I.用語集
本開示で使用される様々な用語に関する説明および特定の情報を便宜のためここに集める。
本明細書で使用される「薬剤」は、任意の物質、化合物(例えば分子)、超分子複合体、材料、またはその組み合わせまたは混合物を指す。化合物は、化学式、化学構造、または配列で表わし得る、任意の薬剤であってもよい。薬剤の例としては、例えば、小型分子、ポリペプチド、核酸(例えば、RNAi剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー)、脂質、多糖類、などが挙げられる。一般に、薬剤は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して得られてもよい。当業者は、薬剤の性質に基づいて、適切な方法を選択するであろう。薬剤は、少なくとも部分的に精製されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、様々な実施形態において、薬剤に加えて、例えば、対イオン、水性または非水性希釈剤または担体、緩衝液、保存料、またはその他の成分を含有してもよい組成物の一部として提供されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、塩、エステル、水和物、または溶媒和化合物として提供されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば細胞に取り込まれる典型的な薬剤の範囲内で、細胞透過性であり、例えば哺乳類細胞内などの細胞内で作用して、生物学的効果を生じる。特定の化合物は、特に幾何または立体異性体の形態で存在してもよい。シス−およびトランス−異性体、E−およびZ−異性体、R−およびS−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、(−)−および(+)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらのその他の混合物をはじめとするこのような化合物は、特に断りのない限り、様々な実施形態で本開示に包含される。特定の化合物は、多様性またはプロトン付加状態で存在してもよく、多様な立体配置を有してもよく、溶媒和化合物として存在してもよく(例えば、水(すなわち水和物)または共通溶剤と共に)および/または別の結晶形態(例えば多形体)または別の互変異性形態を有してもよい。当てはまる場合、このような代案のプロトン付加状態、立体配置、溶媒和化合物、および形態を示す実施形態は、本開示に包含される。
第1の薬剤の「アナログ」は、第1の薬剤と構造的および/または機能的に類似した第2の薬剤を指す。第1の薬剤の「構造的アナログ」は、第1の薬剤と構造的に類似したアナログである。薬剤の構造的アナログは、薬剤と、実質的に同様の物理的、化学的、生物学的、および/または薬理学的特性を有してもよく、または少なくとも1つの物理的、化学的、生物学的、または薬理学的特性が異なってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのこのような特性は、アナログを関心のある目的により適するようにする様式で改変されてよい。いくつかの実施形態では、薬剤の構造的アナログは、薬剤と異なり、薬剤の少なくとも1つの原子、官能基、または下部構造が、アナログ中の異なる原子、官能基、または下部構造によって置き換えられる。いくつかの実施形態では、薬剤の構造的アナログは、薬剤と異なり、薬剤中に存在する少なくとも1つの水素または置換基が、アナログ中の異なる部分(例えば、異なる置換基)によって置き換えられる。いくつかの実施形態では、アナログは、標的と反応して共有結合を形成する部分を構成してもよい。
「評価する」、「判定する」、「評価する」、「アッセイする」という用語は、任意の形態の検出または測定を指すために、本明細書で同義的に使用されて、および物質、シグナル、疾患、病状などが存在するか否かを判定することを含む。評価の結果は、定性的および/または定量的用語で表されてもよい。評価は、相対的または絶対的であってもよい。「存在を評価する」ことは、存在する何かの量を判定すること、あるいはそれが存在するか否かを判定すること含む。
「生物学的過程」は、例えば、細胞、組織、器官、および生物などの完全な生きている単位の機能に関する、規定される開始および終結がある任意の操作または分子事象セットであってもよい。典型的に、これは、分子機能の1つまたは複数の規則正しいアセンブリーによって達成される、一連の事象である。「生物学的経路」は、細胞内で特定の生成物または変化をもたらす、細胞内の分子による、および分子間の、任意の一連の作用および/または相互作用であってもよい。典型的に、生物学的過程は、1つまたは複数の生物学的経路を包含し、またはそれを通じて実施される。生物学的経路としては、例えば、代謝、遺伝情報処理(例えば、転写、翻訳、RNA輸送、RNA分解;タンパク質の折り畳み、選別、分解、翻訳後修飾;DNA複製および修復)、環境情報処理(例えば、膜輸送、情報伝達)、および細胞過程(例えば、細胞周期、エンドサイトーシス、小胞輸送)などに関する経路が挙げられる。様々な上述の生物学的過程は、複数の特定経路を包含することが理解されるであろう)。いくつかの実施形態では、生物学的経路または過程は、保存されており、その中で経路または過程は、酵母および哺乳類細胞の双方に、認識できるように存在する)。
細胞マーカー」は、1つまたは複数の細胞型、細胞系、または組織型を特徴付け、示唆し、または同定する、あるいは特定状態(例えば、アポトーシスまたは非アポトーシス、分化状態、幹細胞状態などの病的または生理学的状態)を特徴付け、示唆し、または同定する、分子(例えば、タンパク質、RNA、DNA、脂質、炭水化物)、複合体、またはその一部、細胞内または上のその存在、不在、またはレベル(例えば、細胞表面における少なくとも部分的な露出)を指す。いくつかの実施形態では、細胞マーカーは、例えば、タンパク質の共翻訳または翻訳後修飾などの、分子または複合体の特定の修飾の存在、不在、またはレベルを含んでなる。レベルは、例えば、高い/低い;数値的などの多様な異なる様式で報告されてもよい。特定の細胞マーカーの存在、不在、またはレベルは、患者、器官、組織、または細胞の特定の生理学的なまたは病的状態を示唆してもよい。例えば、関心のある細胞型を同定しまたは分離する、疾患を診断するなど、複数の細胞マーカーが評価されてもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、2〜10個の細胞マーカーが評価されてもよい。細胞の上にまたは表面に存在する細胞マーカーは、「細胞表面マーカー」(CSM)と称されてもよい。CSMは、細胞表面に部分的に露出するのみであってもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、CSMまたはその一部は、このような細胞が位置する環境内に存在する特異的結合因子にアクセスできるため、結合因子を使用して、例えば、細胞を同定し、標識し、分離し、または標的化してもよい。いくつかの実施形態では、CSMは、その少なくとも一部が細胞の原形質膜外部に位置するタンパク質である。CSMの例としては、細胞外ドメイン、チャンネル、および細胞接着分子のある受容体が挙げられる。いくつかの実施形態では、受容体は、成長因子受容体、ホルモン受容体、インテグリン受容体、葉酸受容体、またはトランスフェリン受容体である。細胞マーカーは、細胞型特異的であってもよい。細胞型特異的マーカーは、一般に、多くのまたは大多数のその他の細胞型(例えば、体内または人工的環境内のその他の細胞型)の中または上よりも、特定の細胞型または細胞型群の中または上に(表面に)、高レベルで発現しまたは存在する。場合によっては、細胞型特異的マーカーは、関心のある特定の細胞型の中または上のみに検出可能レベルで存在し、その他の細胞型の上には存在しない。しかし有用な細胞型特異的マーカーは、関心のある細胞型に,絶対的に特有でなくてもよく、特有でないことが多い。例えば細胞型特異的マーカーなどの細胞マーカーは、特定の細胞型の中または表面に、例えば、複数の(例えば、5〜10;10〜20、またはそれを超える)の異なる組織または器官からの細胞をほぼ同等量で含有する混合物からなってもよい参照細胞集団よりも、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍または少なくとも3倍高いレベルで存在してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、細胞型特異的マーカーなどの細胞マーカーは、参照集団におけるその平均的発現の少なくとも4〜5倍、5〜10倍、10倍〜20倍、20倍〜50倍、50倍〜100倍のレベル、または100倍を上回るレベルで存在してもよい。例えばCSMなどの細胞マーカーは、細胞内画分、細胞小器官、細胞断片、またはその中にそれが存在する細胞から生じるその他の物質内に存在してもよく、このような物質を同定、検出、または分離するために使用してもよいものと理解される。一般に、細胞マーカーのレベルは、ノーザンブロット法、原位置ハイブリダイゼーション、RT−PCR、配列決定、免疫ブロット法などの免疫学的方法、免疫組織化学的検査、蛍光標識抗体での染色に続く蛍光検出(例えば、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡検査)、マーカーと特異的に結合する非抗体リガンドを使用する同様の方法、オリゴヌクレオチドまたはcDNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ分析、質量分析法などの標準的な技術を使用して判定されてもよい。例えば細胞型特異的CSMなどのCSMは、細胞を検出または分離するために使用してもよく、または薬剤を細胞に送達するための標的として使用してもよい。例えば薬剤は、CSMと結合する部分に連結してもよい。適切な結合部分としては、例えば、小型分子、アプタマー、またはポリペプチドなどの抗体またはリガンドが挙げられる。所望ならば、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えばCSMなどの細胞マーカーを発現する細胞が、発現しない細胞から分離され得る。いくつかの実施形態では、特異的結合因子が使用されて、CSMを発現する細胞が、発現しない細胞から物理的に分離され得る。いくつかの実施形態では、フローサイトメトリーが使用されて、例えばCSMなどの細胞マーカーを発現する細胞が定量化され、または例えばCSMなどの細胞マーカーを発現する細胞が、発現しない細胞から分離される。例えばいくつかの実施形態では、細胞が、CSMと結合する蛍光標識抗体に接触される。次に蛍光活性化細胞分類(FACS)を使用して、蛍光に基づいて細胞を分離する。
2つの残基が、1つまたは複数の対応する機能を果たし、および/または第1および第2の核酸またはタンパク質内の対応する位置にある場合、第1の核酸またはタンパク質内のヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、第2の核酸またはタンパク質内の残基に「対応する」。対応する機能は、必要に応じて、2つの核酸またはタンパク質の環境の違いを考慮に入れて、典型的に、同一、同等、または実質的に同等の機能である。対応する位置の残基は、典型的に、下で言及されるような(「同一性」を参照されたい)、配列アライメントアルゴリズムまたはコンピュータプログラムを使用して、同一性を最大化するように(ギャップ導入を許して)2つの核酸またはタンパク質の配列を整列させると互いに整列し、および/またはタンパク質の三次元構造を重ね合わせると、残基が重なりまたは構造的に同等の位置を占め、および/または同一、同等、または実質的に同等の分子内および/または分子間接触または結合(例えば水素結合)を形成するような位置にある。構造は、例えば、X線結晶構造解析またはNMRによって実験的に判定されもよく、または例えば、構造予想または分子モデル化ソフトウェアを使用して予測されてもよい。整列は、比較される核酸またはポリペプチド配列の1つまたは複数および全長にわたってもよく、または少なくとも1つのタンパク質領域(またはタンパク質領域をコードするヌクレオチド配列)にわたってもよい。タンパク質「領域」は、例えば、ポリペプチド鎖の独立した折りたたみ単位などのタンパク質の特徴的な機能および/または構造単位である。いくつかの実施形態では、領域は、NCBIのConserved Domain Database(Marchler-Bauer A et al.(2013),”CDD:conserved domains and protein three-dimensional structure”,Nucleic Acids Res.41(D1):D384-52)中で、領域と同定されるタンパク質配列の一部である。いくつかの実施形態では、対応するアミノ酸は、2つの配列内で同一であり(例えば、リジン残基、スレオニン残基)、あるいは互いに保存的置換と見なされる。対応する残基の例としては、(i)2つの相同的な酵素の触媒残基、および(ii)相同タンパク質の構造または機能に対する類似効果を有する、対応する構造または機能ドメイン内における、特定タイプの翻訳後修飾(例えば、リン酸化)のための部位が挙げられる。
コンピュータ支援」は、本明細書の用法では、その中でコンピューターシステムが使用されて、情報(例えば、データ、結果、構造、配列など)が、収集され、処理され、操作され、提示され、視覚化され、受領され、伝送され、保存され、または別の様式で処理される方法を包含する。方法は、コンピュータのプロセッサに命令を実行させて、データまたはその他の情報を収集、処理、操作、提示、受領、伝送、または保存させるステップを含んでなってもよい。命令は、コンピュータ可読媒体を含んでなるコンピュータプログラム製品内で、具現化されてもよい。
「検出試薬」は、例えば遺伝子産物またはその他の検体に特異的に結合する薬剤などの関心のある遺伝子産物またはその他の検体を特異的に検出するのに有用な薬剤を指す。検出試薬として有用な薬剤の例としては、例えば、検出されるRNAまたはDNAとハイブリダイズする、核酸プローブまたはプライマー;検出されるポリペプチドに結合する抗体、アプタマー、または小分子リガンドなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、検出試薬は、標識を含んでなる。いくつかの実施形態では、検出試薬は、担体に付着する。様々な実施形態において、このような付着は、共有結合または非共有結合であってもよい。担体に、検出試薬または分析物を結合させるための適切な方法は、当業者には明らかであろう。担体は、実質的に平面のまたは扁平の担体であってもよく、または担体は、例えば、微粒子(「ビーズ」、「微小球」とも称される)、ナノ粒子(または同様の用語)、または微粒子集団のような、ほぼ球状の担体などの微粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、担体は、スライド、チップ、またはフィルターである。いくつかの実施形態では、担体は、ウェル、またはその他の容器、流路、フローセルなどの内面の少なくとも一部である。担体は、硬質、可撓性、固体、または半固体(例えばゲル)であってもよい。担体は、例えば、ガラス、石英、プラスチック、金属、ケイ素、アガロース、ナイロン、または紙などの多様な材料を含んでなってもよい。担体は、例えば、検出試薬または検体が付着するのに適する反応性官能基を含んでなるポリマーまたは材料で、少なくとも部分的に被覆されてもよい。
「新薬の開発につながる標的」は、例えば、小分子によって、そのレベルまたは活性が調節可能な(調節されることができる)タンパク質またはRNAなどの生体分子を指す。特定の実施形態では、新薬の開発につながる標的は、それに対して少なくとも1つの小分子調節因子が同定されている、生体分子である。特定の実施形態では、このような調節は、例えば、タンパク質活性試験などの細胞内非含有アッセイで検出可能である。特定の実施形態では、このような調節は、標的を発現する細胞を使用する、細胞ベースのアッセイで検出可能である。任意の適切なアッセイを使用してもよい。当業者は、タンパク質活性を測定するための多くの適切なアッセイを承知しており、既知のまたは予測されるタンパク質活性を考慮に入れて、適切なアッセイを選択できるであろう。活性は、例えば、結合活性、触媒活性、輸送体活性、または任意のその他の生物学的活性であってもよい。いくつかの実施形態では、標的の調節は、標的の過剰発現によって、または標的をコードする遺伝子の欠失によって、誘発される、表現型の少なくとも部分的な回復によって検出されてもよい。特定の実施形態では、新薬の開発につながる標的は、少なくとも1つの小分子と高親和性で結合することが知られているまたは予測される、タンパク質またはRNAなどの生体分子である。特定の実施形態では、タンパク質ファミリーのメンバーであるタンパク質は、1つまたは複数の小型分子が、ファミリーのその他のメンバーを調節し、またはそれらに結合することが知られていれば、「新薬の開発につながる」ことが予測される。特定の実施形態では、タンパク質は、無細胞アッセイを使用した調節因子の同定に適する酵素活性を有すれば、「新薬の開発につながる」ことが予測される。いくつかの実施形態では、タンパク質は活性形態で生成または精製し得て、その活性を測定するのに使用し得る少なくとも1つの既知の基質を有する。
薬剤(またはこのような薬剤を含有する組成物)の「有効量」または「有効用量」は、例えば、選択された投与形式、手段、および/またはスケジュールによって、細胞または生物に送達された際に、所望の生物学的および/または薬理学的効果を達成するのに十分な量を指す。当業者には理解されるように、有効な特定の薬剤または組成物の絶対量は、所望の生物学的または薬理学的評価項目、送達される薬剤、標的組織などの要素次第で変動してもよい。当業者は、様々な実施形態において、「有効量」を単回用量で、または複数回投与の使用を通じて、細胞に接触させても、または対象に投与してよいこともさらに理解するであろう。
「発現」という用語は、それによって核酸(例えばDNA)が転写されてRNAを生じ、(当てはまる場合)RNA転写物がプロセシングされてポリペプチドに翻訳される過程を包含する。
「機能獲得」は、一般に、参照と比較した、新規、改変、および/または異常機能の獲得、または機能の増大を指す。参照は、例えば、正常な遺伝子産物(例えば、その配列が参照配列と同一である遺伝子産物)が保有する、または健康な細胞または対象に見られる、機能のレベルまたは平均レベルであってもよい。平均値は、任意の数の値の間で計算してもよい。特定の実施形態では、参照レベルは、参照範囲の上限であってもよい。特定の実施形態では、機能、は、参照レベルの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%増大してもよい。特定の実施形態では、機能が、参照レベルの1〜2倍、2〜5倍、5〜10倍、10〜20倍、20〜50倍、50〜100倍、またはそれを超えて増大してもよい。特定の実施形態では、機能は、神経変性疾患と統計的に有意な相関がある、またはそれとの原因となる関係が実証された、レベルまたは範囲に、増大されてもよい。遺伝子中の「機能獲得」変異は、正常な遺伝子の遺伝子産物と比較して、新規のおよび異常な機能、または機能の異常な増大を得るように、遺伝子の遺伝子産物を変化させ、または遺伝子産物の発現レベルを増大させる。機能は、正常な遺伝子産物の活性とは異なるという点で新規であってもよく、または遺伝子産物の正常な活性の増加または調節不全に起因してもよい。機能獲得変異を保有する遺伝子によってコードされる改変遺伝子産物は、例えば、遺伝子産物が、正常な遺伝子産物と異なる細胞分子または構造と相互作用する能力を有するようにする、または遺伝子産物を誤った場所に局在化しまたは調節不全にする、1つまたは複数の改変残基を有してもよい。本明細書の目的では、機能獲得変異は、優性阻害変異を包含する。優性阻害変異は、変性遺伝子産物をもたらし、それは、正常な遺伝子産物の機能を欠いて、例えば、結合パートナー、リガンド、多分子複合体構成要素(例えばオリゴマー)、または基質などの文脈で、正常な遺伝子産物と競合することで、正常な遺伝子産物に拮抗的に作用するが、その文脈において遺伝子産物の正常な機能を満たすことができない。優性阻害変異を保有する遺伝子によってコードされる改変遺伝子産物は、例えば、正常な遺伝子産物と競合する十分な構造を保持する、正常な遺伝子産物のトランケート型または別の改変形態であってもよい。いくつかの実施形態では、二倍体細胞または生物内の機能獲得変異に起因する表現型または疾患は、常染色体優性遺伝様式を有する。「機能」は、遺伝子産物の任意の生物学的活性であってもよい。生物学的活性は、例えば、特定の反応を触媒してもよく、特定の分子または複合体に結合してもまたはそれを輸送してもよく、細胞または細胞群によって実行されまたは対象内で起こる、生物学的過程に関与しまたは干渉してもよい。機能獲得変異から生じる特定の機能、または機能喪失変異のために失われる特定の機能は、既知であっても未知であってもよい。
「遺伝子産物」(本明細書では「遺伝子発現産物」または「発現産物」とも称される)という用語は、遺伝子から転写されたRNAおよびこのようなRNAの翻訳から生じるポリペプチドなどの遺伝子の発現から得られる生成物を包含する。特定の遺伝子産物は、細胞内でプロセッシングまたは修飾されてもよいことが理解されるであろう。例えば、RNA転写物は、mRNA翻訳に先だって、スプライスされ、ポリアデニル化などされてもよく、および/またはポリペプチドは、分泌シグナル配列除去、細胞小器官標的化配列除去、またはリン酸化、脂肪性アシル化などのような修飾などの共翻訳または翻訳後プロセシングを受けてもよい。「遺伝子産物」という用語は、このようなプロセシングされたまたは修飾された形態を包含する。ヒトをはじめとする多様な種からのゲノム配列、mRNA配列、ポリペプチド配列は、当該技術分野で公知であり、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nih.gov)またはUniversal Protein Resource(www.uniprot.org)で利用できるものなどの、公的にアクセス可能なデータベース内で利用できる。データベースとしては、例えば、GenBank、RefSeq、Gene、UniProtKB/SwissProt、UniProtKB/Tremblなどが挙げられる。一般に、対象遺伝子のために、例えばNCBI Reference Sequenceデータベース中のmRNAおよびポリペプチド配列などの配列を遺伝子産物配列として使用してもよい。同一種の個人間に、複数の対立遺伝子が存在してもよいことが理解されるであろう。例えば、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、最大でヌクレオチドの約1%、2%、3〜5%)の相違が、所与の種の個人間に存在してもよい。遺伝コードの縮重のために、このような変動は、コードされたアミノ酸配列を変化させないことが多いが、コードされたタンパク質の配列に変化をもたらすDNA多形性は存在し得る。多型変異体の例は、例えばNCBIウェブサイトwww.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/で利用できる一塩基多型データベース(dbSNP)である。(Sherry ST,et al.(2001).”dbSNP:the NCBI database of genetic variation”.Nucleic Acids Res.29(1):308-311;Kitts A,and Sherry S,(2009).NCBI Handbook[インターネット]中のヌクレオチド配列多様性の一塩基多型データベース(dbSNP).McEntyre J,Ostell J,editors.Bethesda(MD):National Center for Biotechnology Information(US);2002(www.ncbi.nlm.nih.gov/bookshelf/br.fcgi?book=handbook&part=ch5)。特定のタンパク質の複数イソ型が、例えば、代案のRNAスプライシングまたは編集の結果として存在してもよい。一般に、特に断りのない限り、本開示の態様が遺伝子または遺伝子産物に関係する場合、妥当であれば、アレル変種またはイソ型に属する実施形態が包含される。特定の実施形態は、例えば、特別な対立遺伝子またはイソ型などの特別な配列を対象としてもよい。
「遺伝子ネットワーク」は、遺伝子が関与する相互作用を示す、すなわち、どの遺伝子対が相互作用するかを示す情報と共に、セット中の各遺伝子が、セット中の少なくとも1つのその他の遺伝子と、少なくとも1つの相互作用を有することを特徴とする、一連の遺伝子を指す。2つの遺伝子が遺伝的に相互作用すれば、および/または物理的に相互作用する遺伝子産物(タンパク質またはRNA)をコードすれば、それらは相互作用すると見なされる。遺伝子ネットワークは、相互作用する遺伝子が線(エッジ)で結ばれるグラフとして、表されてもよい。線は、相互作用の性質および/または相互作用物の性質に関する情報をコードしてもしなくてもよい。このような情報は、例えば、その中で1つの遺伝子が、それが相互作用する遺伝子に影響を及ぼす方向を表示する(例えば遺伝子がエフェクターである)矢印の形態で、または色、幅、またはパターンなどの線の特性によって、コードされてもよい。「ノード」は、ネットワーク内の少なくとも2つのその他の遺伝子と相互作用する遺伝子である。ネットワーク内の各遺伝子は、「ノード」を表す。遺伝子相互作用は、その中で第1の遺伝子またはそのコードされた遺伝子産物が、第2の遺伝子またはそのコードされた遺伝子産物に影響を及ぼし得る様々な様式のいずれかを包含する。遺伝子の効果は、遺伝子によってコードされる遺伝子産物、典型的にタンパク質によって、達成されることが多く、このような効果は、別の遺伝子または遺伝子群の1つまたは複数の遺伝子産物上で発揮される。したがって「遺伝子の発現または活性」は、遺伝子によってコードされる遺伝子産物の発現または活性を包含すると理解されるべきである。同様に「遺伝子の発現または活性に対する効果」は、遺伝子それ自体でなく、遺伝子の遺伝子産物の発現または活性に対する効果を典型的に指す。したがって、遺伝子相互作用は、その中で第1の遺伝子の遺伝子産物のレベルの発現または活性が、第2の遺伝子の遺伝子産物の発現または活性のレベルに影響を及ぼし得る、または第2の遺伝子の遺伝子産物の表現型発現に影響を及ぼし(例えば、抑制しまたは増強し)得る、様々な様式のいずれかを包含する。例としては、例えば、発現を増強または抑制して、表現型効果、合成増殖欠陥、合成レスキュー、合成致死性を増強または抑制することなどが挙げられる。
「同一性」または「同一性百分率」は、2つ以上の核酸またはポリペプチドの配列が同一である程度の尺度である。関心のある配列Aと第2の配列Bの間の同一性百分率は、同一性を最大化するようにギャップ導入を許容して配列を整列させ、同一残基の対生残基(ヌクレオチドまたはアミノ酸)数を判定して、TGAおよびTGB(ここでTGAおよびTGBは、アライメント中の配列AおよびB内の残基数と内部ギャップ位置の合計である)の最小値で除して、100を乗じることで、計算されてもよい。特定の同一性百分率を達成するのに必要な同一残基数を計算する際に、分数の端数を丸めて、最も近い整数にする。配列は、当該技術分野で公知の多様なコンピュータプログラムの使用によって、整列させ得る。例えば、BLAST2、BLASTN、BLASTP、Gapped BLASTなどのコンピュータプログラムを使用して、アライメントを作成し、および/または同一性百分率を得てもよい。Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:5873-5877,1993のように修正された、KarlinおよびAltschulのアルゴリズム(Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:22264-2268,1990)が、Altschul et al.のNBLASTおよびXBLASTプログラム(Altschul,et al.,J.MoI.Biol.215:403-410,1990)に組み込まれている。いくつかの実施形態では、比較目的でギャップありアライメントを得るために、Altschul et al.(Altschul,et al.Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997)に記載されるようにして、Gapped BLASTが使用される。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用してもよい。www.ncbi.nlm.nih.govのURLを有するウェブサイト、またはMcGinnis,S.and Madden,TL,W20-W25 Nucleic Acids Research,2004,Vol.32のウェブサーバー版を参照されたい。その他の適切なプログラムとしては、CLUSTALW(Thompson JD,Higgins DG,Gibson TJ,Nuc Ac Res,22:4673-4680,1994)、およびGAP(GCG Version 9.1;これはNeedleman&Wunsch,1970アルゴリズム(Needleman SB,Wunsch CD,J Mol Biol,48:443-453,1970を実行する)が挙げられる。同一性百分率は、評価ウィンドウにわたって評価してもよい。いくつかの実施形態では、評価ウィンドウは、比較される配列の最短長さの例えば100%など、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを上回る長さを有してもよい。いくつかの実施形態では、評価ウィンドウは、少なくとも100;200;300;400;500;600;700;800;900;1,000;1,200;1,500;2,000;2,500;3,000;3,500;4,000;4,500;または5,000アミノ酸である。いくつかの実施形態では、評価ウィンドウにわたり、いずれかの配列のまたは双方の配列の位置の20%、10%、5%、または1%以下が、ギャップによって占められる。いくつかの実施形態では、いずれかの配列のまたは双方の配列の位置の20%、10%、5%、または1%以下が、ギャップによって占められる。
「単離」は、1)自然界では通常結合する成分の少なくとも一部から分離され;2)人の手が関与する工程によって調製または精製され;および/または3)例えば人工的環境内に存在するなど自然界で生じないことを意味する。いくつかの実施形態では、単離細胞は、対象から取り出され、生体外で生成され、細胞内集団またはサンプル内の少なくともいくつかのその他の細胞から分離された細胞であり、あるいは細胞内集団またはサンプル内の少なくともいくつかのその他の細胞が除去または排除された後に、残留する細胞である。
「標識」(「検出可能標識」とも称される)という用語は、それが構成する、またはそれが付着する実体の検出、および任意選択的に定量化を容易にする、任意の部分を指す。一般に、標識は、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的または別の手段によって検出可能であってもよい。いくつかの実施形態では、検出可能標識は、光学的に検出可能なシグナル(例えば発光および/または吸光)を生じて、それは、例えば、視覚的に、または光学顕微鏡、分光光度計、蛍光顕微鏡、蛍光試料読み取り装置、蛍光活性化細胞選別装置、カメラなどの適切な計測手段を使用して、または光検出器を含む任意の装置を使用して検出され得る。様々な実施形態で使用してもよい標識としては、例えば、有機材料(有機小分子フルオロフォア(時に「染料」と称される)、失活剤(例えば、ダーククエンチャー)、ポリマー、蛍光性タンパク質をはじめとする);酵素;金属キレート、金属粒、コロイドの金属、金属および半導体ナノ結晶(例えば量子ドット)などの無機材料;天然起源または合成ルシフェリンなどの酵素触媒酸化時にルミネセンスを示す化合物(例えば、ホタルルシフェリンまたはセレンテラジンおよび構造的関連化合物);ハプテン(例えば、ビオチン、ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン);放射性原子(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125Iなどの放射性同位体)、安定同位体(例えば、13C、2H);磁性または常磁性分子または粒子など;例えば、アクリジン染料をはじめとする蛍光染料;BODIPY、クマリン、シアニン染料、ナフタレン(例えば、塩化ダンシル、ダンシルアミド)、キサンテン染料(例えば、フルオレセイン、ローダミン)、および前述のいずれかの誘導体が挙げられる。蛍光染料の数例として、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Alexa(登録商標)Fluor染料、DyLight(登録商標)Fluor染料、FITC、TAMRA、Oregon Green染料、Texas Redが挙げられる。蛍光性のタンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色、サファイア、黄色、赤色、オレンジ色、およびシアン蛍光性タンパク質および増強GFP(eGFP)などの蛍光性変種、mCherry、mTomato、mStrawberryなどのmFruits;R−フィコエリトリンなどが挙げられる。酵素として有用な標識としては、例えば、基質に作用して、着色、蛍光性、またはルミネセンス物質を生じる酵素が挙げられる。実施例としては、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼが挙げられる。ルシフェラーゼとしては、様々な昆虫(例えば、ホタル、甲虫)および海洋生物(例えばウミシイタケ属(Renilla)などの刺胞動物(例えば、ウミシイタケ(Renilla reniformis)、ガウシア属(Gaussia)(例えば、ガウシア・プリンケプス(Gaussia princeps))またはメトリディア属(Metridia)(例えば、メトリディア・ロンガ(Metridia longa)、メトリディア・パシフィカ(Metridia pacifica)などのカイアシ類から得られるもの、および天然起源タンパク質の修飾バージョンが挙げられる。標識するおよび/または標識または標識実体を検出するための多種多様なシステムが、当該技術分野で公知である。多数の検出可能な標識と、それらの使用、検出、修飾、および/または核酸またはタンパク質などの生体分子への組み込みまたは連結(例えば、共有結合または非共有結合付着)方法などが、Life Technologiesのウェブサイトhttp://www.invitrogen.com/site/us/en/home/References/Molecular-Probes-The-Handbook.html)で、オンライン利用できる、Iain Johnson,I.,and Spence,M.T.Z.(Eds.),The Molecular Probes(登録商標)Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies.11th edition(Life Technologies/Invitrogen Corp.)、およびHermanson,GT.,Bioconjugate Techniques,2nd ed.,Academic Press(2008)に記載される。多数の標識が、反応性官能基に付着しまたは組み込まれる誘導体として、利用可能であるため、標識は、好都合には、適切な第2の官能基を含んでなる、生体分子または関心のあるその他の実体と共役結合し得る(第2の官能基は、生体分子で自然発生してもよく、または合成中または合成後に導入されてもよい)。例えば、活性エステル(例えばスクシンイミジルエステル)、カルボン酸塩、イソチオシアン酸塩、またはヒドラジン基をアミノ基と反応させ得て;カルボジイミドをカルボキシル基と反応させ得て;マレイミド、ヨードアセトアミド、またはアルキル臭化物(例えば臭化メチル)をチオール(スルフヒドリル)と反応させ得て;アルキンをアジ化物と反応させ得る(銅触媒による、または銅を含まないアジ化物−アルキン付加環化などのクリックケミストリー反応を通じて)。したがって、例えばフルオロフォアまたはハプテンのN−ヒドロキシスクシニド(NHS)官能化誘導体(ビオチンなど)は、タンパク質のリジン側鎖内に存在する、または合成中に核酸に組み込まれる、アミノアリル修飾ヌクレオチド内に存在するような、第一級アミンと反応し得る。様々な実施形態において、標識は、実体に直接付着させてもよく、または例えば、1〜4、4〜8、8〜12、12〜20原子、またはそれを上回る長さを有してもよい、アルキル、アルキレン、アミノアリル、アミノアルキニル、またはオリゴエチレングリコールスペーサーまたは連結基などの、スペーサーまたは連結基を通じて実体に付着させてもよい。標識または標識実体は、様々な実施形態において、直接検出可能または間接的に検出可能であってもよい。標識または標識部分は、直接検出可能であってもよく(すなわち、例えばフルオロフォアが直接検出可能であるなど、それは任意のさらなる反応または試薬が検出可能であることを必要としない)、またはそれは間接的に検出可能であってもよい(例えばフルオロフォアまたは酵素などのレポーターを含んでなる適切な抗体との反応後に、免疫染色法によってハプテンが検出可能である;酵素が基質に作用して直接検出可能シグナルを生じるなど、例えばそれは、検出可能な別の実体との反応または結合を通じて検出可能になってもよい)。標識は、標識または標識実体の検出に加えて、またはその代わりに、多様な目的のために使用してもよい。例えば標識を使用して、標識を含んでなる、またはそれに付着する標識を有する、物質を分離または精製し得る。本明細書で使用される「標識」という用語は、実体(例えば、分子、プローブ、細胞、組織など)が検出され得るように、実体が標識を含んでなり、またはそれと(例えば、共有結合または非共有結合を通じて)物理的に結合することを示す。いくつかの実施形態では、検出可能標識は、それが測定し得るシグナルを生じて、その強度が標識の量に関連する(例えば、比例する)ように選択される。いくつかの実施形態では、2種以上の異なる標識または標識実体が使用され、または組成物内に存在する。いくつかの実施形態では、標識は、互いに区別できるように選択されてもよい。例えば、それらは異なる波長で吸光または発光してもよい。いくつかの実施形態では、標識は、互いに相互作用するように選択されてもよい。例えば、第1の標識は、例えばFoerster共鳴エネルギー転移(FRET、一般に蛍光共鳴エネルギー転移とも称される)などの、共鳴エネルギー転移(RET)における無放射の双極子−双極子カップリングを通じて、受容体分子の役割を果たす第2の標識に、エネルギーを転移する供与体分子であってもよい。
「機能喪失」は、一般に、基準レベルと比較した、機能の低下または機能の不在を指す。基準レベルは、正常な遺伝子産物が保有する、または健康な細胞または対象に見られる、例えば正常なまたは平均的な機能レベルであってもよい。特定の実施形態では、基準レベルは、基準範囲の下限であってもよい。特定の実施形態では、機能は、基準レベルの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%低下してもよい。遺伝子中の「機能喪失」変異は、常態では、遺伝子の遺伝子産物によって提供される、少なくとも1つの機能の損失(低下または不在)を引き起こす変異を指す。遺伝子中の機能喪失変異は、(例えば、遺伝子の発現低下、遺伝子産物の安定性低下、またはその双方に起因する)変異、変異遺伝子によってコードされる遺伝子産物の分子あたりの活性低下、またはその双方がある、細胞または対象内で、遺伝子の遺伝子産物の総レベルの低下をもたらしてもよい。発現、レベル、分子あたりの活性、または全機能の低下は、部分的または完全であってもよい。完全機能喪失をもたらす変異、またはこのような変異を保有する対立遺伝子は、それぞれ、ヌル変異またはヌル対立遺伝子と称されてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子中の機能喪失変異は、遺伝子の正常な対立遺伝子によってコードされる遺伝子産物のレベルまたは活性と比較して、変異遺伝子の遺伝子産物のレベルまたは活性に、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%の低下をもたらす。機能喪失変異は、挿入、欠失、または点変異であってもよい。例えば、点変異は、触媒領域または結合領域などの、活性に寄与しまたは必須である領域の少なくとも一部を欠く、正常遺伝子産物の切断型をもたらす、早期停止コドンを導入してもよく、または触媒残基、翻訳後修飾部位などの活性に寄与しまたは必須である、アミノ酸を改変してもよい。いくつかの実施形態では、二倍体細胞または生物内の機能喪失変異に起因する表現型または疾患は、常染色体劣性遺伝様式を有する。
本明細書の用法では、「調節する」は、レベル、応答、特性、活性、経路、またはプロセスを低下させ(例えば、阻害し、低下させ、抑制する)または増大する(例えば、刺激し、活性し、増強する)ことを意味する。「調節物質」は、レベル、応答、特性、活性、経路、またはプロセスを調節できる薬剤である。調節物質は、阻害剤、拮抗薬、活性化剤、または作動薬であってもよい。いくつかの実施形態では、調節は、例えば、関連レベル、応答、特性、活性、経路、またはプロセスの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の阻害または増大などの変化を指してもよい。
「誤った折り畳み」は、例えば、細胞または生物内においてタンパク質がその中でその正常な生物学的機能を遂行する三次構造などの、その正常な三次元立体構造を獲得または維持することの失敗を指す。いくつかの実施形態では、誤った折り畳みは、2、3、またはそれを超えるタンパク質分子(例えば最長約10〜20個のタンパク質分子)を含んでなる可溶性オリゴマーの形成を含んでなり、その中で、オリゴマーは、タンパク質の正常な機能を遂行しない(例えばオリゴマー化が、タンパク質の正常なアセンブリーまたは活性化経路の一部でない)。いくつかの実施形態では、誤った折り畳みは、例えば、光学的顕微鏡検査を使用してそれらが検出されるのに十分なサイズの凝集体などの、より大型のタンパク質凝集体形成を含んでなる。いくつかの実施形態では、凝集体は、アミロイドを含んでなる。当該技術分野で公知のように、アミロイドは、クロスβシート構造によって特徴付けられる、タンパク質凝集体である。アミロイドは、典型的に、約5〜10nm幅のクロスβ原線維(「フィラメント」とも称される)から構成され、その中では、ポリペプチドが原線維軸に垂直であり水素結合が平行であるβシートに、ポリペプチド鎖が配列される。アミロイドは、蛍光染料、旋光分析、円二色性、FTIR、立体配座特異的抗体、またはX線回析などの方法を使用して、同定されてもよい。例えば、アミロイドは、典型的に、アミロイドへの結合に際した、チオフラビンTまたはコンゴレッドなどの平面芳香族染料の蛍光強度の変化の検出によって同定し得る。「誤って折り畳まれたタンパク質」は、適切な折り畳みができず、折り畳みがほどけ、異常な立体配座に折り畳まれ、および/または機能不全オリゴマーまたはより大型のタンパク質凝集体を成形し、またはその中でそれが機能不全オリゴマーまたは例えばアミロイドなどのより大型のタンパク質凝集体を形成しやすい立体配座にある、タンパク質である。
「核酸」は、「ポリヌクレオチド」と同義的に使用され、ヌクレオチドのポリマーを包含する。「オリゴヌクレオチド」は、例えば、典型的に、約4〜約100ヌクレオチド(nt)長、8〜60ntまたは10〜40nt長などの、比較的短い核酸を指す。ヌクレオチドとしては、例えば、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAまたはRNAを含んでなり、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、標準核酸塩基(「塩基」と称されることが多い)を含んでなり、またはそれのみを含む。標準塩基は、シトシン、グアニン、アデニン(DNAおよびRNAに見られる)、チミン(DNAに見られる)、およびウラシル(RNAに見られる)であり、それぞれC、G、A、T、およびUと略記される。いくつかの実施形態では、核酸は、1つまたは複数の非標準核酸塩基を含んでなってもよく、それは、様々な実施形態中で、天然起源または非天然起源(すなわち、人造;天然に見られない)であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸は、1つまたは複数の化学的または生物学的に修飾された塩基(例えば、アルキル化(例えばメチル化)塩基;修飾糖類(例えば、2’−O−アルキルリボース(例えば2’−O−メチルリボース)、2’−フルオロリボース、アラビノース、またはヘキソース);ホスホロチオエート、5’−N−ホスホラミダイト、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、炭酸塩、ホスフェートトリエステル、アセトアミダート、カルボキシメチルエステル、およびペプチド結合)などの修飾リン酸基または修飾ヌクレオシド間結合(すなわち、例えば1つの糖分子の3’炭素原子と別の糖の5’炭素原子の間などの連続ヌクレオシド間のリン酸ジエステル結合以外の結合)を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、修飾塩基は、それに共有結合的に付着する標識(例えば、フルオロフォア染料などの小型有機分子)を有する。いくつかの実施形態では、標識またはそれに標識が付着し得る官能基は、その位置における修飾が、ハイブリダイゼーションを顕著に妨げないように、ワトソン・クリック塩基対形成に関与しない位置に組み込まれ、またはそこに付着する。例えば、UTPおよびdUTPのC−5位は、ワトソン・クリック塩基対形成に関与せず、修飾または標識の付着に有用な部位である。いくつかの実施形態では、「修飾核酸」は、(1)そのヌクレオシドの少なくとも2つが、非標準ヌクレオシド間結合(すなわち、1つのヌクレオチドの5’末端と別のヌクレオチドの3’末端の間のリン酸ジエステル結合以外の結合)によって共有結合する;(2)それが、(修飾塩基、砂糖、またはリン酸塩を含んでなってもよい)1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを組み込む;および/または(3)常態では、本質的に核酸と結合しない化学基が、核酸に共有結合的に付着することを特徴とする核酸である。修飾核酸としては、例えば、ロックド核酸(その中で1つまたは複数のヌクレオチドが、2’酸素と4’炭素を結合する追加の架橋で修飾される、すなわち、少なくとも1つの2’−O,4’−C−メチレン−β−D−リボフラノシルヌクレオチド)、モルホリノ(その中で核酸塩基の少なくとも一部が、デオキシリボースまたはリボース環の代わりにモルホリン環と結合し、リン酸塩の代わりにホスホロジアミデート基を介して連結する、核酸)、およびペプチド核酸(その中で主鎖が、ペプチド結合によって連結する反復するN−(2−アミノエチル)−グリシン単位から構成され、核酸塩基がメチレンカルボニル結合によって主鎖に連結する)が挙げられる。修飾は、核酸中のどこで起こってもよい。修飾核酸は、その長さの一部または全部の全域にわたり修飾されてもよく、交互の修飾および未修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシド間結合を含有してもよく、あるいは1つまたは複数の未修飾核酸断片と1つまたは複数の修飾核酸断片を含有してもよい。修飾核酸は、複数の異なる修飾を含有してもよく、それは異なるタイプであってもよい。修飾核酸は、同一核酸塩基配列を有する未修飾対応物と比較して、安定性の増大(例えば、自発的またはヌクレアーゼ触媒加水分解に対する感受性の低下)またはハイブリダイゼーション特性の変化(例えば、相補的核酸などの標的に対する親和力または特異性の増大)を有してもよい。いくつかの実施形態では、修飾核酸は、それに共有結合的に付着する標識を有する、修飾核酸塩基を含んでなる。研究または治療目的の、核酸検出試薬、RNA干渉(RNAi)、アプタマー、またはアンチセンスベースの分子の文脈で、有用であることが当該技術分野で知られている、非標準ヌクレオチドおよびその他の核酸修飾が、本発明の様々な実施形態で使用するために検討される。例えば、The Molecular Probes(登録商標)Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies(上で引用);Bioconjugate Techniques(上で引用);Crooke,ST(ed.)Antisense drug technology:principles,strategies,and applications,Boca Raton:CRC Press,2008;Kurrcek.J.(ed.)Therapeutic oligonucleotides,RSC biomolecular sciences.Cambridge:Royal Society of Chemistry,2008を参照されたい。核酸は、一本鎖、二本鎖、または部分的二本鎖であり得る。少なくとも部分的二本鎖核酸は、例えば、5’および/または3’オーバーハングなどの1つまたは複数のオーバーハングを有し得る。核酸配列が本明細書で開示される場合、その補体および二本鎖形態もまた開示されるものと理解すべきである。
「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって連結するアミノ酸のポリマーを指す。タンパク質は、1つまたは複数のポリペプチドを含んでなる分子である。ペプチドは、例えば、4〜60aa;8〜40aa;10〜30aaなど、典型的に、約2〜100アミノ酸(aa)長の比較的短いポリペプチドである。「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、区別なく使用してもよい。一般に、様々な実施形態において、ポリペプチドは、標準アミノ酸のみを含有してもよく、または(天然起源または非天然起源アミノ酸であってもよい)1つまたは複数の非標準アミノ酸および/またはアミノ酸類似体を含んでなってもよい。「標準アミノ酸」は、哺乳類によって、通常タンパク質の合成で使用され、遺伝コードによってコードされる、20個のL−アミノ酸のいずれかである。「非標準アミノ酸」は、哺乳類によって、通常タンパク質の合成で使用されないアミノ酸である。非標準アミノ酸としては、(20個の標準アミノ酸以外の)天然起源アミノ酸、および非天然起源アミノ酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、非標準天然アミノ酸は、哺乳類に見られる。例えば、オルニチン、シトルリン、およびホモシステインは、哺乳類代謝において重要な役割を有する、天然起源非標準アミノ酸である。非標準アミノ酸の例としては、例えば、単独または多重ハロゲン化(例えばフッ素化)アミノ酸、D−アミノ酸、ホモアミノ酸、N−アルキルアミノ酸(プロリン以外)、デヒドロアミノ酸、芳香族アミノ酸(ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン以外)、およびα,α二置換アミノ酸が挙げられる。例えば、ポリペプチド中のアミノ酸の1つまたは複数などのアミノ酸は、例えば、アルキル基、アルカノイル基、炭水化物基、リン酸基、脂質、多糖類、ハロゲン、共役結合のためのリンカー、保護基などの部分の共有結合などの付加によって、修飾されてもよい。修飾は、例えば、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル末端など、ポリペプチド中のどこで起こってもよい。所与のポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含有してもよい。ポリペプチドは、分枝であってもよく、またはそれらは分枝含有または非含有の環状であってもよい。ポリペプチドは、ポリマーまたはポリマーマトリックス、デンドリマー、ナノ粒子、微粒子、リポソームなどと共役し、それによってカプセル化され、またはその中に包埋されてもよい。修飾は、様々な実施形態で、ポリペプチドにアミノ酸が組み込まれる前またはその後に起こってもよい。ポリペプチドは、例えば、天然原料から精製されても、組換えDNA技術を使用して適切な発現系において生体外でまたは(例えば、組換え宿主細胞によって、または遺伝子組換え動物または植物内で)生体内で生成されても、従来の固相ペプチド合成などの化学的手段を通じて、および/または合成ペプチドの化学的ライゲーションを伴う方法(例えば、Kent,S.,J Pept Sci.,9(9):574-93,2003または米国特許出願公開第20040115774号明細書を参照されたい)を通じて、または前述の任意の組み合わせを通じて、合成されてもよい。
本明細書の用法では、「毒剤」という用語は、細胞内にまたは細胞の環境内に存在すると、細胞機能または構造に障害を引き起こす物質、またはこのような物質に代謝されまたは別の様式で変換される物質を指す。毒剤としては、例えば、酸化ストレッサー、ニトロソ化ストレッサー、プロテアソーム阻害剤、ミトコンドリア機能阻害剤、イオノフォア、空胞ATPアーゼ阻害剤、小胞体(ER)ストレス誘導物質、および小胞体関連分解(ERAD)阻害剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、毒剤は、神経系組織の損傷を選択的に引き起こす。毒剤としては、直接有毒な薬剤と、直接有毒な物質に代謝されまたはそれを生じる薬剤とが挙げられる。「毒剤」という用語は、典型的に、通常、検出可能な損傷効果を発揮するのに十分なレベルで、細胞の正常な環境内に存在しない薬剤を指すものと理解される。典型的に、それらは、例えば1mM未満、例えば500μM未満、例えば100μM未満などの比較的低濃度で存在すると、損傷効果を発揮する。毒剤は、典型的に閾値濃度を有し、それ未満では、検出可能な損傷効果を発揮しないものと理解される。特定の閾値濃度は、因子と、潜在的に、細胞型、環境内に存在するその他の因子などのその他の要素次第で、変動する。代表的な閾値濃度は、1nM〜100nM、100nM〜1μm、1μm〜10μm、または10μm〜100μmの範囲であってもよい。「酸化ストレッサー」は、反応性酸素化学種のレベル増大、および/または反応性化学種またはそれらの活性を通じて生成される中間体を解毒する、または生じた損傷(例えばDNAまたはその他の生体分子の損傷)を修復する、生体系の能力の低下を引き起こし、システムに構造および/または機能障害をもたらす、因子を指す。「ニトロソ化ストレッサー」は、反応性窒素化学種のレベル増大、および/または反応性化学種またはそれらの活性を通じて生成される中間体を解毒する、または生じた損傷(例えばDNAまたはその他の生体分子の損傷)を修復する、生体系の能力の低下を引き起こし、システムに構造および/または機能障害をもたらす薬剤を指す。プロテアソーム阻害剤としては、例えば、MG−132(CAS番号133407−82−6)およびボルテゾミブが挙げられる。ミトコンドリア機能阻害剤としては、例えば複合体I阻害剤などの、ミトコンドリア複合体I〜Vのいずれかを阻害するミトコンドリア酸化リン酸化の阻害剤などの化合物が挙げられる。空胞ATPアーゼ阻害剤としては、例えば、バフィロマイシンおよびコンカナマイシンが挙げられる。(Fiebiger,E.,et al.(2004)Dissection of the dislocation pathway for type I membrane proteins with a new small molecule inhibitor,eeyarestatin.Mol.Biol.Cell 15,1635-1646)。選択的に、ドーパミン作動性ニューロンの変性を引き起こす薬剤としては、例えば、MPTP、MPP+、6−ヒドロキシドーパミン、ノルサルソリノール、およびロテノンが挙げられる。
本明細書の用法では、「精製された」という用語は、それらが、自然界で伴う、または最初に生成された時点で伴う、または精製前に伴う、大部分の成分から分離された薬剤を指す。一般に、このような精製は、人の手による措置を伴う。精製薬剤は、部分的精製、実質的精製、または純粋であってもよい。このような薬剤は、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えて純粋であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸、ポリペプチド、または小分子は、それが、それぞれ調製物内に存在する、全核酸、ポリペプチド、または小分子材料の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて構成するように精製される。いくつかの実施形態では、例えば、核酸、ポリペプチド、または小分子などの有機物は、それが、調製物内に存在する全有機材料の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて構成するように精製される。純度は、例えば、乾燥重量、クロマトグラフィートレーシング(GC、HPLCなど)上のピークサイズ、分子存在量、電気泳動法、ゲル上のバンド強度、分光学的データ(例えばNMR)、元素分析、ハイスループット配列決定、質量分析法、または任意の技術分野で認められた定量化法に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、水、緩衝物質、イオン、および/または小型分子(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸などの合成前駆体)が、任意選択的に、精製品中に存在し得る。精製薬剤は、その他の物質(例えばその他の細胞物質)からそれを分離することで、または所望の純度を得る様式でそれを製造することで、調製されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞によって生成された分子に関する「部分的精製」は、細胞によって生成された分子が、例えば、細胞が溶解して、任意選択的に、細胞物質の少なくとも一部(例えば、細胞壁、細胞膜、細胞細胞小器官)が除去され、および/または分子が、溶解産物内に存在した同一タイプ(タンパク質、RNA、DNAなど)の少なくともいくつかの分子から分離または隔離されるなどして、もはや細胞内に存在しないことを意味する。
例えば、遺伝子産物、生物学的活性、細胞、または対象に関連する値の基準範囲などの値の「基準範囲」は、正常または対照遺伝子産物または健康な細胞または対象から測定された値の95%、またはいくつかの実施形態では、90%が入る範囲を指し、あるいは健康な細胞または対象の平均値と比較して、神経変性疾患一般とまたは関心のある特定の神経変性疾患と、統計的に有意な相関を有しない値のみを包含する範囲を指す。基準範囲は、集団の代表的サンプルから確立されてもよい。いくつかの実施形態では、基準範囲は、健康なようであり、または少なくとも関心のある特定の神経変性疾患を含まず、および疾患を発症するリスク増大がないと思われている、複数の対象から得られる、遺伝子産物または健康な細胞の測定を実施することで、確立されてもよい。
「サンプル」という用語は、通常、何かの量または部分を指すために使用してもよい。サンプルは、より多くの量または実体から採取されたより少ない量であってもよい;しかし、適切な場合、完全な検体もまた、サンプルと称されることがある。サンプルは、それがサンプルするより大量の実体に類似し、それを代表することが意図されることが多い。いくつかの実施形態では、サンプルは、評価(例えば、試験、分析、測定)または使用のために、提供されるまたは提供されたまたは提供されるであろう物質の量である。サンプルは、任意の生物学的検体であってもよい。いくつかの実施形態では、サンプルは、血液、脳脊髄液、(CSF)、痰、リンパ液、粘液、唾液、腺分泌物、または尿などの体液を含んでなる。いくつかの実施形態では、サンプルは、細胞、組織、または細胞物質(例えば、細胞溶解産物またはそれらの画分などの細胞に由来する物質)を含んでなる。サンプルは、対象から得られてもよい(すなわち、対象に由来して、最初に対象から除去された)。対象から生物学的サンプルを得る方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、切除生検、切開生検、コア生検などの組織生検;穿刺吸引生検;外科的切除、ブラッシング;潅注;または血液、痰、リンパ液、粘液、唾液、または尿などの細胞を含有してもよい体液の収集が挙げられる。サンプルは、それがサンプルするより大量の実体に類似し、それを代表することが意図されることが多い。細胞系のサンプルは、その細胞系の細胞の限定数を含んでなる。いくつかの実施形態では、サンプルは、神経変性疾患と診断されまたはそれを有することが疑われる個人から得てもよい。いくつかの実施形態では、サンプルは、皮膚または血液から得られる。いくつかの実施形態では、サンプルは、少なくともいくつかの無傷の細胞を含有する。いくつかの実施形態では、サンプルは、それからそれが取り出された組織の微小構造の少なくとも一部を保持する。サンプルは、例えば、対象から得た後に、1つまたは複数の加工段階を受けてもよく、および/または1つまたは複数の部分に分けられてもよい。サンプルという用語は、加工サンプル、サンプルの一部などを包含し、このようなサンプルは、当てはまる場合、最初のサンプルが取り出された対象から得られたと見なされる。サンプルは、対象から直接得られてもよく、あるいは例えば、対象に生検、外科手術、またはその他の処置を実施することで、対象から直接サンプルを得た1人または複数の個人から、サンプルを受け入れることで、間接的に得られてもよい。いくつかの実施形態では、輸送、処理、分析、および/または保存中に、サンプルを同定するのに使用してもよい識別子(ID)をサンプルに割り当ててもよい。いくつかの実施形態では、サンプルIDは、サンプルが由来する対象に対応して、サンプルおよび/またはサンプル評価によって得られる結果が、対象とマッチできるようにする。いくつかの実施形態では、サンプルは、それに貼られた識別子を有する。
「小分子」は、本明細書の用法では、質量が約2キロダルトン(kDa)未満の有機分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、約1.5kDa未満、または約1kDa未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約800ダルトン(Da)、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da、または100Da未満である。頻繁に、小分子は、少なくとも50Daの質量を有する。いくつかの実施形態では、小分子は、非重合性である。いくつかの実施形態では、小分子は、アミノ酸でない。いくつかの実施形態では、小分子は、ヌクレオチドでない。いくつかの実施形態では、小分子は、糖類でない。いくつかの実施形態では、小分子は、複数炭素−炭素結合を含有して、例えば、アミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基などのタンパク質との構造的相互作用(例えば水素結合)に重要な、1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の官能基を含んでなり得て、いくつかの実施形態では、少なくとも2つの官能基を含んでなり得る。小型分子は、上の官能基の1つまたは複数で任意選択的に置換された、1つまたは複数の環状炭素または複素環式構造および/または芳香族または多環芳香族構造を構成することが多い。
「特異的結合」は、一般に、標的分子(例えばポリペプチド)または複合体と、抗体、アプタマーまたはリガンドなどの結合因子との間の物理的結合を指す。結合は、典型的に、結合因子によって認識される、抗原決定基、エピトープ、結合ポケットまたは裂溝などの標的の特定の構造的特徴の存在に左右される。例えば、抗体がエピトープAに対して特異的であれば、遊離標識Aとそれに結合する結合因子との双方を含有する反応物中における、エピトープA含有ポリペプチドの存在、または遊離未標識Aの存在は、結合因子と結合する標識Aの量を典型的に低下させる。特異性は絶対的でなくてもよいが、通常、文脈上その中で結合が起こることを指すものと理解される。例えば、場合によっては、抗体が、標的内に存在するものに加えて、その他のエピトープと交差反応してもよいことが、当該技術分野で周知である。このような交差反応性は、それに対して抗体が使用される用途次第で、許容可能なこともある。当業者は、例えば、あらゆる所与の用途(例えば標的分子検出)を適切に遂行するのに十分な特異性を有する、抗体、アプタマー、またはリガンドなどの結合因子を選択できるであろう。特異性が、例えば、競合相手などのその他の標的に対する結合因子の親和力と対比した、標的に対する結合因子の親和力などの追加的な要素の文脈で、評価されてもよいこともまた理解される。結合因子が、検出が所望される標的分子に対して高親和性を示し、非標的分子に対して低親和性を示す場合、結合因子は、許容される試薬である可能性が高い。1つまたは複数のコンテクストにおいて結合因子の特異性がひとたび確立されたら、その特異性を必ずしも再評価することなく、それを例えば、類似アッセイまたはアッセイ条件のような類似コンテクストなどのその他のコンテクストで、用いてもよい。いくつかの実施形態では、結合因子の特異性は、標的の欠如が予測されるサンプル(例えば、その中で標的をコードする遺伝子が抑止または事実上阻害されている細胞からのサンプル)上で、適切なアッセイを実施して、アッセイが背景と有意差があるシグナルをもたらさないことを示すことで、試験し得る。いくつかの実施形態では、第1の実体(例えば、分子、複合体)は、それが、このような結合が起きる環境内に存在するその他の実体の大部分または全てよりも、実質的により大きな親和力で第2の実体と結合すれば、および/または2つの実体が、例えば、10−5M以下、例えば、10−6M以下、10−7M以下、10−8M以下、10−9M以下、または10−10M以下などの、10−4以下の平衡解離定数Kdで結合すれば、第2の実体と「特異的に結合する」と言われる。Kdは、例えば、表面プラズモン共鳴ベースの方法、等温滴定熱量計、示差走査熱量測定、分光法−ベースの方法などの当該技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して測定し得る。「特異的結合因子」は、例えば、「標的」と称されてもよい、分子または分子複合体などの別の実体に特異的に結合する実体を指す。「特異的結合対」は、互いに特異的に結合する2つの実体(例えば、分子または分子複合体)を指す。例は、ビオチン−アビジン、抗体−抗原、相補的核酸、受容体−リガンドなどである。
「対象」は、様々な実施形態において、任意の脊椎動物であってもよい。対象は、例えば、実験、診断、および/または治療目的で薬剤が投与された、またはそれからサンプルが入手された、またはそれに対して処置が実施された、個体であってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、例えばヒト、非ヒト霊長類、または齧歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ)などの哺乳類である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、少なくとも50、60、70、80、または90才である。
本明細書の用法では、「治療する」、「治療」および同様の用語は、対象を治療する文脈で、対象に、医学的および/または外科的管理を提供するステップを指す。治療は、薬剤または組成物(例えば医薬組成物)を対象に投与することを含んでもよいが、これに限定されるものではない。治療は、典型的に、対象に有益な様式で、疾患(この用語は、治療を正当化するまたは潜在的に正当化する、任意の疾患、障害、症候群または望ましくない状態を示すために使用される)の経過を変化させる努力の一環として実施される。治療の効果としては、疾患をあるいは疾患の1つまたは複数の症状または徴候を、逆転させ、緩和させ、重篤性を低下させ、発生を遅延させ、治癒させ、進行を阻害しおよび/または発生のまたは再発の可能性を低下させることが挙げられる。治療薬は、疾患を有し、または一般人口構成員と比較して疾患の発症リスクが高い、対象に投与してもよい。いくつかの実施形態では、治療薬は、疾患を有していたが、もはや疾患の形跡を示さない対象に投与してもよい。治療薬は、例えば、明白な疾患の再発可能性を低下させるために、投与してもよい。治療薬は、予防的に、すなわち、疾患の任意の症状発生または顕性化前に投与してもよい。「予防処置」は、例えば疾患が発生する可能性を低下させ、または疾患が発生したならばその重篤性を低下させるために、疾患を発症していない、または疾患の形跡を示さない対象に、医学的および/または外科的管理を提供することを指す。対象は、疾患を発症するリスクがあると同定されていてもよい(例えば、一般人口と比較してリスクが増大している、または疾患の発症可能性を増大させるリスク因子を有する。
特定のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「変種」は、それぞれ、「元のポリペプチド」または「元のポリヌクレオチド」と称されてもよい、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと比較して、1つまたは複数の付加、置換、および/または欠失を有する。付加は、挿入であってもよく、またはいずれかの末端にあってもよい。変種は、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドより短くても、またはそれより長くてもよい。「変種」という用語は、「断片」を包含する。「断片」は、元のポリペプチドよりも短い、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの連続部分である。いくつかの実施形態では、変種は、断片を含んでなり、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、断片または変種は、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを上回る長さである。断片は、N末端、C末端、または内部断片であってもよい。いくつかの実施形態では、変種ポリペプチドは、元のポリペプチドの少なくとも1つの領域を含んでなり、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、変種ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%にわたって、配列が、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一である、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含んでなり、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、変種ポリペプチドの配列は、元の配列と比較してN個のアミノ酸相違を有する配列を含んでなり、またはそれからなり、Nは、最大で、元のポリペプチド中のアミノ酸数の1%、2%、5%、または10%の任意の整数であり、「アミノ酸相違」は、アミノ酸の置換、挿入、または欠失を指す。いくつかの実施形態では、置換は、保存的置換である。保存的置換は、例えば、関与する残基の、側鎖サイズ、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいて起こってもよい。いくつかの実施形態では、保存的置換は、表Aに従って起こってもよく、その中では、保存的置換において、2列目の同一ブロックおよび3列目の同一行中のアミノ酸が、互いに他方を置換してもよい。特定の保存的置換は、2列目のブロックに対応する3列目の1つの行のアミノ酸を、2列目の同一ブロック内の3列目の別の行からのアミノ酸で置換する。
いくつかの実施形態では、プロリン(P)、システイン(C)、またはその双方は、それぞれ個別のグループに含まれると見なされる。特定グループ内において、特定の実施形態では、例えば、イソロイシンによるロイシン置換(または逆もまた然り)、スレオニンによるセリン置換(または逆もまた然り)、またはグリシンによるアラニン置換(または逆もまた然り)などの特定の置換が、特に興味深くあってもよい。
いくつかの実施形態では、変種は、生物学的活性変種、すなわち、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの少なくとも1つの活性を少なくとも部分的に保持する変種である。いくつかの実施形態では、変種は、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの既知の生物学的に意義深い機能の2つ以上、または実質的に全てを少なくとも部分的に保持する。活性は、例えば、触媒活性、結合活性、生物学的構造またはプロセスを遂行しまたはそれに関与する能力などであってもよい。いくつかの実施形態では、変種の活性は、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えて、様々な実施形態では、最大で元のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性のおよそ100%、およそ125%、またはおよそ150%であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば生物学的活性変種などの変種は、元のポリペプチドの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%または100%にわたって、元のポリペプチドと、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または100%同一であるポリペプチドを含んでなり、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、例えば機能的変種における、例えば置換または欠失などの改変は、例えば既知のまたは予測される、触媒残基または基質または補助因子の結合に関与する残基などの、活性に重要であることが知られてまたは予測されている、アミノ酸またはヌクレオチドを変化または欠失させない。変種は、1つまたは複数の適切なアッセイで試験して、活性を評価してもよい。
「ベクター」は、例えば、関心のある核酸を、異なる遺伝環境間でまたは細胞内に、転移、輸送するなどの侵入仲介能力がある、いくつかの核酸分子またはウイルスまたはその部分のいずれであってもよい。関心のある核酸は、例えば制限およびライゲーションなどを使用して、例えばベクター中に挿入するなど連結させてもよい。ベクターとしては、例えば、DNAまたはRNAプラスミド、コスミド、天然または修飾ウイルスゲノムまたはその部分、ウイルスキャプシド内にパッケージし得る核酸、ミニ染色体、人工染色体などが挙げられる。プラスミドベクターは、典型的に、(例えば原核細胞内の複製のための)複製起点を含む。プラスミドは、ウイルスゲノムの一部または全部を含んでもよい(例えば、ウイルスプロモーター、エンハンサー、プロセッシングまたはパッケージングシグナル、および/または宿主細胞ゲノムに組み込み得る核酸を生じるのに、および/または伝染性ウイルスを生じるのに十分な配列)。細胞内に核酸を導入するのに使用し得るウイルスまたはその部分は、ウイルスベクターと称されてもよい。ウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、ワクシニアウイルスおよびその他のポックスウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)などが挙げられる。ウイルスベクターは、宿主細胞に導入した際に伝染性ウイルスを生成するための十分なウイルス遺伝情報を含有してもよくまたは含有しなくてもよく、すなわち、ウイルスベクターは、複製能力があってもまたは複製欠陥であってもよい。例えば伝染性ウイルス生成のための十分な情報が欠如しているいくつかの実施形態では、例えばウイルスの生成が所望される場合、宿主細胞によってまたは細胞に導入された別のベクターによって、情報が提供されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ウイルス生成が所望されない場合、このような情報は提供されない。移入される核酸は、天然または修飾ウイルスゲノムまたはその一部に組み込まれてもよく、または別個の核酸分子としてウイルスキャプシド内に存在してもよい。ベクターは、ベクターを取り込んだ細胞を同定および/または選択するのに適するマーカーをコードする、1つまたは複数の核酸を含有してもよい。マーカーとしては、例えば、抗生物質またはその他の薬剤に対する耐性または感受性のいずれかを増大または低下させる様々なタンパク質(例えば、ピューロマイシン、ハイグロマイシンまたはブラストサイジンなどの抗生物質に対する耐性を与えるタンパク質)、その活性が当該技術分野で公知のアッセイによって検出可能な酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、およびそれらを発現する細胞の表現型に検出可能な影響を及ぼすタンパク質またはRNA(例えば蛍光タンパク質)が挙げられる。ベクターは、例えば、発現される核酸などの核酸をベクターに挿入するのを容易にするために使用してもよい、制限酵素のための1つまたは複数の適切に配置された部位を含むことが多い。発現ベクターは、それが調節要素(「制御配列」、「発現制御要素」、または「発現調節配列」とも称される)と作動可能に連結するように、所望の核酸がその中に挿入される、または挿入されてもよい、ベクターであり、RNA転写物(例えば、タンパク質に翻訳され得るmRNAまたはshRNAなどの非コードRNAまたはmiRNA前駆体)として表されてもよい。発現ベクターは、例えば、少なくともいくつかの条件下で、作動可能に連結する核酸の転写を誘導するのに十分な発現調節配列などの制御配列を含み;発現に必要なまたは役立つその他の要素は、例えば宿主細胞によって、または生体外発現系によって、提供されてもよい。このような制御配列典型的に、プロモーターを含み、エンハンサー配列または上流活性化配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ベクターは、切断および/またはポリアデニル化シグナルを含んでなってもよい、5’非翻訳領域および/または3’非翻訳領域をコードする配列を含んでもよい。一般に、調節要素は、その発現が所望される核酸の挿入前にベクターに含有されてもよく、または挿入された核酸に含有されてもよく、またはその発現が所望される核酸の挿入に続いてベクターに挿入されてもよい。本明細書の用法では、核酸および調節要素は、核酸の発現または転写を調節要素の影響または抑制下に置くように共有結合する場合に、「作動可能に連結する」と言われる。例えば、核酸転写をもたらす能力がプロモーター領域にある場合、プロモーター領域は、その核酸と作動可能に連結する。当業者は、遺伝子発現に有用な制御配列の正確な性質が、種または細胞型間で変動してもよいが、一般に、必要に応じて、転写開始、RNAプロセシング、または翻訳開始に関与する配列を含んでもよいことを認識する。適切なベクターおよび調節要素の選択およびデザインは、当業者の能力と自由裁量の範囲内である。例えば、当業者は、所望の種(例えば哺乳類種)または細胞型における発現のために、適切なプロモーター(またはその他の発現調節配列)を選択する。ベクターは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、シミアンウイルス(例えばSV40)、乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルスまたは哺乳類細胞に感染するその他のウイルスからの適切なウイルスプロモーター;または例えば、EF1alpha、ユビキチン(例えば、ユビキチンBまたはC)、グロビン、アクチン、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)などの遺伝子からの哺乳類プロモーター;またはCAGプロモーター(CMV初期エンハンサー要素およびニワトリβアクチンプロモーター組み合わせ)などの複合プロモーターなどの哺乳類細胞中で発現を誘導できるプロモーターを含有してもよい。いくつかの実施形態では、ヒトプロモーターを使用してもよい。いくつかの実施形態では、真核生物RNAポリメラーゼII(「pol IIプロモーター」)またはそれらの機能的変種によって、通常、転写を誘発するプロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、例えば、(5S rRNA以外の)リボソームRNAの転写のためのプロモーターなどの真核生物RNAポリメラーゼIプロモーターまたはそれらの機能的変種によって、通常、転写を誘発するプロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、例えば、真核生物RNAポリメラーゼIII(「pol IIIプロモーター」)(U6、H1、7SKまたはtRNAプロモーターまたはそれらの機能的変種)によって、通常、転写を誘発するプロモーターが使用されてもよい。当業者は、関心のある配列の転写を誘導するのに適切なプロモーターを選択する。哺乳類細胞で使用してもよい発現ベクターの例としては、例えば、pcDNAベクターシリーズ、pSV2ベクターシリーズ、pCMVベクターシリーズ、pRSVベクターシリーズ、pEF1ベクターシリーズ、Gateway(登録商標)ベクターなどが挙げられる。哺乳類細胞で使用してもよいウイルスベクターの例としては、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスおよび弱毒化ポックスウイルスなどのポックスウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルスなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、スイッチオンまたは増大またはスイッチオフまたは低下など発現を調節し得るように、例えば、調節可能プロモーターなどの調節可能(例えば、誘導性または被抑制)発現制御要素が使用される。例えば、テトラサイクリン調節可能遺伝子発現系(Gossen&Bujard,Proc.Natl.Acad.Sci.89:5547-5551,1992)またはそれらの変種(例えば、Allen,N,et al.(2000)Mouse Genetics and Transgenics:259-263;Urlinger,S,et al.(2000).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97(14):7963-8;Zhou,X.,et al(2006).Gene Ther.13(19):1382-1390を参照されたい)を用いて、誘導性または被抑制発現を与え得る。その他の誘導性/被抑制システムもまた、様々な実施形態で使用してもよい。例えば、人工または天然ホルモン受容体リガンド(例えば、天然または合成エストロゲン受容体またはグルココルチコイド受容体リガンドなどのステロイド受容体リガンド)、テトラサイクリンまたはそのアナログ、金属調節系(例えばメタロチオネインプロモーター)などの小型分子によって調節され得る発現調節要素を特定の実施形態で使用してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、1つまたは複数の選択された組織または細胞型における発現を誘導するために、組織特異的または細胞型特異的調節要素を使用してもよい。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞内で、エピソームとして安定して保持され遺伝する能力があるベクター(例えば、エプスタイン・バーウイルスベースのエピソームベクター)を使用してもよい。いくつかの実施形態では、ベクターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含んでなってもよく、その中では、ポリヌクレオチド配列が、NまたはC末端融合物が生成されるように、ベクター中に挿入された核酸と共に枠内に配置される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、標的化ペプチドであってもよい。標的化ペプチドは、シグナル配列(タンパク質分泌を誘導する)、または発現したタンパク質を核またはミトコンドリアなどの特定の細胞小器官または細胞内位置に誘導する配列を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、タグを含んでなる。タグは、それを含有するタンパク質の検出および/または精製を容易にするのに、有用であってもよい。タグの例としては、ポリヒスチジンタグ(例えば6X−Hisタグ)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、NUSタグ、SNUTタグ、Strepタグ、V5またはHAまたはMycまたはFLAGなどのエピトープタグが挙げられる。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断部位が、挿入核酸によってコードされるタンパク質とポリペプチドとの間の領域に位置して、プロテアーゼへの曝露によってポリペプチドが除去されるようにする。
II.神経変性疾患発見のための異種間プラットフォーム
本開示は、疾患または臨床表現型モデルの役割を果たすヒト誘発性神経系細胞と併せた、神経変性疾患および神経変性関連臨床表現型のための酵母モデルの使用が、創薬およびゲノム機能解析のための強力な異種間プラットフォームに相当するという洞察を提供する。いくつかの態様では、本開示は、神経変性疾患で役割を果たす、遺伝子、遺伝子相互作用、経路、および/または病理過程の同定において、酵母および誘導ヒト神経系細胞を使用する方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、神経変性疾患に焦点を置いた創薬において、酵母および誘導ヒト神経系細胞を使用する方法を提供する。
例えば、パン用酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母は、実験システムとして顕著な利点を有する。酵母は、培養して維持するのが簡単であり、短い世代時間を有して非常に遺伝的に扱いやすく、すなわちそれらは、周知の利用可能な技術と試薬を使用して、迅速に予想通りに高精度で遺伝子修飾し得て、ハイスループット化学および遺伝学的スクリーニングに適している。株内の最小の遺伝的およびエピジェネティックな変動は、スクリーニング再現性に寄与する。酵母中における大規模な遺伝的およびタンパク質相互作用分析は、酵母インタラクトーム、すなわち、細胞内分子間の物理的相互作用セットと、遺伝子間の相互作用、すなわち、酵母細胞内の遺伝子相互作用とに関するかなりの情報が、利用できることを意味する。分子相互作用は、異なる生化学的ファミリー(タンパク質、核酸、脂質、炭水化物など)に属する分子間で、そしてまた所与のファミリー内(例えばタンパク質−タンパク質相互作用)で起こり得る。酵母細胞は、神経系がある多細胞生物の複雑さを欠くものの、それらがヒト細胞と共有する高度に保存されたゲノムと真核生物細胞機構は、複雑な疾患経過の基礎となる、基本的な細胞自律性機構と物理的および遺伝子相互作用を理解する可能性を与える。
本明細書でさらに記載されるように、多種多様な神経変性疾患が、酵母中でモデル化され得る。例えば、いくつかの神経変性疾患は、特定のタンパク質の凝集、または特定遺伝子の機能獲得型変異によって特徴付けられる。凝集易発性タンパク質、または神経変性疾患に関連する機能獲得型変異を保有するタンパク質を発現するように操作された酵母細胞は、疾患に罹患している患者に由来するヒトニューロンまたはグリア細胞でもまた観察される表現型を示し得て、十分なレベルで発現すると、このようなタンパク質は酵母に有毒である。このような酵母細胞は、神経変性疾患のモデルの役割を果たす。いくつかの神経変性疾患は、特定遺伝子中の機能喪失型変異によって特徴付けられ、その多くは酵母中でホモログを有する。対応する酵母ホモログの機能喪失を有するように操作された酵母は、神経変性疾患のモデルの役割を果たす。特定の酵母モデルは、神経変性疾患に関連した有用な化合物および新規遺伝子相互作用を同定した化学的および遺伝学的スクリーニングで、使用されている。
誘導神経系細胞は、例えば、胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞などの多能性細胞から、または非神経細胞からの分化転換によって、生体外で誘導された細胞であり、神経系細胞に特徴的な形態および細胞マーカー発現などの神経系細胞に特徴的な特性を示す。誘導神経系細胞は、例えば、誘導ニューロン、誘導グリア細胞、誘導神経前駆細胞、または誘導神経性幹細胞であってもよい。「誘導神経系細胞」という用語は、それらが神経系細胞に特徴的な特性を示しさえすれば、誘導神経系細胞に由来する細胞を含む。ヒト誘導神経系細胞は、神経変性疾患の細胞モデルとしての顕著な可能性を有する。しかし、成熟して分化した誘導神経系細胞を誘導する方法は、時間がかかり労働集約的で費用がかさみ、得られた細胞培養物は、不均一なこともある。例えば、同じ分化プロトコルを使用して得られた細胞培養物は、異なる比率で異なる細胞表現型の細胞を含有してもよい。これらの要素は、創薬およびゲノム機能解析における誘導神経系細胞の使用を妨げ得る。いくつかの態様では、本明細書に記載される組成物および/または方法は、神経変性疾患創薬における、ヒト誘導神経系細胞のより効果的な使用を提供する。本明細書でさらに記載されるように、多種多様な神経変性疾患が、ヒト誘導神経系細胞内でモデル化し得る。
いくつかの態様では、ヒト誘導神経系細胞と併せて酵母モデルを使用する、本明細書に記載される方法は、神経変性疾患創薬における、酵母および/またはヒト誘導神経系細胞のより効果的な使用を提供する。いくつかの態様では、本発明は、ヒト誘導神経系細胞内で保存された疾患関連表現型を同定するために、酵母細胞を使用する方法を提供する。いくつかの態様では、本発明は、神経変性疾患創薬のための新薬の開発につながる標的を同定し、これらの標的と、これらの標的を調節する化合物から利益を受ける可能性が高い特定患者集団とをマッチングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的は、酵母ベースの遺伝的および/または化学的スクリーニングで同定される。いくつかの実施形態では、標的は、酵母ベースの遺伝的および/または化学的スクリーニングで同定された酵母遺伝子および/またはこのような遺伝子のヒトホモログを含んでなる、遺伝子ネットワークの分析を通じて同定される。いくつかの実施形態では、例えば、酵母中において、神経変性疾患のモデルの役割を果たすヒト誘導神経系細胞上で同定された小型分子などの化合物の効果を試験して、化合物が、神経変性疾患と関係する表現型のレベルを低下させることを確認することで、標的の妥当性が確認される。いくつかの実施形態では、化合物によって調節される生物学的経路または過程が、酵母中で同定される。いくつかの実施形態では、化合物の分子標的は、例えば、遺伝的アプローチ、化学遺伝的アプローチ、生化学的アプローチ、またはそれらの組み合わせを使用して、酵母中で同定される。いくつかの実施形態では、化合物の1つまたは複数の類似体が合成される。いくつかの実施形態では、化合物または化合物アナログが、候補治療薬としての役割を果たす。
一般に、本明細書で関心のある神経変性疾患は、次のような三大集団に分類され得る:
(1)その中で既知のヒトタンパク質またはRNAが凝集し、および/またはその中でこのようなタンパク質またはRNAの既知の有害な機能獲得変異があり、またはその中で(例えば、患者が1つまたは複数の追加の遺伝子コピーを有するために)タンパク質またはRNAの発現増大がある神経変性疾患。このようなタンパク質と、およびその中でタンパク質が凝集しおよび/または変異しまたは過剰発現する、神経変性疾患の例としては、α−シヌクレイン(パーキンソン病およびその他のパーキンソン症によって特徴付けられる障害)、βアミロイド(アルツハイマー病)、ポリグルタミン伸長遺伝子(ハンチントン病、運動失調)が挙げられる。このような疾患の酵母モデルは、酵母中における、該当する野性型または変異ヒトタンパク質の過剰発現によって作成され得る。本明細書でさらに詳しく考察するように、このようなタンパク質は、過剰発現されると、酵母中で毒性効果を発揮し得る。毒性は、毒性効果を軽減する化合物、および過剰発現または欠失すると毒性効果が軽減される遺伝子を同定するのに活用し得る。このような疾患のヒト神経系細胞モデルは、疾患に罹患している、または疾患に関連する遺伝子型を有する患者から、誘導ヒト神経系細胞を作成することによって、または多能性細胞に由来する、または非神経細胞からの分化転換によって誘導される、または神経前駆体に由来する、ヒト神経系細胞内の操作された誘導性過剰発現によって作成し得る。
(2)その中で既知のタンパク質機能喪失(例えば変異に起因する)がある、または/およびタンパク質が酵母ホモログを有する、神経変性疾患。このグループのための酵母モデルは、酵母ホモログの変異または欠失、または別の様式でそれを無効にすることで作成し得る。このような疾患のためのヒト神経系細胞モデルは、疾患に罹患している、または疾患に関連する遺伝子型を有する患者から、誘導ヒト神経系細胞を作成することで、または多能性細胞に由来する、または非神経細胞から分化転換によって誘導される、または神経前駆体に由来する、ヒト神経系細胞内の遺伝子中で遺伝子標的化変異または欠失を操作して、または別の様式で遺伝子を無効にすることで、作成し得る。
(3)このグループは、第1のグループの下位区分であり、その中では、酵母ホモログを有するヒト変更遺伝子(神経変性疾患の遺伝的修飾因子)中に、変異または遺伝的多様性もまたある。このグループ内の疾患を有する患者は、既知のヒト変更遺伝子の配列決定、または当該技術分野で知られている任意のその他のタイプの遺伝子型同定法などの様々なアプローチによって同定し得る。このグループ内の疾患は、グループ(1)の適切な酵母モデル(すなわち、タンパク質の過剰発現によって作成される酵母モデル)と、酵母ホモログの変異または欠失、または別の様式でそれを無効にすることとの併用によって、酵母中でモデル化され得る。このグループ内の疾患は、疾患のある患者から誘導ヒトニューロンを作成することで、またはグループ(1)の適切な操作されたヒト神経系細胞モデルと、ヒト変更遺伝子中で遺伝子標的化変異または欠失を操作し、または別の様式で、多能性細胞に由来する、または非神経細胞から分化転換によって誘導される、または神経前駆体に由来する、ヒト神経系細胞内のヒト変更遺伝子を無効にすることとの併用によって、ヒト神経系細胞内でモデル化し得る。
酵母モデルおよびヒト神経系細胞モデルは、酵母およびヒト細胞を遺伝子修飾するために、当該技術分野で公知の多種多様な方法のいずれかを使用して、作成し得るものと理解すべきである。特定の有用な方法が本明細書に記載されるが、本発明はこの点において限定されるものではないものと理解すべきである。また、酵母モデルおよび対応するヒト細胞モデルの二重用途が、特定の神経変性疾患に言及して本明細書に記載される一方で、このアプローチは、タンパク質凝集または機能獲得型変異によって特徴付けられる任意の哺乳類疾患、および酵母ホモログを有するヒト遺伝子中の機能喪失型変異によって特徴付けられる任意の哺乳類疾患に、適用されてもよいことが検討される。適切なヒト細胞モデルは、ヒト多能性細胞または前駆細胞操作と、それに続く疾患に罹患した関連ヒト細胞型への分化によって、あるいは疾患にふさわしいように、適切な細胞型を直接操作することで、作成されてもよい。
本発明の特定の態様は、酵母中で同定された遺伝的修飾因子を、時にこのような酵母遺伝子のヒトホモログと共に、神経変性疾患に関与するとされる細胞経路に関する有用な情報を伝えるネットワークにアレンジすることに関する。ネットワークは、その中で遺伝子(または、同等に、遺伝子によってコードされる遺伝子産物)がノードであり、相互作用が相互作用ノード(遺伝子)を結ぶ線として表される、グラフとして表されてもよい。いくつかの実施形態では、このような遺伝子ネットワーは、神経変性疾患の既知の遺伝的修飾因子、酵母遺伝的修飾因子のヒトホモログと相互作用するヒト遺伝子、またはその双方などの追加的なヒト遺伝子を含めることで増強される。いくつかの実施形態では、このような遺伝子ネットワークは、ヒト患者由来ニューロン内に存在する疾患関連表現型の同定を容易にして、神経変性疾患関連表現型を調節して、候補治療薬の役割を果たし得る化合物を同定するための新薬の開発につながる標的の同定を容易にする。
いくつかの態様では、本発明は、神経変性関連遺伝子の機能獲得型または機能喪失型のいずれかに関連した、遺伝子ネットワークを同定し得る方法を提供する。特定の実施形態では、方法は、既存のヒト遺伝子データセット(例えば、ヒト遺伝子に関連する神経変性疾患を同定するデータセット)と、酵母中で遺伝学的不偏スクリーニングから得られたデータセットとを交差比較して、不同性遺伝学的要因間の新規関連を発見する。「不偏」は、この文脈では、スクリーニングが、疾患に関与するとされるヒト遺伝子間の関係性に関わる(病理学または臨床表現型に基づく)あらかじめ構想された概念に依存しないことを意味する。特定の実施形態では、遺伝子ネットワークは、例えば、その機能不全が神経変性疾患に寄与し、または少なくとも部分的に引き起こす、生物学的経路および過程などの、神経変性疾患に関与するとされる生物学的経路および過程を同定する。いくつかの実施形態では、このような方法が小分子スクリーニングおよび遺伝生化学的アプローチと協調して使用され、これらの遺伝子ネットワーク内の新薬の開発につながるノードが同定される。特定の実施形態では、新薬の開発につながるノードと同定される遺伝子およびそれらの遺伝子産物は、それらが関与する生物学的経路および過程を調節する化合物を同定するための、新薬の開発につながる標的である。特定の実施形態では、小分子のスクリーニングは、本明細書に記載されるように同定された遺伝子ネットワーク内の新薬の開発につながるノードである、1つまたは複数のこのような遺伝子またはタンパク質を調節する化合物をもたらす。特定の実施形態では、化合物は、最初のヒットまたはリードに関して1つまたは複数の改善された特性がある類似体を開発するための、ヒットまたはリード化合物の役割を果たしてもよい。特定の本発明の態様次第で、例えば、新薬の開発につながる標的およびそれらを調節する化合物などのこのような知見は、例えば、酵母内で同定された遺伝子または小型分子が、患者のニューロン内でこれらの表現型を逆転させ得ることを実証することで、適切な患者集団に直接影響を及ぼし得る。
いくつかの態様では、本発明の方法は、少なくとも部分的に酵母モデルの使用を通じて、疾患に関与すると同定される、特定の生物学的経路または過程を標的とする化合物による治療から恩恵を被る患者を同定するのに、有用である。例えば、酵母神経変性疾患のモデル内の遺伝学的または化学的スクリーニングを使用して、疾患または保存された新薬の開発につながる標的に、関与するとされる保存された生物学的経路または過程が同定される。生物学的経路内にある、または生物学的過程に関与する、または遺伝子ネットワークを通じてこのような遺伝子と関連があるかのいずれかである、ヒト遺伝子に、変異または遺伝的多様性を有するヒト患者は、生物学的経路または過程または新薬の開発につながる標的を調節する化合物によって治療される候補である。場合によっては、生物学的経路または過程または新薬の開発につながる標的は、酵母中の化学スクリーニングの使用を通じて同定され、その場合、スクリーニングで同定された化合物、またはそのアナログは、例えば、生物学的経路内にある、または生物学的過程に関与する、または遺伝子ネットワークを介してこのような遺伝子と関連があるかのいずれかである、ヒト遺伝子に変異または遺伝的多様性を有する患者において、疾患を治療するための候補化合物である。
したがって、特定の本発明の態様は、疾患に関与すると酵母中で同定された、生物学的経路または過程に関与するまたは関連がある遺伝子中に、患者が変異または遺伝的多様性を有することに基づいて、神経変性疾患に罹患している患者を異なる集団に分類(層別化)できるようにして、特にこのような患者の治療に適した化合物、すなわち、同じ生物学的経路または過程を調節する化合物を同定する。生物学的経路または過程の妥当性は、例えば、酵母中で同定された化合物の使用を通じた、生物学的経路または過程の調節が、このような細胞内の疾患関連表現型に影響を及ぼすことを実証することで、このような患者に由来するヒトニューロン内で確認し得る。表現型は、酵母中のα−シヌクレイン発現に関連する表現型と同定されて、αシヌクレイン中に機能獲得型変異がある患者に由来するニューロン中の疾患関連表現型であることが確認された、ニトロソ化ストレスおよびERAD基質蓄積について本明細書に記載されるように、酵母の使用を通じて同定されてもよい。酵母中で同定された化合物は、生物学的経路または過程に関与するまたはそれと関連がある遺伝子中に、変異または遺伝的多様性を有する患者を治療するための候補治療薬であってもよく、またはこのような患者の治療に適する類似体のデザインのための出発点として使用されてもよい。したがって特定の本発明の方法は、それらの遺伝子型に基づいて、および/またはそれらに由来するニューロン中で検出可能な特定の表現型に基づいて、治療に関連するカテゴリーに、神経変性疾患がある患者を分類できるようにする。特定の本発明の方法は、特定の遺伝子型または表現型カテゴリーの患者の治療に特に適する化合物を同定できるようにする。患者は、臨床基準に基づいて、特定の神経変性疾患を有すると、診断されていなくてもよいことに留意すべきである。例えば、患者は、いくつかの異なる疾患のいずれかに一致する症状を有してもよい。患者は、遺伝子型同定または「表現型同定」し得て(すなわち、患者に由来するヒトニューロンを検査して、患者においていずれの生物学的経路または過程に欠陥があるかを判定し得て)、それに応じて適切な化合物を選択し得る。遺伝子型同定はまた、それらが症候性になる前に、または疾患初期における、患者のより効果的な予防処置も可能にし得る。いくつかの態様では、本発明の方法は、神経変性疾患のより個別化された治療法を与える。いくつかの実施形態では、特定の患者のために、酵母または誘導神経系モデルが作成され、あるいは患者の遺伝子型に一致する既存の酵母または誘導神経系モデルが選択された。このようなモデル内で疾患関連表現型を低下させる特定の化合物のアイデンティティーなどの、酵母および/または誘導神経系細胞モデルから得られる情報を使用して、患者に適する治療薬が同定される。いくつかの態様では、遺伝子型および表現型カテゴリーに関する情報は、例えばデータベースなどの持続性コンピュータ可読媒体に保存されてもよい。患者およびその患者が入るカテゴリーを同定する情報も、同様に保存されてもよい。
特定のタンパク質またはRNAの神経系内レベルまたは活性の異常は、数多くの神経変性疾患および疾患経過を引き起こし、またはそれに寄与する。いくつかの態様では、本明細書に記載されるのは、例えば、少なくともある程度は、神経変性疾患遺伝子によってコードされる遺伝子産物の異常なレベルまたは活性によって引き起こされる、細胞毒性または細胞機能不全を阻害するなど、調節する薬剤を同定、選択、および/または特性決定するのに有用な組成物および方法である。本明細書の用法では、「神経変性疾患遺伝子」は、神経系内(例えば、ニューロン、グリア細胞、またはその双方の中)のその異常なレベルまたは活性が神経変性疾患に関連する、遺伝子産物をコードする遺伝子である。このような遺伝子は、神経変性疾患に関連すると言われる。「神経変性疾患遺伝子」という用語は、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAをコードする遺伝子、およびその機能喪失が神経変性疾患に関連する遺伝子を包含する。様々な実施形態において、神経変性疾患に関連する神経変性疾患遺伝子によってコードされる遺伝子産物の異常な活性レベルは、神経変性疾患の原因であってもよく(例えば疾患が、遺伝子の変異に関連する常染色体優性または劣性遺伝様式を有する)および/または疾患の発症リスクを増大させてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子産物の異常なレベルまたは活性は、ニューロン、グリア細胞、またはその双方の損傷、機能不全、または死滅を引き起こしても、またはそれに寄与してもよい。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、遺伝性単一遺伝子疾患、すなわち、特定の遺伝子中の変異に起因し得る疾患であり、またはいくつかの実施形態では、多様な異なる遺伝子のいずれか1つの変異に起因し得る疾患であり、優勢または劣性遺伝様式を有する。いくつかの実施形態では、疾患は、優勢または劣性遺伝様式を有しない散発型と、優勢または劣性遺伝様式を有する遺伝性(家族型)形態との双方を有する。
いくつかの態様では、本明細書に記載されるのは、例えば、神経変性関連遺伝子産物によって誘発される細胞毒性を阻害するなど、調節する薬剤を同定、選択、および/または特性決定するのに有用な組成物および方法である。特定の実施形態では、遺伝子産物は、神経変性関連タンパク質である。本明細書の用法では、「神経変性関連タンパク質」(NAP)という用語は、(i)神経変性疾患を患っている個人の神経系の少なくとも一部の中に誤って折り畳まれた形態で蓄積して、ニューロン、グリア細胞、またはその双方の損傷、機能不全、および/または死滅に関連する;(ii)神経変性疾患を患っている個人において、タンパク質をコードする遺伝子中の機能獲得変異が、ニューロン、グリア細胞、またはその双方の損傷、機能不全、および/または死滅に関連することを特徴とする;または(iii)(ii)と(ii)の双方である、タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、神経変性関連RNAである。本明細書の用法では、「神経変性関連RNA」(NAR)という用語は、(a)神経変性疾患を患っている個人の神経系の少なくとも一部に異常に蓄積して、神経変性疾患を患っている個人のニューロン、グリア細胞、またはその双方の損傷、機能不全、および/または死滅に関連する;(b)神経変性疾患を患っている個人において、RNAをコードする遺伝子中の既知の変異が、ニューロン、グリア細胞、またはその双方の損傷、機能不全、および/または死滅に関連することを特徴とする;または(c)(a)と(b)の双方であるRNAを指す。
いくつかの実施形態では、誤って折り畳まれたタンパク質は、細胞内および/または細胞外凝集体を形成し、それは適切な染色による光学的顕微鏡検査および/または凝集体内に存在するタンパク質に結合する抗体を使用する免疫組織化学的検出などの適切な技術を使用した、神経系組織の病理組織学的検査に際して、細胞内または細胞外封入体または沈着として検出され得る。例えば、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、アルツハイマー病のレビー小体バリアント、および純粋自律神経失調症をはじめとする「シヌクレイン病」と称される神経変性疾患のスペクトルは、レビー小体と称されるα−シヌクレインを含有する細胞質内凝集体によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病は、パーキンソン病である。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病は、例えば、NBIA2(PLA2G6関連神経変性とも称される)またはNBIA4(C19またはf72の変異に関連する)などの脳鉄蓄積(NBIA)がある神経変性であってもよい。皮質ニューロン内のαSynの凝集は、通常、パーキンソン病認知症(PDD)として知られているPDに伴う認知症に関連し、レビー小体型認知症(DLB)として知られている病状と密接に関係している。
アミロイドβ(AβまたはAbeta)ペプチドは、アルツハイマー病(AD)患者の脳内に見られる、アミロイド斑の主成分である。
TDP−43を含有する異常な細胞質内凝集体は、時にFTLD−TDPおよびALS−TDPと称される、前頭側頭葉変性症変性(FTLD)および筋萎縮性側索硬化(ALS)の下位集団をはじめとする、「TDP−43タンパク質症」と称されるいくつかの神経変性疾患において、ニューロンに見られる。FUSは、それぞれ時にALS−FUSおよびFTLD−FUSと称される、FUSおよびユビキチンに対するニューロン封入体の免疫反応性によって特徴付けられ、TDP−43に対しては陰性であってもよい、ALSおよびFTLDの下位集団中の顕著な疾患関連タンパク質として、最近出現した。FTLD−FUSのサブタイプと見なされる疾患実体としては、ユビキチン化封入体がある非定型前頭側頭葉変性症(aFTLD−U)、ニューロフィラメント封入体疾患(NIFID)、および好塩基性封入体疾患(BIBD)が挙げられ、それらはALS−FUSと一緒にFUS病を構成する。
タウは、ニューロン内で高度に発現されるMAPT遺伝子によってコードされる、微小管(MT)安定化タンパク質である。タウのMT安定化機能は、タンパク質の軸索輸送、神経伝達物質、およびその他の細胞構成物にとって重要である。タウの誤った折り畳みと凝集は、多様な疾患で生じる(「タウオパチー」)。神経原線維濃縮体(NFT)と称されることもある、過リン酸化タウタンパク質を含んでなる不溶性タンパク性の沈着は、これらの疾患に特徴的である。神経変性タウオパチーでは、タウの誤った折り畳みと凝集は、罹患したニューロンに対して有害な帰結があるように見える軸索輸送欠陥などの欠陥に関連し、それはシナプス機能不全をもたらし得て、究極的にニューロン喪失をもたらしてもよい。神経原線維濃縮体は、β−アミロイド凝集体と並んで、AD患者の脳内における顕著な病理学的所見である。β−アミロイド凝集体不在下の顕著な繊維状タウ封入体および脳変性は、特定の神経変性タウオパチーの特徴であり、糸屑状構造物と称されるジストロフィー神経突起(軸索、樹状突起)を伴うことが多い。このような非AD神経変性タウオパチーとしては、散発性大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、およびピック病(PiD)、ならびに遺伝性前頭側頭型認知症、および染色体17に連結するパーキンソン症(FTDP−17)が挙げられる。FTDP−17は、行動のおよび人格変化、認知機能障害、および運動症状によって特徴付けられる、常染色体優性疾患である。FTDP−17は、MAPT遺伝子中の変異によって引き起こされる。
疾患のいくつかにおける凝集体は、タンパク質凝集体によって特徴付けられ、時に1つまたは複数の追加的なタンパク質を含有してもよいことに留意すべきである。さらに、同一個人において、複数タイプの凝集体が発生してもよい。例えば、タウおよびαSynの病理は、同一個人内に共存することが多く、タウ(MAPT)遺伝子座におけるハプロタイプ変動は、症例の大多数がPDに相当すると思われる、晩発性パーキンソン症の十分に確立された遺伝リスク因子である。グリア細胞の障害または機能不全は、いくつかの神経変性疾患において重要な役割果たし得ることにもまた留意されたい。例えば、ニューロンに加えて細胞質封入体がグリア細胞に見られてもよく、特定の条件では、グリア細胞質封入体が顕著である。例えば、多系統萎縮症では、α−シヌクレインから構成される凝集体を示す主な細胞型は、希突起神経膠細胞である。
これらの神経変性疾患の多くは、優勢または劣性遺伝様式によって特徴付けられることが多い家族型と、明らかな遺伝様式がなく家族型よりも後に発生することが多い散発型の双方で存在する。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAは、タンパク質をコードする遺伝子またはRNAの特定の配列変異体、またはタンパク質をコードする遺伝子またはRNA中の特定の変異が、例えば神経変性関連タンパク質またはRNAの凝集によって特徴付けられる、神経変性疾患を発症するリスクの増大などのリスクの変化に関連することを特徴とする。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAは、正常レベルと比較したタンパク質またはRNAレベルの増大が、神経変性関連タンパク質またはRNAの凝集によって特徴付けられる神経変性疾患を発症するリスクの増大に関連することを特徴とする。神経変性関連タンパク質タンパク質またはRNAの増加レベルは、例えば、RNAまたはタンパク質をコードする遺伝子の過剰発現、RNAまたはタンパク質をコードする遺伝子またはその一部の1つまたは複数の追加のコピーの存在、それらの前駆物質からのRNAまたはタンパク質の生成増大、またはRNAまたはタンパク質の安定性増大に起因してもよい。多様な異なる遺伝子中の変異は、神経変性疾患の原因として同定されており、場合によっては、このような変異は、コードされた遺伝子産物のレベルおよび/または活性の変化と明確に関連する。例えば、神経変性疾患の家族型を引き起こす変異が、α−シヌクレイン、TDP−43、およびFUSをコードする遺伝子中で同定されており、これらの変異のいくつかは、それぞれのタンパク質の誤った折り畳みと凝集を誘発することが示されている。家族型アルツハイマー病を引き起こす変異は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)(Aβ前駆物質)およびプレセニリン1および2(常態ではAPPを切断するタンパク質)をコードする遺伝子中で同定されている。APPおよびプレセニリン遺伝子中のほとんどのAD関連変異は、Aβの生成を増大させる。いくつかのその他のヒト遺伝子中の変異は、常染色体優性遺伝様式を有する神経変性疾患に関連する。(例は表Bを参照されたい)。例えば、LRRK2中の特定の変異は、常染色体優性PDまたはパーキンソン症に強く関連する。一般に、特定の遺伝子中の変異が、常染色体優性遺伝様式を有する疾患に強く関連するという発見は、変異は、疾患の病原性に重要な役割を果たす、機能獲得をもたらすことを示唆する。いくつかの実施形態では、例えば、疾患がある患者に見られる変異を有するヒト遺伝子を発現するように操作された、または動物の相同遺伝子に対応する変異を有するように操作された、マウスなどの非ヒト動物が、例えば、疾患で観察されたものに類似する表現型などの神経変性関連表現型を示す場合、関連遺伝子または変異の役割が確認されてもよい。いくつかの実施形態では、疾患を有する患者に見られる変異を有するヒト遺伝子を発現するように操作された単離ニューロンが、例えば、疾患で観察されたものに類似する表現型などの神経変性関連表現型を示す場合、関連遺伝子または変異の役割が確認されてもよい。遺伝子の機能獲得が神経変性疾患を引き起こし、または対象が神経変性疾患を発症するリスクを顕著に増大させることを特徴とする神経変性疾患遺伝子は、本明細書で「機能獲得(GOF)神経変性疾患遺伝子」と称されることもある。本開示の特定の実施形態に従って、GOF神経変性疾患遺伝子の機能獲得変異によって誘発される細胞毒性阻害する薬剤は、例えば、遺伝子中の変異に起因する遺伝子の機能獲得に関連する神経変性疾患を治療するための候補治療薬である。いくつかの実施形態では、GOF神経変性疾患遺伝子は、酵母中ホモログを有する。
特定の実施形態では、神経変性疾患は、ポリヌクレオチド伸長障害である。ポリヌクレオチド伸長障害は、典型的に遺伝子内に存在する反復の正常範囲の上限を超え、すなわち「伸長する」、遺伝子中の特定のヌクレオチド配列の複数の連続反復の存在によって特徴付けられる。正常範囲は、遺伝子間で異なる。反復の長さは、典型的に、3および6ヌクレオチドである。非罹患集団では、繰り返し配列は短く安定しており、長さの変化を示さない。罹患した個人では、配列はより長く不安定であり、反復単位を付加(伸長)する強力な傾向がある。CAG、CTG、CGG、およびGAA三つ組みをはじめとする三塩基反復(TNR)は、最も一般的な不安定疾患関連DNA反復であり、反復が三つ組みである障害は、三塩基伸長障害と称されることが多い。ポリヌクレオチド伸長障害である神経変性疾患としては、特定遺伝子のタンパク質コード部分のCAG反復伸長によって引き起こされるいくつかの障害が挙げられる。CAG反復は、ポリグルタミン(polyQ)トラクトをコードする;したがってこれらの障害もまた、ポリグルタミン伸長障害と称される。ポリグルタミン伸長障害は、異常に長いポリグルタミントラクトを含有する神経変性関連タンパク質の細胞合成と凝集によって特徴付けられる。これらの障害としては、ハンチントン病、いくつかの脊髄小脳運動失調、および球脊髄性筋肉萎縮症が挙げられる(表Bを参照されたい)。これらの疾患のいくつかで、伸長polyQトラクトをコードする、またはそれらを含有する、特定の遺伝子およびタンパク質については下でさらに考察される。PolyQ伸長障害は、典型的に、常染色体優性様式の遺伝形質(X連鎖遺伝形質を示す球脊髄性筋肉萎縮症を除く)、中年期の発症、および進行性経過を示す。典型的に、CAG反復数は、疾患の重症度と相関して、発症時の年齢と逆に相関する(すなわち、より多くの反復がある個人は、より早期に発症する傾向がある。
多数の一連の証拠は、神経変性関連タンパク質が、タンパク質の誤った折り畳みと凝集によって特徴付けられる神経変性疾患の病原性に、重要な役割を果たすことを示唆する。いくつかの実施形態では、このようなタンパク質によって誘発される細胞毒性を阻害する薬剤は、タンパク質凝集に関連する神経変性疾患を治療するための候補治療薬である。
多数の神経変性疾患は、少なくとも部分的に、特定の神経変性疾患遺伝子中の機能喪失変異からもたらされる。例は表Bを参照されたい。遺伝子の機能喪失が神経変性疾患を引き起こし、または対象が神経変性疾患を発症するリスクを顕著に増大させることを特徴とする神経変性疾患遺伝子は、本明細書で「機能喪失(LOF)神経変性疾患遺伝子」と称されることもある。LOF神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物のレベルまたは活性の低下は、ニューロン、グリア細胞、またはその双方の損傷、機能不全、または死滅を引き起こし、またはそれに寄与してもよい。いくつかの態様では、本明細書に記載されるのは、LOF神経変性疾患遺伝子の機能喪失の有害効果を阻害するなど、調節する薬剤を同定、選択、および/または特性決定するのに有用な組成物および方法である。いくつかの実施形態では、GOFまたはLOF神経変性疾患遺伝子は、酵母中ホモログを有する。このような疾患としては、特に、様々なタイプの運動失調、いくつかのサブタイプのシャルコー・マリー・トゥース病、およびシヌクレイン病でない病理学的にPDと異なる特定タイプのパーキンソン症(表Bを参照されたい)が挙げられる。PDと病理学的に異なるパーキンソン症障害は、微小管−結合タンパク質タウなどの様々なタンパク質を含有して、典型的にα−synを実質的に欠く、神経原線維濃縮体によって特徴付けられてもよい。表Cは、PDのリスク因子である特定遺伝子、およびその他の形態のパーキンソン症のリスク因子であるその他の遺伝子をはじめとする、パーキンソン症(「パーキンソン症遺伝子」)のいくつかの遺伝リスク因子を列挙する。これらのほとんどは、メンデル単一遺伝子変異リスク因子である(優勢または劣性遺伝様式を有するとして示される)。「複合型」遺伝様式は、晩発性散発性PDのための全ゲノム関連性試験(GWAS)リスク因子の必要を示す。約60の遺伝子座がOMIMデータベース中でパーキンソン症と関連する。いくつかの実施形態では、LOF神経変性疾患遺伝子は、酵母中ホモログを有する。いくつかの実施形態では、酵母ホモログの機能喪失(例えば、酵母遺伝子の破壊または欠失のために)は、酵母中に検出可能表現型をもたらす。いくつかの実施形態では、表現型は、成長速度低下および/または生存度低下である。いくつかの実施形態では、酵母中の正常な形態のヒトLOF神経変性疾患遺伝子の発現は、酵母ホモログの機能喪失変異を少なくとも部分的に補完し、すなわち、表現型を少なくとも部分的に正常化する。
特定の本発明の態様は、多様な様式のいずれかで操作された酵母細胞を使用する、神経変性疾患のモデル系に関する。特定のモデルは、疾患の特徴および/または関与する遺伝子および遺伝子産物のアイデンティティーに少なくとも部分的に基づいて選択されてもよい。例えば、本出願人らは、神経変性関連タンパク質を発現するように操作された酵母細胞を使用する神経変性疾患のモデル系を開発した。下でさらに考察されるように、これらのシステムは、多様な異なる神経変性関連タンパク質が酵母細胞に有毒であるという発見に、少なくとも部分的に基づく。十分な神経変性関連タンパク質のレベルを発現する酵母細胞は、増殖および/または生存度低下を示す。このような細胞は、とりわけ、タンパク質に関連する毒性を調節する化合物および遺伝子を同定するのに使用し得る。例えば、このような毒性を阻害する化合物は、薬剤の存在下で神経変性関連タンパク質を発現する酵母細胞を培養するし、薬剤存在下の細胞増殖または生存度を測定し、薬剤存在下で評価された細胞増殖または生存度と、薬剤不在下の細胞増殖または生存度とを比較することで、同定し得る。薬剤不在下の細胞増殖または生存度と比較して、薬剤の存在下で細胞増殖または生存度が増大する場合、薬剤は、タンパク質によって誘発される毒性を阻害する薬剤と同定される。いくつかの実施形態では、神経変性関連RNAを発現するように操作された酵母細胞を、このようなRNAの発現によって特徴付けられる、神経変性疾患のモデルとして使用してもよい。
特定の実施形態では、神経変性疾患は、関連遺伝子のタンパク質コード領域外に位置する反復によって特徴付けられるポリヌクレオチド伸長障害であり、通常、非タンパク質コード領域内のポリヌクレオチド伸長を含有するRNA転写物がもたらされる(例えば、イントロン内または5’または3’非翻訳領域内)。この障害グループとしては、筋緊張性ジストロフィー、フリードライヒ運動失調、およびいくつかのタイプの脊髄小脳性運動失調が挙げられる(表Bを参照されたい)。三つ組み反復(上述のCAGまたはその他の三塩基)は、これらの障害の大部分に見られるが、特定の障害は、その他の長さの反復を特徴とする(例えば、CCUG、AUUCU、UGGAA、またはGGGGCC反復などの4、5、または6ヌクレオチド)。遺伝子の非タンパク質コード領域内のポリヌクレオチド伸長は、遺伝子の発現低下をもたらすこともあり、次にそれは疾患をもたらす。しかし、様々な一連の証拠は、いくつかのこれらの障害において、伸長ポリヌクレオチド反復(例えば、CUG反復)がある有毒mRNA化学種が、疾患の発症に顕著に寄与することを示唆する。CUG RNA反復は、DM1がある患者の組織内で、スプライシングまたは翻訳に異常を示す、多様なmRNAのスプライシングおよび/または翻訳に影響を及ぼすタンパク質をはじめとする、RNA結合タンパク質の隔離および/または機能改変をもたらす。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド伸長障害は、罹患した組織内の異常伸長RNA転写物を含んでなる、「病巣」と称されることが多い核RNA凝集体の生成によって特徴付けられる。RNA病巣は、非コード反復伸長によって特徴付けられる、DM1およびいくつかのその他の神経変性疾患で観察される。これらの病巣は、様々なタンパク質を隔離することが示されており、毒性に寄与することもある。タンパク質コード領域内に伸長CAG反復があるmRNAを含有する核凝集体が観察されており、RNA毒性が、特定のpolyQ伸長障害で役割を果たしてもよいことが示唆される。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログを過剰発現する、または神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログの機能獲得変異を保有する、酵母細胞が、このような疾患のモデルとして使用されてもよい。いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子は、遺伝子の遺伝子産物の機能獲得が神経変性疾患に関連することを特徴とする。遺伝子産物の過剰発現または遺伝子産物の特定の変異体または変種の発現が、単離細胞または動物内で、疾患に特徴的な1つまたは複数の表現型を再現する場合、単離細胞または動物内で遺伝子量または発現をノックアウトするまたは低下させることが、これらの表現型を再現しない場合、および/またはヒト疾患が、コード遺伝子の1つまたは複数の追加のコピーを有することで引き起こされ得る場合、疾患は遺伝子産物の機能獲得に起因すると推定されてもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログ発現が低下しまたは不在である、または神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログの機能喪失変異を保有する、酵母細胞が、このような疾患のモデルとして使用されてもよい。いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子は、遺伝子の遺伝子産物の機能喪失が神経変性疾患に関連することを特徴とする。機能的遺伝子産物の生成を低下させまたは遺伝子のコピー数または発現を低下させるように、遺伝子を欠失させ、妨害し、または変異させることが、単離細胞または動物内で、疾患に特徴的な1つまたは複数の表現型を再現する場合、遺伝子産物の過剰発現または疾患に関連する遺伝子産物の特定の変異体または変種の発現が、これらの表現型を再現しない場合、および/またはその遺伝子産物の配列を変化させることなく遺伝子産物のレベルを低下させる、または遺伝子産物の優性阻害バージョンの役割を果たすのには短すぎまたは別の様式で適さない、機能的に不活性な遺伝子産物の生成をもたらす、変異によって、ヒト疾患が引き起こされ得る場合、疾患は遺伝子産物の機能獲得に起因すると推定されてもよい。
いくつかの実施形態では、(a)神経変性疾患遺伝子産物を発現する、(b)神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログを過剰発現しまたは機能獲得を有する(例えば、その機能獲得が神経変性疾患に関連する神経変性疾患遺伝子)、または(c)神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログの発現が欠如しまたは機能喪失を有する(例えば、その機能喪失が神経変性疾患に関連する神経変性疾患遺伝子)酵母細胞は、神経変性疾患の遺伝的修飾因子に関する、1つまたは複数の修飾を含有するように操作される。例えば、特定の実施形態では、酵母細胞は、(i)神経変性疾患の遺伝的修飾因子の酵母ホモログの発現変化(例えば、増大または低下)を有する;(ii)神経変性疾患の遺伝的修飾因子の酵母ホモログの配列に変化を有する(例えば、機能獲得変異または機能喪失変異);および/または(iii)神経変性疾患の遺伝的修飾因子によってコードされる遺伝子産物を発現するように操作されてもよい。いくつかの実施形態では、神経変性疾患の遺伝的修飾因子は、遺伝子の1つまたは複数の変種が、遺伝子の1つまたは複数のその他の対立遺伝子と比較して、例えば、標準配列を有し、または標準配列を有する遺伝子産物をコードする、遺伝子の対立遺伝子と比較して、疾患の発症リスクの増大に関連することを特徴とする遺伝子である。例えば、特定の位置に特定の変異または遺伝的多様性を保有する対立遺伝子(例えば、一塩基多型の特定の対立遺伝子)は、標準または最も多く見られる対立遺伝子よりも、またはこのような変異または遺伝的多様性を保有しない対立遺伝子よりも、より高い疾患リスクに関連してもよい。いくつかの実施形態では、遺伝的修飾因子に関連する酵母細胞特定の修飾は、疾患リスクの増大に関連する対立遺伝子をモデル化するように選択される。例えば、その機能喪失が、疾患に関連する遺伝的修飾因子は、遺伝的修飾因子の酵母ホモログの発現または活性を低下させることで、例えば、酵母ホモログをコードする遺伝子を欠失させまたは妨害することで、モデル化されてもよい。その機能獲得が、疾患に関連する遺伝的修飾因子は、遺伝的修飾因子の酵母ホモログの発現または活性を増大させることにで、例えば、酵母ホモログをコードする発現コンストラクトを細胞に導入することで、または内在性酵母遺伝子中に適切な変異を操作することで、または酵母細胞内の遺伝的修飾因子の遺伝子産物の異所性発現によって、モデル化されてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝的修飾因子は、全ゲノム関連性試験において、神経変性疾患リスクに影響を及ぼす遺伝子として同定されている。いくつかの実施形態では、リスク増大は、優勢または劣性遺伝様式に従わない複合型遺伝様式を有する。いくつかの実施形態では、リスク増大の規模またはオッズ比は、1.1〜約10である。遺伝的修飾因子は、細胞または対象内で、1つまたは複数のその他の遺伝子の表現型発現または遺伝子産物と相互作用しまたはそれに影響してもよい。いくつかの実施形態では、神経変性疾患の遺伝的修飾因子遺伝子は、遺伝子の遺伝子産物が、細胞または対象内で病理学的影響を有する可能性を増大させてもよい。例えば、α−Syn(または別の神経変性疾患遺伝子)の遺伝的修飾因子は、α−Synが細胞または対象内で病理学的影響を有する可能性を増大させてもよい。
特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物または方法のいずれかで使用されるヒト神経系細胞は、誘導ヒト神経系細胞である。
例えば誘導神経系細胞などの神経系細胞によって示される特定の特性および細胞マーカーは、その分化状態、細胞型またはサブタイプ、細胞外環境(例えば、細胞またはその前駆物質が曝露する培地の成分)などの様々な要素に依存してもよい。例えば誘導ニューロンなどのニューロンの場合、このような特性としては、ニューロン(例えば、軸索または樹状突起)に特徴的な細胞過程、電気的興奮性(例えば、活動電位を生じる能力)、および/またはシナプスを形成する能力が挙げられる。一般に、誘導神経系細胞は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、ウシ、イヌ、またはネコ細胞などの哺乳類細胞である。特段の規定がある場合、または文脈により他の意味であることが明白な場合を除き、本開示の目的では、「誘導神経系細胞」という用語は、ヒト誘導神経系細胞を指す。同様に、特段の規定がある場合、または文脈により他の意味であることが明白な場合を除き、「誘導ニューロン」、「誘導神経性幹細胞」、または「誘導神経前駆細胞」は、ヒト細胞を指す。しかし、本開示は、その中で誘導神経系細胞が非ヒト哺乳類細胞である実施形態もまた提供する。
多能性幹細胞および誘導神経性幹細胞は、長期のまたは無期限の自己再生能力があり、有糸分裂後ニューロンをはじめとする、成熟神経性またはグリア細胞に特徴的な特性がある細胞を生じるように、分化を誘導し得る。したがって、それらは神経変性疾患を発症した細胞型と同等の、分化した神経系細胞の継続的な供給源を提供し得る。神経変性疾患に罹患している個人から得られる細胞に由来するヒト誘導神経系細胞は、典型的に、その特定個人の全ての疾患関連遺伝性遺伝的多様性および変異を保有する。疾患に関連する関心のある1つまたは複数の特定の遺伝性遺伝的多様性または変異を天然に保持しない細胞に由来するヒト誘導神経系細胞は、このような遺伝的多様性または変異の1つまたは複数を保有するように遺伝子操作し得る。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAを発現する酵母細胞、その機能獲得が神経変性疾患に関連するヒト神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログを過剰発現する酵母細胞、またはその機能喪失が神経変性疾患に関連するヒト神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能喪失を有する酵母細胞などの、神経変性疾患のための酵母モデルの使用を通じて得られる情報は、疾患に関連する遺伝子型を有するヒト誘導ニューロンに適用される。ヒト誘導ニューロンは、神経変性疾患を有する、および/または疾患に関連する1つまたは複数の遺伝的多様性または変異を保有してもよい、患者から誘導されてもよい。いくつかの実施形態では、酵母細胞の使用を通じて入手された情報は、(i)その中で神経変性疾患遺伝子の機能獲得または喪失が神経変性疾患に関連する、神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能獲得または機能喪失の結果として生じる細胞表現型のアイデンティティー、(ii)神経変性疾患遺伝子の機能獲得または喪失に関連する毒性を調節する(例えば低下させる)化合物または遺伝子のアイデンティティー、および/または(iii)神経変性疾患遺伝子の機能獲得または喪失に関連する細胞表現型を調節する化合物または遺伝子のアイデンティティーを含んでなってもよい。酵母細胞の使用を通じて得られた情報は、例えば、神経変性関連タンパク質の発現の結果として生じる細胞表現型のアイデンティティー、神経変性関連タンパク質の毒性を調節する化合物または遺伝子のアイデンティティー、および/または細胞による神経変性関連タンパク質の発現に関連する表現型を調節する化合物または遺伝子のアイデンティティーを含んでなってもよい。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、神経変性関連タンパク質の毒性を調節する、神経変性疾患遺伝子の機能獲得または喪失に関連する毒性を調節する(例えば、低下させる)、および/または神経変性疾患感受性またはその徴候を調節する薬剤または遺伝子を同定または特性解析してもよく;および/または神経変性疾患を治療するための候補治療薬を同定または特性解析してもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患または疾患群のモデルの役割を果たす酵母によって示される表現型もまた、疾患の1つまたは複数に関連する遺伝子型を有する誘導ヒトニューロン内で検出可能である。例えば、いくつかの実施形態では、特定の疾患または疾患群に関連する神経変性関連タンパク質を発現する酵母によって示される表現型もまた、疾患に関連する遺伝子型を有する誘導ヒトニューロン内で検出可能である。本出願人らは、酵母中のNAP発現の誘導後に、比較的初期の時点で生じる表現型が、例えば疾患に罹患している患者に由来するニューロンなどの、疾患に関連する遺伝子型を有するヒト誘導ニューロン内で、検出可能であると仮定した。本出願人らは、α−シヌクレインおよびパーキンソン病において、これを確認した。実施例に記載されるように、本出願人らは、毒性誘発レベルのα−シヌクレインを発現する酵母細胞内で観察されたいくつかの表現型が、α−synの変異またはα−synをコードする遺伝子の三重化を保有する家族型パーキンソン病がある患者に由来するヒト誘導皮質ニューロン内でもまた、検出可能であることを発見した。顕著なことに、表現型は、他の研究者らによってPD患者に由来するニューロン内に検出可能表現型を引き起こす努力において使用された、MG−132(CAS番号133407−82−6)、過酸化水素、6−ヒドロキシドーパミン、コンカナマイシンA、およびバリノマイシンなどの薬剤に、生体外誘導中またはその後のいずれにおいても曝露されていないヒト誘導ニューロン内で、検出可能であった。任意の理論による制限は望まないが、例えば、神経変性疾患に関連するタンパク質を発現する酵母などの、神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母細胞内で検出可能な表現型は、疾患経過の初期段階を直接反映してもよく、疾患が症候性になる前であってもヒトニューロン内に存在してもよい。
いくつかの態様では、例えば、神経変性疾患に関連する神経変性関連タンパク質を発現する酵母などの、神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母の間で保存される表現型を阻害する能力があり、疾患に関連する1つまたは複数の変異を保有するヒトニューロンを誘導する薬剤は、疾患を治療するための候補治療薬である。いくつかの態様では、このような表現型調節する遺伝子は、疾患を治療する薬剤を同定する標的である。例えば、いくつかの実施形態では、その過剰発現または欠失が、神経変性関連タンパク質の毒性を増強または抑制する、酵母遺伝子のホモログであるヒト遺伝子の遺伝子産物のレベルまたは活性を増強しまたは阻害する薬剤は、疾患を治療するための候補治療薬である。いくつかの実施形態では、その過剰発現または欠失が、神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能獲得または喪失に関連する毒性を増強または抑制する、酵母遺伝子のホモログであるヒト遺伝子の遺伝子産物のレベルまたは活性を増大または低下させる薬剤は、神経変性疾患遺伝子の機能獲得または喪失に関連する神経変性疾患を治療するための候補治療薬である。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母細胞と、ヒトニューロンとが、同一方法で使用される。例えば、いくつかの実施形態では、ヒトニューロン内で神経変性疾患に関連する表現型を調節する薬剤を同定する方法は、(i)神経変性関連タンパク質によって誘発される毒性を酵母細胞内で調節する薬剤を同定するステップと;(ii)薬剤が、例えば、疾患に関連する遺伝子型を有するニューロンなどの誘導神経系細胞内で、疾患に関連する表現型を調節すると判定するステップとを含んでなる。いくつかの実施形態では、ヒトニューロン内で疾患に関連する表現型を阻害する薬剤を同定する方法は、(i)NAPによって酵母中で誘発される毒性を阻害する薬剤を同定するステップと;(ii)薬剤が、例えば、疾患に関連する遺伝子型を有するニューロンなどの誘導神経系細胞内で、疾患に関連する表現型を阻害すると判定するステップとを含んでなる。いくつかの実施形態では、ヒトニューロン内で神経変性疾患に関連する表現型を調節するヒト遺伝子を同定する方法は、(i)酵母中で神経変性関連タンパク質によって誘発される毒性を調節する酵母遺伝子を同定するステップと;(ii)酵母遺伝子のヒトホモログの過剰発現、欠失、または変異が、例えば疾患に関連する遺伝子型を有するニューロンなどの誘導神経系細胞内で、疾患に関連する表現型を調節すると判定するステップとを含んでなる。特定の実施形態では、前述の方法のいずれかを神経変性関連RNAに対して応用してもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患に関連する表現型を調節する薬剤を同定する方法は、(i)神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログ機能獲得または喪失によって誘発される毒性を酵母細胞内で調節する薬剤を同定し、神経変性疾患遺伝子が神経変性疾患に関連するステップと;(ii)薬剤が、例えば、疾患に関連する遺伝子型を有するニューロンなどの誘導神経系細胞内で、疾患に関連する表現型を調節すると判定するステップとを含んでなる。いくつかの実施形態では、神経変性疾患に関連する表現型を阻害する薬剤を同定する方法は、(i)神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能獲得または喪失によって酵母中で誘発される毒性を阻害する薬剤を同定するステップと;(ii)薬剤が、疾患に関連する遺伝子型を有する誘導神経系細胞(例えば誘導ニューロンなど)内で、疾患に関連する表現型を阻害すると判定するステップとを含んでなる。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患に関連する表現型を調節するヒト遺伝子を同定する方法は、(i)神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能獲得または喪失によって酵母中で誘発される毒性を調節する酵母遺伝子を同定するステップと;(ii)酵母遺伝子のヒトホモログの過剰発現、または機能喪失が、疾患に関連する遺伝子型を有する誘導神経系細胞(例えば誘導ニューロンなど)内で、疾患に関連する表現型を調節すると判定するステップとを含んでなる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって同定されるヒト遺伝子は、候補治療薬の開発の標的として有用である。例えば、いくつかの実施形態では、過剰発現されると神経変性疾患関連表現型を悪化させるヒト遺伝子生成物の発現または活性を阻害する薬剤は、疾患を治療するための候補治療薬である。いくつかの実施形態では、その機能喪失が神経変性疾患関連表現型を阻害する、ヒト遺伝子生成物の発現または活性を阻害する薬剤は、疾患を治療するための候補治療薬である。
方法のいずれかのいくつかの実施形態では、表現型は神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母(例えば神経変性関連タンパク質を発現する酵母)と、疾患に関連する遺伝子型を有するヒト誘導ニューロンとの間で保存される。任意の実施形態では、例えば、細胞のゲノムが、疾患に関連する1つまたは複数の変異または遺伝的多様性を保有する遺伝子を含んでなる場合、ニューロンなどの細胞は、疾患に関連する遺伝子型を有すると見なされる。疾患に関連する遺伝的多様性は、一般人口のリスクと比較した、疾患の発症リスクの統計的に有意な増大に関連する任意の遺伝的多様性であってもよい。換言すれば、特定の多様性を有する遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する個人は、一般に、一般人口の構成員よりも疾患を発症する可能性が高い。いくつかの実施形態では、リスクは、少なくとも1.1、1.2.1.5、2.2.5、3、3.5、4、4.5、6、7、8、9、10倍、またはそれを超えて増大する。いくつかの実施形態では、遺伝的多様性または変異は、標準配列と比較した、1つまたは複数の位置におけるDNA配列の相違である。いくつかの実施形態では、遺伝的多様性または変異は、ヒト集団で最も一般的に見られる1つまたは複数の位置における配列と比較した、その位置のDNA配列中の相違である。「位置」は、単一ヌクレオチドまたは一連の1つまたは複数のヌクレオチドであってもよい。いくつかの実施形態では、多様性は、置換、付加、または欠失である。いくつかの実施形態では、多様性は、例えばマイナー対立遺伝子などの一塩基多型(SNP)の特定の対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、変異は、家族型の神経変性疾患がある個人において起こるものである。いくつかの実施形態では、遺伝的多様性は、神経変性関連タンパク質をコードする遺伝子の1つまたは複数の追加のコピー(すなわち少なくとも1つの染色体上の2つ以上のコピー)を有することを含んでなり、遺伝子の1つまたは複数の追加のコピーを有することが疾患に関連する。疾患に関連する変異は、優勢または劣性遺伝様式を有する、および/または集団内で1%未満の頻度を有する、疾患形態を引き起こす、任意の遺伝的多様性であってもよい。
いくつかの態様では、酵母と、神経変性疾患ためのヒト誘導ニューロンモデル系の双方の使用は、相補的様式で双方のシステムの強みを利用する。酵母は、遺伝的におよびエピジェネティック的に均一の細胞集団を提供し得て、それはタンパク質の発現高度に同期的な誘導を可能にして、ハイスループットスクリーニングに適している。酵母は、多数(例えば、数千から数百万)の化合物を迅速に試験するのに使用してもよい。このようなスクリーニングで同定される化合物を試験して、ヒト誘導ニューロン内におけるそれらの疾患関連表現型に対する効果を判定してもよく、それは高度に疾患に妥当な細胞環境を提供する。いくつかの実施形態では、酵母モデルを使用して神経変性関連タンパク質またはRNAの毒性の調節物質と同定される、または神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能獲得または喪失に起因する毒性調節物質と同定される、1つまたは複数の薬剤または遺伝的修飾因子は、ヒト誘導ニューロン内の1つまたは複数の疾患関連表現型に対するその効果の測定によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、このような測定は、酵母中で神経変性関連タンパク質またはRNAの毒性を阻害する薬剤または遺伝的修飾因子が、ヒト誘導ニューロン内で疾患関連表現型もまた阻害すること、または酵母中で神経変性関連タンパク質またはRNAの毒性を増大させる薬剤または遺伝的修飾因子が、ヒト誘導ニューロン内で疾患関連表現型もまた増大させることを立証してもよい。いくつかの実施形態では、このような測定は、酵母中で神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能獲得または喪失に起因する毒性を阻害する薬剤または遺伝的修飾因子が、ヒト誘導ニューロン内で疾患関連表現型もまた阻害すること、または酵母中で神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの機能獲得または喪失に起因する毒性を増大させる薬剤または遺伝的修飾因子が、ヒト誘導ニューロン内で疾患関連表現型もまた増大させることを立証してもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母を使用するスクリーニングを使用して、疾患を治療するための1つまたは複数の候補薬剤が同定され、スクリーニングで同定された候補薬剤が、誘導ニューロン内で疾患関連表現型を阻害する能力が評価される。候補薬剤が表現型を阻害する場合、候補薬剤は、疾患を治療するための候補治療薬として確認される。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質を発現する酵母を使用するスクリーニングを使用して、神経変性関連タンパク質に関連する神経変性疾患を治療するための1つまたは複数の候補薬剤が同定され、スクリーニングで同定された候補薬剤が、ヒト誘導ニューロン内で疾患関連表現型を阻害する能力が評価された。候補薬剤が表現型を阻害する場合、候補薬剤は、疾患を治療するための候補治療薬として確認される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の酵母ベースのスクリーニングで同定された複数の化合物が、このようなニューロン内の1つまたは複数の疾患関連表現型に対するそれらの効果について、試験される。試験された1つまたは複数のその他の化合物と比較して、1つまたは複数の疾患関連表現型の阻害に関して、より高い効力および/または有効性を示す化合物を、さらなる開発のために、または疾患がある患者を治療する用途のために選択してもよい。特定の実施形態では、前述の方法を神経変性付随RNAに対して応用してもよい。
いくつかの実施形態では、誘導ニューロンは、神経変性疾患のための治療を必要とするヒト対象(このような対象は、時に「患者」と称されることもある)から生成される。ニューロンは疾患のモデルの役割を果たす酵母を使用するスクリーニングで同定された化合物と接触されて、ニューロン内の1つまたは複数の疾患関連表現型に対する化合物の効果が判定される。その特定の患者を治療するために、少なくとも1つの疾患関連表現型を阻害する化合物を選択してもよい。いくつかの実施形態では、酵母を使用して同定される複数化合物は、患者に由来する誘導ニューロン内の1つまたは複数の疾患関連表現型に対するそれらの効果について試験される。試験された1つまたは複数のその他の化合物と比較して、患者に由来するニューロン内の少なくとも1つの疾患関連表現型の阻害に関して優れた効力および/または有効性を示す化合物は、特定の患者を治療するために選択されてもよい。
いくつかの実施形態では、操作された誘導ヒトニューロンは、神経変性疾患のモデルの役割を果たす。例えば、いくつかの実施形態では、誘導ヒトニューロンは、疾患に関連する遺伝子型を有するように操作され、または疾患に関連する神経変性疾患遺伝子の発現または活性の変化を有するように操作される。いくつかの実施形態では、誘導ニューロンは、ヒト胚性幹細胞に由来する。いくつかの実施形態では、誘導ニューロンは、iPS細胞を生成するのに使用してもよいヒト体細胞に由来する。いくつかの実施形態では、細胞は、明らかに神経変性疾患がない(そしていくつかの実施形態では、神経変性疾患の家族歴がない)対象に由来する。遺伝子変異のステップは、ES細胞、体細胞、iPS細胞に対して、または神経系細胞を誘導する経過中の任意の段階で、実施してもよい。いくつかの実施形態では、誘導ヒトニューロンは、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAを過剰発現するように操作される。例えば、α−シヌクレイン、TDP−43、polyQ反復タンパク質、Abeta、タウ、またはFUS過剰発現する誘導ニューロンが生成されてもよい。いくつかの実施形態では、誘導ヒトニューロンは、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAをコードする遺伝子中に変異を保有するように操作され、変異は、神経変性疾患に関連し、または遺伝子の遺伝子産物の発現または活性に対して、神経変性疾患に関連する変異と実質的に同様のまたはより大きい効果を有する。例えば、神経変性疾患が機能獲得変異に関連する場合、機能獲得変異を保有する誘導ニューロンが生成されてもよい。神経変性疾患が、神経変性疾患遺伝子中の機能喪失変異に関連する場合、このような遺伝子中に機能喪失変異を保有する誘導ニューロンが生成されてもよい。表Bは、特にヒト遺伝子中の変異(左の欄に列挙される)に関連する常染色体性劣性遺伝形質パターンがある多様な神経変性疾患を列挙し、誘導ニューロンモデルは、遺伝子発現を欠失させ、妨害し、または別の様式で無効化しまたは阻害することで、またはその遺伝子産物の活性阻害することで、作成されてもよい。いくつかの実施形態では、誘導ニューロン内で操作された変異は、疾患がある対象で同定された変異と同一であり、および/またはコードされた遺伝子産物の配列に、疾患がある対象で同定された変異と同一の変化をもたらす。いくつかの実施形態では、誘導ニューロン内で操作された変異は、疾患がある対象で同定された変異と位置が同一であり、疾患がある対象で同定された変異と、同一であり、それを超えて、または実質的に同様の効果を有する変化をもたらす。いくつかの実施形態では、誘導ニューロン内で操作された変異は、疾患がある対象で同定された変異と位置が異なり、疾患がある対象で同定された変異と、同一であり、それを超えて、または実質的に同様の効果を有する変化をもたらす。絶対基準で、または典型的に、例えば標準配列を有する遺伝子産物などの正常な遺伝子産物に関連する値である、基準値に対して、2つの効果の大きさの違いが、5%、10%、15%、20%、または25%以下である場合、第1の変異の効果は、第2の変異の効果と実質的に類似する。多くの場合いくつかの異なる操作された変異は、疾患がある対象で同定された変異と、同一であり、それを超えて、または実質的に同様の効果を生じてもよい。例えば、自然発生的機能喪失変異は、遺伝子の発現を実質的に低下させまたはコードされたタンパク質の活性に重要な領域またはアミノ酸をコードする配列部分を改変しまたは欠失させる、多様な操作された変異のいずれかによって、事実上模倣し得る。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子または遺伝的修飾因子に特定の変異または多様性を有する対象は、全人口と比較して、または特定の変異または多様性を有しない対象と比較して、少なくとも1.1、1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または5.0である、疾患を発症する相対的リスクまたはオッズ比を有する。全人口は、例えば、年齢などの1つまたは複数の人口動態変数、に関してマッチさせてもよい、無作為に選択されたサンプルなどのサンプルによって代表されてもよい。
いくつかの態様では、本開示は、神経変性疾患がある患者に対応する遺伝的背景を有する酵母株、このような株を作成する方法、および/またはこのような株を使用する方法に関する。例えば、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、疾患に関連するNAPを発現しまたは発現する能力があり、NAPの毒性の1つまたは複数の遺伝的修飾因子に関して患者の遺伝子型に対応する遺伝的背景を有する。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、疾患に関連するNAPを発現するまたは発現する能力があり、神経変性疾患に関連する1つまたは複数の変異または遺伝的多様性に関して患者の遺伝子型に対応する遺伝的背景を有する。いくつかの実施形態では、このような酵母細胞を使用して、NAPの毒性の阻害剤を同定するためのスクリーニングが実施される。いくつかの実施形態では、このようなスクリーニングで同定された化合物を、患者に、または患者と同じ疾患に関連する同一変異または遺伝的多様性の1つまたは複数を有する遺伝子型を有するものに由来する、ニューロン内で試験してもよい。いくつかの実施形態では、スクリーニングで使用される酵母株は、NAPの毒性の1つまたは複数の遺伝的修飾因子に関して患者の遺伝子型に対応するように構築されてもよく、または一連の既存の酵母株から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、酵母株は、例えばNAPの毒性の遺伝的修飾因子であり、および/または疾患に関連する変異または多様性を含んでなる、ヒト遺伝子の酵母ホモログである、1つまたは複数の酵母遺伝子などの1つまたは複数の酵母遺伝子を過剰発現し、またはその発現低下または不在を有するように操作される。いくつかの実施形態では、患者は、遺伝子型同定されて、疾患に関連することが知られている1つまたは複数の変異または遺伝的多様性の存在または不在が判定される。患者に存在する1つまたは複数の変異または遺伝的多様性に関して特定の患者に対応する遺伝的背景を有する酵母株は、既存の株から生成されまたは選択されてもよい。遺伝子型同定は、当該技術分野で公知のあらゆる方法を使用して実施されてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子型同定は、例えば、遺伝子内の変異または遺伝的多様性が疾患に関連することが知られていることを特徴とする、1つまたは複数のヒト遺伝子などの1つまたは複数のヒト遺伝子の少なくとも一部を配列決定および/または増幅することを含んでなる。いくつかの実施形態では、変異または遺伝的多様性は、全ゲノム関連性試験(GWAS)において同定されたものである。いくつかの実施形態では、遺伝子型同定は、エクソーム配列決定、RNA配列決定、または全体ゲノム配列決定を含んでなる。いくつかの実施形態では、遺伝子型同定は、対象から得られた生物学的サンプルからのゲノムDNAを例えば、単一ヌクレオチド多形性、変異、またはその他の遺伝的多様性の特定の対立遺伝子を保有するDNAなどの核酸と、特異的に結合するプローブを含んでなるアレイなどの担体に、接触させるステップを含んでなる。いくつかの実施形態では、対象から得られる生物学的サンプルに由来するcDNA、RNA、mRNAが使用されてもよい。プローブまたはプライマーは、適切な検出試薬を含んでなってもよく、および/またはDNA配列決定または増幅の経過中に適切な検出試薬が組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、患者のゲノムまたはエクソームは、少なくとも部分的配列決定されて保存されてもよい(例えばデータベースに)。あらかじめ判定された配列にアクセスして分析し、それが、神経変性疾患遺伝子内に、または神経変性疾患に関連する遺伝的修飾因子内に、1つまたは複数の遺伝的多様性または変異を保有するかどうかを判定してもよい。特定の患者において、ひとたびヒト遺伝子が、疾患に関連する変異または遺伝的多様性を保有すると判定されたら、特許のそれとマッチする(matching that of the patent)遺伝子型がある酵母株を、ヒト遺伝子の酵母ホモログが過剰発現されまたはヒト遺伝子の酵母ホモログの発現または活性が欠如しまたは低下するように、酵母株を操作することで構築してもよく、または既存の株から選択してもよい。酵母株は、疾患に関連するNAPを発現しまたは発現する能力があるように操作される(例えばそれは、細胞が適切な条件下でNAPを発現するように、例えば誘導性プロモーターなどの調節可能な制御下にあるNAPをコードする核酸を保有する)。いくつかの実施形態では、遺伝子が増大したコピー数で患者に存在し、またはヒト遺伝子生成物のレベルまたは活性を増大させる変異または多様性を保有する場合、酵母株が、ヒト遺伝子の酵母ホモログを過剰発現するように操作されてもよい。いくつかの実施形態では、患者の遺伝子が、ヒト遺伝子生成物の活性またはレベルを低下させる変異または多様性を保有する場合、酵母株は、ヒト遺伝子の酵母ホモログの発現または活性が、欠如しまたは低下するように操作されてもよい。いくつかの実施形態では、2種以上酵母株が生成されてもよく、第1の酵母株はヒト遺伝子の酵母ホモログを過剰発現し、第2の酵母株はヒト遺伝子の酵母ホモログの発現または活性の低下を有する。NAPに関連する毒性の増大を示す酵母株と比較して、ほぼ同一レベルでNAPを発現するが、酵母ホモログに関して野性型である酵母株をスクリーニングで使用してもよい。過剰発現させた場合、または欠失させた場合に、様々なNAPの毒性を酵母中で変化させる(抑制または増強する)酵母遺伝子、およびこれらの遺伝子の特定のヒトホモログが、同定されている(下の考察を参照されたい)。このような遺伝子は、神経変性疾患に関連する遺伝子型を有するヒト対象の遺伝子型に対応する酵母株内で、過剰発現または無効化し得る。神経変性疾患に関連する様々な変異および遺伝的多様性の例は、本明細書および/または本明細書の参考文献に記載される。対象は、神経変性疾患に関連することが当該技術分野で知られている、任意の変異または遺伝的多様性に関して、遺伝子型同定されてもよい。いくつかの実施形態では、NAPの毒性の遺伝的修飾因子である酵母遺伝子の1つまたは複数のヒトホモログが少なくとも部分的に配列決定され(例えば、エクソンおよび/または調節領域が配列決定されてもよい)、このような遺伝子中で1つまたは複数の変異または遺伝的多様性が同定される。患者の遺伝子型に対応する酵母株は、本開示の態様である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患の治療を必要とする対象のための治療薬は、患者の遺伝的背景に対応する遺伝的背景を有する酵母細胞内で、疾患に関連する神経変性関連タンパク質の毒性を阻害する薬剤を選択することで、対象の遺伝子型に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、神経変性関連RNAに関連する神経変性疾患に関して、本段落で前述した方法のいずれでも適用してよい。いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子の機能喪失に関連する神経変性疾患に関して、本段落で前述した方法のいずれでも適用してよい。例えば、その機能喪失が疾患に関連する、神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの発現が低下しまたは不在である酵母細胞が、生成されてもよい。いくつかの実施形態では、このような酵母細胞をスクリーニングで使用して、酵母ホモログの発現低下または不在の結果として、生存度を向上させまたは表現型を低下させる薬剤を同定してもよい。いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子の機能喪失を有する患者に由来するニューロン内で、または遺伝の機能喪失変異または発現低下を有するように操作されたニューロン内で、このようなスクリーニングで同定された化合物を試験してもよい。
いくつかの実施形態では、酵母株は、神経変性疾患遺伝子の機能獲得に関連する、神経変性疾患の1つまたは複数の遺伝的修飾因子に関して神経変性疾患がある患者の遺伝子型に対応する遺伝的背景を有する。例えば、いくつかの実施形態では、疾患に関連する神経変性疾患遺伝子を発現し、または神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログを過剰発現酵する母細胞は、神経変性疾患の1つまたは複数の遺伝的修飾因子に関して患者の遺伝子型に対応する遺伝的背景を有するようにさらに操作される。例えば、特定の実施形態では、酵母細胞は、疾患に関連する神経変性疾患遺伝子の発現または神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの過剰発現に加えて、(i)神経変性疾患の遺伝的修飾因子の酵母ホモログの発現変化(例えば、増大または低下)を有するまたは(ii)神経変性疾患の遺伝的修飾因子の酵母ホモログの配列に変化を有する(例えば、機能獲得変異または機能喪失変異)ように操作されてもよく、酵母ホモログの改変された発現および/または配列の変化は、効果および/または配列が患者に存在する遺伝的修飾因子と対応するように選択される。例えば、患者における遺伝的修飾因子が、遺伝子産物の機能喪失をもたらすと考えられる場合、酵母は、(例えば、酵母ホモログを少なくとも部分的に欠失させまたは妨害することで)酵母ホモログの機能喪失を有するように操作されてもよい。患者に存在する遺伝的修飾因子の対立遺伝子が、疾患に関連しない対立遺伝子と比較して機能獲得を有する、いくつかの実施形態では、酵母は、例えば、患者に存在する疾患に関連する形態の遺伝子産物を発現するなど、存在する遺伝的修飾因子によってコードされる遺伝子産物を発現するように操作されてもよい。
いくつかの実施形態では、酵母株は、神経変性疾患遺伝子の機能喪失に関連する、神経変性疾患の1つまたは複数の遺伝的修飾因子に関して患者の遺伝子型に対応する遺伝的背景を有する。例えばいくつかの実施形態では、その機能喪失が神経変性疾患に関連する、神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログの発現が欠如し、または機能喪失を有する酵母細胞は、さらに神経変性疾患の1つまたは複数の遺伝的修飾因子に関して患者の遺伝子型に対応する遺伝的背景を有するように操作される。例えば特定の実施形態では、酵母細胞は、神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の酵母ホモログの発現の欠如または機能喪失に加えて、(i)神経変性疾患の遺伝的修飾因子の酵母ホモログの発現変化(例えば、増大または低下)を有するまたは(ii)神経変性疾患の遺伝的修飾因子の酵母ホモログの配列に変化を有する(例えば、機能獲得変異または機能喪失変異)ように操作されてもよい。酵母ホモログの改変された発現および/または配列の変化は、効果および/または配列が患者に存在する遺伝的修飾因子と対応するように選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法または組成物で使用される誘導ニューロンは、疾患に罹患しているヒトの少なくともいくらかでは、1つまたは複数の特性を有し、および/または神経変性疾患に罹患したニューロンタイプに特徴的な1つまたは複数の細胞マーカーを発現する。例えば、いくつかの実施形態では、疾患がPD、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、FTLD、ALS、または認知症を引き起こしおよび/または皮質ニューロンの変性に関連する別の神経変性疾患である場合、誘導ニューロンは、皮質ニューロンに特徴的な1つまたは複数の細胞マーカーの特性を有しおよび/または発現する。いくつかの実施形態では、疾患がPDであり、または典型的にPDに関連する運動症状(振戦、運動機能減少、硬直、および姿勢不安定性、すなわちパーキンソン症)を引き起こす別の神経変性疾患である場合、誘導ニューロンはドーパミン作動性ニューロンである。いくつかの実施形態では、疾患がALSであり、または運動ニューロン変性を引き起こす別の神経変性疾患である場合、誘導ニューロンは運動ニューロンに特徴的な1つまたは複数の細胞マーカーの特性を有しおよび/または発現する。
いくつかの実施形態では、誘導ニューロンは、神経変性疾患がある患者に対応する遺伝的背景を有するように生成され、または操作されてもよい。本明細書に記載されるように、神経変性疾患がある患者に対応する遺伝的背景を有する誘導ニューロンは、患者から得られる細胞に由来する、または患者から得られるその他の細胞型(線維芽細胞など)に由来する、iPS細胞からの誘導ニューロン作成による遺伝子操作を必要とせずに、多能性段階を経ることなく、作成してもよい。神経変性疾患がある患者に対応する遺伝的背景を有する誘導ニューロンは、遺伝子操作を使用して生成されてもよい。細胞は、細胞内で神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAをコードする神経変性疾患遺伝子を過剰発現する、神経変性関連タンパク質またはRNA変異型態を発現して、変異型が神経変性疾患に関連する機能獲得を有する、または内在性神経変性疾患遺伝子中に機能獲得または機能喪失変異を保有して、その機能獲得または喪失が、神経変性疾患にそれぞれ関連するように操作されてもよい。
パーキンソン病がある患者に由来する誘導ニューロンと、α−シヌクレインタンパク質を発現する酵母とに関して、特定の組成物および方法が、本明細書で例示される。例えば、本明細書に記載されるように、α−シヌクレインを発現するように操作された酵母細胞内で観察された表現型は、PD患者に由来する誘導ニューロン内のパーキンソン病関連表現型の同定をもたらした。酵母中でα−シヌクレイン毒性を阻害する化合物のスクリーニングによって同定された小型分子は、酵母とPD患者由来誘導ニューロンの双方の中で、これらの表現型を阻害する。これらの結果は、化合物が、シヌクレイン病に罹患したヒトニューロンに有益な影響を及ぼす能力を確認した。しかし、本明細書に記載される方法は、その他の神経変性疾患および/またはその他の神経変性関連タンパク質、神経変性関連RNA、神経変性疾患遺伝子、および遺伝的修飾因子の文脈で使用してもよく、本開示は、このような方法および関連組成物を対象とするこのような実施形態を包含する。例えば、特定の実施形態は、表B、C、および/またはDに列挙される遺伝子および/または疾患のいずれかを対象としてもよい。
特定の態様では本明細書に記載される、組成物および/または方法は、以下の3つの一般カテゴリーのいずれかに分類されてもよく、本明細書に記載されるようにヒト誘導神経系細胞および/または酵母中でモデル化されてもよい、疾患に関する。(1)既知のタンパク質(e.g.、α−シヌクレイン、Abeta、TDP−43、FUS、ポリグルタミン−を含有するタンパク質)凝集体が、有毒機能獲得変異を含有し、または過剰発現されてこのような過剰発現が有毒である、遺伝子によってコードされる疾患。このクラスの疾患の酵母モデルは、酵母中における、野性型または変異ヒトタンパク質の少なくとも一部の発現によって作成されてもよい。交互に(Alternately)またはそれに加えて、遺伝子が酵母ホモログを有する場合、酵母モデルは、酵母ホモログを過剰発現させることで、またはヒト疾患を引き起こす変異を模倣する変異を酵母ホモログに導入することで、作成されてもよい。変異は内在性遺伝子に導入してもよく、または遺伝子の変異バージョンは、ゲノム中の他の箇所に組み込まれても、または非組み込みプラスミド上に導入されてもよい。このような疾患のヒト誘導ニューロンモデルは、疾患を有する(またはその遺伝子型に基づいて疾患を発症するリスクが高い)患者から誘導ニューロンを作成することで、またはヒトES細胞、iPS細胞、または神経性前駆細胞に由来する誘導ニューロン内で、野性型または変異ヒトタンパク質の少なくとも一部の発現を誘導することで、作成されてもよい。いくつかの実施形態では、誘導ニューロンモデルは、疾患を有する特定の患者から誘導ニューロンを作成することで作成される。いくつかの実施形態では、このようなモデルは、患者のための候補治療薬を同定または検証するのに特に有用であってもよい。このような疾患のための酵母モデルは、酵母中における野生型または変異体ヒトタンパク質の発現によって作成されてもよい。(2)神経変性疾患タンパク質の機能喪失が知られまたは推定され、このようなタンパク質が酵母ホモログを有する疾患。これらの疾患としては、常染色体性劣性遺伝様式を有する、すなわち、神経変性疾患タンパク質をコードする遺伝子の双方のコピーが変異または多形性を保有して、タンパク質の機能喪失がもたらされる、パーキンソン症および運動失調の多数の形態が挙げられる。このクラスの疾患の酵母モデルは、タンパク質の発現または活性が低下するような、酵母ホモログをコードする遺伝子の変異(例えば、破壊または少なくとも部分的欠失)によって作成されてもよい。このような疾患ヒト誘導ニューロンモデルは、疾患を有する(またはその遺伝子型に基づいて疾患を発症するリスクが高い)患者から誘導ニューロンを作成することで、またはそれからニューロンが引き続いて作成されるhES、iPS、または神経性前駆細胞内の遺伝子標的化変異によって、作成してもよい。いくつかの実施形態では、ヒトiPSまたはES細胞内で操作される変異は、細胞が誘発条件に曝露するまでは正常な活性を保持する、条件的対立遺伝子を生成してもよい。(3)患者が、神経変性関連タンパク質またはRNAに関連する疾患(上のタイプ(1)の疾患を有し、そしてまた酵母ホモログを有する変更遺伝子(遺伝的修飾因子)に変異または多形性を有する、疾患。このクラスの疾患の酵母モデルは、変更遺伝子の酵母ホモログの変異または過剰発現と組み合わされた、酵母中における野性型または変異ヒト神経変性関連タンパク質またはRNAの少なくとも一部の発現によって作成されてもよい。ヒト変更遺伝子中の変異または多形性が機能喪失をもたらす場合、タンパク質の発現または活性を低下させるように、酵母ホモログを変異させてもよい。ヒト変更遺伝子中の変異または多形性が機能獲得をもたらす場合、変更遺伝子中の機能獲得変異または多形性を模倣するように、酵母ホモログを過剰発現させまたは変異させてもよい。特定の実施形態では、ヒトNAPまたはNARは、単独で皆無のまたは限定的毒性をもたらすレベルで発現されてもよいが、その毒性は、変更遺伝子の酵母ホモログの変異または過剰発現の存在下で増大する。特定の実施形態では、特定の変更遺伝子のホモログの変異または過剰発現によってNAPまたはNARの毒性が悪化する、酵母モデルを使用して実施されるスクリーニングまたは化合物特性解析は、活性に対して類似効果を有する変更遺伝子の変異または多形性を保有する患者の治療で使用するのに特に有効であり、または適切な候補治療薬の同定または妥当性評価をもたらしてもよい。このような疾患のヒト誘導ニューロンモデルは、(i)疾患を有して変異または多形性を有する特定の患者から、誘導ニューロンを作成する;(ii)神経変性付随タンパク質をコードする遺伝子またはRNA内に操作されたまたは自然発生的病原性変異を保有しまたは神経変性付随タンパク質をコードする遺伝子またはRNAの追加的コピーを保有する、ES、iPS、または神経前駆細胞系に、変更遺伝子中の変異または多形性を導入して、細胞系からニューロンを作成する;(iii)NAPまたはNARを過剰発現するように操作された、またはNAPまたはNAR内に病原性変異を保有するように操作された、ヒトES、iPS、または神経前駆細胞系に、変更遺伝子中の変異または多形性を導入することで作成されてもよい。
特定の実施形態では、上述の疾患カテゴリーが重複してもよい。例えば、特定遺伝子中の変異は、(上のカテゴリー(2)のような)常染色体性劣性遺伝様式の神経変性疾患を引き起こし得て、少なくともいくらかの患者では、(上のカテゴリー(3)のような)神経変性関連タンパク質の凝集にもまた関連してもよい。その機能喪失が、(上のカテゴリー(2)のような)常染色体性劣性遺伝様式の疾患をもたらす遺伝子のいくつかはまた、神経変性関連タンパク質に関連する疾患のための変更遺伝子であってもよい。例えば、神経変性疾患タンパク質をコードする遺伝子の双方のコピーが、変異または多形性を保有して、タンパク質の機能喪失をもたらす場合、患者は常染色体性劣性形態の疾患を発症してもよい一方で、1つのコピーのみがこのような変異または多形性保有する場合、患者は、散発性形態の疾患を発症するリスクが増大してもよい。特定の実施形態では、(2)または(3)のいずれかの下に記述されるようにして、カテゴリー(2)および(3)の双方に分類される疾患の酵母モデルを作成してもよく、または双方のタイプの酵母モデルを使用してもよい。特定の実施形態では、双方のタイプの酵母モデルで有用であると同定され、および/または双方のタイプの誘導ニューロンモデルで有用であると同定される化合物を、特定の患者に由来する、または患者に見られる多形性の特定の変異または変種が組み込まれた、誘導ニューロン内で試験してもよく、患者を治療するために、誘導ニューロン内の緩和疾患関連表現型中でより大きな有効性を示す化合物を選択してもよい。
III.神経変性疾患、神経変性疾患遺伝子および遺伝子産物、神経変性関連タンパク質および核酸、および遺伝的修飾因子
本明細書で関心のある神経変性疾患遺伝子配列生成物は、ヒト神経変性疾患遺伝子によってコードされる配列を含んでなり、またはそれからなることが多いが、特定の実施形態では、非ヒト哺乳類ホモログの配列を使用してもよい。一般に、本明細書で関心のある神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAの配列は、例えば、ヒトα−シヌクレインなどのヒト神経変性関連タンパク質またはRNA配列を含んでなり、またはそれからなることが多いが、特定の実施形態では、ヒトNAPの非ヒト哺乳類ホモログを使用してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、NAPなどの神経変性疾患遺伝子の遺伝子産物の配列は、天然起源配列を含んでなり、またはそれからなる。遺伝子座は、個人の集団内で、2つ以上の配列または対立遺伝子を有してもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、天然起源配列は標準配列である。特に断りのない限り、本明細書で、特定の名称、略称、または記号によって言及されるタンパク質の参照配列として、参照配列(RefSeq)データベースに列挙される配列は、「標準配列」と見なされる。本開示の時点に引き続いて配列がアップデートされた場合、本開示の時点で現行のバージョン、またはそれらのアップデートされたバージョンを特定の実施形態で使用してもよい。遺伝子座は、個人の集団内で、2つ以上の配列または対立遺伝子を有してもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、天然起源配列は、1つまたは複数のアミノ酸位置で標準配列と異なる。その配列が標準配列と異なり、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの正常な機能を果たし、および標準配列よりも大きな神経変性疾患を発症するリスクに関連しない、天然起源ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「正常な配列」を有すると称されてもよい。いくつかの実施形態では、天然起源配列は標準配列と異なり、標準配列よりも大きな神経変性疾患を発症するリスクに関連する。例えば、いくつかの実施形態では、NAPまたはNARは、優勢または劣性遺伝形態の神経変性疾患に関連する変異を含有する。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質またはRNAは、天然起源NAPまたはNARの生物学的活性変種を含んでなってもよい。酵母細胞または酵母細胞が関与する方法の文脈で、天然起源NAPまたはNARの「生物学的活性」変種は、天然起源NAPまたはNARが、その中で生物活性変種が発現する酵母細胞内で、細胞増殖または生存度の低下を誘発する能力、および/または細胞質封入体を形成する能力を少なくとも部分的に保持する。哺乳類神経系細胞(例えば誘導ヒト神経系細胞)の文脈、または哺乳類神経系細胞が関与する方法の文脈において、このような細胞内で表現型を誘発する天然起源NAPまたはNARの「生物学的活性」変種は、天然起源NAPまたはNARによって引き起こされる表現型を生じる能力を少なくとも部分的に保持する。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質は、例えば、ヒトα−シヌクレインタンパク質などのα−シヌクレインタンパク質を含んでなる。ヒトでは、α−シヌクレインは、NCBI遺伝子ID6622が割り当てられた、SNCA遺伝子(染色体位置4q21.3−q22)によってコードされる。特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法で使用されるα−シヌクレインタンパク質の配列は、天然起源α−シヌクレインタンパク質の配列またはそれらの生物学的活性変種を含んでなる。α−シヌクレインタンパク質の生物学的活性変種は、天然起源α−シヌクレインタンパク質の配列に対する、1つまたは複数の付加、置換、および/または欠失を含有してもよい。いくつかの実施形態では、α−シヌクレインタンパク質の配列は、標準α−シヌクレイン配列を含んでなる。ヒトα−シヌクレインは、常態では140アミノ酸長であり、以下の標準アミノ酸配列を有する(GenBankおよびNCBI参照配列受入番号NP_000336):
いくつかの実施形態では、α−シヌクレインタンパク質は、例えば、天然突然変異型のα−シヌクレイン配列を含んでなるタンパク質配列などの変異α−シヌクレインタンパク質である。いくつかの実施形態では、α−シヌクレインは、優勢遺伝形態のPDを引き起こし、またはPD発症リスクの顕著な増大に関連する、変異または遺伝的多様性を保有する。変異は、コード配列または調節領域であってもよい。α−シヌクレイン(A30P、E46K、A53T)中の特定の点変異は、優勢遺伝形態のPDを引き起こすことが知られている。α−シヌクレイン中のH50Q、G51D、A18T、およびA29S点変異もまた、PDに関連する。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、A53T変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、A30P変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、E46K変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、G51D変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、H50Q変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、G51D変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、A18T変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、αシヌクレインタンパク質は、A29S変異を含んでなる。特定の実施形態では、ヒト対象は、α−シヌクレインをコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子中に、A30P、E46K、またはA53T変異を保有する。特定の実施形態では、ヒト対象は、α−シヌクレインをコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子中に、H50Q、G51D、A18T、またはA29S変異を保有する。特定の実施形態では、ヒトニューロンまたはグリア細胞は、α−シヌクレインをコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子中にA30P、E46K、またはA53T変異を保有する。特定の実施形態では、ヒトニューロンまたはグリア細胞は、α−シヌクレインをコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子中に、H50Q、G51D、A18T、またはA29S変異変異(mutation mutation)を保有する。例えば、アミノ酸29〜30またはアミノ酸46〜53に、またはこれらの領域側面に位置する1〜3個のアミノ酸などに、α−シヌクレイン中の追加的な変異が発見されることを予想することは、理にかなっている。特定の実施形態では、α−シヌクレインタンパク質は、アミノ酸29〜30またはアミノ酸46〜53に、またはこれらの領域側面に位置する1〜3個のアミノ酸に変異を有する。特定の実施形態では、生物学的活性α−シヌクレインタンパク質は、C末端から最大約45個のアミノ酸を欠く、天然起源α−シヌクレインタンパク質の断片を含んでなる。いくつかの実施形態では、生物学的活性α−シヌクレインタンパク質は、原線維生成の駆動に関与するとされる領域である、残基61〜95からなる領域内に1つまたは複数の変異を有する。いくつかの実施形態では、変異は、非保存的置換である。いくつかの実施形態では、変異は、領域のらせん含有量を低下させる1つまたは複数のアミノ酸の挿入である。いくつかの実施形態では、変異は、プロリン置換または挿入である。いくつかの実施形態では、α−シヌクレインタンパク質は、NP_000336をコードする転写物と比較して内部エクソンを欠いてもよい。例えば、タンパク質は、NACP112(RefSeq受入番号NP_009292)を含んでなってもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質は、例えば、ヒトLRRK2タンパク質などのロイシンに富む反復キナーゼ2(LRRK2)タンパク質を含んでなる。ヒトLRRK2は、以下の標準アミノ酸配列(GenBankおよびNCBI参照配列受入番号NP_940980.3)を有する:
いくつかの実施形態では、LRRK2タンパク質は、常染色体優性PDまたはパーキンソン症に関連する変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、変異は、例えば、1420〜1450個のアミノ酸または2000〜2030個のアミノ酸などの1400〜2100個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、変異は、2019、1699、1441、2020、または1437位にある。いくつかの実施形態では、変異は、G2019S、Y1699C、R1441C、R1441G、R1441H、I2012T、I2020T、またはN1437H変異である。特定の実施形態では、例えば、誘導ヒトニューロンなどのヒトニューロンは、LRRK2をコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子中に、例えば、コードされたタンパク質に、G2019S、Y1699C、R1441C、R1441G、R1441H、I2012T、I2020T、またはN1437H変異をもたらす変異などの、常染色体優性PDまたはパーキンソン症に関連する変異を保有する。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質は、例えば、ヒトVPS35タンパク質などの空胞タンパク質sorting35(VPS35)を含んでなる。VPS35は、哺乳類細胞内のエンドソームからトランスゴルジ体への輸送、または酵母中のエンドソームから空胞への輸送に関与する複合体である、レトロマーのサブユニットをコードする。VPS35内の変異は、様々な神経変性疾患に関連する。例えば、Zimprich,A.et al.A Mutation in VPS35,Encoding a Subunit of the Retromer Complex,Causes Late-Onset Parkinson Disease.Am J Hum Genet 89,168-175(2011);Vilarino-Guell C,et al.,VPS35 mutations in Parkinson disease Am J Hum Genet.(2011)89(1):162-7を参照されたい。ヒトVPS35は、NCBI遺伝子ID:55737が割り当てられたVPS35遺伝子(染色体位置16q12)によってコードされる。ヒトVPS35は、常態では796アミノ酸長であり、以下の標準アミノ酸配列(NCBI参照配列受入番号NP_060676.2)を有する:
いくつかの実施形態では、VPS35タンパク質は、常染色体優性PD、パーキンソン症、および/またはNBIAに関連する変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、変異は、610〜630位または310〜330位にある。いくつかの実施形態では、変異は、620〜316位にある。いくつかの実施形態では、変異は、D620NまたはP316S変異である。特定の実施形態では、例えば誘導ヒトニューロンなどのヒトニューロンは、VPS35をコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子中に、例えばコードされたタンパク質内にD620NまたはP316S変異をもたらす変異などの、常染色体優性PD、パーキンソン症、またはNBIAに関連する変異を保有する。いくつかの実施形態では、VPS35の機能喪失型に関連する表現型は、欠陥エンドサイトーシスである。本明細書でさらに記載されるように(実施例11を参照されたい)、VPS35は、酵母中α−シヌクレイン毒性の遺伝的修飾因子と同定され、その中では、酵母VPS35の欠失がαSyn毒性を高める。VPS35変異体は欠陥エンドサイトーシスを有するため、この発見は、酵母およびヒトニューロン間で保存された疾患関連表現型を強調する。VPS35が欠損している患者は、このプロセスが欠損したニューロンを有する。さらに、撹乱されたエンドサイトーシスもまた、VPS35を変異有しないパーキンソン病がある患者(シヌクレイン凝集を伴う散発性疾患そしてまたシヌクレインSNPおよびシヌクレイン点変異がある患者)からのニューロン内の表現型である。パーキンソン症があるほんのわずかの患者のみがVPS35に変異を有する一方で、α−シヌクレインとVPS35欠乏症の結びつきの酵母中における同定は、VPS35のはるかにより広い役割と、その中でそれがシヌクレイン病に関与する生物学的過程とを関係づける。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質は、例えばヒトEIF4G1タンパク質などの真核生物翻訳開始因子4−γ1(EIF4G1)を含んでなる。ヒトEIF4G1は、NCBI遺伝子ID:1981が割り当てられたEIF4G1遺伝子(染色体位置3q27.1)によってコードされる。いくつかの実施形態では、EIF4G1タンパク質は、常染色体優性PDまたはパーキンソン症に関連する変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、変異は、1240〜1260位にある。いくつかの実施形態では、変異は、1250位にある。いくつかの実施形態では、変異は、R1250H変異である。特定の実施形態では、例えば誘導ヒトニューロンなどのヒトニューロンは、EIF4G1をコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子中に、例えば、コードされたタンパク質内にR1250H変異をもたらす変異などの、常染色体優性PDまたはパーキンソン症に関連する変異を保有する。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質は、GCaseとも称される、β−グルコセレブロシダーゼ(GBA)タンパク質を含んでなる。β−グルコセレブロシダーゼは、Gaucher疾患(GD)で欠損しているリソソーム酵素である。ヒトでは、GBAは、NCBI遺伝子ID2629が割り当てられたGBA遺伝子(染色体位置1q21)によってコードされる。ヒトGBAは、普通に536アミノ酸長であり、以下の標準アミノ酸配列(NCBI参照配列受入番号NP_001005741.1;NP_001005741.1;およびNP_001005742.1)を有する。
上の配列は、前駆物質ポリペプチドであるものと理解される。ヒト細胞では、酵素は、ER管腔内での切断前に、新生ポリペプチドを小胞体(ER)膜への移行に誘導する、39アミノ酸(アミノ酸1〜39)または19アミノ酸(アミノ酸1〜19)シグナルペプチドのいずれかを含有する。次に酵素をグリコシル化し、トランスゴルジネットワークを通じて、成熟リソソーム内にシャトルする。例えば変異位置などのGBAタンパク質内の位置を描写する目的で、配列番号8内の40番目のアミノ酸(下線付きおよび太字A)を1位とすることが仮定された。例えば、R120W変異は、上の配列内の159位の、または例えば変種または断片を配列番号8と整列させた際に、159位と整列する位置などの配列番号8の変種または断片中の対応する位置の、Rに代わるWによる置換を指す。
臨床的、遺伝的、および病理学的研究は、GBAをコードする遺伝子中の変異が、PDの、そしてレビー小体認知症などの様々なその他のシヌクレイン病のリスク因子であることを示した。GDがあるいくらかの患者、およびGDを上昇させる変異があるいくらかの保因者は、パーキンソン症を発症し、PDがある対象は、健康な対象と比較してGBA変異の頻度増大を有する。PDがあるGBA変異保因者は、典型的に、グルコセレブロシダーゼ陽性レビー小体を示す。いくつかの実施形態では、GBAタンパク質をコードする遺伝子は、対象のGBA遺伝子の対立遺伝子の双方に変異が存在する場合(ホモ接合性)、または変異がGBA遺伝子の1つの対立遺伝子に存在してもう一方の対立遺伝子が異なる変異を含有するする場合(複合ヘテロ接合)に、GDを引き起こす変異を含んでなる。いくつかの実施形態では、変異は、GDI型(OMIM#230800、非神経障害性形態のGDと称されることもある)を生じさせる。いくつかの実施形態では、変異は、GDII型(OMIM#230900、急性神経障害性形態のGDと称されることもある)またはGDIII型(OMIM#2301000、慢性神経障害性形態のGDと称されることもある)を生じさせる。いくつかの実施形態では、変異は、84GG(chr1155210452−0155210453insG)、IVS2+1(chr1155210420G>A/155210420G>T)、R120W、L174P、K198T、E326K、R329C、T369M、N370S、V394L、D409H、L444P、R496H、Q497R、RecTL(グルコセレブロシダーゼ遺伝子と、エクソン9に55bpの欠失および変異D409Hと、ならびにエクソン10に変異L444P、A456P、およびV460Vを導入する偽遺伝子との間の遺伝的組換えから生じる天然起源形態)、D406H、N370S、またはRecNcil(chr1155205043T>C/15599045G>C/155204994G>C)変異である。いくつかの実施形態では、変異は、例えば参照配列などの正常な配列と比較して、変性されたタンパク質配列をもたらす。いくつかの実施形態では、変異は、例えば、320〜330位、または365〜375位または位置490〜500などの、120〜500位にある。いくつかの実施形態では、変異iは、120、174、198、326、329、369、370、394、409、444、496、または497位にある。いくつかの実施形態では、タンパク質内の変異は、R120W、L174P、K198T、E326K、R329C、T369M、N370S、V394L、D409H、L444P、R496H、またはQ497Rである。いくつかの実施形態では、遺伝子またはタンパク質は、複数変異を含んでなる。特定の実施形態では、例えば誘導ヒトニューロンなどのヒトニューロンは、例えば、84GG、IVS2+1、R120W、L174P、K198T、E326K、R329C、T369M、N370S、V394L、D409H、L444P、R496H、Q497R、RecTLまたはRecNcil変異などのGDに関連する1つまたは複数の変異を保有する。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質は、例えばヒトTDP−43タンパク質などのTDP−43タンパク質を含んでなる。ヒトでは、TDP−43は、NCBI遺伝子ID23435が割り当てられたTARDBP遺伝子(染色体位置1p36.2)によってコードされる。TDP−43は、2つの高度に保存されたRRM(RNA−認識モチーフ;RRM1およびRRM2)およびグリシンに富むC末端領域を含んでなる。特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法で使用されるTDP−43タンパク質の配列は、天然起源TDP−43タンパク質の配列またはそれらの生物学的活性変種を含んでなる。いくつかの実施形態では、TDP−43タンパク質の配列は、標準TDP−43配列を含んでなる。ヒトTDP−43は、常態では414アミノ酸長であり、以下の標準アミノ酸配列(NCBI参照配列受入番号NP_031401)を有する:
ヒトTDP−43のC末端断片は、ユビキチン陽性封入体と筋萎縮性側索硬化がある前頭側頭葉変性症の患者の中枢神経系から回収された(Neumann et al.Science,314(5796):130-3.2006)。TDP−43のC末端断片関連する特定の疾患は、配列番号2のアミノ酸残基252〜414とほぼ対応する。いくつかの実施形態では、生物学的活性変種TDP−43タンパク質は、(i)配列番号2と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換を含有し、and(ii)配列番号2と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一である(または配列番号2のアミノ酸252〜414と70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一である)。配列番号2と配列が異なる(または配列番号2のアミノ酸252〜414と配列が異なる)生物学的活性変種TDP−43ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸置換(保存的または非保存的)、1つまたは複数の欠失、および/または1つまたは複数の挿入を含んでもよい。特定の実施形態では、生物学的活性TDP−43断片は、配列番号2のアミノ酸残基252〜414を含んでなり、またはそれからなる。
TDP−43内の変異は、散発型および家族型FTLDおよび/またはALS患者に見られる。特定の実施形態では、変異体TDP−43タンパク質は、TARDBP遺伝子のエクソン6によってコードされるタンパク質部分の変異を有する。
変種TDP−43タンパク質をコードする核酸を使用して、配列番号2のヒトTDP−43タンパク質によって示されるものと比較して、例えば酵母細胞内における同等のまたは増大された毒性などの、酵母細胞内における毒性を示すこれらの変種を同定し得る。例えば毒性増大変種などのこのような変種は、本明細書に記載されるスクリーニングおよびその他の方法で使用されてもよい。ヒトTDP−43は、NCBI参照配列受入番号NM_007375(コード配列は135〜1379位)に記載されるヌクレオチド配列によってコードされるが、もちろんタンパク質をコードするその他の核酸配列を使用してもよい。
いくつかの実施形態では、NAPは、例えば、ヒトFUSポリペプチドなどの肉腫(FUS)ポリペプチド融合を含んでなる。ヒトでは、FUSは、NCBI遺伝子ID2521が割り当てられたFUS遺伝子(染色体位置16p11.2)によってコードされる。ヒトFUSは、以下の標準アミノ酸配列(NCBI参照配列受入番号NP_004951)を有する:
当業者は、配列がNCBI参照配列受入番号NP_001164105.1およびNP_001164408.1(イソ型3)で利用可能である、わずかにより短いイソ型が存在することを理解するであろう。FUSタンパク質は、N末端のQGSYに富む領域、高度に保存されたRNA認識モチーフ(RRM)、大幅に脱メチル化されたアルギニン残基である複数のRGG反復、およびC末端ジンクフィンガーモチーフによって特徴付けられる。特定のヒトがん中の染色体転座の結果として生じる融合タンパク質として、最初に同定されたのは、RNA結合タンパク質である。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質は、例えば、ヒトアミロイドβタンパク質などのアミロイドβタンパク質を含んでなる。いくつかの実施形態では、例えば、アミロイドβ毒性の酵母モデル内で発現されるポリペプチドなどの本明細書に記載される組成物および方法で使用されるポリペプチドは、シグナル配列とヒトアミロイドβタンパク質とを含んでなる融合タンパク質を含んでなる。本明細書の用法では、「ヒトアミロイドβタンパク質」という用語は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解プロセッシングを通じて誘導され、アミロイド病態に関連する、天然起源38〜43アミノ酸アミロイドβペプチドと同一である配列を指す。用語は、天然起源野性型アミロイドβペプチドならびに天然突然変異株アミロイドβペプチドを含む。野性型アミロイドβペプチドとしては、アミロイドβ1−38、アミロイドβ1−39、アミロイドβ1−40、アミロイドβ1−41、アミロイドβ1−42、およびアミロイドβ1−43が挙げられる。アミロイドβ変異としては、A2T、H6R、D7N、A21G、E22G(Arctic)、E22Q(Dutch)、E22K(Italian)、D23N(Iowa)、A42T、およびA42V(番号は配列番号3のアミロイドβペプチドに対する)が挙げられる。これらの変異は、アミロイドβペプチド1〜38、1〜39、1〜40、1〜41、1〜42、および1〜43のいずれかに、任意選択的に存在してもよい。
本明細書に記載されるそのアミノ酸が特定のアミロイドβペプチドの主鎖として使用される、ヒトアミロイドβのアミノ酸1〜43は、次のようである:
本明細書の用法では、「シグナル配列」という用語は、ポリペプチド内に存在して、小胞体細胞内でポリペプチドが標的化されるようにするペプチド配列を指す。例示的なシグナル配列は、酵母Kar2pシグナル配列である。しかし、多種多様なシグナル配列が知られており、それらを含有するポリペプチドの小胞体標的化を引き起こすために使用し得る。シグナル配列は、例えば、Wilkinson et al.(1997)J Membr Biol.155(3):189-97、Haguenauer-Tsapis(1992)Mol Microbiol.6(5):573-9;およびPool(2005)Mol Membr Biol.22(1-2):3-15で概説される。様々な実施形態で、シグナル配列は、ポリペプチドのN末端またはC末端に存在し、または内部配列として存在してもよい。
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、酵母Kar2pシグナル配列をアミノ末端に、ヒトアミロイドβ1−42ペプチドをカルボキシ末端に含んでなる。特定の実施形態では、融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下を含んでなり、またはそれからなる:
酵母Kar2pシグナル配列は配列番号1のアミノ酸1〜42に対応し、ヒトアミロイドβ1−42ペプチドは配列番号4のアミノ酸43〜84に対応する。
いくつかの実施形態では、シグナル配列およびヒトアミロイドβタンパク質を含有するポリペプチドは、任意選択的に第2の領域と融合してもよい。融合タンパク質の第2の領域は、任意選択的に、免疫グロブリン要素、二量体化領域、標的化領域、安定化領域、または精製領域であり得る。いくつかの実施形態では、例えばヒトアミロイドβタンパク質などのアミロイドβタンパク質は、検出タンパク質などの異種分子と融合し得る。代表的な検出タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光タンパク質;β−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ(AP)などの酵素;グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)または赤血球凝集素(HA)などのエピトープが挙げられる。例えば、アミロイドβタンパク質は、NまたはC末端で、またはアミロイドβタンパク質のその他の部分で、GFPに融合し得る。これらの融合タンパク質は、例えば、タンパク質を発現するように改変された組換え酵母細胞または例えばヒト細胞などの哺乳類細胞内で、アミロイドβタンパク質を迅速かつ容易に検出および同定する方法を与える。
いくつかの実施形態では、NAPは、ポリグルタミン(polyQ)反復タンパク質を含んでなる。本明細書の用法では、「ポリグルタミン反復タンパク質」は、少なくとも6つの連続グルタミン残基を含んでなる、ポリペプチドである。特定の実施形態では、NAPは、伸長polyQ領域を含んでなる。伸長polyQ領域は、正常な野性型タンパク質よりも多くのグルタミン残基を含有する領域である。polyQ伸長タンパク質は、伸長polyQ領域を含有するタンパク質である。polyQ伸長障害は、少なくともいくらかの罹患したニューロン内に、polyQ伸長タンパク質を含有する細胞内凝集体の存在によって特徴付けられる。polyQ伸長障害ハンチントン病は、ハンチンチン(Htt)タンパク質内のpolyQ伸長によって引き起こされる、常染色体性優性遺伝神経変性疾患である。脊髄小脳運動失調タイプ1(SCA1)、2(SCA2)、3(SCA3)、6(SCA6)、7(SCA7)、および17(SCA17)、およびDRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)は、SCA1、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17、ATN1、(すなわち、それぞれ、アタキシン−1、アタキシン−2、アタキシン−3、P/Qタイプ電圧依存カルシウムチャネルのα−1Aサブユニット、アタキシン−7、TATA−結合タンパク質(TBP)、およびアトロフィン−1)によってコードされるタンパク質内のpolyQ伸長によって引き起こされる、常染色体性優性遺伝進行性小脳運動失調である。いくつかの実施形態では、polyQ反復タンパク質は、polyQ伸長ハンチンチンポリペプチドを含んでなる。いくつかの実施形態では、NAPは、ヒトハンチンチン遺伝子のエクソン1によってコードされるポリペプチドを含んでなる。polyQ領域は、典型的に、野生型ハンチンチンポリペプチド中で長さが6〜35グルタミン残基であり、変異体ハンチンチンポリペプチド内で伸長されてもよい。特定の実施形態では、変異体ハンチンチンポリペプチドは、polyQ領域内に、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも70、または少なくとも100グルタミン残基を有する。特定の実施形態では、伸長polyQ領域を有するハンチンチンポリペプチドは、エクソン1の最初の17アミノ酸と、それに続く例えば、72〜250グルタミン残基などの少なくとも72グルタミン残基とを含んでなる。いくつかの実施形態では、グルタミン残基は、CAG(DNA中)またはCUG(RNA中)によってコードされる。伸長polyQ領域の長さは、当該技術分野で公知である脊髄小脳運動失調に関連する。特定の実施形態では、ポリグルタミン反復タンパク質内の連続グルタミン数は、疾患に特徴的な範囲の下限の少なくとも1.0、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4.5、または10倍である。特定の実施形態では、ポリグルタミン反復タンパク質内の連続グルタミン数は、疾患に特徴的な範囲の上限の最大1.0、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4.5、5および10倍である。いくつかの実施形態では、ポリグルタミン反復タンパク質内の連続グルタミン数は、50〜100、100〜150、150〜200、200〜350、350〜500、500〜750、または750〜1,000である。
特定の実施形態では、神経変性関連RNAをコードする遺伝子は、特定のヌクレオチド配列の複数連続反復を含んでなる。典型的に、神経変性関連RNA内の反復ヌクレオチド配列(本明細書で「反復単位」と称されることもある)は、またはこのようなRNAをコードする遺伝子は、例えば三塩基などの2〜6ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、遺伝子中の反復単位は、RNA内でCUG三つ組みをもたらす、CAG三つ組みである。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド伸長障害を引き起こす神経変性疾患遺伝子中の例えばCAG三つ組みなどの連続反復単位数は、疾患に特徴的な範囲の下限の少なくとも0.5、1.0、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4.5、または10倍である。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド伸長障害を引き起こす神経変性疾患遺伝子中の例えばCAG三つ組みなどの連続反復単位数は、疾患に特徴的な範囲上限の最大1.0、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4.5、5および10倍である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド伸長障害を引き起こす神経変性疾患遺伝子中の例えば、CAG三つ組みなどの連続的ヌクレオチド反復数は、50〜100、100〜150、150〜200、200〜350、350〜500、500〜750、または750〜1,000である。
いくつかの実施形態では、NAPは、そのN末端またはC末端で第2のポリペプチドと連結し、またはそのNおよびC末端で第2のおよび第3のポリペプチドに連結する、NAPを含んでなる融合タンパク質を含んでなる。第2の(および/または第3の)ポリペプチドは、例えば、エピトープ、選択可能なタンパク質、酵素、または検出タンパク質であり得る。例えば、第2のポリペプチドは、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、FLAG、Mycなどであり得る。例えば、特定の実施形態では、α−シヌクレインタンパク質、TDP−43タンパク質、アミロイドβペプチド、またはpolyQポリペプチド、および第2のポリペプチドを含んでなり、任意選択的に第3のポリペプチドをさらに含んでなる、融合タンパク質を使用してもよい。融合タンパク質のポリペプチド成分は、互いに直接に連結してもよく、またはリンカーペプチドを通じて連結してもよいものと理解すべきである。一般に、リンカーペプチドは、任意のアミノ酸配列を含んでなってもよく、例えば約10〜約25アミノ酸長などの1〜100アミノ酸長の任意の長さであってもよい。適切なリンカーは、複数のGlyおよび/またはSer残基を含んでなってもよい。
いくつかの実施形態では、例えばNAPをコードするヒトcDNA配列などのヒト核酸配列などの哺乳類核酸配列は、酵母細胞内における発現増大のために、コドン最適化されてもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子は機能喪失(LOF)神経変性疾患遺伝子である。いくつかの実施形態では、疾患は、常染色体性劣性遺伝様式を有する。いくつかの実施形態では、LOF遺伝子は、シヌクレイン病に関連する。いくつかの実施形態では、LOF遺伝子は、例えばPDなどのパーキンソン症、または非PDパーキンソン症に関連する。いくつかの実施形態では、LOF遺伝子は、NBIAに関連する。
いくつかの実施形態では、LOF神経変性疾患遺伝子は、ATP13A2である。ヒトATP13A2遺伝子は、膜貫通ドメインを含有することが予測されるPタイプ輸送ATPアーゼのP5サブファミリーに属する、約130kDaの1180個のアミノ酸タンパク質をコードする。ATP13A2遺伝子(PARK9)内の変異は、パーキンソン症によって特徴付けられる神経変性疾患である、常染色体性劣性の若年発症Kufor−Rakeb症候群(KRS)を引き起こす。KRSを引き起こすとして、今までに同定された変異としては、3057delC、1632_1653dup22、1306+5G→A、およびATP13A2のエクソン22内のフレームシフト変異(c.2473C>AA、p.Leu825AsnfsX32)が挙げられる。これらは、タンパク質安定性が損なわれ、および/または活性が損なわれたATP13A2のトランケート型を生じ、機能喪失がもたらされた。早発性パーキンソン症がある対象において、ATP13A2内の多様なホモ接合(例えば、F182L、G504R、G877R、L3292、およびL6025)およびヘテロ接合(例えば、T12M、G533RおよびA746T)ミスセンス変異が、同定されている。いくつかの実施形態では、LOF神経変性疾患遺伝子は、表Cに列挙される遺伝子であり、遺伝子変異は、劣性遺伝様式のパーキンソン症を引き起こす。いくつかの実施形態では、LOF神経変性疾患遺伝子は、酵母ホモログを有するパーキンソン症遺伝子であり、例えば遺伝子は表Dに列挙される遺伝子である。
IV.ヒト誘導神経系細胞
上述のように、「誘導神経系細胞」は、本明細書の用法では、例えば多能性幹細胞などの多能性細胞から、またはおよび神経系細胞に特徴的な特性を示す非ニューロン体細胞から、生体外誘導された細胞を指す。多能性細胞は、細胞に、内胚葉、中胚葉、および外胚葉の3つの胚芽層を生じさせる能力があり、典型的に、長期または無期限の自己再生能力を有する、未分化細胞である。一般に、多能性細胞は、例えば、これらの全ての3つの要素などの、OCT4(POU5F1としてもまた知られている)、SOX2、および/またはNANOGなどの少なくとも1つのマスター多分化能転写因子について陽性である。多能性ヒト幹細胞は、典型的に、例えば、SSEA4、SSEA3、TRA1−60、および/またはTRA−1−81などの、1つまたは複数の細胞表面多分化能関連マーカーを発現する。多能性細胞に特徴的な追加的な特性は、免疫不全マウス(例えばSCIDマウス)に導入した際に奇形腫を形成する能力と、適切な条件下で生体外分化して、3つの胚芽層がある細胞を生じ得る胚様体を形成する能力である。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、培養中で多分化能の有意な低下なしに、少なくとも50、60、70、80、90、または100の個体数倍加、および/または少なくとも50、60、70、80、90、または100回の継代を受けてまたは受ける能力がある。
いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)である。ES細胞は、例えば胚盤胞などの初期段階胚に由来し、または初期段階胚から単離された割球に由来する、多能性幹細胞である。本明細書の用法では、「初期段階胚」という用語は、例えば4細胞胚、8細胞胚、桑実胚期、または胚盤胞などの、第1の細胞分裂から胚盤胞段階までの移植前胚を包含する。ES細胞は、典型的に、生体外受精を使用して生成された初期段階胚から、またはこのような胚から単離された割球から、生体外で誘導される。当該技術分野で公知の多様な方法のいずれかを使用して、ES細胞を誘導、同定、および/または特性解析してもよい。例えば、Turksen,K.(ed.)Human Embryonic Stem Cell Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.331 Humana Press,Inc.Totowa,NH,2006;Turksen,K.(ed.),Human Embryonic Stem Cell Handbook,Methods in Molecular Biology,Vol.873 Humana Press(Springerの商標),2012(例えば、特にヒトES細胞を分割する方法に関する第1〜6章)を参照されたい。米国特許第5,843,780号明細書;米国特許第6,200,806号明細書;米国特許第7,029,913号明細書;米国特許出願公開第20090186407号明細書;PCT/US2011/000850(国際公開第/2011/142832号パンフレット)もまた参照されたい。ES細胞およびES細胞コロニーは、当業者によって容易に認識される。例えば、霊長類ESコロニーは、緊密な形態(緊密に詰め込まれた細胞)と明確なコロニー境界線を示し、核対細胞質比が高く、顕著な核小体がある細胞を含有する。分化細胞の領域は、特に細胞が混み合ってくると、ES細胞コロニーの端に出現する。このような細胞は、より大型でおよびより扁平であることが多い。所望ならば、このような細胞は、機械的継代中に実質的に除去し得る。多数のヒトES細胞系が利用可能である。数百のヒトES細胞系は、米国国立衛生研究所ヒト胚性幹細胞登録(http://grants.nih.gov/stem_cells/registry/current.htm)、および/または欧州ヒト胚性幹細胞登録(www.hescreg.eu)に列挙される。いくつかの実施形態では、ES細胞は、体細胞核移植を使用して生成されてもよい。このアプローチでは、非多能性細胞の核を同一種の除核卵母細胞に導入し、引き続いてそれからES細胞が誘導されてもよい、例えば胚盤胞などの初期段階胚への発達を開始させる。
いくつかの実施形態では、多能性細胞は誘導多能性幹細胞である。本明細書の用法では、誘導多能性幹(iPS)細胞は、細胞を多能性状態に再プログラム化することで、体細胞から誘導される細胞である。iPS細胞は、細胞形態、コロニー形態、長期自己再生、多分化能関連マーカー発現、同様のゲノム規模発現プロファイル、免疫不全マウス中の奇形腫形成能力、および適切な条件下における複数細胞系の細胞の生体外生成能力をはじめとする、ES細胞の特定の重要な特性を有する。「iPS細胞」という用語は、元の誘導された多能性細胞および多能性幹細胞特性を保つその子孫を含むものと理解される。「再プログラム化」は、本明細書の用法では、細胞の分化状態またはアイデンティティー(例えばその細胞型)を変化させること、またはそれによってこれが起こる方法を指す。一般に、第1の細胞の再プログラム化は、常態では第1の細胞または対応する細胞が生体内で従う分化プログラムから得られるものと異なる、分化状態またはアイデンティティーがある第2の細胞を生じて、第1の細胞または対応する細胞が生体内で生じるものと異なる、1つまたは複数のタイプの細胞がもたらされる。「対応する細胞」は、当業者が合理的に同一または実質的に同一細胞型と見なす、同一タイプのまたは十分に類似した特性を有する細胞である。細胞型は、「ニューロン」または「グリア細胞」などの細胞カテゴリー、またはより広いカテゴリーのサブタイプを指してもよい。サブタイプは、特性、特徴的な細胞マーカー(例えば、細胞によって生成されまたは細胞を刺激する神経伝達物)、そのサブタイプの細胞が体内で見られてもよい特徴的な位置、機能特性などに基づいて確定されてもよい。例えば、ニューロンは、数例として、皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、または「運動ニューロンであってもよい。いくつかの実施形態では、細胞型は、特定の1つまたは複数の細胞マーカーセットの発現レベルに基づいて確定される。当業者は、それによって細胞型または細胞状態を割り当てるまたは定義する、細胞マーカーの適切なセットを選択できるであろう。マーカーの適切なセットの例は本明細書に記載されるが、本発明は、これらのマーカーに限定されず、その他のものを使用してもよい。いくつかの実施形態では、再プログラム化は、細胞がより分化していない状態になるようにする。いくつかの実施形態では、再プログラム化は、さもなければ細胞がそれに発達できない、1つまたは複数の細胞型に発達する可能性を細胞に与える。いくつかの実施形態では、再プログラム化は、体細胞から多能性細胞を生じる。いくつかの実施形態では、体細胞は、成熟した分化細胞である。いくつかの実施形態では、再プログラム化は、対応する細胞が、通常の状態で生体内においてそれに発達する、またはそれを生じさせるのとは異なる細胞系の1つに、細胞を変化させる。いくつかの実施形態では、再プログラム化は、第2の細胞系または第1の細胞型とは、異なる第1の細胞系または第1の細胞型の体細胞から、第2の細胞系または第2の細胞型の体細胞を生じる。いくつかの実施形態では、この形質転換は、中間体としての検出可能多能性細胞発生なしに起こってもよく、その場合,それは「分化転換」と称されてもよい。特定の細胞型、細胞系、または細胞状態への細胞の再プログラム化は、1つまたは複数の細胞周期にわたって起こってもよい。例えば、体細胞から多能性幹細胞を生成するには、または異なる細胞型の分化した細胞から第1の細胞型の分化した細胞を生成するには、細胞分裂の複数ラウンドを要してもよい。
一般に、再プログラム化は、細胞を再プログラムするのに適切な条件下で適切な時間にわたって、1つまたは複数の再プログラム化作用因子に、少なくとも1つの体細胞を接触させるステップを含んでなる方法によって、実施されてもよい。いくつかの実施形態では、再プログラム化は、再プログラム化因子をまたは再プログラム化因子をコードする核酸を細胞に導入するステップ、または外来性核酸によってコードされる再プログラム化因子の細胞内発現を誘導するステップを含んでなる方法によって、実施される。「再プログラム化因子」という用語は、細胞に再プログラムを引き起こしまたはそれに寄与できる、タンパク質を包含する。多くの有用な再プログラム化因子は、生成されるタイプまたは状態の哺乳類細胞によって天然に発現され、またはその中に存在する転写因子である。これらのタンパク質は、常態では、遺伝子発現に影響を及ぼすことで、細胞アイデンティティーまたは状態を誘導しまたは維持するのに寄与してもよい。「再プログラム化作用因子」という用語は、再プログラム化因子を包含し、また(i)再プログラム化する方法において再プログラム化因子を置換する、(ii)さもなければ再プログラム化を阻害してもよい内在性RNAまたはタンパク質の発現を阻害する、および/または(iii)再プログラム化作用因子の不在下で得られる効率または速度と比較して、再プログラム化効率または速度お検出可能に増大させる能力がある作用因子も包含する。いくつかの実施形態では、再プログラム化作用因子は、内在性再プログラム化因子の発現または活性化をもたらし、再プログラム化の内在性阻害因子の発現または活性化をもたらすシグナル伝達経路を阻害し、またはDNAまたはヒストンアセチラーゼ、デアセチラーゼ、メチラーゼ、またはデメチラーゼなどのクロマチン構造を改変させる酵素を活性化または阻害するシグナル伝達経路を刺激してもよい。
いくつかの実施形態では、再プログラム化する方法は、例えば、特定のタンパク質またはRNAをコードするベクターなどの核酸を細胞に導入する、および/または細胞に入りまたは細胞表面受容体に作用して再プログラム化を誘導しおよび/またはその効率または速度を増大してもよい、特定の化合物を含有する培地内でそれらを培養するなどの、細胞に対して1つまたは複数の操作を実施するステップを含んでなる。使用される特定の操作および/またはプロトコルは、例えば所望の細胞型または状態、再プログラムされる細胞のタイプまたは状態次第で、必要に応じて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、再プログラム法は生体外で実施される。いくつかの態様では、再プログラム法は、核または細胞質移行、または例えば、卵母細胞、胚、胚芽細胞、または多能性細胞との細胞融合を必要とせず、および典型的にそれを含まない。任意の態様または実施形態は、例えば体細胞と卵母細胞、胚、胚芽細胞、または多能性細胞との融合、または体細胞核の、卵母細胞、胚、胚芽細胞、または多能性細胞への移行などの、核または細胞質移行または細胞融合を明示的に除外してもよい。
再プログラム化は、培養内で、複数の細胞を再プログラム化作用因子またはそれらの組み合わせに曝露するステップと、所望の細胞型または状態の特性を有する1つまたは複数の細胞または細胞コロニーを同定または選択するステップとを含んでなることが多い。1つまたは複数の細胞または細胞コロニーの少なくとも一部を単離して培養内で伸長してもよく、その新しい細胞アイデンティティーまたは状態を保つのに適切な条件下で、別個の細胞系として増殖させてもよい。いくつかの実施形態では、このような条件は、そのタイプの細胞に典型的な培養条件である。いくつかの実施形態では、再プログラムされた細胞のアイデンティティーまたは状態を保つために、少なくとも1つの、いくらかの、または全ての外来性再プログラム化作用因子に継続曝露させる必要はなく、例えば、再プログラムされた細胞のアイデンティティーまたは状態は、このような因子の不在下で安定している。
いくつかの実施形態では、再プログラムされた細胞は、分化して、1つまたは複数の異なる細胞系統または細胞型の細胞を生じるように誘導されてもよい。例えば、再プログラム化を通じて生成された多能性細胞を分化させまたは誘導して、例えば神経前駆細胞などの多能性前駆細胞にしてもよく、これをさらに分化させまたは誘導して、様々なタイプの成熟し分化した細胞にしてもよい。1つまたは複数の所望の細胞系統または細胞型への分化は、細胞を1つまたは複数の操作の適切なセットの対象とすること、または分化に許容的な細胞を条件下に置くことで誘導されてもよい。分化は、1つまたは複数の細胞周期過程にわたって起こってもよいものと理解される。分化を引き起こすのに使用される特定の操作および/またはプロトコルは、例えば所望の細胞型および/または出発細胞型次第で、必要に応じて選択してもよい。
体細胞は、多様な方法によってiPS細胞に再プログラムされてもよい。いくつかの実施形態では、iPS細胞は、1つまたは複数の再プログラム化因子またはこのような因子をコードする核酸を体細胞に導入し、および/または細胞内でこのような因子をコードする1つまたは複数の外来性核酸の発現を誘発するステップを含んでなる方法によって生成される。いくつかの実施形態では、再プログラム化因子は、OCT4、SOX2、およびKLF4(OSK因子)、そして任意選択的にc−MYC(OSKM因子)の少なくとも1つ、2つ、または全てを含む。NANOGおよびLIN28などのその他の再プログラム化因子もまた、有用である。例えば、OCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28(OSNL因子)の併用は、多分化能を誘発し得る。多数の変動または代案の組み合わせが可能である。例えば、KLF4および/またはc−MYCの代わりに、またはそれに加えて異なるKLFおよび/またはMYCファミリーメンバーを使用してもよい。例えば、KLF2またはKLF5は、c−MYCをKLF4;N−MYCまたはL−Mycで置換し得る。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、またはそれを超える再プログラム化因子が使用される。いくつかの実施形態では、再プログラム化因子は、少なくともOCT4を含む。いくつかの実施形態では、SAL4、NANOG、ESRRB、およびLIN28(SNEL因子)またはSAL4、LIN28、ESRRB、およびDPPA2(SLED因子)を使用してもよい。いくつかの実施形態では、OSKM、OSNL、またはその他の因子の1つまたは複数と組み合わせて、1つまたは複数の追加的な再プログラム化因子を使用することで、再プログラム化を促進してもよい(例えば、その効率または速度を増大させてもよい)。例えばGli様転写因子Glis1(Glisファミリージンクフィンガー1)は、OSK因子と共に発現させると、線維芽細胞からのiPS細胞の生成を顕著に促進することが示された(Maekawa M,et al.,Nature.(2011)474(7350):225)。SV40大型T(LT)は、再プログラム化を促進できる因子の別の例である。いくつかの実施形態では、内在性多分化能遺伝子OCT4、SOX2、およびNANOGの活性化を引き起こすのに適切な培養条件下において、適切なレベルで十分な時間にわたり再プログラム化因子の適切なセットが導入されまたは発現されて、これは、細胞によっては自己持続性多能性状態をもたらしてもよい。いくつかの実施形態では、細胞に導入された外来性DNA(例えば再プログラム化因子をコードするDNA)は、例えば、自己持続性多能性状態に達した後などの多分化能の誘導後に、または多能性細胞、誘導神経性幹細胞または誘導神経前駆細胞が所望の細胞型に分化した後に、天然に発現停止されおよび/または少なくとも部分的に除去され、または失われる。挿入DNAは、これらの部位の間の領域の除去がリコンビナーゼ媒介切除によって実施されてもよいように、リコンビナーゼのための標的部位を含んでなってもよい。このような切除は、リコンビナーゼ標的部位の部分を含んでなる、短い残留配列のみを残してもよい。細胞を再プログラムするのに使用されるエピソームプラスミドは、その後失われてもよい。導入された遺伝物質を含まず、または外来性遺伝物質を本質的に含まない(例えば、残留リコンビナーゼ標的部位またはその部分のみを含有する)iPS細胞および/または誘導神経系細胞は、このような方法によって生成し得る。
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の再プログラム化因子が、因子をコードする1つまたは複数の核酸配列を導入することによって、細胞に導入される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の核酸配列は、DNAを含んでなる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の核酸配列は、RNAを含んでなる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の核酸配列は、核酸コンストラクトを含んでなる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の核酸配列は、再プログラム化因子を標的細胞(例えば、ヒト線維芽細胞、角化細胞、または血液細胞などの哺乳類体細胞)内に送達するためのベクターを含んでなる。例えば、iPS細胞は、例えばレンチウイルスなどのレトロウイルス感染によって、再プログラム化因子の適切なセットをコードする遺伝子を体細胞に導入することで、生成し得る。任意の適切なベクターを使用してもよい。適切なベクターの例は、Stadtfeld and Hochedlinger(Genes Dev.24:2239-2263,2010、参照によって本明細書に援用される)によって記載される。その他の適切なベクターは、当業者には明らかである。いくつかの実施形態では、核酸単一カセット内に2、3、4、またはそれを超える因子がコードされる。例えば、再プログラム化因子は、単一プロモーターからの効率的な多シストロン性発現を支持する2A「自己切断」ペプチドを使用して、単一ウイルス中で送達されてもよい。特定の実施形態では、再プログラム化因子またはその他の再プログラム化作用因子の生物学的活性変種を使用してもよいものと理解される。
iPS細胞生成においては、因子の1つまたは複数をコードする遺伝子をゲノムに挿入する代わりに、またはそれに加えて、多様な技術を用い得る。このような方法は、小型分子、一過性形質移入、非組み込みウイルス(例えばアデノウイルス、センダイウイルス)または環状エピソームとして染色体外で複製できるプラスミド(例えば、EBNA1遺伝子およびOriP DNAなどのエプスタイン・バーウイルスの構成要素を含んでなる)を使用した感染、タンパク質形質導入、1つまたは複数の再プログラム化因子をコードする翻訳可能なmRNAの導入、および/または選択された遺伝子(例えばp53−p21経路遺伝子)の発現を阻害するためのRNA干渉の使用を伴ってもよい。TGFβおよび/またはMEK経路などの、ES細胞自己再生および多分化能に関与するシグナル伝達経路に作用する分子を使用してもよい。再プログラム化因子の代わりに、および/または1つまたは複数の再プログラム化因子と組み合わせて、再プログラム化を促進するために使用されてもよい、例えばAurura Aキナーゼ(Aurura A kinase)阻害剤などのキナーゼ阻害剤(Li Z,Rana TM Nat Commun.2012;3:1085)、TGF−β/アクチビン/Nodal受容体阻害剤などのTGF−β経路阻害剤(例えばA−83−01)、MEK阻害剤(例えばPD0325901)、GSK3β阻害剤(例えばCHIR99021)、ROCK阻害剤(例えばHA−100)、Oct4活性化化合物1などのOct−4を活性化する化合物およびその構造的アナログ(Li,T,et al,Proc Natl Acad Sci U S A.2012;109(51):20853-8)、レチノイン酸受容体作動薬をはじめとする、再プログラム化作用因子の非限定的例を特に特定の実施形態で使用してもよい。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例えば、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、酪酸ナトリウム、トリコスタチンA)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX−01294)、およびその他の内在性クロマチン修飾酵素の調節物質は、再プログラム化効率を改善する。これらの化合物は、再プログラム化に対するエピジェネティックな障壁を低下させることで、作用してもよい。特定の実施形態で使用してもよい、再プログラム化、特定の再プログラム法、再プログラムされた細胞の特性決定法、および/またはiPS細胞からの分化細胞作成法のさらなる考察および説明は、例えば、米国特許出願公開第20110076678号明細書;米国特許出願公開第20110088107号明細書;米国特許出願公開第20100310525号明細書;Lyssiotis,CA,et al,Proc Natl Acad Sci U S A.,106(22):8912-7,2009;Carey BW,Proc Natl Acad Sci U S A,106(1):157-62,2009;Hockemeyer D,et al.,Cell Stem Cell.2008;3(3):346-53;および/またはLakshmipathy,U.and Vemuri,MC(eds.),Pluripotent Stem Cells-Methods and Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.873 Humana Press(Springerの商標)、および前述のいずれかで引用される参考文献にある。
いくつかの実施形態では、再プログラム化は、mRNAを細胞に導入することで、少なくとも部分的に実施してもよく、導入されたmRNAは、少なくとも1つの再プログラム化因子をコードする。mRNAは、生体外転写mRNAであってもよい。生体外転写mRNAの生成の非限定的例は、そのそれぞれの教示を参照によって本明細書に援用する、Warren et al.(Cell Stem Cell 7(5):618-30,2010;Mandal PK,Rossi DJ.Nat Protoc.2013 8(3):568-82;および/またはPCT/US2011/032679(国際公開第/2011/130624号パンフレット))によって記載される。記載されるプロトコルは、本明細書で関心のある1つまたは複数のmRNAを生成するように適応してもよい。いくつかの実施形態では、例えば生体外転写mRNAなどのmRNAは、前記mRNAの安定性または翻訳性を増大させる、1つまたは複数の修飾を含んでなる(例えば修飾リボヌクレオチド)。いくつかの実施形態では、修飾は、5−メチルシチジン(5mC)によるシチジンの置換、プソイドウリジン(psi)によるウリジンの置換、またはその双方を含んでなる。いくつかの実施形態では、シチジン、ウリジン、またはその双方の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または全てが、それぞれ5mCまたはpsiによって置換される。いくつかの実施形態では、mRNAはホスファターゼ処理される。いくつかの実施形態では、修飾は、インターフェロンシグナル伝達を減衰させる。いくつかの実施形態では、培地に、インターフェロンシグナル伝達の阻害剤が添加される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、インターフェロンと結合する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、B18Rタンパク質、I型インターフェロンのためのワクシニアウイルスデコイ受容体などのデコイ受容体を含んでなる。
いくつかの実施形態では、例えば生体外転写mRNAなどのmRNAは、5’キャップを含んでなる。キャップは、野生型であってもまたは修飾されていてもよい。適切なキャップの例およびこのようなキャップを含有するmRNAの合成法は、当業者には明らかである。いくつかの実施形態では、例えば生体外転写mRNAなどのmRNAは、例えば強力なコザック翻訳開始シグナルを含んでなる5’非翻訳領域および/またはα−グロビン3’非翻訳領域を含んでなる3’非翻訳領域などの、前記読み取り枠の翻訳を促進する、5’非翻訳領域およびa3’非翻訳領域で挟まれる読み取り枠を含んでなる。いくつかの実施形態では、例えば生体外転写mRNAなどのmRNAは、ポリAテールを含んでなる。例えば、ポリAポリメラーゼを通じた酵素的付加、または適切なリガーゼを用いたライゲーションなど、mRNAにポリAテールを付加する方法は、当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、mRNAは、前記体細胞の再プログラム化が起こるまで、前記mRNAによってコードされる再プログラム化因子またはその他の再プログラム化作用因子の発現を維持するのに十分な量および時間で、体細胞に導入される。十分な時間は、例えば、体細胞のタイプおよび用いられる再プログラム化因子次第で変動してもよい。当業者は、通例の実験法によって適切な時間を容易に判定し得る。いくつかの実施形態では、mRNAは、再プログラム化経過中に、様々な間隔で体細胞に導入される。
いくつかの実施形態では、再プログラムされた多能性ヒト細胞は、その遠位エンハンサーによってOct4転写を駆動する、不活性化前X染色体状態を保つ、およびDNAメチル化の全体的低下および発達調節遺伝子プロモーター上のH3K27me3抑制クロマチン標識沈着の全体的低下などの、未感作多分化能の特徴を示す未感作多能性細胞である。未感作ヒト多能性細胞は、Gafni,O.,et al.,Nature.2013 Dec 12;504(7479):282-6に記載されるようにして誘導されてもよい。いくつかの実施形態では、このような細胞は、遺伝的に修飾されていない。
本開示は、例えば、再プログラム化および/または遺伝子修飾を実施するために、例えばDNAまたはRNAなどの核酸を細胞に導入する任意の適切な方法を検討する。いくつかの実施形態では、核酸は、電気穿孔を通じて体細胞に導入される。いくつかの実施形態では、核酸は、形質移入を通じて体細胞に導入される。多くの当該技術分野で公知である、適切な形質移入試薬を使用してもよい。いくつかの実施形態では、核酸は、例えばカチオン性リポソームまたはナノ粒子などのカチオン性ビヒクルのようなビヒクルと複合体化されてもよい。いくつかの実施形態では、ビヒクルは、エンドサイトーシスを通じた核酸の取り込みを容易にし、および/またはエンドソームからの核酸の放出を容易にする。いくつかの実施形態では、核酸は、ベクターに組み込まれまたはそれによって保有されてもよい。
いくつかの実施形態では、哺乳類体細胞の再プログラム化は、例えば、低pH条件(例えば約pH5.7)などの化学的または物理的刺激などへの一過性曝露によって細胞にストレスを与えるステップを含んでなる、最近出現した方法を含んでなってもよい。細胞は、それによって刺激され、多分化能(STAP)の刺激誘発性獲得を起こしてもよく、多能性細胞を含んでなる細胞系は、適切な条件下で誘導されてもよい(例えば、Obokata,H.,et al.,Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency.Nature,2014;505(7485):641-647;およびObokata,H.,et al.,Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency.Nature,2014;505(7485):676-680を参照されたい)。
一般に、ヒトiPS細胞は、任意のタイプの体細胞から生成されてもよい。いくつかの実施形態では、ヒトiPS細胞は、線維芽細胞、ケラチノサイト、脂肪組織細胞、間葉系幹細胞(脂肪組織から得られてもよい)、末梢血単核細胞(PMNC)、または尿から回収した上皮細胞から生成されてもよい。これらの細胞型は、生きているヒト対象から、非侵襲的にまたは最小のまたは低い侵襲性で容易に得られてもよいため、それらはヒトiPS細胞を誘導するのに特に便利であってもよい。いくつかの実施形態では、ヒトiPS細胞は、末梢血から単離されてもよい精製ヒトCD34+細胞に由来する。
いくつかの実施形態では、ES細胞、iPS細胞、または誘導神経系細胞は、生理学的な酸素条件下で誘導されおよび/または維持される。生理学的なO2条件は、例えば4.0%〜6.0%、例えば4.5%〜5.5%などの2.0%〜7.0%のO2濃度に相当するPO2値を有する、培地の使用を包含する。例えば、PO2は、例えば約30−40mmHg、例えば約36mmHgなどの約20〜50mmHgであり得て、それは適切な範囲内のO2濃度を有する気体混合物を含有するインキュベーターおよび培養チャンバーの使用を通じて、または培地のO2濃度を別の様式で制御することで、達成し得る。いくつかの実施形態では、誘導および/または引き続く培養は、少なくとも部分的に、例えば、培地中の1つまたは複数の抗酸化物質または内在性抗酸化システムの活性化因子などによって、酸化的ストレスから細胞を保護する条件下で実施される。例えば、Lengner CJ,et al.,Derivation of pre-X inactivation human embryonic stem cells under physiological oxygen concentrations,Cell.2010;141(5):872-83;および/またはPCT/US2011/000850を参照されたい。いくつかの実施形態では、生理学的なO2および/または酸化的ストレスから細胞を保護する条件下で誘導されて維持される、雌性ES細胞または雌性iPS細胞は、2つの活性X染色体を有する。
いくつかの実施形態では、誘導神経性幹細胞は、多能性ヒト細胞に由来する。「誘導神経性幹細胞」という用語は、多能性、自己再生、神経球形成能力、および神経性幹細胞に特徴的な細胞マーカー発現などの神経性幹細胞に特徴的な特性を示す誘導神経系細胞を指す。神経性幹細胞は多能性であり、成熟ニューロン、星状細胞、および乏突起膠細胞を生じる能力を有する。いくつかの実施形態では、誘導神経性前駆細胞は、多能性ヒト細胞に由来する。「誘導神経前駆細胞」という用語は、神経性幹細胞よりも特定の細胞運命に向けてより分化しまたは特定化され、成熟ニューロンよりも分化度が低く、成熟ニューロンの特徴がある細胞を生じさせる能力がある、誘導神経系細胞を指す。いくつかの実施形態では、誘導神経前駆細胞は、ニューロンおよびグリア細胞の双方(例えば星状細胞および/または乏突起膠細胞)を生じさせる能力がある。
誘導神経性幹細胞および誘導神経性前駆細胞は、培養中で分化して成熟ニューロンを生じ、いくつかの実施形態では、グリア細胞を生じてもよい。いくつかの実施形態では、成熟ニューロンは、有糸分裂後ニューロンである。このような分化を誘発する方法は、当該技術分野で公知である。一般に、このような方法は、所望の細胞型を生成するのに適切な時間にわたって、適切な培地中で、誘導神経幹細胞または誘導神経前駆細胞を培養するステップを含んでなる。培地は、神経分化を促進する、1つまたは複数の薬剤を含んでなってもよく、および/または神経分化を阻害しまたは非神経細胞系統経路に沿った分化を促進してもよい、1つまたは複数の薬剤が欠如していてもよい。培養中で、iPSまたはES細胞、神経幹細胞および神経前駆細胞などのヒト多能性幹細胞(PSC)から、ニューロンを作成する方法は、当該技術分野で公知である。非限定的例は、実施例で詳述されるが、その他の方法もまた使用してもよい。特定の方法、培地は、所望の細胞型またはサブタイプの細胞を生成するのに適するように選択してもよい。いくつかの実施形態では、ニューロンおよびグリア細胞の双方を含んでなる細胞培養物を生成してもよい。いくつかの実施形態では、神経細胞は、EBまたは間質支持細胞ベースのプロトコルを要して生成される。いくつかの実施形態では、神経細胞は、米国特許出願公開第20100021437号明細書に記載されるようにして、iPS細胞から生成されてもよい。いくつかの実施形態では、ニューロンは、任意選択的に、NeuroD1および/または1つまたは複数のマイクロRNAの同時発現と組み合わせて、Brn2、Ascl1、MytL1を発現させることで、多能性幹細胞から、または線維芽細胞などの非神経性体細胞から、生成されてもよい。いくつかの実施形態では、ニューロンは、細胞内でニューロゲニン−2(Ngn2)またはNeuroD1を発現させることで、iPS細胞またはES細胞であってもよい多能性幹細胞(PSC)から生成されてもよい(例えば、Zhang,Y.,et al,(2013)Neuron 78,785-798に記載されるようにして)。いくつかの実施形態では、中脳底板前駆体が、修飾二重SMAD阻害プロトコルを使用して、多能性幹細胞(PSC)から誘導されてもよい(Fasano,C.A.,et al.,Cell Stem Cell 6,336-347(2010);Chambers,S.M.et al.Nature Biotechnol.27,275-280(2009)。いくつかの実施形態では、二重SMAD阻害は、ALK阻害剤およびBMP阻害剤への曝露によって達成されてもよい。いくつかの実施形態では、BMP阻害剤は、Nogginまたはそれらの生物学的活性変種を含んでなる。いくつかの実施形態では、例えば小分子SB431542などのALK阻害剤は、ALK4、ALK5、ALK7受容体のリン酸化をブロックする。いくつかの実施形態では、二重SMAD阻害は、小型分子LDN193189およびSB431542、「LSB」)への曝露によって達成されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ソニックヘッジホッグ(SHH)、カノニカルWNTシグナル伝達、およびFGF8の小分子活性化剤への曝露による、ソニックヘッジホッグ(SHH)およびカノニカルWNTシグナル伝達の活性化または促進を使用して、このような細胞から中脳ドーパミン作動性(DA)ニューロンが生成される。このようなニューロンは、数ヶ月間生体外で維持し得て、齧歯類および非ヒト霊長類などの哺乳類種に移植可能である(Kriks,S.,et al.,(2011),Nature,Vol.480,pp.547-553,doi:10.1038/nature10648を参照されたい、その中ではDA中脳前駆体を生成するのに適切な薬剤の組み合わせがLSB/S/F8/CHIRと称され、条件は、背側前脳になる運命の前駆体(LSB)または(2)腹側/視床下部になる運命の前駆体(LSB/S/F8)を生成するのに有用である。いくつかの実施形態では、カノニカルWNTシグナル伝達の活性化剤は、GSKβを阻害する薬剤である(例えば、CHIR99021などの小分子)。いくつかの実施形態では、SHHシグナル伝達の活性化は、小分子作動薬であるプルモルファミンを単独で、または組換えSHHとの組み合わせで使用して達成される。当業者は、(i)SMADシグナル伝達を阻害するおよび/または(ii)カノニカルWNTシグナル伝達、SHHシグナル伝達、またはFGF8シグナル伝達を活性化するのに使用してもよいその他の薬剤を承知している。多能性ヒト細胞からグリア前駆細胞を作成する方法が、利用できる。グリア前駆細胞は、オリゴデンドロサイトおよびアストロサイト細胞に分化し得る。星状細胞および乏突起膠細胞の双方は、ヒトiPSC由来ヒト乏突起膠細胞前駆細胞(OPC)から効率的に誘導される(Wang.,S.,et al.Cell Stem Cell 12,252-264)。
いくつかの実施形態では、誘導ヒト神経系細胞は、例えば生体外などの分化転換によって生成されてもよい。本明細書の用法では、「分化転換」は、多能性細胞を中間段階として作成することなく、生体外で、第2の細胞型の非多能性細胞から第1の細胞型の非多能性体細胞を誘導する方法を指す。いくつかの実施形態では、誘導神経幹細胞、誘導神経前駆細胞、または誘導ニューロンは、例えば、線維芽細胞またはケラチノサイトなどの体細胞からの分化転換によって生成される。分化転換によって、誘導神経幹細胞、誘導神経前駆細胞、または誘導ニューロンを作成する方法は、当該技術分野で公知である(例えば、Ring,KL,et al.,(2012)Cell Stem Cell 11,100-109;Pang,ZP,et al.,(2012),Nature,476:220-224を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、誘導神経前駆細胞は、中枢神経系またはそれらの構成要素に位置する細胞体を有する、ニューロンおよび/またはグリア細胞に発達する運命の細胞の徴候である、細胞マーカーの特徴を有し、および/またはそれを発現してもよい。本明細書の目的では、中枢神経系は、脳、脊髄、脳神経、および網膜を含む。いくつかの実施形態では、誘導神経前駆細胞は、末梢神経系に位置する細胞体を有する、ニューロンおよび/またはグリア細胞に発達する運命の細胞の特徴を欠いてもよく、および/またはその徴候である細胞マーカーを発現しなくてもよい。いくつかの実施形態では、誘導神経前駆細胞は、脳内;または前脳、中脳、皮質、海馬、線条体などの脳の特定の領域または小領域;または例えば領域、小領域、または神経変性疾患に頻繁に罹患する核などの特定の脳核に位置する、ニューロンおよび/またはグリア細胞に発達する運命の細胞の徴候である、細胞マーカーの特徴を有し、および/またはそれを発現してもよい。当業者は、関心のある神経系細胞を同定するための適切なマーカーを承知している。適切なマーカーは、例えば、転写因子、神経伝達物の合成または神経伝達物質前駆体の役割を果たす分子取り込みに関与する酵素、神経伝達物受容体、中間径フィラメントタンパク質、イオンチャネルサブユニット、細胞接着分子などであってもよい。Pax6、ネスチン、Forse−1およびOtx−2は、その発現が、前側/前脳になる運命の神経前駆細胞に特徴的な、マーカーの例である。Tbr1は、発達中の皮質深部層に特徴的な転写因子である。TUJ1(ニューロン特異的クラスIIIβ−チューブリン)は、未成熟および成熟ニューロンの特徴的なマーカーである。MAP2は、成熟ニューロンの特徴的なマーカーである。特徴的な星状細胞マーカーとしては、例えばグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)が挙げられる。特徴的な乏突起膠細胞マーカーとしては、例えばO4およびOLIG2が挙げられる。VGLUT1(小胞グルタミン酸輸送体−1)は、グルタミン酸作動性ニューロンのマーカーであり、海馬ニューロンおよび皮質ニューロンによって、広範に発現される。チロシンヒドロキシラーゼは、ドーパミン作動性ニューロンに特徴的な細胞マーカーである。いくつかの実施形態では、マーカーの発現の欠如または辛うじて検出可能な発現は、関心のある細胞型に特徴的であってもよい。例えばいくつかの実施形態では、誘導中枢神経系細胞は、末梢神経系マーカー、ペリフェリンの発現が検出不能であり、または例えば背景を超えて辛うじて検出可能であるなど、ないに等しく検出可能であることを特徴とする。これらのマーカーは、単なる例示的であることが理解されるであろう。その他の適切なマーカーは当該技術分野で公知であり、その一部は本明細書の参考文献に記載される。
例えばパーキンソン病がある患者(Soldner F,et al.,Cell,136(5):964-77,2009)、筋萎縮性側索硬化がある患者(Dimos et al.,Science.2008,321(5893):1218-21)、およびアルツハイマー病(Israel et al.,Nature.2012,482:216-20)などの神経変性疾患がある患者から、いくつかの疾患特異的iPS細胞系が確立されている。これらの系統、または例えばその他の対象から同一方法またはその他の方法を使用して誘導された系統は、様々な実施形態で使用してもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患に罹患している、または少なくとも1つの疾患関連遺伝性遺伝的多様性または変異を有する個人に由来する、ヒト誘導神経系細胞が、遺伝的に修正される。本明細書の用法では、「遺伝的に修正された細胞」は、そのゲノム中の位置に遺伝性疾患関連遺伝的多様性または変異を保有する細胞または個人に由来する細胞であり、遺伝的に修正された細胞は、その位置でそのゲノム配列を、例えば標準配列などの疾患に関連しない配列に変化させるように遺伝子操作される。細胞およびその遺伝的修正対応物は、修正された特定の位置以外は、同質遺伝子型である。同一細胞または個人に由来する異なる細胞は、ゲノム中のありとあらゆる位置で遺伝的に同一でなくてもよいものと理解される。例えば細胞は、培養中で変異を獲得してもよく、したがって単細胞または個人に由来する2つの細胞のゲノム配列は、1つまたは複数の位置で異なってもよい。しかしこのような変異のレベルは、細胞およびその遺伝的修正対応物が、修正された特定の位置以外は本明細書で同質遺伝子型と見なされるように、十分に低い。いくつかの実施形態では、遺伝的に修正された細胞または細胞系は、遺伝的に修正されていない同一個人に由来する細胞または細胞系の対照としての役割を果たす。
いくつかの実施形態では、ヒト誘導神経系細胞は、神経変性疾患に関連する遺伝子型を有するように遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、神経変性疾患遺伝子中に変異を有するように操作される。いくつかの実施形態では、ヒト誘導神経系細胞は、例えば、神経変性疾患に関連する遺伝子型を有しないと思われているiPS細胞またはES細胞などの細胞に由来する。いくつかの実施形態では、細胞は、神経変性疾患を有しない対象に由来する。いくつかの実施形態では、対象は、家族型の神経変性疾患の家族歴を有しない。いくつかの実施形態では、対象は、散発的な神経変性疾患の家族歴を有しない。細胞遺伝子は、神経変性疾患を引き起こすことが知られている変異を保有するように改変されていてもよい。いくつかの実施形態では、変異は、例えば、α−シヌクレイン、TDP−43、FUS、タウ、polyQ伸長を含んでなるタンパク質、またはAPPまたは神経変性関連RNAなどの、神経変性関連タンパク質をコードする遺伝子である。例えば、iPS細胞またはES細胞または神経幹細胞または神経前駆細胞遺伝子は、関心のある1つまたは複数の特定の変異または変動を保有するように、改変されていてもよい。細胞は、分化して成熟ニューロンを生じてもよい。遺伝子操作された細胞は、改変が遺伝する任意の細胞であってもよいものと理解される。したがって遺伝子操作された細胞は、遺伝子操作された元の細胞の子孫であってもよい。
いくつかの実施形態では、細胞は、その過剰発現が神経変性疾患を引き起こす遺伝子を過剰発現するように、遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、遺伝子はSNCAである。いくつかの実施形態では、細胞は、その機能獲得が神経変性疾患を引き起こす遺伝子中に機能獲得変異を有するように、遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、その機能獲得が神経変性疾患を引き起こす遺伝子中に機能獲得変異を有するように、遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、その機能喪失が神経変性疾患を引き起こす遺伝子中に機能獲得変異を有するように、遺伝子操作される。変異は、様々な実施形態で、遺伝子の片方または双方のコピーに導入されてもよい。例えば疾患が常染色体優性遺伝様式を有する場合などのいくつかの実施形態では、機能獲得変異は遺伝子の1つのコピーに導入される。例えば疾患が常染色体性劣性遺伝様式を有する場合などのいくつかの実施形態では、機能喪失変異は遺伝子の双方のコピーに導入される。
いくつかの実施形態では、特定の疾患に関連する神経変性疾患遺伝子に変異を有しまたはこのような遺伝子の追加的コピーを有する細胞が、疾患に関連する少なくとも1つの追加的な神経変性疾患遺伝子または遺伝的修飾因子の片方または双方のコピーに変異または多様性を有するように操作される。例えば、SNCAに変異がある、またはα−Synをコードする遺伝子の追加的コピーがある細胞は、ATP13A2、LRRK2、VPS35、GBA、または表BまたはCに列挙されるその他の遺伝子にもまた変異を有するように操作されてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子は酵母ホモログを有する。
いくつかの実施形態では、ヒト誘導神経系細胞は、例えば誘導性などの調節可能プロモーター制御下にあるNAPまたはNARをコードする核酸配列を含んでなる。所望ならば、このような細胞内で、(例えば、用いられる特定の調節系次第で、誘発剤の存在下または抑制剤の不在下で、それらを培養することで)NAPまたはNARの発現を誘導し得る。その中でNAPまたはNARが発現しない条件下で培養された同一細胞系の細胞が、対照細胞として使用されてもよい。いくつかの実施形態では、異なる量の誘発剤または抑制剤が、異なるレベルの発現を可能にしてもよい。図10は、TALENを使用して、誘導ヒトニューロンに分化し得る、ドキシサイクリン誘導性遺伝子組換えαSyn−過剰発現hESC系(またはαSyn−mK2融合タンパク質、タウ、または関心のあるその他のタンパク質またはRNA発現系)を生成する、例示的なストラテジーを描写する。核酸コンストラクトは、AAVS1遺伝子座に標的化される。特定の実施形態では、NAPまたはNAR(プロモーターと、そしていくつかの実施形態では、例えば転写活性化または抑制などのプロモーターの転写調節を可能にする配列と、作動可能に連結してもよい)をコードする第1のコンストラクトと、転写活性化因子または抑制因子の機能を果たすタンパク質をコードする第2のコンストラクトとの2つのコンストラクトを使用してもよい。いくつかの実施形態では、テトラサイクリントランス活性化因子または抑制因子システムを使用してもよい。いくつかの実施形態では、2つのコンストラクトは、相同的な染色体の同一位置(例えば各染色体19のAAVS1遺伝子座)に標的化されてもよい。多様なその他のシステムを使用して、発現または活性の調節可能誘導を達成してもよい。いくつかの実施形態では、機能喪失変異は調節可能であってもよい。例えば、内在性神経変性疾患遺伝子は、その発現またはその遺伝子産物の活性を低下させまたは排除するように変異されてもよい。細胞は、(セーフハーバー遺伝子座に標的化されてもよい)同一遺伝子産物をコードする調節可能導入遺伝子を含んでなるように操作されて、内在性遺伝子の機能を置換してもよい。導入遺伝子の発現は抑制されて、機能喪失変異の効果が再現されてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子の変異バージョンを含んでなる第2の導入遺伝子の発現が誘導されて、神経変性疾患に関連する変異の効果が再現されてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子の少なくとも一部は、リコンビナーゼ認識部位の間に配置されてもよい。このような部位の間に位置するDNAは、細胞内にリコンビナーゼの発現を導入しまたは誘導することで、除去し得る。このようなシステムを使用して、例えば欠失を生じさせてもよく、それは遺伝子の発現を低下させて、または機能が変化した(例えば低下した)遺伝子産物をもたらしてもよく、またはプロモーター制御下のコード配列をもたらし、それによって発現、誘導するなどしてもよい。適切なシステムは、当該技術分野で公知である。例えばCre/Loxリコンビナーゼシステムを使用してもよい。標的遺伝子は、Cre媒介組換えを通じて、側面に位置する(floxed)遺伝子断片の切除を可能にする、2つのloxP部位の挿入によって修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、Creの発現は調節可能プロモーターの制御下にあってもよく、またはCre活性は小分子によって調節されてもよい。例えばCreは、その活性が受容体リガンドによって調節されるように、ステロイドホルモンリガンド結合領域に融合してもよい。Cre−ER(T)またはCre−ER(T2)リコンビナーゼ使用してもよく、それは、ヒトエストロゲン受容体(ER)とCreリコンビナーゼの変異リガンド結合領域間に融合タンパク質を含んでなり、その活性は、例えば4−ヒドロキシ−タモキシフェンによって誘導し得る。例えば、当該技術分野で知られている、ノックアウトなどの誘導性遺伝子変異を生成するその他の方法を使用してもよい。例えば、異なるリコンビナーゼ(例えばDreまたはFlp/Frtシステム)を使用してもよく、および/またはリコンビナーゼ活性を調節可能にする別の手段を使用してもよい。
多様な方法を使用して、例えば変異または遺伝的多様性を導入または修正するなど、ヒト細胞のゲノムに遺伝子変異を導入してもよい。特定の実施形態では、このような方法を使用して、このような変異または多様性を欠く細胞に変異または多様性を導入し、またはこのような変異または多様性を有する細胞内で、変異または多様性を修正してもよい。いくつかの実施形態では、相同組換えを利用する方法を使用して、遺伝子操作を実施してもよい。いくつかの実施形態では、挿入、欠失、および/または置換は、細胞のゲノムに、選択された標的部位で、1つまたは複数の二本鎖切断(DSB)または一本鎖ニックを導入することで作成されてもよく、それは次に、例えば非相同的末端結合(NHEJ)または相同性指向修復(HDR)経路などの内在性DNA修復機構を使用して、細胞によって修復される。修復は、DSBまたはニックの導入前に存在した配列を変化させてもよく、例えば、標的部位への特定のヌクレオチドの欠失、挿入、または置換導入を許す(例えば、点変異または単一ヌクレオチド多様性を作り出し、または修正する)。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の導入遺伝子が、任意選択的に、少なくとも部分的に欠失しまたは妨害された内在性配列と組み合わせて、内在性遺伝子座に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、内在性遺伝子には不在である変異または遺伝的多様性を含有しまたは内在性遺伝子中に存在する変異または遺伝的多様性を含有しない、修飾配列で、NAPをコードする内在性遺伝子の少なくとも一部が置換される。いくつかの実施形態では、正常細胞との比較で遺伝子の1つまたは複数の追加のコピーがある細胞を生成するために、プロモーターと作動可能に連結するNAPをコードする配列が、NAPをコードする内在性遺伝子の位置と異なる、ゲノム中の位置に挿入される。位置は、明確に選択された位置であっても、または無作為であってもよい。いくつかの実施形態では、例えばNAPはα−シヌクレインを含んでなる。家族型PDがある特定の患者に見られるように、α−synをコードする遺伝子の2つのコピーを有するiPSまたはES細胞が、3、4、またはそれを超えるコピーを含んでなるように修飾されてもよい。
いくつかの実施形態では、例えばヒト細胞などの哺乳類細胞ゲノムへの外来性DNAの組み込みは、「セーフハーバー」遺伝子座で起こる。「セーフハーバー」遺伝子座は、宿主細胞に対する悪影響なしに、新たに組み込まれたDNAの予測可能な発現を収容できる、ヒトゲノムの遺伝子内のまたは遺伝子外の領域である。いくつかの実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、AAVSV1(染色体19上の野生型AAVの天然組み込み部位)、ROSA26、またはCCR5遺伝子座である。これらの遺伝子座位置は、当該技術分野で周知である。AAVS1部位は、染色体19(位置19q13.42)内にあり、AAVS1遺伝子座への組み込みは、遺伝子ホスファターゼ1制御サブユニット12C(PPP1R12C)を妨害してもよい。ヒトROSA26遺伝子座は、染色体3(位置3p25.3)内にある。ヒトCCR5遺伝子は、染色体3(位置3p21.31)上に位置する。
いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数の選択されたDNA配列に標的化されるヌクレアーゼを使用して、遺伝子修飾されてもよい。このような方法を使用して、内在性ゲノムの遺伝子座内で、選択された部位の精密な切断を誘発してもよい。いくつかの実施形態では、例えば細胞に由来する成熟ニューロンなどの細胞の子孫に、変異が遺伝するように、多能性幹細胞、神経幹細胞、または神経前駆細胞内で、変異が操作される。例えば関心のある規定の位置で、標的化可能なヌクレアーゼを使用して、DNAがゲノムに挿入され、置換され、またはそれから除去される遺伝子操作は、「ゲノム編集」と称されてもよい。このようなヌクレアーゼの例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN、操作されたメガヌクレアーゼ自動誘導エンドヌクレアーゼ、そして例えばII型細菌CRISPR/Casシステム(例えばCas9)に由来するような、CRISPR(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列)関連(Cas)ヌクレアーゼなどのRNA指向ヌクレアーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼを選択されたDNA配列に標的化する、DNA切断領域およびDNA結合領域(DBD)を含んでなる。DNA切断領域は、それが標的とする部位にまたはその近くに、DSBまたはニックを生じてもよい。DBDは、ヌクレアーゼを部位特異的ヌクレアーゼに変換する。当該技術分野で公知のように、ZFNは、ジンクフィンガー(ZF)タンパク質に基づいて選択され、またはデザインされたDBDを含んでなる。ZFタンパク質のDBDは、その構造が亜鉛イオン配位を通じて安定化されたアミノ酸配列領域である、1つまたは複数のジンクフィンガーを介して、配列特異様式でDNAを結合する。TALENは、DNA損傷応答経路を刺激する、キサントモナス属(Xanthomonas)種ZFNまたはTALEN二量体誘発標的化DNA DSBの転写活性化因子様(TAL)エフェクター(TALE)のDBDに基づいて選択され、またはデザインされたDBDを含んでなる。デザインされたジンクフィンガー領域の結合特異性は、特異的ゲノム部位にZFNを誘導する。TALEは、そのそれぞれが単一塩基対を認識する、複数33〜35アミノ酸反復領域を含有する。ZFN同様に、TALENは、DNA損傷応答経路を活性化して特定用途向け改変を可能にする、標的化DSBを誘導する。操作された部位特異的ヌクレアーゼのDNA切断領域は、Fok1エンドヌクレアーゼまたはそれらの変種などの天然起源エンドヌクレアーゼからの、触媒領域を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、切断特異性および/または切断活性を改善するようにデザインされた変異がある、FokI切断領域変種を使用してもよい。(例えば、Guo,J.,et al.(2010)Journal of Molecular Biology 400(1):96-107;Doyon,Y.,et al.,(2011)Nature Methods 8:74-79を参照されたい。いくつかの実施形態では、CRISPR/CasシステムなどのRNA指向性ヌクレアーゼを使用してもよい。このようなシステムでは、Cas9(例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9)などのCasヌクレアーゼが、関心のある配列と相補的な操作されたガイドRNA(シングルガイドRNAと称されることもある)によって、関心のある特定のDNA配列に誘導される。
一般に、例えばゲノム編集などの遺伝子操作のためのヌクレアーゼベースのシステムの使用は、ヌクレアーゼ、またはヌクレアーゼをコードする核酸を細胞に導入し(そしてクリスプ/Casシステムの場合は、ガイドRNA、またはガイドRNAをコードするコンストラクトもまたを導入し)、ヌクレアーゼが細胞のDNAを切断するのに適した時間および条件で、細胞を維持することを必然的に伴う。いくつかの実施形態では、dsDNAの1つの鎖のみを切断するヌクレアーゼ(ニッカーゼ)を使用して、NHEJ修復経路を活性化することなしにHDRを刺激してもよい。ニッカーゼは、二本鎖切断またはCasタンパク質触媒領域の不活性化に必要な、ZFNまたはTALEN二量体中の1つのヌクレアーゼ単量体の触媒活性を不活性化することで、作成してもよい。例えば、アラニン(D10A、H840A)などの1つの触媒残基(RuvCヌクレアーゼ領域内のD10およびHNHヌクレアーゼ領域内のH840)の変異は、Cas9をDNAニッカーゼに変換する。細胞内で発現を誘導できるプロモーターと作動可能に連結するヌクレアーゼをコードする核酸は、プラスミドまたはその他のベクター中で細胞に導入してもよい。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼをコードするmRNAを導入してもよい。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼそれ自体を導入してもよい。sgRNAは、(形質移入などの方法によって)直接導入してもよく、またはそれを発現ベクターなどの核酸コンストラクトから発現させることで導入してもよい。いくつかの実施形態では、sgRNAおよびCasタンパク質は、細胞に導入された単一発現ベクターから発現され、またはいくつかの実施形態では、異なる発現ベクターから現される。いくつかの実施形態では、例えば2、3、4、5、またはそれを超える遺伝子などの異なる遺伝子と相補的な配列を含んでなる複数sgRNAが、同一細胞に個別に順次導入され、または単一核酸と一緒にまたはその一部として導入され、または1つまたは複数の核酸コンストラクトから発現される。いくつかの実施形態では、複数遺伝子内の変化が、それによって同一ステップで生じてもよい。いくつかの実施形態では、切断位置でゲノム中に挿入される配列を含んでなる核酸(例えば、プラスミドまたは線状DNA)もまた、ヌクレアーゼを含有する細胞に導入される。いくつかの実施形態では、2つ以上の切断が生じて、切断位置の間に関心のある核酸が挿入され、任意選択的に、少なくとも部分的に、変異、遺伝的多様性、または遺伝的修正を組み込むバージョンによって、内在性遺伝子を置換する。いくつかの実施形態では、核酸は、相同性指向修復が刺激されるように、切断部位の側面に位置する領域に対する相同性領域を含んでなる。いくつかの実施形態では、標的部位のいずれかの側と相同的な配列を含んでなり、細胞内のゲノム中に存在する配列と比較して所望の変化を含有する核酸が、例えば相同性指向性修復をもたらすポリペプチドに加えて導入される。例えば相同配列と所望の変化とを含んでなる核酸配列などの、少なくとも部分的にゲノム導入される配列を含んでなる核酸は、「ドナー配列」と称されてもよい。ドナー配列は、切断部位で、少なくとも部分的にゲノムに物理的に組み込まれてもよく、または相同組換えを通じて切断修復のためのテンプレートとして使用されてもよく、ドナーに存在するヌクレオチド配列の全部または一部の、細胞ゲノム中への導入がもたらされる。したがって細胞内のゲノムの配列は改変し得て、特定の実施形態では、ドナー核酸内に存在する配列に変換し得る。「挿入」「置換」などの用語は、核酸配列の挿入または1つのヌクレオチド配列の別のものによる置換(すなわち、情報の意味での配列の挿入または置換)を表し、導入核酸のゲノム中への物理的または化学的組み込みは必ずしも必要でなく、例えば修復が、ドナー配列の少なくとも一部コピーの生成を必然的に伴ってもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、ドナー配列は、環状DNA(例えばプラスミド)、直鎖二本鎖DNA(例えば、直線化プラスミドまたはPCR産物)、または例えば一本鎖オリゴヌクレオチドなどの一本鎖DNA中に含有されてもよい。いくつかの実施形態では、ドナー配列は、ゲノム中の標的部位のいずれかの側とまたはそれぞれの側と、約10〜25bpおよび約50〜100bpの相同性がある。いくつかの実施形態では、例えば、約100〜500bpで最大約1〜2kBまたはそれを上回るなどのより長い相同配列を使用してもよい。いくつかの実施形態では、改変は、遺伝子1つの対立遺伝子に導入される。いくつかの実施形態では、第1の改変が遺伝子の1つの対立遺伝子に導入され、異なる改変が別の対立遺伝子に導入される。いくつかの実施形態では、同一の改変が、対立遺伝子の双方に導入される。例えば、遺伝子の双方のコピーが、ホモ接合性変異または多様性を保有する細胞内で修正されてもよい。いくつかの実施形態では、機能的に同等の影響を有する異なる改変が、2つの対立遺伝子に導入されてもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の明白な改変が、1つの対立遺伝子に、または双方の対立遺伝子に導入される。いくつかの実施形態では、シングルステップで、2つの対立遺伝子または標的部位(またはそれ以上)が遺伝子修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、別々のステップで、2つの対立遺伝子または標的部位(またはそれ以上)が遺伝子修飾されてもよい。
いくつかの実施形態では、所望の遺伝子操作された変化を有する細胞が同定され、または選択されてもよい。例えばいくつかの実施形態では、ドナー配列を送達するのに使用されるドナー配列またはベクターは、選択可能なマーカーを含んでなってもよく、それを使用して、選択可能なマーカーを含んでなるドナー配列の少なくとも一部が、それらのゲノム中に組み込まれた細胞を選択してもよい。いくつかの実施形態では、選択は使用されない。いくつかの実施形態では、細胞を例えばサザンブロット法によってスクリーニングし、所望の遺伝子変異を有する細胞またはクローンを同定してもよい。
ZFNおよび/またはTALENをデザインし、作成し、使用する方法は、例えば、国際公開第2011097036号パンフレット;Urnov,FD,et al.,Nature Reviews Genetics(2010),11:636-646;Miller JC,et al.,Nat Biotechnol.(2011)29(2):143-8;Cermak,T.,et al.Nucleic Acids Research(2011)39(12):e82;Sanjana,N.E.et al.A transcription activator-like effector toolbox for genome engineering.Nat Protoc 7,171-192(2012)、および前述のいずれかの中の参考文献に記載される。ゲノム編集のためのZFN、TALEN、およびCRISPR/Casベースの方法は、Gaj,T.,et al.,Trends Biotechnol.2013 Jul;31(7):397-405.Epub 2013 May 9で概説される。ゲノム編集におけるCRISPR/Casシステムの利用は、例えば、Cong L,et al.Multiplex genome engineering using CRISPR/Cas systems.Science.2013;Wang,H.et al.One-step generation of mice carrying mutations in multiple genes by CRISPR/Cas-mediated genome engineering.Cell 153,910-918(2013);Ran,F.A.et al.Double Nicking by RNA-Guided CRISPR Cas9 for Enhanced Genome Editing Specificity.Cell 154,1380-1389(2013)に記載される。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、細胞内で複数の遺伝子変異を生成するために特に有用であってもよい。ヒト多能性細胞の遺伝子操作を実施するためのZFNの使用は、Hockemeyer,D.et al.(2009)Nat Biotechnol 27:851-857;および/または米国特許出願公開第20110027235号明細書に記載される。ヒト胚性幹細胞(ESC)および誘導多能性幹細胞(iPSC)細胞内でゲノム編集を実施するためのTALENの使用は、Hockemeyer,D.,et al.(2011)Nature Biotechnology 29(8):731-4に記載される。ZFNを使用した、2つの早発性パーキンソン点変異のみで異なる同質遺伝子型多能性幹細胞の生成は、Soldner F,et al.(2011)Cell 146(2):318-31;および/またはこの目的でのTALENの使用についてもまた記載する米国特許出願公開第20120192301号明細書に記載される。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子の転写は、(a)遺伝子の適切な領域(例えばプロモーター領域)に誘導される、DNA結合TALEまたは触媒能のないCasタンパク質(例えばCas9);および(b)哺乳類細胞内で活性である、転写活性化領域または転写抑制領域を含んでなるエフェクター領域を含んでなるタンパク質を使用して、上方制御されまたは阻害されてもよい。タンパク質は、そのDBD(TALEの場合)またはsgRNA(Casの場合)のいずれかによって、遺伝子の適切な領域(例えばプロモーター領域)に誘導される。例えば、Zhang,F.,et al.(2011)Efficient construction of sequence-specific TAL effectors for modulating mammalian transcription.Nat.Biotechnol.29,149-153;Cong,L.,et al.(2012)Comprehensive interrogation of natural TALE DNA-binding modules and transcriptional repressor domains.Nat.Commun.,DOI:10.1038/ncomms1962;Maeder ML,et al.Robust,synergistic regulation of human gene expression using TALE activators.Nat Methods 2013,10:243-245;Cheng,A.W.et al.(2013)Multiplexed activation of endogenous genes by CRISPR-on,an RNA-guided transcriptional activator system.Cell Res.23,1163-1171を参照されたい。触媒能のないCas9は、の双方の触媒残基(Cas9中のD10およびH840)を例えばアラニンに変異させることで、生成されてもよい。代表的な転写抑制領域としては、例えば、mSin相互作用領域(SID)、Tbx3抑制領域、およびKRAB抑制領域が挙げられる。代表的な転写活性化領域としては、例えばVP16最小活性化領域と、例えば3〜15、例えば4〜10コピーのVP16最小活性化領域を含んでなるそれらの多量体とが挙げられる。いくつかの実施形態では、近位プロモーター領域に標的化される、約3〜5のsgRNAが使用される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患遺伝子または遺伝的修飾因子の発現が、RNAi剤を使用して阻害される。いくつかの実施形態では、ZFN、TALE、sgRNA、Casタンパク質、またはRNAi剤(例えばshRNA)をコードする核酸コンストラクトの送達は、レンチウイルスまたはAAVウイルスベクターを使用して達成される。
1つまたは複数の所望の遺伝子変異を有するヒト細胞は、培養中で増殖させてもよく、所望ならば生体外で分化されて、疾患のモデルとして使用される非ヒト動物に導入されて疾患に伴う表現型を同定または確認するのに使用され、候補治療薬を同定または確認するのに、および/またはその他の目的で使用される。本明細書に記載されるように、1つまたは複数の遺伝子変異を有する誘導ヒトニューロンは、神経変性疾患のモデルの役割を果たしてもよい。いくつかの態様では、同一疾患のモデルの役割を果たすように操作された酵母と併せて、このようなニューロンが使用される。
いくつかの実施形態では、細胞、細胞系、または細胞集団は、関心のある1つまたは複数の特徴について評価してもよく、および/または細胞、細胞系、または細胞集団は、1つまたは複数のこのような特徴の呈示に基づく、本明細書に記載される方法で使用するために選択されてもよい。例えば、細胞を評価して、それらの多分化能、細胞型、または遺伝子型を判定または確認してもよく、または2つ以上の細胞、細胞集団、または細胞系を比較してもよい。関心のある細胞特性を評価する技術は、当該技術分野で公知である。このような技術としては、例えば、目視検査(例えば光学的顕微鏡を使用する)、フローサイトメトリー、免疫蛍光、定量的リアルタイム逆転写酵素PCR、Gバンディング、DNAおよび/またはRNA蛍光原位置ハイブリダイゼーション(FISH)、免疫細胞化学、酵素アッセイ、マイクロアレイ分析、DNA配列決定(任意選択的に、大量並行配列決定などのハイスループット配列決定方法を使用して、例えば、Illuminaプラットフォーム(Illumina,San Diego,CA))、亜硫酸水素塩配列決定、クロマチン免疫沈降法およびマイクロアレイ分析(ChIP−Chip)、クロマチン免疫沈降法および配列決定(ChIP−Seq)、対立遺伝子特異的発現解析、分化アッセイ(例えば、胚様体(EB)生成アッセイ、奇形腫生成アッセイを使用して)、電気生理学的技術(例えば、パッチクランプ記録)、適切な検出試薬の使用、例えば分子指標(例えば、イオン(例えばカルシウム)、代謝産物または基質(例えばATP)、細胞生体分子(例えばDNA)、特定の細胞小器官などの検出の指示薬)が挙げられる。1つまたは複数のこのような技術を使用してもよい。いくつかの実施形態では、例えば細胞表面マーカーなどの1つまたは複数の分子マーカーの発現を使用してもよい。いくつかの実施形態では、ゲノム規模発現プロファイリングを使用してもよい。いくつかの実施形態では、「ゲノム規模」は、その中で少なくとも80%、90%、95%、またはそれを超える予測タンパク質コード遺伝子が評価される方法を指す。いくつかの実施形態では、「ゲノム規模」は、その中で少なくとも80%、90%、95%、またはそれを超える予測タンパク質コード遺伝子および機能性RNAコード遺伝子が評価される方法を指す。遺伝子は、発現レベル(例えばmRNA発現レベル)、疾患との関連性、またはその他の属性に関して、評価されてもよい。
細胞系または細胞集団が、特定の特徴を示すと見なされるか否かは、細胞系または細胞集団からの典型的な細胞サンプルを評価することで判定されてもよい。評価される細胞数は、評価される特徴、評価技術などの要因に左右されてもよい。特定の特徴は、(例えば個々の細胞を検査することで)個々の細胞レベルで評価してもよい一方で、その他の特徴は、典型的に、サンプル中の細胞の一部または全部に基づいて評価される(例えば分析は、複数細胞から抽出されるRNAまたはDNAについて実施される)。細胞系または細胞集団は、たとえ特徴がサンプルの細胞の全てには存在せずまたは検出されなくても、特徴を示すと見なされてもよいことが理解されるであろう。例えば、様々な実施形態では、特定の特徴および評価法などの要素次第で、少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれを超える細胞が、特徴を示してもよい。
いくつかの実施形態では、細胞系または細胞集団の特徴は、例えば適切な培養条件下で、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100週間、またはそれを超えるなど、培養中で少なくとも5週間安定したままである(その間、細胞は必要に応じて継代される)。本発明のいくつかの実施形態では、細胞系または細胞集団の特徴は、例えば、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれを上回る継代または個体数倍加など、少なくとも10継代または個体数倍加にわたり、安定したままである。特徴は、細胞系または細胞集団が、例えば特徴が、適切な培養条件下で、関心のある時間にわたり本質的に無変化であるなど、実質的変化なしに特徴を示し続ける場合に、「安定している」と見なされる。例えば、特定のマーカー発現について「陽性」の細胞系または細胞集団は、陽性のままである。特定の特徴を示す、サンプル中の細胞比は、異なるサンプル中で、および/または複数回評価した際に、いくらか異なってもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、特徴が安定している場合、このような特徴的な、異なる時点で評価した際に、実質的変化に向かう傾向を示さない。いくつかの実施形態では、実質的変化は、初期値に対する20%を超える変化(増大または低下)である)。いくつかの実施形態では、実質的変化は、初期値に対する50%を超える変化である)。いくつかの実施形態では、実質的変化は、初期値に対する1.5倍を超える変化である。
いくつかの実施形態では、細胞、細胞系、または細胞集団は、正常な核型を有する。一般に、細胞は、細胞が、その生物種の二倍体細胞の染色体の正常な補体を有し、転座、反転、または欠失などの明らかな染色体異常がない場合、正常な核型を有する。核型は、例えば、GバンディングまたはFISHを使用して評価し得る。特定の実施形態では、細胞系または細胞集団からの細胞サンプル中で検査された75%、80%、85%、90%、95%を超える、または95%を超える細胞が、正常な核型を示す。いくつかの実施形態では、少なくとも20、50、または100個の細胞が検査される。
いくつかの実施形態では、細胞、細胞系、または細胞集団は、その発現が、その特定の細胞型または細胞系の細胞内で選択的に機能するプロモーター、すなわち、特定の細胞型または細胞系の細胞内で作動可能に連結する核酸の転写を選択的に誘導するが、多数のまたは大部分のその他の細胞型または細胞系統内では誘導しないプロモーターの制御下にある、レポータータンパク質の発現に少なくとも部分的に基づいて、特定の細胞型または特定の細胞系(例えば神経系統)と同定されてもよい。例えば、シナプシンプロモーターなどの汎ニューロンプロモーターを使用してニューロンを同定してもよく;GFAPプロモーターを使用して、グリア細胞を同定してもよい。いくつかの実施形態では、レポータータンパク質は、蛍光タンパク質であり、または基質に作用して、例えば蛍光性または着色産物などの光学的に検出可能な生成物を生成できる酵素である。いくつかの実施形態では、細胞集団または細胞サンプル内の、1つまたは複数の特定の細胞型または細胞系統の細胞の割合または比率が、判定される。例えば、少なくとも特定百分率の神経細胞または関心のある特定のサブタイプの神経細胞を含有する、細胞集団または細胞サンプルの使用が、興味深くあってもよい。
V.神経変性疾患の酵母モデル
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAを発現する酵母が、このような神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAの凝集および/または不適切な蓄積に関連する神経変性疾患の酵母モデルとして使用される。このような酵母モデルは、酵母に、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAをコードする発現コンストラクトを導入することで、作成されてもよい。例えば上で考察されるように、神経変性疾患がある対象の神経系内に誤って折り畳まれた形態で蓄積するタンパク質を発現するように、酵母細胞が操作されるモデル系(「モデル」)が開発されている(例えば米国特許第7,045,290号明細書を参照されたい)。例えば酵母細胞は、シヌクレイン病の場合はαシヌクレインポリペプチドを、アミロイドーシスを伴う疾患の場合はアミロイドβタンパク質を、TDP−43タンパク質症の場合はTDP−43タンパク質を、またはハンチントン病の場合はハンチンチンタンパク質を発現するように操作される。特定の実施形態では、酵母細胞は、タンパク質の発現の結果として、増殖率が低下し、または全く増殖しない。特定の実施形態では、酵母細胞は、タンパク質を発現しない酵母細胞と比較して、生存度が低下する。増殖または生存度の低下または阻害は、酵母細胞内におけるタンパク質の毒性を示唆する。酵母内におけるタンパク質の毒性は、タンパク質の誤った折り畳みまたは例えば凝集などの異常な蓄積に関連する、ヒトおよび/またはその他の哺乳類の神経変性状態と相関する。このような酵母細胞が薬剤または条件に曝露する場合、細胞の増殖または生存度を測定して、薬剤不在下で培養された酵母細胞の増殖または生存度と、増殖または生存度を比較することで、薬剤または条件が、細胞内で毒性を例えば阻害するなど調節する能力を試験し得る。例えば、薬剤存在下で神経変性関連タンパク質を発現する酵母細胞を培養するステップと、薬剤存在下で増殖または生存度測定スステップと、薬剤不在下の細胞増殖または生存度と、薬剤の存在下で評価された細胞増殖または生存度とを比較するステップとを含んでなる、スクリーニングを実施してもよい。薬剤不在下の細胞増殖または生存度と比較して、薬剤の存在下で細胞増殖または生存度が増大または低下する場合、薬剤は、タンパク質によって誘発される毒性を調節する薬剤と同定される。いくつかの実施形態では、毒性神経変性疾患に関連するタンパク質を低下させる薬剤をスクリーニングする方法は、神経変性疾患タンパク質を発現する酵母細胞と薬剤を接触させるステップと;生存度について酵母細胞を評価するステップとを含んでなり、薬剤不在下の酵母細胞の生存度と比較した、酵母細胞の生存度の増大は、薬剤が神経変性疾患に関連するタンパク質の毒性を低下させることを示唆する。いくつかの実施形態では、タンパク質に関連する毒性を阻害する薬剤は、タンパク質蓄積によって特徴付けられる、神経変性疾患を治療するための候補治療薬である。特定の実施形態では、タンパク質は、酵母細胞内で検出可能な凝集体を形成する。化合物は、凝集体の形成または持続性を例えば阻害するなど、調節するそれらの能力について試験し得る。
α−シヌクレインの異常な蓄積によって特徴付けられる神経変性疾患(シヌクレイン病)の酵母モデルは、酵母細胞内のヒトα−シヌクレインタンパク質発現が有毒であり、α−シヌクレイン含有細胞質内凝集体の形成がもたらされるという発見に、少なくとも部分的に基づいて開発された(例えば米国特許第7,045,290号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態では、αシヌクレインに伴う毒性を低下させる化合物をスクリーニングする方法は、αシヌクレインを含んでなるポリペプチドを発現するように操作された酵母細胞と、候補化合物を接触させるステップと;生存度について酵母細胞を評価するステップとを含んでなり、候補化合物不在下の酵母細胞の生存度と比較した、酵母細胞の生存度の増大は、候補化合物がαシヌクレインに伴う毒性を低下させることを示唆する。
前頭側頭型認知症(FTD)および筋萎縮性側索硬化(ALS)などの、TDP−43の異常な蓄積によって特徴付けられる神経変性疾患のための酵母モデルが、酵母細胞内のヒトTDP−43タンパク質の発現が有毒であり、酵母細胞内で複数の細胞質内凝集体の形成をもたらすという発見に、少なくとも部分的に基づいて開発された(米国特許出願公開第20110053857号明細書)。このモデルは、とりわけ、TDP−43発現酵母細胞を使用したスクリーニングを実施して、TDP−43−誘発毒性またはTDP−43−誘発封入体形成を調節する化合物または遺伝学的要因を同定することを可能にする。TDP−43−誘発毒性またはTDP−43−誘発封入体形成を阻害する、このようなスクリーニングによって同定された化合物は、前頭側頭葉変性症変性または筋萎縮性側索硬化などの、TDP−43タンパク質症を治療または予防するために使用し得る。
アルツハイマー病などの、アミロイドβの異常な蓄積によって特徴付けられる神経変性疾患のための酵母モデルは、シグナル配列とヒトアミロイドβタンパク質とを含有する融合ポリペプチドが、酵母細胞内で発現する場合に有毒であるという発見に、少なくとも部分的に基づいて開発された(米国特許出願公開第20130022988号明細書および米国特許出願公開第20130045483号明細書)。このモデルは、とりわけ、アミロイドβ発現酵母細胞を使用したスクリーニングアッセイを実施して、アミロイドβ誘発毒性を調節する化合物または遺伝学的要因同定することを可能にする。アミロイドβ誘発毒性を阻害する、このようなスクリーニングによって同定された化合物は、アルツハイマー病などの、アミロイドβ(Abeta)の蓄積によって特徴付けられる神経変性疾患を治療または予防するために使用し得る。いくつかの態様では、アルツハイマー病などの、アミロイドβ(Abeta)の蓄積によって特徴付けられる神経変性疾患のための酵母モデルは、シグナル配列に融合したAbetaペプチドを含んでなるポリペプチドを発現する、酵母を特徴とする。
polyQ反復を含んでなる神経変性疾患タンパク質の異常な蓄積によって特徴付けられる酵母モデルは、異常に多数のpolyQ反復を含んでなるハンチンチンポリペプチドが、酵母細胞内で発現した際に有毒であるという発見に、少なくとも部分的に基づいて開発された(米国特許第7,045,290号明細書)。
さらに別の酵母モデルは、FUSタンパク質を発現する酵母に関与する。モデルは、FUSが酵母細胞内で発現した際に有毒であるという発見に、少なくとも部分的に基づいた(Ju S,et al.(2011)A Yeast Model of FUS/TLS-Dependent Cytotoxicity.PLoS Biol 9(4):e1001052.doi:10.1371/journal.pbio.1001052)。FUS酵母モデルは、とりわけ、FUS発現酵母細胞を使用したスクリーニングアッセイを実施して、FUS誘発毒性を調節する化合物または遺伝学的要因を同定できるようにする。いくつかの態様では、このようなスクリーニングによって同定されたFUS誘発毒性を阻害する化合物は、FTLD−FUSなどのFUS−病を治療または予防するための候補治療薬である。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAを発現する酵母は、神経変性付随タンパク質または神経変性関連RNAをコードする遺伝子の機能獲得変異に関連する、神経変性疾患のモデルとして使用される。このような酵母モデルは、酵母に、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAをコードする発現コンストラクトを導入することで、作成されてもよい。いくつかの実施形態では、発現コンストラクトは、変異型の神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAをコードし、変異型は疾患に関連する機能獲得変異を保有する。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAは、疾患がある対象の神経系内に凝集し、または異常に蓄積する。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAは、疾患がある対象の神経系内に典型的に蓄積しない。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAは、典型的に、疾患がある対象の神経系内の検出可能凝集体内に存在しない。
いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAを発現する酵母は、神経変性付随タンパク質または神経変性関連RNAをコードする遺伝子の機能獲得変異に関連する、神経変性疾患のモデルとして使用される。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質または神経変性関連RNAを発現する酵母を作成することで、神経変性関連タンパク質の凝集および/またはaberant蓄積に関連する、または凝集および/または神経変性関連RNAの異常な蓄積に関連する、または神経変性疾患遺伝子の機能獲得変異に関連する、神経変性疾患の酵母モデルが作成される。
いくつかの実施形態では、酵母ホモログの機能獲得を有する酵母を使用して、酵母ホモログを有する神経変性疾患遺伝子の機能獲得に関連する、神経変性疾患がモデル化される。機能獲得を与える変異は、内在性酵母遺伝子内で操作してもよく、または変異酵母ホモログをコードする発現コンストラクトを酵母に導入してもよい。特定の変異は、疾患に関連する変異に対応してもよく、または遺伝子産物の活性に対するこのような変異の効果を模倣してもよい。いくつかの実施形態では、酵母ホモログを過剰発現するように操作された酵母は、疾患のモデルの役割を果たす。
いくつかの実施形態では、酵母ホモログの機能喪失を有する酵母を使用して、酵母ホモログを有する神経変性疾患遺伝子の機能喪失に関連する、神経変性疾患がモデル化される。いくつかの実施形態では、内在性酵母ホモログに欠失または破壊を有する酵母を作成することで、酵母ホモログを有する神経変性疾患遺伝子機能喪失に関連する神経変性疾患の酵母モデルが作成された。いくつかの実施形態では、このような酵母は、中断または欠失を保有する既存の酵母株のコレクションから入手されまたは選択されてもよい。いくつかの実施形態では、酵母ホモログの遺伝子産物をコードする核酸配列は、例えばGALプロモーターのような調節可能プロモーターなどの調節可能発現制御要素の制御下に置かれる。酵母は、特定条件下で正常なレベルで遺伝子産物を発現してもよく、疾患は、正常な発現レベル比較して、発現が低下しまたは不在である条件下で、酵母を培養することでモデル化されてもよい。表Bは、神経変性疾患遺伝子の機能喪失に関連するいくつかの神経変性疾患を列挙して、対応する酵母ホモログを示す。酵母の適性および機能喪失型表現型は、サッカロミセス属(Saccharomyces)ゲノムデータベース(yeastgenome.org)で、体系的にカタログされる。本発明のいくつかの実施形態では、表Bに列挙される酵母ホモログの機能喪失に関連する表現型が、ヒトニューロンで同定されてもよい。
いくつかの実施形態では、酵母モデルのいずれも、神経変性疾患の遺伝的修飾因子であるヒト遺伝子の酵母ホモログである、または疾患を引き起こす能力がある第2の神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログである、1つまたは複数の遺伝子に変異を有してもよく、またはそれを過剰発現してもよい。酵母ホモログがある特定のパーキンソン症遺伝子は、表Dに列挙される。いくつかの実施形態では、例えばPDなどのシヌクレイン病の酵母モデルは、α−シヌクレインを発現し、そしてまた遺伝子の遺伝子産物を発現し、遺伝子中の変異が、優勢または複合型遺伝様式のPDに関連し、および/または遺伝子中の機能獲得変異が、またはその追加のコピーが、例えば、LRRK2、RAB7L1、GBA、またはEIF4G1などのPDに関連し、または前記遺伝子の酵母ホモログを過剰発現するまたはその中に機能獲得変異を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、酵母は変異型のヒト遺伝子を発現し、変異型は疾患に関連する。LRRK2およびEIF4G1の酵母ホモログは、表Dに列挙される。いくつかの実施形態では、例えばPDなどのシヌクレイン病の酵母モデルは、α−シヌクレインを発現し、酵母遺伝子の遺伝子産物の発現または活性が低下しまたは不在であり、酵母遺伝子のヒトホモログ中の変異が劣性または複合型遺伝様式のPDに関連し、および/または酵母遺伝子のヒトホモログ中の機能喪失変異がPDに関連することを特徴とする。いくつかの実施形態では、ヒト遺伝子は、ATP13A2、VPS35、またはPINK1である。これらの遺伝子の酵母ホモログは、表Dに列挙される。
いくつかの実施形態では、例えば、神経変性関連タンパク質またはRNAを発現する;または神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの発現を欠く、酵母モデルなどの酵母モデルのいずれかは、1つまたは複数の酵母遺伝子も過剰発現し、またはその発現または活性が低下しまたは不在であってもよく、それぞれ過剰発現しまたは欠失すると、酵母モデルで毒性を増強するが、対照株にはわずかまたは皆無の効果しかない。いくつかの実施形態では、過剰発現されまたは欠失すると、酵母モデルで毒性を増強する酵母遺伝子は、ヒトの神経変性疾患の遺伝的修飾因子の酵母ホモログである。いくつかの実施形態では、その過剰発現または欠失(または破壊)が、酵母モデルで毒性を増強または抑制する酵母遺伝子が、酵母遺伝子のスクリーニングで同定される。いくつかの実施形態では、酵母は、遺伝的修飾因子内に疾患に関連する変異または遺伝的多様性を有する、疾患がある患者のモデルの役割を果たす。例えば、VPS35の欠失はαSynの毒性を増強するが、対照株中では効果がない(図13)。いくつかの実施形態では、このような株は、ヒトVPS35遺伝子に変異がある、または同一経路、過程、または複合体に関与する遺伝子産物をコードするその他の遺伝子に変異がある、患者にとって特別な関連性があるモデルの役割を果たしてもよい。
酵母細胞
本明細書に記載される組成物および方法で使用し得る酵母株としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバエ(Saccharomyces uvae)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ属(Candida)種、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、ゲオトリクム属(Geotrichum)種、およびゲオトリクム・フェルメンタンス(Geotrichum fermentans)が挙げられるが、これに限定されるものではない。本明細書では、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に関して、特定の組成物および方法が例示されるが、これは例証のみを目的とする。特定の実施形態では、その他の酵母株でS.セレビシエ(S. cerevisiae)を置換し得る。
本開示の特定の態様は、酵母を使用して、例えば小型分子などの薬剤を同定または特性決定する方法に関する。本明細書に記載される方法は、膜排出ポンプに影響を及ぼす、および/または小型分子透過度に影響を及ぼす、1つまたは複数の遺伝子に変異を有する酵母株内で、任意選択的に実施し得る。例えば、酵母株は、ERG6遺伝子、PDR1遺伝子、PDR3遺伝子、PDR5遺伝子、SNQ2遺伝子、および/または膜排出ポンプに影響を及ぼす、および/または小型分子透過度に影響を及ぼす任意のその他の遺伝子中に変異を有してもよく、変異の効果は、小分子の流出を阻害しまたは小分子の酵母細胞への侵入を増大させることである。いくつかの実施形態では、酵母株は、このような遺伝子中に2、3、4、5、またはそれを超える変異を有する。いくつかの実施形態では、酵母株は、例えばPDR1および/またはPDR3などの少なくとも1つのPDR遺伝子中に変異を有する。いくつかの実施形態では、酵母株は、例えば、PDR5などのATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする、少なくとも1つの遺伝子に変異を有する。いくつかの実施形態では、酵母株は、PDR1、PDR3、およびERG6に変異を有する。いくつかの実施形態では、変異は、例えば、ポンプをコードする遺伝子転写を誘導する転写因子などの、膜排出ポンプの発現または活性を増強するまたはそれに必要な遺伝子中にある。
例えばNAPを含んでなるポリペプチドなどの本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸は、プラスミド、直鎖核酸分子、人工染色体、およびエピソームベクターをはじめとするが、これに限定されるものではない、核酸ベクターを使用して、酵母細胞内に形質移入されてもよい。酵母細胞内で組換えプラスミド発現および複製のために使用される3つの良く知られているシステムとしては、組み込みプラスミド、低コピー数ARS−CENプラスミド、および高コピー数2μプラスミドが挙げられる。Sikorski,”Extrachromosomal cloning vectors of Saccharomyces cerevisiae,” in Plasmid,A Practical Approach,Ed.K.G.Hardy,IRL Press,1993;およびYeast Cloning Vectors and Genes,Current Protocols in Molecular Biology,Section II,Unit 13.4,Eds.,Ausubel et al.,1994を参照されたい。
組み込みプラスミドの一例は、半数体ゲノムあたり1コピーで維持され、メンデル様式で遺伝するYIpである。対象遺伝子、細菌複製起点、および選択可能な遺伝子(典型的に栄養要求性マーカー)を含有する、このようなプラスミドは、典型的に細菌内で作成される。精製ベクターは、選択可能な遺伝子中で直線化されて、コンピテント酵母細胞を変換するのに使用される。酵母は、切断された選択可能なマーカーが、変異型(通常は点変異または小規模な欠失)宿主遺伝子と組換えして、機能を回復させるように、相同組換えを行う。もちろん組み込みは、ベクター内配列と相同的な酵母ゲノムの任意の領域に標的化されてもよい。例えば、組込プラスミドが、選択可能な遺伝子に加えて、第2の酵母遺伝子を含有する場合、第2の酵母遺伝子中でプラスミドを直線化することが、ゲノム中の相同配列の近傍における組み込み頻度を大幅に増大させる。引き続く、導入配列と内在性配列の間の相同組換えによる切除は、導入された配列による内在性配列の少なくとも一部の置換をもたらしてもよい。
低コピー数ARS−CENプラスミドの一例は、自律複製配列(ARS1)と動原体配列(CEN4)とを含有する、YCpである。これらのプラスミドは、通常は細胞あたり1〜2コピーで存在する。CEN配列の除去は、典型的に細胞あたり100〜200コピーで存在するYRpプラスミドをもたらす。しかしこのプラスミドは、有糸分裂および減数分裂の双方で不安定である。
高コピー数2μプラスミドの一例は、およそ1kb長さの配列を含有するYEpである(2μ配列と命名される)。2μ配列は、酵母レプリコンの機能を果たし、高プラスミドコピー数を引き起こす。しかしこれらのプラスミドは不安定であり、維持のための選択を要する。コピー数は、プラスミド上に、無能力プロモーターと作動可能に連結する選択遺伝子を有することで、増大される。
多種多様なプラスミドを本明細書に記載される組成物および方法で使用し得る。いくつかの実施形態では、プラスミドは組込プラスミド(例えば、pRS303、pRS304、pRS305、pRS306、またはその誘導体)である。例えば、Alberti et al.(2007)”A suite of Gateway cloning vectors for high-throughput genetic analysis in Saccharomyces cerevisiae”Yeast 24(10):913-19を参照されたい。いくつかの実施形態では、プラスミドは、エピソームプラスミド(例えば、p426GPD、p416GPD、p426TEF、p423GPD、p425GPD、p424GPDまたはp426GAL)である。
使用されるプラスミドタイプにかかわりなく、酵母細胞は、典型的に化学的方法によって変換される(例えば、Rose et al.,1990,Methods in Yeast Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.によって記載される)。細胞は、典型的に酢酸リチウムで処理されて、1μgのDNAあたりおよそ104のコロニー形成単位(形質転換細胞)の変換効率が達成される。次に形質転換細胞は、選択培地上で単離される。もちろん、酵母細胞中に核酸を導入する任意の適切な手段を利用し得る。
本明細書に記載される酵母ベクター(プラスミド)は、典型的に、酵母複製起点、抗生物質耐性遺伝子、細菌複製起点(細菌細胞中の増殖のための)、複数クローニング部位、および酵母細胞中における維持のための酵母栄養遺伝子を含有する。栄養遺伝子(または「栄養要求性マーカー」)は、ほとんどの場合、以下の1つである。1)TRP1(ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼ);2)URA3(オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ);3)LEU2(3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ);4)HIS3(イミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼまたはIGPデヒドラターゼ);または5)LYS2(α−アミノアジピン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ)。
本明細書に記載される酵母ベクター(プラスミド)は、プロモーター配列もまた含有してもよい。「プロモーター」は、そこで転写開始が制御される、核酸配列領域である。それは、RNAポリメラーゼおよびその他の転写因子などの調節タンパク質および分子がそこに結合して、核酸配列の特定の転写を開始してもよい、遺伝要素を含有してもよい。「作動可能に結合している」および「作動可能に配置」という語句は、プロモーターが核酸配列に関して正しい機能的位置および/または配向にあり、配列の転写開始および/または発現を制御することを意味する。
プロモーターは、例えば遺伝子のコード断片の上流に位置する5’非コード配列を単離することで得られてもよいように、それがその転写を制御する核酸配列と自然に結合するものであってもよい。このようなプロモーターは、遺伝子または読み取り枠の「内在性」または「天然」プロモーターと称され得る。代案としては、核酸配列に関連するプロモーターは、組換えまたは異種プロモーターであってもよく、それはその天然環境において、常態では、核酸配列に関連しないプロモーターを指す。このようなプロモーターとしては、その他の遺伝子のプロモーター、および「天然起源」でないプロモーターが挙げられる。
プロモーターは、例えば誘導性または被抑制など、構成的または調節可能であってもよい。例えば様々なプロモーターを用いて、酵母細胞内における発現を調節してもよい。誘導性酵母プロモーターの例としては、GAL1−10、GAL1、GALL、およびGALSが挙げられる。被抑制酵母プロモーターの例としては、Met25が挙げられる。構成的酵母プロモーターの例としては、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(GPD)、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(ADH)、翻訳−延長因子−1−αプロモーター(TEF)、チトクロームc−オキシダーゼプロモーター(CYC1)、およびMRP7が挙げられる。グルココルチコイドによって誘導されるプロモーターを含有する酵母発現ベクターについて記載されている(Picard et al.,Gene.1990;86(2):257-61)。例えば複数グルココルチコイド応答要素の存在は、哺乳類グルココルチコイド受容体を発現する酵母中で、関連プロモーターがグルココルチコイドによって誘導されるようにする。同様のアプローチを使用して、その他のステロイドによって調節可能な酵母ベクターを作成してもよい。ステロイドホルモン受容体の天然起源または合成リガンドを使用してもよい。いくつかの実施形態では、tTAまたはrtTAを発現する酵母株中で、例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、またはそれらの類似物などのテトラサイクリン抗生物質を使用して調節されてもよいテトラサイクリン調節可能プロモーターを使用して、調節可能発現が達成されてもよい。プロモーターは、例えば7コピーなどのTetオペレーター(TetO)の1つまたは複数のコピーを含んでなってもよい(しかしより低いまたは高いコピー数を使用してもよい)。tTA活性がテトラサイクリン抗生物質の存在下で下方制御される一方で、rtTAは、このような抗生物質によって活性化され、それによってプロモーター活性を制御できるようになる。より詳しくは、例えば、Gari E,et al.,Yeast.(1997)13(9):837-48;および/またはBelli G,et al.,Nucleic Acids Res.(1998)26(4):942-7を参照されたい。有用な酵母ベクターと、例えばプロモーターなどの調節因子の例は、全て参照によって本明細書に援用する、Mumberg D,et al.Gene.1995,156(1):119-22;Roenicke V,et al.,Methods Enzymol.1997,283:313-22;Funk M,et al.,Methods Enzymol.2002,350:248-57に記載される。いくつかの実施形態では、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHなどの構成的または誘導性プロモーターを含有する酵母ベクターを使用してもよい。
いくつかの実施形態では、例えば、ガラクトース以外の炭素源上におけるGALプロモーターからの誘導性発現などの、発現ができるようにする酵母株が使用される。いくつかの実施形態では、株は、融合タンパク質をコードする、組み込まれたまたはエピソーム性(例えばプラスミド媒介性)遺伝子を保有し、Gal4 DNA結合領域は、転写活性化領域および制御領域に融合する。融合タンパク質は、転写を活性化するその能力が、制御領域への小分子の結合によって調節されることを特徴とする。例えば、いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、小分子不在下では転写を活性化しない一方で、小分子の存在下では、融合タンパク質は転写を活性化する。代表的な小型分子としては、例えばステロイドホルモンが挙げられ、対応する制御領域は、小分子の受容体の少なくとも一部を含んでなる。例えば小分子は、エストロゲン(例えばエストラジオール)、またはそれらのアナログ(例えばタモキシフェン)であってもよく、対応する制御領域は、エストロゲン受容体(ER)の少なくとも一部を含んでなる。代表的な活性化領域としては、例えば、単純ヘルペスウイルスタンパク質VP16活性化領域などの、ウイルス性タンパク質活性化領域が挙げられる。いくつかの実施形態では、株は、Gal4−ER−VP16融合タンパク質をコードする、組み込まれたまたはエピソーム性(例えばプラスミド媒介性)遺伝子を保有する。培地中の例えばエストラジオールなどのエストロゲン受容体リガンドの存在は、ガラクトース以外の炭素源上におけるGALプロモーターからの発現を可能にする。当業者は、例えばガラクトースまたはその他の炭素源を含有する培地を条件とする、例えばNAPなどの関心のある分子の発現を与える多数の様式が存在することを理解するであろう。
本明細書に記載される特定の方法は、酵母細胞内で内在性遺伝子を破壊するステップを含んでなってもよく、またはその中で内在性遺伝子が破壊された酵母細胞を利用してもよい。遺伝子破壊は、例えば、配列を遺伝子中に挿入する、遺伝子の少なくとも一部を欠失させる、またはその双方ともなどの、遺伝子を無効にする多様な様式のいずれかを含んでなってもよい。挿入は、例えば、停止コドンの導入、読み枠の移行、または別の様式での機能性タンパク質生成の妨害であってもよい。特定の本明細書に記載される方法は、酵母細胞内で1つまたは複数の遺伝子を変異させるステップを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、変異は、遺伝子の配列に、所望の改変を作成するステップを含んでなる。このような操作を実施するのに適する方法は、当該技術分野で周知である。S.セレビシエ(S. cerevisiae)などの様々な酵母の遺伝子破壊変異体のコレクションは、当該技術分野で公知である(例えば、Giaever,et al.,Nature.2002;418(6896):387-91を参照されたい)。いくつかの実施形態では、欠失株のコレクションは、ゲノム中の読み取り枠の少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、またはそれを超える欠失がある株を含む。いくつかの実施形態では、「分子バーコード」と称されることもあるDNA配列が、コレクション中でそれぞれの株をユニークに同定して、例えば共培養中でそれらの増殖が並行して分析できるようにし、それぞれの遺伝子の適性貢献度は、例えば高密度オリゴヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーションによって、または遺伝子の存在量を評価する別の手段によって、定量的に評価される。生存に必要なほぼ20%の酵母遺伝子がTet調節可能プロモーターの制御下にある、一連の酵母株が構築されている(Mnaimneh,S.,et al.2004.Cell 118:31-44;コレクションは、ThermoFisher Scientific,Pittsburgh,PAからYeast Tet-promoters Hughes Collection(yTHC)の名称の下に入手できる)。内在性プロモーターは、これらの株中において、ゲノム内のTet滴定可能プロモーターで置換された。これには、遺伝子の発現が、酵母増殖培地へのテトラサイクリン抗生物質の添加によってスイッチオフできるようにする。いくつかの実施形態では、このような株を使用して、NAPの毒性を促進または抑制する、必須遺伝子を同定してもよい。
いくつかの実施形態では、合成遺伝的アレイ(SGA)分析を使用してもよい。いくつかの実施形態では、SGA分析は、その中で交雑および減数分裂組換えを使用して、変異体の入力配列を二重変異体の出力配列に変換する、一連のレプリカピニング手順を伴う(例えば、Tong,A.H.Y.et al.(2001)Science 294:2364-2368を参照されたい)。NAPを発現するように操作され、または発現能力がある酵母株をSGAスクリーニング中で「クエリー株」として使用して、その欠失が、例えば致死性または増殖率低下などの毒性を増大させる遺伝子を同定してもよい。
酵母細胞中のスクリーニングアッセイ
本開示の特定の態様は、酵母中でNAPによって誘発される毒性を例えば阻害するなど、調節する候補薬剤または遺伝因子をスクリーニングすること、および/またはこのようなスクリーニングから得られる薬剤または情報をヒトニューロンと併せて利用することを含んでなる。本開示の特定の態様は、酵母中でNARによって誘発される毒性を例えば阻害するなど、調節する候補薬剤または遺伝因子をスクリーニングすること、および/またはこのようなスクリーニングから得られる薬剤または情報をヒトニューロンと併せて利用することを含んでなる。本開示の特定の態様は、例えばLOF神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの発現が低下しまたは不在である酵母モデルで、生存度を向上させる、または酵母ホモログ発現の低下または不在の結果として生じる表現型を阻害するなど、調節する、候補薬剤または遺伝因子をスクリーニングすることを含んでなる。特定の実施形態では、スクリーニング法は、例えば、α−シヌクレイン、アミロイドβ、TDP−43、FUS、またはポリグルタミン伸長タンパク質などのNAPを発現するように操作された酵母細胞を使用する。特定の実施形態では、スクリーニング法は、LOF神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログを少なくとも部分的に欠失させまたは破壊することで、操作された酵母細胞を使用する。核酸、ポリペプチド、小分子化合物、およびペプチド模倣剤をはじめとする、様々なタイプの候補薬剤がスクリーニングされてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝因子は、遺伝子をコードする核酸コンストラクトに酵母細胞を接触させることで、スクリーニングし得る。例えば、多様な遺伝子を発現するcDNAライブラリーをスクリーニングして、NAPの毒性を調節する遺伝子を同定してもよい。
例えば小型分子のスクリーニングなどの化学的スクリーニングでは、膜排出ポンプを阻害するおよび/または薬剤透過度を増大させるようにデザインされた適切な変異を有する酵母株を使用してもよい。例えば、ERG6遺伝子、PDR1遺伝子、PDR3遺伝子、および/またはPDR5遺伝子中に変異を有する酵母株を使用してもよい。多様な成長条件の下に、および/または多様な遺伝的背景がある酵母中で、多数の化合物をスクリーニングし得る。毒性スクリーニングは、例えば、NAPと相互作用する化合物、またはNAPと相互作用する1つまたは複数のタンパク質と相互作用するまたはその発現または活性を変化させる化合物、またはNAPの存在によって影響を受ける過程または経路に関与し、またはそれによってそれが毒性を誘発する1つまたは複数の機構に関与する化合物を同定してもよい。
特定の実施形態では、候補薬剤は、合成または天然化合物の大きなライブラリーからスクリーニングし得る。試験される薬剤は、被検物質と称されてもよい。任意の薬剤を様々な実施形態で、被検物質として使用してもよい。いくつかの実施形態では、FDA認可された、ヒトが使用し得る化合物のライブラリーを使用してもよい。化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical Co.(Trevillet,Cornwall,UK)、Comgenex(Princeton,NJ)、Microsource(New Milford,CT)、Aldrich(Milwaukee,WI)、AKos Consulting and Solutions GmbH(Basel,Switzerland)、Ambinter(Paris,France)、Asinex(Moscow,Russia)、Aurora(Graz,Austria)、BioFocus DPI,Switzerland、Bionet(Camelford,UK)、ChemBridge(San Diego,CA)、ChemDiv(San Diego,CA)、Chemical Block Lt(Moscow,Russia)、ChemStar(Moscow,Russia)、Exclusive Chemistry,Ltd(Obninsk,Russia)、Enamine(Kiev,Ukraine)、Evotec(Hamburg,Germany)、Indofine(Hillsborough,NJ)、Interbioscreen(Moscow,Russia)、Interchim(Montlucon,France)、Life Chemicals,Inc.(Orange,CT)、Microchemistry Ltd.(Moscow,Russia)、Otava(Toronto,ON)、PharmEx Ltd.(Moscow,Russia)、Princeton Biomolecular(Monmouth Junction,NJ)、Scientific Exchange(Center Ossipee,NH)、Specs(Delft,Netherlands)、TimTec(Newark,DE)、Toronto Research Corp.(North York ON)、UkrOrgSynthesis(Kiev,Ukraine)、Vitas-M(Moscow,Russia)、Zelinsky Institute(Moscow,Russia)、およびBicoll(Shanghai,China)をはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかの会社から市販される。コンビナトリアルライブラリーが利用でき、調製し得る。細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが市販され、または当該技術分野で周知の方法によって容易に調製し得る。動物、細菌、真菌、植物原料、および海洋サンプルなどの天然原料から単離された化合物を、潜在的に有用な医薬品の存在について試験してもよい。スクリーニングされる薬剤はまた、化学成分または人造化合物から誘導または合成され得るものと理解される。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、少なくとも10,000個の化合物、少なくとも50,000個の化合物、少なくとも100,000個の化合物、少なくとも250,000個、またはそれを超える化合物を含んでなる。
いくつかの実施形態では、スクリーニングは、ハイスループットスクリーニングであってもよい(HTS)。ハイスループットスクリーニングは、例えば、並行して高効率で多数の化合物を試験することを伴うことが多い。例えば、数万または数十万の化合物を慣例的に、例えば数時間から数日間の短期間でスクリーニングし得る。このようなスクリーニングは、例えば、96、384、1536、3456個、またはそれを超えるウェルを含有する、マルチウェルプレート(マイクロウェルまたはマイクロタイタープレートまたはディッシュと称されることもある)内で、または基材中または基材上に複数の物理的に分離された窩洞または窪みまたは領域が存在する、その他の容器内で実施されることが多い。ハイスループットスクリーニングは、例えば、液体取り扱い、造影、データ取得および加工などのために、自動化の使用を伴い得る。HTSの実施形態で適用されてもよい特定の一般的原理および技術は、Macarron R&Hertzberg RP.Design and implementation of high-throughput screening assays.Methods Mol Biol.,565:1-32,2009);および/またはAn WF&Tolliday NJ.,Introduction:cell-based assays for high-throughput screening.Methods Mol Biol.486:1-12,2009);および/またはこれらのいずれかの中の参考文献に記載される。有用な方法は、High Throughput Screening:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology)by William P.Janzen(2002);およびHigh-Throughput Screening in Drug Discovery(Methods and Principles in Medicinal Chemistry)(2006)by Jorg Hueserでもまた開示される。
特定の実施形態に関する遺伝学的スクリーニング。例えば、ゲノムライブラリーおよび破壊ライブラリーをスクリーニングして、酵母中のNAP誘発毒性遺伝的サプレッサーまたはエンハンサーを発見し得る。酵母ゲノムは小さいため、良好なカバー度のためには、各タイプの10,000個の形質転換体で十分なはずであるが、もちろんより少数またはより多数を使用してもよい。酵母読み取り枠と作動可能に連結する酵母プロモーターをそれぞれ含んでなる、プラスミドライブラリーが利用できる。例えば酵母FLEXGene過剰発現ライブラリーは、必須遺伝子をはじめとする5,000を超える酵母読み取り枠に相当するプラスミドを含む(Kelley,S.et al.,Genome Res.17(2007)536-543)。特定の実施形態では、このような毒性の遺伝的エンハンサーの発現または活性増大に起因する、または過剰発現するとこのような毒性を低下させる遺伝子の発現または活性の低下に起因する、NAP関連毒性の増大を示す酵母株が、本明細書に記載されるスクリーニングで使用される。
特定の実施形態は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用するスクリーニングアッセイを検討する。FRETは、供与体フルオロフォアが受容体フルオロフォアの近傍(10−60A)にあり、第1の放射波長が第2の励起波長と重複する場合に起こる(Kenworthy AK et al.,2001.Methods.24:289-96)。FRETは、シアン蛍光タンパク質(CFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)融合タンパク質が、実際には同一複合性の部分である場合に、生じるはずである。
例えば、NAPは、CFPおよびYFPに、それぞれ融合し得て、GAL1−10プロモーター調節下の酵母ゲノムに組み込まれる。細胞は、ガラクトース中で培養されて発現が誘導される。誘導に際して、細胞は融合タンパク質を生じ、それは凝集して、CFPとYFPを密接に集める。凝集体中のタンパク質は、緊密に詰め込まれるため、CFPおよびYFPの間の距離は、FRETが起こるのに必要な100Åの棄却限界値未満である。この場合、CFP放出によって遊離されるエネルギーはYFPを励起して、次にそれはその特徴的な波長を放出する。FRETベースのスクリーニングを利用して、タンパク質を凝集を起こさせない状態に維持することで、CFPとYFPの相互作用を妨害し得る、薬剤、遺伝子またはその他の因子をはじめとする候補化合物を同定し得る。
実施形態は、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析を使用した、スクリーニングアッセイを検討する。FACSは、蛍光標識/標識部分の存在について、個々の細胞をスキャニングする手段を提供し、それは、生きているまたは固定された細胞のいずれかに対しても、迅速で信頼できる定量的かつ多パラメータ分析ができるようにする。例えば、NAPを適切に標識して、個々の酵母細胞のその他の遺伝的または増殖条件の結果としてのタンパク質凝集の分析および定量化のための有用なツールを与え得る。
(例えば、化合物についておよび/または遺伝的サプレッサーまたはエンハンサーのための)スクリーニングは、多様な異なる条件下で実施し得る。例えば、多様な異なる培地を利用し得る。培地は、例えば、グルコース、グリセロール、ガラクトース、ラフィノースなどのような異なる糖類などの異なる炭素源を含有し得る。いくつかの実施形態では、2、3、またはそれを超える異なる培養条件(例えば異なる炭素源を含有する培地)を使用して、複数スクリーニングを実施してもよいと、少なくとも2つの異なる培養条件下で「ヒット」と同定される化合物または遺伝子が同定される。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なる培養条件下で(例えば異なる炭素源を含有する培地を使用して)、スクリーニングが実施され、異なる培養条件(例えば異なる炭素源)は、異なるレベルのミトコンドリア呼吸をもたらす。例えば、グルコース、グリセロール、またはガラクトースを含有する培地を使用した増殖は、異なるレベルのミトコンドリア呼吸をもたらす。グルコース中では、酵母細胞は発酵し、呼吸は全てのグルコースがエタノールに変換されるまで低いままである。ガラクトース中では、呼吸は中程度に活動性である。グリセロール中では、酵母細胞は、増殖のために、呼吸に完全に依存する。いくつかの実施形態では、炭素源としてグルコース、ガラクトース、またはグリセロールを含有する培地を使用して、スクリーニングを並行して実施した。
いくつかの実施形態では、酵母中でNAPに関連する毒性を例えば阻害するなど、調節する薬剤は、NAPの発現レベルに顕著に影響を及ぼさない。例えば、いくつかの実施形態では、薬剤は、例えばGALプロモーターなどの、NAPの発現を誘導するのに使用された特定のプロモーターからの発現を顕著に阻害しない。例えば特定の実施形態では、NAPの発現レベルおよび/またはプロモーターによって誘導される発現レベルは、酵母細胞が薬剤存在下で培養された場合、その不在下と比較して、1%、2%、または5%以下低下してもよい。特定の実施形態では、NAPの発現レベルおよび/またはプロモーターによって誘導される発現レベルは、酵母細胞が薬剤存在下で培養された場合、その不在下と比較して、10%以下低下してもよい。
いくつかの実施形態では、NAPに関連する毒性を選択的に調節する薬剤または遺伝子が、同定されまたは使用されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、問題になっている特定のNAPに対してその最も有効な濃度で使用されると、1、2、3、またはそれを超えるその他のNAPに関連する毒性よりも、特定のNAPに関連する毒性を例えば阻害するなど、調節する、少なくとも2、5、10、25、50、または100倍高い能力を有してもよい。いくつかの実施形態では、方法は、薬剤が、1、2、3、またはそれを超えるその他のNAPに関連する毒性よりも、特定のNAPに関連する毒性を例えば阻害するなど、調節する、少なくとも2、5、10、25、50、または100倍高い能力を有することを判定するステップを含んでなってもよい。例えば、方法は、薬剤が、Abeta、TDP−43、FUS、および/またはポリグルタミン伸長Httに関連する毒性よりも、α−シヌクレインタンパク質に関連する毒性を例えば阻害するなど、調節する、少なくとも2、5、10、25、50、または100倍高い能力を有することを判定するステップを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子の過剰発現または欠失は、1、2、3、またはそれを超えるその他のNAPに関連する毒性よりも、特定のNAPに関連する毒性を例えば阻害するなど、調節する、少なくとも2、5、10、25、50、または100倍より高い能力を有してもよい。いくつかの実施形態では、方法は、遺伝子の過剰発現または欠失が、1、2、3、またはそれを超えるその他のNAPに関連する毒性よりも、特定のNAPに関連する毒性を例えば阻害するなど、調節する、少なくとも2、5、10、25、50、または100倍高い能力を有することを判定するステップを含んでなってもよい。
いくつかの態様では、異なるレベルのNAPを発現するおよび/または異なるレベルの毒性を示す酵母細胞が、有用であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、異なる量のNAPまたはNARを発現させることで、または複数の遺伝子変異を作成することで、少なくとも2または3つの異なるレベルの毒性が達成されてもよい(例えば、毒性エンハンサーと組み合わせて、または毒性サプレッサーの欠失と組み合わせてNAPを発現させる)。異なるレベルの毒性は、例えば、無毒、低毒性、中程度の毒性、または高毒性を含んでもよい。いくつかの実施形態では、低レベルの毒性は、増殖の軽微な阻害、検出可能な増殖低下を指すが、GALプロモーター制御下の3コピーのα−シヌクレインによって誘発される毒性を下回る。いくつかの実施形態では、中程度のレベルの毒性は、GALプロモーター制御下の3コピーのα−シヌクレインによって誘発される程度の毒性レベルを指す。いくつかの実施形態では、高レベルの毒性は、GALプロモーター制御下の4または5(またはそれを超える)コピーのα−シヌクレインによって誘発される程度の毒性レベルを指す。異なる毒性レベルの例は、図面9(A)および9(B)を参照されたい。増殖率または毒性は、様々な実施形態において、固体培地上または液体培養中で評価されてもよい。いくつかの実施形態では、高レベルの毒性がある株(HiTox株)は、NAPの発現誘導後、細胞数または質量にわずかなまたは皆無の増大を示す。例えば、誘導の約6時間後には、大部分のまたは本質的に全ての細胞が死滅し、または分裂能を喪失する。いくつかの実施形態では、中程度のレベルの毒性がある株(IntTox株)は、対照株が対数成長期にある期間にわたって、対照株の約15%〜20%および約30%、40%、および50%の成長速度を有する。いくつかの実施形態では、低レベルの毒性(LoTox株)がある株は、対照株の約50%および約60%、70%、80%または90%の成長速度を有する。いくつかの実施形態では、IntTox株またはLoTox株は、その中でNAPが生成する条件下において、新鮮培地への接種後、少なくとも対照株が対数成長相にある期間にわたり、(例えば液体培養物中で)ほぼ直線的な成長曲線を有する。いくつかの実施形態では、NoTox株は、対照株の少なくとも90%〜95%またはそれを超える増殖率を有する。対照株は、NAPの発現を欠く株であるが、その他の点ではNAPを発現する株と、同質遺伝子型または本質的に同質遺伝子型であってもよい。いくつかの実施形態では、対照株は、NAPをコードする配列を導入するのに使用されるのと同一または同等であるが、NAPをコードする配列を欠いているベクター(「空ベクター」)の1つまたは複数のコピーを有してもよい。本明細書に記載されるその他の酵母モデルのために、同様のまたは異なる毒性レベルがある株が作成されてもよい。毒性レベルは、例示的なものと理解される。特定のスクリーニングまたは方法にふさわしいように、異なるレベルの毒性が定義されてもよい。
所与の組成物または方法で使用される特定の酵母株および/または毒性レベルは、それに対してそれが使用される目的次第で、必要または所望に応じて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、無毒のまたは低い毒性レベルでNAPを発現する酵母細胞は、その欠失(またはその他の無効化)または過剰発現が、毒性を増強する遺伝子の同定を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、中程度の毒性レベルは、毒性を増強または阻害する能力がある薬剤の同定、および/または毒性の遺伝的サプレッサーおよびエンハンサーの同定を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、高レベルの毒性を示す株は、毒性を阻害する能力がある薬剤の同定、および/または毒性の遺伝的サプレッサー同定を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、高レベルの毒性を示す株は、薬剤または遺伝的調節因子の強度を比較または試験するのに、有用であってもよい。
一般に、所望の発現レベルは、多様な様式で達成されてもよい。例えば、ベクターコピー数、NAPをコードする読み取り枠のコピー数、使用されるプロモーターの強度、誘発剤のレベル(誘導性プロモーターの場合)、遺伝的背景、培養条件などを選択して、所望の発現レベルおよび/または毒性レベルを達成してもよい。いくつかの実施形態では、酵母ゲノムに、プロモーターと作動可能に連結するNAPをコードする読み取り枠の少なくとも2、3、4、またはそれを超えるコピーを組み込むことで、中程度または高レベルの毒性が達成される。いくつかの実施形態では、NAPの所与の発現レベルで与えられる毒性は、このような毒性を阻害または増強する、小分子またはその他の薬剤または培養条件の存在下で、酵母を培養することにより、低下または促進されてもよい。いくつかの実施形態では、NAPに関連する毒性を増強または阻害する遺伝的背景がある酵母株を使用してもよい。例えば、毒性を阻害する酵母遺伝子の欠失を有しまたは毒性を増強する酵母遺伝子を過剰発現する酵母株を使用して、所与の発現レベルによって与えられる毒性レベルを増大させてもよい。
いくつかの態様では、NARを発現する、またはLOF神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの発現または活性が低下している、酵母と共に使用するために、本明細書に記載される方法を使用しまたは適応させてもよい。
神経変性疾患の酵母モデルを使用して、多様なスクリーニングが実施された。化合物ライブラリーのスクリーニングは、関連NAPによって誘発される毒性を阻害できる、小型分子の同定をもたらした。例えば、α−シヌクレイン毒性を阻害する特定の化合物を同定する酵母スクリーニングは、米国特許出願公開第20080261953号明細書および米国特許出願公開第20100273776号明細書に記載される)。アミロイドβ毒性を阻害する特定の化合物を同定する酵母スクリーニングは、米国特許出願公開第20130022988号明細書に記載される。
遺伝学的スクリーニングが実施され、関連NAPによって誘発される毒性のエンハンサーおよびサプレッサーの同定がもたらされた。例えば、酵母中におけるその過小発現(例えば欠失)が、α−シヌクレイン毒性の変化をもたらした、酵母遺伝子が同定されている(米国特許出願公開第20050255450号明細書)。酵母中におけるその過剰発現が、α−シヌクレイン毒性の変化をもたらした、酵母遺伝子が同定されている(米国特許出願公開第20090099069号明細書;米国特許出願公開第20090304664号明細書;米国特許出願公開第20110064722号明細書)。PDおよび/またはその他のシヌクレイン病におけるリスク調節因子として、いくつかのこれらの遺伝子のヒトホモログが同定されている。酵母中におけるその過小発現(例えば欠失)が、Htt毒性の変化をもたらした、酵母遺伝子が同定されている。例えば、米国特許出願公開第20050255450号明細書を参照されたい。酵母中におけるその過剰発現が、βアミロイド毒性の増大または低下をもたらした酵母遺伝子が、同定されている(米国特許出願公開第20130045483号明細書)。これらの遺伝子のいくつかのヒトホモログが、アルツハイマー病におけるリスク調節因子として同定されている。酵母中におけるその過剰発現が、TDP−43毒性の変化をもたらした酵母遺伝子が同定されている(例えば米国特許出願公開第20120237499号明細書を参照されたい)。酵母中におけるその過剰発現または過小発現(例えば欠失)が、FUS毒性の増大または低下をもたらした酵母遺伝子が同定されている(例えば上記を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、酵母モデルで、例えば毒性を低下させるなど、生存度を増大させる薬剤が、神経変性疾患の動物モデルで試験されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば候補治療薬などの、酵母中でNAPの毒性を阻害する薬剤が、神経変性疾患の動物モデルで試験されてもよい。使用してもよい動物モデルは、当該技術分野で公知である。このようなモデルとしては、例えば毒剤(例えば、シヌクレイン病ではロテノン、MPTP)に曝露された動物、NAPをコードする導入遺伝子を保有する動物(任意選択的に、疾患に関連する変異を含んでなる)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、記憶、歩行、運動;または行動または認知のいずれかの側面を薬剤が改善する能力が評価されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤が疾患関連病変(例えば、組織病理学を使用して検出可能な神経変性の形跡)を軽減する能力を評価してもよい。
いくつかの実施形態では、神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母細胞内で、統合スクリーニングを実施した。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、対照酵母と比較して、例えば低下するなど、変化した、生存度または増殖などの表現型を有する。スクリーニングを使用して、過剰発現させると、モデル酵母株の生存度または生存期間を増大または低下させる、遺伝的修飾因子を同定してもよい。いくつかの実施形態では、酵母ゲノム中の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または全ての遺伝子の誘導性(例えばGal誘導性)読み取り枠を含有するプールライブラリーを、例えば、神経変性関連タンパク質を発現する、または機能喪失型神経変性疾患遺伝子の酵母ホモログの発現を欠く、酵母株などの酵母モデル株にまとめて変換してもよい。次に、例えば24時間などの適切な時間にわたって、(例えばガラクトースによって)ORFの発現を誘導する。適切な時間は、誘導ORFが発現して、表現型に対する効果を有するのに十分な時間を与えるように、選択し得る。プラスミドDNAは抽出されて、t=0およびt=24時間目に配列決定される。DNAは、配列決定前に(例えばPCRを使用して)増幅されてもよい。いくつかの実施形態では、ハイスループット配列決定(「次世代」配列決定と称されることが多い)を使用してもよい。当該技術分野で公知のように、次世代配列決定は、配列決定プロセスを並列処理する多様な技術を包含して、数千または数百万の配列(比較的短い「読み取り」であることが多い)を同時に生成する。次に断片化配列読み取りは、それらの重複領域に基づいて組み立て得る。t=0と対比してt=24時間目に、過剰出現する遺伝子は、推定上のサプレッサーであり;過小出現する遺伝子は、推定上のエンハンサーである。いくつかの実施形態では、プールされた形質転換体を2つのアリコートに分割し、1つのセットは、(Gal誘導性ORFのスイッチオフを保つために)グルコースを含有する培地を使用して培養し、1つのセットは、ガラクトースを含有する培地を使用して培養し、神経変性関連タンパク質(神経変性関連タンパク質を含む酵母モデルの場合)、および全ての形質転換過剰発現された酵母遺伝子をスイッチオンした。DNAを適切な時点(例えば24時間)で培養物から単離して比較し、過剰出現および過小出現遺伝子を同定した。酵母中では、誘導性発現のための任意のシステムを使用してもよいものと理解される。
いくつかの実施形態では、酵母欠失変異体のライブラリーを使用して、統合スクリーニングを実施してもよく、そこでは異なる変異体が分子バーコードによって一意的に識別され、したがって異なる欠失を有する酵母細胞の相対数の定量化が可能になる。このようなライブラリーの説明は、Chu AM and Davis RW.Methods Mol Biol.2008;416:205-20にある。誘導性ヒト神経変性関連タンパク質の発現は、このような酵母細胞のプール中で誘導されてもよく、培養物は、例えば24時間などの適切な時間にわたり維持される。DNAは抽出されて、t=0およびt=24時間目に配列決定される。t=0と対比してt=24時間目に過剰出現するバーコードは、推定上の毒性エンハンサーである(すなわち、それらの喪失が毒性を低下させる)遺伝子を同定し;過小出現するバーコードは、推定上の毒性サプレッサーである(それらの喪失が毒性を増強する)遺伝子を同定する。
ひとたび化合物が同定されたら、所望ならば、多様な異なるアプローチを使用して、その分子標的を同定してもよい。多様な遺伝的、化学的、および生化学的アプローチを利用して、小分子の分子標的を同定し得て、本発明はこの点において限定されるものではない。いくつかの実施形態では、化合物は、神経変性関連表現型の毒性を阻害しまたは別の様式で逆転させるその能力と異なる表現型を、酵母中で引き起こしてもよい。例えば化合物は、十分に高濃度では、それ自体が酵母に対して有毒であってもよい。酵母スクリーニングは、それを修復する遺伝子変異を同定することで、増殖を抑制する小型分子の目標空間を明らかにし得る。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、小分子の高濃度での増殖を可能にする遺伝子変異について選択された。これは、多様なアプローチのいずれかによって実施してもよい。例えば、化合物は、(1)酵母ゲノム中のほとんどの遺伝子(約5,800遺伝子)を包含する過剰発現酵母株のライブラリー、(2)例えば約300,000個のランダムトランスポゾン挿入などの少なくとも100,000個のランダムトランスポゾン挿入を含有する酵母ライブラリー(例えば、Kumar,A.,et al.,Multipurpose transposon insertion libraries for large-scale analysis of gene function in yeast Methods Mol Biol 416,117(2008)に記載されるようにして)、(3)少なくとも105、106、2×106またはそれを超える細胞から生じる、自然発生的ゲノム点変異保有する酵母ライブラリーまたは(4)酵母ゲノム中に非必須遺伝子の欠失を含有する酵母ライブラリーと接触させてもよい。有毒濃度の化合物の存在下で生存する能力の増大を示す酵母が同定され、このような酵母中で過剰発現されまたは変異した遺伝子が判定される。このようなスクリーニングで同定される遺伝子は、小分子の候補標的である。候補標的の遺伝子量を変化させる効果は、それが中心ノードまたは標的であることを示唆してもよい:例えば、用量増大が化合物に対する感受性を増大させ、遺伝子量低下が化合物に対する感受性を低下させることは、それが中心ノードおよび化合物の標的であることを示唆する。「中心ノード」または「ハブ」は、ネットワーク内の平均的ノードよりもより多くの他のノードと接続する、ネットワーク内のノードである。いくつかの実施形態では、中央ハブは、ネットワーク内の平均的ノードの少なくとも2、3、5倍、またはそれを上回るノードと接続する。これらのハブは、(知られている場合)それらの機能のために、および/またはそれらが関与する生物学的経路および過程のために、遺伝的修飾因子を連結する重大な生物学的過程および経路を特定し得る。次にこれらの過程および経路知識を使用して、関連ニューロンモデル中で表現型を同定し得る。いくつかの実施形態では、親和性試薬として化合物を使用して分子標的を精製する、または化合物を標的に架橋するなどの生化学的アプローチが使用される。
いくつかの実施形態では、スクリーニングで同定された化合物の1つまたは複数の物理化学的薬物動態および/または薬力学的特性を予測するのに、計算的アプローチを使用してもよく、またはこのような特性は、生体外または動物モデルで評価してもよい。例えば、吸収、流通、代謝、および排出(ADME)パラメータを予測または判定し得る。このような情報を利用して、例えばヒットを選択し、さらに試験または修飾し得る。例えば、「薬物様」分子の特色をよく示す特性を有する小型分子を選択し得て、および/または1つまたは複数の望まれない特性を有する小型分子を回避し得る。本明細書に記載されるものなどのスクリーニングで同定された最初の化合物をベースとして、追加的な化合物を同定またはデザインし得る。いくつかの実施形態では、ヒット化合物の構造を調べてファーマコフォアを同定し、それを利用して、例えば、スクリーニングで同定されたヒットの類似体などの、追加的な化合物を設計し得る。例えばアナログなどの追加的な化合物は、例えば、最初のヒットと比較して、1つまたは複数の改善された(すなわち、より望ましい)薬物動態および/または薬力学的特性を有してもよく、または単に異なる構造を有してもよい。例えば、化合物は、関心のある分子標的に対するより高い親和性、非標的分子に対するより低い親和性、より大きな溶解度(例えば水溶解度増大)、安定性増大、半減期増大、生物学的利用能増大、経口吸収増大、および/または副作用の低下などを有してもよい。最適化は、ヒット構造の経験的修飾を通じて(例えば、関連構造がある化合物を合成し、それらを無細胞または細胞ベースのアッセイまたは非ヒト動物で試験する)および/または計算的アプローチを使用して達成し得る。
VI.ニューロン内の神経変性疾患関連表現型は神経変性関連遺伝子型を有する
神経変性疾患のモデルとしての例えば誘導ヒトニューロンなどのニューロンの使用を容易にするために、このようなニューロン内で検出可能な神経変性疾患関連表現型、すなわち、疾患に関連する細胞表現型を確立することが有用である。細胞表現型は、細胞の任意の検出可能な特徴または特性であってもよい。本開示の文脈で、疾患に関連する細胞「表現型」は、正常細胞または疾患を有せず、一般人口と比較して疾患を発症するリスク増大がない対象に由来する細胞から細胞を区別する、細胞によって提示される特徴または特性からの、任意の検出可能な逸脱であってもよい。天然起源疾患関連遺伝子変異または変種に固有の表現型が、特に興味深い。いくつかの態様では、本開示は、例えば、患者iPS細胞から誘導され、または疾患関連遺伝子型を保有するように操作された、誘導ニューロンなどの、神経変性疾患に関連する遺伝子型を有するヒトニューロン内で検出可能な、神経変性疾患関連表現型を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法を使用して、誘導されずまたは表現型を促進するのに十分なレベルの表現型エンハンサーの存在下で培養されず、および/または神経変性関連疾患関連タンパク質をコードする遺伝子の2つを超えるコピーを有するように遺伝子操作されていない、誘導ニューロン内で検出可能である、神経変性疾患関連表現型を同定してもよい。本明細書ではニューロンに関して例示されるものの、本発明は、例えば、乏突起膠細胞などのグリア細胞内の神経変性疾患関連表現型を同定するのに応用される、類似方法を包含する。本明細書の用法では、「表現型エンハンサー」は、表現型を誘導し、および/または表現型の強度を増大させる薬剤または条件である。表現型エンハンサーは、細胞が、その典型的な生存期間にわたりさもなければ通常示さない表現型を示すようにしてもよく、検出可能になるのにさもなければより長くかかる表現型への発達を加速してもよく、および/または表現型をより強力にしてもよい。「表現型を促進するのに十分なレベル」は、表現型を誘導しおよび/または表現型の強度を増大させるのに十分なレベルである。表現型エンハンサーは、毒剤であってもよく、または例えば細胞が、常態では高温、毒剤の存在、機械的損傷などの環境からの侵襲にから保護するために、またはそれに対抗するために利用する分子または経路に負荷をかけるまたはそれを阻害することで、例えば細胞恒常性を妨害する任意の薬剤などの細胞にストレスをかける任意の薬剤などであってもよい。表現型エンハンサーは、熱ショック応答または折り畳まれていないタンパク質応答などの細胞ストレス応答を誘導する薬剤であってもよい。
いくつかの実施形態では、例えば誘導ニューロンなどのヒトニューロン内で検出可能な神経変性疾患関連表現型は、疾患の酵母モデル内での表現型の観察に、少なくとも部分的に基づいて同定されてもよい。いくつかの実施形態では、神経変性関連タンパク質に関連する神経変性疾患に関連する表現型を同定する方法は、(a)毒性を細胞内で誘発するのに十分なレベルでタンパク質を発現する、酵母細胞を提供するステップと;(b)タンパク質の発現に関連する表現型を酵母細胞内で検出するステップと;(c)疾患を有するヒト対象に由来する、または疾患に関連する遺伝子型を有するように操作された、誘導ニューロンを提供するステップと;(d)表現型をニューロン内で検出し、それによって神経変性疾患に関連する表現型を同定するステップとを含んでなる。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、タンパク質を細胞の増殖および/または生存度を低下させるのに十分なレベルで発現する。いくつかの実施形態では、酵母細胞内のタンパク質の発現は、誘導性である。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質をコードする遺伝子の発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。タンパク質の発現を誘導し、細胞を検査して表現型を検出する。いくつかの実施形態では、細胞は、タンパク質の発現誘導後、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、または96時間以内に検査した。一実施形態では、タンパク質の誘導の約6時間後など、約2〜8時間後に、細胞を検査した。特定の実施形態では、細胞は、増殖率または生存度の有意な低下、細胞死が出現する前に検査される。いくつかの実施形態では、増殖率は、タンパク質を発現しない同質遺伝子型酵母株の増殖率の約10%以内、または約25%以内である。
誘導ニューロン内で検出可能な疾患関連表現型には、いくつかの用途がある。いくつかの実施形態では、患者由来ニューロン内で検出可能な表現型を使用して、神経変性疾患に対する薬剤または条件の可能な効果を評価する。いくつかの実施形態では、薬剤を患者由来ニューロンに接触させて、表現型に対する薬剤の効果を評価する。いくつかの実施形態では、表現型を阻害する薬剤を、疾患を治療する薬剤候補として同定する。いくつかの実施形態では、タンパク質の誤った折り畳みまたは異常な蓄積に関連する神経変性疾患に対する薬剤または条件の効果を評価するのに有用な表現型を同定する方法は、(a)毒性を細胞内で誘発するのに十分なレベルでタンパク質を発現する、酵母細胞を提供するステップと;(b)タンパク質の発現に関連する表現型を酵母細胞内で検出するステップと;(c)疾患を有するヒト対象に由来する、または疾患に関連する遺伝子型を有するように改変された、ニューロンを提供するステップと;(d)表現型をニューロン内で検出し、それによって薬剤または条件の神経変性疾患に対する効果を評価するのに有用な表現型を同定するステップとを含んでなる。いくつかの実施形態では、ニューロンは、表現型エンハンサーの存在下で誘導または培養されず、タンパク質をコードする遺伝子の1つまたは複数の追加的なコピーを有するように遺伝子操作されていない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患に関連する優性変異を有する。いくつかの実施形態では、ニューロンは、疾患に関連する優性変異を保有する。いくつかの実施形態では、変異は、タンパク質をコードする遺伝子にある。いくつかの実施形態では、方法は、疾患関連変異が修正されている同質遺伝子型ニューロンを提供するステップ;変異修正ニューロンを検査するステップと;表現型が、非変異修正ニューロンと比較して、変異修正ニューロン内で実質的に低下しまたは実質的に検出不能であることを判定し、それによって表現型が変異に明確に関連することを確認するステップをさらに含んでなる。いくつかの実施形態では、ニューロンおよび同質遺伝子変異修正ニューロンは、例えば同一iPS細胞系などの同一多能性幹細胞系に由来する。
一般に、表現型は、哺乳類ニューロンの表現型の検出に適するアッセイを使用して、ヒト誘導ニューロン内で検出される。いくつかの実施形態では、アッセイは、表現型を酵母細胞内で検出するのに使用されるものと異なってもよい。いくつかの実施形態では、NAPを発現するように操作された、例えば齧歯類ニューロンなどの非ヒト哺乳類ニューロンを使用して、ヒトニューロン内で疾患関連表現型を検出するのに適したアッセイを開発してもよい。いくつかの実施形態では、このような目的で、初代非ヒト哺乳類脳由来培養物を使用してもよい。例えば、NAPを発現するようにウイルス性に形質導入された初代ラット皮質培養物は、アッセイ開発に有用な、高度に一貫性があり時間同期するニューロン/グリア培養物を提供する。神経変性疾患タンパク質を発現するように操作された酵母細胞で同定された、タンパク質毒性関連表現型ためのアッセイは、このような遺伝子操作された非ヒト哺乳類ニューロンを使用して、哺乳類ニューロン内で使用するために適応されてもよい。
いくつかの態様では、本開示は、神経変性疾患に関連する遺伝子型を有するヒトニューロン内で検出可能な表現型を提供する。いくつかの実施形態では、神経変性疾患はシヌクレイン病である。いくつかの態様では、本開示は、シヌクレイン病に関連する表現型を提供する。本出願人らは、毒性誘発レベルのα−シヌクレインを発現する酵母中で、細胞死に先行する表現型が、PD患者に由来するiPS細胞に由来する皮質ニューロン(PD患者iPS細胞由来皮質ニューロン)内で保存されており検出可能であることを発見した。例えば、欠陥小胞体関連分解(ERAD)およびERゴルジ体間輸送障害が、毒性誘発レベルのα−Synを発現するように操作された酵母細胞内で観察され、引き続いてα−Syn内にA53T変異を保有するPD患者に由来するiPS細胞から分化したニューロン内で検出された。表現型は、表現型エンハンサー不在下で遺伝子操作されたα−Synの過剰発現なしに、このようなニューロン内で検出された。患者iPS細胞由来ニューロンと、同一iPS細胞系に由来する変異修正対照細胞とを比較することで、本出願人らは、これらの表現型がα−Synの欠陥に関連することを確立し、したがってヒトシヌクレイン病に対するそれらの関連性を確認した。とりわけ、本明細書に記載される研究は、シヌクレイン病患者由来ニューロン内に、初期および進行性病的表現型として蓄積するERAD基質を同定する。いくつかの実施形態では、ERAD基質は、グルコセレブロシダーゼ(GC、GCaseとも称され遺伝子GBAによってコードされる)またはニューロセルピン(例えば実施例を参照されたい)。したがって、α−Syn(欠陥ERAD)を発現する酵母中で撹乱されたプロセスを同定することは、ヒトPD患者由来ニューロン内の特徴的な表現型としてのGCase蓄積の同定をもたらした。特に、これらの結果は、酵母中の既知のGBAホモログの不在にもかかわらず、α−SynおよびGBAの2つのパーキンソン症遺伝子間の機械的関連性を提供した。とりわけ、これらの知見は、疾患関連表現型、遺伝子、および遺伝子相互作用の同定を容易にする、酵母およびヒト誘導ニューロンモデル系の併用の能力を強調する。
本出願人らは、α−Synを発現する酵母中のα−Syn近傍にニトロソ化ストレスが起こることもまた発見した。この発見は、α−Synをコードする遺伝子中に優勢変異を保有するヒトiPSC由来ニューロン内にはあるが、同質遺伝子型変異修正対照ニューロン内にはない、ニトロシル化されたα−Syn−相互作用タンパク質の同定を導いた。裏付けるおよび相互に強化するデータは、ニトロソ化ストレスをERストレスに結びつけ、双方の病的過程をα−Synに直接結びつけた。いくつかの態様では、シヌクレイン病に関連する表現型は、α−Syn近傍、ER/ゴルジ小胞近傍、および/またはミトコンドリア近傍の1つまたは複数のタンパク質の酸化窒素増大、ニトロシル化増大、および/またはニトロ化増大を含んでなる。いくつかの実施形態では、「近傍」は、最大50nm、最大100nm、最大150nm、または最大200nmの距離を指す。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する表現型は、ニューロン内の1つまたは複数のタンパク質のニトロ化またはニトロシル化の増大を含んでなる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、シナプスのタンパク質(例えばSNAP−25、シナプトブレビン)である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、細胞質タンパク質(例えば、VCP、クラスリン、hsc70)である。
いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、エンドサイトーシス中の欠陥(例えばエンドサイトーシス低下)を含んでなる。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する表現型は、エンドサイトーシス中の欠陥を含んでなる。エンドサイトーシスは、任意の適切なエンドサイトーシスアッセイを使用して測定されてもよい。実施形態によっては、エンドサイトーシスは、ニューロン内で、例えば、FM1−43またはFM4−64または類似化合物などのスチリル染料の取り込みを測定することで評価されてもよい。このようなアッセイ実施する方法は、当該技術分野で周知である(Allaire,PD,et al.,The Journal of Neuroscience(2006),26(51):13202-13212)。いくつかの実施形態では、FM4−64が使用される。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシスは、例えばビオチンなどによって細胞表面タンパク質を標識し、エンドサイトーシスを生じさせ、遊離標識および非内在化タンパク質上に残存する標識を除去または消光して、内在化標識タンパク質を検出することで、測定されてもよい。いくつかの実施形態では、内在化標識タンパク質は、例えば標識と結合する試薬を使用して単離されてもよい。いくつかの実施形態では、このようなタンパク質は、例えばゲル上で視覚化されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、An exemplary method is described in Wong,SE,et al.,Endocrinology.2009 Oct;150(10):4713-23.doi:10.1210/en.2009-0427などの適切な抗体を使用した、免疫ブロット法または免疫蛍光によって、特定のタンパク質を検出してもよい。いくつかの実施形態では、シナプス小胞のエンドサイトーシスを評価してもよい。いくつかの実施形態では、特定のシナプス小胞タンパク質のエンドサイトーシスを評価してもよい。いくつかの実施形態では、ニューロンは、例えば脱分極を引き起こす刺激などの刺激を受けてもよい。
いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、例えばタンパク質翻訳低下などのタンパク質翻訳中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する表現型は、タンパク質翻訳中の欠陥を含んでなる。タンパク質翻訳を評価する方法としては、例えば、リボソームフットプリント法およびS35−メチオニン組み込みが挙げられる。当該技術分野で知られている標準アッセイを使用してもよい。
いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、ミトコンドリア構造および/または機能中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する表現型は、ミトコンドリア構造および/または機能中の欠陥を含んでなる。例えば、電子顕微鏡検査または反応性酸素化学種のレベル増大のためのアッセイなどの、ミトコンドリア機能および/または構造のためのアッセイを使用してもよい(例えば、Su,J.,et al.,Dis Model Mech.2010 Mar-Apr;3(3-4):194-208.doi:10.1242/dmm.004267.Epub 2009 Dec 28を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、カルシウム流動、取り込み、放出、またはシグナル伝達中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する表現型は、カルシウム流動、取り込み、放出、またはシグナル伝達中の欠陥を含んでなる。カルシウム流動、取り込み、放出、またはシグナル伝達中の欠陥は、例えば、カルシウムイメージングまたは例えばNFAT局在化染色などの転写因子NFAT(酵母Crz1のヒトホモログ)染色を使用して評価してもよい。細胞カルシウムセンサーとして使用してもよい多様な分子は、当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、蛍光性カルシウムセンサーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、カルシウムセンサーは、小分子(例えばOregon Green BAPTA−1−AM)または遺伝的にコードされてもよいタンパク質である。例えばGCaMP6タンパク質またはその他のGCaMPファミリーメンバーを使用してもよく(Chen、T-S、et al.、Nature(2013)、Vol499、pp.235-302)、または熱安定性赤色蛍光タンパク質mRubyの循環配列から操作された赤色単波長「RCaMPs」(Akerboom,J.,et al.,Front Mol Neurosci.2013;6:2.doi:10.3389/fnmol.2013.00002.Epub 2013 Mar 4)を使用してもよい。NFATの染色は、NFATに結合する抗体を使用して実施してもよい。
いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、例えばERゴルジ体間輸送の欠陥などの小胞輸送中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、シヌクレイン病に関連する表現型は、例えば、ERゴルジ体間輸送中の欠陥などの小胞輸送中の欠陥を含んでなる。特定の実施形態では、欠陥は、例えば障害ERゴルジ体間輸送などの小胞輸送障害である。ERゴルジ体間輸送は、例えば、常態ではERからゴルジ体に移動するタンパク質輸送のモニタリングによって、モニターしてもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質はニカストリンである。いくつかの実施形態では、修飾(例えばグリコシル化)が、輸送の指標としてモニターされる。いくつかの実施形態では、例えば蛍光タンパク質を含んでなるなどの、検出可能標識を含んでなるタンパク質の輸送がモニターされてもよい。
いくつかの実施形態では、アルツハイマー病関連、またはその他のAbeta−関連神経変性疾患遺伝子型を有する、ニューロン内で検出可能な表現型は、エンドサイトーシス中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、アルツハイマー病またはその他のAbeta−関連神経変性疾患に関連する表現型は、エンドサイトーシス中の欠陥を含んでなる。
いくつかの実施形態では、TDP−43タンパク質症に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、タンパク質翻訳中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、TDP−43タンパク質症に関連する表現型は、タンパク質翻訳中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、TDP−43タンパク質症に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、エンドサイトーシス中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、TDP−43タンパク質症に関連する表現型は、エンドサイトーシス中の欠陥を含んでなる。いくつかの実施形態では、TDP−43タンパク質症に関連する遺伝子型を有するニューロン内で検出可能な表現型は、例えばストレス顆粒のレベル増大をもたらす、ストレス顆粒生成の増大を含んでなる。いくつかの実施形態では、TDP−43タンパク質症に関連する表現型は、例えばストレス顆粒のレベル増大をもたらす、ストレス顆粒生成の増大を含んでなる。ストレス顆粒は、翻訳停止mRNAと様々なタンパク質とを含有する小型で緻密な細胞質領域(例えば約0.75〜5μm2)である。ストレス顆粒は、例えば、TIA−1などのストレス顆粒に局在化する1つまたは複数のタンパク質のための免疫蛍光を用いて評価してもよい。
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、タンパク質の誤った折り畳みおよび/または凝集に関連する神経変性疾患において生じる、その調節が病的現型を阻害し得る、遺伝子および遺伝子産物の同定を容易にする。このような遺伝子および遺伝子産物は、とりわけ、このような疾患のための治療薬開発にとって、特に有望な標的であってもよい。例えば、ERADを容易にする重要なE3ユビキチンリガーゼであるHrd1は、本出願人らのグループが以前実施したゲノム規模酵母スクリーニングにおいて、α−Syn毒性のサプレッサーと同定された(米国特許第公開号20110064722明細書および参考文献13)(本明細書で確認された)。実施例に記載されるように、ヒトHrd1ホモログであるシノビオリンの発現は、ラット皮質ニューロンをα−Syn誘発毒性からレスキューした。さらに、シノビオリンの発現は、α−SynにA53T変異PがあるD患者に由来する、皮質ニューロン内の異常なERAD基質蓄積などの表現型を阻害した。したがって、これらの3つのモデル系からの裏付けデータは、シヌクレイン病を治療するための治療的アプローチとしてのシノビオリン調節の可能性を強調する。
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、タンパク質の誤った折り畳みおよび/または凝集に関連する神経変性疾患において生じる、その調節が病的表現型を阻害し得る、例えば、小型分子などの薬剤の同定を容易にする。いくつかの態様では、このような薬剤は、このような疾患中で誤って折り畳まれたタンパク質に関連する神経変性疾患を治療するための治療薬として、使用されてもよい。例えば、同時係属米国特許出願第61/794,870号明細書に記載されるようにして、NAB2(を参照されたい実施例および図7)と称される化合物が、酵母中のαSyn毒性の阻害剤としてハイスループットスクリーニングで同定された。化合物は、蠕虫および齧歯類ニューロンシヌクレイン病モデル中で効果的であった。酵母中における化学遺伝解析は、NAB2の目標空間の不可欠な構成要素として、ユビキチンリガーゼRsp5/Nedd4を同定した(米国特許出願第61/794,870号明細書、および参考文献41)。Rsp5およびそのヒトホモログNEDD4は、酵母およびニューロンの双方で、タンパク質輸送およびERADに関与するとされる。NAB2は、用量依存的様式で酵母ER内のCPY蓄積を低下させ、酵母中のタンパク質ニトロ化の特定のαSyn誘導性増大を低下させることが分かった。さらに、NAB2は、ContursiおよびIowa家系の双方からの患者ニューロン内で、用量依存的様式で、post−ERを増大させ、ニカストリンおよびGCaseの未成熟形態を減少させた(図6Bおよび図23)。最後に、センサーFL2による測定で、NAB2は、変異修正対照中のNOレベルに影響を及ぼすことなく、A53T患者ニューロン内のNOレベルを大きく低下させ(図6C)、患者ニューロン内のNedd4の過剰発現は、NAB2の効果を表現型模写した(図6D)。
VII.酵母−ヒト遺伝子ネットワークおよびその使用
いくつかの態様では、本発明は、神経変性疾患、および新薬の開発につながる標的に、関与するとされる、このような経路および過程内の生物学的経路、過程を同定する方法を提供する。方法は、例えば、シヌクレイン病、アルツハイマー病、TDP−43タンパク質症、FUS疾患、ヌクレオチド伸長障害、タウオパチー、パーキンソン症障害、運動失調、運動ニューロン障害、末梢神経障害、または白質疾患などの本明細書に記載される任意の神経変性疾患に応用されてもよい。いくつかの実施形態では、障害は機能獲得変異に関連する。いくつかの実施形態では、障害は機能喪失変異に関連する。いくつかの実施形態では、方法は、酵母スクリーニングで同定された、遺伝的修飾因子のセットの分析を伴い、それは、遺伝子のヒトホモログによって、既知のヒト神経変性疾患遺伝子および修飾因子によって、そして適切なアルゴリズムを使用して発見されてもよい隠された相互作用物質によって、増強されてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、コンピュータ支援される。いくつかの態様では、本発明は、(a)神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母細胞によって提示される表現型の遺伝的修飾因子である、または神経変性疾患のモデルの役割を果たす酵母細胞によって提示される表現型を抑制する化合物の効果の遺伝的修飾因子である、一連の遺伝子を同定するステップと;(b)遺伝子セットを分析して、神経変性疾患に関与するとされる生物学的経路または過程を同定するステップと;(c)神経変性疾患のモデルの役割を果たすヒトニューロン内の関与するとされる生物学的経路または過程の調節が、ヒトニューロン内の神経変性疾患に関連する表現型のレベルを低下させることを判定し、それによって神経変性疾患創薬の標的として生物学的経路または過程を同定するステップとを含んでなる、神経変性疾患創薬の標的を同定する方法を提供し、任意選択的に、ヒトニューロンは誘導ヒトニューロンであり、さらに任意選択的に、方法は、(d)生物学的経路または過程内で、新薬の開発につながる標的を同定し、それによって神経変性疾患創薬のための新薬の開発につながる標的を同定するステップをさらに含んでなる。遺伝的修飾因子は、本明細書に記載されるようにして(例えば過剰発現されまたは欠失すると、酵母モデルによって提示される表現型を調節する酵母遺伝子を同定することで)、酵母モデルを使用して同定されてもよい。遺伝的修飾因子は、疾患に関与するとされる生物学的経路または過程を同定する、および/または新薬の開発につながる標的を同定する、多様なアプローチを使用して分析してもよい。例えばそれらを分析して、遺伝子オントロジーデータベースまたはその他のデータベース中のそれらの遺伝子注釈中で有意に豊富な遺伝子オントロジー(GO)用語を同定し、ひいてはその構成要素(遺伝子、タンパク質)が遺伝的修飾因子中に豊富である(過剰出現する)経路および過程を同定してもよい。いくつかの実施形態では、遺伝的修飾因子の少なくとも一部を含んでなり、相互作用する遺伝子がネットワークのエッジで連結するネットワークを作成することで、遺伝的修飾因子を分析する。相互作用は、遺伝的および/または物理的相互作用であってもよい。例えば、タンパク質−タンパク質相互作用データなどの分子相互作用データは、アフィニティ捕捉ルミネセンス、アフィニティ捕捉MS、アフィニティ捕捉RNA、アフィニティ捕捉)ウエスタン、生化学、共分画共局在、共精製、ファーウエスタン、FRET、タンパク質相補性アッセイ、再構成複合体、および酵母2ハイブリッドまたは3ハイブリッドアプローチなどの多様な技術を使用して得てもよい。このようなアッセイなどから得られる大規模なデータは、以下のような様々なデータベースで、公的に利用可能であり、保存される。Biological General Repository for Interaction Datasets(BioGRID(http://thebiogrid.org/;Stark,C.et al.The biogrid interaction database:2011 update.Nucleic Acids Res.39,D698-D704(2011))。IntAct(http://www.ebi.ac.uk/intact/;Hermjakob,H.et al.Intact:an open source molecular interaction database.Nucleic Acids Res.32,D452-D455(2004))、Molecular INTeraction database(MINT;http://mint.bio.uniroma2.it/mint/;Chatr-aryamontri ,A,et al.,Mint:a molecular interaction database.Nucleic Acids Res.2007 Jan;35(Database issue):D572-4)、Saccharomyces Genome Database(http://yeastgenome.org)。Human Protein Reference Database(HPRD;http://www.hprd.org/;Keshava Prasad,T.S.et al.Human protein reference database 2009 update.Nucleic Acids Res.37,D767-D772(2009))、Biomolecular Interaction Network Database(BIND;Bader,G.D.,et al.Bind:the biomolecular interaction network database.Nucleic Acids Res.31,248-250(2003)、およびDatabase of Interacting Proteins(DIP;http://dip.doe-mbi.ucla.edu/dip/Main.cgi Xenarios,I.et al.Dip:the database of interacting proteins.Nucleic Acids Res.28,289-291(2000))。Search Tool for the Retrieval of Interacting Genes/Proteins(STRING;http://string-db.org/;Szklarczyk,D.et al.The string database in 2011:functional interaction networks of proteins,globally integrated and scored.Nucleic Acids Res.39,D561-D568(2011);Szklarczyk,D.et al.The string database in 2011:functional interaction networks of proteins,globally integrated and scored.Nucleic Acids Res.39,D561-D568(2011))、Interologous Interaction Database(I2D;http://ophid.utoronto.ca/ophidv2.204/ Brown,K.R.&Jurisica,I.Online predicted human interaction database.Bioinformatics 21,2076-2082(2005))などのデータベース、そしてiRefIndex(http://irefindex.org/wiki/index.php?title=iRefIndex Razick,S.,Magklaras,G.&Donaldson,I.M.irefindex:a consolidated protein interaction database with provenance.BMC Bioinformatics 9,405(2008))は、上述の情報源の大部分を単一データベースに組み合わせる。例えばSTRINGは、直接(物理的)および間接的(機能的)関連性をはじめとする、既知のおよび予測されたタンパク質相互作用のデータベースである。
ネットワークは、多様なソフトウェアツールおよびアルゴリズムのいずれを使用して生成されおよび/または視覚化されてもよい。当業者は、ネットワークを生成および/または視覚化する多数の様式があることを理解し、本発明の実施形態では、そのいずれでも用いてもよい。例えばいくつかの実施形態では、先に報告された相互作用(例えばタンパク質−タンパク質相互作用)を使用する、スタイナー木問題に基づく技術を使用して、ネットワークを作成し、一連の遺伝子がどのように機能的に整合のとれた経路に組織化されるかを判定して、細胞性応答の多数の構成要素を明らかにする。方法は、条件付き最適化を使用して、高確率相互作用によって直接または間接的に関連がある、ヒットの部分集合(この場合は酵母スクリーニングで同定された遺伝的修飾因子とそれらのヒトホモログ、関連神経変性疾患の遺伝的修飾因子として同定されているヒト遺伝子もまたを含むこともある)を同定する。これは、賞金収集シュタイナー木(PCST)問題の解答を探すことで達成される(Huang,SC and Fraenkel,E.,Sci.Signal.,Vol.2,Issue 81,p.ra40;およびその中の参考文献)。このアプローチでは、実験中で検出されるタンパク質/遺伝子は、「末端ノード」と定義され、それらは、直接、またはその他の検出されないタンパク質(シュタイナーノード)を使用するタンパク質−タンパク質およびタンパク質遺伝子相互作用を介してのいずれかで、互いに連結される。アルゴリズムの重要な特徴は、それが全ての末端ノードの結合を必要としないことである。むしろ、エッジの部分集合を究極的に連結する高信頼度エッジから構成される、ネットワークが求められる。このネットワークを同定するために、相互作用が真であるという信頼度を反映するコストが、各相互作用に割り当てられた。さらにそのノードの関連データ中の信頼度に基づいて、ペナルティーが末端ノードに割り当てられてもよい。PCSTアルゴリズムは、木に包含されるエッジのコストと、除外される末端のペナルティーとを同時に最小化することで、関連サブネットワークを同定する。PCSTアプローチを使用してネットワークを作成するのに使用してもよい公的に利用可能なウェブサーバーであるSteinerNetが、http://fraenkel.mit.edu/steinernet(Tuncbag,N.,et al.,Nucl.Acids Res.(2012)40(W1):W505-W509)でアクセスできる。いくつかの実施形態では、既知のヒト神経変性疾患遺伝子および/または遺伝的修飾因子は、PCSTで作成されたネットワーク中の「賞金ノード」であってもよい。上述のように、ネットワーク構築問題に対するその他のアルゴリズム法を用いてもよく、本発明はこの点において限定されるものではない。例えば流れ最適化問ベースの方法を使用してもよい(Lan,A.,et al.,Nucleic Acids Res.2011;39:W424-W429;およびその中の参考文献)。その他のアプローチとしては、線形計画法、ベイジアンネットワーク、および最大尤度ベースのアプローチが挙げられる(Tuncbag,N.,et al.で言及される参考文献を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ネットワークは、多様なソフトウェアツールのいずれかを使用して視覚化されてもよい。例えばネットワークは、Cytoscape(http://www.cytoscape.org/;Cline,MS,et al.,Nature Protocols 2,2366-2382(2007);Shannon,P.,et al.,Genome Research 2003 Nov,13(11):2498-504)を使用して視覚化されてもよい。
双方のアプローチ(濃縮分析、ネットワーク分析)のいくつかの実施形態では、遺伝的修飾因子のセットは、遺伝的修飾因子の少なくとも1つの1つまたは複数のヒトホモログ;神経変性疾患の1つまたは複数の既知のヒト遺伝的修飾因子(例えば、家系研究、GWAS研究などのヒト遺伝的研究において、またはその他のアプローチを使用してリスク因子と同定された遺伝子);および/またはヒトホモログまたは既知のヒト遺伝的修飾因子の1つまたは複数と相互作用することが知られている、1つまたは複数のヒト遺伝子を含めることで増強されてもよい。酵母遺伝子およびタンパク質のヒトホモログは、配列相同性、構造的相同性(例えば、構造予測または実験的に判定された構造を使用した)、機能的情報、タンパク質−タンパク質相互作用情報)、系統発生学、またはそれらの組み合わせなどの多様なアプローチを使用して、同定されてもよい。配列または構造の相同性比較は、例えば機能ドメインなどのタンパク質の部分のみに関わってよいものと理解される。いくつかの実施形態では、方法の組み合わせを使用してもよい。例えば、酵母タンパク質Xおよびヒトタンパク質X1が、配列に基づいてホモログと同定される場合、次に、タンパク質XおよびYが酵母中で相互作用し、タンパク質X1およびY1がヒト細胞中で相互作用する場合、酵母タンパク質Yとヒトタンパク質Y1がホモログであることが推測され得る。
新薬の開発につながる標的に相当してもよい中心ノードは、視覚的に、またはコンピュータ支援様式で計算的に、またはそれらの組み合わせで、同定されてもよい。いくつかの実施形態では、相互作用の信頼度、相同性、既知のヒト遺伝的修飾因子またはそれらの酵母ホモログとの可能な連結性などの要素を使用してネットワークを作成してもよい。いくつかの実施形態では、例えば中央ノードを識別する目的で、ネットワーク内のエッジは等しく重み付けされる。いくつかの実施形態では、ネットワーク内のエッジは、相互作用の信頼度(高信頼度相互作用にはより多くの重みを割り当ててもよい)、相同性(ノードが(重みを増大させてもよい)既知のヒト遺伝的修飾因子またはそれらの酵母ホモログに結合するかどうかに関わりなく、高い相同性にはより多くの重みを割り当ててもよい、またはその他の要素に基づいて、重み付けされてもよい。エッジの重みは、ノードが中央ノードであるかどうかを判定する際に、考慮に入れ得る。例えば、ノードは、ノードが関与するノード数と相互作用強度との双方を考慮に入れる格付けシステムを使用して、格付けし得る。
いくつかの実施形態では、新薬の開発につながるノードを調節する化合物が、例えば、酵母神経変性疾患のモデル中のスクリーニングで同定される。いくつかの実施形態では、疾患のモデルの役割を果たすヒト神経系細胞に化合物を接触させて、ヒト神経系細胞中で、新薬の開発につながるノードを調節することが、少なくとも1つの疾患関連表現型を低下させることを確認する。いくつかの実施形態では、生物学的経路、過程、または酵母中のスクリーニングで同定された化合物の分子標的を同定するのに、酵母ヒト遺伝子ネットワークが使用される。
いくつかの実施形態では、遺伝子セット濃縮解析実施またはネットワーク構築の結果が、持続性コンピュータ可読媒体上に保存されてもよい。いくつかの実施形態では、方法、および任意選択的に、このような新薬の開発につながるノード調節する化合物を使用して同定される、新薬の開発につながるノードが、持続性コンピュータ可読媒体上に保存されてもよい。
VIII.医薬組成物
いくつかの態様では、神経変性疾患を治療するための候補治療薬は、本明細書に記載されるようにして同定される。例えば本明細書に記載されるように同定された活性薬剤などの実質的に純粋な活性薬剤調製物などの適切な調製物を、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤などと組み合わせて、適切な医薬組成物を製造してもよい。「薬学的に許容可能な担体または賦形剤」という用語は、組成物活性成分の生物学的活性または有効性を顕著に妨げず、それが使用されまたは投与される濃度で宿主に過剰に有毒でない、担体(この用語は、担体、媒体、希釈剤、溶媒、ビヒクルなどを包含する)、または賦形剤を指す。その他の薬学的に許容可能な成分もまた、組成物中に存在し得る。適切な物質と、薬理的活性化合物の調合におけるそれらの使用は、当該技術分野で周知である(例えば、薬学的に許容可能な物質および様々なタイプの医薬組成物を調製する方法の追加的な考察については、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”,E.W.Martin,19th Ed.,1995,Mack Publishing Co.:Easton,PA;およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy.21st Edition.Philadelphia,PA.Lippincott Williams&Wilkins,2005 などのそのより最近の版次またはバージョンを参照されたい)。
医薬組成物は、典型的に、その意図される投与経路に適合するように調合される。例えば、非経口投与のための製剤としては、無菌水性または非水溶液、懸濁液、およびエマルションが挙げられる。水性担体としては、水;アルコール性溶液/水溶液;例えば塩化ナトリウム溶液などの生理食塩水および緩衝媒体をはじめとするエマルションまたは懸濁液;リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶剤;例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗細菌剤などの保存料;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調節するための薬剤である。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調節し得る。このような非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、あるいはガラスまたはプラスチックからできた多回用量バイアル内に封入し得る。このような組成物で使用するための医薬組成物および薬剤は、治療薬の製造、販売、および/または使用に対する権限を有する米国FDA(または別の所管範囲の類似機関)などの監督官庁によって規定される標準または基準を満たす条件下で製造されてもよい。例えば、このような組成物および薬剤は、製造管理および品質管理に関する基準(GMP)に準拠して製造され、および/またはヒトに投与される医薬品にふさわしい品質管理手順の対象となってもよい。
経口投与では、薬剤は、活性化合物と、当該技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体とを組み合わせることで配合し得る。このような担体は、本発明の化合物が、治療される対象によって経口摂取されるための、錠剤、丸薬、糖衣丸、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして調合されるようにする。経口剤形のための適切な賦形剤は、例えば、乳糖、スクロース、マンニトール、またはソルビトールをはじめとする糖類などの増量剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース調製物、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加してもよい。任意選択的に、経口製剤はまた、内部酸条件を中和するために生理食塩水または緩衝液中に配合されてもよく、またはいかなる担体もなしに投与されてもよい。糖衣丸コアには、適切なコーティングが提供される。この目的で、濃縮した砂糖溶液を使用してもよく、それは、任意選択的に、アラビアガム、滑石、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。同定のために、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または色素を錠剤または糖衣丸コーティングに添加してもよい。
経口的に使用し得る医薬品としては、ゼラチンからできたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とからできた軟質密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、乳糖などの増量剤、デンプンなどのバインダー、および/または滑石またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および、任意選択的に安定剤との混和材中に、活性成分を含有し得る。活性化合物は、軟質カプセル内で、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に、溶解または懸濁されてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のために調合された微小球もまた使用してもよい。このような微小球は、当該技術分野で明確に定義されている。
経口送達のための処方には、胃腸管内安定性を改善し、および/または吸収を促進する薬剤を組み入れてもよい。
吸入による投与のためには、医薬組成物を、例えば、二酸化炭素、フルオロカーボンのようなガスなどの適切な噴霧剤を含有する被圧容器または計量分配装置からの、またはネブライザーからのエアゾールスプレーの形態で送達してもよい。液体または乾燥煙霧剤(例えば、乾燥粉末、大型多孔性粒子など)を利用し得る。本開示は、経鼻噴霧またはその他の形態の経鼻投与を使用する組成物の送達を検討する。吸入による投与のために、いくつかのタイプの定量吸入器が恒常的に使用される。これらのタイプの装置としては、定量吸入器(MDI)、呼気作動MDI、乾燥粉末吸入器(DPI)、MDIと組み合わされたスペーサー/保持チャンバー、およびネブライザーが挙げられる。鼻腔内投与された化合物は、脳内に輸送されてもよい。
局所用途のためには、医薬組成物は、このような組成物で使用するのに適する、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体に懸濁または溶解された活性成分を含有する、適切な軟膏、ローション、ゲル、またはクリームに配合されてもよい。
眼への局所性送達のためには、医薬組成物を、例えば点眼薬でまたは軟膏で使用するための等張pH調節無菌生理食塩水中の溶液または微粉化懸濁液として調合してもよい。いくつかの実施形態では、眼内投与が使用される。眼内投与経路としては、例えば、硝子体内注射、球後注射、眼球周囲注射、網膜下、テノン嚢下注射、および結膜下注射が挙げられる。眼に投与された化合物は、脳内に輸送されてもよい。
医薬組成物は、経粘膜または経皮配達のために調合されてもよい。経粘膜または経皮投与のために、透過する障壁に適した浸透剤を配合中で使用してもよい。このような浸透剤は、通常、当該技術分野で知られている。医薬組成物は、坐薬として(例えば、カカオ脂およびその他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤)、または直腸配達のための停留浣腸として、調合されてもよい。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、放出制御製剤、インプラント(例えば、ディスク、ウェファーなどの巨視的なインプラント)、マイクロカプセル化送達系などの身体からの迅速な排出から活性薬剤を保護することが意図される、1つまたは複数の薬剤を含む。化合物は、例えば、微粒子またはナノ粒子などの粒子にカプセル化され、またはそれに組み込まれてもよい。例えば生分解性生体適合性ポリマーなどの生体適合性ポリマーを、例えば、放出制御製、インプラント、または粒子内で利用し得る。ポリマーは、天然起源または人造ポリマーであってもよい。特定のポリマーに応じて、それは合成されまたは天然起源原料から得られてもよい。薬剤は、ポリマーマトリックスの拡散、分解または侵食、またはそれらの組み合わせによって、ポリマーから放出されてもよい。ポリマーまたはポリマー組み合わせ、または送達形態(例えば、粒子、巨視的インプラント)は、その間に薬剤の放出が所望される時間に、少なくとも部分的に基づいて選択されてもよい。時間は、例えば、数時間(例えば3〜6時間)〜1年間またはそれを上回る範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、時間は、1〜2週間から最大3〜6ヶ月、または6〜12ヶ月の範囲である。このような時間の後、薬剤放出は、検出不能であってもよく、または治療的に有用なまたは所望レベル未満であってもよい。ポリマーは、ホモポリマー、共重合体(ブロック共重合体をはじめとする)、直鎖、分枝鎖、または架橋であってもよい。薬物送達で有用な様々なポリマーは、Jones,D.,Pharmaceutical Applications of Polymers for Drug Delivery,ISBN 1-85957-479-3,ChemTec Publishing,2004に記載される。有用なポリマーとしては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、酢酸ビニルエチレン、ポリオルトエステル、ポリエーテル、およびポリ(βアミノエステル)が挙げられるが、これに限定されるものではない。様々な実施形態で有用なその他のポリマーとしては、ポリアミド、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレン酸化物、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらの共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(ブチルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸シクロヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−コカプロラクトン)が挙げられる。特定の実施形態では、コラーゲンまたはアルブミンなどのペプチド、ポリペプチド、タンパク質;スクロース、キトサン、デキストランなどの多糖類;アルギン酸塩、ヒアルロン酸(またはこれらのいずれかの誘導体)、およびデンドリマーが有用である。このようなものを調製する方法は、当業者には明らかである。追加的なポリマーとしては、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルおよびメタクリル酸のエステルポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩などのセルロース誘導体、ポリカーバメートまたはポリ尿素、架橋ポリ(酢酸ビニル)など、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体、エチレン−ヘキサン酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−酪酸ビニル共重合体、エチレン−ペンタン酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸トリメチルビニル共重合体、エチレン−酢酸ジエチルビニル共重合体、エチレン−ブタン酸3−メチルビニル共重合体、エチレン−ブタン酸3−3−ジメチルビニル共重合体、およびエチレン−安息香酸ビニル共重合体などのエチレン−ビニルエステル共重合体またはそれらの混合物が挙げられる。例えば、アルキルやアルキレンなどの化学基の置換、付加、ヒドロキシル化、酸化、および当業者によって慣例的に作成されるその他の修飾などの上述のポリマーの化学誘導体を使用し得る。粒子、インプラント、または製剤は、単一ポリマーまたは複数ポリマーから構成されてもよい。粒子またはインプラントは、組成が均質または非均質であってもよい。いくつかの実施形態では、粒子は、コアおよび少なくとも1つのシェルまたはコーティング層を含んでなり、いくつかの実施形態では、コアの組成はシェルまたはコーティング層のそれとは異なる。治療薬または標識は、多様な異なる様式で、粒子、配合、またはインプラントと物理的に結合してもよい。例えば、薬剤は、カプセル化され、表面付着し、マトリックス内で均質にまたは非均質に分散してもよい。このような製剤、インプラント、または粒子を調製する方法は、当業者には明らかである。特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体として、リポソームまたはその他の脂質含有粒子を使用し得る。いくつかの実施形態では、放出制御製剤、インプラント、または粒子は、腫瘍中に、腫瘍の近くに、またはその血液供給中に、またはそれから腫瘍が除去される領域の近くに、または既知のまたは可能な転移部位(例えば、腫瘍が転移しやすい部位)の近くなどに、導入されまたは配置されてもよい。微粒子およびナノ粒子は、一定範囲の寸法を有し得る。いくつかの実施形態では、微粒子は、100nm〜100μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、微粒子は、100nm〜1μm、1μm〜20μm、または1μm〜10μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、微粒子は、100nm〜250nm、250nm〜500nm、500nm〜750nm、または750nm〜1μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、例えば、10nm〜20nm、20nm〜50nm、または50nm〜100nmなどの、10nm〜100nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は、サイズまたは形状が実質的に一様である。いくつかの実施形態では、粒子は、実質的に球状である。いくつかの実施形態では、粒子集団は、上述のサイズ範囲のいずれかに入る平均直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子集団は、例えば、約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%など、上述のサイズ範囲またはそれらの部分的範囲のいずれかに入る、約20%〜約100%の粒子からなる。非球状粒子の場合、直径でなく粒子表面の2点間の最長直線寸法を、粒度の測定値として使用してもよい。このような寸法は、上述の長さの範囲のいずれかを有してもよい。いくつかの実施形態では、粒子は、検出可能標識または検出試薬を含んでなり、またはそれに付着する、検出可能標識または検出試薬を有する。いくつかの実施形態では、粒子は磁性であり、例えば、粒子と1つまたは複数の追加的成分とを含んでなる組成物からの粒子の除去または分離を容易にする。
薬剤を含有しおよび/またはそれを送達するのに使用してもよいポリマーマトリックス形態としては、ステントまたはカテーテルなどのインプラントまたは留置装置に、埋め込まれまたは塗布されてもよい、フィルム、コーティング、ゲル(例えばハイドロゲル)が挙げられる。
一般に、ポリマー材料、マトリックス、または製剤のサイズ、形状、および/または組成を適切に選択し、ポリマー材料、マトリックス、または製剤が埋め込まれまたは投与された組織中で、有用な時間にわたり、治療的に有用な量の放出をもたらしてもよい。
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象への投与時に、直接または間接的に化合物を提供できる、化合物またはその類似物の薬学的に許容可能な塩、エステル、このようなエステルの塩、活性代謝産物、プロドラッグ、または任意の付加体または誘導体を使用してもよい。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などなしで、ヒトおよび/または下等動物組織と接触させる使用に適し、利点/リスクの比率が妥当に釣り合った塩を指す。多種多様な適切な薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野で周知である。
医薬組成物中の活性薬剤の治療有効用量は、約1μg/kg〜約500mg/kg体重、約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.001mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約25mg/kg、約0.1mg/kg〜約20mg/kg体重、約1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約3mg/kg、約3mg/kg〜約5mg/kg、約5mg/kg〜約10mg/kgの範囲内であってもよい。様々な実施形態において、いくつかの実施形態では、薬剤用量は、例えば、1日、1週間、1ヶ月、またはその他の時間間隔あたり1回またはそれを超える、約10μg〜約10,000mg、例えば約100μg〜約5,000mg、例えば約0.1mg〜約1000mgの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、単回用量が投与される一方で、別の実施形態では、複数回投与が投与される。当業者は、使用される薬剤の効力次第で、任意の特定の状況に適した用量を理解して、任意選択的に、特定の受容者に合わせて調整してもよい。対象のための特定の用量レベルは、用いられる特定薬剤の活性、疾患または障害の重症度、対象の年齢、体重、総体的な健康などをはじめとする多様な要素に左右されてもよい。
特定の実施形態では、薬剤を最大耐容量または治療用量以下、または例えば治療効果を達成するのに有効な最低用量などの、その間のいずれかの用量で使用してもよい。最大耐容量(MTD)は、許容できない毒性なしに投与し得る、薬理学的または放射線学的治療の最大用量、すなわち、健全な医学的判断によって許容できるリスク/便益比を有する最大用量を指す。一般に、当業者は、健全な医学的判断によって妥当なリスク/便益比を有する用量を選択し得る。MTDは、例えば臨床試験において、被験者集団内で確立されてもよい。特定の実施形態では、薬剤は、MTDより低い量で投与され、例えば、薬剤は、MTDの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の量で投与される。
投与を容易にするため、そして投与量の均一性のために、特に経口または非経口組成物用の医薬組成物を単一剤形に配合するのが望ましいことがある。単一剤形は、本明細書での用法では、治療される対象のための単位用量に適した物理的に分離した単位を指し;各単位は、適切な薬学的に許容可能な担体と共同で所望の治療効果を生じるように計算された、所定の活性薬剤量を含有する。
治療計画は、一定時間にわたる、複数単一剤形の投与を含んでもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、対象は1〜7日間治療される。いくつかの実施形態では、対象は7〜14日間治療される。いくつかの実施形態では、対象は14〜28日間治療される。別の実施形態では、例えば約4〜約10週間などより長い治療過程が施される。いくつかの実施形態では、複数クールの治療法が施される。いくつかの実施形態では、治療は、無期限に継続してもよい。例えば、神経変性疾患に罹患している対象を無期限に治療し続けてもよく;神経変性疾患を発症するリスクがある対象を、例えば無期限など、このようなリスクが存在する任意の期間にわたって治療してもよい。対象は、治療期間内に、1つまたは複数の用量を毎日投与されてもよく、または用量を隔日に、またはより低頻度で投与されてもよい。治療過程は、断続的であってもよい。
いくつかの実施形態では、薬剤は、活性薬剤および、任意選択的に、1つまたは複数のその他の薬学的に許容可能な成分を含有する、1つまたは複数の容器(例えば、バイアル、アンプル、瓶)を含んでなる薬剤パックまたはキット中で提供される。このような容器には、医薬品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定される形式の注意書きが任意選択的に付随し得て、その注意書きは、機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の認可を反映する。注意書きは、例えば、用量、経路および/または投与法、認可された適応症(例えば、それに対して薬剤または医薬組成物を治療で使用するために認可されたがん)、作用機序、または開業医および/または患者有用であるその他の情報を記載してもよい。異なる成分が、固体(例えば凍結乾燥)または液体形態で提供されてもよい。各成分は、通常、そのそれぞれの容器内に小分けされ、または濃縮形態で提供されるのに適する。キットは、凍結乾燥成分を戻すための媒体もまた含んでもよい。キットの個々の容器は、商業販売のために、好ましくは厳重に密封して保持される。
当業者は、目的を果たして、言及された、ならびにその中で固有の結果と利点を得るために、本発明が良好に適応されることを容易に認識する。本明細書の説明および例の詳細は、特定の実施形態を代表して例示的であり、本発明の範囲を限定することは意図されない。その中の修正およびその他の用途は当業者によって想起される。これらの修飾は、本発明の精神に包含される。本明細書で開示される本発明の範囲と精神を逸脱することなく、置換および修正を加えてもよいことは、当業者には容易に明白である。
冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲の用法では、相反することが明示される場合を除いて、複数の指示対象を含むものと理解すべきである。グループの1つまたは複数の構成要素間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、別段の指示がありまたはさもなければ文脈から明白な場合を除いて、1つ、2つ以上、または全てのグループ構成要素が存在し、用いられ、またはさもなければ所与の生成物または方法に関連する場合に、満たされると見なされる。本開示は、その中でグループの正確に1つの構成要素が、存在し、用いられ、またはさもなければ所与の生成物または方法に関連する、実施形態を提供する。本開示は、その中で2つ以上の、または全てのグループ構成要素が、存在し、用いられ、またはさもなければ所与の生成物または方法に関連する、実施形態もまた提供する。さらに本開示は、特に断りのない限り、または不合理または矛盾が生じることが当業者に明白な場合を除いて、その中で、列挙されるクレームの1つまたは複数からの1つまたは複数の制限、要素、条項、記述的用語などが、同一基本クレーム(または、該当する場合、任意の他のクレーム)に従属する別の特許請求に導入される、全てのバリエーション、組み合わせ、および並べ替えを提供するものと理解される。例えば、任意の従属クレームは、特に断りのない限り、または不合理または矛盾が生じることが当業者に明白な場合を除いて、同一基本クレームに従属する任意の先行するクレームに従属してもよい。全ての本明細書に記載される実施形態は、適切な場合は、本明細書に記載される全ての異なる態様に適用できることが検討される。適切である場合は常に、そしてこのような実施形態、態様、または教示が本開示に現れるかどうかにかかわりなく、実施形態または態様または教示のいずれもが、1つまたは複数の他のこのような実施形態または態様と自由に組み合わせ得ることもまた検討される。要素が、例えばマーカッシュグループまたは類似形式で、一覧として提示される場合、要素の各下位集団もまた開示され、任意の要素をグループから除去し得るものと理解される。一般に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特性などを含んでなると称される場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、このような要素、特性などからなり、またはそれから本質的になるものと理解すべきである。簡潔さの目的で、これらの実施形態は、本明細書の各状況で具体的にはっきりと記載されないこともある。特定の除外が明細書に列挙されるかどうかにかかわりなく、任意の実施形態または態様をクレームから明示的に除外し得ることもまた理解される。例えば、任意の1つまたは複数の薬剤、障害、遺伝子、NAP、対象、またはそれらの組み合わせを除外し得る。
クレームまたは説明が、生成物(例えば組成物)に関する場合、特に断りのない限り、または不合理または矛盾が生じることが当業者に明白な場合を除いて、当てはまる場合、本明細書で開示される方法のいずれかによって生成物を作成するまたはそれを使用する方法、および本明細書で開示される任意の1つまたは複数の目的のために生成物を使用する方法は、本開示に包含されるものと理解すべきである。クレームまたは説明が、方法に関する場合、特に断りのない限り、または不合理または矛盾が生じることが当業者に明白な場合を除いて、当てはまる場合、例えば、方法の1つまたは複数のステップを実施するのに有用な組成物、装置、またはシステムなどの生成物は、本開示に包含されるものと理解すべきである。
本明細書で範囲が示される場合、両端が包含される実施形態、両端が除外される実施形態、および一端が包含され他端は除外される実施形態が提供される。特に断りのない限り、両端が包含されると仮定されるものとする。さらに、特に断りのない限り、またはさもなければ文脈および当業者の理解から明白な場合を除いて、範囲として表される値は、本発明の異なる実施形態で、文脈上例外が明記されていない限り、範囲下限の単位の10分の1まで、任意の特定値または記述される範囲内の部分的範囲を取り得るものと理解される。本明細書で一連の数値が記述される場合、任意の中間値にまたは一連の任意の2つの値で定義される範囲に同様に関連する実施形態が提供され、最低値は最小値としてもよく、最高値を最大値としてもよいこともまた理解される。「少なくとも」、「最大」、「以下」などの語句、または同様の語句が、本明細書の一連の数に先行する場合、文脈上例外が明記されていない限り、語句は様々な実施形態において一覧中の各数に適用されるものと理解される(文脈次第で、例えば百分率として表される値などの値の100%が上限であってもよいものと理解される)。例えば、「少なくとも1、2、または3」は、様々な実施形態で「少なくとも1、少なくとも2、または少なくとも3」を意味すると理解されるべきである。当てはまる場合、任意のおよび全ての妥当な下限および上限が明示的に検討されることもまた、理解される。妥当な上限または上限は、当業者によって、例えば、利便性、経費、時間、努力、利用可能性(例えば、サンプル、薬剤、または試薬の)、統計学的考察などの要素に基づいて、選択されまたは判定されてもよい。いくつかの実施形態では、上限または上限は、特定の値から、2、3、5、または10倍異なる。数値は、本明細書の用法では、百分率として表される値を含む。数値の前に「約」または「およそ」が置かれる各実施形態では、正確な値が列挙された実施形態が提供される。数値の前に「約」または「およそ」が置かれない各実施形態では、値の前に「約」または「およそ」が置かれる各実施形態が提供される。「およそ」または「約」は、特に断りのない限り、またはさもなければ文脈から明白な場合を除き、通常、両方向に1%の範囲内の、またはいくつかの実施形態では、5%の範囲内の、またはいくつかの実施形態では、10%の範囲内の数を含む(数を上回るまたはそれ未満)(このような数が可能な値の100%を容認し難く超える場合を除く)。相反することが明示されない限り、2つ以上の作用を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、方法の作用の順序は、その中で方法の作用が列挙される順序に必ずしも限定されないが、本発明は、その中で順序がそのように限定される実施形態を含むものと理解すべきである。いくつかの実施形態では、方法は、個人または事業体によって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、方法のステップは、方法が集団で実施されるように、2人以上の個人または2つ以上の事業体によって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、方法の1つ、2つ以上の、または全てのステップを実施することを、別の個人または事業体に依頼し、または承認することで、少なくとも部分的に実施されてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、方法の少なくとも1つのステップをそれぞれ実施するように、2つ以上の事業体または2人以上の個人に依頼することを含んでなる。いくつかの実施形態では、方法が集団で実施されるように、2つ以上ステップの能力が協調される。異なるステップを実施する個人または事業体は、相互に連絡を取りあってもよくまたは取りあわなくてもよい。
本明細書で使用されるセクション見出しは、どのようにも限定すると解釈されるものではない。任意のセクション見出し下に報告される対象は、本明細書に記載される任意の態様または実施形態に、適用できてもよいことが明示的に検討される。
本明細書の実施形態または態様は、本明細書に記載される、任意の薬剤、組成物、物品、キット、および/または方法を対象としてもよい。適切な場合は常に、任意の1つまたは複数の実施形態または態様を、任意の1つまたは複数の他の実施形態または態様と自由に組み合わせ得ることが検討される。例えば、相反しない、2つ以上の薬剤、組成物、物品、キット、および/または方法の任意の組み合わせが提供される。特に指示がない限り、または明らかな場合を除いて、このような用語が本明細書に(例えば、その中でこのような用語が妥当な任意の態様または実施形態に)出現する場合は必ず、本明細書のどこにおいても用語の任意の説明または例証が適用されてもよい。
材料と方法
ヒト多能性幹細胞培養
A53T変異(WIBR−IPS−αSynA53T)を保有する患者の皮膚生検、ヒト皮膚線維芽細胞培養、iPS細胞生成、および変異修正については、以前記載されている2。この以前の文献では、A53T iPS系は、WIBR−IPS−SNCAA53Tと称された。WIBR−IPS−αSynTRPLを生成するために、αSyn遺伝子座5に三重化を保有する、Iowa家系の男性患者からの線維芽細胞をParkinson’s Institute(Sunnyvale,CA)から入手した。該当するInstitutional Review Boards and Stem Cell Research Oversight Committeesが、全てのプロトコルを前もって認可した。線維芽細胞は、4つのヒト再プログラム化因子(SOX2、KLF4、OCT4、およびc−MYC)をコードするドキシサイクリン誘導性Cre切除可能多シストロン性レンチウイルス、およびCre切除可能構成的活性M2rtTAトランス活性化因子レンチウイルスを使用して、iPS細胞に再プログラムされた。全てのレンチウイルスは、先行公開52で詳述されるように、再プログラム化処置後に切除された。男性ヒト胚性幹細胞系BG01(NIHコード:BG01;BresaGen,Inc.,Athens)についてもまた、以前記載されている5,34。
本発明者らの多能性幹細胞系は、最初に、hES培地[15%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)、5%KnockOut血清代替物(Invitrogen)、1mMグルタミン(Invitrogen)、1%非必須アミノ酸(Invitrogen)、0.1mM β−メルカプトエタノール(Sigma)。および4ng/ml FGF2(R&D systems)を添加した、DMEM/F12(Invitrogen)]中のマイトマイシンC不活性化マウス胚線維芽細胞(MEF)支持細胞層上で維持された(5%02、3%CO2)。培養物は、手動で、またはIV型コラゲナーゼ(Invitrogen;1.5mg/ml)によって酵素的に、5〜7日毎に継代した。分化に先だつ10〜50継代の間に、細胞系を成長因子低減マトリゲルでプレコートされたプレート(BD Biosciences;DMEM:F12中の1:30)に継代し、(21%O2、5%CO2)inmTESR−1培地(StemCell Technologies)培養し、その後、分化(40〜90継代)まで5〜7日毎に、ディスパーゼ(Invitrogen;1mg/mL)によって酵素的に継代した。核型分析では、細胞系の標準Gバンディング染色体分析を10〜20継代毎に実施した(Cell Line Genetics,Inc)。本発明者らは、2〜4週間毎に、本発明者らの培養物のマイコプラズマ陰性状態を確認した(MycoAlert,Lonza)。
胚様体(EB)形成によるヒト神経誘導
以前公開されたプロトコルを適応した53。分化を開始させるために、0日目に、ヒトESまたはiPS細胞コロニーを5μMのY−27632/ROCK阻害剤(Calbiochem)で30〜60分間前処理し、アキュターゼ(StemPro Accutase;Life Technologies)への5〜10分間の曝露後に単細胞が分離して、次に、N2およびB27を添加したDMEM/F12(Gibco/Life Technologies)である、神経基盤(NB)培地に再懸濁した。N2およびB27補給剤はLife Technologiesから得られ、それぞれ1/2〜1%および1〜2%で使用された。Gemini Bio(N2 Neuroplex;Gem21)からの代案の生成物は、同等の結果を与えた。ビタミンA含有または非含有のB27/Gem21は、本発明者らの細胞系で同様の分化を達成した。細胞は、200ng/mLの二重SMAD阻害剤13組換えヒトNoggin(R&D systems)、および10μMのSB431542(Tocris Bioscience)、ならびに5μMのY−27632を添加したNB培地中に、AggreWell 800マイクロウェル内で播種した(StemCell Technologies;製造会社のプロトコルに従った初回刺激および播種;ウェルあたり2.4x106個の細胞)。NogginおよびSB431542は、神経分化プロトコル全体を通じてこれらの濃度で培地中に残存した。
1日目に培地を1/2交換した。2日目までに、良好に形成した神経化EB(NEB)が、典型的にAggreWells中で観察され、ペトリ皿(4AggreWellウェル/ペトリ皿)内のNB培地に、翌日移した。4日目に、NEBを付着させるために、成長因子低減マトリゲルで被覆されたシャーレ(DMEM:F12中の1:30;BD Biosciences)に移した。Y−27632は、この日以降省いた。5日〜10日目に、付着したNEBを20ng/mLのFGF2(R&D systems)および200ng/mLの組換えヒトDkk1(R&D systems)にさらに曝露した。10日目に、神経ロゼットを切開し(P20ピペットチップ)、DnaseI(Sigma Aldrich)を添加したアキュターゼ中で37℃で10分間インキュベートして、小型細胞塊および単細胞を穏やかに分離させた。洗浄後、ロゼットを、ポリ−L−オルニチンおよびラミニン(BDBiocoat)でプレコートされたプラスチックシャーレ内で、20ng/mLのFGF2を添加したNB培地である神経前駆細胞(NPC)培地(Life Technologies)に、高密度(200,000/cm2)で再播種し、10μmのY−27632を一晩補給した。典型的に、1個のAggrewell 800のウェルは、継代0で少なくとも1〜2つの6ウェルのために十分なNPCを提供した。
その後、生存するNPCを増殖させた。培地は、毎日交換した。これらは、神経分化前に、最大で10回継代し得て、初期継代(p1〜p5)中に、分化能を損なうことなく成功裏に凍結/解凍し得た。凍結培地は、10%FBS(Hyclone)添加NPC培地であった。
単細胞からのヒト神経直接誘導
一実験(図S10B)では代案のプロトコルを使用して、表現型が神経誘導プロトコルと無関係であることを確実にした。この実験では、二重SMAD阻害を用いたが、胚様体形成またはDkk1への曝露なしに、以前記載されているプロトコル13,52,54に忠実に従って、NPCを生成した。
ヒト皮質神経分化
神経分化を開始させるために、NPCをアキュターゼによって分離して、マトリゲルで被覆されたT75フラスコ(CytoOne)上に再播種した。翌日、組換えヒトBDNFおよびGNDF(どちらも10ng/mL;R&D systems)およびジブチリル環状AMP(Sigma;500μM)を添加したFGF−2非含有NB培地である、神経分化(ND)培地で、培地を完全に交換した。その後、培地を隔日で1/2交換した。7〜9日目に、分化ニューロンを単細胞に穏やかに分離させ、0.1%ウシ血清アルブミン(Gibco/Life Technologies)を添加した、予冷したハンクス平衡塩類溶液(HBSS;Gibco/Life Technologies)に再懸濁した。洗浄ステップ後、生化学的アッセイのためにポリオルニチンおよびラミニン(BD Biocoat)プレコート6または24ウェルプラスチックプレート上に;細胞ベース造影アッセイのためにポリ−D−リジン−(2mg/mL、Sigma)およびマウスラミニン(1mg/mL、BD Biosciences)被覆8ウェルカバーガラスチャンバー(Lab−Tek;70378−81)上に、または電気生理学のためにポリ−D−リジンおよびラミニン被覆12mmガラスカバースリップ上に、細胞を播種した。最大生存のために、本発明者らは、初期播種培地中で5μm Y−27632を使用し、本発明者らは高密度で(500,000〜1×106細胞/cm2)播種した。培地は、最大12週間にわたり3日毎に1/2を交換した。
ヒト細胞内ゲノムαSynのPCR変異解析
IPS細胞系、神経前駆細胞、およびニューロンのアイデンティティーを立証するために、PCR変異解析を実施した。これについては、以前記載されている2。簡単に述べると、ゲノムDNAをαSyn/SNCA遺伝子座指向性プライマーで増幅した(SNCA−ゲノム−1F:50−GCTAATCAGCAATTTAAGGCTAG−30;SNCA−ゲノム−2R:50−GATATGTTCTTAGAATGCTCAG−30)。PCR産物を精製し(Qiagen)、Tsp45I(New England BioLabs)によって制限酵素消化を実施して、3%アガロースゲル上で分離した。A53T(G209A)変異は、新規Tsp45I部位をもたらし、131および88bpの2つの追加的な断片をそれに応じて視覚化し得る。
ヒト神経前駆細胞のフローサイトメトリー
アキュターゼ(StemPro,Life Technologies)によるNPCの単細胞解離後にサンプルを調製し、市販の固定化、緩衝液およびブロック試薬(Intracyte Intracellular FACS Kit;Neuromics)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、細胞内抗原について染色した。抗体希釈液については、「市販の抗体」と題された表を参照されたい。解析は、BD LSRIIフローサイトメーターを使用して実施し、BD CellQuest Pro ソフトウェアで処理した。
ヒトニューロンのカルシウムイメージング
室温および5%CO2の環境室(In Vivo Scientific)内のNikon TE−2000S倒立顕微鏡のステージ上で、8ウェルカバーガラスチャンバー(上記を参照されたい)内のニューロンを、5μM Fluo4−AM(Invitrogen、DMSO/20%F−127中の4.55mM新鮮原液からタイロード液で希釈)を含有するタイロード液(mM単位で:129NaCl、5KCl、2CaCl2、1MgCl2、25HEPES、30グルコース、pH7.4)中で、45分間暗所で培養した。溶液を交換し、染料脱エステル化のために、細胞をタイロード液中でさらに45分間室温で培養した。室温でおよび5%CO2雰囲気の環境室内部で造影を実施した。NIS−Elements ARソフトウェアパッケージによって制御されるPhotometrics CoolSnap EZカメラを使用して、標準FITC励起フィルターによって、時系列画像を捕捉した。時系列実験は、1秒間隔の600個の512×512フレームからなった。ほぼ250フレームのベースライン域後に、高KClタイロード液をウェルに付加して、最終KCl濃度を30mMにした。画像スタックをImageJ(NIH)にエクスポートして、蛍光強度を測定し、データをExcel(Microsoft)にエクスポートして解析した。示される測定値は、ΔF=F/Fo(バックグラウンド減算に続く基線上の蛍光増大)に相当する。各トレースは、1つの細胞の正規化蛍光強度変化を経時的に表す。細胞は、染料装入前に撮影された静止画像に基づいて、RFPまたはGFP発現集団のいずれかに盲検的に割り当てた。典型的な極微量が示される。
ヒトニューロンからの電気生理学的記録
蛍光標識A53T(n=36)上でホールセルパッチクランプ記録を実施して、変異修正(n=22)ニューロンをガラスカバースリップ上で共培養し、または個別に播種した。記録マイクロピペット(抵抗3〜6MΩ)に、130 Kグルコン酸塩、20KCl、10 HEPES緩衝液、0.2 EGTA、4 MgATP、0.3 NA2GTP、および10二ナトリウムホスホクレアチン(単位mM)を含有する溶液を充填した。浴溶液は、140 NaCl、4 KCl、10 HEPES、2 CaCl2、10 グルコースおよび2 MgCl2(pH7.4)(単位mM)からなった。Axopatch 200B増幅器(Axon Instruments)を使用して記録を行った。シグナルを採取して、10kHzおよび2kHzでそれぞれフィルターした。電圧固定記録のために、細胞を−100mVに保持して、Vhに戻す前に1000msにわたり5mV増分で、−50から60mVにステップすることで、電流−電圧関係のファミリーを作成した。電流固定記録では、25pAの増分で1000msにわたる−50から125pAへの電流ステップで、活動電位を誘導した。全ての記録は、室温で実施した。
免疫染色法
標準プロトコルに従ったヒト細胞の免疫蛍光標識簡単に述べると、細胞を4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)中で固定して、10%正常ロバ血清(Jackson ImmunoResearch)中で1時間ブロックした。一次抗体を一晩4℃で適用した。適切な共役結合AlexaFluor(Molecular Probes、Life Technologies)二次的抗体を使用した(488、594、647)。いくつかの試験では、ヘキスト33342(Life Technologies)を核染色として使用した。プラスチック表面の細胞造影では、倒立落射蛍光顕微鏡を用いた(Eclipse Ti、Nikon Instruments)。これらの画像をNIS−Elements ARソフトウェアパッケージ(Nikon)で視覚化して処理した。ガラス表面の細胞の造影では、マルチスペクトル回転盤共焦点顕微鏡を用いた(Ultraview Perkin Elmer;Zeiss Axiovert 200倒立顕微鏡;100×Zeiss 1.4 NA油浸レンズ)。これらの画像をVolocityソフトウェアパッケージ(Perkin Elmer)によって視覚化して処理した。
ラット初代皮質培養物
胚は、麻酔された妊娠スプラーグドーリー系ラットから、胎生期18日目に帝王切開により収集した。大脳皮質を単離し、Accumax(Innovative Cell Technologies,Inc)消化によって、37℃で20分間にわたり解離させ、パスツールピペットで磨砕した。ポリオルニチンおよびラミン被覆96ウェルプレートまたは8ウェルカバーガラスチャンバー(Lab−Tek;70378−81)に、B27(Life Technologies)、0.5mMグルタミン、25μMβ−メルカプトエタノール、ペニシリン(100IU/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を添加したneurobasal培地(Life Technologies)中の4×104または8×104個の細胞をそれぞれ播種した。培地の3分の1を3〜4日毎に交換した。ViaLight Plusキット(Lonza)を使用して、細胞生存度の代理マーカーとして細胞ATP含有量を測定した。
ウイルス生成
pLENTI6/V5 DEST(Life Technologies)レンチウイルス発現ベクターを使用して、LacZ、αSynA53T、およびシノビオリンをコードするレンチウイルスを生成した。シナプシンプロモーター下でレンチウイルス発現ベクターをコードするeYFP(20945)およびRFP(22909)は、Addgeneから入手された。レンチウイルスコンストラクトは、発現コンストラクトおよびパッケージングプラスミド(pMD2.GおよびpsPAX2)の293細胞への脂質媒介一過性形質移入を通じて、ウイルス中にパッケージされた。レンチウイルスは、濃縮器製造業者のプロトコルに従って、Lenti−X Maxi精製キットおよびLentiX Concentrator(Clontech)を使用して、精製および濃縮された。レンチウイルス力価は、製造業者のプロトコルに従って、QuickTiterレンチウイルス力価キット(Lentivirus−Associated HIV p24;Cell Biolabs)を使用して判定した。
シナプシンプロモーター下で、mKate2またはC−末端mKate2−標識αSynA53TのいずれかをコードするAAV2は、University of North Carolina、Chapel HillGene Therapy Coreによって生成された。
ラット初代皮質培養物およびヒト神経細胞へのウイルス形質導入
レンチウイルス形質導入では、生体外日数(day in vitro;DIV)5日目において、ウイルスをラット皮質培養物に様々な感染多重度で形質導入した。AAV2では、DIV 5において、ラット初代培養物を5000ゲノムコピー/細胞で感染させた。細胞を感染2週間後に造影した。
シナプシン駆動マーカーで、生きたヒトiPSニューロンを標識するために、MOI 5において、上述のRFPおよびeYFPコンストラクトを発現するレンチウイルスを、約50〜70%コンフルエンスのNPCに感染させた。NPC培地を毎日交換して、NPCをコンフルエンスに増殖させた。上述したように、神経分化はFGF除去によって引き起こされる。マーカーは、分化の2週間以内に明確に視認できる。シノビオリン修飾因子試験では、1、2、または5のMOIにおいて、シノビオリンを発現するレンチウイルスを、分化の8〜12週間目の神経培養物に形質導入した。生化学的分析は、ウイルス形質導入の10日間後に実施した。
ヒトニューロンのNAB2処置
化合物NAB2は、DMSO中の20mM原液として−20℃で保存した。使用直前、それをND培地で希釈した。成熟ヒト神経性培養物(典型的に分化の8〜12週間目)を異なる濃度でNAB2に曝露した。培地を2〜3日毎に完全に交換し、細胞を化合物への曝露の1週間後に分析した。
生細胞内FL2酸化窒素センサー実験
この試験で使用されるFL2センサーは、以前公開されたFL2関連センサー23,24,53,55の非酸性化非エステル化バージョンであった。DMSO(Sigma 276855)中のFL2(バッチSJL#1768)の1mM使用液は、−20℃で少なくとも3ヶ月間にわたり安定している。凍結/解凍回避するために、それは単回使用のためのアリコートで保存された。光への直接暴露は、回避された。使用直前に、2容積の1mM CuCl2を1容量の1mMFL2と組み合せた。(上述の)カバーガラスチャンバー上で培養されたニューロンを予備加温したHBSSで洗浄し、次にHBSSに溶解した10μM染料中で、30分間にわたりインキュベートした(37℃、加湿、5%CO2)。単回洗浄後、新鮮な予備加温したHBSS中で、細胞をさらに20分間培養した。続く2時間にわたり、マルチスペクトル回転盤共焦点顕微鏡を用いてニューロンを造影した(Ultraview Perkin Elmer;Zeiss Axiovert 200倒立顕微鏡;100×Zeiss 1.4NA油浸レンズ)。画像をVolocityソフトウェアパッケージ(Perkin Elmer)によって視覚化して処理した。本発明者らは、再現可能なデータのために、i)これらの培養時間を遵守すること;ii)神経性培養物が健康であり、対照と実験的培養物の相互の一貫性を確実にすること;iii)温度、湿度、およびCO2を維持するステージトップ培養システムによって造影することが重要であることを認めた(LiveCell、PathologyDevices)。
ヒト剖検脳3−NT免疫組織化学的検査
アーカイバルホルマリン固定パラフィン包埋脳(前頭皮質)組織は、Massachusetts Alzheimer's Disease Research CenterおよびUniversity of Pennsylvania Center for Neurodegenerative Disease Researchから入手された。5μm組織切片をマウスモノクローナル抗ニトロチロシン抗体(1:500、クローン1A6、Millipore)を4℃で一晩免疫染色し、二次抗体、Avidin−Biotin Complex培養(Vectastain ABC Elite Kit、Vector Laboratories,Burlingame,CA)がそれに続き、ImmPACT 3,3’−ジアミノベンジジンペルオキシダーゼ基質(Vector Laboratories)によって現像した。免疫染色切片は、光学顕微鏡検査によって検査した。
ヒトiPSニューロン溶解およびEndo H消化
細胞を20mM HEPES、150mM NaCl、10%グリセロール、1mM EGTA、1.5mM MgCl2、1%Triton X−100、pH7.4およびプロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma)およびタンパク質ホスファターゼ阻害剤混合物1および2(Sigma)を含有する緩衝液に溶解し、氷/水スラリー中で20分間インキュベートし、2回の凍結解凍サイクル(80℃/37℃、それぞれ約1分間)がそれに続いた。100,000×gおよび4℃で30分間の超遠心後に、上清を収集した。BCAアッセイ(Pierce)を使用して、タンパク質濃度を判定した。製造業者の指示に基づいて、エンドグリコシダーゼ(Endo)H(New England BioLabs)消化を実施した。簡単に述べると、30〜50μgのサンプルを1μlの変性緩衝液を添加した9μlの反応容積にアセンブルして、100℃で10分間煮沸した。次に2μlのG5緩衝液、1μlのEndo H、および7μlのH2Oを変性反応物に添加して、37℃で2時間インキュベートした。
ウエスタンブロット
タンパク質輸送のために、サンプル緩衝液(20mM Tris ClpH6.8、4%グリセロール、180mM 2−メルカプトエタノール、0.0003%ブロモフェノールブルーおよび2%SDS)中で、タンパク質サンプルを変性させ、10%Tris−グリシンゲルに挿入して、20%MeOHでPVDF膜(BioRad)上に湿潤転写した。Odysseyブロック緩衝液(Li−Cor Bioscences)およびPBSの1:1希釈液によってブロットを室温で1時間ブロックし、穏やかに振盪しながら4℃で一晩の0.1%のTween20(PBST)を含有するOdysseyブロック緩衝液(Li−Cor Bioscences)およびPBSの1:1希釈液中の一次抗体とのインキュベーションが、それに続いた。PBSTによる3回の5分間の洗浄後に、Odysseyブロック緩衝液およびPBSTの1:1希釈液中で、IRDye 680または800(1:10,000、Rockland)に共役した抗マウスまたは抗ウサギIgGなどの二次抗体と共に、ブロットを室温で2時間インキュベートした。PBSTによる3回の5分間の洗浄と2回の水洗後、ブロットをOdyssey定量蛍光性イメージングシステム(Li−Cor Biosciences)内でスキャンして、Odysseyソフトウェアv2.1(Li−Cor biosciences)を使用してバンドを定量化した。
他のウエスタンブロットでは、10または4〜12%Nupage Bis−Trisゲル(Life Technologies)のいずれかにサンプルを挿入して、iBlot(Life Technologies)を使用して転写した。PBST中の4%ウシ血清アルブミンが使用されたαSyn APEXによるビオチン化検出を除いて、ブロッキングはPBST中の5%脱脂粉乳によって実施された。二次抗体および化学発光検出では、SuperSignal West Pico化学発光基質(Thermo Scientific)と共に、HRPに共役した、抗マウス、ウサギIgGまたはアビジンを使用した。
ビオチンスイッチアッセイ
プロトコルは、JaffreyおよびSnyder(2001)39から修正した。細胞は、1%TritonX−100、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDSを含有する、250mM HEPES、1mM EDTA、および0.1mMネオクプロイン、pH7.7中に溶解した。各反応あたり約500μgのタンパク質を使用した。溶解緩衝液の添加によって、溶解産物濃度を0.8ug/μlに調節した。激しく振盪しながら溶解産物を50℃で20分間、0.2%MMTSおよび2.5%SDSでブロックし、冷アセトン沈殿がそれに続いた。ペレットをHEPES 250mM 1%SDS(HENS)緩衝液に溶解した。0.25mMビオチン−HPDP(Pierce)および5mMアスコルビン酸塩によって、ビオチン標識を室温で1.5時間実施し、冷アセトン沈殿がそれに続いた。ペレットを70%アセトンで4回洗浄して、HENS緩衝液に再懸濁した。アセトン沈殿および洗浄ステップを繰り返して、残留遊離ビオチンを除去した。ペレットを再度、HENS緩衝液に再懸濁して、中和緩衝液(25mM HEPES、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5%Triton X−100、pH7.5)を添加した。ストレプトアビジン磁性ビーズ(Pierce)を使用して、回転プラットフォーム内において室温で1〜2時間、ビオチン化タンパク質をプルダウンした。回転させながら5分間にわたり、ビーズを洗浄緩衝液(中和緩衝液+600mM NaCl)で洗浄し、これを4回繰り返した。最終洗浄液後、ビオチン結合ビーズからタンパク質を溶出し、溶出緩衝液(10mM HEPES、pH8.00、1mM EDTA、2%2−メルカプトエタノール)中で振盪しながら1時間インキュベートした。溶離液をウエスタンブロットによって分析した。
酵母株
使用された酵母株としては、HIS3およびTRP1遺伝子座に組み込まれたαSynがあるW303(IntTox):MAT acan1−100、his3−11,15,leu2−3,112、trp1−1、ura3−1、ade2−1、pRS303Gal−α−synWTYFPpRS304Gal−αSynWT−YFP;TRP1およびURA3遺伝子座に組み込まれたαSynがあるW303(HiTox):MAT acan1−100、his3−11,15、leu2−3,112、trp1−1、ura3−1、ade2−1、pRS304Gal−αSynWT−GFPpRS306Gal−αSynWT−GFP;TRP1遺伝子座に組み込まれた1コピーのαSynがあるW303(NoToxαSyn):MAT acan1−100、his3−11,15、leu2−3,112trp1−1、ura3−1、ade2−1、pRS304Gal−αSynWTGFP;TRP1およびURA3遺伝子座に組み込まれた2コピーの空ベクターがあるW303(2×ベクター):MAT acan1−100、his3−11,15、leu2−3,112、trp1−1、ura3−1、ade2−1、pRS304GalpRS306Gal2が挙げられる。
NAB2実験のために使用された酵母株は、w303バックグラウンド(MATαcan1−100、his3−11,15、leu2−3,112、trp1−1、ura3−1、ade2−1、pdr1::kanMX、pdr3::kanMX)にあった。ベクター対照株は、trpおよびura遺伝子座に空ベクターを含有した(pRS304Gal、pRS306GAL)。HiToxαSyn株は、trpおよびura遺伝子座に挿入されたαSyn−GFPを含有した(pRS304GAL−αSyn−GFP、pRS306GAL−αSyn−GFP)。標準的な技術を使用して株を操作し、培地を調製した。
Cox5AおよびCox5B欠失株の生成
使用された酵母株は、w303ポンプ欠失バックグラウンド(MATαcan1−100、his3−11,15、leu2−3,112、trp1−1、ura3−1、ade2−1)にあった。Cox5AおよびCox5B欠失のために使用されるαSyn発現株は、hisおよびtrp遺伝子座に挿入されたαSyn−GFPまたは非標識α−syn(pRS303GAL−αSyn−GFP、pRS304GAL−αSyn−GFPまたはpRS303GAL−αSyn、pRS304GAL−αSyn)およびura遺伝子座があるcenプラスミド上のエストラジオール−誘導性GAL4トランス活性化因子(pRS316GAL4[1−93].ER.VP16)を含有する。Cox5AおよびCox5Bゲノムのヌル株は、Baudin et al.,Nucl.Acids Res.21,3329-3330,1993 and Wach et al.,Yeast 10,1793-1808,1994に記載されるようなPCRベースの遺伝子欠失ストラテジーを使用して、作成した。グルコース培地へのエストラジオール(10nM)の添加によって株を誘導した。
ヨウ化プロピジウムおよびUPRレポーター酵母フローサイトメトリー
UPR誘導および細胞生存度測定のために、酵母細胞にフローサイトメトリーを実施した。UPRレポーターpRS305−SR(David Pincus)は、Cox5AまたはCox5Bに欠失を有するαSyn発現酵母株に組み込んだ。SRは、Ire1エンドヌクレアーゼ活性のレポーターである。これは天然HAC1プロモーターから発現されて、第1のエクソンがGFPで置換されていること以外は、HAC1 mRNAと同一である56。フローサイトメトリーで使用するための単一組み込み体をqPCRによって同定した。簡単に述べると、エッペンドルフthermomixerを使用して、200μlの誘導細胞を穏やかに振盪(750rpm)しながら、30℃で20分間インキュベートした。これらの細胞を96ウェルプレートに移し入れてEasyCyteフローサイトメーター(Guava Technologies)を使用して、それらを検査した。緑色チャンネルでGFP蛍光を定量化することで、UPR誘導をモニターした。細胞生存度をモニターするために、2μg/mLのヨウ化プロピジウムを200μLの誘導細胞に添加して、PI陽性細胞を赤色チャンネルで同定した。
実施例1:モデル皮質シヌクレイン病に対するαSyn iPS誘導皮質ニューロン
神経病理学的に、認知症は、皮質ニューロンの喪失と関連して、通常、特定タンパク質の凝集を伴う。例えば、皮質ニューロン内のαSyn凝集は、パーキンソン病認知症として知られている、一般にパーキンソン病(PD)に伴う認知症と関連し、レビー小体型認知症と密接に関係している。PD(「パーキンソン症」)の特徴的な運動徴候に加えて、浸透率の高い主要なα−Syn中の点変異または遺伝子コピー数増加もまた、認知症と顕著に関連する1。これらの知見は、α−Synおよびそれに関連する皮質神経病理と、認知性機能不全との間の因果関係を確立し、動物および細胞モデルの作成を容易にする。
シヌクレイン病の有望な細胞モデルは、成人体細胞の誘導多能性幹(iPS)細胞への再プログラム化を伴い、次にこれらの細胞のニューロンへの分化は、患者にとって直接的関連性がある。本発明者らは、最近、αSynに優勢で浸透率の高いA53T点変異を保有する「Contursi家系」の女性構成員から、このような細胞を作成した。表現型に多大な影響を及ぼし得る遺伝的背景効果を徹底的に制御するために、本発明者らは、病原性スレオニン残基のアラニンに戻すジンクフィンガー媒介修正によって、この患者から同質遺伝子型対照細胞を作成した2,3。本明細書で、本発明者らは、皮質ニューロンに分化したこれらの同質遺伝子型系統を利用して、疾患関連表現型を発見し、それらを遺伝的背景効果から識別する。
本明細書で、本発明者らは、可能な疾患修飾剤の検索におけるヒトiPS誘導細胞の使用を妨げてきた他の2つの問題に対する解決策を提示する。第1に、自然発生的病原性遺伝子変異に帰属される表現型を単独で確立することは困難であった。疾患進行は、ヒトでは数十年かけて起こるため、以前の調査は、培養ニューロンを酸化ストレス要因などの毒素に曝露することで変性表現型を加速してきた4−6。第2に、複数の要因が、遺伝的および化学的修飾因子のハイスループットスクリーニングにおけるこれらの細胞の使用を妨げる:これらの細胞の作成には、努力を要して費用がかかり、細胞培養物条件での経時的な細胞変化、および神経分化には一貫性が欠如し得る。
本発明者らは、これらの問題に対処するために、本発明者らが開発した出芽酵母プラットフォームに注目し、その中ではαSyn発現が、高度に同期的で強い毒性をもたらす7,8。酵母細胞は、基本的に保存された真核生物細胞生態、比類のない遺伝的扱いやすさ、およびハイスループット化学的化合物スクリーニングの受け入れやすさの利点を提供する。重要なことには、酵母中のαSyn病理生物学は、αSynの巣状滞留、ミトコンドリア機能不全、酸化的ストレス、αSyn媒介小胞輸送欠陥、遺伝的および環境リスク因子とのつながり、およびαSyn用量に対する鋭敏な感受性をはじめとする、ニューロン内の病的表現型を再現する7−10。本発明者らによる、5500個の読み取り枠(酵母プロテオームの85%)の以前の不偏酵母スクリーニングは、αSyn毒性の強力な修飾因子を同定した。本明細書で、本発明者らは、これらの修飾因子の2つを詳細に調査する。本発明者らは、本発明者らによるそれらの酵母中の生物学分析が、外来性ストレッサーおよび毒素の不在下で、パーキンソン患者皮質ニューロン中の初期病的表現型の発見をもたらし得ることを示す。さらに本発明者らは、ハイスループット酵母スクリーニングで同定された化合物が、酵母および患者ニューロン中で、類似欠陥を修正し得ることを示す。
A53T患者脳の神経病理学的分析は、脳皮質深層内の顕著な神経炎症病理学およびニューロン喪失を確立した11,12。確かに、この表現型は、Contursi家系患者の2人の罹患した高齢同胞で確認され、本発明者らは、彼らの細胞を再プログラムした(L.Golbe、私信)。皮質シヌクレイン病のモデルを作成するために、本発明者らは、この女性のiPS細胞を皮質ニューロンに分化させた。
2つの変異A53TiPS細胞サブクローン、および2つの変異修正サブクローン(図1A)を独立して最大90回継代し、正常な核型を維持した(図17)。皮質神経細胞分化は、以前公開されたプロトコル13,14を組み込むことで達成された(図18A)。このようにして得られた神経前駆細胞(NPC)は、Pax6、ネスチン、Forse−1、およびOtx−2の発現によって実証されるように、前側/前脳になる運命である(図18、AおよびB)。次に、FGF2除去によって神経分化を開始して、ニューロン特異的クラスIIIβ−チューブリン(Tuj1;図1B)について免疫陽性である神経突起の生成によって、これらの細胞の有糸分裂後ニューロンアイデンティティーを確認した。本発明者らは、これらの神経性培養物を12週間にわたり分析した。この時間内に、培養物は、主にグリアと混合した興奮性グルタミン酸作動性ニューロンからなった(図1、B;図19、A〜C)。フローサイトメトリーによれば、>90%のTuj1陽性ニューロンは一貫してVGLUT1(小胞グルタミン酸輸送体−1)−陽性であり、末梢神経系マーカーマーカーペリフェリンは、ないに等しく発現した(データ未掲載)。
確定的に同定するために、汎ニューロンシナプシンプロモーター制御下にあるeYFPまたはRFPのいずれかを発現するレンチウイルスで、本発明者らの培養物中のニューロンNPCを分化前に感染させた(図19D)。共培養されたA53Tおよび修正ニューロンは、分化の8週間前後から電気的に活性であった。それらは、活動電位をはじめとして、同様のカルシウム流動および電気生理学を示した(図19、EおよびF)。神経分化の12週間目に、本発明者らは、大多数のニューロンが、発達中の皮質深部層に特徴的な転写因子であるTbr1に対して、免疫陽性であることを発見した(図1C)15。したがって本発明者らが作成した細胞は、初期Syn−関連皮質病態を調べるための妥当な基質を与える。
実施例2:α−Syn誘導ニトロソ化ストレスは酵母からヒト皮質ニューロンに至るまで保存されている。
Fzf1は、本発明者らの以前の不偏酵母遺伝学的スクリーニングでαSyn毒性のサプレッサーと同定された、転写因子である(図2Aで確認された)。ニトロソ化ストレス応答の転写調節因子としてのその機能は、確立されている16。ニトロソ化ストレスは、酸化窒素(NO)および関連酸化還元形態をはじめとする、反応性窒素種(RNS)によって誘導される17。RNSは、チロシン残基のニトロ化(ニトロチロシン)およびシステイン残基のS−ニトロシル化をはじめとする、翻訳後修飾タンパク質を通じて細胞過程を改変し得る17。本発明者らは、シヌクレイン病患者からの剖検脳内のタンパク質S−ニトロシル化およびニトロ化が増大されることから、本発明者らのプラットフォーム全体にわたり、詳述な研究のための第1の修飾因子としてFzf1を選択する18−20。しかし、ニトロソ化ストレスとαSynそれ自体との間に誘導因果関係があるかどうかは、これまで知られていなかった。
αSynを発現する酵母細胞内で、タンパク質にニトロソ化損傷が生じるかどうかを判定するために、本発明者らは、ニトロチロシンに対して特異的な抗体を利用した。この抗体は、哺乳類細胞のウエスタン分析で広範なタンパク質を検出し、このような細胞におけるその効用は限定される。しかし酵母中では、ベクター対照株中のバックグラウンドが最小であることを、本発明者らは発見した。これにより、αSynに応答した強力なタンパク質ニトロ化が、検出できるようになった(図2B)。
αSyn毒性は、酵母およびヒトの双方で用量依存的である。以前記載されたように、本発明者らは、NoTox(低い)、IntTox(中等度)、およびHiTox(高い)の3つの異なるレベルで、αSynを酵母中で発現させた9。タンパク質のニトロ化のレベルは、毒性と同一の用量感受性を示した(図2B)。
ニトロ化は、酵母中におけるαSyn毒性に対する、高度に特異的な反応である。Abetaペプチド、TDP−43、polyQ−伸長ハンチンチン、およびFusをはじめとする他の神経変性疾患タンパク質が、同等の毒性レベルで発現した際には、それは顕著ではなかった(図2B)。この発見は、Fzf1がαSyn毒性を抑制するが、これらの他のタンパク質の毒性は抑制しないという、本発明者らの以前の遺伝学的スクリーニングからの結果に一致する(Ref.21および本発明者らの未発表データ)。
αSynとニトロソ化ストレスの間の関連性を直接試験するために、本発明者らは、最初に、Fzf1が、αSynによって誘導される異常なタンパク質ニトロ化を低下させるかどうかを質問した。確かに、ニトロ化は大きく抑制された(図2C)。次に、本発明者らは、酵母中のNOレベルの変化が、αSyn誘発毒性に影響を与えるかどうか質問した。NOシンターゼは、生物種を越えて概して保存されるが、酵母細胞はこのファミリーのタンパク質をコードしない。それに代えて、NOは、ミトコンドリア呼吸鎖を通じて産生された。酵母細胞は、チトクロームcオキシダーゼ(COX5)の異なるイソ型を切り替えることで、NO産生を調節する。実験的に、NO産生は、2つのイソ型の欠失によって操作され得て、COX5Aの欠失がNOを増大させる一方で、COX5Bの欠失はNOを低下させる22。確かに、これらの操作は、αSynを発現する酵母細胞内のニトロチロシンレベルを増大および低下させた(図2D)。それに比例して、それらは毒性を増大および低下させた(図2、DおよびE)。したがってニトロソ化ストレスは、αSyn毒性の単なる結果ではなく、毒性の重要な貢献者である。
哺乳類細胞内では、RNSは、化学的センサーによって検出され得る。ニューロン内におけるαSynとニトロソ化ストレスの間の可能な関係を調査するために、本発明者らは、他のRNSよりもNOを優先的に検出する、銅およびフルオレセインベースのセンサーであるFL2を用いた23。本発明者らは、最初に、ラット初代皮質ニューロンでFL2の使用を最適化した。ラット初代培養物は、中程度の複雑度があるαSyn毒性の高度に一貫性があるニューロンモデルを提供し、したがってヒトiPS誘導ニューロンよりも、アッセイ開発により適している。
本発明者らは、最初に、合成NO供与体であるDETA−NONOateへの曝露が、強力なFL2応答を誘発したことを確認した(図20)。次に、本発明者らは、汎ニューロンシナプシンプロモーター制御下にある、mKate2標識されたヒトαSynA53T、またはmKate2単独をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)で、培養物を感染させた。これらの細胞内では、外来性に発現したαSynが神経突起内で予想された点状局在化を示したのに対し、mKate2単独は、拡散性に局在化した(図21)。αSynの過剰発現は、細胞体内で顕著に核周囲分布するFL2シグナルを増大させた(図3、AおよびB)。このシグナルは、部分的に小胞体に同時局在化した(ER;図3C)。本発明者らの酵母データは、NOのミトコンドリア起源を示唆する一方で、ミトコンドリアに対するFL2の強力な内在的親和力24は、本発明者らが、この細胞小器官との同時局在化について結論を下すことを妨げた。さらにこれらの培養物中の高密度の細胞突起および混合細胞集団は、明確に画定されたニューロン細胞体外における強度測定を妨げた。
ラットニューロン内で条件を最適化させたところで、本発明者らは、分化8週間目にあるパーキンソン患者由来皮質ニューロンに注意を向けた。A53Tおよび変異修正ニューロンの2つの同質遺伝子型対を並行して分化させた。細胞を前もってシナプシンRFPで標識して、ニューロンの同定を容易にした(図19Dを参照されたい)。ニューロン内FL2シグナルは、修正ニューロンと比較して、A53Tニューロン内で増大し、これは細胞体内で最も容易に視覚化された(図3D)。齧歯類ニューロンと全く同じように、このシグナルとERマーカーの部分的同時局在化があった(図示せず)。
ニトロソ化ストレスが、A53T患者脳内の皮質ニューロン内でも出現したかどうかを判定するために、本発明者らは、抗ニトロチロシン抗体19で、同一家系内の別の対象の前頭皮質からの組織を免疫標識した25。これらの皮質ニューロン内およびニューロパイル内でびまん性の細胞質ニトロチロシン染色の強力な増大があり(図3E)、患者のiPS由来の皮質ニューロンにおける、本発明者らが発見した病理学的相関を提供した。
実施例3:2つのパーキンソン家系からの皮質ニューロン内αSyn誘導ERAD基質蓄積およびERストレス
次に本発明者らは、本発明者らの以前のゲノム規模酵母スクリーニングで、αSyn毒性のサプレッサーと同定された、遺伝子Hrd1に注意を向けた26(図4Aで確認された)。哺乳類中でシノビオリン(Syvn1)として知られているHrd1は、それを通じて誤って折り畳まれたタンパク質がERから除去される過程である、小胞体関連分解において重要な役割を果たす、高度に保存されたE3ユビキチンリガーゼである。本発明者らのスクリーニングにおけるHrd1の回収は、本発明者らの酵母シヌクレイン病モデルにおけるERAD機能不全を強く意味した。確かに本発明者らは、以前、このモデルで、ERAD基質の蓄積10、そしてこれが転写ERストレス応答を伴うこと26、そしてこれらの基質のERゴルジ体間輸送の欠陥10を示した。ERストレスはまた、最近、遺伝子組換えマウスシヌクレイン病モデルで説明されている27。
本発明者らのパーキンソン患者皮質ニューロンに注意を向けて、本発明者らは、最初にERAD基質が蓄積するかどうかを質問した。本発明者らは、神経変性と高い関連性がある、グルコセレブロシダーゼ(GCase)、ニューロセルピン、およびニカストリンの3つのERAD基質を検査した。ゴーシェ病タンパク質であるGCaseの変異は、とりわけ最も頻度の高いPDリスク因子であり、独立してこの疾患における認知機能障害リスクを与える28,29。さらにαSynの過剰発現は、ERを通じたGCaseの順方向輸送を妨害する30。ニカストリンは、アルツハイマー病関連プレセニリン複合体の構成要素であり、マウスではそのノックアウトが記憶障害および皮質神経変性を引き起こす31。ニューロセルピンは、皮質神経病理がある稀な形態の認知症で変異する32。本発明者らは、酵素エンドグリコシダーゼH(Endo H)による切断に対するN−グリコシル化の感受性に基づいて、これらのタンパク質のERおよびER後形態を識別するアッセイを利用した。ER形態がEndo Hに対して感受性であるのに対し、ER後形態は抵抗性である30。ER後とER形態の比率は、ERAD中の変化および/またはERからの順方向小胞輸送の定常状態測定値を提供する。
本発明者らは、分化4週間および8〜12週間目の本発明者らのA53Tおよび修正iPSサブクローンから分化した、皮質ニューロンを分析した。GCaseのER形態およびニカストリンは、分化4週間目のA53Tニューロン内に蓄積し、これは、8〜12週間目により明白であった(図4、BおよびC;図22)。これらの2つのERAD基質ではまた、時間経過と共に、A53T細胞に特異的なER後/ER形態比の進行性低下もあった(図4、BおよびD;図22)。ニューロセルピンはER内に蓄積せず、本発明者らが検査した時点ではそのER後/ER形態比は変化しなかったため、これらの欠陥は基質特異的と思われる(図4、B〜Dおよび図22)。特に、Tuj1をはじめとするニューロン特異的マーカーのレベルは、系統間で同様であった(図22Cおよび図示せず)。これらの知見は、複数の分化ラウンドで高度に一貫性があり、2つの異なる分化プロトコル間で再現可能である(図22C)。したがってA53T変異は、ERAD機能不全および/またはERを出るこれらのタンパク質の輸送欠陥を引き起こす。
ERストレスは、このような欠陥の予想される帰結である。確かに、ERストレスの2つの特徴であるPDIおよびBIPのレベルは、分化の12週間目に増大した。しかしERストレスによって誘導されるアポトーシスの経路構成要素であるCHOPのレベルは、変化しなかった。これは、観察された表現型が、病変初期段階に相当することを示唆する(図4E)。
A53T αSyn変異がある患者を越えて本発明者らの知見を広げるために、本発明者らは、野生型αSyn遺伝子の三重化を保有して、パーキンソン症に加えて初期認知機能不全を発症した「Iowa家系」の男性患者から、iPS細胞を作成した33。EBベースのプロトコル(図18)を使用して、これらのiPS細胞(WIBR−IPS−αSynTRPL;図17)神経化して、皮質ニューロンを作成した(図示せず)。前述の男性ヒト胚性幹細胞系BG01から作成された老化皮質ニューロン34が、対照の役割を果たした(図4B)。確かに、この患者からのニューロン内で、ERAD基質は蓄積して(図4Bおよび図22A)、ERストレスは増大し(図4E)、A53T細胞を綿密に表現型模写する。
実施例5:齧歯類およびヒトiPS細胞シヌクレイン病モデルで、Hrd1/Syvn1はERAD基質蓄積を逆転させる。
上述のように、αSyn毒性の酵母修飾因子Hrd1は、優れた哺乳類ホモログSyvn1を有する。αSyn病原性にERADを結びつけたところで、本発明者らは、Syvn1がニューロン内で病的表現型を逆転させ得るかどうかを質問した。確かに、Syvn1の同時発現は、初代ラット皮質ニューロン内において、用量依存的様式でαSyn毒性をレスキューした(図4F)。さらに、レンチウイルスのSyvn1発現は、成熟形態のレベルに影響を及ぼすことなく、A53T患者皮質ニューロン内でニカストリンのER蓄積を低下させた(図4G)。GCaseに対する効果は、あまりはっきりしなかった(図示せず)。
実施例6:αSyn誘導ニトロソ化とERストレスには因果関係がある
酵母中で遺伝的および転写データを結びつける、以前のバイオインフォマティクスアプローチは、転写因子Fzf1(図2Aを参照されたい)がαSyn毒性に応答して、ERADシャペロンであるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を誘発することを示唆した26。これは、αSyn過剰発現ニューロン内でERの近くにNOが蓄積するという本発明者らの発見と共に(図3C)、ニトロソ化とERストレスの間の可能な関係の実験的調査を促した。これを実施するために、本発明者らは、遺伝的に扱いやすい酵母シヌクレイン病モデルに戻った。
上述のように、αSyn毒性の文脈でCOX5イソ型を操作することは、酵母中のNOレベルを調節し得る(図2、DおよびE)。したがって本発明者らは、ERと空胞の間で輸送される、良好に特性解析されたERAD基質であるカルボキシペプチダーゼY(CPY)の未成熟形態の蓄積に対する、COX5イソ型操作の効果を調べた10。COX5Aを欠失させることでNOレベルが増大する場合、CPYはER内に顕著に蓄積した(図5、AおよびB)。さらに、この遺伝子操作は、折り畳まれていないタンパク質応答を強く増大させ(図5C)、ERAD機能不全およびERストレスに一致した。逆に、COX5Bの欠失によるNOレベル低下は、この応答を低下させた(図5C)。したがってニトロソ化およびERストレスは、αSynの密接に関連する機構である。
実施例7:バロシン含有するタンパク質(VCP)は、患者ニューロン内でニトロシル化される
S−ニトロシル化は、重要なシステインを修飾することによって、多数のタンパク質の機能を調節する。ニトロソ化およびERストレスは、重要なERAD関連酵素のS−ニトロシル化を通じて、ほぼ確実な関連がある。確かに、S−ニトロシル化は、このような2つの酵素PDI20およびVCPの機能を抑止して35,36、PDにおけるニトロソ化とERストレスとの直接的関係は、以前、PD患者脳内におけるPDIS−ニトロシル化の発見によって示唆されている20。CDC48またはp97としてもまた知られているVCは、特別の関心であった。VCPは、ERADにおいて、ERからのタンパク質抽出の機械力を提供するAAA型のATPアーゼである。重要なことには、VCPをコードする遺伝子の変異は、顕著な皮質病変がある特徴的な認知症を引き起こす37。さらにVCPは、シヌクレイン病において、αSyn凝集体内に共局在化する38。したがって本発明者らは、パーキンソン患者ニューロン内にERAD関連酵素のS−ニトロシル化が出現するかどうか質問した。
タンパク質S−ニトロシル化は非常に不安定であるが、いわゆる「ビオチンスイッチ」アッセイによって、哺乳類細胞内で検出され得る。全細胞タンパク質中の遊離チオール基は、細胞溶解直後にアルキル化剤でブロックされる。ニトロシル化チオールはこのブロックステップから漏出して、引き続くステップでビオチン化システインに変換される。次にビオチン化タンパク質は、ストレプトアビジンビーズとの結合によって収集され、溶出されて、ウエスタンブロット法によって同定される39。本発明者らがこのアッセイをA53Tおよび変異修正皮質ニューロンで用いた場合、PDI収率は、そのS−ニトロシル化状態を判定するには不十分であった(図示せず。しかし方法は、修正対照と比較して、A53Tニューロン内のVCPのS−ニトロシル化の顕著な増大を明らかにした(図5D)。さらに、アッセイは、変異修正対照ニューロンと比較した、A53T患者由来皮質ニューロンにおけるクラスリン重鎖およびHsc70S−ニトロシル化の増大を明らかにした(データ未掲載)。興味深いことに、ニューロンアポトーシスの複数パラダイムでニトロシル化の増大を示すタンパク質であるGAPDHのS−ニトロシル化状態には変化がなかった40。
実施例8:酵母スクリーニングで同定された小分子修飾因子は患者ニューロン内の病的影響を逆転させる
酵母中疾患のモデル化の強力な側面は、不偏で大規模な小分子スクリーニングを実施する能力である。酵母およびヒトニューロンで高度に保存された生物学的表現型を同定したところで、本発明者らは、酵母スクリーニングで同定された小分子がそれらを逆転させ得るかどうかを質問した。具体的には、本発明者らは、180,000個を超える小型分子(図7)のスクリーニングから回収された、N−アリールベンゾイミダゾール(NAB2)を試験した。
同時係属の米国特許出願第61/794,870号明細書に記載されるように、この化合物は、酵母、蠕虫、および齧歯類のニューロンシヌクレイン病モデルで、αSyn毒性をレスキューした。酵母中における化学遺伝解析は、NAB2の目標空間の不可欠な構成要素として、ユビキチンリガーゼRsp5/Nedd4を同定した(米国特許出願第61/794,870号明細書、および参考文献41)。Rsp5およびそのヒトホモログNEDD4は、酵母およびニューロンの双方で、タンパク質輸送およびERADに関与するとされる42,43。実際に、NAB2は、用量依存的様式で、酵母ER内におけるCPYの蓄積を低下させた(図6A)。著しく、NAB2はまた、酵母中のタンパク質ニトロ化の特異的αSyn誘発性増大も低下させた(図6A)。さらに、NAB2は、ContursiおよびIowa家系の双方からの患者ニューロン内で、用量依存的様式で、post−ERを増大させ、ニカストリンおよびGCaseの未成熟形態を減少させた(図6Bおよび図23)。ニカストリンニカストリン最後に、センサーFL2による測定で、NAB2は、変異修正対照ではそのレベルに影響を及ぼすことなく、A53T患者ニューロン内でNOレベルを大きく低下させた(図6C)。さらに、Nedd4の過剰発現は、A53T患者ニューロン内でNAB2を表現型模写し(図6D)、ニトロソ化ストレスおよびERAD基質蓄積/ERストレスを回復させた。
この研究で、本発明者らは、患者iPS細胞由来ニューロンに関連性がある酵母細胞の扱いやすさを活用して、神経変性疾患のための広く応用できる実用的発見パイプラインを確立する(図24)。本発明者らのアプローチには、10億年間の進化を越えたαSyn毒性の並外れた保存によってパワーが与えられた。本発明者らは、それぞれ特徴的な強みがある3つの細胞プラットフォームを協調させた。酵母培養物は、αSynの高度に同期的な誘導のために、遺伝的およびエピジェネティック的に均一の細胞集団を与える。これは、初期表現型の同定および大規模不偏遺伝的および小分子スクリーニングを可能にした。ウイルス形質導入されてαSynを過剰発現する初代培養ラット皮質培養物は、ニューロンアッセイ開発のための高度に一貫性があり時間同期する培養物を提供する。ヒトiPS誘導ニューロンは、患者との直接的関連性を提供し、特に適切な対照細胞と比較して(例えば変異修正対照細胞)、複雑なヒト病理生物学における表現型の文脈で調査できるようにする。次にヒト神経細胞における検証は、より単純なモデル系における詳細な機構研究を動機づける。
酵母スクリーニング中で回収された遺伝的修飾因子によって主に誘導されて、本発明者らは、ストレッサー不在下で、患者由来皮質ニューロン内の表現型を同定し、したがってそれは単独で病原性変異に帰属され得る。本発明者らの酵母中の機構的研究は、ニトロソ化ストレスをERストレスに結びつけ、これらの双方の病的過程をαSynに結びつけた。この関係を同定することは、患者ニューロン内でVCPニトロシル化を同定する道を拓いた。酵母細胞は、NOシンターゼを有しない。任意の理論による制限は望まないが、本発明者らがαSynについて探索した細胞病理は桁外れに保存されているため、ニューロン内のαSyn誘導ニトロソ化ストレスもまた、酵母中におけるのと同様に、ミトコンドリア呼吸鎖に依存する可能性がある。本発明者らの酵母中の遺伝的および生化学的データは、本発明者らが明らかにした特定タイプのニトロソ化ストレスが、αSynに高度に特異的であることを示唆する。さらに複数のその他の神経毒性パラダイムにおけるS−ニトロシル化タンパク質であるGAPDH40が、これらの細胞内で異常にS−ニトロシル化されないことから、パーキンソン患者ニューロンにおける本発明者らのデータもまた、この特異性を指摘する。
さらに、異種間のプラットフォームは、病的表現型を酵母からヒト細胞に復帰変異させる、遺伝子および小型分子を発見できるようにする41。本発明者らは、この研究でαSynに焦点を合わせる一方で、他の神経変性疾患もまた酵母中でモデル化されている9。β−アミロイドおよびTDP−43によって誘発される特徴的なタンパク質毒性は、それぞれ酵母とヒト遺伝的修飾因子の間で顕著な類似点がある47,48。本発明者らのアプローチは、これらへのおよびタンパク質毒性によって特徴付けられるその他の神経変性疾患への応用に適している。
実施例9:ドキシサイクリン誘導性遺伝子組換えαSyn過剰発現hESc系の生成
PPP1R12C遺伝子のAAVS1「セーフハーバー」遺伝子座を対象とするTALENは(Hockemeyer,D.,et al.(2011)Nature Biotechnology 29(8):731-4),NIH Embryonic Stem Cell Registryに列挙される2つのhESc系(WIBR−1、WIBR−3)を標的化するようにデザインされた。逐次標的化では、1つの対立遺伝子がM2rtTAテトラサイクリントランス活性化因子(CAAGSプロモーター)によって標的化され、別の対立遺伝子がTetR応答性プロモーター下のαSyn−WT(非標識またはmKate2標識)導入遺伝子によって標的化される。複数のクローンは、双方のコンストラクトについて得られる。標的化hESCおよびニューロン(図11A)は、ドキシサイクリン曝露によってαSyn発現を強く活性化し、ドキシサイクリンありまたはなしで同一ニューロン培養物を比較できるようにする。
実施例10:PD関連変異を含有するiPS細胞からのドーパミン作動性(DA)ニューロン生成
中脳DAニューロンは、パーキンソン症に関連するPDおよびその他の障害によって、典型的に影響を受ける。iPS細胞は、上述のA53T変異があるPD患者から生成された。iPS細胞を12週間加齢することで、Kriks,S.,et al.,(2011),Nature,Vol.480,pp.547-553に記載される底板プロトコルを使用して、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)およびFOXA2について二重陽性である、多数の中脳タイプドーパミン作動性ニューロンを生成した(図11B)。これらのDAニューロンは、PDの妥当なモデルを提供し、例えば(例えば酵母表現型に対応する)表現型を同定し、または候補治療薬を評価するのに使用してもよい。
実施例11:酵母シヌクレイン病モデル中で第2のパーキンソン症遺伝子の酵母ホモログを欠失させることは毒性を悪化させる
ヒトVPS35の変異が、特定形態のPDがある患者で(他の研究者らによって)同定されている。酵母シヌクレイン病モデル(野性型α−Synを発現する酵母)中のVPS35欠失の効果を評価した。図13(A)に示されるように、VPS35の欠失は、αSyn毒性を増強するが、対照株では効果を有しない。VPS35−欠損αSyn株への野性型酵母(y)またはヒト(h)VPS35の再導入は、図13の右パネルに示されるように生存度を回復させる。疾患関連点変異D620Nのヒト遺伝子への導入は、この相互作用に関するシステムの相同性および妥当性を強調しない(図13、右パネル)。グルコース(Glu)からガラクトース(Gal)は、これらの株で、αSynおよびVPS35導入遺伝子の発現を誘導する。
同等物および範囲
別段の指示がありまたはさもなければ文脈から明白な場合を除いて、特許請求の範囲では、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、1つまたは2つ以上を意味してもよい。グループの1つまたは複数の構成要素間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、別段の指示がありまたはさもなければ文脈から明白な場合を除いて、1つ、2つ以上、または全てのグループ構成要素が存在し、用いられ、またはさもなければ所与の生成物または方法に関連する場合に、満たされると見なされる。本発明は、その中でグループの正確に1つの構成要素が、存在し、用いられ、またはさもなければ所与の生成物または方法に関連する、実施形態を含む。本発明は、その中で2つ以上の、または全てのグループ構成要素が、存在し、用いられ、またはさもなければ所与の生成物または方法に関連する実施形態を含む。
さらに、本発明は、列挙されるクレームの1つまたは複数からの1つまたは複数の制限、要素、条項、および記述的用語が別のクレームに導入される、全てのバリエーション、組み合わせ、および並べ替えを包含する。例えば、別のクレームに従属する任意のクレームは、同一基本クレームに従属する任意のその他のクレームにある、1つまたは複数の制限を含むように修正され得る。要素が、例えばマーカッシュグループ形式で一覧として提示される場合、要素の各下位集団もまた開示され、任意の要素をグループから除去し得る。一般に、本発明、または本発明の態様が特定の要素および/または特性を含んでなると称される場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、このような要素および/または特性からなり、またはそれから本質的になるものと理解すべきである。簡潔さの目的で、これらの実施形態は、本明細書で具体的にはっきりとは記載されていない。「含んでなる」および「含有する」という用語は、限定がないことが意図されて、追加的な要素またはステップの包含を許容するにもまた留意されたい。範囲が示される場合、両端が包含される。さらに、特に断りのない限り、またはさもなければ文脈および当業者の理解から明白な場合を除いて、範囲として表される値は、本発明の異なる実施形態で、文脈上例外が明記されていない限り、範囲下限の単位の10分の1まで、任意の特定値または記述される範囲内の部分的範囲を取り得る。
本出願は、様々な交付済み特許、特許出願公開、学術誌論文、およびその他の文献に言及し、それらは全て参照によって本明細書に援用される。援用される参考文献のいずれかと本明細書の間で矛盾がある場合、明細書が効力を持つものとする。さらに、先行技術に含まれる本発明の任意の特定の実施形態は、クレームの任意の1つまたは複数から明示的に除外されてもよい。このような実施形態は、当業者に知られていると見なされるため、たとえ除外が本明細書で明示的に記載されていない場合でさえ、それらは除外されてもよい。任意の特定の本発明の実施形態は、先行技術の存在に関連するかどうかに関わりなく、任意の理由で、任意のクレームから除外し得る。
当業者は、単に通例の実験法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識し、または見極めることができるであろう。本明細書に記載される実施形態の範囲は、上の説明に限定されることは意図されず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載される。当業者は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の精神または範囲を逸脱することなく、この説明に様々な変更および修正を加えられることを理解するであろう。