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JP2017039875A - エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 Download PDF

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JP2017039875A
JP2017039875A JP2015163485A JP2015163485A JP2017039875A JP 2017039875 A JP2017039875 A JP 2017039875A JP 2015163485 A JP2015163485 A JP 2015163485A JP 2015163485 A JP2015163485 A JP 2015163485A JP 2017039875 A JP2017039875 A JP 2017039875A
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Abstract

【課題】樹脂伸度と樹脂弾性率を向上させたエポキシ樹脂組成物を提供すること。さらには、かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、圧縮強度、および層間靭性に優れた繊維強化複合材料を提供すること。【解決手段】少なくとも次の構成要素[A]、[B]からなるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[A]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6であるエポキシ樹脂組成物。[A]特定の構造を有する芳香族アミン[B]3官能以上の芳香族エポキシ樹脂【選択図】 なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料に関する。さらに詳しくは、優れた圧縮強度および層間靭性を有する構造材料として好適な繊維強化複合材料、およびそれを与えるエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグに関する。
近年、炭素繊維やアラミド繊維等の強化繊維を用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度と比弾性率を利用して、航空機や自動車等の構造材料、テニスラケット、ゴルフシャフト、および釣り竿等のスポーツ・一般産業用途等に利用されてきた。
その繊維強化複合材料の製造方法には、強化繊維に未硬化のマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを複数枚積層した後、加熱硬化させる方法や、モールド中に配置した強化繊維に液状の樹脂を流し込んで中間体を得て、それを加熱硬化させるレジン・トランスファー・モールディング法等が用いられている。これらの製造方法のうち、プリプレグを用いる方法は、強化繊維の配向を厳密に制御でき、また積層構成の設計自由度が高いことから、高性能な繊維強化複合材料を得やすい利点がある。このプリプレグに用いられるマトリックス樹脂としては、耐熱性やプロセス性等の生産性の面から主に熱硬化性樹脂が用いられ、中でも樹脂と強化繊維との接着性や寸法安定性、および得られる複合材料の強度や剛性といった力学特性の観点からエポキシ樹脂が好適に用いられる。
その中で、近年の需要拡大に伴いさらなる軽量化や材料強度向上、および耐久安定性が求められる航空宇宙用途向け繊維強化複合材料には、その強化繊維のマトリックス樹脂として、エポキシ当量が小さく架橋密度の高い樹脂硬化物が得られる多官能芳香族エポキシ樹脂が好適に用いられてきた。これにより、高弾性率かつ高耐熱性を有する樹脂設計が可能となる。また、繊維強化複合材料においては、繊維の座屈により圧縮強度が低くなることが知られている。この繊維の座屈を抑制するためには、繊維の周囲を満たすマトリックス樹脂の高弾性率化が有効である。しかしながら、一般に樹脂の高弾性率化は樹脂の伸度低下を招き、靭性の低い樹脂硬化物となる傾向がある。このため、得られる繊維強化複合材料において、圧縮強度および層間靭性を高いレベルで満足させることは非常に困難であった。
樹脂の伸度および靭性を向上させる手法として、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対するアミン硬化剤中の活性水素のモル数の比(H/E)を1.15より大きくする技術が開示されている(特許文献1)。また、樹脂の弾性率および伸度を向上させる手法として、100ミクロン未満の粒径となるよう分級した4,4’−ジアミノベンズアニリド粒子を硬化剤として用い、かつエポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対するアミン硬化剤中の活性水素のモル数の比(H/E)を0.7〜1.0の範囲とする技術が開示されている(特許文献2)。
特開2011−231187号公報 特表2012−527515号公報
前述のとおり航空宇宙用途向け繊維強化複合材料において圧縮強度および層間靭性は特に重要とされるパラメータであり、これらを向上させるためにも樹脂の高弾性率化、高伸度化は極めて重要な課題である。特許文献1の手法のようにジアミノジフェニルスルホンを硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物系では耐熱性と靭性が向上するものの、航空宇宙用途向け繊維強化複合材料に求められる樹脂の高弾性率化、高伸度化の要求に対しては未だ不十分であった。特許文献2の手法では、樹脂弾性率および伸度が向上する樹脂は得られるものの、H/Eが1.0より大きくなるよう4,4’−ジアミノベンズアニリド粒子を配合することで、樹脂弾性率および伸度を向上させることについては述べられていない。
そこで、本発明の目的は、樹脂の弾性率と伸度の両方を向上させたエポキシ樹脂組成物を提供することである。さらには、かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、圧縮強度および層間靭性に優れた繊維強化複合材料を提供することである。
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成を有するものである。少なくとも次の構成要素[A]、[B]からなるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[A]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6であるエポキシ樹脂組成物。
[A]式(1)で表される芳香族アミン
Figure 2017039875
(ただし式(1)中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。Xは、−C(=O)O−、−C(=O)NH−から選ばれる一つを表す。)
[B]3官能以上の芳香族エポキシ樹脂
また、本発明においては、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物とすること、前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてプリプレグとすること、前記樹脂硬化物と強化繊維を含む繊維強化複合材料とすること、さらには、かかるプリプレグを硬化させて繊維強化複合材料とすることができる。
本発明によれば、樹脂の弾性率と伸度の両方を向上させたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。さらには、かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、圧縮強度および層間靭性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料料について詳細に説明する。
本発明者らは繊維強化複合材料の圧縮強度と層間靭性の発現メカニズムを鋭意検討した結果、これらの2つの特性を両立するためにはエポキシ樹脂の樹脂弾性率と樹脂伸度の2つの特性を向上させることが重要であり、次の構成を満たすことによりトレードオフの関係であった樹脂弾性率と樹脂伸度を高いレベルで発現するのに最適な構造が得られることを見出した。即ち、少なくとも次の構成要素[A]、[B]からなるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[A]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6であるエポキシ樹脂組成物である。
[A]式(1)で表される芳香族アミン
Figure 2017039875
(ただし式(1)中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。Xは、−C(=O)O−、−C(=O)NH−から選ばれる一つを表す。)
[B]3官能以上の芳香族エポキシ樹脂。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる芳香族アミン[A]は、エポキシ基と反応し得る活性水素を有する化合物であり、本発明のエポキシ樹脂の硬化剤として必須の成分である。樹脂硬化物に高い樹脂弾性率と伸度を付与できることから、上記式(1)で表される芳香族アミンにおいて、Xは、−C(=O)O−、−C(=O)NH−から選ばれる一つである。
芳香族アミン[A]としては、例えば、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、3−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、3−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、2−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、2−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、2−アミノフェニル−2−アミノベンゾエート、4−アミノフェニル−4−アミノ−2−メチルベンゾエート、4−アミノフェニル−4−アミノ−3−メチルベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−4−アミノベンゾエート、4−アミノ−3−メチルフェニル−4−アミノベンゾエート、4−アミノフェニル−3−アミノ−4−メチルベンゾエート、4−アミノフェニル−3−アミノ−5−メチルベンゾエート、4−アミノフェニル−5−アミノ−2−メチルベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−3−アミノベンゾエート、4−アミノ−3メチルフェニル−3−アミノベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−4−アミノ−2−メチルベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−4−アミノ−3−メチルベンゾエート、4−アミノ−3−メチルフェニル−4−アミノ−2−メチルベンゾエート、4−アミノ−3−メチルフェニル−4−アミノ−3−メチルベンゾエート、4−アミノ−3−メチルフェニル−3−アミノ−2−メチルベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−3−アミノ−2−メチルベンゾエート、4−アミノ−3−メチルフェニル−3−アミノ−2−メチルベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−3−アミノ−4−メチルベンゾエート、4−アミノ−3−メチルフェニル−3−アミノ−4−メチルベンゾエート、4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル−4−アミノ−3,5−ジメチルベンゾエート、4−アミノフェニル−4−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノフェニル−4−アミノ−3−ブロモベンゾエート、4−アミノ−2−ブロモフェニル−4−アミノベンゾエート、4−アミノ−3−ブロモフェニル−4−アミノベンゾエート、4−アミノフェニル−3−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノフェニル−3−アミノ−4−ブロモベンゾエート、4−アミノフェニル−3−アミノ−5−ブロモベンゾエート、4−アミノフェニル−5−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノ−2−ブロモフェニル−3−アミノベンゾエート、4−アミノ−3−ブロモフェニル−3−アミノベンゾエート、4−アミノ−2−ブロモフェニル−4−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノ−2−ブロモフェニル−4−アミノ−3−ブロモベンゾエート、4−アミノ−3−ブロモフェニル−4−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノ−3−ブロモフェニル−4−アミノ−3−ブロモベンゾエート、4−アミノ−3−ブロモフェニル−3−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノ−2−ブロモフェニル−3−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノ−3−ブロモフェニル−3−アミノ−2−ブロモベンゾエート、4−アミノ−2−ブロモフェニル−3−アミノ−4−ブロモベンゾエート、4−アミノ−3−ブロモフェニル−3−アミノ−4−ブロモベンゾエート、4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル−4−アミノ−3,5−ジブロモベンゾエート、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、2,4’−ジアミノベンズアニリド、2,3’−ジアミノベンズアニリド、2,2’−ジアミノベンズアニリド、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−2−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−3−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)−2−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)−3−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−2−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ジメチルベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノフェニル)−2−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノフェニル)−3−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノ−4−メチルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノ−5−メチルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(5−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−2−メチルベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−4−メチルベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−5−メチルベンズアミド、5−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−2−メチルベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−2−ブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−3−ブロモベンズアミド、4−アミノ−−(4−アミノ−2−ブロモフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3−ブロモフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−2−ブロモフェニル)−2−ブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−2−ブロモフェニル)−3−ブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3−ブロモフェニル)−2−ブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3−ブロモフェニル)−3−ブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−3−ジブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノフェニル)−2−ブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノフェニル)−3−ブロモベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノ−2−ブロモルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノ−4−ブロモフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(3−アミノ−5−ブロモフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−N−(5−アミノ−2−ブロモフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノ−2−ブロモフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノ−3−ブロモフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−2−ブロモベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−4−ブロモベンズアミド、3−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−5−ブロモベンズアミド、5−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−2−ブロモベンズアミド等が挙げられる。
式(1)において、R〜Rは、他のエポキシ樹脂への相溶性の点からは水素原子が好ましい。R〜Rの構造が大きすぎると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて取扱性を損ねたり、エポキシ樹脂組成物中の他の成分との相溶性が損なわれ、得られる繊維強化複合材料の力学特性向上効果が小さくなったりすることがある。また、難燃性の点からは、R1〜R4がClやBrといったハロゲン原子で置換されているものも好ましい形態である。
芳香族アミン[A]の市販品としては、4,4’−DABAN、3,4’−DABAN、4−BAAB(以上、日本純良薬品(株)製)等が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。また、エポキシ樹脂と芳香族アミン[A]、あるいはそれらの一部を予備反応させたものを組成物中に配合することもできる。この方法は、エポキシ樹脂組成物の粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
本発明においては、芳香族アミン[A]以外の硬化剤を併用しても良い。芳香族アミン[A]以外の硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンゾフェノン、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる芳香族アミン[A]は、式(1)で表される芳香族アミンにおいてXが−C(=O)NH−である芳香族アミンであることが好ましい。式(1)で表される芳香族アミンの中央にアミド骨格を導入することで、周囲の水素結合性を有する官能基との間で水素結合を形成するため骨格が剛直となりやすく、樹脂弾性率に優れた樹脂硬化物を得ることができる。また、アミド骨格が導入された式(1)で表される芳香族アミン同士の間で、平面的に水素結合を形成して配列することで結晶性が高まることも、高弾性率化の一因となりえる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]は、優れた耐熱性と力学特性を付与するため、必須の成分である。3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]の配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂総量100質量部に対して40〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは45〜100質量部であり、さらに好ましくは50〜95質量部である。3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]の配合量がこの範囲を満たすことで、靱性や耐熱性に優れた樹脂硬化物を得ることができる。
3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ナフタレン型、ビフェニル型、イソシアヌレート型のエポキシ樹脂等が挙げられるが、樹脂硬化物に弾性率と耐熱性を付与できることから、下記式(2)または(3)で表される構造式を有するエポキシ樹脂およびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく用いられる。
Figure 2017039875
ただし式(2)中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。Yは、−CH−、−O−、−S−、−CO−、−C(=O)O−、−SO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(=O)NH−から選ばれる一つを表す。
Figure 2017039875
ただし式(3)中、R〜R10は、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。
式(2)または(3)において、R〜R10は、他のエポキシ樹脂への相溶性の点からは水素原子が好ましい。R〜R10の構造が大きすぎると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて取扱性を損ねたり、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]とエポキシ樹脂組成物中の他の成分との相溶性が損なわれ、得られる繊維強化複合材料の力学特性向上効果が小さくなったりすることがある。また、難燃性の点からは、R〜R10がClやBrといったハロゲン原子で置換されているものも好ましい形態である。
芳香族エポキシ樹脂[B]としては、例えば、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−4−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−4,3’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−2−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−4−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−4−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−4,3’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−2−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−4−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−4−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルスルホンン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−4,3’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−2−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−4−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノベンズアニリド、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノベンズアニリド、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノベンズアニリド、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノール等が挙げられる。
本発明で用いられる3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]は、特に樹脂弾性率を付与できることから、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、またはこれらの水添体もしくはハロゲン置換体が好ましい。
3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]の市販品としては、以下に示すものが挙げられる。
ジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂の市販品としては、ELM434(住友化学(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY720、“アラルダイト(登録商標)”MY721、“アラルダイト(登録商標)”MY9512、“アラルダイト(登録商標)”MY9663(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、および“エポトート(登録商標)”YH−434(新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
ジアミノジフェニルスルホン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TG3DAS(小西化学工業(株)製)等が挙げられる。
アミノフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、ELM120やELM100(以上、住友化学(株)製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)、および“アラルダイト(登録商標)”MY0510、“アラルダイト(登録商標)”MY0600(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
メタキシレンジアミン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TETRAD−X(三菱ガス化学(株)製)が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DEN431やDEN438(以上、ダウケミカル社製)および“jER(登録商標)”152、“jER(登録商標)”154(以上、三菱化学(株)製)等が挙げられる。
オルソクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂の市販品としては、EOCN−1020(日本化薬(株)製)や“EPICLON(登録商標)”N−660(DIC(株)製)等が挙げられる。
トリスヒドロキシフェニルメタン型のエポキシ樹脂市販品としては、Tactix742(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)が挙げられる。
テトラフェニロールエタン型のエポキシ樹脂市販品としては、“jER(登録商標)”1031S(三菱化学(株)製)が挙げられる。
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、NC−3000(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“EPICLON(登録商標)”HP7200(DIC(株)製)等が挙げられる。
イソシアヌレート型のエポキシ樹脂の市販品としては、TEPIC−P(日産化学工業(株)製)が挙げられる。
本発明においては、本発明の効果を失わない範囲において、[B]以外のエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂との共重合体等を含んでも良い。エポキシ樹脂と共重合させて用いられる上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂組成物や化合物は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。
[B]以外のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、アニリン骨格を有するエポキシ樹脂、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、ウレタン変性型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、“jER(登録商標)”828“jER(登録商標)”1001、“jER(登録商標)”1004、“jER(登録商標)”1007(以上、三菱化学(株)製)、“EPICLON(登録商標)”850(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−128(新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”806、“jER(登録商標)”807、jER(登録商標)”4005P、“jER(登録商標)”4007P(以上、三菱化学(株)製)、“EPICLON(登録商標)”830(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−170、“エポトート(登録商標)”YDF―2001(以上、新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、“エピクロン(登録商標)”EXA−1514(DIC(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールAD型エポキシ樹脂としては、“EPOMIK(登録商標)”R710、“EPOMIK(登録商標)”R1710(以上、(株)プリンテック製)等が挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール(登録商標)”EX−201(ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”HP7200、“エピクロン(登録商標)”HP7200L、“エピクロン(登録商標)”HP7200H(以上、DIC(株)製)、Tactix558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成イーマテリアルズ(株)製)やACR1348(旭電化(株)製)等が挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”YX4000H、“jER(登録商標)”YX4000、“jER(登録商標)”YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、ESF300(新日鐵住金化学(株)製)、“オンコート(登録商標)”EX−1010、“オンコート(登録商標)”EX−1011、“オンコート(登録商標)”EX−1012、“オンコート(登録商標)”EX−1020、“オンコート(登録商標)”EX−1030、“オンコート(登録商標)”EX−1040、“オンコート(登録商標)”EX−1050、“オンコート(登録商標)”EX−1051(ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
アニリン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、GAN(N,N−ジグリシジルアニリン)、GOT(N,N−ジグリシジルトルイジン)(以上、日本化薬(株)製)、TOREP A−204E(ジグリシジル−p−フェノキシアニリン、東レ・ファインケミカル(株)製)等が挙げられる。
1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TETRAD−C(三菱ガス化学(株)製)が挙げられる。
ウレタン変性エポキシ樹脂の市販品としては、AER4152(旭化成エポキシ(株)製)が挙げられる。
ヒダントイン型のエポキシ樹脂市販品としては、AY238(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、架橋密度を適切に制御し、耐熱性や弾性率を維持しつつ伸度を向上させる観点から、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、芳香族アミン[A]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)は、1.1≦H/E≦1.6であることが必要であり、好ましくは1.1≦H/E≦1.5、より好ましくは1.15≦H/E≦1.5である。H/Eが1.6を超える場合は、樹脂硬化物の耐熱性や弾性率が低下する。また、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇するため、プリプレグの作製が困難となる。
ここでH/Eは、例えばプリプレグからクロロホルム等の有機溶剤を用いて未硬化のエポキシ樹脂組成物を抽出し、抽出溶液から有機溶媒を除去した後、NMRやIR、HPLC等を用いて組成分析することにより特定可能である。組成分析から得られたエポキシ基と芳香族アミン[A]由来の活性水素の比からH/Eを求めることができる。
本発明において繊維強化複合材料の層間靭性の発現には、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、曲げ撓み量が6.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは7.0mm以上である。曲げ撓み量が6.0mm以上である場合、層間靭性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。
また、繊維強化複合材料の圧縮強度の発現には、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、曲げ弾性率が4.2GPa以上であることが好ましく、より好ましくは4.3GPa以上である。曲げ弾性率が4.3GPa以上である場合、優れた圧縮強度を発現する繊維強化複合材料を得られることがある。
ここで、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物とは、DSC(示差走査熱量分析)により得られる、かかるエポキシ樹脂組成物の総発熱量と、かかる樹脂硬化物の残存発熱量から算出される硬化反応率(DSC硬化度)が90%以上である樹脂硬化物を指す。
本発明の樹脂硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物をDSC硬化度が90%以上となる温度条件で加熱硬化することにより得ることができる。かかる温度条件は、硬化剤や促進剤の種類や量に応じて適宜設定することができ、例えば硬化剤にジアミノベンズアニリドを用いた場合、180℃で2時間の温度条件が好適に使用できる。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上であることが好ましい。航空宇宙用途で本発明に係る繊維強化複合材料を適用しようとすれば、特に優れた耐熱性が必要となる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、DSC硬化度が90%以上となる温度条件で加熱硬化し得られた樹脂硬化物について、DMA(動的機械分析)の昇温測定を実施し得られる貯蔵弾性率と温度の散布図より算出されるものとする。具体的には、上記散布図において、ガラス領域に引いた接線と、ガラス転移領域に引いた接線との交点における温度である。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂組成物に溶解可能な熱可塑性樹脂[C]を含むことも好適な態様である。エポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂[C]を溶解させることで、エポキシ樹脂組成物または熱可塑性樹脂[C]を単独で用いた場合に比べ、エポキシ樹脂組成物の脆さを熱可塑性樹脂[C]の高い靱性でカバーしたり、熱可塑性樹脂[C]の成形困難性をエポキシ樹脂組成物でカバーしたりでき、バランスのとれたベース樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ樹脂組成物中に溶解可能な熱可塑性樹脂[C]を含むことで、樹脂硬化物の耐熱性の低下を回避しつつ高い靭性が得られ、層間靭性が大幅に向上した繊維強化複合材料を得ることができる。
ここで説明される「エポキシ樹脂組成物に溶解可能」とは、熱可塑性樹脂[C]をエポキシ樹脂組成物に混合したものを加熱、または加熱撹拌することによって、均一相をなす温度領域が存在することを指す。ここで、「均一相をなす」とは、目視で分離のない状態が得られることを指す。ある温度領域で均一相をなすのであれば、その温度領域以外、例えば室温で分離が起こっても構わない。またエポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂[C]が溶解可能であることは、次の方法でも評価することができる。即ち、熱可塑性樹脂[C]の粉末をエポキシ樹脂組成物に混合し、熱可塑性樹脂[C]のガラス転移温度(Tg)より低い温度で数時間、例えば2時間等温保持したときの粘度の変化を評価したときに、初期粘度に対して10%以上粘度の増加が見られる場合、熱可塑性樹脂[C]がエポキシ樹脂組成物に溶解可能であると判断してよい。
このように熱可塑性樹脂[C]がエポキシ樹脂組成物に溶解可能な性質を有していれば、樹脂を硬化させる過程で熱可塑性樹脂[C]が相分離を起こしても構わないが、硬化させて得られる樹脂硬化物および繊維強化複合材料の耐溶剤性を高める観点からは、硬化過程で相分離をしないことがより好ましい。また、得られる繊維強化複合材料の力学特性、耐溶剤性等を向上させる観点から、熱可塑性樹脂[C]をあらかじめエポキシ樹脂組成物に溶解させて混合することがより好ましい。溶解させて混合することで、エポキシ樹脂組成物中に均一に分散しやすくなる。
このような熱可塑性樹脂[C]としては、一般に、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、この熱可塑性樹脂[C]は、部分的に架橋構造を有していても差し支えなく、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が、上記のエポキシ樹脂組成物に含まれるいずれかのエポキシ樹脂に混合または溶解していることが好適である。
本発明において、熱可塑性樹脂[C]はエポキシ樹脂組成物中に1〜40質量%含まれることが好ましく、より好ましくは1〜35質量%、さらに好ましくは2〜30質量%、最も好ましくは5〜25質量%含まれる。熱可塑性樹脂[C]がエポキシ樹脂組成物中に1〜40質量%含まれることで、靭性に優れた樹脂硬化物や層間靭性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。また、プロセス性や取扱性に優れたエポキシ樹脂組成物およびプリプレグを得ることができる。
熱可塑性樹脂[C]の重量平均分子量は、4000〜40000g/molの範囲にあることが好ましく、より好ましくは10000〜40000g/mol、さらに好ましくは15000〜30000g/molである。熱可塑性樹脂[C]の平均分子量が4000〜40000g/molの範囲にある場合、樹脂硬化物の伸度と靱性が向上し、プロセス性や取扱性に優れたプリプレグを得られることがある。
さらに良好な耐熱性を得るためには、成形体として用いたときに熱変形を起こしにくいという観点から、熱可塑性樹脂[C]のガラス転移温度(Tg)が少なくとも150℃以上であり、170℃以上であることが好ましい。かかる熱可塑性樹脂[C]としては、ポリカーボネート(Tg:150℃)、ポリスルホン(Tg:190℃)、ポリエーテルイミド(Tg:215℃)、ポリエーテルスルホン(Tg:225℃)等が挙げられる。
さらに、この熱可塑性樹脂[C]の末端官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、酸無水物等のものがカチオン重合性化合物と反応することができ、好ましく用いられる。水酸基を有する熱可塑性樹脂[C]としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂を挙げることができる。また、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂[C]としては、ポリエーテルスルホンを挙げることができる。
具体的には、ポリカーボネートの市販品としては、“パンライト(登録商標)”K1300Y(帝人化成(株)製)等が挙げられる。
ポリスルホンの市販品としては、“UDEL(登録商標)”P−1700、“UDEL(登録商標)”P−3500(以上、帝人アモコ社製)、“Virantage(登録商標)”VW−30500RP(Solvay Advanced Polymers社製)等が挙げられる。
ポリエーテルイミドの市販品としては、“ウルテム(登録商標)”1000、“ウルテム(登録商標)”1010、“ウルテム(登録商標)”1040(以上、Solvay Advanced Polymers社製)等が挙げられる。
ポリエーテルスルホンの市販品としては、“スミカエクセル(登録商標)”PES3600P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5200P、“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(以上、住友化学工業(株)製)、“Ultrason(登録商標)”E2020P SR、“Ultrason(登録商標)”E2021SR(以上、BASF社製)、“GAFONE(登録商標)”3600RP、“GAFONE(登録商標)”3000RP、“Virantage(登録商標)”VW−10700RP(以上、Solvay Advanced Polymers社製)等が挙げられる。
また、特表2004−506789号公報に記載されるようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合体オリゴマーが挙げられる。オリゴマーとは10個から100個程度の有限個のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。
本発明においては、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子[D]を配合することも好適である。かかる熱可塑性樹脂粒子[D]を配合することにより、層間靭性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。ここで、エポキシ樹脂組成物に不溶であるとは、かかる熱可塑性樹脂粒子[D]を分散したエポキシ樹脂組成物を加熱硬化した際に、熱可塑性樹脂粒子[D]がエポキシ樹脂組成物中に実質的に溶解しないことを意味しており、例えば、透過型電子顕微鏡を用い、樹脂硬化物の中で熱可塑性樹脂粒子[D]が元のサイズから実質的に縮小することなく、熱可塑性樹脂粒子[D]とマトリックス樹脂の間に明確な界面をもって観察できる状態を指す。
かかる熱可塑性樹脂粒子[D]としては、先に例示した各種の熱可塑性樹脂[C]と同様のものであって、エポキシ樹脂組成物に混合して用い得る熱可塑性樹脂を用いることができる。中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン6/12共重合体や特開平01−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたナイロン(セミIPNナイロン)は、特に良好なエポキシ樹脂との接着強度を与える。この熱可塑性樹脂粒子[D]の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80、TN粒子(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)、“グリルアミド(登録商標)”TR90(エムザベルケ(株)社製)、“TROGAMID(登録商標)”CX7323、CX9701、CX9704、(デグサ(株)社製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、あるいはシリカゲル、クレーといった無機フィラー等を配合することができる。
本発明において、熱可塑性樹脂粒子[D]はエポキシ樹脂組成物中に0.1〜30質量%含まれることが好ましく、より好ましくは1〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。熱可塑性樹脂粒子[D]がエポキシ樹脂組成物中に0.1〜30質量%含まれる場合、耐衝撃性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明のプリプレグは、熱可塑性樹脂粒子[D]に富む層、即ち、その断面を観察したときに、熱可塑性樹脂粒子[D]が局在して存在している状態が明瞭に確認しうる層が、プリプレグの表面付近部分に形成されている構造であることが好ましい。
このような構造をとることにより、プリプレグを積層してエポキシ樹脂を硬化させて繊維強化複合材料とした場合、プリプレグ層、即ち繊維強化複合材料層の間で樹脂層が形成されやすく、それにより、繊維強化複合材料層相互の接着性や密着性が高められ、得られる繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性が発現されるようになることがある。
本発明で用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維等が挙げられる。これらの強化繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが好ましい。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維が好適に用いられる。
本発明で好ましく用いられる炭素繊維は、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性の点から少なくとも400GPa以上の引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が好ましくは4.4〜6.5GPaの炭素繊維が用いられる。また、引張伸度も重要な要素であり、1.7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも230GPa以上であり、引張強度が少なくとも4.4GPa以上であり、引張伸度が少なくとも1.7%以上であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T810G−24K、“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T700S−12K(以上東レ(株)製)等が挙げられる。
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
本発明で用いられる炭素繊維束は、撚糸時や樹脂組成物の含浸処理工程において炭素繊維束の損傷を起こさず、かつ炭素繊維束に樹脂組成物を充分に含浸させる観点から、単繊維繊度は0.2〜2.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.8dtexである。
また、本発明で用いられる炭素繊維束は、繊維配列が蛇行せず、プリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂含浸がしやすいという観点から、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数は、より好ましくは2800〜40000本の範囲である。
本発明のプリプレグは、上述のエポキシ樹脂組成物を上記強化繊維に含浸したものである。そのプリプレグの繊維質量分率は好ましくは40〜90質量%であり、より好ましくは50〜80質量%である。プリプレグの繊維質量分率が40〜90質量%である場合、得られる複合材料の重量が適度となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料が得られることがある。また、樹脂組成物が良好に含浸するため、得られる複合材料においてボイドが生成しにくいことがある。
強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐等が用いられる。また、特に比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を、メチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、強化繊維に含浸させるウェット法と、エポキシ樹脂組成物を加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法等によって好適に製造することができる。
ウェット法は、強化繊維をエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発せしめ、プリプレグを得る方法である。
ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または、エポキシ樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングした樹脂フィルムを作製しておき、次に強化繊維の両側または片側からその樹脂フィルムを重ね、加熱加圧することにより、エポキシ樹脂組成物を転写含浸せしめ、プリプレグを得る方法である。このホットメルト法では、プリプレグ中に残留する溶媒が実質的に皆無となるため好ましい態様である。
また、本発明の繊維強化複合材料は、このような方法により製造された複数のプリプレグを積層後、得られた積層体に熱および圧力を付与しながらエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる方法等により製造することができる。
熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が使用される。特にスポーツ用品の成形には、ラッピングテープ法と内圧成形法が好ましく用いられる。
ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法であり、ゴルフシャフトや釣り竿等の棒状体を作製する際に好適な方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを捲回し、オーブン中でエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた後、芯金を抜き去って管状体を得る方法である。
また、内圧成形法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いでその内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、管状体を成形する方法である。この内圧成形法は、ゴルフシャフト、バット、およびテニスやバトミントン等のラケットのような複雑な形状物を成形する際に、特に好ましく用いられる。
本発明の繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加圧・加熱してエポキシ樹脂を硬化させる方法を一例として製造することができる。
本発明の繊維強化複合材料は、前記したエポキシ樹脂組成物を用いて、プリプレグを経由しない方法によっても製造することができる。
このような方法としては、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後加熱硬化する方法、即ち、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法およびレジン・トランスファー・モールディング法等が用いられる。これら方法では、エポキシ樹脂からなる1つ以上の主剤と、1つ以上の硬化剤とを使用直前に混合してエポキシ樹脂組成物を調製する方法が好ましく採用される。
本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用いた繊維強化複合材料は、スポーツ用途、航空機用途および一般産業用途に好適に用いられる。より具体的には、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。このような航空宇宙用途の中でも、特に耐衝撃性が必要で、かつ、圧縮強度が必要な航空機一次構造材用途、特に胴体スキンや主翼スキンにおいて、本発明による繊維強化複合材料が特に好適に用いられる。また、一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、各種タービン、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。さらにスポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。
以下、実施例によって、本発明のエポキシ樹脂組成物と、それを用いた樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料について、より具体的に説明する。実施例で用いた強化繊維、樹脂原料および樹脂硬化物、プリプレグ、繊維強化複合材料の作製方法、樹脂硬化物の曲げ弾性率、曲げ撓み量、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、および層間靭性の評価方法を次に示す。実施例のプリプレグの作製環境と評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。
[炭素繊維(強化繊維)]
・“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31E(フィラメント数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ(株)製)。
[樹脂原料]
<成分[A]>
・4,4’−DABAN(4,4’−ジアミノベンズアニリド、日本純良薬品(株)製)活性水素当量:57(g/eq.)
・3,4’−DABAN(3,4’−ジアミノベンズアニリド、日本純良薬品(株)製)活性水素当量:57(g/eq.)
・4−BAAB(4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、日本純良薬品(株)製)活性水素当量:57(g/eq.)。
<その他の芳香族アミン>
・セイカキュアS(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化工業(株)製)活性水素当量:62(g/eq.)
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、小西化学工業(株)製)活性水素当量:62(g/eq.)
・4,4’−DBP(4,4’−ジアミノベンゾフェノン、小西化学工業(株)製)活性水素当量:53(g/eq.)。
<成分[B]>
・“アラルダイト(登録商標)”MY0510(トリグリシジル−p−アミノフェノール、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:101(g/eq.)
・TG3DAS(テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、小西化学工業(株)製)エポキシ当量:136(g/eq.)。
<その他のエポキシ樹脂>
・GAN(N,N−ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)エポキシ当量:125(g/eq.)
・“jER(登録商標)”825(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)エポキシ当量:175(g/eq.)。
<熱可塑性樹脂[C]>
・“Virantage (登録商標)”VW−10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、重量平均分子量:21000)。
<熱可塑性樹脂粒子[D]>
・TN粒子(東レ(株)製、平均粒子径:13.0μm)
・“オルガソール(登録商標)”1002D(ATOCHEM(株)、平均粒子径:21.0μm)。
[樹脂の調整および各種特性の評価方法]
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
(a)熱可塑性樹脂[C]を含まない場合
混練装置中に、表1〜4、6〜8に記載の組成と割合のエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂粒子[D]、および芳香族アミン[A]を加え、100℃以下で混練することでエポキシ樹脂組成物を得た。
(b)熱可塑性樹脂[C]を含む場合
混練装置中に、表3〜5に記載の組成と割合のエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂[C]を加え、加熱混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ100℃以下まで降温した後、熱可塑性樹脂粒子[D]および芳香族アミン[A]を所定量加え、さらに混練しエポキシ樹脂組成物を得た。
(2)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、厚み2mmになるように設定したモールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。次に、得られた樹脂硬化物の板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171−1994に従って、曲げ弾性率、および樹脂伸度の指標となる曲げ撓み量を求めた。
(3)プリプレグの作製
エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m、マトリックス樹脂の質量分率が35.5%の一方向プリプレグを得た。その際、熱可塑性樹脂粒子[D]を配合したエポキシ樹脂組成物を使用する場合は以下の2段含浸法を適用し、熱可塑性樹脂粒子[D]が表層に高度に局在化したプリプレグを作製した。
まず、熱可塑性樹脂粒子[D]を含まない1次プリプレグを作製した。表1〜8に記載の原料成分の内、エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子[D]を含まないエポキシ樹脂組成物を上記(1)の手順で調製した。この1次プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の50質量%の目付となる26g/mの1次プリプレグ用樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、この1次プリプレグ用樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧しながら樹脂を炭素繊維に含浸させ、1次プリプレグを得た。
さらに、2段含浸用樹脂フィルムを作製するために、混練装置を用いて、表1〜8に記載の原料成分の内、エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子[D]を記載量の2倍としたエポキシ樹脂組成物を上記(1)の手順で調製した。この2段含浸用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の50質量%の目付となる26g/mの2段含浸用樹脂フィルムを作製した。これを1次プリプレグの両面から重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧することで熱可塑性樹脂粒子[D]が表層に高度に局在化したプリプレグを得た。
(4)繊維強化複合材料の0°の定義
JIS K7017(1999)に記載されているとおり、一方向繊維強化複合材料の繊維方向を軸方向とし、軸方向を0°軸と定義したときの軸直交方向を90°と定義する。
(5)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定
一方向プリプレグを所定の大きさにカットし、一方向に6枚積層した後、真空バッグを行い、オートクレーブを用いて、温度180℃、圧力6kg/cm、2時間で硬化させ、一方向繊維強化複合材料を得た。この一方向強化材をSACMA−SRM 1R−94に準拠してタブを接着した後、0°方向を試験片の長さ方向として、長さ80mm、幅15.0mmの矩形試験片を切り出した。得られた0°方向圧縮試験片をSACMA−SRM 1R−94に準拠し、材料万能試験機(インストロン・ジャパン(株)製、“インストロン(登録商標)”5565型P8564)を用いて、試験速度1.27mm/minで圧縮試験を実施した。サンプル数はn=5とした。
(6)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定
JIS K7086(1993)に従い、次の(a)〜(e)の操作によりGIC試験用複合材料製平板を作製した。
(a)(5)で作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて20ply積層した。ただし、積層中央面(10ply目と11ply目の間)に、繊維配列方向と直角に、幅40mm、厚み12.5μmのフッ素樹脂製フィルムをはさんだ。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブにて、温度180℃、圧力6kg/cm、2時間で硬化させ、一方向繊維強化複合材料を成形した。
(c)(b)で得た一方向繊維強化複合材料を、幅20mm、長さ195mmにカットした。繊維方向は、サンプルの長さ側と平行になるようにカットした。
(d)JIS K7086(1993)に従い、ピン負荷用ブロック(長さ25mm、アルミ製)を試験片端(フィルムをはさんだ側)に接着した。
(e)亀裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
作製した複合材料製平板を用いて、以下の手順により、GIC測定を行った。
JIS K7086(1993)附属書1に従い、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて試験を行った。クロスヘッドスピードは、亀裂進展が20mmに到達するまでは0.5mm/分、20mm到達後は1mm/分とした。JIS K7086(1993)にしたがって、荷重、変位、および、亀裂長さから、亀裂進展初期の限界荷重のモードI層間破壊靭性値(亀裂進展初期のGIC)および亀裂進展過程のモードI層間破壊靭性値を算出した。亀裂進展初期のGICと亀裂進展量10mmから60mmにおける5点以上の測定値、計6点以上の測定値の平均をGICとして比較した。
(実施例1)
混練装置で、100質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY0510を混錬しつつ、62質量部の4,4’−DABANを配合してさらに混練し、エポキシ樹脂組成物を作製した。表1に組成と割合を示す(表1中、数字は各成分の質量部を表す)。得られたエポキシ樹脂組成物を用い、上記(2)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定を実施した。また、得られたエポキシ樹脂組成物から、(3)の手順でプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用い、(5)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定、(6)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2〜21、31〜36、比較例1〜24)
エポキシ樹脂、硬化剤の配合量を、表1〜4、6〜8に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を用い、上記(2)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定を実施した。また、得られたエポキシ樹脂組成物から、(3)の手順でプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用い、(5)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定、(6)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定を実施した。結果を、実施例2〜10については表1に、実施例11〜20については表2に、実施例21については表3に、実施例31〜36については表4に示す。また比較例1〜10については表6に、比較例11〜20については表7に、比較例21〜24については表8に示す。
(実施例22)
100質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY0510、および10質量部の“Virantage(登録商標)”VW−10700RPを加熱混錬し、粘調液が透明となったことを確認した後、この混錬物を100℃以下に降温して62質量部の4,4’−DABANを配合してさらに混練し、エポキシ樹脂組成物を作製した。表3に組成と割合を示す(表3中、数字は各成分の質量部を表す)。得られたエポキシ樹脂組成物を用い、上記(2)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定を実施した。また、得られたエポキシ樹脂組成物から、(3)の手順でプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用い、(5)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定、(6)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定を実施した。結果を表3に示す。
(実施例23〜30、37〜42)
エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤の配合量を、表3〜5に示すように変更したこと以外は、実施例22と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を用い、上記(2)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定を実施した。また、得られたエポキシ樹脂組成物から、(3)の手順でプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用い、(5)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定、(6)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定を実施した。結果を、実施例23〜30については表3に、実施例37〜40については表4に、実施例41〜42については表5に示す。
Figure 2017039875
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実施例1〜42と、比較例1〜24の比較から、本発明の樹脂硬化物は高い樹脂弾性率と伸度を有し、かつ、繊維強化複合材料の0°圧縮強度およびGICに優れることが判る。
まず、式(1)におけるXを−C(=O)NH−とした芳香族アミン[A]を用いた検討の結果を、実施例1〜6と比較例1〜6に示す。これらの比較から、芳香族アミン[A]、および3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]が配合されており、かつ、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、芳香族アミン[A]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6の範囲に含まれる場合、高い樹脂弾性率と伸度を両立できることがわかった。一方、比較例1、2、4、5に示すようにH/Eが1.1未満の場合には樹脂の伸度が低下しており、同時に繊維強化複合材料としたときの層間靭性が低いことがわかった。なお、比較例3、6に示すようにH/Eを1.6より大きくしたエポキシ樹脂硬化物を成形しようと試みたが、樹脂の粘度が高く、良好な品位の樹脂板を得ることができなかった。以上のことから、H/Eを1.1から1.6の範囲とすることが高伸度樹脂を得るために重要であるとわかる。
式(1)におけるXを−C(=O)O−とした芳香族アミン[A]を用いた検討の結果を、実施例7〜9と比較例7〜9に示す。実施例7〜9に示すように、H/Eを1.1から1.6の範囲内とすることにより高い樹脂弾性率と伸度が得られた。一方、比較例7〜9に示すように、H/Eを1.1未満とした場合は樹脂の伸度が低下する傾向にあり、H/Eを1.6より大きくした場合は、樹脂の粘度が高く、良好な品位の樹脂板を得ることができなかった。
次に、式(1)におけるXを−SO−とした芳香族アミン[A]を用いた検討の結果を、比較例10〜15に、式(1)におけるXを−CO−とした芳香族アミン[A]を用いた検討の結果を、比較例16〜18に示す。Xとして−SO−、−CO−を用いた場合は、H/Eを1.1から1.6の範囲内としても目立った伸度向上効果は得られなかった。即ち、H/Eを1.1から1.6の範囲内とするアプローチはすべての芳香族アミンで有効というわけではなく、本発明にて見出したように、X=−C(=O)O−、−C(=O)NH−のいずれかである場合に特に有効である。
また、芳香族エポキシ樹脂[B]として3官能以上のエポキシ樹脂が有効であることを確認している。実施例1〜3、10〜15より、トリグリシジルアミノフェノール等の3官能エポキシを用いた場合も、さらにはテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンおよびTG3DSの等の4官能エポキシを用いた場合も、H/Eを1.1から1.6の範囲内とすることにより高い樹脂弾性率と伸度が得られた。一方、実施例1〜3、10〜15と比較例19〜21の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]ではないエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ樹脂硬化物の樹脂弾性率が低下し、繊維強化複合材料としたときの圧縮強度も低下した。高い樹脂弾性率を得るためには3官能以上のエポキシ樹脂を使用することが極めて重要とわかる。
また、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]とその他のエポキシ樹脂とを併用する場合においても本発明の効果が得られることを確認した。実施例16〜21より、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]とその他のエポキシ樹脂を併用した場合でも、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、芳香族アミン[A]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6の範囲に含まれる場合、十分に高い樹脂弾性率と伸度を両立できることがわかった。一方、比較例22〜24に示すように、H/Eが1.1未満の場合には、樹脂の伸度が低下し、繊維強化複合材料としたときの層間靭性も低下することがわかった。また、H/Eを1.6より大きくした場合は、樹脂の粘度が高く、良好な品位の樹脂板を得ることができなかった。
エポキシ樹脂組成物に溶解可能な熱可塑性樹脂[C]を含むエポキシ樹脂組成物についても、本発明の効果を確認した。実施例22〜30に示すエポキシ樹脂組成物においては、その樹脂硬化物の断面を光学顕微鏡にて観察しても熱可塑性樹脂[C]とエポキシ樹脂との境界を見つけることは困難であり、エポキシ樹脂組成物中に熱可塑性樹脂[C]が良好に溶解していることを確認した。そのエポキシ樹脂組成物の樹脂弾性率および伸度は、H/Eを1.1から1.6の範囲内とすることにより、他の実施例と同様に良好であった。
エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子[D]を含むエポキシ樹脂組成物についても、本発明の効果を確認した。実施例31〜36に示すエポキシ樹脂組成物においては、その樹脂硬化物の断面を光学顕微鏡にて観察すると、数十μm程度の円状の熱可塑性樹脂領域を明確に確認することができた。そのエポキシ樹脂組成物の樹脂弾性率および伸度は、H/Eを1.1から1.6の範囲内とすることにより、他の実施例と同様に良好であった。
エポキシ樹脂組成物に溶解可能な熱可塑性樹脂[C]、およびエポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子[D]の両方を含むエポキシ樹脂組成物についても、本発明の効果を確認した。その樹脂硬化物の断面を光学顕微鏡にて観察すると、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子[D]に由来する数十μm程度の円状の熱可塑性樹脂領域を明確に確認することができた。そのエポキシ樹脂組成物の樹脂弾性率および伸度は、H/Eを1.1から1.6の範囲内とすることにより、他の実施例と同様に良好であった。
本発明によれば、樹脂の弾性率と伸度を向上させたエポキシ樹脂組成物が得られる。さらには、かかるエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は、圧縮強度、層間靱性等の機械強度が優れるため、特に構造材料に好適に用いられる。例えば、航空宇宙用途では主翼、胴体等の航空機一次構造材用途、尾翼、フロアビーム、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。また、一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、各種タービン、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。さらにスポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。

Claims (12)

  1. 少なくとも次の構成要素[A]、[B]からなるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[A]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6であるエポキシ樹脂組成物。
    [A]式(1)で表される芳香族アミン
    Figure 2017039875
    (ただし式(1)中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。Xは、−C(=O)O−、−C(=O)NH−から選ばれる一つを表す。)
    [B]3官能以上の芳香族エポキシ樹脂
  2. 式(1)において、Xが−C(=O)NH−である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]が、下記式(2)または(3)で表されるエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2017039875
    (ただし式(2)中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。Yは、−CH−、−O−、−S−、−CO−、−C(=O)O−、−SO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(=O)NH−から選ばれる一つを表す。)
    Figure 2017039875
    (ただし式(3)中、R〜R10は、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。)
  4. 3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[B]が、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、またはこれらの水添体もしくはハロゲン置換体である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量部に対して、[B]が40〜100質量部含有されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. エポキシ樹脂組成物に溶解可能な熱可塑性樹脂[C]を含む請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 熱可塑性樹脂[C]がエポキシ樹脂組成物中に1〜40質量%含まれる請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子[D]を含む請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグ。
  11. 請求項9に記載の樹脂硬化物と強化繊維を含んでなる繊維強化複合材料。
  12. 請求項10に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
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