JP2018140559A - マグネシウム合金/樹脂複合構造体およびマグネシウム合金/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents
マグネシウム合金/樹脂複合構造体およびマグネシウム合金/樹脂複合構造体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
さらに、本発明は人体に有害な過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩を使うことなく、マグネシウム合金部材と樹脂部材との接合強度に優れたマグネシウム合金/樹脂複合構造体を得ることが可能なマグネシウム合金/樹脂複合構造体の製造方法を提供するものである。
マグネシウム合金部材と、熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材が接合してなるマグネシウム合金/樹脂複合構造体であって、
上記マグネシウム合金部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たすマグネシウム合金/樹脂複合構造体。
(1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が2.0μm超過20μm以下の範囲にある
(2)評価長さ4mmにおける粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10μm超過200μm以下の範囲にある
[2]
上記[1]に記載のマグネシウム合金/樹脂複合構造体において、
上記マグネシウム合金部材の上記表面にマンガン酸化物が存在しないマグネシウム合金/樹脂複合構造体。
[3]
上記[1]または[2]に記載のマグネシウム合金/樹脂複合構造体において、
上記熱可塑性樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂を含むマグネシウム合金/樹脂複合構造体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のマグネシウム合金/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
マグネシウム合金部材を脂肪族カルボン酸水溶液に浸漬する工程を含む表面処理工程と、
上記表面処理工程を経たマグネシウム合金部材を射出成形金型にインサートして熱可塑性樹脂組成物を射出する工程と、
を含むマグネシウム合金/樹脂複合構造体の製造方法。
さらに本発明のマグネシウム合金/樹脂複合構造体の製造方法によれば、人体に有害な過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩を使用しなくても、使用した場合と同等以上の高い接合強度を備えたマグネシウム合金/樹脂複合構造体を得ることができる。
本実施形態に係るマグネシウム合金/樹脂複合構造体106について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態のマグネシウム合金/樹脂複合構造体106の構造の一例を示す外観図である。マグネシウム合金/樹脂複合構造体106は、マグネシウム合金部材103と、熱可塑性樹脂組成物(P)からなる樹脂部材105とが接合されており、マグネシウム合金部材103と樹脂部材105とを接合することにより得られる。
(1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が2.0μm超過20μm以下の範囲にある
(2)評価長さ4mmにおける粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10μm超過200μm以下の範囲にある
樹脂部材105は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)からなる。
また、本実施形態に係るマグネシウム合金/樹脂複合構造体106においては、マグネシウム合金部材103の表面110にマンガン酸化物が存在しないことが好ましい。マンガン酸化物が存在しないことは、例えばX線光電子分光分析法(XPS分析法)によって容易に確認が可能である。
具体的には上記要件(1)および(2)を同時に満たすマグネシウム合金部材103の表面110の凹凸形状の中に熱可塑性樹脂組成物(P)が侵入することによって、マグネシウム合金部材103と樹脂部材105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、通常では接合が困難なマグネシウム合金部材103と熱可塑性樹脂組成物(P)からなる樹脂部材105とを強固に接合することが可能になったものと考えられる。
以下、マグネシウム合金/樹脂複合構造体106を構成する各部材について説明する。
以下、本実施形態に係るマグネシウム合金部材103について説明する。
マグネシウム合金部材103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす。
(1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が2.0μm超過20μm以下の範囲にある
(2)評価長さ4mmにおける粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10μm超過200μm以下の範囲にある
本実施形態において、上記十点平均粗さ(Rz)の平均値は前述の任意の6直線部の十点平均粗さ(Rz)を平均したものであり、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は前述の任意の6直線部の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を平均したものである。
本実施形態においては、とくにエッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記十点平均粗さ(Rz)および平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
上記6直線部は、例えば、図3に示すような6直線部B1〜B6を選択することができる。まず、基準線として、マグネシウム合金部材103の接合部表面104の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1〜D4は、例えば、2〜5mmである。
なお、通常、マグネシウム合金部材103の表面110中の接合部表面104だけでなく、マグネシウム合金部材103の表面110全体に対し、表面粗化処理が施されているため、例えば、図4に示すように、マグネシウム合金部材103の接合部表面104と同一面で、接合部表面104以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
また、樹脂部材105と接合する接合部表面104の形状は、特に限定されないが、平面、曲面等が挙げられる。
次に、マグネシウム合金部材103の表面の粗化処理方法について説明する。
本実施形態に係るマグネシウム合金部材103は、マグネシウム合金部材を脂肪族カルボン酸水溶液に浸漬する工程を含む表面粗化処理によって形成することができる。
本実施形態においては、この表面処理工程の前後にいくつかの付加的な工程を任意に行ってもよい。任意の工程としては、例えば、表面粗化処理工程前に行われる前処理工程、表面粗化処理工程後に行われる後処理工程等が挙げられる。
以下、(1)前処理工程、(2)表面粗化処理工程、および(3)後処理工程、の順に説明する。
市販のマグネシウム合金の成形は、一般的には、ダイキャスト法、チクソモールド法と呼ばれる鋳造法により行われ、場合によっては展伸用マグネシウム合金板を用いたプレス成型法や鍛造法により行われる。元来、アルミニウム合金等とは異なり稠密六方格子(HCP)を持つため変形し難く、そのため成形時には多量の機械油や離型剤等が用いられることが多い。その結果、マグネシウム合金成形体の表面にはこれら油類が多量に付着、浸透して表面汚染されている可能性が高いので、表面粗化処理に先立ち、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液や市販のマグネシウム合金用脱脂剤等による脱脂処理が施されていることが望ましい。脱脂処理は通常40〜70℃下で数分間行われる。また脱脂前に、マグネシウム合金表面上に堆積した酸化膜等を、サンドブラスト加工、研削加工等の機械研磨や化学研磨を行ってもよい。
本実施形態に係る表面粗化処理工程に使用するエッチング剤(水溶液又は懸濁液)は通常、有機酸または無機酸の水溶液である。マグネシウム合金部材と樹脂部材との接合強度の点からは有機酸であっても無機酸であってもよいが、エッチング量を最小限量に抑え、かつ安定的に高い接合強度を発現する視点からは、エッチング剤としては有機酸水溶液が好ましい。有機酸としては、脂肪族カルボン酸を含むことがより好ましい。脂肪族カルボン酸としては室温下で水溶性を示すものであれば制限なく使用できるが、より好ましい脂肪族カルボン酸としては、ヒドロキシ基を持たない多塩基酸(a1)と、ヒドロキシ基を持つ一塩基酸(a2)とヒドロキシ基を持つ多塩基酸(a3)に3分類される。ヒドロキシ基を持たない多塩基酸(a1)としては、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、マレイン酸を例示できる。ヒドロキシ基を持つ一塩基酸(a2)としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、メバロン酸を例示できる。またヒドロキシ基を持つ多塩基酸(a3)としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸を例示できる。なお、多塩基酸を用いる場合は二つのカルボキシ基が形式上分子内脱水縮合した、対応する酸無水物を使用してもよい。酸無水物は一般に水に溶かすことによって加水分解を受けて二塩基酸に転換されるからである。これらの脂肪族カルボン酸の中では、粗化効率、すなわち最小限のエッチング量でもって効率的な接合強度を安定的に発現できる点、あるいはエッチング剤の化学安全性の視点から、ヒドロキシ基を持つ多塩基酸(a3)が好ましく、クエン酸、酒石酸が特に好ましく用いられる。処理時においては、濃度が好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%濃度の脂肪族カルボン酸水溶液中に、任意に脱脂処理が行われたマグネシウム合金部材を1〜20分間、好ましくは2〜15分間浸漬して行うことができる。
本実施形態では、上記表面粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
以下、本実施形態に係る樹脂部材105について説明する。
樹脂部材105は熱可塑性樹脂組成物(P)からなる。熱可塑性樹脂組成物(P)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)と、必要に応じて充填材(B)と、含む。さらに、熱可塑性樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材105が熱可塑性樹脂(A)のみからなる場合であっても、樹脂部材105は熱可塑性樹脂組成物(P)からなると記載する。
熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性樹脂組成物(P)は、マグネシウム合金部材103と樹脂部材105との線膨張係数差の調整や樹脂部材105の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)をさらに含んでもよい。
充填材(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
熱可塑性樹脂組成物(P)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。このような配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(P)の調製方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により調製することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、上記熱可塑性樹脂(A)、必要に応じて上記充填材(B)、さらに必要に応じて上記その他の配合剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、熱可塑性樹脂組成物(P)が得られる。
本実施形態に係るマグネシウム合金/樹脂複合構造体106の製造方法、すなわち熱可塑性樹脂組成物(P)からなる樹脂部材105をマグネシウム合金部材103に接合する方法としては、例えば、射出成形、押出成形、加熱プレス成形、圧縮成形、トランスファーモールド成形、注型成形、レーザー溶着成形、反応射出成形(RIM成形)、リム成形(LIM成形)、溶射成形等の樹脂成形方法が挙げられる。
これらの中でも、射出成形法が好ましく、具体的には、マグネシウム合金部材103を射出成形金型のキャビティ部にインサートし、熱可塑性樹脂組成物(P)を金型に射出する射出成形法によって樹脂部材105を成形し、マグネシウム合金/樹脂複合構造体106を製造するのが好ましい。以下、具体的に説明する。
本実施形態に係るマグネシウム合金/樹脂複合構造体106の製造方法は、例えば、以下の[1]〜[3]の工程を含んでいる。
[1]所望の熱可塑性樹脂組成物(P)を調製する工程
[2]凹凸形成領域を含むマグネシウム合金部材103を射出成形用の金型102の内部に設置する工程
[3]熱可塑性樹脂組成物(P)を、射出成形機101を通して、マグネシウム合金部材103の少なくとも凹凸形成領域と接するように、金型102内に射出成形し、樹脂部材105を形成する工程
まず、射出成形用の金型102を用意し、その金型を開いてその一部に凹凸形成領域を含むマグネシウム合金部材103を設置する。
その後、金型102を閉じ、熱可塑性樹脂組成物(P)の少なくとも一部がマグネシウム合金部材103の表面110の凹凸形状形成領域と接するように、金型102内に[1]工程で得られた熱可塑性樹脂組成物(P)を射出して固化する。その後、金型102を開き離型することにより、マグネシウム合金/樹脂複合構造体106を得ることができる。
射出発泡成形の方法として、化学発泡剤を樹脂に添加する方法や、射出成形機のシリンダー部に直接、窒素ガスや炭酸ガスを注入する方法、あるいは、窒素ガスや炭酸ガスを超臨界状態で射出成形機のシリンダー部に注入するMuCell射出発泡成形法があるが、いずれの方法でも樹脂部材105が発泡体であるマグネシウム合金/樹脂複合構造体106を得ることができる。また、いずれの方法でも、金型102の制御方法として、カウンタープレッシャーを使用したり、成形品の形状によってはコアバックを利用したりすることも可能である。
高速ヒートサイクル成形は、急速加熱冷却装置を金型102に接続することにより、実施することができる。急速加熱冷却装置は、一般的に使用されている方式で構わない。加熱方法として、蒸気式、加圧熱水式、熱水式、熱油式、電気ヒータ式、電磁誘導過熱式のいずれか1方式またはそれらを複数組み合わせた方式を用いることができる。冷却方法としては、冷水式、冷油式のいずれか1方式またはそれらを組み合わせた方式を用いることができる。高速ヒートサイクル成形法の条件としては、例えば、射出成形用の金型102を100℃以上250℃以下の温度に加熱し、熱可塑性樹脂組成物(P)の射出が完了した後、射出成形用の金型102を冷却することが望ましい。金型を加熱する温度は、熱可塑性樹脂組成物(P)を構成する熱可塑性樹脂(A)によって好ましい範囲が異なり、結晶性樹脂で融点が200℃未満の熱可塑性樹脂であれば、100℃以上150℃以下が好ましく、結晶性樹脂で融点が200℃以上の熱可塑性樹脂であれば、140℃以上250℃以下が望ましい。非晶性樹脂については、100℃以上180℃以下が望ましい。
本実施形態に係るマグネシウム合金/樹脂複合構造体106は、過酷な条件下でも高い接合強度を示すとともに軽量である利点を生かして様々な産業分野で用いられる。例えば、ノートパソコンのボトムケース、液晶リアケースに代表されるパソコン分野;携帯電話用の薄肉筐体、フレームボディ等の携帯電話分野;デジタル一眼レフカメラ用のカバーやミラーボックス等のカメラ分野;スピーカー振動板等のオーディオ分野;時計の秒針;自動車ヘッドカバー、オイルパン、シリンダーブロック、ステアリングホイール、ステアリングメンバー、ミッションケース、シートバックフレーム、ロードホイール等の自動車分野;二輪車エンジン分野;飛行機用エンジン部品、ヘリコプター用ギアボックス等の航空分野;鉄道車両分野;軽量ペンチ、軽量ハンマー等の工具分野;競技用ヨーヨー等のスポーツ分野を挙げることができる。
ここで、図4は、実施例および比較例で得られたマグネシウム合金板の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。図5は、実施例1のエッチングで得られたマグネシウム合金板の表面の表面粗さ曲線の一例を示す図である。
表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO 4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。なお、測定条件は以下のとおりである。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
測定は、マグネシウム合金部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部についておこなった(図4参照)。なお、本実施例・比較例では、マグネシウム合金部材103の全面について粗化処理をおこなっているため、マグネシウム合金/樹脂複合構造体106の接合部表面104について十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の測定をおこなっても、図4に示す測定箇所と同様の評価結果が得られることが理解される。
(エッチング)
マグネシウム合金板AZ91D(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このマグネシウム合金板を、65℃下の市販マグネシウム合金用脱脂剤「クリーナー160(メルテック株式会社製)」の7.5質量%水溶液に5分浸漬した後、水洗した。次いで、40℃で、かつ、クエン酸濃度が3質量%のクエン酸水溶液に8分浸漬させた後、超音波水洗、水洗、および乾燥を順次実施した。このようにして表面処理済みのマグネシウム合金板1を得た。この際のエッチング量ΔW1は3.3mg/cm2であった。
十点平均粗さ(Rz):長手方向3点=2.5μm/2.8μm/2.9μm、短手方向3点=4.5μm/4.6μm/4.1μm、6点の平均値=3.6μm
粗さ曲線要素の平均長さ(RSm):長手方向3点=100μm/139μm/118μm、短手方向3点=58μm/56μm/43μm、6点の平均値=86μm
さらに表面処理済みのマグネシウム合金板1について、X線光電子分光法(XPS)によって、Mn元素の定性分析をしたところMn元素は全く認められなかった。この測定は具体的にはマグネシウム合金表面をArイオンビームによる深さ方向のスパッタリングとXPS分析を交互に行うことによって推定したものである。
このようにして得られた表面処理済みのマグネシウム合金板1を、日本製鋼所社製のJ55AD−30Hに装着された小型ダンベル金属インサート金型102内に設置した。次いで、その金型102内に樹脂組成物(P)であるポリプラスチックス社製PBT樹脂(ジュラネックス930HL)を、シリンダー温度270℃、金型温度160℃、射出一次圧90MPa、保圧80MPaの条件にて射出成形し、マグネシウム合金/樹脂複合構造体1を得た。
実施例1において、クエン酸の1質量%水溶液を用いる代わりに3質量%の塩酸水溶液を用いた以外は実施例1と全く同様にしてエッチングを行い、表面処理済みのマグネシウム合金板2を得た。この際のエッチング量ΔW1は8.2mg/cm2であった。表面処理済みのマグネシウム合金板2について、実施例1と同様にXPS分析したところMn元素は全く認められなかった。
また、表面処理済みのマグネシウム合金板2の十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の結果を以下に示す。
十点平均粗さ(Rz):長手方向3点=5.0μm/5.0μm/5.3μm、短手方向3点=7.9μm/8.2μm/8.3μm、6点の平均値=6.6μm
粗さ曲線要素の平均長さ(RSm):長手方向3点=120μm/151μm/159μm、短手方向3点=74μm/71μm/83μm、6点の平均値=110μm
このようにして得られたマグネシウム合金板2について実施例1と全く同様にして射出成形を行い、マグネシウム合金/樹脂複合構造体2を得た。得られたマグネシウム合金/樹脂複合構造体2の接合強度は34(MPa)であった。破壊面は母材破壊であった。実施例2では実施例1に比べて接合強度そのものは高い値を示すが、エッチング量が多すぎる点で実施例1よりも劣っている。
実施例1のエッチングを特許5129903号に記載された実験例1に準じて行った。すなわち、マグネシウム合金板AZ91D(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このマグネシウム合金板を、65℃下の市販マグネシウム合金用脱脂剤「クリーナー160(メルテック株式会社製)」の7.5質量%水溶液に5分浸漬した後、水洗した。次いで40℃下のクエン酸の1質量%水溶液に4分浸漬させた後、水洗した。その後1質量%の炭酸ナトリウムと1質量%の炭酸水素ナトリウムを含む水溶液に65℃下で5分浸漬した。次いで、65℃下の15質量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬した後、水洗した。その後、40℃の0.25質量%のクエン酸水溶液に1分浸漬した後水洗した。次に、過マンガン酸カリウムを2質量%、酢酸を1質量%、水和酢酸ナトリウムを0.5質量%含む45℃の水溶液に1分浸漬した後、15秒間水洗を行い、90℃の温風乾燥機で乾燥した。このようにして表面処理済みのマグネシウム合金板3を得た。この際のエッチング量ΔW1は1.9mg/cm2であった。表面処理済みのマグネシウム合金板3について、実施例1と同様にXPS分析したところMn元素に起因する強いピークが観測された。
十点平均粗さ(Rz):長手方向3点=1.6μm/1.7μm/1.5μm、短手方向3点=2.3μm/2.1μm/2.5μm、6点の平均値=2.0μm
粗さ曲線要素の平均長さ(RSm):長手方向3点=79μm/121μm/145μm、短手方向3点=143μm/187μm/199μm、6点の平均値=145μm
102 金型
103 マグネシウム合金部材
104 接合部表面(表面処理領域)
105 樹脂部材
106 マグネシウム合金/樹脂複合構造体
107 ゲート/ランナー
110 マグネシウム合金部材の表面
Claims (4)
- マグネシウム合金部材と、熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材が接合してなるマグネシウム合金/樹脂複合構造体であって、
前記マグネシウム合金部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たすマグネシウム合金/樹脂複合構造体。
(1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が2.0μm超過20μm以下の範囲にある
(2)評価長さ4mmにおける粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10μm超過200μm以下の範囲にある - 請求項1に記載のマグネシウム合金/樹脂複合構造体において、
前記マグネシウム合金部材の前記表面にマンガン酸化物が存在しないマグネシウム合金/樹脂複合構造体。 - 請求項1または2に記載のマグネシウム合金/樹脂複合構造体において、
前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂を含むマグネシウム合金/樹脂複合構造体。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマグネシウム合金/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
マグネシウム合金部材を脂肪族カルボン酸水溶液に浸漬する工程を含む表面処理工程と、
前記表面処理工程を経たマグネシウム合金部材を射出成形金型にインサートして熱可塑性樹脂組成物を射出する工程と、
を含むマグネシウム合金/樹脂複合構造体の製造方法。
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JP2003221684A (ja) * | 2001-11-21 | 2003-08-08 | Nippon Paint Co Ltd | マグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法及びマグネシウム及び/又はマグネシウム合金製品 |
WO2015008847A1 (ja) * | 2013-07-18 | 2015-01-22 | 三井化学株式会社 | 金属/樹脂複合構造体および金属部材 |
JP2016190412A (ja) * | 2015-03-31 | 2016-11-10 | 三井化学株式会社 | 金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 |
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2017
- 2017-02-28 JP JP2017036557A patent/JP2018140559A/ja active Pending
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