[go: up one dir, main page]

JP2017155127A - 硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及び電気・電子部品 - Google Patents

硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及び電気・電子部品 Download PDF

Info

Publication number
JP2017155127A
JP2017155127A JP2016039301A JP2016039301A JP2017155127A JP 2017155127 A JP2017155127 A JP 2017155127A JP 2016039301 A JP2016039301 A JP 2016039301A JP 2016039301 A JP2016039301 A JP 2016039301A JP 2017155127 A JP2017155127 A JP 2017155127A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
epoxy resin
resin composition
reaction
cured product
biphenyl
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016039301A
Other languages
English (en)
Inventor
員正 太田
Insei Ota
員正 太田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Chemicals Holdings Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp, Mitsubishi Chemicals Holdings Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2016039301A priority Critical patent/JP2017155127A/ja
Publication of JP2017155127A publication Critical patent/JP2017155127A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Polyethers (AREA)

Abstract

【課題】 加水分解性塩素量が少なく、結晶化速度が速いエポキシ樹脂に基づく、硬化性、絶縁信頼性、耐熱性、吸湿性に優れた硬化性エポキシ樹脂組成物及びその硬化物の提供。【解決手段】 式(1)で表されるビフェニル系構造を有するエポキシ化合物由来の構成単位を含有し、エポキシ当量が223〜241g/eqのエポキシ樹脂と、多官能酸無水物硬化剤とを含有してなる硬化性エポキシ樹脂組成物及びこれを硬化させてなる硬化物と、この硬化物からなる電気・電子部品。【選択図】 なし

Description

本発明は、加水分解性塩素量が少なく絶縁信頼性に優れ、結晶化速度が速く生産性に優れたエポキシ樹脂を含む硬化性、絶縁信頼性、吸湿性、及び耐熱性に優れた硬化性エポキシ樹脂組成物とこれより得られる硬化物及び該硬化物からなる電気・電子部品に関する。
エポキシ樹脂は種々の硬化剤を用いて硬化させることにより、機械的性質、耐熱性、電気的性質等に優れた硬化物となることから、接着剤、塗料、電気・電子材料等の幅広い分野で利用されている。特に、エポキシ樹脂がハンドリング性、絶縁特性、耐熱性、吸湿性、接着性に優れているという特徴を活かして、電気・電子材料の分野において多く用いられている。
また、近年の電子部品の小型化や薄型化にともなって、これらの用途に用いる場合の要求性能は更に厳しく、多様なものとなっており、例えば、エポキシ樹脂に対しては、電子部品の配線の細線化に伴って、更に高度の絶縁信頼性を得るため、樹脂に含まれる塩素量の低減が求められている。
これに加えて、電子デバイスの生産性向上を目的として、封止材の結晶化速度の向上が求められていることとともに、エポキシ樹脂組成物、硬化物において、より厳しい高温高湿環境下でも電子デバイスが使用できるように絶縁信頼性、耐熱性、吸湿性等の改良要求がある。
特許文献1には、4−フェニルフェノールのグリシジルエーテルが記載されているが、エポキシ当量は本発明より高いものである。また、4−フェニルフェノールのグリシジルエーテルはその後エポキシアクリレートとして検討されており、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物としての検討はなされていない。
特開2005−314512号公報
本発明の課題は、加水分解性塩素量が少なく、結晶化速度が速いエポキシ樹脂に基づく、硬化性、絶縁信頼性、耐熱性、吸湿性に優れた硬化性エポキシ樹脂組成物及びその硬化物の提供である。
このような硬化性エポキシ樹脂組成物及びその硬化物は電気・電子部品に好適に用いられる。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のエポキシ化合物由来の構成単位を含有する、エポキシ当量が223〜241g/eqのエポキシ樹脂と、多官能硬化剤とを含有する硬化性のエポキシ樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明の要旨は、次の[1]〜[7]に存する。
[1] 下記式(1)で表されるエポキシ化合物由来の構成単位を含有し、エポキシ当量が223〜241g/eqのエポキシ樹脂(以下「ビフェニル系エポキシ樹脂」と記す)と、多官能酸無水物硬化剤とを含有することを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
Figure 2017155127
[2] ビフェニル系エポキシ樹脂の加水分解性塩素が1000ppm以下である上記[1]の硬化性エポキシ樹脂組成物。
[3] ビフェニル系エポキシ樹脂の融点が73〜76℃である上記[1]又は[2]の硬化性エポキシ樹脂組成物。
[4] 多官能酸無水物硬化剤の含有量がエポキシ樹脂100重量部あたり0.01〜100重量部である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
[6] 上記[5]に記載の硬化物からなる電気・電子部品。
本発明によれば、加水分解性塩素量が低く絶縁信頼性に優れ、結晶化速度が速く生産性に優れたエポキシ樹脂と、このエポキシ樹脂に基づく、硬化性、絶縁信頼性、吸湿性、耐熱性に優れた硬化性エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物が提供される。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記の特性を有していて、半導体封止材、積層板等の電気・電子部品に特に有効に適用することができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
以下、本発明の構成要件を、その主成分であるエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の製造方法、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物、硬化反応と硬化物、及び硬化物の用途の順に詳細に説明する。
1.ビフェニル系エポキシ樹脂
(1)特徴
本発明に用いるエポキシ樹脂は、下記式(1)で表されるエポキシ化合物由来の構成単位を含有するエポキシ樹脂(以下「ビフェニル系エポキシ樹脂」と記すことがある)であり、加水分解性塩素量が低く絶縁信頼性に優れ、結晶化速度が速く生産性に優れたものである。
Figure 2017155127
このビフェニル系エポキシ樹脂は加水分解性塩素量が少ないため硬化物としたときの遊離塩素が低減されることから、電気・電子機器の配線腐食が防止され、絶縁不良等のトラブルを防ぐことができる。
(2)エポキシ当量
本発明では、ビフェニル系エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基数の尺度として「エポキ
シ当量」を用いる。「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に従って測定することができる。
本発明に用いるビフェニル系エポキシ樹脂のエポキシ当量は223〜241g/eq(「eq」は「当量」を意味する)であることが必要であり、エポキシ当量をこの範囲とすることにより、本発明の効果である十分速い結晶化速度を得ることができる。
エポキシ当量を230〜241g/eqとすることで、より結晶化速度が速くなるため、エポキシ樹脂の粉砕による製品化の際の生産性を更に向上できるので、より好ましい。
なお、エポキシ当量を223g/eq以上とするためには、脱塩素化反応の際のアルカリ濃度を高くしたり、上記反応時の樹脂含量を高くしたり、反応温度を高く及び/又は反応時間を長くして、上記式(1)のエポキシ化合物のオリゴマー化を進行させ、所望のエポキシ当量となるようにすればよい。
エポキシ当量を241g/eq以下とするためには、上記とは反対に、脱塩素化反応時のアルカリ濃度を低くしたり、反応時の樹脂含量を低くしたり、反応温度を低く及び/又は反応時間を短くする等の操作をすればよい。
なお、オリゴマー化反応の進捗状況は、上記反応中に適時サンプリングを行い、エポキシ当量を測定することで確認できる。
(3)加水分解性塩素量
ビフェニル系エポキシ樹脂は、加水分解性塩素の含有量(以下、「加水分解性塩素量」と称する場合がある。)が1000ppm以下であることが好ましい。
加水分解性塩素量が少ないほど、得られる製品の電気的な信頼性等の面で好ましく、490ppm以下であることがより好ましい。なお、加水分解性塩素量の下限は0ppm、即ち、下記の加水分解性塩素量の測定において「検出限界以下」となることであるが、加水分解性塩素量を過度に低くすると、エポキシ当量等の特性を上記範囲とすることが困難になることがあるので、加水分解性塩素量の下限は通常10ppm、より好ましくは1ppmである。
加水分解性塩素量の測定方法としては、例えば約0.5gの精秤したエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、1NのKOH/エタノール溶液5mlで30分間還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定することにより定量する方法が挙げられる。
(4)融点
本発明のビフェニル系エポキシ樹脂の融点は、結晶化速度の観点から、73〜76℃であることが好ましく、73〜75℃であることが、エポキシ樹脂製造時の反応時間が短縮できるのでより好ましい。
なお、本発明において「融点」とは、示差走査熱量計(DSC:セイコーインスツルメント社製 EXSTAR7020)を用いて、30℃〜150℃まで1℃/分で昇温して
測定した融点である。
(5)結晶化速度
本発明のエポキシ樹脂は、結晶化速度が高く、生産性に優れている。なお、本発明において「結晶化速度」の優劣は、以下の手順で評価した。
<結晶化速度の評価方法>
50ccのバイアル瓶にエポキシ樹脂を20g秤取し、これを150℃に加温してエポキシ樹脂を完全に溶融させた後、23℃にて1時間保管した。1時間後に、バイアル瓶中で結晶化していたものを「○」、結晶化しなかったものを「×」とした。
2.ビフェニル系エポキシ樹脂の製造方法
エポキシ当量、加水分解性塩素量、及び融点が前述の条件を満たす、本発明のビフェニ
ル系エポキシ樹脂の製造方法を以下に説明するが、本発明に用いるビフェニル系エポキシ樹脂の製造方法は、得られるエポキシ樹脂が上記各項目の条件を満たす限り、下記の製造方法に限定されるものではない。
ビフェニル系エポキシ樹脂の製造方法としては、下記式(2)で示される4−フェニルフェノール(以下「4PP」と記す場合がある)を原料とする一段法による製造方法や、4PPのアリル化物を経由する方法が例示できる。
(1)ビフェニル系エポキシ樹脂の製造
エポキシ当量、加水分解性塩素量、融点が前述の好適範囲を満たす本発明のビフェニル系エポキシ樹脂の製造方法については、前述の通り特に制限はされないが、例えば、以下に説明する一段法による製造方法、アリル化反応を経由する製造方法等が挙げられる。これらの方法について以下に詳述する。
<一段法による製造方法>
一段法による製造方法では、式(2)のフェノール化合物(4PP)と、エピハロヒドリンとを反応させることにより、本発明のビフェニル系エポキシ樹脂が製造できる。
Figure 2017155127
上記方法によるエポキシ樹脂の製造に際しては、4PPの他に、その他の多価ヒドロキシ化合物を原料として併用してもよい。この場合、本発明のビフェニル系エポキシ樹脂の他に、その他のエポキシ樹脂も生成することになる。
但し、上記の場合でも、本発明の趣旨に従って、原料ヒドロキシ化合物中の4PPの比率は、30モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。特に好ましいのは100モル%である。
なお、本発明では、「多価ヒドロキシ化合物」等における「ヒドロキシ化合物」はフェノール化合物及びアルコール化合物の両者を含む総称である。
上記その他の多価ヒドロキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールAF、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂等の種々の多価フェノール類(ただし、上記式(2)の4PPを除く。)や、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、キシレン樹脂とフェノール類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の鎖状脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロデカンジオール等の環状脂肪族ジオール類;ポリエチレンエーテルグリコール、ポリオキシトリメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類等が例示できる。
これらの中で好ましいものとしてはフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フェノールとヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の鎖状脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロデカンジオール等の環状脂肪族ジオール類、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリオキシトリメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類等が挙げられる。
原料として用いる、4PPと必要に応じて用いられるその他の多価ヒドロキシ化合物は、これらの合計である全ヒドロキシ化合物の水酸基1当量あたり、通常0.8〜20当量、好ましくは0.9〜15当量、より好ましくは1.0〜10当量に相当する量のエピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。エピハロヒドリンの量が0.8当量以上であるとオリゴマー化反応を制御しやすく、得られるエポキシ樹脂を適切な溶融粘度、エポキシ当量とすることができるために好ましい。一方、エピハロヒドリンの量を20当量以下とすると生産効率が向上する傾向となり好ましい。
なお、この反応におけるエピハロヒドリンとしては、通常、エピクロルヒドリン又はエピブロモヒドリンが用いられる。
次いで、上記の溶液を撹拌しながら、これに原料のヒドロキシ化合物の水酸基1当量当たり通常0.5〜2.0当量、好ましくは0.7〜1.8当量、より好ましくは0.9〜1.6当量に相当する量のアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて反応させる。アルカリ金属水酸化物の量を0.5当量以上とすることで、未反応の水酸基と生成したエポキシ樹脂が反応しにくくなり、高分子量化反応を制御しやすいために好ましい。また、アルカリ金属水酸化物の量を上記2.0当量以下とすることで、副反応による不純物生成が抑制できるので好ましい。ここで用いられるアルカリ金属水酸化物としては通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが用いられる。
この反応は、常圧下又は減圧下で行うことができ、反応温度は通常40〜150℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80〜100℃である。反応温度が40℃以上であると反応が進行しやすく、かつ反応制御もしやすいので好ましい。また、反応温度を150℃以下とすることで副反応が抑制でき、特に塩素不純物を低減しやすいので好ましい。
エポキシ樹脂の生成反応は、必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油/水分離して油分を反応系へ戻す方法により脱水しながら行われる。触媒であるアルカリ金属水酸化物は、急激な反応を抑えるために、通常0.1〜8時間、好ましくは0.1〜7時間、より好ましくは0.5〜6時間掛けて少量ずつ断続的又は連続的に添加する。アルカリ金属水酸化物の添加時間を0.1時間以上とすることで、反応の急激な進行を防止でき、反応温度の制御がしやすくなる。添加時間を8時間以下にすることで、塩素不純物の生成を減らすことができ、また経済性の観点からも好ましい。
この反応の全反応時間は通常1〜15時間である。反応終了後、副生した不溶性塩を濾別及び/又は水洗によって除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去することで粗エポキシ樹脂を得ることができる。
なお、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4 ,6−ト
リス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド等のホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類等の触媒を用いてもよい。
また、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メトキシプロパノール等のグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等の不活性な有機溶媒を反応媒体として使用してもよい。
<アリル化反応を経由する製造方法>
ビフェニル系エポキシ樹脂はアリル化反応を経由する方法で製造することもできる。この場合、フェノール化合物である4PPにアリル化反応を行ってアリル基を導入した後、このアリル基を酸化することにより、上記粗エポキシ樹脂を得ることができる。
アリル化反応を経由する製造方法としては、4PPを原料として用いること以外は、特開2011−225711号公報、特開2012−092247号公報、特開2012−111858号公報等に記載された方法を用いることができる。
(2)粗エポキシ樹脂の精製
上記で得られた粗エポキシ樹脂中には、未反応の原料化合物やエピハロヒドリンの反応により生成した塩素や塩素含有化合物などの塩素系不純物が含まれている。このような塩素系不純物を強アルカリと反応させて、含まれる塩素を無機塩素系の水溶性化合物に変換し、水洗除去することによって、精製されたエポキシ樹脂を得ることができる。
なお、この精製工程においては、粗エポキシ樹脂の純度や製造条件、あるいは精製工程における処理(反応)条件の違いが原因となって、処理時間による精製度(加水分解性塩素含有量、全塩素量等)に差が出る可能性がある。このため、所望の精製度のエポキシ樹脂を得るためには、随時サンプリングを行い、エポキシ当量、粘度、塩素含有量等を分析することが好ましい。
粗エポキシ樹脂中の残留塩素化合物成分を除去するためには、強アルカリと反応させる方法が一般的である。この反応に際しては、粗エポキシ樹脂を溶解させるための有機溶媒を用いてもよい。反応に用いる有機溶媒は、特に制限されるものではないが、精製効率、取り扱い性、作業性等の面から、非プロトン性極性溶媒及び/又は非プロトン性極性溶媒以外の不活性有機溶媒を、単独でまたは混合して使用することが好ましい。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの非プロトン性極性溶媒の中では、入手し易く、効果が優れていることから、ジメチルスルホキシドが好ましい。
非プロトン性極性溶媒以外の不活性な有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられるが、洗浄効果や後処理の容易さなどから、芳香族炭化水素溶媒またはケトン系溶媒が好ましく、特にトルエン、キシレンまたはメチルイソブチルケトンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の非プロトン性極性溶媒とこれ以外の不活性有機溶媒とを混合して用いる場合は、全溶剤中の非プロトン性極性溶媒の割合が3〜20重量%となるようにすることが好ましい。
有機溶媒の使用量は、粗エポキシ樹脂の濃度が通常3〜70重量%となる量であり、好ましくは5〜50重量%となる量であり、より好ましくは10〜40重量%となる量である。
有機溶媒の使用量を上記範囲とすることで、残留塩素化合物成分の除去効率を良好なものとすることができる。
ここで用いる強アルカリ成分としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を固体又は溶液として使用することができる。これらのアルカリ金属水酸化物は水や有機溶媒に溶解して使用してもよい。使用するアルカリ金属水酸化物の量としては、粗エポキシ樹脂100重量部に対して、アルカリ金属水酸化物の固形分換算で0.01重量部以上、2.0重量部以下が好ましい。
上記反応の反応温度は用いる溶媒の沸点にもよるが、通常30〜120℃、好ましくは40〜110℃である。反応温度をこの範囲内とすることで、制御性よく温和に反応を進めることができる。
また、反応時間は通常0.1〜15時間、好ましくは0.3〜12時間である。反応時間を上記範囲とすることで、反応の過度な進行を予防しつつ、反応を進めることができる。
反応後は水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副生塩を除去し、更に有機溶媒を減圧留去及び/又は水蒸気蒸留して除去することができる。
上記のような精製工程を経ることによって、本願のエポキシ当量が223〜241g/eqで、好ましくは加水分解性塩素が1000ppm以下、融点が73〜76℃のエポキシ樹脂を得ることができる。
3.硬化性エポキシ樹脂組成物
(1)硬化性エポキシ樹脂組成物の特徴
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、前述した特定のビフェニル系エポキシ樹脂と多官能酸無水物硬化剤とを含有するものである。
このような一分子中に2以上の酸無水物基を有する多官能酸無水物硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂として多官能のエポキシ樹脂を含有していなくても良好な硬化性を示し、得られた硬化物に、優れた耐熱性、耐応力性、吸湿性、難燃性等を得ることができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においては、上記の成分に加えて、必要に応じて、本発明のビフェニル系エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂(以下、単に「他のエポキシ樹脂」と称す場合がある。)、多官能酸無水物硬化剤以外の硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤、カップリング剤等を、本発明の趣旨・効果を阻害しない限り、適宜配合することができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、その主成分であるビフェニル系エポキシ樹脂が、加水分解性塩素量が低く、結晶化速度が速い、という特徴を有することで、硬化性に優れるとともに、この組成物から得られる硬化物の絶縁信頼性、吸湿性、耐熱性等の特性が優れており、電気・電子部品を始めとする各種の用途に好適に使用することができる。
以下、ビフェニル系エポキシ樹脂以外の、本発明の組成物を構成する必須成分及び任意成分について個別に説明する。
(2)多官能酸無水物硬化剤
本発明において必須の成分である多官能酸無水物硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖延長反応に寄与する酸無水物基を一分子中に複数個有する化合物である。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において、多官能酸無水物硬化剤の含有量は、全エポキシ樹脂成分100重量部(固形分)に対して、0.01〜1000重量部とすることが好ましい。
多官能酸無水物硬化剤の含有量が0.01重量部未満では、エポキシ樹脂組成物を硬化させるために過大な時間を要することとなり、実用的でない。一方、この含有量が1000重量部を超えるほど多量に多官能硬化剤を使用すると、エポキシ樹脂の硬化反応が極めて速くなり、成形品が不均一になったり、歪みを生じやすくなったりするだけでなく、硬化反応に寄与しない多官能酸無水物硬化剤が硬化物中に多量に残存して、成形品表面にベタつきが発生したり、所望の硬度が得られなかったりすることがある。
好ましい多官能酸無水物硬化剤の含有量の上限は500重量部で、300重量部を上限とすることがより好ましい。特に好ましい上限は100重量部である。このような量で用いると、多官能酸無水物硬化剤中に不純物として含まれる低分子成分が硬化物からブリードすることを防ぐことができる。
また多官能酸無水物硬化剤の含有量の下限は0.5重量部が好ましく、1重量部がより好ましい。このような量とすることで、より迅速に所望の硬度を得ることができる。
なお、本発明において「固形分」とは溶媒を除いた成分のことを意味し、固体のエポキシ樹脂だけでなく、半固形や粘稠な液状のエポキシ樹脂も含むものである。また「全エポキシ樹脂成分」とは、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の量に相当し、硬化性エポキシ樹脂組成物が本発明のビフェニル系エポキシ樹脂のみを含む場合は、ビフェニル系エポキシ樹脂の量を意味し、ビフェニル系エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を含む場合は、ビフェニル系エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂との合計量に相当する。
本発明で好ましく用いられる多官能酸無水物硬化剤としては、例えば、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1−メチル−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
酸無水物の変性物としては、例えば、上述した酸無水物をグリコールで変性したもの等が挙げられる。ここで、変性に用いることのできるグリコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポチテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール類等が挙げられる。更には、これらのうちの2種類以上のグリコール及び/又はポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコールを用いることもできる。
酸無水物の変性物においては、酸無水物基1モルに対してグリコール0.4モル以下で変性させることが好ましい。変性量が上記上限値以下であると、硬化性エポキシ樹脂組成
物の粘度が高くなり過ぎず、作業性が良好となる傾向にあり、また、エポキシ樹脂との硬化反応の速度も良好となる傾向にある。
以上で挙げた多官能型酸無水物系硬化剤は1種のみでも2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
上記の多官能型酸無水物系硬化剤を用いる場合、硬化性エポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるので好ましい。
(3)他の硬化剤
本発明においては、多官能酸無水物硬化剤に加えて、それ以外の硬化剤を併用してもよい。また、通常「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖延長反応に寄与する化合物であって、上記条件に適合するものも使用できる。
上記のような他の硬化剤を併用する場合の組み合わせや使用量は、多官能酸無水物硬化剤の効果を阻害しない限り特に限定されず、上記の多官能酸無水物硬化剤の使用量の範囲内で、その一部を置き換える形で使用するように定めればよい。
他の硬化剤としては、前記の条件を満たす限り、一般にエポキシ樹脂用硬化剤として知られているものは特に制限なく使用できる。例えば、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、単官能型の酸無水物硬化剤、アミド系硬化剤、第3級アミン、イミダゾール類等が挙げられる。
また硬化剤を複数種用いる場合は、予め混合して混合硬化剤を調製してから使用してもよいし、硬化性エポキシ樹脂組成物の各成分を混合する際に硬化剤の各成分をそれぞれ個別に添加して混合してもよい。
以下、上記で例示した硬化剤について更に詳細に説明する。
<フェノール系硬化剤>
フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリスフェノールメタン型樹脂、ナフトールノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂等の種々の多価フェノール類や、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、キシレン樹脂とフェノール類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物等の各種のフェノール樹脂類等が挙げられる。
これらのフェノール系硬化剤は、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも組成物の硬化性や硬化後の耐熱性等の観点から、上記フェノール性硬化
剤の中でも、フェノールノボラック樹脂(例えば下記式(3)で表される化合物)、フェノールアラルキル樹脂(例えば下記式(4)で表される化合物)、ビフェニルアラルキル樹脂(例えば下記式(5)で表される化合物)、ナフトールノボラック樹脂(例えば下記式(6)で表される化合物)、ナフトールアラルキル樹脂(例えば下記式(7)で表される化合物)、トリスフェノールメタン型樹脂(例えば下記式(8)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)等が好ましく、特にフェノールノボラック樹脂(例えば下記式(3))、フェノールアラルキル樹脂(例えば下記式(4))、ビフェニルアラルキル樹脂(例えば下記式(5))、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物(例えば下記式(9))、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物(例えば下記式(9))、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10))、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10))が好ましい。
Figure 2017155127
(ただし、上記式(3)〜(8)において、k〜kはそれぞれ0以上の数を示す。)
Figure 2017155127
(ただし、上記式(9)、(10)においてk、k、l、lはそれぞれ1以上の数を示す。)
<アミン系硬化剤>
アミン系硬化剤としては、第3級アミン以外の硬化剤、例えば脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、及び芳香族アミン類等があげられる。
第3級アミン以外の硬化剤を以下に列挙する。
脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が例示される。
ポリエーテルアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が例示される。
脂環式アミン類としては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン等が例示される。
芳香族アミン類としては、テトラクロロ−p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノアニソール、2,4−トルエンジアミン、2,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、2,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−アミノフェノール、m−アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α−(m−アミノフェニル)エチルアミン、α−(p−アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−
アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が例示される。
以上で挙げた(第3級アミン以外の)アミン系硬化剤は1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
<単官能酸無水物系硬化剤>
本発明においては、必須成分である多官能酸無水物硬化剤に相当しない、単官能酸無水物硬化剤を併用することができる。このような単官能酸無水物硬化剤としては、単官能の酸無水物や、その変性物等が例示できる。
単官能の酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、ヘット酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物等が挙げられる。
酸無水物の変性物としては、例えば、上述した酸無水物をグリコールで変性したもの等が挙げられる。変性用のグリコール類の種類や使用量は、多官能酸無水物硬化剤の項で説明したものを、同様にして用いることができる。
以上で挙げた単官能酸無水物硬化剤も、1種のみでも2種以上を任意の組み合わせ及び配合量で組み合わせて用いることができる。
<アミド系硬化剤>
アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。このようなアミド系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
<イミダゾール類>
イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。
なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
以上に挙げたイミダゾール類は1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
(4)他のエポキシ樹脂
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、本発明の目的・効果を阻害しない限り、前記ビフェニル系エポキシ樹脂以外に、他の単官能又は多官能のエポキシ樹脂を併せて用いることができる。他のエポキシ樹脂を含むことにより、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物
の耐熱性、対応力性、耐吸湿性、難燃性等を向上することができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に用いることのできる他のエポキシ樹脂としては、以下のようなエポキシ樹脂が例示できる。
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、ビスフェノールシクロドデシル型エポキシ樹脂、ビスフェノールジイソプロピリデンレゾルシン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、メチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、チオジフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシスチルベン類から誘導されるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、テルペンフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒドの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、フェノール・クロトンアルデヒドの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、フェノール・グリオキザールの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂から誘導されるエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されるエポキシ樹脂、アミノフェノールから誘導されるエポキシ樹脂、キシレンジアミンから誘導されるエポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロフタル酸から誘導されるエポキシ樹脂、ダイマー酸から誘導されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で用いてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中でも組成物の流動性、及び硬化物の耐熱性・耐吸湿性・難燃性等を改良できる点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型のエポキシ樹脂、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が、上記の他のエポキシ樹脂を含む場合、その含有量は組成物中の全エポキシ樹脂成分を100重量%としたとき、その0.01〜99.9重量部が好ましく、より好ましくは25〜90重量%、更に好ましくは50〜87.5重量%である。
(4)その他の組成物成分
<硬化促進剤>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤を含むことにより、硬化時間の短縮、硬化温度の低温化が可能となり、より容易に所望の硬化物を得ることができる。
硬化促進剤の種類としては、エポキシ樹脂の硬化反応を促進するものであれば特に限定されないが、具体例としては、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩等のリン系化合物、テ
トラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。
硬化促進剤として使用できるリン系化合物として以下のようなものが例示できる。
1)有機ホスフィン類:トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等
2)有機ホスフィン類の誘導体:上記の有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体、有機ホスフィン類と他の化合物との付加化合物
ここで用いることができる他の化合物としては、無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等が例示できる。
3)ホスホニウム塩:ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム塩、アルキルトリフェニルホスホニウム塩等を有する化合物が挙げられ、具体的には、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−メチルフェニルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が例示できる。
上記例示した硬化促進剤の中でも有機ホスフィン類及びホスホニウム塩が好ましく、有機ホスフィン類が最も好ましい。また、硬化促進剤は、単独で用いても、また2種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において、これらの硬化促進剤は、全エポキシ樹脂成分100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下の範囲で用いることが好ましく、その下限としては0.5重量部以上がより好ましく、更に好ましくは1重量部以上である。一方、上限としては15重量部以下がより好ましく、更に好ましくは10重量部以下である。
硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることで、良好な硬化促進効果を得ることができ、上記上限値以下とすることで、所望の硬化物性を得やすくなる。
<無機充填材>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には無機充填材を配合することができる。無機充填材としては例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、チッ化ホウ素等が挙げられる。これらは、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
無機充填材を使用することにより、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を半導体封止材として用いたときに、半導体封止材の熱膨張係数を内部のシリコンチップやリードフレームに近づけることができ、また半導体封止材全体の吸湿量を減らすことができるため、耐ハンダクラック性を向上させることができる。中でも半導体封止材用の硬化性エポキシ樹脂組成物には、無機充填材として破砕型及び/又は球状の、溶融及び/又は結晶性シリカ粉末充填材を用いることが好ましい。
無機充填材の平均粒子径は、通常1〜50μm、好ましくは1.5〜40μm、より好
ましくは2〜30μmである。平均粒子径が上記下限値以上であると溶融粘度があまり高
くならないので、流動性が低下しにくい。また平均粒子径が上記上限値以下であると成形時に金型の狭い隙間に充填材が目詰まりしにくく、材料の充填性が向上して成形不良が少なくなるので好ましい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に無機充填材を用いる場合、無機充填材の配合量は硬化性エポキシ樹脂組成物全体の30〜95重量%の範囲とすることが好ましい。
<離型剤>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には離型剤を配合することができる。離型剤としては例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸類及びその金属塩類、パラフィン等の炭化水素系離型剤を用いることができる。これらは、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に離型剤を配合する場合、その配合量は、硬化性エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100重量部に対して、通常0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。離型剤の配合量を上記範囲内とすることで硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化特性を維持しつつ、良好な離型性を発現することができるので好ましい。
<カップリング剤>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、カップリング剤を配合することが好ましい。カップリング剤を無機充填材と併用すると、マトリックスであるエポキシ樹脂と無機充填材との接着性を向上させることができる。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン類などの他、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン類などが挙げられる。
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
これらのカップリング剤は、いずれも1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物にカップリング剤を用いる場合、その配合量は、全エポキシ樹脂成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜3重量部とすることが好ましい。カップリング剤の配合量を上記範囲内とすることで、カップリング剤によるエポキシ
樹脂と無機充填材との密着性が向上するとともに、得られる硬化物からのカップリング剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
<その他の成分>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、前記以外の成分(「その他の成分」と記すことがある)を配合することができる。このような「その他の成分」としては例えば、難燃剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料等が挙げられ、必要に応じて本発明の趣旨・硬化を阻害しない範囲で適宜配合することができる。ただし、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に上記で挙げた成分以外のものを配合することを何ら妨げるものではない。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に用いることができる難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノール樹脂等のハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、赤リン、リン酸エステル類、ホスフィン誘導体等のリン系難燃剤、メラミン誘導体等の窒素系難燃剤及び水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤等が挙げられる。
4.硬化反応と硬化物
<硬化反応>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は優れた硬化性を有しており、また得られた硬化物は、絶縁信頼性、吸湿性、耐熱性が優れている。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる方法は特に限定されないが、通常、加熱による熱硬化反応により硬化させることができる。このときの加熱温度は用いる硬化剤の種類によって適宜選択すればよい。例えば、本発明の多官能酸無水物硬化剤を用いた場合、硬化温度は通常130〜300℃である。
この硬化反応は硬化促進剤を添加することにより、硬化温度を下げたり、硬化速度を高めたりすることも可能である。
硬化反応の反応時間は、通常1〜20時間程度で、好ましくは2〜18時間、より好ましくは3〜15時間である。反応時間を上記範囲内とすることで、硬化反応が十分に進行しかつ加熱による樹脂成分の劣化や加熱時の放熱ロスを少なくできる。
<硬化物>
[絶縁信頼性]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は絶縁信頼性が優れている。特に、エポキシ樹脂硬化物の抽出水の塩素量が1000ppm以下のように低いことは、高温高湿環境下における電気電子部品が絶縁悪化防止に有効である。より好ましい抽出水の塩素量の上限は390ppm以下である。
硬化物の抽出水の塩素量が少ない程、塩素イオンのマイグレーションによる半導体などの絶縁不良や短絡(ショート)を防ぐことができるので好ましい。
なお、抽出水の塩素量の測定方法は実施例の項に記載する。
[吸湿性]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は吸湿性に優れている。例えば3cm×3cmの厚さ5mmの試験片を温度85℃、湿度85%の環境下で168hr静置した場合の吸水率を1.4%以下とすることができる。
硬化物の吸湿率が低いほど、高温環境下でも吸水した水の膨張による熱応力が小さくなりクラックが入りにくくなるので、より厳しい環境下で電気電子部品を使用することができる。
吸湿性の測定・評価方法は、実施例の項に記載する。
[耐熱性]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は耐熱応力性に優れており、200℃の弾性率を84MPa以下、250℃の弾性率を12MPa以下のようにすることができる。
硬化物の高温での弾性率が低いと熱応力が小さくなり、高温環境下でのクラックが入りにくくなり、電気電子部品の使用可能環境が広くなる。
なお、高温時の弾性率の測定方法は、実施例の項に記載する。
5.本発明のエポキシ樹脂、その組成物、及び硬化物の用途
本発明のビフェニル系エポキシ樹脂は加水分解性塩素量が少なく電気信頼性に優れ、かつ結晶化速度が速く生産性も良好である。
このビフェニル系エポキシ樹脂を含む本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化性、絶縁信頼性、吸湿性、耐熱性等に優れている。
従って、本発明のエポキシ樹脂及び硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記のような特性が求められる用途であれば、いかなる用途にも好適に用いることができる。
このような特徴を活かすことができる用途としては、例えば、自動車用電着塗料、船舶・橋梁用重防食塗料、飲料用缶の内面塗装用塗料等の塗料分野;積層板、半導体封止材、絶縁粉体塗料、コイル含浸絶縁塗料、及びコイル含浸絶縁被覆材等の電気電子分野;橋梁の耐震補強、コンクリート補強、建築物の床材、水道施設のライニング、排水・透水舗装、車両・航空機用接着剤等の土木・建築・接着剤分野等を例示できる。
これらの中でも、本発明のエポキシ樹脂及びこれを用いて得られる組成物や硬化物は、特に半導体封止材・積層回路基板等の電気・電子用途に有用である。
なお、上記用途に本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を適用する際は、組成物を硬化させた後の硬化物として使用しても、また当該製品の製造工程の途中で硬化させてもよい。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものでもあり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
1.原材料
(1)薬品類
本実施例で使用した薬品類は以下の通りである。
4−フェニルフェノール:東京化成工業(株)製、試薬1級
エピクロルヒドリン:鹿島ケミカル(株)製
2−プロパノール:和光純薬工業(株)製、試薬特級
メタノール:和光純薬工業(株)製、試薬特級
水酸化ナトリウム:和光純薬工業(株)製、試薬特級
メチルイソブチルケトン:和光純薬工業(株)製、試薬特級
(2)助剤類
樹脂組成物の硬化試験に用いた硬化剤、硬化促進剤は以下の通り。
エポキシ樹脂3(多官能エポキシ樹脂):オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名 EOCN-1020-65(エポキシ当量:199g/当量
))
多官能硬化剤1(フェノール系):フェノ−ルノボラック樹脂(群栄化学(株)製、商品名 PSM4261(水酸基当量:103g/当量))
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製、商品名 トリフェニルホスフィン)
多官能硬化剤2(酸無水物系):グリセリンビスアンヒドロトリメリテート モノアセ
テート(新日本理化(株)製、商品名 TMTA−C(酸無水物当量:182g/当量))
硬化促進剤2:2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製、商品名 EMI−24)
2.分析・評価方法
本実施例における、エポキシ当量、加水分解性塩素量、融点、及び結晶化速度の測定・評価方法は、本明細書の[発明を実施するための形態]の、[発明の詳細な説明]、「1.ビフェニル系エポキシ樹脂」の、(2)〜(5)に記載した通りである。
3.エポキシ樹脂の合成
(1)実施例、比較例用エポキシ樹脂の合成
[合成例1](本発明のビフェニル系エポキシ樹脂:エポキシ樹脂1)
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの四口フラスコに4−フェニルフェノール90g、エピクロルヒドリン319g、2−プロパノール124g、水44gを仕込み、40℃に昇温して均一に溶解させた。
続いて、90分かけて65℃まで昇温しながら水酸化ナトリウム水溶液(濃度:48.5重量%)51gを滴下した。滴下終了後、65℃で30分保持し反応を完了させた。
水96gを追加した後、3Lの分液ロートに反応液を移し、温度を65℃に保って1時間静置して油層と水層に分離した。ここから水層を抜き出して、副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。
次いで、油層から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンと2−プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
この粗製エポキシ樹脂を、上記と同様の四口フラスコに移してメチルイソブチルケトン(以下「MIBK」と略記することがある)180gに溶解し、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを加え、65℃の温度で1時間再び反応させた。
その後、MIBK100gを加えた後、水500gを用いて水洗を4回行い、次いで、150℃の減圧下でMIBKを留去して粗エポキシ樹脂を得た。
上記で得られた粗エポキシ樹脂を60g秤取して、200mlの四口フラスコに仕込み、MIBK40gを加え、窒素雰囲気下でオイルバスを用いて70℃に加熱・溶解した。エポキシ樹脂が十分溶解した後、25℃に冷却して得られた結晶を濾過した後、少量のMIBKで洗浄した。
洗浄済みの結晶50gを再び上記四口フラスコに仕込み、新しいMIBK20gを加えて、70℃に昇温して溶解させた。エポキシ樹脂が十分溶解した後、25℃に冷却して生成した結晶を濾別し、少量のMIBKで洗浄した。
得られた結晶40gを用いて、上記の「70℃昇温−溶解−25℃冷却・結晶化−濾過−洗浄」の手順を再度繰り返して、精製されたエポキシ樹脂(「エポキシ樹脂1」)を得た。
[合成例2](本発明の範囲外のビフェニル系エポキシ樹脂)
公知文献(WO2010/137501号公報)に記載された合成例2に準じてエポキシ樹脂を合成した。
具体的には、温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの四口フラスコに4−フェニルフェノール(東京化成工業(株)製)181g、エピクロルヒドリン394g、メタノール80gを仕込み、70℃に昇温して均一に溶解させた後、フレーク状の水酸化ナトリウム44gを90分掛けて分割添加した。
添加終了後、70℃で60分保持し反応を完了させ、水200gを追加した後、3Lの分液ロートに反応液を移し65℃の状態で1時間静置後、分離した油層と水層から水層を抜き出し、副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。この水洗操作を2回実施した。
次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンとメタノールを留去して、粗エポキシ樹脂を得た。
この粗エポキシ樹脂をMIBK480gに溶解させ、70℃に昇温した後、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液12gを加え、70℃の温度で1時間追反応を行った。
水500gを用いて水洗水が中性になるまで水洗を行い、次いで150℃の減圧下でMIBKを完全に除去してエポキシ樹脂(「エポキシ樹脂2」)を得た。
上記で得られたエポキシ樹脂1,2のエポキシ当量、加水分解性塩素量、融点、結晶化速度を前述の方法で測定した。結果を表1に示す。
Figure 2017155127
4.硬化性エポキシ樹脂組成物の製造及び評価
[実施例1及び比較例1、2]
(1)硬化性エポキシ樹脂組成物の製造
表2に示す割合で所定のエポキシ樹脂と硬化剤とを配合し、100℃まで加温して均一になるまで撹拌した。その後、80℃まで冷却し、硬化促進剤を表2に示す割合で添加し、均一になるまで撹拌して硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。
なお、表2において、表中の空欄は当該樹脂等を使用しなかったこと(即ち添加量がゼロであること)を、「−」はデータがないことをそれぞれ示す。
(2)硬化物の作成と評価
上記で得られた硬化性エポキシ樹脂組成物について、その硬化性及び物性を以下の通り評価した。結果を表2にまとめて示す。
<硬化性>
一方の面に離型フィルム(PET製)を積層したガラス板を2枚用いて、離型フィルム
側を内側にし、ガラス板間隔を5mmに調整して注型板を作成した。
この注型板に、硬化性エポキシ樹脂組成物50gを80℃で注型し、120℃×2時間+175℃×6時間の条件でオーブン内に保持した。上記の所定時間が経過した後、加熱を停止し、室温となるまでオーブン内に保持・放冷した後、注型板から成形体を取り出した。
得られた成形体を175℃に加熱して、溶融しなかったものを硬化性「○」、溶融したものを硬化性「×」と評価した。
硬化物が得られたものについて、更に以下の評価を実施した。結果を表2、3に示す。
<抽出水の塩素量:絶縁信頼性>
上記で得られた硬化物をワンダーブレンダー(大阪ケミカル(株)製)で粉砕し、20メッシュの金網を通して、粉砕された硬化物を作成した。
この硬化物20gをポリエチレン製の瓶に8g秤取し、超純水を80mL加えた後、密閉して、95℃の乾燥機中で加熱した。20時間加熱した後、室温まで冷却し、内容物をろ紙5Aでろ過して抽出水を得た。
得られた抽出水1gをビーカーに入れ、アセトン100mL、酢酸25mLを追加し、0.002モル/L濃度の硝酸銀溶液を用いて、電位差滴定法により塩素量を測定した。得られた結果を表3に示す。
<吸湿率:吸湿性>
得られた硬化物を「縦3cm×横3cm×厚さ5mm」のサイズに切削して試験片を作成し、これを85℃、85%RHに調整した恒温恒湿漕中に設置した。168時間経過後の重量変化率を吸湿率とした。
<熱時弾性率(200℃(E')の測定:耐熱性>
硬化物を「縦5cm×横1cm×厚さ5mm」のサイズに切削して試験片を作成し、熱機械分析装置(DMS:セイコーインスツルメント社製 EXSTAR6100)により
、3点曲げモードで分析を行い、1Hzの200℃(E')を高温時の弾性率(熱時弾性
率)とした。なお、昇温パターンは初期温度30℃、到達温度280℃として、昇温速度は5℃/分として測定した。
Figure 2017155127
4.結果の評価
表1より、エポキシ当量、加水分解性塩素、融点が本発明の規定範囲内である合成例1のエポキシ樹脂1は、合成例2のエポキシ樹脂3に比べて結晶化速度が速く生産性に優れ、加水分解性塩素量が少ないため絶縁信頼性に優れる。
表2よりエポキシ当量、加水分解性塩素、融点が本発明の規定範囲内である本発明のエポキシ樹脂(合成例1のエポキシ樹脂1)を用いた実施例1のエポキシ樹脂硬化物は、比較例1、2のエポキシ樹脂硬化物に対し、抽出水の塩素量、吸湿性、200℃弾性率に優れることが判る。
なお、参考例1のように本発明の範囲内のエポキシ樹脂を使用しても、多官能酸無水物硬化剤ではなく、フェノール系の多官能硬化剤を用いた場合は、硬化性が劣る結果となっている。
本発明により得られた硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化性が良好であり、またこれを用いて得られる硬化物は、硬化性、絶縁信頼性、吸湿性が優れており、電気・電子部品に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表されるエポキシ化合物由来の構成単位を含有し、エポキシ当量が223〜241g/eqのエポキシ樹脂(以下「ビフェニル系エポキシ樹脂」と記す)と、多官能酸無水物硬化剤とを含有することを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2017155127
  2. ビフェニル系エポキシ樹脂の加水分解性塩素が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
  3. ビフェニル系エポキシ樹脂の融点が73〜76℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
  4. 多官能酸無水物硬化剤の含有量がエポキシ樹脂100重量部あたり0.01〜100重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
  6. 請求項5に記載の硬化物からなる電気・電子部品。
JP2016039301A 2016-03-01 2016-03-01 硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及び電気・電子部品 Pending JP2017155127A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016039301A JP2017155127A (ja) 2016-03-01 2016-03-01 硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及び電気・電子部品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016039301A JP2017155127A (ja) 2016-03-01 2016-03-01 硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及び電気・電子部品

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2017155127A true JP2017155127A (ja) 2017-09-07

Family

ID=59808093

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016039301A Pending JP2017155127A (ja) 2016-03-01 2016-03-01 硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及び電気・電子部品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2017155127A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021199450A1 (ja) * 2020-03-31 2021-10-07 ナミックス株式会社 硬化触媒、樹脂組成物、封止材、接着剤、及び硬化物

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008050879A1 (fr) * 2006-10-24 2008-05-02 Nippon Steel Chemical Co., Ltd. Composition de resine epoxy et produit durci

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008050879A1 (fr) * 2006-10-24 2008-05-02 Nippon Steel Chemical Co., Ltd. Composition de resine epoxy et produit durci

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021199450A1 (ja) * 2020-03-31 2021-10-07 ナミックス株式会社 硬化触媒、樹脂組成物、封止材、接着剤、及び硬化物
JPWO2021199450A1 (ja) * 2020-03-31 2021-10-07
KR20220155260A (ko) * 2020-03-31 2022-11-22 나믹스 가부시끼가이샤 경화 촉매, 수지 조성물, 봉지재, 접착제, 및 경화물
JP7316009B2 (ja) 2020-03-31 2023-07-27 ナミックス株式会社 硬化触媒、樹脂組成物、封止材、接着剤、及び硬化物
KR102734311B1 (ko) 2020-03-31 2024-11-25 나믹스 가부시끼가이샤 경화 촉매, 수지 조성물, 봉지재, 접착제, 및 경화물

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6607009B2 (ja) テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び半導体封止材
JP2015000952A (ja) エポキシ樹脂組成物およびその硬化物
WO2017038954A1 (ja) エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP6379500B2 (ja) エポキシ化合物、エポキシ化合物含有組成物、硬化物及び半導体封止材
JP2017149801A (ja) エポキシ樹脂、該樹脂に基づく硬化性エポキシ樹脂組成物、硬化物、及び電気・電子部品
JP6772680B2 (ja) エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP5716512B2 (ja) エポキシ樹脂及びその製造方法
CN111527120B (zh) 环氧树脂组合物、固化物及电气电子部件
JP6740619B2 (ja) エポキシ樹脂とその製造法、及び該樹脂に基づくエポキシ樹脂組成物
JP2017155127A (ja) 硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及び電気・電子部品
JP6972943B2 (ja) エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP7711398B2 (ja) エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP7711397B2 (ja) エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
CN115244101B (zh) 环氧树脂组合物、固化物及电气电子部件
JP2017048388A (ja) エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP6439612B2 (ja) エポキシ樹脂、組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP6520582B2 (ja) エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP2016125007A (ja) エポキシ樹脂組成物、硬化物、電気部品及び電子部品
JP2021147613A (ja) エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP5716511B2 (ja) エポキシ樹脂組成物
JP2021147614A (ja) エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP2023092965A (ja) ビスフェノールf型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品
JP2018095608A (ja) エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子部品

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20170421

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180911

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190626

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190716

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200204