JP2019037371A - 針刺し栓体用成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工性や衛生性が良好な熱可塑性エラストマーを用いた針刺し栓体用成形体であって、成形方法や形状等に制約がなく、いかなる形態で用いても優れた耐液漏れ性を発揮する針刺し栓体用成形体、その製造方法及び該成形体用いた栓体を提供すること。【解決手段】スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層(A層)と熱可塑性樹脂Bを含む層(B層)とが、界面で熱融着した層構造を有する、針刺し栓体用成形体であって、前記A層よりも前記B層のA硬度が10以上高い、針刺し栓体用成形体、スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層と熱可塑性樹脂Bを含む層とを熱融着する工程を含む、前記針刺し栓体用成形体の製造方法、前記針刺し栓体用成形体を、A層とB層の熱融着面において、A層からB層に向けて針を刺すように配置した、針刺し栓体、及び前記針刺し栓体用成形体を用いた、医療用輸液容器の栓体。【選択図】なし
Description
本発明は、流動体を封止し、中空針を刺し通すことによって封止状態を保ったまま流動体の出し入れができる、針刺し栓体用成形体、その製造方法及び該成形体を用いた栓体に関する。
輸液バッグや、バイアル瓶、真空採血瓶等の流動体を封入する容器においては、柔軟な素材で形成された栓で容器口部を封止し、栓に中空針を刺し通すことによって容器の密封状態を保ったまま流動体の出し入れをすることが従来から行われている。このとき、栓には針を刺したり抜いたりした跡からの液漏れがないことが要求され、従来は天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等の加硫ゴムによって栓が作られてきたが、加硫ゴムには架橋剤や金属化合物等の添加物が残留することが避けられず、医療用の薬液を入れる容器では、ゴム栓と容器内の薬液とが直接接触すると、衛生性に問題のある成分によって薬液が汚染される恐れがあるため、ゴム栓には直接薬液が接触しないようにする必要がある。
このような課題に対して、架橋成形したゴム栓を自己密閉部材として用い、ゴム栓の接液部にプラスチックフィルムを熱融着したものと、ゴム栓の支持部材となる栓体本体とからなる、医療品用容器の栓体が特許文献1に開示されている。ここでは、ゴム栓の接液側にポリオレフィン等の衛生性に問題の無いプラスチックフィルムを熱融着させることで、架橋ゴム成分の溶出を防ぐことが提案されているが、ゴムとプラスチックの接着は困難であることも指摘されており、ゴム栓とプラスチックフィルムを熱融着することにより良好な接着性が得られたとは言うものの、仮に剥がそうとしたら材料破壊するほどの強固な接着界面は得られるはずもない。
また、特許文献1には、プラスチックフィルムの厚さが150μmを超えると、針を刺したときにプラスチックが破片となって脱落するコアリングの問題が起きてくることも開示されており、架橋成形したゴム栓は耐液漏れ性については優れていたとしても、その他の実用特性としては様々な問題を残している。
このような問題に対して、特許文献2には、栓にスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることで、ゴムの架橋工程が必要ないうえに、接液部にプラスチックフィルム等を用いなくても衛生性の高い栓体が得られることが開示されている。しかし、耐液漏れ性については、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いる栓は、架橋ゴムに比べて針を刺した後の開口に永久歪が残り、充分な弾性復元力がないために開口部から液が漏れやすいという欠点のあることが指摘され、該栓の外周を締め付けるように加圧して栓体本体を射出成形すると、変形した栓の弾性変形力によって液漏れを防ぐことができることが開示されているが、このような栓体本体の構造を実現するためには、成形のための複雑な金型や、成形時間、栓体の形状等多くの制約条件が必要となる問題がある。
本発明の課題は、加工性や衛生性が良好な熱可塑性エラストマーを用いた針刺し栓体用成形体であって、成形方法や形状等に制約がなく、いかなる形態で用いても優れた耐液漏れ性を発揮する針刺し栓体用成形体、その製造方法及び該成形体用いた栓体を提供することにある。
本発明は、
〔1〕 スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層(A層)と熱可塑性樹脂Bを含む層(B層)とが、界面で熱融着した層構造を有する、針刺し栓体用成形体であって、前記A層よりも前記B層のA硬度が10以上高い、針刺し栓体用成形体、
〔2〕 スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層と熱可塑性樹脂Bを含む層とを熱融着する工程を含む、前記〔1〕記載の針刺し栓体用成形体の製造方法、
〔3〕 前記〔1〕記載の針刺し栓体用成形体を、A層とB層の熱融着面において、A層からB層に向けて針を刺すように配置した、針刺し栓体、並びに
〔4〕 前記〔1〕記載の針刺し栓体用成形体を用いた、医療用輸液容器の栓体
に関する。
〔1〕 スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層(A層)と熱可塑性樹脂Bを含む層(B層)とが、界面で熱融着した層構造を有する、針刺し栓体用成形体であって、前記A層よりも前記B層のA硬度が10以上高い、針刺し栓体用成形体、
〔2〕 スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層と熱可塑性樹脂Bを含む層とを熱融着する工程を含む、前記〔1〕記載の針刺し栓体用成形体の製造方法、
〔3〕 前記〔1〕記載の針刺し栓体用成形体を、A層とB層の熱融着面において、A層からB層に向けて針を刺すように配置した、針刺し栓体、並びに
〔4〕 前記〔1〕記載の針刺し栓体用成形体を用いた、医療用輸液容器の栓体
に関する。
本発明の針刺し栓体用成形体は、加工性や衛生性が良好な熱可塑性エラストマーを用いており、成形方法や形状等に制約がなく、いかなる形態で用いても優れた耐液漏れ性を発揮するという優れた効果を奏するものである。
本発明の針刺し栓体用成形体は、スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層(A層)と熱可塑性樹脂Bを含む層(B層)とが界面で熱融着した層構造を有し、A層よりもB層のA硬度が高く、耐液漏れ性に優れるものである。これは、針が貫通する際に、柔らかいA層と接着したまま硬いB層が裂けて穴が開き、針を抜いたときにその裂け目が柔らかいA層に引き戻されてしっかり閉じるためではないかと推察される。
A層とB層のA硬度の差は、10以上であり、好ましくは15〜80、より好ましくは25〜60である。
A層のA硬度は、耐液漏れ性及び針保持性の観点から、好ましくは10〜60、より好ましくは20〜55、さらに好ましくは20〜40である。
また、B層のA硬度は、耐液漏れ性及び針保持性の観点から、好ましくは30〜99、より好ましくは50〜95、さらに好ましくは60〜80である。
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマーAとしては、スチレン系重合体ブロックとジエン系重合体ブロックとを含有するスチレン系ブロック共重合体及び/又はその水素添加物が好ましく、スチレン系重合体ブロックがハードセグメントに、ジエン系重合体ブロックがソフトセグメントに、それぞれ相当する。
スチレン系重合体ブロックは、スチレン化合物に由来する構造単位(以下、スチレン化合物単位ともいう)を含有する。該スチレン化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等が挙げられ、これらの2種類以上が併用されてもよい。これらの中では、入手が容易なスチレンが好ましい。
スチレン系重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲でスチレン化合物以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、1-ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等のイオン重合し得る共重合性単量体等が挙げられる。スチレン系重合体ブロックを構成する全構造単位中の、スチレン化合物単位の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
ジエン系重合体ブロックは、イソプレン、ブタジエン等のジエンに由来する構造単位を含有する重合体ブロックが好ましい。
ジエン系重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲でジエン単位以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1-ビニルナフタレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物等のアニオン重合可能な共重合性単量体等が挙げられる。ジエン系重合体ブロックを構成する全構造単位中、イソプレン単位及びブタジエン単位の含有量の合計は、低温特性及び反発弾性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
スチレン系熱可塑性エラストマーAは、本発明の効果を損なわない範囲で、場合により、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基の1種又は2種以上を有していてもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーAにおけるスチレン系重合体ブロックの含有量は、耐久性の観点から、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、柔軟性及び反発弾性の観点から、45質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
スチレン系熱可塑性エラストマーAにおいて、スチレン系重合体ブロックとジエン系重合体ブロックの質量比(スチレン系重合体ブロック/ジエン系重合体ブロック)は、柔軟性の観点から、好ましくは5/95〜45/55、より好ましくは10/90〜35/65、さらに好ましくは15/85〜30/70である。
スチレン系熱可塑性エラストマーAは、スチレン系重合体ブロック及びジエン系重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個含むことが好ましく、芳香族ビニル重合体ブロックを2個以上及びジエン系重合体ブロックを1個以上含むことがより好ましい。スチレン系重合体ブロックとジエン系重合体ブロックの結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直線状に結合した形態が好ましく、スチレン系重合体ブロックを「A」、ジエン系重合体ブロックを「B」で表したときに、(A−B)l、A−(B−A)m、B−(A−B)n(式中、l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す)の結合形態であることが好ましく、ゴム弾性、力学的特性、取り扱い性等の観点から、(A−B)l及びA−(B−A)mで表される結合形態であることがより好ましく、A−Bで表されるジブロック共重合体又はA−B−Aで表されるトリブロック共重合体がさらに好ましく、トリブロック共重合体がさらに好ましい。
トリブロック共重合体の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマーA中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーAがスチレン系ビニル重合体ブロックを2個以上又はジエン系重合体ブロックを2個以上有する場合には、それぞれのスチレン系重合体ブロックとジエン系重合体ブロックは互いに同じ構成のブロックであっても異なる構成のブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック構造における2個のスチレン系重合体ブロックは、それらを構成するスチレン化合物の種類が、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
ブロック共重合体の水素添加は、一部であっても、全部であってもよいが、水素添加することにより不飽和結合が減少し、耐熱性及び機械的強度が向上する。それらの観点から、水素添加率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。水素添加率は、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、1H-NMRスペクトルによって測定し、該測定値から求めることができる。
水素添加されていないスチレン系熱可塑性エラストマーAの具体例としては、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等が挙げられる。
また、水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーAの具体例としては、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン−(エチレン−エチレン・プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体(SEB(S)S)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)−エチレン・ブチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)−エチレン・ブチレン−(α-メチルスチレン)ブロック共重合体等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、トリブロック共重合体としては、SEBS、SEPS、SEEPS、SEB(S)S、スチレン−エチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)−エチレン・ブチレン−(α-メチルスチレン)ブロック共重合体等が挙げられ、原料調製及び作業性の観点から、SEBS、SEPS、及びSEEPSが好ましく、SEBS及びSEEPSがより好ましい。
また、水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーAの具体例としては、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン−(エチレン−エチレン・プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体(SEB(S)S)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)−エチレン・ブチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)−エチレン・ブチレン−(α-メチルスチレン)ブロック共重合体等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、トリブロック共重合体としては、SEBS、SEPS、SEEPS、SEB(S)S、スチレン−エチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)−エチレン・ブチレン−(α-メチルスチレン)ブロック共重合体等が挙げられ、原料調製及び作業性の観点から、SEBS、SEPS、及びSEEPSが好ましく、SEBS及びSEEPSがより好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーAの重量平均分子量は、永久圧縮歪みの抑制の観点から、好ましくは50,000以上、より好ましくは70,000以上であり、成形性の観点から、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下である。スチレン系熱可塑性エラストマーAが複数のブロック共重合体からなる場合は、各ブロック共重合体の重量平均分子量の加重平均値が上記範囲内に入ることが好ましい。
A層は、成形性の観点から、軟化剤を含有していることが好ましい。
軟化剤としては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、芳香族系オイル等のゴム用軟化剤等が挙げられるが、これらのなかでは、相溶性の観点から、パラフィンオイルが好ましい。
軟化剤の動粘度は、好ましくは10〜500mm2/s、より好ましくは20〜400mm2/s、さらに好ましくは30〜300mm2/sである。
軟化剤の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマーA 100質量部に対して、好ましくは600質量部以下、より好ましくは10〜600質量部、さらに好ましくは30〜500質量部、さらに好ましくは50〜400質量部である。
また、A層は、成形性の観点から、ポリオレフィン樹脂を含有していることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、この中では、相溶性の観点から、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマーA 100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは2〜90質量部、さらに好ましくは3〜80質量部である。
A層は、さらに、抗酸化剤、無機充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
A層の厚さは、B層よりも厚いことが好ましく、好ましくはB層の厚さの0.8〜70倍、より好ましくは2.0〜50倍、さらに好ましくは5.0〜30倍、さらに好ましくは10〜15倍である。
また、A層の厚さは、好ましくは0.1〜30mm、より好ましくは0.3〜10mm、さらに好ましくは0.5〜7mmである。
熱可塑性樹脂Bとしては、スチレン系ブロック共重合体、オレフィン系ブロック共重合体、アクリル系ブロック共重合体、ポリエステル系ブロック共重合体等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。これらの中では、スチレン系熱可塑性エラストマーに対する接着性及び針保持性の観点から、スチレン系ブロック共重合体及びオレフィン系ブロック共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン系ブロック共重合体がより好ましい。
スチレン系ブロック共重合体は、前記A層に用いられるスチレン系ブロック共重合体と同様である。
ポリオレフィン系ブロック共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα−オレフィン共重合体エラストマー、これらと非共役ジエンとの共重合エラストマー、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
アクリル系ブロック共重合体としては、主としてメタクリル酸アルキルエステル単位及び/又はアクリル酸アルキルエステル単位からなる複数の重合体ブロックを有するブロック共重合体が好ましく、具体的には、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル−ポリメタクリル酸ラウリル、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸ブチル−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−ポリメタクリル酸ラウリル−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸2−エチルヘキシル−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸2−エチルヘキシル−ポリメタクリル酸ラウリル等のブロック共重合体等が挙げられる。
アクリル系ブロック共重合体において、メタクリル酸アルキルエステル単位とアクリル酸アルキルエステル単位の質量比(メタクリル酸アルキルエステル単位/アクリル酸アルキルエステル単位)は、好ましくは5/95〜90/10、より好ましくは10/90〜80/20である。
アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは20,000〜900,000である。
ポリエステル系ブロック共重合体は、柔軟性と成形性の観点から、硬い部分(ハードセグメント)と柔らかい部分(ソフトセグメント)とから構成されていることが好ましく、ハードセグメントとして芳香族ポリエステルブロックと、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテルブロックとを有するポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体であることがより好ましい。
ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体のハードセグメントである芳香族ポリエステルブロックは、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-又は2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルの1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ジヒドロキシジビフェニル、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン等のジオールの1種又は2種以上との重縮合体であることが好ましい。市販品としては、例えば、「Keyflex」(LGケミカル社製、商品名)、「ペルプレン」(東洋紡績株式会社製、商品名)、「ハイトレル」(東レ・デュポン株式会社製、商品名)、「フレクマー」(日本合成化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体のソフトセグメントである脂肪族ポリエーテルブロックは主としてポリアルキレンエーテルグリコールからなることが好ましい。
B層は、成形性の観点から、軟化剤を含有していることが好ましい。
軟化剤としては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、芳香族系オイル等のゴム用軟化剤等が挙げられるが、これらのなかでは、相溶性の観点から、パラフィンオイルが好ましい。
軟化剤の動粘度は、好ましくは10〜500mm2/s、より好ましくは20〜400mm2/s、さらに好ましくは30〜300mm2/sである。
軟化剤の含有量は、熱可塑性樹脂B 100質量部に対して、好ましくは600質量部以下、より好ましくは1〜600質量部、さらに好ましくは3〜500質量部、さらに好ましくは5〜400質量部である。
B層は、成形性の観点から、ポリオレフィン樹脂を含有していてもよい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、この中では、相溶性の観点から、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂B 100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは2〜90質量部、さらに好ましくは3〜80質量部である。
B層は、さらに、抗酸化剤、無機充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
B層の厚さは、好ましくは0.01〜1.5mm、より好ましくは0.05〜1.2mm、さらに好ましくは0.07〜1.0mmである。
本発明の成形体は、前記のA層とB層とが界面で熱融着した層構造を有していればよく、針を刺すことができる程度であれば、A層/B層/A層、B層/A層/B層等の3層以上の層構造であってもよく、さらにポリエチレン等からなるカバー層や、他の材質の層を含んでいてもよい。
本発明において、「A層とB層とが界面で熱融着した層構造」とは、界面を針が貫通する程度の力で界面が自然に剥がれない程度に接着していることを言い、例えばJIS K6854−3に定める剥離接着強さ界面の剥離強度が、サンプル幅15mm,剥離速度30mm/minのT型剥離の条件で、1.0N以上の値を示すことである。より好ましくは、このような剥離試験では、剥離するために加えた力によって母材破壊が起きてしまい、界面での剥離が起き難いような接着界面である。
本発明において、「A層とB層とが界面で熱融着した層構造」とは、界面を針が貫通する程度の力で界面が自然に剥がれない程度に接着していることを言い、例えばJIS K6854−3に定める剥離接着強さ界面の剥離強度が、サンプル幅15mm,剥離速度30mm/minのT型剥離の条件で、1.0N以上の値を示すことである。より好ましくは、このような剥離試験では、剥離するために加えた力によって母材破壊が起きてしまい、界面での剥離が起き難いような接着界面である。
本発明の成形体の厚さは、刺す針の種類によって異なるため一概には決定できないが、好ましくは0.11〜30mm、より好ましくは1〜10mmである。
本発明の成形体の形状は、針を刺して用いることができれば特に限定されない。栓体形状には限らず、シート状であってもよい。
針は、熱融着したA層とB層に対し、A層、B層のどちら側から刺してもよいが、A層の側から針を刺すことで、より高い耐液漏れ性の効果が得られる。
本発明の成形体は、少なくとも、A層とB層とを熱融着する工程を含む方法により得られる。A層とB層は、A層のガラス転移温度以上の温度で加熱することにより、熱融着させることができ、他の層は、接着していてもいなくても特に限定されず、常法により積層すればよい。A層とB層の熱融着は、熱プレス、射出成形による2色成形等により行うことができる。
本発明の成形体を円筒形等に切り出して容器口部にはめ込める形状にした栓に、容器口部にとりつけて密封できるような枠を付けたものを針刺し栓体として用いる。栓体における、本発明の成形体からなる栓の向きは特に限定されないが、前記の如く、耐液漏れ性の観点から、A層とB層の熱融着面において、A層からB層に向けて針を刺すように配置することが好ましい。
本発明の栓体は、医療用輸液容器、バイアル瓶、真空採血容器等の栓体として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
<スチレン系熱可塑性エラストマー>
〔組成比〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔ジエン系重合体ブロックにおける1,2-結合単位及び3,4-結合単位の合計含有量〕
水素添加前のブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H-NMRスペクトルを測定[装置:JNM-Lambda 500(日本電子(株)製)、測定温度:50℃]し、イソプレン、ブタジエン、又はイソプレンとブタジエンの混合物由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン単位における1,2-結合単位及び3,4-結合単位、ブタジエン単位における1,2-結合単位、またイソプレンとブタジエンの混合物の場合にはそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比から、3,4-結合単位と1,2-結合単位の含有量の合計を算出する。
〔ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光(株))製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工(株)製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工(株)製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/min
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工(株)製ポリスチレン
これ以外の高分子材料についても同様にゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量Mwを求めることができ、あるいは数平均分子量MnやMw/Mnの値を算出することができる。この際、溶離液は高分子種の溶解性により変更することが好ましく、ポリオレフィン系では1,2,4-トリクロロベンゼンなど、アクリル系ブロック共重合体にはテトラヒドロフラン等の溶離液を用いることが好ましく、ポリオレフィン系のように溶解性に乏しいものについては例えば140℃のような高温で測定を行うことも好ましい。
〔組成比〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔ジエン系重合体ブロックにおける1,2-結合単位及び3,4-結合単位の合計含有量〕
水素添加前のブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H-NMRスペクトルを測定[装置:JNM-Lambda 500(日本電子(株)製)、測定温度:50℃]し、イソプレン、ブタジエン、又はイソプレンとブタジエンの混合物由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン単位における1,2-結合単位及び3,4-結合単位、ブタジエン単位における1,2-結合単位、またイソプレンとブタジエンの混合物の場合にはそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比から、3,4-結合単位と1,2-結合単位の含有量の合計を算出する。
〔ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光(株))製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工(株)製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工(株)製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/min
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工(株)製ポリスチレン
これ以外の高分子材料についても同様にゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量Mwを求めることができ、あるいは数平均分子量MnやMw/Mnの値を算出することができる。この際、溶離液は高分子種の溶解性により変更することが好ましく、ポリオレフィン系では1,2,4-トリクロロベンゼンなど、アクリル系ブロック共重合体にはテトラヒドロフラン等の溶離液を用いることが好ましく、ポリオレフィン系のように溶解性に乏しいものについては例えば140℃のような高温で測定を行うことも好ましい。
<熱可塑性樹脂>
〔組成比〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
JIS K7210-1999に従って、温度190℃及び荷重21.2Nの条件で測定する。
〔D硬度〕
温度23℃×湿度50RH%に調整された恒温恒湿室に24時間以上静置する。その後、JIS K6253に準拠した方法でD硬度を計測する。
〔曲げ弾性率〕
JIS-K 6921-2に準拠して測定する(試験片:80mm×10mm×4mm、試験速度:2mm/min)。
〔組成比〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
JIS K7210-1999に従って、温度190℃及び荷重21.2Nの条件で測定する。
〔D硬度〕
温度23℃×湿度50RH%に調整された恒温恒湿室に24時間以上静置する。その後、JIS K6253に準拠した方法でD硬度を計測する。
〔曲げ弾性率〕
JIS-K 6921-2に準拠して測定する(試験片:80mm×10mm×4mm、試験速度:2mm/min)。
<軟化剤>
〔動粘度〕
JIS-Z-8803に従って、40℃の温度で測定する。
〔動粘度〕
JIS-Z-8803に従って、40℃の温度で測定する。
<ポリオレフィン樹脂>
〔曲げ弾性率〕
JIS-K 6921-2に準拠して測定する(試験片:80mm×10mm×4mm、試験速度:2mm/min)。
〔曲げ弾性率〕
JIS-K 6921-2に準拠して測定する(試験片:80mm×10mm×4mm、試験速度:2mm/min)。
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
JIS K7210-1999に従って、温度190℃及び荷重21.2Nの条件で測定する。
JIS K7210-1999に従って、温度190℃及び荷重21.2Nの条件で測定する。
実施例1、3〜18及び比較例1〜8
〔A層の作製〕
表2、3に記載の質量比の成分Aを、160℃に加熱されたバッチ式ミキサー(ブラベンダー社、プラストグラフEC50型)に仕込み、回転数30r/mで10分間混練して組成物を得た。
得られた組成物を厚さ6mm×幅100mm×長さ120mmのプレス用型枠に入れ、160℃に加熱された熱プレス機(東邦マシーナリー社、油圧成形機TB-50-2型)を用いて2分間熱プレス、次いで3分間冷却プレスを行い、厚さ約6mmのシートを得た。
なお、実施例15では0.5mm厚、実施例16では0.8mm厚、実施例17では1.5mm厚のプレス用型枠を用い、それぞれ、厚さが約0.5mm、約0.8mm、約1.5mmのシートを得た。
〔A層の作製〕
表2、3に記載の質量比の成分Aを、160℃に加熱されたバッチ式ミキサー(ブラベンダー社、プラストグラフEC50型)に仕込み、回転数30r/mで10分間混練して組成物を得た。
得られた組成物を厚さ6mm×幅100mm×長さ120mmのプレス用型枠に入れ、160℃に加熱された熱プレス機(東邦マシーナリー社、油圧成形機TB-50-2型)を用いて2分間熱プレス、次いで3分間冷却プレスを行い、厚さ約6mmのシートを得た。
なお、実施例15では0.5mm厚、実施例16では0.8mm厚、実施例17では1.5mm厚のプレス用型枠を用い、それぞれ、厚さが約0.5mm、約0.8mm、約1.5mmのシートを得た。
〔B層の作製〕
表2、3に示す質量比の成分Bを、160℃に加熱されたバッチ式ミキサーに仕込み、回転数30r/mで10分混練した。得られた混練物のうち25gを厚さ0.5mm×幅280mm×長さ280mmのプレス用型枠に入れ、160℃に加熱された熱プレス機を用いて2分間熱プレス、次いで3分間冷却プレスを行い、厚さ約0.5mmのシートを得た。
なお、実施例8では0.1mm厚、実施例9では0.8mm厚、実施例10では1.5mm厚のプレス用型枠に、それぞれ、5g、40g、75gの混練物を入れ、厚さが約0.1mm、約0.8mm、約1.5mmのシートを得た。
表2、3に示す質量比の成分Bを、160℃に加熱されたバッチ式ミキサーに仕込み、回転数30r/mで10分混練した。得られた混練物のうち25gを厚さ0.5mm×幅280mm×長さ280mmのプレス用型枠に入れ、160℃に加熱された熱プレス機を用いて2分間熱プレス、次いで3分間冷却プレスを行い、厚さ約0.5mmのシートを得た。
なお、実施例8では0.1mm厚、実施例9では0.8mm厚、実施例10では1.5mm厚のプレス用型枠に、それぞれ、5g、40g、75gの混練物を入れ、厚さが約0.1mm、約0.8mm、約1.5mmのシートを得た。
なお、実施例1〜13、15〜18及び比較例1〜8には、成分Aとともにスチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して30質量部の炭酸カルシウムを、実施例14では、成分Bとともに、熱可塑性樹脂100質量部に対して30質量部の炭酸カルシウムを、それぞれ配合した。これは、得られた栓体におけるA層とB層の測定において、それぞれの層の厚さを判別可能なように、一方の層を白色に着色するために便宜上配合したものであり、栓体用成形体の構成成分として配合したものではない。炭酸カルシウムには、タルカンハヤシ社製のスーパーSSSを使用した。
得られたB層を幅100mm×長さ120mmに切り出し、厚さ6mm×幅100mm×長さ120mmのプレス用型枠に設置し、その上に厚さ約6mmのA層を重ねた後、140℃に加熱された熱プレス機を用いて1分間熱プレス、次いで3分間冷却プレスを行い、A層とB層が熱融着した成形体を得た。
なお、比較例1、6、7ではA層のみを、比較例8ではB層のみを、それぞれ作製し、そのまま成形体とした。
実施例2
A層を2枚作製し、実施例1で得られた成形体のB層の側に、さらにA層を重ねて熱融着させ、A層−B層−A層の3層からなる成形体を得た。
A層を2枚作製し、実施例1で得られた成形体のB層の側に、さらにA層を重ねて熱融着させ、A層−B層−A層の3層からなる成形体を得た。
得られたシート状の成形体におけるA層、B層の厚さ及びA硬度を、下記方法に従って測定した。
〔A層、B層の厚さ〕
カッターで成形体を縦に切断する。その切断面をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VHX-200型 ズームレンズVH-Z 25)で40〜50倍で観測し、同装置に供えられた計測ソフトにて、A層とB層それぞれの厚さを計測する。実施例2のように、複数のA層又はB層を含む場合は、それらの合計ではなく、それぞれの層の厚さを計測する。
カッターで成形体を縦に切断する。その切断面をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VHX-200型 ズームレンズVH-Z 25)で40〜50倍で観測し、同装置に供えられた計測ソフトにて、A層とB層それぞれの厚さを計測する。実施例2のように、複数のA層又はB層を含む場合は、それらの合計ではなく、それぞれの層の厚さを計測する。
〔A層、B層のA硬度〕
各実施例及び比較例で用いた成分A又は成分Bを用い、プレス成形により厚さ2mmの測定用試験片を得、温度23℃×湿度50RH%に調整された恒温恒湿室に24時間以上静置する。その後、3枚重ねて厚さ6mmとして、JIS K6253に準拠した方法で15秒後のA硬度を計測する。
各実施例及び比較例で用いた成分A又は成分Bを用い、プレス成形により厚さ2mmの測定用試験片を得、温度23℃×湿度50RH%に調整された恒温恒湿室に24時間以上静置する。その後、3枚重ねて厚さ6mmとして、JIS K6253に準拠した方法で15秒後のA硬度を計測する。
使用した原料成分についての詳細は以下の通り。
試験例1〔耐液漏れ性〕
実施例及び比較例で得られたシート状の成形体を温度23℃×湿度50RH%に調整された恒温恒湿室に24時間以上放置し状態を安定させた後、直径20mm打ち抜き歯を用いて、直径20mm×厚さ約6mmの円柱型の栓体を得た。
直径15mmの穴の開いた金属板2枚に栓体を挟み、栓体がずれない程度にネジで固定した。
液貯槽及び液貯槽の底部に栓体取付部位を備える液漏れ試験機に金属板で挟んだ栓体を針刺し面が表2、3に記載の面になる向きで配置し、液貯槽に水500mLを注ぎ、栓体の平面に0.02MPaの水圧がかかるようにした。試験は温度23℃、湿度50%の室内で行った。
上記栓体の中心に栓体の下方から栓体平面と垂直に、注射器に取付けられた18ゲージ×1・1/2"SBの医療用金属針(テルモ(株)製、テルモ注射針 NN-1838S型)の針部全体にジメチルシリコーンオイルを塗布したものを挿入し、1分又は4分間保持した後、金属針を下方に引き抜いた。針を抜く操作終了後、栓体に生じた針穴からの液漏れ(水漏れ)状態を1時間後に目視にて評価し、針刺し跡にわずかでも液漏れが観察されたものは液漏れと評価した。この試験を2つの栓体について行った。
また、針を抜いた後のA層とB層の界面における剥離の有無を目視にて観察した。結果を表2、3に示す。
実施例及び比較例で得られたシート状の成形体を温度23℃×湿度50RH%に調整された恒温恒湿室に24時間以上放置し状態を安定させた後、直径20mm打ち抜き歯を用いて、直径20mm×厚さ約6mmの円柱型の栓体を得た。
直径15mmの穴の開いた金属板2枚に栓体を挟み、栓体がずれない程度にネジで固定した。
液貯槽及び液貯槽の底部に栓体取付部位を備える液漏れ試験機に金属板で挟んだ栓体を針刺し面が表2、3に記載の面になる向きで配置し、液貯槽に水500mLを注ぎ、栓体の平面に0.02MPaの水圧がかかるようにした。試験は温度23℃、湿度50%の室内で行った。
上記栓体の中心に栓体の下方から栓体平面と垂直に、注射器に取付けられた18ゲージ×1・1/2"SBの医療用金属針(テルモ(株)製、テルモ注射針 NN-1838S型)の針部全体にジメチルシリコーンオイルを塗布したものを挿入し、1分又は4分間保持した後、金属針を下方に引き抜いた。針を抜く操作終了後、栓体に生じた針穴からの液漏れ(水漏れ)状態を1時間後に目視にて評価し、針刺し跡にわずかでも液漏れが観察されたものは液漏れと評価した。この試験を2つの栓体について行った。
また、針を抜いた後のA層とB層の界面における剥離の有無を目視にて観察した。結果を表2、3に示す。
試験例2〔針保持性〕
実施例及び比較例で得られた成形体を、試験例1と同様に円柱型に切り出し、栓体を得た。
試験用架台に栓体の平面が水平面と平行になるように、また、針刺し面が表2、3に記載の面になる向きで栓体をセットした。試験は温度23℃、湿度50%の室内で行った。
上記栓体の中心に栓体の下方から栓体平面と垂直に、600gのおもりが取付けられた、シリコーンオイルを塗布しない金属針(16G)を挿入し、金属針を挿入してから抜け落ちるまでの時間(針保持時間)を測定した。結果を表2、3に示す。
実施例及び比較例で得られた成形体を、試験例1と同様に円柱型に切り出し、栓体を得た。
試験用架台に栓体の平面が水平面と平行になるように、また、針刺し面が表2、3に記載の面になる向きで栓体をセットした。試験は温度23℃、湿度50%の室内で行った。
上記栓体の中心に栓体の下方から栓体平面と垂直に、600gのおもりが取付けられた、シリコーンオイルを塗布しない金属針(16G)を挿入し、金属針を挿入してから抜け落ちるまでの時間(針保持時間)を測定した。結果を表2、3に示す。
以上の結果より、実施例の栓体は、比較例の栓体と対比して、耐液漏れ性に優れていることが分かる。また、実施例4、5、11、12、15〜17の栓体の針保持性は十分ではないが、特に、A層の硬度を高くしたり、A層を厚くしたりすることによって、針保持性にも優れた栓体が得られることが分かる。なお、針保持性が不十分であっても、耐液漏れ性に優れているため、針保持性が必要とされない用途、例えばバイアル瓶の栓等への使用であれば、栓体として何ら支障はない。
試験例3〔剥離強度〕
実施例1、7、4、及び比較例4、3、2で用いた成分A、成分Bを混練し、それぞれ、160℃で熱プレスし、0.6〜0.7mm厚さの150mm×200mmのシートを作製した。
次いで、A層とB層を重ね合わせ1mm厚のプレス型枠を用いて120℃で1.5分間プレスした。この際、つかみ代分として、50mm×150mmの離型紙(0.2mm厚)を重ね合わせたシートの端に挟んだ。
得られたシートを15mm×200mmの短冊に裁断し、剥離試験用サンプルとした。
サンプルを用い、JIS K 6854-3 剥離接着強さ試験方法のT型剥離に準じて(剥離速度:30mm/min)、剥離強度を測定した。結果を表4に示す。
実施例1、7、4、及び比較例4、3、2で用いた成分A、成分Bを混練し、それぞれ、160℃で熱プレスし、0.6〜0.7mm厚さの150mm×200mmのシートを作製した。
次いで、A層とB層を重ね合わせ1mm厚のプレス型枠を用いて120℃で1.5分間プレスした。この際、つかみ代分として、50mm×150mmの離型紙(0.2mm厚)を重ね合わせたシートの端に挟んだ。
得られたシートを15mm×200mmの短冊に裁断し、剥離試験用サンプルとした。
サンプルを用い、JIS K 6854-3 剥離接着強さ試験方法のT型剥離に準じて(剥離速度:30mm/min)、剥離強度を測定した。結果を表4に示す。
以上の結果より、実施例では、A層とB層が強固に融着しているのに対し、比較例では、A層とB層の接着が弱く、剥離が生じていることが分かる。
本発明の針刺し栓体用成形体は、輸液バッグ等の医療用輸液容器、バイアル瓶、真空採血瓶等の栓体として好適に利用できる。
Claims (10)
- スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層(A層)と熱可塑性樹脂Bを含む層(B層)とが、界面で熱融着した層構造を有する、針刺し栓体用成形体であって、前記A層よりも前記B層のA硬度が10以上高い、針刺し栓体用成形体。
- 熱可塑性樹脂Bが、スチレン系ブロック共重合体及びオレフィン系ブロック共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1記載の針刺し栓体用成形体。
- A層のA硬度が、10〜60である、請求項1又は2記載の針刺し栓体用成形体。
- B層のA硬度が、30〜99である、請求項1〜3いずれか記載の針刺し栓体用成形体。
- B層の厚さが、0.01〜1.5mmである、請求項1〜4いずれか記載の針刺し栓体用成形体。
- A層が、さらに、軟化剤を含む、請求項1〜5いずれか記載の針刺し栓体用成形体。
- A層が、さらに、ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1〜6いずれか記載の針刺し栓体用成形体。
- スチレン系熱可塑性エラストマーAを含む層と熱可塑性樹脂Bを含む層とを熱融着する工程を含む、請求項1〜7いずれか記載の針刺し栓体用成形体の製造方法。
- 請求項1〜7いずれか記載の針刺し栓体用成形体を、A層とB層の熱融着面において、A層からB層に向けて針を刺すように配置した、針刺し栓体。
- 請求項1〜7いずれか記載の針刺し栓体用成形体を用いた、医療用輸液容器の栓体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017160322A JP2019037371A (ja) | 2017-08-23 | 2017-08-23 | 針刺し栓体用成形体 |
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JP2017160322A Withdrawn JP2019037371A (ja) | 2017-08-23 | 2017-08-23 | 針刺し栓体用成形体 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019178239A (ja) * | 2018-03-30 | 2019-10-17 | アロン化成株式会社 | 熱可塑性エラストマー組成物 |
-
2017
- 2017-08-23 JP JP2017160322A patent/JP2019037371A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019178239A (ja) * | 2018-03-30 | 2019-10-17 | アロン化成株式会社 | 熱可塑性エラストマー組成物 |
JP6994421B2 (ja) | 2018-03-30 | 2022-01-14 | アロン化成株式会社 | 熱可塑性エラストマー組成物 |
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