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JP2017186416A - 難燃性バッチ、それを用いて形成される電線・ケーブルおよびその製造方法 - Google Patents

難燃性バッチ、それを用いて形成される電線・ケーブルおよびその製造方法 Download PDF

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JP2017186416A JP2016075023A JP2016075023A JP2017186416A JP 2017186416 A JP2017186416 A JP 2017186416A JP 2016075023 A JP2016075023 A JP 2016075023A JP 2016075023 A JP2016075023 A JP 2016075023A JP 2017186416 A JP2017186416 A JP 2017186416A
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Abstract

【課題】難燃剤の凝集が少なく、難燃性に優れる被覆層をシラン架橋により形成する。【解決手段】ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチに配合して難燃性を付与するための難燃性バッチであって、遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、難燃剤(B)を、ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する、難燃性バッチが提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、難燃性バッチ、それを用いて形成される電線・ケーブルおよびその製造方法に関する。
電気機器に電力を供給したり電気信号を伝達したりするために用いられる電線・ケーブルは、その表面に被覆層として絶縁層やシースが設けられている。
電線・ケーブルは高温環境下で使用されることもあるため、その被覆層には耐熱性が要求される。耐熱性を向上させる方法としては、被覆層の被覆材料に架橋処理を施す方法がある。架橋処理には、電子線架橋や化学架橋、シラン架橋などがあるが、これらの中でも、シラン架橋は特殊な設備を必要としないことから様々な分野で採用されている。
シラン架橋は、遊離ラジカル発生剤の存在下でシラン化合物(例えば、シランカップリング剤など)をポリマにグラフト重合させてシラングラフトポリマを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフトポリマを水分と接触させることにより、架橋構造を導入する方法である。
具体的には、電線やケーブルの被覆層をシラン架橋により形成する場合、まず、シラングラフトポリマを含むシランバッチと、シラノール縮合触媒(以下、単に触媒ともいう)およびポリマを含む触媒バッチとを溶融しながら混合する。続いて、この混合物を導体の外周に押し出して成形する。そして、その成形体を水に接触させてシラン架橋を施す。
また、被覆層には、難燃性が要求されることから、難燃性を付与する難燃剤が配合される。この配合方法としては、例えば、ポリマに難燃剤を配合して難燃性バッチを形成し、これを押出前にシランバッチと混合したり、もしくは、あらかじめ触媒バッチなどに難燃剤を配合して、シランバッチと混合したりする方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
特開2008−297453号公報
しかしながら、特許文献1に示す方法では、シランバッチに含まれるシラングラフトポリマの流動性が低いため、シランバッチに難燃性バッチを混合したときに、シラングラフトポリマ中に難燃剤を均一に分散できず、被覆層に十分な難燃性を付与することが困難である。難燃性を向上させるために難燃剤を増量することも考えられるが、この場合、難燃剤が凝集するおそれがあり、その凝集物により被覆層表面が荒れて表面平滑性が損なわれるばかりか、被覆層の機械特性(例えば、引張強度や伸び)も低下してしまう。
そこで、本発明は、難燃剤の凝集が少なく、難燃性に優れる被覆層をシラン架橋により形成する技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチに配合して難燃性を付与するための難燃性バッチであって、
遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、
アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、
前記難燃剤(B)を、前記ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する、難燃性バッチが提供される。
本発明の他の態様によれば、
ポリオレフィン(a)と、シラン化合物と、遊離ラジカル発生剤と、アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)とを混合して、前記遊離ラジカル発生剤の存在下で前記ポリオレフィン(a)に前記シラン化合物をグラフト重合させてシラングラフトポリオレフィン(A)を形成しつつ、前記ポリオレフィン(a)に前記難燃剤(B)を分散させることで、難燃性バッチを得る難燃性バッチ調製工程と、
前記難燃性バッチと、ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチとを混合し、その混合物を導体の外周を被覆するように押し出して成形体を得る押出工程と、
前記成形体をシラン架橋させて被覆層を形成する架橋工程と、を有する電線・ケーブルの製造方法が提供される。
本発明のさらに他の態様によれば、
導体と前記導体の外周上に配置される被覆層とを備え、
前記被覆層は、ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチと難燃性バッチとを含む混合物をシラン架橋させてなり、
前記難燃性バッチは、
遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、
アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、
前記難燃剤(B)を、前記ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する、電線・ケーブルが提供される。
本発明によれば、難燃剤の凝集が少なく、難燃性に優れる被覆層をシラン架橋により形成することができる。
本発明の一実施形態に係る電線の長さ方向に垂直な断面を示す図である。 本発明の一実施形態に係るケーブルの長さ方向に垂直な断面を示す図である。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、シラングラフトポリマを含み、流動性の低いシランバッチと混合しやすく、難燃剤を均一に分散できるような難燃性バッチについて検討を行った。その結果、難燃性バッチにおいて難燃剤を分散させる分散媒を、従来のポリマではなく、シランバッチと同様にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィンに変更するとよいことを見出した。つまり、シラングラフトポリオレフィンに難燃剤を分散させて難燃性バッチを構成するとよいことを見出した。このような難燃性バッチによれば、シランバッチと混合させやすいので、結果的に難燃剤の分散を促し、凝集を抑制することができると考えられる。
ただし、この場合、難燃性バッチの調製の際に、流動性の低いシラングラフトポリオレフィンに難燃剤を分散させることになるので、難燃性バッチ中での分散性が不十分となり、シランバッチと混合したときの分散性も不十分となることが分かった。
そこで、本発明者らは、難燃性バッチにおけるシラングラフトポリオレフィンに難燃剤を均一に分散させる方法について検討を行った。その結果、配合する難燃剤の種類を1つではなく、3つ以上とするとよいことを見出した。すなわち、1つの難燃剤を多量に配合するよりも、複数の異なる難燃剤を配合するとよいことを見出した。このように複数の異なる難燃剤を用いることによって、合計量が多量となるように配合しても、各難燃剤の量を減らすことができるので、同一の難燃剤の凝集を抑制しやすくなる。そのため、流動性の低いシラングラフトポリオレフィン中に、各難燃剤を凝集させることなく、分散させることが可能となる。そして、このような、複数の異なる難燃剤が均一に分散する難燃性バッチによれば、シランバッチと混合させやすく、難燃剤の凝集を抑制できるので、高い難燃性を有し、凝集による表面平滑性や機械特性の低下が抑制され、これらの特性を高い水準で満足する被覆層を形成することができる。
本発明は、上記知見に基づいて成されたものであり、以下のとおりである。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
〔難燃性バッチ〕
難燃性バッチとは、難燃剤を含み、ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチに配合して難燃性を付与するための成分である。
本実施形態の難燃性バッチは、上述したように、難燃剤の分散性を高める観点から、以下のように構成される。
すなわち、難燃性バッチは、遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、難燃剤(B)を、ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する。
以下、難燃性バッチを構成する各成分について説明する。
(シラングラフトポリオレフィン(A))
シラングラフトポリオレフィン(A)は、遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたものであり、難燃性バッチにおいて、難燃剤(B)を分散させる分散媒として作用する。
ポリオレフィン(a)としては、シラン化合物をグラフト重合できるものであれば、特に限定されず、公知の成分を用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などを用いることができる。
これらの中でも、特にEVAが好ましい。EVAは、シラノール縮合触媒(B)やその他の添加剤(例えば、難燃剤など)の受容性が高く、これらを多量に配合しても凝集させることなく、均一に分散させることができる。
シラン化合物は、ポリマと反応可能な不飽和結合性基と、シラノール縮合反応により架橋を形成可能な加水分解性のシラン基と、を有するシランカップリング剤である。シラン化合物は、ポリオレフィン(a)にグラフト重合されることでポリオレフィン(a)にシラン基を導入する。
不飽和結合性基としては、例えば、ビニル基、メタクリル基およびアクリル基などが挙げられる。加水分解性のシラン基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、フェノキシ基などの加水分解可能な構造を有するものが挙げられる。これらの加水分解可能な構造を有するシラン基として、例えばハロシリル基、アルコキシシリル基、アシロキシシリル基、フェノキシシリル基などが挙げられる。
シラン化合物の配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン(a)100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。1質量部未満となると、シラン架橋により被覆層を形成したときに、十分な架橋度が得られず、耐熱性が低くなるおそれがある。一方、10質量部を越えると、グラフト重合によりシラングラフトポリオレフィン(A)を形成するときに、シラン化合物同士が反応して異物(縮合物)を形成しやすくなるため、被覆層において外観不良が起こり、表面平滑性が損なわれるおそれがある。耐熱性と表面平滑性とを高い水準で両立する観点からは、シラン化合物の配合量は2〜6質量部であることがさらに好ましい。
遊離ラジカル発生剤は、加熱により分解してラジカルを発生させるものである。遊離ラジカル発生剤としては、例えば、有機化酸化物を用いることができる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5ジメチル2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネートなどを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
遊離ラジカル発生剤の配合量は、特に限定されないが、遊離ラジカル発生剤に対するシラン化合物の比率(シラン化合物/遊離ラジカル発生剤)が好ましくは5〜400、より好ましくは100〜300となるような量である。その比率が5未満であって、遊離ラジカル発生剤の量が相対的に多くなると、ポリマの架橋点が増え、反応初期の架橋形成速度が過度に高くなるため、ポリマ同士の高分子量化が進み、粘度の違いから粒が形成されて、表面平滑性が損なわれるおそれがある。一方、比率が400を超えると、遊離ラジカル発生剤が過度に少なくなるため、十分な架橋度が得られず、耐熱性が低くなるおそれがある。
(難燃剤(B))
上述したように、本実施形態では、難燃性バッチでの難燃剤(B)の分散性を高めるべく、1種類ではなく、複数の異なる種類を用いる。本発明者らの検討によると、難燃剤(B)としては、アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを用いるとよいことが分かった。難燃剤(B)として、1種または2種を用いる場合、高い難燃性を得るには各成分を比較的多く配合する必要が生じるため、難燃剤が凝集してしまい、結果的に、被覆層の難燃性が低くなるばかりか、表面平滑性や機械特性までが低下することとなる。
アンチモン化合物は、燃焼により酸素窒息効果を発現する。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウムなどの酸化アンチモン類などを用いることができる。これらの中でも、三酸化アンチモンが好ましい。
臭素系難燃剤は、アンチモン化合物と同様に、燃焼により酸素窒息効果を発現する。臭素系難燃剤としては、公知の化合物を用いることが可能であり、例えば、エチレンビスペンタブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、ペンタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエーテル)、ヘキサブロモシクロデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリ−ジブロモフェニレンオキサイド、2,4,6−トリブロモフェノール、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アクリレート)、テトラブロモフタリックアンヒドリド、テトラブロモフタレートジオール、2,3−ジブロモプロパノール、トリブロモスチレン、テトラブロモフェニルマレイミド、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェートなどを用いることができる。これらは、1種単独または2種以上を併用してもよい。
メラミン系難燃剤は、アンチモン化合物と同様に、燃焼により酸素窒息効果を発現する。メラミン系難燃剤としては、公知の化合物を用いることが可能であり、例えば、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、アルキルホスホン酸メラミン、フェニルホスホン酸メラミン、硫酸メラミン、メタンスルホン酸メラム等が挙げられ、中でもメラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミンなどを用いることができる。これらは、1種単独または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特にメラミンシアヌレートが好ましい。
水酸化マグネシウムは、燃焼により脱水して吸熱効果を発現する。
水酸化アルミニウムは、水酸化マグネシウムと同様に、燃焼により脱水して吸熱効果を発現する。
難燃剤(B)の分散性の観点からは、難燃剤(B)の組み合わせは特に限定されないが、高い難燃性を得る観点からは、酸素窒息効果を発現する難燃剤(アンチモン化合物、臭素系難燃剤およびメラミン系難燃剤)と、吸熱効果を発現する難燃剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)とを併用することが好ましい。これは、異なる難燃作用を掛け合わせることで、より高い難燃性を得ることができるためである。
また、酸素窒息効果を発現する難燃剤の組み合わせとしては、以下の3つの組み合わせが好ましい。
・(b1)アンチモン化合物および臭素系難燃剤
・(b2)臭素系難燃剤およびメラミン系難燃剤
・(b3)アンチモン化合物、臭素系難燃剤およびメラミン系難燃剤
(b1)の組み合わせによれば、アンチモン化合物と臭素系難燃剤とが燃焼の際に臭化アンチモンを生成し、このガスが強力な窒息効果を発現させる。(b2)の組み合わせによれば、臭素系難燃剤とメラミン系難燃剤とが、燃焼の際に、それぞれ異なる燃焼温度で段階的に窒息ガスを生成し、強力な窒息効果を発現させる。(b3)の組み合わせによれば、(b1)および(b2)の組み合わせによる効果をともに発現させる。
このように、(b1)〜(b3)のいずれかの組み合わせと、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1つとを、併用することにより、高い難燃性を得ることができる。
難燃剤(B)の配合量は、特に限定されないが、所望の難燃性を得る観点から、ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部〜300質量部であることが好ましい。60質量部以上とすることにより、高い難燃性を得ることができ、300質量部以下とすることにより、難燃剤(B)の凝集を抑制し、凝集による表面平滑性や機械特性の低下を抑制することができる。より高い難燃性を得る観点からは、難燃剤(B)の配合量は80質量部以上であることがより好ましく、140質量部以上であることがさらに好ましい。80質量部以上とすることにより、後述の実施例で説明するように、VFT試験に合格するような高い難燃性が得られ、140質量部以上とすることにより、VW−1試験に合格するようなさらに高い難燃性が得られる。なお、難燃剤(B)の各成分は、ポリオレフィン(a)100質量部に対して、少なくとも20質量部以上配合するとよい。
(その他の添加剤)
難燃性バッチには、必要に応じて、その他の添加剤が配合されてもよい。
例えば、架橋反応を促進させ、シラン架橋の導入を効率化する目的で、シラノール縮合触媒を配合することができる。シラノール縮合触媒としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、マグネシウムやカルシウム等のII族元素、コバルトや鉄等のVIII族元素、錫、亜鉛およびチタン等の金属元素やこれらの元素を含む金属化合物を用いることができる。また、オクチル酸やアジピン酸の金属塩、アミン系化合物、酸などを用いることができる。具体的には、金属塩として、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第一錫、カブリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト等を用いることができる。アミン系化合物として、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン等を用いることができる。酸として、硫酸や塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸や酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸を用いることができる。
シラノール縮合触媒の配合量は、ポリオレフィン(a)100質量部に対して0.01質量部〜1質量部であり、0.03質量部〜0.3質量部が好ましい。0.01質量部未満となると、十分な架橋度が得られず、耐熱性が低くなるおそれがある。一方、1質量部を越えると、シランバッチを混合して押し出すまでの間に架橋が進行しやすくなり、表面平滑性が損なわれるおそれがある。
また例えば、低コスト化する目的で、タルクや炭酸カルシウムなどの充填剤を配合してもよい。また例えば、被覆層の絶縁性を向上させる目的で、焼成クレーやハイドロタルサイトなどのイオントラップ剤を配合してもよい。また例えば、可塑剤、酸化防止剤(老化防止剤を含む)、滑剤、銅害変色防止剤、架橋助剤、安定剤などのその他の添加剤を配合してもよい。
〔難燃性バッチの調製〕
次に、上述した難燃性バッチの調製方法について説明する。
まず、ポリオレフィン(a)に対して、シラン化合物と、遊離ラジカル発生剤と、アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)とを、それぞれ所定量添加する。これらを所定の温度で溶融混練することにより、ポリオレフィン(a)にシラン化合物をグラフト重合させ、シラングラフトポリオレフィン(A)を形成する。このとき、溶融混練してグラフト重合するのと同時に、グラフト重合前であって流動性が良好なポリオレフィン(a)中に難燃剤(B)を分散させる。本実施形態では、難燃剤(B)として複数の異なる種類を併用し、各成分の配合量を少なくしているので、難燃剤(B)を凝集させることなく、均一に分散させることができる。すなわち、ポリオレフィン(a)へシラン化合物をグラフト重合しつつ、ポリオレフィン(a)中に難燃剤(B)の各成分を均一に分散させることで、シラングラフトポリオレフィン(A)中に難燃剤(B)が均一に分散する難燃剤バッチを得ることができる。なお、グラフト重合後に難燃剤(B)を添加して溶融混練しても、シラングラフトポリオレフィン(A)の流動性が低いため、難燃剤(B)が凝集してしまい、均一に分散することが困難となる。
なお、難燃性バッチにシラノール縮合触媒を配合する場合は、ポリオレフィン(a)や難燃剤(B)を溶融混練している間に、液状のまま投入してもよいが、そのままの投入が難しいようであれば、フィラーなどに含浸させた後に投入する、もしくは、ポリマにシラノール縮合触媒を配合した触媒バッチを別途調製して投入するとよい。
また、その他の添加剤として酸化防止剤を添加する場合は、シラン化合物のグラフト重合を阻害しないように、重合を始めてから所定時間経過した後に添加するとよい。例えば、シラノール縮合触媒と同時に添加するとよい。
〔電線〕
次に、上述した難燃性バッチを用いて電線を製造する方法、および電線の概略構造について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電線の長さ方向に垂直な断面を示す図である。
まず、導体11を準備する。導体11としては、例えば、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線、アルミニウムや銀等からなる金属線、又は金属線を撚り合わせた撚り線を用いることができる。導体11の外径は、電線10の用途に応じて適宜変更することができる。
続いて、被覆層としての絶縁層12を形成するための各種バッチを調製する。本実施形態では、難燃剤およびシラノール縮合触媒を含む難燃性バッチと、シラングラフトポリマを含むシランバッチを調製する。
難燃性バッチは、ポリオレフィン(a)、シラン化合物、遊離ラジカル発生剤、難燃剤(B)およびシラノール縮合触媒を準備し、上述した手順により、グラフト重合と同時に難燃剤(B)を分散させることで調製する。なお、このとき、必要に応じて他の添加剤(例えば、酸化防止剤など)を配合し、難燃性バッチ中に分散させてもよい。
シランバッチは、ポリマ、シラン化合物および遊離ラジカル発生剤を準備し、難燃性バッチと同様に、ポリマにシラン化合物をグラフト重合させ、シラングラフトポリマを生成させることで調製する。
シランバッチにおけるポリマは、特に限定されず、絶縁層12に求められる特性に応じて適宜変更するとよい。柔軟性の観点からは、例えば、EVAやエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン系のαオレフィン共重合体などを用いるとよい。また、強度の観点からは、例えば、プロピレン系のαオレフィン共重合体などを用いるとよい。柔軟性および強度を両立する観点からは、これらのポリマを併用するとよい。
ポリマにグラフト重合させるシラン化合物は、上述したものを用いるとよい。
続いて、調製した難燃性バッチおよびシランバッチを溶融混練し、その混練物を導体11の外周に押し出して被覆させる。本実施形態の難燃性バッチは、難燃剤(B)がシラングラフトポリオレフィン(A)に分散しているので、シランバッチと混合したときに、難燃剤(B)を凝集させることなく、混練物中に分散させることができる。これにより、押し出した成形体において、難燃剤(B)の凝集による異物の発生を低減することができる。
押出時の難燃性バッチとシランバッチとの混合比率は、特に限定されない。より高い難燃性を得る観点からは、難燃性バッチとシランバッチとを99:1〜20:80の範囲内で、好ましくは99:1〜30:70の範囲内で、混合することが好ましい。
続いて、成形体を例えば大気中に曝して水分に接触させる。これにより、シラングラフトポリオレフィン(A)およびシラングラフトポリマのそれぞれのシラン基を加水分解させてシラノール基とする。そして、これらのシラノール基同士をシラノール縮合触媒により脱水縮合することで架橋構造を導入する。このように、触媒バッチおよびシランバッチの混合物をシラン架橋させることにより、シラン架橋体からなる電気絶縁性の絶縁層12を形成する。
以上により、本実施形態の電線10を得る。
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態の難燃性バッチは、シラングラフトポリオレフィン(A)と、少なくとも3つの異なる種類の難燃剤(B)とを含んで構成されている。複数の異なる難燃剤(B)を配合することにより、総量が多量となるように配合しても、各難燃剤の量を減らすことができるので、同一の難燃剤の凝集を抑制しやすくなる。つまり、本実施形態の難燃性バッチは、シラングラフトポリオレフィン(A)中に難燃剤(B)が均一に分散するように構成される。このような難燃性バッチによれば、シラングラフトポリマを含むシランバッチと混合しやすいので、難燃性バッチとシランバッチとを混合したときに、難燃剤を凝集させることなく、混合物中に均一に分散させることが可能となる。したがって、本実施形態の難燃性バッチによれば、難燃性が高く、難燃剤の凝集による表面平滑性や機械特性の低下を抑制し、これらの特性を高い水準で有する被覆層を形成することができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、難燃性バッチにシラノール縮合触媒を配合し、この難燃性バッチとシランバッチとを混合して押し出すことで被覆層を形成しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、シラノール縮合触媒を難燃性バッチに配合せずに、ポリマに分散させて触媒バッチとして構成し、この触媒バッチと難燃性バッチとシランバッチとを所定比率で混合して押し出して被覆層を形成してもよい。
また、上述の実施形態では、被覆層として電線10の絶縁層12を形成する場合について説明したが、本発明では、図2に示すように、上述の触媒バッチを用いてケーブル20の電気絶縁性のシース25を形成してもよい。具体的には、導体21の外周に絶縁層22が設けられた電線23を3本撚り合わせ、それを押さえテープ24などで押さえ、その外周にシース25を形成するとよい。シース25の形成は、上述の実施形態で説明した絶縁層12と同様に、行うとよい。
なお、図2では、3本の電線23を撚り合わせる場合を図示するが、電線23の本数は、これに限定されず、適宜変更することができる。
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
本実施例では、以下の材料を用いた。
・ポリオレフィン EVA エバフレックスV5274:三井・デュポンポリケミカル株式会社製
・ポリオレフィン LLDPE NLTCG5130:株式会社NUC製
・ポリオレフィン HDPE ハイゼックス5305E:株式会社プライムポリマー製
・シラン化合物 KBM−1003:信越化学工業株式会社製
・遊離ラジカル発生剤 パークミルD:日油株式会社製
・シラノール縮合触媒 ネオスタンU−830:日東化成株式会社製
・酸化防止剤 イルガノックス1010:BASFジャパン株式会社製
・難燃剤(三酸化アンチモン):Twinkling Star製
・難燃剤(臭素系難燃剤):サイテックス8010 アルベマール日本株式会社製
・難燃剤(メラミンシアヌレート):Mc20s 堺化学工業株式会社製
・難燃剤(水酸化マグネシウム):マグシーズS4 神島化学工業株式会社製
・難燃剤(水酸化アルミニウム):MARTINAL OL−107ZO アルベマール日本株式会社製
<実施例1>
(難燃性バッチの調製)
まず、下記表1に示すように、上記材料を配合し、難燃性バッチを調製した。
具体的には、遊離ラジカル発生剤(0.02質量部)をシラン化合物(6質量部)中に溶解させ、ポリ袋中で粉状の難燃剤(三酸化アンチモンを20質量部と臭素系難燃剤を20質量部とメラミンシアヌレートを20質量部との合計60質量部)に含浸させた。次に、3Lニーダー中の内部温度が90℃になったらポリオレフィン(EVA100質量部)を投入し、ポリオレフィンが軟化したら、シラン化合物を含浸させておいた粉状の難燃剤を投入して混練した。150℃になったら、シラノール縮合触媒(0.03質量部)および酸化防止剤(0.1質量部)を投入し、内部温度が160℃になったら材料を取り出した。これにより、シラングラフトポリオレフィン(A)中に難燃剤(B)およびシラノール縮合触媒が分散する難燃性バッチを得た。そして、難燃性バッチを取り出し、8インチロールにてテープ形状にし、角ペレタイザーでペレットにした。なお、シラノール縮合触媒を取出直前に投入したのは、ニーダー内での架橋反応抑制のためであり、酸化防止剤を取出直前に投入したのは、シラン化合物のグラフト重合を阻害しないようにするためである。
Figure 2017186416
(シランバッチの調製)
続いて、難燃性バッチと混合させるシランバッチを調製した。
具体的には、40mm押出機を用い、ホッパーからポリマを投入し、シラン化合物に遊離ラジカル発生剤を溶解させた溶液を液添ポンプで注入し、シリンダ温度200℃、押出機内滞留時間100〜150秒の設定で、ストランド状に押し出し、ペレタイザーにより径2〜3mmのシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを調製した。
なお、使用したポリマはV5274(EVA エバフレックス:三井・デュポンポリケミカル株式会社製)、シラン化合物は、KBM−1003(信越化学工業株式会社製)、遊離ラジカル発生剤はパークミルD(日油株式会社製)であり、ポリマ100質量部に対して、シラン化合物を4質量部、遊離ラジカル発生剤を0.1質量部の割合で配合した。
(電線の作製)
続いて、上記で調製した難燃性バッチおよびシランバッチを用いて被覆層を形成し、電線を作製した。
具体的には、難燃性バッチのペレットとシランバッチのペレットとを表1に示す割合で混合して、20mm押出機へホッパーから投入し、シリンダ温度180℃、ダイス温度200℃にて押出機内滞留時間120〜150秒に設定して、導体の外周に被覆厚が0.4mmとなるように押出被覆した。その後、押出被覆された導体を温度80℃で水分が存在する環境下に24時間放置し、シラン架橋させて絶縁層を形成することで、電線を作製した。なお、導体としては、径0.8mmの芯線を用いた。
<実施例2〜11>
実施例2〜4では、表1に示すように、用いる難燃剤の種類を変更して難燃性バッチを調製した以外は実施例1と同様に電線を作製した。
実施例5〜11では、表1に示すように、難燃剤の総量が80質量部となるように各難燃剤の配合量を変更して難燃性バッチを調製した以外は実施例1と同様に電線を作製した。
<実施例12〜20>
下記表2に示すように、実施例12〜14では、難燃剤の総量が140質量部となるように、実施例15〜20では、難燃剤の総量が300質量部となるように、それぞれ各難燃剤の配合量を変更して難燃性バッチを調製した以外は、実施例1と同様に電線を作製した。
Figure 2017186416
<実施例21〜25>
実施例21〜25では、下記表3に示すように、実施例10,14,17と同様の難燃性バッチを準備し、この難燃性バッチとシランバッチとの混合比率を適宜変更した以外は、実施例1と同様に電線を作製した。
Figure 2017186416
<比較例1〜9>
比較例1〜9では、難燃性バッチ、シランバッチおよび触媒バッチをそれぞれ以下のように調製し、これらを混合することにより電線を作製した。
難燃性バッチは、下記表4に示すように、シラン化合物および遊離ラジカル発生剤を配合せずにポリオレフィン、難燃剤および酸化防止剤を溶融混練し、ポリオレフィンに難燃剤および酸化防止剤が分散するように調製した。
シランバッチは、実施例1と同様に調製した。
触媒バッチは、ポリオレフィン(EVA V5724)を99.9質量部と、シラノール縮合触媒(ネオスタンU−830)を0.1質量部とを混練し、触媒含有濃度が0.1%となるように調製した。
そして、各バッチを下記表4に示す比率で混合して押し出すことにより、電線を作製した。
Figure 2017186416
<比較例10〜14>
比較例10〜13では、表5に示すように、2種類の異なる難燃剤のみを用いて難燃性バッチを調製した以外は、実施例1と同様に電線を作製した。
比較例14では、難燃剤の総量が350質量部となるように、各難燃剤の配合量を変更して難燃性バッチを調製した以外は、実施例1と同様に電線を作製した。
Figure 2017186416
〔評価方法〕
作製した各電線を以下の方法により評価した。
(表面外観)
作製した電線の絶縁層表面について、平滑さを手触りで、粒状の突起の有無を目視でそれぞれ評価した。本実施例では、平滑な手触りで電線5m当たり粒状の突起が1個も無い特に良好なものを○、手触りで荒れが分かり、電線5m当たり粒状の突起が10個以上目視で確認され、特に外観が荒れているものを×とし、○以上を合格とした。
(機械特性)
絶縁層の機械特性を以下の引張試験により評価した。具体的には、作製した電線から芯線を引き抜いて得られた絶縁層を、23℃(±3℃)、湿度50%(±10%)の雰囲気下で初期の引張試験を行った。引張試験はn=3平均であり、標線は50mmでの評価である。本実施例では、強度10MPa以上かつ伸び200%以上を合格で〇とし、強度10MPa未満もしくは伸び200%未満を×とした。
(難燃性)
絶縁層の難燃性を以下の2つの試験により評価した。
1つは、VFT試験を10回行い、その合格率を比較した。本実施例では、合格率が50%以上であれば、十分な難燃性を有するものと評価した。
もう1つは、VW−1試験を10回行い、その合格率を比較した。本実施例では、合格率が50%以上であれば、高い難燃性を有するものと評価した。
〔評価結果〕
各実施例、比較例の評価結果をそれぞれの表に示す。
実施例1〜4によれば、平滑な手触りで電線5m当たり粒状の突起が1個も無く、○であり、絶縁層は表面平滑性に優れていることが確認された。また、難燃剤の凝集が抑制されるためか、強度および伸びがともに高く、機械特性に優れていることが確認された。さらに、VFT試験の合格率が70%であり、十分な難燃性を有することが確認された。すなわち、実施例1の絶縁層は、表面平滑性、機械特性および難燃性に優れていることが確認された。
実施例5〜7は、難燃剤の総量を実施例1〜4よりも多くしたため、VFT試験での合格率が100%であり、難燃性がより高いことが確認された。
実施例8〜11は、難燃剤の総量が実施例5〜7と同じであるにもかかわらず、VW−1試験での合格率が50%〜70%となり、VW−1の合格率が50%未満である実施例5〜7よりも難燃性が高くなることが確認された。これは、難燃剤の組み合わせの違いによるものと推測される。すなわち、実施例8〜11では、酸素窒息効果を発現する難燃剤(アンチモン化合物、臭素系難燃剤およびメラミン系難燃剤)と、吸熱効果を発現する難燃剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)とを併用したため、併用しなかった実施例5〜7よりも高い難燃性を得ることができたものと推測される。
実施例12〜20によれば、難燃剤の総量を140質量部以上とすることにより、VW−1試験での合格率を100%とすることが可能となり、高い難燃性を実現できることが確認された。
実施例21〜25によれば、難燃性バッチとシランバッチとの混合比率が99:1〜20:80の範囲内であればよいが、VW−1試験での合格率が100%となるような高い難燃性を得るには、99:1〜30:70の範囲内とするとよいことが確認された。
比較例1〜8によれば、難燃剤をシラングラフトポリオレフィンに分散するように難燃性バッチを構成しなかったため、シランバッチと混合したときに難燃剤を均一に分散できなかったためか、VFT試験での合格率が50%未満となり、十分な難燃性を確保することができなかった。
比較例9では、難燃剤を総量が250質量部となるように多量に配合したため、VFT試験での合格率が50%となり、十分な難燃性を得られた。しかし、難燃剤の凝集により、絶縁層表面が荒れて表面平滑性が悪くなったばかりか、所望の機械特性も得ることができなかった。
比較例10〜13では、難燃剤の総量を実施例5などと同様に80質量部としたものの、VFT試験の合格率が50%未満となり、十分な難燃性を得られなかった。これは、比較例10〜13では、2種類の難燃剤を使用し、各難燃剤同士が凝集して、分散が不均一となったため、と推測される。
比較例14では、難燃剤を均一に分散させるように難燃性バッチを調製したが、難燃剤の総量が350質量部と過度に多かったため、高い難燃性は得られたものの、難燃剤の凝集を十分に抑制できずに、表面平滑性および機械特性が低下することが確認された。
以上のように、本発明の難燃性バッチによれば、難燃剤の配合量を多くしながらも、均一に分散できるので、高い難燃性を得つつ、凝集による表面平滑性や機械特性の低下を抑制し、これらを高い水準で得ることができる。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチに配合して難燃性を付与するための難燃性バッチであって、
遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、
アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、
前記難燃剤(B)を、前記ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する、難燃性バッチが提供される。
[付記2]
付記1の難燃性バッチにおいて、好ましくは、
前記難燃剤(B)は、前記アンチモン化合物および前記臭素系難燃剤(b1)、前記臭素系難燃剤および前記メラミン系難燃剤(b2)、並びに、前記アンチモン化合物、前記臭素系難燃剤および前記メラミン系難燃剤(b3)のうちのいずれか1つの組み合わせと、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1つと、を含む。
[付記3]
付記1又は2の難燃性バッチにおいて、好ましくは、
前記ポリオレフィン(a)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む。
[付記4]
付記1〜3のいずれかの難燃性バッチにおいて、好ましくは、
シラン架橋触媒(C)をさらに含有する。
[付記5]
本発明の他の態様によれば、
ポリオレフィン(a)と、シラン化合物と、遊離ラジカル発生剤と、アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)とを混合して、前記遊離ラジカル発生剤の存在下で前記ポリオレフィン(a)に前記シラン化合物をグラフト重合させてシラングラフトポリオレフィン(A)を形成しつつ、前記ポリオレフィン(a)に前記難燃剤(B)を分散させることで、難燃性バッチを得る難燃性バッチ調製工程と、
前記難燃性バッチと、ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチとを混合し、その混合物を導体の外周を被覆するように押し出して成形体を得る押出工程と、
前記成形体をシラン架橋させて被覆層を形成する架橋工程と、を有する電線・ケーブルの製造方法が提供される。
[付記6]
付記5の電線・ケーブルの製造方法において、好ましくは、
前記押出工程では、前記難燃性バッチと前記シランバッチとを99:1〜20:80の範囲内で混合する。
[付記7]
本発明のさらに他の態様によれば、
導体と前記導体の外周上に配置される被覆層とを備え、
前記被覆層は、ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチと難燃性バッチとを含む混合物をシラン架橋させてなり、
前記難燃性バッチは、
遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、
アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、
前記難燃剤(B)を、前記ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する、電線・ケーブルが提供される。
[付記8]
付記7の電線・ケーブルにおいて、好ましくは、
引張強度が10MPa以上であって、伸びが200%以上である。
10 電線
11 導体
12 絶縁層
20 ケーブル
21 導体
22 絶縁層
23 電線
24 押さえテープ
25 シース

Claims (8)

  1. ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチに配合して難燃性を付与するための難燃性バッチであって、
    遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、
    アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、
    前記難燃剤(B)を、前記ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する、難燃性バッチ。
  2. 前記難燃剤(B)は、前記アンチモン化合物および前記臭素系難燃剤(b1)、前記臭素系難燃剤および前記メラミン系難燃剤(b2)、並びに、前記アンチモン化合物、前記臭素系難燃剤および前記メラミン系難燃剤(b3)のうちのいずれか1つの組み合わせと、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1つと、を含む、請求項1に記載の難燃性バッチ。
  3. 前記ポリオレフィン(a)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む、請求項1又は2に記載の難燃性バッチ。
  4. シラン架橋触媒(C)をさらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性バッチ。
  5. ポリオレフィン(a)と、シラン化合物と、遊離ラジカル発生剤と、アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)とを混合して、前記遊離ラジカル発生剤の存在下で前記ポリオレフィン(a)に前記シラン化合物をグラフト重合させてシラングラフトポリオレフィン(A)を形成しつつ、前記ポリオレフィン(a)に前記難燃剤(B)を分散させることで、難燃性バッチを得る難燃性バッチ調製工程と、
    前記難燃性バッチと、ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチとを混合し、その混合物を導体の外周を被覆するように押し出して成形体を得る押出工程と、
    前記成形体をシラン架橋させて被覆層を形成する架橋工程と、を有する電線・ケーブルの製造方法。
  6. 前記押出工程では、前記難燃性バッチと前記シランバッチとを99:1〜20:80の範囲内で混合する、請求項5に記載の電線・ケーブルの製造方法。
  7. 導体と前記導体の外周上に配置される被覆層とを備え、
    前記被覆層は、ポリマにシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリマを含むシランバッチと難燃性バッチとを含む混合物をシラン架橋させてなり、
    前記難燃性バッチは、
    遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン(a)にシラン化合物がグラフト重合されたシラングラフトポリオレフィン(A)と、
    アンチモン化合物、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうち少なくとも3つを含む難燃剤(B)と、を含有し、
    前記難燃剤(B)を、前記ポリオレフィン(a)100質量部に対して60質量部以上300質量部以下となるように含有する、電線・ケーブル。
  8. 引張強度が10MPa以上であって、伸びが200%以上である、請求項7に記載の電線・ケーブル。
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