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JP2020164747A - 潤滑油組成物 - Google Patents

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JP2020164747A
JP2020164747A JP2019069050A JP2019069050A JP2020164747A JP 2020164747 A JP2020164747 A JP 2020164747A JP 2019069050 A JP2019069050 A JP 2019069050A JP 2019069050 A JP2019069050 A JP 2019069050A JP 2020164747 A JP2020164747 A JP 2020164747A
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Abstract

【課題】硫酸灰分を低減しつつも、デポジットの発生を抑制することができると共に、高温清浄性及び塩基価維持性に優れ、ロングドレイン性に優れる、ガスエンジン用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】ガスエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、基油(A)と、金属系清浄剤(B)と、を含有し、前記金属系清浄剤(B)は、カルシウム系清浄剤(B1)と、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上と、を含み、下記要件(X1)〜(X3)を満たす、潤滑油組成物とした。
・要件(X1):硫酸灰分が、0.30〜0.50質量%である。
・要件(X2):カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300〜1200質量ppmである。
・要件(X3):前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子と、前記金属系清浄剤(B)に由来するカルシウム原子との含有比率[(Mg+Na)/Ca]が、質量比で、3.0以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑油組成物に関する。更に詳述すると、本発明は、ガスエンジンに用いられる潤滑油組成物に関する。
ガスエンジンは、ガスを燃料として駆動する内燃機関である。ガスエンジンは、例えば、ガスコージェネレーションシステム及びガスヒートポンプシステム等において利用されている。これらのシステムでは、保守点検作業が大きな負担となる。そのため、点検の簡素化及び保守間隔の延長化等、メンテナンス性の改善が重要な課題である。
これらのシステムにおけるメンテナンス性を改善すべく、ガスエンジンに用いられる潤滑油組成物(以下、「ガスエンジン用潤滑油組成物」ともいう)の交換頻度を少なくすることが求められている。そのための手段の一つとして、ガスエンジン用潤滑油組成物のロングドレイン性を向上させることが挙げられる。
従来、エンジンに用いられる潤滑油組成物は、金属系清浄剤を多く配合することによって、ロングドレイン性を向上させるのが一般的であった。例えば特許文献1には、ガスエンジン用潤滑油組成物の性能を向上させる観点から、ガスエンジン用潤滑油組成物中の硫酸灰分、すなわち金属系清浄剤等の添加剤に由来する金属分の含有量を、0.52質量%として各種検討が行われている。
特開2018−048222号公報
ところで、金属系清浄剤等の添加剤に由来する金属分は、ガスエンジン内での燃焼によって燃焼灰となる。当該燃焼灰は、ガスエンジンのピストン上部のトップランド付近等に堆積して、リングライナーの損傷及びノッキングの原因になることがある。そこで、リングライナーの損傷及びノッキングを抑制する観点から、ガスエンジン用潤滑油組成物の硫酸灰分を低減することが求められている。
しかしながら、潤滑油組成物において、硫酸灰分を低減すべく、金属系清浄剤の配合量を抑えると、当該潤滑油組成物のロングドレイン性が低下してしまう。したがって、潤滑油組成物において、硫酸灰分の低減とロングドレイン性の向上とを両立することは困難である。
しかも、ガスエンジンは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンと比較して燃焼温度が高く、窒素酸化物(以下、「NOx」ともいう)も発生しやすい。そのため、ガスエンジンに用いられる潤滑油組成物は、高温酸化劣化及びNOx劣化を受けやすく、デポジット(主にカーボンデポジット)が発生しやすいと共に、塩基価維持性及び高温清浄性の確保も困難である。したがって、ガスエンジン用潤滑油組成物において、硫酸灰分の低減とロングドレイン性の向上とを両立することは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン用の潤滑油組成物よりも困難である。
本発明は、硫酸灰分を低減しつつも、デポジットの発生を抑制することができると共に、高温清浄性及び塩基価維持性に優れ、ロングドレイン性に優れる、ガスエンジン用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、特定の種類の金属系清浄剤を組み合わせ、且つこれらを特定の関係を満たす含有量に調整することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[8]に関する。
[1] ガスエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、金属系清浄剤(B)と、を含有し、
前記金属系清浄剤(B)は、カルシウム系清浄剤(B1)と、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上と、を含み、
下記要件(X1)〜(X3)を満たす、潤滑油組成物。
・要件(X1):硫酸灰分が、0.30〜0.50質量%である。
・要件(X2):カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300〜1200質量ppmである。
・要件(X3):前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子と、前記金属系清浄剤(B)に由来するカルシウム原子との含有比率[(Mg+Na)/Ca]が、質量比で、3.0以下である。
[2] 前記カルシウム系清浄剤(B1)は、カルシウムスルホネート、カルシウムサリチレート、及びカルシウムフェネートから選択される1種以上である、上記[1]に記載の潤滑油組成物。
[3] 前記マグネシウム系清浄剤(B2)は、マグネシウムスルホネート及びマグネシウムサリチレートから選択される1種以上である、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4] 前記ナトリウム系清浄剤(B3)は、ナトリウムスルホネートから選択される1種以上である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の潤滑油組成物
[5] 前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子の合計含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、200〜900質量ppmである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[6] 更に、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)及びホウ素化イミド系分散剤(C2)から選択される1種以上の無灰分散剤(C)を含有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[7] 更に、ジチオリン酸亜鉛(D)を含有し、
前記ジチオリン酸亜鉛(D)に由来するリン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、50〜300質量ppmである、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[8] ガスコージェネレーションシステムに備えられるガスエンジン又はガスヒートポンプに備えられるガスエンジンに用いる、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
本発明によれば、硫酸灰分を低減しつつも、デポジットの発生を抑制することができると共に、高温清浄性及び塩基価維持性に優れ、ロングドレイン性に優れる、ガスエンジン用潤滑油組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10〜90、より好ましくは30〜60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10〜60」とすることもできる。
同様に、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」、「未満」、「超」の数値もまた、任意に組み合わせることができる数値である。
本明細書において、「ロングドレイン性」とは、長期間にわたって潤滑油組成物の劣化を抑制することにより、潤滑油組成物の交換間隔を長くできる性能のことをいう。具体的には、潤滑油組成物の粘度増加を抑制できると共に、高温清浄性及び塩基価維持性に優れることによって、長期間にわたって潤滑油組成物の劣化を抑制する性能のことをいう。
本明細書において、「塩基価維持性」とは、高温酸化劣化及びNOx劣化を受けるガスエンジンと同様の環境下においても、潤滑油組成物の塩基価を長期間にわたって維持する性能のことをいう。
本明細書において、「高温清浄性」とは、高温酸化劣化及びNOx劣化を受けるガスエンジンと同様の環境下において、潤滑油組成物が劣化した場合であっても、潤滑油組成物中に発生したスラッジ及びデポジット(主にカーボンデポジット)等のガスエンジン内部への付着を防止して、ピストンやピストン周り等の潤滑経路内を清浄に保つ性能のことをいう。
[本発明のガスエンジン用の潤滑油組成物の態様]
本発明の潤滑油組成物は、ガスエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、基油(A)と、金属系清浄剤(B)と、を含有する。前記金属系清浄剤(B)は、カルシウム系清浄剤(B1)と、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上と、を含む。
そして、本発明の潤滑油組成物は、下記要件(X1)〜(X3)を満たす。
・要件(X1):硫酸灰分が、0.30〜0.50質量%である。
・要件(X2):カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300〜1200質量ppmである。
・要件(X3):前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子と、前記金属系清浄剤(B)に由来するカルシウム原子との含有比率[(Mg+Na)/Ca]が、質量比で、3.0以下である。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、金属系清浄剤(B)として、カルシウム系清浄剤(B1)を含むと共に、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上を含み、これらを特定の割合で含有すると共に、カルシウム系清浄剤に由来するカルシウム原子の含有量を特定範囲に調整した潤滑油組成物が、低硫酸灰分でありながらも、デポジットの発生を抑制することができると共に、高温清浄性及び塩基価維持性に優れ、ロングドレイン性に優れることを見出した。
本発明において、「低硫酸灰分」とは、硫酸灰分が、上記要件(X1)に示す範囲であることを意味する。すなわち、硫酸灰分が、0.30〜0.50質量%であることを意味する。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、金属系清浄剤等の金属分由来の燃焼灰に起因するリングライナーの損傷及びノッキングを抑制しつつ、ロングドレイン性により優れたものとする観点から、硫酸灰分は、好ましくは0.30質量%以上0.50質量%未満、より好ましくは0.35質量%以上0.50質量%未満、更に好ましくは0.35質量%以上0.49質量%以下、より更に好ましくは0.40質量%以上0.49質量%以下、更になお好ましくは0.42質量%以上0.48質量%以下である。
なお、本明細書において、以降の説明では、「基油(A)」及び「金属系清浄剤(B)」を、それぞれ「成分(A)」及び「成分(B)」ともいう。また、「カルシウム系清浄剤(B1)」、「マグネシウム系清浄剤(B2)」、及び「ナトリウム系清浄剤(B3)」を、それぞれ「成分(B1)」、「成分(B2)」、及び「成分(B3)」ともいう。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)及び成分(B)の合計含有量の上限値は、成分(B)以外の潤滑油用添加剤の含有量との関係で調整すればよく、好ましくは95質量%以下、より好ましくは94質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)以外の潤滑油用添加剤としては、無灰分散剤(C)及びジチオリン酸亜鉛(D)が挙げられる。無灰分散剤(C)としては、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)及びホウ素化イミド系分散剤(C2)から選択される1種以上が用いられる。
本明細書において、以降の説明では、「無灰分散剤(C)」及び「ジチオリン酸亜鉛(D)」を、それぞれ「成分(C)」及び「成分(D)」ともいう。また、「非ホウ素化イミド系分散剤(C1)」及び「ホウ素化イミド系分散剤(C2)」を、それぞれ「成分(C1)」及び「成分(C2)」ともいう。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)以外の他の潤滑油用添加剤を更に含有してもよい。
以下、本発明の潤滑油組成物に含まれる各成分について詳述する。
<基油(A)>
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)を含有する。
本発明の潤滑油組成物が含有する基油(A)としては、従来、潤滑油の基油として用いられている鉱油及び合成油から選択される1種以上を、特に制限なく使用することができる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油;等が挙げられる。
合成油としては、例えば、α−オレフィン単独重合体及びα−オレフィン共重合体(例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体等の炭素数8〜14のα−オレフィン共重合体)等のポリα−オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル及び二塩基酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリアルキレングリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(ガストゥリキッド(GTL)ワックス)を異性化することで得られるGTL基油等が挙げられる。
本発明の一態様で用いる基油(A)は、米国石油協会(API)の基油カテゴリーにおけるグループ2、3又は4に分類される基油が好ましく、グループ2又は3に分類される基油がより好ましい。
基油(A)は、鉱油を1種単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよいし、合成油を1種単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、1種以上の鉱油と1種以上の合成油とを組み合わせて用いてもよい。
基油(A)の100℃における動粘度(以下、「100℃動粘度」ともいう)は、好ましくは2〜20mm/s、より好ましくは3〜15mm/s、更に好ましくは4〜12mm/sである。
基油(A)の100℃動粘度が2mm/s以上であると、蒸発損失を抑制しやすい。
基油(A)の100℃動粘度が20mm/s以下であると、粘性抵抗による動力損失を抑えやすく、燃費改善効果が得られやすい。
基油(A)の粘度指数は、温度変化による粘度変化を抑えると共に、省燃費性を向上させる観点から、好ましくは80以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは100以上である。
本明細書において、100℃動粘度及び粘度指数は、JIS K 2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
また、本発明の一態様において、基油(A)が2種以上の基油を含有する混合基油である場合、当該混合基油の動粘度及び粘度指数が上記範囲内であることが好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油(A)の含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%基準)で、90質量%以下であることが好ましい。基油(A)の含有量を90質量%以下とすることによって、金属系清浄剤(B)、さらには無灰分散剤(C)及びジチオリン酸亜鉛(D)を適切な量で配合しやすくすることができ、ロングドレイン性を向上させやすくできる。
なお、基油(A)の含有量は、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは70〜95質量%、より好ましくは75〜92質量%、更に好ましくは80〜90質量%である。
<金属系清浄剤(B)>
本発明の潤滑油組成物は、金属系清浄剤(B)を含有する。
本発明者は、金属系清浄剤(B)について、特定の種類の金属系清浄剤を組み合わせ、且つこれらを特定の関係を満たす含有量に調整することによって、金属系清浄剤(B)の配合量を低減して硫酸灰分を低減しつつも、ロングドレイン性に優れる潤滑油組成物とできることを突き止めるに至った。
すなわち、本発明の潤滑油組成物は、金属系清浄剤(B)として、カルシウム系清浄剤(B1)と、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上とを含む。
金属系清浄剤(B)として、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上を含有することなく、カルシウム系清浄剤(B1)のみを含有する場合、又は、カルシウム系清浄剤(B1)を含有することなく、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上のみを含有する場合、高温清浄性及び塩基価維持性のいずれか一方が劣り、ロングドレイン性に劣るものとなる。
また、本発明の潤滑油組成物は、下記要件(X2)を満たす。
・要件(X2):カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300〜1200質量ppmである。
カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、300質量ppm未満であると、デポジットを抑制し難く、高温清浄性に劣るため、ロングドレイン性を良好なものとできない。
一方、カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、1200質量ppm超であると、塩基価維持性に劣るため、ロングドレイン性を良好なものとできない。
ここで、ロングドレイン性をより優れたものとする観点から、上記要件(X2)で規定する、カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは330〜1100質量ppm、より好ましくは360〜1050質量ppm、更に好ましくは400〜1000質量ppmである。
さらに、本発明の潤滑油組成物は、下記要件(X3)を満たす。
・要件(X3):前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子と、前記金属系清浄剤(B)に由来するカルシウム原子との含有比率[(Mg+Na)/Ca]が、質量比で、3.0以下である。
既述のように、本発明の潤滑油組成物は、金属系清浄剤(B)として、カルシウム系清浄剤(B1)と、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上とを含む。
本発明者は、金属系清浄剤(B)の上記組み合わせに加えて、さらに要件(X3)を満たすことで、硫酸灰分を低減しつつも、上記組み合わせによるロングドレイン性の向上効果を最大限に発揮させて、ロングドレイン性に優れた潤滑油組成物とできることを見出した。
なお、上記要件(X3)は、金属系清浄剤(B)に由来するカルシウム原子量に対し、マグネシウム原子及びナトリウム原子が、どの程度含有しているかを示す指標ともいえる。つまり、潤滑油組成物を低硫酸灰分とした場合、当該指標が特定の範囲内(3.0以下)であることによって、金属系清浄剤(B)の機能を最大限に発揮させて、ロングドレイン性を良好にできるのである。
上記含有比率[(Mg+Na)/Ca]が、質量比で、3.0を超えると、高温清浄性に劣るため、ロングドレイン性に劣るものとなる。
なお、ロングドレイン性により優れたものとする観点から、上記含有比率[(Mg+Na)/Ca]は、質量比で、好ましくは0.050〜2.4、より好ましくは0.10〜2.0、更に好ましくは0.15〜1.8、より更に好ましくは0.20〜1.6、更になお好ましくは0.4〜1.6である。
ここで、本発明の一態様の潤滑油組成物は、上記要件(X1)及び(X3)を満たしやすくして、ロングドレイン性をより優れたものとしやすくする観点から、マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及びナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子の合計含有量が、好ましくは200〜900質量ppm、より好ましくは200〜800質量ppm、更に好ましくは200〜700質量ppmである。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物が、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)のうち、マグネシウム系清浄剤(B2)のみを含有する場合、マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子の含有量は、好ましくは200〜900質量ppm、より好ましくは200〜800質量ppm、更に好ましくは200〜700質量ppmである。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物が、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)のうち、ナトリウム系清浄剤(B3)のみを含有する場合、ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子の含有量は、好ましくは200〜900質量ppm、より好ましくは300〜800質量ppm、更に好ましくは400〜700質量ppmである。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、カルシウム系清浄剤(B1)の含有量は、カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、上記範囲を充足するように調整すればよい。カルシウム系清浄剤(B1)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.25〜1.22質量%、より好ましくは0.38〜1.22質量%、更に好ましくは0.50〜1.22質量%である。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)の合計含有量は、マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及びナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子の合計含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)の合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.11〜1.24質量%、より好ましくは0.22〜1.10質量%、更に好ましくは0.22〜0.96質量%である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物が、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)のうち、マグネシウム系清浄剤(B2)のみを含有する場合、マグネシウム系清浄剤(B2)の含有量は、マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよく、好ましくは0.22〜1.24質量%、より好ましくは0.22〜1.10質量%、更に好ましくは0.22〜0.96質量%である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物が、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)のうち、ナトリウム系清浄剤(B3)のみを含有する場合、ナトリウム系清浄剤(B3)の含有量は、ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよく、好ましくは0.11〜0.48質量%、より好ましくは0.20〜0.40質量%、更に好ましくは0.25〜0.35質量%である。
以下、カルシウム系清浄剤(B1)、マグネシウム系清浄剤(B2)、及びナトリウム系清浄剤(B3)について、詳細に説明する。
(カルシウム系清浄剤(B1))
カルシウム系清浄剤(B1)としては、例えば、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、及びカルシウムサリチレート等のカルシウム塩が挙げられる。
ここで、本発明の一態様の潤滑油組成物では、高温清浄性をより良好なものとする観点から、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、及びカルシウムサリチレートから選択される1種以上が好ましく、カルシウムサリチレート、及びカルシウムフェネートが好ましく、カルシウムサリチレートがより好ましい。
カルシウムスルホネートとしては、下記一般式(b−1)で表される金属スルホネートにおいて、Mがカルシウム原子である化合物が挙げられる。
カルシウムサリチレートとしては、下記一般式(b−2)で表される金属サリチレートにおいて、Mがカルシウム原子である化合物が挙げられる。
カルシウムフェネートとしては、下記一般式(b−3)で表される金属フェネートにおいて、M’がカルシウム原子である化合物が挙げられる。
カルシウム系清浄剤(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

上記一般式(b−1)〜(b−3)中、Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子であり、M’は、アルカリ土類金属である。pはMの価数であり、1又は2である。Rは、水素原子又は炭素数1以上18以下の炭化水素基である。qは、0以上の整数であり、好ましくは0以上3以下の整数である。
Rとして選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上18以下のアルキル基、炭素数1以上18以下のアルケニル基、環形成炭素数3以上18以下のシクロアルキル基、環形成炭素数6以上18以下のアリール基、炭素数7以上18以下のアルキルアリール基、炭素数7以上18以下のアリールアルキル基等が挙げられる。
カルシウム系清浄剤(B1)は、中性、塩基性、又は過塩基性のいずれであってもよいが、ロングドレイン性をより向上させやすくする観点から、塩基性又は過塩基性のものが好ましく、過塩基性のものがより好ましい。
なお、本明細書において、塩基性又は過塩基性金属系清浄剤とは、金属と酸性有機化合物とを反応させてなり、該金属と該酸性有機化合物との中和に必要な化学量論量よりも過剰の金属を含有するものを意味する。すなわち、金属と酸性有機化合物との中和に必要な化学量論量に従って反応させて得られる金属塩(中性塩)中の金属の化学当量に対する、金属系清浄剤中の金属の総化学当量を「金属比」としたときに、塩基性又は過塩基性金属系清浄剤の金属比は1より大きくなる。本実施形態に用いられる塩基性又は過塩基性金属系清浄剤の金属比は、好ましくは1.3超、より好ましくは5〜30、更に好ましくは7〜22である。塩基性又は過塩基性金属系清浄剤の具体例としては、上記した金属スルホネート、金属サリチレート、及び金属フェネートからなる群から選択される1種以上を含み、且つ過剰の金属を含有するものが挙げられる。
なお、本明細書において、後述する測定方法により測定される塩基価が、50mgKOH/g未満のものを「中性」、50mgKOH/g以上150mgKOH/g未満のものを「塩基性」、150mgKOH/g以上のものを「過塩基性」と定義する。
カルシウム系清浄剤(B1)がカルシウムスルホネートである場合、カルシウムスルホネートの塩基価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは250mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
カルシウム系清浄剤(B1)がカルシウムサリチレートである場合、カルシウムサリチレートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
カルシウム系清浄剤(B1)がカルシウムフェネートである場合、カルシウムフェネートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
なお、本明細書において、金属系清浄剤(B)の塩基価は、JIS K 2501:2003に準拠して、過塩素酸法により測定した塩基価を意味する。
(マグネシウム系清浄剤(B2))
マグネシウム系清浄剤(B2)としては、例えば、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、及びマグネシウムサリチレート等のマグネシウム塩が挙げられる。
ここで、本発明の一態様の潤滑油組成物は、高温清浄性をより良好なものとする観点から、マグネシウムスルホネート、マグネシウムサリチレートが好ましく、マグネシウムサリチレートがより好ましい。
マグネシウムスルホネートとしては、上記一般式(b−1)で表される金属スルホネートにおいて、Mがマグネシウム原子である化合物が挙げられる。
マグネシウムサリチレートとしては、上記一般式(b−2)で表される金属サリチレートにおいて、Mがマグネシウム原子である化合物が挙げられる。
マグネシウムフェネートとしては、上記一般式(b−3)で表される金属フェネートにおいて、M’がマグネシウム原子である化合物が挙げられる。
マグネシウム系清浄剤(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
マグネシウム系清浄剤(B2)は、中性、塩基性又は過塩基性のいずれであってもよいが、清浄性の観点から、塩基性又は過塩基性のものが好ましい。
マグネシウム系清浄剤(B2)がマグネシウムスルホネートである場合、マグネシウムスルホネートの塩基価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは300mgKOH/g以上、より更に好ましくは350mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは650mgKOH/g以下、より好ましくは500mgKOH/g以下、更に好ましくは450mgKOH/g以下である。
マグネシウム系清浄剤(B2)がマグネシウムサリチレートである場合、マグネシウムサリチレートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上、より更に好ましくは300mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
マグネシウム系清浄剤(B2)がマグネシウムフェネートである場合、マグネシウムフェネートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
(ナトリウム系清浄剤(B3))
ナトリウム系清浄剤(B3)としては、例えば、ナトリウムスルホネート及びナトリウムサリチレート等のナトリウム塩が挙げられる。
ここで、本発明の一態様の潤滑油組成物は、高温清浄性をより良好なものとする観点から、ナトリウムスルホネートが好ましい。
ナトリウムスルホネートとしては、上記一般式(b−1)で表される金属スルホネートにおいて、Mがナトリウム原子である化合物が挙げられる。
ナトリウムサリチレートとしては、上記一般式(b−2)で表される金属サリチレートにおいて、Mがナトリウム原子である化合物が挙げられる。
ナトリウム系清浄剤(B3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ナトリウム系清浄剤(B3)は、中性、塩基性又は過塩基性のいずれであってもよいが、清浄性の観点から、塩基性又は過塩基性のものが好ましい。
ナトリウム系清浄剤(B3)がナトリウムスルホネートである場合、ナトリウムスルホネートの塩基価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは300mgKOH/g以上、より更に好ましくは400mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは650mgKOH/g以下、より好ましくは550mgKOH/g以下、更に好ましくは500mgKOH/g以下である。
ナトリウム系清浄剤(B3)がナトリウムサリチレートである場合、ナトリウムサリチレートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは650mgKOH/g以下、より好ましくは550mgKOH/g以下、更に好ましくは500mgKOH/g以下である。
<無灰分散剤(C)>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)及びホウ素化イミド系分散剤(C2)から選択される1種以上の無灰分散剤(C)を含有することが好ましい。なお、非ホウ素化イミド系分散剤は、通常、イミド系分散剤とも呼ばれる。
無灰分散剤(C)は、金属原子を含まないため、潤滑油組成物の硫酸灰分を上昇させることなく、ロングドレイン性の向上に寄与する。
非ホウ素化イミド系分散剤(C1)としては、例えば、アルケニルコハク酸モノイミド及びアルキルコハク酸モノイミド等のコハク酸モノイミド;アルケニルコハク酸ビスイミド及びアルキルコハク酸ビスイミド等のコハク酸ビスイミド;から選択される1種以上の化合物が挙げられる。
ホウ素化イミド系分散剤(C2)としては、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)として挙げた化合物をホウ素化したホウ素変性体が挙げられる。
アルケニルコハク酸モノイミド又はアルキルコハク酸モノイミドとしては、下記一般式(c−1)で示される化合物が挙げられる。また、アルケニルコハク酸ビスイミド又はアルキルコハク酸ビスイミドとしては、下記一般式(c−2)で示される化合物が挙げられる。

一般式(c−1)及び式(c−2)において、R3C、R5C、及びR6Cは、アルケニル基又はアルキル基であり、重量平均分子量が、それぞれ、好ましくは500〜3,000、より好ましくは1,000〜3,000である。
3C、R5C、及びR6Cの重量平均分子量が500以上であると、基油(A)への溶解性を良好にできる。また、3,000以下であると、本化合物により得られる効果を適切に発揮することが期待される。R5C及びR6Cは同一でも異なっていてもよい。
4C、R7C、及びR8Cは、それぞれ炭素数2〜5のアルキレン基であり、R7C及びR8Cは同一でも異なっていてもよい。n1は1〜10の整数を示し、n2は0又は1〜10の整数を示す。ここで、n1は、好ましくは2〜5、より好ましくは2〜4である。n1が2以上であると、コハク酸イミドのホウ素変性体により得られる効果が得やすくなることが期待される。n1が5以下であると、基油(A)に対する溶解性がより一層良好となる。
一般式(d−2)において、n2は好ましくは1〜6であり、より好ましくは2〜6である。n2が1以上であると、本化合物により得られる効果を適切に発揮することが期待される。n2が6以下であると、基油(A)に対する溶解性がより一層良好となる。
アルケニル基としては、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン−プロピレン共重合体を挙げることができ、アルキル基としてはこれらを水添したものが挙げられる。好適なアルケニル基としては、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が挙げられる。ポリブテニル基は、1−ブテンとイソブテンの混合物あるいは高純度のイソブテンを重合させたものが好適に用いられる。また、好適なアルキル基の代表例としては、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基を水添したものが挙げられる。
上記コハク酸イミドのホウ素変性体は、例えば、ポリオレフィンを無水マレイン酸と反応させてアルケニルコハク酸無水物を得て、さらに、ポリアミンと、ホウ素化合物とを反応させて中間体を得た後、アルケニルコハク酸無水物と中間体とを反応させてイミド化することにより得ることができる。モノイミド又はビスイミドは、アルケニルコハク酸無水物若しくはアルキルコハク酸無水物とポリアミンとの比率を変えることによって製造することが可能である。
また、上記コハク酸イミドのホウ素変性体は、ホウ素未含有のアルケニル又はアルキルコハク酸モノイミドや、アルケニル又はアルキルコハク酸ビスイミドを、ホウ素化合物で処理しても製造できる。
上記したポリオレフィンを形成するオレフィン単量体としては、炭素数2〜8のα−オレフィンの1種又は2種以上を混合して用いることができるが、イソブテンと1−ブテンの混合物を好適に用いることができる。
一方、ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン等の単一ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、及びペンタペンチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミン、アミノエチルピペラジン等のピペラジン誘導体を挙げることができる。
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩及びホウ酸エステル等が挙げられる。
ホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸及びパラホウ酸等が挙げられる。また、ホウ酸塩としては、メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム及び八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウム等が挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル及びホウ酸トリブチル等が挙げられる。
上記コハク酸イミドのホウ素変性体に含有される窒素原子量に対するホウ素原子量の比(B/N比)は、摩擦低減の観点から、質量基準で0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。また、B/N比は、特に限定されないが、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。
(非ホウ素化イミド系分散剤(C1)に由来する窒素原子の含有量)
本発明の一態様の潤滑油組成物において、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)に由来する窒素原子の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.0010〜1.0質量%、より好ましくは0.0050〜0.20質量%、更に好ましくは0.010〜0.15質量%である。
(ホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来するホウ素原子の含有量)
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来するホウ素原子の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.0010〜1.0質量%、より好ましくは0.0030〜0.10質量%、更に好ましくは0.0050〜0.050質量%である。
(非ホウ素化イミド系分散剤(C1)に由来する窒素原子及びホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来する窒素原子の合計含有量)
本発明の一態様の潤滑油組成物において、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)に由来する窒素原子及びホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来する窒素原子の合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.0020〜2.0質量%、より好ましくは0.0080〜0.30質量%、更に好ましくは0.015〜0.20質量%である。
(非ホウ素化イミド系分散剤(C1)に由来する窒素原子及びホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来する窒素原子の合計含有量に対するホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来するホウ素原子の含有量)
本発明の一態様の潤滑油組成物において、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)に由来する窒素原子及びホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来する窒素原子の合計含有量に対するホウ素化イミド系分散剤(C2)に由来するホウ素原子の含有量は、質量比で、好ましくは0.15〜0.5、より好ましくは0.18〜0.38、更に好ましくは0.20〜0.33である。
<ジチオリン酸亜鉛(D)>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、上記要件(X1)に規定する硫酸灰分を満たす範囲において、ジチオリン酸亜鉛(D)を含有してもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物が、ジチオリン酸亜鉛(D)を含有することで、潤滑油組成物の酸化安定性をより向上させ得る。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、上記要件(X1)に規定する硫酸灰分を満たすと共に、潤滑油組成物の酸化安定性をより向上させやすくする観点から、ジチオリン酸亜鉛(D)由来のリン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは50〜300質量ppm、より好ましくは70〜300質量ppm、更に好ましくは80〜300質量ppmである
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ジチオリン酸亜鉛(D)の含有量は、ジチオリン酸亜鉛(D)に由来するリン原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。ジチオリン酸亜鉛(D)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上である。また、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
本発明の一態様の潤滑油組成物に用いられるジチオリン酸亜鉛(D)は、以下の一般式(d−1)で表されるものが好ましく挙げられる。
一般式(d−1)中、R21D〜R24Dは各々独立に炭化水素基を示す。炭化水素基としては、1価の炭化水素基であれば特に制限はなく、例えば、酸化安定性を向上させる観点から、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基等が好ましく挙げられ、アルキル基がより好ましい。すなわち、本発明の一態様で用いられるジチオリン酸亜鉛としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛がより好ましい。
21D〜R24Dのアルキル基、アルケニル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
また、酸化安定性をより向上させる観点から、R21D〜R24Dの炭化水素基の炭素数としては、1価の炭化水素基がアルキル基の場合、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下であり、1価の炭化水素がアルケニル基の場合、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下である。
21D〜R24Dのシクロアルキル基、アリール基は、例えばデカリル基、ナフチル基等の多環式の基であってもよい。R21D〜R24Dの炭化水素基の炭素数としては、1価の炭化水素がシクロアルキル基の場合、炭素数は好ましくは5以上、上限として好ましくは20以下であり、1価の炭化水素がアリール基の場合、炭素数は好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下である。
また、1価の炭化水素基は、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基等の酸素原子及び/又は窒素原子を含む基により一部が置換されていてもよく、また窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子等により一部が置換されたものであってもよく、1価の炭化水素基がシクロアルキル基、アリール基の場合は更にアルキル基、アルケニル基等の置換基を有していてもよい。
(粘度指数向上剤)
本発明の一態様の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%未満、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以下、更になお好ましくは0.1質量%以下であり、一層好ましくは粘度指数向上剤を含まないことである。
粘度指数向上剤の含有量が上記範囲にあるか、あるいは粘度指数向上剤を含有しないことで、デポジットの発生をより抑えやすくすることができ、塩基価維持性も良好なものとしやすいため、ロングドレイン性を良好なものとしやすい。
粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート及び分散型ポリメタクリレート等のポリメタクリレートが挙げられる。なお、粘度指数向上剤は、希釈油に溶解して溶液の形態で用いられることもある。この場合の粘度指数向上剤の含有量は、希釈油の質量を除外した、粘度指数向上剤の固形分量を指す。
<他の潤滑油用添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(B)、成分(C)、及び成分(D)以外の他の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
他の潤滑油用添加剤としては、例えば、酸化防止剤及び金属不活性化剤等が挙げられる。
これらの各潤滑油用添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの潤滑油用添加剤の各含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれ独立して、通常0.001〜15質量%、好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%、更に好ましくは0.1〜6質量%である。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤は単独で用いてもよいが、併用することが好ましい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α−ナフチルアミン、炭素数3〜20のアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
[潤滑油組成物の特性]
<動粘度、粘度指数>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、100℃動粘度が、好ましくは2〜20mm/s、より好ましくは3〜15mm/s、更に好ましくは4〜12mm/sである。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、温度変化による粘度変化を抑えると共に、省燃費性を向上させる観点から、好ましくは80以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは100以上である。
本明細書において、100℃動粘度及び粘度指数は、JIS K 2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
<NOx−ISOT試験における寿命>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載の方法で実施したNOx−ISOT試験における寿命が、好ましくは90時間以上、より好ましくは100時間以上、更に好ましくは110時間以上、より更に好ましくは120時間以上、更になお好ましくは130時間以上である。また、通常1000時間以下である。
<ホットチューブ試験におけるメリット評点>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載の方法で実施したホットチューブ試験(300℃)におけるメリット評点が、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは8.5以上、より更に好ましくは9以上、更になお好ましくは9.5以上である。
<パネルコーキング試験>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載の方法で実施したパネルコーキング試験により測定されるデポジット量が、好ましくは100mg以下、より好ましくは90mg以下、更に好ましくは80mg以下、より更に好ましくは70mg以下である。
<各種原子含有量>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、カルシウム原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは300〜1200質量ppm、より好ましくは330〜1100質量ppm、更に好ましくは360〜1050質量ppm、より更に好ましくは400〜1000質量ppmである。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、マグネシウム原子及びナトリウム原子の合計含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましく200〜900質量ppm、より好ましくは200〜800質量ppm、更に好ましくは200〜700質量ppmである。
さらに、本発明の一態様の潤滑油組成物は、リン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは50〜300質量ppm、より好ましくは70〜300質量ppm、更に好ましくは80〜300質量ppmである。
なお、潤滑油組成物中のカルシウム原子、マグネシウム原子、ナトリウム原子、及びリン原子の含有量は、JPI−5S−38−03に準拠して測定される値である。
[潤滑油組成物の用途]
本発明の潤滑油組成物は、高温酸化劣化及びNOx劣化を受けるガスエンジンと同様の環境下においても、デポジットの発生を抑制することができ、高温清浄性及び塩基価維持性に優れ、ロングドレイン性に優れる。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、ガスエンジンに好適に使用することができ、特に、ガスコージェネレーションシステム及びガスヒートポンプシステム等に好適に用いることができる。
したがって、本発明は、下記(1)に示すガスエンジン、下記(2)に示すシステム、及び(3)に示す使用方法も提供し得る。
(1)本発明のガスエンジン用潤滑油組成物を有するガスエンジン。
(2)本発明のガスエンジン用潤滑油組成物を有するガスエンジンを備える、ガスコージェネレーションシステム又はガスヒートポンプシステム。
(3)本発明のガスエンジン用潤滑油組成物をガスエンジンの潤滑に用いる、使用方法。
[潤滑油組成物の製造方法]
本発明の潤滑油組成物の製造方法は、特に制限されない。
例えば、本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法は、基油(A)と、成分(B)と、を含有する潤滑油組成物の調製を行う工程を有し、前記調製は下記要件(X1)〜(X3)を満たすように行う。
・要件(X1):硫酸灰分が、0.30〜0.50質量%である。
・要件(X2):カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300〜1200質量ppmである。
・要件(X3):前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子と、前記金属系清浄剤(B)に由来するカルシウム原子との含有比率[(Mg+Na)/Ca]が、質量比で、3.0以下である。
上記各成分を混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、基油(A)に、成分(B)を配合する工程を有する方法が挙げられる。また、成分(A)及び成分(B)と共に、成分(C)、成分(D)、さらには他の潤滑油用添加剤も同時に配合してもよい。また、各成分は、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で配合してもよい。各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[各性状の測定]
本明細書において、各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
<100℃動粘度、粘度指数>
JIS K2283:2000に準拠し、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定及び算出した。
<潤滑油組成物の各原子の含有量>
潤滑油組成物のカルシウム原子、マグネシウム原子、ナトリウム原子、及びリン原子の含有量は、JPI−5S−38−03に準拠して測定した。
<硫酸灰分>
JIS K2272−1998に準拠して測定した。
[実施例1〜10及び比較例1〜6]
以下に示す基油及び各種添加剤を、表1に示す配合量(単位:質量%)にて添加し、十分に混合して潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
実施例1〜10及び比較例1〜6で用いた基油及び各種添加剤の詳細は、以下に示すとおりである。
<基油(A)>
下記の鉱油基油A−1と鉱油基油A−2との混合基油を用いた。
・鉱油基油A−1:100℃動粘度が5.3mm/sであり、API分類でグループ2に分類される鉱油基油。
・鉱油基油A−2:100℃動粘度が10.7mm/sであり、API分類でグループ2に分類される鉱油基油。
混合基油の100℃動粘度は10.8であり、API分類でグループ2に分類される。
<金属系清浄剤(B)>
(カルシウム系清浄剤(B1))
・カルシウム系清浄剤B1−1:カルシウムスルホネート(Ca含有量:11.7質量%、塩基価:300mgKOH/g)
・カルシウム系清浄剤B1−2a:カルシウムサリチレート(Ca含有量:7.9質量%、塩基価:225mgKOH/g)
・カルシウム系清浄剤B1−2b:カルシウムサリチレート(Ca含有量:7.8質量%、塩基価:225mgKOH/g)
・カルシウム系清浄剤B1−3:カルシウムフェネート(Ca含有量:8.8質量%、塩基価:250mgKOH/g)
(マグネシウム系清浄剤(B2))
・マグネシウム系清浄剤B2−1:マグネシウムスルホネート(Mg含有量:9.5質量%、塩基価:395mgKOH/g)
・マグネシウム系清浄剤B2−2:マグネシウムサリチレート(Mg含有量:7.9質量%、塩基価:340mgKOH/g)
(ナトリウム系清浄剤(B3))
・ナトリウム系清浄剤B3−1:ナトリウムスルホネート(Na含有量:16.7質量%、塩基価:450mgKOH/g)
なお、金属系清浄剤(B)の塩基価は、JIS K 2501:2003に準拠して、過塩素酸法により測定した塩基価である。
<無灰分散剤(C)>
・非ホウ素化イミド系分散剤(C1):ポリブテニルコハク酸モノイミド及びポリブテニルコハク酸ビスイミド(窒素含有量:1.0質量%)
・ホウ素化イミド系分散剤(C2):ポリブテニルコハク酸モノイミドのホウ素変性体(窒素含有量:1.2質量%、ホウ素含有量:1.3質量%)
<ジチオリン酸亜鉛(D)>
ジアルキルジチオリン酸亜鉛
<他の潤滑油用添加剤>
アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及び金属不活性化剤を、表1及び表2に示す配合量で配合した。なお、配合量は、潤滑油組成物全量基準での配合量である。
[評価方法]
各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の評価方法は、以下のとおりである。
<NOx−ISOT試験における寿命の評価>
空気(流量:150mL/分)と、一酸化窒素(NO)を窒素で希釈したガス(NO濃度:8,000体積ppm、流量50mL/分)とを混合して、油温150℃の試料250g中に導入し、NOx劣化油を作製した。上記NOx劣化油について、JIS K2501 2003の8に準拠して、電位差滴定法で塩酸法塩基価を測定し、塩酸法塩基価が1.0mgKOH/gとなるまでの時間(NOx−ISOT寿命、単位:時間)を測定した。
<ホットチューブ(HTT)試験>
JPI−5S−55−99に基づいて行った。
具体的には、300℃の温度に保たれた内径2mmのガラス管中に潤滑油組成物を0.3mL/時、空気を10mL/分で16時間流し続けた。ガラス管中に付着したラッカーと色見本とを比較し、透明の場合は10点、黒の場合は0点として0.5点刻みで評点を付けた。評点が高いほど高温清浄性に優れる潤滑油組成物であるといえる。
<パネルコーキング試験>
調製した潤滑油組成物300mLを加熱槽に入れ、100℃まで加熱した。そして、加熱槽の上部に設置された300℃に加熱されたアルミ板に対して、速度1000rpmで連続して回転させた羽によって、100℃まで加熱した潤滑油組成物を跳ね掛ける動作を、1サイクルが「羽を15秒間回転した後45秒間停止」として、3時間継続した。3時間後にアルミ板に付着したデポジットの質量(デポジット量)を測定した。デポジットの質量が小さいほど、デポジットが抑制された潤滑油組成物であるといえる。
結果を表1及び表2に示す。
なお、各実施例及び各比較例の潤滑油組成物において、カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子以外のカルシウム原子、マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子以外のマグネシウム原子、ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子以外のナトリウム原子、ジチオリン酸亜鉛(D)に由来するリン原子以外のリン原子は実質的には含まれていない。したがって、表1及び表2に示す潤滑油組成物中のカルシウム原子、マグネシウム原子、ナトリウム原子、及びリン原子の含有量は、それぞれ、カルシウム系清浄剤(B1)由来のカルシウム原子の含有量、マグネシウム系清浄剤(B2)由来のマグネシウム原子の含有量、ナトリウム系清浄剤(B3)由来のナトリウム原子の含有量、ジチオリン酸亜鉛(D)由来のリン原子の含有量でもある。
そこで、表1及び表2には、潤滑油組成物中に含まれる潤滑油組成物中のカルシウム原子、マグネシウム原子、ナトリウム原子、及びリン原子の含有量を、カルシウム系清浄剤(B1)由来のカルシウム原子の含有量、マグネシウム系清浄剤(B2)由来のマグネシウム原子の含有量、ナトリウム系清浄剤(B3)由来のナトリウム原子の含有量、ジチオリン酸亜鉛(D)由来のリン原子の含有量と記載した。
また、表1及び2において、カルシウム原子及びマグネシウム原子の含有量が「10>」である場合には、カルシウム原子及びマグネシウム原子が実質的には含まれていないことを意味する。
表1及び表2に示す結果から以下のことがわかる。
実施例1〜10の潤滑油組成物は、NOx−ISOT試験における寿命が長く、ホットチューブ試験及びパネルコーキング試験の結果も良好であった。したがって、デポジット発生を抑制すると共に、塩基価維持性及び高温清浄性に優れ、ロングドレイン性に優れることがわかる。
これに対し、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)のいずれも含まず、カルシウム原子含有量が1200質量ppmを超え、本発明の要件(X2)を満たさない、比較例1の潤滑油組成物は、NOx−ISOT試験における寿命が短く、塩基価維持性に劣り、ロングドレイン性に劣ることがわかる。
また、カルシウム系清浄剤(B1)を含まず、本発明の要件(X2)を満たさない、比較例2又は3の潤滑油組成物は、デポジット発生量が多く、高温清浄性にも劣るため、ロングドレイン性に劣ることがわかる。本発明の要件(X3)で規定する値が3.0を超える、比較例4の潤滑油組成物もまた、デポジット発生量が多く、高温清浄性にも劣るため、ロングドレイン性に劣ることがわかる。
また、硫酸灰分が0.30質量%未満であり、本発明の要件(X1)を満たさない比較例5の潤滑油組成物は、NOx−ISOT試験における寿命が短く、塩基価維持性に劣ると共に、高温清浄性も劣るため、ロングドレイン性に劣ることがわかる。カルシウム原子含有量が300質量ppm未満であり、本発明の要件(X2)を満たさない比較例6の潤滑油組成物もまた、塩基価維持性に劣ると共に、高温清浄性も劣るため、ロングドレイン性に劣ることがわかる。

Claims (8)

  1. ガスエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
    基油(A)と、金属系清浄剤(B)と、を含有し、
    前記金属系清浄剤(B)は、カルシウム系清浄剤(B1)と、マグネシウム系清浄剤(B2)及びナトリウム系清浄剤(B3)から選択される1種以上と、を含み、
    下記要件(X1)〜(X3)を満たす、潤滑油組成物。
    ・要件(X1):硫酸灰分が、0.30〜0.50質量%である。
    ・要件(X2):カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300〜1200質量ppmである。
    ・要件(X3):前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子と、前記金属系清浄剤(B)に由来するカルシウム原子との含有比率[(Mg+Na)/Ca]が、質量比で、3.0以下である。
  2. 前記カルシウム系清浄剤(B1)は、カルシウムスルホネート、カルシウムサリチレート、及びカルシウムフェネートから選択される1種以上である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. 前記マグネシウム系清浄剤(B2)は、マグネシウムスルホネート及びマグネシウムサリチレートから選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
  4. 前記ナトリウム系清浄剤(B3)は、ナトリウムスルホネートから選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物
  5. 前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子及び前記ナトリウム系清浄剤(B3)に由来するナトリウム原子の合計含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、200〜900質量ppmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  6. 更に、非ホウ素化イミド系分散剤(C1)及びホウ素化イミド系分散剤(C2)から選択される1種以上の無灰分散剤(C)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  7. 更に、ジチオリン酸亜鉛(D)を含有し、
    前記ジチオリン酸亜鉛(D)に由来するリン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、50〜300質量ppmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  8. ガスコージェネレーションシステムに備えられるガスエンジン又はガスヒートポンプに備えられるガスエンジンに用いる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
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