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JP4259169B2 - 新規α−1,2−マンノシダーゼおよびその遺伝子、ならびに該酵素を用いたα−マンノシル糖化合物の製造方法 - Google Patents

新規α−1,2−マンノシダーゼおよびその遺伝子、ならびに該酵素を用いたα−マンノシル糖化合物の製造方法 Download PDF

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JP4259169B2 JP2003111246A JP2003111246A JP4259169B2 JP 4259169 B2 JP4259169 B2 JP 4259169B2 JP 2003111246 A JP2003111246 A JP 2003111246A JP 2003111246 A JP2003111246 A JP 2003111246A JP 4259169 B2 JP4259169 B2 JP 4259169B2
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amino acid
cellulosimicrobium
dna
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裕之 水渕
靖 井上
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National Agriculture and Food Research Organization
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Showa Sangyo Co Ltd
National Agriculture and Food Research Organization
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  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−1,2−マンノシダーゼ、該酵素をコードする新規なDNA、および該α−1,2−マンノシダーゼを用いるα−マンノシル糖化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食中毒などの感染患者数が増加し、大きな社会問題となっている。サルモネラ汚染や大腸菌O−157などによる食中毒は、これらの病原菌が腸管細胞へ付着することから始まる。そしてサルモネラ菌や大部分の大腸菌はマンノースを含む糖鎖を認識して付着することが知られている(非特許文献1)。ハイマンノース型糖鎖に見られるように、糖鎖構造中には、α−マンノシド結合を有するマンノオリゴ糖構造が多く存在している。この糖鎖と類似の構造を示すマンノオリゴ糖は、病原菌に付着することによって、病原菌の腸管への接着を阻害することが知られているため(非特許文献2)、α−マンノシド結合を有するα−マンノオリゴ糖には感染症を予防する効果が期待できる。そこで、α−マンノオリゴ糖を、食品や飼料として大量に生産できる技術の確立が望まれていた。
【0003】
マンノオリゴ糖などのマンノシル糖化合物は、天然物からの抽出によって得られる。例えば、天然に存在するα−マンノシド結合からなるマンナンとして、酵母の細胞壁に存在する酵母マンナンが挙げられる。酵母マンナンを酸加水分解あるいは酵素処理することにより、α−マンノオリゴ糖を製造する方法が考えられる。しかし、この方法では均一な組成のオリゴ糖を製造することができないことから、作用のばらつきが予想され、特定の効果を安定して得ることは困難と考えられる。
【0004】
マンノオリゴ糖の化学合成方法も知られているが、工程が複雑であり、収率が極めて低いという問題がある。
【0005】
一方、酵素を利用する合成法によれば、マンノースを基質とした縮合反応により、比較的簡略な工程で効率的にマンノオリゴ糖を製造できると考えられる。これまでに各種起源のα−マンノシダーゼが報告されており、縮合反応によるマンノースからマンノオリゴ糖の合成が試みられている。植物由来のα−マンノシダーゼとしては、例えば、タチナタマメあるいはアーモンドなどに由来するα−マンノシダーゼが挙げられる(特許文献1)。微生物由来のものとして、アスペルギルス属に属する糸状菌由来のもの(特許文献2)、バチルス属に属する細菌由来のもの(特許文献3)、担子菌由来のもの(非特許文献3)などが挙げられる。しかし、これらのマンノシダーゼは活性が低いこと、培養および精製が煩雑であること、マンノオリゴ糖の収率が低いことなどの問題があり、実用化には至っていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−49492号公報
【特許文献2】
特開昭57−54588号公報
【特許文献3】
特開平5−64586号公報
【非特許文献1】
N.Sharonら、FEBS letter,217巻,145-157頁,1987年
【非特許文献2】
S.U.Sajjanら、Infect Immun,58巻,860頁,1990年
【非特許文献3】
M.Marasら、Journal of Biotechnology,77巻,255-263頁,2000年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来のα−1,2−マンノシダーゼは、いずれもα−1,2−マンノシダーゼ活性が低く、また、培養法および精製法が煩雑なものが多く、工業的に安価に生産することは困難であるという問題がある。さらに、上記のバチルス属に属する細菌由来の酵素は、縮合によるオリゴ糖生成率が低いという問題点がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、α−1,2−マンノシダーゼを菌体外に生産する新規菌株、およびこの菌株を用いてα−1,2−マンノシダーゼを工業的に有利に製造する方法を提供することにある。さらに、本発明は、該α−1,2−マンノシダーゼを発現し得る微生物の作成のためのDNAを提供することを目的とする。また、本発明は、該α−1,2−マンノシダーゼを用いる、生産効率のよいα−マンノシル糖化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マンノースからα−マンノオリゴ糖を生成し得るα−マンノシダーゼを探索した結果、セルロシミクロビウム・セルランス(Cellulosimibrobium cellulans)H−16株がα−1,2−マンノシダーゼを効率的に生産することを発見した。本菌は産業総合研究所生命工学工業技術研究所に、FERM P−19290として寄託されている。本発明者らは、この菌株のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子を単離することに成功し、さらに遺伝子工学的手法により組換え微生物を作成することによってα−1,2−マンノシダーゼを効率的に製造する方法を確立して、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、以下の(1)〜(7)の特性を有する新規α−1,2−マンノシダーゼを提供する:
(1)作用
(a)α−1,2−マンノシド結合を含むα−マンナンまたはオリゴ糖の非還元末端位のα−1,2−マンノシド結合を特異的に分解する;および
(b)マンノースまたは非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖類を脱水縮合または転移させてα−マンノシル糖化合物を生成する;
(2)基質特異性
α−マンナン、α−1,2−マンノビオース、非還元末端にα−1,2−マンノシド結合を有するオリゴ糖、およびp−ニトロフェニル−α−D−マンノシドには作用するが、α−1,3−マンノビオースおよびα−1,6−マンノビオースには実質的に作用しない;
(3)最適温度:35℃〜45℃;
(4)最適pH:5〜7;
(5)安定温度:40℃;
(6)安定pH:5〜12;および
(7)分子量:約400,000(ゲル濾過HPLC)。
【0011】
好適な実施態様では、上記α−1,2−マンノシダーゼはセルロシミクロビウム属由来である。
【0012】
より好適な実施態様では、上記α−1,2−マンノシダーゼはセルロシミクロビウム・セルランス由来である。
【0013】
さらに好適な実施態様では、上記α−1,2−マンノシダーゼはセルロシミクロビウム・セルランス H−16株(FERM P−19290)由来である。
【0014】
本発明はまた、配列表の配列番号2の2位から1757位までのアミノ酸配列、または該アミノ酸配列のうち1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を含む、α−1,2−マンノシダーゼを提供する。
【0015】
好適な実施態様では、上記α−1,2−マンノシダーゼは、配列表の配列番号2の−49位から1757位までのアミノ酸配列、または該アミノ酸配列のうち1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を含む。
【0016】
本発明はさらに、上記のいずれかのα−1,2−マンノシダーゼのアミノ酸配列をコードするDNA、および自律複製可能なベクターを含む、複製可能な組換えDNAを提供する。
【0017】
本発明はまた、α−マンノシル糖化合物の製造方法を提供し、この方法は、
マンノースまたは非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖質に上記のいずれかのα−1,2−マンノシダーゼを作用させる工程、および得られたα−マンノシル糖化合物を回収する工程を含む。
【0018】
好適な実施態様では、上記α−マンノシル糖化合物はマンノオリゴ糖である。
【0019】
本発明はさらに、セルロシミクロビウム属由来の細菌を培養する工程、および該培養物からα−1,2−マンノシダーゼを採取する工程を含む、α−1,2−マンノシダーゼの製造方法を提供する。
【0020】
好適な実施態様では、上記セルロシミクロビウム属由来の細菌はセルロシミクロビウム・セルランスである。
【0021】
本発明はまた、α−1,2−マンノシダーゼ生産能を有するセルロシミクロビウム・セルランス H−16株(FERM P−19290)を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
(α−1,2−マンノシダーゼを産生する菌株)
本発明のセルロシミクロビウム・セルランス H−16株は、本発明者らによって土壌中より発見された菌種であり、産業総合研究所生命工学工業技術研究所に、平成15年4月4日にFERM P−19290として寄託されている。
【0024】
上記セルロシミクロビウム・セルランス H−16株は、以下の菌学的諸性質を有する:
細胞の形および大きさ:桿菌
培養24時間:0.5〜0.6×1.5〜4.0μm
培養72時間:0.7×0.7〜0.8μm
グラム染色性:+
胞子形成:−
運動性:−
コロニー形態:円形、全縁滑らか、低凸状、光沢あり、淡黄色〜黄色(培地:Nutrient Agar;24時間培養)
培養温度:37℃:+、45℃:−
酸/ガス産生:−/−
O/Fテスト:−/−
生化学的性質:以下の表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004259169
【0026】
(セルロシミクロビウム属由来のα−1,2−マンノシダーゼ)
本発明のα−1,2−マンノシダーゼは、セルロシミクロビウム属に属する微生物から生産されるものであればいずれでもよい。このような微生物としては、セルロシミクロビウム・セルランスが知られている。本発明においては、特に、上記のセルロシミクロビウム・セルランス H−16株から産生されるものが好ましい。また、後述のように、これらの組換え酵素も利用できる。産生されたα−1,2−マンノシダーゼは、菌体内に蓄積されてもよく、あるいは菌体内または菌体外に分泌されてもよい。
【0027】
(セルロシミクロビウム属由来のα−1,2−マンノシダーゼの製造)
本発明のα−1,2−マンノシダーゼは、以下のような、通常用いられる培養手段により製造され得る。
【0028】
上記のセルロシミクロビウム属に属する微生物を、適切な炭素源、微生物の増殖に必要な窒素化合物、およびミネラルを含む培地中で、20〜35℃、好ましくは30℃前後で好気条件下において、1〜5日、好ましくは1〜3日培養する。主な炭素源としては、マンナンが挙げられる。微生物の増殖に必要な窒素化合物としては、酵母エキス、魚肉エキス、ペプトン、アミノ酸などの有機窒素源、ならびに硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源が挙げられる。
【0029】
産生したα−1,2−マンノシダーゼが菌体内に蓄積または分泌される場合、培養液からを回収し、超音波もしくは自己消化法などにより菌体を破砕して該酵素を抽出する。その後、再度濾過または遠心分離により菌体を除去し、濾液または上清を得る。菌体外に分泌される場合は、培養液から濾過または遠心分離により菌体を除去し、濾液または上清を得る。こうして得られた濾液または上清から、例えば、硫安による塩析、エタノール、アセトンなどによる溶媒沈澱法、限外濾過法、ゲル濾過法、イオン交換樹脂などの当業者が通常用いる酵素精製方法によってα−1,2−マンノシダーゼが精製され得る。
【0030】
例えば、セルロシミクロビウム・セルランス H−16株を、主要な炭素源として酵母マンナンを含み、そして酵母エキスを含む培地中、好気的な条件下で培養し、得られた培養液から菌体を分離除去する。次いで、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、DEAE−トヨパール650S(商品名:東ソー株式会社製))およびゲル濾過クロマトグラフィー(例えば、トヨパールHW−55F(商品名:東ソー株式会社製))によって精製し、電気泳動的にほば均一な精製酵素標品を得ることができる。
【0031】
(α−1,2−マンノシダーゼの活性測定法)
α−1,2−マンノシダーゼ活性は、以下の測定法1または測定法2に従って測定し得る。
【0032】
[測定法1]
酵母マンナンを基質として、酵素反応により遊離するマンノースを定量することによって測定する。すなわち、2w/v%酵母マンナン水溶液0.1ml、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.1mlに酵素液0.1ml加え、蒸留水で全量を1.0mlとした後、40℃にて10分から1時間反応させた後、反応液を100℃で10分間加熱し、反応を停止させる。反応終了後、マンノースを標準として、還元糖をネルソン・ソモジ法によって定量する。酵素活性の単位は、上記反応において1秒間に1モルのマンノースを遊離する酵素量を1カタール(以下、kat)とする。あるいは、上記反応において1分間に1μmolのマンノースを遊離する酵素量を1単位とする。
【0033】
[測定法2]
p−ニトロフェニル−α−D−マンノピラノシドを基質として、酵素反応により遊離するp−ニトロフェノールを定量することによって測定する。すなわち、10mMのp−ニトロフェニル−α−D−マンノピラノシド水溶液0.1mlに酵素液0.1ml、0.2mMのリン酸緩衝液(pH7.0)0.1mlを加え、蒸留水で全量を1.0mlとした後、40℃で10分から1時間反応を行い、0.5Mの炭酸ナトリウム溶液を0.5ml加えて反応を停止させる。酵素活性単位は、上記反応において1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを遊離する酵素量を1単位とする。
【0034】
(セルロシミクロビウム属由来のα−1,2−マンノシダーゼの理化学的性質)
本発明のセルロシミクロビウム・セルランス H−16株由来のα−1,2−マンノシダーゼの理化学的性質は、以下のとおりである:
(1)作用
(a)α−1,2−マンノシド結合を含むα−マンナンまたはオリゴ糖の非還元末端位のα−1,2−マンノシド結合を特異的に分解する;および
(b)マンノースまたは非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖類を脱水縮合または転移させてα−マンノシル糖化合物を生成する;
(2)基質特異性
α−マンナン、α−1,2−マンノビオース、非還元末端にα−1,2−マンノシド結合を有するオリゴ糖、およびp−ニトロフェニル−α−D−マンノシドには作用するが、α−1,2−マンノビオースおよびα−1,6−マンノビオースには実質的に作用しない(実施例2参照);
(3)最適温度:35℃〜45℃
本酵素について、20〜60℃の温度で、終濃度60mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中、30分間反応させて相対活性を調べたところ、最適温度は、図1に示すように35℃〜45℃であった;
(4)最適pH:5〜7
本酵素について、終濃度20mMのブリトン・ロビンソン(Britton-Robinson)の広域緩衝液を用いて40℃、30分間の酵素反応によって相対活性を調べたところ、最適pHは、図2に示すように5〜7であった;
(5)安定温度:40℃以下
本酵素について、60mMのリン酸緩衝液(pH7)中、0〜60℃の範囲で10分間処理した後、40℃、30分間の酵素反応によって相対活性を調べたところ、安定温度は、図1に示すように40℃以下であった。
(6)安定pH:5〜12
本酵素について、終濃度20mMのブリトン・ロビンソン(Britton-Robinson)の広域緩衝液を用いて、4℃、24時間の処理を行った後、60mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中で、40℃、30分間の酵素反応によって相対活性を調べたところ、安定pHは、図2に示すように5〜12であった。
(7)分子量:約400,000(ゲル濾過HPLC)
【0035】
(α−1,2−マンノシダーゼのアミノ酸配列)
本発明のα−1,2−マンノシダーゼは、配列表の配列番号2の2位から1757位までのアミノ酸配列からなるポリペプチド、または該アミノ酸配列のうち1もしくは複数のアミノ酸配列が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含む。例えば、配列表の配列番号2の−49位から1757位までのアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。本発明のα−1,2−マンノシダーゼには、上記配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約65%の相同性、好ましくは70%以上、より好ましくは約80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するα−1,2−マンノシダーゼも含まれる。
【0036】
(α−1,2−マンノシダーゼ遺伝子の取得)
本発明のα−1,2−マンノシダーゼをコードする遺伝子は、例えば、セルロシミクロビウム・セルランスを遺伝子供与体として、通常行われている以下の2つの方法により得ることができる。
【0037】
第1の方法によれば、ある生物種で既にマンノシダーゼ遺伝子がクローニングされている場合、その遺伝子配列をプローブとして利用することにより、目的の生物種から、類似の機能を有し、かつ配列的にも相同性のある遺伝子を単離することができる。
【0038】
この方法によれば、例えば、以下のようにして遺伝子を単離し得る:まず、公知であるバチルス・エスピー由来のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子配列をジゴキシゲニンなどで標識することによりプローブを作成する。次いで、セルロシミクロビウム・セルランスの染色体DNAを調製し、BamHI、BglII、EcoRI、HindIII、KpnI、PstIなどの制限酵素で切断後、アガロースゲル電気泳動に供し、ナイロンメンブレンにブロッティングする。得られたメンブレンおよび上記のプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノスティック社製)などを用いることにより陽性シグナルを検出する。セルロシミクロビウム・セルランスがバチルス・エスピーのα−1,2−マンノシダーゼと相同性のある配列を有する場合は、シグナルが検出される。検出された陽性シグナルから、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)などを用いることにより、目的のDNA断片を分画し、精製することができる。得られたDNA断片は、DNA Ligation Kit(宝酒造社製)などを用いることにより、適当なベクターに連結され、組換え体DNAが作成される。ベクターは、宿主中で複製可能であればいかなるものでもよく、例えば、プラスミドベクターとしては、pUC18(宝酒造社製)、pBluescriptII SK+(STRATAGENE社製)、pBR322(宝酒造社製)などが挙げられる。得られた組換え体DNAは、大腸菌などの宿主に導入され、形質転換体を得ることができる。大腸菌としてはDH5αやJM109などが挙げられる。このようにして、得られた形質転換体から、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)などを用いることにより上記のDNA断片が挿入された組換え体DNAを調製することができる。挿入されたDNA断片の配列は、BigDye Terminator Cycle Sequencung FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)および371 DNA Sequencing Systems(Applied Biosystems社製)などを用いることにより決定できる。
【0039】
第2の方法によれば、菌株を適切な培地で培養後、その菌株から酵素を精製し、一部のアミノ酸配列を決定し、その配列をもとに合成DNAを作成し、PCRを行うことにより、遺伝子を単離できる。
【0040】
この方法によれば、例えば、以下のようにして遺伝子を単離し得る:まず、セルロシミクロビウム・セルランスを、酵母マンナンを主要な炭素源とし、酵母エキスを添加した培地中で好気的条件下培養する。得られた菌体、菌体処理物、濾液または上清から、例えば、硫安分画法、アセトンによる溶媒沈殿法、限外濾過法、ゲル濾過法、イオン交換樹脂などの一般的に用いられる酵素精製法を用いてα−1,2−マンノシダーゼを精製し、電気泳動的に単一な酵素を得ることができる。精製した酵素は、当業者が通常用いる方法に従い一部アミノ酸配列を決定することができる。次いで、決定されたアミノ酸配列をもとに合成DNAを作成し、PCRを行って遺伝子を単離することができる。
【0041】
(α−1,2−マンノシダーゼ発現ベクターの構築)
上記のいずれかの方法によって得られた遺伝子は、発現ベクターに導入され、α−1,2−マンノシダーゼ発現ベクターが作成される。通常、プロモーターの下流の適切な部位にクローニング部位を有するプラスミドが使用され、このプロモーターによって、本発明のα−1,2−マンノシダーゼが発現される。
【0042】
発現ベクターの作成に用いられるベクターとしては、自律複製可能なベクターが好ましく、導入する宿主を考慮して適切な発現ベクターを選択すればよい。例えば、大腸菌を宿主とする場合は、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、pKK223-3、pMEXなどが好適であり、枯草菌を宿主とする場合は、pHY300PLK、pUB110などが好適である。その他のベクターとして、pET、pLex、pJL3、pSW1、pSE280、pSE420などのプラスミドベクター、λgt11、λZAPなどのファージベクターが挙げられる。
【0043】
ベクターは、適切な制限酵素切断部位、例えば、BamHI、HindIII、EcoRI切断部位などをクローニングサイトとして有していることが好ましく、マルチクローニングサイトであることがさらに好ましい。このクローニングサイトに適合する制限酵素で切断したDNA断片を導入することにより、容易に発現ベクターが構築される。
【0044】
発現ベクターは、α−1,2−マンノシダーゼを分泌し得るように設計してもよい。本発明のα−1,2−マンノシダーゼのリーダーペプチドをコードする配列と本発明のα−1,2−マンノシダーゼをコードする配列とを結合することにより、あるいは宿主のリーダーペプチドをコードする配列と本発明のα−1,2−マンノシダーゼをコードする配列とをイン−フレームで結合させることにより、本発明のα−1,2−マンノシダーゼを分泌させることができる。リーダーペプチド配列と本発明のα−1,2−マンノシダーゼとの結合は、例えば、部位特異的突然変異などの当業者が通常用いる方法で行われ得る。
【0045】
(組換え細胞によるα−1,2−マンノシダーゼの発現)
得られた発現ベクターは、当業者が通常用いる方法で宿主となる細胞に導入される。宿主としては、大腸菌、枯草菌、放線菌などの原核細胞、酵母、糸状菌などの真核細胞、動物細胞、植物細胞などが挙げられる。導入方法は、当業者が通常用いる方法、例えば、形質転換、形質導入、エレクトロポレーション、細胞融合などが用いられる。
【0046】
得られた組換え細胞は、次いで、適切な培地中で培養され、本発明のα−1,2−マンノシダーゼを産生し、マンノシダーゼ活性を発現する。リーダーペプチド配列を用いた場合、α−1,2−マンノシダーゼは細胞外(ペリプラズムを含む)に分泌される。
【0047】
α−1,2−マンノシダーゼは、細胞内あるいはペリプラズムに存在する場合は、細胞を細胞壁溶解酵素処理、超音波処理、加圧処理などにより溶菌して回収し、一方、細胞外に分泌される場合は、培養液より回収される。回収されたα−1,2−マンノシダーゼはそのまま、あるいは当業者が通常用いる方法により精製して、マンノオリゴ糖の製造に用いられ得る。
【0048】
α−1,2−マンノシダーゼが細胞内あるいはペリプラズムに存在する場合は、細胞を固定化して、固定化酵素として用いてもよい。
【0049】
(α−マンノシル糖化合物の製造)
本発明のα−1,2−マンノシダーゼは、(a)α−1,2−マンノシド結合を含むα−マンナンまたはオリゴ糖の非還元末端位のα−1,2−マンノシド結合を特異的に分解する特性、および(b)マンノースまたは非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖類を脱水縮合または転移させてα−マンノシル糖化合物を生成する特性を有する。また、本発明の酵素は、従来のバチルス属由来のもの(特許文献3参照)とは違い、p−ニトロフェニル−α−D−マンノシドに作用する基質特異性を有する。したがって、上記のような本発明の酵素の特性を利用すれば、マンノオリゴ糖などのα−マンノシル糖化合物を製造することができる。
【0050】
(A)α−1,2−マンノシダーゼの使用形態
α−1,2−マンノシダーゼとしては、(i)細胞を通常の方法で固定化したもの、(ii)細胞を機械的、酵素的、もしくは界面活性剤や有機溶剤などで処理したもの、またはそれらを固定化したもの、(iii)細胞を破砕して破砕残渣を除去したもの、またはそれを固定化したもの、(iv)酵素精製物、またはそれを固定化したもの、(v)培養液または細胞を除去した培養上清、またはそれを濃縮、乾燥、および/あるいは固定化したものなどが挙げられる。細胞としては、上記のα−1,2−マンノシダーゼを産生し得る細胞(組換え細胞を含む)を培養して得られた細胞が用いられる。固定化は、ポリアクリルアミド、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、イオン交換担体、キトサンビーズなど、当業者が一般に用いる通常の固定化方法で行われる。
【0051】
(B)縮合反応によるマンノオリゴ糖の製造
本発明のα−1,2−マンノシダーゼの縮合反応性を利用することにより、マンノースを脱水縮合させてマンノオリゴ糖を製造することができる。例えば、マンノオリゴ糖としては、Man1−2Man、Man1−3Man、Man1−6Manなどを製造することができる。あるいは、フラクトースとマンノースイソメラーゼとの反応による反応生成物を本発明のα−1,2−マンノシダーゼと反応させてもよい。
【0052】
マンノースからマンノオリゴ糖を製造する場合は、マンノースと本発明のα−1,2−マンノシダーゼとを適切なpH条件および適切な温度条件下で反応させればよい。マンノースは、高濃度に水溶液または緩衝液に溶解させたものであればよい。アミノ酸の置換、欠失、もしくは付加を有する改変されたポリペプチドからなるα−1,2−マンノシダーゼを用いる場合は、最適温度、最適pHなどが改変前のα−1,2−マンノシダーゼと異なる可能性もあるので、使用前に確認しておくことが好ましい。一般的には、pHが5.5〜10、温度が室温〜80℃、好ましくは65℃以下、より好ましくは40℃で反応を行う。
【0053】
フラクトースからマンノオリゴ糖を製造する場合、まず、フラクトースとマンノースイソメラーゼとを反応させて、反応生成物を単離し、この反応生成物とα−1,2−マンノシダーゼとを反応させてもよい。あるいは、フラクトース、マンノースイソメラーゼ、およびα−1,2−マンノシダーゼを同時に混合して反応させてもよい。この場合、マンノースイソメラーゼは、α−1,2−マンノシダーゼの最適pHおよび最適温度が近いものを選択することが必要となる。これらの方法は、酵素(必要に応じて微生物自体)を固定化して連続的に行うこともできる。
【0054】
反応終了後、例えば、酵素を除去または加熱により失活させ、濾過、遠心分離などにより不純物を取り除いた後、活性炭、イオン交換クロマトグラフィー、膜濾過、濃縮などの、分離、精製プロセスを経て、マンノオリゴ糖が精製される。
【0055】
(C)転移反応によるα−マンノシル糖化合物の製造
本発明のα−1,2−マンノシダーゼの転移反応性を利用することにより、マンノース供与体とマンノース受容体からα−マンノシル糖化合物を製造することができる。
【0056】
マンノース供与体としては、例えばp−ニトロフェニル−α−マンノシド、メチル−α−マンノシド、フェニル−α−マンノシドなどが挙げられる。マンノース受容体としては、マンノース、マンノビオース、ラミナリビオースなどが挙げられる。
【0057】
上記の反応は、通常行われる反応条件下で、受容体と供与体とを含有する基質溶液に、本発明の酵素を作用させることにより行われ得る。基質溶液としては、受容体と供与体とを含有する水溶液またはジメチルスルホキシドなどの有機溶剤液が用いられる。その場合、受容体と供与体のモル比は1:50〜50:1が好ましく、基質濃度は5〜50重量%が好ましい。反応時のpHおよび温度は、通常、pH4〜8、温度20〜70℃が適切である。
【0058】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。特別に標記がない場合、百分率はw/v%である。
【0059】
(実施例1)セルロシミクロビウム・セルランス H−16株由来のα−1,2−マンノシダーゼの精製
酵母マンナン0.2%、硫酸第2鉄(7水和)0.003%、硫酸マグネシウム(7水和)0.04%、塩化カルシウム(2水和)0.006%、リン酸水素2カリウム0.69%、リン酸2水素カリウム0.23%、硫酸アンモニウム0.05%、および酵母エキス0.15%を含む液体培地800ml(pH7.0)を、3Lの坂口フラスコに入れ、1昼夜培養したセルロシミクロビウム・セルランス H−16株を加え、30℃で2晩培養した。次いで、この培養液を9,000×gで30分間遠心して菌体を除き、上清を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して1晩透析を行い、粗酵素液を得た。粗酵素液の活性測定を行ったところ、19mkat/Lであった。
【0060】
透析後の粗酵素液を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化させたDEAE−トヨパール650Sカラムに吸着させ、0〜0.8M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)の濃度勾配法により酵素を溶出させた。
【0061】
溶出させた活性画分を集めて、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して1晩透析した後、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化させたDEAE−トヨパール650Sカラムに吸着させた。0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、0.1〜0.6M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)の濃度勾配法により酵素を溶出させた。
【0062】
溶出させた活性画分を集めて、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して1晩透析した後、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化させたDEAE−トヨパール650Sカラムに吸着させた。0.15M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、0.15〜0.45M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)の濃度勾配法により酵素を溶出させた。
【0063】
溶出させた活性画分を集めて、限外濾過(分画分子量10,000)で濃縮した後、15mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化させたトヨパールHW−55Fカラムに供し、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)により酵素を溶出させて、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により、均一なバンドからなる精製酵素を得た。活性収率は15%であった。
【0064】
(実施例2)精製酵素の基質特異性
各マンノビオース(α−1,2−マンノビオース、α−1,3−マンノビオース、α−1,6−マンノビオース)0.05%含む30mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に、実施例1で得たα−1,2−マンノシダーゼを加え、40℃にて90分間インキュベートした後、以下の条件でマンノビオースの分解を分析した:
HPLC:ウォーターズ社製
検出器:示差屈折計(日立D−2500 クロマトインテグレーター)
カラム:TSK−GEL G2000PW(東ソー株式会社製)
流速:0.5ml/分
溶出:水
【0065】
分析結果を、図3〜5に示す。図3はα−1,2−マンノビオース、図4はα−1,3−マンノビオース、および図5はα−1,6−マンノビオースの結果である。図3からわかるように、α−1,2−マンノビオースが分解され、マンノースの位置にピークがシフトしていた。これに対して、図4(α−1,3−マンノビオース)および図5(α−1,6−マンノビオース)では、ピークに変化はなかった。これらの結果から、本発明のα−1,2−マンノシダーゼにより、α−1,2−マンノビオースのみが分解されたことがわかる。
【0066】
(実施例3)縮合反応の確認
60%(w/w)のマンノース溶液に、マンノース1g当たり20nkatとなるように実施例1で得たα−1,2−マンノシダーゼを加え、40℃にて72時間反応させた。反応後の液を、実施例2と同様にHPLCで分析した。その結果、全糖中に占めるマンノオリゴ糖の割合は6.5%であった。この結果から、本発明のα−1,2−マンノシダーゼには、マンノースを脱水縮合させて、マンノオリゴ糖を生成する活性があることがわかる。
【0067】
(比較例1)縮合反応
本発明のα−1,2−マンノシダーゼに代えて、Bacillus sp. M-90株由来のα−1.2−マンノシダーゼ(特許文献3参照)を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、マンノースの縮合反応を行った。その結果、全糖中に占めるマンノオリゴ糖の割合は2.2%であった。上記実施例3と比較例1の分析結果の比較から、マンノースを脱水縮合する活性は、本発明の酵素の方が公知の酵素より高いことがわかる。
【0068】
(実施例4)転移反応の確認
マンノース供与体としてp−ニトロフェニル−α−D−マンノシド30%、およびマンノース受容体としてラミナリビオース30%を含有する基質溶液(pH6)に、p−ニトロフェニル−α−D−マンノシド1g当たり20nkatとなるように実施例1で得たα−1,2−マンノシダーゼを加え、40℃にて72時間反応させた。反応後の液をHPLCで分析した。その結果、全糖中に占める転移生成物の割合は0.9%であった。この結果から、本発明のα−1,2−マンノシダーゼには、非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖類を転移させて、α−マンノシル糖化合物を生成する活性があることがわかる。
【0069】
(実施例5)セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子の内部配列の取得
セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子を取得するために、プローブとしてバチルス・エスピー(Bacillus sp.)由来のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子配列を用いて、サザンハイブリダイゼーションおよびコロニーハイブリダイゼーションを行った。
【0070】
プローブの調製は以下のようにして行った。LB培地(1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)にバチルス・エスピー(Bacillus sp.)M-90株を一白金耳植菌し、37℃で18時間振とう培養した後、遠心分離により集菌した。得られた菌体からDNeasy Tissue Kit(QIAGEN社製)を用いて染色体DNAを調製し、それを鋳型として、配列表の配列番号3および4に記載の合成DNAをプライマーとして用いてPCRを行い、バチルス・エスピーのα−1,2−マンノシダーゼの全遺伝子配列を増幅した。増幅した約6.0kbからなるDNA断片を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)およびQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて分画・精製し、DIG-High Prime(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)でDIG標識を行うことによりプローブを調製した。
【0071】
次いで、LB培地(1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)にセルロシミクロビウム・セルランス H−16株を一白金耳植菌し、30℃で18時間振とう培養した後、遠心分離により集菌した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN社製)を用いて染色体DNAを調製した。得られた染色体DNAのうち約5μgを制限酵素PstIで完全消化後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、Hybond-N+メンブレン(アマシャム社製)にブロッティングし、120℃にて30分間ベークすることによりDNAを固定した。DNAを固定化したメンブレン、上記で調製したプローブ、およびハイブリダイゼーション液としてDIG Easy Hyb(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いてハイブリダイゼーションを行った。DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)によりシグナルの検出を行ったところ、約1.6kb付近に陽性シグナルを検出した。
【0072】
次いで、セルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNA約5μgをPstIで完全消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、シグナルが検出された約1.6kb付近からQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)によりDNA断片を分画・精製した。次いで、プラスミドpBluescriptIISK(+)(STRATAGENE社製)をBamHIおよびBglIIで切断し、これに上記の精製したPstI断片をDNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて連結し、組換えプラスミドを得た。これを、コンピテントセルE.coli DH5α(宝酒造社製)に導入し、氷冷下で30分間静置後、42℃に加温し、SOC培地(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl、20mM グルコース、pH7.5)を加えて37℃で1時間インキュベートし、組換えプラスミドを大腸菌に導入した。得られた大腸菌形質転換体をアンピシリン100μg/ml含有するLB寒天プレートに塗布し、37℃で18時間培養した。生育したコロニーをナイロンメンブレン(ロシュ・ダイアグノスティック社製)にブロッティングし、80℃にて30分間ベーキングを行うことによりDNAを固定化した。次いで、DNAを固定化したメンブレン、プローブとしてDIG標識したバチルス・エスピーのα−1,2−マンノシダーゼの全遺伝子配列を含むDNA断片、およびハイブリダイゼーション液としてDIG Easy Hyb(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いてハイブリダイゼーションを行い、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)によりシグナルの検出を行った。その結果、約200個のコロニーのうち、1つのコロニーに陽性シグナルが認められた。
【0073】
(実施例6)セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子の内部配列の決定
実施例5で得られた陽性コロニーに含まれる組換えプラスミドを、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。次いで、このプラスミドの挿入断片の塩基配列を、BigDye Terminator Cycle Sequencung FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)および371 DNA Sequencing Systems(Applied Biosystems社製)を用いて決定した。決定した塩基配列を解析したところ、挿入断片には、バチルス・エスピー由来のα−1,2−マンノシダーゼと相同性が高いアミノ酸配列が存在することがわかった(図6を参照のこと)。
【0074】
(実施例7)セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼのN末端配列の決定
セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼのN末端アミノ酸配列の解析を目的とし、培養液からα−1,2−マンノシダーゼの精製を行った。酵母細胞壁由来マンナンを炭素源とした培地を用い、30℃で24時間通気攪拌培養により得た培養液から、遠心分離により上清を回収し、粗酵素液とした。以下の操作は全て10℃以下の低温室にて行った。精製は、測定法2に従って測定したマンノシダーゼ活性を指標として行った。
【0075】
10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)により平衡化した陰イオン交換樹脂DEAE-Toyopearl 650Mを充填したカラムに粗酵素液を通液し、同緩衝液で洗浄した後、NaCl濃度勾配(0〜0.5M)により溶出した。活性画分を集め、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して1晩透析を行い、再度DEAE-Toyopearl 650Mカラムに通液した。0.15MのNaClを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、NaCl濃度勾配(0.15〜0.45M)により溶出した。活性画分を集め、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して一晩透析を行った後、0.2MのNaClを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化したゲルろ過カラムSuperdex200pgに供し、同緩衝液により溶出した。活性画分を集めて精製酵素とした。
【0076】
精製酵素を、12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEにより分離し、クマシーブルーにより染色したところ、分子量20万付近にバンドが検出された。これをPVDF膜に転写し、プロテインシークエンサーを用いてN末端アミノ酸配列の解析を行った。その結果、配列番号13に記載のアミノ酸配列であることがわかった。
【0077】
(実施例8)セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子の5'末端配列の取得
実施例7で得られたN末端アミノ酸配列をもとに設計した配列番号5に記載の合成DNA、および実施例6で得られたバチルス・エスピー由来のα−1,2−マンノシダーゼと相同性が高い部分のアミノ酸配列から設計した配列番号6に記載の合成DNAを用いて、実施例1で調製したセルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。増幅断片をTOPO TA Cloning Kit(インビトロジェン社製)によりプラスミドベクターpCR2.1-TOPO(インビトロジェン社製)にクローニングし、大腸菌TOP10(インビトロジェン社製)に導入した。得られた大腸菌形質転換体から、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを精製し、挿入断片の塩基配列を決定した。決定した塩基配列解析したところ、挿入断片には、実施例7で決定したN末端アミノ酸配列をコードする塩基配列がすべて含まれており、また実施例6で得られた塩基配列と同一の配列も存在することが明らかになった。
【0078】
さらに、N末端側のアミノ酸配列をコードする塩基配列を正確に決定するために、上記で得られた挿入断片をプローブとして用いて、サザンハイブリダイゼーションおよびコロニーハイブリダイゼーションを行った。実施例5で調製したセルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNAをSmaIで完全消化後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、Hybond-N+メンブレン(アマシャム社製)にブロッティングし、120℃にて30分間ベークすることによりDNAを固定した。DNAを固定化したメンブレン、上記の挿入断片をDIG標識したプローブ、およびハイブリダイゼーション液としてDIG Easy Hyb(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いてハイブリダイゼーションを行い、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)によりシグナルの検出を行った。その結果、約2kb付近に陽性シグナルを検出した。
【0079】
次いで、セルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNA5μgをSmaIで完全消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。シグナルが検出された約2kb付近から、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いてDNA断片を分画・精製した。次いで、プラスミドpBluescriptIISK(+)(STRATAGENE社製)をSmaIにより切断し、BAP(宝酒造社製)によりアルカリホスファターゼで処理した後、上記のSmaI断片をDNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて連結することにより、組換えプラスミドを得た。これを、コンピテントセルE.coli DH5α(宝酒造社製)に導入し、生育したコロニーをナイロンメンブレン(ロシュ・ダイアグノスティック社製)にブロッティングし、80℃にて30分間ベーキングを行うことによりDNAを固定化した。DNAを固定化したメンブレン、サザンハイブリダイゼーションで用いたプローブ、およびハイブリダイゼーション液としてDIG Easy Hyb(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用い、コロニーハイブリダイゼーションを行った。その結果、約250個のコロニーのうち、1つのコロニーに陽性シグナルが認められた。得られた陽性コロニーから、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを精製し、挿入断片の塩基配列をBigDye Terminator Cycle Sequencung FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)および371 DNA Sequencing Systems(Applied Biosystems社製)を用いて決定した。決定した塩基配列を解析したところ、開始コドン上流部には原核生物のプロモーター領域に特徴的な配列であるリボソーム結合領域、−35領域、および−10領域が存在することがわかった(図6を参照のこと)。
【0080】
(実施例9)セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子の3'末端配列の取得
セルロシミクロビウム・セルランス H−16株のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子の3'末端側配列を取得するために、実施例5で得られたPstI断片を、BglIIおよびPstIで切断し、得られた約0.3kbのDNA断片をプローブとして用いて、サザンハイブリダイゼーションおよびコロニーハイブリダイゼーションを行った。実施例1で調製したセルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNAを、BamHIとBglIIで完全消化後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、Hybond-N+メンブレン(アマシャム社製)にブロッティングし、120℃にて30分間ベークすることによりDNAを固定した。DNAを固定化したメンブレンと、実施例5で得られたPstI断片をBglII処理して得られた約0.3kbのDNA断片をDIG標識したプローブと、ハイブリダイゼーション液としてDIG Easy Hyb(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)とを用いてハイブリダイゼーションを行い、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)によりシグナルの検出を行った。その結果、約5.0kb付近に陽性シグナルを検出した。
【0081】
次いで、セルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNA5μgをBamHIおよびBglIIで完全消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、シグナルが検出された約5.0kb付近から、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いてDNA断片を分画・精製した。次いで、プラスミドpBluescriptIISK(+)(STRATAGENE社製)をBamHIおよびBglIIで切断し、BAP(宝酒造社製)によりアルカリホスファターゼで処理した後、上記のBamHI-BglII断片をDNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて連結することにより組換えプラスミドを得た。これを、コンピテントセルE.coli DH5α(宝酒造社製)に導入し、生育したコロニーをナイロンメンブレン(ロシュ・ダイアグノスティック社製)にブロッティングし、80℃にて30分間ベーキングを行うことによりDNAを固定化した。DNAを固定化したメンブレンと、サザンハイブリダイゼーションで用いたプローブと、ハイブリダイゼーション液としてDIG Easy Hyb(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)とを用いて、コロニーハイブリダイゼーションを行った。その結果、約150個のコロニーのうち、1つのコロニーに陽性シグナルが認められた。得られた陽性コロニーから、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを精製し、挿入断片の塩基配列をBigDye Terminator Cycle Sequencung FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)および371 DNA Sequencing Systems(Applied Biosystems社製)を用いて決定した。決定した塩基配列を解析したところ、挿入断片にはバチルス・エスピー由来のα−1,2−マンノシダーゼと相同性が高いアミノ酸配列をコードする塩基配列が存在し、3'末端配列側には終止コドンをコードするTGA配列があることがわかった(図6を参照のこと)。
【0082】
以上の結果から、本発明のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子は、配列表の配列番号1に記載の5421塩基からなるコーディング領域を有し、リーダーペプチドとして49アミノ酸残基をコードし、1757残基のアミノ酸をコードしていることが明らかになった。また、公知のバチルス・エスピーのα−1,2−マンノシダーゼとは、DNA配列では55%、アミノ酸配列では46%の相同性を示した。
【0083】
(実施例10)宿主として大腸菌を用いたα−1,2−マンノシダーゼの発現実施例5で調製したセルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNAを鋳型にし、EcoRI配列を付加した配列番号7に記載の合成DNAと、HindIII配列を付加した配列番号8に記載の合成DNAとを用いて、PCRにより本発明のα−1,2−マンノシダーゼの全遺伝子配列を増幅した。得られた増幅断片をEcoRIおよびHindIIIで切断し、これをEcoRIおよびHindIIIで切断した大腸菌発現ベクターpMEX8(フナコシ社製)にDNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて連結し、コンピテントセルE.coli DH5α(宝酒造社製)へ導入した。得られた大腸菌形質転換体から、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを精製し、EcoRIおよびHindIIIで切断後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、pMEX8に約5.4kbのα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子がクローニングされていることを確認した。
【0084】
構築した組換えプラスミドを含む形質転換体を、LB培地に一植菌耳植菌し37℃で一晩培養した。得られた培養液を新たなLB培地に5%植菌し25℃で24時間振とう培養後、遠心分離により集菌し、菌体を得た。得られた菌体を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、高圧連続式ホモジナイザー(AVESTIN社製)により菌体破砕した後、遠心分離により上清を得た。得られた上清をウルトラフリー15(ミリポア社製)を用いて濃縮することにより粗酵素液を得た。得られた粗酵素液のマンノシダーゼ活性を、測定法2に従って測定した。その結果、7.06単位/L・培養液であった。
【0085】
(比較例2)
pMEX8のみが導入された大腸菌形質転換体について、実施例9と同様な操作により粗酵素液を調製し活性を測定した。その結果、0.01単位/L・培養液以下であった。
【0086】
(比較例3)
セルロシミクロビウム・セルランス H−16株を実施例7と同様な操作により培養し、粗酵素液を調製し活性を測定した。その結果、0.99単位/L・培養液であった。
【0087】
実施例5、比較例2、および比較例3の結果から、本発明のα−1,2−マンノシダーゼはマンノシダーゼ活性を有し、該酵素の生産性は野生株より高いことがわかった。
【0088】
(実施例11)形質転換体が生産するα−1,2−マンノシダーゼを用いたマンノオリゴ糖の製造
60%(w/w)のマンノース糖液に、実施例10で調製した粗酵素液を、1gのマンノース当たり8.5単位(測定法1による)になるように加え、40℃で72時間反応させた。反応後の液をHPLCで分析したところ、全糖中に占めるマンノオリゴ糖の割合は14.5%であった。
【0089】
(比較例4)
実施例10と同様な操作によりBacillus sp. M-90株由来のα−1,2−マンノシダーゼを含む粗酵素液を調製し、実施例10と同様にして、マンノースの縮合反応を行った。分析結果によると、全糖中に占めるマンノオリゴ糖の割合は3.4%であった。
【0090】
実施例11および比較例4の分析結果の比較から、マンノオリゴ糖の収率は本発明による酵素のほうが公知の酵素より高いことがわかる。
【0091】
(実施例12)α−1,2−マンノシダーゼのアミノ酸置換変異体の作成
アミノ酸置換は配列番号2の第18番目のプロリンをロイシンに置換することにより行った。図7に基づき、配列番号9に記載の合成DNAと、プロリンをコードするCCCをロイシンをコードするCTCに置換した配列番号10に記載の合成DNAとを用い、セルロシミクロビウム・セルランス H−16株の染色体DNAを鋳型としたPCRによりPCR産物1を得た。同様に、プロリンをコードするCCCをロイシンをコードするCTCに置換した配列番号11に記載の合成DNAと配列番号12に記載の合成DNAとを用い、PCR産物2を得た。得られたPCR産物1および2を、QIAquick PCR Purification(QIAGEN社製)を用いて精製し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、目的のDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて分画、精製した。得られたPCR産物1および2を混合し、PCR反応を行うことによりPCR産物3を取得し、次いで配列番号9および配列番号12に記載の合成DNAを用いたPCR反応により、PCR産物4を得た。得られたPCR産物4をEcoRIおよびBglIIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、目的のDNAをQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて分画・精製した。同様に実施例10で構築したα−1,2−マンノシダーゼ発現プラスミドを、EcoRIおよびBglIIで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、大腸菌発現ベクターpMEX8を含むDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて分画・精製した。取得したDNA断片と上記のEcoRIおよびBglII処理したPCR産物4とを、DNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて連結することにより、組換えプラスミドを得た。これをコンピテントセルE.coli DH5α(宝酒造社製)に導入し、得られた大腸菌形質転換体から、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを調製し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)および371 DNA Sequencing Systems(Applied Biosystems社製)を用いてα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子配列を決定した。得られた塩基配列を解析し、プロリンをコードするCCCがロイシンをコードするCTCに置換される部位特異的変異が導入されていることを確認した。
【0092】
得られたアミノ酸置換変異体を含む大腸菌形質転換体から実施例10と同様な操作により粗酵素液を調製し、活性を測定した。その結果、変異型α−1,2−マンノシダーゼは、野生型α−1,2−マンノシダーゼとほぼ同等の活性を有することがわかった。
【0093】
【発明の効果】
本発明のα−1,2−マンノシダーゼは、α−1,2−マンノシド結合の分解反応性やマンノースまたは非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖類を脱水縮合または転移させて、マンノオリゴ糖などのα−マンノシル糖化合物を生成する性質を有し、従来知られているバチルス属のα−1,2−マンノシダーゼに比べて、オリゴ糖生成率が数倍高いので、マンノオリゴ糖などのα−マンノシル糖化合物の製造に非常に有用である。また、本発明のα−1,2−マンノシダーゼの作用条件とマンノースイソメラーゼの作用条件とがほぼ一致しているので、マンノースイソメラーゼを併用することにより、フルクトースからα−マンノシル糖化合物を製造することもできる。さらに、本発明のα−1,2−マンノシダーゼは、発色物質であるp−ニトロフェニル−α−D−マンノシドに対して作用するので、活性測定などが容易である。
【0094】
本発明のα−1,2−マンノシダーゼは、セルロシミクロビウム・セルランスに属する細菌を液体培養することによって培地中で生産し得る。そのため、タチナタマメなどから抽出したり、アスペルギルス属の糸状菌を培養して製造される公知の酵素に比べて培養・精製が容易であり、大量生産に適している。
【0095】
あるいは、本発明によれば、セルロシミクロビウム属細菌、特にセルロシミクロビウム・セルランス H−16株由来のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子が提供され、この塩基配列に基づき遺伝子工学的手法により作成された組換え微生物を培養することによって、α−1,2−マンノシダーゼを容易に生産できる。すなわち、α−1,2−マンノシダーゼの生産性が飛躍的に上昇し、不純物の少ない組換えα−1,2−マンノシダーゼを、工業的規模で大量かつ効率良く製造できる。また、このような組換えα−1,2−マンノシダーゼを用いると、有用なα−マンノシド結合を有するマンノオリゴ糖を、飛躍的に効率良く製造できる点で、非常に有用である。
【0096】
このように、本発明のα−1,2−マンノシダーゼを利用することにより、マンノース(フルクトース)またはα−1,2−マンノシド結合を有する糖類などから、マンノオリゴ糖、α−マンノシル糖化合物などを自由に、効率よく製造することができるので、糖タンパクや糖脂質などの複合糖質(特に、高マンノース型)の研究やその薬理研究などに供することができる点で、非常に価値がある。
【0097】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のα−1,2−マンノシダーゼの最適温度と安定温度を示すグラフである。
【図2】本発明のα−1,2−マンノシダーゼの最適pHと安定pHを示すグラフである。
【図3】本発明のα−1,2−マンノシダーゼによるα−1,2−マンノビオースの経時的な分解を示す、高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムである。
【図4】本発明のα−1,2−マンノシダーゼによるα−1,3−マンノビオースの経時的な分解を示す、高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムである。
【図5】本発明のα−1,2−マンノシダーゼによるα−1,6−マンノビオースの経時的な分解を示す、高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムである。
【図6】セルロシミクロビウム・セルランス H−16株由来のα−1,2−マンノシダーゼ遺伝子を含むDNA断片の制限酵素地図である。
【図7】α−1,2−マンノシダーゼのアミノ酸置換変異体の構築方法を示す模式図である。

Claims (9)

  1. α−1,2−マンノシダーゼのアミノ酸配列をコードするDNAであって、該α−1,2−マンノシダーゼが、以下の(1)〜(7)の特性:
    (1)作用
    (a)α−1,2−マンノシド結合を含むα−マンナンまたはオリゴ糖の非還元末端位のα−1,2−マンノシド結合を特異的に分解する;および
    (b)マンノースまたは非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖類を脱水縮合または転移させてα−マンノシル糖化合物を生成する;
    (2)基質特異性
    α−マンナン、α−1,2−マンノビオース、非還元末端にα−1,2−マンノシド結合を有するオリゴ糖、およびp−ニトロフェニル−α−D−マンノシドには作用するが、α−1,3−マンノビオースおよびα−1,6−マンノビオースには作用しない;
    (3)最適温度:35℃〜45℃;
    (4)最適pH:5〜7;
    (5)安定温度:40℃;
    (6)安定pH:5〜12;および
    (7)分子量:400,000(ゲル濾過HPLC)
    を有し、そして
    該DNAが、配列表の配列番号2の2位から1757位までのアミノ酸配列、または該アミノ酸配列のうち1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を含むα−1,2−マンノシダーゼをコードする、
    DNA。
  2. 前記α−1,2−マンノシダーゼがセルロシミクロビウム属由来である、請求項1に記載のDNA。
  3. 前記α−1,2−マンノシダーゼがセルロシミクロビウム・セルランス由来である、請求項2に記載のDNA。
  4. 前記α−1,2−マンノシダーゼがセルロシミクロビウム・セルランス H−16株(FERM P−19290)由来である、請求項3に記載のDNA。
  5. 前記α−1,2−マンノシダーゼが、配列表の配列番号2の−49位から1757位までのアミノ酸配列、または該アミノ酸配列のうち1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれかの項に記載のDNA。
  6. 請求項1からのいずれかの項に記載のα−1,2−マンノシダーゼのアミノ酸配列をコードするDNAが導入された自律複製可能なベクターを含む、複製可能な組換えDNA。
  7. セルロシミクロビウム・セルランスを培養する工程、および該培養物からα−1,2−マンノシダーゼを採取する工程を含む、α−1,2−マンノシダーゼの製造方法であって、
    該α−1,2−マンノシダーゼが、以下の(1)〜(7)の特性:
    (1)作用
    (a)α−1,2−マンノシド結合を含むα−マンナンまたはオリゴ糖の非還元末端位のα−1,2−マンノシド結合を特異的に分解する;および
    (b)マンノースまたは非還元末端にα−マンノシド結合を有する糖類を脱水縮合または転移させてα−マンノシル糖化合物を生成する;
    (2)基質特異性
    α−マンナン、α−1,2−マンノビオース、非還元末端にα−1,2−マンノシド結合を有するオリゴ糖、およびp−ニトロフェニル−α−D−マンノシドには作用するが、α−1,3−マンノビオースおよびα−1,6−マンノビオースには作用しない;
    (3)最適温度:35℃〜45℃;
    (4)最適pH:5〜7;
    (5)安定温度:40℃;
    (6)安定pH:5〜12;および
    (7)分子量:400,000(ゲル濾過HPLC)
    を有する、
    方法。
  8. 前記セルロシミクロビウム・セルランスがセルロシミクロビウム・セルランス H−16株(FERM P−19290)である、請求項に記載の方法。
  9. α−1,2−マンノシダーゼ生産能を有するセルロシミクロビウム・セルランス H−16株(FERM P−19290)。
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