本発明は、下記化学式(1A)で表される繰り返し単位と、下記化学式(2A)で表される繰り返し単位とを含むことを特徴とするポリイミド前駆体である。
(式中、A1又はA2は、水酸基もしくはカルボキシル基の少なくともどちらか一方を含む芳香族環を有する2価の基であり、
式中、Xは芳香環を含まない4価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数3〜9のアルキルシリル基である。)
本発明のポリイミド前駆体は、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位と前記化学式(2A)で表される繰り返し単位とを含む。ただし、本発明のポリイミド前駆体は、全体として、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位および前記化学式(2A)で表される繰り返し単位を含めばよく、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位のみを含むポリイミド前駆体と、前記化学式(2A)で表される繰り返し単位のみを含むポリイミド前駆体とを含むものであってもよい。
前記化学式(1A)で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、50%モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく90モル%以上であることが特に好ましい。
前記化学式(1A)で表される繰り返し単位と、前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の合計含有量は、全繰り返し単位に対して、90〜100モル%であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましい。ある実施態様においては、本発明のポリイミド前駆体は、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位および前記化学式(2A)で表される繰り返し単位からなることが特に好ましい。
本発明のポリイミド前駆体は、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜90モル%であり、前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜90モル%であることが好ましく、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して30〜90モル%であり、前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜70モル%であることがより好ましく、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して50〜90モル%であり、前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜50モル%であることが特に好ましい。
なお、ポリイミド前駆体は、前記化学式(1A)で表される繰り返し単位を1種含むものであっても、A1が異なる前記化学式(1A)で表される繰り返し単位を少なくとも2種含むものであってもよく、また、前記化学式(2A)で表される繰り返し単位を1種含むものであっても、A2が異なる前記化学式(2A)で表される繰り返し単位を少なくとも2種含むものであってもよい。
前記化学式(1A)中のA1又は前記化学式(2A)中のA2は、水酸基もしくはカルボキシル基の少なくともどちらか一方を含む芳香族環を有する2価の基である。
前記化学式(1A)中のA1又は前記化学式(2A)中のA2は、水酸基もしくはカルボキシル基の少なくともどちらか一方を含む炭素数が6〜40の芳香族環を有する2価の基が好ましく、下記化学式(A−1)もしくは下記化学式(A−2)の少なくともどちらか一方で表される基が特に好ましい。
(式中、mは0〜3を、nは0〜3をそれぞれ独立に示す。Y1、Y2、Y3の少なくとも1つが、水酸基もしくはカルボキシル基を示し、Q、Rはそれぞれ独立に直接結合、または 式:−NHCO-、−CONH-、−COO-、−OCO-、エーテル基、メチル基、イソプロピリデン基で表される基よりなる群から選択される1種を示す。)
(式中、oは0〜3を、pは0〜3をそれぞれ独立に示す。Y4、Y5、Y6、Y7、Y8の少なくとも1つが、水酸基もしくはカルボキシル基を示し、T、Uはそれぞれ独立に 式:>NCO-、−CON<、>N-、で表される基よりなる群から選択される1種を示す。)
A1が前記化学式(A−1)もしくは(A−2)で表される基である前記化学式(1A)の繰り返し単位、及びA2が前記化学式(A−1)もしくは(A−2)で表される基である前記化学式(2A)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2’−ジヒドロキシベンジジン、2,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,5−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,3‘’−ジアミノ−4,4‘’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,2−ビス(4−アミノ−2−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−2−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4,4‘’−ジアミノ−N−(4−カルボキシフェノキシ)ベンズアニリド、N−ビス(4−アミノフェノキシ)−4−カルボキシルアニリン、5−アミノ−2−(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4,4‘’−ジアミノ−4‘’‘’−ヒドロキシトリフェニルアミン、3,5−ジアミノ−4−メトキシ安息香酸、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、5,5’−メチレンビス(2−アミノ安息香酸)、2,2’−ビス(3−アミノ―4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス(4−アミノベンズアミド)−3,3’−ジヒドロキシビフェニル等が挙げられ、単独で使用してもよく、また、複数種を組み合わせて使用することも出来る。これらのうち、3,3’−ジヒドロキシベンジジンが好ましい。
前記化学式(A−1)で表される基において、芳香環同士の連結位置は特に限定されないが、芳香環同士の連結基に対して4位で結合することが好ましい。
さらに、前記化学式(1A)中のA1及び前記化学式(2A)中のA2としては、mおよびnが0である前記化学式(A−1)で表される基、または、mおよび/またはnが1〜3であり、QおよびRが直接結合である前記化学式(A−1)で表される基がより好ましく、下記化学式(D−1)で表される基が特に好ましい。
なお、A1が前記化学式(D−1)で表される基である前記化学式(1A)の繰り返し単位、及びA2が前記化学式(D−1)で表される基である前記化学式(2A)の繰り返し単位を与えるジアミン成分は3,3’−ジヒドロキシベンジジンである。
前記化学式(1A)または前記化学式(2A)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、A1またはA2が前記化学式(A−1)もしくは(A−2)の構造のものを与えるジアミン成分以外の、他の芳香族ジアミン類を使用することができる。他のジアミン成分としては、例えば、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−トリジン)、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジアミノ−ビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−p−フェニレンビス(p−アミノベンズアミド)、4−アミノフェノキシ−4−ジアミノベンゾエート、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス(4−アミノフェニル)エステル、p−フェニレンビス(p−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジカルボキシレート、[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル ビス(4-アミノベンゾエート)、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、p−メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノビフェニル、6,6'-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダン、6,6'-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダン等やこれらの誘導体が挙げられ、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。これらのうち、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、p−メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−トリジン)、p−フェニレンジアミンが好ましく、特に2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−トリジン)が好ましい。
A1が前記化学式(A−1)で表される基である前記化学式(1A)で表される繰り返し単位と、A2が前記化学式(A−1)で表される基である前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の合計含有量は、全繰り返し単位に対して、70〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることが特に好ましい。
A1が前記化学式(D−1)で表される基である前記化学式(1A)で表される繰り返し単位と、A2が前記化学式(D−1)で表される基である前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の合計含有量は、全繰り返し単位に対して、10〜100モル%であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましく、30〜100モル%であることがより好ましく、50〜100モル%であることがより好ましく、70〜100モル%であることがより好ましく、80〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることが特に好ましい。
本発明のポリイミド前駆体は、A1が前記化学式(A−1)で表される基(好ましくは前記化学式(D−1)で表される基)である前記化学式(1A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜90モル%であり、A2が前記化学式(A−1)で表される基(好ましくは前記化学式(D−1)で表される基)である前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜90モル%であることが好ましく、A1が前記化学式(A−1)で表される基(好ましくは前記化学式(D−1)で表される基)である前記化学式(1A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して30〜90モル%であり、A2が前記化学式(A−1)で表される基(好ましくは前記化学式(D−1)で表される基)である前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜70モル%であることがより好ましく、A1が前記化学式(A−1)で表される基(好ましくは前記化学式(D−1)で表される基)である前記化学式(1A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して50〜90モル%であり、A2が前記化学式(A−1)で表される基(好ましくは前記化学式(D−1)で表される基)である前記化学式(2A)で表される繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して10〜50モル%であることが特に好ましい。
A1が前記化学式(A−1)で表される基である前記化学式(1A)の繰り返し単位、及びA2が前記化学式(A−1)で表される基である前記化学式(2A)の繰り返し単位を与える他のジアミン成分としては、特に限定するものではないが、例えば、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2'−ジヒドロキシベンジジン、2,3'−ジヒドロキシベンジジン、2,5−ジアミノフェノール、等が挙げられ、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。これらのうち、3,3’−ジヒドロキシベンジジンがより好ましい。
前記化学式(1A)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸類等(テトラカルボン酸類等とは、テトラカルボン酸と、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等のテトラカルボン酸誘導体を表す)であり、前記化学式(2A)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分は芳香環を含まない4価の基である。
前記化学式(1A)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸類等の、1種を単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
前記化学式(2A)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては以下に示す。
前記化学式(2A)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、芳香環を含まない4価の基であれば、特に限定されないが、例えば、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−オキシビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−チオビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−スルホニルビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(テトラフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、オクタヒドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、6−(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5−トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−7−エン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、9−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸、デカヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸等の誘導体や、これらの酸二無水物が挙げられ、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。これらのうち、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸、デカヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸が好ましく、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸が特に好ましい。これらのテトラカルボン酸類は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
前記化学式(2A)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分として好ましくは、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸類等の、1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸類等としては、trans−endo−endo−ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸類等および/またはcis−endo−endo−ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸類等がより好ましい。
本発明のポリイミド前駆体は、前記化学式(1A)、または前記化学式(2A)で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位の1種以上を含むことができる。
他の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、他の芳香族または脂肪族テトラカルボン酸類を使用することができる。例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−オキシビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−チオビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−スルホニルビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(テトラフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、オクタヒドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、6−(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5−トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−7−エン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、9−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、デカヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸等の誘導体や、これらの酸二無水物が挙げられ、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。これらのテトラカルボン酸類は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
また、組み合わせるジアミン成分が脂肪族ジアミン類の場合、他の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分として、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、芳香環を含まない酸二無水物等の誘導体や、これらの酸二無水物も使用することもできる。
他の繰り返し単位を与えるジアミン成分は、A1が前記化学式(A−1)もしくは(A−2)で表される基である前記化学式(1A)の繰り返し単位、及びA2が前記化学式(A−1)もしくは(A−2)で表される基である前記化学式(2A)の繰り返し単位を与えるジアミン成分として例示したジアミンであってもよい。
他の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、他の芳香族または脂肪族ジアミン類を使用することができる。例えば、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−トリジン)、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジアミノ−ビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−p−フェニレンビス(p−アミノベンズアミド)、4−アミノフェノキシ−4−ジアミノベンゾエート、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス(4−アミノフェニル)エステル、p−フェニレンビス(p−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジカルボキシレート、[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル ビス(4-アミノベンゾエート)、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、p−メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ジアミノシクロへキサン、1,4−ジアミノ−2−メチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−エチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−プロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソプロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−ブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2―sec―ブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2―tert―ブチルシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロへキサン、1,3−ジアミノシクロブタン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデン6,6'-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダン、6,6'-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダン等やこれらの誘導体が挙げられ、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
ただし、前記化学式(1A)は、シクロブタン環の1位の酸基がアミノ基と反応してアミド結合(−CONH−)を形成しており、2位の酸基がアミド結合を形成していない−COOR1で表される基であるとした場合、3位または4位の一方の酸基がアミノ基と反応してアミド結合(−CONH−)を形成しており、一方がアミド結合を形成していない−COOR2で表される基であることを示す。すなわち、前記化学式(1A)には、2つの構造異性体が含まれる。
本発明のポリイミド前駆体において、前記化学式(1A)のR1、R2、前記化学式(2A)のR3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数3〜9のアルキルシリル基のいずれかである。R1及びR2、R3及びR4は、後述する製造方法によって、その官能基の種類、及び、官能基の導入率を変化させることができる。
R1及びR2、R3及びR4が水素である場合、ポリイミドの製造が容易である傾向がある。
また、R1及びR2、R3及びR4が炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である場合、ポリイミド前駆体の保存安定性に優れる傾向がある。この場合、R1及びR2、R3及びR4はメチル基もしくはエチル基であることがより好ましい。
更に、R1及びR2、R3及びR4が炭素数3〜9のアルキルシリル基である場合、ポリイミド前駆体の溶解性が優れる傾向がある。この場合、R1及びR2、R3及びR4はトリメチルシリル基もしくはt−ブチルジメチルシリル基であることがより好ましい。
官能基の導入率は、特に限定されないが、アルキル基もしくはアルキルシリル基を導入する場合、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ、25%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上をアルキル基もしくはアルキルシリル基にすることができる。
本発明のポリイミド前駆体は、R1及びR2、R3及びR4が取る化学構造によって、1)ポリアミド酸(R1及びR2、R3及びR4が水素)、2)ポリアミド酸エステル(R1及びR2、R3及びR4の少なくとも一部がアルキル基)、3)4)ポリアミド酸シリルエステル(R1及びR2、R3及びR4の少なくとも一部がアルキルシリル基)に分類することができる。そして、本発明のポリイミド前駆体は、この分類ごとに、以下の製造方法により容易に製造することができる。ただし、本発明のポリイミド前駆体の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
1)ポリアミド酸
本発明のポリイミド前駆体は、溶媒中でテトラカルボン酸成分としてのテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを略等モル、好ましくはテトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比[ジアミン成分のモル数/テトラカルボン酸成分のモル数]が好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05の割合で、例えば120℃以下の比較的低温度でイミド化を抑制しながら反応することによって、ポリイミド前駆体溶液組成物として好適に得ることができる。
限定するものではないが、より具体的には、有機溶剤にジアミンを溶解し、この溶液に攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。上記製造方法でのジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序は、ポリイミド前駆体の分子量が上がりやすいため、好ましい。また、上記製造方法のジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序を逆にすることも可能であり、析出物が低減することから、好ましい。
また、テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比がジアミン成分過剰である場合、必要に応じて、ジアミン成分の過剰モル数に略相当する量のカルボン酸誘導体を添加し、テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比を略当量に近づけることができる。ここでのカルボン酸誘導体としては、実質的にポリイミド前駆体溶液の粘度を増加させない、つまり実質的に分子鎖延長に関与しないテトラカルボン酸、もしくは末端停止剤として機能するトリカルボン酸とその無水物、ジカルボン酸とその無水物などが好適である。
2)ポリアミド酸エステル
テトラカルボン酸二無水物を任意のアルコールと反応させ、ジエステルジカルボン酸を得た後、塩素化試薬(チオニルクロライド、オキサリルクロライドなど)と反応させ、ジエステルジカルボン酸クロライドを得る。このジエステルジカルボン酸クロライドとジアミンを−20〜120℃、好ましくは−5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。また、ジエステルジカルボン酸とジアミンを、リン系縮合剤や、カルボジイミド縮合剤などを用いて脱水縮合することでも、簡便にポリイミド前駆体が得られる。
この方法で得られるポリイミド前駆体は、安定なため、水やアルコールなどの溶剤を加えて再沈殿などの精製を行うこともできる。
3)ポリアミド酸シリルエステル(間接法)
あらかじめ、ジアミンとシリル化剤を反応させ、シリル化されたジアミンを得る。必要に応じて、蒸留等により、シリル化されたジアミンの精製を行う。そして、脱水された溶剤中にシリル化されたジアミンを溶解させておき、攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。
ここで用いるシリル化剤として、塩素を含有しないシリル化剤を用いることは、シリル化されたジアミンを精製する必要がないため、好適である。塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。フッ素原子を含まず低コストであることから、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
また、ジアミンのシリル化反応には、反応を促進するために、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミンなどのアミン系触媒を用いることができる。この触媒はポリイミド前駆体の重合触媒として、そのまま使用することができる。
4)ポリアミド酸シリルエステル(直接法)
1)の方法で得られたポリアミド酸溶液とシリル化剤を混合し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。
ここで用いるシリル化剤として、塩素を含有しないシリル化剤を用いることは、シリル化されたポリアミド酸、もしくは、得られたポリイミドを精製する必要がないため、好適である。塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。フッ素原子を含まず低コストであることから、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
前記製造方法は、いずれも有機溶媒中で好適に行なうことができるので、その結果として、ポリイミド前駆体を含む溶液または溶液組成物を容易に得ることができる。
ポリイミド前駆体を調製する際に使用する溶媒は、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が好ましく、特にN,N−ジメチルアセトアミドが好ましいが、原料モノマー成分と生成するポリイミド前駆体が溶解すれば、どんな種類の溶媒であっても問題はなく使用できるので、特にその構造には限定されない。溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。なお、溶媒は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
ポリイミド前駆体の対数粘度は、特に限定されないが、30℃での濃度0.5g/dLのN,N−ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上、より好ましくは0.3dL/g以上、特に好ましくは0.4dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.2dL/g以上では、ポリイミド前駆体の分子量が高く、得られるポリイミドの機械強度や耐熱性に優れる。
本発明のポリイミド前駆体組成物は、通常、ポリイミド前駆体と溶媒とを含む。本発明のポリイミド前駆体組成物に用いる溶媒としては、ポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく、特にその構造は限定されない。溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。また、これらを複数種組み合わせて使用することもできる。なお、ポリイミド前駆体組成物の溶媒は、ポリイミド前駆体を調製する際に使用した溶媒をそのまま使用することができる。
本発明のポリイミド前駆体組成物において、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量は、溶媒とテトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量に対して、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上の割合であることが好適である。なお、通常は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量は、溶媒とテトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量に対して、60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることが好適である。この濃度は、ポリイミド前駆体に起因する固形分濃度にほぼ近似される濃度であるが、この濃度が低すぎると、例えばポリイミドフィルムを製造する際に得られるポリイミドフィルムの膜厚の制御が難しくなることがある。
ポリイミド前駆体組成物の粘度(回転粘度)は、特に限定されないが、E型回転粘度計を用い、温度25℃、せん断速度20sec−1で測定した回転粘度が、0.01〜1000Pa・secが好ましく、0.1〜100Pa・secがより好ましい。また、必要に応じて、チキソ性を付与することもできる。上記範囲の粘度では、コーティングや製膜を行う際、ハンドリングしやすく、また、はじきが抑制され、レベリング性に優れるため、良好な被膜が得られる。
本発明のポリイミド前駆体組成物は、必要に応じて、イミド化促進触媒(イミダゾール系化合物など)、化学イミド化剤(無水酢酸などの酸無水物や、ピリジン、イソキノリンなどのアミン化合物)、酸化防止剤、フィラー(シリカ等の無機粒子など)、染料、顔料、シランカップリング剤などのカップリング剤、プライマー、難燃材、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤(流動補助剤)、剥離剤などを含有することができる。
本発明のポリイミド前駆体組成物は、イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物を含むことが好ましいことがある。イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物の含有量は、合計で、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して4モル未満であることが好ましい。透明性が求められるポリイミドの場合、着色の要因となりえる添加物の使用は好まれない。しかしながら、イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物を、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、好ましくは4モル未満、より好ましくは0.05モル以上1モル以下の割合で、ポリイミド前駆体組成物に加えることにより、高い透明性を保ったまま、得られるポリイミドフィルムの機械的特性を向上させることができることがある。すなわち、同一組成のポリイミド前駆体から、高い透明性を維持しながら、機械的特性がより優れたポリイミドが得られることがある。
本発明において用いるイミダゾール系化合物は、イミダゾール骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
ある実施態様においては、イミダゾール系化合物として、1気圧における沸点が340℃未満、好ましくは330℃以下、より好ましくは300℃以下、特に好ましくは270℃以下の化合物を用いることが好ましい。
本発明において用いるイミダゾール系化合物としては、特に限定されないが、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。1,2−ジメチルイミダゾール(1気圧における沸点:205℃)、1−メチルイミダゾール(1気圧における沸点:198℃)、2−メチルイミダゾール(1気圧における沸点:268℃)、イミダゾール(1気圧における沸点:256℃)などが好ましく、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾールが特に好ましい。イミダゾール系化合物は、1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。
本発明において用いるトリアルキルアミン化合物としては、特に限定されないが、炭素数が1〜5、より好ましくは炭素数が1〜4のアルキル基を有する化合物が好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、などが挙げられる。トリアルキルアミン化合物は、1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。また、イミダゾール系化合物1種以上と、トリアルキルアミン化合物1種以上とを併用することができる。
イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物を用いる場合、ポリイミド前駆体組成物のイミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物の含有量は、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して4モル未満であることが好ましい。イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物の含有量がポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して4モル以上になると、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性が悪くなる。イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物の含有量は、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して0.05モル以上であることが好ましく、また、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して2モル以下であることがより好ましく、1モル以下であることが特に好ましい。なお、ここで、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルは、テトラカルボン酸成分1モルに対応する。
イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物を含むポリイミド前駆体組成物は、前記製造方法により得られるポリイミド前駆体溶液または溶液組成物にイミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物を加えて調製することができる。また、溶媒にテトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物等)とジアミン成分とイミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物を加え、イミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物の存在下で、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて、ポリイミド前駆体とイミダゾール系化合物および/またはトリアルキルアミン化合物とを含むポリイミド前駆体組成物を得ることもできる。
本発明のポリイミドは、前記化学式(1)で表される繰り返し単位と前記化学式(2)で表される繰り返し単位とを含むものである。換言すれば、本発明のポリイミドは、本発明のポリイミド前駆体から得られるものであり、より具体的には、本発明のポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱等して得られるものである。
本発明のポリイミドは、前記のような本発明のポリイミド前駆体をイミド化する(すなわち、ポリイミド前駆体を脱水閉環反応する)ことで得ることができる。イミド化の方法は特に限定されず、公知の熱イミド化、または化学イミド化の方法を好適に適用することができる。得られるポリイミドの形態は、フィルム、ポリイミドフィルムと他の基材との積層体、コーティング膜、粉末、ビーズ、成型体、発泡体などを好適に挙げることができる。
なお、本発明のポリイミドは、本発明のポリイミド前駆体を得るために使用した、前記のテトラカルボン酸成分とジアミン成分を使用して得られるものであり、好ましいテトラカルボン酸成分とジアミン成分も前記の本発明のポリイミド前駆体と同様である。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)からなるフィルムの厚さは、用途にもよるが、通常、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmである。ディスプレイ用途等、ポリイミドフィルムを光が透過する用途に使用する場合、ポリイミドフィルムが厚すぎると光透過率が低くなる恐れがあり、薄すぎると破断点荷重等が低下してフィルムとして好適に用いることができなくなる恐れがある。
特にディスプレイ用途などのポリイミドフィルムを光が透過する用途に使用する場合、ポリイミドフィルムは透明性が高い方が望ましい。本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、特に限定されないが、フィルムにしたときの全光線透過率が好ましくは、80%以上、より好ましくは82%以上、さらに好ましくは84%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは86%以上。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、特に限定されないが、フィルムにしたときのヘイズは、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは1%未満である。例えばディスプレイ用途で使用する場合、ヘイズが3%を超えて高いと、光が散乱して画像がぼやけることがある。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、特に限定されないが、フィルムにしたときの引張弾性率は、好ましくは4GPa以上、より好ましくは4.5GPa以上であり、より好ましくは5GPa以上であり、より好ましくは5.3GPa以上であり、さらに好ましくは5.5GPa以上であり、特に好ましくは6.0GPa以上である。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、特に限定されないが、フィルムにしたときの破断点荷重は、好ましくは10N以上、より好ましくは15N以上である。破断点荷重が低いと、折り曲げ時などに簡単に割れてしまう恐れがある。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、特に限定されないが、フィルムにしたときの破断点伸度は、好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上である。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、特に限定されないが、ポリイミドフィルムの耐熱性の指標である5%重量減少温度が、好ましくは375℃以上、より好ましくは380℃以上、さらに好ましくは385℃以上、特に好ましくは400℃以上である。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、特に限定されないが、ポリイミドフィルム表面の鉛筆硬度が好ましくは、B以上、さらに好ましくはHB以上、さらに好ましくはF以上、特に好ましくはH以上である。ポリイミドフィルム表面の鉛筆硬度が高いと、ポリイミドフィルム自体に傷等が付きにくいことや、ポリイミド/ハードコート積層体において、ポリイミドの鉛筆硬度が高いほうが積層体のハードコートの鉛筆硬度が高くなる。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)とハードコート層からなる積層体は、特に限定されないが、ポリイミドとハードコートの間の密着性が高いほうが好ましい。クロスカット試験結果が、好ましくは1B以上、より好ましくは2B以上、より好ましくは3B以上、さらに好ましくは4B以上、特に好ましくは5Bである。ポリイミドとハードコートの密着性が低いと、折り曲げ時などに剥離してしまう恐れがある。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)とハードコート層からなる積層体は、特に限定されないが、全光線透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは、80%以上、さらに好ましくは82%以上、、さらに好ましくは84%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは86%以上。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)とハードコート層からなる積層体は、特に限定されないが、鉛筆硬度がH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上、さらに好ましくは4H以上、特に好ましくは5H以上である。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)とハードコート層からなる積層体は、特に限定されないが、ヘイズは、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは1%未満である。例えばディスプレイ用途で使用する場合、ヘイズが3%を超えて高いと、光が散乱して画像がぼやけることがある。
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド(本発明のポリイミド)は、透明性が高く、且つ引張弾性率、破断点応力などの機械的特性にも優れ、また、低線熱膨張係数であり、耐熱性にも優れることから、例えば、ディスプレイ表示面のカバーシート(保護フィルム)の用途において、また、ディスプレイ用透明基板、タッチパネル用透明基板、または太陽電池用基板の用途において、好適に用いることができる。
以下では、本発明のポリイミド前駆体を用いた、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムの製造方法の一例について述べる。ただし、以下の方法に限定されるものではない。
例えばセラミック(ガラス(特に無アルカリガラス)、シリコン、アルミナなど)、金属(銅、アルミニウム、ステンレスなど)、耐熱プラスチックフィルム(ポリイミドフィルムなど)等の基材に、本発明のポリイミド前駆体を含む組成物(ワニス)を流延し、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で、熱風もしくは赤外線を用いて、20〜180℃、好ましくは20〜150℃の温度範囲で乾燥する。次いで、得られたポリイミド前駆体フィルムを基材上で、もしくはポリイミド前駆体フィルムを基材上から剥離し、そのフィルムの端部を固定した状態で、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で、熱風もしくは赤外線を用い、例えば200〜500℃、より好ましくは250〜450℃程度の温度で加熱イミド化することでポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムを製造することができる。なお、得られるポリイミドフィルムが酸化劣化するのを防ぐため、加熱イミド化は、真空中、或いは不活性ガス中で行うことが望ましい。加熱イミド化の温度が高すぎなければ空気中で行なっても差し支えない。また、基材にポリイミドなどの耐熱プラスチックフィルムを用いることで、連続的に本発明のポリイミドフィルムを製造できるため、好ましい。
また、ポリイミド前駆体のイミド化反応は、前記のような加熱処理による加熱イミド化に代えて、ポリイミド前駆体をピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬するなどの化学的処理によって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめ、ポリイミド前駆体組成物(ワニス)中に投入・攪拌し、それを基材上に流延・乾燥することで、部分的にイミド化したポリイミド前駆体を作製することもでき、得られた部分的にイミド化したポリイミド前駆体フィルムを基材上で、もしくはポリイミド前駆体フィルムを基材上から剥離し、そのフィルムの端部を固定した状態で、更に前記のような加熱処理することで、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムを得ることができる。
この様にして得られたポリイミドフィルム、ハードコート/ポリイミドフィルム積層体、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはハードコート/ポリイミドフィルム/基材積層体は、前記のとおり、ディスプレイのカバーシート(カバーフィルム)に好適に用いることができ、また、ディスプレイ用、タッチパネル用、太陽電池用などの基板にも好適に用いることができる。その一例として、本発明のポリイミドフィルムを用いたカバーシート(カバーフィルム)について述べる。
前記の様にして得られたポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムは、その片面もしくは両面にハードコート層を形成することによって、フレキシブルなカバーシート(カバーフィルム)を得ることができる。
ハードコート層は傷つき防止や、耐溶剤性向上のために用いられ、一般的にはアクリル樹脂やウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリシラザンやそれらの混合物、さらにそれらに無機物等が添加されたものが用いられる。特に限定されるものではないが、特性や、UVでの短時間での製膜が可能な点より、アクリル樹脂を含むものが好ましい。
ハードコート層の形成は、樹脂モノマーやオリゴマー、メチルエチルケトンやポリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの低沸点溶媒を含んだハードコート溶液をポリイミドフィルム上に塗布し、熱や光、又はその両方で硬化させることで得られる。なお、必要に応じて、シラン化合物やシリカ等の無機粒子や硬化開始剤を添加することが出来る。
なお、ポリイミドの耐溶剤性が低いとハードコート溶液に含まれるメチルエチルケトン等の有機溶媒でポリイミドにヘイズが出たり表面が荒れてしまうなどの問題が起こることがある。
ポリイミド/ハードコート積層体に、さらに偏光板や透明電極を形成することで、カバーシートを基板として、タッチセンサーを形成できる。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の各例において評価は次の方法で行った。
<ポリイミドフィルムの評価>
[全光線透過率]
紫外可視分光光度計/V−650DS(日本分光製)を用いて、ポリイミドフィルムとポリイミド/ハードコート積層体の全光線透過率を測定した。
[ヘイズ]
濁度計/NDH2000(日本電色工業製)を用いて、JIS K7136の規格に準拠して、ポリイミドフィルムとポリイミド/ハードコート積層体のヘイズを測定した。
[引張弾性率、破断点伸度、破断点応力、破断点荷重]
ポリイミドフィルムをIEC−540(S)規格のダンベル形状に打ち抜いて試験片(幅:4mm)とし、ORIENTEC社製TENSILONを用いて、チャック間長30mm、引張速度2mm/分で、初期の引張弾性率、破断点伸度、破断点応力、破断点荷重を測定した。
[5%重量減少温度]
ポリイミドフィルムを試験片とし、TAインスツルメント社製 熱量計測定装置(Q5000IR)を用い、窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から600℃まで昇温した。得られた重量曲線から、5%重量減少温度を求めた。
[耐溶剤性試験]
ポリイミドフィルムを試験片とし、N−メチル−2−ピロリドン中に1時間浸漬させ、ポリイミドフィルムの溶解や白濁等の変化が無かったものを○、変化があったものを×とした。
[鉛筆硬度試験]
JIS K5600−5−4の規格に準拠して、荷重を750gとして、ポリイミドフィルムとポリイミド/ハードコート積層体のハードコート面の鉛筆硬度を測定した。
[クロスカット試験]
ASTM D3359−02の規格に準拠して、ポリイミドとハードコートの密着性試験を行った。
以下の各例で使用した原材料の略称、純度等は、次のとおりである。
[ジアミン成分]
HAB:3,3’−ジヒドロキシベンジジン
m−TD:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル〔純度:99.85%(GC分析)〕
[テトラカルボン酸成分]
CBDA: 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物〔純度:99.9%(GC分析)〕
CpODA:ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’ ’−ノルボルナン−5,5’ ’,6,6’ ’−テトラカルボン酸二無水物
[イミダゾール化合物]
1,2−ジメチルイミダゾール
[溶媒]
DMAc: N,N−ジメチルアセトアミド
表1−1に実施例、比較例で使用したテトラカルボン酸成分、表1−2に実施例、比較例で使用したジアミン成分、表1−3に実施例、比較例で使用したイミダゾール化合物の構造式を記す。
[ハードコート]
ハードコートa:大成ファインケミカル社製のSTR−SiAを用いた。STR−SiA
100gに対して、光開始剤としてIRUGACURER 184 3g添加し、室温で攪拌しハードコート用溶液(ハードコートa)を得た。
ハードコートb:藤倉化成製 FUJIHARDR HO3313U−8
〔実施例1〕
窒素ガスで置換した反応容器中にHAB 2.16g(10ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 12質量%となる量の31.62gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCBDA 1.76g(9ミリモル)とCpODA 0.38g(1ミリモル)を徐々に加えた。室温で12時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液(ワニスA)を得た。
1,2−ジメチルイミダゾール 0.19gとDMAc 0.19gを反応容器に加え均一な溶液を得た。ワニスAにその溶液を全量(ワニスA中のポリイミド前駆体の繰返しユニットの分子量に対して、2ミリモル)加え、室温で30分間攪拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。仕込み量から計算すると、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、1,2−ジメチルイミダゾールは0.2モルである。
PTFE製メンブレンフィルターでろ過したポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から260℃まで加熱して熱的にイミド化を行い、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が35μmのポリイミドフィルムAを得た。
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2−1に示す。
〔実施例2〕
窒素ガスで置換した反応容器中にHAB 1.08g(5ミリモル)とm−TD 1.06g(5ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 13質量%となる量の28.72gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCBDA 1.76g(9ミリモル)とCpODA 0.38g(1ミリモル)を徐々に加えた。室温で12時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液(ワニスB)を得た。
1,2−ジメチルイミダゾール 0.19gとDMAc 0.19gを反応容器に加え均一な溶液を得た。ワニスBにその溶液を全量(ワニスB中のポリイミド前駆体の繰返しユニットの分子量に対して、2ミリモル)加え、室温で30分間攪拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。仕込み量から計算すると、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、1,2−ジメチルイミダゾールは0.2モルである。
PTFE製メンブレンフィルターでろ過したポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から260℃まで加熱して熱的にイミド化を行い、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が42μmのポリイミドフィルムBを得た。
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2−1に示す。
〔実施例3〕
窒素ガスで置換した反応容器中にHAB 0.65g(3ミリモル)とm−TD 1.49g(7ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 12質量%となる量の31.42gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCBDA 1.76g(9ミリモル)とCpODA 0.38g(1ミリモル)を徐々に加えた。室温で12時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液(ワニスC)を得た。
1,2−ジメチルイミダゾール 0.19gとDMAc 0.19gを反応容器に加え均一な溶液を得た。ワニスCにその溶液を全量(ワニスC中のポリイミド前駆体の繰返しユニットの分子量に対して、2ミリモル)加え、室温で30分間攪拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。仕込み量から計算すると、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、1,2−ジメチルイミダゾールは0.2モルである。
PTFE製メンブレンフィルターでろ過したポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から260℃まで加熱して熱的にイミド化を行い、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が35μmのポリイミドフィルムBを得た。
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2−1に示す。
〔実施例4〕
窒素ガスで置換した反応容器中にHAB 0.22g(1ミリモル)とm−TD 1.91g(9ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 12質量%となる量の31.36gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCBDA 1.76g(9ミリモル)とCpODA 0.38g(1ミリモル)を徐々に加えた。室温で12時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液(ワニスD)を得た。
1,2−ジメチルイミダゾール 0.19gとDMAc 0.19gを反応容器に加え均一な溶液を得た。ワニスDにその溶液を全量(ワニスD中のポリイミド前駆体の繰返しユニットの分子量に対して、2ミリモル)加え、室温で30分間攪拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。仕込み量から計算すると、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、1,2−ジメチルイミダゾールは0.2モルである。
PTFE製メンブレンフィルターでろ過したポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から260℃まで加熱して熱的にイミド化を行い、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が34μmのポリイミドフィルムBを得た。
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2−1に示す。
〔比較例1〕
窒素ガスで置換した反応容器中にHAB 0.11g(0.5ミリモル)とm−TD 2.02g(9ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 12質量%となる量の31.34gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCBDA 1.76g(9ミリモル)とCpODA 0.38g(1ミリモル)を徐々に加えた。室温で12時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液(ワニスE)を得た。
1,2−ジメチルイミダゾール 0.19gとDMAc 0.19gを反応容器に加え均一な溶液を得た。ワニスEにその溶液を全量(ワニスE中のポリイミド前駆体の繰返しユニットの分子量に対して、2ミリモル)加え、室温で30分間攪拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。仕込み量から計算すると、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、1,2−ジメチルイミダゾールは0.2モルである。
PTFE製メンブレンフィルターでろ過したポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から260℃まで加熱して熱的にイミド化を行い、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が33μmのポリイミドフィルムBを得た。
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2−1に示す。
〔実施例5〜12、比較例3,4〕
得られたポリイミドフィルムA〜Fそれぞれにハードコート溶液aとbを乾燥後のハードコート層の膜厚が約10μmになるようにバーコーターで塗工し、80℃で10分乾燥させ、高圧水銀ランプを用いて積算光量が1000mJ/cm2になるように紫外線を照射した。その後、150℃で10分間加熱し、ポリイミド/ハードコート積層体を得た。
この積層体の特性を測定した結果を表2−2に示す。