JP2021093954A - ガラクトオリゴ糖を製造可能な酵素、およびガラクトオリゴ糖を製造する方法 - Google Patents
ガラクトオリゴ糖を製造可能な酵素、およびガラクトオリゴ糖を製造する方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
さらに、ガラクトオリゴ糖産生微生物としてバチルス属が良く知られているが、バチルス属の中には炭疽菌やセレウス菌など病原性を示す種も多く知られており、より安全なガラクトオリゴ糖産生菌が求められている。
〔1〕 (a)配列番号1に示すアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が置換、欠失、挿入されたアミノ酸配列;または
(c)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する相同性が70%以上100%未満のアミノ酸配列
において、
配列番号1に示すアミノ酸配列のN437H、T297A、R77A、Y296F、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素;
〔2〕 配列番号1に示すアミノ酸配列のN437Hまたはそれに相当する変異を有するアミノ酸配列を有する、前記〔1〕記載の酵素;
〔3〕 配列番号1に示すアミノ酸配列のT297A、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有する、前記〔2〕記載の酵素;
〔4〕 配列番号1に示すアミノ酸配列からなる酵素と比較して、改善されたガラクトオリゴ糖生産活性を有する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の酵素;
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の酵素をコードしているDNA;
〔6〕 前記〔5〕記載のDNAを含む組換えベクター;
〔7〕 前記〔5〕記載のDNAまたは前記〔6〕記載の組換えベクターを有する形質転換体;
〔8〕 前記〔7〕記載の形質転換体を培養する工程と、培養した形質転換体または培養上清からガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素を回収する工程と、を含むガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素の製造方法;
〔9〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の酵素を含み、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する、酵素含有組成物;
〔10〕 乳糖と、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の酵素、前記〔7〕記載の形質転換体または前記〔9〕記載の酵素含有組成物と、を接触させることを含むガラクトオリゴ糖の製造方法
が提供される。
本発明において、オリゴ糖とは、3糖から10糖の多糖化合物を意味する。
(Gal)n−Gal−Glc
ここで、Galはガラクトース残基、Glcはグルコース残基を表し、nは1〜8の整数、特に1〜3の整数である。糖間の各結合の結合様式は特に制限されないが、典型的にはβ−1,4−グリコシド結合である。糖間(特にGal−Gal間)の結合様式はβ−1,3−グリコシド結合であってもよい。
収率(%)=ガラクトオリゴ糖の生成量(質量)/乳糖の消費量(質量)×100
である。ガラクトオリゴ糖生成量および乳糖消費量は上記のようにHPLC解析によって求めることができる。
本発明によれば、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する新規の酵素およびその酵素をコードしているDNAが提供される。本発明の酵素は、後述するベースとなるアミノ酸配列またはそれをコードするDNAに対し、特定の変異を導入することにより設計および/または製造することができる。また、本発明の酵素は、天然に存在する微生物から単離されたものであってもよく、合成によって製造されたものであってもよい。
本発明の酵素を設計するベースとなるアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列およびそのファミリー酵素のアミノ酸配列である。配列番号1に示すアミノ酸配列からなる酵素は、パエニバチルス・パブリから由来する酵素である(特許文献7)。配列番号1に示すアミノ酸配列からなる酵素の分子量は約51kDaである。この酵素はラクターゼとして機能する酵素であり、乳糖を原料としたガラクトオリゴ糖製造に使用可能であることが分かっている。BgaD−Dに対する相同性は約8%である。なお、BgaD−Dは、バチルス・サーキュランス由来ラクターゼで、現在、商業的に最も利用されているガラクトオリゴ糖製造用ラクターゼであるBgaDを構成する分子量の異なる4種類の酵素(特許文献3)の一つであり、この中で最もガラクトオリゴ糖生産活性が高いことが知られている。後述する本発明のガラクトオリゴ糖製造方法において、ガラクトオリゴ糖製造用ラクターゼとしてBgaD−Dを用いた場合、ガラクトオリゴ糖収率は、約60〜70%であり、3糖ガラクトオリゴ糖の製造選択性は最大で約60%である。BgaD−Dを使用してガラクトオリゴ糖を製造した場合、4糖以上のガラクトオリゴ糖も多く製造される。
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が置換、欠失、挿入されたアミノ酸配列を有し、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する相同性が70%以上100%未満のアミノ酸配列を有し、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素のアミノ酸配列
のいずれかを有する、またはアミノ酸配列(a)〜(c)のいずれかからなるアミノ酸配列が挙げられる。
・Paenibacillus themophilus(例えば、寄託番号DSM 24746)
・Paenibacillus popilliae(例えば、寄託番号DSM 22700)
・Paenibacillus thiaminolyticus(例えば、寄託番号NBRC 15656)
・Paenibacillus pabuli(例えば、寄託番号NBRC 13638)
・Paenibacillus alvei(例えば、寄託番号NBRC 3343)
・Paenibacillus alginolyticus(例えば、寄託番号NBRC 15375)
・Paenibacillus chibensis(例えば、寄託番号NBRC 15958)
・Paenibacillus chitinolyticus(例えば、寄託番号NBRC 15660)
・Paenibacillus chondroitinus(例えば、寄託番号NBRC 15376)
・Paenibacillus glucanolyticus(例えば、寄託番号NBRC 15330)
・Paenibacillus lautus(例えば、寄託番号NBRC 15380)
・Paenibacillus macerans(例えば、寄託番号NBRC 15307)
・Paenibacillus peoriae(例えば、寄託番号NBRC 15541)
・Paenibacillus polymyxa(例えば、寄託番号NBRC 15309および寄託番号JCM 2507)
・Paenibacillus validus(例えば、寄託番号NBRC 15382)
・Paenibacillus apiarius(例えば、寄託番号DSM 5581)
・Paenibacillus jamilae(例えば、寄託番号DSM 13815)
・Paenibacillus kribbensis(例えば、寄託番号JCM 11465)
・Paenibacillus terrae(例えば、寄託番号JCM 11466)
から単離してもよい。これらパエニバチルス属細菌の天然株、突然変異株から単離したファミリー酵素、それらから遺伝子組み換え技術により製造した組換え体のファミリー酵素も、同様に、本発明において使用することが可能である。
本発明の酵素は、上記のとおりのベースとなる酵素のアミノ酸配列において特定の変異を含むアミノ酸配列を有する。特定の変異とは、具体的には、配列番号1のアミノ酸配列における、N437H、T297A、R77A、Y296F、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異のいずれか1以上である。
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が置換、欠失、挿入されたアミノ酸配列;または
(c)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する相同性が70%以上100%未満のアミノ酸配列
において、
配列番号1に示すアミノ酸配列のN437H、T297A、R77A、Y296F、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素である。この酵素は、上記のアミノ酸配列を有するものであれば、上記のアミノ酸配列に加えて付加的部分を含むものであってもよく、上記のアミノ酸配列のみからなっていてもよい。
本発明は、上記したような酵素をコードするDNAも提供する。上述した酵素をコードしていれば、いかなる塩基配列からなるDNAも本発明の範囲内である。特に、以下に詳しく説明する塩基配列からなるDNAが、そのようなDNAの典型例である。
配列番号2に示す塩基配列からなるDNAは配列番号1に示すアミノ酸配列からなる酵素をコードしている(3’末端の終始コドンを含む)。上述したように、配列番号1に示すアミノ酸配列からなる酵素は良好なガラクトオリゴ糖生産活性を有している。よって、これら塩基配列と相同性の高い塩基配列からなるDNAがコードする酵素は、高確率でガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素である。
ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素をコードするDNAであって、
(1)配列番号2に示す塩基配列;
(2)配列番号2に示す塩基配列に高い相同性を有する塩基配列;
(3)前記(1)〜(2)のいずれかの塩基配列に対して保存的塩基置換されている塩基配列;または
(4)前記(1)〜(2)のいずれかに前記(1)〜(2)の塩基配列、終止コドンやオペレーター配列等を付加した塩基配列
において、配列番号2に示す塩基配列によってコードされるアミノ酸配列におけるN437H、T297A、R77A、Y296F、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列からなる、またはそれを含むアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAが挙げられる。
ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素をコードするDNAであって、
(1)配列番号2に示す塩基配列;
(2)配列番号2に示す塩基配列に対する相同性が70%以上100%未満である塩基配列;
(3)配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
(4)前記(1)〜(3)のいずれかの塩基配列に対して保存的塩基置換されている塩基配列;または
(5)前記(1)〜(3)のいずれかに前記(1)〜(3)のいずれかの繰り返し構造、終止コドンやオペレーター配列等を付加した塩基配列
において、配列番号2に示す塩基配列によってコードされるアミノ酸配列におけるN437H、T297A、R77A、Y296F、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAが挙げられる。
ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素をコードするDNAであって、
(A)配列番号2に示す塩基配列;または
(B)配列番号2に示す塩基配列に対する相同性が70%以上100%未満である塩基配列;
(C)配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;または
(D)(A)〜(C)のいずれかの塩基配列に対して保存的塩基置換されている塩基配列
のいずれかを含む、またはこれらのいずれかからなるDNAにおいて、そのコードするアミノ酸配列が、配列番号2に示す塩基配列によってコードされるアミノ酸配列におけるN437H、T297A、R77A、Y296F、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列である、DNAが挙げられる。
本発明によれば、本発明のDNAを含む組換えベクターが提供される。この組換えベクターによって形質転換体の作製および酵素の大量発現が可能となる。
本発明によれば、本発明のDNAおよび/または組換えベクターを含む(または導入させた)形質転換体が提供される。
本発明の形質転換体を利用して、従来公知の方法によって本発明の酵素やそれを含む組成物を調製することができる。例えば、以下に説明する方法によって調製することができる。
本発明の酵素はガラクトオリゴ糖生産活性を有しているため、これを用いて乳糖からガラクトオリゴ糖を製造することができる。したがって、本発明によれば、ガラクトオリゴ糖の製造方法が提供される。ガラクトオリゴ糖製造の手法や条件は制限されない。1例を挙げて以下に説明するが、本発明はこれに制限されない。
第一工程として、特定の反応系(乳糖の含有率、本発明の酵素の含有量、反応pH、反応温度、反応時間等)において、本発明の酵素の含有量に対するガラクトオリゴ糖生産量を確認する。
第二工程として、先の反応系に含まれる、本発明の酵素のラクターゼ活性(LU/mLまたはOU/mLの少なくとも一方)を測定する。
第三工程として、第二工程で測定したラクターゼ活性を指標にして、反応系に含まれる本発明の酵素量を調整する(本発明の酵素の含有量を増加または低減する)。
第四工程として、反応系に含まれる本発明の酵素の含有量を調整した値になるよう含ませる。
なお、上記の第一工程と第二工程は逆に行っても良い。
本発明の形質転換体を培養する任意の工程(培養工程)、
本発明の形質転換体と原料乳糖とを接触させ、
原料乳糖からガラクトオリゴ糖を製造させ、ガラクトオリゴ糖混合物を得る工程(接触工程)、
前記ガラクトオリゴ糖混合物からガラクトオリゴ糖を分離および/または精製する任意の工程(ガラクトオリゴ糖精製工程)、
といった工程が実行される。
1−1.発現用プラスミドの構築
ベクターは、市販のベクターpET28a(Novagen, カタログ番号69864-3CN)を鋳型としたPCRにて増幅した。このとき、増幅用プライマーにはBamH IおよびHind III認識配列を付加した。
5’−TCGACAAGCTTGCGGCCGCACTC-3’(配列番号3)
5’−GCTGCGGATCCTATATCTCCTTCTTAAAG-3’(配列番号4)
(配列番号2に示すラクターゼ遺伝子増幅用)
5’−AAAAAGGATCCATGACCATTTTTCAATTTC-3’(配列番号5)
5’−TTTTTAAGCTTTTAACGGATTTCCAGCC-3’(配列番号6)
得られたPCR産物を、それぞれBamH IおよびHind IIIで制限酵素処理し、ベクターに配列番号2に示すラクターゼ遺伝子を挿入することにより発現用プラスミドを構築した。
配列番号1のアミノ酸配列を有する酵素に導入する変異の候補を選定した。全部で約50以上の変異を選定した。
5’−ACCAGCACGTAATCAAAAACAATTGG-3’(配列番号7)
5’−ATTACGTGCTGGTACCAGTAGTAGCT-3’(配列番号8)
(T297A変異導入用)
5’−TATTACGCCATGGGCATCAATCGGTAT -3’(配列番号9)
5’−GCCCATGGCGTAATAATTAATGCCCAG -3’(配列番号10)
(F414L変異導入用)
5’−ATGCGTTTGGGGCTCATCCATGTGGAT -3’(配列番号11)
5’−GAGCCCCAAACGCATGCGATACCCTTC -3’(配列番号12)
(F104L変異導入用)
5’−CATCGGCTCGTCGATAAATTGCTTGAA -3’(配列番号13)
5’−ATCGACGAGCCGATGGTAGAAGTCCAG -3’(配列番号14)
(F104E変異導入用)
5’−CATCGGGAAGTCGATAAATTGCTTGAA -3’ (配列番号15)
5’−ATCGACTTCCCGATGGTAGAAGTCCAG -3’ (配列番号16)
(F104N変異導入用)
5’−CATCGGAACGTCGATAAATTGCTTGAA -3’ (配列番号17)
5’−ATCGACGTTCCGATGGTAGAAGTCCAG -3’ (配列番号18)
(F104Q変異導入用)
5’−CATCGGCAAGTCGATAAATTGCTTGAA -3’ (配列番号19)
5’−ATCGACTTGCCGATGGTAGAAGTCCAG -3’ (配列番号20)
(F104S変異導入用)
5’−CATCGGAGTGTCGATAAATTGCTTGAA -3’ (配列番号21)
5’−ATCGACACTCCGATGGTAGAAGTCCAG -3’ (配列番号22)
(F104T変異導入用)
5’−CATCGGACAGTCGATAAATTGCTTGAA -3’ (配列番号23)
5’−ATCGACTGTCCGATGGTAGAAGTCCAG -3’ (配列番号24)
(F104V変異導入用)
5’−CATCGGGTTGTCGATAAATTGCTTGAA -3’ (配列番号25)
5’−ATCGACAACCCGATGGTAGAAGTCCAG -3’ (配列番号26)
(F104Y変異導入用)
5’−CATCGGTACGTCGATAAATTGCTTGAA -3’ (配列番号27)
5’−ATCGACGTACCGATGGTAGAAGTCCAG -3’ (配列番号28)
(R77A変異導入用)
5’−ACGTATGCATTCTCCATCGCATGGCCG -3’ (配列番号29)
5’−GGAGAATGCATACGTATTGATGCCCAG -3’ (配列番号30)
(Y296F変異導入用)
5’−AATTATTTCACCATGGGCATCAATCGG -3’ (配列番号31)
5’−CATGGTGAAATAATTAATGCCCAGCAG -3’ (配列番号32)
宿主には、UV照射によって大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼを欠損させた大腸菌(E.coli)BL21(DE3) lac−1株を使用した。上記で変異を導入した変異体および野生型酵素のプラスミドをBL21(DE3)lac−1株に形質転換し、LB Km寒天培地に塗布して30℃で一晩培養した。得られた各形質転換体を3mLのLB Km培地に植菌して37℃にて16時間培養した。培養液500μLを100mLの同培地に接種し、37℃にて振盪培養した。OD660=0.5に達した時点で終濃度0.1mMとなるようにIPTGを添加し、組換えタンパク質の生産を誘導した。誘導培養を30℃にて24時間行った。
2−1 60℃でのラクターゼ活性の比較
野生型酵素および各粗酵素液の60℃でのONPG分解活性を測定した。各粗酵素液を500〜600 OU/mLとなるように100mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)で希釈した。o−ニトロフェニル−β−ガラクトピラノシド(ONPG)溶液(ONPG濃度1.65mM)に上記のようにして調製した測定対象の粗酵素液を添加し、pH6.5、60℃にて0、10、30、60分間保持後、ONPG分解活性(o−ニトロフェニル生成量)を測定し、各酵素の残存活性を比較した。結果を図1に示す。
野生型酵素およびN437Hの粗酵素液の乳糖分解活性を測定した。これを5、10、30、50、100LU/mLとなるように100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)で希釈した。100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)に溶解した66%乳糖溶液900μLに各粗酵素液を100μL添加し、反応液1mLを調製した。これを1.5mLチューブで行った。50、55、60、65、70、75、80℃にて24時間保持後、20%スルホサリチル酸の添加により反応を停止した。反応液を水で100倍希釈し、5μLを糖分析に供した。
野生型酵素および各変異体の粗酵素液の乳糖分解活性を測定した。これを10、15、30および50LU/mLとなるように100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)で希釈した。100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)に溶解した11%、33%および66%乳糖溶液900μLに各粗酵素液を100μL添加し、反応液1mLを調製した。これを1.5mLチューブで行った。30、55および65℃にて24時間保持後、20%スルホサリチル酸の添加により反応を停止した。反応液を水で100倍希釈し、5μLを上記のとおりのHPLCによる糖分析に供した。
結果を表1に示す。
なお、T297についてアミノ酸の最適化を実施したが、試したアミノ酸のうちではアラニン置換体のみ転移能向上が認められた。T297は活性ポケットの表面に位置することから、スレオニンからアラニンへの置換によって活性ポケットが広がり、生成物が物理的な阻害を受けにくくなったことでGOS生成量が増加したと考えられた。
これらのことから、R77AおよびY296Fは、従来と同様の条件またはそれより低温および低基質濃度の条件においてGOS生産性の向上に寄与すると考えられた。なお、R77およびY296はファミリー酵素間で高度に保存されており、活性に重要なアミノ酸残基だと推測される。すなわち、今回の場合、加水分解活性が特異的に低下したことで転移活性が優勢となり、GOS生成量の増加が認められたと考えられた。また、反応温度が55℃以上の試験区では野生型酵素より低いGOS生成量および収率を示したことから、変異体では安定性が低下し、一部酵素が失活したと考えられた。
さらに、両変異点についてアミノ酸の最適化を実施したところ、F104Lでは、E、N、Q、S、T、VおよびY置換体でも同様に転移能が向上した。F414Lについては、試したアミノ酸のうちではロイシン置換体のみ転移能向上が認められた。また、F414Lでは野生型酵素と比べて安定性が低下していたが、耐熱性変異N437Hと組み合わせることで、野生型酵素と同様の55℃におけるGOS生成反応が可能であることが分かった。F414は、ファミリー酵素間で高度に保存されており、活性に重要なアミノ酸残基だと推測される。すなわち、今回の場合、R77AやY296Fと同様、加水分解活性が特異的に低下したことで転移活性が優勢となり、GOS生成量の増加が認められたと考えられた。
Claims (10)
- (a)配列番号1に示すアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が置換、欠失、挿入されたアミノ酸配列;または
(c)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する相同性が70%以上100%未満のアミノ酸配列
において、
配列番号1に示すアミノ酸配列のN437H、T297A、R77A、Y296F、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素。 - 配列番号1に示すアミノ酸配列のN437Hまたはそれに相当する変異を有するアミノ酸配列を有する、請求項1記載の酵素。
- 配列番号1に示すアミノ酸配列のT297A、F414L、F104L、F104E、F104N、F104Q、F104S、F104T、F104V、およびF104Y、ならびにそれらに相当する変異からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有する、請求項2記載の酵素。
- 配列番号1に示すアミノ酸配列からなる酵素と比較して、改善されたガラクトオリゴ糖生産活性を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の酵素。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の酵素をコードしているDNA。
- 請求項5記載のDNAを含む組換えベクター。
- 請求項5記載のDNAまたは請求項6記載の組換えベクターを有する形質転換体。
- 請求項7記載の形質転換体を培養する工程と、培養した形質転換体または培養上清からガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素を回収する工程と、を含むガラクトオリゴ糖生産活性を有する酵素の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の酵素を含み、ガラクトオリゴ糖生産活性を有する、酵素含有組成物。
- 乳糖と、請求項1〜4のいずれか1項記載の酵素、請求項7記載の形質転換体または請求項9記載の酵素含有組成物と、を接触させることを含むガラクトオリゴ糖の製造方法。
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JP2019227384A Active JP7553238B2 (ja) | 2019-12-17 | 2019-12-17 | ガラクトオリゴ糖を製造可能な酵素、およびガラクトオリゴ糖を製造する方法 |
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Citations (2)
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WO2016027747A1 (ja) * | 2014-08-19 | 2016-02-25 | 天野エンザイム株式会社 | 改変型β-ガラクトシダーゼ |
WO2019194062A1 (ja) * | 2018-04-05 | 2019-10-10 | 合同酒精株式会社 | Paenibacillus pabuli由来のガラクトオリゴ糖を製造可能な酵素、およびガラクトオリゴ糖を製造する方法 |
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2019
- 2019-12-17 JP JP2019227384A patent/JP7553238B2/ja active Active
Patent Citations (2)
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WO2019194062A1 (ja) * | 2018-04-05 | 2019-10-10 | 合同酒精株式会社 | Paenibacillus pabuli由来のガラクトオリゴ糖を製造可能な酵素、およびガラクトオリゴ糖を製造する方法 |
Non-Patent Citations (2)
Title |
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BIOCHEMISTRY, vol. 56, JPN6023039752, 2017, pages 3109 - 3118, ISSN: 0005164394 * |
FOOD CHEMISTRY, vol. 138, JPN6023039753, 2013, pages 1588 - 1595, ISSN: 0005164393 * |
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JP7553238B2 (ja) | 2024-09-18 |
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