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JP2023151666A - ポリアミック酸組成物 - Google Patents

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JP2023151666A
JP2023151666A JP2022061408A JP2022061408A JP2023151666A JP 2023151666 A JP2023151666 A JP 2023151666A JP 2022061408 A JP2022061408 A JP 2022061408A JP 2022061408 A JP2022061408 A JP 2022061408A JP 2023151666 A JP2023151666 A JP 2023151666A
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lithium
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JP2022061408A
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剛 宮本
Takeshi Miyamoto
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Osaka Soda Co Ltd
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Osaka Soda Co Ltd
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Abstract

【課題】成膜性に優れ、かつ、環境負荷の小さい水を主たる溶媒としたポリアミック酸組成物を提供することを目的とする。【解決手段】テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を縮合してなるポリアミック酸、リチウム塩化合物、水、または、水と水溶性エーテル系溶媒、水溶性ケトン系溶媒、および水溶性アルコール系溶媒から選択される1種以上の有機溶媒が溶解している水を主とした混合溶媒とを少なくとも含むポリアミック酸組成物が成膜性に優れることを見出した。【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性ポリアミック酸組成物に関する。
ポリイミド樹脂は、高耐久性、耐熱性に優れた特性を有する材料であり、特に電子材料用途に広く使用されている。ポリイミド樹脂の成形体を製造方法には、その前駆体であるポリアミック酸を、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン系極性溶媒に溶解したポリアミック酸組成物を基材上に塗布して、熱処理によって、乾燥・イミド化することでポリイミド成形体を製造する方法が知られている(特許文献1)。
このポリアミック酸を溶解する溶媒には、前記N-メチル-2-ピロリドンの他、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる(非特許文献1参照)。
一方、水溶性アルコール系溶媒化合物および/または水溶性エーテル系溶媒化合物を用いて、具体的には、テトラヒドロフランおよびメタノールの混合溶媒中、またはテトラヒドロフランおよび水の混合溶媒中の反応系に3級アミンを添加することで、析出させないでポリアミック酸組成物を得ることが知られている(特許文献2)。
アミン化合物として特定構造のイミダゾールの共存下、水中でポリアミック酸を重合して水系ポリアミック酸組成物を得ることも知られている(特許文献3)。
しかしながら、特許文献1や非特許文献1のように、N-メチル-2-ピロリドンに代表される非プロトン系極性溶媒は、沸点が150℃以上と高く、ポリイミド成形体の製造における乾燥工程後も、組成物中の溶媒が成形体中に残留することが多い。この非プロトン系極性溶媒が、ポリイミド成形体中に残留すると、ポリアミック酸の高分子鎖の再配向を引き起こし、高分子鎖のパッキング性を損なうため、得られるポリイミド成形体の機械的強度の低下を引き起こすことがある。
また、特許文献2や特許文献3のように、反応系にアミン化合物を添加してポリアミック酸のカルボキシル基をイオン化させて溶媒に溶解させる方法は、アミン化合物特有の臭気により作業環境等に悪影響を及ぼす可能性がある。
米国特許第4238528号公報 特開平08-157599号公報 特開2012-036382号公報
Journal of Polymer Science. Macromolecular Reviews, Vol.11, P164(1976)
本発明の課題は、成膜性に優れ、かつ、環境負荷の小さい水を主たる溶媒としたポリアミック酸組成物を提供することである。
すなわち、本発明は、以下の態様に示す発明を提供する。
項1 テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を縮合してなるポリアミック酸、リチウム塩化合物、水、または、水と水溶性エーテル系溶媒、水溶性ケトン系溶媒、および水溶性アルコール系溶媒から選択される1種以上の有機溶媒が溶解している水を主とした混合溶媒とを少なくとも含むポリアミック酸組成物であり、リチウム塩化合物がポリアミック酸に対して1.5モル当量~15モル当量含まれることを特徴とするポリアミック酸組成物
項2 テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を縮合してなる下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂が、リチウムイオンを含む水溶媒、または、リチウムイオンを含む水溶媒に、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶媒、および、水溶性アルコール系溶媒から選択される少なくとも1種以上が溶解している水を主とした混合溶媒に溶解しているポリアミック酸組成物
Figure 2023151666000001

(一般式(1)中、Aがテトラカルボン酸二無水物のカルボキシル基を除く残基、Bがジアミン化合物のアミノ基を除く残基を示す。また、Xは水素またはリチウムであり、一部もしくは全部が置換されていてもよい)
項3 前記一般式(1)中、Xのリチウム置換率が75モル%~100モル%であることを特徴する項2に記載のポリアミック酸組成物
項4 前記テトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、前記ジアミン化合物が芳香族ジアミン化合物である項1~3のいずれかに記載のポリアミック酸組成物
項5 前記水が、全溶媒に対して30質量%以上99.9質量%以下で含有することを特徴とする項1~4のいずれかに記載のポリアミック酸組成物
本発明によれば、成膜性に優れ、かつ、ポリアミック酸組成物を構成する主たる溶媒を水とすることによって、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン系極性溶媒を含む場合に比べ、環境負荷が小さく、加工時にエネルギーの少ないポリイミド成形体が得られるポリアミック酸組成物が提供できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<ポリアミック酸組成物>
本発明のポリアミック酸組成物は、テトラカルボン酸二無水和物とジアミン化合物との縮合により得られる樹脂(以下、ポリアミック酸とする)が、リチウム塩化合物を含む水溶媒、または、リチウム塩化合物を含む水溶媒に、水溶性エーテル系溶媒、水溶性ケトン系溶媒、および水溶性アルコール系溶媒から選択される1種以上の有機溶媒が溶解している水を主とした混合溶媒に溶解したものである。なお、水溶性エーテル系溶媒、水溶性ケトン系溶媒、および水溶性アルコール系溶媒のことをまとめて特定有機溶媒と称することもある。
(ポリアミック酸)
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水和物とジアミン化合物との縮合により得られる樹脂である。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾエノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であることがより好ましく、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることさらに好ましい。なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物が挙げられる。芳香族系ジアミン化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)-ビフェニル、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン化合物、ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン化合物などが挙げられる。脂肪族系ジアミン化合物としては、1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]-ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンなどが挙げられる。
これらの中でも、芳香族系ジアミン化合物も用いることがより好ましく、具体的には、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォンがよく、特に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミンがよい。なお、ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、または脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
-ポリアミック酸の末端アミノ基-
本発明にかかるポリアミック酸は、末端にアミノ基を有するポリアミック酸を含むことが好ましく、すべての末端にアミノ基を有するポリアミック酸とすることがより好ましい。
ポリアミック酸の分子両末端にアミノ基を持たせるには、例えば、重合反応の際に使用するジアミン化合物のモル当量を、テトラカルボン酸二無水物のモル当量より過剰に添加することで実現される。ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とのモル当量の比(以下、モル比と呼ぶことがある)は、テトラカルボン酸二無水物のモル当量をジアミン化合物のモル当量で除して表すことができ、0.90以上0.999以下の範囲とすることが好ましく、0.95以上0.99以下とすることがより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル比が0.90以上0.999以下であれば、分子末端のアミノ基の効果が大きく、良好な分散性が得られる。また、モル比が0.95以上であれば、得られるポリアミック酸の分子量が大きく、例えば、フィルム状のポリイミド成形体としたときに、十分なフィルム強度(引裂き強度、引張り強度)が得られ易い。
ポリアミック酸の末端アミノ基は、ポリアミック酸組成物にトリフルオロ酢酸無水物(アミノ基に対して定量的に反応)を作用させることによって検出される。すなわち、ポリアミック酸の末端アミノ基をトリフルオロ酢酸にてアミド化した後、処理したポリアミック酸を再沈殿などで精製して過剰のトリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸残渣を除去する。処理後のポリアミック酸について、核磁気共鳴(NMR)法によってフッ素含有率を定量することで、ポリアミック酸の末端アミノ基量を測定する。
本発明におけるポリアミック酸の数平均分子量は、1000以上100000以下であることが好ましく、5000以上50000以下であることがより好ましく、10000以上30000以下であることがさらに好ましい。ポリアミック酸の数平均分子量を上記範囲とすると、ポリアミック酸の溶媒に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。なお、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル比を、調整することで、目的する数平均分子量のポリアミック酸が得られる。
ポリアミック酸の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法などで測定することができる。
ポリアミック酸の含有量(濃度)は、全ポリアミック酸組成物に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上20重量%以下であることがさらに好ましい。
(リチウム塩化合物)
リチウム塩化合物は、ポリアミック酸のカルボキシル基をリチウム塩化して、その溶媒に対する溶解性を高め、溶液の安定化に寄与する。なお、本発明にかかるリチウム塩化合物は、水溶性の化合物であることが好ましい。ここで、水溶性とは、25℃において、リチウム塩が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。リチウム塩化合物としては、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、炭酸リチウムなどが挙げられる。これらの中でも、炭酸リチウム、塩化リチウムが好適に使用できる。
リチウム塩化合物の使用量としては、ポリアミック酸に対してリチウム塩として、1.5モル当量以上であることが好ましく、1.7モル当量以上であることがより好ましく、1.9モル当量以上であることがさらに好ましい。一方、ポリイミド成形体製造時に不具合を起こさない範囲であれば特に制限されないが、例えば、15モル当量以下であることが好ましく、13モル当量以下であることがより好ましく、10モル当量以下であることがさらに好ましく、7モル当量以下であることが特に好ましく、5モル当量以下であることがことさらに好ましい。
また、本発明のポリアミック酸は、ポリアミック酸組成物中に存在するリチウムイオンによってポリアミック酸のカルボキシル基の一部または全部がリチウム塩化することによって下記一般式(1)に示される繰り返し単位を有する。この置換が進むことによってポリアミック酸に水溶性が付与される。なお、ポリアミック酸組成物中に含まれるリチウムイオンによってポリアミック酸のカルボキシル基の水素がリチウムへの置換が当量的に行われており、下記一般式(1)中のカルボキシル基に対するリチウムイオンの添加率がリチウム置換率とすることができる。
Figure 2023151666000002
(一般式(1)中、Aがテトラカルボン酸二無水物のカルボキシル基を除く残基、Bがジアミン化合物のアミノ基を除く残基を示す。また、Xは水素またはリチウムであり、一部もしくは全部が置換されていてもよい)
一般式(1)に示されるXのリチウム置換率は、75モル%~100モル%であることが好ましく、80モル%~100モル%であることがより好ましい。置換率が低すぎると水溶性が付与されず、均一の水溶液が得られない。リチウム塩化合物の添加量によって表記上リチウム置換率が100モル%を超えても問題はなく、置換率の上限は100モル%である。
(溶媒)
本発明のポリアミック酸組成物を構成する溶媒としては、水単独溶媒、または、水と特定有機溶媒との混合溶媒が適用される。本発明に使用される特定有機溶媒とは、水溶性エーテル系溶媒、水溶性ケトン系溶媒、および水溶性アルコール系溶媒のことを指し、この特定有機溶媒から選択される1種以上の有機溶媒を使用することができる。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。なお、ポリアミック酸組成物を構成する溶媒すべてをまとめて全溶媒とも呼ぶこともある。
特定有機溶媒は、沸点が160℃以下であることがよく、望ましくは40℃以上150℃以下、より望ましくは50℃以上120℃以下である。特定有機溶媒の沸点を上記範囲とすると、特定有機溶媒がポリイミド成形体に残留し難くなり、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られ易くなる。
水溶性エーテル系溶媒は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶媒であり、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンが望ましい。
水溶性ケトン系溶媒は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶媒であり、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶媒としては、アセトンが望ましい。
水溶性アルコール系溶媒は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶媒であり、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、グリセリン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロピパノール、エチレングリコールが望ましい。
混合溶媒の組合せとしては、例えば、水溶性エーテル系溶媒と水との組合せ、水溶性ケトン系溶媒と水との組合せがより好ましい。また、本発明に使用される有機溶媒は、1種単独で用いてもよいが、2種以上併用する場合、例えば、水溶性エーテル系溶媒と水溶性アルコール系溶媒との組合せ、水溶性ケトン系溶媒と水溶性アルコール系溶媒との組合せ、水溶性エーテル系溶媒と水溶性ケトン系溶媒と水溶性アルコール系溶媒とのとの組合せが挙げられる。
本発明のポリアミック酸組成物の溶媒として用いる水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外ろ過水、純水等が挙げられる。
水は、全溶媒に対して30質量%以上99.9質量%以下で含有することが好ましく、50質量%以上99.9質量以下であることがより好ましく、80質量%以上99.9質量%以下であることがさらに好ましい。なお、溶媒には、全溶媒の水を除いた残部として特定有機溶媒が含まれる。水の含有量を上記範囲とすると、リチウム塩化したポリアミック酸の溶媒に対する溶解性が上がり、製膜性が向上する。なお、全溶媒とは、本発明のポリアミック酸組成物を構成する溶媒すべてをまとめた総称である。
本発明において、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、N-アセチル-2-ピロリドン等の非プロトン系極性溶媒は使用しない。これらの非プロトン性極性溶媒は沸点150℃以上と高く、ポリイミド成形体の製造における乾燥工程後も、組成物中の溶媒が成形体中に残留することが多い。非プロトン系極性溶媒が、ポリイミド成形体中に残留すると、ポリアミック酸の高分子鎖の再配向を引き起こし、高分子鎖のパッキング性を損なうため、得られるポリイミド成形体の機械的強度の低下を引き起こすことがある。
これに対して、本発明のポリアミック酸組成物では、溶媒として、水または水と特定有機溶媒とを含む混合溶媒を適用するため、乾燥工程後の成形体中に溶媒の残留がないため、機械的強度などが低下する懸念を抑えることができる。
ここで、ポリアミック酸が溶媒に溶解する範囲は、水の含有率、リチウム塩化合物の種類・量によって制御される。水の含有率の低い範囲では、リチウム塩化合物の添加量が少ない領域でポリアミック酸は溶解し易くなる。逆に、水の含有率の高い範囲では、リチウム塩化合物の添加量が多い領域でポリアミック酸は溶解し易くなる。
(その他の添加剤)
本発明のポリアミック酸組成物は、これを用いて製造するポリイミド成形体に導電性や、機械強度などの各種機能を付与することを目的として、各種フィラーなどを含んでもよいし、また、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
導電性付与のため添加される導電材料としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)のものが挙げられ、使用目的により選択される。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック)、金属(例えばアルミニウムやニッケル等)、金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)、導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなど)等が挙げられる。これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、導電材料が粒子状の場合、その一次粒径が10μm未満、望ましくは1μm以下の粒子であることがよい。
機械強度向上のため添加されるフィラーとしては、シリカ粉、アルミナ粉、硫酸バリウム粉、酸化チタン粉、マイカ、タルクなどの粒子状材料が挙げられる。また、ポリイミド成形体表面の撥水性、離型性改善のためには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂粉末などを添加してもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
ポリイミド成形体の製膜品質の向上には、界面活性剤を添加してもよい。使用する界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれを用いてもよい。
その他の添加剤の含有量は、製造するポリイミド成形体の使用目的に応じて選択すればよい。
<ポリアミック酸組成物の製造方法>
本発明のポリアミック酸組成物の製造方法は、特定有機溶媒から選択される1種以上の有機溶媒、並びに、水を含む溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリアミック酸を生成する工程(以下「重合工程」と称する)と、樹脂を生成した後、溶媒に有機アミン化合物を添加する工程(以下、「リチウム塩化工程」と称する)と、を有する。また、必要に応じて、重合工程後、溶媒を置換または溶媒組成を変更する工程(以下、「溶媒置換工程」と称する」)を有してもよい。
本発明のポリアミック酸組成物の製造方法では、非プロトン系極性溶媒を含まず、特定有機溶媒および水を含む溶媒中で、ポリアミック酸を生成した後、その溶媒にリチウム塩を添加し、ポリアミック酸のカルボキシル基のリチウム塩化を行う。
本発明のポリアミック酸組成物の製造方法は、溶媒として、ポリイミド成形体の機械的強度の低下の原因となる非プロトン系極性溶媒を使用しない。また、ポリアミック酸の生成後に、リチウム塩を添加する。
このため、本発明のポリアミック酸組成物の製造方法では、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られるポリアミック酸組成物が製造される。また、本発明のポリアミック酸組成物の製造方法では、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶媒性等の諸特性に優れたポリイミド成形体が得られ易いポリアミック酸組成物が製造される。
また、本発明のポリアミック酸組成物の製造方法では、溶媒として、特定有機溶媒および水を含む混合溶媒を適用しているため、生産性も高く、ポリアミック酸組成物が製造される。特に、溶媒置換を行う場合、過剰な加熱が必要なく、生成されたポリアミック酸の熱イミド化が抑制され易い。
以下、本発明のポリアミック酸組成物の製造方法の各工程について説明する。なお、使用する各材料は、上記本発明のポリアミック酸組成物で説明したものと同様であるため、説明を省略する。
(重合工程)
重合工程では、特定有機溶媒および水を含む溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリアミック酸を生成する。ポリアミック酸の重合反応時の反応温度は、例えば、0℃以上70℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましく、20℃以上55℃以下であることがさらに好ましい。この反応温度を0℃以上とすることで、重合反応により発生する反応熱を除去して重合反応の進行を促進し、反応に要する時間が短時間化され、生産性が向上し易くなる。一方、反応温度を70℃以下とすることで、生成したポリアミック酸の分子内で生じるイミド化反応の進行が抑制され、ポリアミック酸の溶解性低下に伴う析出、またはゲル化が抑制され易くなる。なお、ポリアミック酸の重合反応時の時間は、反応温度により1時間以上24時間以下の範囲とすることがよい。
ここで、重合工程における特定有機溶媒と水との混合溶媒の混合比率(質量比)は、重合反応の進行を阻害しない観点から、特定有機溶媒よりも水が少ない比率であることがよく、例えば、特定有機溶媒と水の比率が98:2~70:30であることが好ましく、90:10~80:20であることがより好ましい。
(リチウム塩化工程)
リチウム塩化工程では、ポリアミック酸を生成した後、溶媒にリチウム塩を添加し、ポリアミック酸のカルボキシル基のリチウム塩化を行う。これにより、ポリアミック酸の溶媒に対する溶解性が高まる。リチウム塩化工程では、溶媒としての水も添加してもよい。
リチウム塩化工程には2種類の方法を用いることができ、ポリアミック酸を生成した後、溶媒に水を添加して、ポリアミック酸と溶媒とを分離し、分離後の溶媒の一部を除去した後、残部に水およびリチウム塩化合物を添加する第1リチウム塩化工程と、ポリアミック酸を生成した後、溶媒の一部を留去した後または溶媒の一部を留去しながら、残部にリチウム塩を添加する第2リチウム塩化工程とがあり、どちらか一方、または両方を行ってもよい。
-第1リチウム塩化工程-
ポリアミック酸を生成した後、溶媒に水を過剰に添加すると、ポリアミック酸の溶解性が低下し、析出する結果、ポリアミック酸と溶媒とが分離する。溶媒に添加する水の添加量は、例えば、全溶媒に対して、例えば、10質量%以上300質量%以下(好ましくは50質量%以上200質量%以下)とするのがよい。ポリアミック酸と溶媒とが分離すると、ポリアミック酸が沈降し、上澄みが溶媒となり、この上澄み液を除去することで、分離後の溶媒の一部を除去する。この溶媒の一部の除去は、上澄み液の除去に限られず、ろ過等により行ってよい。そして、残部に、溶媒となる水と共にリチウム塩を添加すると、溶媒置換が行われると共に、ポリアミック酸(そのカルボキシル基)のリチウム塩化が行われる。第1リチウム塩化工程を行うと、純度の高いポリアミック酸組成物が得られ易くなる。
-第2リチウム塩化工程-
ポリアミック酸を生成した後、加熱および減圧にして、溶媒の一部を留去する。この溶媒の留去は、主に特定有機溶媒の留去であり、この溶媒の留去をした後または溶媒の一部を留去しながら、リチウム塩を添加すると、溶媒組成変更が行われると共に、ポリアミック酸(そのカルボキシル基)のリチウム塩化が行われる。なお、リチウム塩を添加するとき、溶媒として水も添加してもよい。第2リチウム塩化工程を行うと、ポリアミック酸の析出等を経ずに、簡易な工程で、溶媒置換されたポリアミック酸組成物が得られ易くなる。
(溶媒置換工程)
溶媒置換工程では、ポリアミック酸の生成後の溶液中の溶媒組成を変更し、製造するポリアミック酸組成物の安定化、生成するポリアミック酸の溶解および固形分濃度の調整等を目的として行われる。溶媒置換工程は、水、その他溶媒を添加することや、目的とする溶媒を除去することで行われる。溶媒の除去には、加熱および減圧を行って溶媒を留去する方法(留去法)、水を添加して、ポリアミック酸を析出させた後、溶媒を分離除去する再沈殿法が挙げられる。溶媒の除去は、留去法と再沈法と組み合わせて行ってもよい。溶媒置換工程または溶媒組成変更工程とリチウム塩化工程とはどちらを先に行ってもよい。また、両工程を並行して行ってもよい。なお、溶媒置換工程は、ポリアミック酸の生成後の溶液中の溶媒組成変更の必要がなければ、実施しなくてもよい任意の工程である。ここで、溶媒置換工程を実施する場合、リチウム塩化工程は、上記の第1リチウム塩化工程または第2リチウム塩化工程を実施することがよい。
本発明のポリアミック酸組成物は、溶媒として、水または水と特定有機溶媒を含む混合溶媒を適用しているため、これにポリアミック酸(そのカルボキシル基)がリチウム塩化合物によりリチウム塩化された状態で溶解しているため、製膜性が高く、ポリアミック酸組成物を用いたポリイミド成形体の成形時、溶媒留去のための加熱温度の低減、および加熱時間の短縮化が実現され、さらにアミン化合物を用いてポリアミック酸に水溶性を付与する方法に比べてアミン化合物特有の臭気を抑えられるため環境適性に優れる。
<ポリアミック酸組成物の使用例>
本発明のポリアミック酸組成物は、ポリイミド成形体の形成用塗工液として利用される。ポリイミド成形体の形成用塗工液としては、例えば、ポリイミドフィルム形成用塗工液、ポリイミド被膜形成用塗工液等が挙げられる。なお、ポリイミド成形体としてのポリイミドフィルムは、フレキシブル電子基板フィルム、銅張積層フィルム、ラミネートフィルム、電気絶縁フィルム、燃料電池用多孔質フィルム、分離フィルム等が例示される。ポリイミド成形体としてのポリイミド被膜は、絶縁被膜、耐熱性皮膜、ICパッケージ、接着膜、液晶配向膜、レジスト膜、平坦化膜、マイクロレンズアレイ膜、電線被覆膜、光ファイバー被覆膜、リチウムイオン電池のセパレータ、セパレータ表面処理剤、バインダの等が例示される。
以下に実施例について説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24g/mol)
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22g/mol)
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N-メチル―2-ピロリドン
LiCl:塩化リチウム(分子量42.39g/mol)
Li2CO3:炭酸リチウム(分子量73.89g/mol)
NaCl:塩化ナトリウム(分子量58.44g/mol)
TEA:トリエチルアミン(分子量:101.19g/mol)
(粘度測定)
粘度測定はE型回転粘度計TV-20H(東機産業株式会社)を用い、測定プローブにNo.3型ローター3°×R14、測定温度22℃の条件で行った。
(固形分測定)
固形分は、示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツルメンツ株式会社)を用い、40℃から400℃(昇温条件20℃/分)にて測定を行い、380℃の測定値をポリイミドとしての固形分とした。
(液性状)
液性状は、目視にて行った。
(製膜性)
塗布基材として1.1mmtガラス板にポリアミック酸組成物を塗布厚100μmとなるようにスペーサーを設置した塗布ブレードを用いたバーコート法を用いて塗布し、60℃10分にて乾燥、さらに250℃30分にて焼成を行って、製膜フィルムを作成し、ボイド痕および表面ムラ・模様の評価を行った。それぞれの評価基準は下記の通りである。
(1)ボイド痕
製膜フィルム表面のボイド痕の有無を評価。
◎: ボイド痕の発生が見られない。
○: 製膜フィルム表面に1個以上10個未満のボイド痕が確認できる。
△: 製膜フィルム表面に10個以上の50未満のボイド痕が点在する。
×: 製膜フィルム表面に無数のボイド痕が一様に発生している。
(2)表面ムラ・模様
製膜フィルム表面に発生する表面ムラ、模様の有無を評価。
◎: 表面ムラ、模様の発生が見られない。
○: 製膜フィルム表面の一部に表面ムラ、模様が僅かに確認できる(製膜フィルム表面面積の10%未満)。
△: 製膜フィルム表面の一部に表面ムラ、模様が確認できる(製膜フィルム表面面積の10%以上20%未満)
×: 製膜フィルム表面に表面ムラ、模様が一様に発生している(製膜フィルム表面面積の20%以上)
<実施例1>
(ポリアミック酸組成物(A-1)の作製)
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けた重合槽に、THF360質量部、水40質量部(THF/水=90/10)の混合溶媒を充填し、乾燥した窒素ガスを通じながら、ジアミン化合物としてODA41.23質量部を添加した。溶液温度を30℃に保ちながら撹拌を行い、テトラカルボン酸二無水和物としてBPDA58.77質量部を徐々に添加した。攪拌を続けながら、添加したモノマー原料の溶解を確認した。さらに、反応温度を40℃に昇温して、24時間反応を行った。固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。なお、BPDA全量添加時のテトラカルボン酸二無水和物とジアミン化合物のモル当量比は0.97であった。上記方法に従い、E型粘度計を用いて粘度測定を行い、粘度は8Pa・sであった。次いで、リチウム塩化工程として第1リチウム塩化工程を採用し、上記で得られたポリアミック酸溶液に、溶媒として水200質量部、リチウム塩化合物として塩化リチウム17.46質量部(ポリアミック酸に対してリチウム塩化合物が2.1モル当量、リチウム置換率100モル%)を添加し、ポリアミック酸のリチウム塩化を行い、その後、溶媒である水を適宜添加しながらエバポレーターにて20mmHgの減圧下、60℃加熱により溶液中のTHFを水との共沸により留去した。留去を続け、最終的にポリアミック酸として乾燥固形分10%となるように調整し、水溶性ポリアミック酸組成物(A-1)を得た。得られた水溶性ポリアミック酸組成物の粘度10Pasで、均一溶液状であった。さらに、上記の通りに成膜性の評価を行い、その結果を表1に示す。
<実施例2>(ポリアミック酸組成物(A-2)の作製)
表1に示すよう、重合工程において、ODA41.23質量部から40.74質量部、BPDA58.77質量部から59.26質量部(BPDA全量添加時のテトラカルボン酸二無水和物とジアミン化合物のモル当量比は0.99)、溶媒としてTHF360質量部から320質量部、水を40質量部から80質量部に変更し、リチウム塩化工程において、水200質量部から500質量部、リチウム塩化合物を炭酸リチウム44.66質量部(ポリアミック酸に対してリチウム塩化合物が3.0モル当量、リチウム置換率100モル%)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸組成物(A-2)を得た。上記の通りに各測定、評価を行い、その結果を表1に示す。
<比較例1>(ポリアミック酸組成物(B-1)の作製)
表1に示すよう、重合工程において、溶媒をNMP400質量部に変更し、リチウム塩化工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸組成物(B-1)を得た。上記の通りに各測定、評価を行い、その結果を表1に示す。
<比較例2>(ポリアミック酸組成物(B-2)の作製)
表1に示すよう、リチウム塩化工程において、塩化リチウム8.73質量部(ポリアミック酸に対してリチウム塩化合物が1.0モル当量、リチウム置換率52モル%)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸組成物(B-2)を得た。上記の通りに各測定、評価を行い、その結果を表1に示す。
<比較例3>(ポリアミック酸組成物(B-3)の作製)
表1に示すよう、リチウム塩化工程において、水100質量部、リチウム塩化合物を塩化ナトリウム24.06質量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸組成物(B-3)を得た。上記の通りに各測定、評価を行い、その結果を表1に示す。
<比較例4>(ポリアミック酸組成物(B-4)の作製)
表1に示すよう、リチウム塩化工程において、リチウム塩化合物ではなくTEA41.67質量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸組成物(B-4)を得た。上記の通りに各測定、評価を行い、その結果を表1に示す。
Figure 2023151666000003
表1より、本発明のポリアミック酸組成物を用いた実施例ではリチウム塩化することによって均一な溶液状態を保っており、成膜性に関してボイド痕や表面ムラは見られなかった。非プロトン性極性溶媒を用いた比較例1では、ボイド痕、表面ムラが多く発生した。また、比較例2や3から示唆されるように、繰り返し構造単位に対するモル当量が小さい場合、また、別の金属塩化合物を用いた場合は、ポリアミック酸が水溶化しなかった。また、比較例3にようにリチウム塩化合物の代わりにアミン化合物を用いた場合は、均一な溶液が得られるものの、特有のアミン臭が発せられ、成膜性についてもボイド痕や表面ムラが多く発生した。このことより、本発明のポリアミック酸組成物は、成膜性に優れ、かつ、ポリアミック酸組成物を構成する主たる溶媒を水とすることによって、環境負荷が少ないポリイミド成形体が得られるポリアミック酸組成物が提供できる。
本発明のポリアミック酸組成物は、ポリイミド成形体の形成用塗工液として好適に使用できる。ポリイミド成形体の形成用塗工液としては、例えば、ポリイミドフィルム形成用塗工液、ポリイミド被膜形成用塗工液等が挙げられる。ポリイミド成形体としてのポリイミドフィルムは、フレキシブル電子基板フィルム、銅張積層フィルム、ラミネートフィルム、電気絶縁フィルム、燃料電池用多孔質フィルム、分離フィルムなどに好適に使用でき、ポリイミド成形体としてのポリイミド被膜は、絶縁被膜、耐熱性皮膜、ICパッケージ、接着膜、液晶配向膜、レジスト膜、平坦化膜、マイクロレンズアレイ膜、電線被覆膜、光ファイバー被覆膜、リチウムイオン電池のセパレータ、セパレータ表面処理剤、バインダなどに好適に使用できる。

Claims (5)

  1. テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を縮合してなるポリアミック酸、リチウム塩化合物、水、または、水と水溶性エーテル系溶媒、水溶性ケトン系溶媒、および水溶性アルコール系溶媒から選択される1種以上の有機溶媒が溶解している水を主とした混合溶媒とを少なくとも含むポリアミック酸組成物であり、リチウム塩化合物がポリアミック酸に対して1.5モル当量~15モル当量含まれることを特徴とするポリアミック酸組成物
  2. テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を縮合してなる下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂が、リチウムイオンを含む水溶媒、または、リチウムイオンを含む水溶媒に、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶媒、および、水溶性アルコール系溶媒から選択される少なくとも1種以上が溶解している水を主とした混合溶媒に溶解しているポリアミック酸組成物
    Figure 2023151666000004
    (一般式(1)中、Aがテトラカルボン酸二無水物のカルボキシル基を除く残基、Bがジアミン化合物のアミノ基を除く残基を示す。また、Xは水素またはリチウムであり、一部もしくは全部が置換されていてもよい)
  3. 前記一般式(1)中、Xのリチウム置換率が75モル%~100モル%であることを特徴する請求項2に記載のポリアミック酸組成物
  4. 前記テトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、前記ジアミン化合物が芳香族ジアミン化合物である請求項1~3のいずれかに記載のポリアミック酸組成物
  5. 前記水が、全溶媒に対して30質量%以上99.9質量%以下で含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリアミック酸組成物
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