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JP2018108224A - キルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル - Google Patents

キルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル Download PDF

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JP2018108224A JP2016257153A JP2016257153A JP2018108224A JP 2018108224 A JP2018108224 A JP 2018108224A JP 2016257153 A JP2016257153 A JP 2016257153A JP 2016257153 A JP2016257153 A JP 2016257153A JP 2018108224 A JP2018108224 A JP 2018108224A
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高一 新井
Koichi Arai
高一 新井
義一 新井
Giichi Arai
義一 新井
勝世 木村
Katsuyo Kimura
勝世 木村
智 手嶋
Satoshi Tejima
智 手嶋
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Abstract

【課題】優れた切削能力を備え、且つ切削抵抗が大幅に低減されたキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供する。【解決手段】本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、被切削物を切削する先端部と、回転駆動装置に固定される基端部とを備えたキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルであって、前記先端部から前記基端部に向かって2面以上の平面部が設けられており、前記先端部には1以上のシンニング面が形成されている。【選択図】図4

Description

本発明はキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
骨の手術での骨穿孔時に、穿孔深度と方向を確実にするために、比較的小径のガイドピンをX線透視下で目的の方向と深度で先行的に挿入し、当該ガイドピン軸へ外挿可能な直径の内腔を有する比較的大径の中空ドリルによって、同じ目的の方向と深度で骨穿孔する手術手技が用いられている。
特許文献1には、骨セメントに対する切削性に優れるとともに、再研磨が容易であるガイドピンが開示されている。
即ち特許文献1によれば、IBG手技用のガイドピンを設計するとき、市販のキルシュナー鋼線の構成をそのまま採用すると、次のような問題がある。
ネジ付きキルシュナー鋼線を含め、キルシュナー鋼線の一般的な先端部の形状は、ほぼ共通の構成になっていて、具体的には、先端部が三角錐状になっており、ネジ付きキルシュナー鋼線の場合には、先端部付近の外周部にネジ切りが施されている。このようなキルシュナー鋼線の構成をそのまま採用してIBG手技用のガイドピンを設計すると、三角錐の先端部で骨セメントに切り込み、三角錐のエッジで骨セメントを切削するとき、骨セメントを削りにくいという問題がある。また、繰り返しの使用により先端部が鈍って再研磨するときには、三角錐を構成する3つの平面をそれぞれ削り直す必要があるため、再研磨の負荷が大きいという問題もある。
更に特許文献1の一実施形態のガイドピンは、先端部に位置しており中心軸に沿って延びている複数の溝部と、複数の溝部のうち互いに隣接している溝部同士の間に位置している面部とを備えている。中心軸に垂直な断面視において、複数の溝部がいずれも、中心軸側に凸である。この構成によれば、マイナスのすくい角を小さくする、言い換えればマイナスのすくい角をプラスに近づけることができ、その結果、骨セメントに対する切削性を向上させることができる。なお、すくい角は、断面視において、溝部またはその延長線と、溝部および面部の交差部を通り被削材(骨セメント)に対して垂直な垂線とのなす角の角度を意味する。この実施形態のすくい角は、10°であるが、これに限定されないとしている。
特許文献1には、断面視において、面部は、平坦状または外方に凸の曲線状であるのがよいとしている。曲線状としては、上述した溝部で例示したのと同じ形状が挙げられると記載され、一実施形態では断面視において、面部が、中心軸を中心とする外方に凸の円弧状であるとしている。
即ち特許文献1は、主にIBG手技用として、従来のキルシュナー鋼線の先端部の形状を、中心軸に沿って延びている複数の溝部と、前記複数の溝部のうち互いに隣接している溝部同士の間に位置している面部とを備え、前記中心軸に垂直な断面視において、前記複数の溝部はいずれも前記中心軸側に凸としたガイドピンが記載されているが、シンニング切刃については記載されていない。
特許文献2には、骨の残留部分又は残留骨組織の劣化を伴わずに、孔を骨に穿孔することができるドリル部分を備えた、キルシュナー鋼線、骨ルーター(bone router)、骨ドリル等が開示されている。
特許文献2には更に、慣習的なドリル部分(これらの大部分は円錐状ドリル先端を用いる)は、1200〜2000rpmの速度における穿孔中に、骨が加熱されて、穿孔領域では120℃までの温度に達するという欠点を有し、このような温度は穿孔された孔領域において骨又は骨組織の劣化及び破壊、特に炭化(charring)を惹起すると記載されている。
更に特許文献2では、ドリル先端の温度を最低にするために、ドリル先端はせいぜい約55〜60°、特に約60°の角度でテーパー状であることが好ましいとし、この角度が前記範囲よりも小さいか又は大きい場合には、ドリル部分はあまり効果的でなくなるか又はドリル先端が高温になるとしている。
また特許文献2では、穿孔中に上昇する温度に関して、ドリル先端が約55°〜65°、特に60°の(立体)角でテーパー状であることが好ましいとし、この範囲内の角度は一方では穿孔の最適効率に関して、他方では低い熱発生に関して最適であると判明しているとしている。
つまり、特許文献2には、穿孔時の熱による骨又は骨組織の劣化及び破壊を防止するために、ドリル先端を備えたキルシュナー鋼線であって、ドリル先端が約55°〜65°、特に60°の(立体)角でテーパー状であるキルシュナー鋼線が記載されているが、シンニング切刃を備えていることについては記載されていない。
上記特許文献1及び2は所謂キルシュナー鋼線を用いたものである。その基本形状は丸棒の先端中心に向かって、2面、3面、4面の平面部を設け、3面、4面の先端部は夫々三角錐、四角錐となり、先端は鋭利な針先の様な状態となる。
2面の場合は先端が恰もマイナスドライバー先端形状の直線状になるので、ドリルのように先端角を設定し、回転状態において先端部が円錐形となるように形成している。
2面の場合、ドリルの様な先端角を形成し、回転方向に向かって逆方向に逃げ面を設けることで、先端部(1)の中心部(5)にドリルの様なチゼル部(7)が形成される(図1の(a)参照)。この形状を回転させることによって太線部が切刃(9)の役割を果たし、骨などを穿孔する構造になっている(図1参照)。
3面、4面は角錐形状となり、先端部(1)は点となり、鋭利な針状が形成される。先端部(1)の中心部(5)から円周方向に向かって角錐の稜線(12)が現れ回転すると、この稜線(12)が切刃(9)の役割を果たし、骨などを穿孔する構造となっている(図2参照)。
しかし、これらの形状はドリル様ではなく、切刃相当部分は切削に足る構造をなしていないため、穿孔時に骨などの対象物との間に大きな摩擦が生じ、摩擦熱となって穿孔部分の骨組織を壊死させるという問題を惹起する。
実用新案登録第3203494号公報 特表平9−503138号公報
本発明は、叙上の従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、キルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの欠点である低い切削能力を備え、骨壊死を誘因する温度上昇を伴う形状のガイドワイヤー等に対して、先端部に凹状の曲面(シンニング面)を形成して溝を設け、該溝の縁が切刃形状として作用することで、従来のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルと比較して優れた切削能力を備え、且つ切削抵抗が大幅に低減されたキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、
被切削物を切削する先端部と、
回転駆動装置に固定される基端部と
を備えたキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルであって、
前記先端部から前記基端部に向かって2面以上の平面部が設けられており、
前記先端部には1以上のシンニング面が形成されている
ことを特徴とする、キルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項2に係る発明は、前記平面部が2面設けられ、
前記先端部に先端角が設けられ、
前記先端部は中心部にチゼル部を有し、
前記1以上のシンニング面が、前記先端部の中心部から基端部に向かって、斜め方向外周に向けて略U字状に形成され、
前記中心部にすくい面が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項3に係る発明は、前記平面部が2面設けられ、
前記先端部に先端角が設けられ、
前記先端部は中心部にチゼル部を有し、
前記1以上のシンニング面が、前記先端部の中心部から外周部に向け刃先と略平行に形成されており、
前記1以上のシンニング面に形成された切刃のすくい面の逆側には逃げ面が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項4に係る発明は、前記平面部が3面又は4面設けられ、
前記1以上のシンニング面が、前記先端部よりも前記基端部側方向の位置から基端部に向けて、中心部から斜め方向外周に、該中心部の尖端に関して点対称に形成されており、
前記1以上のシンニング面が、前記平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項5に係る発明は、前記平面部が3面又は4面設けられ、
前記平面部の境界に形成される稜線の少なくとも一部が曲線であり、
前記1以上のシンニング面が、前記先端部よりも前記基端部側方向の位置から基端部に向けて、中心部から斜め方向外周に、該中心部の尖端に関して点対称に形成されており、
前記1以上のシンニング面が、前記平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項6に係る発明は、前記平面部が3面又は4面設けられ、
前記1以上のシンニング面が、前記先端部よりも前記基端部側方向の位置から基端部に向けて、前記平面部の境界に形成される稜線に沿って、中心部の尖端に関して点対称に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項7に係る発明は、前記先端部よりも前記基端部側方向の位置が、該医療用ドリルの最大回転直径の1/5〜1/2であることを特徴とする、請求項4乃至6のいずれか1項に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項8に係る発明は、前記平面部が3面又は4面設けられ、
前記1以上のシンニング面が、前記平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられ、
前記平面部以外の箇所にシンニング面がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに関する。
請求項1に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、先端部に1以上のシンニング面が形成されているため、従来のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルに比べて切削力を大幅に向上させ且つ切削抵抗を大幅に低減することができ、骨穿孔を容易に行うことが可能なキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供することができる。また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穿孔時間が短縮するため作業効率が向上し、ドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。さらに、切削抵抗が大幅に低減されているため、骨穿孔時の加工熱を抑制し、骨組織の壊死を抑制できる。
請求項2に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、平面部が2面設けられ、先端部に先端角が設けられ、先端部は中心部にチゼル部を有し、1以上のシンニング面が、先端部の中心部から基端部に向かって、斜め方向外周に向けて略U字状に形成され、中心部にすくい面が設けられているため、先端部の切れ味(切削能力)が大幅に向上したキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供することができる。また、切削抵抗を大幅に減少させることができるため、骨切削時の発熱を抑えることができ、より容易に骨切削時の骨組織の壊死を抑制できる。
請求項3に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、平面部が2面設けられ、先端部に先端角が設けられ、先端部は中心部にチゼル部を有し、1以上のシンニング面が、前記先端部の中心部から外周部に向け刃先と略平行に形成されており、1以上のシンニング面に形成された切刃のすくい面の逆側には逃げ面が形成されているため、回転切削が効率良く実施でき、先端部の切れ味(切削能力)が大幅に向上したキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供することができる。また、切削抵抗を大幅に減少させることができるため、骨切削時の発熱を抑えることができ、より容易に骨切削時の骨組織の壊死を抑制できる。
請求項4に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、平面部が3面又は4面設けられ、1以上のシンニング面が、先端部よりも基端部側方向の位置から基端部に向けて、中心部から斜め方向外周に、該中心部の尖端に関して点対称に形成されており、1以上のシンニング面が、平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられているため、先端部の切れ味(切削能力)が大幅に向上したキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供することができる。また、稜線を分断した溝によって、切削抵抗の増大を防ぐと共に、稜線近傍の溝縁が切刃として作用し、溝縁溝側に切刃のすくいができることで、切削抵抗を大幅に低減できる。これにより、骨切削時の発熱を抑えることができ、より容易に骨切削時の骨組織の壊死を抑制できる。
請求項5に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、平面部が3面又は4面設けられ、平面部の境界に形成される稜線の少なくとも一部が曲線であり、1以上のシンニング面が、先端部よりも基端部側方向の位置から基端部に向けて、中心部から斜め方向外周に、該中心部の尖端に関して点対称に形成されており、1以上のシンニング面が、平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられているため、更に骨穿孔が円滑に実施できる。また、稜線から連なる平面部をドリル様の曲面とすることで、切削切刃としての性能がより向上したキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供することができる。
請求項6に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、平面部が3面又は4面設けられ、1以上のシンニング面が、先端部よりも基端部側方向の位置から基端部に向けて、平面部の境界に形成される稜線に沿って、中心部の尖端に関して点対称に形成されているため、先端部よりも基端部側方向の位置から基端部に向けて、平面部の境界に形成される稜線に沿って、稜線を切刃とした逃げ面とすくい面が形成され、飛躍的に切削性能を向上させることができる。
請求項7に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、先端部よりも基端部側方向の位置が、該医療用ドリルの最大回転直径の1/5〜1/2であるため、先端部の強度が骨切削に要する力に容易に耐える強度となり、優れた切削能力を備え、且つ優れた耐久性を備えるキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを提供することができる。
請求項8に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルによれば、平面部が3面又は4面設けられ、1以上のシンニング面が、平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられ、平面部以外の箇所にシンニング面がさらに設けられているため、切刃として作用する部分が増加することで切削抵抗が減少し、切削時の発熱を抑制し安全かつ安定した骨穿孔を行うことが可能となる。
従来のキルシュナー鋼線を用いた2面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 従来のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 従来のキルシュナー鋼線を用いた4面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 本発明の第一実施形態のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図。 本発明の第二実施形態のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 本発明の第二実施形態のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを示す図であって、(a)は曲線形状を備えるチゼル部の拡大側面図、(b)は直線形状(くの字状)を備えるチゼル部の拡大側面図である。 本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた4面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルの変形例を示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 本発明の第四実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 本発明の第四実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルの変形例を示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図、(c)は側面図の要部拡大図である。 本発明の第五実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。 実施例で用いた切削性能試験の概略説明図である。
[実施形態1]
以下、本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図4は本発明の第一実施形態のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である
本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、本発明の第一実施形態乃至第五実施形態に共通して、骨等の被切削物を切削(穿孔)するための先端部(1)と、回転駆動装置(図示せず)に固定される基端部(2)とを備え、先端部(1)から基端部(2)に向かって2面以上の平面部(3)が設けられており、先端部(1)には1以上のシンニング面(4)が形成されているという特徴を備えている。
本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、この共通の特徴を備えることにより、従来のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルと比較して優れた切削能力を備え、且つ切削抵抗を大幅に低減することができるという優れた効果を奏する。
本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、捩れを有していないが、捩れを備えた形状であってもよい。
尚、回転駆動装置は、手動式ピンバイスや電動式モータ等、医療用ドリルに使用され、当業者に自明のものであれば、いかなるものを用いてもよい。
また、本明細書中において、シンニング面(4)とシンニングによって形成された溝(以下、単に溝又は溝部と称する)は同義である。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部(3)が2面設けられ、先端部(1)には先端角(α)が設けられており、1以上のシンニング面(4)が、先端部(1)の中心部(5)から基端部(2)に向かって、斜め方向外周に向けて略U字状に形成され、中心部(5)にすくい面(6)が設けられている。
図4の(b)に示す通り、先端部(1)には、チゼル部(7)及び逃げ面(8)が形成されている。
平面部(3)は、先端部(1)から基端部(2)に向けて形成されている。切削能力や耐久性の観点から、平面部(3)は回転軸対称に形成されることが望ましいが、これに限定されず、回転軸非対称(asymmetry)に形成されていても良い。
図4の(a)において、平面部(3)の基端部(2)側の端部は曲線状であるが、これに限定されず、例えば直線状であってもよく、いかなる形状であってもよい。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部が2面のため、先端部(1)が直線状(マイナスドライバー様の先端形状)になる。そのため、通常のドリルの様に先端角(α)を設定し、医療用ドリルの回転状態において先端部(1)が円錐形となるように先端部(1)を形成している。
尚、先端角(α)は、切削能力と切削抵抗の観点から、30°〜150°が望ましく、45°〜120°であることがさらに望ましい。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの先端部(1)の中心部(5)には、シンニングが施されており、1以上のシンニング面(4)が形成されている。
このシンニング面(4)の形状は、先端部(1)の中心部(5)から基端部(2)に向かって、斜め方向外周に向けて略U字状に形成されている(図4の(a)参照)。このように、先端部(1)に曲線を含む形状のシンニング面(すなわち、溝)を形成して、シンニング面の縁部分(9)が切刃形状として作用し、且つ中心部(5)にすくい面(6)が形成されるため、従来のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルよりも大幅に切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる。
シンニング面(4)の断面形状は、図4の(b)に示すとおり、切削能力と切削抵抗の観点から、シンニング面(4)の凹部が曲線形状であることが望ましいが、これに限定されず、例えば、凹部が直線形状のものや直線と曲線を組み合わせたものであってもよく、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
尚、すくい面(6)の角度(以下、すくい角(θ)と称す)は、切削能力と切削抵抗の観点から、0.1°〜5°が望ましく、0.2°〜4°であることがさらに望ましい。但し、チゼル部(7)の直下のみでθ≒0°(ほぼ0°に近いθ<0°)となる。
θ>0°とするのは、シンニング面(4)により形成されたすくい角(θ)が0°からマイナスになると逆に切削抵抗が増加し、却って切れ味が悪くなるためである。
従来のキルシュナー鋼線では、すくい面が存在しないため骨切削に要する形状が形成できていないのが実情で、先端部にシンニングを施すことで、骨切削に要する切刃(9)と適正なすくい角(θ)が形成される。
すくい角が形成されることによって、切れ味が向上し、穿孔すべき骨組織部に対して正確な切削が可能となる。特に、本実施形態に係るキルシュナー鋼線に施されるシンニングによれば、施術に適した緩やかなすくい角が創成されることとなる。
逃げ面の角度(以下、逃げ角と称する)(β)は0°<β<15°を満たすように設定し、先端角が小さい場合は15°寄りに設定し、先端角が大きい場合は0°寄りに設定する。この場合好ましくは0°<β≦4°を満たすように設定する。
本実施形態では逃げ角(β)を先端角(α)に応じて変更することによって骨組織に対してより容易に切削できるようになる。
チゼル部の幅(W)(図4の(b)参照)は、被切削物を容易に切れるようにするために小さく設定することが好ましい。具体的には、ドリル直径の10%〜20%に設定することが好ましい。例えば、直径φが0.5〜6mmの場合、チゼル部の幅(W)はドリル直径の増減に応じて0.05〜1.2mmの範囲で増減させて設定することが望ましい。
尚、シンニング面(4)の形状は、上記した形状に限定されるものではなく、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、先端部(1)の中心部からややずれて形成されていてもよく、略V字状であってもよく、いかなる形状であってもよい。
また、シンニング面(4)の基端部(2)方向(長手方向)の長さや、幅方向の長さも特に限定されず、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる寸法であってもよい。
[実施形態2]
以下、本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図5は本発明の第二実施形態のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。図6は本発明の第二実施形態のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを示す図であって、(a)は曲線形状を備えるチゼル部(7)の拡大側面図、(b)は直線形状(くの字状)を備えるチゼル部(7)の拡大側面図である。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部(3)が2面設けられ、先端部(1)には先端角(α)が設けられており、先端部(1)は中心部(5)にチゼル部(7)を有し、1以上のシンニング面(4)が、先端部(1)の中心部(5)から外周部(10)に向け刃先と略平行に形成されており、1以上のシンニング面(4)に形成された切刃のすくい面(6)の逆側には逃げ面(8)が形成されている。
平面部(3)は、先端部(1)から基端部(2)に向けて形成されている。切削能力や耐久性の観点から、平面部(3)は回転軸対称に形成されることが望ましいが、これに限定されず、回転軸非対称に形成されていても良い。
図5の(a)において、平面部(3)の基端部(2)側の端部は曲線状であるが、これに限定されず、例えば直線状であってもよく、いかなる形状であってもよい。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部(3)が2面のため、先端部(1)が直線状(マイナスドライバー様の先端形状)になる。そのため、通常のドリルの様に先端角(α)を設定し、医療用ドリルの回転状態において先端部(1)が円錐形となるように先端部(1)を形成している。
尚、先端角(α)は、切削能力と切削抵抗の観点から、30°〜150°が望ましく、45°〜120°であることがさらに望ましい。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの先端部(1)には、シンニングが施されており、1以上のシンニング面(4)が形成されている。
このシンニング面(4)は、先端部(1)の中心部(5)から外周部(10)に向け刃先と略平行に形成されており、1以上のシンニング面(4)に形成された切刃(9)のすくい面(6)の逆側には逃げ面(8)が形成されている。このように、先端部(1)の中心部(5)から外周部(10)に向け刃先と略並行にシンニング面(4)を形成することで、刃先全体にすくい面を設け、明確な切刃(9)を創成することができる。先端部(1)は、ドリルの様に中心部(5)にチゼル部(7)を有し、シンニング面(4)を設けることで形成された切刃(9)のすくい面(6)の逆側に逃げ面(8)を形成し、回転切削が効率良く行える形を形成する。
チゼル部(7)は直線としても良いが、曲線(R)を含む形状、或いは先端をくの字状(L)とすると中心部(5)の滑りが抑制され、骨穿孔術に於いて的確な施術が行なわれる形状となる(図6参照)。
尚、シンニング面(4)の形状は、上記した形状に限定されるものではなく、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
また、シンニング面(4)の基端部(2)方向(長手方向)の長さや、幅方向の長さも特に限定されず、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる寸法であってもよい。
[実施形態3]
以下、本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図7は本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。図8は本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた4面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。図9は本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルの変形例を示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部(3)が3面又は4面設けられ、1以上のシンニング面(4)が、先端部(1)よりも基端部側方向の位置(P)から基端部(2)に向けて、中心部(5)から斜め方向外周に、該中心部(5)の尖端(11)に関して点対称に形成されており、1以上のシンニング面(4)が、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)を分断するように設けられている。
尚、切削能力や耐久性の観点から、1以上のシンニング面(4)は、中心部(5)の尖端(11)に関して点対称に形成されていることが望ましいが、これに限定されず、所望の切削能力や耐久性を備えているものであれば、点対称でなくてもよい(すなわち、非対称(asymmetry))。
図7は本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図である。医療用ドリルが3面の平面部(3)を備える場合、先端部(1)は三角錐形状となる。3面の平面部(3)の境界にできる稜線(12)は直線である。この形状に於いては、稜線(12)が骨組織を押し広げ骨穿孔を行う切刃(9)として作用する。
シンニング面(4)は稜線(12)を分断する形で、先端部(1)よりも基端部側方向の位置から基端部(2)に向けて、中心部(5)から斜め方向外周に、該中心部(5)の尖端(11)に関して点対称に形成される。
シンニング面(4)の断面形状は、図7の(b)に示すとおり、切削能力と切削抵抗の観点から、シンニング面(4)の凹部が曲線形状であることが望ましいが、これに限定されず、例えば、凹部が直線形状のものや直線と曲線を組み合わせたものであってもよく、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
また、切削能力と切削抵抗の観点から、シンニング面(4)は各平面部に1つずつ設けることが望ましい(すなわち、平面部が3面設けられている場合は3つのシンニング面、平面部が4面設けられている場合は4つのシンニング面)。これにより、ドリルの高い切削能力と高い耐久性を両立できる。しかしながら、これに限定されず、例えば各平面部にシンニング面を2つずつ設ける等、所望の切削能力と耐久性を得ることができるのであればいかなる数のシンニング面を設けてもよい。
尚、シンニング面(4)の形状は、上記した形状に限定されるものではなく、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
また、シンニング面(4)の基端部(2)方向(長手方向)の長さや、幅方向の長さも特に限定されず、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる寸法であってもよい。
稜線(12)を分断した溝(4)によって、切削抵抗の増大を防ぐと共に、稜線(12)近傍の溝部(4)の縁が切刃(9)として作用し(図7の(a)のA−B間)、溝(4)の縁の溝側に切刃(9)のすくい面(6)ができることで、切削抵抗を大幅に低減できる構造となる。
3面の平面部を備えるドリルの場合、その先端の形状は三角錐となり、4面の平面部を備えるドリルの場合、その先端の形状は四角錐となる。三角錐及び四角錐の先端部は、鉄などの金属に穴を開け得る形状ではないが、鉄と比べると軟らかい骨に対しては、(大工道具の錐の様に)無理なく骨繊維を押し広げ穿孔できる形状ではあるが、角錐故に回転径が広がるにつれて切削抵抗が上昇し切れ難くなるため、シンニング面(4)を形成する位置(P)は、先端部の切削力が骨に対しての切削効果が有効な位置であり、且つ溝を入れた後の強度が骨切削に要する力に耐えうる位置に限定する必要がある。
これらを鑑み、シンニング面を形成する位置(P)は先端部の中心部から、角錐・最大回転直径の凡そ1/4を目安として形成し、先端角によってその数値を調整しながら最適位置を確定することが望ましい。
例えば、先端角が比較的大きい場合は、1/5、小さい場合は1/3〜1/2等にすることが望ましい。
平面部(3)は、先端部(1)から基端部(2)に向けて形成されている。切削能力や耐久性の観点から、平面部(3)は回転軸対称に形成されることが望ましいが、これに限定されず、回転軸非対称(asymmetry)に形成されていても良い。
図7の(a)において、平面部(3)の基端部(2)側の端部は曲線状であるが、これに限定されず、例えば直線状であってもよく、いかなる形状であってもよい。
図8は本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた4面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図である。本実施形態において、4面の平面部を備えた医療用ドリルの特徴は、平面部が4面であること以外、その特徴は3面の平面部を備えた医療用ドリルと同じであるため、詳細な説明は省略する。
図9は本発明の第三実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルの変形例を示す図である。
本実施形態の変形例に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部(3)が3面又は4面設けられ、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)の少なくとも一部が曲線(13)であり、1以上のシンニング面(4)が、先端部(1)よりも基端部側方向の位置(P)から基端部(2)に向けて、中心部(5)から斜め方向外周に、該中心部(5)の尖端(11)に関して点対称に形成されており、1以上のシンニング面(4)が、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)を分断するように設けられている。
この変形例では、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)の少なくとも一部が曲線(13)としている。
このように、先端部(1)に若干ドリル様の要素を取り入れることで、先端部(1)の単純な三角錐構造に若干の変更を加え、ドリル様の逃げ面(8)を持たせることによって更に骨穿孔が円滑に行える構造となる。
先端部(1)の稜線(12)を切刃と見た場合、単純な角錐構造では逃げ面(8)が平坦であるが、平面をドリル様の曲面に変えることで、切削切刃としての性能をさらに向上させることができる。
逃げ面(8)が曲面となることで、中心部(5)近傍の稜線(12)は曲線(13)となり外周部(10)に向けて徐々に直線になる。又、三角錐、四角錐形状が少し膨らみを持ち、円錐形状に近づき、シンニング面に形成される切刃(9)の能力がドリルに近づき、切削力をさらに増大させることができる。
尚、切削能力や耐久性の観点から、稜線(12)に形成される曲線(13)は、先端部(1)の中心部(5)から叙上のシンニング面(4)を形成する位置(P)の間においてのみ形成することが望ましいが、これに限定されず、例えば、稜線(12)全体に亘って曲線(13)を形成してもよい。
この変形例は、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)の少なくとも一部に曲線(13)を備えていることを除いて、本実施形態の医療用ドリルと同じ特徴を備えている。
[実施形態4]
以下、本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図10は本発明の第四実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図である。図11は本発明の第四実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルの変形例を示す図であって、(a)は側面図、(b)は先端部の正面図、(c)は側面図の要部拡大図である。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部(3)が3面又は4面設けられ、1以上のシンニング面(4)が、先端部(1)よりも基端部側方向の位置から基端部(2)に向けて、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)に沿って、中心部(5)の尖端(11)に関して点対称に形成されている。
先端部(1)の稜線(12)に沿って曲線を含む形状のシンニング面(4)を設けて、先端部(1)の稜線(12)上に切刃(9)を形成する。シンニング面(4)の形成によって、先端部(1)から連なる稜線(12)の位置から外周に掛けて(すなわち、図10の(a)のA−B間)、稜線(12)を切刃(9)とした逃げ面(8)とすくい面(6)が形成され、明確な切刃(9)を持つこととなり、先端部(1)が三角錐又は四角錐形状の従来の医療用ドリルと比較し、飛躍的に切削性能を向上させることができる。
尚、シンニング面(4)の形状は、上記した形状に限定されるものではなく、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
また、シンニング面(4)の基端部(2)方向(長手方向)の長さや、幅方向の長さも特に限定されず、切削能力を向上させ、切削抵抗を低減することができる形状であれば、いかなる寸法であってもよい。
3面の平面部を備えるドリルの場合、その先端の形状は三角錐となり、4面の平面部を備えるドリルの場合、その先端の形状は四角錐となる。三角錐及び四角錐の先端部は、鉄などの金属に穴を開け得る形状ではないが、鉄と比べると軟らかい骨に対しては、(大工道具の錐の様に)無理なく骨繊維を押し広げ穿孔できる形状ではあるが、角錐故に回転径が広がるにつれて切削抵抗が上昇し切れ難くなるため、シンニング面(4)を形成する位置(P)は、先端部の切削力が骨に対しての切削効果が有効な位置であり、且つ溝を入れた後の強度が骨切削に要する力に耐えうる位置に限定する必要がある。
これらを鑑み、シンニング面を形成する位置(P)は先端部の中心部から、角錐・最大回転直径の凡そ1/4を目安として形成し、先端角によってその数値を調整しながら最適位置を確定することが望ましい。
例えば、先端角が比較的大きい場合は、1/5、小さい場合は1/3〜1/2等にすることが望ましい。
平面部(3)は、先端部(1)から基端部(2)に向けて形成されている。切削能力や耐久性の観点から、平面部(3)は回転軸対称に形成されることが望ましいが、これに限定されず、回転軸非対称(asymmetry)に形成されていても良い。
図10の(a)において、平面部(3)の基端部(2)側の端部は曲線状であるが、これに限定されず、例えば直線状であってもよく、いかなる形状であってもよい。
図11は、本発明の第四実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルの変形例を示す図である。
本実施形態の変形例に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部(3)が3面又は4面設けられ、1以上のシンニング面(4)が、先端部(1)よりも基端部側方向の位置から基端部(2)に向けて、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)に沿って、中心部(5)の尖端に関して点対称に形成されている。
この変形例では、図11の(c)に示すとおり、稜線(12)と切刃(9)は、同一線上ではなく、寸法差(d)が生じる形状となっている。
稜線(12)と切刃(9)に寸法差(d)が生じている場合においても、先端部が三角錐や四角錐形状の従来の医療用ドリルと比較し、飛躍的に切削性能を向上させることができる。
本実施形態において、4面の平面部を備えた医療用ドリルの特徴は、平面部が4面であること以外、その特徴は3面の平面部を備えた医療用ドリルと同じであるため、詳細な説明は省略する。
[実施形態5]
以下、本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。図12は本発明の第五実施形態のキルシュナー鋼線を用いた3面の平面部を備えた医療用ドリルを示す図である。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、平面部が3面又は4面設けられ、1以上のシンニング面(4)が、平面部(3)の境界に形成される稜線(12)を分断するように設けられ、平面部(3)以外の箇所にシンニング面(4)がさらに設けられている。
本実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、図12に示すように、シンニング面(4)を稜線(12)から外周部(10)にかけて設けるのではなく、比較的短いシンニング面を角錐稜線(12)から2箇所(3箇所以上でもよい)及び角錐以外の傾斜面の稜線(12)(曲線部)から1箇所(2箇所以上でもよい)、都合3箇所(4箇所以上でもよい)の溝(4)を設けた形状とする。
図12に示すように、予め先端部(1)を少しだけ平らにして、点ではなく微小な三角形の平面状にすることで、鋭利な刃先が折損するなどのリスクを回避することができる。
先端部(1)は、切削能力や穿孔開始時の滑り等に配慮し、先端部除去後の平面にできる正三角形の頂点−対向辺の長さを凡そ0.1mm乃至0.3mmに設定する。
先端部(1)の稜線から傾斜面曲線部稜線に掛けて設けたシンニング面(4)によって、切刃として作用する部分が加わり、従来の医療用ドリルの角錐形状と比較して、切削抵抗が減少し、発熱を抑制し安全かつ安定した骨穿孔を行うことが可能となる。
本実施形態において、4面の平面部を備えた医療用ドリルの特徴は、平面部が4面であること以外、その特徴は3面の平面部を備えた医療用ドリルと同じであるため、詳細な説明は省略する。
本発明の実施例と比較例の医療用ドリルを用いて、模擬皮質骨(皮質骨シート:SAW3401−05)8mmに対して穿孔を行い、切削抵抗、穿孔時の温度を測定、比較した。
(試験方法)
図13に示す通り、NCフライス盤に動力計、模擬皮質骨の順に固定して、穿孔対象である模擬皮質骨に対して穿孔を実施した。
切削条件は、直径に関わらず以下の条件とした。
・回転数:13.33s−1(800RPM)(毎分800回転)
・送り:毎分20mm(0.025mm/1回転)
試験装置は以下のものを使用した(鳥取県産業技術センターにて、同センターの機器を使用)。
・穿孔機器:NCフライス盤(大鳥機工:ON−3VII)
・切削抵抗測定:動力計(キスラー:9345B)
・切削抵抗測定:記録計(日置:8430)
・温度測定:サーモグラフィー(日本アビオニクス:TVS700)
本試験には、以下の医療用ドリルを使用した。
1)従来の平面部が2面のキルシュナー鋼線:直径2.4mm×300mm
2)従来の平面部が3面のキルシュナー鋼線:直径3.0mm×300mm
3)第1実施形態の医療用ドリル:直径2.4mm×300mm
4)第2実施形態の医療用ドリル:直径2.4mm×300mm
5)第3実施形態の医療用ドリル:直径3.0mm×300mm
6)第3実施形態の変形例の医療用ドリル:直径3.0mm×300mm
7)第4実施形態の変形例の医療用ドリル:直径3.0mm×300mm
試験結果を上記表1及び表2に示している。表1及び表2に示す結果の通り、平面部が2面及び3面の両方の医療用ドリルにおいて、本発明に係る医療用ドリルは従来型の医療用ドリルよりも切削抵抗及び発熱が低くなっていることが分かる。
この結果から、本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルが、従来のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルと比較して優れた切削能力を備え、且つ切削抵抗を大幅に低減していることが分かる。
このように、本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルを用いることにより、穴あけ精度が向上し、穿孔時間が短縮するため作業効率が向上し、ドリルの寿命を大幅に延ばすことができる。さらに、切削抵抗が大幅に低減され、骨穿孔時の発熱を抑制することができるため、骨組織の壊死を抑制できる。
第一乃至第五実施形態に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、本出願と同日で本出願人が別途出願している「医療用中空ドリル」に記載されている中実ドリルとして使用することもできる。
尚、本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルの材質は、ステンレス、チタン合金など、医療用途に定められた材質が好ましい。
本発明に係るキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルは、優れた切削能力を備え、且つ切削抵抗を大幅に低減でき、骨穿孔時の発熱を抑制することができるため、骨折時の内固定等、骨折治療全般に好適に使用される。
1 先端部
2 基端部
3 平面部
4 シンニング面
5 中心部
6 すくい面
7 チゼル部
8 逃げ面
9 シンニング面の縁部分(切刃)
10 外周部
11 尖端
12 稜線
13 曲線
d 寸法差
P 基端部側方向の位置(シンニング面を形成する位置)
W チゼル部の幅
α 先端角
β 逃げ角
θ すくい角

Claims (8)

  1. 被切削物を切削する先端部と、
    回転駆動装置に固定される基端部と
    を備えたキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリルであって、
    前記先端部から前記基端部に向かって2面以上の平面部が設けられており、
    前記先端部には1以上のシンニング面が形成されている
    ことを特徴とする、キルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
  2. 前記平面部が2面設けられ、
    前記先端部に先端角が設けられ、
    前記先端部は中心部にチゼル部を有し、
    前記1以上のシンニング面が、前記先端部の中心部から基端部に向かって、斜め方向外周に向けて略U字状に形成され、
    前記中心部にすくい面が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
  3. 前記平面部が2面設けられ、
    前記先端部に先端角が設けられ、
    前記先端部は中心部にチゼル部を有し、
    前記1以上のシンニング面が、前記先端部の中心部から外周部に向け刃先と略平行に形成されており、
    前記1以上のシンニング面に形成された切刃のすくい面の逆側には逃げ面が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
  4. 前記平面部が3面又は4面設けられ、
    前記1以上のシンニング面が、前記先端部よりも前記基端部側方向の位置から基端部に向けて、中心部から斜め方向外周に、該中心部の尖端に関して点対称に形成されており、
    前記1以上のシンニング面が、前記平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
  5. 前記平面部が3面又は4面設けられ、
    前記平面部の境界に形成される稜線の少なくとも一部が曲線であり、
    前記1以上のシンニング面が、前記先端部よりも前記基端部側方向の位置から基端部に向けて、中心部から斜め方向外周に、該中心部の尖端に関して点対称に形成されており、
    前記1以上のシンニング面が、前記平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
  6. 前記平面部が3面又は4面設けられ、
    前記1以上のシンニング面が、前記先端部よりも前記基端部側方向の位置から基端部に向けて、前記平面部の境界に形成される稜線に沿って、中心部の尖端に関して点対称に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
  7. 前記先端部よりも前記基端部側方向の位置が、該医療用ドリルの最大回転直径の1/5〜1/2であることを特徴とする、請求項4乃至6のいずれか1項に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
  8. 前記平面部が3面又は4面設けられ、
    前記1以上のシンニング面が、前記平面部の境界に形成される稜線を分断するように設けられ、
    前記平面部以外の箇所にシンニング面がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキルシュナー鋼線を用いた医療用ドリル。
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