JP2970445B2 - Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法 - Google Patents
Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はSi添加高張力鋼材の改善
された溶融亜鉛めっき方法に関し、特に自動車用鋼板と
して好適な溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛め
っき鋼板を製造する方法に関する。
された溶融亜鉛めっき方法に関し、特に自動車用鋼板と
して好適な溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛め
っき鋼板を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、家電、建材、及び自動車の産業分
野においては、防錆鋼板として比較的安価に製造できる
溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用されており、とりわけ
経済性とその防錆機能、塗装後の性能の点で、合金化溶
融亜鉛めっき鋼板が広く用いられている。
野においては、防錆鋼板として比較的安価に製造できる
溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用されており、とりわけ
経済性とその防錆機能、塗装後の性能の点で、合金化溶
融亜鉛めっき鋼板が広く用いられている。
【0003】溶融亜鉛めっき鋼板は、適当な脱脂洗浄工
程を経た後、または脱脂洗浄を行うことなく、鋼板を弱
酸化性または還元性雰囲気で予熱し、次いでH2+N2の還
元性雰囲気 (還元炉) で鋼板を焼鈍還元し、その後、鋼
板をめっき温度付近まで冷却し、溶融亜鉛めっき浴に浸
漬し、めっき浴出口で付着量を制御する (例、ガスワイ
ピングノズルで) という連続溶融亜鉛めっき法により一
般に製造される。めっき付着量は、片面当たり20〜150
g/m2の範囲内が普通である。20 g/m2 以下の付着量のめ
っき層は通常の溶融亜鉛めっき法では製造が困難であ
る。また、例えば、自動車車体用等として、鋼板の片面
のみを溶融めっきする方法も開発されている。
程を経た後、または脱脂洗浄を行うことなく、鋼板を弱
酸化性または還元性雰囲気で予熱し、次いでH2+N2の還
元性雰囲気 (還元炉) で鋼板を焼鈍還元し、その後、鋼
板をめっき温度付近まで冷却し、溶融亜鉛めっき浴に浸
漬し、めっき浴出口で付着量を制御する (例、ガスワイ
ピングノズルで) という連続溶融亜鉛めっき法により一
般に製造される。めっき付着量は、片面当たり20〜150
g/m2の範囲内が普通である。20 g/m2 以下の付着量のめ
っき層は通常の溶融亜鉛めっき法では製造が困難であ
る。また、例えば、自動車車体用等として、鋼板の片面
のみを溶融めっきする方法も開発されている。
【0004】溶融亜鉛めっきにおいては、予熱時に鋼板
表面に 80 nm (酸化鉄付着量としてはFe換算で0.04 g/m
2 、ただしFe2O3 中のFeとして換算) 程度の薄い酸化皮
膜が形成される方が、溶融亜鉛との濡れ性の点で望まし
いとされるが、それ以上の厚さの酸化皮膜は、むしろド
ロス発生、溶融めっきの密着性の点で悪影響があると考
えられている。
表面に 80 nm (酸化鉄付着量としてはFe換算で0.04 g/m
2 、ただしFe2O3 中のFeとして換算) 程度の薄い酸化皮
膜が形成される方が、溶融亜鉛との濡れ性の点で望まし
いとされるが、それ以上の厚さの酸化皮膜は、むしろド
ロス発生、溶融めっきの密着性の点で悪影響があると考
えられている。
【0005】溶融亜鉛めっき層は、めっき/鋼界面での
Fe−Zn合金層の形成によって鉄素地に密着するが、これ
らは金属化合物であるため硬くて脆い。従って、この合
金層の形成を抑制して、合金層が必要以上に厚くなるの
を阻止するために、めっき浴中に0.08〜0.18wt%のAlを
存在させる。それにより、皮膜加工性が保持されると共
に、めっき皮膜の耐パウダリング性が確保され、製造時
のドロスの発生が抑制される。Alはめっき時にめっき層
中に富化する傾向があるため、めっき皮膜中のAl濃度は
0.12〜0.25wt%の範囲となる。
Fe−Zn合金層の形成によって鉄素地に密着するが、これ
らは金属化合物であるため硬くて脆い。従って、この合
金層の形成を抑制して、合金層が必要以上に厚くなるの
を阻止するために、めっき浴中に0.08〜0.18wt%のAlを
存在させる。それにより、皮膜加工性が保持されると共
に、めっき皮膜の耐パウダリング性が確保され、製造時
のドロスの発生が抑制される。Alはめっき時にめっき層
中に富化する傾向があるため、めっき皮膜中のAl濃度は
0.12〜0.25wt%の範囲となる。
【0006】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記方法で
連続的に溶融亜鉛めっきされた鋼板を、めっき浴から出
た直後に、熱処理炉で 500〜600 ℃程度の材料温度に3
〜60秒加熱することにより、亜鉛層と鋼素地との間の相
互拡散によってめっき層全体をFe−Zn合金化したもので
ある。めっき層はFe−Zn金属間化合物となり、一般にそ
の平均Fe濃度は8〜12wt%である。
連続的に溶融亜鉛めっきされた鋼板を、めっき浴から出
た直後に、熱処理炉で 500〜600 ℃程度の材料温度に3
〜60秒加熱することにより、亜鉛層と鋼素地との間の相
互拡散によってめっき層全体をFe−Zn合金化したもので
ある。めっき層はFe−Zn金属間化合物となり、一般にそ
の平均Fe濃度は8〜12wt%である。
【0007】合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき付着量
は、通常は片面当たり25〜70 g/m2程度である。付着量
が70g/m2を上回るものは、合金化しためっき層の耐パウ
ダリング性を確保することが困難なため、合金化溶融亜
鉛めっき鋼板においては一般に供給されていない。合金
化溶融亜鉛めっき鋼板の場合も、上記と同様の目的でめ
っき浴にAlを存在させるが、Alは溶融めっき後の合金化
反応についても抑制効果を発揮するので、めっき浴中の
Al濃度は0.08〜0.11wt%と、上記範囲内で低めの濃度に
抑えるのが普通である。この場合、めっき皮膜中のAl濃
度は0.12〜0.20wt%の範囲となる。
は、通常は片面当たり25〜70 g/m2程度である。付着量
が70g/m2を上回るものは、合金化しためっき層の耐パウ
ダリング性を確保することが困難なため、合金化溶融亜
鉛めっき鋼板においては一般に供給されていない。合金
化溶融亜鉛めっき鋼板の場合も、上記と同様の目的でめ
っき浴にAlを存在させるが、Alは溶融めっき後の合金化
反応についても抑制効果を発揮するので、めっき浴中の
Al濃度は0.08〜0.11wt%と、上記範囲内で低めの濃度に
抑えるのが普通である。この場合、めっき皮膜中のAl濃
度は0.12〜0.20wt%の範囲となる。
【0008】これらのめっき鋼板の母材は、従来は低炭
素Alキルド鋼板、極低炭素Ti添加鋼板等が主流であった
が、自動車材料の高強度化の要求に伴い、延性および靱
性に優れた材料を得るため、Si添加鋼が用いられようと
している。
素Alキルド鋼板、極低炭素Ti添加鋼板等が主流であった
が、自動車材料の高強度化の要求に伴い、延性および靱
性に優れた材料を得るため、Si添加鋼が用いられようと
している。
【0009】しかし、Siを添加した鋼材は、0.05wt%を
超えて添加すると溶融亜鉛めっき後の合金化速度が著し
く遅延し、0.2 wt%を超えると不めっきが発生するとい
った問題を抱えている。これらの原因はいずれも、めっ
き前の焼鈍過程で鋼板表面にSi酸化物が濃化することに
あると考えられている。即ち、この表面濃化したSi酸化
物が熱処理中の合金化反応を抑制し、またSi酸化物は溶
融亜鉛による濡れ性が悪いため、不めっきを引き起こす
のである。
超えて添加すると溶融亜鉛めっき後の合金化速度が著し
く遅延し、0.2 wt%を超えると不めっきが発生するとい
った問題を抱えている。これらの原因はいずれも、めっ
き前の焼鈍過程で鋼板表面にSi酸化物が濃化することに
あると考えられている。即ち、この表面濃化したSi酸化
物が熱処理中の合金化反応を抑制し、またSi酸化物は溶
融亜鉛による濡れ性が悪いため、不めっきを引き起こす
のである。
【0010】特に、鋼の成形性を向上させるため、Ti添
加極低炭素鋼をベースにSiを添加したSi添加鋼では、再
結晶化のための焼鈍温度が800 ℃以上と高くなるため、
鋼板表面へのSi酸化物の濃化が一層顕著となり、合金化
の遅延や不めっきの問題が甚だしかった。
加極低炭素鋼をベースにSiを添加したSi添加鋼では、再
結晶化のための焼鈍温度が800 ℃以上と高くなるため、
鋼板表面へのSi酸化物の濃化が一層顕著となり、合金化
の遅延や不めっきの問題が甚だしかった。
【0011】この問題を解決するため、合金化処理の促
進については、プレFeめっきを行う方法 (特開昭57−79
160 号公報) が提案されている。しかし、電気めっき工
程が加わるため、設備コストおよび生産コストが大幅に
増大するなどの問題があり、実用的ではない。
進については、プレFeめっきを行う方法 (特開昭57−79
160 号公報) が提案されている。しかし、電気めっき工
程が加わるため、設備コストおよび生産コストが大幅に
増大するなどの問題があり、実用的ではない。
【0012】また、不めっきの防止のついては、無酸化
炉において鋼板表面に厚膜の酸化皮膜を形成した後、還
元炉で焼鈍する方法 (特開昭55−122865号公報) 、無酸
化炉を経由していない鋼板を、露点の異なる2ゾーン以
上に分割された還元炉内で、酸化皮膜厚みを第1ゾーン
で 100〜1000Åに、第2ゾーンで 200Å以下に制御する
ように還元を行う方法 (特開平5−271894号) などが提
案されている。しかし、前者の方法は効果が十分でな
く、また後者の方法では制御が困難であり、やはり目標
通りの効果を達成することが難しい。
炉において鋼板表面に厚膜の酸化皮膜を形成した後、還
元炉で焼鈍する方法 (特開昭55−122865号公報) 、無酸
化炉を経由していない鋼板を、露点の異なる2ゾーン以
上に分割された還元炉内で、酸化皮膜厚みを第1ゾーン
で 100〜1000Åに、第2ゾーンで 200Å以下に制御する
ように還元を行う方法 (特開平5−271894号) などが提
案されている。しかし、前者の方法は効果が十分でな
く、また後者の方法では制御が困難であり、やはり目標
通りの効果を達成することが難しい。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】従って、Si添加高張力
鋼材の溶融亜鉛めっきにおいては、経済的かつ効率的
に、しかも確実に高品質の溶融亜鉛めっき鋼板および合
金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法が求められてい
る。
鋼材の溶融亜鉛めっきにおいては、経済的かつ効率的
に、しかも確実に高品質の溶融亜鉛めっき鋼板および合
金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法が求められてい
る。
【0014】この要請に応えたSi添加高張力鋼材の溶融
亜鉛めっき方法を確立することが本発明の目的である。
具体的には、Si>0.05wt%の鋼材の合金化処理速度を促
進させ、Si>0.2 wt%の鋼材の濡れ性を向上させ、それ
によって効率的で経済性の高い、溶融亜鉛めっき鋼板お
よび合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供するこ
とである。
亜鉛めっき方法を確立することが本発明の目的である。
具体的には、Si>0.05wt%の鋼材の合金化処理速度を促
進させ、Si>0.2 wt%の鋼材の濡れ性を向上させ、それ
によって効率的で経済性の高い、溶融亜鉛めっき鋼板お
よび合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供するこ
とである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Si添加鋼
の焼鈍条件とガス雰囲気を検討した結果、Fe換算量で0.
05 g/m2 以上の酸化鉄が存在した状態で750 ℃以上に加
熱し、再結晶焼鈍を行った後、750 ℃未満で還元させる
と、Si酸化物の表面濃化が著しく抑制され、上記目的を
達成できることを見出した。
の焼鈍条件とガス雰囲気を検討した結果、Fe換算量で0.
05 g/m2 以上の酸化鉄が存在した状態で750 ℃以上に加
熱し、再結晶焼鈍を行った後、750 ℃未満で還元させる
と、Si酸化物の表面濃化が著しく抑制され、上記目的を
達成できることを見出した。
【0016】ここに、本発明の要旨は、下記のおよび
である。 Si>0.05wt%の高張力鋼材を、Fe換算で0.05g/m2以
上、1.0 g/m2以下の酸化鉄量となるように予備加熱で酸
化させ、次いで750 ℃以上、900 ℃以下の温度の非還元
性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算で1.0 g/m2を超えないよ
うに熱処理し、この雰囲気中で750 ℃以下まで冷却した
後、750 ℃未満、550 ℃以上の還元性雰囲気中で還元
し、溶融亜鉛めっきを施し、さらに合金化熱処理を行っ
て合金化溶融亜鉛めっき鋼材を得ることを特徴とする、
Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法。
である。 Si>0.05wt%の高張力鋼材を、Fe換算で0.05g/m2以
上、1.0 g/m2以下の酸化鉄量となるように予備加熱で酸
化させ、次いで750 ℃以上、900 ℃以下の温度の非還元
性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算で1.0 g/m2を超えないよ
うに熱処理し、この雰囲気中で750 ℃以下まで冷却した
後、750 ℃未満、550 ℃以上の還元性雰囲気中で還元
し、溶融亜鉛めっきを施し、さらに合金化熱処理を行っ
て合金化溶融亜鉛めっき鋼材を得ることを特徴とする、
Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法。
【0017】Si>0.2 wt%の高張力鋼材を、Fe換算で
0.05g/m2以上、1.0 g/m2以下の酸化鉄量となるように予
備加熱で酸化させ、次いで750 ℃以上、900 ℃以下の温
度の非還元性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算で1.0 g/m2を
超えないように熱処理し、この雰囲気中で750 ℃以下ま
で冷却した後、750 ℃未満、550 ℃以上の還元性雰囲気
中で還元し、溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼
材を得ることを特徴とする、Si添加高張力鋼材の溶融亜
鉛めっき方法。
0.05g/m2以上、1.0 g/m2以下の酸化鉄量となるように予
備加熱で酸化させ、次いで750 ℃以上、900 ℃以下の温
度の非還元性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算で1.0 g/m2を
超えないように熱処理し、この雰囲気中で750 ℃以下ま
で冷却した後、750 ℃未満、550 ℃以上の還元性雰囲気
中で還元し、溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼
材を得ることを特徴とする、Si添加高張力鋼材の溶融亜
鉛めっき方法。
【0018】
【作用】以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
なお、以下の説明において、%は特に指定のない限りwt
%であるが、ガス組成に関する%は vol%である。ま
た、以下の説明では、めっき母材が鋼板である場合につ
いて説明するが、本発明の方法は原理的には鋼板の溶融
亜鉛めっきに限定されるものではなく、管、棒、異形材
などの他の鋼材についても適用可能であることはいうま
でもない。
なお、以下の説明において、%は特に指定のない限りwt
%であるが、ガス組成に関する%は vol%である。ま
た、以下の説明では、めっき母材が鋼板である場合につ
いて説明するが、本発明の方法は原理的には鋼板の溶融
亜鉛めっきに限定されるものではなく、管、棒、異形材
などの他の鋼材についても適用可能であることはいうま
でもない。
【0019】上記の方法におけるSi添加溶融亜鉛めっ
き鋼板の合金化速度は、特開昭55−122865号公報に記載
のように2.0 g/m2以上の厚膜の酸化鉄皮膜を形成した鋼
板を750 ℃以上で還元焼鈍してから溶融亜鉛めっきした
鋼板の合金化速度より速くなる。また、上記方法により
溶融亜鉛めっきを行うと、Si>0.2 wt%の高Si鋼板に起
こり易かった不めっきを確実に防止することができる。
き鋼板の合金化速度は、特開昭55−122865号公報に記載
のように2.0 g/m2以上の厚膜の酸化鉄皮膜を形成した鋼
板を750 ℃以上で還元焼鈍してから溶融亜鉛めっきした
鋼板の合金化速度より速くなる。また、上記方法により
溶融亜鉛めっきを行うと、Si>0.2 wt%の高Si鋼板に起
こり易かった不めっきを確実に防止することができる。
【0020】その理由については、次のように推測され
る。Si酸化物の表面濃化は、750 ℃以上の高温で起こり
易い。Siが鋼表面で酸化されて酸化物になると、表面付
近のSiが不足して鋼中Siが表面に拡散し、酸化されると
いう過程を繰り返して、Si酸化物の表面濃化が起こる。
る。Si酸化物の表面濃化は、750 ℃以上の高温で起こり
易い。Siが鋼表面で酸化されて酸化物になると、表面付
近のSiが不足して鋼中Siが表面に拡散し、酸化されると
いう過程を繰り返して、Si酸化物の表面濃化が起こる。
【0021】しかし、本発明の方法では、表面に適量の
酸化鉄皮膜が存在するので、Siの酸化反応は、この酸化
鉄の表面か、或いは酸化鉄/鋼板の界面で起こることに
なる。前者は酸化鉄中をSiが拡散しなければならず、後
者は酸化鉄中を酸素が拡散しなければならない。これら
の拡散のための移動速度は、750 ℃以上の高温において
も、酸化物 (酸化鉄) 中での移動速度の方が、金属
(鋼) 中での移動速度より遅い。従って、酸化物である
酸化鉄皮膜が鋼板表面に存在している状態では、高温時
にSi酸化物が表面濃化する現象は抑制されることにな
る。即ち、750 ℃以上の高温加熱が必要な焼鈍を、酸化
鉄皮膜が表面に存在し続けるように非還元性雰囲気で
(還元させずに) 行えば、焼鈍中のSi酸化物の表面濃化
を抑制することができる。
酸化鉄皮膜が存在するので、Siの酸化反応は、この酸化
鉄の表面か、或いは酸化鉄/鋼板の界面で起こることに
なる。前者は酸化鉄中をSiが拡散しなければならず、後
者は酸化鉄中を酸素が拡散しなければならない。これら
の拡散のための移動速度は、750 ℃以上の高温において
も、酸化物 (酸化鉄) 中での移動速度の方が、金属
(鋼) 中での移動速度より遅い。従って、酸化物である
酸化鉄皮膜が鋼板表面に存在している状態では、高温時
にSi酸化物が表面濃化する現象は抑制されることにな
る。即ち、750 ℃以上の高温加熱が必要な焼鈍を、酸化
鉄皮膜が表面に存在し続けるように非還元性雰囲気で
(還元させずに) 行えば、焼鈍中のSi酸化物の表面濃化
を抑制することができる。
【0022】その後、750 ℃未満の比較的低温で還元さ
せる。この還元により、鋼板表面は還元鉄で被覆される
ことになるが、還元鉄は反応性が高く、合金化を促進さ
せる。また、750 ℃未満の低温では、Siの酸化は起こり
にくいので、還元鉄表面にSi酸化物が濃化することは少
なく、Si酸化物による合金化の遅延が起こりにくい。さ
らに、鋼板表面が反応性の高い還元鉄であって、しかも
Si酸化物の表面濃化が少ないため、めっき密着性がよ
く、Si>0.2 %の高Si鋼板であっても不めっきが起こら
ない。
せる。この還元により、鋼板表面は還元鉄で被覆される
ことになるが、還元鉄は反応性が高く、合金化を促進さ
せる。また、750 ℃未満の低温では、Siの酸化は起こり
にくいので、還元鉄表面にSi酸化物が濃化することは少
なく、Si酸化物による合金化の遅延が起こりにくい。さ
らに、鋼板表面が反応性の高い還元鉄であって、しかも
Si酸化物の表面濃化が少ないため、めっき密着性がよ
く、Si>0.2 %の高Si鋼板であっても不めっきが起こら
ない。
【0023】本発明のめっき方法におけるめっき母材
は、主として連続溶融亜鉛めっき装置においてライン内
還元焼鈍を必要とする鋼板 (例、冷延鋼板) であるが、
本発明方法の熱処理過程での機械的特性の変化を特に問
題としなければ、熱延鋼板等のライン外焼鈍を行う鋼板
についても適用可能である。
は、主として連続溶融亜鉛めっき装置においてライン内
還元焼鈍を必要とする鋼板 (例、冷延鋼板) であるが、
本発明方法の熱処理過程での機械的特性の変化を特に問
題としなければ、熱延鋼板等のライン外焼鈍を行う鋼板
についても適用可能である。
【0024】本発明方法で対象とする鋼種はSi添加高張
力鋼である。本発明方法によれば、Si>0.05%鋼では、
溶融亜鉛めっき後の合金化処理を促進することができる
ので、Si>0.05%鋼については合金化溶融亜鉛めっき鋼
板の製造に本発明方法を適用する。Si>0.2 %鋼では、
合金化促進に加えて、不めっきの防止を図ることができ
る。従って、Si>0.2 %鋼では、合金化溶融亜鉛めっき
鋼板に加えて、溶融亜鉛めっき鋼板の製造にも本発明方
法を適用する。Si添加量の上限は特に限定されないが、
鋼板の延性および靱性が良好な領域として3.0 %程度が
上限となる。
力鋼である。本発明方法によれば、Si>0.05%鋼では、
溶融亜鉛めっき後の合金化処理を促進することができる
ので、Si>0.05%鋼については合金化溶融亜鉛めっき鋼
板の製造に本発明方法を適用する。Si>0.2 %鋼では、
合金化促進に加えて、不めっきの防止を図ることができ
る。従って、Si>0.2 %鋼では、合金化溶融亜鉛めっき
鋼板に加えて、溶融亜鉛めっき鋼板の製造にも本発明方
法を適用する。Si添加量の上限は特に限定されないが、
鋼板の延性および靱性が良好な領域として3.0 %程度が
上限となる。
【0025】母材鋼板のその他の成分は特に制限され
ず、Feと不可避不純物以外に、C、S、P、Mn、Ti、M
g、Cr、Ni、Cu、Nb、Ta、Alなどの1種もしくは2種以
上の元素を含有することができる。高張力鋼板の機械的
特性を低下させないため、これらの元素は、次に示す鋼
中濃度とすることが好ましい。C<0.2 %、S<0.03
%、P<0.2 %、Mn<2.0 %、Ti<0.1 %、Mg<1.0
%、Cr<2.0 %、Ni<2.0 %、Cu<2.0 %、Nb<0.1
%、Ta<0.1 %、Al<0.1 %。その他の元素について
は、各元素につき0.01%未満で、合計で2.0 %以下まで
とすることが好ましい。
ず、Feと不可避不純物以外に、C、S、P、Mn、Ti、M
g、Cr、Ni、Cu、Nb、Ta、Alなどの1種もしくは2種以
上の元素を含有することができる。高張力鋼板の機械的
特性を低下させないため、これらの元素は、次に示す鋼
中濃度とすることが好ましい。C<0.2 %、S<0.03
%、P<0.2 %、Mn<2.0 %、Ti<0.1 %、Mg<1.0
%、Cr<2.0 %、Ni<2.0 %、Cu<2.0 %、Nb<0.1
%、Ta<0.1 %、Al<0.1 %。その他の元素について
は、各元素につき0.01%未満で、合計で2.0 %以下まで
とすることが好ましい。
【0026】図1に、本発明の方法を連続的に実施する
のに利用できる合金化溶融亜鉛めっき鋼板製造装置 (合
金化熱処理炉を備えた連続溶融亜鉛めっきライン) の1
例を示す。この図を参照しながら、以下、本発明方法を
工程順に説明する。
のに利用できる合金化溶融亜鉛めっき鋼板製造装置 (合
金化熱処理炉を備えた連続溶融亜鉛めっきライン) の1
例を示す。この図を参照しながら、以下、本発明方法を
工程順に説明する。
【0027】脱脂工程 冷延または熱延を受けた母材鋼板は、まず、必要に応じ
て脱脂される。脱脂は、例えば、約60℃の2〜3%水酸
化ナトリウム水溶液中に10〜300 秒間浸漬することによ
り行われる。或いは、トリクレン、シンナーなどの有機
溶剤脱脂、オルソ珪酸ソーダ水溶液中での電解脱脂など
も可能である。
て脱脂される。脱脂は、例えば、約60℃の2〜3%水酸
化ナトリウム水溶液中に10〜300 秒間浸漬することによ
り行われる。或いは、トリクレン、シンナーなどの有機
溶剤脱脂、オルソ珪酸ソーダ水溶液中での電解脱脂など
も可能である。
【0028】酸化工程 必要により脱脂された鋼板は、十分水洗され、ドライヤ
ーにおいて熱風などで乾燥した後、予備加熱炉に入り、
炉内を通過する間に、Fe換算で0.05 g/m2 以上、1.0 g/
m2以下の酸化鉄量となるよう酸化される。この酸化はど
の温度領域で行ってもよいが、酸化反応の速度や制御の
容易さを考慮すると、 500〜750 ℃の温度領域で酸化さ
せることが好ましい。
ーにおいて熱風などで乾燥した後、予備加熱炉に入り、
炉内を通過する間に、Fe換算で0.05 g/m2 以上、1.0 g/
m2以下の酸化鉄量となるよう酸化される。この酸化はど
の温度領域で行ってもよいが、酸化反応の速度や制御の
容易さを考慮すると、 500〜750 ℃の温度領域で酸化さ
せることが好ましい。
【0029】この予備加熱炉では、バーナー加熱、通電
加熱、誘導加熱、赤外加熱などの加熱方式によって、酸
化に必要な温度 (例、 500〜750 ℃の範囲内) に鋼板を
昇温させる。炉内雰囲気は、炉内での昇温中に、上記範
囲内の酸化鉄量の酸化皮膜が鋼板表面に生成するように
選択する。好ましい雰囲気は、酸素(O2)を5〜20,000pp
m含み、残りが不活性ガス (N2が安価で好ましい) から
なる酸化性雰囲気である。O2のかわりにH2O を、N2の代
わりにAr、He等の希ガスを使用してもよい。バーナー加
熱方式の場合には、空気と燃料ガスの混合比 (空燃比)
を1.0 以上とすることにより、酸化させることも可能で
ある。
加熱、誘導加熱、赤外加熱などの加熱方式によって、酸
化に必要な温度 (例、 500〜750 ℃の範囲内) に鋼板を
昇温させる。炉内雰囲気は、炉内での昇温中に、上記範
囲内の酸化鉄量の酸化皮膜が鋼板表面に生成するように
選択する。好ましい雰囲気は、酸素(O2)を5〜20,000pp
m含み、残りが不活性ガス (N2が安価で好ましい) から
なる酸化性雰囲気である。O2のかわりにH2O を、N2の代
わりにAr、He等の希ガスを使用してもよい。バーナー加
熱方式の場合には、空気と燃料ガスの混合比 (空燃比)
を1.0 以上とすることにより、酸化させることも可能で
ある。
【0030】予備加熱炉での鋼板表面の酸化は、Fe換算
での酸化鉄量が0.05g/m2以上、1.0g/m2以下となるよう
に行う。下限を0.05 g/m2 とするのは、これより酸化鉄
量が少ないと、次の高温焼鈍時にSi酸化物の表面濃化を
有効に抑制することができないからである。また、1.0
g/m2より酸化鉄量が多いと、炉内に酸化鉄のピックアッ
プなどが起こり、表面欠陥の原因となる。
での酸化鉄量が0.05g/m2以上、1.0g/m2以下となるよう
に行う。下限を0.05 g/m2 とするのは、これより酸化鉄
量が少ないと、次の高温焼鈍時にSi酸化物の表面濃化を
有効に抑制することができないからである。また、1.0
g/m2より酸化鉄量が多いと、炉内に酸化鉄のピックアッ
プなどが起こり、表面欠陥の原因となる。
【0031】焼鈍工程 予備加熱炉で酸化した鋼板は、次いで焼鈍炉に入る。焼
鈍炉を通過する間に、鋼板を還元させずに、最高到達温
度が750 ℃以上、900 ℃以下になるように昇温し、この
温度に短時間保持して再結晶させた後、次の還元炉に入
るまでに750 ℃以下の還元温度に冷却することで焼鈍を
行う。焼鈍は、圧延、特に冷間圧延中に生じた歪みを除
去し、適正な材料特性 (延性、靱性など) を得るために
必要である。
鈍炉を通過する間に、鋼板を還元させずに、最高到達温
度が750 ℃以上、900 ℃以下になるように昇温し、この
温度に短時間保持して再結晶させた後、次の還元炉に入
るまでに750 ℃以下の還元温度に冷却することで焼鈍を
行う。焼鈍は、圧延、特に冷間圧延中に生じた歪みを除
去し、適正な材料特性 (延性、靱性など) を得るために
必要である。
【0032】この焼鈍は、焼鈍中に還元を生じさせない
ように、非還元性雰囲気中で行う。焼鈍中に還元が起こ
ると、還元で生じた金属鉄 (還元鉄) 中では、酸化鉄中
に比べてSiが速く拡散するので、750 ℃以上の高温のた
めSi酸化物の表面濃化が起こり易くなり、不めっき防止
や合金化促進という目的を達成することができなくな
る。また、焼鈍は高温で行うため、雰囲気の酸化性が強
いと酸化がさらに著しく進行し、焼鈍炉内で酸化鉄のピ
ックアップが起こるだけでなく、次の還元工程で酸化鉄
を還元しきれず、不めっきが発生することもある。その
ため、焼鈍雰囲気は、酸化行程の雰囲気より酸化性が著
しく弱い、微酸化性または実質的に不活性の雰囲気とす
ることが好ましい。
ように、非還元性雰囲気中で行う。焼鈍中に還元が起こ
ると、還元で生じた金属鉄 (還元鉄) 中では、酸化鉄中
に比べてSiが速く拡散するので、750 ℃以上の高温のた
めSi酸化物の表面濃化が起こり易くなり、不めっき防止
や合金化促進という目的を達成することができなくな
る。また、焼鈍は高温で行うため、雰囲気の酸化性が強
いと酸化がさらに著しく進行し、焼鈍炉内で酸化鉄のピ
ックアップが起こるだけでなく、次の還元工程で酸化鉄
を還元しきれず、不めっきが発生することもある。その
ため、焼鈍雰囲気は、酸化行程の雰囲気より酸化性が著
しく弱い、微酸化性または実質的に不活性の雰囲気とす
ることが好ましい。
【0033】焼鈍に適した実質的に不活性または微酸化
性の雰囲気ガスガスとしては、(a)O2を1〜200 ppm 含
み、残りがN2からなるN2-02 ガス、及び(b) 0.4 ≦P(H
2O)/P(H2)≦ 1.0程度のH2O-H2-N2 ガスが挙げられる。
酸化工程と同様に、N2の代わりにAr、He等の希ガスを使
用してもよい。これらのガスのO2またはH2O 濃度の下限
は、Feの還元を生じさせない最小濃度であり、上限は高
温の焼鈍炉内での鉄の酸化を著しく促進しないような濃
度である。
性の雰囲気ガスガスとしては、(a)O2を1〜200 ppm 含
み、残りがN2からなるN2-02 ガス、及び(b) 0.4 ≦P(H
2O)/P(H2)≦ 1.0程度のH2O-H2-N2 ガスが挙げられる。
酸化工程と同様に、N2の代わりにAr、He等の希ガスを使
用してもよい。これらのガスのO2またはH2O 濃度の下限
は、Feの還元を生じさせない最小濃度であり、上限は高
温の焼鈍炉内での鉄の酸化を著しく促進しないような濃
度である。
【0034】焼鈍炉内のガス雰囲気を上記のように保持
するために、予備加熱炉と焼鈍炉の間の雰囲気を遮断す
ることが好ましい。この雰囲気の遮断は、予備加熱炉と
焼鈍炉の間に、シールロールやスロートを設けるか、ま
たはエアーカーテンなどのガスシールドにより達成され
る。予備加熱炉内の酸化性がより高いガスが、より高温
の焼鈍炉に侵入すると、焼鈍炉内で酸化が促進されす
ぎ、上記のような弊害が起こることがある。
するために、予備加熱炉と焼鈍炉の間の雰囲気を遮断す
ることが好ましい。この雰囲気の遮断は、予備加熱炉と
焼鈍炉の間に、シールロールやスロートを設けるか、ま
たはエアーカーテンなどのガスシールドにより達成され
る。予備加熱炉内の酸化性がより高いガスが、より高温
の焼鈍炉に侵入すると、焼鈍炉内で酸化が促進されす
ぎ、上記のような弊害が起こることがある。
【0035】焼鈍炉では非還元性雰囲気中で750 ℃以上
の高温に加熱されるため、焼鈍中に鉄の酸化がいくらか
起こることもあるが、焼鈍中に生成した酸化鉄量はFe換
算で0.3 g/m2以下であれば、特に影響はない。しかし、
この工程で生成した酸化鉄量がFe換算で0.3 g/m2を超え
ると、Siの酸化が起こり易い750 ℃以上の温度のため、
酸化鉄皮膜中にSi酸化物が混入し、これが次の還元工程
で還元できないため、溶融亜鉛の濡れ性の劣化や、合金
化速度の遅延を引き起こすこともある。従って、微酸化
性雰囲気の場合には、焼鈍炉内での酸化鉄の生成量がFe
換算で0.3 g/m2以下となるように雰囲気を調整
することが好ましい。
の高温に加熱されるため、焼鈍中に鉄の酸化がいくらか
起こることもあるが、焼鈍中に生成した酸化鉄量はFe換
算で0.3 g/m2以下であれば、特に影響はない。しかし、
この工程で生成した酸化鉄量がFe換算で0.3 g/m2を超え
ると、Siの酸化が起こり易い750 ℃以上の温度のため、
酸化鉄皮膜中にSi酸化物が混入し、これが次の還元工程
で還元できないため、溶融亜鉛の濡れ性の劣化や、合金
化速度の遅延を引き起こすこともある。従って、微酸化
性雰囲気の場合には、焼鈍炉内での酸化鉄の生成量がFe
換算で0.3 g/m2以下となるように雰囲気を調整
することが好ましい。
【0036】また、この焼鈍工程で生成した酸化鉄を含
めて、酸化鉄量が酸化工程で規定した上限値の1.0 g/m2
を超えないようにする。従って、酸化工程で生じた酸化
鉄量が多めの時は、酸化鉄量が1.0 g/m2を超えないよう
に焼鈍雰囲気の調整が必要である。
めて、酸化鉄量が酸化工程で規定した上限値の1.0 g/m2
を超えないようにする。従って、酸化工程で生じた酸化
鉄量が多めの時は、酸化鉄量が1.0 g/m2を超えないよう
に焼鈍雰囲気の調整が必要である。
【0037】焼鈍は、最高到達温度 (以下、焼鈍温度と
いう) が750 ℃以上、900 ℃以下という条件で行う。75
0 ℃未満で再結晶する鋼は高温でSi酸化物が生じる問題
がなく、本発明方法を適用する必要がない。900 ℃が上
限となるのは、それより高い温度で焼鈍すると、鋼板が
軟化して板の形状が保持できず、破断の危険性もあるか
らである。
いう) が750 ℃以上、900 ℃以下という条件で行う。75
0 ℃未満で再結晶する鋼は高温でSi酸化物が生じる問題
がなく、本発明方法を適用する必要がない。900 ℃が上
限となるのは、それより高い温度で焼鈍すると、鋼板が
軟化して板の形状が保持できず、破断の危険性もあるか
らである。
【0038】焼鈍炉での昇温は、誘導加熱、通電加熱、
ラジアントチューブ、赤外加熱などの加熱方式で達成す
ることができる。焼鈍が目的であるため、焼鈍炉内での
昇温速度は特に制限されないが、昇温中の酸化を可及的
に抑制するため、および生産効率からも、急速加熱が好
ましい。実際には、上記のガス雰囲気であれば、10℃/s
以上、特に10〜100 ℃/sの昇温速度で十分である。ま
た、焼鈍温度への保持時間は、再結晶に必要な時間であ
るが、材料特性が良好であれば1秒程度で十分である。
加熱方式やその制御方法にも依存するが、実際の保持時
間は10〜100 秒程度となろう。
ラジアントチューブ、赤外加熱などの加熱方式で達成す
ることができる。焼鈍が目的であるため、焼鈍炉内での
昇温速度は特に制限されないが、昇温中の酸化を可及的
に抑制するため、および生産効率からも、急速加熱が好
ましい。実際には、上記のガス雰囲気であれば、10℃/s
以上、特に10〜100 ℃/sの昇温速度で十分である。ま
た、焼鈍温度への保持時間は、再結晶に必要な時間であ
るが、材料特性が良好であれば1秒程度で十分である。
加熱方式やその制御方法にも依存するが、実際の保持時
間は10〜100 秒程度となろう。
【0039】焼鈍温度の鋼板を次の還元炉に直ちに送る
と、750 ℃以上の高温で鋼板表面の酸化鉄皮膜が還元を
受けて還元鉄が生成するため、Si酸化物の表面濃化が起
こり易くなる。そのため、還元炉に送る前に鋼板温度が
750 ℃以下に下がるように、、焼鈍炉内または還元炉へ
の移送中に鋼板を焼鈍と同様の雰囲気中で冷却する。こ
の時の冷却速度は特に制限されないが、5〜20℃/sが好
ましい。
と、750 ℃以上の高温で鋼板表面の酸化鉄皮膜が還元を
受けて還元鉄が生成するため、Si酸化物の表面濃化が起
こり易くなる。そのため、還元炉に送る前に鋼板温度が
750 ℃以下に下がるように、、焼鈍炉内または還元炉へ
の移送中に鋼板を焼鈍と同様の雰囲気中で冷却する。こ
の時の冷却速度は特に制限されないが、5〜20℃/sが好
ましい。
【0040】還元工程 酸化後に非還元性雰囲気中で焼鈍した鋼板は、還元炉内
を通過する間に、750℃未満、550 ℃以上の温度で還元
して、鋼板表面の酸化鉄皮膜を還元鉄にする。この還元
工程は、露点が−80℃以上、0℃以下に調整された、還
元性雰囲気中で行う。
を通過する間に、750℃未満、550 ℃以上の温度で還元
して、鋼板表面の酸化鉄皮膜を還元鉄にする。この還元
工程は、露点が−80℃以上、0℃以下に調整された、還
元性雰囲気中で行う。
【0041】還元温度が550 ℃未満では還元速度が遅
く、鋼板表面に酸化物が残存して、不めっきの原因とな
る恐れがある。還元温度が750 ℃以上になると、上述し
たように還元鉄上層にSi酸化物が表面濃化し、濡れ性お
よび合金化速度が劣化する。
く、鋼板表面に酸化物が残存して、不めっきの原因とな
る恐れがある。還元温度が750 ℃以上になると、上述し
たように還元鉄上層にSi酸化物が表面濃化し、濡れ性お
よび合金化速度が劣化する。
【0042】還元性雰囲気は、2〜25%の水素(H2)を含
有するガス組成が好ましい。標準的な鉄還元性雰囲気は
露点が−40℃程度で水素濃度が10%程度である。水素濃
度が高く、露点が低い方が酸化鉄を還元しやすく、ライ
ン速度を速くすることができ、生産性が向上する。前工
程の焼鈍炉とは雰囲気が異なるため、焼鈍炉との間にや
はり雰囲気の遮断を行う必要がある。この遮断には、シ
ールロール、スロート、エアーシールドなどを使用する
ことが好ましい。
有するガス組成が好ましい。標準的な鉄還元性雰囲気は
露点が−40℃程度で水素濃度が10%程度である。水素濃
度が高く、露点が低い方が酸化鉄を還元しやすく、ライ
ン速度を速くすることができ、生産性が向上する。前工
程の焼鈍炉とは雰囲気が異なるため、焼鈍炉との間にや
はり雰囲気の遮断を行う必要がある。この遮断には、シ
ールロール、スロート、エアーシールドなどを使用する
ことが好ましい。
【0043】還元炉内での550 ℃以上、750 ℃未満の温
度への保持時間は、酸化鉄皮膜の還元に必要な時間とす
る。この時間は、酸化鉄量にも依存するが、20〜90秒程
度で十分である。温度保持を行うため、還元炉内でも加
熱設備が一般に必要となる。加熱方式は、誘導加熱、通
電加熱、ラジアントチューブ方式、赤外加熱方式などが
可能である。
度への保持時間は、酸化鉄皮膜の還元に必要な時間とす
る。この時間は、酸化鉄量にも依存するが、20〜90秒程
度で十分である。温度保持を行うため、還元炉内でも加
熱設備が一般に必要となる。加熱方式は、誘導加熱、通
電加熱、ラジアントチューブ方式、赤外加熱方式などが
可能である。
【0044】溶融亜鉛めっき工程 以上の条件下で酸化工程、焼鈍工程、および還元工程を
経た後、鋼板を通常はめっき浴温度まで冷却してから、
めっき浴中の溶融亜鉛に浸漬して溶融亜鉛めっきを行
う。このめっき工程自体は、従来と同様の条件下で行え
ばよく、本発明においては特に条件を設定しない。
経た後、鋼板を通常はめっき浴温度まで冷却してから、
めっき浴中の溶融亜鉛に浸漬して溶融亜鉛めっきを行
う。このめっき工程自体は、従来と同様の条件下で行え
ばよく、本発明においては特に条件を設定しない。
【0045】めっき浴は主としてZnとAlで構成されてい
る。Al濃度は0.03%以上、0.3 %以下とすることが好ま
しく、Al濃度がこの範囲内であれば本発明では十分適応
できる。即ち、本発明では従来よりもAl濃度の幅を広く
することができる。Al濃度の下限はドロス生成によるも
ので、0.03%未満ではドロス発生が多く、操業が困難で
ある。Al量の上限は、本発明の対象製品が主に自動車用
鋼板であるため、Zn−Al合金めっき鋼板は対象外であ
り、溶融亜鉛めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板の
製造を目的とするためである。従って、0.3 %以上のAl
濃度でめっきすることはほとんどない。
る。Al濃度は0.03%以上、0.3 %以下とすることが好ま
しく、Al濃度がこの範囲内であれば本発明では十分適応
できる。即ち、本発明では従来よりもAl濃度の幅を広く
することができる。Al濃度の下限はドロス生成によるも
ので、0.03%未満ではドロス発生が多く、操業が困難で
ある。Al量の上限は、本発明の対象製品が主に自動車用
鋼板であるため、Zn−Al合金めっき鋼板は対象外であ
り、溶融亜鉛めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板の
製造を目的とするためである。従って、0.3 %以上のAl
濃度でめっきすることはほとんどない。
【0046】めっき浴成分としては、他に鋼板の溶出に
よるFeの混入などがあるが、Fe量が0.05%以下 (ドロス
を含まない) であれば影響はない。その他、不可避不純
物としてNi、Co、Cr、Cu、Si、Ti、Li、Nb、Mo、Ta、C
a、Mg、Mn、K、Na、Pb、Sn、Wなどの金属が1種以上
混入していても、各元素当たりの濃度が0.02%以下で合
計の濃度が0.05%以下であれば、影響はほとんどない。
よるFeの混入などがあるが、Fe量が0.05%以下 (ドロス
を含まない) であれば影響はない。その他、不可避不純
物としてNi、Co、Cr、Cu、Si、Ti、Li、Nb、Mo、Ta、C
a、Mg、Mn、K、Na、Pb、Sn、Wなどの金属が1種以上
混入していても、各元素当たりの濃度が0.02%以下で合
計の濃度が0.05%以下であれば、影響はほとんどない。
【0047】めっき浴の温度は、通常は 420〜520 ℃の
範囲である。420 ℃未満では凝固点近傍であるため浴が
凝固することがあり操業が困難となり、520 ℃より高温
ではFe溶出量が増加し、ドロス発生が顕著になる。めっ
き浴の温度上昇を避けるため、めっき浴侵入時の鋼板温
度も 420〜520 ℃の範囲内のめっき浴温度になるべく近
い温度にする。
範囲である。420 ℃未満では凝固点近傍であるため浴が
凝固することがあり操業が困難となり、520 ℃より高温
ではFe溶出量が増加し、ドロス発生が顕著になる。めっ
き浴の温度上昇を避けるため、めっき浴侵入時の鋼板温
度も 420〜520 ℃の範囲内のめっき浴温度になるべく近
い温度にする。
【0048】めっき付着量は、従来と同様に、溶融亜鉛
めっき鋼板では両面で40〜300 g/m2、合金化溶融亜鉛め
っき鋼板では片面当たり25〜70 g/m2 程度が普通であ
る。このめっき付着量は、めっき浴の上部に設けた付着
量制御手段 (例、ガスワイピングノズル) によって行わ
れる。
めっき鋼板では両面で40〜300 g/m2、合金化溶融亜鉛め
っき鋼板では片面当たり25〜70 g/m2 程度が普通であ
る。このめっき付着量は、めっき浴の上部に設けた付着
量制御手段 (例、ガスワイピングノズル) によって行わ
れる。
【0049】めっき工程の終了後、溶融亜鉛めっき鋼板
製品 (GIと略称される) として出荷されるものについ
ては、適当な冷却手段 (例、空冷と水冷) で常温まで冷
却した後、巻き取られる。
製品 (GIと略称される) として出荷されるものについ
ては、適当な冷却手段 (例、空冷と水冷) で常温まで冷
却した後、巻き取られる。
【0050】合金化熱処理工程 合金化溶融亜鉛めっき鋼板製品 (GAと略称される) と
するものについては、めっき浴を出た溶融亜鉛めっき鋼
板を、めっき浴のすぐ下流に設けた熱処理炉で加熱し
て、Znめっき層をZn−Fe合金層に変える。この合金化熱
処理も従来と同様に実施すればよく、本発明では特に条
件を設定しない。
するものについては、めっき浴を出た溶融亜鉛めっき鋼
板を、めっき浴のすぐ下流に設けた熱処理炉で加熱し
て、Znめっき層をZn−Fe合金層に変える。この合金化熱
処理も従来と同様に実施すればよく、本発明では特に条
件を設定しない。
【0051】通常は、温度 480〜600 ℃程度で3〜60秒
間程度の加熱を行うことで、皮膜中Fe濃度を9〜12%程
度に調整したZn−Fe合金層を形成する。加熱雰囲気は大
気中が普通である。熱処理炉を出た合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板は、例えば上記と同様に冷却してから、巻き取ら
れる。
間程度の加熱を行うことで、皮膜中Fe濃度を9〜12%程
度に調整したZn−Fe合金層を形成する。加熱雰囲気は大
気中が普通である。熱処理炉を出た合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板は、例えば上記と同様に冷却してから、巻き取ら
れる。
【0052】
【実施例】めっき母材として、表1に示す組成を持っ
た、Si添加量の異なる下記A〜Fの6種類の炭素鋼冷延
鋼板の未焼鈍材 (板厚0.8 mm) を、 250×100 mmに裁断
して使用した。
た、Si添加量の異なる下記A〜Fの6種類の炭素鋼冷延
鋼板の未焼鈍材 (板厚0.8 mm) を、 250×100 mmに裁断
して使用した。
【0053】
【表1】
【0054】上記の各鋼板を、予め10%NaOH水溶液で脱
脂した後、所定雰囲気での熱処理が可能で、かつ還元雰
囲気から直接溶融めっきすることが可能な、実験用竪型
溶融めっき装置 (レスカ社製) を用いて、次に述べるよ
うにして(1) 酸化、(2) 焼鈍、(3) 還元の各工程と(4)
溶融めっきを行った。装置内での各加熱時の絶対圧はい
ずれも1気圧であった。
脂した後、所定雰囲気での熱処理が可能で、かつ還元雰
囲気から直接溶融めっきすることが可能な、実験用竪型
溶融めっき装置 (レスカ社製) を用いて、次に述べるよ
うにして(1) 酸化、(2) 焼鈍、(3) 還元の各工程と(4)
溶融めっきを行った。装置内での各加熱時の絶対圧はい
ずれも1気圧であった。
【0055】(1) 酸化工程 (予備加熱) 脱脂した鋼板は、上記めっき装置の熱処理炉内で、表2
のa〜eに示すO2濃度が5〜5000 ppmのO2-N2 混合ガス
中または大気中で、表2に示す条件下で 500〜700 ℃の
温度に予備加熱して鋼板表面を酸化し、酸化鉄皮膜を形
成した。鋼板表面の酸化鉄量を溶液分析法によりFe換算
量として測定した。測定結果を表4に示す。
のa〜eに示すO2濃度が5〜5000 ppmのO2-N2 混合ガス
中または大気中で、表2に示す条件下で 500〜700 ℃の
温度に予備加熱して鋼板表面を酸化し、酸化鉄皮膜を形
成した。鋼板表面の酸化鉄量を溶液分析法によりFe換算
量として測定した。測定結果を表4に示す。
【0056】
【表2】
【0057】(2) 焼鈍工程 上記ように予備加熱して酸化工程を行った後、鋼板を上
記雰囲気中で一旦200℃まで冷却し、次いで雰囲気ガス
を表3に示す〜のいずれかの非還元性 (微酸化性ま
たは実質的に不活性) ガスに置換し、このガス雰囲気中
で、昇温速度20℃/sにて750 ℃以上、900 ℃以下の到達
温度まで昇温させ、この温度に10〜90秒間保持した後、
冷却速度10℃/sで、750 ℃未満の還元温度まで冷却する
ことによって、焼鈍を行った。焼鈍工程での到達温度と
保持時間および還元温度は表4にまとめて示す。
記雰囲気中で一旦200℃まで冷却し、次いで雰囲気ガス
を表3に示す〜のいずれかの非還元性 (微酸化性ま
たは実質的に不活性) ガスに置換し、このガス雰囲気中
で、昇温速度20℃/sにて750 ℃以上、900 ℃以下の到達
温度まで昇温させ、この温度に10〜90秒間保持した後、
冷却速度10℃/sで、750 ℃未満の還元温度まで冷却する
ことによって、焼鈍を行った。焼鈍工程での到達温度と
保持時間および還元温度は表4にまとめて示す。
【0058】
【表3】
【0059】(3) 還元工程 焼鈍工程で昇温・温度保持後に還元温度まで冷却した
後、雰囲気ガスを露点が−60℃〜0℃、H2濃度が5〜30
%のN2-H2 混合ガスに置換し、この鉄還元性雰囲気中で
550℃以上、750 ℃未満の温度に昇温させ、この温度に
20〜90秒保持して還元を行った。還元温度と保持時間は
表4に示す。比較のために、還元温度が本発明の範囲外
(550 ℃未満か、750 ℃以上) であるか、或いは雰囲気
ガスが還元性雰囲気ではない (即ち、露点が0℃超) 条
件下で同様に還元を行った。この時の条件も表4に示
す。
後、雰囲気ガスを露点が−60℃〜0℃、H2濃度が5〜30
%のN2-H2 混合ガスに置換し、この鉄還元性雰囲気中で
550℃以上、750 ℃未満の温度に昇温させ、この温度に
20〜90秒保持して還元を行った。還元温度と保持時間は
表4に示す。比較のために、還元温度が本発明の範囲外
(550 ℃未満か、750 ℃以上) であるか、或いは雰囲気
ガスが還元性雰囲気ではない (即ち、露点が0℃超) 条
件下で同様に還元を行った。この時の条件も表4に示
す。
【0060】(4) めっき工程 還元工程の加熱・保持が終了した後、この還元性雰囲気
で鋼板温度が約460 ℃になるまで冷却した。冷却した鋼
板を、次いでAl濃度0.03%以上、0.3 %以下、残部Znか
らなる、浴温460 ℃の溶融亜鉛浴中に浸漬して両面溶融
めっきを行った。めっき浴浸漬時間は2秒であり、ガス
ワイパーによりZn付着量を約60 g/m2(片面当たり) に調
整した。
で鋼板温度が約460 ℃になるまで冷却した。冷却した鋼
板を、次いでAl濃度0.03%以上、0.3 %以下、残部Znか
らなる、浴温460 ℃の溶融亜鉛浴中に浸漬して両面溶融
めっきを行った。めっき浴浸漬時間は2秒であり、ガス
ワイパーによりZn付着量を約60 g/m2(片面当たり) に調
整した。
【0061】Si>0.2 %鋼 (C〜F鋼) では、めっき浴
から出た直後の鋼板の目視観察により、溶融亜鉛の濡れ
性を評価し、不めっきのないものを○、あるものを×と
判定した。
から出た直後の鋼板の目視観察により、溶融亜鉛の濡れ
性を評価し、不めっきのないものを○、あるものを×と
判定した。
【0062】(5) 合金化熱処理工程 めっき後、500 ℃の塩浴で合金化処理し、皮膜中Fe濃度
が9〜11%になった時間を合金化完了時間として測定し
た。合金化時間が30秒未満を○、30秒以上を×と判定し
た。 以上の評価の結果も表4に併せて示す。
が9〜11%になった時間を合金化完了時間として測定し
た。合金化時間が30秒未満を○、30秒以上を×と判定し
た。 以上の評価の結果も表4に併せて示す。
【0063】
【表4】
【0064】表4からわかるように、本発明に従って酸
化鉄量がFe換算量で0.05〜1.0 g/m2となるように鋼板表
面を酸化した後、非還元性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算
量で1.0 g/m2を超えないように焼鈍し、次いで750 ℃未
満で還元するという工程順でめっき前処理を行うことに
より、Si添加鋼の溶融亜鉛めっき後の合金化が短い時間
で完了し、またSi>0.2 %鋼の不めっきを防止すること
ができた。
化鉄量がFe換算量で0.05〜1.0 g/m2となるように鋼板表
面を酸化した後、非還元性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算
量で1.0 g/m2を超えないように焼鈍し、次いで750 ℃未
満で還元するという工程順でめっき前処理を行うことに
より、Si添加鋼の溶融亜鉛めっき後の合金化が短い時間
で完了し、またSi>0.2 %鋼の不めっきを防止すること
ができた。
【0065】しかし、比較例のように、還元条件が本発
明の範囲外では、合金化促進効果は得られず、また多く
の例で不めっきが発生した。なお、還元温度が550 ℃よ
り低いか、露点が0℃超の比較例では、Siが0.2 %以下
の鋼A、Bでも不めっきが起こっている。これは、還元
温度が低いか、雰囲気が還元性でないため、酸化鉄皮膜
が残存し、この残存酸化鉄皮膜により濡れ性が低下した
ためである。これらの鋼では、還元温度が750 ℃以上の
比較例では酸化鉄皮膜が完全に還元され、不めっきは起
こらなかった。一方、Si>0.2 %鋼である鋼Cでは、還
元温度が750 ℃以上でも、不めっきが発生した。この不
めっきの原因は、Si酸化物の表面濃化による濡れ性の低
下であると考えられる。
明の範囲外では、合金化促進効果は得られず、また多く
の例で不めっきが発生した。なお、還元温度が550 ℃よ
り低いか、露点が0℃超の比較例では、Siが0.2 %以下
の鋼A、Bでも不めっきが起こっている。これは、還元
温度が低いか、雰囲気が還元性でないため、酸化鉄皮膜
が残存し、この残存酸化鉄皮膜により濡れ性が低下した
ためである。これらの鋼では、還元温度が750 ℃以上の
比較例では酸化鉄皮膜が完全に還元され、不めっきは起
こらなかった。一方、Si>0.2 %鋼である鋼Cでは、還
元温度が750 ℃以上でも、不めっきが発生した。この不
めっきの原因は、Si酸化物の表面濃化による濡れ性の低
下であると考えられる。
【0066】
【参考例】従来法と同様のめっき前処理方法として、予
備加熱 (酸化工程) までを上記の実施例と同様に行った
後、焼鈍を還元性雰囲気で行う還元焼鈍法により、焼鈍
と還元を同時に行い、その後は実施例と同様にめっきお
よび合金化熱処理を施した場合の処理条件および評価の
結果を表5に示す。還元焼鈍時のガス雰囲気は、10%H2
−N2混合ガスであり、露点は−40℃であった。
備加熱 (酸化工程) までを上記の実施例と同様に行った
後、焼鈍を還元性雰囲気で行う還元焼鈍法により、焼鈍
と還元を同時に行い、その後は実施例と同様にめっきお
よび合金化熱処理を施した場合の処理条件および評価の
結果を表5に示す。還元焼鈍時のガス雰囲気は、10%H2
−N2混合ガスであり、露点は−40℃であった。
【0067】
【表5】
【0068】表5からわかるように、従来の一般的な方
法である、還元と焼鈍を同時に行う還元焼鈍法では、Si
添加鋼の溶融亜鉛めっき後の合金化速度が遅く、さらに
Si>0.2 %鋼では不めっきが発生した。この不めっきの
原因も、還元温度が高すぎるためのSi酸化物の表面濃化
にあると考えられる。特に、Si量が多い鋼種E、Fで
は、不めっきが多発して、合金化熱処理が不可能となっ
た。
法である、還元と焼鈍を同時に行う還元焼鈍法では、Si
添加鋼の溶融亜鉛めっき後の合金化速度が遅く、さらに
Si>0.2 %鋼では不めっきが発生した。この不めっきの
原因も、還元温度が高すぎるためのSi酸化物の表面濃化
にあると考えられる。特に、Si量が多い鋼種E、Fで
は、不めっきが多発して、合金化熱処理が不可能となっ
た。
【0069】
【発明の効果】以上に説明した通り、本発明によれば、
Si添加高張力鋼板の溶融亜鉛めっきにおいて、不めっき
を防止することができ、まためっき後に合金化熱処理す
る場合の合金化速度を高めることができる。従って、本
発明の方法により、Si添加高張力鋼板を母材として、高
品質の溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき
鋼板を効率的かつ経済的に製造することができる。本発
明の方法で製造されためっき鋼板は、特に自動車用材料
として好適であるが、比較的安価に製造できるため、家
電製品や建材などの他の用途にも有用である。
Si添加高張力鋼板の溶融亜鉛めっきにおいて、不めっき
を防止することができ、まためっき後に合金化熱処理す
る場合の合金化速度を高めることができる。従って、本
発明の方法により、Si添加高張力鋼板を母材として、高
品質の溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき
鋼板を効率的かつ経済的に製造することができる。本発
明の方法で製造されためっき鋼板は、特に自動車用材料
として好適であるが、比較的安価に製造できるため、家
電製品や建材などの他の用途にも有用である。
【図1】本発明の方法を実施するのに適した溶融亜鉛め
っきラインの模式図である。
っきラインの模式図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−306561(JP,A) 特開 平6−256920(JP,A) 特開 平6−212385(JP,A) 特開 平5−271891(JP,A) 特開 平5−271894(JP,A) 特開 平5−51714(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 2/00 - 2/40
Claims (2)
- 【請求項1】 Si>0.05wt%の高張力鋼材を、Fe換算で
0.05g/m2以上、1.0g/m2以下の酸化鉄量となるように予
備加熱で酸化させ、次いで750 ℃以上、900℃以下の温
度の非還元性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算で1.0 g/m2を
超えないように熱処理し、この雰囲気中で750 ℃以下ま
で冷却した後、750 ℃未満、550 ℃以上の還元性雰囲気
中で還元し、溶融亜鉛めっきを施し、さらに合金化熱処
理を行って合金化溶融亜鉛めっき鋼材を得ることを特徴
とする、Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法。 - 【請求項2】 Si>0.2 wt%の高張力鋼材を、Fe換算で
0.05g/m2以上、1.0g/m2以下の酸化鉄量となるように予
備加熱で酸化させ、次いで750 ℃以上、900℃以下の温
度の非還元性雰囲気中で酸化鉄量がFe換算で1.0 g/m2を
超えないように熱処理し、この雰囲気中で750 ℃以下ま
で冷却した後、750 ℃未満、550 ℃以上の還元性雰囲気
中で還元し、溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼
材を得ることを特徴とする、Si添加高張力鋼材の溶融亜
鉛めっき方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31089494A JP2970445B2 (ja) | 1994-12-14 | 1994-12-14 | Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31089494A JP2970445B2 (ja) | 1994-12-14 | 1994-12-14 | Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08170159A JPH08170159A (ja) | 1996-07-02 |
JP2970445B2 true JP2970445B2 (ja) | 1999-11-02 |
Family
ID=18010669
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31089494A Expired - Lifetime JP2970445B2 (ja) | 1994-12-14 | 1994-12-14 | Si添加高張力鋼材の溶融亜鉛めっき方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2970445B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
BE1014997A3 (fr) * | 2001-03-28 | 2004-08-03 | Ct Rech Metallurgiques Asbl | Procede de recuit en continu de bandes en acier en vue de leur galvanisation au trempe et four pour sa mise en oeuvre. |
CN101297051B (zh) * | 2005-12-06 | 2010-12-29 | 株式会社神户制钢所 | 耐粉化性优异的高强度合金化熔融镀锌钢板及其制造方法 |
JP4882432B2 (ja) * | 2006-03-07 | 2012-02-22 | Jfeスチール株式会社 | 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造装置、ならびに表面処理制御方法、表面処理制御装置 |
BRPI0811085A2 (pt) * | 2007-05-02 | 2014-12-09 | Corus Staal Bv | Processo para galvanização em imersão a quente de material em tira ahss ou uhss e tal material |
EP2009129A1 (en) * | 2007-06-29 | 2008-12-31 | ArcelorMittal France | Process for manufacturing a galvannealed steel sheet by DFF regulation |
EP2009127A1 (en) * | 2007-06-29 | 2008-12-31 | ArcelorMittal France | Process for manufacturing a galvanized or a galvannealed steel sheet by DFF regulation |
KR20100076744A (ko) | 2008-12-26 | 2010-07-06 | 주식회사 포스코 | 강판의 소둔 장치, 도금 품질이 우수한 도금 강판의 제조 장치 및 이를 이용한 도금 강판의 제조방법 |
JP5672746B2 (ja) * | 2009-03-31 | 2015-02-18 | Jfeスチール株式会社 | 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 |
JP5672745B2 (ja) * | 2009-03-31 | 2015-02-18 | Jfeスチール株式会社 | 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 |
KR101624810B1 (ko) * | 2011-09-30 | 2016-05-26 | 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 | 도금 습윤성 및 도금 밀착성이 우수한 용융 아연 도금층을 구비한 강판과 그 제조 방법 |
JP6137002B2 (ja) * | 2014-03-17 | 2017-05-31 | Jfeスチール株式会社 | 溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板 |
JP6748375B2 (ja) * | 2016-10-19 | 2020-09-02 | Jfeスチール株式会社 | Si含有熱延鋼板の脱スケール方法 |
-
1994
- 1994-12-14 JP JP31089494A patent/JP2970445B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH08170159A (ja) | 1996-07-02 |
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