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JP2022069229A - オーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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JP2022069229A JP2020178303A JP2020178303A JP2022069229A JP 2022069229 A JP2022069229 A JP 2022069229A JP 2020178303 A JP2020178303 A JP 2020178303A JP 2020178303 A JP2020178303 A JP 2020178303A JP 2022069229 A JP2022069229 A JP 2022069229A
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Abstract

【課題】一定以上の厚さで、高強度かつ表面性状に優れたオーステナイト系ステンレス鋼等を実現する。【解決手段】オーステナイト系ステンレス鋼であって、CとNとを合わせた含有量が、質量%で0.08%以上であり、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均が250HV以上であり、厚さが3mm以上であり、熱延時の粒界割れに起因するヘゲ疵の深さの平均が10μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する。
スマートフォンに代表される携帯型電子機器は小型軽量化および意匠性向上等のニーズが高い。そのため、このような携帯型電子機器に用いられる金属製の外装部材の製造では、複雑な形状への加工に対応するため、過酷な条件での冷間鍛造を施した後、切削加工により成形する手法が多用されるようになってきた。さらに、携帯型電子機器のデザインによっては、切削加工後に鏡面研磨を施す場合もある。ここで、携帯型電子機器の外装部材は、自機器に内蔵される地磁気センサー等への悪影響を回避するために非磁性であることが要求されるだけでなく、高強度も要求される。また、前記の電子機器は携帯型であるため屋外環境で使用されることも多いことから、外装部材は、屋内での使用を前提とする電子機器用部材と比べて高い耐食性も要求される。
前記の外装部材の製造に用いられる金属材料として、例えば特許文献1には、冷間鍛造および切削加工を施して非磁性部材とされた非磁性オーステナイト系ステンレス鋼板(以下、単に「ステンレス鋼板」という)が開示されている。
また、ステンレス鋼では高い表面品質が要求される。ここで、ステンレス鋼の一製造工程である熱間圧延(熱延)に起因する表面欠陥として、ヘゲ疵と呼ばれる山形状の割れ疵がある。ヘゲ疵等の表面欠陥は、ステンレス鋼の歩留りを低下させ、大幅なコストアップを招く。このような表面欠陥を改善する方法として、例えば特許文献2には、熱延時の歪速度および1パス当たりの圧延率を規定した、ステンレス鋼板の製造方法が開示されている。
特開2018-109215号 特開平8-103802号
特許文献1に記載のステンレス鋼板の製造方法は、非磁性かつ高強度部品を製造することが可能な方法であるが、製造工程が複雑でコストがかかり、また、製品形状によっては利用できないという問題点がある。
また、オーステナイト系ステンレス鋼を高強度化するためには、一般的に冷間圧延(調質圧延)を施すことが知られている。しかし、冷間圧延を施すと薄肉化しやすいことから、一定以上の板厚のオーステナイト系ステンレス鋼を、冷間圧延を含む製造方法により製造することは困難である。
また、特許文献2には、表面欠陥を改善するための熱延工程の条件は記載されているが、当該熱延工程の条件には改善の余地がある。例えば、特許文献2には、鋳造片の表面研削有無、および、1~7パス程度の粗熱延の工程における特定パスの圧延率等の具体的な条件については開示されていない。
本発明の一態様は、厚さが一定程度以上あるにも関わらず、高強度かつ表面性状に優れたオーステナイト系ステンレス鋼等を実現することを目的とする。
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、CとNとを合わせた含有量が、質量%で0.08%以上であり、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均が250HV以上であり、厚さが3mm以上であり、熱延時の粒界割れに起因するヘゲ疵の深さの平均が10μm以下である。
本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.003%以上0.120%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:6.0%以上15.0%以下、Cr:16.0%以上22.0%以下、N:0.005%以上0.200%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものであってもよい。
本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、Mo:0.01%以上3.00%以下、Cu:0.01%以上3.50%以下、Al:0.008%以下、O:0.001%以上0.010%以下、V:0.01%以上0.50%以下、B:0.0003%以上0.0100%以下、Ti:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有していてもよい。
本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、Co:0.01%以上0.50%以下、Zr:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下、Mg:0.0005%以上0.0030%以下、Ca:0.0003%以上0.0030%以下、Y:0.01%以上0.20%以下、REM(希土類金属):0.01%以上0.10%以下、Sn:0.001%以上0.500%以下、Sb:0.001%以上0.500%以下、Pb:0.01%以上0.10%以下、W:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有していてもよい。
本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、比透磁率μが1.1以下であってもよい。
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、質量%で、C:0.003%以上0.120%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:6.0%以上15.0%以下、Cr:16.0%以上22.0%以下、N:0.005%以上0.200%以下を含有し、かつCとNとを合わせた含有量が質量%で0.08%以上であり、残部がFeおよび不可避的不純物で構成された化学組成からなり、鋳造によって製造したスラブを、1000℃以上1300℃以下の温度に加熱した後、粗熱延を施す粗熱延工程と、前記粗熱延工程により得られた鋼帯に対して仕上熱延を施す仕上熱延工程と、前記仕上熱延工程後の前記鋼帯を冷却する冷却工程とを含み、前記粗熱延工程では、前記スラブを表面研削することなく、前記粗熱延の1パス目の圧延率が30%以下であり、前記仕上熱延工程では、前記仕上熱延の総圧延率が60%以上であり、前記仕上熱延の温度が600℃以上1100℃以下であり、前記仕上熱延の最終パス温度が950℃以下であり、前記冷却工程では、前記鋼帯を、前記仕上熱延の前記最終パス温度が750℃以上の場合は、750℃以下まで、冷却速度5℃/s以上で冷却する。
本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、前記スラブは、質量%で、Mo:0.01%以上3.00%以下、Cu:0.01%以上3.50%以下、Al:0.008%以下、O:0.001%以上0.010%以下、V:0.01%以上0.50%以下、B:0.0003%以上0.0100%以下、Ti:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有していてもよい。
本発明の一態様に係るオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、前記スラブは、質量%で、Co:0.01%以上0.50%以下、Zr:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下、Mg:0.0005%以上0.0030%以下、Ca:0.0003%以上0.0030%以下、Y:0.01%以上0.20%以下、REM(希土類金属):0.01%以上0.10%以下、Sn:0.001%以上0.500%以下、Sb:0.001%以上0.500%以下、Pb:0.01%以上0.10%以下、W:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有していてもよい。
本発明の一態様によれば、厚さが一定程度以上あるにも関わらず、高強度かつ表面性状に優れたオーステナイト系ステンレス鋼等を実現することができる。
一実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法における、各工程の流れを示す工程図である。 実施例および比較例に係るオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成を示す図である。 実施例に係るオーステナイト系ステンレス鋼の物性等を示す図である。 比較例に係るオーステナイト系ステンレス鋼の物性等を示す図である。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本明細書中では、特に言及がない限り、成分の濃度は、質量%濃度で表す。
〔本発明のポイントおよび目的〕
本発明のポイントとしては、以下に示す(i)および(ii)が挙げられる。
(i)一定程度以上(3mm以上)の厚さがあるにも関わらず、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均値が250HV以上、かつ熱延時の粒界割れに起因するヘゲ疵が少なく、表面性状に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を実現した点。
(ii)連続鋳造によって製造したスラブを表面研削することなく高温にし、複数パス実施する粗熱延の1パス目の圧延率を30%以下とする。その後の仕上熱延の総圧延率を60%以上、仕上熱延の温度を600℃以上1100℃以下、仕上熱延の最終パス温度を950℃以下とする。そして、仕上熱延の最終パス温度が750℃以上の場合は、仕上熱延後の鋼帯を750℃以下まで、冷却速度5℃/s以上で冷却する。これらの工程を含む製造方法により、前記(i)に示すオーステナイト系ステンレス鋼が得られることを見出した点。
ここで、ヘゲ疵とは、オーステナイト系ステンレス鋼の表面に発生する山形状の割れ疵を示す。δフェライトを含まないオーステナイト単相鋼では、熱延初期の段階で生じるスラブ表面の粒界割れが、ヘゲ疵の原因になるとされている。このような粒界割れは、熱間加工性を劣化させる代表的な不純物であるS(硫黄)が結晶粒界に偏析すること、また、結晶粒径が大きい場合に粒界強度が脆弱であることに起因して、熱延時の応力に変形が追従できずに発生する。
これまで、例えば、S含有量を低減すること、および、S固溶限の大きなδフェライトを少量生成させることにより、粒界へのSの偏析を抑制することで、粒界割れの改善がなされてきた。また、結晶粒径の微細化に伴う粒界面積の増加によれば、Sの粒界偏析濃度が希釈化し、かつ粒界強度が高まるため、粒界割れ、すなわちヘゲ疵の発生低減に有効となる。また、熱延時の再結晶は、結晶粒微細化に伴う粒界強度の増加に加えて、Sが偏析していた旧粒界が消滅して粒界割れが発生しなくなることから、粒界割れを抑制する要因の一つとなることが知られている。
一方、上述の(ii)に示す製造方法により、オーステナイト系ステンレス鋼におけるヘゲ疵の発生低減を実現できることは、本発明者らによる鋭意検討の結果得られた、新規な知見である。
なお、オーステナイト系ステンレス鋼の表面性状の具体的な評価指標としては、熱延時の粒界割れに起因するヘゲ疵の深さの平均が10μm以下である場合に、「ヘゲ疵の発生が少なく、表面性状に優れている」といえる。また、当該ヘゲ疵の深さの平均が5μm以下であれば、より好ましい。
「ヘゲ疵の深さの平均」とは、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼の表面における複数のヘゲ疵の発生部分について、それぞれヘゲ疵の深さを測定し、得られた複数の測定結果の平均値であってよい。また、ヘゲ疵の深さの測定方法としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼のヘゲ疵の発生部分について、厚さ方向に平行な断面を得て鏡面研磨後、その表層部を光学顕微鏡にて観察して測定してよい。すなわち、ヘゲ疵の深さとは、オーステナイト系ステンレス鋼の厚さ方向における深さである。
また、オーステナイト系ステンレス鋼の、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均値が250HV以上を有することによるメリットについては、以下の通りである。
スマートフォン等の電子機器の構造部材は、冷間鍛造と切削とにより製造されることが一般的である。鋼材は一般的に、加工に伴って高強度化する加工硬化現象を生じるが、冷間鍛造での加工程度は均一とはならず部位によって異なるため、軟質部位が残存し得る。鋼材に軟質部位が残存していると表面が疵付きやすく、製品としての価値が低くなる。本発明の一実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼を前記構造部材として適用する場合、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均値が250HV以上であるため、軟質部位が残存しておらず、製品として品質が安定化する。
なお、本明細書に記載の「オーステナイト系ステンレス鋼」は、オーステナイト系ステンレス鋼帯およびオーステナイト系ステンレス鋼板の両方を含む。言い換えれば、本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼帯およびオーステナイト系ステンレス鋼板の両方に適用可能である。
本発明は、例えば、高強度かつ、表面性状に優れることから歩留りおよび品質に優れたオーステナイト系ステンレス鋼と、その製造方法とを実現することを目的とする。このようなオーステナイト系ステンレス鋼を用いれば、スマートフォン等の電子機器の構造部材を、切削、エッチング、放電加工等により、複雑な鍛造加工を施すことなく製造することが可能である。
〔オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、図1に示すように、製鋼、粗熱延、仕上熱延および冷却の各工程を実施することで製造することができる。より具体的には、まず、一般的な製鋼方法を用いて溶鋼を得て、鋳造によりスラブを製造する(製鋼工程)。鋳造によって製造したスラブは、後述する〔オーステナイト系ステンレス鋼の化学組成〕にて示す化学組成を有する。当該スラブについて、表面研削することなく、1000℃以上1300℃以下に加熱した後、粗熱延を施し、例えば厚さ35mmの粗バー(鋼帯)とする(粗熱延工程)。粗熱延工程では、粗熱延の1パス目の圧延率を30%以下とする。
その後、600℃以上1100℃以下で前記粗バーに対して仕上熱延を施す(仕上熱延工程)。仕上熱延工程では、仕上熱延の総圧延率を60%以上、仕上熱延の最終パス温度を950℃以下とする。仕上熱延工程後の鋼帯について、仕上熱延の最終パス温度が750℃以上の場合は、750℃以下まで、冷却速度5℃/s以上で冷却する(冷却工程)。これらの条件を満たすことで、ヘゲ疵が少ないことで表面性状に優れ、かつ厚さ方向に平行な断面において所望の硬さを有するオーステナイト系ステンレス鋼を得ることができる。
また、得られたオーステナイト系ステンレス鋼について、必要に応じて、熱延工程で生成した酸化スケールの除去を目的とし、酸洗処理を施してもよい。一般的に、酸洗処理は焼鈍工程と酸洗工程とが繋がった焼鈍酸洗ラインで実施される。酸洗処理を行う際は、オーステナイト系ステンレス鋼の硬さの低下が発生しない温度範囲(具体的には、900℃以下)において、オーステナイト系ステンレス鋼に熱を加えてもよい。
さらに、酸洗処理されたオーステナイト系ステンレス鋼について、必要に応じて、表面性状または強度を調整することを目的とし、調質圧延を実施してもよい。一般的に、調質圧延は冷間圧延工程で実施され、表面性状を調整する目的ならば総圧延率が数%以下となるように、強度を調整する目的ならば総圧延率が数%から50%程度となるように実施される。一方、本発明では、熱延時の条件により高強度化を図っている。したがって、酸洗処理されたオーステナイト系ステンレス鋼に、強度を調整する目的で調質圧延を行う場合、過度に強度が上昇しない総圧延率の範囲(具体的には、30%以下)において調質圧延を加えてもよい。
以上の各工程によれば、3mm以上の厚さがあるにも関わらず、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均が250HV以上であり、かつ熱延の粒界割れに起因するヘゲ疵の深さの平均が10μm以下である、高強度かつ表面性状に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
なお、「厚さ方向に平行な断面の硬さの平均」とは、厚さ方向に平行な断面の硬さについて、測定位置ごとの変動が分かるように、荷重1kgでビッカース硬さを複数点測定した結果の平均値を示す。ビッカース硬さは、例えば、JIS Z2244に準拠した方法により測定できる。
(C+N)
C(炭素)およびN(窒素)は、オーステナイト相の固溶強化および加工硬化に有効に作用するため、一定量必要である。種々検討の結果、安定して250HV以上の硬さを得るためには、C+N量を0.08%以上に調整する。C+N量は、CとNとを合わせた含有量のことである。また、C+N量には、Cが0%またはNが0%の場合が含まれていてよい。
(比透磁率)
オーステナイト系ステンレス鋼を特徴付ける上で、一般的に比透磁率μは1.1以下が好ましく、1.05以下がより好ましい。
前記のように化学組成が調整されたオーステナイト系ステンレス鋼は、通常の鋼板製造工程およびその後の冷間鍛造工程で加工誘起マルテンサイト相が生成しない。そのため、加工誘起マルテンサイト相に起因する磁性化は回避できる。ただし、スラブの溶製時に、高温でδフェライト相が生成することがあり、当該δフェライト相が残存すると比透磁率μが1.1以下の非磁性が得られない。また、オーステナイト系ステンレス鋼の製品中にδフェライト相が異相として混在していると、鏡面研磨品の外観を損なう場合もある。したがって、冷間鍛造に供する素材である鋼板の段階で、δフェライト相が消失している必要がある。この点、本発明の一実施形態に係る製造方法では、仕上圧延を600℃以上で実施することで、δフェライト相の残存を防止する。δフェライト相は強磁性であるため、その存在有無は比透磁率μによって評価できる。
(目標特性)
オーステナイト系ステンレス鋼において、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均は、250HV以上(SUS304CSP-1/2H規格)を目指した。また、厚さは、例えば特殊金属エクセルのSUS301CSPの厚さの範囲が2.5mm以下程度であるため、3mm以上を目指した。また、熱延時の粒界割れに起因するヘゲ疵の発生低減を目指した。
(スラブの表面研削)
鋳造によって製造したスラブは表面研削することなく、鋳造ままとする。粗熱延の際、熱延材の表層部では再結晶によって結晶粒が微細化する。鋳造によって製造したスラブの表層部は、表層から5mm程度の範囲がチル晶と呼ばれる1mm以下の結晶粒で構成される。チル晶直下の部位は、柱状晶と呼ばれる短径1mm以上、長径5mm以上の略円柱状の巨大結晶粒で構成される。結晶粒が大きいほど粒界強度が脆弱であり、熱延時に微小な粒界割れを生じて熱延起因の表面欠陥であるヘゲ疵が発生するため、ヘゲ疵の発生低減には極表層部の結晶粒が小さいことが好ましい。
したがって、前記スラブを表面研削しないことで、結晶粒が小さいチル晶が前記スラブの表層に残り、熱延に起因するヘゲ疵の発生を低減できる。また、表面研削が不要となれば、工程数低減による生産性の向上および歩留り改善が実現できる。
(粗熱延の1パス目の圧延率)
熱延中は、高温下で熱延材にひずみが加わることで再結晶が起こる。再結晶後の結晶粒径は熱延前の結晶粒径が細かいほど、さらに細かくなる傾向にある。つまり、前記スラブの中で比較的微細なチル晶を表層に含む状態で熱延を実施することが、結晶粒微細化の観点から好ましい。すなわち、粗熱延の1パス目にスラブ表層部が再結晶により微細化することで、熱延に起因する粒界割れによるヘゲ疵の発生を効果的に低減できる。
粗熱延工程における粗熱延の圧延率は、5%以上30%以下とすることが好ましく、10%以上20%以下とすることがより好ましい。粗熱延工程では、熱延材の表層部では再結晶によって結晶粒が微細化する。ここで、粗熱延の1パス目の圧延率が大きすぎると、十分に結晶粒が微細化される前に粒界割れが発生する懸念がある。そこで、粗熱延の1パス目の圧延率は、30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましい。また、粗熱延の1パス目の圧延率が小さすぎると、所定の板厚に圧延するまでの熱延パス数が増加するとともに、熱延温度の過度な低下により熱延抵抗の増加を招き、熱延性が低下する等、生産性低下および生産負荷増化となる。したがって、粗熱延の1パス目の圧延率は、5%以上とすることが望ましい。
(仕上熱延の総圧延率)
仕上熱延の総圧延率は60%以上とすることが好ましい。仕上熱延の総圧延率が60%を下回った場合、圧延ひずみが十分に付与されず目標とする硬さが得られない。なお、仕上熱延工程前の鋼帯の厚さをh1、仕上熱延工程後の鋼帯の厚さをh2とするとき、総圧延率=(h1-h2)/h1の関係式が成立する。
(仕上熱延の温度)
仕上熱延の温度は、600℃以上1100℃以下とすることが好ましい。また、仕上熱延の最終パス温度(最終パス圧延温度)は950℃以下とすることが好ましい。仕上熱延の温度および最終パス圧延温度が600℃を下回った場合、鋼帯の表層に付与される圧延ひずみ量が、厚さ方向の中心部分と比較して大きくなり、部分的に十分に高強度化されない可能性がある。一方、仕上熱延の温度が1100℃を上回った場合、圧延ひずみが再結晶駆動力となってしまい、圧延直後に再結晶が生じ所望の硬さが得られないとともに、温度が高すぎて最終パス圧延温度を950℃以下に調整することが困難となる。また、最終パス圧延温度が950℃を超えた場合、圧延ひずみが再結晶駆動力となってしまい、圧延直後に再結晶が生じ所望の硬さが得られない。
(冷却工程)
前記の仕上熱延工程の後、仕上熱延を施された鋼帯について、仕上熱延の最終パス温度が750℃以上の場合は、750℃以下まで冷却速度5℃/s以上で冷却する冷却工程を含むことが好ましい。仕上熱延によって熱延材に蓄積される圧延ひずみは、高温のまま保持されると仕上熱延直後から減少していく。高強度化に好ましい程度の圧延ひずみを残存させるためには、著しい圧延ひずみの減少が起こらない温度域まで、仕上熱延後の鋼帯を速やかに冷却することが好ましい。
〔オーステナイト系ステンレス鋼の化学組成〕
本発明の一実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、質量%で、C:0.003%以上0.120%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:6.0%以上15.0%以下、Cr:16.0%以上22.0%以下、N:0.005%以上0.200%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
本発明の一実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼では、さらに、前記化学組成に加えて、質量%で、Mo:0.01%以上3.00%以下、Cu:0.01%以上3.50%以下、Al:0.008%以下、O:0.001%以上0.010%以下、V:0.01%以上0.50%以下、B:0.0003%以上0.0100%以下、Ti:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有していてもよい。
本発明の一実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼では、さらに、前記化学組成に加えて、質量%で、Co:0.01%以上0.50%以下、Zr:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下、Mg:0.0005%以上0.0030%以下、Ca:0.0003%以上0.0030%以下、Y:0.01%以上0.20%以下、REM(希土類金属):0.01%以上0.10%以下、Sn:0.001%以上0.500%以下、Sb:0.001%以上0.500%以下、Pb:0.01%以上0.10%以下、W:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有していてもよい。
以下、オーステナイト系ステンレス鋼の化学組成における「%」は、特に断らない限り質量%を意味する。
C(炭素)は、侵入型元素であり、加工硬化および歪時効により高強度化に寄与する。また、Cは、オーステナイト相を安定化させるオーステナイト生成元素であり、非磁性の維持に有効である。オーステナイト系ステンレス鋼は、0.003%以上のC含有量を確保することが好ましい。ただし、過度のC含有はオーステナイト系ステンレス鋼を硬質化させ冷間鍛造性を低下させる要因となるため、C含有量は0.12%以下に制限されることが好ましい。
Si(ケイ素)は、製鋼過程において鋼の脱酸剤として用いられる元素である。またSiは、冷間鍛造後に行う歪取り熱処理において時効硬化性を向上させる作用を有する。一方、Siは固溶強化作用が大きく、かつ積層欠陥エネルギーを低下させて加工硬化を大きくする作用を有するので、過度のSi含有は冷間鍛造性を低下させる要因となる。そのため、Si含有量は2.0%以下に制限されることが好ましい。
Mn(マンガン)は、MnOとして酸化物系介在物を構成する元素である。また、Mnは固溶強化作用が小さく、かつオーステナイト生成元素であり加工誘起マルテンサイト変態を抑制させる作用を有するので、冷間鍛造性の確保および非磁性の維持には有効な元素である。ただし、過剰なMn含有量は耐食性低下の要因となる。したがって、Mn含有量は2.0%以下に制限されることが好ましい。
P(リン)は、耐食性を低下させる元素であり、また、過度のP低減は製鋼負荷を増大させる要因となるため、P含有量は0.04%以下とすることが好ましい。
S(硫黄)は、MnSを形成して耐食性を劣化させる要因となり、また、過度の脱Sは製鋼負荷を増大させる要因となるので、S含有量は0.03%以下に制限されることが好ましい。
Ni(ニッケル)は、耐食性の向上に有効な元素である。オーステナイト系ステンレス鋼は、6.0%以上のNi含有量を確保することが好ましい。また、Niを過度に含有すると材料コストが上昇する。そのため、Ni含有量は15.0%以下に制限されることが好ましい。
Cr(クロム)は、耐食性を向上させる元素である。携帯型電子機器の外装部材に適した耐食性を確保するために、オーステナイト系ステンレス鋼は、16.0%以上のCr含有量を確保することが好ましい。ただし、多量のCr含有は冷間鍛造性を低下させる要因となる。したがって、Cr含有量の上限は22.0%に制限されることが好ましい。
N(窒素)は、Cと同様に侵入型元素であり加工硬化および歪時効により高強度化に寄与する。また、Nは、オーステナイト相を安定化させる元素であり非磁性の維持に有効である。オーステナイト系ステンレス鋼は、0.005%以上のN含有量を確保することが好ましい。ただし、過度のN含有はオーステナイト系ステンレス鋼を硬質化させ冷間鍛造性を低下させる要因となる。したがって、N含有量は0.20%以下に制限されることが好ましい。
Mo(モリブデン)は、オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性向上に有効な元素である。オーステナイト系ステンレス鋼では、前記のCr含有量を確保した上で、必要に応じてMoが添加されるが、多量のMo添加はコスト増になるため、Moを含有する場合は、Mo含有量は0.01%以上3.00%以下とする。
Cu(銅)は、オーステナイト相の加工硬化を抑制し、冷間鍛造性の向上に有効であることが知られている。また、Cuは、冷間鍛造後に行う歪取り熱処理の加熱温度域で時効硬化をもたらす元素であることが知られている。種々検討の結果、Cuを含有する場合は、Cu含有量は0.01%以上3.50%以下とする。
Al(アルミニウム)は、酸素親和力がSiおよびMnに比べて高く、0.003%以上のAl含有量となると、冷間鍛造での内部割れの起点となる粗大な酸化物系介在物が形成されやすくなる。また、過度に低Al化することはコスト増となるので、種々の検討の結果、Alを含有する場合は、Al含有量は0.008%以下とする。
O(酸素)含有量が低くなると、MnおよびSi等が酸化しにくくなり、介在物におけるAlの比率が高くなる。また、O含有量が過度に高いと粒子径5μmを超える粗大な介在物が形成されやすくなる。種々検討の結果、Oを含有する場合は、O含有量は10ppm(0.001%)以上100ppm(0.010%)以下、好ましくは80ppm(0.008%)以下とする。
V(バナジウム)は、冷間鍛造後に行う歪取り熱処理の加熱において時効硬化能を高める作用を有する。Vは時効硬化作用があるものの、多量のV含有はコスト増につながる。Vを含有する場合は、V含有量は、0.01%以上0.50%以下とする。
B(ホウ素)について、多量のB含有は硼化物の生成による加工性低下を招く要因となる。そこで、Bを含有する場合は、B含有量は0.0003%以上0.0100%以下、好ましくは0.0050%以下とする。
Ti(チタン)は、炭窒化物形成元素であり、CおよびNを固定し、鋭敏化に起因する耐食性の低下を抑制する。このような効果は、Tiを0.01%以上含有すると発揮される。よって、Tiを含有する場合は、Ti含有量は0.01%以上とする。一方、Ti含有量が0.50%を超えると、Tiは、炭化物として不均一なサイズで鋼中に不均一に局在して析出し、整粒な再結晶粒成長を阻害する。また、Tiは大変高価であることから、Ti含有量の上限を0.50%とする。
Co(コバルト)は、耐隙間腐食性を向上させる効果がある。一方、過剰にCoを含有すると、オーステナイト系ステンレス鋼を硬質化して曲げ性に悪影響を及ぼす。そのため、Coを含有する場合は、Co含有量を0.01%以上0.50%以下、好ましくは0.10%以下とする。
Zr(ジルコニウム)は、CおよびNとの親和力の高い元素であり、熱延時に炭化物または窒化物として析出し、母相中の固溶Cおよび固溶Nを低減させ、加工性を向上させる効果がある。一方、過剰にZrを含有すると、オーステナイト系ステンレス鋼を硬質化し、曲げ性に悪影響を及ぼす。そのため、Zrを含有する場合は、Zr含有量は0.01%以上0.10%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Nb(ニオブ)は、CおよびNとの親和力の高い元素であり、熱延時に炭化物または窒化物として析出し、母相中の固溶Cおよび固溶Nを低減させ、加工性を向上させる効果がある。一方、過剰にNbを含有すると、オーステナイト系ステンレス鋼を硬質化し、曲げ性に悪影響を及ぼす。そのため、Nbを含有する場合は、Nb含有量は0.01%以上0.10%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Mg(マグネシウム)は、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し、脱酸剤として作用する。一方、過剰にMgを含有するとオーステナイト系ステンレス鋼の靱性が低下して製造性が低下する。そのため、Mgを含有する場合は、Mg含有量は0.0005%以上0.0030%以下、好ましくは0.0020%以下とする。
Ca(カルシウム)は、熱間加工性を向上させる元素である。一方、過剰にCaを含有するとオーステナイト系ステンレス鋼の靱性が低下して製造性が低下し、さらに、CaSの析出により耐食性が低下する。そのため、Caを含有する場合は、Ca含有量は0.0003%以上0.0030%以下、好ましくは0.0020%以下とする。
Y(イットリウム)は、溶鋼の粘度減少を減少させ、清浄度を向上させる元素である。一方、過剰にYを含有するとその効果は飽和し、さらに、加工性が低下する。そのため、Yを含有する場合は、Y含有量は0.01%以上0.20%以下、好ましくは0.10%以下とする。
REM(希土類金属:La、Ce、Nd等の原子番号57~71の元素)は、耐高温酸化性を向上させる元素である。一方、過剰にREMを含有するとその効果は飽和し、さらに、熱延の際に表面欠陥が生じ、製造性が低下する。そのため、REMを含有する場合は、REM含有量は0.01%以上0.10%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Sn(スズ)は、圧延時における変形帯生成の促進による加工性の向上に効果的である。一方、過剰にSnを含有するとその効果は飽和し、さらに加工性が低下する。そのため、Snを含有する場合は、Sn含有量は0.001%以上0.500%以下、好ましくは0.200%以下とする。
Sb(アンチモン)は、圧延時における変形帯生成の促進による加工性の向上に効果的である。一方、過剰にSbを含有するとその効果は飽和し、さらに加工性が低下する。そのため、Sbを含有する場合は、Sb含有量は0.001%以上0.500%以下、好ましくは0.200%以下とする。
Pb(鉛)は、粒界の融点を下げるとともに粒界の結合力を低下させ、粒界溶融に基づく液化割れ等、熱間加工性の劣化をまねく懸念がある。そのため、Pbを含有する場合は、0.01%以上0.10%以下とする。
W(タングステン)は、室温における延性を損なわずに、高温強度を向上させる作用を有する。しかし、その過剰な添加は粗大な共晶炭化物が生成し、延性の低下を引き起こすので、Wを含有する場合は、W含有量は0.01%以上0.50%以下とする。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
図2に、本発明の一実施例および比較例に係るオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成を示す。図2に示す数値は、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれる各成分の質量%濃度を表している。本発明の一実施例に係るオーステナイト系ステンレス鋼を鋼No.A1~A4とし、比較例に係るオーステナイト系ステンレス鋼を鋼No.B1、B2とした。鋼No.B1、B2はいずれも、C+N量が0.08%未満である。
図3に、本発明の一実施例に係るオーステナイト系ステンレス鋼の物性等を示す。また、図4に、比較例に係るオーステナイト系ステンレス鋼の物性等を示す。なお、図3および図4における最終パス圧延温度は、仕上熱延の最終パスで圧延を行う際の鋼板の温度のことである。
評価結果について、「平均断面硬さ」は、厚さ方向に平行な断面の硬さについて、荷重1kgでビッカース硬さを10点測定した結果の平均値を示す。ビッカース硬さは、JIS Z2244に準拠した方法により測定した。
表面性状については、ヘゲ疵の深さを測定することで評価した。ヘゲ疵の深さが5μm以下である場合を◎、5μmを超え10μm以下である場合を〇、10μmを超えている場合を×とした。ヘゲ疵の深さの測定には、製造したオーステナイト系ステンレス鋼帯からヘゲ疵の発生部分を5箇所、試料として採取した。当該試料における、オーステナイト系ステンレス鋼帯の厚さ方向と熱延方向とに平行な断面を鏡面研磨後、試料の表層部を光学顕微鏡にて観察し、ヘゲ疵の深さを測定した。図3および図4に、5箇所から採取した試料の測定結果の平均値を「ヘゲ疵深さ」として示している。
本発明の一実施形態に係る製造方法の条件を満たす製造方法で製造されたオーステナイト系ステンレス鋼は、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均が250HV以上であり、かつヘゲ疵の深さの平均が10μm以下の表面性状に優れたものであった。一方で、図4に示すように、前記の製造方法の条件を満たさない方法で製造されたオーステナイト系ステンレス鋼は、厚さ方向に平行な断面の硬さの平均が250HV未満であるか、または、ヘゲ疵の深さの平均が10μmを超えた、表面性状に優れない状態であった。なお、前記の製造方法の条件とは、具体的には、C+N量、連続鋳造片の表面研削、粗熱延1パス目の圧延率、仕上熱延の総圧延率および最終パス温度、冷却速度のうちの少なくとも1つを示す。
本発明は、例えば、スマートフォン等の電子機器の構造部材、スチールベルト、プレスプレート等、比較的厚さが厚い高強度ステンレス鋼が必要な用途に好適な、オーステナイト系ステンレス鋼帯等に利用することができる。

Claims (8)

  1. CとNとを合わせた含有量が、質量%で0.08%以上であり、
    厚さ方向に平行な断面の硬さの平均が250HV以上であり、
    厚さが3mm以上であり、
    熱延時の粒界割れに起因するヘゲ疵の深さの平均が10μm以下である、オーステナイト系ステンレス鋼。
  2. 質量%で、C:0.003%以上0.120%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:6.0%以上15.0%以下、Cr:16.0%以上22.0%以下、N:0.005%以上0.200%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、Mo:0.01%以上3.00%以下、Cu:0.01%以上3.50%以下、Al:0.008%以下、O:0.001%以上0.010%以下、V:0.01%以上0.50%以下、B:0.0003%以上0.0100%以下、Ti:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有する、請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 質量%で、Co:0.01%以上0.50%以下、Zr:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下、Mg:0.0005%以上0.0030%以下、Ca:0.0003%以上0.0030%以下、Y:0.01%以上0.20%以下、REM(希土類金属):0.01%以上0.10%以下、Sn:0.001%以上0.500%以下、Sb:0.001%以上0.500%以下、Pb:0.01%以上0.10%以下、W:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有する、請求項2または3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  5. 比透磁率μが1.1以下である、請求項1から4の何れか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  6. 質量%で、C:0.003%以上0.120%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:6.0%以上15.0%以下、Cr:16.0%以上22.0%以下、N:0.005%以上0.200%以下を含有し、かつCとNとを合わせた含有量が質量%で0.08%以上であり、残部がFeおよび不可避的不純物で構成された化学組成からなり、鋳造によって製造したスラブを、1000℃以上1300℃以下の温度に加熱した後、粗熱延を施す粗熱延工程と、
    前記粗熱延工程により得られた鋼帯に対して仕上熱延を施す仕上熱延工程と、
    前記仕上熱延工程後の前記鋼帯を冷却する冷却工程とを含み、
    前記粗熱延工程では、
    前記スラブを表面研削することなく、
    前記粗熱延の1パス目の圧延率が30%以下であり、
    前記仕上熱延工程では、
    前記仕上熱延の総圧延率が60%以上であり、
    前記仕上熱延の温度が600℃以上1100℃以下であり、
    前記仕上熱延の最終パス温度が950℃以下であり、
    前記冷却工程では、
    前記鋼帯を、前記仕上熱延の前記最終パス温度が750℃以上の場合は、750℃以下まで、冷却速度5℃/s以上で冷却する、オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法。
  7. 前記スラブは、質量%で、Mo:0.01%以上3.00%以下、Cu:0.01%以上3.50%以下、Al:0.008%以下、O:0.001%以上0.010%以下、V:0.01%以上0.50%以下、B:0.0003%以上0.0100%以下、Ti:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有する、請求項6に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法。
  8. 前記スラブは、質量%で、Co:0.01%以上0.50%以下、Zr:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下、Mg:0.0005%以上0.0030%以下、Ca:0.0003%以上0.0030%以下、Y:0.01%以上0.20%以下、REM(希土類金属):0.01%以上0.10%以下、Sn:0.001%以上0.500%以下、Sb:0.001%以上0.500%以下、Pb:0.01%以上0.10%以下、W:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上をさらに含有する、請求項6または7に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法。
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