JP2961981B2

JP2961981B2 - 低吸収性油脂

Info

Publication number: JP2961981B2
Application number: JP3222937A
Authority: JP
Inventors: 隆治吉田; 裕一前田; 弘之森
Original assignee: Fuji Oil Co Ltd
Current assignee: Fuji Oil Co Ltd
Priority date: 1991-09-03
Filing date: 1991-09-03
Publication date: 1999-10-12
Anticipated expiration: 2014-10-12
Also published as: JPH0559392A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、摂取された際に体内に
おいての吸収率が低い低カロリー食用油脂及びこの油脂
を使用した食品に関する。

【０００２】

【従来の技術】油脂は、体内で加水分解された際に９kc
al/gに相当するエネルギーを発生し、このエネルギー量
は糖質や蛋白質の発生するそれの２倍にあたり、従来重
要なエネルギー源として機能してきた。しかし現在、成
人病等の観点から油脂の過剰摂取が問題とされている
が、油脂が食品に必須の美味しさを与える等の点から油
脂の削減は容易でない。このため低カロリーな油脂が望
まれている。

【０００３】油脂の主成分はグリセリドであり、その大
部分はグリセリン１分子に３分子の脂肪酸がエステル結
合したトリグリセリドからなる。この脂肪酸が長鎖飽和
脂肪酸のみから構成されるトリグリセリドの吸収性は低
く、例えばヒトがトリステアリンを摂取した場合の吸収
率は31％と報告されている。（Am.J.Clin.Nutri., 31:S
273-S276,1978)。この低吸収性は脂肪酸の鎖長が長くな
るに従って強くなり、炭素数22のベヘン酸からなるトリ
ベヘンの吸収率はほぼ０％である。しかし、例えばトリ
ステアリンの融点が64℃と高いように、長鎖飽和脂肪酸
のみから構成されるトリグリセリドの融点は高く、実用
性は皆無に近い。

【０００４】不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べ融点が低
いので、該トリグリセリドに不飽和脂肪酸を導入し融点
を低下させる方法が考えられる。例えばベヘン酸１分子
とオレイン酸２分子からなるモノベヘノジオレインの融
点は32℃である。しかし、不飽和脂肪酸を導入し融点を
低下させたトリグリセリドは吸収率が増加してしまい、
前記モノベヘノジオレインのラットに対する消化吸収率
は73.3％という高い値になってしまう。

【０００５】特開平２−１７９９号公報は、１分子の長
鎖飽和脂肪酸と２分子の炭素数10以下の中短鎖脂肪酸と
を組み合わせることで、トリグリセリド中の長鎖飽和脂
肪酸含量を高め、同時に融点を低下させた、低融点、低
吸収性のトリグリセリドを開示している。

【０００６】本願発明者らの特開平２−１５８６９５号
公報は、分子中に炭素数18〜24の飽和脂肪酸１残基、炭
素数 4〜12の脂肪酸１〜２残基、及び炭素数14以上の不
飽和脂肪酸０〜１残基のみを構成脂肪酸として含有する
トリグリセリドを主成分とする低吸収性油脂を開示して
いる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】高等生物による長鎖飽
和脂肪酸の吸収特性は、グリセリン残基への脂肪酸残基
の結合位置によって差があり、一般にグリセリンのα位
に結合した脂肪酸よりβ位に結合した脂肪酸の方が吸収
率は高いとされている。しかし、これらは、長鎖飽和脂
肪酸と不飽和脂肪酸より構成されるトリグリセリドに関
するものであり、長鎖飽和脂肪酸と中短鎖脂肪酸から構
成されるトリグリセリドに関するものではない。

【０００８】前記２−１７９９号公報には、長鎖飽和脂
肪酸の結合位置は示されていない。また、前記２−１５
８６９５号公報には、より低い融点にするため炭素数18
〜24の飽和脂肪酸残基をα位にすることが好ましいとさ
れている。

【０００９】そこで我々は、長鎖飽和脂肪酸と中短鎖脂
肪酸から構成されるトリグリセリドについて、その結合
位置と吸収性との関係をしらべ、融点が低く汎用性があ
り、かつ吸収率が低い低カロリー油脂を提供することを
目的とした。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明者は、融点が低
く、かつ吸収率が低い低カロリー油脂を開発するために
鋭意研究を重ねた結果、１分子の長鎖飽和脂肪酸と２分
子の中短鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドで
あって、β位に長鎖飽和脂肪酸残基を有するトリグリセ
リドが、この目的に適合しうることを見出し、この知見
にもとずいて本発明をなすにいたった。

【００１１】すなわち、本発明は、式、ＭＬＭ又はＭＭ
Ｌ（式中、Ｍは炭素数12以下の脂肪酸残基であり、Ｌは
炭素数20以上の長鎖飽和脂肪酸残基である）で表される
トリグリセリドを主成分とし、かつ該トリグリセリド中
の50％以上がＭＬＭで表されるトリグリセリドである低
吸収性油脂及びこの油脂を含む食品である。

【００１２】本発明のトリグリセリドを構成する長鎖飽
和脂肪酸残基はその鎖長が長いほど吸収率を低くするこ
とができ、ステアリンよりも長い、炭素数20以上のもの
が好ましく、例えばアラキジン酸、ベヘン酸及びリグノ
セリン酸が好ましい。この長鎖飽和脂肪酸残基が１分子
内に２以上存在すると、このトリグリセリドを主成分と
する油脂の融点は著しく高くなり、そのような油脂は一
般に使用しづらく、又摂食しづらい。従ってトリグリセ
リド１分子中の長鎖飽和脂肪酸残基の数は１残基にとど
められるべきである。

【００１３】本発明のトリグリセリドを構成する中短鎖
脂肪酸残基は、それ自体は吸収率が高いものの、その鎖
長が短いほど長鎖飽和脂肪酸残基の数を高めることなく
分子中の長鎖飽和脂肪酸含量を高めることができ、その
結果油脂全体の吸収率を著しく低下させる。この中短鎖
脂肪酸残基は炭素数12以下のものが好ましく、例えば、
ラウリン酸、デカン酸、及びカプロン酸等が好ましい。

【００１４】中短鎖脂肪酸残基の代わりに不飽和脂肪酸
残基を用いた場合、不飽和脂肪酸残基は油脂の融点を低
下させる効果があるが、分子中の長鎖飽和脂肪酸含量を
高めることができず、従って油脂吸収率を低下させる効
果は少ない。

【００１５】長鎖飽和脂肪酸残基の位置がβ位であるト
リグリセリド、すなわちＭＬＭは長鎖飽和脂肪酸残基の
位置がα位であるトリグリセリド、すなわちＭＭＬより
も吸収率が低く、従ってＭＬＭがトリグリセリド中50％
以上であることにより、吸収率の低下は確実となる。

【００１６】本発明の油脂は、例えば、長鎖飽和脂肪酸
に富む油脂（例えば菜種油、タイコン油、ルナリア油、
魚油もしくは鯨油）、この油脂を分解、精製して得た脂
肪酸、又は該脂肪酸と低級１価アルコールとのエステル
化物を、中短鎖の脂肪酸に富む油脂、この低級脂肪酸、
又は該脂肪酸と低級１価アルコールとのエステル化物を
公知の方法により選択的にエステル交換し、必要に応じ
てその前もしくは後で水素化し、又は分別、精製するこ
とにより得られる。

【００１７】選択的エステル交換は、例えば特開昭55-7
1797号、特開昭56-127094 号、特開昭52-104506 号、特
開昭55-71797号、又は特開昭60-251891 号に開示された
特異的酵素を用いる方法により行うことができる。

【００１８】本発明の油脂は、フライ用油脂、天板油
脂、調理用油脂、マヨネーズ、ドレッシング、高脂肪食
品等の油脂成分として用いることができ、かつ従来の油
脂を用いたものと比べそのカロリーを低下させることが
できる。

【００１９】

【実施例】本発明に係る油脂の製造トリベヘン64.8部にカプロン酸エチル35.2部を混合し、
等量のヘプタンで希釈したものを、１，３位選択性のあ
るリパーゼ（リパーゼＮ（アマノ製薬（株）製））を用
いてエステル交換し、反応油を得た。これを濃縮、蒸留
後、ヘキサン中に油分15％に溶解し、８℃まで冷却して
高融点画分を除去し、低融点画分を収率34.5％で得た
（油脂Ｉ：2-ベヘノ-1,3- ジカプロン) 。

【００２０】比較油脂の製造（１）トリカプロン20.8部をベヘン酸エチル79.2部と混
合し、1,3 位選択性のあるリパーゼ（リパーゼＮ）を用
いてエステル交換し、反応油を得た。これを蒸留後、ヘ
キサン中に油分15％に溶解し、７℃まで冷却し高融点画
分を除去し、低融点画分を収率38.6％で得た（油脂II：
1-ベヘノ-2,3- ジカプロン）。

【００２１】（２）トリベヘン57.8部にトリカプロン4
2.2部を混合し、ソディウムメチラートを用いたランダ
ムエステル交換を行った。この反応油を蒸留後、ヘキサ
ン中に油分15％に溶解し、３℃まで冷却し高融点画分を
除去し、低融点画分を収率54.2％で得た（油脂III ：ラ
ンダム）。

【００２２】これらの油脂の脂肪酸組成、トリグリセリ
ド組成及び軟化融点をそれぞれ表１、２及び３に示す。

【００２３】

【表１】

【００２４】

【表２】

【００２５】

【表３】

【００２６】油脂Ｉ、II及びIII の各々について、その
吸収特性をラットを用いて比較した。５週令のSD系雄
ラット（体重120 〜140g）を、温度23±1 ℃、湿度55±
5 ％、明暗サイクル12時間 (7:00〜19:00)で飼育した。
この飼育は、市販固形食（「オリエンタルCFR-1 」オリ
エンタル酵母工業（株））による１週間の予備飼育、及
びその後各群６匹に群分けして、表４に示す高油分試験
食による１週間飼育からなる。各試験油脂についてその
油脂吸収率、飼料効率（ＦＥＲ）を表５に示す。また、
糞中の脂質を分析し、その結果を表６に示す。

【００２７】

【表４】

【００２８】

【表５】

【００２９】

【表６】

【００３０】これらの表より、油脂Ｉが油脂II及びIII
と比較し、非常に低い吸収率及びＦＥＲを示すことがわ
かる。

【００３１】油脂Ｉが低カロリーな油脂であることが示
されたので、この油脂Ｉを用い低カロリーなハードクッ
キーを試作した。砂糖15.4部、食塩0.3 部、及び溶融し
た油脂Ｉ20部を混合し、これに鶏卵10.3部、薄力粉46.3
部、脱脂粉乳5.1 部、水2.5部を順に加えて生地を作っ
た。これを170 〜180 ℃で10〜15分間焼生してハードク
ッキーを製造した。これは通常のハードクッキーと同様
の風味、食感を与えるものであった。

【００３２】さらに、油脂Ｉを用い、低カロリーなチョ
コレートを試作した。粉糖48.0部、グラム全粉16.7部、
ビター15.3部、及び油脂120.0 部からなる組成物を完全
に混合させた後、ロール、コンチングを行い、チョコレ
ートを製造した。これは通常のチョコレートと同様な風
味を有していた。

【００３３】

【発明の効果】本発明の、長鎖飽和脂肪酸と中短鎖脂肪
酸から構成され、長鎖飽和脂肪酸がβ位でエステル結合
したトリグリセリドを主成分とする油脂は、吸収性が十
分低くかつ融点も低いものであり、有効な低カロリー油
脂である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号ＦＩＡ２３Ｌ 1/307 Ａ２３Ｄ 9/00 ５１６ (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) C11C 3/00 A23D 9/007 A23G 1/00 A23L 1/307 ＷＰＩ／Ｌ（ＱＵＥＳＴＥＬ)

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】式、ＭＬＭ又はＭＭＬ（式中、Ｍは炭素
数12以下の脂肪酸残基であり、Ｌは炭素数20以上の長鎖
飽和脂肪酸残基である）で表されるトリグリセリドを主
成分とし、かつ該トリグリセリド中の50％以上がＭＬＭ
で表されるトリグリセリドである低吸収性油脂。
【請求項２】請求項１記載の油脂を含む食品。