm
と、適当なSbの含有が脱炭層の発生抑制に効果のあるこ
とも判った。
験結果をまとめたものであって、非金属介在物に起因す
る軸受寿命とミクロ組織変化に起因する寿命の変化との
関係を示す模式図である。この図に明らかなように、累
積破損確率10%のB10値で示される軸受寿命(以下、こ
れを「B10転動疲労寿命」という)は、単にSiを多量に
添加しただけでは向上しないが、B50値でみると、この
Si多量添加の効果は極めて顕著なものとなっている。そ
こで発明者らは、こうした知見をもとに、累積破損確率
50%のB50値で示される軸受寿命(以下、これを「B50
高負荷転動疲労寿命」という)を向上させ、かつ熱処理
時の脱炭層の成長の抑制を図るには、どのような合金設
計が有効であるかという観点から、以下に説明するよう
な成分組成の範囲を決定した。
用する元素であり、焼入れ焼もどし後の強度確保とそれ
による転動疲労寿命を向上させるために含有させる。そ
の含有量が0.5 wt%未満ではこうした効果が得られな
い。一方、 1.5wt%超では被削性, 鍛造性が低下するの
で、 0.5〜1.5 wt%の範囲に限定する。
他、基地に固溶して焼もどし軟化抵抗の増大により焼入
れ, 焼もどし後の強度を高めて転動疲労寿命を向上させ
る元素として有効である。しかしながら、本発明におい
ては、0.5 wt%超を添加すると、繰り返し応力負荷の下
でのミクロ組織変化の遅延をもたらして転動疲労寿命を
向上させる効果がある。しかし、その含有量が 2.5wt%
を超えると、その効果が飽和する一方で加工性や靱性を
低下させるので、ミクロ組織変化遅延特性のより一層の
向上のためには、 0.5超〜2.5 wt%を添加することが有
効である。
に有効な元素である。また、鋼の焼入れ性を向上させる
ことにより基地マルテンサイトの靱性, 硬度を向上させ
て転動疲労寿命の向上に有効に作用する。これらの効果
は少なくとも0.05wt%の添加が必要であり、一方、2.0
wt%を超える添加は効果が飽和するので、Mnは0.05〜2.
0nwt%の範囲で添加する。
高め靱性を向上させると共に、転動疲労寿命を向上させ
る作用がある。この作用は、Ni:0.05wt%の添加で効果
があるが、1.0 wt%ではその効果が飽和するので、0.05
〜1.0 wt%の範囲と限定する。
元素である。とくに0.05〜0.5 wt%を添加すると、焼入
れ性を増大して焼入れ焼もどし後の強度向上に寄与する
と共に、安定炭化物の析出により、耐摩耗性と転動疲労
寿命とを向上させる。
め、転動疲労寿命を向上させるために添加する。この目
的のために添加するときは、0.05〜1.0 wt%の範囲で十
分である。
っている元素である。とくに、このSbは、熱処理時にお
いて、鋼材表層部のCと雰囲気ガスとの反応を抑制して
脱炭層の発生を阻止することによって、熱処理生産性向
上に寄与する。しかも、Alとの複合添加により、該脱炭
層の抑制にあわせてミクロ組織変化の遅延に対しても効
果を示すことから、積極的に添加する。このような2つ
の作用は、このSb含有量が0.001 wt%以上で顕著なもの
となるが、0.005 wt%を超えて添加してもその効果は飽
和することに加え、却って熱間加工性および靱性の劣化
を招くようになる。従って、Sbは 0.001〜0.005 wt%未
満の範囲で含有させることとした。
高め、転動疲労寿命を向上させるので、0.0005wt%以上
を添加する。しかしながら、0.01wt%を超えて添加する
と加工性を劣化させるので、0.0005〜0.01wt%の範囲に
限定する。
鋼中Nと結合して結晶粒を微細化して鋼の靱性向上に寄
与する。また、焼入れ焼もどし後の強度を高めることに
よる転動疲労寿命の向上にも有効に作用する。これらの
効果は、0.005wt%未満では得られない。一方、0.07wt
%を超える添加は、上記の作用・効果については飽和す
る。従って、Alは0.005 〜0.07wt%添加する。
wt% Nは、窒化物形成元素と結合して結晶粒を微細化すると
共に、基地に固溶して焼入れ焼もどし後の強度を高め、
転動疲労寿命を向上させる。この目的のためには0.0005
〜0.012 wt%の範囲内で添加する。また、このNは、0.
012 wt%を超えて添加した場合には、繰り返し応力によ
るミクロ組織変化を遅らせることにより転動疲労寿命を
向上させる。ただし、その量が0.05wt%を超えると、加
工性が低下するため、この目的のためには0.012 超〜0.
05wt%を添加する。
から可能なかぎり低いことが望ましく、その許容上限は
0.025 wt%である。
る。しかし、多量に含有させると転動疲労寿命を低下さ
せることから、0.025 wt%を上限としなければならな
い。
成分の制御によって繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化の遅延が得られたとしても、転動疲労寿命の低下を
招くことがあるから、可能なかぎり低いことが望まし
い。しかし、0.0020wt%以下の含有量であれば許容でき
る。
変化を遅延させることによる転動疲労寿命を改善する成
分、強度の上昇を通じて転動疲労寿命を改善するための
成分、および脱炭層の生成を抑えて軸受の加工性と生産
性を向上させるための成分限定の理由について説明し
た。ところで、本発明ではさらに、Zr, Ta, HfおよびCo
のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を添加
して軸受寿命をさらに改善するようにしてもよい。上記
各元素の好適添加範囲と添加の目的、上限値、下限値限
定の理由につき、表2にまとめて示す。
るために、S,Se, Te, REM, Pb,Bi, Ca, Ti, Mg, P,
Sn, As等を添加しても、上述した本発明の目的である繰
り返し応力負荷によるミクロ組織変化による遅延特性を
阻害することはなく、しかも容易に被削性を改善するこ
とができるので、必要に応じて添加してもよい。
で溶製したのち連続鋳造し、得られた鋼材を1240℃で30
h の拡散焼鈍の後に65mmφの棒鋼に圧延した。次いで、
切削加工により棒鋼D/4部から15mmφ×20mmの円筒状
試験片ならびに転動疲労用試験片を採取した。その後、
これらの試験片について、雰囲気制御なしに( 大気雰囲
気中で) 、焼ならし・球状化焼なまし・焼入れ・焼もど
しの順で試験を行った。さらに、転動疲労用試験片は、
脱炭層を完全に除去する目的で1mm以上の研磨およびラ
ッピング仕上を行い、試験片寸法を12mmφ×22mmとし
た。熱処理後の脱炭層深さは、15mmφ×20mmの円筒状試
験片を10mmの位置で高さ方向と垂直に切断し、ナイター
ルにて腐食後、ミクロ組織観察による円周上の全脱炭層
の最大値 (以下、「最大脱炭層」と称する) で評価し
た。転動疲労寿命試験は、ラジアルタイプの転動疲労寿
命試験機によりヘルツ最大接触応力:600 kgf/mm2 , 繰
り返し応力数:約46500 cpm の条件で行ったものであ
る。試験結果は、ワイブル分布に従うものとして確率紙
上にまとめ、鋼材No.1の平均寿命 (累積破損確率:50%
における、剥離発生までの総負荷回数) を1として評価
した。その評価結果を、表3, 4にあわせて示す。
鋼中C量が本発明範囲外である鋼材No.3, 鋼中Si量が本
発明鋼の範囲外である鋼材No. 4 ならびに鋼中O量が本
発明鋼範囲外である鋼材No.5は、最大脱炭層が0.01〜0.
02mmとNo.1従来鋼の0.12mmに比べて改善されているもの
の、軸受平均寿命は、いずれも従来鋼(鋼材No.1)に比
べて低い。一方、鋼中Sb量が本発明鋼範囲外である鋼材
No.2のB50平均寿命は、従来鋼 (鋼材No.1) の約4倍も
優れているものの、最大脱炭層は0.11mmと従来例(SUJ
2)と比較してそれほど改善されていない。また、本発明
鋼である鋼材No. 6,7のB50値で示す平均寿命は、従
来鋼(鋼材No.1) に比較して約5〜6倍も優れており、
Siの添加がミクロ組織変化を著しく遅延し、その結果転
動疲労寿命の向上に有効に作用したことが窺える。しか
も、最大脱炭層深さも0.02mmであり、従来鋼No.1に比べ
てはるかに少なく、Sbが本発明適正範囲を外れている鋼
No. 2 と比べても約1/6と改善効果が顕著である。
l, BおよびNのいずれか少なくとも1種以上を添加し
てなる鋼No. 8〜10、12〜14は、平均寿命を決めるB
50転動疲労寿命特性の改善のみならず、最大脱炭層深
さも0.02mm以下と著しく改善されていることが判った。
o およびNを所定の量以上を積極的に加えた鋼No. 24〜
28の場合には、熱処理生産性の向上にあわせ上記平均寿
命 (B50転動疲労寿命) もより一層向上することが確
かめられた。これは、本発明で推奨する上記各改善成分
のすべてを選択的に添加してなる鋼No. 30の場合も同様
であって、軸受鋼寿命および熱処理生産性の両方の改善
に効果のあることが判った。
基本的にはSbの添加と0.5超〜1.0 wt%の高Si複合添加
軸受鋼とすることにより、熱処理時の加工負荷を軽減で
き (Sbの添加効果) 、しかも、高負荷転動疲労寿命時の
繰り返し応力負荷に伴うミクロ組織変化の遅延をもたら
し (高Sl含有効果) 、所謂B50高負荷転動疲労寿命の
向上を達成して、高寿命の熱処理生産性の高い軸受用の
鋼を提供することができる。従って、従来技術の下では
不可欠とされていた、より一層の鋼中酸素量の低減ある
いは鋼中に存在する酸化物系非金属介在物の組成, 形
状, ならびにその分布状態をコントロールするために必
要となる製鋼設備の改良あるいは建設が不必要である。
また、本発明にかかる軸受鋼の開発によって、転がり軸
受の小型化ならびに軸受使用温度のより以上の上昇が可
能となる。
生するミクロ組織変化のようすを示す金属組織の顕微鏡
写真。
変化に起因する軸受寿命とに及ぼすSi添加の影響を示す
説明図。
Claims (4)
- 【請求項1】C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5
wt%,Al:0.005 〜0.07wt%, Sb:0.001 〜0.005 wt%
未満,O:0.0020wt%以下を含有し、残部がFe および
不可避的不純物からなる、熱処理生産性ならびに繰り返
し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸
受鋼。 - 【請求項2】 C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5 wt%, Al:0.005 〜0.07wt%, Sb:0.001 〜0.005 wt%未
満, O:0.0020wt%以下 を含有し、さらに Mn:0.05〜2.0 wt%, Ni:0.05〜1.0 wt%, Mo:0.05〜0.5 wt%, Cu:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt%及びN:0.0005〜0.012 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、 残部がFeおよび不可避的不純物からなる、熱処理生産性
ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延
特性に優れた軸受鋼。 - 【請求項3】C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5
wt%,Al:0.005 〜0.07wt%, Sb:0.001 〜0.005 wt%
未満,O:0.0020wt%以下を含有し、さらにZr:0.02〜
0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt%,Hf:0.02〜0.5 wt%,
Co:0.05〜1.5 wt%及びN:0.012 超〜0.050 wt%
のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、熱処理生
産性ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の
遅延特性に優れた軸受鋼。 - 【請求項4】 C: 0.5〜1.5 wt%, Si:0.5 超〜2.5 wt%, Al:0.005 〜0.07wt%, Sb:0.001 〜0.005 wt%未
満, O:0.0020wt%以下 を含有し、さらに Mn:0.05〜2.0 wt%, Ni:0.05〜1.0 wt%, Mo:0.05〜0.5 wt%, Cu:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt%及びN:0.0005〜0.012 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、さらにまた Zr:0.02〜0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt%, Hf:0.02〜0.5 wt%, Co:0.05〜1.5 wt% 及びN:0.012 超〜0.050 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
み、 残部がFeおよび不可避的不純物からなる、熱処理生産性
ならびに繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延
特性に優れた軸受鋼。
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1993
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