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JP2023019374A - 近赤外線吸収繊維、繊維製品、近赤外線吸収繊維の製造方法 - Google Patents

近赤外線吸収繊維、繊維製品、近赤外線吸収繊維の製造方法 Download PDF

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JP2023019374A JP2021124041A JP2021124041A JP2023019374A JP 2023019374 A JP2023019374 A JP 2023019374A JP 2021124041 A JP2021124041 A JP 2021124041A JP 2021124041 A JP2021124041 A JP 2021124041A JP 2023019374 A JP2023019374 A JP 2023019374A
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裕史 常松
Hiroshi Tsunematsu
健治 足立
Kenji Adachi
正男 若林
Masao Wakabayashi
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Abstract

【課題】複合タングステン酸化物を含有する近赤外線吸収粒子を含み、よりニュートラルな色調とすることが可能な近赤外線吸収繊維を提供する。【解決手段】繊維と、近赤外線吸収粒子と、を含み、前記近赤外線吸収粒子は、一般式CsxW1-yO3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)で表わされ、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有する近赤外線吸収繊維。【選択図】図1

Description

本発明は、近赤外線吸収繊維、繊維製品、近赤外線吸収繊維の製造方法に関する。
保温効果を高めた防寒衣料や、インテリア、レジャー用品が様々に考案され、実用化されてきた。当該保温効果を高める方法には、大別して2通りの方法ある。
第一の方法は、例えば防寒衣料において織り編みの構造を制御したり、用いられる繊維を中空や多孔質にしたりするなどして当該防寒衣料における空気層を物理的に多くし、人体から発生する熱の放散性を減少させて保温性を維持する方法である。
第二の方法は、例えば防寒衣料において、衣料全体、または防寒衣料を構成する繊維ヘ化学的・物理的な加工を施して、人体から発生する熱を再び人体へ向けて輻射したり、防寒衣料が受けた太陽光の一部を熱に変換するなどの積極的な方法により熱を蓄熱し、保温性を向上させる方法である。
上述した第一の方法として、衣料中の空気層を多くする、生地を厚くする、目を細かくする、あるいは色を濃くするといった方法が採られてきた。例えば、セーターなどの冬期に用いられる衣料が第一の方法を用いた衣料に当たる。また、例えば、冬期のスポーツ向け衣料によく用いられてきた衣料には、表地と裏地の間に中綿が入れられ、当該中綿の空気層の厚みで保温性を維持している。しかし、中綿が入れられると、衣料が重くかさばるために、動き易さを要求されるスポーツ向けでは不具合を生じていた。これら不具合を解消するために、近年では、上述した第二の方法である内部で発生する熱や、外部からの熱を積極的に有効利用する方法がとられ始めている。
第二の方法を実施する方法の一つとして、アルミニウムやチタンなどの金属を衣料の裏地などに蒸着し、体内から出る放射熱を当該金属蒸着面で反射することで、積極的に熱の発散を防ぐ方法などが知られている。しかし、これらの方法では衣料に金属を蒸着加工するのにかなりのコストがかかるばかりか、蒸着むらの発生等により歩留まりが悪くなり、結果的に製品自体の価格アップにつながっていた。
また、当該第二の方法を実施する他の方法として、アルミナ系、ジルコニア系、マグネシア系などのセラミック粒子を繊維そのものに混練して、これらのセラミック粒子が持つ遠赤外線放射効果や光を熱に変える効果を利用する方法、すなわち積極的に外部のエネルギーを取り入れる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、熱伝導率が0.3Kcal/m2・sec・℃以上の金属および金属イオンの少なくとも1種を含有させた熱線放射特性を有する無機微粒子の1種または2種以上を含有することを特徴とする熱線放射性繊維が記載されている。熱線放射特性を有する無機微粒子として、シリカまたは硫酸バリウムが挙げられている。
特許文献2には、融点が110℃以上の熱可塑性重合体Aと、融点が15~50℃、降温結晶化温度が40℃以下、結晶化熱が10mJ/mg以上である熱可塑性重合体Bとからなる複合繊維であって、繊維重量に対して0.1~20重量%の遠赤外線放射能力を有するセラミック微粒子を含有し、かつ、重合体Aが繊維表面を覆っていることを特徴とする保温性複合繊維が記載されている。
特許文献3には、繊維製品に、少なくとも1種類以上の所定の一般式で表されるアミノ化合物からなる赤外線吸収剤を含むバインダー樹脂を分散、固着させてなる赤外線吸収加工繊維製品が記載されている。
特許文献4には、直接染料、反応染料、ナフトール染料、バット染料の中から選定される、近赤外線領域の吸収が黒色染料よりも大きい特性を持つ染料と他の染料を組み合わせて染色することにより、近赤外線吸収程度として、750から1500nmの範囲内で生地の分光反射率が、65%以下であるセルロース系繊維構造物の近赤外線吸収加工方法が記載されている。
特許文献5~7において、本出願の出願人は、可視光の透過率が高くかつ吸収率が低いにも拘わらず、近赤外領域の光の透過率が低くかつ吸収率が高い材料としてタングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子を選択し、これらの微粒子を近赤外線吸収成分として含有させた繊維、およびその繊維が加工されてなる繊維製品を提案している。上記繊維や繊維製品は、淡色にも拘わらず、太陽光の近赤外線を吸収して熱に変換し、保湿性のあるものであり、他の顔料の添加により様々な色へ彩ることも可能な意匠性の高いものであった。
特開平11-279830号公報 特開平5-239716号公報 特開平8-3870号公報 特開平9-291463号公報 特開2006-132042号公報 国際公開第2018/235839号 国際公開第2019/054476号
K. Adachi and T. Asahi, "Activation of plasmons and polarons in solar control cesium tungsten bronze and reduced tungsten oxide nanoparticles," Journal of Material Research, Vol. 27, 965-970 (2012) S. Yoshio and K. Adachi, "Polarons in reduced cesium tungsten bronzes studied using the DFT+U method," Materials Research Express, Vol. 6, 026548 (2019) K. Machida, M. Okada, and K. Adachi, "Excitations of free and localized electrons at nearby energies in reduced cesium tungsten bronze nanocrystals," Journal of Applied Physics, Vol. 125, 103103 (2019) S. F. Solodovnikov, N.V. Ivannikova, Z.A. Solodovnikova, E.S. Zolotova, "Synthesis and X-ray diffraction study of potassium, rubidium, and cesium polytungstates with defect pyrochlore and hexagonal tungsten bronze structures," Inorganic Materials, Vol. 34, 845-853 (1998) M. Okada, K. Ono, S. Yoshio, H. Fukuyama and K. Adachi, "Oxygen vacancies and pseudo Jahn-Teller destabilization in cesium-doped hexagonal tungsten bronzes," Journal of American Ceramic Society, Vol. 102, 5386-5400 (2019) S. Yoshio, M. Okada, K. Adachi, "Destabilization of Pseudo Jahn-Teller Distortion in Cesium-doped Hexagonal Tungsten Bronzes", J. Appl. Phys., vol. 124, 063109-1-8 (2018)
中でも、特許文献5~特許文献7に開示されたタングステン酸化物微粒子または複合タングステン酸化物微粒子は、可視光の透過率が高くかつ吸収率が低いにも関わらず、近赤外領域の光の透過率が低くかつ吸収率が高い材料である。このため、複合タングステン酸化物微粒子等を含有する繊維は防寒衣料等の用途において特に有望な繊維である。
しかしながら、上記複合タングステン酸化物微粒子等は、可視光のうち長波長の光、すなわち赤色の光を優先的に吸収するため、青色の着色を伴い、青色の度合いは該微粒子の添加量が増加すると強くなる。これにより、複合タングステン酸化物微粒子等を近赤外線吸収成分として含有させた繊維、およびその繊維を加工して得られる繊維製品は、青の着色を伴い、青の補色である黄系や青以外の淡色へ、他の顔料の添加により彩るのは困難な場合があった。そのため、近赤外線吸収特性に優れた複合タングステン酸化物を含み、かつ補色や淡色に彩ることが可能なよりニュートラルな色調とすることができる繊維が求められていた。
そこで、本発明の一側面では、複合タングステン酸化物を含有する近赤外線吸収粒子を含み、よりニュートラルな色調とすることが可能な近赤外線吸収繊維を提供することを目的とする。
本発明の一側面では、繊維と、
近赤外線吸収粒子と、を含み、
前記近赤外線吸収粒子は、一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)で表わされ、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有する近赤外線吸収繊維を提供する。
本発明の一側面では、複合タングステン酸化物を含有する近赤外線吸収粒子を含み、よりニュートラルな色調とすることが可能な近赤外線吸収繊維を提供することができる。
図1は、セシウムタングステン酸化物の結晶構造の説明図である。 図2は、セシウムタングステン酸化物のエネルギーバンド構造である。 図3は、セシウムタングステン酸化物の誘電関数である。 図4は、実験例1-1で得られた粉末A´のc軸方向から撮った電子線回折像である。 図5は、実験例1-1で得られた粉末Aの擬六方晶粒子の[001]HEX晶帯軸の電子線回折像である。 図6は、実験例1-1で得られた粉末Aの擬六方晶粒子の[221]晶帯軸から観察したSTEM-HAADF像である。 図7は、実験例1-2で得られた粉末Bの擬六方晶粒子の[001]HEX晶帯軸の電子線回折像である。 図8は、実験例1-3で得られた粉末Cの擬六方晶粒子の[001]HEX晶帯軸の電子線回折像である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[近赤外線吸収繊維]
本実施形態の近赤外線吸収繊維について、[1]近赤外線吸収粒子および近赤外線吸収粒子の製造方法、[2]近赤外線吸収粒子分散液、[3]近赤外線吸収繊維、[4]近赤外線吸収繊維の製造方法の順に説明する。
[1]近赤外線吸収粒子および近赤外線吸収粒子の製造方法
(近赤外線吸収粒子)
従来から、近赤外線吸収粒子として用いられているセシウム添加六方晶タングステンブロンズ粒子の透過色は、その誘電関数虚部(ε)(実験で得られたεは非特許文献1に掲載されている)、およびバンド構造(非特許文献2)により規定される。
可視光線のエネルギー領域(1.6eV~3.3eV)において、セシウム添加六方晶タングステンブロンズ(以下Cs-HTBと短縮する)はバンドギャップが十分に大きくなっている。加えてタングステンのd-d軌道間電子遷移などがFermi黄金律により禁制となるため電子遷移の確率が小さくなり、εが小さい値を取る。εは電子による光子の吸収を表わすため、εが可視波長で小さければ可視光透過性が生ずる。しかしながら可視光線領域で波長が最も短い青波長の近傍では、バンド間遷移による吸収が存在し、また波長が最も長い赤波長の近傍では、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収とポーラロニックな電子遷移吸収が存在する(非特許文献3)。このため、それぞれ光透過性の制約を受ける。
上述の様にCs-HTBではバンドギャップが十分大きいためにバンド間遷移が青波長の光のエネルギー以上となり、青の透過性が高くなる。逆に赤波長の側では、Cs-HTBは伝導電子が多いためLSPR吸収とポーラロニック吸収が強くなり、同時に吸収波長が赤波長の側に近寄るため、透過性が低くなる。従ってCs-HTB粒子分散膜等の透過色は青く見えるのである。
すなわちCs-HTBの青系の透過色を中性化するためには、青側の吸収を強め、赤側の透過を強めればよいが、そのためにはバンド間遷移の吸収位置を低エネルギーにシフトさせ、またLSPR吸収とポーラロニック吸収を弱めて低エネルギー側へシフトさせることが好ましい。
LSPR吸収やポーラロニック吸収を弱めるには、材料に含有される自由電子と束縛電子の量を減少させることが有効である。
上述の青側の吸収の増加は、バンドギャップを低エネルギーにもつような異なるエネルギーバンド構造の材料をベースとすることにより実現される。また、赤側の透過は、自由電子や束縛電子の発生源であるセシウムイオン(Cs)や酸素の空孔(V)の量を加減してコントロールできる。
本発明の発明者らは、以上の考察に基づき、セシウム(Cs)、およびタングステン(W)を含む酸化物であるセシウムタングステン酸化物を種々検討の結果、CsおよびWを含むセシウムタングステン酸化物前駆体nCsO・mWO(n,mは整数、3.6≦m/n≦9.0)の結晶粉末を還元することで得られたセシウムタングステン酸化物を含有する近赤外線吸収粒子とした場合に、分散させた透過膜等の近赤外線吸収粒子分散体や、近赤外線吸収粒子分散液の色調も青みが減少して中性化することを見出した。また、係る近赤外線吸収粒子を含有する近赤外線吸収繊維についても、よりニュートラルな色調を有することが可能になることを見出した。
上記近赤外線吸収粒子は、バンドギャップが六方晶Cs-HTBよりも狭く青の透過性が低い化合物から出発して、これを還元することによってVを徐々に増加させ、LSPR吸収とポーラロニック吸収を許容される範囲内で徐々に大きくして赤の透過率を適正化することで色調が中性化したものと考えられる。
Csを含む上記セシウムタングステン酸化物前駆体nCsO・mWOでは陽性元素であるCsとWの電荷はOによって中和されており、非導電体である。Cs22、Cs2063、Cs19、Cs1135、Cs1136、Cs10などWO-CsOラインに並ぶ化合物では、価数がバランスしているため、フェルミエネルギーEは価電子帯と伝導帯の間に存在し、非導電体となっている。Cs/W比(モル比)が0.2以上では、イオン半径の大きなCsを取り込むために、W-O八面体が作る基本骨格は、大きな六方空隙を有する六方対称の構造か、または大きな六方空隙を持つ六方晶や立方晶(パイロクロア構造)の原子配列にW欠損(タングステン欠損)を含む面欠陥が入って対称性が斜方晶や単斜晶に下がった結晶構造となっている。
例えば2CsO・11WOでは、Solodovnikov1998(非特許文献4)のモデルにおいて、六方晶タングステンブロンズと同様なW-O八面体の六方配列の中に、六方晶(110)面(=斜方晶(010)面)に斜方晶単位胞のb/8ピッチでWとOが欠損した面が挿入されて全体としては斜方晶になっている。これらのセシウムタングステン酸化物前駆体nCsO・mWO(n,mは整数、3.6≦m/n≦9.0)ではバンドギャップがCs-HTBよりも狭く、従って青の透過性は低い。しかし、これを加熱還元すると、全体が徐々にタングステンブロンズの六方晶構造へと変化し、その過程でバンド構造が変化し、バンドギャップが広がって青の吸収が弱くなっていくために、青の透過が強くなっていくことが分かった。加えてこの時、還元の進行と共に、伝導帯に電子が徐々に注入されて導電体になると共に、バンドギャップはBurstein-Moss効果により徐々に広がるので、青の透過は更に強くなる。
加熱還元によって斜方晶が六方晶になる時、斜方晶中のW欠損を含む面欠陥は徐々に消滅して、W-O八面体の六方晶骨格が形成される。W欠損を含む面欠陥は(010)ORTH面上に存在するが、この面は六方晶プリズム面{100}HEX、すなわち[(100)HEX,(010)HEX,(110)HEX]に引き継がれるので、加熱還元と共に徐々に{100}HEX面に欠陥を含む六方晶となる。この時の六方晶は{100}HEX面に欠陥を含むために完全な六方対称からはずれており、擬六方晶とも言える状態である。このように加熱還元と共に結晶構造は、斜方晶から擬六方晶、さらには六方晶へと変化をする。この時斜方晶に含まれていたW欠損を含む(010)ORTH面の面欠陥は、{100}HEX面の面欠陥に継承されて徐々に減少し、最終的に消滅すると考えられる。
加熱還元時の結晶構造変化に伴って、電子構造も変化する。W欠損の消滅は材料に多量の電子注入をもたらす。斜方晶ではCsの外殻電子はOの中和に費やされて全体として電荷中性となっているが、W欠損が減少して擬六方晶になると、W原子1個当たり6個の外殻電子がOの中和に費やされることにより、Csの外殻電子は伝導帯下部のW-5d軌道に入って自由電子となる。この自由電子はLSPR吸収により近赤外線の吸収をもたらす。一方加熱還元は、同時にVを生成する作用がある。Vの生成はランダムなサイトで進行する。Vが生ずるとその両隣のW原子は電荷過剰となり、W5+に束縛された局在電子が発生する(非特許文献2)。この局在電子は伝導帯上部の空位に遷移してポーラロニック吸収をもたらすが、一部は自由電子軌道に励起されてLSPR吸収をもたらす(非特許文献3)。これらの自由電子と束縛電子による吸収は、いずれもピーク波長が近赤外であるために、吸収の裾野が赤の波長にかかり、従って赤の透過性を低くする。自由電子と束縛電子の量が多いほど、すなわち還元の度合いが増すほど、LSPR吸収とポーラロニック吸収波長は高波長へシフトし、吸収量も大きくなるので、赤の透過性は減少する。
従って、セシウムタングステン酸化物前駆体nCsO・mWO(n,mは整数、3.6≦m/n≦9.0)の結晶粉末を還元し、その際の還元の度合いを調整することで、青系の透過色を中性化できる。
以上に説明した本実施形態の近赤外線吸収粒子は、CsおよびWを含むセシウムタングステン酸化物前駆体nCsO・mWOの結晶粉末を、650℃以上950℃以下の還元雰囲気中で加熱することにより作製できる。上記セシウムタングステン酸化物の式中のn,mは整数であり、3.6≦m/n≦9.0を満たすことが好ましい。
すなわち、近赤外線吸収粒子として、セシウムおよびタングステンを含むセシウムタングステン酸化物前駆体nCsO・mWO(n,mは整数、3.6≦m/n≦9.0)の結晶粉末を、還元性気体の雰囲気中、650℃以上950℃以下で加熱、還元して得られた粒子を用いることができる。
加熱、還元によって全部または一部が六方晶タングステンブロンズとなるためには、上記m/nの値は上述のように3.6≦m/n≦9.0の範囲にある必要がある。もし3.6未満の場合は加熱、還元後に立方晶パイロクロア相となり、着色が強く近赤外線吸収も起こらない。また9.0より大きい場合には、加熱、還元後に六方晶タングステンブロンズと三酸化タングステンに相分離して、近赤外線吸収効果が著しく減少する。上記セシウムタングステン酸化物前駆体は、m/n=5.5である、Cs1135であることがより好ましい。すなわち、近赤外線吸収粒子として、主相としてCs1135相を含むセシウムタングステン酸化物前駆体を、還元性気体の雰囲気中、650℃以上950℃以下で加熱、還元して得られた粒子を用いることがより好ましい。Cs1135の高温還元により得られた近赤外線吸収粒子とすることで、該近赤外線吸収粒子を分散させた際に、青みの抑制された透過色をもちつつ大きな近赤外線吸収効果が得られる。なお、ここでいう主相とは、質量比で最も多く含まれている相であることを意味する。
上述のようにセシウムタングステン酸化物を還元する際の加熱温度は650℃以上950℃以下が好ましい。650℃以上とすることで斜方晶から六方晶への構造変化を十分に進行させ、近赤外線吸収効果を高められる。また、950℃以下とすることで、結晶構造変化のスピードを適切に保ち、容易に適切な結晶状態と電子状態に制御することができる。なお、上記加熱温度を950℃よりも高くし、還元が行き過ぎるとWメタルやWOなどの低級酸化物が生成される場合があり、係る観点からも好ましくない。
そして、本実施形態の近赤外線吸収粒子は、一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)で表わされ、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有できる。なお、近赤外線吸収粒子は、斜方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物、および六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を同時に含有することもできる。
近赤外線吸収粒子が含有するセシウムタングステン酸化物が、上記一般式を充足することで、W欠損や、酸素の空孔Vの程度が適切な範囲にあり、分散させて近赤外線吸収粒子分散体や、近赤外線吸収繊維等とした場合に、日射透過率を抑制しつつも、透過色がよりニュートラルな色調とすることができる。
なお、近赤外線吸収粒子は、上記複合タングステン酸化物からなることもできる。ただし、この場合でも製造工程等で混入する不可避不純物を含有することを排除するものではない。
従来知られている近赤外線吸収用タングステンブロンズは六方晶構造を有している。一方、本実施形態の近赤外線吸収粒子が有する複合タングステン酸化物は、斜方晶または六方晶の結晶構造を有することができる。なお、ここでの六方晶には、擬六方晶も含まれる。
近赤外線吸収粒子が含有する複合タングステン酸化物であるセシウムタングステン酸化物は、斜方晶の(010)面、六方晶のプリズム面である{100}面、六方晶の底面である(001)面から選択された1以上の面に、線状または面状の欠陥を有することが好ましい。上記欠陥は、面相互のずれに基づく積層不正や、面内でのCs原子やW原子の配列や原子位置の乱れを含むものであり、そのために往々にして電子線回折スポットにストリークを伴うことがある。上記六方晶のプリズム面である{100}面は、(100)面、(010)面、および(110)面を意味する。複合タングステン酸化物の係る欠陥、すなわち格子欠陥は、少なくともW欠損、具体的にはWの一部欠損を伴っており、このW欠損が結晶中の電子の欠落を招き、既述のようにこれが本質的な原因の一つとなって青色調の中性化に作用する。
セシウムタングステン酸化物は欠陥を有し、係る欠陥は、上述のようにタングステン欠損を含むことができる。
また、セシウムタングステン酸化物の基本構造である斜方晶または六方晶の結晶を構成するW-O八面体、すなわちWO八面体の、Oの一部がさらに欠損を有することもできる。係る欠損はランダムな欠損とすることができる。この八面体酸素の空孔Vは上述のようにランダムに導入することができ、既知の六方晶タングステンブロンズCs0.32WO3―yにおいてはy=0.46またはO全格子点の最大15%に及ぶことが知られている(非特許文献5)。本実施形態の近赤外線吸収粒子が含有するセシウムタングステン酸化物を示す一般式Cs1―y3―zにおいて最大z=0.46の量のVを含むことができる。すなわちzは0.46以下とすることができる。
セシウムタングステン酸化物の格子定数は、結晶格子中の欠陥量、もしくは組成、および結晶性に対応している。a軸の値はこれらの変数に対してバラつきが観察されるが、c軸の値は格子欠陥量もしくは光学特性と比較的良く対応する。その結果、本実施形態の近赤外線吸収粒子が含有するセシウムタングステン酸化物は、六方晶換算のc軸長が7.560Å以上7.750Å以下であることが好ましい。セシウムタングステン酸化物の六方晶換算のc軸長を上記範囲とすることで、近赤外線吸収効果を十分高め、また可視光透過性を特に高められる。なお、セシウムタングステン酸化物が六方晶の場合には換算は不要であり、該六方晶でのc軸長が、上記六方晶換算のc軸長となる。
本実施形態の近赤外線吸収粒子が含有するセシウムタングステン酸化物は、X線粉末回折法で試料の回折パターンを測定すると、斜方晶と六方晶の混合相と同定されることが多い。例えばCs1135の原料を還元していくと、斜方晶Cs1135と六方晶Cs0.32WOの混相と同定される。この場合はRietveld解析などで各相の格子定数を求め、これらを六方晶換算の値に変換することができる。斜方晶は、既に説明の通り、格子欠陥面をもつ六方晶であるので、斜方晶の格子定数は、適切な格子対応モデルにより六方晶の格子定数へ変換できる。斜方晶と六方晶との間の格子の変化の対応をSolodovnikov1998のモデル(非特許文献4)と仮定すれば、このモデルに対する幾何学的関係から、4aorth +borth =64ahex = 64bhex 、corth=chexの関係が抽出されるので、これらの式を用いて、すべて六方晶換算の格子定数を求めることができる。なお、上記式中のaorth、borth、corthは斜方晶のa軸、b軸、c軸の長さを意味する。また、ahex、bhex、chexは六方晶のa軸、b軸、c軸の長さを意味する。
本実施形態の近赤外線吸収粒子が含有するセシウムタングステン酸化物は、Csの一部を添加元素により置換されていても良い。この場合、添加元素がNa、Tl、In、Li、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Gaから選択された1種類以上であることが好ましい。
上記添加元素は電子供与性があり、CsサイトにあってW-O八面体骨格の伝導帯への電子供与を補助する。
本実施形態の近赤外線吸収粒子の平均粒径は特に限定されないが、0.1nm以上200nm以下であることが好ましい。これは、近赤外線吸収粒子の平均粒径を200nm以下とすることで、局在表面プラズモン共鳴がより顕著に発現されるため、近赤外線吸収特性を特に高めることができる、すなわち日射透過率を特に抑制できるからである。また、近赤外線吸収粒子の平均粒径を0.1nm以上とすることで、工業的に容易に製造することができるからである。また粒子径は、近赤外線吸収粒子を分散させた分散透過膜である近赤外線吸収粒子分散体等の色と密接に関係しており、ミー散乱が支配的な粒径範囲では、粒径が小さいほど可視光線領域の短波長の散乱が減少する。従って粒径を大きくすれば青い色調を特に抑制する作用があるが、100nmを超えると光散乱に伴う膜のヘイズが無視できない大きさとなり、200nmを超えると膜のヘイズの上昇に加えて、表面プラズモンの発生が抑制されてLSPR吸収が過度に小さくなる場合がある。
ここで、近赤外線吸収粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡像から測定された複数の近赤外線吸収粒子の粒径の平均値や、分散液の動的光散乱法に基づく粒径測定装置で測定される分散粒径から知ることができる。
なお、特に可視光線領域の透明性を重視する用途に適用する場合、例えば近赤外線吸収繊維の色調に対する影響を特に抑制することが求められる場合等には、さらに近赤外線吸収粒子による散乱低減を考慮することが好ましい。当該散乱低減を重視する場合には、近赤外線吸収粒子の平均粒径は30nm以下であることが特に好ましい。
また、近赤外線吸収粒子は、表面保護や、耐久性向上、酸化防止、耐水性向上などの目的で、表面処理を施しておくこともできる。表面処理の具体的な内容は特に限定されないが、例えば、本実施形態の近赤外線吸収粒子は、近赤外線吸収粒子の表面を、Si、Ti、Zr、Al、Znから選択された1種類以上の原子を含む化合物で被覆することができる。この際Si、Ti、Zr、Al、Znから選択された1種類以上の原子(元素)を含む化合物としては、酸化物、窒化物、炭化物等から選択された1種類以上が挙げられる。
ここで、セシウムタングステン酸化物、セシウムタングステン酸化物前駆体のバンド構造について説明する。
上述の説明のとおり、nCsO・mWO(n,mは整数、3.6≦m/n≦9.0)を高温で還元すると、より中性に近い透過色の日射遮蔽材料が得られることが示された。高温還元時には、W欠損の消滅を含む六方晶化とVの生成により伝導帯に電子が注入され、近赤外線吸収発現の源になると考えられるが、このような電子構造変化を第一原理計算によって裏付ける。
図1(a)にCs1135の結晶構造を示す。また、図1(b)にCs0.33WOであるCs1236の結晶構造を示す。図1(a)、図1(b)においては、セシウム11と、酸素12とが示されている。なお、同じ種類の原子には同じハッチングをつけている。タングステンは酸素12で形成された八面体中に配置されているため、図1(a)、図1(b)では示されていない。図1(b)はCs0.33WOを、図1(a)のCs1135と対比可能なように斜方晶で軸を取り直した構造である。
図1(a)のCs1135の構造は図1(b)のCs1236の結晶構造において、WとOが規則的に欠損した構造となっている。
上記図1(a)、図1(b)の結晶構造のセシウムタングステン酸化物のバンド構造を、それぞれ図2(a)、図2(b)に示す。また、図1(b)のCs1236を基準して、Wが1個欠損したCs1136のバンド構造、およびb軸方向に1.5倍のセルにして、Wが1個欠損したCs1754の各バンド構造をそれぞれ図2(c)、図2(d)に示す。
図2(a)、図2(b)に示したCs1135のバンド構造、およびCs1236のバンド構造は類似しているが、フェルミエネルギー(E)の位置が前者はバンドギャップ内にあり、後者は伝導帯下部にある。従ってCs1135は絶縁体であり、Cs1236は導電体である。Cs1135ではCs1236を基準に見るとWとOが単位胞に各1個不足している。WとOが満ち足りたCs1236では六方晶WOのネットワークが構成され、Cs電子がそのW-5d軌道に注入されて導電体になると解釈されている(非特許文献6)。
図2(c)のCs1136は、図2(b)のCs1236からWを1個減じた構造である。
図2(d)のCs1754、すなわち3CsO・17WOは、図2(b)Cs1236、すなわちCs1854からみて電荷中性を保持しながらWを1個減じた構造である。
W欠損の量が図2(a)、図2(d)、図2(b)の順に減少するが、Eが順に伝導帯底部側に上昇しており、W電子がW-5d軌道に注入されて伝導電子が増加し、近赤外線吸収が大きくなることを裏付けている
Cs1236からOが欠損した場合はすでに詳しい計算例が報告されており、伝導帯底部に局在軌道が導入されると共に自由電子と局在電子が顕著に増加することが分かっている(非特許文献2)。
実験的に得られる擬六方晶(斜方晶と六方晶の相転移途中にある中間構造)では、以上の要素が混在した電子状態と考えられる。すなわち還元に伴って、W欠損の消滅を含む六方晶化とVの生成により、伝導帯に少しずつ電子が注入され、フェルミエネルギーEがバンドギャップから伝導帯下部へ上がる。
これらのバンド構造を元にして、Drude項を含む誘電関数を計算した結果を図3に示す。図3(b)に示した誘電関数εのε=0の位置に着目すると、遮蔽されたプラズマ周波数(ΩSP)は、Cs1135、Cs1754、Cs1236、Cs1235の順に増加することが分かる。この順に近赤外線吸収は大きくなると予想されるが、この傾向は観察結果と一致する。
図3(a)に示した誘電関数εプロットから、セシウムタングステン酸化物では可視領域のεは一般に小さいことが分かる。点線31で示した青領域の3.3eVでは、バンド間遷移に規定されて、バンドギャップが狭いCs1135やCs1754の吸収が大きくなる。一方、点線32で示した赤領域の1.6eVでは、表面プラズモン吸収の裾野に影響されて、Cs1235の吸収が大きいことが分かる。赤領域の透過光はΩSPが減少する順に減少すると予想される。従来用いられていたセシウムタングステン酸化物と比較し、本実施形態の近赤外線吸収繊維に好適に用いることができる近赤外線吸収粒子が含有するセシウムタングステン酸化物において青みが減少した理由は、WとOの欠損があるnCsO・mWO(3.6≦m/n≦9.0)を原料として用いたことによりW欠損を含むCs0.331-y3―z相が形成され、高エネルギー側の吸収が増加したためと考えられる。nCsO・mWO(3.6≦m/n≦9.0)の高温還元を調節することによりバンドギャップと伝導帯注入電子量が調節され、青みかかった色調を調節することができる。またその時の近赤外線吸収効果は比較的高い状態で維持されることが確認された。
(近赤外線吸収粒子の製造方法)
本実施形態の近赤外線吸収粒子の製造方法は特に限定されず、既述の特性を充足する近赤外線吸収粒子を製造できる方法であれば特に限定されず用いることができる。ここでは、近赤外線吸収粒子の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態の近赤外線吸収粒子の製造方法は、例えば以下の工程を有することができる。
セシウムを含むタングステン酸塩であるセシウムタングステン酸化物前駆体を合成するセシウムタングステン酸化物前駆体合成工程。
セシウムタングステン酸化物前駆体を、還元性気体の雰囲気中、650℃以上950℃以下で加熱、還元する加熱還元工程。
以下、各工程について説明する。
(1)セシウムタングステン酸化物前駆体合成工程
セシウムタングステン酸化物前駆体合成工程では、セシウムを含むタングステン酸塩、すなわちセシウムタングステン酸塩であるセシウムタングステン酸化物前駆体を合成できる。セシウムタングステン酸化物前駆体が既に合成されている場合には、本実施形態の近赤外線吸収粒子の製造方法は、加熱還元工程から開始することもできる。
なお、セシウムタングステン酸塩であるセシウムタングステン酸化物前駆体は、nCsO・mWO(n,mは整数、3.6≦m/n≦9.0)の結晶粉末であることが好ましい。セシウムタングステン酸塩であるセシウムタングステン酸化物前駆体としては、安
定なセシウムタングステン酸塩であることがより好ましい。安定なセシウムタングステン酸塩としては、Cs1135、Cs19、Cs2063、Cs22、Cs1136等から選択された1種類以上が挙げられる。セシウムタングステン酸化物前駆体は特に、主相としてCs1135相を含むセシウムタングステン酸化物前駆体であることがさらに好ましい。
これらのセシウムタングステン酸塩は例えば、セシウムやタングステンを含む原料粉末混合物を、大気中700℃以上1000℃以下で焼成することによって調製できる。なお、セシウムタングステン酸塩の製造方法は、上記形態に限定されず、例えばゾルゲル法や錯体重合法等のその他の方法を用いることもできる。
また出発原料として用いるセシウムタングステン酸塩として、気相合成などによって得られた非平衡タングステン酸塩を用いても良い。熱プラズマ法による粉体や電子ビーム溶解による粉体などがこれに含まれる。
(2)加熱還元工程
上記した出発物質としてのセシウムタングステン酸化物前駆体、具体的には例えば、斜方晶、単斜晶、擬六方晶から選択された1種以上の結晶構造を有するセシウムタングステン酸塩を、加熱還元工程に供することができる。
加熱還元工程では、上述のセシウムタングステン酸化物前駆体を、還元性気体の雰囲気中650℃以上950℃以下で加熱、還元することができる。加熱還元工程を実施することで、所望の組成のセシウムタングステン酸化物を含有する近赤外線吸収粒子が得られる。
加熱還元処理を行う場合、還元性気体の気流下で行うことが好ましい。還元性気体としては、水素等の還元性ガスと、窒素、アルゴン等から選択された1種類以上の不活性ガスとを含む混合気体を用いることができる。また水蒸気雰囲気や真空雰囲気での加熱その他のマイルドな加熱、還元条件を併用しても良い。
なお、本実施形態の近赤外線吸収粒子の製造方法は特に上記形態に限定されるものではない。近赤外線吸収粒子の製造方法としては、欠陥微細構造を含む所定の構造とすることが可能な種々の方法を用いることができる。近赤外線吸収粒子の製造方法は、固相法、液相法、気相法で得たタングステン酸塩を還元処理する方法や、溶融ハロゲン化アルカリ中でWOを還元する方法等が挙げられる。
近赤外線吸収粒子の製造方法は、さらに任意の工程を有することもできる。
(3)粉砕工程
既述のように、近赤外線吸収粒子は微細化され、粒子となっていることが好ましい。このため、近赤外線吸収粒子の製造方法においては、加熱還元工程により得られた粉末を粉砕する粉砕工程を有することができる。
粉砕し、微細化する具体的な手段は特に限定されず、機械的に粉砕することができる各種手段を用いることができる。機械的な粉砕方法としては、ジェットミルなどを用いる乾式の粉砕方法を用いることができる。また、後述する近赤外線吸収粒子分散液を得る過程で、溶媒中で機械的に粉砕してもよい。この場合は、粉砕工程において、液状媒体中に近赤外線吸収粒子を分散させることになるため、粉砕、分散工程と言い換えることもできる。
(4)被覆工程
既述のように、近赤外線吸収粒子は、その表面をSi、Ti、Zr、Al、Znから選択された1種類以上の原子を含む化合物で被覆されていても良い。そこで、近赤外線吸収粒子の製造方法は、例えば近赤外線吸収粒子を、Si、Ti、Zr、Al、Znから選択された1種類以上の原子を含む化合物で被覆する被覆工程をさらに有することもできる。
被覆工程において、近赤外線吸収粒子を被覆する具体的な条件は特に限定されない。例えば、修飾する近赤外線吸収粒子に対して、上記原子群(金属群)から選択された1種類以上の原子を含むアルコキシド等を添加し、近赤外線吸収粒子の表面に被膜を形成できる。
[2]近赤外線吸収粒子分散液
次に、本実施形態の近赤外線吸収粒子分散液の一構成例について説明する。
本実施形態の近赤外線吸収粒子分散液は、例えば後述する近赤外線吸収繊維を製造する際に用いることもできる。
本実施形態の近赤外線吸収粒子分散液は、既述の近赤外線吸収粒子と、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状可塑剤から選択された1種類以上である液状媒体と、を含むことができる。近赤外線吸収粒子分散液は、液状媒体に、近赤外線吸収粒子が分散された構成を有することが好ましい。
液状媒体としては、既述の様に、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状可塑剤から選択された1種類以上を用いることができる。
有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶媒;3-メチルーメトキシ-プロピオネ一卜、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレングリコ
ールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテ一卜、プロピレングリコールエチルエーテルアセテ一卜などのグリコール誘導体;フォルムアミド、Nーメチ
ルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ卜アミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類等から選択された1種類以上を挙げることができる。
もっとも、これらの中でも極性の低い有機溶媒が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテー卜、酢酸n-ブチルなどがより好ましい。これらの有機溶媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
油脂としては例えば、アマニ油、ヒマワリ油、桐油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、アイソパー(登録商標) E、エクソール(登録商標) Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル製)等の石油系溶剤から選択された1種類以上を用いることができる。
液状樹脂としては、例えば液状アクリル樹脂、液状エポキシ樹脂、液状ポリエステル樹脂、液状ウレタン樹脂等から選択された1種類以上を用いることができる。
液状可塑剤としては、例えばプラスチック用の液状可塑剤等を用いることができる。
近赤外線吸収粒子分散液が含有する成分は、上述の近赤外線吸収粒子、および液状媒体のみに限定されない。近赤外線吸収粒子分散液は、必要に応じてさらに任意の成分を添加、含有することもできる。
例えば、近赤外線吸収粒子分散液に必要に応じて酸やアルカリを添加して、当該分散液のpHを調整してもよい。
また、上述した近赤外線吸収粒子分散液中において、近赤外線吸収粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒径の粗大化を回避するために、各種の界面活性剤、カップリング剤等を分散剤として近赤外線吸収粒子分散液に添加することもできる。
当該界面活性剤、カップリング剤等の分散剤は用途に合わせて選定可能であるが、該分散剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、およびエポキシ基から選択された1種類以上を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、近赤外線吸収粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、例えば近赤外線吸収粒子を用いて成膜した赤外線遮蔽膜中においても近赤外線吸収粒子を均一に分散させる効果をもつ。上記官能基(官能基群)から選択された1種類以上を分子中にもつ高分子系分散剤がさらに望ましい。
好適に用いることができる市販の分散剤としては、ソルスパース(登録商標)9000、12000、17000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、32000、35100、54000、250(日本ルーブリゾール株
式会社製)、EFKA(登録商標) 4008、4009、4010、4015、4046
、4047、4060、4080、7462、4020、4050、4055、4400、4401、4402、4403、4300、4320、4330、4340、6220、6225、6700、6780、6782、8503(エフカアディティブズ社製)、アジスパー(登録商標) PA111、PB821、PB822、PN411、フェイメックスL-12(味の素ファインテクノ株式会社製)、DisperBYK (登録商標) 101、102、106、108、111、116、130、140、142、145、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、180、182、192、193、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2155、2164、220S、300、306、320、322、325、330、340、350、377、378、380N、410、425、430(ピックケミ一・ジャパン株式会社製)、ディスパロン(登録商標) 1751N、1831、1850、1860、1934、DA-400N、DA-703-50、DA-725、DA-705、DA-7301、DN-900、NS-5210、NVI-8514L(楠本化成株式会社製)、アルフォン(登録商標) UC-3000 、UF-5022、UG-4010、UG-4035、UG-4070(東亞合成株式会社製)等から選択された1種類以上が、挙げられる。
近赤外線吸収粒子の液状媒体への分散処理方法は、近赤外線吸収粒子を液状媒体中へ分散できる方法であれば、特に限定されない。この際、近赤外線吸収粒子の平均粒径が200nm以下、となるように分散できることが好ましく、0.1nm以上200nm以下となるように分散できることがより好ましい。
近赤外線吸収粒子の液状媒体への分散処理方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた分散処理方法が挙げられる。その中でも、媒体メディア(ビーズ、ポール、オタワサンド)を用いるビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体撹拌ミルで粉砕、分散させることが所望とする平均粒径とするために要する時間を短縮する観点から好ましい。媒体撹拌ミルを用いた粉砕-分散処理によって、近赤外線吸収粒子の液状媒体中への分散と同時に、近赤外線吸収粒子同士の衝突や媒体メディアの近赤外線吸収粒子への衝突などによる微粒子化も進行し、近赤外線吸収粒子をより微粒子化して分散させることができる。すなわち、粉砕-分散処理される。
近赤外線吸収粒子の平均粒径は、上述のように0.1nm以上200nm以下であることが好ましい。これは、平均粒径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm以上780nm以下の可視光線領域の光の散乱が低減されるからである。係る光の散乱が低減される結果、例えば本実施形態の近赤外線吸収粒子分散液を用いて得られる、近赤外線吸収粒子が樹脂等に分散した近赤外線吸収粒子分散体が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できる。すなわち、平均粒径が200nm以下になると、光散乱は上記幾何学散乱もしくはミー散乱のモードが弱くなり、レイリー散乱モードになる。レイリー散乱領域では、散乱光は分散粒径の6乗に比例するため、分散粒径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。そして、平均粒径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。
ところで、本実施形態の近赤外線吸収粒子分散液を用いて得られる、近赤外線吸収粒子が樹脂等の固体媒体中に分散した近赤外線吸収粒子分散体内の近赤外線吸収粒子の分散状態は、固体媒体への分散液の公知の添加方法を行う限り該分散液の近赤外線吸収粒子の平均粒径よりも凝集することはない。
また、近赤外線吸収粒子の平均粒径が0.1nm以上200nm以下であれば、製造される近赤外線吸収粒子分散体やその成形体(板、シートなど)が、単調に透過率の減少した灰色系のものになってしまうことを回避できる。
本実施形態の近赤外線吸収粒子分散液中の近赤外線吸収粒子の含有量は特に限定されないが、例えば0.01質量%以上80質量%以下であることが好ましい。これは近赤外線吸収粒子の含有量を0.01質量%以上とすることで十分な日射吸収率を発揮できるからである。また、80質量%以下とすることで、近赤外線吸収粒子を分散媒内に均一に分散させることができるからである。
[3]近赤外線吸収繊維
本実施形態に係る近赤外線吸収繊維について説明する。
本実施形態の近赤外線吸収繊維は、繊維と、近赤外線吸収粒子とを含むことができる。なお、近赤外線吸収粒子としては既述の近赤外線吸収粒子を用いることができる。このため、近赤外線吸収粒子は例えば一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)表わされ、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有できる。
本実施形態の近赤外線吸収繊維は、上述のように、繊維と、近赤外線吸収粒子とを含有していれば良く、近赤外線吸収粒子の配置は特に限定されないが、近赤外線吸収粒子は、繊維の表面および内部から選択された1以上の部分に配置されていることが好ましい。
本実施形態の近赤外線吸収繊維は、既述の合成方法で得られた近赤外線吸収粒子を適宜な媒体中に分散させて、当該分散物を例えば繊維の表面および内部から選択された1以上部の部分に含有させることで調製できる。
以下、本実施形態の近赤外線吸収繊維が含有する部材について説明する。
(1)繊維
(1-1)繊維の種類について
本実施形態の近赤外線吸収繊維が含有する繊維は、用途に応じて各種選択可能であり特に限定されない。繊維としては例えば、合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維から構成される繊維群、および上記繊維群から選択された2種類以上の繊維の混紡、合糸、混繊による混合糸から選択された1種類以上を好適に用いることができる。すなわち、上記繊維群から選択された繊維を用いることもでき、上記混合糸から選択された繊維を用いることもできる。
中でも、近赤外線吸収粒子を容易に繊維の内部等に含有させることや、保温持続性を考慮すると、繊維は合成繊維を含むことが好ましく、合成繊維から構成されていることがより好ましい。
(1-1-1)合成繊維
合成繊維は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維等から選択された1種類以上を好適に用いることができる。
ポリアミド系繊維としては、例えばナイロン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612、芳香族ナイロン、アラミド等が挙げられる。
アクリル系繊維としては、例えばポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-塩化ビニル共重合体、モダクリル等が挙げられる。
ポリエステル系繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
ポリオレフィン系繊維としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
ポリビニルアルコール系繊維としては、例えばビニロン等が挙げられる。
ポリ塩化ビニリデン系繊維としては、例えばビニリデン等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系繊維としては、例えばポリ塩化ビニル等が挙げられる。
ポリエーテルエステル系繊維としては、例えばレクセ、サクセス等が挙げられる。
(1-1-2)半合成繊維
半合成繊維としては、例えばセルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴム等から選択された1種類以上を用いることができる。
セルロース系繊維としては、例えばアセテート、トリアセテート、酸化アセテート等が挙げられる。
タンパク質系繊維としては、例えばプロミックス等が挙げられる。
(1-1-3)天然繊維
天然繊維としては、例えば植物繊維、動物繊維、鉱物繊維等から選択された1種類以上を用いることができる。
植物繊維としては、例えば綿、カポック、亜麻、大麻、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、やし、いぐさ、麦わら等が挙げられる。
動物繊維としては、例えば羊毛、やぎ毛、モヘヤ、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ等のウール、シルク、ダウン、フェザー等が挙げられる。
鉱物繊維としては、例えば石綿、アスベスト等が挙げられる。
(1-1-4)再生繊維
再生繊維としては、例えばセルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維等から選択された1種類以上を用いることができる。
セルロース系繊維としては、例えばレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、銅アンモニアレーヨン等が挙げられる。
タンパク質系繊維としては、例えばカゼイン繊維、落花生タンパク繊維、とうもろこしタンパク繊維、大豆タンパク繊維、再生絹糸等が挙げられる。
(1-1-5)無機繊維
無機繊維としては、例えば、金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維等から選択された1種類以上を用いることができる。
金属繊維としては、例えば金属繊維、金糸、銀糸、耐熱合金繊維等が挙げられる。
けい酸塩繊維としては、例えばガラス繊維、鉱さい繊維、岩石繊維等が挙げられる。
(1-2)繊維の形状
繊維の断面形状は、特に限定されないが、例えば、円形、三角形、中空状、偏平状、Y型、星型、芯鞘型等から選択された1種類以上が挙げられる。
繊維への近赤外線吸収粒子の含有、配置形態は特に限定されない。例えば繊維の断面形状が芯鞘型の場合、近赤外線吸収粒子を繊維の芯部に含有しても、鞘部に含有してもかまわない。また、繊維の形状は特に限定されず、フィラメント(長繊維)であっても、ステープル(短繊維)であってもかまわない。
(2)近赤外線吸収粒子
近赤外線吸収粒子としては、既述の近赤外線吸収粒子を用いることができる。近赤外線吸収粒子については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
本実施形態の近赤外線吸収繊維における、近赤外線吸収粒子の含有量は特に限定されず、近赤外線吸収繊維に要求される特性等に応じて選択することができる。
ただし、既述の近赤外線吸収粒子の単位質量あたりの近赤外線吸収能力は非常に高いので、ITOやATOと比較して、4~10分の1程度の使用量で同等の近赤外線吸収効果を発揮できる。
本実施形態の近赤外線吸収繊維が含有する近赤外線吸収粒子の割合は特に限定されず、近赤外線吸収繊維に要求される性能等に応じて任意に選択できる。本実施形態の近赤外線吸収繊維は、例えば近赤外線吸収粒子を、繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下の割合で含有することが好ましく、0.005質量%以上50質量%以下の割合で含有することがより好ましい。
近赤外線吸収粒子を、繊維の固形分に対して0.001質量%以上の割合で含有することで、該近赤外線吸収繊維を含む生地が薄い場合でも、十分な近赤外線吸収効果を得ることができる。また、近赤外線吸収粒子を、繊維の固形分に対して80質量%以下の割合で含有することで、近赤外線吸収繊維を紡糸する際にフィルターへの目塞がりや糸切れ等による可紡性の低下をより確実に回避できる。また、近赤外線吸収粒子の上記含有量を80質量%以下とすることで、繊維の物性を損なうことをより確実に回避できる。
(3)遠赤外線放射物質、添加剤
本実施形態の近赤外線吸収繊維は、上記繊維と近赤外線吸収粒子とのみから構成することもできるが、さらに任意の成分を含有することもでき、例えば目的に応じて以下に説明する遠赤外線放射物質や、添加剤を含有することもできる。なお、近赤外線吸収繊維が、上述のように繊維と近赤外線吸収粒子とのみから構成される場合でも、製造過程で混入する不可避成分等を含有することを排除するものではない。
(3-1)遠赤外線放射物質
遠赤外線放射物質は遠赤外線を放射する能力を有する材料であり、粒子状であることが好ましい。すなわち遠赤外線放射物質としては、遠赤外線放射物質粒子を好適に用いることができる。
遠赤外線放射物質は、繊維の表面、および内部から選択された1以上の場所に配置できる。
遠赤外線放射物質としては、例えばZrO、SiO、TiO、Al、MnO、MgO、Fe、CuO等の金属酸化物、ZrC、SiC、TiC等の炭化物、ZrN、Si、AlN等の窒化物等から選択された1種類以上が挙げられる。
近赤外線吸収粒子が含有するセシウムタングステン酸化物は、波長0.3μm以上3μm以下の太陽光エネルギーを吸収する性質をもっており、特に波長0.9μm以上2.2μm以下の領域付近の近赤外領域を選択的に吸収して、熱に変換、もしくは再輻射する。
一方、遠赤外線放射物質の粒子は、近赤外線吸収材料であるセシウムタングステン酸化物が吸収したエネルギーを受け取り、当該エネルギーを中・遠赤外線波長の熱エネルギーに転換、放射する能力を有している。例えば、ZrO粒子は、このエネルギーを波長2μm以上20μm以下の熱エネルギーに転換、放射する。従って、当該遠赤外線を放射する能力を有する遠赤外線放射物質と、既述の近赤外線吸収粒子とが、繊維の内部や表面で共存することにより、近赤外線吸収粒子に吸収された太陽光エネルギーが繊維内部・表面で効率良く消費され、より効果的な保温がなされる。
また、遠赤外線放射物質の含有量は特に限定されず、近赤外線吸収繊維に要求される性能等に応じて選択できる。本実施形態の近赤外線吸収繊維は、遠赤外線放射物質を、例えば繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下の割合で含有することが好ましい。これは、遠赤外線放射物質の上記含有割合を0.001質量%以上とすることで、近赤外線吸収繊維を含む生地が薄くても十分な熱エネルギー放射効果を得ることができるからである。また、遠赤外線放射物質の上記含有割合を80質量%以下とすることで、近赤外線吸収繊維について、紡糸する際にフィルターへの目塞がりや糸切れ等により可紡性の低下をより確実に回避できるからである。
(3-2)添加剤
添加剤としては、例えば酸化防止剤、難燃剤、消臭剤、防虫剤、抗菌剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。添加剤は、例えば近赤外線吸収繊維の性能を損なわない範囲内で含有させて使用することができる。
[4]近赤外線吸収繊維の製造方法
本実施形態の近赤外線吸収繊維の製造方法について説明する。本実施形態の近赤外線吸収繊維の製造方法によれば、既述の近赤外線吸収繊維を製造できるため、既に説明した事項については説明を省略する。
本実施形態の近赤外線吸収繊維の製造方法は、繊維と近赤外線吸収繊維とを含有する近赤外線吸収繊維を調製する近赤外線吸収繊維製造工程を有することができる。
近赤外線吸収粒子、繊維については既に説明したため、ここでは説明を省略する。近赤外線吸収粒子は、既述のように例えば、一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)表わされ、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有できる。
近赤外線吸収繊維製造工程では、具体的には例えば、繊維の表面、および内部から選択された1以上の場所に近赤外線吸収粒子を配置できる。
繊維の表面および内部から選択された1以上の場所へ、近赤外線吸収粒子を配置する方法は特に限定されない。例えば、以下の(a)~(d)のいずれかの方法を用いることができる。
(a)合成繊維の原料ポリマーへ、近赤外線吸収粒子を混合して紡糸する方法。
(b)あらかじめ原料ポリマーの一部へ近赤外線吸収粒子を高濃度に含有せしめたマスターバッチを製造し、マスターバッチを紡糸時に所定の濃度に希釈調整してから紡糸する方法。
(c)近赤外線吸収粒子を、原料モノマーまたはオリゴマー溶液中に分散させた分散溶液を予め調製する。そして、該分散溶液を用いて目的とする原料ポリマーを合成すると同時に、近赤外線吸収粒子を原料ポリマー中に分散せしめた後、紡糸する方法。
(d)あらかじめ紡糸して得られた繊維の表面へ、近赤外線吸収粒子を、結合剤などを用いて付着させる方法。
ここで、上記(a)~(d)の方法について、具体的に例を挙げてさらに説明する。
(a)の方法:
繊維としてポリエステル繊維を用いる場合を例に説明する。
まず熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに近赤外線吸収粒子分散液を添加し、ブレンダーで均一に混合した後、溶媒を除去する。当該溶媒を除去した混合物を二軸押出機で溶融混練することで、近赤外線吸収粒子を含有するマスターバッチを得る。得られたマスターバッチを樹脂の溶融温度付近で溶融混合し、例えば公知の各種方法により紡糸することで近赤外線吸収繊維を製造できる。
なお、上記マスターバッチの製造方法は特に限定されない。例えば、まず近赤外線吸収粒子分散液と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、混練機を使用して溶剤を除去しながら溶融混合することで、熱可塑性樹脂に近赤外線吸収粒子を分散した混合物を調製できる。
混練機としては特に限定されないが、例えばリボブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、およびバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機等から選択された1種類以上を用いることができる。
樹脂中に近赤外線吸収粒子を分散した混合物の調製方法は上記形態に限定されない。
例えば、近赤外線吸収粒子分散液を調製後、まず当該分散液の分散媒を公知の方法で除去する。そして、分散媒を除去することで得られた粉末と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤と、を均一に溶融混合し、熱可塑性樹脂に近赤外線吸収粒子を分散した混合物を製造することもできる。この他、熱可塑性樹脂に近赤外線吸収粒子を分散した混合物の製造には、近赤外線吸収粒子を、直接、熱可塑性樹脂へ添加し、溶融混合する方法を用いることもできる。
上述した方法により得られた近赤外線吸収粒子と、熱可塑性樹脂との混合物を、ベント式一軸もしくは二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工することにより、近赤外線吸収粒子を含むマスターバッチを得ることができる。
(b)の方法:
(a)と同様の方法などを活用して、近赤外線吸収粒子を含有するマスターバッチを作製する。そして、該マスターバッチと、近赤外線吸収粒子無添加のポリエチレンテレフタレートよりなるマスターバッチとを、所望の混合比となるように、樹脂の溶融温度付近で溶融混合し公知の方法に従って紡糸することで、近赤外線吸収繊維を製造できる。
(c)の方法:
例えば、繊維としてウレタン繊維を用いる場合を例に説明する。
近赤外線吸収粒子を含有した高分子ジオールと有機ジイソシアネートとを、二軸押出機内で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを合成した後、ここへ鎖伸長剤を反応させてポリウレタン溶液(原料ポリマー)を製造する。当該ポリウレタン溶液を各種公知の方法に従って紡糸することで近赤外線吸収粒子を製造できる。
(d)の方法:
例えば、天然繊維の表面に近赤外線吸収粒子を付着させる場合を例に説明する。
まず近赤外線吸収粒子と、アクリル、エポキシ、ウレタン、ポリエステルから選択された1種類以上のバインダー樹脂と、水などの溶媒と、を混合した処理液を調製する。
次に、調製された処理液に天然繊維を浸漬させるか、調製された処理液をパディング、印刷またはスプレー等により当該天然繊維へ含浸させ、乾燥する。これにより、当該天然繊維に近赤外線吸収粒子を付着させることができる。そして(d)の方法は、上述した天然繊維の他、半合成繊維、再生繊維、無機繊維、または、これらの混紡、合糸、混繊等のいずれにも適用することができる。
なお、上述の(a)~(d)の方法を実施する際に用いることができる、近赤外線吸収粒子の分散液の調製方法は特に限定されず、例えば、近赤外線吸収粒子分散液で既述の方法により調製できる。
そして近赤外線吸収粒子の分散において、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、当該近赤外線吸収粒子、具体的には含有するセシウムタングステン酸化物のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上となるように、分散の工程の条件を設定することが好ましい。上記条件を充足するように分散処理を行い、得られた分散液を用いて近赤外線吸収繊維を調製することで、該近赤外線吸収繊維の光学特性を特に高めることができる。
また、近赤外線吸収粒子分散液の分散媒は特に限定されるものではなく、混合する繊維に合わせて選択可能であり、例えば、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物などの一般的な各種有機溶媒や、水等を好適に用いることができる。
近赤外線吸収粒子を繊維やその原料となるポリマー等に付着、混合させる際には、近赤外線吸収粒子の分散液を、繊維やその原料となるポリマーに直接混合することもできる。また必要に応じて、近赤外線吸収粒子分散液に酸やアルカリを添加してpHを調整しても良いし、近赤外線吸収粒子の分散安定性を一層向上させるために、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加しても良い。
以上説明したように、本実施形態の近赤外線吸収繊維は、繊維、および近赤外線吸収粒子を含有し、近赤外線吸収粒子がニュートラルな色調を有している。このため、近赤外線吸収繊維についてもニュートラルな色調とすることが可能になる。また、近赤外線吸収粒子がセシウムタングステン酸化物を含有するため、本実施形態の近赤外線吸収繊維は、保温性に優れた繊維とすることができる。その結果、該近赤外線吸収繊維を用いた繊維製品の意匠性を損なうことがなく、補色や淡色に彩ることができる。
そして、本実施形態の近赤外線吸収繊維は、保温性を必要とする防寒衣料、スポーツ用衣料、ストッキング、カーテン等の繊維製品やその他産業用繊維製品等の種々の用途に使用することができる。
[繊維製品]
本実施形態の繊維製品は、既述の近赤外線吸収繊維を加工してなり、既述の近赤外線吸収繊維を含むことができる。なお、本実施形態の繊維製品は既述の近赤外線吸収繊維から構成することもできる。
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ここでまず以下の実験例における近赤外線吸収粒子の評価方法について説明する。
(化学分析)
得られた近赤外線吸収粒子の化学分析は、Csについては原子吸光分析(AAS)により、W(タングステン)についてはICP発光分光分析(1CP―OES)により行った。また、Oについては軽元素分析装置(LECO社製、型式ON―836)を用いて、Heガス中で試料を融解しルツボ中のカーボンと反応したCOガスをIR吸収分光法で定量する方法で分析した。なお、以下の実験例1-1~実験例1-13においては、W欠損を有するセシウムタングステン複合酸化物を含む近赤外線吸収粒子である粉末が得られている。このため、実験例1-1~実験例1-13で得られた近赤外線吸収粒子である粉末A~粉末Mについて、Wを1とした場合の組成比に、TEM観察等により求めたW欠損に応じた値をかけることで得られた組成比は、いずれも一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)を充足することを確認できている。
(X線回折測定)
X線回折測定はSpectris社のX'Pert-PRO/MPD装置でCu-Kα
線を用いて粉末XRD測定することで実施した。
標準サンプル(NIST640e)で回折角を較正してから測定を行った。そして、得られたXRD回折パターンについてリ一卜ベルト解析を行ない、結晶相の格子定数を求めた。なお、表1中、XRDの欄のパターンの欄に、同定した結晶相を表記しており、「斜方晶+六方晶」の場合には、斜方晶と六方晶とが含まれていることを意味する。また、「斜方晶」の場合には斜方晶が、「六方晶」の場合には六方晶が含まれていることを意味する。
斜方晶と六方晶の混相の場合は、各相に対する格子定数を求めた。そして、斜方晶の格子定数は、以下の格子対応モデルにより六方晶の格子定数へ変換した。斜方晶と六方晶との間の格子の変化の対応は、Solodovnikov1998のモデル(非特許文献4)から抽出した式、4aorth +borth =64ahex = 64bhex 、corth=chexを用いて、六方晶換算の格子定数を求めた。なお、上記式中のaorth、borth、corthは斜方晶のa軸、b軸、c軸の長さを意味する。また、ahex、bhex、chexは六方晶のa軸、b軸、c軸の長さを意味する。
[実験例1]
後述する実験例2で用いる近赤外線吸収粒子を製造し、評価を行った。
[実験例1-1]
炭酸セシウム(CsCO)と三酸化タングステン(WO)をモル比でCsCO:WO=2:11の比率となるように秤量、混合、混練して得られた混練物をカーボンボートに入れ、大気中、管状炉で、850℃で20時間を2回加熱し、ごく薄く緑がかった白色粉末である粉末A´を得た。なお、加熱する際、850℃で20時間加熱後に、一度取り出して粉砕・混合した後同じ条件で再加熱した。
得られた白色粉末である粉末A´について、以下のように評価を行った。
X線粉末回折パターンは、僅かにCs1136が混じったが、ほぼCs1135単相(ICDD 00-51-1891)と同定された。
格子定数は、a=14.6733Å、b=52.3841Å、c=7.7424Åと測定された。係る値は、Solodovnikov(非特許文献4)の値である、a=14.6686Å、b=52.3971Å、c=7.7356Åに極めて近かった。この白色粉末の化学分析結果はCs0.36WO3.18となり、ほぼ秤量組成に一致した。
次に、得られた白色粉末である粉末A´のTEM観察を行なった。制限視野電子線回折パターンを取ると、斜方晶のスポットパターンが得られた。図4に斜方晶のc軸方向から取ったスポットパターンを示す。b軸方向にb/8周期の周期性が出ており、WとOの欠損面の存在が確認された。またb軸方向に走るストリークから、b面には多少の面欠陥が存在することが分かった。このc軸晶帯軸のスポットパターンは6回対称に近いが、(480)と(4-80)スポットの角度が52.2°と、6回対称の場合の60°からずれており、b/8周期に入ったWとOの欠損面のために6回対称からずれたと考えられる。
得られた白色粉末であるCs1135粉末を、カーボンボートに薄く平らに敷き詰めて、管状炉内に配置し、Arガス気流中で室温から800℃まで加熱した。800℃で温度を保持しながら、Arガスをキャリアーとした1vol%Hガス(以下、vol%を単に%で記載する)を混合させた気流に切り替えて、5分間還元した後、Hガスを停止し、Arガス気流のみで100℃まで徐冷し、その後Arガス気流を止めて室温まで徐冷し、粉末Aを取り出した。取り出した粉末Aの色調は水色だった。
粉末AのXRDパターンは斜方晶と六方晶の2相混合パターンを示した。Rietveld法で各相の格子定数を求めたところ、斜方晶はa=14.6609Å、b=52.4040Å、c=7.7419Å(六方晶換算値はa=7.5062Å、c=7.7419Å)、六方晶はa=7.4170Å、c=7.5752Åであった。c軸の値は両者とも
7.560Å≦c≦7.750Åの範囲にあることを確認した。
次に粉末AのTEM観察を行なったところ、斜方晶粒子と、擬六方晶の粒子が観察された。
ここで、図5に擬六方晶粒子の電子線回折像を示す。擬六方晶粒子は、図5の[001]HEX晶帯軸の電子線回折像が示すように、六方晶に近い回折パターンを示した。ここで(200)HEXと(110)HEXの面間角度は59.2°と測定され、ほぼ六方晶に近い値であった。
次に粉末Aを、STEM-HAADFモードで観察した(STEM: scanning transmission electron microscopy、HAADF:High-angle annular dark field)。
擬六方晶粒子の[221]晶帯軸から観察したHAADF像を図6に示す。HAADFモードでは原子番号と、投影方向の原子存在確率に比例した明度で原子の粒が観察されるので、図6に暗く見える(110)HEXに沿った線状の領域は、原子番号が最も大きいWの欠損と同定された。このようなW欠損領域のトレースは、別方向からの観察により、(110)HEXに面状に広がっていることが確認された。また、コントラストの薄いトレースの一部は線状に収縮していると考えられる。
本実験例では加熱還元処理を5分間と後述する他の実験例よりも短い時間としており、高温での還元初期には、斜方晶(010)ORTHのW欠陥が収縮して擬六方晶へと構造転移が起こり、擬六方晶においては{100}HEX面に収縮途中の多くのW欠損領域が観察できた。
[実験例1-2]
実験例1-1で得た粉末A´であるCs1135粉末を、カーボンボートに薄く平らに敷き詰めて、管状炉内に配置し、Arガス気流中で室温から800℃まで加熱した。800℃で温度を保持しながら、Arガスをキャリアーとした1%Hガスを混合させた気流に切り替え、15分間還元した後、Hガスを停止し、Arガス気流のみで100℃まで徐冷し、その後Arガス気流を止めて室温まで徐冷し、粉末Bを取り出した。取り出した粉末Bの色調は青色だった。
粉末BのXRDパターンは斜方晶と六方晶の2相混合パターンを示した。Rietveld法で各相の格子定数を求めたところ、斜方晶はa=14.6576Å、b=52.4315Å、c=7.7412Å(六方晶換算値はa=7.5088Å、c=7.7412Å)、六方晶はa=7.4122Å、c=7.5940Åを得た。c軸の値は両者とも7
.560Å≦c≦7.750Åの範囲にあることを確認した。
次に粉末BのTEM観察を行なったところ、実験例1-1で得られた粉末Aの場合と同様に、斜方晶粒子と、擬六方晶の粒子が観察された。擬六方晶粒子は、図7の[001]HEX晶帯軸の電子線回折像が示すように、六方晶に近い回折パターンを示した。ここで(200)HEXと(110)HEXの面間角度は59.5°と測定され、ほぼ六方晶に近い値であった。
[実験例1-3]
実験例1-1で得た粉末A´であるCs1135粉末を、カーボンボートに薄く平らに敷き詰めて、管状炉内に配置し、Arガス気流中で室温から800℃まで加熱した。800℃で温度を保持しながら、Arガスをキャリアーとした1%Hガスを混合させた気流に切り替え、30分間還元した後、Hガスを停止し、Arガス気流のみで100℃まで徐冷し、その後Arガス気流を止めて室温まで徐冷し、粉末Cを取り出した。取り出した粉末Cの色調は濃青色だった。
粉末CのXRDパターンは斜方晶と六方晶の2相混合パターンを示した。Rietveld法で各相の格子定数を求めたところ、斜方晶はa=14.6649Å、b=52.4010Å,c=7.7451Å(六方晶換算値はa=7.5064Å、c=7.7451Å)、六方晶はa=7.4076Å、c=7.6107Åを得た。c軸の値は両者とも7.560Å≦c≦7.750Åの範囲にあることを確認した。
次に粉末CのTEM観察を行なったところ、実験例1-1で得られた粉末Aの場合と同様に斜方晶粒子と、擬六方晶の粒子が観察された。擬六方晶粒子は、図8の[001]晶帯軸の電子線回折像が示すように、六方晶の回折パターンを示した。ここで(200)HEXと(110)HEXの面間角度は60.0°と測定され、六方晶の値となった。
[実験例1-4~実験例1-7]
実験例1-1で得た粉末A´であるCs1135粉末を、還元処理する際の還元時間を、表1に示すように35分~90分に変えて粉末D、粉末E、粉末F、粉末Gを作製した。粉末D~粉末Gの粉末色調はすべて濃青色であり、XRD格子定数は、表に示すとおりである。
なお、表1に示したように、実験例1-4においては、斜方晶の相も観察され、六方晶に換算したc軸長さは、7.7440Å(実験例1-4)であった。
[実験例1-8~実験例1-11]
実験例1-1で得た粉末A´であるCs1135粉末を、加熱還元処理する際の加熱温度と還元時間を、表1に示すように変更した。具体的には、実験例1-8では650℃で120分間、実験例1-9では700℃で60分間、実験例1-10では900℃で10分間、実験例1-11では950℃で20分間とした。以上の点以外は実験例1-1の粉末Aを作製した場合と同様にして、粉末H、粉末I、粉末J、粉末Kを作製した。それぞれ水色、青色、濃青色、濃青色の粉末が得られた。得られた各粉末のXRDパターンから求めた格子定数は、表1に示す通りであった。
なお、表1に示したように、実験例1-8、実験例1-9においては、斜方晶の相も観察され、六方晶に換算したc軸長さは、7.7428Å(実験例1-8)、7.7471Å(実験例1-9)であった。
[実験例1-12]
炭酸セシウムと三酸化タングステンをモル比でCsCO:WO=3:11の比率で混合してカーボンボートに薄く平らに敷き詰めて、管状炉内に配置し、850℃で5時間加熱して、ごく薄く緑がかった白色粉末を得た。この白色粉末の主相はCs1136(ICDD1-70-632)と同定されたが、Cs1135との混相であった。
得られた白色粉末を、1%H-N気流中、800℃で30分間熱処理し、濃青色の粉末Lを得た。
粉末LのXRDパターンは、斜方晶と六方晶の2相混合パターンを示した。得られた粉末LのXRDパターンから求めた格子定数は、表1に示すとおりである。なお、上述のように斜方晶の相も観察され、六方晶に換算したc軸長さは7.7449Åであった。
[実験例1-13]
炭酸セシウムと三酸化タングステンをモル比でCsCO:WO=1:6の比率で混合してカーボンボートに薄く平らに敷き詰めて、管状炉内に配置し、850℃で5時間加熱して、ごく薄く緑がかった白色粉末を得た。この白色粉末の主相はCs1135と同定されたが、Cs19(ICDD00-045-0522)との混相であった。
得られた白色粉末を、1%H-N気流中、800℃で30分間熱処理し、濃青色の粉末Mを得た。
粉末MのXRDパターンは、斜方晶と六方晶の2相混合パターンを示した。得られた粉末MのXRDパターンから求めた格子定数は、表1に示すとおりである。なお、斜方晶の相も観察され、六方晶に換算したc軸長さは、7.7466Åであった。
Figure 2023019374000002
以上の実験例1-1~実験例1-13で示したように、白色のCs1135やCs1136、Cs19を含むCs1135の粉末を高温で還元すると、粉の色は徐々に水色から、青色、濃青色へと変化した。
またCs1135相ではW欠損を含む格子欠陥が存在し、斜方晶となっているが、これを高温で還元すると、W欠損を含む格子欠陥が低減、消滅すると共に、斜方晶が六方晶へと変化することが確認された。
なお、実験例1-1~実験例1-13で得られた粉末A~粉末Mが含有するセシウムタングステン酸化物はいずれもW欠損、およびO欠損を有していることを確認している。
[実験例2]
実験例1で製造した近赤外線吸収粒子を用いて近赤外線吸収繊維を製造し、評価を行った。
実験例2-1~実験例2-13が実施例であり、実験例2-14、実験例2-15が比較例になる。
[実験例2-1]
実験例1-1で作製した粉末Aを10質量%と、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(以下「分散剤a」と略称する)10質量%と、溶媒としてトルエン80質量%とを秤量した。秤量したこれらの材料を0.3mm径のシリカビーズと共にガラス容器に入れ、ペイントシェーカーを用いて、1時間、分散・粉砕し、近赤外線吸収粒子分散液である分散液Aを得た。
ここで、分散液A内における近赤外線吸収粒子の平均粒径(動的光散乱法に基づく粒径測定装置である大塚電子株式会社製 ELS-8000で測定される分散粒径)を測定すると、28.2nmであった。
分散液Aからスプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、実験例2-1に係る近赤外線吸収粒子分散粉を得た。得られた近赤外線吸収粒子分散粉を、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに添加し、ブレンダーで均一に混合した後、当該混合物を二軸押出機で溶融混練して押し出し、当該押出されたストランドをペレット状にカットし、近赤外線吸収成分である近赤外線吸収粒子を40重量%含有するマスターバッチを得た。
実験例2-1に係るマスターバッチを原料ポリマーとするポリエステルマスターバッチと共に溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、実験例2-1に係るポリエステルマルチフィラメント糸を製造した。このとき、近赤外線吸収粒子であるセシウムタングステン酸化物粒子は、繊維の固形分に対して10質量%となるよう、原料ポリマーと溶融紡糸した。当該時点におけるセシウムタングステン酸化物粒子の平均粒径を、透過型電子顕微鏡像を用いた画像処理装置によって算出したところ、27nmであった。なお、各粒子の粒径は粒子の外接円の直径とし、100個の粒子について測定した各粒子の粒径の平均値として上記平均粒径を算出している。なお、上記ポリエステルマスターバッチのポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート樹脂を用いている。
得られたポリエステルマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。そして、この紡績糸を用いて保温性を有する実験例2-1に係るニット製品を得た。
なお、作製されたニット製品試料の日射反射率は8%となるように調整した。ニット製品試料における日射反射率の8%への調整は、後述する実験例2-2~実験例2-15の全てで行った。
作製されたニット製品の分光特性を、日立製作所製の分光光度計を用いて波長200nm以上2100nm以下の光の透過率および反射率を測定し、JIS A 5759(2016)に従って日射吸収率を算出した。当該日射吸収率は、日射吸収率(%)=100%-日射透過率(%)-日射反射率(%)により算出した。算出された日射吸収率は、51.1%であった。また、反射率からニット製品の色指数を算出したところ、L=88、a=-1、b=8となり、ブルー色が非常に弱くニュートラルな色調であることが確認できた。
当該結果を表2に示す。また、表2には、後述する実験例2-2~実験例2-15で得られた結果についても併せて記載する。
次に、作製されたニット製品の生地裏面の温度上昇効果を、以下のようにして測定した。
20℃、60%RH環境下において、太陽光線近似スペクトルランプ(セリック株式会社製ソーラーシミュレータXL-03E50改)を、当該ニット製品の生地から30cmの距離より照射し、一定時間毎(0秒、30秒、60秒、180秒、360秒、600秒)の、当該生地裏面の温度を放射温度計(ミノルタ株式会社製HT-11)にて測定した。
当該結果を表3に示す。また、表3には、後述する実験例2-2~実験例2-15で得られた結果についても併せて記載する。
[実験例2-2~実験例2-13]
実験例1-1に係る粉末Aの代わりに実験例1-2~実験例1-13に係る粉末B~粉末Mを用いた以外は実験例2-1と同様にして、実験例2-2~実験例2-13に係る近赤外線吸収粒子分散粉、マスターバッチ、近赤外線吸収繊維であるポリエステルマルチフィラメント糸、繊維製品であるニット製品を得て評価した。当該評価結果を表2、表3に示す。
[実験例2-14]
実験例1-1に係る粉末Aの代わりに実験例1-1で得た粉末A´であるCs1135粉末を用いた点以外は実験例2-1と同様にして、実験例2-14に係る近赤外線吸収粒子分散粉、マスターバッチ、ポリエステルマルチフィラメント糸、ニット製品を得て評価した。当該評価結果を表2、表3に示す。
[実験例2-15]
炭酸セシウム(CsCO)水溶液、タングステン酸(HWO)、および二酸化タングステン粉末(WO)をCsO・5WO・4WOの組成となるように、秤量、混合、混練して原料混合物を調製した。十分に混合した後、原料混合物を、カーボンボートに薄く平らに敷き詰めて、Nガスをキャリアーとした1%Hガス気流下、550℃で60分間保持し、その後100%N気流に変えて1時間保持後800℃に昇温して1時間保持し、室温へ徐冷して粉末Oを得た。粉末Oの色は濃青色であった。化学分析の結果、組成Cs0.33WO2.74が得られた。
粉末OのXRDパターンは六方晶の単相を示した。Rietveld解析により格子定数a=7.4088Å、c=7.6033Åを得た。格子定数c軸の値は、好ましい値にあった。
次にTEM観察を行なったところ、特に目立った格子欠陥は見られなかった。STEM原子像観察においても目立った格子欠陥は観察されず、W欠損も見られなかった。
実験例1-1に係る粉末Aの代わりに、上記Cs0.33WO2.74粉末を用いた以外は実験例2-1と同様にして、実験例2-15に係る近赤外線吸収粒子分散粉、マスターバッチ、ポリエステルマルチフィラメント糸、ニット製品を得て評価した。当該評価結果を表2、表3に示す。
Figure 2023019374000003
Figure 2023019374000004
表2に示した結果によると、一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)で表され、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有する近赤外線吸収粒子を含む実験例2-1~実験例2-13の近赤外線吸収繊維は、ブルー色が非常に弱くニュートラルな色調であることを確認できた。すなわち、これらの実験例の近赤外線吸収繊維は、複合タングステン酸化物を含有する近赤外線吸収粒子を含み、よりニュートラルな色調とすることが可能であることを確認できた。
これに対して、実験例2-14、実験例2-15の近赤外線吸収繊維が含有する近赤外線吸収粒子は、上記一般式を充足するセシウムタングステン酸化物を含有していない。
そして、実験例2-15の近赤外線吸収繊維はb値が負であり、青味が明確に認識されることが分かる。すなわち、実験例2-15の近赤外線吸収繊維はニュートラルな色調とすることはできないことを確認できた。
実験例2-14の近赤外線吸収繊維は、ニュートラルな色調とすることはできたものの、表2、表3の結果から明らかなように日射吸収率に劣り、繊維製品の温度上昇効果も十分ではないことを確認できた。従って、実験例2-14の近赤外線吸収繊維は、近赤外線吸収繊維として十分な特性を有するものではないことを確認できた。

Claims (20)

  1. 繊維と、
    近赤外線吸収粒子と、を含み、
    前記近赤外線吸収粒子は、一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)で表わされ、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有する近赤外線吸収繊維。
  2. 前記セシウムタングステン酸化物が、斜方晶の(010)面、六方晶のプリズム面である{100}面、六方晶の底面である(001)面から選択された1以上の面に線状または面状の欠陥を有する請求項1に記載の近赤外線吸収繊維。
  3. 前記セシウムタングステン酸化物が欠陥を有し、前記欠陥がタングステン欠損を含む請求項1または請求項2に記載の近赤外線吸収繊維。
  4. 前記セシウムタングステン酸化物は、六方晶換算のc軸長が7.560Å以上7.750Å以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  5. 前記セシウムタングステン酸化物の結晶を構成するWO八面体のOの一部に欠損がある請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  6. 前記セシウムタングステン酸化物のCsの一部が添加元素により置換されており、
    前記添加元素がNa、Tl、In、Li、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Gaから選択された1種類以上である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  7. 前記近赤外線吸収粒子の平均粒径が0.1nm以上200nm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  8. 前記近赤外線吸収粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Al、Znから選択された1種類以上の原子を含む化合物で被覆されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  9. 前記近赤外線吸収粒子が、セシウムタングステン酸化物前駆体nCsO・mWO(n,mは整数、3.6≦m/n≦9.0)の結晶粉末を、還元性気体の雰囲気中、650℃以上950℃以下で加熱、還元して得られた粒子である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  10. 前記近赤外線吸収粒子が、主相としてCs1135相を含むセシウムタングステン酸化物前駆体を、還元性気体の雰囲気中、650℃以上950℃以下で加熱、還元して得られた粒子である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  11. 前記近赤外線吸収粒子を、前記繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下の割合で含有する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  12. 前記繊維の表面、および内部から選択された1以上の場所に配置された遠赤外線放射物質をさらに含み、
    前記遠赤外線放射物質を、前記繊維の固形分に対して0.001質量%以上80質量%以下の割合で含有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  13. 前記繊維が合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維から構成される繊維群、および前記繊維群から選択された2種類以上の繊維の混紡、合糸、混繊による混合糸から選択された1種類以上である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  14. 前記合成繊維がポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維から選択された1種類以上である請求項13に記載の近赤外線吸収繊維。
  15. 前記半合成繊維がセルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴムから選択された1種類以上である請求項13または請求項14に記載の近赤外線吸収繊維。
  16. 前記天然繊維が植物繊維、動物繊維、鉱物繊維から選択された1種類以上である請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  17. 前記再生繊維が、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維から選択された1種類以上である請求項13から請求項16のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  18. 前記無機繊維が金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維から選択された1種類以上である請求項13から請求項17のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維。
  19. 請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の近赤外線吸収繊維を含む繊維製品。
  20. 繊維と近赤外線吸収粒子とを含有する近赤外線吸収繊維を調製する近赤外線吸収繊維製造工程を有し、
    前記近赤外線吸収粒子は、一般式Cs1-y3-z(0.2≦x≦0.4、0<y≦0.4、0<z≦0.46)表わされ、斜方晶または六方晶の結晶構造を備えたセシウムタングステン酸化物を含有している近赤外線吸収繊維の製造方法。
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