I.双子型免疫細胞エンゲージャー
双子型免疫細胞エンゲージャー(「TWICE」)は、2成分複合体であって2つの成分のドメインが対形成し免疫細胞に結合及び係合することができる当該2成分複合体を指す。したがって、単一のTWICEは2つの成分を含んでおり、これらは、2本の別個のポリペプチドとして、または1本のポリペプチドとして存在し得る。したがって、TWICEが単一の構築物である場合もあるし、またはそれが2成分のキットである場合もある。本出願及び特許請求の範囲の全体を通して、TWICEという用語の使用は、特に具体的に記述されていない限り両方の実施形態を包含する。本出願は様々なTWICEについて記載する。TWICEは、種々の経路を活性化させて様々な抗がん作用を媒介することができる。
本出願に記載するように、TWICEは、標的指向性部分、免疫細胞結合ドメイン及び相補的結合ドメインを各々が含んでいる第1及び第2の成分を含み得る。第1及び第2の成分の標的指向性部分は、TWICEをがん細胞または腫瘍微小環境中の細胞に指向するように機能する。両成分からの免疫細胞結合ドメインが対形成し合うと、及び/または両成分からの相補的結合ドメインが対形成し合うと、これらの対形成したドメインは、免疫細胞活性を調節するように機能すること、または他の(すなわち補足的な)機能を果たすことができる。例えば、対形成した相補的結合ドメインは、免疫チェックポイントを遮断し得、またはがん細胞の細胞死を引き起こし得る。
TWICEにおける相補的結合ドメインの存在は、相補的ドメインを含まない複合体と比較して(つまり、免疫細胞上の単一の抗原にしか結合しない複合体と比較して)がんの治療におけるそれらの有効性を向上させると予想される。
同じく本出願に記載するように、第1の成分、及び任意選択的に第2の成分は、免疫細胞結合をすることができる補足的機能性ドメインを含み得る。補足的機能性ドメインを有するいくつかの実施形態では、免疫細胞結合ドメインはマスキングされている。TWICEの補足的機能性ドメインは、異なるドメインとの対形成を必要とせずに免疫機能を調節することができる。
本明細書に記載の本発明のTWICE複合体の主な利点は、TWICEの第1及び第2の成分が両方とも近接しているとき(ここでは、それらがどちらもがんを標的とするものであることから、腫瘍微小環境にあるとき)にだけ、免疫細胞結合ドメイン、及びいくつかの実施形態での相補的結合ドメインが対形成することになる、という点である。がん部位におけるTWICEの異なる成分間でのドメインの対形成は特異性を向上させ得、オフターゲット効果を減少させ得る。それは免疫細胞結合ドメイン、及び任意選択的に相補的結合ドメインはがん細胞またはその微小環境において両成分からのドメインの対形成の後にのみ機能するからである。
TWICEのいくつかの代表的な種類について記載してから、異なる種類のTWICEを含む成分についてその後に本出願に記載する。TWICEはがんの生存及び抗がん免疫応答に関連する多くの経路を調節し得るため、TWICEは本明細書に記載されている代表的なものに限定されない。
本発明のTWICE複合体は、複数の機能を腫瘍微小環境中で活性化される2成分複合体に合一する独特の能力を提供する。したがって、本発明の複合体は、腫瘍微小環境中に局在化され2つの異なるシグナルを起こして患者を利する能力を有する2成分複合体を投与する単一の手法を有することにおいて、意味のある利点をもたらす。いくつかの実施形態では、(対形成した免疫細胞結合ドメインからの)それらのシグナルのうちの一方は、2成分複合体が集まったときにだけ活性化される。いくつかの実施形態では、(対形成した免疫細胞結合ドメインからの、及び対形成した相補的結合ドメインからの)それらのシグナルの両方は、2成分複合体が集まったときにだけ活性化される。この独特な構築物は、従来技術の構築物にはなかった利点を提供する。
1.1種類の免疫細胞における2つのシグナル伝達経路を活性化させるTWICE
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、同じ種類の免疫細胞に結合する。
本明細書中で使用する場合、免疫細胞は「エフェクター細胞」と呼称されることもある。「エフェクター細胞」という用語は、がんに対する作用を媒介する免疫細胞を意味する。
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、T細胞に結合する。
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、免疫細胞上の同じ抗原に結合する。この実施形態では、2つのシグナル伝達経路は同じものであり、効果が増幅される。いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、免疫細胞上の異なる抗原に結合する。この実施形態では、2つのシグナル伝達経路は異なるものであり、2つの異なるシグナルが免疫細胞に伝達される。
一般に、T細胞活性化のプロセスには複数のシグナルが関与する。主シグナルは、T細胞受容体(TCR)と抗原提示細胞(APC)によって提示された主要組織適合性複合体(MHC)分子との結合からくるものである。共刺激シグナルは、いくつかの別個なT細胞とAPCとの相互作用の1つから起き得る(Buchbinder EI,Desai A Am J Clin Oncol.39(1):98-106(2016)を参照されたい)。T細胞の活性化は、いくつかの共刺激受容体、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40、CD27、GITR(TNFRSF18)及びICOSによって増強される。T細胞とAPCまたはがん細胞との間の相互作用にも、T細胞活性化を減少させるいくつかの阻害/チェックポイント分子、例えば、PD-1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3及びKIRが関与する(Torphy RJ et al.Int J Mol Sci.18:2642(2017))。それゆえ、共刺激または共阻害受容体に対する2つの抗体の作用を組み合わせることで抗腫瘍T細胞応答を増強することができる。
TWICEは、(対形成した後に)T細胞上の共刺激またはチェックポイント分子に対する2つの機能性抗体を含み得、堅牢なT細胞活性化につながり得る(2つの成分の黒色の免疫細胞結合ドメインの対形成、及び2つの成分の白色の相補的結合ドメインの対形成を示している図1B)。堅牢なT細胞活性化は、T細胞が腫瘍中に存在するががん細胞からの免疫抑制シグナルのために不活性である場合に患者に有用となり得る(Wu AA et al.OncoImmunology 4:7(2015))。
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、T細胞に対する作動的または拮抗的結合によって免疫細胞に係合することができる。
「作動的」とは、対形成した免疫細胞結合ドメインまたは対形成した相補的結合ドメインと抗原との結合がシグナル伝達経路を活性化させることを意味する。抗原との結合が免疫細胞活性化につながる場合、作動的結合が関心対象となり得る。
「拮抗的」とは、対形成した免疫細胞結合ドメインまたは対形成した相補的結合ドメインと抗原との結合がシグナル伝達経路を遮断または阻害することを意味する。抗原と天然のリガンドとの通常の結合が免疫細胞不活性化につながる場合、拮抗的結合が関心対象となる。こうして、本発明のTWICEの対形成したドメインの「拮抗的な」組の結合は、免疫細胞の不応答または不活性化を通常媒介する経路を遮断または阻害することによって免疫細胞を活性化させることができる。
免疫細胞に対する拮抗的または作動的作用を有することが知られている抗体を、本発明のTWICEの対形成した結合ドメインを作り出すために使用することができる。シグナル伝達経路がT細胞活性化を促進するものである場合、作動的な手法がT細胞活性化を増大させるであろう。シグナル伝達経路がT細胞活性化を阻害するものである場合、拮抗的な手法がT細胞活性化を増大させるであろう。このように、多種多様な経路をこの手法に採用することができる。
作動抗体の一例は、TCR複合体を刺激するCD3イプシロン抗体(例えば、SP34、OKT3)である。別の例において、GITRに対する作動抗体は、制御性T細胞機能を阻害すると同時にCD8+Tエフェクター細胞を活性化させ得る(Knee et al.,European Journal of Cancer 67:1e10(2016)を参照されたい)。免疫細胞の刺激につながる拮抗抗体は、PD-1抗体(例えばペムブロリズマブまたはニボルマブ)である。PD-1は免疫細胞を抑制するものであり、したがってこれらの抗体はPD-1とそのリガンドとの相互作用を遮断し、それによって抑制シグナルに拮抗する。
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、2つの作動抗体を作り出すことができ、免疫系に2つの正の刺激をもたらすことができる(例えば、抗CD3イプシロンと抗CD137抗体)。CD3及びCD137は両方ともT細胞活性化を促進する。
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、1つの作動抗体及び1つの拮抗抗体(例えば、抗CD3イプシロン抗体及び抗CTLA4抗体)を作り出すことができる。CD3は上に述べたとおりTCR複合体を刺激する一方、CTLA4は抑制シグナルを提供する。CTLA4の抑制シグナルに拮抗することでT細胞活性化が促進されることになる。
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、2つの抑制シグナルを遮断する2つの拮抗抗体(例えば抗CTLA4抗体及び抗PD-1抗体)を作り出すことができる。上に述べたとおり、これらのシグナルは両方ともT細胞活性化を阻害し、それらに拮抗することはT細胞活性化を促進することになる。
別の例示的なTWICEは、CD3イプシロン(CD3e)抗体とT細胞活性化を促進する別の抗体とを組み合わせたものである。現段階での証拠は、CD3二重特異性抗体が多様なチェックポイント分子によってさらに調節されることを示唆している(Kobold S et al.Front Oncol.8:285(2018)を参照されたい)。加えて、T細胞を活性化させる二重特異性抗体の治療効果は、ある患者または状況においては、引き起こされたT細胞アネルギー(特定の抗原に対する正常な免疫応答の非存在)によって制限される可能性もある。このため、T細胞を活性化させる抗CD3イプシロン抗体とT細胞活性化を強め不応答を防止する抗体とを組み合わせることによって、増強された及び/またはより耐久性のある抗腫瘍T細胞応答が生じ得る。
2.2つの免疫細胞を調節するTWICE
いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときの相補的結合ドメインは、2つの異なる免疫細胞に結合する。こうして、TWICEは、2つの異なる種類の免疫細胞を調節し得る。以下の代表例を含めた多種多様な免疫細胞が、TWICEによって調節され得る。図2は、TWICEを介した2つの免疫細胞(エフェクター細胞#1及びエフェクター細胞#2)の代表的な活性化モデルを示す。
a)T細胞を刺激する及び腫瘍関連マクロファージを抑制するTWICE
2つの異なる免疫細胞の結合は、T細胞が腫瘍から排除され腫瘍関連マクロファージ(TAM)が存在している可能性がある場合に腫瘍微小環境中で有用となり得る。TAMは、血管新生、免疫抑制及び炎症を促進することによって腫瘍成長を促す代替的に活性化されたマクロファージの部類を表す(Poh and Ernst,Front Oncol.12(8):49(2018))。いくつかの実施形態では、TWICEは、相補的結合ドメイン及び免疫細胞結合ドメインが対形成しているとき、TAM活性の遮断による作用及びT細胞の活性化による作用を合一する。
いくつかの実施形態では、TWICEは、対形成しているときにT細胞活性化を媒介する免疫細胞結合ドメイン、及び対形成しているときにTAMを阻害する相補的結合ドメインを含む。
例えば、TAMに抗CSF1R遮断抗体を指向することによって、TAMの浸潤が軽減され、CD8+T細胞増殖が促進される(Ries CH et al.Cancer Cell.25(6):846-59(2014))。CD40経路の活性化も、TAMの免疫抑制作用を妨害することができる。CD40作動抗体は、古典的に活性化されたマクロファージの再プログラミングまたは動員をもたらすことができ、これは、腫瘍に対する効果的な免疫応答を引き起こすために用いられ得る。T細胞活性化とCD40作動抗体または抗CSF1R遮断抗体とを組み合わせた代表的なTWICEは、免疫結合ドメイン及び相補的結合ドメインの対形成の後に、単独のこれらの抗体のいずれかと比較して付加的有効性を提供し得る。
b)T細胞及びNK細胞を刺激するTWICE
TWICEは、がん細胞を殺滅するT細胞とNK細胞とを両方とも活性化させるために使用され得る。T細胞及びNK細胞の共活性化は、どちらかの細胞を単独で活性化させる場合と比較してがんに対するより堅牢な免疫応答につながり得る。
いくつかの実施形態では、TWICEは、対形成し合っているときにT細胞活性化を媒介する免疫細胞結合ドメイン、及び対形成し合っているときにNK細胞活性化を媒介する相補的結合ドメイン、例えば抗CD16A抗体を含む。例えば、TWICE440及びTWICE441を含むTWICEでは、抗CD16A抗体を抗CD3抗体OKT3と組み合わせた(配列番号212~215及び図18A~18Bを参照されたい)。
3.免疫細胞を刺激しがん細胞に対する作用を媒介するTWICE
TWICEは、対形成した免疫細胞結合ドメインによって免疫細胞に結合すること、及び対形成した相補的結合ドメインによってがん細胞に結合することもできる。この治療方策は、抗がん免疫細胞活性化を媒介することに加えて、標的となるがん細胞に生物学的機能を直接引き起こすことができる。がん細胞において引き起こされる生物学的機能は、例えば、細胞死受容体を介した細胞死の誘導、または免疫抑制シグナルの阻害であり得る。
免疫細胞を活性化させることができる対形成した免疫細胞結合ドメインは既に記載されており、TWICE成分は、がんに結合する相補的結合ドメインも含み得る。
a)免疫細胞を刺激する及びがんによる免疫細胞不活性化を阻止するTWICE
本発明のTWICEは、免疫細胞を活性化させること及びがん細胞からの免疫細胞へ抑制シグナルを遮断することの両方のために使用され得る。いくつかの実施形態では、相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに免疫細胞活性化を阻害するがん細胞からのシグナルを遮断し得る。
例えば、いくつかのがんにはPD-L1が発現するが、これは、T細胞上のPD-1またはB7.1に結合しT細胞不活性化を招き得るものである。いくつかの実施形態では、相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにがん細胞上のPD-L1に結合することができる。いくつかの実施形態では、PD-L1との結合は、T細胞上のPD-1との相互作用を遮断する。PD-1とPD-L1との相互作用の遮断は、抗腫瘍応答を改善することが示されている。PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブ)は、非小細胞肺癌及びメラノーマを含めたいくつかの悪性疾患の治療のために承認されている。
別の例において、いくつかのがんには腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーが発現し得るが、これは、抗腫瘍免疫応答を下方制御するものである。そのような分子の例は核因子カッパB活性化受容体(RANK)であり、これは、制御性T細胞上のそのリガンドであるRANKLに結合して免疫抑制環境を作り出す(Wu et al.Oncoimmunology.4(7)(2015)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにがん細胞上のRANKに結合する。いくつかの実施形態では、RANKに結合することでT細胞上のRANKLとの相互作用が遮断される。がんの前臨床マウスモデルにおいて、RANKLに対する拮抗抗体によるRANKシグナル伝達の遮断は、抗CTLA4抗体の抗腫瘍作用を増強し、これがT細胞を活性化させ得る(Ahern et al Clin Cancer Res.23(19):5789-5801(2017))。
b)免疫細胞を刺激する及びがん細胞の細胞死を誘発するTWICE
本発明のTWICEは、免疫細胞を活性化させること及びがん細胞の細胞死を誘発することの両方のためにも使用され得る。いくつかの実施形態では、相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに、がん細胞によって発現した受容体に結合することによってがん細胞の死滅を誘発し得る。
刺激されて細胞死を誘発することができる受容体の例としては、TNFRファミリーのメンバー、例えば、Fas/CD95/Apo1、TNFR1/p55/CD120a、DR3/Apo3/WSL-1/TRAMP/LARD、TRAIL-R1/DR4、DR5/Apo2/TRAIL-R2/TRICK2/KILLER、またはCAR1が挙げられる。がん細胞における細胞死を引き起こす臨床開発中のTNFRファミリー作動抗体は、マパツムマブ(NCT01258608)である。がん細胞を直接殺滅する作用を組み合わせ、抗がん免疫応答を活性化させるTWICEは、付加的有効性を有しうる。
4.補足的機能性ドメインを含むTWICE
TWICEの第1及び第2の成分は、補足的機能性ドメインも含み得る。本明細書中で使用される「補足的機能性ドメイン」は、適切な免疫細胞に指向されたときに別のドメインとの対形成を必要とせずに免疫機能を調節する分子を指す。したがって、TWICEは補足的機能性ドメインを免疫細胞に指向することができ、標的指向なしでは活性を欠くまたは全身送達するには毒性がありすぎる可能性がある補足的機能性ドメインの作用を促すことができる。例示的な補足的機能性ドメインは、活性を有するためには適切な免疫細胞に指向されねばならないものである弱化型サイトカインである。この実施形態は図5に示されている。弱化型サイトカインは、CD-122に優先的なIL-2経路作動薬であるベムペガルデスロイキン(NKTR-214)に関するデータによって示されるように、標的細胞を優先的に活性化させることができる。
このように、TWICEは、対形成した免疫細胞結合ドメインの作用及び補足的機能性ドメインからの作用によって付加的な抗がん免疫応答を媒介することができ、要するに、エフェクター細胞/がん細胞係合シナプスにおいてのみ活性化されるエフェクター細胞のための「医療パッケージ」を送達する。
B.ポリペプチド一本鎖または2成分
TWICEは、ポリペプチド一本鎖、または2つの別個の成分を含み得る。
いくつかの実施形態では、第1の成分は第2の成分に共有結合で結合していない。いくつかの実施形態では、第1の成分は第2の成分に共有結合で結合している。
いくつかの実施形態では、TWICEは2つの別個の成分からなる。換言すれば、TWICEは、別個のポリペプチドである第1及び第2の成分からなり得る。
いくつかの実施形態では、TWICEはポリペプチド一本鎖からなる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の成分は1本のアミノ酸配列の中に含まれている。
TWICEがポリペプチド一本鎖からなる場合、第1及び第2の成分はリンカーによって隔てられ得る。いくつかの実施形態では、このリンカーは第1及び第2の成分を共有結合で結び付けている。いくつかの実施形態では、このリンカーは切断可能リンカーを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の成分の間の切断可能リンカーはプロテアーゼ切断部位を含む。
いくつかの実施形態では、第1の成分及び第2の成分に共有結合で結合しているリンカーの中に含まれている切断部位はプロテアーゼ切断部位である。配列番号1~84に、使用され得るいくつかの例示的なプロテアーゼ切断部位を列挙するが、TWICEはこの一連のプロテアーゼ切断部位に限定されず、他のプロテアーゼ切断部位を採用してもよい。
いくつかの実施形態では、第1の成分及び第2の成分に共有結合で結合しているリンカーの中に含まれている切断部位は、腫瘍関連プロテアーゼ切断部位である。腫瘍関連プロテアーゼは、腫瘍との関連があるものである。いくつかの実施形態では、腫瘍関連プロテアーゼは、腫瘍において身体の他の領域よりも高発現している。表2(以下の第IV節に示す)に腫瘍関連プロテアーゼの例を示すが、TWICEの腫瘍関連プロテアーゼ切断部位を選択するために切断部位腫瘍内で発現する任意のプロテアーゼを使用してよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、腫瘍微小環境中の非がん細胞、例えば腫瘍関連マクロファージまたは線維芽細胞によって発現する。
いくつかの実施形態では、第1の成分及び第2の成分に共有結合で結合しているリンカーの中に含まれている切断部位は、血中にみられるプロテアーゼのための切断部位である。血中にみられる例示的なプロテアーゼとしては、トロンビン、好中球エラスターゼ、及びフューリンが挙げられる。
C.標的指向性部分
第1の成分の標的指向性部分は、薬剤をがん細胞の局所環境に送達することによって機能し、局在化治療方策を可能にする。いくつかの実施形態では、第1の標的指向性部分は、がん細胞に特異的に結合することによってがん細胞を標的とする。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的指向性部分は両方とも、がんによって発現した腫瘍抗原に結合する。
いくつかの実施形態では、第1の標的指向性部分は、がんによって発現した腫瘍抗原に結合し、第2の標的指向性部分は、腫瘍微小環境細胞によって発現した抗原に結合する。
いくつかの実施形態では、標的指向性部分は、抗体またはその抗原結合性断片である。抗原結合性断片によって本発明者らが意図するものは、標的に対するその結合活性を保持している任意の抗体断片、例えばscFvまたは他の機能性断片、例えば、軽鎖を有さない免疫グロブリン、VHH、VNAR、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、抗体断片、ダイアボディ、scAB、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体、Fd、CDR領域、または抗原もしくはエピトープに結合できる任意の抗体の一部もしくはペプチド配列である。VHH及びVNARは古典的な抗体に取って代わるものであり、それらが異なる種(それぞれラクダ及びサメ)において産生されるにもかかわらず本発明者らはそれらも抗体の抗原結合性断片に含める。いくつかの実施形態では、Fvドメインはジスルフィド安定化Fv(dsFv)である。本出願が抗体に言及する場合、それは、具体的に「完全長抗体」と記されていない限り本質的にその抗原結合性断片の意味を含む。
いくつかの実施形態では、標的指向性部分は抗体ではなく別の種類の標的指向性部分である。がんを標的とすることができる様々な標的指向性部分が知られており、これには、DNAアプタマー、RNAアプタマー、アルブミン、リポカリン、フィブロネクチン、アンキリン、フィノマー、Obody、DARPin、ノッティン(knotins)、アビマー、アトリマー、アンチカリン、アフィリン、アフィボディ、二環式ペプチド、cys-knot、FN3(アドネクチン、セントリリン(centryrins)、プロネクチン、TN3)、及びKunitz型ドメインが含まれる。これら及びその他の非抗体足場構造体は、がん細胞を標的とするために使用され得る。より小さい非抗体足場は血流から速やかに除去され、モノクローナル抗体よりも短い半減期を有する。それらはまた、毛細血管から血管内皮及び基底膜を介した速い浸出のためにより速い組織浸透を示す。Vazquez-Lombardi et al.,Drug Discovery Today 20(1):1271-1283(2015)を参照されたい。がんを標的とする複数の非抗原足場が既に臨床開発中であり、他の候補は前臨床段階にある。Vazquez-Lombardiの表1を参照されたい。
1.がんを標的とすることができる標的指向性部分
いくつかの実施形態では、第1の標的指向性部分のみが、がんによって発現した抗原に結合し、第2の標的指向性部分は当該結合をしない。いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的指向性部分の両方が、がんによって発現した抗原に結合する。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的指向性部分は同じであり、同じ抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的指向性部分は、がん細胞によって発現した同じ抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的指向性部分は、がんによって発現した同じ抗原の上にある異なるエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的指向性部分は、がんによって発現した異なる抗原に結合する。
使用され得るある特定の腫瘍抗原(括弧内はがん細胞種の例である)としては、Her2/Neu(上皮悪性腫瘍)、CD22(B細胞悪性腫瘍)、EpCAM(CD326)(上皮悪性腫瘍)、EGFR(上皮悪性腫瘍)、PSMA(前立腺癌腫)、CD30(B細胞悪性腫瘍)、CD20(B細胞悪性腫瘍)、CD33(骨髄悪性腫瘍)、CD80(B細胞悪性腫瘍)、CD86(B細胞悪性腫瘍)、CD2(T細胞またはNK細胞リンパ腫)、CA125(卵巣癌腫を含めた複数のがん)、炭酸脱水酵素IX(腎細胞癌腫を含めた複数のがん)、CD70(B細胞悪性腫瘍)、CD74(B細胞悪性腫瘍)、CD56(T細胞またはNK細胞リンパ腫)、CD40(B細胞悪性腫瘍)、CD19(B細胞悪性腫瘍)、c-met/HGFR(消化器及び肝臓悪性腫瘍、TRAIL-R1/DR4(卵巣及び大腸癌腫を含めた複数の悪性腫瘍)、DRS(卵巣及び大腸癌腫を含めた複数の悪性腫瘍)、PD-1(B細胞悪性腫瘍)、PD-L1(上皮腺癌を含めた複数の悪性腫瘍)、IGF-1R(上皮腺癌を含めた大抵の悪性腫瘍)、VEGF-R2(上皮腺癌を含めた大多数の悪性腫瘍に関連する脈管構造、前立腺細胞抗原(PSCA)(前立腺癌)、MUC1(上皮悪性腫瘍)、CanAg(腫瘍、例えば結腸及び膵臓の癌腫)、メソテリン(中皮腫ならびに卵巣及び膵臓腺癌を含めた多くの腫瘍)、P-カドヘリン(乳腺癌を含めた上皮悪性腫瘍)、ミオスタチン(GDF8)(肉腫ならびに卵巣及び膵臓腺癌を含めた多くの腫瘍)、Cripto(TDGF1)(結腸癌、乳癌、肺癌、卵巣癌及び膵臓癌を含めた上皮悪性腫瘍)、ACVRL1/ALK1(白血病及びリンパ腫を含めた複数の悪性腫瘍)、MUC5AC(乳腺癌を含めた上皮悪性腫瘍)、CEACAM(乳腺癌を含めた上皮悪性腫瘍)、CD137(B細胞またはT細胞悪性腫瘍)、CXCR4(B細胞またはT細胞悪性腫瘍)、ニュートロピリン1(肺癌を含めた上皮悪性腫瘍)、グリピカン(肝臓、脳及び乳房のがんを含めた複数のがん)、HER3/ERBB3(上皮悪性腫瘍)、PDGFRa(上皮悪性腫瘍)、EphA2(神経芽腫、メラノーマ、乳癌及び小細胞肺癌腫を含めた複数のがん)、CD38(骨髄腫)、CD138(骨髄腫)、α4インテグリン(AML、骨髄腫、CLL、及び大抵のリンパ腫)、CCR4抗体(リンパ腫)、CD52(白血病)、CD79b(リンパ腫)、CTLA-4(非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌及び肝細胞癌腫を含めた複数のがん)、DLL3(肺癌)、エンドグリン(軟部組織肉腫、脈管肉腫及び腎細胞癌腫を含めた複数のがん)、フィブロネクチンエクストラドメインB(メラノーマ)、葉酸受容体1(上皮卵巣癌、腹膜癌腫及びファロピウス管癌を含めた複数のがん)、MMP-9(胃癌または胃食道結合部腺癌)、NGcGM3(肺癌)、SLAMF7(複数の骨髄腫)、TROP-2(乳癌)、またはVEGF(大腸癌)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、標的指向性部分は、α4インテグリン、A33、ACVRL1/ALK1、ADAM17、ALK、APRIL、BCMA、C242、CA125、カドヘリン-19、CAIX、CanAg、炭酸脱水酵素IX、CCN1、CCR4、CD123、CD133、CD137(4-1BB)、CD138/シンデカン1、CD19、CD2、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD4、CD40、CD44、CD45、CD48、CD5、CD52、CD56、CD59、CD70、CD70b、CD71、CD74、CD79b、CD80、CD86、CD98、CEA、CEACAM、CEACAM1、CK8、c-Kit、CLDN1、CLDN18、CLDN18.2、CLDN6、c-met/HGFR、c-RET、Cripto、CTLA-4、CXCR4、DKK-1、DLL3、DLL4、TRAIL-R2/DR5、DRS、EGFL7、EGFR、EGFRvIII、エンドグリン、ENPP3、EpCAM、EphA2、エピシアリン、FAP、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、フィブロネクチンエクストラドメインB、FLT-3、flt4、葉酸受容体1、GCC、GD2、GD3、グリピカン-3、グリピカン、GM3、GPNMB、GPR49、GRP78、Her2/Neu、HER3/ERBB3、HLA-DR、ICAM-1、IGF-1R、IGFR、IL-3Ra、インテグリンα5β1、インテグリンα6β4、インテグリンαV、インテグリンαVβ3、ルイスY、ルイスy/b抗原、LFL2、LIV-1、Ly6E、MCP-1、メソテリン、MMP-9、MUC1、MUC18、MUC5A、MUC5AC、ミオスタチン、NaPi2b、ニューロピリン1、NGcGM3、NRP1、P-カドヘリン、PCLA、PD-1、PDGFRa、PD-L1、PD-L2、ホスファチジルセリン、PIVKA-II、PLVAP、PRLR、プロガストリン、PSCA、PSMA、RANKL、RG1、Siglec-15、SLAMF6、SLAMF7、SLC44A4、STEAP-1、TACSTD-2、テネイシンC、TPBG、TRAIL-R1/DR4、TROP-2、TWEAKR、TYRP1、VANGL2、VEGF、VEGF-C、VEGFR-2、またはVEGF-R2に結合する。
表2(以下の第IV節に示す)は、がん種、標的指向性部分のあり得る標的、及びそれらのがん種によって発現するプロテアーゼの非限定的な例を示す。がんに関連するプロテアーゼは腫瘍関連プロテアーゼと呼称され得る。腫瘍の部位での切断を必要とするTWICEを調製するためには、がんが同定され得、(所望の)標的指向性部分のための標的が選定され得、がん種または所望の腫瘍微小環境細胞(TAMまたはTAFなど)のための1つまたは2つのプロテアーゼが選定される。全てのTWICEがプロテアーゼ切断を必要とするわけではないが、プロテアーゼ切断は、切断部位を有する単一の分子として作り出されたTWICE、または不活性結合パートナーを含むTWICEにおいて有益となり得る。
表3(以下の第IV節に示す)は、異なる標的指向性部分の標的となり得るがんについての付加的情報を、いくつかの標的指向性部分が複数の異なるがん種を標的とすることができる可能性がある事実を含めて提供する。TWICEにおいて、第1の成分及び第2の成分は両方とも、がんを標的とすることができる標的指向性部分を含み得る。第1の成分及び第2の成分の標的指向性部分は、同じ抗原または異なる抗原に結合し得る。
腫瘍抗原に結合する及び腫瘍細胞に対する特異性を有する抗体は当技術分野でよく知られている。
FDAは、がんを治療するための承認済み抗体薬の一覧表を整備しており、その多くは、がん抗原に結合するものであり、本発明に関して採用され得る。FDAウェブサイト上のThe Orange Book Online or Drugs@FDAを参照されたい。FDAはまた、疾患名で検索され得るclinicaltrials.govデータベースにおいて、進行中の臨床試験の一覧表も整備している。表4(以下の第IV節に示す)は、腫瘍細胞に対する特異性を有する承認済み抗体の代表的な一覧表を示す。表5(以下の第IV節に示す)は、腫瘍細胞に対する特異性を有する開発中の抗体の代表的な一覧表を示す。
表6(以下の第IV節に示す)は、腫瘍抗原に結合する及びTWICEの標的指向性部分として使用され得る例示的な抗体に関する選出された刊行物をまとめたものである。これらの刊行物は、腫瘍抗原に結合できる標的指向性部分が優に当技術分野の技量範囲内であったと共に本出願の出願時に発明者らの所有物であったことを示している。
当技術分野でよく知られている他の抗体を、所与のがんを標的とするための標的指向性部分として使用してもよい。抗体及びその各々の抗原としては、ニボルマブ(抗PD-1抗体)、TA99(抗gp75)、3F8(抗GD2)、8H9(抗B7-H3)、アバゴボマブ(抗CA-125(模倣体))、アデカツムマブ(抗EpCAM)、アフツズマブ(抗CD20)、アラシズマブ ペゴール(抗VEGFR2)、ペンテト酸アルツモマブ(抗CEA)、アマツキシマブ(抗メソテリン)、AME-133(抗CD20)、アナツモマブ マフェナトクス(抗TAG-72)、アポリズマブ(抗HLA-DR)、アルシツモマブ(抗CEA)、バビツキシマブ(抗ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(抗CD22)、ベリムマブ(抗BAFF)、ベシレソマブ(抗CEA関連抗原)、ベバシズマブ(抗VEGF-A)、ビバツズマブ メルタンシン(抗CD44 v6)、ブリナツモマブ(抗CD19)、BMS-663513(抗CD137)、ブレンツキシマブ ベドチン(抗CD30(TNFRSF8))、カンツズマブ メルタンシン(抗ムチンCanAg)、カンツズマブ ラブタンシン(抗MUC1)、カプロマブ ペンデチド(抗前立腺癌腫細胞)、カルルマブ(抗MCP-1)、カツマキソマブ(抗EpCAM,CD3)、cBR96-ドキソルビシン免疫複合体(抗ルイスY抗原)、CC49(抗TAG-72)、セデリズマブ(抗CD4)、Ch.14.18(抗GD2)、ch-TNT(抗DNA関連抗原)、シタツズマブ ボガトクス(抗EpCAM)、シクスツムマブ(抗IGF-1受容体)、クリバツズマブ テトラキセタン(抗MUC1)、コナツムマブ(抗TRAIL-R2)、CP-870893(抗CD40)、ダセツズマブ(抗CD40)、ダクリズマブ(抗CD25)、ダロツズマブ(抗インスリン様成長因子I受容体)、ダラツムマブ(抗CD38(環状ADPリボース加水分解酵素))、デムシズマブ(抗DLL4)、デツモマブ(抗Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(抗DR5)、ドゥリゴツマブ(抗HER3)、デュシギツマブ(抗ILGF2)、エクロメキシマブ(抗GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(抗EpCAM)、エロツズマブ(抗SLAMF7)、エルシリモマブ(抗IL-6)、エナバツズマブ(抗TWEAK受容体)、エノチクマブ(抗DLL4)、エンシツキシマブ(抗5AC)、エピツモマブ シツキセタン(抗エピシアリン)、エプラツズマブ(抗CD22)、エルツマキソマブ(抗HER2/neu,CD3)、エタラシツズマブ(抗インテグリンαvβ3)、ファラリモマブ(抗インターフェロン受容体)、ファルレツズマブ(抗葉酸受容体1)、FBTA05(抗CD20)、フィクラツズマブ(抗HGF)、フィジツムマブ(抗IGF-1受容体)、フランボツマブ(抗TYRP1(糖タンパク質75))、フレソリムマブ(抗TGFβ)、フツキシマブ(抗EGFR)、ガリキシマブ(抗CD80)、ガニツマブ(抗IGF-I)、ゲムツズマブ オゾガマイシン(抗CD33)、ギレンツキシマブ(抗炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレムバツムマブ ベドチン(抗GPNMB)、グセルクマブ(抗IL13)、イバリズマブ(抗CD4)、イビリツモマブ チウキセタン(抗CD20)、イクルクマブ(抗VEGFR-1)、イゴボマブ(抗CA-125)、ゾルベツキシマブ(IMAB362、抗CLDN18.2)、IMC-CS4(抗CSF1R)、IMC-TR1(TGFβRII)、イムガツズマブ(抗EGFR)、インクラクマブ(抗セレクチンP)、インダツキシマブ ラブタンシン(抗SDC1)、イノツズマブ オゾガマイシン(抗CD22)、インテツムマブ(抗CD51)、イピリムマブ(抗CD152)、イラツムマブ(抗CD30(TNFRSF8))、KM3065(抗CD20)、KW-0761(抗CD194)、LY2875358(抗MET)、ラベツズマブ(抗CEA)、ランブロリズマブ(抗PDCD1)、レキサツムマブ(抗TRAIL-R2)、リンツズマブ(抗CD33)、リリルマブ(抗KIR2D)、ロルボツズマブ メルタンシン(抗CD56)、ルカツムマブ(抗CD40)、ルミリキシマブ(抗CD23(IgE受容体))、マパツムマブ(抗TRAIL-R1)、マルゲツキシマブ(抗ch4D5)、マツズマブ(抗EGFR)、マブリリムマブ(抗GMCSF受容体a鎖)、ミラツズマブ(抗CD74)、ミンレツモマブ(抗TAG-72)、ミツモマブ(抗GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(抗CCR4)、モキセツモマブ パスドトクス(抗CD22)、ナクロマブ タフェナトクス(抗C242抗原)、ナプツモマブ エスタフェナトクス(抗5T4)、ナルナツマブ(抗RON)、ネシツムマブ(抗EGFR)、ネスバクマブ(抗アンジオポエチン2)、ニモツズマブ(抗EGFR)、ニボルマブ(抗IgG4)、ノフェツモマブ メルペンタン、オクレリズマブ(抗CD20)、オカラツズマブ(抗CD20)、オララツマブ(抗PDGF-Rα)、オナルツズマブ(抗c-MET)、オンツキシズマブ(抗TEM1)、オポルツズマブ モナトクス(抗EpCAM)、オレゴボマブ(抗CA-125)、オトレルツズマブ(抗CD37)、パンコマブ(抗腫瘍特異的グリコシル化MUC1)、パルサツズマブ(抗EGFL7)、パソコリズマブ(抗IL-4)、パトリツマブ(抗HER3)、ペムツモマブ(抗MUC1)、ペルツズマブ(抗HER2/neu)、ピジリズマブ(抗PD-1)、ピナツズマブ ベドチン(抗CD22)、ピンツモマブ(抗腺癌抗原)、ポラツズマブ ベドチン(抗CD79B)、プリツムマブ(抗ビメンチン)、PRO131921(抗CD20)、キリズマブ(抗IGHE)、ラコツモマブ(抗N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(抗フィブロネクチンエクストラドメインB)、ラムシルマブ(抗VEGFR2)、リロツムマブ(抗HGF)、ロバツムマブ(抗IGF-1受容体)、ロレズマブ(抗RHD)、ロベリズマブ(抗CD11及び抗CD18)、サマリズマブ(抗CD200)、サツモマブ ペンデチド(抗TAG-72)、セリバンツマブ(抗ERBB3)、SGN-CD19A(抗CD19)、SGN-CD33A(抗CD33)、シブロツズマブ(抗FAP)、シルツキシマブ(抗IL-6)、ソリトマブ(抗EpCAM)、ソニツズマブ(抗エピシアリン)、タバルマブ(抗BAFF)、タカツズマブ テトラキセタン(抗アルファフェトタンパク質)、タプリツモマブ パプトクス(抗CD19)、テリモマブ アリトクス、テナツモマブ(抗テネイシンC)、テネリキシマブ(抗CD40)、テプロツムマブ(抗CD221)、TGN1412(抗CD28)、チシリムマブ(抗CTLA-4)、チガツズマブ(抗TRAIL-R2)、TNX-650(抗IL-13)、トシツモマブ(抗CS20)、トベツマブ(抗CD140a)、TRBS07(抗GD2)、トレガリズマブ(抗CD4)、トレメリムマブ(抗CTLA-4)、TRU-016(抗CD37)、ツコツズマブ セルモロイキン(抗EpCAM)、ウブリツキシマブ(抗CD20)、ウレルマブ(抗4-1BB)、バンチクツマブ(抗Frizzled受容体)、バパリキシマブ(抗AOC3(VAP-1))、バテリズマブ(抗ITGA2)、ベルツズマブ(抗CD20)、ベセンクマブ(抗NRP1)、ビジリズマブ(抗CD3)、ボロシキシマブ(抗インテグリンα5β1)、ボルセツズマブ マフォドチン(抗CD70)、ボツムマブ(抗腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(抗EGFR)、ザノリムマブ(抗CD4)、ザツキシマブ(抗HER1)、ジラリムマブ(抗CD147(ベイシジン))、RG7636(抗ETBR)、RG7458(抗MUC16)、RG7599(抗NaPi2b)、MPDL3280A(抗PD-L1)、RG7450(抗STEAP1)、TAK-164(抗GCC)、及びGDC-0199(抗Bcl-2)が挙げられる。
これらの抗原に結合する抗体も、とりわけ記されているがん種のために、TWICEに使用され得る:アミノペプチダーゼN(CD13)、アネキシンA1、B7-H3(CD276、様々ながん)、CA125(卵巣癌)、CA15-3(癌腫)、CA19-9(癌腫)、L6(癌腫)、ルイスY(癌腫)、ルイスX(癌腫)、アルファフェトタンパク質(癌腫)、CA242(大腸癌)、胎盤アルカリホスファターゼ(癌腫)、前立腺特異抗原(前立腺)、前立腺性酸性ホスファターゼ(前立腺)、上皮成長因子(癌腫)、CD2(ホジキン病、NHLリンパ腫、多発性骨髄腫)、CD3イプシロン(T細胞リンパ腫、肺癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、自己免疫疾患、悪性腹水)、CD19(B細胞性悪性腫瘍)、CD20(非ホジキンリンパ腫、B細胞新生物、自己免疫疾患)、CD21(B細胞リンパ腫)、CD22(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、SLE)、CD30(ホジキンリンパ腫)、CD33(白血病、自己免疫疾患)、CD38(多発性骨髄腫)、CD40(リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(CLL))、CD51(転移性メラノーマ、肉腫)、CD52(白血病)、CD56(小細胞肺癌、卵巣癌、メルケル細胞癌腫、及び液性腫瘍、多発性骨髄腫)、CD66e(癌腫)、CD70(転移性腎細胞癌腫及び非ホジキンリンパ腫)、CD74(多発性骨髄腫)、CD80(リンパ腫)、CD98(癌腫)、CD123(白血病)、ムチン(癌腫)、CD221(固形腫瘍)、CD22(乳癌、卵巣癌)、CD262(NSCLC及び他のがん)、CD309(卵巣癌)、CD326(固形腫瘍)、CEACAM3(大腸癌、胃癌)、CEACAM5(CEA、CD66e)(乳癌、大腸癌及び肺癌)、DLL4(A様4)、EGFR(様々ながん)、CTLA4(メラノーマ)、CXCR4(CD184、ヘム腫瘍学、固形腫瘍)、エンドグリン(CD105、固形腫瘍)、EPCAM(上皮細胞接着分子、膀胱癌、脳腫瘍、頸部癌、結腸癌、NHL前立腺癌及び卵巣癌)、ERBB2(肺癌、乳癌、前立腺癌)、FCGR1(自己免疫疾患)、FOLR(葉酸受容体、卵巣癌)、FGFR(癌腫)、GD2ガングリオシド(癌腫)、G-28(細胞表面抗原糖脂質、メラノーマ)、GD3イディオタイプ(癌腫)、熱ショックタンパク質(癌腫)、HER1(肺癌、胃癌)、HER2(乳癌、肺癌及び卵巣癌)、HLA-DR10(NHL)、HLA-DRB(NHL、B細胞白血病)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(癌腫)、IGF1R(固形腫瘍、血液癌)、IL-2受容体(T細胞白血病及びリンパ腫)、IL-6R(多発性骨髄腫、RA、キャッスルマン病、IL6依存性腫瘍)、インテグリン(様々ながんのαvβ3、α5β1、α6β4、α11β3、α5β5、αvβ5)、MAGE-1(癌腫)、MAGE-2(癌腫)、MAGE-3(癌腫)、MAGE4(癌腫)、抗トランスフェリン受容体(癌腫)、p97(メラノーマ)、MS4A1(膜貫通4ドメインサブファミリーAメンバー1、非ホジキンB細胞リンパ腫、白血病)、MUC1(乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、気管支癌及び消化器癌)、MUC16(CA125)(卵巣癌)、CEA(大腸癌)、gp100(メラノーマ)、MARTI(メラノーマ)、MPG(メラノーマ)、MS4A1(膜貫通4ドメインサブファミリーA、小細胞肺癌、NHL)、ヌクレオリン、Neuがん遺伝子産物(癌腫)、P21(癌腫)、ネクチン-4(癌腫)、抗(N-グリコリルノイラミン酸、乳癌、メラノーマ癌)のパラトープ、PLAP様精巣アルカリホスファターゼ(卵巣癌、精巣癌)、PSMA(前立腺腫瘍)、PSA(前立腺)、ROB04、TAG72(腫瘍関連糖タンパク質72、AML、胃癌、大腸癌、卵巣癌)、T細胞膜貫通タンパク質(がん)、Tie(CD202b)、組織因子、TNFRSF10B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B、癌腫)、TNFRSF13B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B、多発性骨髄腫、NHL、他の癌、RA及びSLE)、TPBG(栄養膜糖タンパク質、腎細胞癌腫)、TRAIL-R1(腫瘍壊死アポトーシス誘導性リガンド受容体1、リンパ腫、NHL、大腸癌、肺癌)、VCAM-1(CD106、メラノーマ)、VEGF、VEGF-A、VEGF-2(CD309)(様々な癌)。他のいくつかの腫瘍関連抗原標的について、総説がなされている(Gerber,et al,mAbs 2009 1:247-253、Novellino et al,Cancer Immunol Immunother.2005 54:187-207、Franke,et al,Cancer Biother Radiopharm.2000,15:459-76、Guo,et al.,Adv Cancer Res.2013、119:421-475,Parmiani et al.J Immunol.2007 178:1975-9)。これらの抗原の例としては、分化抗原群(CD4、CDS5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD12w、CD14、CD15、CD16、CDw17、CD18、CD21、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD31、CD32、CD34、CD35、CD36、CD37、CD41、CD42、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49b、CD49c、CD53、CD54、CD55、CD58、CD59、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD68、CD69、CD71、CD72、CD79、CD81、CD82、CD83、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD95、CD96、CD100、CD103、CD105、CD106、CD109、CD117、CD120、CD127、CD133、CD134、CD135、CD138、CD141、CD142、CD143、CD144、CD147、CD151、CD152、CD154、CD156、CD158、CD163、CD166、CD168、CD184、CDw186、CD195、CD202(a、b)、CD209、CD235a、CD271、CD303、CD304)、アネキシンA1、ヌクレオリン、エンドグリン(CD105)、ROB04、アミノペプチダーゼN、-様4(DLL4)、VEGFR-2(CD309)、CXCR4(CD184)、Tie2、B7-H3、WT1、MUC1、LMP2、HPV E6 E7、EGFRvIII、HER-2/neu、イディオタイプ、MAGE A3、p53非突然変異体、NY-ESO-1、GD2、CEA、MelanA/MART1、Ras突然変異体、gp100、p53突然変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr-abl、チロシナーゼ、サバイビン、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、PAP、ML-IAP、AFP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソテリン、PSCA、MAGE A1、sLe(a)、CYPIB I、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6-AML、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAXS、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE 1、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-β、MAD-CT-2、及びFos関連抗原1が挙げられる。
いくつかの実施形態では、がんを標的とすることができる標的指向性部分は抗体ではなく、別の種類の標的指向性部分である。表7(以下の第IV節に示す)は、いくつかの代表的な非抗体標的指向性部分及びそれらの対応する抗原を示す。
別の実施形態では、標的指向性部分は、がん細胞上に発現することが知られているタンパク質に対する結合パートナーであり得る。そのような発現レベルには過剰発現が含まれる。例えば、表8に記載される結合パートナー(以下の第IV節に示す)は、がん細胞上の以下の標的に結合し得る。
結合パートナーは、表8に列挙される結合パートナーの完全長または野生型配列を含んでいる必要はない。必要とされる全てのことは、結合パートナーががん細胞上の標的に結合するということであり、したがって、当技術分野でよく知られている切断形態、類縁体、バリアント及び誘導体を含み得る。
加えて、いくつかの実施形態では、結合パートナーは、がん細胞上に発現することが知られているタンパク質に結合することができるアプタマーであり得る。がん細胞に結合するアプタマーはよく知られており、それを設計する方法は既知である。
細胞に基づくSELEXシステムを用いて、無作為的候補ライブラリーから標的細胞特異的アプタマーのパネルが選抜され得る。ssDNAまたはssRNAプールを結合用緩衝液に溶解させ、変性させ、その後、標的細胞と共にインキュベートする。洗浄後、結合しているDNAまたはRNAは、加熱によって溶離され得、その後(所望により)陰性細胞と共にインキュベートされ得、遠心分離され得、上清が除去され得る。上清は、PCRによってビオチン標識プライマーを使用して増幅され得る。選抜されたセンスssDNAまたはssARNAは、ストレプトアビジン被覆ビーズを使用してアンチセンスビオチン化鎖から分離され得る。親和性を向上させるために、洗浄時間、緩衝液の体積、及び洗浄回数を増やすことによって洗浄強度を強めてもよい。所望の回数の選抜を行った後、選抜されたssDNAまたはssRNAプールはPCR増幅され得、E.coliにクローニングされ得、配列決定され得る。Shangguan et al.,Aptamers evolved from live cells as effective molecular probes for cancer study,PNAS 103(32:11838-11843(2006)、Lyu et al,Generating Cell Targeting Aptamers for Nanotherapeutics Using Cell-SELEX,Theranostics 6(9):1440-1452(2016)を参照されたく、また、Li et al.,Inhibition of Cell Proliferation by an Anti-EGFR Aptamer,PLoS One 6(6):e20229(2011)も参照されたい。これらの参考文献にある、アプタマーを設計するための具体的手法、及びがん細胞に結合する特異的アプタマーは、これをもって参照により援用される。
例えば、アプタマーは配列番号94~164を含み得る。いくつかの実施形態では、アプタマーは配列番号95を含み得る。これらのアプタマーはEGFRを指向するものであり、がん細胞上に提示された標的に結合できる代表的なアプタマーとして提供されているにすぎない。Zhu et al.,Theranostics 4(9):931-944(2014)に記載されているような、がん細胞上の他の標的に対する他のアプタマーは、同様に本明細書の記載の一部であり、参照により援用される。
いくつかの実施形態では、本明細書において使用するためのアプタマーは、がん細胞上の標的にナノモーラー~ピコモーラー(例えば、1ピコモーラー~500ナノモーラー、または1ピコモーラー~100ナノモーラー)の範囲のKdで結合する。
2.腫瘍微小環境細胞を標的とすることができる標的指向性部分
現在のがん免疫療法抗体は、腫瘍内にエフェクター細胞が存在することを必要とする。しかしながら、腫瘍は、エフェクター細胞を排除する免疫抑制環境を作り出すことができ、結果的に免疫療法の有効性が低くなる(Herbst et al Nature.515(7528):563-7(2014)を参照されたい)。エフェクター細胞を有さない腫瘍は、「冷腫瘍」と呼称されることがある(Whiteside TL et al.Clin Cancer Res.22(8):1845-55(2016)を参照されたい)。
エフェクター細胞は、腫瘍間質、詳しくは腫瘍微小環境中の非がん細胞、例えば腫瘍関連線維芽細胞(TAF)によって腫瘍から排除され得る(Ziani et al,Front Immunol.9:414(2018)を参照されたい)。腫瘍微小環境中の非がん細胞は「腫瘍微小環境細胞」と呼称されることがある。冷腫瘍中のT細胞は間質に限定され得るため、悪性細胞と間質との界面を標的とした免疫療法薬は免疫排除に打ち勝てる可能性がある。それゆえ、第2の標的指向性部分によって腫瘍微小環境細胞を標的とすることで、本発明のキットまたは組成物に付加的な特異性が与えられ得る。
いくつかの実施形態では、第1の標的指向性部分は、がんによって発現した抗原に結合し、第2の標的指向性部分は、腫瘍微小環境細胞によって発現した抗原に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍微小環境細胞は線維芽細胞またはマクロファージである。これらの細胞は、腫瘍関連線維芽細胞もしくはがん関連線維芽細胞(TAFまたはCAF)、または腫瘍関連マクロファージもしくはがん関連マクロファージ(TAMまたはCAMと呼称されることがある。本明細書中で使用する場合、「腫瘍関連線維芽細胞」は、腫瘍塊の近傍またはその中にみられる線維芽細胞を指す。本明細書中で使用する場合、「腫瘍関連マクロファージ」は、腫瘍塊の近傍にまたは近傍でみられるマクロファージを指す。
図2は、腫瘍微小環境におけるがん細胞へのTWICEの一方の成分の指向及び非がん細胞への他方の成分の指向を示す。この種のTWICEの場合、2つの成分の免疫結合ドメイン及び/または2つの成分の相補的結合ドメインが対形成するのは、がん細胞及び非がん腫瘍微小環境細胞が近接したときだけであろう。
TAFは、活性化マーカー、例えば線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)及びアルファ平滑筋アクチンの発現を特徴とし(Barnett and Vilar,J Natl Cancer Inst 110(1):11-13(2018)を参照されたい)、直接的または間接的な機序によって免疫抑制環境を生み出し得る。直接的な免疫抑制作用は、TGFベータなどの成長因子またはサイトカイン、例えばCXCL12によって媒介され得、間接的な免疫抑制作用は、腫瘍微小環境における細胞外マトリックスの再構築によって媒介され得る(Ziani et al,2018を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、第2の成分の標的指向性部分は、TAFによって発現した抗原に結合する。いくつかの実施形態では、TAFを標的とする標的指向性部分は、FAPに結合する抗体、例えばシブロツズマブ(US20120258119A1を参照されたい)を含む。FAPは、主に腫瘍間質上に発現し、正常な線維芽細胞上には発現しない(Brennen et al.Mol Cancer Ther.11(2):257-266(2012))。
いくつかの実施形態では、第2の成分の標的指向性部分は、TAMによって発現した抗原に結合する。いくつかの実施形態では、TAMを標的とする標的指向性部分は、MAC-1/CD11b(EP0488061A2を参照されたい)またはシデロフレキシン3(WO2018020000を参照されたい)に結合する抗体を含む。
D.免疫細胞結合ドメイン
第1の免疫細胞結合ドメイン及び第2の免疫細胞結合ドメインは、互いに結合しているときに免疫細胞上の抗原に結合することができる。本明細書中で使用する場合、「免疫細胞」は、免疫系に含まれる任意の細胞であり得る。免疫細胞は、自然または獲得免疫応答に関与する細胞であり得る。
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞(NK)、マクロファージまたはT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はγδT細胞またはナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)である。
1.T細胞結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1のT細胞結合ドメイン及び第2のT細胞結合ドメインは、互いに結合しているときにT細胞に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1のT細胞結合ドメイン及び第2のT細胞結合ドメインは、互いに結合しているときにCD3またはT細胞受容体(TCR)に結合することができる。
CD3は、全てのT細胞上に存在し、γ、δ、ε、ζ及びηと名付けられたサブユニットからなる。TCRは、α、β、γ及びδと名付けられた異なるサブユニットからなる、T細胞上に存在する別の分子である。CD3の細胞質側尾部は、TCR受容体複合体の他成分の非存在下でT細胞活性化に必要なシグナルを伝達するのに十分である。通常、T細胞細胞傷害の活性化はまず、TCRと、それ自体が外来抗原に結合しており別個の細胞の上に位置している主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質との結合に依存する。外部からの介入がない場合、この初期のTCR-MHC結合が起こったときにのみ、T細胞クローン増殖の元となるCD3依存的なシグナルカスケードが引き続いて起き得、最終的にはT細胞による細胞障害が引き続いて起き得る。しかしながら、本発明の実施形態のいくつかにおいては、第1のT細胞結合ドメイン及び第2のT細胞結合ドメインがCD3及び/またはTCRに結合すると、免疫シナプス形成を模倣したCD3及び/またはTCR分子の架橋のおかげで細胞傷害性T細胞の活性化が、無関係なTCR-MHCの非存在下で起こり得る。これは、T細胞の細胞傷害が、クローンに依存しない仕方で、すなわちT細胞によって保有された特異的TCRクローンに無関係な方法で、活性化され得ることを意味する。これは、ある特定のクローン同一性を有する特異的T細胞に限らずT細胞区画全体を活性化させることを可能にする。
いくつかの実施形態では、第1のT細胞結合ドメインはVHドメインであり、第2のT細胞結合ドメインはVLドメインである。いくつかの実施形態では、第1のT細胞結合ドメインはVLドメインであり、第2のT細胞結合ドメインはVHドメインである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のT細胞結合ドメインは、対形成し合っているときにFvを含み得る。本明細書中で使用する場合、「Fv」は、会合し合ったVHとVLを指す。換言すれば、対形成し合っているときに第1及び第2のT細胞結合ドメインは、VH及びVLがVHとVLとの間にリンカーを有する一本鎖配置になっていない事実を別とすれば「scFv」を含み得る。
第1及び第2のT細胞結合ドメインがVH及びVLドメインの対である場合、VH及びVLドメインは、T細胞の表面に発現した抗原、例えばCD3またはTCRに特異的なものであり得る。いくつかの実施形態では、抗CD3または抗TCR抗体はCD3またはTCRのサブユニットに結合する。抗原がCD3である場合、片方の可能なT細胞結合ドメインは、ムロモナブ(ムロモナブ-CD3またはOKT3)、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ、フォラルマブ、SP34またはブリナツモマブに由来するものであり得る。当業者であれば、多様な抗CD3抗体があり、これらのいくつかは承認済みの療法であるかまたはヒト患者において臨床的に試験されていることを認識するであろう(Kuhn and Weiner Immunotherapy 8(8):889-906(2016)を参照されたい)。表9(以下の第IV節に示す)は、例示的な抗CD3抗体に関する選出された刊行物を示す。αβ及びγδTCRを含めたTCRに対する特異性を有する抗体はよく知られている。表10(以下の第IV節に示す)は、例示的な抗TCR抗体に関する選出された刊行物を示す。
T細胞結合ドメインは、可能な相補的結合ドメインとして列挙される任意の抗体、例えば、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、CD28、CD137、OX40、CD27、GITR(TNFRSF18)、TIGIT、または誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)を含んでいてもよい。
2.ナチュラルキラー細胞結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、対形成し合っているときにナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させることができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、対形成し合っているときにCD16Aに結合することができる。いくつかの実施形態では、対形成した免疫細胞結合ドメインとNK細胞上のCD16Aとの結合は、CD33陽性白血病細胞に対してNK細胞を活性化させる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、NTM-1633(NCT03603665を参照されたい)またはAFM13(NCT01221571を参照されたい)のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
3.マクロファージ結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、対形成し合っているときにマクロファージに結合することができる。いくつかの実施形態では、マクロファージは活性化マクロファージである。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、対形成し合っているときにCSF1Rに結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、エマクツズマブ/RG7155(NCT01494688)またはIMC-CS4(NCT01346358)のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、対形成し合っているときにCD40に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、CP-870,893のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
E.相補的結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の成分は相補的結合ドメインを含む。2つの成分の相補的結合ドメインが対形成する場合、これは付加的機能につながる。この付加的機能は、例えば、がん細胞の死滅を誘導すること、または抗腫瘍免疫応答を増大させることであり得る。付加的機能は、腫瘍微小環境を免疫細胞にとってより受容性が高いものにするためにも役立ち得る。
TWICEの2つの成分はがんまたは腫瘍微小環境に指向されるので、相補的結合ドメインの対形成によって媒介される付加的機能は腫瘍またはその微小環境で起こるであろう。いくつかの実施形態では、対形成した相補的結合ドメインによって媒介される付加的機能は腫瘍及びその微小環境に限定され、それによってオフターゲット効果が減少する。例えば、作用を腫瘍及びその微小環境に限定するこの能力は、広範に発現している及び/または様々な生理学的機能を有する標的分子、例えばTGFベータを活性化させるまたは阻害する上での利点となり得る。
いくつかの実施形態では、互いに結合しているときの第1の相補的結合ドメインと第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの第1の免疫細胞結合ドメインと第2の免疫細胞結合ドメインは、同じ抗原に結合することができる。例えば、互いに結合しているときの第1の相補的結合ドメインと第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの第1の免疫細胞結合ドメインと第2の免疫細胞結合ドメインは、T細胞上のCD3に結合し得る。対形成した相補的結合ドメイン及び対形成した免疫細胞結合ドメインと、CD3と結合はどちらも、抗がん免疫応答のより堅牢な活性化につながり得る。
いくつかの実施形態では、互いに結合しているときの第1の相補的結合ドメインと第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの第1の免疫細胞結合ドメインと第2の免疫細胞結合ドメインは、同じ細胞の上にある異なる抗原に結合することができる。例えば、互いに結合しているときの第1の相補的結合ドメインと第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの第1の免疫細胞結合ドメインと第2の免疫細胞結合ドメインは、T細胞上の異なる抗原に結合し得る。対形成した相補的結合ドメイン及び対形成した免疫細胞結合ドメインと、T細胞上の2つの異なる抗原との結合はどちらも、抗がん免疫応答の堅牢な活性化につながり得る。
いくつかの実施形態では、互いに結合しているときの第1の相補的結合ドメインと第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの第1の免疫細胞結合ドメインと第2の免疫細胞結合ドメインは、異なる細胞に結合することができる。例えば、互いに結合しているときの第1の相補的結合ドメインと第2の相補的結合ドメインは、がん細胞に結合して細胞死をもたらし得、互いに結合しているときの第1の免疫細胞結合ドメインと第2の免疫細胞結合ドメインは、T細胞に結合して抗がん免疫応答を媒介し得る。腫瘍細胞において細胞死経路を活性化するとともに抗がん免疫応答を活性化することが、腫瘍退縮を増進し得る。
いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメイン及び第2の相補的結合ドメインは、互いに結合しているときにT細胞、マクロファージまたはNK細胞活性を調節することができる。いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメイン及び第2の相補的結合ドメインは、互いに結合しているときにT細胞上の共刺激抗原または共阻害抗原に結合することができる。
いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメイン及び第2の相補的結合ドメインは、互いに結合しているときに、がんを指向先とする細胞死誘導作用をすることができる。いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメイン及び第2の相補的結合ドメインは、互いに結合しているときに細胞死誘導抗原に結合することができる。
いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメインはVHドメインであり、第2の相補的結合ドメインはVLドメインである。いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメインはVLドメインであり、第2の相補的結合ドメインはVHドメインである。いくつかの実施形態では、対形成し合っているときの第1及び第2の相補的結合ドメインは、Fvを含み得る。換言すれば、対形成し合っているときに第1及び第2の相補的結合ドメインは、VH及びVLが一本鎖配置になっていない事実を別とすれば「scFv」を含み得る。
いくつかの実施形態では、既知の抗体のVHドメインを第1の相補的結合ドメインとして使用することができ、VLドメインを第2の相補的結合ドメインとして使用することができる。
いくつかの実施形態では、既知の抗体のVLドメインを第1の相補的結合ドメインとして使用することができ、VHドメインを第2の相補的結合ドメインとして使用することができる。
1.T細胞活性を調節する相補的結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメイン及び第2の相補的結合ドメインは、互いに結合しているにTCR活性を調節することができる。いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメイン及び第2の相補的結合ドメインは、互いに結合しているときにT細胞共シグナル伝達分子に結合することができる。T細胞共シグナル伝達分子は、文献中で十分に特徴記載がなされており(Chen L and Flies DB Nat Rev Immunol 13(4):227-242(2013)を参照されたい)、これには共刺激及び共阻害抗原が含まれる。いくつかの実施形態では、共シグナル伝達分子は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーである。共阻害抗原は、免疫チェックポイント分子と呼称されることもある。
表11(以下の第IV節に示す)は、T細胞機能を調節することによって抗腫瘍応答を誘導し得る臨床研究された抗体の例を示す。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCD3eに結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ、フォラルマブ、SP34またはブリナツモマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、ペムブロリズマブまたはニボルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、イピリムマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにT細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン3(TIM-3)に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、TSR-022またはSym023のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、BMS-986016のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、リリルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCD28に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、セラリズマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCD137に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、ウトミルマブまたはウレルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにOX40に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、PF-04518600またはBMS986178のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCD27に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、バルリルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにGITRに結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、GWN323またはBMS-986156のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、OMP-313M32、MTIG7192A、BMS-986207またはMK-7684のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、JTX-2011(臨床開発中の抗ICOS抗体)のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
2.腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的とする相補的結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインとTAM上の抗原との結合は、腫瘍に対する増大した免疫応答を媒介する。例えば、抗CSF1R遮断抗体は、TAM浸潤を減少させ、CD8+T細胞増殖を促進する(Ries CH et al.Cancer Cell.25(6):846-59(2014))。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにTAMを阻害することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにマクロファージの再プログラミングまたは動員をすることができる。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCSF1Rに結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、エマクツズマブ/RG7155(NCT01494688)またはIMC-CS4(NCT01346358)のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCD40に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、CP-870,893のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
3.NK細胞を刺激する相補的結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにNK細胞を活性化させることができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCD16Aに結合することができる。いくつかの実施形態では、対形成した相補的結合ドメインとNK細胞上のCD16Aとの結合は、CD33陽性白血病細胞に対してNK細胞を活性化させる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、NTM-1633(NCT03603665を参照されたい)またはAFM13(NCT01221571を参照されたい)のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
4.がん細胞によって発現したチェックポイント分子を阻害する相補的結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに、がん細胞によって発現したチェックポイント分子を阻害することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに、免疫細胞活性化を阻害するがん細胞からのシグナルを遮断することができる。複数の異なる免疫チェックポイント分子が文献に記載されている(Park et al.,Experimental &Molecular Medicine 50:109(2018)を参照されたく、参照によりこの全体を異なる免疫チェックポイント分子の開示のために援用する)。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにPD-L1に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、アテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにCD73に結合することができる。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、CPI-006またはMEDI9447のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
5.RANKに結合する相補的結合ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときに制御性T細胞の活性化を阻害することができる。
いくつかの実施形態では、相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにRANKまたはRANKLに結合する。RANKは、がん細胞上に発現し、制御性T細胞上のRANKLに結合して免疫抑制環境を作り出すことができる(de Groot et al.,Cancer Treatment Reviews 62:18-28(2018)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、がん細胞におけるRANKまたはRANKLとの結合は、制御性T細胞活性化を阻止し、免疫応答を刺激する。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにRANKに結合することができる。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにRANKLに結合することができる。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、デノスマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む。
6.細胞死誘導抗原に結合する相補的結合ドメイン
本明細書中で使用する場合、「細胞死誘導」抗原は、リガンドに結合された後に細胞死を刺激する抗原である。あらゆる種類の細胞死が包含される。細胞死は、プログラムされたもの(例えばアポトーシス)またはプログラムされていないもの(例えば壊死)であり得る。いくつかの実施形態では、細胞死は、壊死、アポトーシスまたはネクロトーシスである。
いくつかの実施形態では、細胞死誘導抗原は細胞死受容体を含む。細胞死受容体は、細胞内の「細胞死ドメイン」の存在を特徴とする腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである。いくつかの実施形態では、細胞死受容体は、Fas/CD95/Apo1、TNFR1/p55/CD120a、DR3/Apo3/WSL-1/TRAMP/LARD、TRAIL-R1/DR4、DR5/Apo2/TRAIL-R2/TRICK2/KILLER、DR6またはCAR1である。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、対形成し合っているときにTRAIL-R1/DR4に結合することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、マパツムマブ(抗TRAIL-R1/DR4細胞死受容体抗体)のVH及び/またはVLの全体または一部を含む。いくつかの実施形態では、抗DR5/Apo2/TRAIL-R2/TRICK2/KILLER抗体は、コナツムマブ(AMG655)、レキサツムマブ(CS1008)、チガツズマブ(CS1008)またはドロジツマブ(PRO95780)を含む。
F.二量体化ドメイン
いくつかの実施形態では、第1及び第2の成分は、図6に示すように二量体化ドメインをさらに含む。本明細書中で使用する場合、「二量体化ドメイン」は、2つのタンパク質単量体(すなわち単一のタンパク質)を結合し合わせるアミノ酸配列を指す。したがって、二量体化ドメインは、2つのタンパク質単量体に二量体を形成させる任意の配列を含み得る。いくつかの実施形態では、この結合は共有結合性である。いくつかの実施形態では、この結合は非共有結合性である。
二量体化ドメインは、相補的結合ドメインまたは免疫細胞結合ドメインに結合したものであり得る。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、第1の相補的結合ドメインと第1の免疫細胞結合ドメインとの、及び/または第2の相補的結合ドメインと第2の免疫細胞結合ドメインとの会合を促進する。このように、二量体化は、腫瘍部位の外部で相補的結合ドメインが免疫細胞結合ドメインから解離する可能性を低くすることができる。
いくつかの実施形態では、切断可能リンカー(すなわち、切断部位を含むリンカー)は、第1の成分の第1の相補的結合ドメインからの第1の免疫細胞結合ドメイン、及び/または第2の相補的結合ドメインからの第2の免疫細胞結合ドメインの解離を媒介する。いくつかの実施形態では、第1の免疫細胞結合ドメインは、第1の免疫細胞結合ドメイン及び第1の相補的結合ドメインのどちらか(または両方)がその各々の二量体化ドメインから遊離するように少なくとも1つの切断可能リンカーが切断されるまでは、第1の相補的結合ドメインに結合している。いくつかの実施形態では、第2の免疫細胞結合ドメインは、第2の免疫細胞結合ドメイン及び第2の相補的結合ドメインのどちらか(または両方)がその各々の二量体化ドメインから遊離するように少なくとも1つの切断可能リンカーが切断されるまでは、第2の相補的結合ドメインに結合している。
いくつかの実施形態では、第1の免疫細胞結合ドメインは第1の二量体化ドメイン及び第2の二量体化ドメインによって第1の相補的結合ドメインに結合しており、第1の二量体化ドメインは第1のリンカーによって第1の免疫細胞結合ドメインに結合しており、第2の二量体化ドメインは第2のリンカーによって第1の相補的結合ドメインに結合しており、第1及び/または第2のリンカーは切断可能リンカーである。
いくつかの実施形態では、第2の免疫細胞結合ドメインは第1の二量体化ドメイン及び第2の二量体化ドメインによって第2の相補的結合ドメインに結合しており、第1の二量体化ドメインは第1のリンカーによって第2の免疫細胞結合ドメインに結合しており、第2の二量体化ドメインは第2のリンカーによって第2の相補的結合ドメインに結合しており、第1及び/または第2のリンカーは切断可能リンカーである。
二量体化ドメインは、既知の二量体化ドメインアミノ酸配列の全体または一部を含み得る。二量体化ドメインは、既知の二量体化アミノ酸配列との相同性を有する配列を含むが既知の配列と一致しないものであり得る。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、結合性を向上させるべく最適化されたアミノ酸を含み得る。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、転写因子または受容体/リガンド対からのアミノ酸配列を含む。二量体化ドメインの非限定的な例としては、受容体チロシンキナーゼ、転写因子、14-3-3タンパク質、及びGタンパク質結合受容体からの配列が挙げられる。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインはロイシンジッパー(コイルドコイルとしても知られる)を含む。本明細書中で使用する場合、「ロイシンジッパー」は、ロイシン残基の周期的反復を含む任意のアミノ酸配列を指す。多様なロイシンジッパーが二量体化における使用に関して記載されており、例えば特許US9,994,646に記載されている。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは免疫グロブリンドメインを含む。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは免疫グロブリン可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン可変ドメインはVHまたはVLドメインである。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは免疫グロブリン定常ドメインを含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常ドメインはFcドメインである。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常ドメインは、CH1/CL、CH2、CH3またはCH4である。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインはIgE CH2ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインはTCR定常ドメインを含む。TCR定常ドメインは、任意の鎖(例えば、α、β、γまたはδ)からのものであり得る。
いくつかの実施形態では、第1の成分の中の二量体化ドメインは、第2の成分の中の二量体化ドメインと同じである。例えば、第1の成分及び第2の成分の中の二量体化ドメインはロイシンジッパーであり得る。第1及び第2の成分の中の二量体化ドメインが同じである場合、これを「ホモ二量体化」と呼称することがある。
いくつかの実施形態では、第1の成分の中の二量体化ドメインは、第2の成分の中の二量体化ドメインとは異なっている。例えば、第1の成分及び第2の成分の中の二量体化ドメインは、受容体/リガンド対を含み得る。第1及び第2の成分の中の二量体化ドメインが異なっている場合、これを「ヘテロ二量体化」と呼称することがある。
2つのタンパク質を二量体化させる「ノブ」または「ホール」を作り出すように二量体化ドメインを操作してもよい。そのようなノブ・イントゥ・ホール二量体化配列は、ノブ・イントゥ・ホール型Fcまたはノブ・イントゥ・ホール型CH3ドメインを含み得る。多様なノブ・イントゥ・ホールの例が二重特異性抗体の作製のために記載されている(Xu et al.,mAbs 7(1):231-242(2015)を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは操作されている。「操作された」とは、タンパク質の1つ以上の特性を変化させるようにアミノ酸配列を変異させたことを意味する。いくつかの実施形態では、操作は、操作の非存在下で2つのタンパク質ドメインが通常は会合しない場合に、これらの2つのドメインの会合を静電的に有利なものにする。いくつかの実施形態では、2つの免疫グロブリン定常ドメインを操作し、「操作型免疫グロブリン定常ドメイン」と呼称することがある。いくつかの実施形態では、Fc領域の操作は、Fc領域、例えばCHドメインのヘテロ二量体化をもたらす。
いくつかの実施形態では、2つのFc領域は反対の電荷を含んで会合し合うように操作される(WO2009089004を参照されたい)。いくつかの実施形態では、2つのFc領域は、2つのロイシンジッパーを含んで会合し合うように操作される(US9,994,646を参照されたい)。いくつかの実施形態では、2つのFc領域は、リジン再配置によって操作される(WO2017106462を参照されたい)。
ドメインは、TWICEの各成分が製造、輸送及び投与の間は十分に安定であるが、TWICEの2つの成分が近接しているときには結合動態がなおも免疫結合ドメインの互いの、及び該当する場合の補足的機能性ドメインの互いの対形成に有利に働くように、操作され得る。
ヘテロ二量体型Fcを作り出すいくつかの方法を採用して本明細書に記載の構築物を作ってもよい。非対称IgG、すなわち、2つの異なる重鎖が対形成してヘテロ二量体になることによって形成されたIgGの形態の二重特異性抗体を作り出すべく、Ridgway et al.は、一方の鎖が「ノブ」を含有し他方の鎖が対応する「ホール」を含有するような変異によってIgG1のCH3ドメインを操作した(J.B.Ridgway,et al.Protein Eng.9:617-621(1196))。この「ノブ・イントゥ・ホール」手法の2つの操作型重鎖は、同じ細胞から共発現した場合、ホモ二量体での立体的衝突のためにヘテロ二量体を優先的に形成するであろう。2本の異なる鎖同士のヘテロ二量体の形成を容易にするために、類似した立体的衝突または反発電荷の方策を操作型Fcドメインに用いて、いくつかの他の変異がそれ以降公開された(Atwell et al.Journal of Molecular Biology 270:26-35(1997)、Gunasekaran et al.,Journal of Biological Chemistry 285:19637-46(2010)、Moore et al.mAbs 3,546-557(2011)、Strop P et al.J.Mol.Biol.420,204-219(2012)、Von Kreudenstein et al.2013,mAbs;5:646-54(2013))。ヘテロ二量体を効率的に形成すべく、立体的衝突と反発電荷との組合せも採用してIgG重鎖が操作されている(WO2017106462A1)。異なる手法を用いて、Davis et al.(Davis et al.,Protein Engineering,Design &Selection 23(4):195-202(2010))は、Fcヘテロ二量体化を可能とする非対称CH3ドメインを設計するためにIgG及びIgA配列を使用して鎖交換操作型ドメイン(SEED)を開発した。
G.補足的機能性ドメイン
いくつかの実施形態では、第1または第2の成分は補足的機能性ドメインを含む。本明細書中で使用する場合、「補足的機能性ドメイン」は、特定の細胞種に結合したときに機能を有するドメインを指す。補足的機能性ドメインは、補足的機能性ドメインが、機能を有するのに別のドメインとの対形成を必要としないという点で、相補的結合ドメインとは異なる。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の成分は両方とも、補足的機能性ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1の成分のみが補足的機能性ドメインを含む。
概して、受容体に対するリガンドとして働く細胞表面タンパク質の任意の細胞外ドメインを補足的機能性ドメインとして使用してよい。いくつかの実施形態では、補足的機能性ドメインはT細胞活性化の共刺激分子である。いくつかの実施形態では、補足的機能性ドメインは、インテグリンに結合するためのリガンドである。
いくつかの実施形態では、補足的機能性ドメインはTGFベータファミリーのメンバーの潜在的形態である。いくつかの実施形態では、潜在的形態は、腫瘍微小環境中で活性化されて腫瘍細胞にて局所的に作用する。
いくつかの実施形態では、補足的機能性ドメインはサイトカインである。広範なサイトカインががんにおいて臨床的に試験されている(Vazquez-Lombardi et al,Antibodies 2:426-451(2013)を参照されたい)。さらに、サイトカインをTWICEの補足的機能性ドメインとして組み込むことによってサイトカインの局所送達が可能になり、かくしてサイトカインの全身投与が改善され得る。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、またはTNFスーパーファミリーのメンバーである。
いくつかの実施形態では、補足的機能性ドメインは、弱化型サイトカインである。
本明細書中で使用する場合、「弱化型サイトカイン」は、野生型サイトカインと比較してその活性を減少させる変異を有するもの、または腫瘍もしくは腫瘍間質微小環境中で切断可能となり得るリンカーによってサイトカインに繋げられたマスクによって「マスキングされた」サイトカインである。いくつかの実施形態では、弱化型サイトカインは、このように、天然に存在するサイトカインのバリアント形態であり得る。いくつかの実施形態では、弱化型サイトカインは、それが標的細胞に指向されない限り、活性がない。腫瘍を標的とする弱化型サイトカインは、全心毒性が制限された堅牢な抗腫瘍作用を有し得る(Pogue et al.,PLoS ONE 11(9):e0162472(2016)、及びPogue et al.,Cytokine 1:66(2015)を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、弱化されていない同じサイトカインが免疫系の減退及び制御性T細胞の増殖を招きかねない場合に弱化型サイトカインは、免疫系を活性化させエフェクターT細胞の増殖を誘導することも提唱されている。
いくつかの実施形態では、弱化型サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、またはTNFスーパーファミリーのメンバーのバリアント形態である。いくつかの実施形態では、弱化型サイトカインは、機能を有するにはがんまたはその微小環境に指向されねばならないものである。
H.リンカー
本発明者らは、TWICEの構成部分を結び合わせる任意の化学的部分をリンカーに含める。
いくつかの実施形態では、TWICEに使用されるリンカーは、柔軟なリンカーであり得る。リンカーとしては、ペプチド、ポリマー、ヌクレオチド、核酸、多糖、及び脂質有機物種(例えばポリエチレングリコール)が挙げられる。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。ペプチドリンカーの長さは、約2~100、10~50、または15~30アミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20アミノ酸の長さであってなおかつ、80アミノ酸以下、90アミノ酸以下または100アミノ酸以下の長さであり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、単一のまたは反復するGGGGS(配列番号85)、GGGS(配列番号86)、GS(配列番号87)、GSGGS(配列番号88)、GGSG(配列番号89)、GGSGG(配列番号90)、GSGSG(配列番号91)、GSGGG(配列番号92)、GGGSG(配列番号93)及び/またはGSSSG(配列番号94)配列(複数可)を有するペプチドリンカーである。
いくつかの実施形態では、リンカーは切断部位を含まない(つまり、非切断可能リンカー)。切断部位を含まない例示的なリンカーとしては、マレイミド(MPA)またはSMCCリンカーが挙げられる。
いくつかの実施形態では、リンカーは切断部位を含む(つまり、切断可能リンカー)。
いくつかの実施形態では、リンカーは標的指向性部分を免疫細胞結合ドメイン、相補的結合ドメインまたは補足的機能性ドメインに結合させる。いくつかの実施形態では、リンカーは二量体化ドメインを免疫細胞結合ドメインまたは相補的結合ドメインに結合させる。
1.標的指向性部分を結合させるリンカー
いくつかの実施形態では、リンカーは標的指向性部分を免疫細胞結合ドメインに結合させる。いくつかの実施形態では、リンカーは標的指向性部分を相補的結合ドメインまたは補足的機能性ドメインに結合させる。いくつかの実施形態では、標的指向性部分を相補的結合ドメインまたは補足的機能性ドメインに結合させているリンカーは、非切断可能リンカーである。いくつかの実施形態では、標的指向性部分を相補的結合ドメインまたは補足的機能性ドメインに結合させているリンカーは、柔軟なリンカーである。
2.二量体化ドメインを結合させるリンカー
いくつかの実施形態では、リンカーは二量体化ドメインを免疫細胞結合ドメインに結合させる。いくつかの実施形態では、リンカーは二量体化ドメインを相補的結合ドメインに結合させる。
二量体化ドメインを免疫細胞結合ドメインまたは相補的結合ドメインに結合させるために使用されるリンカーを、「二量体化ドメインリンカー」と呼称することがある。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインリンカーは切断可能リンカーである。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインリンカーは切断部位を含み得る。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインリンカーはプロテアーゼ切断部位を含む。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインリンカーは、腫瘍微小環境中で切断され得るプロテアーゼ切断部位を含む。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインリンカーは、1つ以上のマトリックスメタロプロテアーゼのための切断部位を含む。
採用される二量体化ドメインに応じて様々な二量体化ドメインリンカーがTWICEに使用され得る。二量体化ドメインリンカーの長さは、プロテアーゼ切断のための柔軟性を可能にするのに十分に長いことが必要とされ得る。しかしながら、長すぎる二量体化ドメインリンカーは2つの二量体化ドメインを空間的に離れさせすぎて二量体化を確保できないことがあり得る。
いくつかの実施形態では、第1の二量体化ドメインリンカー及び第2の二量体化ドメインリンカーは、長さが同じであるかまたは類似している。いくつかの実施形態では、第1の二量体化ドメインリンカーと第2の二量体化ドメインリンカーとは長さが異なっている。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインリンカー長は、2つの二量体化ドメインの会合を促進するのに役立つ。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の二量体化ドメインリンカーは長さが5~30アミノ酸である。いくつかの実施形態では、第1及び第2の二量体化ドメインリンカーは長さが8~16アミノ酸である。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の二量体化ドメインリンカーは長さが5~15アミノ酸である。例えば、この長さのリンカーは、二量体化ドメインがCH1/CLである場合に適し得る。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の二量体化ドメインリンカーは長さが12~30アミノ酸である。例えば、この長さのリンカーは、二量体化ドメインがロイシンジッパー(コイルドコイル)である場合に適し得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2の二量体化ドメインリンカーは長さが15~20アミノ酸である。例えば、この長さのリンカーは、ある特定のロイシンジッパー二量体化ドメインに適し得る。
代表的な二量体化ドメインリンカーの例としては、配列番号203~211が挙げられる。
I.切断部位及び切断可能リンカー
いくつかの実施形態では、切断部位は、構築物のある特定の位置での特異的な切断を可能にする。切断部位を含むリンカーを切断可能リンカーと呼ぶことがある。
例えば、1本のポリペプチド構築物であるTWICEは、切断可能リンカーを第1及び第2の成分の間に含み得る。このTWICEの他の実施形態も、切断可能リンカー、例えば二量体化ドメインリンカーを採用し得る。
いくつかの実施形態では、切断は、最初に細胞内に内在化されること及び古典的な抗原プロセシング経路に組み込まれることを伴わすに、望まれない細胞の外側で起こり得る。
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの切断部位は、がん細胞によって発現した酵素によって切断され得る。がん細胞には例えば特定の酵素、例えばプロテアーゼが発現することが知られている。非限定的な例を挙げると、カテプシンBはとりわけFR、FK、VA及びVRを切断し、カテプシンDはPRSFFRLGK(配列番号45)を切断し、ADAM28は、KPAKFFRL(配列番号1)、DPAKFFRL(配列番号2)、KPMKFFRL(配列番号3)及びLPAKFFRL(配列番号4)を切断し、MMP2は、例えば、AIPVSLR(配列番号46)、SLPLGLWAPNFN(配列番号47)、HPVGLLAR(配列番号48)、GPLGVRGK(配列番号49)及びGPLGLWAQ(配列番号50)を切断する。表1または表2に列挙される他の切断部位を採用してもよい。プロテアーゼ切断部位及びがんに関連するプロテアーゼは当技術分野でよく知られている。Oncomine(www.oncomine.org)は、オンラインのがん遺伝子発現データベースであり、このため、TWICEの薬剤ががんの治療のためのものである場合に当業者はOncomineデータベースを検索して、所与のがん種を治療するのに適するであろう特定のプロテアーゼ切断部位(または2つのプロテアーゼ切断部位)を特定し得る。代替のデータベースとしては、欧州生命情報科学研究所(www.ebi.ac.uk)、特に(www.ebi.ac.uk/gxa)が挙げられる。プロテアーゼデータベースとしては、ExPASy Peptide Cutter(www.ca.expasy.org/tools/peptidecutter)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、腫瘍微小環境中の非がん細胞、例えば腫瘍関連マクロファージまたは線維芽細胞によって発現する。
いくつかの実施形態では、1つ以上の切断可能リンカーのプロテアーゼ切断部位は、共局在化しているプロテアーゼによって切断される。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、第1の成分または第2の成分の中の標的指向性部分と同じでありまたは異なっており、がんによって発現した腫瘍抗原に結合する標的指向性部分によって、がんに共局在化している。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、腫瘍微小環境中の細胞によって発現した抗原に結合する標的指向性部分によって、がんに共局在化している。
切断可能リンカー中の切断部位は、二量体化ドメインを相補的結合ドメイン及び/または免疫細胞結合ドメインから遊離させるように機能し得る。切断部位は、望まれない細胞の腫瘍微小環境において相補的結合ドメイン及び/または免疫細胞結合ドメインを第1及び/または免疫細胞係合ドメインから遊離させるように機能し得る。
いくつかの実施形態では、二量体化ドメインを免疫細胞結合ドメインまたは相補的結合ドメインに結合させる第1及び/または第2の切断可能リンカーの中のプロテアーゼ切断部位は、がんによって発現したもの、またはがんによって発現した腫瘍抗原に結合する標的指向性部分によってがんに共局在化しているものであるプロテアーゼによって、切断される。
J.相補的結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとの結合
いくつかの実施形態では、第1の相補的結合ドメインは、第1の相補的結合ドメインに第1の免疫細胞結合ドメインが結合している限り第1の免疫細胞結合ドメインが第2の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、第1の免疫細胞結合ドメインの結合パートナーである。
いくつかの実施形態では、第2の相補的結合ドメインは、第2の相補的結合ドメインに第2の免疫細胞結合ドメインが結合している限り第2の免疫細胞結合ドメインが第1の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、第2の免疫細胞結合ドメインの結合パートナーである。
相補的結合ドメインが免疫細胞結合ドメインから解離し、対形成する相補的ドメインと会合したとき、または免疫細胞結合ドメインが相補的結合ドメインから解離し、対形成する免疫細胞結合ドメインと会合したとき、これをドメイン交換と呼ぶことがある。このドメイン交換事象においてドメインは不釣り合いな配置から活性な対形成配置へと移動する。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは、第1及び第2の相補的結合ドメインに結合していないときにFvを形成することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の相補的結合ドメインは、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインに結合していないときにFvを形成することができる。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の成分は、単一の成分の免疫細胞結合ドメインと相補的結合ドメインとの会合を促進する二量体化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、がん細胞またはその微小環境において、二量体化ドメインリンカー中の切断可能リンカーの切断は単一の成分の免疫細胞結合ドメインと相補的結合ドメインとの解離を可能にする。いくつかの実施形態では、第1及び第2の成分は二量体化ドメインを含まない。
K.不活性結合パートナーによるマスキング
いくつかの実施形態では、TWICEは、第1及び/または第2の免疫細胞結合ドメインをマスキングするための不活性結合パートナーを含む。いくつかの実施形態では、第1の免疫細胞結合ドメインのみがマスキングされる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の免疫細胞結合ドメインは両方ともマスキングされる。
例えば、いくつかの実施形態では、不活性結合パートナーは、図5及び補足的機能性ドメインの節Gに描写されるような補足的機能性ドメインを含むTWICEの成分である。
いくつかの実施形態では、補足的機能性ドメインを含む第1及び/または第2の成分は、不活性結合パートナーを含む。
いくつかの実施形態では、第1の不活性結合パートナーは、不活性結合パートナーの除去がなされない限り第1の免疫細胞結合ドメインが第2の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、第1の免疫細胞結合ドメインとの結合をするものである。
いくつかの実施形態では、第1の免疫細胞結合ドメインはVHドメインであり、不活性結合パートナーはVLドメインである。いくつかの実施形態では、第1の免疫細胞結合ドメインがVLドメインであり、不活性結合パートナーはVHドメインである。
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断部位が第1の免疫細胞結合ドメインと第1の不活性結合パートナーとを隔てている。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、プロテアーゼの存在下で不活性結合パートナーを免疫細胞結合ドメインから遊離させることができる。
いくつかの実施形態では、第2の不活性結合パートナーは、不活性結合パートナーの除去がなされない限り第2の免疫細胞結合ドメインが第1の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、第2の免疫細胞結合ドメインとの結合をするものである。
いくつかの実施形態では、第2の免疫細胞結合ドメインはVHドメインであり、不活性結合パートナーはVLドメインである。いくつかの実施形態では、第2の免疫細胞結合ドメインはVLドメインであり、不活性結合パートナーはVHドメインである。
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断部位が第2の免疫細胞結合ドメインと第2の不活性結合パートナーとを隔てている。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、プロテアーゼの存在下で不活性結合パートナーを免疫細胞結合ドメインから遊離させることができる。
いくつかの実施形態では、プロテアーゼはがんによって発現する。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、腫瘍微小環境中の細胞、例えばTAFまたはTAMによって発現する。
いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、(a)薬剤中の第1及び/または第2の標的指向性部分と同じでありもしくは異なっておりがんによって発現した腫瘍抗原に結合するまたは(b)腫瘍微小環境中の細胞によって発現した抗原に結合する抗体またはその抗原結合性断片である標的指向性部分によって、がんに共局在化している。
L.作製方法
本明細書に記載の種々のTWICEは、遺伝子操作技術を用いて作られ得る。具体的には、好適な宿主に1つまたは2つの核酸を発現させてTWICEまたはその成分を産生させることができる。例えば、全ての成分部分及びリンカーTWICEをコードする核酸配列を含むベクターを作製することができ、そのベクターを使用して適切な宿主細胞を形質転換することができる(または、個別のベクターを使用して各成分を個別に発現させてもよい)。
宿主の性質及び宿主内への核酸の導入の方法、ならびにエピソーム内への保持または組込みが望ましいか否かに応じて、様々な調節エレメントもベクターに使用され得る。
化学的連結技術、例えばマレイミドまたはSMCCリンカーの使用を採用してもよい。
標的指向性部分がアプタマーである場合、当業者であれば、タンパク質、すなわち免疫細胞結合ドメインまたは相補的結合ドメインにアプタマーを結合体化させる方法を認識するであろう。アプタマーは、チオールリンケージまたは他の標準的な結合体化化学を用いて結合体化され得る。マレイミド、スクシンイミドまたはSH基をアプタマーに取り付けてそれを免疫細胞結合ドメインまたは相補的結合ドメインと結合させてもよい。
II.医薬組成物
TWICEは医薬組成物として採用され得る。したがって、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を伴って調製され得る。例えば非経口投与が望ましい場合、TWICEは、無菌で発熱物質を含まない注射用水、または無菌で発熱物質を含まない生理食塩水、または非経口投与のために許容される他の形態で提供され得る。あるいは、TWICEは、無菌の液体担体の添加によって再構成するための凍結乾燥形態で提供され得る。分離形態にある場合、TWICEは単一の医薬組成物または2つの医薬組成物で提供され得る。
III.TWICEの使用方法
本明細書に記載のTWICEは、がんを治療する方法であって少なくとも第1及び第2の成分を含むTWICEを患者に投与することを含む当該方法に使用され得、当該成分は各々、上記様々な実施形態に詳しく記載されるとおりである。
加えて、本明細書に記載の薬剤は、患者自身の免疫応答をがん細胞に指向する方法であってTWICEを患者に投与することを含む当該方法にも使用され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTWICEは、第1の標的指向性部分及び第2の標的指向性部分の両方に結合する腫瘍抗原が発現しているがんに免疫細胞を指向する方法に使用され得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CD3またはTCRが発現しているT細胞である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTWICEは、1つの腫瘍抗原が第1の標的指向性部分に結合するものであり1つの腫瘍抗原が第2の標的指向性部分に結合するものである2つの腫瘍抗原が発現しているがんに免疫細胞を指向する方法に使用され得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CD3またはTCRが発現しているT細胞である。
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTWICEは、サイトカインを患者の免疫細胞に送達する方法に使用され得る。いくつかの実施形態では、TWICEの第1及び/または第2の補足的機能性ドメインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、またはTNFスーパーファミリーのメンバーを含む。
いくつかの実施形態では、患者は、がんまたは識別された前悪性状態を有する。いくつかの実施形態では、患者は、がんが検出されないが、がんを発症するリスクが高く、例えば、がんのリスクの増大に関連する変異を有する。いくつかの実施形態では、がんを発症するリスクが高い患者は、形質転換のリスクが高い前悪性腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、がんを発症するリスクが高い患者は、高いリスクに関連する遺伝子プロファイルを有する。いくつかの実施形態では、患者におけるがんまたは前悪性状態の存在は、循環腫瘍DNA(ctDNA)または循環腫瘍細胞の存在に基づいて判定される。いくつかの実施形態では、治療は先制的または予防的なものである。いくつかの実施形態では、治療はがんの発生または再発を遅らせる、または阻止する。
患者に投与される薬剤の量は、問題となっている症状を治療するための有効量をもたらすように患者の医師によって選択され得る。TWICEの第1の成分及び第2の成分は、同じ製剤に入った状態で投与されてもよいし、または2つの異なる製剤に入った状態で患者において活性となるのに十分に近接した期間内に投与されてもよい。
治療を受けている患者はヒトであってよい。患者は霊長類または任意の哺乳動物であってよい。あるいは、患者は、動物、例えば、飼育動物(例えばイヌまたはネコ)、実験動物(例えば実験用齧歯動物、例えば、マウス、ラットまたはウサギ)、または農業において重要な動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジまたはヤギ)であり得る。
がんは、固形または非固形悪性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍であってリンパ腫でない当該固形腫瘍であり得る。がんは、任意のがん、例えば、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、メラノーマ、肺癌、前立腺癌、精巣癌、甲状腺癌、脳腫瘍、食道癌、胃癌、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、リンパ増殖性障害、骨髄異形成障害、骨髄増殖性疾患及び前悪性疾患、または治療に適した他の任意のがんであり得る。
いくつかの実施形態では、当業者は、治療を開始する前に腫瘍を評価し得る。
例えば、当業者は、腫瘍を浸潤性T細胞の存在について評価し得る。いくつかの実施形態では、治療方法は、治療を開始する前に腫瘍におけるT細胞の存在を確認することを含む。いくつかの実施形態では、患者は、T細胞が浸潤している固形腫瘍を有するであろう。腫瘍試料はT細胞マーカーに対して染色され得、撮像技術を用いて腫瘍におけるT細胞浸潤の存在、及び場合によって濃度を示し得る。
いくつかの実施形態では、治療方法は、治療を開始する前に腫瘍抗原の存在を確認することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、治療を開始する前に腫瘍抗原の濃度を評価することを含む。例えば、当業者は、腫瘍によって過剰発現した抗原のプロファイルに基づいて腫瘍抗原を選択すること、または治療のための患者を選択することができよう。当業者であれば、特定の抗原が過剰発現している選抜された患者による抗原発現プロファイルに基づいて、TWICEによる治療のための患者を選択することもできよう。いくつかの実施形態では、これらの腫瘍抗原は細胞表面腫瘍抗原である。腫瘍試料は関心対象の抗原に対して染色されて腫瘍抗原の存在、及び場合によって濃度が示され得る。特定のTWICEによる試験管内でのT細胞活性化アッセイを用いて発現の下限を決定することもできる。これらの方法は、腫瘍微小環境へのTWICEの指向に適した抗原を患者の腫瘍が有することを研究者が確認するのを可能にする。
いくつかの実施形態では、治療方法は、(i)腫瘍におけるT細胞の存在を確認すること、(ii)腫瘍抗原(複数可)の存在を確認すること、及び/または(iii)腫瘍抗原の濃度を評価することを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的指向性部分に結合する腫瘍抗原(複数可)の発現は、TWICEの2つの成分を近接させるのに十分に高いレベルで発現する。
いくつかの実施形態では、バイオマーカーの存在を用いて、TWICEを与えるための患者を選抜する。多様な腫瘍マーカー、例えば、www.cancer.gov/about-cancer/diagnosis-staging/diagnosis/tumor-markers-fact-sheetに記載されているものが当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、腫瘍マーカーは、ALK遺伝子の再構成もしくは過剰発現;アルファフェトタンパクシツ;ベータ-2-ミクログロブリン;ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン;BRCA1もしくはBRCA2遺伝子変異;BCR-ABL融合遺伝子(フィラデルフィア染色体);BRAF V600変異;C-kit/CD117;CA15-3/CA27.29;CA19-9;CA-125;カルシトニン;がん胎児性抗原(CEA);CD20;クロモグラニンA(CgA);3番、7番、17番もしくは9番染色体p21;上皮由来の循環腫瘍細胞(CELLSEARCH(登録商標));サイトケラチン断片21-1;EGFR遺伝子変異分析;エストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR);フィブリン/フィブリノーゲン;HE4;HER2/neu遺伝子増幅もしくはタンパク質過剰発現;免疫グロブリン;KRAS遺伝子変異分析;乳酸脱水素酵素;神経特異エノラーゼ(NSE);核マトリックスタンパク質22;プログラム死リガンド1(PD-L1);前立腺特異抗原(PSA);サイログロブリン;ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA);プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1);5-タンパク質シグネチャ(OVA1(登録商標));21-遺伝子シグネチャ(Oncotype DX(登録商標));または70遺伝子シグネチャ(Mammaprint(登録商標))である。
TWICEは、単独で、または他の形態の療法、例えば、外科手術、放射線、従来の化学療法もしくは他の免疫療法と併せて投与され得る。
いくつかの実施形態では、他の免疫療法には、免疫サイトカインまたはサイトカイン融合体による別個の治療が含まれ得る。サイトカインは、免疫系を活性化させ調節するために身体によって天然に作られる細胞シグナル伝達タンパク質を指す。サイトカイン融合体は、サイトカインの全体または一部を含む操作型分子を指す。例えば、サイトカイン融合体は、腫瘍を標的とすることを可能とする抗体にサイトカインの全体または一部を結合させたもの、例えばDarleukin(Zegers et al.(2015)Clin.Cancer Res.,21,1151-60を参照されたい)、Teleukin(WO2018087172を参照されたい)を含み得る。
いくつかの実施形態では、他の免疫療法は、がん治療ワクチン接種である。いくつかの実施形態では、がん治療ワクチン接種は、がんと闘う身体の天然の防御を増強する。これらは、共通腫瘍抗原(例えば、E6、E7、NY-ESO、MUC1またはHER2)に対するものか、個別の変異新生抗原に対するものかのどちらかであり得る。
IV.実施形態
以下の番号を付された項目は、本明細書に記載の実施形態を示すが、ここに列挙される実施形態は限定的なものではない。
項目1.患者におけるがんを治療するためのキットまたは組成物であって、標的指向化免疫細胞結合剤を含む第1の成分であって、前記標的指向化免疫細胞結合剤が、前記がんによって発現した腫瘍抗原に結合する第1の標的指向性部分、前記第1の成分の一部でないものである第2の免疫細胞結合ドメインに結合したときに、免疫細胞結合作用をすることができる、VHドメインかVLドメインかのどちらかである第1の免疫細胞結合ドメイン、及び第2の相補的結合ドメインに結合したときに相補的抗原に結合することができる第1の相補的結合ドメインを含むものであり、前記第2の相補的結合ドメインが前記第1の成分の一部ではなく、前記第1の免疫細胞結合ドメインがVHドメインである場合に前記第1の相補的結合ドメインがVLドメインであり、前記第1の免疫細胞結合ドメインがVLドメインである場合に前記第1の相補的結合ドメインがVHドメインであり、前記第1の相補的結合ドメインが、前記第1の相補的ドメインに前記第1の免疫細胞結合ドメインが結合している限り前記第1の免疫細胞結合ドメインが前記第2の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、前記第1の免疫細胞結合ドメインの結合パートナーである、前記第1の成分、ならびに、標的指向化免疫細胞結合剤を含む第2の成分であって、前記標的指向化免疫細胞結合剤が、第2の標的指向性部分、第1の免疫細胞結合ドメインに結合したときに免疫細胞結合作用をすることができ、前記第1の免疫細胞結合ドメインがVLである場合にVHであり、前記第1の免疫細胞結合ドメインがVHである場合にVLである、第2の免疫細胞結合ドメイン、及び前記第1の相補的結合ドメインに結合したときに相補的抗原に結合することができる第2の相補的結合ドメインを含むものであり、前記第2の免疫細胞結合ドメインがVHドメインである場合に前記第2の相補的結合ドメインがVLドメインであり、前記第2の免疫細胞結合ドメインがVLドメインである場合に前記第2の相補的結合ドメインがVHドメインであり、前記第2の相補的結合ドメインが、前記第2の相補的ドメインに前記第2の免疫細胞結合ドメインが結合している限り前記第2の免疫細胞結合ドメインが前記第1の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、前記第2の免疫細胞結合ドメインの結合パートナーである、前記第2の成分を含む、前記キットまたは組成物。
項目2.前記第1の免疫細胞結合ドメインが第1の二量体化ドメイン及び第2の二量体化ドメインによって前記第1の相補的結合ドメインに結合しており、前記第1の二量体化ドメインが第1のリンカーによって前記第1の免疫細胞結合ドメインに結合しており、前記第2の二量体化ドメインが第2のリンカーによって前記第1の相補的結合ドメインに結合しており、前記第1及び/または第2のリンカーが切断可能リンカーである、項目1に記載のキットまたは組成物。
項目3.前記第2のT細胞結合ドメインが第1の二量体化ドメイン及び第2の二量体化ドメインによって前記第2の相補的結合ドメインに結合しており、前記第1の二量体化ドメインが第1のリンカーによって前記第2のT細胞結合ドメインに結合しており、前記第2の二量体化ドメインが第2のリンカーによって前記第2の相補的結合ドメインに結合しており、前記第1及び/または第2のリンカーが切断可能リンカーである、項目1~2のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目4.前記第1及び第2のリンカーが切断可能リンカーである、項目2~3のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目5.前記第1のリンカーと前記第2のリンカーとが同じである、項目2~4のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目6.前記第1のリンカーと前記第2のリンカーとが異なっている、項目2~4のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目7.前記第1及び第2のリンカーの長さが5~30アミノ酸である、項目2~6のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目8.前記第1及び第2のリンカーの長さが8~16アミノ酸である、項目2~6のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目9.前記第1及び/または第2の切断可能リンカーのプロテアーゼ切断部位が、前記がんまたは腫瘍微小環境細胞によって発現したプロテアーゼによって切断される、項目2~8のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目10.前記第1及び/または第2の切断可能リンカーの前記プロテアーゼ切断部位が、前記第1の成分または前記第2の成分の少なくとも一方の中の標的指向性部分と同じでありまたは異なっており前記がんによって発現した腫瘍抗原に結合する抗体またはその抗原結合性断片である標的指向性部分によって前記がんに共局在化しているプロテアーゼによって切断される、項目2~9のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目11.前記第1及び第2の二量体化ドメインが両方とも、ロイシンジッパー、免疫グロブリンドメイン、またはT細胞受容体(TCR)ドメインである、項目1~10のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目12.前記免疫グロブリンドメインが免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン定常ドメインを含む、項目11に記載のキットまたは組成物。
項目13.前記免疫グロブリン定常ドメインが、CH1/CL、CH2、CH3またはCH4を含む、項目12に記載のキットまたは組成物。
項目14.前記TCRドメインがTCR定常ドメインを含む、項目11に記載のキットまたは組成物。
項目15.第1の成分の中の二量体化ドメインが、第2の成分の中の二量体化ドメインと同じである、項目1~14のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目16.第1の成分の中の二量体化ドメインが、第2の成分の中の二量体化ドメインとは異なっている、項目1~14のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目17.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときに前記がんに結合することができる、項目1~16のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目18.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときに免疫チェックポイント分子、RANKもしくはRANKLまたは細胞死誘導抗原に結合することができる、項目17に記載のキットまたは組成物。
項目19.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときに免疫チェックポイント分子に結合することができる、項目18に記載のキットまたは組成物。
項目20.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにPD-L1に結合することができる、項目19に記載のキットまたは組成物。
項目21.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、アテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目20に記載のキットまたは組成物。
項目22.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにCD73に結合することができる、項目19に記載のキットまたは組成物。
項目23.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、CPI-006またはMEDI9447のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目22に記載のキットまたは組成物。
項目24.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにRANKに結合することができる、項目18に記載のキットまたは組成物。
項目25.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにRANKLに結合することができる、項目18に記載のキットまたは組成物。
項目26.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、デノスマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目25に記載のキットまたは組成物。
項目27.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときに細胞死誘導抗原に結合することができる、項目18に記載のキットまたは組成物。
項目28.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにFas/CD95/Apo1、TNFR1/p55/CD120a、DR3/Apo3/WSL-1/TRAMP/LARD、TRAIL-R1/DR4、DR5/Apo2/TRAIL-R2/TRICK2/KILLER、DR6、またはCAR1に結合することができる、項目27に記載のキットまたは組成物。
項目29.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにTRAIL-R1/DR4に結合することができる、項目28に記載のキットまたは組成物。
項目30.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、マパツムマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目29に記載のキットまたは組成物。
項目31.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにDR5/Apo2/TRAIL-R2/TRICK2/KILLERに結合することができる、項目28に記載のキットまたは組成物。
項目32.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、コナツムマブ(AMG655)、レキサツムマブ、チガツズマブ(CS1008)またはドロジツマブ(PRO95780)を含む、項目31に記載のキットまたは組成物。
項目33.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときに、細胞外マトリックスに会合した分子に結合することができる、項目1~16のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目34.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにT細胞、マクロファージまたはナチュラルキラー細胞に結合することができる、項目1~16のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目35.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにT細胞に結合することができる、項目34に記載のキットまたは組成物。
項目36.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにCD3、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、CD28、CD137、OX40、CD27、GITR(TNFRSF18)、TIGITまたは誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)に結合することができる、項目35に記載のキットまたは組成物。
項目37.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにCD3に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目38.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ、フォラルマブ、SP34またはブリナツモマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目37に記載のキットまたは組成物。
項目39.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにPD-1に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目40.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、ペムブロリズマブまたはニボルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目39に記載のキットまたは組成物。
項目41.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにCTLA-4に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目42.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、イピリムマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目41に記載のキットまたは組成物。
項目43.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにTIM-3に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目44.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、TSR-022またはSym023のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目43に記載のキットまたは組成物。
項目45.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにLAG-3に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目46.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、BMS-986016のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目45に記載のキットまたは組成物。
項目47.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにKIRに結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目48.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、リリルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目47に記載のキットまたは組成物。
項目49.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにCD28に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目50.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、セラリズマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目49に記載のキットまたは組成物。
項目51.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにCD137に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目52.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、ウトミルマブまたはウレルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目51に記載のキットまたは組成物。
項目53.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにOX40に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目54.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、PF-04518600またはBMS986178のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目53に記載のキットまたは組成物。
項目55.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにCD27に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目56.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、バルリルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目55に記載のキットまたは組成物。
項目57.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにGITR(TNFRSF18)に結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目58.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、GWN323またはBMS-986156のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目57に記載のキットまたは組成物。
項目59.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにTIGITに結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目60.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、OMP-313M32、MTIG7192A、BMS-986207またはMK-7684のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目59に記載のキットまたは組成物。
項目61.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、結合し合っているときにICOSに結合することができる、項目36に記載のキットまたは組成物。
項目62.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、JTX-2011のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目61に記載のキットまたは組成物。
項目63.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにマクロファージに結合することができる、項目34に記載のキットまたは組成物。
項目64.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにCSF1Rに結合することができる、項目63に記載のキットまたは組成物。
項目65.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、エマクツズマブまたはIMC-CS4のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目65に記載のキットまたは組成物。
項目66.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにCD40に結合することができる、項目63に記載のキットまたは組成物。
項目67.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、CP-870,893のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目66に記載のキットまたは組成物。
項目68.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにナチュラルキラー細胞に結合することができる、項目34に記載のキットまたは組成物。
項目69.前記第1の相補的結合ドメイン及び前記第2の相補的結合ドメインが、互いに結合しているときにCD16Aに結合することができる、項目68に記載のキットまたは組成物。
項目70.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、NTM-1633またはAFM13のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目69に記載のキットまたは組成物。
項目71.互いに結合しているときの前記第1の相補的結合ドメインと前記第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの前記第1の免疫細胞結合ドメインと前記第2の免疫細胞結合ドメインが、同じ抗原に結合することができる、項目1~70のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目72.互いに結合しているときの前記第1の相補的結合ドメインと前記第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの前記第1の免疫細胞結合ドメインと前記第2の免疫細胞結合ドメインが、同じ細胞の上にある異なる抗原に結合することができる、項目1~70のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目73.互いに結合しているときの前記第1の相補的結合ドメインと前記第2の相補的結合ドメイン、及び互いに結合しているときの前記第1の免疫細胞結合ドメインと前記第2の免疫細胞結合ドメインが、異なる細胞に結合することができる、項目1~70のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目74.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、前記第1及び第2の相補的結合ドメインに結合していないときにFvを形成することができる、項目1~73のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目75.前記第1及び第2の相補的結合ドメインが、前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインに結合していないときにFvを形成することができる、項目1~74のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目76.患者におけるがんを治療するためのキットまたは組成物であって、標的指向化免疫細胞結合剤を含む第1の成分であって、前記標的指向化免疫細胞結合剤が、前記がんによって発現した腫瘍抗原に結合する第1の標的指向性部分、前記第1の成分の一部でないものである第2の免疫細胞結合ドメインに結合したときに、免疫細胞結合作用をすることができる、VHドメインかVLドメインかのどちらかである第1の免疫細胞結合ドメイン、前記第1の免疫細胞結合ドメインの第1の不活性結合パートナーであって、前記不活性結合パートナーの除去がなされない限り前記第1の免疫細胞結合ドメインが前記第2の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、前記第1の免疫細胞結合ドメインとの結合をするものであり、前記第1の免疫細胞結合ドメインがVHドメインである場合にVLドメインであり、前記第1の免疫細胞結合ドメインがVLドメインである場合にVHドメインである、前記第1の不活性結合パートナー;前記第1の免疫細胞結合ドメインと前記第1の不活性結合パートナーとを隔てているプロテアーゼ切断部位であって、前記がんまたは腫瘍微小環境細胞によって発現したもの、あるいは(a)前記薬剤中の前記第1及び/または第2の標的指向性部分と同じでありもしくは異なっており前記がんによって発現した腫瘍抗原に結合するまたは(b)前記腫瘍微小環境中の細胞によって発現した抗原に結合する抗体またはその抗原結合性断片である標的指向性部分によって前記がんに共局在化しているものであるプロテアーゼの存在下で、前記免疫細胞結合ドメインから前記不活性結合パートナーを遊離させることができる、前記プロテアーゼ切断部位;及び免疫細胞結合をすることができる第1の補足的機能性ドメインを含む、前記第1の成分、ならびに、標的指向化免疫細胞結合剤を含む第2の成分であって、前記標的指向化免疫細胞結合剤が、第2の標的指向性部分、第2の免疫細胞結合ドメイン、及び任意選択の、免疫細胞結合をすることができる第2の補足的機能性ドメインを含む、前記第2の成分を含む、前記キットまたは組成物。
項目77.前記第2の成分が補足的機能性ドメインを含む、項目76に記載のキットまたは組成物。
項目78.前記第1及び/または第2の成分の前記補足的機能性ドメインが、受容体のリガンドを含む、項目76~77のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目79.前記補足的機能性ドメインが、TGFベータファミリーのメンバーの潜在的形態である、項目78に記載のキットまたは組成物。
項目80.前記第1及び/または第2の成分の前記補足的機能性ドメインがサイトカインを含む、項目78に記載のキットまたは組成物。
項目81.前記サイトカインが、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、またはTNFスーパーファミリーのメンバーである、項目78に記載のキットまたは組成物。
項目82.前記第1及び/または第2の成分の前記補足的機能性ドメインが弱化型サイトカインを含む、項目80に記載のキットまたは組成物。
項目83.前記弱化型サイトカインが、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、GM-CSF、IFN-α、IFN-γまたはTNFスーパーファミリーのメンバーのバリアントである、項目82に記載のキットまたは組成物。
項目84.前記第2の成分が前記第2の免疫細胞結合ドメインの第2の不活性結合パートナーをさらに含み、前記第2の不活性結合パートナーが、前記不活性結合パートナーの除去がなされない限り前記第2の免疫細胞結合ドメインが前記第1の免疫細胞結合ドメインとの結合をしないような、前記第2の免疫細胞結合ドメインとの結合をするものであり、前記第2の免疫細胞結合ドメインがVHドメインである場合に前記不活性結合パートナーがVLドメインであり、前記第2の免疫細胞結合ドメインがVLドメインである場合に前記不活性結合パートナーがVHドメインであり、さらには、プロテアーゼ切断部位が前記第2の免疫細胞結合ドメインと前記第2の不活性結合パートナーとを隔てており、前記プロテアーゼ切断部位が、前記がんによって発現したもの、あるいは(a)前記薬剤中の前記第1及び/または第2の標的指向性部分と同じでありもしくは異なっており前記がんによって発現した腫瘍抗原に結合するまたは(b)前記腫瘍微小環境中の細胞によって発現した抗原に結合する抗体またはその抗原結合性断片である標的指向性部分によって前記がんに共局在化しているものであるプロテアーゼの存在下で、前記免疫細胞結合ドメインから前記不活性結合パートナーを遊離させることができる、項目76~83のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目85.前記第1の成分が前記第2の成分に共有結合で結合していない、項目1~84のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目86.前記第1の成分が前記第2の成分に共有結合で結合している、項目1~85のいずれか1項に記載のキットまたは組成物を含む分子。
項目87.前記第1の成分が切断可能リンカーを介して前記第2の成分に共有結合で結合している、項目86に記載の単一分子。
項目88.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにT細胞、マクロファージまたはナチュラルキラー細胞に結合することができる、項目1~87のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目89.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにT細胞に結合することができる、項目88に記載のキットまたは組成物。
項目90.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにCD3、T細胞受容体、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、CD28、CD137、OX40、CD27、GITR(TNFRSF18)、TIGITまたは誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)に結合することができる、項目89に記載のキットまたは組成物。
項目91.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにCD3に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目92.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビシリズマブ、フォラルマブ、SP34またはブリナツモマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目91に記載のキットまたは組成物。
項目93.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにT細胞受容体に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目94.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにPD-1に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目95.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、ペムブロリズマブまたはニボルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目94に記載のキットまたは組成物。
項目96.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにCTLA-4に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目97.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、イピリムマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目96に記載のキットまたは組成物。
項目98.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにTIM-3に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目99.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、TSR-022またはSym023のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目98に記載のキットまたは組成物。
項目100.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにLAG-3に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目101.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、BMS-986016のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目100に記載のキットまたは組成物。
項目102.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにKIRに結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目103.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、リリルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目102に記載のキットまたは組成物。
項目104.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにCD28に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目105.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、セラリズマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目104に記載のキットまたは組成物。
項目106.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにCD137に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目107.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、ウトミルマブまたはウレルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目106に記載のキットまたは組成物。
項目108.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにOX40に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目109.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、PF-04518600またはBMS986178のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目108に記載のキットまたは組成物。
項目110.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにCD27に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目111.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、バルリルマブのVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目110に記載のキットまたは組成物。
項目112.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにGITR(TNFRSF18)に結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目113.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、GWN323またはBMS-986156のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目112に記載のキットまたは組成物。
項目114.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにTIGITに結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目115.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、OMP-313M32、MTIG7192A、BMS-986207またはMK-7684のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目114に記載のキットまたは組成物。
項目116.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、結合し合っているときにICOSに結合することができる、項目90に記載のキットまたは組成物。
項目117.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、JTX-2011のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目116に記載のキットまたは組成物。
項目118.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにマクロファージに結合することができる、項目88に記載のキットまたは組成物。
項目119.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにCSF1Rに結合することができる、項目118に記載のキットまたは組成物。
項目120.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、エマクツズマブまたはIMC-CS4のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目119に記載のキットまたは組成物。
項目121.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにCD40に結合することができる、項目120に記載のキットまたは組成物。
項目122.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、CP-870,893のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目121に記載のキットまたは組成物。
項目123.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにナチュラルキラー細胞に結合することができる、項目88に記載のキットまたは組成物。
項目124.前記第1の免疫細胞結合ドメイン及び前記第2の免疫細胞結合ドメインが、互いに結合しているときにCD16Aに結合することができる、項目123に記載のキットまたは組成物。
項目125.前記第1及び第2の免疫細胞結合ドメインが、NTM-1633またはAFM13のVH及び/またはVLの全体または一部を含む、項目124に記載のキットまたは組成物。
項目126.前記第1の標的指向性部分と前記第2の標的指向性部分とが異なっている、項目1~125のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目127.前記第1の標的指向性部分と前記第2の標的指向性部分とが同じである、項目1~125のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目128.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、抗体またはその抗原結合性断片を含む、項目1~127のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目129.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、DNAアプタマー、RNAアプタマー、アルブミン、リポカリン、フィブロネクチン、アンキリン、フィノマー、Obody、DARPin、ノッティン(knotin)、アビマー、アトリマー、アンチカリン(anti-callin)、アフィリン、アフィボディ、二環式ペプチド、cys-knot、FN3(アドネクチン、セントリリン(centryrins)、プロネクチンまたはTN3)、またはKunitz型ドメインを含む、項目1~128のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目130.前記第2の標的指向性部分が、前記がんによって発現した腫瘍抗原に結合する、項目1~129のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目131.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、α4インテグリン、A33、ACVRL1/ALK1、ADAM17、ALK、APRIL、BCMA、C242、CA125、カドヘリン-19、CAIX、CanAg、炭酸脱水酵素IX、CCN1、CCR4、CD123、CD133、CD137(4-1BB)、CD138/シンデカン1、CD19、CD2、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD4、CD40、CD44、CD45、CD48、CD5、CD52、CD56、CD59、CD70、CD70b、CD71、CD74、CD79b、CD80、CD86、CD98、CEA、CEACAM、CEACAM1、CK8、c-Kit、CLDN1、CLDN18、CLDN18.2、CLDN6、c-met/HGFR、c-RET、Cripto、CTLA-4、CXCR4、DKK-1、DLL3、DLL4、TRAIL-R2/DR5、DRS、EGFL7、EGFR、EGFRvIII、エンドグリン、ENPP3、EpCAM、EphA2、エピシアリン、FAP、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、フィブロネクチンエクストラドメインB、FLT-3、flt4、葉酸受容体1、GCC、GD2、GD3、グリピカン-3、グリピカン、GM3、GPNMB、GPR49、GRP78、Her2/Neu、HER3/ERBB3、HLA-DR、ICAM-1、IGF-1R、IGFR、IL-3Ra、インテグリンα5β1、インテグリンα6β4、インテグリンαV、インテグリンαVβ3、ルイスY、ルイスy/b抗原、LFL2、LIV-1、Ly6E、MCP-1、メソテリン、MMP-9、MUC1、MUC18、MUC5A、MUC5AC、ミオスタチン、NaPi2b、ニューロピリン1、NGcGM3、NRP1、P-カドヘリン、PCLA、PD-1、PDGFRa、PD-L1、PD-L2、ホスファチジルセリン、PIVKA-II、PLVAP、PRLR、プロガストリン、PSCA、PSMA、RANKL、RG1、Siglec-15、SLAMF6、SLAMF7、SLC44A4、STEAP-1、TACSTD-2、テネイシンC、TPBG、TRAIL-R1/DR4、TROP-2、TWEAKR、TYRP1、VANGL2、VEGF、VEGF-C、VEGFR-2もしくはVEGF-R2に結合する抗体、またはその抗原結合性断片を含む、項目128に記載のキットまたは組成物。
項目132.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、抗α4インテグリン抗体、抗CD137抗体、抗CCR4抗体、抗CD123抗体、抗CD133抗体、抗CD138抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD33抗体、抗CD38抗体、抗CD40抗体、抗CD49d抗体、抗CD52抗体、抗CD70抗体、抗CD74抗体、抗CD79b抗体、抗CD80抗体、抗CEA抗体、抗cMet抗体、抗Cripto抗体、抗CTLA-4抗体、抗DLL3抗体、抗TRAIL-2/DR5抗体、抗E-カドヘリン抗体、抗エンドグリン抗体、抗EpCAM抗体、抗上皮成長因子受容体抗体、抗FGFR3抗体、抗フィブロネクチンエクストラドメインB抗体、抗葉酸受容体1抗体、抗グリピカン3抗体、抗gp95/97抗体、抗Her2抗体、抗IGF-1R抗体、抗IL-13R抗体、抗IL-4抗体、抗IL-6抗体、抗MMP-9抗体、抗MUC1抗体、抗ムチンコアタンパク質抗体、抗NGcGM3抗体、抗P-カドヘリン抗体、抗PD-L1抗体、抗p-糖タンパク質抗体、抗PSCA抗体、抗PSMA抗体、抗SLAMF7抗体、抗TRAIL-R1/DR4抗体、抗トランスフェリン抗体、抗TROP-2抗体もしくは抗VEGF抗体である抗体、またはその抗原結合性断片を含む、項目128に記載のキットまたは組成物。
項目133.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、アレムツズマブ、アンデカリキシマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、BCD-100、ベバシズマブ、BGB-A317、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、BU59、カムレリズマブ、カロツキシマブ、カツマキソマブ、セミプリマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、デパツキシズマブ、ジヌツキシマブ、DS-8201、デュルバルマブ、エドレコロマブ、エロツズマブ、G544、ゲムツズマブ、グレムバツムマブ、GP1.4、hp67.6、IBI308、イブリツモマブ、イノツズマブ、イピリムマブ、イサツキシマブ、L19IL2、L19TNF、マルゲツキシマブ、ミルベツキシマブ、モガムイズマブ、モキセツモマブ、ナタリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オポルツズマブ、パニツムマブ、PDR001、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ポラツズマブ、ラコツモマブ、ラムシルマブ、リツキシマブ、ロバルピツズマブ、サシツズマブ、SM3、TAK-164、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウトミルマブ、XMAB-5574、またはゾルベツキシマブを含む、項目128に記載のキットまたは組成物。
項目134.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、IL-2、IL-4、IL-6、α-MSH、トランスフェリン、葉酸、EGF、TGF、PD-1、IL-13、幹細胞因子、インスリン様成長因子(IGF)、またはCD40を含む、項目1~127のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目135.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、IL-2、IL-4、IL-6、α-MSH、トランスフェリン、葉酸、EGF、TGF、PD-1、IL-13、幹細胞因子、インスリン様成長因子(IGF)またはCD40の完全長配列を含む、項目134に記載のキットまたは組成物。
項目136.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、IL-2、IL-4、IL-6、α-MSH、トランスフェリン、葉酸、EGF、TGF、PD-1、IL-13、幹細胞因子、インスリン様成長因子(IGF)またはCD40の切断形態、類縁体、バリアントまたは誘導体を含む、項目134に記載のキットまたは組成物。
項目137.前記第1及び/または第2の標的指向性部分が、IL-2受容体、IL-4、IL-6、メラニン細胞刺激ホルモン受容体(MSH受容体)、トランスフェリン受容体(TR)、葉酸受容体1(FOLR)、葉酸ヒドロキシラーゼ(FOLH1)、EGF受容体、PD-L1、PD-L2、IL-13R、CXCR4、IGFRまたはCD40Lに結合する、項目1~134のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目138.前記第2の標的指向性部分が、腫瘍微小環境細胞によって発現した抗原に結合する、項目1~129のいずれか1項に記載のキットまたは組成物。
項目139.前記腫瘍微小環境細胞が線維芽細胞またはマクロファージである、項目138に記載のキットまたは組成物。
項目140.線維芽細胞によって発現した前記抗原が線維芽細胞活性化タンパク質である、項目139に記載のキットまたは組成物。
項目141.マクロファージによって発現した抗原が、MAC-1/CD11bまたはシデロフレキシン3である、項目139に記載のキットまたは組成物。
項目142.患者における前記第1の標的指向性部分及び/または第2の標的指向性部分に結合する腫瘍抗原が発現しているがんを治療する方法であって、項目1~141のいずれか1項に記載の組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
項目143.前記組成物を投与する前に、前記がんを浸潤免疫細胞の存在について評価する、項目142に記載の方法。
項目144.前記組成物を投与する前に、前記がんを腫瘍抗原の存在について評価する、項目142~143のいずれか1項に記載の方法。
項目145.前記第1の標的指向性部分と前記第2の標的指向性部分が同じ抗原に結合する、項目142~144のいずれか1項に記載の方法。
項目146.前記第1の標的指向性部分と前記第2の標的指向性部分が異なる抗原に結合する、項目142~144のいずれか1項に記載の方法。
項目147.前記第1及び/または第2の標的指向性部分に結合する腫瘍抗原が発現している前記がんが、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、メラノーマ、肺癌、前立腺癌、精巣癌、甲状腺癌、脳腫瘍、食道癌、胃癌、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、リンパ増殖性障害、骨髄異形成障害、骨髄増殖性疾患または前悪性疾患のうちのいずれか1つである、項目142~146のいずれか1項に記載の方法。
項目148.患者における前記第1及び/または第2の標的指向性部分の両方に結合する腫瘍抗原が発現しているがんに、免疫細胞を指向する方法であって、項目1~141のいずれか1項に記載の組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
項目149.患者における、1つの腫瘍抗原が前記第1の標的指向性部分に結合するものであり1つの腫瘍抗原が前記第2の標的指向性部分に結合するものである2つの腫瘍抗原が発現しているがんに、免疫細胞を指向する方法であって、項目1~141のいずれか1項に記載の組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
項目150.サイトカインを患者の免疫細胞に送達する方法であって、項目76~147のいずれか1項に記載の組成物を患者に投与することを含み、前記TWICEの前記第1及び/または第2の補足的機能性ドメインが、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、またはTNFスーパーファミリーのメンバーを含む、前記方法。
V.補足表
以下の補足表は、上記出願の中で言及したものである。
実施例1.免疫細胞において2つの抑制経路を遮断するTWICE
様々ながん及び免疫細胞に作用するTWICEが開発され得る。これらの実施例は、特定の機能を有するTWICEを当業者がいかにして作り出せるかを示すのに役立つ。
例えば、2つのチェックポイント阻害抗体の相乗的組合せを有するTWICEが作り出され得る。
手始めに当業者はまず、所与のがんに適した標的指向性部分を選択するであろう。標的指向性部分は、所与のがん種及びある特定の抗原の優勢に関する文献に基づいて選択され得る。あるいは、特定の患者においてがんによって発現した抗原を評価することもあり得る。例えば、リツキシマブ(抗CD20抗体)を使用してCD20陽性リンパ腫を標的とすることができ、また、セツキシマブ(抗EGFR抗体)を使用してある特定の固形腫瘍を標的とすることができる。
TWICEは2つの標的指向性部分の使用を可能にし得る。所与のがんに第1の成分及び第2の成分を両方とも指向するように当業者が2つの標的指向性部分を選択することもあり得る。一方の成分を指向するためにCAI25を使用し、他方の成分を指向するためにEpCAMを使用して、卵巣癌を標的とすることができる。
適切な標的指向性部分を選択した後、当業者は、どんなタイプの免疫細胞結合ドメイン及び相補的結合ドメインが対形成したときに最大の治療効果を有し得るかを見極めることもあり得る。
図1は、TWICEがいかにしてがん細胞に対する2つの標的指向性ドメインを採用して免疫細胞での2つのシグナル伝達経路を介した活性化を可能にし得るかを示す。
抗腫瘍免疫応答を強化するために、2つのチェックポイント分子を阻害するTWICEを作り出してその結果として抗がん免疫応答をどちらかのチェックポイント分子のみの阻害に比べて増強したいと考える可能性がある。
例えば、免疫細胞結合ドメインとしてのイピリムマブ(抗CTLA4抗体)のVH、及び相補的結合ドメインとしてのニボルマブ(抗PD-1抗体)のVLを第1の成分が含んでいるTWICEを作り出すことがあり得る。そうして、このTWICEの第2の成分は、免疫細胞結合ドメインとしてのイピリムマブ(抗CTLA4抗体)のVL、及び相補的結合ドメインとしてのニボルマブ(抗PD-1抗体)のVHを含むことがあり得る。TWICEの機能は、一方の成分がVHを有し他方の成分がVLを有する限り、どちらの成分が所与の抗体のVHまたはVLを有しているかによる影響を受けない。
このようにしてTWICEを作り出すことによって、TWICEの第1及び第2の成分を両方ともがんに指向することができよう。がん部位において、イピリムマブのVH及びVL、ならびにニボルマブのVH及びVLは、第1及び第2の成分の近接に基づいて対形成することができよう。これは、TWICEがドメイン対形成後に2つの免疫チェックポイントを遮断し堅牢な免疫細胞活性化をもたらすことを可能にするであろう。
実施例2.免疫細胞において2つの経路を刺激するTWICE
免疫細胞において2つの経路を(免疫細胞結合ドメイン及び相補的結合ドメインが対形成したときに)刺激して堅牢な抗がん作用を媒介するTWICEが開発され得る。例えば、がんは、EGFRが発現する乳癌であり得る。
これらの実施例のいずれにおいても、第2の標的指向性部分は、腫瘍微小環境細胞を標的とするように選択され得る。この実施例では、第2の標的指向性部分は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的とするように選択され得る。このように、(第1の成分中の)第1の標的指向性部分が、腫瘍によって発現した抗原に結合し得る一方、(第2の成分中の)第2の標的指向性部分は、TAMによって発現した抗原に結合し得る。EGFRが発現している乳癌を標的とする場合、第1の標的指向性部分はセツキシマブであり得、第2の標的指向性部分はMAC-1/CD11bであり得る。
図2は、第1の成分ががんに指向され第2の成分が非がん細胞(この実施例ではTAM)に指向されるTWICEの概要を示す。このタイプのTWICEも、がん細胞がTAMの近傍にあるときにのみドメインの対形成が起こることになる。免疫細胞結合ドメインの対形成、及び相補的結合ドメインの対形成は、免疫エフェクター細胞において2つの経路を刺激することができる。
例えば、CD3e及びCD137経路を両方とも活性化させることを当業者が選択する可能性がある。これを行うためには、第1の成分がSP34(抗CD3抗体)のVH及びウトミルマブ(抗CD137抗体)のVLを含んでおり第2の成分がSP34(抗CD3抗体)のVL及びウトミルマブ(抗CD137抗体)のVHを含んでいるTWICEを作り出すことができよう。
このようにしてTWICEを作り出すことによって、TAMの近傍にある、例えば腫瘍間質にあるがん細胞に、TWICEの第1及び第2の成分を両方とも指向することができよう。そうして、SP34のVH及びVL、ならびにウトミルマブのVH及びVLは、第1及び第2の成分の近接に基づいて対形成することができよう。これは、TWICEがドメイン対形成後にT細胞に2つの正の刺激を与えることを可能にするであろう。
この実施例または実施例1に記載したのと同様の方法で、抑制性チェックポイント分子を(例えば対形成した免疫細胞結合ドメインによって)遮断することと免疫システムに(例えば対形成した相補的結合ドメインによって)正の刺激を与えることとの両方を行うTWICEを作り出すことができよう。これらのタイプの構築物も、抗がん免疫応答を堅牢に活性化させ得る。
実施例3.がん部位において2つの異なる免疫細胞を活性化させるTWICE
TWICEは、2つの異なる免疫エフェクター細胞での活性を合一することもあり得る。例えば、T細胞活性化及びマクロファージ活性化を媒介するTWICEを作り出すことがあり得る。
がん細胞によって発現した抗原に対する標的指向性部分を、実施例1に概要を示したように選択することができよう。この特定の実施例では、標的指向性部分はどちらも乳癌細胞上のHER2に結合することができる。2つの標的指向性部分は、同一であるか、HER2上の異なるエピトープに結合するかのどちらかであり得る。そうして、図3に示されるように、TWICEの対形成した免疫細胞結合ドメインは第1のエフェクター細胞(この場合、T細胞)に結合するものであり得、対形成した相補的結合ドメインは、第2のエフェクター細胞(この場合、マクロファージ)に結合するものであり得る。
T細胞のCD3及びマクロファージのCD40経路を両方とも活性化させることを当業者が選択する可能性がある。これを行うためには、第1の成分がSP34(抗CD3抗体)のVH及びCP-870,893(抗CD40抗体)のVLを含んでおり第2の成分がSP34(抗CD3抗体)のVL及びCP-870,893(抗CD40抗体)のVHを含んでいるTWICEを作り出すことができよう。
このようにしてTWICEを作り出すことによって、第1及び第2の成分はがん細胞に指向されるであろう。がん細胞において、SP34のVH及びVL、ならびにCP-870,893のVH及びVLは、第1及び第2の成分の近接に基づいて対形成することができよう。これは、がんの部位においてTWICEがドメイン対形成後にT細胞及びマクロファージを両方とも刺激することを可能にするであろう。
類似した方法で、がんの部位においてT細胞とNK細胞との組合せを活性化させるようにTWICEを設計することができよう。
実施例4.免疫細胞及びがん細胞を調節するTWICE
TWICEは、免疫細胞での活性と直接的ながん細胞での活性との両方を合一することもあり得る。例えば、T細胞活性化を媒介し、がん細胞によって発現した免疫チェックポイント分子を遮断する、TWICEを作り出すことがあり得る。
乳癌細胞上のHER2のような、がん細胞によって発現した単一の抗原に対する2つの標的指向性部分を、実施例3に概要を示したように選択することができよう。そうして、図4に示すように、TWICEの対形成した免疫細胞結合ドメインはエフェクター細胞(この場合、T細胞)に結合するものであり得、対形成した相補的結合ドメインは、がん細胞に結合するものであり得る。
T細胞ではCD3を活性化させ、がん細胞ではPD-L1を遮断することを当業者が選択する可能性がある。これを行うためには、第1の成分がSP34(抗CD3抗体)のVH及びアベルマブ(抗PD-L1抗体)のVLを含んでおり第2の成分がSP34(抗CD3抗体)のVL及びアベルマブ(抗PD-L1抗体)のVHを含んでいるTWICEを作り出すことができよう。
このようにしてTWICEを作り出すことによって、両成分がともにがん細胞に指向されるであろう。がん細胞において、SP34のVH及びVL、ならびにアベルマブのVH及びVLは、第1及び第2の成分の近接に基づいて対形成することができよう。これは、TWICEがドメイン対形成後に腫瘍微小環境中のT細胞を刺激し、がん細胞によって発現したPD-L1によって媒介される免疫抑制を阻止することを可能にするであろう。
類似した方法で、がん細胞上のRANKまたは細胞死誘導抗原に結合するTWICEを設計することができよう。
例えば、T細胞上のCD3を活性化させ、がん細胞死を直接的に引き起こすことを、当業者が選択する可能性がある。これを行うためには、第1の成分がSP34(抗CD3抗体)のVH及びマパツムマブ(抗TRAIL-R1/DR4細胞死受容体抗体)のVLを含んでおり第2の成分がSP34(抗CD3抗体)のVL及びマパツムマブ(抗TRAIL-R1/DR4細胞死受容体抗体)のVHを含んでいるTWICEを作り出すことができよう。これは、がんの部位においてTWICEがドメイン対形成後にT細胞を刺激し、がん細胞死を直接的に誘発することを可能にするであろう。
かくして、TWICEは、直接的な抗がん作用を媒介するとともに、抗がん免疫応答を刺激することもできよう。
実施例5.二量体化ドメインを含むTWICE
実施例1~4に記載の構築物のいずれにおいても、TWICEは図6に示すように二量体化ドメインも含み得る。対の一方の二量体化ドメインを免疫細胞結合ドメインに結合させることがあり得ると同時に、対の他方の二量体化ドメインを相補的結合ドメインに結合させることがあり得る。例えば、各成分はノブ・イントゥ・ホール型二量体化配列の対を含み得る。二量体化ドメインの片方または両方を切断可能リンカー(二量体化ドメインリンカーと呼称される)、例えば、ADAM28切断部位(配列番号1)を含むリンカーを介して結合させることができよう。
このようにして、各成分のノブ・イントゥ・ホール型二量体化ドメインは、個々の成分の免疫細胞結合ドメインと相補的結合ドメインとの対形成を強いる。片方または両方の二量体化ドメインを結合させている切断可能リンカーは、標的指向性部分によって腫瘍微小環境に指向された後に切断されて二量体化ドメインを遊離させることができよう。このようにして、免疫細胞結合ドメイン及び/または相補的結合ドメインは腫瘍微小環境中でのみ、それらに対応する他方の成分の中のドメインとの対形成に利用可能となるであろう。
したがって、二量体化ドメインを使用して、腫瘍微小環境における所望の作用部位の外では各成分免疫細胞結合ドメインと相補的結合ドメインとの結合を強いること及び腫瘍微小環境の外では成分間で起こり得るドメインの対形成を阻止することができよう。対照的に、腫瘍微小環境におけるプロテアーゼによる二量体化ドメインリンカーの切断は、腫瘍においてのみドメイン交換及び作用をさせることができよう。
両成分が二量体化ドメインを含んでいる、または片方の成分のみが二量体化ドメインを含んでいるTWICEを設計することができよう。
実施例6.補足的機能性ドメインを含むTWICE
他のTWICEは、図5に示すように、がん細胞に指向されたときに活性を有する補足的機能性ドメインを含み得る。この実施例では、第1の成分は弱化型IFN-アルファサイトカイン(Pogue et al.,PLoS ONE 11(9):e0162472(2016)を参照されたい)を含む。
第1及び第2の成分の両方が抗EPCAM scFvを含んでいてもよい。第1の成分は、MMP2切断部位(AIPVSLR;配列番号46)を有する25merのリンカーによってガンテネルマブ由来の不活性結合パートナーVLドメインに繋げられた抗CD3E VHドメイン、例えばSP34のもの(すなわち免疫細胞結合ドメイン)を含み得る。第2の成分は、MMP2切断部位(AIPVSLR;配列番号46)を有する25merのリンカーによってクローンアルファ-MUC1-1抗体由来の不活性結合パートナーVHドメインに繋げられた抗CD3E VLドメイン、例えばSP34のもの(すなわち免疫細胞結合ドメイン)を含み得る。
このようにして、第1及び第2の成分の免疫細胞結合ドメインは、腫瘍関連プロテアーゼMMP2によって切断されない限りマスキングされる。第1及び第2の成分がEPCAM陽性腫瘍に指向されると、MMP2による切断が不活性結合ドメイン(すなわち不活性結合パートナー)の遊離を媒介し得る。このようにして、SP34のVH及びVLは結合し、がんの部位においてT細胞を活性化させることができよう。さらに、EPCAM抗体によって弱化型IFN-アルファをがん細胞に指向することで、直接的な抗がん作用をもたらすことができよう。このタイプのTWICEは、弱化型サイトカインによって抗がん作用を媒介することとともに、抗がん免疫応答を刺激することもできよう。
同様に、TWICEはIL-15または弱化型IL-2を採用してT細胞活性化を調節することができよう。
類似した方法で、第1の成分中の補足的機能性ドメインとして他の弱化型サイトカインを含むTWICEを設計することができよう。付加的な効果のために第1及び第2の成分の両方の中に補足的機能性ドメインを含むTWICEを設計することもできよう。
実施例7.様々な二量体化ドメインリンカー及び様々な二量体化ドメインを含むTWICE
TWICE分子の例を構築するために、がんを標的とする十分に確立された抗EpCAM抗体を使用した。EpCAM抗体ソリトマブ(Brischwein K,et al Mol Immunol.43(8):1129-43(2006))を選択し、この抗体を、重鎖可変及びCH1ドメインからなる重鎖と、軽鎖可変及びカッパ定常ドメインからなる軽鎖との2本の鎖を含んだ抗原結合性断片(Fab)の形式で使用した。
これらのTWICE分子の初回試験のために、抗CD3イプシロン抗体SP34のVHをソリトマブFabの重鎖のC末端と融合させ、15アミノ酸の長さの柔軟なリンカーを使用して抗PDL1抗体アテゾリズマブのVLをソリトマブFabの軽鎖のC末端と融合させた。
図6に示すように、TWICE分子は、正しくない対を形成した可変ドメインを繋いでいるものであり腫瘍微小環境中でTWICEがタンパク質分解的に活性化されない限りドメイン交換を防止するものである二量体化ドメインを含有し得る。この二量体化ドメインは、VH及びVLドメインの間でのヘテロ二量体の効率的な形成を強化するためならびにホモ二量体の形成を回避するためのヘテロ二量体化として構築され得る。いくつかのヘテロ二量体化ドメインは文献に記載されている。TWICEの設計にどのヘテロ二量体化ドメインが適するかを試験するために、様々なヘテロ二量体化ドメインを使用していくつかのTWICEを構築し発現させた。
最初に、図7Aに示すようにコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを使用してTWICEを構築した。コイルドコイルはロイシンジッパーとも呼ばれている。ヘテロ二量体を形成する酸性及び塩基性コイルとして操作されたコイルドコイルドメインの配列は、US20160002356A1及びUS8877893B2に列挙されている。本実施例では、TWICE分子の重鎖を塩基性コイル(配列番号201)と融合させ、軽鎖を酸性コイル(配列番号202)と融合させた。当業者であれば、重鎖を酸性コイルと融合させ軽鎖を塩基性コイルと融合させてもよいことが分かるであろう。
表12は、コイルドコイル型TWICE構築物の中に含まれる二量体化ドメインリンカーを列挙する。これらの二量体化ドメインリンカーは、プロテアーゼによって切断されることができる配列を含有し得る。プロテアーゼ切断は、二量体化ドメインがTWICE分子の残部から分離することをもたらすことになるが、これは、ドメイン交換による2つのTWICEの間での免疫細胞結合VHまたはVLドメインの補完を可能にする。表12に列挙した例には、二量体化ドメインリンカーのいくつかの例が列挙されている。例のいくつかにおいて、リンカーは、腫瘍微小環境中のマトリックスメタロプロテアーゼによって切断されることができる配列を含有する。他の例では、二量体化ドメインリンカーは、第Xa因子(FXa)によって切断されることができるプロテアーゼ部位を含有し、これはTWICE分子を人工的に試験管内で活性化させるために用いられ得る。換言すれば、当該例では、第Xa因子が実験室環境での使用に好都合であるがゆえに第Xa因子切断部位をプロテアーゼ切断部位の代用物として採用した。表12に列挙した例のいくつかでは、1つのTWICE分子の重鎖及び軽鎖がそれらの二量体化ドメインリンカーの中に同じプロテアーゼ切断配列を含んでおり、他のものでは、1つのTWICE分子の重鎖及び軽鎖がそれらの二量体化ドメインリンカーの中に異なるプロテアーゼ切断配列を含んでいる。
表12に列挙した例のいくつかでは、TWICEは二量体化ドメインとしてヘテロ二量体Fcを含有する。この場合、WO2017106462A1に開示されているリジン再配置方策を使用して、ヘテロFc二量体化ドメインを有するTWICEを構築した。表12は、TWICE分子であるTWICE191及びTWICE192に使用された二量体化ドメインリンカーを示す。TWICE191は配列番号171の重鎖及び配列番号172の軽鎖を含み、TWICE192は配列番号173の重鎖及び配列番号174の軽鎖を含む。これらのTWICEは、重軽鎖間でのヘテロFcの形成を促進するために、変異S364K/K409Lを重鎖のFcの中に、及びK370S/F405Kを軽鎖のFcの中に含有する。ヘテロFc二量体化ドメインを有するTWICEを設計することは、分子の再利用を媒介してその血清中半減期を延ばす胎児性Fc受容体、FcRnに結合することを可能にする。これらのTWICEの例は、エフェクター機能が弱められた非グリコシル化分子を生むN297Q変異をFcの中にさらに含有する。
別の例では、Fab定常ドメイン(CH1及びCL)を二量体化ドメインとして使用してTWICE分子を構築した。がん指向性部分としてのFabも含有しているTWICE分子の重軽鎖の効率的な集合を可能にするために、二量体化ドメインCH1及びCLをCrossFabとして構築した(図7A)。CrossFabは、VHをCLに繋げVLをCH1に繋げるようなFabの片方における定常ドメインの交差によって二重特異性抗体構築物の2本の軽鎖の効率的集合を可能にする方策である(Schaefer W et a.,Proc Natl Acad Sci USA.108(27):11187-92(2011))。CrossFab二量体化ドメインを含有するTWICE構築物(TWICE200及びTWICE204、表13参照)では、免疫細胞エンゲージャーのVHは二量体化ドメインリンカー配列によってCLドメインに繋げられ、相補的エンゲージャーのVLは二量体化ドメインリンカー配列によってCH1ドメインに繋げられる。どの二量体化ドメインリンカーも第Xa因子プロテアーゼ切断配列(Ile-Glu-Gly-Arg)を含んでいた。TWICE200の完全配列は配列番号177の重鎖及び配列番号178の軽鎖を含み、構築物TWICE204は配列番号179の重鎖及び配列番号180の軽鎖を含む。
別の例では、二量体化ドメインとしてIgE CH2ドメインを使用してTWICEを構築した。IgE CH2は通常、IgEにおいてヒンジドメインとして機能するが、このドメインは、ドメイン置換によって類似した結合特性を有するFab様分子を構築するために使用されている(Cooke et al,mAbs.10(8):1248-1259(2018))。TWICE189及びTWICE190では、表12に示す二量体化ドメインリンカー配列を使用してIgE CH2ドメインを免疫細胞エンゲージャーVH及びVLドメインと融合させた。二量体化ドメインリンカーは第Xa因子切断配列(Ile-Glu-Gly-Arg)を含有する。
表13中に列挙されるTWICEタンパク質を各々の重鎖及び軽鎖の共トランスフェクションによって振盪フラスコ内で一過的HEK293培養物(30~50ml)に発現させた。発現したタンパク質を上清からIMACカラム(Histrap Excel,GE)を使用するFPLCによって、またはFc含有TWICEタンパク質の場合にはプロテインAカラム(MabSelect PrismA,GE)によって精製した。精製されたタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、試験した全てのリンカー及び二量体化ドメインについて予想された分子量のところにバンドが示された(図7B)。発現レベルは、コイルドコイルまたはヘテロFc二量体化ドメインを有するTWICEの場合に最も高かった。
TWICEを組換えFXaプロテアーゼによる切断によってさらに試験した。15μlの反応系においておよそ1μgの精製TWICE及び0.1μgのFXa(New England Biolabs #P8010)を、100mMのNaCl及び2mMのCaCl2と20mMのトリスHCl(pH8.0)を含有する緩衝液の中で1時間、周囲温度でインキュベートした。4×のLDS試料用緩衝液(Thermo Fisher NP0007)5μlを添加すること及び95℃に2分間加熱することによって反応を停止させた。その後、試料をSDS PAGEによって分離して切断生成物を分析した(図7C)。
両方の二量体化ドメインリンカーの中、つまり重鎖中及び軽鎖中にFXa切断配列を含有する試料TWICE193、TWICE191及びTWICE192(表13)はFXaによって完全に切断された(図7C)。重鎖二量体化ドメインリンカー中にFXa切断部位を有し軽鎖二量体化ドメインリンカー中にMMP2切断部位を有するTWICE117は、部分的に切断されたにすぎなかった(図7B)。両方の二量体化ドメインリンカーの中に含まれたFXa切断部位を有するものである構築物TWICE200、TWICE204、TWICE189及びTWICE190は、これらの条件の下ではFXaプロテアーゼによって切断されなかった。この結果は、二量体化ドメインの配置(CH1/CL、またはIgE CH2)、または構築物TWICE200、TWICE204、TWICE189及びTWICE190の中の長さ5~8残基であるリンカー長(表12)がこれらの特定の構築物においてプロテアーゼ切断に好ましくないことを示唆している。しかしながら、デザインTWICE117、TWICE193、TWICE192及びTWICE193の中に含まれる二量体化ドメインであるコイルドコイル及びヘテロFcはTWICEの構築に適している。これらの二量体化ドメインを含有するTWICE分子は良好に発現し、組換えプロテアーゼによる切断によって活性化されることができた。
実施例8.様々な結合部分を有するTWICE:Fv対Fab
CD3抗体SP34及びCTLA4抗体イピリムマブを有しヘテロFc二量体化ドメインを含有するTWICE分子を設計した。いくつかの例では抗EpCAM抗体ソリトマブをFabとして使用し(TWICE277及びTWICE278)、他の例ではこの抗体を、(Kabat付番で表した)VHの残基44とVLの残基100との間にジスルフィドを作る操作によってジスルフィド安定化Fv(dsFv、TWICE332及びTWICE335)として使用した。TWICE分子を上記のように発現させプロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製し、EpCAMに対するその結合能力をELISA結合アッセイで試験した。ELISAプレートを(社内で製造した)組換え可溶性EpCAM-His6タンパク質によって5μg/mlで一晩、4℃でコーティングし、プレートをPBS中1%のBSAでブロッキングした。TWICEの段階希釈液をEpCAMと結合させ、結合したTWICEをマウス抗ヒトFc二次抗体(JDC-10 Abcam,ab99759)で検出した。結果(図8のA~B)は、FabまたはdsFv標的指向性部分を有するTWICE分子が類似した結合親和性で抗原に結合し、KDがdsFv TWICEでは1.04~1.65nMの範囲であり、Fab TWICEでは1.21~1.22nMの範囲であったことを示した。このように、腫瘍微小環境中の細胞を標的とするために異なる標的指向性部分、例えばFabまたはdsFvを有するTWICEを構築することができる。
実施例9.架橋ELISAにおけるCD3/CTLA-4 TWICEの試験
TWICE対によるドメイン交換及び機能性パラトープ(すなわち対形成したVH/VLドメイン)の生成を試験するために、標的抗原と免疫細胞係合分子とに同時に結合するTWICE対の能力を測定する架橋ELISAアッセイを開発した。図9A中の模式図はこの架橋ELISAの原理を示す。手短に述べると、ELISAプレートを標的抗原(組換え可溶性EpCAM、黒色の六角形)で5μg/mlの濃度で一晩コーティングする。TWICE分子は上記のようにFXaによる切断によって活性化され得、その後、段階希釈でプレートに添加され得る。TWICEは、図9A中にFab(4つの灰色の楕円)として描かれているその標的指向性部分によって標的抗原に結合することができる。プレート上の標的抗原(EpCAM)への結合はTWICEを近接させ、これは、免疫細胞結合ドメイン及び相補的結合ドメインがドメイン交換を経て完全な免疫細胞結合パラトープ(図9A中の黒色及び白色の楕円)を形成することを可能にする。機能的補完は、免疫細胞結合ドメインによって結合される抗原、例えばCD3(図9A中の縞模様の三角形)とのインキュベーションによって測定される。抗原はFc融合タンパク質(マウスIgG2a Fc)として提供され、したがって、抗マウスFc二次抗体で検出することができる。二次抗体によるこの検出ステップは図9Aの模式図では分かり易くするために省略されている。
図9B及び図9Cは、ドメイン交換によるTWICE対の機能的補完を測定する架橋ELISAの例を示す。これらの例では、(表13に記載の)TWICE277及び278を使用するが、これらは、CD3イプシロンに結合する免疫細胞結合抗体SP34、及びCTLA-4に結合する相補的な抗体イピリムマブを含有するものである。CD3抗体のVH及びCTLA-4抗体のVLはTWICE277に含まれており、抗CD3のVL及び抗CTLA-4のVHはTWICE278に含まれている。TWICE分子のこれらの例は、ヘテロFc二量体化ドメイン、及び両方の二量体化ドメインリンカーの中にFXa切断部位をさらに含有する。図9Bは、CD3に対するTWICEの結合能力を測定するCD3架橋ELISAからの結果を示し、図9Cは、CTLA-4に対するTWICEの結合能力を測定するCTLA-4架橋ELISAの結果を示す。この実験では、個々のTWICE(単独での277または278)は、FXaによる切断によって活性化されたときでさえ、CD3に対してもCTLA-4に対しても結合性を示さなかった。さらに、TWICE277及び278を併用したがFXaによる切断によって活性化させなかった場合、TWICEはCD3に対してもCTLA-4に対しても結合性を示さなかった。TWICE277及び278を併用し、FXaによって切断して二量体化ドメインを除去した場合にのみ、それらは用量依存的に応答してCD3またはCTLA-4に対する結合性を示した(図9B中及び図9C中の菱形記号)。これらの結果は、両方のTWICEが標的抗原に結合したときにTWICE分子がドメイン交換を経て機能的な免疫細胞結合ドメインを生成できることを示している。さらに、これらのTWICEの二量体化ドメインは、意図したとおり、二量体化ドメインがプロテアーゼ切断によって除去されない限りTWICEのドメイン交換を防止するロック機構として機能する。
図10A~10Bは、架橋ELISA実験で試験されたCD3/CTLA-4 TWICEの別の例を示す。この実験で使用したTWICE281及び282は、上記のTWICE277及びTWICE278と同じEpCAM指向性ならびにCD3及びCTLA-4抗体を包含するが、コイルドコイル二量体化ドメインを含有する点が異なっている。さらに、TWICE281及び282は、重鎖にFXa切断部位を含有し、軽鎖にMMP2切断配列を含有し、それゆえ、分子はFXaまたはMMP2による切断によって活性化され得る。先の実験と同様に、TWICE277及び278は、FXaによる切断によって活性化された場合にのみ用量応答結合曲線を示した。FXaによる活性化なしではTWICEはCD3にもCTLA-4にも結合しなかった。このように、ヘテロFc及びコイルドコイル二量体化ドメインはどちらもTWICEの設計に適している。TWICEの血清中半減期を延ばすことを望む場合にはヘテロFcが好ましい可能性がある。
実施例10.CD3/CD28 TWICE
図11A~11Bは、架橋ELISA実験で試験された、CD3抗体SP34及び共刺激性抗CD28抗体セラリズマブから構築されたTWICEの例を示す(表13からのTWICE394及び395)。TWICEのこれらの例は、ここでも重軽鎖リンカーの両方にヘテロFc二量体化ドメイン及びFXa切断部位を使用して設計された。先の実施例と同様に、TWICE394及びTWICE395は、それらが併用され切断によって活性化された場合にのみ、免疫細胞抗原CD3及びCD28に対する結合性を示した(図11A及び図11B)。個々のTWICEはどちらの免疫細胞抗原に対しても結合性を示さなかった。未切断TWICEが何ら架橋活性を示さなかった事実によって証明されるように、ドメイン交換及び結合には、またしても切断が必要であった(図11A中及び図11B中の灰色の正方形)。
実施例11.CD28/4-1BB TWICE
図12A~12Bは、共刺激分子CD28及びCD137(4-1BB)に結合するものである抗体セラリズマブ及びウレルマブを使用して構築さしたTWICEの例を示す。(表13に示される)TWICE400及び401は、セラリズマブ及びウレルマブの可変ドメインを使用して構築され、両方のリンカーにヘテロFc二量体化ドメイン及びFXa切断部位を含有していた。これらの分子を架橋ELISA様式で試験したところ、TWICEは、構築物がFXaで予め切断され両方のTWICEが存在していた場合にCD28(図12A)及び4-1BB(図12B)に対する結合性を示した。どちらのTWICEも単独では、CD28にも4-1BBにも結合しなかった。
実施例12.CTLA-4/PD-L1 TWICE
図13は、チェックポイント分子CTLA-4及びPD-L1にそれぞれ結合するものである抗体イピリムマブ及びアテゾリズマブを使用して構築したTWICEの例を示す。表13に示すように、TWICE283はイピリムマブのVH及びアテゾリズマブのVLを含有し、相補的なTWICE284はアテゾリズマブのVH及びイピリムマブのVLを含有する。これらのTWICEは、重鎖中にコイルドコイル二量体化ドメイン及びFXa切断部位を有するように設計された。これらのTWICEをEpCAM/PD-L1架橋ELISAで試験したところ、TWICE284は、このTWICEがアテゾリズマブのVHしか含有しておらず同族アテゾリズマブVLが欠損しているにもかかわらず、PD-L1に対する顕著な結合性を呈した(図13)。この結果は、抗原結合を媒介するにはアテゾリズマブのVHで十分であることを示唆している。
この見解は、抗体のVLが抗原とあまり接触せず、それゆえ抗原結合において欠失可能または置換可能であり得ることが、PD-L1と複合したアテゾリズマブの結晶構造(Lee HT et al.Sci Rep 7:5532-5532(2017))から明らかになっているという事実と一致している。したがって、アテゾリズマブは、少なくともイピリムマブと併用される場合には、TWICEにおいてパラトープ(すなわちVH/VL対)が分裂したときにその結合特性を保持するという事実ゆえにTWICEの構築に適さない抗体の例である。
しかしながら、図9A~12Bに示すように、イピリムマブ、SP34、セラリズマブ及びウレルマブは、パラトープが分裂しているときに結合性を呈さない例示的な抗体であり、よって、そのような抗体はTWICEの構築に適している。
実施例13.TWICEによる免疫細胞活性化
TWICE構築物によるT細胞の指向先転換を試験管内でのT細胞活性化アッセイで試験した。手短に述べると、大腸癌細胞(HCT-15)を96ウェルプレートに5,000細胞/ウェルの密度で播種し、一晩かけて付着させた。末梢血単核細胞(PBMC)を10:1のエフェクター対標的比で添加し、細胞をTWICE分子の段階希釈液で処理した。実験のいくつかでは、TWICE分子を細胞への添加に先立ってFXaプロテアーゼ(NEB#P8010L)による切断によって予め活性化させた。
T細胞活性化を定量するために、IFNガンマELISAキット(Invitrogen 88-7316-88)を使用して、TWICEの添加から24時間後に培地中の分泌インターフェロンガンマを検出した。溶解したがん細胞からの乳酸脱水素酵素(LDH)を定量的に測定する細胞毒性アッセイ(CytoTox96,Promega)を用いて、処理開始から48時間後に標的細胞殺滅を判定した。標的細胞殺滅は、図14A~16に示される用量応答曲線の特異的溶解(%)として表されるが、これは、溶解用緩衝液で溶解した細胞と比較したときのLDH放出の割合に対応し、未処理細胞からのバックグラウンドLDH放出を差し引いたものである。
図14A~14Bは、架橋ELISAで以前に試験されたTWICE277及び278、ならびにTWICE281及び282による細胞殺滅アッセイの結果を示す。上記のとおり、これらのTWICEは、抗CD3イプシロン係合抗体SP34、及びCTLA-4抗体イピリムマブを含有する。TWICE277及び278は、FXa切断配列Ile-Glu-Gly-Argを含有するものであるリンカーGGGIEGRGGG(配列番号206)によってVHまたはVLに結合したヘテロFc二量体化ドメインを有して構築されている。対照的に、TWICE281及び282はコイルドコイル二量体化ドメインを含有し、重軽鎖中のリンカーが同一でない(図14A)。これらのTWICEは、FXa切断部位を重鎖リンカーGGGGSIEGRGGGGS(配列番号203)の中に有しMMP2切断部位を軽鎖リンカーGGPLGVRGKGGGS(配列番号204)の中に有して構築されている。この実験からのLDH放出データ(図14B)は、TWICEを細胞への添加に先立ってFXaによって予め活性化させた場合にどちらのTWICE対もPBMCによるがん細胞の強い殺滅を引き起こしたことを示した。TWICE277及び278は、事前切断なしではこの殺滅応答を引き起こさなかったが、このことは、TWICE活性化及びドメイン交換には切断が必要であることを裏付けており、これらの分子を用いた架橋ELISA実験で得られたデータと一致している(図9B~9C)。しかしながら、架橋ELISA(図10A~10B)において同様にFXaによる活性化を必要としたものであるTWICE281及び282は、TWICEを事前に活性化させなかった場合でさえPBMCによるHCT15細胞の殺滅を用量依存的に速やかに引き起こした。
これらの結果は、軽鎖リンカー中のMMP2部位を切断し得るものであるがん細胞によってTWICE分子が活性化され得ることを示している。全体としてこの実験は、(1)TWICEが効率的に免疫細胞と係合してがん細胞を殺滅することができること、(2)TWICE活性化にはタンパク質分解的切断が必要であること、及び(3)がん細胞によって産生されたプロテアーゼがTWICE分子を活性化させることができることを裏付けた。
図15A~15Dは、同様に抗CD3イプシロン係合抗体SP34及びCTLA-4抗体イピリムマブを含有するものであるTWICE285及びTWICE286を使用した切断アッセイ(図15A)、T細胞活性化アッセイ(図15B)及び殺滅アッセイ(図15C~15D)の結果を示す。TWICEのこれらの例は、重鎖及び軽鎖の両方において二量体化ドメインリンカーGGGGSIEGRGGSGGGS(配列番号205)の中にFXa切断部位を有して設計されており、これは上記の図14A~14Bに示される実施例のリンカーよりも長い。TWICEのこれらの例はコイルドコイル二量体化ドメインも含有する。
TWICE285をFXaで切断した場合、分子は予想された断片をSDS-PAGE上に生成し(図15A)、TWICEがFXaで事前に活性化され得ることを示した。図15B及び図15Cに示すサイトカイン放出及び殺滅データは、TWICE分子であるTWICE285とTWICE286が、FXaプロテアーゼによる切断によってTWICEが活性化された場合にPBMCに係合してこれをHCT-15細胞へ指向先転換することができることを裏付けた。TWICE285もTWICE286も単独では、T細胞によるインターフェロンガンマの放出もがん細胞の殺滅も引き起こさなかった。
しかしながら、LDH放出実験において事前切断なしでこれらのTWICEを合わせて試験した場合、分子はFXaによる事前活性化に関係なくがん細胞溶解を引き起こした(図15D)。この結果は、架橋ELISA及びT細胞活性化アッセイで活性化のために切断が必要であった上記TWICE例とは対照的である。したがって、TWICE活性化には二量体化ドメイン及びリンカー長さのデザインが関係していることをデータが立証している。TWICE285及びTWICE286の固有のより長いリンカーGGGGSIEGRGGSGGGS(配列番号205)は、これらの構築物の中に存在するコイルドコイル二量体化ドメインと併用される場合、切断の非存在下でドメイン交換を防止しない可能性がある。
実施例14.共刺激性TWICE
次に、表13に示されるとおりCD3及びCD28に係合するものであるTWICE394及びTWICE395を、T細胞指向先転換アッセイで試験した(図16)。上記のとおり、これらのTWICEは、抗CD28抗体セラリズマブ及び抗CD3イプシロン抗体SP34から構築されている。それゆえ、これらの分子は図11A~11Bに示されるようにCD3及びCD28に結合することができるが、これは、T細胞活性化を誘発する共刺激シグナルをもたらす。これらのTWICEをT細胞殺滅アッセイで試験したところ、TWICE394及び395はFXaによる事前活性化の後にHCT-15がん細胞の堅牢な殺滅を引き起こしたが、事前切断なしでは活性を示さなかった。
TWICEによるCD28及びCD3の係合による刺激シグナルを試験するために、TWICE活性を試験する前にT細胞を疲弊させるプロトコールを開発した。T細胞活性化及び疲弊のために、前立腺がん細胞(PC-3)を6ウェルプレートに150,000細胞/ウェルの密度で播種し、一晩かけて付着させた。末梢血単核細胞(PBMC)を10:1のエフェクター対標的比で添加し、US10035856B2の配列番号168及び169に基づく2成分系T細胞エンゲージャーで10nMの濃度で細胞を処理した。この2成分系は、T細胞が係合されてがん細胞を殺滅するという点でCD3二重特異性抗体と類似した作用をする。しかしながら、それは事前活性化に関して従来の二重特異性抗体に勝る利点を有する。それは、当該分子は溶液中ではCD3に結合することができず、それゆえPBMCを洗浄することによって簡単に除去されることができるからである。事前活性化から48時間後にPBMCをフローサイトメトリーによって分析し、処理が活性化及びCD3+細胞上の疲弊マーカーの堅牢な上方制御を引き起こしたことが明らかになり(図17A)、事前活性化及び疲弊が明らかにされた。そのような事前活性化免疫細胞は未刺激PBMCに比べて腫瘍微小環境中の免疫細胞をより強く反映している可能性がある。それは、腫瘍浸潤リンパ球は疲弊しており疲弊マーカーの発現の増加を呈することが知られているからである(Baitsch L et al.Trends Immunol.33(7):364-72(2012))。
続いて、事前活性化PBMCを上記の大腸癌細胞(HCT-15)に対する指向先転換アッセイに使用して、TWICE分子がT細胞活性化を誘発する可能性を試験したが、但し、このアッセイではエフェクター対標的比を1:4に変えた。図17Bは、このT細胞活性化アッセイの結果を示す。CD3及びCD28に結合するTWICE394及びTWICE395は、IFNガンマ分泌によって測定したところ、疲弊T細胞の堅牢な活性化を引き起こした。CD3及びCTLA-4に結合するTWICE277及びTWICE278も、レベルがTWICE394及びTWICE395の場合よりも低いとはいえ、IFNガンマ分泌を引き起こした。CD3抗体VH及びVLドメインを非機能性VH及びVLドメイン(配列番号199及び200)と共に含有する一対の対照TWICEもこのアッセイに含まれていた。対照TWICE431及びTWICE432は、疲弊T細胞を使用するこの指向先転換実験において低レベルのインターフェロンガンマを産生させた。全体としてこれらの結果は、三重特異性抗体によるCD3とCD28との共刺激活性化がどちらか単独での刺激に比べてより優れたT細胞活性化を生じさせたこと及びそれがより強い抗腫瘍免疫応答に発展し得ることを示した近年の刊行物と一致している(Wu,L.,Seung,E.,Xu,L.et al.Trispecific antibodies enhance the therapeutic efficacy of tumor-directed T cells through T cell receptor co-stimulation.Nat Cancer(2019年11月18日付のオンライン公開)doi:10.1038/s43018-019-0004-z)。この所見と一致して本データは、TWICEが疲弊T細胞を強力に刺激できること、及び共刺激またはチェックポイント遮断の相加的作用が、CD3係合単独での場合に比べて、より強い応答を引き起こせることを示唆している。しかしながら、公開された三重特異性抗体とは対照的に、TWICEはこれらの共刺激シグナルを活性化可能な方法で提供することができる。
実施例15.CD16AによってNK細胞に係合しているTWICE
別の例では、CD16Aに対する抗体を使用してTWICEをナチュラルキラー(NK)細胞に係合するように設計した。これらのTWICE分子を構築するために使用した抗CD16A抗体は、臨床試験(NCT01221571)において、CD30及びCD16Aを標的とする二重特異性抗体である分子AFM13で評価されている。TWICE対でこの抗体を評価するために、抗CD16A抗体を抗CD3抗体OKT3と組み合わせてTWICE分子であるTWICE440及びTWICE441を作り出したが、これらは、ヘテロFc二量体化ドメイン、及び二量体化ドメインリンカー中のFXa切断部位を含むものであった。
TWICE分子をまず上記の架橋ELISA実験と同様のCD16A架橋ELISAで試験した。TWICE440及び441は、両方のTWICEが存在しておりFXaプロテアーゼによって事前に活性化された場合にのみ、予想されたCD16Aに対する結合性を示した(図18A)。他のTWICE分子に関してみられたように、TWICEの事前切断は必要であり、この架橋ELISAアッセイで未切断TWICEはCD16Aに対する結合性を呈さなかった。さらに、個々のTWICE分子は、それらをFXaによって事前切断した場合でさえCD16Aに対する結合性を示さなかった。したがって、AFM13に由来する抗CD16A抗体は、分裂したパラトープの半分(すなわちVH及びVL)がTWICE中で分離しているときに抗原に結合することがないため、TWICEに使用するのに適している。
続いて、HCT15大腸癌細胞及びNK細胞を使用する指向先転換アッセイでTWICE440及び441を試験した。上記PBMCを使用して実施した指向先転換アッセイについて上に記載されるようにがん細胞を96ウェルプレートに5000細胞/ウェルで播種し、一晩かけて付着させた。次に、精製NK細胞(Stem Cell Technologies、カタログ番号70036)をがん細胞に20:1のエフェクター対標的比で添加し、事前に活性化させたTWICEを様々な濃度でウェルに加えた。TWICEの添加から24時間後に、溶解したがん細胞からのLDHを定量的に測定する細胞毒性アッセイ(CytoTox96,Promega)を用いてLDH放出の測定によって標的細胞殺滅を判定した。このNK細胞指向先転換アッセイの結果を図18Bに示す。この実験において、EpCAM及びCD16aを標的とする対照二重特異性抗体(CTRL406)はがん細胞からのLDHの放出を引き起こし、NK細胞による殺滅が示された。
EpCAM及びCD3を標的とする対照二重特異性抗体も、おそらくいくらかのNKT細胞の存在ゆえに程度がCD16a/EpCAM二重特異性抗体の場合に比べてより小さいとはいえ、LDH放出を引き起こした。TWICE440及び441は堅牢なNK指向先転換を引き起こしたが、これは、CD16a/EpCAM二重特異性抗体で認められた殺滅の量と同程度であり、NK細胞に係合するTWICE分子をCD16a抗体によって設計できることが示された。抗CD16抗体を介したNK細胞の係合は、がん細胞殺滅を引き起こすことができる。
均等物
上に記した明細事項は、当業者が実施形態を実施するのを可能にするのに十分であると考えられる。上記の説明及び実施例は、ある特定の実施形態について詳述し、本発明者らが企図する最善の形態を記載している。しかしながら、上記がどれほど詳しく述べられていると見受けられ得るとしても、実施形態が多くの方法で実施され得、別記の特許請求の範囲及びその任意の均等物に準じて解釈されるべきであるということは理解されよう。
本明細書中で使用する場合、「約」という用語は、明示的に示されているか否かにかかわらず例えば自然数、分数及び百分率を含めた数値を指す。「約」という用語は全般的に、列挙された値と等価である(例えば、同じ機能または結果を有する)と当業者によってみなされる数値の範囲(例えば、列挙された範囲の±5~10%)を指す。「少なくとも」や「約」などといった用語が、列挙された数値または範囲に先行する場合、当該用語は、列挙して示された値または範囲の全てを修飾する。ある場合には、「約」という用語は、最も近い有効数字の概数にした数値を含み得る。