本発明の非水電解質二次電池は、正極、負極およびセパレータを重ねて渦巻状に巻回し、横断面を扁平状にした巻回電極体(以下、「扁平状巻回電極体」という)と、非水電解質とが、外装体内に収容されている。そして、本発明の非水電解質二次電池に係る正極は、金属製の集電体と、前記集電体の両面に形成された、正極合剤層とを有している。そして、正極の集電体は、引張強度が3.6N/mm以下である。
非水電解質二次電池の充放電を繰り返すと、扁平状巻回電極体の厚みを維持することが難しい。例えば、充放電を繰り返すうちに、何らかの原因で電極表面でガスが発生すると、電極と電極の隙間にガスが溜まるなどして当初の巻姿から扁平状巻回電極体そのものが膨れた状態になる。また、正極集電体の引張強度が大きいと集電体が元に戻ろうとする力が強いため、扁平状巻回電極体の屈曲部が開いて、膨らむ方向に力が働くため、更に膨れが助長させる。
近年非水電解質二次電池が搭載される機器が小型化しているため、機器内に電池を収納するスペースが限られている。このように電池内の電極体の占有体積が増加すると、変形しやすい外装体を用いた場合に機器に対しても悪影響を与えることがある。
しかし、本発明の非水電解質二次電池に係る正極は、引張強度が3.6N/mm以下の比較的強度の小さい集電体を備えており、これにより、正極集電体の元に戻ろうとする力を抑制することができ、扁平状巻回電極体の膨れを抑えることが出来る。
一方、正極集電体の引張強度を下げると、充放電に伴う電極体の膨張収縮によって扁平状巻回電極体が歪み、正極が破断しやすくなる。接着層を有するセパレータを使用すると、この扁平状巻回電極体の歪みが抑制されるため、正極の破断も抑制することが出来る。
また、詳しくは後述するが扁平状巻回電極体が正極とセパレータとの間、および前記負極と前記セパレータとの間の一方又は両方に、接着性樹脂を含有する接着層を備えることで扁平状巻回電極体の厚みを維持することが出来、その上、引張強度の小さな正極集電体を用いることで集電体が元に戻ろうとする力が抑制されるので扁平状巻回電極体の厚みを維持することができ、これら二つの構成を同時に満足することで相乗的に扁平状巻回電極体の膨れ防止効果が得られる。これにより、外装体にラミネートフィルムや缶の肉厚が薄い外装缶を用いた場合であっても、電池を搭載する機器への悪影響を防止出来、かかる観点からも生産性を高めることができる。
本発明の非水電解質二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤、バインダ等を含有する正極合剤層を、集電体の片面又は両面に有する構造のものが使用できる。
上記正極の正極活物質には、従来から知られている非水電解質二次電池用の正極活物質として使用されているもの、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質が使用される。このような正極活物質の具体例としては、例えば、Li1+xMO2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn2O4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などが挙げられる。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoO2などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3O2、LiMn5/12Ni5/12Co1/6O2など)などを例示することができる。特に、非水電解質二次電池を、その使用に先立って、通常よりも高い終止電圧で充電するような場合には、高電圧に充電された状態での正極活物質の安定性を高めるために、前記例示の各種活物質が、更に安定化元素を含んでいることが好ましい。このような安定化元素としては、例えば、Mg、Al、Ti、Zr、Mo、Snなどが挙げられる。
正極合剤層における正極活物質の含有量は、94〜98質量%であることが好ましい。
正極の導電助剤には、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料を用いることが好ましく、また、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;アルミニウムなどの金属粉末類;酸化亜鉛;チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることもできる。
正極合剤層における導電助剤の含有量は、1〜5質量%であることが好ましい。
正極の結着剤としては、例えば、アクリロニトリル、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシルなど)およびメタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなど)よりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む2種以上のモノマーにより形成されるコポリマー;水素化ニトリルゴム;PVDF;フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンコポリマー(VDF−TFE);フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(VDF−HFP−TFE);フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(VDF−CTFE);などが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
正極合剤層における結着剤の含有量は、正極合剤層における正極活物質や導電助剤を良好に結着できるようにして、これらの正極合剤層からの脱離を防止し、この正極が用いられる電池の信頼性をより良好に高める観点から、1質量%以上であることが好ましい。ただし、正極合剤層中の結着剤の量が多すぎると、正極活物質の量や導電助剤の量が少なくなって、高容量化の効果が小さくなる虞がある。よって、正極合剤層における結着剤の含有量は、1.6質量%以下であることが好ましい。
正極を作製するにあたっては、前記の正極活物質、導電助剤および結着剤などを含む正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤を用いて均一に分散させたペースト状やスラリー状の組成物を調製し(結着剤は溶剤に溶解していてもよい)、この組成物を正極集電体表面に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により正極合剤層の厚みや密度を調整する方法が採用できる。ただし、本発明の正極の作製方法は前記の方法に限られず、他の方法を採用しても構わない。
本発明では、正極合剤層上に接着性樹脂を含有する接着層を設けてもよい。接着性樹脂は、後述する接着性樹脂(C)が採用できる。接着層は、正極合剤層をプレス処理した後に、接着性樹脂(C)を含むスラリーを塗布し、乾燥することで得ることが出来る。
本発明の正極集電体の引張強度は、3.6N/mm以下である。このように比較的引張強度の低いものを用いることで、扁平状巻回電極体が元に戻ろうとする力が小さくなり、屈曲部が開くのを抑制することが出来る。好ましくは3.2N/mm以下、更に好ましくは2.5N/mm以下である。
一方、1.2N/mm以上、1.8N/mmが好ましい。この範囲であると、正極集電体を破断させることなく製造できる。
本明細書でいう集電体の引張強度は、前処理として集電体を15mm×250mmの矩形に切り出して試験片とし、この試験片をチャック間距離100mmとして引張試験機(今田製作所社製「SDT−52型」)を用いて、クロスヘッド速度10mm/分で試験を行って得られた値である。
前記のような引張強度を有する集電体としては、例えば、以下のものが挙げられる。
正極集電体の材質としては、主成分をアルミニウムとしたアルミニウム合金が望ましい。アルミニウム合金はアルミニウムの純度が99.0質量%以上あり、その他の添加成分として、例えばSi≦0.6質量%、Fe≦0.7質量%、Cu≦0.25質量%、Mn≦1.5質量%、Mg≦1.3質量%、Zn≦0.25質量%を含有することが望ましい。このような材質で構成された箔、フィルムを集電体として使用することができる。
正極集電体の厚みは、引張強度が上記の範囲のものであれば特に限定はされないが、15μm以下が好ましく、更に好ましくは12μm以下である。このように薄い集電体を採用することで、電池の体積エネルギー密度を高くすることが出来るので好ましい。
なお、4μm以上であることが好ましい。この範囲であると、正極集電体を破断させることなく製造できる。
本発明の非水電解質二次電池に係る負極としては、例えば、負極活物質を含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に形成したものが挙げられる。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛)、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛材料;ピッチをか焼して得られるコークスなどの易黒鉛化性炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂(PFA)やポリパラフェニレン(PPP)およびフェノール樹脂を低温焼成して得られる非晶質炭素などの難黒鉛化性炭素質材料;黒鉛材料の表面に、非晶質炭素や樹脂を担持するなどした表面処理炭素材料;などの炭素材料が挙げられる。また、炭素材料の他に、リチウムやリチウム含有化合物も負極活物質として用いることができる。リチウム含有化合物としては、Li−Alなどのリチウム合金や、Si、Snなどのリチウムとの合金化が可能な元素を含む合金が挙げられる。更にSn酸化物やSi酸化物などの酸化物系材料も用いることができる。負極合剤層における負極活物質の含有量は、例えば、97〜99質量%であることが好ましい。
負極活物質として表面処理炭素材料を用いると、非水電解質との過剰な反応を防ぐことができることから好ましい。
負極活物質は、特に黒鉛材料の表面に非晶質炭素を担持した、平均粒子径が8〜18μmと比較的粒子の小さい炭素材料を用いると非水電解質の負極合剤層中への浸透性が向上するので好ましい。その理由は定かではないが、比較的小さな粒子の炭素材料であると、負極にプレス処理をした際、負極合剤層中に形成される空孔の大きさが均一化されるので、非水電解質が浸透しやすくなると考えられる。また、この種の黒鉛は、リチウムイオンの受容性(全充電容量に対する定電流充電容量の割合)が高く、この黒鉛を負極活物質として用いることで、より充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
なお、本明細書でいう前記炭素材料の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」)を用い、前記炭素材料を溶解したり、膨潤したりしない媒体に、前記炭素材料を分散させて測定した粒度分布の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(d50)メディアン径である。
導電助剤は、電子伝導性材料であれば特に限定されないし、使用しなくても構わない。導電助剤の具体例としては、アセチレンブラック;ケッチェンブラック;チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粉末類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラックや炭素繊維が特に好ましい。ただし、負極に導電助剤を使用する場合には、高容量化のために、負極合剤層における導電助剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。
負極合剤層に係る結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。具体的には、例えば、本発明の正極に係る結着剤と同じ材料や、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−アクリル酸共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体などが使用でき、それらの材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
前記の中でも、PVDF、SBR、エチレン−アクリル酸共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNa+イオン架橋体が特に好ましい。負極合剤層における結着剤の含有量は、例えば、1〜5質量%であることが好ましい。
負極を作製するにあたっては、前記の負極活物質、導電助剤および結着剤などを含む正極合剤を、水やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤を用いて均一に分散させたペースト状やスラリー状の組成物を調製し(結着剤は溶剤に溶解していてもよい)、この組成物を負極集電体表面に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により負極合剤層の厚みや密度を調整する方法が採用できる。ただし、本発明の負極の作製方法は前記の方法に限られず、他の方法を採用しても構わない。
本発明では、負極合剤層上に接着性樹脂を含有する接着層を設けてもよい。接着性樹脂は、後述する接着性樹脂(C)が採用できる。接着層は、負極合剤層をプレス処理した後に、接着性樹脂(C)を含むスラリーを塗布し、乾燥することで得ることが出来る。
負極合剤層の厚み(集電体の両面に負極合剤層が形成されている場合には、その片面あたりの厚み)は、30〜80μmであることが好ましい。
負極に用いる集電体としては、非水電解質二次電池内において、実質上、化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。かかる集電体を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケルやその合金、銅やその合金、チタンやその合金、炭素、導電性樹脂などの他に、銅またはステンレス鋼の表面にカーボンまたはチタンを処理させたものなどが用いられる。これらの中でも、銅および銅合金が特に好ましい。これらの材料は表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが好ましい。集電体の形状としては、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが挙げられる。集電体の厚みは特に限定されないが、例えば、5〜50μmであることが好ましい。
非水電解質としては、例えば、下記の非水系溶媒中に、リチウム塩を溶解させることで調製した溶液(非水電解液)が使用できる。
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(γ-BL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を1種単独で、または2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
非水電解液に係るリチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(n≧2)、LiN(RfOSO2)2〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などのリチウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.6〜1.8mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.6mol/lとすることがより好ましい。
非水電解質二次電池に使用する非水電解質には、充放電サイクル特性の更なる改善や、高温貯蔵性や過充電防止などの安全性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、無水酸、スルホン酸エステル、ジニトリル、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤(これらの誘導体も含む)を適宜加えることもできる。
更に、非水電解質二次電池の非水電解質には、前記の非水電解液に、ポリマーなどの公知のゲル化剤を添加してゲル化したもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
〔巻回電極体〕
本発明の巻回電極体は、正極とセパレータとの間および負極とセパレータとの間の一方又は両方に、接着性樹脂を含有する接着層を備えることを特徴としている。この接着層により、電極とセパレータとを密着させることが出来るため、充放電に伴う扁平状巻回電極体の歪みが抑制される。電極体の歪みが抑制されることで、引張強度の低い正極集電体を使用した場合でも、正極の破断を防ぐことが出来る。
また、正極と負極とが一定の距離を維持することができ、充放電時に発生したガスが電極間の距離を広げることを防ぎ、扁平状巻回電極体及び電池の厚み増加を防ぐ。更に正極と負極の間隔が一定のため、局所的にLi析出がおこるのを抑制することが出来る。そして、Li析出に伴う、Liと電解液との激しい反応により、ガス発生をも抑制することが出来るので、扁平状巻回電極体及び電池の厚み増加を防ぐ。
更に、正極と負極の間隔を一定に維持することで充放電を繰り返しても反応ムラなく均一に充放電反応が起き、サイクル特性が向上する。
〔接着層〕
本発明は、かかる観点から、正極とセパレータとの間および負極とセパレータとの間の少なくとも一方に、接着性樹脂を含有する接着層があれば本発明の効果を得ることが出来るが、これらの両方に接着性樹脂を含有する接着層があれば本発明の効果がより発揮されるので好ましい。
本発明の態様としては、セパレータの片面に接着層を有する、セパレータの両面に接着層を有する、負極の両面に接着層を有する、セパレータの負極側に接着層を有し且つ正極の両面に接着層を有する、等が採用できる。中でも、特に、セパレータの両面に接着性樹脂を含有する接着層を備えると、生産しやすく好ましい。
接着層は、加熱することで接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在していると好ましい。
接着性樹脂(C)の接着性が発現する最低温度は、本発明のセパレータにおける接着層以外の層で、シャットダウンが発現する温度よりも低い温度である必要があるが、具体的には、60℃以上120℃以下であることが好ましい。また、本発明のセパレータにおける接着層以外の層が、後述する樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)を含む場合、接着性樹脂(C)の接着性が発現する最低温度は、樹脂多孔質層(I)の主成分である樹脂(A)(詳しくは後述する)の融点よりも低い温度である必要がある。
このような接着性樹脂(C)を使用することで、セパレータと正極および/または負極とを加熱プレスして一体化する際に、セパレータの劣化を良好に抑制することができる。
室温(例えば25℃)では接着性(粘着性)が殆どなく、加熱圧着することで接着性が発現する性能をディレードタック性と呼ぶが、本発明のセパレータは、接着性樹脂(C)の存在によって、こうしたディレードタック性を有していることが好ましい。より具体的には、例えば、電気化学素子を構成する電極(例えば負極)とセパレータとの間の180°での剥離試験を実施した際に得られる剥離強度が、加熱プレス前の状態では、好ましくは0.05N/20mm以下、特に好ましくは0N/20mm(全く接着力のない状態)であり、60〜120℃の温度で加熱プレスした後の状態では0.2N/20mm以上となるディレードタック性を有していることが好ましい。
ただし、前記剥離強度が強すぎると、電極の合剤層(正極合剤層および負極合剤層)が電極の集電体から剥離して、導電性が低下する虞がある事から、前記180°での剥離試験による剥離強度は、60〜120℃の温度で加熱プレスした後の状態で10N/20mm以下であることが好ましい。
なお、本明細書でいう電極とセパレータとの間の180°での剥離強度は、以下の方法により測定される値である。セパレータおよび電極を、それぞれ長さ5cm×幅2cmのサイズに切り出し、切り出したセパレータと電極と重ねる。加熱プレスした後の状態の剥離強度を求める場合には、片端から2cm×2cmの領域を加熱プレスして試験片を作製する。この試験片のセパレータと電極とを加熱プレスしていない側の端部を開き、セパレータと負極とを、これらの角度が180°になるように折り曲げる。その後、引張試験機を用い、試験片の180°に開いたセパレータの片端側と電極の片端側とを把持して、引張速度10mm/minで引っ張り、セパレータと電極とを加熱プレスした領域で両者が剥離したときの強度を測定する。また、セパレータと電極との加熱プレス前の状態での剥離強度は、前記のように切り出した各セパレータと電極とを重ね、加熱をせずにプレスする以外は前記と同様に試験片を作製し、前記と同じ方法で剥離試験を行う。
よって、接着性樹脂(C)は、室温(例えば25℃)では接着性(粘着性)が殆どなく、かつ接着性の発現する最低温度が樹脂(A)の融点未満、好ましくは60℃以上120℃以下といったディレードタック性を有するものが望ましい。なお、セパレータと電極とを一体化する際の加熱プレスの温度は、セパレータを構成する樹脂多孔質層(I)の熱収縮があまり顕著に生じない80℃以上100℃以下であることがより好ましく、接着性樹脂(C)の接着性が発現する最低温度も、80℃以上100℃以下であることがより好ましい。
ディレードタック性を有する接着性樹脂(C)としては、室温では流動性が殆どなく、加熱時に流動性を発揮し、プレスによって密着する特性を有する樹脂が好ましい。また、室温で固体であり、加熱することによって溶融し、化学反応によって接着性が発揮されるタイプの樹脂を接着性樹脂(C)として用いることもできる。
接着性樹脂(C)は、融点、ガラス転移点などを指標とする軟化点が60℃以上120℃以下の範囲内にあるものが好ましい。接着性樹脂(C)の融点およびガラス転移点は、例えば、JIS K 7121に規定の方法によって、また、接着性樹脂(C)の軟化点は、例えば、JIS K 7206に規定の方法によって、それぞれ測定することができる。
このような接着性樹脂(C)の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ−α−オレフィン[ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1など]、ポリアクリル酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂などが挙げられる。
また、前記の各樹脂や、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム、エチレン−プロピレンゴムなどの室温で粘着性を示す樹脂をコアとし、融点や軟化点が60℃以上120℃以下の範囲内にある樹脂をシェルとしたコアシェル構造の樹脂を接着性樹脂(C)として用いることもできる。この場合、シェルには、各種アクリル樹脂やポリウレタンなどを用いることができる。更に、接着性樹脂(C)には、一液型のポリウレタンやエポキシ樹脂などで、60℃以上120℃以下の範囲内に接着性を示すものも用いることができる。
接着性樹脂(C)には、前記例示の樹脂を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記のようなディレードタック性を有する接着性樹脂(C)の市販品としては、松村石油研究所製の「モレスコメルト エクセルピール(PE、商品名)」、中央理化工業社製の「アクアテックス(EVA、商品名)」、日本ユニカー社製のEVA、東洋インキ社製の「ヒートマジック(EVA、商品名)」、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体、商品名)」、東亜合成社製の「アロンタックTT−1214(アクリル酸エステル、商品名)」、三井デュポンポリケミカル社製「ハイミラン(エチレン系アイオノマー樹脂、商品名)」などが挙げられる。
なお、接着性樹脂(C)で構成される実質的に空孔を含有しない層を形成した場合には、セパレータと一体化した電極の表面に、電池の有する非水電解液が接触し難くなる虞があることから、接着性樹脂(C)の存在面においては、接着性樹脂(C)の存在する箇所と、存在しない箇所とが形成されていることが好ましい。具体的には、例えば、接着性樹脂(C)の存在箇所と、存在しない箇所とが、溝状に交互に形成されていてもよく、また、平面視で円形などの接着性樹脂(C)の存在箇所が、不連続に複数形成されていてもよい。これらの場合、接着性樹脂(C)の存在箇所は、規則的に配置されていてもランダムに配置されていてもよい。
なお、接着性樹脂(C)の存在面においては、接着性樹脂(C)の存在する箇所と、存在しない箇所とを形成する場合、接着性樹脂(C)の存在面における接着性樹脂(C)の存在する箇所の面積(総面積)は、例えば、セパレータと電極とを加熱圧着した後のこれらの180°での剥離強度が、前記の値となるようにすればよく、使用する接着性樹脂(C)の種類に応じて変動し得るが、具体的には、平面視で、接着性樹脂(C)の存在面の面積のうち、10〜60%に、接着性樹脂(C)が存在していることが好ましい。
また、接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けは、電極との接着を良好にして、例えば、セパレータと電極とを加圧接着した後のこれらの180°での剥離強度を前記の値に調整するには、0.05g/m2以上とすることが好ましく、0.1g/m2以上とすることがより好ましい。ただし、接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けが大きすぎると、扁平状巻回電極体の厚みが大きくなりすぎたり、接着性樹脂(C)がセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学素子内部でのイオンの移動が阻害されたりする虞がある。よって、接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けは、1g/m2以下であることが好ましく、0.5g/m2以下であることがより好ましい。
〔セパレータ〕
本発明のセパレータは、融点が100〜170℃の樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、150℃以下の温度で溶融しない樹脂又は耐熱温度が150℃以上のフィラー(B)を主成分として含む耐熱多孔質層(II)とを有していると、高温下におけるセパレータの熱収縮を防止することが出来るため好ましい。樹脂多孔質層(I)は、本発明のセパレータを用いた電気化学素子において、正極と負極の短絡を防止しつつ、イオンを透過するセパレータ本来の機能を有する層であり、耐熱多孔質層(II)は、セパレータに耐熱性を付与する役割を担う層である。
樹脂多孔質層(I)は、融点が100℃以上170℃以下、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100℃以上170℃以下の樹脂(A)を主成分としている。このような樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)を有するセパレータとすることで、これを用いた電気化学素子内が高温となった場合に、前記熱可塑性樹脂が溶融してセパレータの孔を塞ぐ、所謂シャットダウン機能を確保することができる。
樹脂多孔質層(I)の主成分となる樹脂(A)は、融点が100℃以上170℃以下で、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後で詳述する電気化学素子の有する非水電解液や、耐熱多孔質層(II)形成用の組成物に使用する媒体に安定な熱可塑性樹脂であれば特に制限は無いが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが好ましい。
樹脂多孔質層(I)には、例えば、従来から知られているリチウム二次電池などの電気化学素子で使用されているポリオレフィン製の微多孔膜、すなわち、無機フィラーなどを混合したポリオレフィンを用いて形成したフィルムやシートに、一軸または二軸延伸を施して微細な空孔を形成したものなどを用いることができる。また、前記の樹脂(A)と、他の樹脂を混合してフィルムやシートとし、その後、前記他の樹脂のみを溶解する溶媒中に、これらフィルムやシートを浸漬して、前記他の樹脂のみを溶解させて空孔を形成したものを、樹脂多孔質層(I)として用いることもできる。
なお、樹脂多孔質層(I)には、強度向上などを目的としてフィラーを含有させることもできる。このようなフィラーとしては、例えば、耐熱多孔質層(II)に使用されるフィラー(B)の具体例として後述する各種フィラーが挙げられる。
なお、樹脂多孔質層(I)における「樹脂(A)を主成分とする」とは、樹脂(A)を、樹脂多孔質層(I)の構成成分の全体積中、70体積%以上含むことを意味している。樹脂多孔質層(I)における樹脂(A)の量は、樹脂多孔質層(I)の構成成分の全体積中、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。
耐熱多孔質層(II)は、150℃以下の温度で溶融しない樹脂または耐熱温度が150℃以上のフィラー(B)を主成分として含んでいる。
耐熱多孔質層(II)が融点が150℃以上の樹脂を含む場合、例えば、150℃以下の温度で溶融しない樹脂で形成された微多孔膜(例えば、前述のPP製の電池用微多孔膜)を樹脂多孔質層(I)に積層させる形態や、150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子などを含む分散液を多孔質層(I)に塗布し、乾燥して多孔質層(I)の表面に多孔質層(II)を形成する塗布積層型の形態が挙げられる。
150℃以下の温度で溶融しない樹脂としては、PP;架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子微粒子;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンスルフィド;ポリテトラフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;アラミド;ポリアセタールなどが挙げられる。
150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子を使用する場合、その粒径は、平均粒子径で、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。本明細書でいう各種粒子の平均粒子径は、前述のとおり、例えば、堀場製作所製のレーザー散乱粒度分布計「LA−920」を用い、樹脂を溶解しない媒体に、これら微粒子を分散させて測定した平均粒子径D50%である。
耐熱多孔質層(II)が、耐熱温度が150℃以上のフィラー(B)を含む場合、フィラー(B)としては、耐熱温度が150℃以上であり、電気化学素子内で電気化学的に安定で、電気化学素子内の非水電解液に対して安定であれば特に制限はない。なお、本明細書でいうフィラー(B)における「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において変形などの形状変化が目視で確認されないことを意味している。フィラー(B)の耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが更に好ましい。
フィラー(B)は、電気絶縁性を有する無機微粒子であることが好ましく、具体的には、酸化鉄、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、TiO2、BaTiO3などの無機酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;モンモリロナイトなどの粘土微粒子;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物微粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などの微粒子であってもよい。また、これらの無機微粒子を構成する無機化合物は、必要に応じて、元素置換されていたり、固溶体化されていたりしてもよく、更に前記の無機微粒子は表面処理が施されていてもよい。また、無機微粒子は、金属、SnO2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。
フィラー(B)には、有機微粒子を用いることもできる。有機微粒子の具体例としては、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、架橋ポリメチルメタクリレート(架橋PMMA)、架橋ポリスチレン(架橋PS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子の微粒子;熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子の微粒子;が挙げられる。これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
フィラー(B)は、前記例示のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、前記例示の各種フィラーの中でも無機酸化物微粒子が好ましく、より具体的には、アルミナ、シリカ、ベーマイトより選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
フィラー(B)の粒径は、平均粒径で、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは1μm以下である。なお、フィラー(B)の平均粒径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、フィラー(B)を溶解しない媒体に分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる。
フィラー(B)の形状としては、例えば、球状に近い形状であってもよく、板状であってもよいが、短絡防止の点からは、板状の粒子であることが好ましい。板状粒子の代表的なものとしては、板状のAl2O3や板状のベーマイトなどが挙げられる。
フィラー(B)が板状粒子である場合の形態としては、アスペクト比が、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。更に、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比(長軸方向長さ/短軸方向長さ)の平均値は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1に近い値であることが特に好ましい。
なお、板状のフィラー(B)における前記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。更に板状粒子における前記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
セパレータ中での板状のフィラー(B)の存在形態は、平板面がセパレータの面に対して略平行であることが好ましく、より具体的には、セパレータの表面近傍における板状のフィラー(B)について、その平板面とセパレータ面との平均角度が30°以下であることが好ましい[最も好ましくは、当該平均角度が0°、すなわち、セパレータの表面近傍における板状の平板面が、セパレータの面に対して平行である]。ここでいう「表面近傍」とは、セパレータの表面から全体厚みに対しておよそ10%の範囲を指す。板状のフィラー(B)の存在形態が前記のような場合には、樹脂多孔質層(I)の熱収縮をより効果的に防ぐことができ、全体として熱収縮率の特に小さなセパレータを形成することができる。
また、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)を用いた非水電解液二次電池において、高出力の特性を必要とする場合には、フィラー(B)には、一次粒子が凝集した二次粒子構造のフィラーを用いることが好ましい。房状のフィラーを用いることで、耐熱多孔質層(II)の空隙を大きくすることが可能となり、高い出力特性の電気化学素子を形成することができる。
耐熱多孔質層(II)の「主成分として含む」とは、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、70体積%以上含むことを意味している。耐熱多孔質層(II)におけるフィラー(B)の量は、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。耐熱多孔質層(II)中のフィラー(B)を前記のように高含有量とすることで、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制して、高い耐熱性を付与することができる。
また、耐熱多孔質層(II)には、フィラー(B)同士を結着したり耐熱多孔質層(II)と樹脂多孔質層(I)とを結着したりするために有機バインダを含有させることが好ましく、このような観点から、耐熱多孔質層(II)におけるフィラー(B)量の好適上限値は、例えば、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、99体積%である。なお、耐熱多孔質層(II)におけるフィラー(B)の量を70体積%未満とすると、例えば、耐熱多孔質層中(II)の有機バインダ量を多くする必要が生じるが、その場合には耐熱多孔質層(II)の空孔が有機バインダによって埋められてしまい、例えばセパレータとしての機能を喪失する虞がある。
耐熱多孔質層(II)に用いる有機バインダとしては、フィラー(B)同士や耐熱多孔質層(II)と樹脂多孔質層(I)とを良好に接着でき、電気化学的に安定で、かつ電気化学素子用の非水電解液に対して安定であれば特に制限はない。具体的には、フッ素樹脂[ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など]、フッ素系ゴム、SBR、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの有機バインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。
前記例示の有機バインダの中でも、150℃以上の耐熱性を有する耐熱樹脂が好ましく、特に、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高い材料がより好ましい。これらの具体例としては、ダイキン工業社製の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム、商品名)」、JSR社製の「TRD−2001(SBR、商品名)」、日本ゼオン社製の「EM−400B(SBR、商品名)」などが挙げられる。また、アクリル酸ブチルを主成分とし、これを架橋した構造を有する低ガラス転移温度の架橋アクリル樹脂(自己架橋型アクリル樹脂)も好ましい。
なお、これら有機バインダを使用する場合には、後記する耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(スラリーなど)の媒体に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で
用いればよい。
耐熱多孔質層(II)の空孔率は、電気化学素子の有する非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。一方、強度の確保と内部短絡の防止の観点から、耐熱多孔質層(II)の空孔率は、乾燥した状態で、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。なお、空孔率:P(%)は、耐熱多孔質層(II)の厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P =100−(Σai/ρi)×(m/t) (1)
ここで、前記式中、ai:質量%で表した成分iの比率、ρi:成分iの密度(g/cm3)、m:耐熱多孔質層(II)の単位面積あたりの質量(g/cm2)、t:耐熱多孔質層(II)の厚み(cm)である。
セパレータは、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)とを、それぞれ1層ずつ有していてもよく、複数有していてもよい。具体的には、樹脂多孔質層(I)の片面にのみ耐熱多孔質層(II)を配置してセパレータとする他、例えば、樹脂多孔質層(I)の両面に多孔質層(II)を配置してセパレータとしてもよい。ただし、セパレータの有する層数が多くなりすぎると、セパレータの厚みを増やして電気化学素子の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので好ましくなく、セパレータ中の層数は5層以下であることが好ましい。
本発明におけるセパレータは、例えば、樹脂多孔質層(I)に、フィラー(B)などを含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物(スラリーなどの液状組成物など)を塗布した後、所定の温度で乾燥し、その後接着性樹脂(C)を含む溶液、エマルジョンなどを塗布してから所定の温度で乾燥して、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)とを有するセパレータの表面に接着性樹脂(C)を存在させる方法により製造することができる。
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、フィラー(B)の他、有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、有機バインダについては溶媒に溶解させることもできる。耐熱多孔質層(II)形成用組成物に用いられる溶媒は、フィラー(B)などを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般に有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、フィラー(B)および有機バインダを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
なお、フィラー(B)として板状粒子を用い、かかる板状粒子の配向性を高めてその機能をより有効に作用させるためには、板状粒子を含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物を樹脂多孔質層(I)に塗布した後、前記組成物にシェアや磁場をかけるといった方法を用いればよい。例えば、板状のフィラー(B)を含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物を樹脂多孔質層(I)に塗布した後、一定のギャップを通すことで、前記組成物にシェアをかけることができる。
前記のようにして形成した樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物に、接着性樹脂(C)を含有する溶液、エマルジョンなどを塗布して、接着層を形成し、セパレータを製造することができる。なお、この場合、前記の通り、耐熱多孔質層(II)は樹脂多孔質層(I)の片面または両面に形成することができ、また、接着性樹脂(C)は、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物の片面または両面に存在させることができる。
中でも第1の接着層、樹脂多孔質層(I)、耐熱多孔質層(II)、第2の接着層の順に積層されているものが好ましい。この構成であると、正極側にも負極側に接着層が存在するため扁平状巻回電極体の充放電に伴う形状変化をより抑制し、当初の厚みを維持することが出来るためである。
また、フィラー(B)などの構成物の持つ作用をより有効に発揮させるために、前記構成物を偏在させて、セパレータの膜面と平行または略平行に、前記構成物が層状に集まった形態としてもよい。
なお、本発明のセパレータの製造方法は、前記の方法に限定される訳ではなく、他の方法によって製造してもよい。例えば、前記の耐熱多孔質層(II)形成用組成物を、ライナーのような基材表面に塗布し、乾燥して耐熱多孔質層(II)を形成した後、基材から剥離し、この耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)となる微多孔膜などと重ねて熱プレスなどにより一体化して積層物とし、その後、この積層物の片面または両面に前記と同様にして接着性樹脂(C)を存在させる方法でセパレータを製造することもできる。
このようにして製造されるセパレータの厚みは、電気化学素子用セパレータに使用するため、正極と負極とをより確実に隔離する観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。他方、セパレータが厚すぎると、電気化学素子としたときのエネルギー密度が低下してしまうことがあるため、その厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
また、セパレータを構成する樹脂多孔質層(I)の厚みをX(μm)、耐熱多孔質層(II)の厚みをY(μm)としたとき、XとYとの比率X/Yは、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、また、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。本発明のセパレータでは、樹脂多孔質層(I)の厚み比率を大きくし耐熱多孔質層(II)を薄くしても、セパレータ全体の熱収縮を抑制することが可能であり、電気化学素子内でのセパレータの熱収縮による短絡の発生を高度に抑制することができる。なお、セパレータにおいて、樹脂多孔質層(I)が複数存在する場合には、厚みXはその総厚みであり、耐熱多孔質層(II)が複数存在する場合には、厚みYはその総厚みである。
具体的な値で表現すると、樹脂多孔質層(I)の厚み[樹脂多孔質層(I)が複数存在する場合には、その総厚み。]は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、耐熱多孔質層(II)の厚み[耐熱多孔質層(II)が複数存在する場合には、その総厚み。]は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが更に好ましく、また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることが更に好ましい。樹脂多孔質層(I)が薄すぎると、シャットダウン特性が弱くなる虞があり、厚すぎると、電気化学素子のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える効果が小さくなる虞がある。また、耐熱多孔質層(II)が薄すぎると、セパレータ全体の熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞があり、厚すぎると、セパレータ全体の厚みの増大を引き起こしてしまう。
セパレータ全体の空孔率としては、非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にする観点から、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、前記(1)式において、mをセパレータの単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tをセパレータの厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて求めることができる。
また、前記(1)式において、mを樹脂多孔質層(I)の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを樹脂多孔質層(I)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて樹脂多孔質層(I)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる樹脂多孔質層(I)の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
また、本発明のセパレータは、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mm2の圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、30〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。さらに、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。前記の構成を採用することにより、前記の透気度や突き刺し強度を有するセパレータとすることができる。
本発明の非水電解質二次電池では、前記の通り、前記の正極と前記の負極とを、前記のセパレータを介して重ね合わせて渦巻状に巻回し、押しつぶすなどして横断面を扁平状にし、セパレータの樹脂にもよるが、その後熱をかけてプレスするなどの工程を経て作製した扁平状巻回電極体を使用する。
そして、前記の扁平状巻回電極体を、非水電解質と共に外装体内に封入して、本発明の非水電解質二次電池を形成する。
本発明の外装体は、扁平状巻回電極体が挿入できるものであれば従来公知のものを使用できる。例えば、ラミネートフィルム外装体(図4参照)を使用しても良い。また、側面部に互いに対向し側面視で他の面よりも幅が広い2枚の幅広面を持つ有底筒形(角筒形)の外装缶と蓋体とで構成される金属製の電池ケース(図1〜3参照)を使用しても良い。
また、金属製の電池ケースを使用する場合は、本発明の電極体は上述の通り優れた膨れ抑制効果があるため、外装缶は従来よりも薄肉のもの、厚みが0.22mm以下のものを使用することが出来る。
外装缶の厚みは、幅広面の投影形状(図1〜3では四角形)における2本の対角線の交点に相当する箇所での厚みを測定して求められる。
本発明の非水電解質二次電池は、従来から知られている非水電解質二次電池と同様の用途に適用することができる。本発明によると、扁平状巻回電極体の厚みをより小さくすることが出来るため、限られた体積に対して充放電に寄与する材料をより多く含有することが可能になり、電池の体積当たりのエネルギー密度を向上させることが出来る。そのため、特に限られた体積に対して高容量が求められるような機器、例えばモバイル機器や小型機器および多セルを直列に組み合わせたロボット用途など特に効果を発揮する。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO2:97.3質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部および結着剤であるPVDF:1.2質量部を混合して正極合剤とし、この正極合剤に、溶剤であるNMPを加え、エム・テクニック社製の「クレアミックス CLM0.8(商品名)」を用いて、回転数:10000min−1で30分間処理を行い、ペースト状の混合物とした。この混合物に、溶剤であるNMPを更に加えて、回転数:10000min−1で15分間処理を行い、正極合剤含有組成物を調製した。
前記の正極合剤含有組成物を、集電体であるアルニミウム合金箔(1100番、厚み:10.0μm、引張強度:2.5N/mm)の両面に塗布し、80℃で12時間真空乾燥を施し、更にプレス処理を施して、集電体の両面に、厚みが59μmの正極合剤層を有する正極を作製した。
<負極の作製>
天然黒鉛(平均粒子径:19.3μm)と、天然黒鉛の表面に非晶質炭素を担持した平均粒子径が10μmの表面処理炭素材料とを、1:1の質量比で混合して混合物を得た。この混合物(負極活物質):97.5質量%、SBR:1.5質量%、およびカルボキシメチルセルロース(増粘剤):1質量%を、水を用いて混合してスラリー状の負極合剤含有組成物を調製した。この負極合剤含有組成物を、集電体である銅箔(厚み:8μm)の両面に塗布し、120℃で12時間真空乾燥を施し、更にプレス処理を施して、集電体の両面に、厚みが71μmの負極合剤層を有する負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比3:7の混合溶媒に、LiPF6を1.1mol/Lの濃度で溶解させ、ビニレンカーボネート2質量%とフルオロエチレンカーボネート2質量%を、それぞれ添加して非水電解質を調製した。
<セパレータの作製>
板状ベーマイト(平均粒径1μm、アスペクト比10)5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液の一部を120℃で真空乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。また、処理後のベーマイトの平均粒子径は1μmであった。
上記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダーディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、スリーワンモーターで3時間攪拌して均一な耐熱多孔質層(II)形成用スラリー(固形分比率50質量%)を調製した。
樹脂多孔質層(I)であるPE製の微多孔膜(厚み10μm、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃)の片面にコロナ放電処理(放電量40W・分/m2)を施し、この処理面に上記耐熱多孔質層(II)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが2μmの耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)上の片面に形成した。
次に、接着性樹脂(C)としてディレードタック型の接着性樹脂であるアクリル酸(固形分比率20質量%含有)を、前記積層物における樹脂多孔質層(I)側および耐熱多孔質層(II)の両面に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、乾燥して、接着性樹脂(C)が両面に存在するセパレータ(厚み22μm)を得た。なお、このセパレータの、接着性樹脂(C)の存在面における接着性樹脂(C)の存在箇所の総面積は、セパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面の面積の30%であり、接着性樹脂(C)の目付けは、0.5g/m2であった。
<リチウム二次電池の組み立て>
前記のようにして得たセパレータを前記正極と前記負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回体電極群を作製した。得られた巻回体電極群を押しつぶして扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施して扁平状巻回電極体を作製した。その後、厚み6mm、高さ80mm、幅34mmでのアルミニウム製外装缶に入れ、非水電解液を注入した後に封止を行った。外装缶を構成する金属の、幅広面の投影形状における2本の対角線の交点(図2における破線の交点)に相当する箇所での缶の厚みが0.20mmであった。図1に示す外観で、図2に示す構造の非水電解質二次電池を作製した。
ここで、前記の非水電解質二次電池を、図1、図2および図3を用いて説明する。図3は、非水電解質二次電池を模式的に表す部分縦断面図である。非水電解質二次電池1においては、正極31と負極32とがセパレータ33を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回電極体30として、角形(角筒形)の外装缶11に非水電解質と共に収容されている。ただし、図3では、煩雑化を避けるため、正極31や負極32の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や非水電解液などは図示していない。また、図3では、扁平状巻回電極体30の内周側の部分は断面にしていない。
外装缶11はアルミニウム合金製で正極端子を兼ねている。そして、外装缶11の底部にはポリエチレンシートからなる絶縁体40が配置され、正極31、負極32およびセパレータ33からなる扁平状巻回電極体30からは、正極31および負極32のそれぞれ一端に接続された正極リード体51と負極リード体52とが引き出されている。また、外装缶11の開口部を封口するアルミニウム合金製の蓋板20にはポリプロピレン製の絶縁パッキング22を介してステンレス鋼製の端子21が取り付けられ、この端子21には絶縁体24を介してステンレス鋼製のリード板25が取り付けられている。
そして、この蓋板20は外装缶11の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶11の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図3の電池では、蓋板20に非水電解液注入口23が設けられており、この非水電解液注入口23には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。
この実施例1の電池では、正極リード体51を蓋板20に直接溶接することによって外装缶11と蓋板20とが正極端子として機能し、負極リード体52をリード板25に溶接し、そのリード板25を介して負極リード体52と端子21とを導通させることによって端子21が負極端子として機能するようになっている。
また、実施例1の電池では、図1、図2に示すように、外装缶11の幅広面111に、内部の圧力が閾値よりも大きくなった場合に開裂するための開裂溝12が設けられている。
実施例2
実施例1と同様にして扁平状巻回電極体を作製し、外装体を、ラミネートフィルムに変更して実施例2の非水電解質二次電池を作製した。
以下、実施例2の非水電解質二次電池を図4を用いて説明する。図4は実施例2の電池の平面図である。ラミネートフィルム510はアルミニウムをナイロン及びポリプロピレンでラミネートした材料を用い、略四角形の平面形状を有し内部には扁平状巻回電極体530を収納する。(ラミネートフィルム510から盛り上がっている箇所が電極体530の存在する箇所に該当する。)そして、ラミネートフィルム510はその縁部511がシールされている。正極タブ511は一端が巻回電極体の正極と接続されており、他端がラミネートフィルム510を介して外部に引き出される。負極タブ552は一端が巻回電極体の負極と接続されており、他端がラミネートフィルム510を介して外部に引き出される。
実施例3
正極集電体を、アルニミウム合金箔(1100番、厚み:12.0μm、引張強度:3.2N/mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。
この正極を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
実施例4
正極集電体を、アルニミウム合金箔(1100番、厚み:15.0μm、引張強度:3.6N/mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。この正極を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
実施例5
<セパレータの作製>
板状ベーマイト(平均粒径1μm、アスペクト比10)5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液の一部を120℃で真空乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。また、処理後のベーマイトの平均粒子径は1μmであった。
上記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダーディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、スリーワンモーターで3時間攪拌して均一な耐熱多孔質層(II)形成用スラリー(固形分比率50質量%)を調製した。
樹脂多孔質層(I)であるPE製の微多孔膜(厚み10μm、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃)の片面にコロナ放電処理(放電量40W・分/m2)を施し、この処理面に上記耐熱多孔質層(II)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが2μmの耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)上の片面に形成した。
次に、接着性樹脂(C)としてディレードタック型の接着性樹脂であるアクリル酸(固形分比率20質量%含有)を、前記積層物における樹脂多孔質層(I)側の表面に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、乾燥して、接着性樹脂(C)が片面に存在するセパレータ(厚み22μm)を得た。なお、このセパレータの、接着性樹脂(C)の存在面における接着性樹脂(C)の存在箇所の総面積は、セパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面の面積の30%であり、接着性樹脂(C)の目付けは、0.5g/m2であった。
上記のセパレータを、接着層を負極側に向けて巻回体電極群を作製した。この巻回体電極群を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
比較例1
正極集電体を、アルニミウム合金箔(3003番、厚み:15.0μm、引張強度:4.0N/mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。この正極を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
比較例2
正極集電体を、アルニミウム合金箔(3003番、厚み:10.0μm、引張強度:3.0N/mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。
<セパレータの作製>
板状ベーマイト(平均粒径1μm、アスペクト比10)5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液の一部を120℃で真空乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。また、処理後のベーマイトの平均粒子径は1μmであった。
上記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダーディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、スリーワンモーターで3時間攪拌して均一な耐熱多孔質層(II)形成用スラリー(固形分比率50質量%)を調製した。
樹脂多孔質層(I)であるPE製の微多孔膜(厚み16μm、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃)の片面にコロナ放電処理(放電量40W・分/m2)を施し、この処理面に上記耐熱多孔質層(II)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが6μmの耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)上の片面に形成し、セパレータを作製した。
上記の正極、およびセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
比較例3
正極集電体を、アルニミウム合金箔(3003番、厚み:15.0μm、引張強度:4.0N/mm)に変更した。
セパレータを比較例2と同様のものに変更した。
上記の正極、およびセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
比較例4
正極集電体を、アルニミウム合金箔(3003番、厚み:15.0μm、引張強度:4.0N/mm)に変更した。
この正極を用いた以外は実施例2と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
実施例および比較例の非水電解質二次電池の構成と、各評価を表1および2にまとめた。また、実施例および比較例に用いた扁平状電極体の寸法、および非水電解質二次電池について、下記の各評価を行った。
<挿入不良率>
実施例1、2〜4、比較例1〜3について、外装体(金属製の外装缶+蓋体
)への挿入不良率を求めた。実施例1、2〜4および比較例1〜3においてそれぞれ組み立て前の1000個の巻回電極体と外装体を用意した。
巻回電極体を外装体へ挿入する際、巻回電極体表面を傷つけてしまった場合を挿入不良発生とし、それぞれ1000個の電池を作製した時の挿入不良発生率を百分率で求めた。
<非水電解質二次電池の初期厚み>
実施例および比較例の各電池について、電池の厚みを測定した。測定箇所は実施例1、2〜4、比較例1〜3については図2に示す一点鎖線の交点部分の電池の厚みを測定し、実施例2〜4、比較例1〜3は実施例1の厚みを100としたときの相対寸法を表1に記載した。
実施例2、比較例4については図4に示す一点鎖線の交点部分の電池の厚みを測定した。比較例4は実施例2の厚みを100とした時の相対寸法を表2に示した。
<非水電解質二次電池の充放電サイクル後の厚み>
初期厚み測定に用いた実施例および比較例の各電池について、45℃の環境下で、4.4Vまで1.0Cの定電流で充電後、総充電時間が2.5時間となるまで定電圧充電し、続いて1.0Cで電池電圧が2.75Vまで定電流放電を行う一連の操作を1サイクルとして、これらを700回繰り返した。
その後、実施例および比較例のサイクル後の各電池を、初期厚みと同様の手段でサイクル後の厚みを測定した。
実施例および比較例の電池のサイクル後の厚みと初期厚みの差(以降厚み増加と記す)を算出し、実施例2〜4、比較例1〜3についての厚み増加は実施例1の厚み増加を100とした時の相対値を表1に示す。また、比較例4の厚み増加は実施例2の厚み増加を100とした時の相対値を表2に示す。