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JP2024124341A - ベーカリー食品用食感改良剤 - Google Patents

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JP2024124341A
JP2024124341A JP2024006296A JP2024006296A JP2024124341A JP 2024124341 A JP2024124341 A JP 2024124341A JP 2024006296 A JP2024006296 A JP 2024006296A JP 2024006296 A JP2024006296 A JP 2024006296A JP 2024124341 A JP2024124341 A JP 2024124341A
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沙也加 阿部
Sayaka Abe
茂夫 長谷川
Shigeo Hasegawa
敏幸 廣川
Toshiyuki Hirokawa
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Adeka Corp
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Abstract

【課題】本発明はソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品を得ることを目的とする。
【解決手段】難消化性グルカンを含み、好ましくは難消化性グルカンの重量平均分子量が1500~3000であり、さらに好ましくは油相を連続相とする、ベーカリー食品用食感改良剤。難消化性グルカンをベーカリー生地に含有させることを含む、ベーカリー食品の食感改良方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ベーカリー食品用食感改良剤に関する。
従来、ソフトでしっとりとした食感を有するパン類が求められてきた。
ソフトでしっとりとした食感を有するパン類を得るための簡易な手法として、生地中の水分を増加させることが挙げられる。しかし、水分を増加させた生地は、丸めや成形時にべとつく等、生地物性が悪化し、作業性が低下する問題がある。また、水分を増加させた生地を加熱処理して得られるパンは、老化しやすく、経時的な食感の維持が難しいという問題がある。
この為、各種改良成分を加えることで、生地物性を改良する検討や、得られるパン類の食感を改良する検討が従来なされており、最近では添加物の健康影響等に対する懸念から、合成乳化剤等に頼らない手法が提案されている。
この手法の一として、例えば、食物繊維のように、保水性の高い成分を添加する手法(例えば特許文献1~4)が挙げられる。
しかし、パン生地に食物繊維を添加する手法では、水に不溶性のものではザラツキのある食感となりやすく、水溶性のものでは、水分が水溶性食物繊維に一旦吸水された後、吸水状態を保ちきれずに生地物性が悪化する他、得られるパン類のボリュームの低下、得られるパンの食感が硬くなるなど食感が悪化しやすかった。
特開平10-179012号公報 特開平10-262541号公報 特開2001-045960号公報 特開2006-254901号公報
本発明の目的・課題はソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品を得ることにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく、種々検討した結果、難消化性グルカンを、ベーカリー生地中に含有させることで、ソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品が得られることを知見した。
本発明はこの知見に基づくものであり、難消化性グルカンを含む、ベーカリー食品用食感改良剤に関する。
本発明は、以下の<1>~<9>を提供する。
<1>
難消化性グルカンを含む、ベーカリー食品用食感改良剤。
<2>
難消化性グルカンの重量平均分子量が1500~3000である、<1>記載のベーカリー食品用食感改良剤。
<3>
油相を連続相とする、<1>又は<2>記載のベーカリー食品用食感改良剤。
<4>
<1>~<3>の何れかに記載のベーカリー食品用食感改良剤を含有する、ベーカリー生地。
<5>
<1>~<3>の何れかに記載のベーカリー食品用食感改良剤とアミラーゼとを含有する、ベーカリー生地。
<6>
ベーカリー食品用食感改良剤を、ベーカリー生地中の穀粉類100質量部に対し、難消化性グルカンの含有量が0.001~0.15質量部となる量で含む、<4>又は<5>記載のベーカリー生地。
<7>
さらに、グルカナーゼを含有する、<5>又は<6>記載のベーカリー生地。
<8>
<4>~<7>の何れかに記載のベーカリー生地の加熱処理品である、ベーカリー食品。
<9>
難消化性グルカンをベーカリー生地に含有させることを含む、ベーカリー食品の食感改良方法。
本発明により、ソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<本発明のベーカリー食品用食感改良剤>
本発明のベーカリー食品用食感改良剤は難消化性グルカンを含み、ベーカリー食品を製造する際に用いられるものであって、ベーカリー食品の食感を改良するものである。具体的には、本発明のベーカリー食品用食感改良剤を、ベーカリー生地中に添加することにより、得られるベーカリー食品の食感をソフトでしっとりした食感とすることができる。また、後述の好適な態様をとることによりさらに、得られるベーカリー食品の歯切れ及び口溶けが良好なものとなりやすい他、ベーカリー生地の作業性が好ましく向上する。なお、以下において、本発明のベーカリー食品用食感改良剤を、単に「本発明の改良剤」という場合がある。
<難消化性グルカン>
本発明のベーカリー食品用食感改良剤に含有される難消化性グルカン(以下、「本発明に用いられる難消化性グルカン」、「本発明の難消化性グルカン」ともいう。)について述べる。
本発明において、「難消化性グルカン」とは、澱粉分解物(好ましくは、デキストロース当量(DE)が70~100の澱粉分解物)を加熱重合させて得られる難消化性の食物繊維を意味する。この際、原料には、グルコース以外の単糖又はこれらの単糖を含むオリゴ糖等が含まれていてもよい。
なお、本発明における「難消化性グルカン」は、難消化性グルカンそのものであってよく、難消化性グルカンにおける還元末端のアルデヒド基を水酸基に還元した難消化性グルカン還元処理物であってもよく、難消化性グルカンを糖質分解酵素で処理した難消化性グルカン酵素処理物であってもよく、上記難消化性グルカン酵素処理物を分画処理した難消化性グルカン分画処理物であってもよい。
本発明において「還元処理」は、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基を水酸基に還元する処理をいう。
還元処理方法はヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が当業者間で知られている。本発明においては、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。「接触水素化反応」とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応である。
本発明において「難消化性グルカン分画処理物」は、難消化性グルカン酵素処理物を二糖以下の画分が固形分中15質量%以下となるように分画処理して得ることができる。言い換えれば「難消化性グルカン分画処理物」は三糖以上の糖類を、固形分中85質量%を超えて有するものである。
本発明において「分画処理」は、二糖以下の画分を固形分中15質量%以下にすることができるものであれば特に制限はない。
なお、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基はグルコースが90%以上占めていることが好ましく、95%以上占めていることがより好ましい。なお、上限は100%である。
本発明に用いられる難消化性グルカンは、本発明のベーカリー食品用食感改良剤を用いて得られるベーカリー食品(以下、「本発明のベーカリー食品」ともいう。)の食感をいっそう改善する観点から、好ましくは以下の重量平均分子量、及び構成糖残基の条件のいずれか一つ以上を満たすものであり、より好ましくはいずれの条件も満たすものが用いられる。
(重量平均分子量)
本発明の難消化性グルカンは、その重量平均分子量が好ましくは1500~3000である。
この重量平均分子量の範囲を満たす難消化性グルカンを用いることにより、ソフトでしっとりとした食感と歯切れとが両立されたベーカリー食品を好ましく得ることができる。
なお、本発明の難消化性グルカンの重量平均分子量はより好ましくは1600以上であり、さらに好ましくは1700以上であり、さらにより好ましくは1800以上である。その上限は、より好ましくは2800以下であり、さらに好ましくは2600以下であり、さらにより好ましくは2400以下である。したがって、一実施形態において、本発明の難消化性グルカンの重量平均分子量はより好ましくは1600~2800であり、さらに好ましくは1700~2600であり、さらにより好ましくは1800~2400である。本発明の難消化性グルカンの重量平均分子量の測定は、サイズ排除クロマトグラフィ法等により行われる。
(構成糖残基組成)
本発明の難消化性グルカンは、その構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率が好ましくは5~28%又は5~25%である。また、1位と4位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率が好ましくは2~30%又は5~30%である。
この構成糖残基の範囲を満たす難消化性グルカンを用いることにより、ソフトでしっとりとした食感と歯切れとが両立されたベーカリー食品を得ることができる。
なお、本発明の改良剤を用いて得られるベーカリー食品の歯切れを改良する観点から、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率は、より好ましくは8~25%であり、さらに好ましくは、14~25%であり、さらにより好ましくは、18~25%である。
また、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率は、より好ましくは5~25%であり、さらに好ましくは5~20%であり、さらにより好ましくは5~15%である。
なお、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率、及び、1位と4位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率は、同時に上記の数値範囲を満たしていることが好ましい。
ここで、「構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と6位において2つ有するものであり、1位と6位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基をさらに有するものは含まない。また、「構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と4位において2つ有するものであり、1位と4位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基をさらに有するものは含まない。
なお、用いられる難消化性グルカンの構成糖残基における、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の量に対する、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の存在比は、良好な食感のベーカリー食品を得る観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.5以上である。その上限は、好ましくは2.5以下又は2.3以下であり、より好ましくは2.2以下又は2.1以下である。したがって、一実施形態において、難消化性グルカンの構成糖残基における、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の量に対する、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の存在比は、好ましくは1.2~2.5又は1.5~2.3であり、より好ましくは1.5~2.2又は1.5~2.1である。
構成糖残基組成における、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基や、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基等の比率については、例えば糖鎖構造の解析を行う手法として一般的に知られている、メチル化分析(例えば「Journal of Biochemistry 第55巻 205ページ 1964年」参照)などにより測定することが出来る。
メチル化分析により、例えば、糖鎖構造中の非還元末端グルコース残基は2,3,4,6-テトラメチル化物として検出され、1位と2位の水酸基で結合したグルコース残基については3,4,6-トリメチル化物として検出され、1位と3位の水酸基で結合したグルコース残基については2,4,6-トリメチル化物として検出され、1位と4位の水酸基で結合したグルコース残基については2,3,6-トリメチル化物として検出され、1位と6位の水酸基で結合したグルコース残基については2,3,4-トリメチル化物として検出され、1位と3位と6位の水酸基で結合したグルコース残基については2,4-ジメチル化物として検出され、1位と4位と6位の水酸基で結合したグルコース残基については2,3-ジメチル化物として検出される。
上記において、他の構成糖残基とは、好ましくはグルコース残基である。また上記において、結合とは、好ましくはα結合である。
(好適に用いられる難消化性グルカン)
本発明で用いられる難消化性グルカンとしては、特に限定されるものではなく、該難消化性グルカンが含有される各種の糖の混合物(以下、単に糖混合物と記載する)であってもよい。また、市販品であってもよい。
ここで、難消化性グルカンの含有量が多い糖混合物であると、得られる本発明の改良剤の物性を任意に調整しやすく、本発明の改良剤を含有するベーカリー生地(以下、「本発明のベーカリー生地」ともいう。)の作業性が低下しにくくなり、本発明の改良剤が要求特性を満たしやすくなる。そのため、含有される固形分中70質量%以上が難消化性グルカンであるものを用いることが好ましい。
本発明の改良剤においては、上記の重量平均分子量やグルコース残基の結合様式に係る条件を好ましく満たす難消化性グルカンとして、澱粉の分解物であるDE70~100の糖類を再縮合させた難消化性グルカン及びその処理物の少なくとも一方を用いることが好ましく、難消化性グルカンの処理物としては、還元処理物がより好ましい。
難消化性グルカンは、例えば、特開2016-050173号公報に記載されているように、澱粉の分解物であるDE70~100の糖類を再縮合させることで得られる糖縮合物からなる。ここで、「DE(Dextrose Equivalent)」とは、澱粉分解物の分解度合いの指標であり、試料中の還元糖をブドウ糖として固形分に対する百分率で示した値である。
上記条件を好ましく全て満たすような市販品としては、例えば、商品名「フィットファイバー(登録商標)#80」、「フィットファイバー(登録商標)#80H」(日本食品化工社製)が挙げられる。
<本発明のベーカリー食品用食感改良剤の性状>
本発明のベーカリー食品用食感改良剤は、本発明の難消化性グルカンをそのまま単独で使用してもよく、また、各種の食品原料や添加剤と混合して、常法により固形、顆粒状、粉末状、可塑性、ペースト状、流動状、液状等の形状としてもよい。
本発明のベーカリー食品用食感改良剤中における、難消化性グルカンの含有量は、本発明の改良剤がとる形態や用いられる難消化性グルカンの形態、本発明の感改良剤のベーカリー生地への添加量等に依存するため、特に限定されず、任意に設定することが可能である。
以下、含有される固形分中70質量%以上が難消化性グルカンである糖混合物の液体を用いた場合について述べる。
例えば本発明の改良剤が可塑性を有する場合や、ペースト状、流動状、あるいは液状の形態をとる場合においては、難消化性グルカンの含有量は、本発明の改良剤中(油脂以外の成分の合計を100質量%としたとき)、好ましくは30~80質量%であり、より好ましくは40~80質量%であり、さらに好ましくは50~80質量%である。
また、本発明の改良剤が固形、顆粒状、あるいは粉末状の形態をとる場合においては、難消化性グルカンの含有量は、本発明の改良剤の固形分中、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。なお、上限は100質量%である。
<本発明のベーカリー食品用食感改良剤に用いられる油脂>
本発明においては、難消化性グルカンをベーカリー生地中に均一に分散させる観点から、本発明のベーカリー食品用食感改良剤が油脂を含有することが好ましい。
本発明のベーカリー食品用食感改良剤が油脂を含有する場合、その量は、難消化性グルカンをベーカリー生地中に均一に分散させる点と難消化性グルカンの量を確保して本発明の効果を確実に得る点から、本発明の改良剤中、好ましくは50~99.9質量%であり、より好ましくは60~99.9質量%である。
上記油脂としては特に制限されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油、微細藻類油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂に必要に応じてエステル交換、水素添加、異性化水添、分別等の処理のうち、1種又は2種以上の処理を行って得られる加工油脂、脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を選択することができる。なお、エステル交換を行う際は、位置特異的なエステル交換であってもよく、ランダムエステル交換であってもよいが、ランダムエステル交換が好ましい。
本発明の改良剤が油脂を含有する場合、本発明のベーカリー食品用生地を製造する際の生地のハンドリングを良好なものとする観点と、ソフトでしっとりとした食感でありながら歯切れが良好であるベーカリー食品を得る観点から、好ましくは含有される油脂の80質量%以上がランダムエステル交換油脂であり、より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。なお、上限は100質量%である。ランダムエステル交換油脂としては、特に限定されないが、本発明の効果をより享受し得る観点から、パーム分別油のランダムエステル交換油脂が好ましく、パームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂がより好ましい。
なお、本発明の改良剤が油脂を含有する場合、ソフトでしっとりとした食感と歯切れとが両立されたベーカリー食品を得る観点から、本発明の改良剤に含有される油相の25℃におけるSFC(Solid Fat Contents:固体脂含量)は好ましくは5~30%であり、より好ましくは5~25%であり、さらに好ましくは5~20%である。SFCは、所定温度における油相中の固体脂の含有量を示すもので、常法により測定することが可能であるが、本発明においては、AOCS official methodのcd16b-93に記載のパルスNMR(ダイレクト法)にて、測定対象となる試料のSFCを測定した後、測定値を油相量に換算した値を使用する。即ち、水相を含まない試料を測定した場合は、測定値がそのままSFCとなり、水相を含む試料を測定した場合は、測定値を油相量に換算した値がSFCとなる。
<本発明のベーカリー食品用食感改良剤の連続相>
本発明のベーカリー食品用食感改良剤が油脂を含有する場合、油相を連続相とする油脂組成物であってもよく、水相を連続相とする油脂組成物であってもよい。油脂を連続相とする油脂組成物としては、油中水型乳化物、油中水中油型乳化物等の乳化物のほか、ショートニングのように水相を含まないものが挙げられる。また水を連続相とする油脂組成物としては、水中油型乳化物等が挙げられる。
よりソフトでしっとりとしたベーカリー食品を得る観点から、本発明の改良剤は油相を連続相とする油脂組成物の形態をとることが好ましい。
なお、本発明の改良剤が油相を連続相とする油脂組成物である場合には、難消化性グルカンの含有量は、本発明の改良剤中、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1.1質量%以上である。その上限は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下、4質量%以下、2質量%以下又は1.8質量%以下である。したがって、一実施形態において、難消化性グルカンの含有量は、本発明の改良剤中、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.5~10質量%であり、さらに好ましくは1.1~6質量%1.1~4質量%、1.1~2質量%又は1.1~1.8質量%である。
また、ベーカリー生地への練りこまれやすさを向上する観点から、本発明の改良剤が油相を連続相とする油脂組成物である場合には、可塑性を有するものであることが好ましい。
<本発明のベーカリー食品用食感改良剤に含有されるその他成分>
本発明のベーカリー食品用食感改良剤は、上記以外のその他の成分として、各種の食品原料や添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で任意に含むことができる。
その他の成分としては、例えば、水、乳化剤、酵素、本発明の難消化性グルカン以外の食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエイ(例、蛋白質濃縮ホエイ、ホエーパウダー)・脱脂濃縮乳等の乳や乳製品、甘味料、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。その他、後述のベーカリー生地に含有されるその他成分を含んでもよい。
上記乳化剤としては、レシチン、酵素処理レシチンなどの天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。本発明では、これらの乳化剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
乳化剤を含有する場合、本発明の改良剤中のその含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。
上記酵素としては、例えば、4糖生成アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、α-アミラーゼやβ-アミラーゼ等のアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ等のグルカナーゼ、ペプシン、パパイン等のプロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ等の脂肪酸分解酵素、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素を挙げることができ、本発明の改良剤ではこれらの酵素から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
酵素のうち好ましいものや、その好ましい量については後述する。
本発明の改良剤は、本発明の効果を損ねない範囲で本発明の難消化性グルカン以外の食物繊維を含有することも可能である。難消化性グルカン以外の食物繊維としては、例えば、セルロース、ヘミセルロース、キチン、キトサン等の不溶性食物繊維、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アガロース、アガロペクチン、カラギーナン、ポリデキストロース等の水溶性食物繊維が挙げられる。難消化性グルカン以外の食物繊維の含有量は、本発明の改良剤に含有される難消化性グルカン1質量部に対して1~2質量部であることが、良好な歯切れを得る観点から好ましい。
<本発明のベーカリー食品用食感改良剤の好ましい製造方法>
次に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤の好ましい製造方法について述べる。
本発明の改良剤の製造方法としては上記難消化性グルカンが含有されるものであれば、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
例えば、本発明の改良剤の形態が液状、流動状、あるいはペースト状の場合は、水や油脂等に各原料を溶解又は分散し、必要に応じ、さらに均質化することによって得ることができる。
まず、本発明の改良剤が油相を連続相とする、可塑性を有する油脂組成物である場合の好ましい製造方法を説明する。
詳しくは、まず、油脂に、必要に応じ油溶性の原料を溶解させた油相を用意する。次に、製造する本発明の改良剤が水相を含有する場合は、水、あるいは必要に応じ水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。なお、用いる難消化性グルカンが水溶液である場合には水相に添加されるが、難消化性グルカンをそのまま水相として用いることもでき、その他の水溶性の原料を溶解させて水相とすることも出来る。
また、本発明で用いられる難消化性グルカンが粉体である場合には、油相に分散させることも、水相に分散させることもできるが、本発明の改良剤が水相を含有する場合には、水相に溶解させるのが好ましい。本発明の改良剤が油脂を連続相とする場合、水相は分散相となるため、難消化性グルカンがベーカリー生地中にいきわたりやすくなる。油相又は水相を得る際は、油脂、水又は水溶性原料に原料を溶解させる前に、あらかじめ45~75℃に加熱しておくことが好ましい。
そして、この油相を、若しくは、水相と油相とを、45~75℃で混合し、油中水型、もしくは水中油型に乳化された、予備乳化物を得る。次いでこの予備乳化物を殺菌することが好ましい。
なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。
該殺菌は、例えば、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、プレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌、又は加熱殺菌処理、あるいは、直火等の加熱調理により行うことができる。そして冷却することにより、本発明の改良剤が得られる。
また、殺菌する前又は後、若しくは殺菌する前後で、ホモジナイザーにより均質化しても良い。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa~30MPaとするのが好ましい。
次に、冷却する。好ましくは冷却可塑化され、冷却条件は、好ましくは-0.5℃/分以上、より好ましくは-1℃/分以上である。この際、徐冷却よりも、急速冷却の方が好ましい。冷却可塑化の最終温度は、特に限定されないが、通常、5~15℃であり、好ましくは、8~12℃である。なお、冷却可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等の製造機やプレート型熱交換機が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
なお、本発明の改良剤が、油相を連続相とする油脂組成物の形態をとる場合、製造する際の何れかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
次に、本発明の改良剤が、水を使用した液状の形態である場合の好ましい製造方法を説明する。
まず水に、難消化性グルカンを分散・溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。なお、用いる難消化性グルカンが水溶液である場合には、難消化性グルカンをそのまま水相として用いることもでき、その他の水溶性の原料を溶解させて水相とすることも出来る。
そして、この水相を殺菌することが好ましい。該殺菌方法及び条件、並びに殺菌の前後に行い得る均質化処理の方法及び条件は、上述と同様である。
また、本発明の改良剤の形態が顆粒状、あるいは粉末状の場合は、粉体混合用混合機を使用し、各原料を混合することによって得る方法や、各原料を含有する水溶液や懸濁液あるいは水中油型乳化物を製造後、スプレードライやフリーズドライ等により粉末化する方法を挙げることができる。
<本発明のベーカリー生地>
次に、本発明のベーカリー生地について説明する。
本発明のベーカリー生地は、本発明のベーカリー食品用食感改良剤を含有するものである。
本発明のベーカリー生地に含有される、本発明の改良剤の含有量は、ベーカリー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、本発明の難消化性グルカンが好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、さらに好ましくは0.035質量部以上となる量である。その上限は、好ましくは0.1質量部以下、0.15質量部以下、又は0.065質量部以下、より好ましくは0.055質量部以下、さらに好ましくは0.045質量部以下となる量である。したがって、一実施形態において、本発明の改良剤の含有量は、ベーカリー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、本発明の難消化性グルカンが好ましくは0.001~0.1質量部、0.001~0.15質量部、又は0.001~0.065質量部、より好ましくは0.015~0.055質量部、さらに好ましくは0.035~0.045質量部となる量である。
上記範囲となるように、本発明の改良剤を含有させることにより、ソフトでしっとりとし、口溶けや歯切れが良好なベーカリー食品が得られやすい他、ボリュームの大きなベーカリー食品が得られやすい。この理由は現時点で明確ではないが、本発明の改良剤を上記範囲で含有させ、本発明のベーカリー生地中のα1,6結合を有する糖鎖の量を増加させたことによるものと本発明者らは考えている。
なお、ベーカリー生地への本発明の改良剤の添加のタイミングは、例えば中種法でベーカリー生地を調製する場合、中種製造時に添加してもよく、本捏時に添加しても良いが、好ましくは本捏時に添加する。
本発明のベーカリー生地には、本発明の改良剤の他、その他原料として、穀粉類、イースト、酵素、糖類(例、上白糖)、甘味料、本発明の改良剤以外の食用油脂及び油脂組成物、卵類、乳や乳製品(例、脱脂粉乳)、水、食塩、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ナッツ類、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、酸化剤、還元剤、イーストフード、乳化剤、保存料、日持ち向上剤などを適宜用いることができる。
なお、上記穀粉類としては、小麦粉(例、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、穀粉類中、好ましくは小麦粉を50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは100質量%使用する。
本発明のベーカリー生地に含み得る、本発明の改良剤以外の食用油脂及び油脂組成物の例としては、ベーカリー生地の製造に通常し得る食用油脂及び油脂組成物を用いてよく、例えば、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、バター等の可塑性油脂組成物が挙げられる。
本発明のベーカリー生地では、上記のその他原料のうち、好ましくは酵素、より好ましくはアミラーゼを生地中に含有することで、ソフトでしっとりとし、口溶け・歯切れが一層良好なベーカリー食品を得ることができるため好ましい。
<本発明のベーカリー生地に含有されるアミラーゼ>
以下、本発明のベーカリー生地に含ませることが好ましい酵素について、その種類毎に詳述する。
<アミラーゼ>
アミラーゼは、澱粉を含めた多糖類や糖類が構造中に有するグリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、分解様式の違いにより分類された、エンド型アミラーゼやエキソ型アミラーゼ、又は、加水分解により生じる産生物により分類された、4糖生成アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼやグルコアミラーゼ等が挙げられる。
本発明のベーカリー生地においては、好ましい食感を得、且つ維持する観点から、好ましくは、α-1,4グルコシド結合を切断して、マルトテトラオースを生成する4糖生成アミラーゼ、又は、α-1,4グルコシド結合を切断して、マルトースを生成するマルトース生成アミラーゼの内から1種又は2種含有させ、より好ましくは4糖生成アミラーゼ及びマルトース生成アミラーゼを両方含有させる。
本発明のベーカリー生地においては、4糖生成アミラーゼ及びマルトース生成アミラーゼの群から選択される1種以上を含有することにより、ベーカリー生地の水分の経時的な逸失が発生しにくくなり、伴って経時的な老化現象が抑制されやすい。また、これに伴って、ソフトな食感と、歯切れ・口溶けとが両立されたベーカリー製品が得られやすい。
<4糖生成アミラーゼ>
本発明で用いられる、4糖生成アミラーゼとしては、澱粉を含めた多糖類や糖類中のα-1,4グルコシド結合をマルトテトラオース単位で切断する酵素であれば、特に限定されるものではなく、該酵素が含有される酵素製剤を使用することも出来る。
市販の4糖生成アミラーゼ酵素製剤としては、例えばPOWERFresh3000、POWERFresh 3050、POWERFresh 3150、POWERFresh 4150 (Danisco社)、デナベイク(登録商標)EXTRA(ナガセケムテックス社)が挙げられる。
なお、本発明で用いられる4糖生成アミラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることが出来る。
また、本発明で用いられる4糖生成アミラーゼの至適温度は、加熱処理に伴って生地中の澱粉がα化していく過程で作用することが好ましいため、好ましくは30~90℃であり、より好ましくは40~80℃であり、さらにより好ましくは45~75℃である。
本発明のベーカリー生地に4糖生成アミラーゼを含有させる場合、4糖生成アミラーゼの含有量は、本発明のベーカリー生地中の穀粉類100gに対して、好ましくは0.01単位以上であり、より好ましくは0.05単位以上であり、さらに好ましくは0.1単位以上である。その上限は、好ましくは2単位以下であり、より好ましくは1.2単位以下であり、さらに好ましくは1単位以下である。したがって、一実施形態において、4糖生成アミラーゼの含有量は、本発明のベーカリー生地中の穀粉類100gに対して、好ましくは0.01~2単位であり、より好ましくは0.05~1.2単位であり、さらに好ましくは0.1~1単位である。
本発明のベーカリー生地中の4糖生成アミラーゼの含有量を上記範囲とすることで、老化現象の抑制効果を十分に得ることが容易となり、最終的に得られるベーカリー製品において、過度にもっちりとしたり、べとついた食感となったりすることを防止できる。
なお、4糖生成アミラーゼの酵素活性は、例えば次のように測定することが出来る。本発明では、4糖生成アミラーゼの酵素活性は、下記条件で測定するとき、1分間に1μmolのブドウ糖に相当する還元力を生成する酵素量を1単位とする。
<本発明における、4糖生成アミラーゼの酵素活性の測定方法>
(検量線の準備)
410nmでの吸光度が0.2~1.6となるような酵素の希釈液を、濃度を変えて、少なくとも3点分用意する。
(測定試料の準備)
100mLのメスフラスコに酵素を0.5~10g測定し、ここに80mLのアッセイバッファー(*1)を加え、マグネティックスターラーを用いて30分撹拌する。この後、マグネティックスターラーを取り出して100mLとなるようにアッセイバッファーを加えて、これを測定試料とした。なお、調製した測定試料は濾過しない。
(測定試料の吸光度測定)
テストチューブに測定試料を50μL量り取った。基質液と測定試料を25℃で5分放置した。その後、基質液(*3)400μLを各テストチューブに量り取り、測定試料と軽く混合して、これを25℃で5分放置した。ここに、600μLの反応停止液(*2)を加えて混合し、反応停止液を加えてから1時間以内に410nmの吸光度を測定した。
(酵素活性の算出)
測定された吸光度を用いて、次式により酵素活性を算出した。
(酵素活性)={(R-sample ― ベータ-standard) ― D-sample}/(α-standard ― W-sample)
ただし、各代数、及び数値は以下を意味する。
α-standard:検量線の傾き
β-standard:検量線のY切片
D-sample:測定試料の希釈度
W-sample:測定試料の調製に用いた酵素の秤量値(g)
R-sample:測定試料の光学濃度
(*1)アッセイバッファー:1% BSA リンゴ酸塩緩衝液(pH5.60)
(*2)反応停止液:200mM ホウ酸塩溶液(pH10.2)
(*3)基質液:54.5mgのBPNPG7(Blocked p-Nitrophenyl―アルファーD-Maltoheptoside)、600単位のマルターゼ、200単位のグルコアミラーゼを秤量し、これを10.0mlのアッセイバッファーで希釈したもの。
<マルトース生成アミラーゼ>
本発明で用いることの出来るマルトース生成アミラーゼとしては、α-1,4グルコシド結合を切断してマルトースを生成する酵素であれば特に限定されるものではなく、市販のマルトース生成アミラーゼやβ-アミラーゼ等から選ばれた1種又は2種以上を選択することができるが、好ましくはマルトース生成αアミラーゼを使用する。
マルトース生成αアミラーゼ製剤としては、例えばNovamyl(登録商標)10000BG、Novamyl(登録商標)L、Novamyl(登録商標)3D、マルトゲナーゼ(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、コクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製)、グリンドアミル(登録商標)MAX-LIFE100(ダニスコジャパン社製)が挙げられる。
β-アミラーゼ製剤としては、例えば、オプチマルトBBA(ジェネンコア協和社製)、β-アミラーゼ#1500、β-アミラーゼL、β-アミラーゼ#1500S(以上、ナガセケムテックス社製)、ハイマルトシン(登録商標)G、ハイマルトシン(登録商標)GL(以上、エイチビィアイ社製)、ユニアーゼ(登録商標)L(ヤクルト薬品工業社製)、GODO-GBA(合同清酒社製)が挙げられる。
本発明においては、上記マルトース生成アミラーゼの中でも、酵素の至適温度が60℃以上である高温耐熱性マルトース生成アミラーゼが好ましい。高温耐熱性マルトース生成アミラーゼの至適温度は、好ましくは40~95℃、より好ましくは50~95℃、さらに好ましくは60~90℃である。
上記マルトース生成アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH)下において、マルトトリオースを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのマルトースを生成する酵素量を指標とすることができる。本発明においてマルトース生成アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とする。マルトースの測定は、「還元糖の定量法第2版」(福井作蔵著、学会出版センター)を参照して行うことができる。
本発明のベーカリー生地にマルトース生成アミラーゼを含有させる場合、その含有量は、本発明のベーカリー生地中の穀粉類100gに対して、好ましくは2単位以上であり、より好ましくは5単位以上であり、さらに好ましくは10単位以上である。その上限は、好ましくは40単位以下であり、より好ましくは35単位以下であり、さらに好ましくは25単位以下である。したがって、一実施形態において、マルトース生成アミラーゼの含有量は、本発明のベーカリー生地中の穀粉類100gに対して、好ましくは2~40単位であり、より好ましくは5~35単位であり、さらに好ましくは10~25単位である。
本発明のベーカリー生地中のマルトース生成アミラーゼの含有量が上記範囲であると、生成されるマルトース量が一定量以上であることによって、得られるベーカリー製品が、しっとりとソフトな食感になりやすく、くちゃついた食感となってしまうことを一層効果的に防止できるうえ、ベーカリー生地が一層べとつきにくくなり、扱いやすいものとなるため好ましい。
本発明のベーカリー生地では上記4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼとを共に含有することにより、ベーカリー製品の経時的な老化現象を一層抑制出来るうえ、ソフトさと、歯切れ・口溶けとを両立した良好な食感が一層維持されるため好ましい。
本発明のベーカリー生地において、4糖生成アミラーゼ及びマルトース生成アミラーゼを併用する場合は、マルトース生成アミラーゼの含有量は、本発明の改良剤中、4糖生成アミラーゼ1単位に対して、好ましくは5単位以上であり、より好ましくは15単位以上であり、さらに好ましくは20単位以上である。その上限は、好ましくは55単位以下、又は40単位以下であり、より好ましくは35単位以下であり、さらに好ましくは30単位以下である。好ましくは5~55単位、又は5~40単位であり、より好ましくは15~35単位であり、さらに好ましくは20~30単位である。
<本発明のベーカリー生地に含有されるその他酵素>
本発明のベーカリー生地は、上記の4糖生成アミラーゼや、マルトース生成アミラーゼの他にも、製パン改良効果を有する酵素を含有させることが可能である。例えば4糖生成アミラーゼやマルトース生成アミラーゼ以外のアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等のグルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素が挙げられるが、本発明の改良剤の製パン改良効果を損ねずに、ベーカリー食品の食感を一層向上することが出来る点から、グルカナーゼが好ましく、ヘミセルラーゼを含有させることがより好ましい。
なお、勿論、各種酵素製剤を用いることができ、酵素製剤を用いる場合には、製剤中の酵素含有量を勘案して、本発明のベーカリー生地中で下記範囲となるように添加量を調整する。
<ヘミセルラーゼ>
ヘミセルラーゼとはヘミセルロースを基質として加水分解する酵素の総称である。
ヘミセルラーゼを用いることで、歯切れやボリュームが向上したベーカリー製品を生地物性の悪化を抑制しつつ得ることができる。
本発明のベーカリー生地に用いることができるヘミセルラーゼを含む酵素剤が各種市販されており、例えば、ベイクザイムBXP5001BG、ベイクザイムHS2000、ベイクザイムIConc(DSMフードスペシャリティーズ社(又はディー・エス・エムジャパン(株)));ヘミセルラーゼ アマノ(天野製薬株式会社);「エンチロンLQ」(洛東化成工業社);ヘミセルラーゼM(エイチビィアイ社);スミチーム(登録商標)X(新日本化学工業社)が挙げられる。
本発明では、上記ヘミセルラーゼの中でも、よりべたつきが少ないベーカリー生地が得られる点で、アラビノキシランを主基質とし、且つ、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上であるヘミセルラーゼを使用することが好ましい。
上記の条件を好ましく満たすヘミセルラーゼとしては、ベイクザイムBXP5001BGが挙げられる。
本発明のベーカリー生地にヘミセルラーゼを含有させる場合、その含有量は、アラビノキシランを基質とした場合の酵素活性が、本発明のベーカリー生地の穀粉類100gに対して、好ましくは3単位以上、より好ましくは4単位以上、さらに好ましくは5単位以上となる量である。その上限は、好ましくは35単位以下、より好ましくは30単位以下、さらに好ましくは20単位以下となる量である。したがって、一実施形態において、ヘミセルラーゼ含有量は、アラビノキシランを基質とした場合の酵素活性が、好ましくは3~35単位、より好ましくは4~30単位、さらに好ましくは5~20単位となる量である。
ヘミセルラーゼの含有量が上記範囲内であるとベーカリー生地が一層べたつきにくくなり、また、口溶けや歯切れが一層良好なベーカリー食品が得られやすいため好ましい。
なお、本発明のベーカリー生地に用いられるヘミセルラーゼのアラビノキシランを基質とした場合の酵素活性は、例えば特開2017-108690号公報、特開2017-189131号公報等に記載されている手法で測定することができる。
本発明のベーカリー生地に、酵素を含有させる方法としては、ベーカリー生地に対して直接添加してもよく、上記本発明の改良剤の原料の一として含有させて添加してもよく、また水溶液や油脂組成物の形態で添加してもよい。なお、例えば中種法でベーカリー生地を製造する場合に、本捏工程時に本発明の難消化性グルカンと酵素とを事前に均一に混合したものをベーカリー生地中に含有させてもよく、本発明の難消化性グルカンを添加した後に酵素を添加しても、酵素を添加した後に本発明の難消化性グルカンを添加してもよいが、難消化性グルカンと、酵素とが、同じタイミングでベーカリー生地に含有されることが好ましく、本発明の難消化性グルカンと酵素を事前に均一に混合したものを用いることがより好ましい。
本発明の改良剤が油脂組成物の形態で、本発明の難消化性グルカンとアミラーゼ等の酵素とを含有する場合、酵素の油脂組成物への添加方法に制限はない。例えば油脂組成物が水相を有する場合、油相に添加してもよく、水相に添加してもよく、難消化性グルカンを含有する油脂組成物に対して酵素を混合する手法により添加してもよい。
本発明のベーカリー食品用食感改良剤が原料の一つとして、4糖生成アミラーゼを含有する場合は、その含有量は、本発明の改良剤中に含まれる本発明の難消化性グルカン1gに対して、好ましくは0.1単位以上、より好ましくは1単位以上、さらに好ましくは5単位以上となる量である。その上限は、好ましくは50単位以下、より好ましくは30単位以下、さらに好ましくは15単位以下となる量である。したがって、一実施形態において、4糖生成アミラーゼの含有量は、本発明の改良剤中に含まれる本発明の難消化性グルカン1gに対して、好ましくは0.1~50単位、より好ましくは1~30単位、さらに好ましくは5~15単位となる量である。
本発明の改良剤が原料の一として、マルトース生成アミラーゼを含有する場合は、その含有量は、本発明の改良剤中に含まれる本発明の難消化性グルカン1gに対して、好ましくは100単位以上、より好ましくは150単位以上、さらに好ましくは200単位以上となる量である。その上限は、好ましくは500単位以下、より好ましくは400単位以下、さらに好ましくは300単位以下となる量である。したがって、一実施形態において、マルトース生成アミラーゼの含有量は、本発明の改良剤中に含まれる本発明の難消化性グルカン1gに対して、好ましくは70~500単位、100~500単位、より好ましくは150~400単位、さらに好ましくは200~300単位となる量である。
本発明の改良剤において、4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼとを併用する場合は、マルトース生成アミラーゼの含有量は、本発明の改良剤中、4糖生成アミラーゼ1単位に対して、好ましくは5単位以上であり、より好ましくは15単位以上であり、さらに好ましくは20単位以上である。その上限は、好ましくは55単位以下又は40単位以下であり、より好ましくは35単位以下であり、さらに好ましくは30単位以下である。したがって、一実施形態において、マルトース生成アミラーゼの含有量は、本発明の改良剤中、4糖生成アミラーゼ1単位に対して、好ましくは5~55単位又は5~40単位であり、より好ましくは15~35単位であり、さらに好ましくは20~30単位である。
4糖生成アミラーゼとマルトース生成アミラーゼとの含有量の比率を上記範囲とすることで、得られるベーカリー製品が、しっとりとソフトな食感になりやすく、過度にもっちりとしたり、くちゃついた食感となってしまうことを一層効果的に防止できる上、ベーカリー生地が一層べとつきにくくなり、扱いやすいものとなる。
なお、本発明のベーカリー食品用食感改良剤が原料の一として、ヘミセルラーゼを含有する場合には、その含有量は、本発明の改良剤中に含まれる本発明の難消化性グルカン1gに対して、好ましくは50単位以上、より好ましくは100単位以上、さらに好ましくは200単位以上となる量である。その上限は、好ましくは1200単位以下、より好ましくは900単位以下、さらに好ましくは500単位以下となる量である。したがって、一実施形態において、ヘミセルラーゼの含有量は、本発明の改良剤中に含まれる本発明の難消化性グルカン1gに対して、好ましくは20~1200単位、50~1200単位、より好ましくは100~900単位、さらに好ましくは200~500単位となる量である。
ヘミセルラーゼの含有量が上記範囲内であるとベーカリー生地が一層べたつきにくくなり、また、口溶けや歯切れが一層良好なベーカリー食品が得られやすいため好ましい。
また、ベーカリー生地への酵素を含有させるタイミングは、いずれの含有方法であっても、例えば中種法でベーカリー生地を調製する場合において、中種製造時に添加してもよく、本捏時に添加しても良いが、中種製造時に添加するとベーカリー生地がべたついたり、ダレたりする場合があるため、好ましくは本捏時に添加する。伴って、本発明のベーカリー食品用食感改良剤は、本捏時に添加するのが好ましい。
<本発明のベーカリー生地の製造方法、及び種類>
本発明のベーカリー生地は、速成法、ストレート法、中種法、液種法、サワー種法、酒種法、ホップ種法、中麺法、チョリーウッド法、連続製パン法、冷蔵生地法、冷凍生地法等の製パン法や、別立て法、後粉法、後油法、フラワーバッター法、シュガーバッター法、オールインミックス法等の焼菓子生地の製造方法を、製造するベーカリー食品の種類に応じて適宜選択して製造することができる。通常のベーカリー生地を調製する際と同様に、フロアータイム、分割、ベンチタイム、成形、ホイロ等の工程をとることも出来る。焼成前までの各種工程における生地の処理温度は特に限定されないが、好ましくは20~50℃である。なお、得られた本発明のベーカリー生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
また、本発明のベーカリー生地の種類は特に限定されず、例えば、食パン生地、菓子パン生地、バターロール生地、バラエティブレッド生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、ペストリー生地等のパン生地類、パイ生地、シュー生地、ドーナツ生地、ケーキ生地、クッキー生地、ハードビスケット生地、ワッフル生地、スコーン生地等の焼菓子生地類等の、ベーカリー生地を挙げることができる。好ましくはパン生地類を選択することで、本発明の食感改良効果をより顕著に得られる。
<本発明のベーカリー食品>
次に、本発明のベーカリー食品について述べる。
本発明のベーカリー食品は、上記ベーカリー生地を加熱処理することにより、得られる。
該加熱処理としては特に限定されず、例えば、ベーカリー生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、茹でたり、電子レンジ等でマイクロ波を照射したりすることが挙げられる。また、得られた本発明のベーカリー食品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジやトースター等で再加熱することも可能である。
<本発明の食感改良方法>
次に、本発明の食感改良方法について述べる。
本発明の食感改良方法は、難消化性グルカンをベーカリー生地に含有させることを含む。すなわち、ベーカリー生地の製造時に、上述した、本発明の難消化性グルカンを添加することを特徴とするものである。本発明の食感改良方法は、難消化性グルカンそのものをベーカリー生地に含有させて行ってもよく、本発明のベーカリー食品用食感改良剤をベーカリー生地に含有させて行ってもよい。
なお、本発明の食感改良方法において、ベーカリー生地に含有される穀粉類100質量部に対して、本発明の難消化性グルカンが好ましくは0.001~0.065質量部の範囲、又は0.001~0.15質量部の範囲、より好ましくは0.015~0.055質量部の範囲、さらに好ましくは0.035~0.045質量部の範囲となるように、難消化性グルカン乃至本発明の改良剤をベーカリー生地に含有させる。
本発明の食感改良方法により、ソフトでしっとりとした食感を有するベーカリー食品を得ることができる。また、好適な条件を満たすことで歯切れが良好なベーカリー食品とすることも出来る上、べたつきが抑制され、作業が行いやすく、扱いやすいベーカリー生地が得られる。
本発明の食感改良方法が適用されるベーカリー生地は、例えば上記の生地の中から選択してもよく、特に限定されるものではない。なお、ベーカリー生地への添加の方法は上述の通りである。
本発明について、実施例に基づきさらに詳述する。
なお、以下では、ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部と、パーム油5質量部を、それぞれ60℃に加熱し、溶解・混合したものを、単に「油脂配合物」と記載する場合がある。また、油脂配合物を常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化して得られたショートニングを、単に「ショートニング」と記載する場合がある。
なお、上記油脂配合物の25℃におけるSFCは11.3%である。
<検討1>
検討1では、さまざまな食物繊維を用いて、ベーカリー食品である食パンを製造し、比較検討を行った。
(実施例1-1)
難消化性グルカンである「フィットファイバー(登録商標)#80」(日本食品化工株式会社製、重量平均分子量2000、固形分72.0%以上、難消化性グルカン量(食物繊維含有量):固形分中75%以上、液状)を、そのまま本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1とした。
(実施例1-2)
難消化性グルカン還元処理物である「フィットファイバー(登録商標)#80H」(日本食品化工株式会社製、重量平均分子量2000、固形分70.0%以上、食物繊維含有量:固形分中75%以上、液状)を、そのまま本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-2とした。
(比較例1-1)
難消化性デキストリンである「ファイバーソル(登録商標)2」(松谷化学工業株式会社製、重量平均分子量2910)を、そのままベーカリー食品用食感改良剤Cex1-1とした。
(比較例1-2)
イヌリンである「オラフティGR」(Beneo-Orafti S.a.社製、重量平均分子量2950)を、そのままベーカリー食品用食感改良剤Cex1-2とした。
(比較例1-3)
ポリデキストロースである「ライテスII」(ダニスコジャパン社製、重量平均分子量1560)を、そのままベーカリー食品用食感改良剤Cex1-3とした。
(比較例1-4)
デキストリンである「パインデックス(登録商標)#2」(松谷化学工業社製、重量平均分子量1700)を、そのままベーカリー食品用食感改良剤Cex1-4とした。
なお、実施例で用いた難消化性グルカン及び難消化性グルカン還元処理物は、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率が18~25%の範囲を満たし、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率が5~15%の範囲を満たす。難消化性グルカンの構成糖残基における、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の量に対する、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の存在比は、1.5~2.1の範囲を満たす。実施例で用いた難消化性グルカン及び難消化性グルカン還元処理物の構成糖残基組成は、上述のメチル化分析により測定した。
(プルマン型食パンの製造方法)
表1の配合に基づき、以下のとおり、プルマン型食パンの製造を行った。
〔中種工程〕
強力粉、生イースト、イーストフード、及び水をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。
この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。
〔本捏工程〕
中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉、上白糖、脱脂粉乳、食塩、水、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1~1-2、ベーカリー食品用食感改良剤Cex1-1~1-4のいずれか1つとショートニングを添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングし、食パン生地Ex1-1~1-2、Cex1-1~1-4を得た。
得られた食パン生地の捏上温度は28℃であった。なお、得られた食パン生地と用いたベーカリー食品用食感改良剤のナンバリングは対応するものであり、以下得られるベーカリー食品についても同様である。
ここで、フロアータイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンEx1-1~1-2、Cex1-1~1-4を得た。
なお、ベーカリー食品用食感改良剤を含まない以外はプルマン型食パンEx1-1と同様にして製造した食パン生地、及び該生地を焼成したものをコントロール(以下、「Cont.」と記載する。)とした。
得られた食パン生地Ex1-1~1-2、Cex1-1~1-4、コントロールの生地作業性については、上記作業中に下記評価基準に則って評価した。また、得られたプルマン型食パンEx1-1~1-2、Cex1-1~1-4、コントロールについては、焼成した後24時間常温で保存したものを、以下の評価基準で評価した。評価結果は表2に示した。
[評価基準]
下記評価基準に則って、5名の専門パネラーによって採点した。なお、集計した結果が25~23点である場合は+++、22~20点である場合は++、19~17点である場合は+、16~14点である場合は±、13~11点である場合は-、10~8点である場合は--、7点以下の場合は---として評価表中に表し、食感(ソフト性)と食感(しっとり感)がいずれも±以上の評価となったものを合格品とした。
評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
●食感(ソフト性)
5点:極めて良好
4点:良好
3点:やや良好
2点:やや悪い
1点:悪い
●食感(しっとり感)
5点:極めて良好
4点:良好
3点:やや良好
2点:ややぱさついた感じである、又はやや粘る感じである
1点:乾いた食感である
●食感(口溶け・歯切れ)
5点:歯切れが極めて良好
4点:歯切れが良好
3点:やや重たい食感であるが、歯切れが良好
2点:くちゃつく、又は、ひきが感じられる
1点:くちゃつきが激しい、又は、ひきが強い
●生地作業性
5点:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった
4点:良好な作業性であった
3点:わずかにべとつきが感じられるか又はわずかに伸展性が悪く感じられるが、良好な作業性であった
2点:ややべとつきが感じられるか又はやや伸展性が悪く、作業性が若干劣るものであった
1点:べとつきがあるか又は伸展性が悪く、作業性が劣るものであった
Figure 2024124341000001
Figure 2024124341000002
難消化性グルカン以外の食物繊維を用いたベーカリー食品用食感改良剤Cex1-1~1-4を含有する食パンはいずれも、食感及び生地作業性の評価が、食感改良剤を含まないコントロールの食パンと比較して同程度、又はそれ以下であった。
難消化性グルカンを用いた本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1及び1-2は、いずれも、食感の評価がコントロールと比較して向上しており、生地作業性の評価も良好であった。
したがって、ソフト性、しっとり感、口溶け・歯切れの向上効果を得るためには、難消化性グルカンを用いる必要があることが知得された。また、これにより、食パン生地の生地作業性が良好となることが明らかとなった。
<検討2>
検討2では、検討1で評価の高かった、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を用いて、本発明のベーカリー食品用食感改良剤の好適な添加量範囲について検討を行った。
評価は表3の配合を基に、検討1と同様の方法で、プルマン型食パンEx2-1~2-5を製造し、上記評価基準に沿って評価を行った。
評価結果は表4に示す。
Figure 2024124341000003
Figure 2024124341000004
Ex1-1、及びEx2-1~2-5のプルマン型食パンは、いずれも食感及び生地作業性が良好であった。なかでも、Ex1-1及びEx2-4はソフト性及びしっとり感の食感に優れ、Ex1-1及びEx2-3は口溶け・歯切れの食感、及び生地作業性に優れていた。
したがって、本発明のベーカリー食品用改良剤の食品中の含有量を調整することにより、ソフト性、しっとり感、口溶け・歯切れの向上効果、及び、生地作業性をバランスよく発揮し得ることが明らかとなった。
<検討3>
検討3では、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を用いて、連続相を油相とする本発明のベーカリー食品用食感改良剤について検討を行った。
(実施例3-1)
60℃となるように加熱された油脂配合物84.4質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を0.3質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-1を得た。
(実施例3-2)
60℃となるように加熱された油脂配合物84.0質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を0.7質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-2を得た。
(実施例3-3)
60℃となるように加熱された油脂配合物83.7質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を1.0質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-3を得た。
(実施例3-4)
60℃となるように加熱された油脂配合物83.4質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を1.3質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-4を得た。
(実施例3-5)
60℃となるように加熱された油脂配合物83.1質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を1.6質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-5を得た。
(実施例3-6)
60℃となるように加熱された油脂配合物82.7質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を2.0質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-6を得た。
(実施例3-7)
60℃となるように加熱された油脂配合物81.7質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を3.0質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-7を得た。
評価は表5の配合を基に、検討1と同様の方法で、プルマン型食パンEx3-1~3-7を製造し、上記評価基準に沿って評価を行った。
評価結果は表6に示す。
Figure 2024124341000005
Figure 2024124341000006
連続相を油相とする本発明のベーカリー食品用食感改良剤を含有するプルマン型食パンEx3-1~3-7はいずれも、ソフト性及びしっとり感の食感が優れていた。これらのうち、難消化性グルカンを、検討2において食感及び生地作業性の評価が最も高評価であったEx1-1と同程度含有するEx3-4においては、食感及び生地作業性のいずれも特に優れていた。
したがって、連続相を油相とする本発明のベーカリー食品用食感改良剤をベーカリー生地に含有させる際には、ベーカリー生地中の難消化性グルカンの含有量を調整することで本発明の効果を好適に発揮し得ることが知得された。
<検討4>
検討4では、難消化性グルカンとアミラーゼとの併用効果について、検討を行った。
具体的には、プルマン型食パンEx4-1~4-10、Cex4-1は表7の配合を採用した以外、検討1と同様に製造した。
なお、プルマン型食パンEx4-10に用いた本発明のベーカリー食品用食感改良剤αは、以下のとおり製造したものを用いた。
(ベーカリー食品用食感改良剤αの製造方法)
60℃となるように加熱された油脂配合物83.4質量部に蛋白質濃縮ホエイ1.1質量部を溶解させ、これを油相とした。他方、60℃となるように加熱された水14.2質量部に、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex1-1を4質量部だけ添加・混合し、これを水相とした。
この油相と水相を混合乳化(60℃)して油中水型の予備乳化物とし、この予備乳化物を-5℃/分の冷却速度で10℃まで急冷可塑化して、油中水型の可塑性油脂組成物である、本発明のベーカリー食品用食感改良剤αを得た。
また、2種のアミラーゼ及びヘミセルラーゼは、表7記載の単位数となる量を、本発明のベーカリー食品用食感改良剤Ex3-4、又は本発明のベーカリー食品用食感改良剤αと、ショートニングとを前もって混合し、この混合物を、本捏工程で強力粉を加えるタイミングでベーカリー生地に添加・混合した。なお、表7記載のへミセルラーゼは、分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシランが10以上の条件を満たす。
得られたプルマン型食パンは検討1と同様に評価を行った。なお、表7記載の酵素の単位数は、ベーカリー生地中の穀粉100gに対する量である。これらの評価結果を表8に示した。
Figure 2024124341000007
Figure 2024124341000008
4糖生成アミラーゼを含有するものの、本発明のベーカリー食品用食感改良剤を含有しないCex4-1においては、しっとり感及び口溶け・歯切れの食感が劣っていた。
これに対し、本発明のベーカリー食品用食感改良剤と、4糖生アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、及びへミセルラーゼのうち1以上の酵素とを含有するプルマン型食パンEx4-1~4-10はいずれも食感及び生地作業性が良好であった。また、4糖生アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、及びへミセルラーゼを併用するEx4-7~4-10はよりいっそう食感及び生地作業性が向上していた。
したがって、本発明のベーカリー食品用食感改良剤と、アミラーゼ及びグルカナーゼとの組み合わせにより、本発明の効果がよりいっそう好ましく得られることが知得された。

Claims (9)

  1. 難消化性グルカンを含む、ベーカリー食品用食感改良剤。
  2. 難消化性グルカンの重量平均分子量が1500~3000である、請求項1記載のベーカリー食品用食感改良剤。
  3. 油相を連続相とする、請求項1又は2記載のベーカリー食品用食感改良剤。
  4. 請求項1記載のベーカリー食品用食感改良剤を含有する、ベーカリー生地。
  5. 請求項1記載のベーカリー食品用食感改良剤とアミラーゼとを含有する、ベーカリー生地。
  6. ベーカリー食品用食感改良剤を、ベーカリー生地中の穀粉類100質量部に対し、難消化性グルカンの含有量が0.001~0.15質量部となる量で含む、請求項4記載のベーカリー生地。
  7. さらに、グルカナーゼを含有する、請求項5記載のベーカリー生地。
  8. 請求項4又は5記載のベーカリー生地の加熱処理品である、ベーカリー食品。
  9. 難消化性グルカンをベーカリー生地に含有させることを含む、ベーカリー食品の食感改良方法。
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