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JP2021133329A - Voc電気化学式浄化ユニットおよび浄化方法 - Google Patents

Voc電気化学式浄化ユニットおよび浄化方法 Download PDF

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JP2021133329A JP2020032997A JP2020032997A JP2021133329A JP 2021133329 A JP2021133329 A JP 2021133329A JP 2020032997 A JP2020032997 A JP 2020032997A JP 2020032997 A JP2020032997 A JP 2020032997A JP 2021133329 A JP2021133329 A JP 2021133329A
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康二 稲岡
Koji Inaoka
康二 稲岡
祐貴 山田
Yuki Yamada
祐貴 山田
達也 馬場
Tatsuya Baba
達也 馬場
正紀 齋藤
Masanori Saito
正紀 齋藤
恵梨佳 青山
Erika Aoyama
恵梨佳 青山
真平 山口
Shinpei Yamaguchi
真平 山口
友厚 尾▲崎▼
Tomoatsu Ozaki
友厚 尾▲崎▼
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Abstract

【課題】新規なVOCの分解手法によるVOC電気化学式浄化ユニットおよび浄化方法の提供。
【解決手段】電極積層部10と、電場印加部20と、を備えるVOC電気化学式浄化ユニット1である。電極積層部10は、酸化物イオン伝導性を有する隔壁層12と、隔壁層12の一方の面に備えられ、酸化物イオン伝導性を有する多孔質な陰極層14と、隔壁層12の他方の面に備えられ、酸化物イオン伝導性を有する多孔質な陽極層16と、からなる。電場印加部20は、陰極層14および陽極層16の間に電場を印加する。この浄化ユニット1によると、陰極層14に酸素含有ガスを供給し、陽極層16に処理対象であるVOC含有ガスを供給することで、陰極層14で生成される酸化物イオンを隔壁層12を通じて陽極層16に送り、陽極層16においてVOC含有ガスを酸化分解することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、VOC電気化学式浄化ユニットおよび浄化方法に関する。
ガソリンや有機溶剤などに含まれる揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)は、太陽からの紫外線を受けて自動車や工場からの排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)と化学反応し、光化学オキシダントを生成するため、光化学スモッグの原因物質の一つとなっている。また工場排水に含まれるVOCは、土壌や地下水の深刻な汚染を引き起こす原因物質でもある。そのため、大気汚染防止法および土壌汚染対策法などによってVOCの排出が規制されるとともに、様々なVOCの分解・浄化方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2011−021779号公報 国際公開第2017/188138号 特開2013−188652号公報
VOCの分解においては、CO、CO、およびHOが生成されるが、有害なCOの割合を減らして無害な二酸化炭素(CO)と水にまで酸化することが望ましい。したがって、VOCの分解方法としては直接燃焼法が広く採用されている。しかしながら、直接燃焼法では、特許文献1に開示されるように、実用的な分解効率を実現するためには少なくとも750℃以上の高温に加熱する必要がある。その一方で、VOCの分解温度を低下させるために、特許文献2、3に開示されるように、白金触媒を用いたり、水酸化アパタイトを触媒として用いる方法が提案されてもいる。しかしながら、VOCの発生環境や浄化環境は多様であり得ることから、VOCの分解・浄化方法についてもより多様な選択肢の提供が望まれる。
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規なVOCの分解手法によるVOC電気化学式浄化ユニットを提供することである。また、関連する他の目的は、この新規なVOCの分解手法によるVOCの電気化学式浄化方法を提供することである。
そこで、ここに開示される技術は、VOC電気化学式浄化ユニット(以下、単に「浄化ユニット」という場合がある。)を提供する。この浄化ユニットは、電極積層部(以下、「コアユニット」という場合がある。)と、電場印加部と、を備える。ここで、電極積層部は、酸化物イオン伝導性を有する隔壁層と、前記隔壁層の一方の面に備えられ、少なくとも電子伝導性を有する多孔質な陰極層と、前記隔壁層の他方の面に備えられ、酸化雰囲気で電子伝導性を有する多孔質な陽極層と、からなる。また、電場印加部は、前記陰極層および前記陽極層の間に電場を印加する。
また、ここに開示されるVOCの電気化学式浄化方法は、上記構成のコアユニットを用意すること、陽極層の側が高電位となるように、陽極層および陰極層の間に電場を印加すること、前記陰極層に酸素含有ガスを供給し、前記陽極層に処理対象であるVOC含有ガスを供給することで、前記陰極層で生成される酸化物イオン(O2-)を前記隔壁層を通じて前記陽極層に送り、前記陽極層において前記VOC含有ガスを酸化分解すること、を含む。これにより、電気化学的に生成した酸化物イオン(O2-)および隔壁層から解離し電極積層部へ飛び出したスピルオーバー酸素によってVOCを酸化分解する、新規な技術が提供される。
ここに開示される浄化ユニットの好ましい一態様では、前記電極積層部を加熱するためのヒーターを備えている。これにより、電極積層部は、隔壁層の酸化物イオン伝導性がより高められる温度範囲にまで加熱され得る。例えば、ヒーターによって、電極積層部を550℃以上(例えば550〜1000℃、好適には600〜850℃、典型的には600〜750℃)に加熱することができる。このことにより、より高効率にVOCを分解することができる。
ここに開示される浄化ユニットの好ましい一態様では、前記陰極層に酸素含有ガスを供給する酸素供給部と、前記陽極層にVOC含有ガスを供給するVOC供給部と、を備える。これにより、酸素含有ガスとVOC含有ガスとを適切な場所に独立して供給することができ、陰極層における酸素の還元反応と、陽極層におけるVOCの酸化分解反応とを、無駄なくスムーズに進行させることができる。
ここに開示される浄化ユニットの好ましい一態様では、陰極層は、次式:
(Ln1−x)MO3−δ
で示される導電性ペロブスカイト型酸化物を含む。式中、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、AはCa,Sr,およびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはMn,Cr,Co,Cu,Fe,Ni,およびTiからなる群から選択される1種または2種以上の元素であって、xは0≦x<1を満たし、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。 これにより、より低い温度で多量の酸化物イオン(O2-)を陽極層に送ることができ、高効率にVOCを分解することができる。
ここに開示される浄化ユニットの好ましい一態様では、酸化物イオン伝導性を有する隔壁層と、前記隔壁層の一方の面に備えられ、酸化物イオン・電子混合伝導性を有する多孔質な陰極層と、前記隔壁層の他方の面に備えられ、酸化雰囲気で電子伝導性を有する多孔質な陽極層と、からなる電極積層部を含む。
上記構成によると、高温環境や長期に亘る運転により、陰極層の成分が隔壁層に拡散して反応することを防止することができる。これにより、例えば隔壁層を薄くした場合でも隔壁層の絶縁性を確保することができ、酸化物イオン(O2-)を低抵抗で陽極層に送り、VOCを分解することができる。
以上のとおり、ここに開示されるVOCの電気化学式浄化技術によると、例えば750℃以下でのVOCの酸化分解が可能となる。これにより、一般的な直接燃焼法よりも、低い温度で低コストにVOCを酸化分解できるという利点がある。また、ここに開示されるVOCの電気化学式浄化技術によると、VOCの酸化分解のために白金触媒を用いる必要がない。白金触媒は非常に高価であることから、本技術は、白金触媒の使用を必須とする直接燃焼法よりも、低コストにVOCを酸化分解できる新規な技術であり得る。さらに、従来のVOCの分解方法では、VOCの分解温度を低下させるに伴い毒性の高いCOの発生率が高くなる、換言すれば、CO→COヘの転化率が低下するという課題があった。ここに開示されるVOCの電気化学式浄化技術によると、多孔質な陽極層においてVOCと酸化物イオン(O2-)とを高い頻度で接触させることができる。これにより、より低い温度においても高い転化率でVOCを分解することができる。
一実施形態に係るVOC電気化学式浄化ユニットの構成を説明する模式図である。 一実施形態に係るスタックされた電極積層部の構成を説明する分解斜視図である。 他の実施形態に係るVOC電気化学式浄化ユニットの構成を説明する模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、電極積層部の製造方法等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて把握することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書において数値範囲を示す「A〜B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
[VOC電気化学式浄化ユニット]
図1は、VOC電気化学式浄化ユニット1の基本的な構成を示す。浄化ユニット1は、電極積層部10と、電場印加部20と、を備えている。電場印加部20は、後述する電極積層部10の陰極層14および陽極層16の間に電場を印加する要素である。
以下、各部について説明する。
電極積層部10は、隔壁層12と、陰極層14と、陽極層16と、から構成される。
隔壁層12は、陰極層14と陽極層16とを物理的かつ電気的に隔離する機能を有する要素である。したがって、隔壁層12は、電子伝導性は有さない。また、隔壁層12は、酸化物イオン伝導性を有する。換言すると、隔壁層12は、酸化物イオンについては陰極層14と陽極層16の間の移動を許容する。そして隔壁層12は、後述する陰極層14と陽極層16との比較から、気体を通さない緻密な構造を有する。
ここで、本明細書において、酸化物イオン伝導性を有するとは、浄化ユニット1の運転環境において酸化物イオン伝導度が、1×10−4S/cm以上、典型的には1×10−3S/cm以上であることをいう。また、電子伝導性は有さないとは、電気伝導率が例えば1×10−2S/cm以下、典型的には1×10−3S/cm以下、一般的には1×10−4S/cm以下であることをいう。さらに、後述する、電子伝導性を有するとは、一般的には電気伝導率が1×10−1S/cm以上、例えば1×10S/cm以上、典型的には1×10S/cm以上であることをいう。
このような隔壁層12は、酸化物イオン伝導体により構成することができる。酸化物イオン伝導体としては、例えば、好適例として、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、ガドリニウム(Gd)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)等から選択される元素を含んだ酸化物が挙げられる。典型的には、例えば、ジルコニア系酸化物(典型的には、ZrO)、セリア系酸化物(典型的には、CeO)、ランタンガレート系酸化物(典型的には、LaGaO)等が挙げられる。これらの酸化物イオン伝導体は、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、スカンジア(Sc)、マグネシア(MgO)、イッテルビア(Yb)、エルビア(Er)、ガドリニア(Gd)、サマリア(Sm)等の安定化材で結晶構造を安定化させたものであってもよい。典型例として、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、サマリア安定化セリア、ガドリニア安定化セリア、ランタンストロンチウムガリウムマンガナートなどが挙げられる。これらの酸化物イオン伝導体は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸化物は、比較的温度が低い場合(約500℃〜800℃)であっても高い酸化物イオン伝導性を示し、起動性に優れたVOC浄化ユニットを実現し得るために好ましい。安定化材としてドープする酸化物の量は特に限定されないが、例えば約1〜20mol%、通常、約5〜10mol%とすることができる。
隔壁層12の厚みは特に制限されない。より低抵抗に酸素イオンを陰極層14−陽極層16間で移動させるとの観点からは、隔壁層12の厚みは薄いことが好ましい。好適な一例として、隔壁層12の厚みは、例えば、1000μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下であってよい。一方で、隔壁層12の強度を確保する観点からは隔壁層12の厚みは薄すぎないことが望ましい。したがって、隔壁層12の厚みは、例えば、0.05μm以上、0.1μm以上、1μm以上、10μm以上や100μm以上であってよい。隔壁層12は、例えば、上記の構成材料の緻密な(例えば、気孔率が10体積%以下の)焼結体として用意することができる。
陰極層14は、隔壁層12の一方の面に備えられる多孔質な層である。陰極層14は、電子伝導性を有する。陰極層14は、電子伝導性に加えて、酸化物イオン伝導性を有していることが好ましい。換言すると、陰極層14は、酸化物イオン・電子混合伝導体により構成されていることが好ましい。
酸化物イオン・電子混合伝導体の典型例としては、例えば、ランタンコバルタイト(LaCoO)系酸化物、ランタンマンガネート(LaMnO)系酸化物、ランタンフェライト(LaFeO)系酸化物、ランタンニッケラート(LaNiO)系酸化物、サマリウムコバルタイト(SmCoO)系酸化物等のペロブスカイト型酸化物が挙げられる。ここで、例えば上記ランタンコバルタイト系酸化物とは、ランタン(La)およびコバルト(Co)を構成金属元素とする酸化物の他、LaおよびCo以外に他の一種以上の元素(典型的には、遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。また、ランタンマンガネート系酸化物、ランタンフェライト系酸化物、ランタンニッケラート系酸化物およびサマリウムコバルタイト系酸化物についても同様である。典型例として、ストロンチウム(Sr)をドープしたLaMnO系酸化物(例えば、La0.8Sr0.2MnO)、SrをドープしたLaCoO系酸化物(例えば、La0.6Sr0.4CoO)、Srおよび鉄(Fe)をドープしたLaCoO系酸化物(例えば、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8)等が好適例として挙げられる。
陰極層14の気孔率は特に制限されず、後述するように、隔壁層12と陰極層14との界面において、隔壁層12と陰極層14と気相(ここでは酸素含有ガス、典型的には空気)とが接触でき、隔壁層12−陰極層14−気相の三相界面がより広く確保できる構成であることが好ましい。かかる観点において、陰極層14の気孔率は、例えば20体積%以上や、30体積%以上、40体積%以上であると好ましい。ただし、気孔率が高すぎると陰極層14の強度が低下し得る点において好ましくない。したがって、陰極層14の気孔率は、例えば80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下であるとよい。
陽極層16は、隔壁層12の他の一方の面に備えられる多孔質な層である。陽極層16は、酸化雰囲気で電子伝導性を有する。換言すると、陽極層16は、酸化雰囲気で電子伝導性を有する材料により構成されているとよい。陽極層16は、酸化雰囲気で電子伝導性を有することに加えて、酸化物イオン伝導性を有していることが好ましい。換言すると、陽極層16は、酸化物イオン・電子混合伝導体により構成されていることが好ましい。
酸化雰囲気で電子伝導性を有する材料としては、例えば、金(Au)、白金(Pt),イリジウム(Ir),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd),ルテニウム(Ru)等の白金族、銀(Ag)、水銀(Hg)、耐食性ステンレス鋼、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、錫(Sn)等の金属の単体、およびこれらの混合物や合金や、LaCrO系の導電性セラミックス等が挙げられる。なかでも比較的安価であり、酸化雰囲気に対する高い腐食性を有する観点から、Agの利用が好ましい。
また、陽極層16を酸化物イオン・電子混合伝導体により構成する場合は、上記の陰極層に用いることができる各種の酸化物イオン・電子混合伝導体のなかから、独立して、1種または2種以上の酸化物イオン・電子混合伝導体を採用することができる。この場合、陰極層14と陽極層16とは、同じ材料によって構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。浄化ユニット1の組立簡便性や、材料点数の低減の観点からは、陰極層14と陽極層16とは同じ材料によって構成されているとよい。
陽極層16の気孔率は特に制限されず、後述するように、隔壁層12と陽極層16との界面において、隔壁層12と陽極層16と気相(ここではVOC含有ガス)とが接触でき、隔壁層12−陽極層16−気相の三相界面がより広く確保できる構成であることが好ましい。かかる観点において、陽極層16の気孔率は、例えば20体積%以上や、30体積%以上、40体積%以上であると好ましい。ただし、気孔率が高すぎると陽極層16の強度が低下し得る点において好ましくない。したがって、陽極層16の気孔率は、例えば80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下であるとよい。
陰極層14と陽極層16の厚みや形態は特に制限されない。これらの陰極層14および陽極層16は、酸化物イオン源となる酸素含有ガスや処理対象であるVOC含有ガス(以下、反応ガスという場合がある。)との電極反応効率を考慮して任意に設計することができる。一例として、陰極層14および/または陽極層16の厚みは、陰極層14および/または陽極層16と、隔壁層12と、気相との三相界面がより広く確保できるように、また、この三相界面に効率よく気相を供給できるように、任意の厚みとすることができる。一例として、陰極層14および/または陽極層16の厚みは、1μm以上とすることができ、10μm以上であってよく、100μm以上や、1mm以上であってもよい。好ましい一態様において、陰極層14および/または陽極層16の形態は、隔壁層12と接していない側の表面に、上記反応ガスを流通させるための流路(換言すれば、凹部、溝部)が形成されていてもよい。
このような陰極層14および/または陽極層16は、例えば、公知の湿式法により簡便に製造することができる。一例では、上記の各層の構成材料からなる粉末と、バインダとを含むスラリーを基材に塗布し、乾燥させたのち焼成することで、任意の形態の陰極層14および/または陽極層16を作製することができる。このとき、隔壁層12を基材として、隔壁層12の表面に陰極層14および/または陽極層16を直接形成することで、隔壁層12と陰極層14および/または陽極層16とが気密に接合された電極積層部10を形成することができるために好ましい。
また、より気孔率の高い陰極層14および/または陽極層16を得る目的で、スラリーには、焼成によって消失することで気孔を形成する気孔形成材料を添加するようにしてもよい。気孔形成材としては、例えばカーボン粉末、炭化ケイ素粉末、窒化ケイ素粉末、澱粉等を好適に用いることができる。この場合、各層の構成材料からなる粉末の平均粒子径(レーザー回折・散乱法による体積基準のD50%粒径)は、概ね0.1〜10μm、例えば1〜5μm程度とするとよい。気孔形成材についても同様であってよく、粉末の平均粒子径は0.1〜10μm、例えば1〜5μm程度であってもよい。
[スタック]
電極積層部10は、例えばインターコネクタを介して複数のものが積層(スタック)されていてもよい。図2は、電極積層部10がスタックされている様子を構成を積層方向に分解して示した分解斜視図である。図2では、各要素は離間して図示されているが、実際には各要素は積層方向で気密に接合されている。ここで、基本的には、インターコネクタ18Mは、一つの電極積層部10Aの陽極層16と、他の一つの電極積層部10Bの陰極層14とを電気的に接合する部材である。インターコネクタ18U,18M,18Dは、浄化ユニット1の運転環境において酸素イオン伝導性は備えないが電子伝導性を備える材料によって構成され得る。インターコネクタ18U,18M,18Dは、例えば、上記の陽極層16を構成する材料(ただし酸素イオン伝導性は備えない材料)によって構成することができる。一例として、インターコネクタ18U,18M,18Dは、例えば、SUS430等の耐熱合金,Crofer(ティッセンクルップ製),ZMG(日立金属製)等の金属材料や、LaCrO系のセラミックス材料を使用して構成することができる。
電極積層部10A,10Bは、隔壁層12の両面が、それぞれ陰極層(カソード)14および陽極層(アノード)16とで挟まれたサンドイッチ構造を備えている。図2の中心付近に位置するインターコネクタ18Mは、その両面を二つの電極積層部10A,10Bで挟まれており、インターコネクタ18Mの一方の面18aが電極積層部10Bの陰極層14と対向(隣接)し、他方の面18bが電極積層部10Aの陽極層16と対向(隣接)している。インターコネクタ18Mの、一方の面18aには複数の溝が形成されており、供給される酸素含有ガス(典型的には空気)が流れる空気流路18cが構成されている。同様に、他方の面18bにも複数の溝が形成されており、供給される浄化対象ガス(典型的にはVOC含有ガス)が流れるためのVOCガス流路18dが構成されている。このインターコネクタ18Mでは、空気流路18cとVOCガス流路18dとが互いに直交するように、その両面に溝が形成されている。
複数の電極積層部10A,10Bとこれらの間のインターコネクタ18Mは、さらに、積層方向の両端をインターコネクタ18U,18Dによって挟まれている。この端部に配置されるインターコネクタ18U,18Dには、電極積層部10A,10Bに接する側の面にのみ、接する電極層14,16に供給すべきガスが流れる流路18c,18dが形成されている。例えば、図2の上方のインターコネクタ18Uの電極積層部10Aの陰極層14と接する側の面18aには、陰極層14に供給すべき酸素含有ガス(典型的には空気)が流れる空気流路18cが構成されている。そして反対側の面は溝が形成されておらず、平らである。図2の下方のインターコネクタ18Dの電極積層部10Bの陽極層16と接する側の面18bには、陽極層16に供給すべきVOC含有ガス)が流れるためのVOCガス流路18dが構成されている。そして反対側の面は溝が形成されておらず、平らである。これらの端部に配置されるインターコネクタ18U,18Dは、例えば、ここに開示される電場印加部20の一要素であってもよい。インターコネクタ18U,18Dとの間には、電場印加部20によって、インターコネクタ18Uが高電位側に、インターコネクタ18Dが低電位側となるように、電場が印加される。
電場印加部20は、電極積層部10の陰極層14と陽極層16との間に電場を印加するための要素である。電場印加部20により印加する電場は、陰極層14の側が高電位となる範囲において特に制限されない。電場印加部20は、例えば、公知の直流電源等を備えていてもよい。また、電場印加部20は直流電源を含み、典型的には一定の電圧を維持して生じさせるように、電場を印加してもよい。なお、電場印加部20が生じさせる電圧の波形は制限されず、連続波であってもよいし、単発波であってもよいし、これらの任意の組合せであってもよい。
[VOCの電気化学的浄化方法]
ここに開示されるVOCの電気化学式浄化方法は、上記のような浄化ユニット1を用い、以下の手順によってVOCを酸化分解することができる。
S1:電極積層部(コアユニット)の用意
S2:電極積層部に電場を印加
S3:陰極層に酸素含有ガス供給、陽極層にVOC含有ガス供給
すなわち、工程S1では、上記構成の電極積層部(コアユニット)10,10A,10Bを用意する。
そして工程S2では、電極積層部10,10A,10Bの陰極層14の側が高電位となるように、陰極層14および陽極層16の間に電場を印加する。電場の印加は、例えば電場印加部20により好適に実施することができる。電場印加部20が印加する電場は、一例として、一ユニットあたり0.01〜10V程度、例えば0.05〜8V程度、さらには0.1〜5V程度の電圧であってよい。
工程S3では、このような状態の陰極層14に酸素含有ガスを供給する。また、陽極層16に処理対象であるVOC含有ガスを供給する。より具体的には、例えば、インターコネクタ18U,18Mに、酸素(O)含有ガスとしての空気を供給する。また、インターコネクタ18M,18Dに、処理対象としてのVOC含有ガスを供給する。陰極側のOガスは、多孔質な陰極層14および隔壁層12の表面に接触し、酸化物イオン(O2−)に還元され、電場をかけると隔壁層12の両面での電位差が駆動力となって、酸化物イオン(O2−)は隔壁層12を陽極層16に向けて移動する。酸化物イオン(O2−)は隔壁層12中を拡散して、多孔質な陽極層16に到達する。到達した酸化物イオン(O2−)は、陽極層16と隔壁層12との界面で、供給されたVOCを酸化して陽極層16に電子を放出する。陽極層16が酸化物イオン導電性も備える材料により構成されている場合は、VOCは多孔性な陽極層16の表面においても酸化されて電子を放出する。これにより、VOC含有ガスを酸化分解することができる。スタック構造を有する電極積層部10A,10Bにおいては、三相界面の面積をより広く確保することができ、一度に多量のVOCを分解して高効率に浄化することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[電極積層部の作製]
(例1、例5)
まず、隔壁層として、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)からなる厚さ160μmの焼結体板を用意した。
次いで、陰極層と陽極層を形成するための電極ペーストを調製した。電極構成材料としては、組成が一般式:(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3-δ;で表されるLSCF粉末(平均粒子径0.5μm)を用意した。ただし、式中のδは電荷中性条件を満たすように定まる値である。そしてこのLSCF粉末をビヒクルに添加し、三本ロールミルで混合・分散することで電極ペーストを得た。ビヒクルは、バインダとしてのエチルセルロースとマレイン酸樹脂とを、溶剤としてのターピネオールに混合することで予め調製したものである。そしてこの電極ペーストを、直径12.5mmの円形で厚みが30μmとなるようにスクリーン印刷法で隔壁層の両面に塗布し、1100℃で2時間焼成することで、LSCF/ScSZ/LSCFからなる三層構造の電極積層部を作製した。これを例1および例5の電極積層部とした。
(例2)
電極構成材料として、組成が一般式:(La0.6Sr0.4)CoO3-δ;で表されるLSC粉末(平均粒子径0.5μm)を用い、焼成条件は1000℃で2時間とし、その他の条件は例1と同様にして、例2の電極積層部を作製した。
(例3、例6)
陽極構成材料として、銀(Ag)粉末(平均粒子径0.5μm)を用い、その他の条件は上記の電極ペーストと同様にして、銀ペーストを得た。そしてこの例1と同じ電極ペーストを隔壁層の陽極層の側の表面に、スクリーン印刷法で塗布し、1100℃で2時間焼成することで、LSCF/ScSZからなる二層構造の電極積層部を作製した。Ag電極は、銀ペーストを隔壁層の陽極層側の表面にスクリーン印刷法で塗布し、集電メッシュを取り付けた上で、830℃で焼成することで作製した。これを例3および例6の電極積層部とした。
(例4)
電極構成材料として、組成が一般式:(La0.6Sr0.4)CoO3-δ;で表されるLSC粉末(平均粒子径0.5μm)に、銀(Ag)粉末(平均粒子径0.5μm)を5質量%の割合で混合して用い、その他の条件は例2と同様にして、例4の電極積層部を作製した。なお、電極厚みは50μm以下になるように作製した。
(例7、例8)
電極構成材料として、ニッケル(Ni)粉末(平均粒子径0.5μm)を用い、その他の条件は上記の電極ペーストと同様にして、ニッケルペーストを得た。そしてこの例1と同じ電極ペーストを隔壁層の一方の側の表面に、ニッケルペーストを隔壁層の他方の側の表面に、スクリーン印刷法で塗布し、1100℃で2時間焼成することで、LSCF/ScSZ/Niからなる三層構造の電極積層部を作製した。例7では、この電極積層部のNi層の側を陰極側として用い、例8では、Ni層の側を陽極側として用いるようにした。
(例9)
基材としてのポリエチレン系樹脂シートを用意し、例1と同じ電極ペーストをこの樹脂シートの表面(片面)に例1と同様にスクリーン印刷し、乾燥させたのち、基材を剥離して1100℃で2時間焼成することで、LSCFからなる多孔質な単層体を作製した。そしてこのLSCF単層体を、例9の電極積層部とした。
[VOC電気化学式浄化ユニットの作製]
各例の電極積層部に2枚の金属メッシュを上下方向から挟みこむように重ね、各金属メッシュに電極端子を取り付けて、直流電源ユニット20に接続した。直流電源ユニット20は、本発明の電場印加装置の一例である。そして電極端子を取り付けた状態の電極積層部を、図3に示したガス供給装置に設置することで、VOC電気化学式浄化ユニット1を構築した。ガス供給装置は、同軸で配置された2本の石英管40と、この石英管を取り囲むように配置された筒型のヒーター30と、ガス供給部50a,50cとガス排出経路50b,50dとを備えている。電極積層部10は、隔壁層12の周縁部を2本の石英管40で挟むことで固定し、陰極層14および陽極層16がそれぞれ石英管40の内部に収容されるように、気密に設置されている。なお、直流電源ユニットは電流値を0A/cm〜0.9A/cmの範囲で固定して浄化ユニットに通電した。電圧は、単層の陽極層と陰極層間の電位差が、2.5V以下の範囲とした。
ガス供給部50aは、ガス供給路とポンプPと流量計Fとを備え、電極積層部10の陰極層14の側にある石英管40内に、酸素含有ガスを送る。ガス供給部50cは、ガス供給路とポンプPと流量計Fとを備え、電極積層部10の陽極層16の側にある石英管40内に、処理対象であるVOC含有ガスを送る。ガス排出経路50bは、電極積層部10の陰極層14の表面の一部と石英管40の外部とを接続し、石英管40に供給され陰極層14を通過したガスを石英管40の外部に送る。ガス排出経路50dは、電極積層部10の陽極層16の表面の一部と石英管40の外部とを接続し、石英管40に供給され陽極層16を通過したガスを石英管40の外部に送る。なお、本実施形態では、石英管40の外部に伸びるガス排出経路50dに除湿用U字管55を設けた。そして、排出ガスの一部が、ノンシールポンプ(図示せず)により連続的に吸引され、ガスクロマトグラフを用いて成分分析した。ここで、ガスクロマトグラフのカラムには水分を入れられないため、ノンシールポンプで移送した排出ガスは冷却した除湿用U字管に通すことで除湿した。
[VOCの電気化学式浄化]
VOC電気化学式浄化ユニット1のヒーター30で電極積層部10の温度が600℃となるように加熱し、ガス供給部50aから模擬VOC含有ガスを所定の流速で供給した。模擬VOC含有ガスとしては、30ml/minの空気と3.3ml/minのトルエンを混合したものを用いた。そして、下記の表1に示すように、例1〜4、7〜9の電極積層部10を設置した場合は直流電源ユニット20を駆動して陰極層14−陽極層16間に電場を印加し、陰極層14−陽極層16間で通電させた。このとき陰極層14−陽極層16間に約0.9A/cmの電流を流した。また、例5,6の電極積層部10を設置した場合は直流電源ユニット20を駆動させず、陰極層14−陽極層16間に電場を印加しなかった。そして、このような状況で浄化ユニット1のガス排出経路50dから排出されるガスに含まれるCO量(mol%)およびCO量(mol%)を、FID検出器を備えるガスクロマトグラフィーを用いて測定した。これらの結果から、浄化ユニット1から排出されるガス中のCOとCOの濃度比(CO/CO比)を算出し、CO/CO比が0.1以下である場合は「○」を、CO/CO比が0.1超過である場合は「×」を、そもそも導通しなかった場合は本装置の効果がないと判断し、CO/CO比を評価しなかったため「−」を、表1に示した。ここで表1中に「×」が一つもないものを実施例とし、「×」が一つでもあるものを比較例とした。
Figure 2021133329
例1の電極積層部は、陰極層14および陽極層16ともに酸化物イオン・電子混合伝導性を有するLSCFにより構成されており、上記の600℃での加熱環境下で酸化物イオン導電性と電子伝導性とを有する。また、電場の印加によって、陰極層14には電子(e-)が供給される。そのため、陰極層14に供給された空気中の酸素(O)は、多孔質な陰極表面で電子(e-)を受け取って電気化学的に還元され、酸化物イオン(O2-)を生成する。このとき、隔壁層12の陰極側と陽極側との表面には酸化物イオン(O2-)の濃度差が生じる。したがって陰極層14で生成された酸化物イオン(O2-)は隔壁層12を陰極から陽極に向けて拡散し、陽極層16に到達する。すると、陽極層16に送られた酸化物イオン(O2-)は、多孔質な陽極に供給されたVOC含有ガスと陽極および隔壁層の表面で接触し、VOCを酸化分解して電子を放出する。この酸化分解は、例えば、以下の式によって表される。式中のα、β、γは任意の実数であり、例えば、(α+β)/γ=7/4を満たす。
Figure 2021133329
ここで、例1の浄化ユニットによる処理ガス中にはトルエンは検出されなかった。また、処理ガス中のCO/CO比は0.1以下であり、陽極においてVOCが十分に酸化分解され、かつ、COのCOへの転化も高効率で実現されたことが確認できた。トルエンは基本骨格に安定で付加反応を受けにくいベンゼン環を有している。例1の浄化ユニットによると、このベンゼン環を開裂させ、低毒性ないしは無毒性の化学物質へ高効率で転化できることが確認された。これは、例1の陰極および陽極材料がLSCFであって、600℃の環境において酸素・電子イオン伝導性に優れることから、陽極に多量の酸化物イオンを送ることができる。その結果、陽極において酸化物イオンによるVOCの酸化分解能力が高く発揮されたものと考えられる。
例2は、600℃での電子伝導性がLSCFに比べて高いLSCを陰極および陽極材料として用いた例である。このような例2の浄化ユニットによっても処理ガス中のCO/CO比は0.1以下となり、陽極においてVOCを十分に酸化分解できたことが確認できた。
例3は、酸化雰囲気で電子伝導性は有するが酸素イオン伝導性は示さないAgを陽極材料として用いた例である。この例3の浄化ユニットによる処理ガス中のCO/CO比も0.1以下となり、陽極においてVOCを十分に酸化分解できたことが確認できた。陽極は、電子伝導性があれば十分であって、必ずしも酸化物イオン導電性までは要求されないことが確認できた。
例4は、陰極および陽極材料として、LSCとAgの混合粉を用いた例である。このような例4の浄化ユニットによっても、処理ガス中のCO/CO比は0.1以下となり、陽極においてVOCを十分に酸化分解できたことが確認できた。例1との比較から、陰極は、全体として酸化物イオン伝導性を備えていればよく、必ずしも陰極を全て酸化物イオン伝導性材料により構成する必要はないことが確認できた。
例5,6は、それぞれ例1,3の浄化ユニットにおいて直流電源ユニット20を作動させず、陰極層と陽極層との間に電場を印加しなかった例である。処理ガス中のCO/CO比は0.1を超過しており、陰極層と陽極層との間に電場を印加しないと陽極においてVOCを十分に酸化分解できないことが確認された。
例7,8は、それぞれ陰極,陽極材料として、Niを用いた例である。Niは酸化物イオン伝導性は有さず、また、還元雰囲気では電子伝導性を示すものの、酸化雰囲気では電子伝導性を示さない材料である。
そのため、例7の浄化ユニットにおいては、陰極層が酸化物イオン伝導性も電子伝導性も示さないため、電流を流すことができず、酸化物イオンも生成しないため、本装置の効果がないと判断し、CO/CO比を評価しなかった。
また、例8の浄化ユニットにおいては、陽極層が酸化物イオン伝導性も電子伝導性も有さない。そのため、電流を流すことができず、酸化物イオンも生成しないため、本装置の効果がないと判断し、CO/CO比を評価しなかった。
なお、例9の浄化ユニットにおいて、電極積層部は陰極層(もしくは陽極層)のみからなり隔壁層がない。陰極層のガス供給部50a側は相対的に高電位で電子が供給され、陰極層のガス供給部50c側は相対的に低電位で電子を受け取ることができるため、電子伝導性があるが、隔壁層がなく、三相界面が存在しないため、酸化物イオンは生成しない、あるいは極めて少量しか生成しない。そもそもLSCFは電子伝導率に対してイオン伝導率が極めて小さく、LSCF単体に電圧をかけても、酸化物イオンはあまり動かず、大部分は電子のみが動く。その結果、十分な量の酸化物イオンや酸素原子が得られず、処理ガス中のCO/CO比は0.1を超過しており、隔壁層がない場合は、VOCを十分に酸化分解できないことが確認された。
なお、上述した実施例では、浄化対象であるVOCガスとしてトルエンを用いた例を示した。しかしながら、浄化対象であるVOCガスはトルエンに限定されない。
例えば、H. Huang et al., Journal of Molecular Catalysis A: Chemical, vol. 336, p87-93 (2011)には、プラズマ触媒によるトルエンの分解について開示されており、電子やラジカルによるトルエンの分解反応経路は、一酸化炭素やギ酸、酢酸等の中間生成物を経て、二酸化炭素に至ることが記載されている。そしてトルエンを二酸化炭素にまで分解するには、少なくともベンゼン環やメチル基等の各原子間の結合を開裂/切断する必要があることが理解できる。
ここで、ディプロマプログラム(DP)、化学資料集2016年第1回評価、2014年版(バージョン2)、P11には、例えば以下の各結合の結合エネルギーが開示されている。これらのことから、プラズマ触媒によりトルエンから二酸化炭素が生成されるには、少なくともベンゼン環の結合エンタルピーに相当する507kJ/mol以上のエネルギーが必要となることがわかる。
C−O:358kJ/mol
C−C:346kJ/mol
C−H:414kJ/mol
C=C:507kJ/mol(ベンゼンの場合)
同様のことは、酸化物イオンによってベンゼン環を開環させる場合にもあてはまると考えられる。そして、上記実施例において、処理ガス中にCOやCOが生成していることが確認されている。このことから、ここに開示されるVOC電気化学式浄化ユニットにおいては、供給されるVOCに対して507kJ/mol以上のエネルギーを与えることが可能といえる。また、各種のVOCについて考えてみると、例えば代表的な極性分子である酢酸エチル(CH3COOCH2CH3)において、メチル基のC−H結合や、カルボキシ基のC−O結合を切断するには、それぞれ414kJ/mol、358kJ/molが必要となる。しかしながら、これらはベンゼン環のC=C結合を切断するのに要するエネルギーよりも十分に小さい。このように、ここに開示されるVOC電気化学式浄化ユニットによると、トルエンに限定されること無く、広く各種のVOCの分解および浄化が可能であると考えられる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記に例示した実施形態における電極構成材料や電極積層部の形態は一例に過ぎず、上記以外の材料を使用したり、上記以外の形態の電極積層部を形成できることは言うまでもない。
1 浄化ユニット
10、10A、10B 電極積層部
12 隔壁層
14 陰極層
16 陽極層
18U、18M、18D インターコネクタ
20 電場印加部(直流電源ユニット)
30 ヒーター

Claims (6)

  1. 酸化物イオン伝導性を有する隔壁層と、
    前記隔壁層の一方の面に備えられ、少なくとも電子伝導性を有する多孔質な陰極層と、
    前記隔壁層の他方の面に備えられ、酸化雰囲気で電子伝導性を有する多孔質な陽極層と、
    からなる電極積層部と、
    前記陽極層および前記陰極層の間に電場を印加するための電場印加部と、
    を備える、VOC電気化学式浄化ユニット。
  2. 前記電極積層部を加熱するためのヒーターを備える、請求項1に記載のVOC電気化学式浄化ユニット。
  3. 前記陰極層に酸素含有ガスを供給する酸素供給部と、
    前記陽極層にVOC含有ガスを供給するVOC供給部と、
    を備える、請求項1または2に記載のVOC電気化学式浄化ユニット。
  4. 前記陰極層は、次式:
    (Ln1−x)MO3−δ
    (式中、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、AはCa,Sr,およびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはMn,Cr,Co,Cu,Fe,Ni,およびTiからなる群から選択される1種または2種以上の元素であって、xは0≦x<1を満たし、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である);
    で示される導電性ペロブスカイト型酸化物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のVOC電気化学式浄化ユニット。
  5. 酸化物イオン伝導性を有する隔壁層と、
    前記隔壁層の一方の面に備えられ、少なくとも電子伝導性を有する多孔質な陰極層と、
    前記隔壁層の他方の面に備えられ、酸化雰囲気で電子伝導性を有する多孔質な陽極層と、
    からなる電極積層部を含む、コアユニット。
  6. 酸化物イオン伝導性を有する隔壁層と、
    前記隔壁層の一方の面に備えられ、少なくとも電子伝導性を有する多孔質な陰極層と、
    前記隔壁層の他方の面に備えられ、酸化雰囲気で電子伝導性を有する多孔質な陽極層と、
    からなる電極積層部を含む、コアユニットを用意すること、
    前記コアユニットの前記陽極層の側が高電位となるように、前記陽極層および前記陰極層の間に電場を印加すること、および、
    前記陰極層に酸素含有ガスを供給し、前記陽極層に処理対象であるVOC含有ガスを供給することで、前記陰極層で生成される酸化物イオンを前記隔壁層を通じて前記陽極層に送り、前記陽極層において前記VOC含有ガスを酸化分解すること、
    を含む、VOCの電気化学式浄化方法。
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