以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
但し、本発明はこれら具体的に例示された形態や、各種の具体的に記載された構造に限定されるものではない。なお、各図においては、分かり易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見やすさの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
本明細書において「外面」、「内面」とは、積層体90を用いてチューブ容器70を作製した場合における「外面」および「内面」を意味する。また「上側」、「下側」について、チューブ容器70を、口部76及びキャップ1を上向きにした状態を基準として、「上側」とは口部76側およびキャップ1側を意味し、「下側」とは口部76の反対側(図1における74B側、図2における79側)を意味する。
図1は、本実施形態に係るヒンジ付きのキャップを装着した状態のチューブ容器の部分断面図である。図2は、内容物入りのチューブ容器の包装製品の部分断面図である。図1、図2に示すように、本実施形態に係るチューブ容器70は、積層体90で構成される胴部71と、胴部71に対して圧縮成形、射出成形などの方法により合成樹脂を設けることにより作製される頭部成形体78とを備えている。頭部成形体78は、さらに肩部75、口部76を備えている。またチューブ容器70の口部76には、口部76の吐出口から内容物の漏出を防ぐためのヒンジ付きのキャップ1が装着される。頭部成形体78は、吐出口である口部76を有する頭部となり、胴部71と連設されてチューブ容器70を構成する。
チューブ容器70は、吐出用の開口である吐出口を含む筒状体の口部76と、口部76に連設され下側に向うにつれて外周が広がる錘台筒状の肩部75とによって構成される頭部成形体78を有する。図1、図2においては、頭部成形体78に装着されたキャップ1については、断面図で示している。また、図1、図2においては、キャップ1は閉栓された状態となっている。なお、詳細は後述するが、キャップ1はキャップ本体10と蓋部30を備え、蓋部30がキャップ本体10に嵌められた状態を閉栓された状態、蓋部30がキャップ本体10から外された状態を開栓された状態という。肩部75は、口部76から離れるほど、チューブ容器70の径方向の外側に広がる例えば円錐台筒状に構成されている。例えば、肩部75は、水平に対して30度の傾きを有している。肩部75は、下側において胴部71に連設されている。
略円筒状の口部76は、外面側にネジ山として機能する螺旋状の螺子構造77を有する。口部76の内周面は開口の外縁を形成する。口部76の開口は、内容物を吐出するための吐出口となる。胴部71に収容される中身は、口部76の開口を通過することによってチューブ容器70から吐出される。頭部成形体78は、上記のような構造を有するため、内側にネジ溝として機能する螺旋状の螺子構造24を有するキャップ1と螺合して、着脱可能になっている。
図3は本実施形態に係るキャップ1の一例が示された上面図であり、図4は本実施形態に係るキャップ1の側面図であり、図5は本実施形態に係るキャップ1の下面図であり、図6は図3のA−A線断面図である。なお、図1、図2に示したチューブ容器全体の上下方向に合わせて、以下では、説明の便宜上、図4におけるキャップ本体10の注出口としてのノズル11側を上側とし、胴部14側を下側として説明していく。また、図3におけるA−A線は、キャップ1のキャップ本体10、ヒンジ50、蓋部30の中心を結ぶ中心線であり、図6はキャップ1の中心線(A−A線)における鉛直断面図である。
図3〜図6に示されるように、本実施形態に係るキャップ1は、ヒンジ付きのキャップであり、キャップ本体10、蓋部30、ヒンジ50を備え、A−A線を基準として対称な形状である。キャップ本体10は、注出口としてのノズル11を有し、平面視において略円形の基板12と、基板12の外縁に沿って内表面13から垂設される略円筒状の胴部14等を有する有頂円筒状である。蓋部30は、平面視において略円形の閉塞板31と、閉塞板31の外縁に沿って内表面32から垂設される略円筒状の側部33等を有する有頂円筒状である。蓋部30は、側部33の開放した端が上方に位置した状態でヒンジ50を介してキャップ本体10に連結されている。
キャップ1は、キャップ本体10がチューブ容器70に取り付けられ、チューブ容器70に収容される内容物が注出口としてのノズル11の先端から注出される構成である。また、キャップ1は、ヒンジ50によって蓋部30がキャップ本体10に対して揺動可能な構成であり、キャップ本体10を上方から覆うように蓋部30を被せ、蓋部30をキャップ本体10に嵌合させることにより、注出口としてのノズル11が蓋部30によって閉栓され、注出口を閉じることができる。つまり、ヒンジ50は、蓋部30をキャップ本体10に対して、ノズル11が蓋部30によって覆われた閉栓状態と、ノズル11が開放された開栓状態との間で揺動可能に連結させている。
ここで、基板12と胴部14を有する有頂円筒状のキャップ本体10の構成について詳述する。基板12は、平面視において、その中心が中心A線上に位置する略円形の板状部材である。基板12には、外縁に沿って内表面13から下方へ向けて略円筒状の胴部14が垂設されている。ここで、有頂円筒状のキャップ本体10におけるヒンジ50と反対の側には、内方へ窪む凹部15が形成されている。凹部15は、基板12の端から胴部14に亘って形成され、基板12の外表面16側から下方(胴部14の筒軸方向:図3の奥側、図4の下側)へ向かって延設される。この凹部15によって、胴部14の外周面には、鉛直かつ左右方向に延びる平坦な面が形成されている。そして、基板12は平面視においてヒンジ50の反対の側が切り欠かれた、中心線(A−A線)を基準として対称の略円形であり、キャップ本体10は中心線を基準として対称の有頂円筒状である。なお、胴部14の外径は、蓋部30の側部33の外径と略同一の略円形である。
基板12は、外縁の全周に亘って外表面16から内表面13に向かって窪む段差部17を有する。段差部17の底面は水平面である。段差部17の径方向の幅と上下方向の深さは、周方向に略一定である。また、基板12は、段差部17の内周側の縁の全周に亘って、外表面16から上方かつ径方向外方に突出する係止リブ18を備える。係止リブ18の外周側の上部には、外方に突出する環状の係止突起部19が形成されている。係止リブ18は、後述する蓋部30が有する係合リブ39を係止するものである。係合リブ39が係止リブ18に係止されることで、蓋部30がキャップ本体10に係止される。また、詳細については後述するが、係止突起部19の最外端における周面は、後述する蓋部30の側部33の内周面に対応しており、蓋部30がキャップ本体10に嵌合された閉栓状態において、側部33の内周面と当接する。基板12の外縁端部及び胴部14の上端部には、ヒンジ50の一端が連設される。ヒンジ50の他端には、蓋部30が連設され、蓋部30はヒンジ50を介してキャップ本体10に揺動可能に連結されている。
ノズル11は筒状であり、基板12の外表面16から上方に向かって縮径して円錐台状に構成される下筒部20と、下筒部20の上端に連設される円筒状の上筒部21とから構成される。ノズル11は、平面視において、基板12の中心から凹部15側に所定の距離だけ偏心した位置に配設されている。ノズル11の内部は、基板12を貫通し、胴部14の内部と連通している。そして、注出口としてのノズル11の先端から内容物を注出することができる。なお、ノズル11の上筒部21の内周面には、中央付近の貫通孔を残した規制板22が形成されている。規制板22は、貫通孔を囲む内縁が円形であり、外縁が上筒部21の内周面となる板状部材である。規制板22は、ノズル11から液状や粘体状の内容物を注出する際の注出量等の注出具合を調節するためのものであり、内容物が通過するノズル11の内部を狭めるように構成されている。内容物の粘性等に応じて規制板22のサイズを変更するだけで、内容物に適した注出具合に調節することができ、汎用性が高い。
また、キャップ本体10は、基板12の内表面13から下方(胴部14の筒軸方向:図5の手前側、図6の下側)へ向かって垂設される円筒状の取り付け部23を有する。図5に示すように、取り付け部23は胴部14の筒軸と同心の位置に形成され、取り付け部23の内部はノズル11の内部と連通する。取り付け部23の内周面には螺子構造24が形成されている。
ここで、取り付け部23は、チューブ容器70の円筒状の口部76に螺合されるものであり、取り付け部23がチューブ容器70の口部76に螺合されることで、キャップ本体10がチューブ容器70に取り付けられる。そして、チューブ容器70の内部に収容される内容物は、口部76から注出口としてのノズル11の内部を通過し、ノズル11の先端から注出される。
また、キャップ本体10は、取り付け部23の外周面から外方に突出し、基板12の内表面13から下方へ延設される6つの補強リブ25を有する。6つの補強リブ25は、周方向に略等間隔で配置されている。この6つの補強リブ25によって、円筒状の取り付け部23の剛性が向上されている。なお、補強リブ25は上述の構成に限定されるものではない。例えば、補強リブ25は、取り付け部23の外周面から胴部14の内周まで延びる板状に形成されても良い。
また、図5、図6に示すように、キャップ本体10は、基板12の内表面13から下方(胴部14の筒軸方向:図5の手前側、図6の下側)へ向かって垂設されるインナーリング27、コンタクトリング28を有する。図5に示すように、インナーリング27、コンタクトリング28は、胴部14の筒軸、取り付け部23と同心で、取り付け部23より内側の位置に形成されている。インナーリング27がコンタクトリング28の内側に位置する。
インナーリング27は、キャップ1がチューブ容器70に装着された際に、チューブ容器70の口部76の内側に挿入される部分である。したがって、装着時には、インナーリング27と取り付け部23で口部76の周壁を挟み込むような状態となる。インナーリング27の上下方向の長さ、すなわち内表面13から下方(胴部14の筒軸方向:図5の手前側、図6の下側)へ向かって延びる長さは、取り付け部23の1/3程度である。
コンタクトリング28は、キャップ1がチューブ容器70に装着された際に、チューブ容器70の口部76の上部を抑える部分である。コンタクトリング28が口部76の上部を抑えることにより、コンタクトリング28と口部76の上部の間隙がなくなり内容物の漏れを抑制することができる。図5に示したような平面視において、コンタクトリング28は、インナーリング27の外周側であって、取り付け部23の内周側に位置する。また、コンタクトリング28の径はチューブ容器70の口部76の径と略同等である。コンタクトリング28は、僅かな突起であり、インナーリング27の上下方向の長さは、1mm程度である。
また、キャップ本体10は、ヒンジ50が連結される部位に対応する下方において、基板12の内表面13と胴部14の内周面との接合部に内方へ突出する厚肉部26を有する。この厚肉部26によって、キャップ本体10のヒンジ50が連結される部位の剛性が向上されている。
次に、閉塞板31と側部33を有する有頂円筒状の蓋部30の構成について詳述する。閉塞板31は、平面視において、その中心が中心線上に位置する略円形の板状部材である。なお、閉塞板31は、外表面34から内表面32へ向かって内表面32側が突出するように凸状に湾曲している。一方で、閉塞板31の外表面34の外縁付近の環状部分は、内表面32の側には湾曲しておらず、平坦な面に形成される。また、閉塞板31には、外縁に沿って内表面32から上方へ向けて略円筒状の側部33が垂設される。ここで、有頂円筒状の蓋部30の側部33におけるヒンジ50の反対の側には、内方へ窪む凹部35が形成されている。凹部35は、側部33の上端から下端に亘って形成されている。この凹部35によって、側部33の外周面には、鉛直であり、かつキャップ本体10、ヒンジ50、蓋部30を結ぶ方向と交差する方向に延びる平坦な面が形成されている。また凹部35が形成された閉塞板31側において、閉塞板31が側部33の外方に突出した突出部36が形成されている。なお、蓋部30の凹部35は、キャップ本体10の凹部15に対応しており、蓋部30の側部33の外径は、キャップ本体10の胴部14の外径と略同一である。したがって、蓋部30は中心線を基準として対称の有頂円筒状であり、キャップ本体10に対応する形状である。
蓋部30は、閉塞板31の内表面32から上方へ向けて突出する環状の第1閉塞リブ37を有する。第1閉塞リブ37は、キャップ本体10のノズル11に対応しており、閉塞板31の中心から凹部35側に所定の距離だけ偏心した位置に形成されている。第1閉塞リブ37の内径はノズル11の上筒部21の外径と略同一である。また、蓋部30は、第1閉塞リブ37と同様に、閉塞板31の内表面32から上方へ向けて突出する環状の第2閉塞リブ38を有する。第2閉塞リブ38は、第1閉塞リブ37と同心の位置に形成され、キャップ本体10のノズル11に対応している。第2閉塞リブ38の外径はノズル11の規制板22の内縁となる円形状の貫通孔の内径と略同一である。第2閉塞リブ38の上方への突出高さは、第1閉塞リブ37の上方への突出高さよりも高い。なお、詳細については後述するが、蓋部30がキャップ本体10に嵌合される際に、第2閉塞リブ38はノズル11の上筒部21の内部に挿入され、ノズル11の上筒部21は第1閉塞リブ37の内部に挿入される。つまり、ノズル11の上筒部21は、第1閉塞リブ37と第2閉塞リブ38との間に形成される環状の間隙に嵌め込まれ、ノズル11の先端が閉栓される。
また、凹部35が形成されている側部33の反対側には、内周面から内方に突出する係合リブ39が形成されている。係合リブ39は、側部33に沿って中心線と直交する方向に延設されている。ここで、係合リブ39は、キャップ本体10の係止リブ18と対応している。そして、蓋部30がキャップ本体10に嵌合される際に、係合リブ39と係止リブ18が係合し、蓋部30がキャップ本体10に係止される。
ヒンジ50は、有頂円筒状のキャップ本体10と有頂円筒状の蓋部30との間に形成され、一対のブロック部51a、51bと、キャップ本体10と蓋部30を連結させる薄膜状の部分とを備え、中心線を基準に対称の構造である。
キャップ1の材料となる熱可塑性樹脂として、本実施形態では、ポリプロピレンとポリエチレンを混合したものを用いている。ポリプロピレンの含有比率は、キャップ1の材料となる熱可塑性樹脂のうち30質量%以上70質量%以下(30質量%〜70質量%)であることが好ましい。ポリプロピレンの含有比率が30質量%未満であると、ヒンジの弾性が低下し、キャップの開閉の際に、明確な着脱感を感じ難くなる。一方、ポリプロピレンの含有比率が70質量%を超えると、キャップのノズルと蓋部の密閉性が低下し、内容物が漏れ出し易くなる。
また、キャップ1の材料となる熱可塑性樹脂に混合されるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。また、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より2種以上を選択して混合してもよい。特に、ポリエチレンとして、高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。高密度ポリエチレンを用いることにより、低温環境下における落下強度が向上する。
高密度ポリエチレンとは、密度が0.941g/cm3以上であり、好ましくは0.941g/cm3以上0.965g/cm3未満であり、低圧重合法(チーグラー・ナッタ触媒を用いた気相重合法またはメタロセン触媒を用いた液相重合法)によりエチレンを重合して得られるものを意味する。また、中密度ポリエチレンとしては、密度が0.930g/cm3以上、0.941g/cm3未満であるエチレンを重合して得られるものを意味する。また、低密度ポリエチレンとは、密度が0.93g/cm3未満であり、好ましくは0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満であり、有高圧重合法によりエチレンを重合して得られるものを意味する。さらに、直鎖状低密度ポリエチレンとは、密度が0.93g/cm3未満であり、好ましくは密度が0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満であり、低圧重合法によりエチレンおよび少量のα―オレフィンを重合して得られるものを意味する。従来、チューブ容器70の頭部成形体78はポリエチレンを用いていたものの、キャップ1はポリプロピレンを用いていた。その理由の一つは、キャップを開栓するときのヒンジ弾性を確保するためであった。
胴部71は、フィルム状の積層体が筒状に成形されたものである。そして、筒状に延びる胴部71の一端が肩部75と接合されている。一方で、筒状の胴部71の内面が重ねられて接合された底シール部79によって胴部71の他端が封止されている(図2参照)。底シール部79は、胴部71に中身が充填された後に接合されれば良い。チューブ容器70の特に胴部71は、多少の粘度を有する中身であっても所望の量を容易に押し出すことが可能な可撓性(柔軟性、スクイズ性)を有するように構成されているとよい。胴部71の寸法は、中身の種類等によって適宜設計されれば良く、例えば、直径が50mmとされている。
上記のような構成からなるチューブ容器70は、以下のような製造工程を経て得られる。
まず、図7に示すように、積層体90を用いて、積層体90の一対の貼り合わせ端部(以下、両端部と呼ぶことがある。)73A、73Bを重ね合わせて、その重ね合せ部分の外面と内面とをヒートシールして貼り合わせて胴貼り部72を形成することにより、筒状の胴部71を製造する。
ヒートシールする方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール、火炎シールなどの従来公知の方法で行うことができる。
次に、図7に示した筒状の胴部71を金型(図示省略)内に装着し、胴部71の一方の開口部(上側)74Aに、例えば、圧縮成形、射出成形などの方法によって、図1に示した頭部成形体78(肩部75、口部76)を形成する。このようにして胴部71の一方の開口部(上側)74Aに、頭部成形体78(肩部75、口部76)が一体に成形されてチューブ容器70が作製される。そしてチューブ容器70の口部76側にキャップ1が装着される。
次に、図1に示したチューブ容器70の筒状の胴部71の他方の開口部(下側)74Bから、例えば、練り辛子、練りわさび、練り歯磨き、その他の内容物が適量分だけ充填される。その後、開口部(下側)74Bを溶着して、図2に示した底シール部79を形成する。この結果、内容物を充填包装したチューブ容器70を含む包装製品70A(図2参照)が得られる。
頭部成形体78の詳細についてさらに説明する。頭部成形体78には、口部76、肩部75が適度の硬さとなるように成形することができ、胴部71の材料との接着性が高く、中身の品質に影響を与えず、中身に接触しても衛生的に支障のない材料が用いられる。このような材料として頭部成形体78には熱可塑性樹脂が用いられ、より具体的には高密度ポリエチレン(HDPE)が用いられる。
更に、頭部成形体78には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ブロック状ポリプロピレン、ランダムポリプロピレン)等のポリオレフィン樹脂や、オレフィンと、ビニル系モノマー、アクリル系モノマー、不飽和カルボン酸等の共重合性モノマーとの共重合体やこれらのブレンド組成物等のポリオレフィン系樹脂、及び上述の樹脂が、高密度ポリエチレンにブレンドされた樹脂等が用いられても良い。更に、耐熱性や、胴部71との熱接着性の観点からは頭部成形体78には、直鎖状低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンがブレンドされた樹脂が用いられると良い。更に、頭部成形体78の特に肩部75には、酸素等の気体の透過を防止するためにバリア材としての円錐台状筒体が積層されていても良い。肩部75には、植物由来性樹脂が含まれてもよい。
キャップ1および頭部成形体78の形成に用いる高密度ポリエチレンは化石原料由来のものを使用してもよいが、環境負荷の低減のためカーボンニュートラル材料として知られるバイオマス由来の高密度ポリエチレンを使用してもよい。頭部やキャップはチューブ容器に占める質量割合が大きいため、キャップ1や頭部成形体78をバイオマス由来の高密度ポリエチレンを用いて成形することにより、チューブ容器全体として化石原料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、チューブ容器70の頭部成形体78は、従来の化石原料から得られる原料から製造された頭部と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の頭部を代替することができる。
環境負荷低減の観点からは、バイオマス由来のポリエチレンのみを用いることが好ましいと言えるが、製造コスト等を考慮して、化石原料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンとをブレンドしたものを用いてもよい。ここで、バイオマス由来のポリエチレンとは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマー重合体である。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。原料モノマー中のバイオマス由来のエチレンの含有量は、100質量%である必要は無く、例えば、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。原料モノマーには、化石原料由来のエチレンが含まれていてもよく、ブチレン、ヘキセン、およびオクテン等のα−オレフィンのモノマーが含まれていてもよい。このような場合であっても、得られた重合体をバイオマスポリエチレンと呼ぶ。バイオマス由来のポリエチレンを使用する場合、異なるバイオマス度のポリオレフィンを2種以上含むものであってもよい。また、化石原料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンとをブレンドする場合、混合方法は特に限定されず、ドライブレンドやメルトブレンドでもよい。また、両者を混合する場合の化石原料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンとの混合割合は、質量比において1:9〜9:1が好ましく、より好ましくは2:8〜8:2である。
例えば、バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。すなわち、植物由来性樹脂を用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
本発明において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
バイオマス由来の高密度ポリエチレンとしては、バイオマス度の高いものを用いることが好ましい。バイオマス度とは、ASTM−D6866に準拠した放射性炭素(C14)測定法によって得られたC14含有量の値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。
そして、これらのような樹脂が用いられる頭部成形体78の厚さは0.5 mm以上、2.0mm以下であることが好ましい。本実施形態では、頭部成形体78は、圧縮成形(コンプレッション成形)によって作製される。このため、コンプレッション成形物である頭部成形体78では、天面等の厚肉の部分にも、成形時の収縮によって生じるくぼみ、いわゆるヒケが生じないようにすることができる。更に、ゲート部のような材料の無駄も削減することができる。なお、頭部成形体78を射出成形(インジェクション成形)によって作製してもよい。
次に、図8により、筒状の胴部71を形成する積層体90について説明する。チューブ容器70の胴部71を形成する積層体90は、図8に示すように、外面から内面に向かって順に配置された第1シーラント層92と、基材層93と、バリア層94と、第2シーラント層95とを有する積層体である。第1シーラント層92、基材層93、バリア層94、第2シーラント層95の各厚みは、現実にはそれぞれ異なっているが、図8においては、便宜上、同一の厚みで示している。また、ドライラミネートによる接着の際に形成される接着剤層は、他の層に比べて薄いため図示を省略している。バリア層94は、必須の層ではなく、少なくとも第1シーラント層92、基材層93、第2シーラント層95が、他の層を挟むか、または他の層を挟まずに連続して、順に積層されてなる積層体であればよい。
筒状の胴部71を形成する際には、積層体90の両端において、胴貼り部72を形成するため、第1シーラント層92と第2シーラント層95が直接貼り合わされる。基材層93の内面には印刷インキを用いて所望の模様を含む内面印刷部13Aが形成されている。また、第1シーラント層92、基材層93の外面に、印刷インキを用いて所望の模様を含む外面印刷部を形成するようにしてもよい。
また、第1シーラント層92と基材層93とは、接着剤を用いたドライラミネートにより接合されている。また、基材層93とバリア層94とはドライラミネートにより接合されている。また、バリア層94と第2シーラント層95とはドライラミネートにより接合されている。なお、第1シーラント層92、基材層93、バリア層94、第2シーラント層95の各層の間においては、ドライラミネートに代えて押出しラミネートにより接合するようにしてもよい。
ドライラミネートにより2つの層を接着する場合、積層しようとする層の表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成される接着剤層とすることができる。接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。2液硬化型の接着剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で積層体を構成する層の塗布面に塗布することができる。
押出しラミネートに使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、上記したポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。
また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィンなどを用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。なお、上記したポリエチレン系樹脂としては、上記したバイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用して、バイオマス度をさらに向上させることができる。
押出しラミネート法により接着樹脂層を積層する場合には、積層される側の層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成されるアンカーコート(AC)層を設けてもよい。アンカーコート剤としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンイミン等からなるアンカーコート剤が挙げられるが、特に、構造中に2以上のヒドロキシル基を有するポリアクリル系又はポリメタクリル系樹脂(ポリオール)と、硬化剤としてのイソシアネート化合物との硬化物であるアンカーコート剤を、好ましく使用することができる。また、これに添加剤としてシランカップリング剤を併用してもよく、また、硝化綿を、耐熱性を高めるために併用してもよい。
乾燥後のアンカーコート層は、0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.3μm以上0.5μm以下の厚さを有するものである。乾燥後の接着剤層は、好ましくは1μm以上10μm以下、好ましくは2μm以上5μm以下の厚さを有するものである。接着樹脂層は好ましくは5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下の厚さを有するものである。
次に筒状の胴部71の積層体90を構成する各部分の材料について説明する。
第1シーラント層92および第2シーラント層95は例えばポリエチレン(PE)を含んでいてもよい。具体的には、第1シーラント層92および第2シーラント層95を以下の材料から作製してもよい。
第1シーラント層92および第2シーラント層95としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、その他等の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂を使用することができる。
また基材層93としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)層を用いることができ、基材層93に印刷を施すことによって基材層93に印刷インキからなる内面印刷部13Aを設けることができる。また、積層体90における基材層93は、チューブ容器70の胴部71の剛性保持を担っている。
また基材層93としてPET層を用いる代わりに、ナイロン層を用いてもよく、また少なくとも一方の面に金属蒸着膜を有しガスバリア性をもったPET層を用いてもよく、また少なくとも一方の面に金属蒸着膜を有しガスバリア性をもったナイロン層を用いてもよい。
また、少なくとも一方の面にシリカ蒸着膜を有しガスバリア性をもったPET層を用いてもよく、また少なくとも一方の面にシリカ蒸着膜を有しガスバリア性をもったナイロン層を用いてもよい。
また、少なくとも一方の面に酸化アルミ蒸着膜を有しガスバリア性をもったPET層を用いてもよく、また少なくとも一方の面に酸化アルミ蒸着膜を有しガスバリア性をもったナイロン層を用いてもよい。
ナイロン層を用いた場合は、PET層よりも機械的強度が優れる場合が多い。また、各種蒸着膜を備えたフィルムは、基材となるフィルムよりもガスバリア性が優れる。
バリア層94としては、水蒸気その他のガスバリア性など、必要とされる機能に応じて、適切なものが選択され、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムや蒸着フィルムや金属箔を用いることができる。バリア層94として金属箔を用いる場合、金属箔としては、例えば、銅、すず等、バリア性を有する様々な金属箔を用いることができるが、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
バリア層94として蒸着フィルムを用いる場合、蒸着フィルムのベースとなるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン等を用いることができる。ベースとなるフィルムに蒸着する金属としては、アルミニウム、銅、すず等、一般に金属蒸着に用いられる様々なものを用いることができる。また、酸化アルミニウムなどの金属酸化物や酸化珪素などの無機酸化物の蒸着膜を設けることもできる。
バリア層94として蒸着フィルムを用いる場合、少なくとも一方の面に金属蒸着膜を有しガスバリア性をもったPET層を用いてもよく、また少なくとも一方の面に金属蒸着膜を有しガスバリア性をもったナイロン層を用いてもよい。
また、少なくとも一方の面にシリカ蒸着膜を有しガスバリア性をもったPET層を用いてもよく、また少なくとも一方の面にシリカ蒸着膜を有しガスバリア性をもったナイロン層を用いてもよい。
また、少なくとも一方の面に酸化アルミ蒸着膜を有しガスバリア性をもったPET層を用いてもよく、また少なくとも一方の面に酸化アルミ蒸着膜を有しガスバリア性をもったナイロン層を用いてもよい。
ナイロン層を用いた場合は、PET層よりも機械的強度が優れる場合が多い。また、各種蒸着膜を備えたフィルムは、基材となるフィルムよりもガスバリア性が優れる。
さらに、蒸着膜上にガスバリア性塗布膜を設けてもよい。これにより酸素や水蒸気などの透過を抑制するとともに、蒸着膜と隣接して設けることにより、蒸着膜のクラックの発生を効果的に防止することができる。
上記のガスバリア性塗布膜は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜である。
第1シーラント層92、第2シーラント層95に用いられる材料として上記した樹脂は、化石原料由来のものだけでなく、バイオマス由来の樹脂を用いてもよい。例えば、上記したバイオマス由来のポリエチレン樹脂の他、特開2012−116082号公報に記載されているようなバイオマス由来のエチレングリコールをジオール成分として使用したバイオマスポリエステルや、ポリ乳酸樹脂、セロハン、でんぷん、セルロース等を使用することができる。バイオマス由来の樹脂としては植物由来性樹脂を用いることが好ましい。
基材層93の内面に設けられた内面印刷部13Aは、平滑でかつ透明性が優れる基材層93に印刷されることから、美粧性に秀でた印刷をすることが可能である。
次に、筒状の胴部71の積層体90の製造方法について図8を用いて説明する。
まず、基材層93の内面に印刷を施して、基材層93の内面に印刷インキからなる内面印刷部13Aを設ける。
次に、基材層93の外面にドライラミネートにより、第1シーラント層92を積層する。
次に、基材層93の内面に、バリア層94をドライラミネートにて積層する。さらに、バリア層94の積層体の内面に、ドライラミネートにより、第2シーラント層95を接合する。
上記のようにして、胴部71の積層体90が得られる。なお、所望の積層体90が得られるようであれば、上記の製造方法には限られない。
このようにして得られた胴部71の積層体90は円筒状に巻かれ、上述のようにその両端部73A、73Bが重ね合わされて、両端部73A、73Bにおいて積層体90の外面と内面がヒートシールされて、胴貼り部72が形成され、筒状の胴部71が作製される。この場合、積層体90の外面側に設けられた第1シーラント層92と、内面側に設けられた第2シーラント層95とが溶融して接合され、筒状の胴部71が得られる。
なお、上記では胴貼り部72は、重ね合わせにより形成されるが、両端部73A、73Bのそれぞれの端面を、突き合わせて接合してもよい。さらに、上記にて付き合わせて接合した接合線を、筒状の胴部71の内面または外面にフィルムを貼付して保護してもよい。また、内側となる端部73Bには、端面保護のための加工をしてもよい。例えばテープ貼りによる保護や、端部73Bを容器の外側方向に折り曲げる加工(ヘミング加工)などがある。
次に、図7に示した筒状の胴部71の開口部(上側)74Aが金型(図示省略)内に挿着され、筒状の胴部71に圧縮成形、射出成形などの方法を用いて、筒状の胴部71の開口部(上側)74Aに肩部75と口部76が形成されて、チューブ容器70が得られる(図1参照)。
次に、上記のようにして製造されたチューブ容器70の口部76に、キャップ1が装着され、キャップ1が装着されたチューブ容器70は複数まとめてダンボール箱内に収納される。その後、キャップ1が装着された複数のチューブ容器70は、ダンボール箱毎に搬送される。その後、搬送先において、練り辛子、練りわさび、練り歯磨き、その他の流動体である内容物が適量分だけ充填され、開口部(下側)74Bを溶着して底シール部79が形成される。これにより、チューブ容器70に内容物が充填包装された包装製品70Aが得られる。
<実施例1>
金型を備えた射出成形装置を用いて、キャップを製造した。キャップ1を構成する熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンとポリエチレンを混合したものを用いた。ポリプロピレンとしては、「サンアロマー社製のPM921V(密度:0.90g/cm3、MFR:25 g/10min)」を用いた。ポリエチレンとしては、バイオマス由来の高密度ポリエチレンである「ブラスケム社製のSHA7260(密度:0.955g/cm3、MFR:20g/10min、バイオマス度94%)」を用いた。ポリプロピレンとポリエチレンの混合比率は質量基準で3:7とした。すなわち、ポリプロピレンの含有比率を30質量%とした。
成形条件は、充填時間が0.97秒、サイクル時間が30.0秒、最大充填圧力が82.3MPa、樹脂温度が210℃であった。充填時間とは、金型の流入口であるスプルーから流入した溶融熱可塑性樹脂が金型で構成されるキャビティの中を完全に充填するまでの時間である。サイクル時間とは、型閉じから成形品が取り出されるまでの時間であり、1つのキャップ1が製造されるのに要する時間である。
胴部71を構成する積層体90については、以下のように製造した。積層体90を構成する各層の具体的構成として、第1シーラント層92として厚み130μmのLLDPEフィルム、基材層93として厚み12μmのPETフィルム、バリア層94として厚み12μmのVM−PETフィルム、第2シーラント層95として厚み100μmのLLDPEフィルムを用いた。VM−PETフィルムとしては、アルミ蒸着PETフィルムを用いた。第1シーラント層92に用いられるLLDPEフィルムは、静電防止剤が添加された形成されたものである。なお、用途によっては静電防止剤を添加しなくてもよい。
具体的には、まず、基材層93となる厚みが12μmのPETフィルムの内面側に内面印刷部13Aを形成した。次に、基材層93となる厚み12μmのPETフィルムの外面に、ドライラミネートにより第1シーラント層92となる厚み130μmのLLDPEフィルムを貼り合わせた。第1シーラント層92となる厚み130μmのLLDPEフィルムとして、MFR(Melt Flow Rate)1.9g/10min、密度0.92g/cm3、融点118℃のものを用いた。
次に、基材層93の内面に、ドライラミネートにより、バリア層94となる厚み12μmのVM−PETフィルムを貼り合わせた。これにより、第1シーラント層92、基材層93、バリア層94が積層された積層体が得られた。
次に、バリア層94の内面に、ドライラミネートにより、第2シーラント層95となる厚み100μmのLLDPEフィルムを貼り合わせた。第2シーラント層95となる厚み100μmのLLDPEフィルムとしては、第1シーラント層92と同様、MFR(Melt Flow Rate)1.9g/10min、密度0.92g/cm3、融点118℃のものを用いた。ただし、第2シーラント層95には、静電防止剤は添加されていない。
次に、第1シーラント層92、基材層93、バリア層94が積層された積層体のバリア層94側と、第2シーラント層95を、ドライラミネートにより貼り合わせた。
この結果、LLDPE130μm/DL/PET12μm/印刷層(インキ)/DL/VM−PET12μm/DL/LLDPE100μmの構成となる積層体90が得られた。
さらに、積層体90を円筒状に巻き、上述のようにその両端部73A、73Bが重ね合わせ、両端部73A、73Bにおいて積層体90の外面と内面をヒートシールして胴貼り部72を形成し、筒状の胴部71を作製した。チューブ形状を特定する筒状の胴部71の内径は、38mmとした。次に、筒状の胴部71の開口部74Aを金型内に挿着し、筒状の胴部71に圧縮成形にて、筒状の胴部71の開口部74Aに肩部75と口部76を形成した。そして、筒状の胴部71の他方の開口部74Bから、内容物としてペースト状の練り歯磨き(歯磨剤)を90g充填した。その後、開口部74Bを溶着して底シール部79を形成して、内容物を充填包装したチューブ容器70を作製した。そして、別途作製されたキャップ1の内面とチューブ容器70の口部76の外面の螺子構造を螺合させることにより、キャップ1をチューブ容器70に装着し、内容物が充填されたキャップ付きチューブ容器を得た。
<実施例2>
ポリプロピレンとポリエチレンの混合比率を質量基準で7:3とした。すなわち、ポリプロピレンの含有比率を70質量%とした以外は、実施例1と同様にしてキャップを作製した。さらに、実施例1と同様にしてチューブ容器70を作製し、キャップ1を装着し、内容物が充填されたキャップ付きチューブ容器を得た。
<比較例1>
キャップ1を構成する熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを用いた。すなわち、ポリプロピレンの含有比率を100質量%とした。ポリプロピレンとしては、「サンアロマー社製のPM921V(密度:0.9g/cm3、MFR:25g/10min)」を用いた。これ以外は、実施例1と同様にしてキャップを作製した。さらに、実施例1と同様にしてチューブ容器70を作製し、キャップ1を装着し、内容物が充填されたキャップ付きチューブ容器を得た。
<比較例2>
キャップ1を構成する熱可塑性樹脂として、ポリエチレンを用いた。すなわち、ポリエチレンの含有比率を100質量%とした。ポリエチレンとしては、バイオマス由来の高密度ポリエチレンである「ブラスケム社製のSHA7260(密度:0.955g/cm3、MFR:20g/10min、バイオマス度94%)」を用いた。これ以外は、実施例1と同様にしてキャップを作製した。さらに、実施例1と同様にしてチューブ容器70を作製し、キャップ1を装着し、内容物が充填されたキャップ付きチューブ容器を得た。
<評価>
実施例1、2、比較例1、2のキャップ付きチューブ容器ついて、「ヒンジ弾性」、「内容物漏れ性」の2つの指標を用いて評価を行った。
ヒンジ弾性については、プッシュプルゲージとして、イマダ社製「普及型メカニカルフォースゲージFB100N」を用いて、閉め弾性、開け弾性の2つの測定を行った。閉め弾性については、キャップ1が開栓された状態から、プッシュプルゲージの押付力計測軸により、キャップ1の蓋部30の外表面34を押し込み、蓋部30が嵌合する直前になった時までの押し込み強度のピーク値を閉め弾性として測定した。
開け弾性については、キャップ1の蓋部30の嵌合をはずした状態、すなわち係合リブ39と係止リブ18の係合を外した状態で、蓋部30の突出部36をプッシュプルゲージの引張力計測軸を用いて、蓋部30が完全に開いた状態になった時までの引張強度のピーク値を開け弾性として測定した。
内容物漏れ性については、チューブ容器70にキャップ1を装着し、キャップ1を閉栓した状態で、チューブ容器70内に試薬(水:エタノール=5:5溶液にメチレンブルーにて着色)を100g充填し、倒立状態で常温(20℃)にて24時間保管した。保管後、充填試薬を排出し、50℃Dry環境下で乾燥させた後に、チューブ容器70からの試薬の漏れ状態を目視確認した。漏れ状態の判定は〇:インナーリング27までで液が止まっている、△:コンタクトリング28までで液が止まっている、×:螺子構造24を備えた取り付け部23まで液漏れ、とした。実施例1、2、比較例1,2の評価結果を表1に示す。
表1に示した評価結果より、ヒンジ弾性については、比較例1(ポリプロピレン100%)と比べて、比較例2(HDPE100%)では、閉め弾性、開け弾性ともに大幅に低下していることが確認された。また、比較例2と比べて、実施例1、2ではポリエチレンの含有量が減るに従って、ヒンジ弾性が向上していることが確認された。実施例1、2では、閉め弾性は0.40N以上であり、開け弾性は0.32N以上と、ともに適度な数値を示した。
また、表1に示した評価結果より、内容物漏れ性については、については、比較例1(ポリプロピレン100%)では△であり、内容物の漏れ出しがコンタクトリングまで達したのに比べて、比較例2、実施例1、2では〇となり、内容物の漏れ出しがコンタクトリングまでで止まった。この結果より、実施例1、2では内容物漏れ性が高いことが確認された。
表1の評価結果を基に総合的に判断すると、ヒンジ弾性と内容物漏れ性がトレードオフ関係にあるが、両者のバランスを保ち、ヒンジ弾性により、キャップの開閉の操作性を高めつつ、内容物の漏れ出しを低減可能とするために、キャップ1がポリプロピレンとポリエチレンを混合して構成されており、ポリプロピレンの含有比率が30質量%以上70質量%以下(30質量%〜70質量%)であることが好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、チューブ容器のキャップとして、口部の外周面とキャップ本体の内側に螺子構造を備えたスクリュータイプのものを用いたが、ヒンジ付きであれば、上下方向の直線運動のみにより容器に対してキャップを着脱させるような、いわゆるワンタッチ嵌合により結合されるタイプのもの等、他の手段で、チューブ容器に装着するタイプのものを用いてもよい。
また、上記実施形態では、積層体が、基材層と第2シーラント層の間に、バリア層を有する構成としたが、必ずしもバリア層を設ける必要はなく、内容物の特性に応じて適宜設けることができる。