実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、発明を明瞭化するために誇張または省略されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。特に上面図において、図面をわかりやすくするため一部の構成要素の記載を省略する場合がある。
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理によりレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために省略して示すことがある。
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る加工部材の構成例および本発明の一態様の回路基板の作製方法例について、図1乃至図7を参照して説明する。
[加工部材の構成例と回路基板の作製方法例]
本発明の一態様に係る加工部材を、図1(A)及び図1(B)に模式的に示す。図1(A)は加工部材17の上面図であり、図1(B)は図1(A)の切断線X1−Y1における断面図である。また、本発明の一態様の回路基板の作製方法例について、図1(C)乃至図1(F)に示す。
加工部材17は、第1の基板11、端子電極13、回路14、接着層15、分離層21、及び第2の基板12を備える。端子電極13および回路14は、第1の基板11の第1の面上に設けられる。また分離層21は、第1の基板11および端子電極13上に設けられる。分離層21は端子電極13と接している。第1の基板11の第1の面と、第2の基板12の第2の面とが、接着層15を介して貼り合わされている。
なお、図1(A)の上面図において、第2の基板12および接着層15の描画は省略しているが、最表面が第2の基板12または接着層15である領域においては、第2の基板12または接着層15の下層に位置する各要素は破線で示している。本実施の形態における上面図はすべて、これと同様の描画方法によって表されている。
回路14は、トランジスタをはじめ、半導体特性を利用することで機能しうる様々な素子を含むことができる。また、回路14は有機EL素子などの発光素子を含むことができる。
端子電極13は、回路14と電気的に接続されている。端子電極13の一部を露出させることで、回路14が含む半導体素子や発光素子等の各素子を外部電極と接続することができる。
分離層21として、端子電極13に対して密着性の低い材料を用いる。本発明の一態様に係る加工部材17は、端子電極13上に分離層21を有することで、分離層21と重なる領域の第2の基板12および接着層15を除去する工程を容易に行うことができる。また、分離層21は単層であってもよく、複数の異なる層を有していてもよい。分離層21が積層である場合は、分離層21を構成する一の層と、該一の層と接する分離層21を構成する他の層との密着性が低いことが好ましい。
また、第2の基板12、接着層15および分離層21の一部を加工部材17から除去した後に、第1の基板11上または/および端子電極13上に分離層21の一部が残留することがある。そのため、第1の基板11および端子電極13にダメージを与えることなく有機溶剤などで残留した分離層21を除去できるように、分離層21の材料を選択することが好ましい。なお、異方導電性を有する材料を分離層21に用いる場合は、第1の基板11上または/および端子電極13上に残留した分離層21を除去する工程を省略することができる。また、分離層21として導電性の低い材料を用いることで、第1の基板11上に残留した分離層21を除去する工程を省略することができる。
分離層21に用いることができる材料については、実施の形態2における分離層221の記述を参照できる。
加工部材17が有する第2の基板12、接着層15及び分離層21の一部を除去して端子電極13を露出させる工程により、本発明の一態様の回路基板を作製することができる。
本発明の一態様の回路基板の作製方法は、回転することで切削加工が可能な刃によって加工部材17に溝部を形成することで、端子電極13にダメージを与えることなく、端子電極13を露出させることができる。切削加工を行うために、回転することで切削加工が可能な鋼製の刃を有し、刃先を深さ方向に精度良く制御できる彫刻機などの切削加工装置を用いる。回転することで切削加工が可能な鋼製の刃としては、エンドミルやドリル、回転切削用のカッターなどを用いることができる。
なお、第1の基板11及び第2の基板12は、特定のものに限定されない。一例として、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどが挙げられる。また、第1の基板11及び第2の基板12に用いることのできる材料として、実施の形態2の基板111、基板121の記述を参照できる。
なお、第1の基板11及び第2の基板12のうち、少なくとも第2の基板12が可撓性を有していることが好ましい。基板が可撓性を有する程度に膜厚が薄いことで、切削加工によって基板を除去しやすくなる。
端子電極13は、導電性材料を用いて形成することができる。端子電極13に用いることができる材料として、実施の形態2の端子電極116の記述を参照できる。
以下より、上記の構成例で示した図1(A)及び(B)の加工部材17を加工して本発明の一態様の回路基板を作製する方法について、図1(C)乃至(F)を参照して説明する。
まず、刃30を用いて加工部材17に第1の溝部20aと第2の溝部20bを形成する(図1(C)、(D)参照)。
第1の溝部20aと第2の溝部20bは刃30によって加工部材17を切削しながら連続して形成することができる。すなわち、第1の溝部20aと第2の溝部20bは連結している。また図1(C)に示すように、第1の溝部20aと第2の溝部20bは、少なくとも一部が分離層21と重なるように形成される。すなわち、第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域が分離層21の一部と重畳する。
図1(C)では、第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域の上面形状が矩形である場合を示しているが、これに限られない。該上面形状の輪郭は任意の閉曲線であってよい。特に、該上面形状が複数の角を有する場合に、該複数の角のうち少なくとも1つが丸みを帯びていることが好ましい。なお、ここでいう矩形は、刃30の外径に対応する丸みを帯びた角を有しているが、刃30の外径は該矩形の1辺に対して十分に小さい。そのため、図1(C)では該矩形の角の丸みの描出を省略している。
第1の溝部20aは、第2の基板12および接着層15にわたって形成されている。また第2の溝部20bは、第2の基板12、接着層15、分離層21および第1の基板11にわたって形成されている(図1(D)参照)。すなわち、第2の溝部20bの深さ(第2の基板12の上面から第2の溝部20bの底面までの距離)は、第1の溝部20aの深さ(第2の基板12の上面から第1の溝部20aの底面までの距離)よりも大きいことが好ましい。加工部材17に対してこのような加工を施すことで、端子電極13の一部を露出させることが容易となる。本作製方法例では、図1(C)に示すように刃30が掘り込んだ上述の矩形の一の短辺に相当する領域を第2の溝部20bとし、残りの領域を第1の溝部20aとしている。
第2の溝部20bは、端子電極13上の第2の基板12、接着層15および分離層21の除去の起点となる。第2の溝部20bが形成されることで、上面視において分離層21と端子電極13が接する領域の端部(図1(D)に領域22で示した部分)と第2の溝部20bの側面との距離を短くすることができる。この距離が短いことで、該除去において第1の基板11や接着層15など周囲の層にダメージを与えることを抑制できる。このことから、第2の溝部20bは少なくとも第2の基板12、接着層15及び分離層21に形成されることが好ましい。また、第2の溝部20bの底面が領域22よりも深い位置、たとえば第1の基板11に達していてもよい。
また、領域22から剥離が始まると、第1の溝部20aがガイドとなって、第1の溝部20aと第2の溝部20bに囲まれた領域で第2の基板12、接着層15および分離層21の除去が進行する。端子電極13と分離層21との界面の密着性が低いことから、第1の溝部20aの深さは第2の溝部20bの深さよりも小さくすることができる。第1の溝部20aの深さは、除去する積層体(第2の基板12、接着層15および分離層21)の厚さの1/3以上、好ましくは半分以上であればよい。または、第1の溝部20aは、少なくとも第2の基板12に形成されていればよい。第1の溝部20aの深さを小さくすることで、第1の溝部20aを形成する際に端子電極13にダメージを与えることを抑制できる。
刃30としては、上述したエンドミルや回転切削用のカッターなどの、切削を行いながら水平方向および深さ方向の移動が行える工具を用いることができる。刃30としては、高速度鋼(ハイス)や炭素鋼、超硬合金などの材質を選択することができる。
また、刃30の切削加工における回転数および走査速度は第2の基板12および接着層15の材料によって適宜調整することが好ましい。切削加工にかかる時間は短いほど作業時間を短縮できるが、走査速度が大きすぎると加工部の端面にバリが発生することがある。また、刃30の外径は、加工部材17において切削加工を行う領域の大きさによって適宜調整することが好ましい。
次に、端子電極13と分離層21の界面の密着性が低いことを利用して、加工部材17から、第2の基板12のうち第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域と互いに重なる部分(以下、第1の領域41と表記する)、接着層15のうち第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域と互いに重なる部分(以下、第2の領域42と表記する)、および分離層21の一部を除去する(図1(E)、(F)参照)。この時点で端子電極13の一部が露出し、開口51が形成される。また、この工程によって分離層21の一部が除去され、他の一部が残留する場合がある。なお、このとき第2の基板12に形成された開口51の上面形状の輪郭51aは矩形である(図1(E)参照)。
第1の領域41、第2の領域42および分離層21の除去は、機械的な力を加えることで行えばよい。例えば、第1の領域41に粘着テープ等を接着させ、引きはがすことで行える。また、回転軸を有し、表面に吸着機構を有する円柱等の構造体を第1の領域41の表面に走らせ、巻き取りながら引きはがしてもよい。
また例えば、第2の溝部20bの側からピンセットやアームなどで第1の領域41、第2の領域42および分離層21を把持し、持ち上げることで除去を行ってもよい。あるいは、第2の溝部20bに向けて高圧で気体を噴射し、第1の領域41、第2の領域42および分離層21を浮き上がらせることで除去を行ってもよい。
また、第2の溝部20b近傍の第1の領域41および/または第2の領域42に設けた開口に針状または鉤状の部材を引っかけて持ち上げることで除去を行ってもよい。該開口は、刃30で第1の溝部20aと第2の溝部20bを形成する際に、同時に形成することができる。このとき、該開口は1つであっても複数であってもよい。
なお、これらの第1の領域41、第2の領域42および分離層21を除去する方法に応じて、第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域の上面形状を変更することが好ましい。刃30によって第1の溝部20aと第2の溝部20bを形成するため、該変更を容易に行うことができる。
以上の工程によって、開口51において端子電極13が露出した回路基板10Aが完成する。なお、回路基板10Aに接続体52を介して外部電極53を接続した半導体装置もしくは発光装置も本発明の一態様である。図4(A)、(B)に、回路基板10Aに接続体52を介して外部電極53を接続した半導体装置もしくは発光装置の上面図および断面図を示す。
接続体52は、異方導電性を有していることが好ましい。接続体52として、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)を用いることができる。また、外部電極53としては、例えばFPCを用いることができる。
[変形例1]
以下では、上述した回路基板10Aとは異なる回路基板の作製方法例を示す。なお、ここでは上述の作製方法例との共通点は上記を援用できるため省略し、異なる点についてのみ以下より説明する。
本発明の一態様に係る加工部材を、図2(A)及び(B)に模式的に示す。図2(A)は加工部材17の上面図であり、図2(B)は図2(A)の切断線X2−Y2における断面図である。図2(A)、(B)に示した加工部材17は図1(A)、(B)に示した加工部材17と同様の構成であるが、切断線の位置が異なる。本発明の一態様の回路基板の作製方法例について、図2(C)乃至図2(F)を参照しながら説明する。
まず、刃30を用いて加工部材17に第1の溝部20aと第2の溝部20bを形成する(図2(C)、(D)参照)。
第1の溝部20aと第2の溝部20bは刃30によって加工部材17を切削しながら連続して形成することができる。すなわち、第1の溝部20aと第2の溝部20bは連結している(図2(D)参照)。図2(C)に示すように、第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域が分離層21の一部と重畳する。第2の溝部20bは、端子電極13と重ならないように形成することが好ましい。
図2(C)では第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域の上面形状の輪郭が、一部に曲線を有する閉曲線である場合を示している。具体的には、該上面形状は矩形の一の角が刃30の外径よりも十分大きな曲率半径を有する丸みを帯びた形状である場合を示している。また、刃30が掘り込んだ領域のうち、該閉曲線の曲線部分(丸みを帯びた角の部分)は第2の溝部20bであり、残りの領域は第1の溝部20aである。このような構成とすることで、第2の溝部20bの側から第1の領域41、第2の領域42および分離層21を把持して引き剥がす工程において、該閉曲線内における分離層21や第2の領域42の除去残りを抑制することができる。
次に、加工部材17から、第1の領域41、第2の領域42、および分離層21の一部を除去する(図2(E)、(F)参照)。この時点で端子電極13の一部が露出し、開口51が形成される。また、この工程によって分離層21の一部が除去されるが、他の一部が加工部材17に残留する。なお、このとき第2の基板12に形成された開口51の上面形状の輪郭51aは、矩形の一の角が丸みを帯びた形状である(図2(E)参照)。
以上の工程によって、開口51において端子電極13が露出した回路基板10Bが完成する。なお、端子電極13に接続体52および外部電極53を形成した半導体装置もしくは発光装置も本発明の一態様である。図4(C)、(D)に、回路基板10Bに接続体52を介して外部電極53を接続した半導体装置もしくは発光装置の上面図および断面図を示す。
なお、回路14が外気に触れると電気特性等が劣化する素子を含み、第1の基板11、第2の基板12および接着層15が回路14から外気を遮蔽する機能を有する場合には、刃30による切削加工の際に、図2(C)に示すように第2の溝部20bを回路14から離れた位置に設けることが好ましい。なお、第2の溝部20bの底面が分離層21の底面より上にある構成としてもよい。
[変形例2]
以下では、上述の加工部材17と異なる構成の加工部材を用いた、上述とは異なる回路基板の作製方法例を示す。なお、ここでは上述の作製方法例との共通点は上記を援用できるため省略し、異なる点についてのみ以下より説明する。
本発明の一態様に係る加工部材を、図3(A)及び図3(B)に模式的に示す。図3(A)は加工部材18の上面図であり、図3(B)は図3(A)の切断線X3−Y3における断面図である。また、本発明の一態様の回路基板の作製方法例について、図3(C)乃至図3(F)に示す。
加工部材18は、加工部材17と比較して、分離層21が形成されている領域が異なる。加工部材17では、分離層21は第1の基板11および端子電極13上に、端子電極13の一部と重畳するように矩形状に設けられている。一方で、加工部材18では該矩形を拡大し、分離層21の3つの側面がそれぞれ第1の基板11の側面と概ね一致するように分離層21が設けられている(図3(A)参照)。
まず、刃30を用いて加工部材18に第1の溝部20a、第2の溝部20bおよび第3の溝部20cを形成する(図3(C)、(D)参照)。
第1の溝部20aと第2の溝部20bは刃30によって加工部材17を切削しながら連続して形成することができる。すなわち、第1の溝部20aと第2の溝部20bは連結している(図3(D)参照)。図3(C)に示すように、第1の溝部20aと第2の溝部20bは加工部材18を直線状に横断するように設けられている。なお、第2の溝部20bまたは/および第1の溝部20aを形成する刃30の軌跡は直線に限られず、曲線であってもよい。
第3の溝部20cは、第2の溝部20bとの距離が小さい位置に形成することで、加工部材18から第1の領域41、第2の領域42、および分離層21の一部を除去する次の工程を容易に行うことができる。また第3の溝部20cの深さは特に限定されず、第2の基板12に形成されてもよく、また第2の基板および接着層15にわたって形成されてもよい。また第3の溝部20cの上面形状も特に限定されない。図3(C)には第3の溝部20cの上面形状が円状の例を示すが、多角形であってもよい。
次に、第3の溝部20cに針状または鉤状の部材を引っかけて持ち上げることで、第1の領域41、第2の領域42、および分離層21の一部を除去する(図3(E)、(F)参照)。この時点で端子電極13の一部が露出し、開口51が形成される。また、この工程によって分離層21の一部が除去されるが、他の一部が加工部材17に残留する。
以上の工程によって、開口51において端子電極13が露出した回路基板10Cが完成する。なお、端子電極13に接続体52および外部電極53を形成した半導体装置もしくは発光装置も本発明の一態様である。図4(E)、(F)に、回路基板10Cに接続体52を介して外部電極53を接続した半導体装置もしくは発光装置の上面図および断面図を示す。
[溝部の上面形状の変形例]
以下より、図5を用いて第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域の上面形状(以下、溝部の上面形状と記す)の変形例について説明する。図5(A)乃至図5(E)は、本発明の一態様に係る加工部材に第1の溝部20aと第2の溝部20bを形成した時点における、第1の溝部20aおよび第2の溝部20b近傍の上面図である。図5(A)乃至図5(E)における第1の溝部20aと第2の溝部20bの深さはそれぞれ図1(D)における第1の溝部20aと第2の溝部20bの深さと等しいものとする。また、図5(A)乃至図5(E)において、分離層21は、上面から見て第1の溝部20aと第2の溝部20bにより囲まれる領域を内側に含むように形成されている。
図5(A)に示す加工部材は、溝部の上面形状が矩形であり、該矩形の一辺の一部に相当する領域を第2の溝部20bとし、残りの領域を第1の溝部20aとしている。また図5(B)に示す加工部材は、溝部の上面形状が、矩形の一の角部に丸みを帯びた閉曲線を繋げた形状であり、該形状のうち該閉曲線に相当する領域を第2の溝部20bとし、残りの領域を第1の溝部20aとしている。これらのような構成とすることで、第2の溝部20bの側からピンセットやアームなどで第1の領域41、第2の領域42および分離層21を把持し、持ち上げることを容易に行うことができる。
図5(C)に示す加工部材は、溝部の上面形状が矩形の一辺近傍が末広がりの形状であり、該形状の末広がりの領域の一部を第2の溝部20bとし、残りの領域を第1の溝部20aとしている。また、図5(D)に示す加工部材は、溝部の上面形状が矩形の一辺が波型に湾曲した形状であり、該形状の波型に湾曲した領域を第2の溝部20bとし、残りの領域を第1の溝部20aとしている。これらのような構成とすることで、第2の溝部20bに向けて高圧で気体を噴射し、第1の領域41、第2の領域42および分離層21を浮き上がらせることを容易に行うことができる。
図5(E)に示す加工部材は、溝部の上面形状が、矩形の二つの角に丸みを帯びた形状であり、該形状の丸みを帯びた二つの角および該二つの角と接続する一辺を含む領域を第2の溝部20bとし、残りの領域を第1の溝部20aとしている。また、溝部の上面形状の内側の該二つの角近傍に、それぞれ第3の溝部20cが1つずつ設けられている。第3の溝部20cの深さは、変形例2で説明する第2の溝部20bの深さと同様である。このような構成とすることで、第3の溝部20cに針状または鉤状の部材を引っかけて持ち上げることで、第1の領域41、第2の領域42、および分離層21の一部を容易に除去することができる。
[変形例3]
以下では、上述した回路基板とは異なる回路基板の作製方法例を示す。なお、ここでは上述の作製方法例との共通点は上記を援用できるため省略し、異なる点についてのみ以下より説明する。
本発明の一態様に係る加工部材を、図6(A)、(B)に模式的に示す。図6(A)は加工部材17の上面図であり、図6(B)は図6(A)の切断線X4−Y4における断面図である。図6(A)、(B)に示した加工部材17は図1(A)、(B)に示した加工部材17と同様の構成であるが、切断線の位置が異なる。本発明の一態様の回路基板の作製方法例について、図6(C)乃至(F)及び図7(A)、(B)を参照しながら説明する。
まず、刃30を用いて加工部材17に第1の溝部20aを形成する(図6(C)、(D)参照)。図6(C)に示すように、第1の溝部20aは分離層21の一部を内側に含むようにコの字状に設けられている。また、第1の溝部20aは第2の基板12の端部に達するように設けられている。
次に、加工部材17の一部を、刃31を用いて分断することにより除去する(図6(E)、(F)参照)。刃31は加工部材17を直線状に分断することができる。該分断は、分離層21の側面が露出するように行う。また該分断によって、分離層21と重畳する位置に、第2の基板12の第1の溝部20aと分断後の第2の基板12の端部により囲まれる領域と互いに重なる部分(以下、第3の領域43と表記する)、および接着層15の第1の溝部20aと分断後の第2の基板12の端部により囲まれる領域と互いに重なる部分(以下、第4の領域44と表記する)が形成される。
次に、加工部材17から、第3の領域43、第4の領域44、および分離層21の一部を除去する(図7(A)、(B)参照)。この時点で端子電極13の一部が露出し、開口51が形成される。また、この工程によって分離層21の一部が除去されるが、他の一部が加工部材17に残留する。
以上の工程によって、開口51において端子電極13が露出した回路基板10Dが完成する。なお、端子電極13に接続体52および外部電極53を形成した半導体装置もしくは発光装置も本発明の一態様である。図7(C)、(D)に、回路基板10Dに接続体52を介して外部電極53を接続した半導体装置もしくは発光装置の上面図および断面図を示す。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本発明の一態様の発光装置100の構成例について、図8乃至図12を用いて説明する。図8(A)は発光装置100の斜視図であり、図8(B)は、図8(A)中でA1−A2に一点鎖線で示す部位の断面図である。図8(A)においては、説明のため一部の要素を省略して図示してある。
[発光装置の構成例]
本実施の形態に示す発光装置100は、表示領域131を有する。また、表示領域131は、複数の画素130を有する。一つの画素130は、少なくとも一つの発光素子125を有する(図8参照)。
本実施の形態に示す発光装置100は、電極115、EL層117、電極118、隔壁114、および端子電極116を有する。また、端子電極116上に絶縁層141を有し、絶縁層141に設けられた開口において、電極115と端子電極116は電気的に接続されている。また、隔壁114は電極115上に設けられ、電極115および隔壁114上にEL層117が設けられ、EL層117上に電極118が設けられている。
基板111上には、接着層112、絶縁層119、および絶縁層141を介して発光素子125が設けられている。発光素子125は、電極115、EL層117、および電極118を含む。
また、絶縁層141に設けられた開口において、端子電極116上に分離層221が設けられている。本実施の形態では、分離層221は第1の層221aおよび第2の層221bを含む。
また、本実施の形態に示す発光装置100は、電極118上に接着層120を介して設けられた基板121を有する。また、基板121には、接着層122および絶縁層129を介して、遮光層264、着色層(「カラーフィルタ」ともいう。)266、およびオーバーコート層268が設けられている。
基板121の側から発光装置100に刃222を挿入して切削加工を行い、図9(A)、(B)に示すように、発光装置100の一部を除去して第1の溝部220aと第2の溝部220bを形成する。第2の溝部220bの深さは、第1の溝部220aの深さよりも大きい。このとき基板121のうち、第1の溝部220aと第2の溝部220bに囲まれた領域と互いに重なる部分を部位121aとする。そして部位121aおよび部位121aと重畳する端子電極116との間の各層(接着層122、絶縁層129、接着層120および分離層221)を発光装置100から分離することで、端子電極116の一部を露出させることができる。図10(A)は、部位121aおよび部位121aと重畳する端子電極116との間の各層の分離途中の様子を示す斜視図である。また図10(B)は、部位121aおよび部位121aと重畳する端子電極116との間の各層を発光装置100から除去し、端子電極116上に残留した層を除去した後の様子を示す斜視図である。また、図10(C)は、図10(B)中にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図である。なお、図8(A)、(B)に示す、該切削加工を行う前の発光装置100を加工部材と呼ぶこともできる。
部位121aおよび部位121aと重畳する端子電極116との間の各層を除去することで、開口132が形成され、端子電極116の一部を露出させることができる。本実施の形態では、部位121aおよび部位121aと重畳する端子電極116との間の各層を分離した後に端子電極116上に分離層の一部(第1の層221a)が残留するため、第1の層221aを端子電極116上から除去することで端子電極116の一部を露出させることができる。分離層221を単層とし、かつ端子電極116との密着性が低い材料とすることで、端子電極116上に残留した第1の層221aを除去する工程を省略することができる。なお、このとき基板121に形成された開口132の上面形状の輪郭132aは矩形である(図10(B)参照)。
また、図11に示すように、開口132において、外部電極124と端子電極116が、異方性導電接続層123を介して電気的に接続することができる。よって、基板111の開口132と重畳する領域を「外部電極接続領域」ともいう。図11(A)は外部電極124が接続された発光装置100の斜視図であり、図11(B)は、図11(A)中にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図である。
なお、図12に示すように、発光装置100の構成を、遮光層264、着色層266、およびオーバーコート層268を設けない構成とすることもできる。図12(A)は、遮光層264、着色層266、およびオーバーコート層268を設けない発光装置100の斜視図であり、図12(B)は、図12(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図である。
特に、EL層117を、画素ごとに射出する光151の色を変える、いわゆる塗り分け方式で形成する場合は、着色層266を設けてもよいし、設けなくてもよい。
遮光層264、着色層266、およびオーバーコート層268のうち、少なくとも1つまたは全てを設けないことで、発光装置100の製造コストの低減、または、歩留まりの向上などを実現することができる。また、着色層266を設けないことで光151を効率よく射出することができるので、輝度の向上や、消費電力の低減などを実現することができる。
一方、遮光層264、着色層266、およびオーバーコート層268を設けると、外光の映り込みを軽減し、コントラスト比の向上や、色再現性の向上などを実現することができる。
なお、発光装置100をボトムエミッション構造の発光装置とする場合は、基板111側に、遮光層264、着色層266、およびオーバーコート層268を設けてもよい。また、発光装置100をデュアルエミッション構造の発光装置とする場合は、基板111側および基板121側のどちらか一方または両方に遮光層264、着色層266、およびオーバーコート層268を設けてもよい。
また、発光素子125と端子電極116の間に、発光素子125に供給する信号を制御するスイッチング素子を設けてもよい。例えば、発光素子125と端子電極116の間に、トランジスタを設けてもよい。
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。発光素子125と端子電極116の間にトランジスタを設けることで、表示領域131の大面積化や、高精細化を容易とすることができる。なお、トランジスタなどのスイッチング素子に限らず、抵抗素子、インダクタ、キャパシタなどを表示領域131内に設けることもできる。
〔基板111、121〕
基板111および基板121としては、有機樹脂材料や可撓性を有する程度の厚さのガラス材料などを用いることができる。発光装置100を下面射出型の発光装置、または両面射出型の発光装置とする場合には、基板111にEL層117からの発光に対して透光性を有する材料を用いる。また、発光装置100を上面射出型の発光装置、または両面射出型の発光装置とする場合には、基板121にEL層117からの発光に対して透光性を有する材料を用いる。
基板111および基板121に用いることが可能な可撓性および可視光に対する透光性を有する材料として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、アラミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エポキシ樹脂などを用いることができる。また、これらの材料を混合または積層して用いてもよい。なお、基板111および基板121は、それぞれ同じ材料を用いてもよいし、互いに異なる材料を用いてもよい。また、基板111及び基板121として、金属材料(合金材料を含む)を用いてもよい。
また、基板121および基板111の熱膨張係数は、好ましくは30ppm/K以下、さらに好ましくは10ppm/K以下とする。また、基板121および基板111の表面に、窒化シリコンや酸化窒化シリコン等の窒素と珪素を含む膜や窒化アルミニウム等の窒素とアルミニウムを含む膜のような透水性の低い保護膜を成膜しても良い。なお、基板121および基板111として、繊維体に有機樹脂が含浸された構造物(所謂、プリプレグとも言う)を用いてもよい。
〔絶縁層119〕
絶縁層119は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム及び酸化タンタルなどの酸化物材料や、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物材料などを、単層または多層で形成することができる。例えば、絶縁層119を、酸化シリコンと窒化シリコンを積層した2層構造としてもよいし、上記材料を組み合わせた5層構造としてもよい。絶縁層119は、スパッタリング法やCVD法、熱酸化法、塗布法、印刷法等を用いて形成することが可能である。
絶縁層119により、基板111や接着層112などから発光素子125への不純物元素の拡散を防止、または低減することができる。
なお、本明細書中において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
〔端子電極116〕
端子電極116は、導電性材料を用いて形成することができる。例えば、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、鉄、コバルト、パラジウム等から選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、または上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いることができる。また、上記金属材料や合金に、ランタン、ネオジム、又はゲルマニウム等が添加されていてもよい。また、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金、アルミニウム、ニッケル、及びランタンの合金(Al−Ni−La)等のアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や、銀と銅の合金、銀とパラジウムと銅の合金(Ag−Pd−Cu、APCとも記す)、銀とマグネシウムの合金等の銀を含む合金を用いて形成することができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。導電性材料の形成方法は特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種形成方法を用いることができる。
また、端子電極116は、インジウム錫酸化物(以下、「ITO」ともいう。)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したITOなどの酸素を有する導電性材料を適用することもできる。また、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステンなどの窒素を含む導電性材料を適用することもできる。また、上記酸素を有する導電性材料と、上記金属元素を含む材料の積層構造とすることもできる。
端子電極116は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム層の単層構造、アルミニウム層上にチタン層を積層する二層構造、窒化チタン層上にチタン層を積層する二層構造、窒化チタン層上にタングステン層を積層する二層構造、窒化タンタル層上にタングステン層を積層する二層構造、チタン層と、そのチタン層上にアルミニウム層を積層し、さらにその上にチタン層を形成する三層構造などがある。また、端子電極116に、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数の元素を含むアルミニウム合金を用いてもよい。
〔絶縁層141〕
絶縁層141は、絶縁層119と同様の材料および方法を用いて形成することができる。
〔電極115〕
電極115は、後に形成されるEL層117が発する光を効率よく反射する導電性材料を用いて形成することが好ましい。なお、電極115は単層に限らず、複数層の積層構造としてもよい。例えば、電極115を陽極として用いる場合、EL層117と接する層を、ITOなどの透光性を有する層とし、その層に接して反射率の高い層(アルミニウム、アルミニウムを含む合金、または銀など)を設けてもよい。
なお、本実施の形態においては、トップエミッション構造の発光装置について例示しているが、発光装置をボトムエミッション構造(下面射出構造)、またはデュアルエミッション構造(両面射出構造)の発光装置とする場合においては、電極115に透光性を有する導電性材料を用いればよい。
〔隔壁114〕
隔壁114は、隣接する電極118間の電気的ショートを防止する機能を有する。また、後述するEL層117の形成にメタルマスクを用いる場合、メタルマスクが発光素子125を形成する領域に接触しないようにする機能も有する。隔壁114は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂などの有機樹脂材料や、酸化シリコンなどの無機材料で形成することができる。隔壁114は、その側壁がテーパーまたは連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。隔壁114の側壁をこのような形状とすることで、後に形成されるEL層117や電極118の被覆性を良好なものとすることができる。
〔EL層117〕
EL層117の構成については、実施の形態4で説明する。
〔電極118〕
本実施の形態では電極118を陰極として用いる。電極118は、後述するEL層117に電子を注入できる仕事関数の小さい材料を用いて形成することが好ましい。また、仕事関数の小さい金属単体ではなく、仕事関数の小さいアルカリ金属、またはアルカリ土類金属を数nm形成した層を緩衝層として形成し、その上にアルミニウムなどの金属材料、ITO等の導電性を有する酸化物材料、または半導体材料を用いて形成してもよい。また、緩衝層として、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、または、マグネシウム−銀等を用いることもできる。
また、電極118を介して、EL層117が発する光を取り出す場合は、電極118は、可視光に対し透光性を有することが好ましい。
〔接着層120、112、122〕
接着層120、接着層112、および接着層122としては、光硬化型の接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、または嫌気型接着剤を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂等を用いることができる。トップエミッション構造の場合は接着層120に、ボトムエミッション構造の場合は接着層112に、光の波長以下の大きさの乾燥剤(ゼオライト等)や、屈折率の大きいフィラー(酸化チタンや、ジルコニウム等)を混合すると、EL層117が発する光の取り出し効率が低下しにくく、また、発光装置の信頼性が向上するため好適である。
〔異方性導電接続層123〕
異方性導電接続層123は、様々な異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いて形成することができる。
異方性導電接続層123は、熱硬化性、又は熱硬化性及び光硬化性の樹脂に導電性粒子を混ぜ合わせたペースト状又はシート状の材料を硬化させたものである。異方性導電接続層123は、光照射や熱圧着によって異方性の導電性を示す材料となる。異方性導電接続層123に用いられる導電性粒子としては、例えば球状の有機樹脂をAuやNi、Co等の薄膜状の金属で被覆した粒子を用いることができる。
〔絶縁層129〕
絶縁層129は、絶縁層119と同様の材料および方法を用いて形成することができる。
[発光装置の作製方法例]
次に、図13乃至図19を用いて、本発明の一態様である、外部電極を接続した発光装置100の作製方法を例示する。図16を除き、図13乃至図19は、図8乃至図11中、A1−A2の一点鎖線で示す部位の断面に相当する。
〔剥離層113の形成〕
まず、支持基板101上に剥離層113を形成する。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、本実施の形態の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、などがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。
剥離層113は、タングステン、モリブデン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、シリコンから選択された元素、または該元素を含む合金材料、または該元素を含む化合物材料を用いて形成することができる。また、これらの材料を単層又は積層して形成することができる。なお、剥離層113の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれの場合でもよい。また、剥離層113を、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化インジウム、ITO、酸化インジウム亜鉛、またはインジウムとガリウムと亜鉛を含む酸化物(In−Ga−Zn−O、IGZO)等の金属酸化物を用いて形成することもできる。
剥離層113は、スパッタリング法やCVD法、塗布法、印刷法等により形成できる。なお、塗布法はスピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法を含む。
剥離層113を単層で形成する場合、タングステン、モリブデン、またはタングステンとモリブデンを含む材料を用いることが好ましい。または、剥離層113を単層で形成する場合、タングステンの酸化物若しくは酸化窒化物、モリブデンの酸化物若しくは酸化窒化物、またはタングステンとモリブデンを含む材料の酸化物若しくは酸化窒化物を用いることが好ましい。
なお、剥離層113の形成後に、剥離層113の表面を、酸素を有する雰囲気または酸素を有するプラズマ雰囲気に曝してもよい。剥離層113の表面を酸化することで、後の工程で行われる支持基板101の剥離を容易とすることができる。
本実施の形態では、支持基板101にガラス基板を用いる。また、支持基板101上に形成する剥離層113として、スパッタリング法によりタングステン膜を形成する。
〔絶縁層119の形成〕
続いて、剥離層113上に絶縁層119を形成する。
絶縁層119としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることができる。また絶縁層119としては、上記無機絶縁材料を含む層を単層で、もしくは積層して用いることができる。
特に、絶縁層119として2層以上の積層構造とし、そのうち少なくとも1層には加熱により水素を放出する層を用い、剥離層113に最も近い層には水素を透過する層を用いることが好ましい。例えば、剥離層113に近い方から酸化窒化シリコンを含む層と、窒化シリコンを含む層の積層構造とする。本実施の形態では、絶縁層119として、支持基板101側から、厚さ600nmの酸化窒化シリコン、厚さ200nmの窒化シリコン、厚さ200nmの酸化窒化シリコン、厚さ140nmの窒化酸化シリコン、厚さ100nmの酸化窒化シリコンの積層膜をプラズマCVD法により形成する。
絶縁層119は、スパッタリング法、プラズマCVD法などの成膜方法により形成できる。特に、水素を含む成膜ガスを用いたプラズマCVD法により成膜することが好ましい。
ここで、絶縁層119の成膜時に剥離層113の表面が酸化されることにより、剥離層113と絶縁層119の間に酸化物層が形成される。当該酸化物層は、剥離層113に含まれる金属の酸化物を含む層である。好ましくは、タングステン酸化物を含む層とする。
タングステン酸化物は一般にWO(3−x)で表記され、代表的にはWO3、W2O5、W4O11、WO2といった様々な組成をとりうる不定比性化合物である。またチタン酸化物(TiO(2−x))、やモリブデン酸化物(MoO(3−x))も不定比性化合物である。
この段階における酸化物層は、酸素を多く含む状態であることが好ましい。例えば剥離層113としてタングステンを用いた場合には、酸化物層がWO3を主成分とするタングステン酸化物であることが好ましい。
ここで、絶縁層119の形成前に、剥離層113の表面に対して酸化性ガス、好ましくは一酸化二窒素ガスを含む雰囲気下でプラズマ処理を施し、剥離層113の表面に予め酸化物層を形成することもできる。このような方法を用いると、酸化物層の厚さをプラズマ処理の条件を異ならせることで変化させることができ、プラズマ処理を行わない場合に比べて酸化物層の厚さの制御性を高めることができる。
酸化物層の厚さは、例えば0.1nm以上100nm以下、好ましくは0.5nm以上20nm以下とする。なお、酸化物層が極めて薄い場合には、断面観察像では確認できない場合がある。
〔加熱処理〕
続いて、加熱処理を行い、酸化物層を変質させる。加熱処理を行うことにより、絶縁層119から水素が放出され、酸化物層に供給される。
酸化物層に供給された水素により、酸化物層内の金属酸化物が還元され、酸化物層中に酸素の組成の異なる領域が複数混在した状態となる。例えば、剥離層113としてタングステンを用いた場合には、酸化物層中のWO3が還元されてこれよりも酸素の組成の少ない状態(例えばWO2など)が生成され、これらが混在した状態となる。このような金属酸化物は酸素の組成に応じて異なる結晶構造を示すため、酸化物層内に酸素の組成が異なる複数の領域を形成することで酸化物層の機械的強度が脆弱化する。その結果、酸化物層の内部で崩壊しやすい状態が実現され、後の剥離工程における剥離性を向上させることができる。
加熱処理は、絶縁層119から水素が脱離する温度以上、支持基板101の軟化点以下で行えばよい。また酸化物層内の金属酸化物と水素の還元反応が生じる温度以上で行うことが好ましい。例えば、剥離層113にタングステンを用いる場合には、420℃以上、450℃以上、600℃以上、または650℃以上の温度で加熱する。
加熱処理の温度が高いほど、絶縁層119からの水素の脱離量が高まるため、その後の剥離性を向上させることができる。しかし、支持基板101の耐熱性や、生産性を考慮して加熱温度を低くしたい場合には、上述のように予め剥離層113に対してプラズマ処理を施して酸化物層を形成することにより、加熱処理の温度を低くしても高い剥離性を実現できる。
〔端子電極116の形成〕
次に、絶縁層119上に端子電極116を形成するための導電層126を形成する。本実施の形態では、導電層126として絶縁層119上にスパッタリング法により二層のチタンの間にアルミニウムを挟んだ三層の金属膜を形成する(図13(A)参照)。
続いて、導電層126上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、導電層126を所望の形状にエッチングして、端子電極116を形成することができる。レジストマスクの形成は、リソグラフィ法、印刷法、インクジェット法等を適宜用いて行うことができる。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
導電層126のエッチングは、ドライエッチング法でもウェットエッチング法でもよく、両方を用いてもよい。ウェットエッチング法により、導電層126のエッチングを行う場合は、エッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液や、シュウ酸を含む溶液や、リン酸を含む溶液などを用いることができる。エッチング処理終了後に、レジストマスクを除去する(図13(B)参照)。
〔絶縁層127の形成〕
次に、端子電極116上に絶縁層127を形成する(図13(C)参照)。本実施の形態では、絶縁層127としてプラズマCVD法により酸化窒化シリコンを形成する。
次に、絶縁層127上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、端子電極116と重なる絶縁層127の一部を選択的に除去し、開口128および開口137を有する絶縁層141を形成する(図13(D)参照)。絶縁層127のエッチングは、ドライエッチング法でもウェットエッチング法でもよく、両方を用いてもよい。
〔電極115の形成〕
次に、絶縁層141上に電極115を形成するための導電層145を形成する(図13(E)参照)。導電層145は、導電層126と同様の材料および方法で形成することができる。
次に、導電層145上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、導電層145の一部を選択的に除去し、電極115を形成する(図14(A)参照)。導電層145のエッチングは、ドライエッチング法でもウェットエッチング法でもよく、両方を用いてもよい。本実施の形態では、導電層145(電極115)を、銀の上にITOを積層した材料で形成する。電極115と端子電極116は、開口128において電気的に接続する。
〔隔壁114の形成〕
次に、隔壁114を形成する(図14(B)参照)。本実施の形態では、隔壁114を感光性の有機樹脂材料を用いて塗布法で形成し、所望の形状に加工することにより形成する。本実施の形態では、隔壁114を、感光性を有するポリイミド樹脂を用いて形成する。
〔EL層117、電極118及び分離層221の形成〕
本実施の形態では、EL層117と同一の材料で形成される第1の層221a及び電極118と同一の材料で形成される第2の層221bの2層の積層を有する分離層221を形成する。このようにすることで、製造工程を増やすことなく分離層221を形成できるため好ましい。
隔壁114を形成した後に、EL層117を電極115及び隔壁114上に形成し、同時に端子電極116上の開口137に第1の層221aを形成する(図14(C)参照)。
次に、電極118をEL層117上に形成し、同時に第2の層221bを第1の層221a上に形成する。本実施の形態では、電極118及び第2の層221bとしてマグネシウムと銀の合金を用いる。電極118及び第2の層221bは、蒸着法、スパッタリング法等で形成することができる(図14(D)参照)。
このとき、第1の層221aおよび第2の層221bは、開口137における端子電極116上および開口137近傍の絶縁層141上に形成する。すなわち、端子電極116が開口137において露出している領域と、第1の層221aと第2の層221bとの界面の一部とが互いに重なるように第1の層221aおよび第2の層221bを形成する。図14(D)に示すように、第1の層221aが第2の層221bの端部と重なるように形成されることが好ましい。
なお、端子電極116上の開口137に形成する分離層221は、単層で形成してもよく、二層以上の積層で形成してもよい。分離層221を単層で形成する場合、端子電極116と密着性の低い材料を用いることができる。また、分離層221を積層で形成する場合は、積層を構成する複数の層の間で密着性が低くなるように、複数の材料を用いることができる。
本実施の形態では、支持基板101上に発光素子125を形成した基板を、素子基板171と呼ぶ。
続いて、対向基板181の作製方法について説明する。
〔剥離層143の形成〕
まず、支持基板102上に剥離層143を形成する(図15(A)参照。)。支持基板102は、支持基板101と同様の材料を用いて形成することができる。なお、支持基板101と支持基板102は、それぞれ同じ材料を用いてもよいし、互いに異なる材料を用いてもよい。また、剥離層143は、剥離層113と同様に形成することができる。支持基板102と剥離層143の間に絶縁層を設けてもよい。本実施の形態では、支持基板102にガラス基板を用いる。また、支持基板102上に形成する剥離層143として、スパッタリング法によりタングステンを形成する。
なお、剥離層143の形成後に、剥離層143の表面を、酸素を有する雰囲気または酸素を有するプラズマ雰囲気に曝してもよい。剥離層143の表面を酸化することで、後の工程で行われる支持基板102の剥離を容易とすることができる。
〔絶縁層129の形成〕
次に、剥離層143上に絶縁層129を形成する(図15(A)参照。)。絶縁層129は、絶縁層119と同様の材料および方法で形成することができる。また、絶縁層129の形成後に、前述した絶縁層119を形成した後と同様の加熱処理を行ってもよい。
なお、絶縁層129を形成した後の加熱処理の処理温度や処理時間を、絶縁層119を形成した後の加熱処理と異なる条件で行ってもよい。後に記述する支持基板101の剥離の剥離性と、支持基板102の剥離の剥離性とを異ならせることで、基板を剥離する工程における歩留りを向上することができる。というのも、支持基板101の剥離性と支持基板102の剥離性が異なる時に、剥離性の高い基板から先に剥離を行うことで、一方の基板の剥離の最中に他方の基板の剥離が始まってしまうことを抑制しやすくなるからである。
例えば、絶縁層129を形成した後の加熱処理を、絶縁層119を形成した後の加熱処理の温度よりも低い温度かつ/または短い時間で行うことで、支持基板101を先に剥離する途中で支持基板102が同時に剥離されることを抑制できる。また、剥離層113の形成後に剥離層113の表面を、酸素を有する雰囲気または酸素を有するプラズマ雰囲気に曝し、剥離層143の形成後には同様の処理を短い時間で行う、または行わないことによっても、支持基板101を先に剥離する途中で支持基板102が同時に剥離されることを抑制できる。
本実施の形態では、絶縁層129として、支持基板102側から、厚さ200nmの酸化窒化シリコン、厚さ140nmの窒化酸化シリコン、厚さ100nmの酸化窒化シリコンの積層膜をプラズマCVD法により形成する。
〔遮光層264の形成〕
次に、絶縁層129上に、遮光層264を形成するための層を形成する。該層は、単層構造であっても2層以上の積層構造であってもよい。該層に用いることができる材料として、例えば、クロム、チタン、またはニッケルなどを含む金属材料、例えば、クロム、チタン、またはニッケルなどを含む酸化物材料などが挙げられる。
該層を金属材料や酸化物材料で形成する場合は、該層上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、該層を所望の形状にエッチングして、遮光層264を形成することができる(図15(B)参照)。また、カーボンブラックを分散した高分子材料を用いると、インクジェット法により絶縁層129上に遮光層264を直接描画することができる。
〔着色層266の形成〕
次に、絶縁層129上に、着色層266を形成する(図15(C)参照)。着色層266は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を用いて、それぞれ所望の位置に形成する。この時、着色層266の一部が遮光層264と重なるように設けることが好ましい。画素毎に着色層266の色を変えることで、カラー表示を行うことができる。
ここで、カラー表示を実現するための画素構成の一例を、図16を用いて説明する。図16(A)乃至(C)は、図8(A)の表示領域131中に示した領域170を拡大した平面図である。例えば、図16(A)に示すように、3つの画素130を1つの画素140として用いて、3つの画素130それぞれに対応する着色層266を、赤、緑、青、とすることで、フルカラー表示を実現することができる。なお、図16(A)では、赤色の光を発する画素130を画素130Rと示し、緑色の光を発する画素130を画素130Gと示し、青色の光を発する画素130を画素130Bと示している。また、着色層266の色は、赤、緑、青、以外であってもよく、例えば、着色層266に黄、シアン、マゼンダなどを用いてもよい。
また、図16(B)に示すように、4つの画素130を副画素として機能させて、まとめて1つの画素140として用いてもよい。例えば、4つの画素130それぞれに対応する着色層266を、赤、緑、青、黄としてもよい。なお、図16(B)では、赤色の光を発する画素130を画素130Rと示し、緑色の光を発する画素130を画素130Gと示し、青色の光を発する画素130を画素130Bと示し、黄色の光を発する画素130を画素130Yと示している。1つの画素140として用いる画素130の数を増やすことで、特に色の再現性を高めることができる。よって、発光装置の表示品位を高めることができる。
また、4つの画素130それぞれに対応する着色層266を、赤、緑、青、白としてもよい。白の光を発する画素130(画素130W)を設けることで、表示領域の発光輝度を高めることができる。なお、白の光を発する画素130の場合は、着色層266を設けなくてもよい。白の着色層266を設けないことで、着色層266透過時の輝度低下がなくなるため、発光装置の消費電力を低減することができる。一方で、白の着色層266を設けることにより、白色光の色温度を制御することができる。よって、発光装置の表示品位を高めることができる。
なお、各画素130の占有面積や形状などは、それぞれ同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、配列方法として、ストライプ配列以外の方法でもよい。例えば、デルタ配列、ベイヤー配列、ペンタイル配列などに適用することもできる。ペンタイル配列に適用した場合の例を、図16(C)に示す。
〔オーバーコート層268の形成〕
次に、遮光層264および着色層266上にオーバーコート層268を形成する(図15(D)参照)。
オーバーコート層268としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の有機絶縁層を用いることができる。オーバーコート層268を形成することによって、例えば、着色層266中に含まれる不純物等を発光素子125側に拡散することを抑制することができる。ただし、オーバーコート層268は、必ずしも設ける必要はなく、オーバーコート層268を形成しない構造としてもよい。
また、オーバーコート層268として透光性を有する導電膜を形成してもよい。これにより、発光素子125から発せられた光151を透過し、かつ、イオン化した不純物の透過を防ぐことができる。
透光性を有する導電膜は、例えば、酸化インジウム、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などを用いて形成することができる。また、グラフェン等の他、透光性を有する程度に薄く形成された金属膜を用いてもよい。
本実施の形態では、支持基板102上に着色層266などを形成した基板を、対向基板181と呼ぶ。以上の工程により対向基板181を形成することができる。なお、図12に示す発光装置100を作製する場合は、対向基板181に遮光層264、着色層266及びオーバーコート層268を設ける工程を省略する。
〔素子基板171と対向基板181を貼り合せる〕
次に、素子基板171と対向基板181を、接着層120を介して貼り合せる。この時、素子基板171上の発光素子125と、対向基板181上の着色層266が向かい合うように配置する(図17(A)参照)。
〔支持基板101の剥離〕
次に、素子基板171が有する支持基板101を、剥離層113とともに絶縁層119から剥離する(図17(B)参照)。剥離方法としては、機械的な力を加えること(人間の手や治具で引き剥がす処理や、ローラーを回転させながら分離する処理、超音波等)を用いて行えばよい。たとえば、素子基板171の側面から剥離層113と絶縁層119の界面に鋭利な刃物またはレーザ光照射等で切り込みをいれ、その切り込みに水を注入する。毛細管現象により水が剥離層113と絶縁層119の界面にしみこむことにより、剥離層113とともに支持基板101を絶縁層119から容易に剥離することができる。
〔基板111の貼り合わせ〕
次に、接着層112を介して基板111を絶縁層119に貼り合わせる(図18(A)参照)。
〔支持基板102の剥離〕
次に、対向基板181が有する支持基板102を、剥離層143とともに絶縁層129から剥離する。支持基板102の剥離は、支持基板101の剥離と同様の方法を用いることができる。なお、支持基板101の剥離性が支持基板102の剥離性よりも低い場合は、支持基板102を先に剥離することで、基板を剥離する工程における歩留りを向上することができる。
〔基板121の貼り合わせ〕
次に、接着層122を介して基板121を絶縁層129に貼り合わせる(図18(B)参照)。
〔第1の溝部220aと第2の溝部220bの形成〕
次に、基板121の側から刃222による切削加工を行い、第1の溝部220aと第2の溝部220bを形成する(図19(A)参照)。図19(A)の断面図に対応する斜視図は図9(A)である。
第1の溝部220aと第2の溝部220bは刃222によって基板121等を切削しながら連続して形成することができる。すなわち、第1の溝部220aと第2の溝部220bは連結している。図9(A)に示した第1の溝部220aと第2の溝部220bにより囲まれる領域は、分離層221の一部と互いに重なる。このとき基板121のうち、第1の溝部220aと第2の溝部220bに囲まれた領域と互いに重なる部分を部位121aとする。
本作製方法例では、刃222によって形成された溝部の上面形状が矩形であり、該矩形の一辺の一部に相当する領域が第2の溝部220bであり、残りの領域が第1の溝部220aである場合を示している(図9(A)参照)。
第1の溝部220aは、基板121、接着層122、絶縁層129および接着層120にわたって形成されている。また第2の溝部220bは、基板121、接着層122、絶縁層129、接着層120、分離層221および絶縁層141にわたって形成されている(図19(A)参照)。すなわち、第2の溝部220bの深さ(基板121の上面から第2の溝部220bの底面までの距離)は、第1の溝部220aの深さ(基板121の上面から第1の溝部220aの底面までの距離)よりも大きい。このような加工を施すことで、次に示す工程において端子電極116の一部を露出させることが容易となる。
第2の溝部220bは、次に示す工程において、部位121aおよび部位121aと端子電極116との間の各層(接着層122、絶縁層129、接着層120および第2の層221b)のうち部位121aと重畳する部分(以下、被除去層とも表記する)を除去する際の起点となる。第2の溝部220bが形成されることで、第1の層221aと第2の層221bの界面が第2の溝部220bの側面において露出する。第1の層221aと第2の層221bの界面が露出していることで、被除去層の除去において、接着層120など周囲の層にダメージを与えることを抑制できる。このことから、第2の溝部220bは少なくとも基板121、接着層122、絶縁層129、接着層120及び分離層221に形成されることが好ましい。また第2の溝部220bの底面が第1の層221aと第2の層221bの界面よりも深い位置、たとえば絶縁層141に達していてもよい。また、第2の溝部220bが絶縁層141やその下層を貫通して形成されてもよい。第2の溝部220bの占める領域は発光装置100に対して小さいため、発光装置100の強度を下げることなく第2の溝部220bを形成することができる。
また、第2の溝部220bの側面において露出した第1の層221aと第2の層221bの界面から剥離が始まると、第1の溝部220aがガイドとなって、第1の溝部220aと第2の溝部220bに囲まれた領域で被除去層の除去が進行する。第1の層221aと第2の層221bとの界面の密着性が低いことから、第1の溝部220aの深さは第2の溝部220bの深さよりも小さくすることができる。第1の溝部220aの深さは、被除去層の厚さの1/3以上、好ましくは半分以上であればよい。または、第1の溝部220aは、少なくとも基板121に形成されていればよい。第1の溝部220aの深さを小さくすることで、端子電極116にダメージを与えずに第1の溝部220aを形成することができる。
なお、刃222を有する装置の加工精度や発光装置100を構成する各層の膜厚によっては、第1の溝部220aおよび第2の溝部220bを狙い通りの深さで形成することが困難な場合がある。しかし上述のように、第2の溝部220bを形成する領域には端子電極116がなく、また第1の溝部220aは少なくとも基板121に形成されていればよい。このことから、本発明の一態様の発光装置の作製方法は溝部の形成において刃222の深さ方向の加工マージンが広いといえる。すなわち本発明の一態様の発光装置の作製方法によって、高い歩留りで発光装置100を作製することができる。
刃222として用いることができる工具および該工具の材料は、実施の形態1の刃30についての記述を参照できる。
〔開口132の形成〕
次に、第1の層221aと第2の層221bの界面における密着性が低いことを利用して、被除去層を発光装置100から除去する(図19(B)参照)。前述したように、第2の溝部220bの側面において露出した第1の層221aと第2の層221bの界面から剥離を始めることで、該除去を容易に行うことができる。この時点で、端子電極116上には第2の層221bが残留する。また、上面から見て、部位121aより外側にある第1の層221aおよび第2の層221bの一部も、発光装置100に残留する。
被除去層の除去は、機械的な力を加えることで行えばよい。例えば、部位121aに粘着テープ等を接着させ、引きはがすことで分離できる。また、回転軸を有し、表面に吸着機構を有する円柱等の構造体を部位121a上に走らせ、巻き取りながら引きはがしてもよい。
また例えば、第2の溝部220bの側からピンセットやアームなどで部位121aおよび部位121aと重畳する端子電極116との間の各層を把持し、持ち上げることで除去を行ってもよい。あるいは、第2の溝部220bに向けて高圧で気体を噴射し、部位121aおよび部位121aと重畳する端子電極116との間の各層を浮き上がらせることで除去を行ってもよい。
また、第2の溝部220b近傍の部位121a等に設けた開口に針状または鉤状の部材を引っかけて持ち上げることで除去を行ってもよい。該開口は、刃222で第1の溝部220aと第2の溝部220bを形成する際に、同時に形成することができる。このとき、該開口は1つであっても複数であってもよい。
最後に、端子電極116上に残留した第1の層221aを、アセトンなどの有機溶媒を用いて除去する。なお、第1の層221aが端子電極116上に残存していても、端子電極116と異方性導電接続層123との間の電気的接続に問題が生じない場合には、端子電極116上に残存した第1の層221aを除去しなくてもよい。
なお、これらの被除去層を除去する方法に応じて、第1の溝部220aと第2の溝部220bにより囲まれる領域の上面形状を変更することが好ましい。この場合、第1の溝部220aと第2の溝部220bにより囲まれる領域が分離層221と重なる限りにおいて、該上面形状を自由に変更することができる。また、刃222によって第1の溝部220aと第2の溝部220bを形成するため、該変更を容易に行うことができる。
図20(A)、(B)に示す発光装置150は、図10(B)、(C)に示す発光装置100と比較して、開口132の上面形状の輪郭132aの形状が異なる。本発明の一態様の発光装置は、端子電極116と、端子電極116と電気的に接続された発光素子125と、端子電極116上の分離層221と、端子電極116および発光素子125を支持する基板111と、端子電極116および発光素子125を基板111との間で接着層120を介して挟持する基板121と、を有し、分離層221、接着層120及び基板121に開口132が設けられ、開口132が端子電極116の一部と重なり、かつ開口132の上面形状の輪郭132aが複数の角を有し、該複数の角のうち少なくとも1つが丸みを帯びた形状である。このような構成とすることで、発光装置150が可撓性を有する場合に、発光装置150の運搬または使用中に開口132近傍を湾曲させた際に開口132の一部からクラックが発生することを抑制できる場合がある。ここで、該一の角の丸みは、刃222の外径よりも十分大きな曲率半径を有する。なお、図20(A)に示す発光装置150の開口132の形成方法については、実施の形態1において説明した回路基板10Bの作製方法を参照できる。
〔外部電極124の形成〕
なお、開口132に異方性導電接続層123を形成し、異方性導電接続層123上に、発光装置100に電力や信号を入力するための外部電極124を形成してもよい(図11(A)、(B)参照)。異方性導電接続層123を介して外部電極124と端子電極116を電気的に接続する。このようにして、発光装置100に電力や信号を入力することが可能となる。外部電極124として、例えばFPCを用いることができる。また、外部電極124として金属線を用いることもできる。該金属線と端子電極116の接続は、異方性導電接続層123を用いてもよいが、異方性導電接続層123を用いずに、ワイヤーボンディング法により行うことができる。また、該金属線と端子電極116の接続をハンダ付けで行ってもよい。なお、本作製方法例では開口132を異方性導電接続層123が隙間なく充填する例を示しているが、これに限られない。異方性導電接続層123は、少なくとも端子電極116と電気的に接続すべき外部電極124が有する端子とを介在する領域に設ければよく、開口132の一部に空洞が残っていてもよい。
本発明の一態様の発光装置または表示装置は、様々な形態を用いること、または様々な表示素子を有することが出来る。表示素子は、例えば、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)などを含むEL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物および無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、プラズマディスプレイ(PDP)、電子放出素子、液晶素子、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)やデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)素子、MIRASOL(登録商標)ディスプレイ、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)素子、圧電セラミックディスプレイなどのMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、エレクトロウェッティング素子などが挙げられる。これらの他にも、電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していても良い。また、表示素子として量子ドットを用いてもよい。EL素子を用いた発光装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。量子ドットを用いた表示装置の一例としては、量子ドットディスプレイなどがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。なお、LEDを用いる場合、LEDの電極や窒化物半導体の下に、グラフェンやグラファイトを配置してもよい。グラフェンやグラファイトは、複数の層を重ねて、多層膜としてもよい。このように、グラフェンやグラファイトを設けることにより、その上に、窒化物半導体、例えば、結晶を有するn型GaN半導体層などを容易に成膜することができる。さらに、その上に、結晶を有するp型GaN半導体層などを設けて、LEDを構成することができる。なお、グラフェンやグラファイトと、結晶を有するn型GaN半導体層との間に、AlN層を設けてもよい。なお、LEDが有するGaN半導体層は、MOCVDで成膜してもよい。ただし、グラフェンを設けることにより、LEDが有するGaN半導体層は、スパッタ法で成膜することも可能である。
例えば、本明細書等において、画素に能動素子を有するアクティブマトリクス方式、または、画素に能動素子を有しないパッシブマトリクス方式を用いることが出来る。
アクティブマトリクス方式では、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)として、トランジスタだけでなく、さまざまな能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いることが出来る。例えば、MIM(Metal Insulator Metal)、又はTFD(Thin Film Diode)などを用いることも可能である。これらの素子は、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる。または、これらの素子は、素子のサイズが小さいため、開口率を向上させることができ、低消費電力化や高輝度化をはかることが出来る。
アクティブマトリクス方式以外のものとして、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないパッシブマトリクス型を用いることも可能である。能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないため、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる。または、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないため、開口率を向上させることができ、低消費電力化、又は高輝度化などを図ることが出来る。
なお、本明細書等において、発光装置を用いて、様々な表示を行う場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、情報を表示しないようにしてもよい。一例としては、発光装置のかわりに、照明装置として用いてもよい。照明装置に適用することにより、デザイン性に優れたインテリアとして、活用することができる。または、様々な方向を照らすことができる照明として活用することが出来る。または、発光装置のかわりに、バックライトやフロントライトなどの光源として用いてもよい。つまり、発光装置のための照明装置として活用してもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態に示した発光装置100と異なる構成を有する発光装置200について、図21乃至図24を用いて説明する。図21(A)は発光装置200の斜視図であり、図21(B)は、図21(A)中にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図である。
[発光装置の構成]
本実施の形態に示す発光装置200は、表示領域231と、周辺回路251を有する。また、発光装置200は、電極115、EL層117、電極118を含む発光素子125と、端子電極116を有する。発光素子125は、表示領域231中に複数形成されている。また、各発光素子125には、発光素子125の発光量を制御するトランジスタ232が接続されている。
端子電極116は、開口132に形成された異方性導電接続層123を介して外部電極124と電気的に接続されている。また、端子電極116は、周辺回路251に電気的に接続されている。
開口132は、実施の形態2で説明した方法によって形成されるため、開口132より前に形成された分離層221(第1の層221aおよび第2の層221b)の一部が、絶縁層211上に残存している場合がある。また、発光装置200は開口132の上面形状の輪郭132aが矩形であり、矩形の少なくとも一の角が丸みを帯びた形状である。このような構成とすることで、発光装置200が可撓性を有する場合に、発光装置200の運搬または使用中に開口132近傍を湾曲させた際に開口132の一部からクラックが発生することを抑制できる場合がある。また、発光装置200の開口132が図22(A)、(B)のようになっていてもよい。図22(A)、(B)に示した開口132の形成方法は、実施の形態1の回路基板10Cの作製方法を参照できる。
周辺回路251は、複数のトランジスタ252により構成されている。周辺回路251は、外部電極124から供給された信号を、表示領域231中のどの発光素子125に供給するかを決定する機能を有する。
図21に示す発光装置200は、接着層120を介して基板111と基板121が貼り合わされた構造を有する。基板111上には、接着層112を介して絶縁層205が形成されている。絶縁層205は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、または窒化酸化アルミニウム等を、単層または多層で形成するのが好ましい。絶縁層205は、スパッタリング法やCVD法、熱酸化法、塗布法、印刷法等を用いて形成することが可能である。
なお、絶縁層205は下地層として機能し、基板111や接着層112などからトランジスタや発光素子への不純物元素の拡散を防止、または低減することができる。
また、絶縁層205上に、トランジスタ232、トランジスタ252、端子電極116、配線219が形成されている。なお、本実施の形態では、トランジスタ232および/またはトランジスタ252として、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネルエッチング型のトランジスタを例示しているが、チャネル保護型のトランジスタや、トップゲート型のトランジスタなどを用いることも可能である。また、逆スタガ型のトランジスタや、順スタガ型のトランジスタを用いることも可能である。また、チャネルが形成される半導体層を2つのゲート電極で挟む構造の、デュアルゲート型のトランジスタを用いることも可能である。また、シングルゲート構造のトランジスタに限定されず、複数のチャネル形成領域を有するマルチゲート型トランジスタ、例えばダブルゲート型トランジスタとしてもよい。
また、トランジスタ232および/またはトランジスタ252として、プレーナ型、FIN型(フィン型)、TRI−GATE型(トライゲート型)などの、様々な構成のトランジスタを用いることが出来る。
トランジスタ232とトランジスタ252は、それぞれが同様の構造を有していてもよいし、異なる構造を有していてもよい。トランジスタのサイズ(例えば、チャネル長、およびチャネル幅)等は、各トランジスタで適宜調整することができる。
トランジスタ232およびトランジスタ252は、ゲート電極として機能できる電極206、ゲート絶縁層として機能できる絶縁層207、半導体層208、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能できる電極214、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能できる電極215を有する。
配線219、電極214、および電極215は、端子電極116を形成するための導電層の一部を用いて、端子電極116と同時に形成することができる。また、絶縁層207は、絶縁層205と同様の材料および方法により形成することができる。
半導体層208は、単結晶半導体、多結晶半導体、微結晶半導体、ナノクリスタル半導体、セミアモルファス半導体、非晶質半導体、等を用いて形成することができる。例えば、非晶質シリコンや、微結晶ゲルマニウム等を用いることができる。また、炭化シリコン、ガリウム砒素、酸化物半導体、窒化物半導体などの化合物半導体や、有機半導体等を用いることができる。また、半導体層208として酸化物半導体を用いる場合は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、nc−OS(nano Crystalline Oxide Semiconductor)非晶質酸化物半導体などを用いることができる。
なお、酸化物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV以上と大きく、可視光に対する透過率が大きい。また、酸化物半導体を適切な条件で加工して得られたトランジスタにおいては、オフ電流(トランジスタがオフ状態の時にソースとドレイン間に流れる電流)を極めて小さくすることができる。例えばソースとドレイン間の電圧が3.5V、温度25℃においては、チャネル幅1μmあたり100zA(1×10−19A)以下、もしくは10zA(1×10−20A)以下、さらには1zA(1×10−21A)以下とすることができる。このため、消費電力の少ない発光装置を提供することができる。
また、半導体層208に酸化物半導体を用いる場合は、半導体層208に接する絶縁層に酸素を有する絶縁層を用いることが好ましい。特に、半導体層208に接する絶縁層として、加熱処理により酸素を放出する絶縁層を用いることが好ましい。
また、トランジスタ232およびトランジスタ252上に絶縁層210が形成され、絶縁層210上に絶縁層211が形成されている。絶縁層210および絶縁層211は、保護絶縁層として機能し、絶縁層210よりも上の層からトランジスタ232およびトランジスタ252への不純物元素が拡散することを防止または低減することができる。絶縁層210および絶縁層211は、絶縁層205と同様の材料及び方法で形成することができる。
絶縁層211上に層間絶縁層212が形成される。層間絶縁層212は、トランジスタ232やトランジスタ252に起因する凹凸を吸収することができる。層間絶縁層212の表面に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨法(Chemical Mechanical Polishing:CMP))、やドライエッチング処理により行うことができる。
また、平坦化機能を有する絶縁材料を用いて層間絶縁層212を形成することで、研磨処理を省略することもできる。平坦化機能を有する絶縁材料として、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、層間絶縁層212を形成してもよい。
また、層間絶縁層212上に、発光素子125と、各発光素子125を離間するための隔壁114が形成されている。
また、基板121には、遮光層264、着色層266、及びオーバーコート層268が形成されている。発光装置200は、発光素子125からの光を、着色層266を介して基板121側から射出する、所謂トップエミッション構造(上面射出構造)の発光装置である。
また、発光素子125は、層間絶縁層212、絶縁層211、および絶縁層210に設けられた開口でトランジスタ232と電気的に接続されている。
また、発光素子125を、EL層117から発する光を共振させる微小光共振器(「マイクロキャビティ」ともいう)構造とすることで、異なる発光素子125で同じEL層117を用いても、異なる波長の光を狭線化して取り出すことができる。
一例として、図23に、発光素子125をマイクロキャビティ構造とした発光装置200の断面図を示す。なお、図23(A)は、図21(A)中にA3−A4の一点鎖線で示す部位近傍の断面図に相当する。また、図23(B)は、図23(A)に示した部位280の拡大図である。
発光素子125をマイクロキャビティ構造とする場合、電極118を入射光量のうち一定光量の光を透過して一定光量の光を反射する(半透過)導電性材料を用いて形成し、電極115を、反射率の高い(可視光の反射率が50%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下)導電性材料と、透過率の高い(可視光の透過率が50%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下)導電性材料の積層で形成する。ここでは、電極115を、光を反射する導電性材料で形成された電極115aと、光を透過する導電性材料で形成された電極115bの積層としている。電極115bは、EL層117と電極115aの間に設ける(図23(B)参照)。電極118は半反射電極として、及び電極115aは、反射電極として機能できる。
例えば、電極118として、厚さ1nm乃至30nm、好ましくは1nm乃至15nmの銀(Ag)を含む導電性材料、またはアルミニウム(Al)を含む導電性材料などを用いればよい。本実施の形態では、電極118として厚さ10nmの銀とマグネシウムを含む導電性材料を用いる。
また、電極115aとして厚さ50nm乃至500nm、好ましくは50nm乃至200nmの銀(Ag)を含む導電性材料、またはアルミニウム(Al)を含む導電性材料などを用いればよい。本実施の形態では、電極115aとして厚さ100nmの銀を含む導電性材料を用いる。
また、電極115bとして厚さ1nm乃至200nm、好ましくは5nm乃至100nmのインジウム(In)を含む導電性酸化物、または亜鉛(Zn)を含む導電性酸化物などを用いればよい。本実施の形態では、電極115bとしてITOを用いる。また、電極115aの下に、さらに導電性酸化物を設けてもよい。
電極115bの厚さtを変えることで、電極118とEL層117の界面から電極115aと電極115bの界面までの距離dを任意の値に設定することができる。画素ごとに電極115bの厚さtを変えることで、同じEL層117を用いても、画素ごとに異なる発光スペクトルを有する発光素子125を設けることができる。よって、各発光色の色純度を高め、色再現性の良好な発光装置を実現することができる。また、画素ごと(発光色ごと)にEL層117を形成する必要がないため、発光装置の作製工程を少なくし、生産性を高めることができる。また、発光装置の高精細化を容易とすることができる。
なお、距離dの調整方法は上記の調整方法に限定されない。例えば、EL層117の膜厚を変えることで距離dを調整してもよい。
図23(A)は、赤色の光151Rを発光することができる画素130R、緑色の光151Gを発光することができる画素130G、青色の光151Bを発光することができる画素130B、および黄色の光151Yを発光することができる画素130Yを1つの画素140として用いる例を示している。なお、本発明の一態様はこれに限定されず、画素140として、赤、緑、青、黄、シアン、マゼンダ、または白などの光を発光することができる副画素を適宜組み合わせて用いればよい。例えば、画素130R、画素130G、および画素130Bの3つの副画素で画素140を構成してもよい。
また、発光素子125と重畳する位置に着色層266を設けて、光151が着色層266を透過して外部に射出する構成としてもよい。図24に、図23に示した発光装置200に着色層266を組み合わせた構成の一例を示す。図24に示す発光装置200は、赤色の光151Rを発光することができる画素130Rと重ねて赤色の波長帯域の光を透過する着色層266Rが設けられ、緑色の光151Gを発光することができる画素130Gと重ねて緑色の波長帯域の光を透過する着色層266Gが設けられ、青色の光151Bを発光することができる画素130Bと重ねて青色の波長帯域の光を透過する着色層266Bが設けられ、黄色の光151Yを発光することができる画素130Yと重ねて黄色の波長帯域の光を透過する着色層266Yが設けられている。
画素130R、画素130G、画素130Bに加えて画素130Yを用いることで、発光装置の色再現性を高めることができる。また、画素140を画素130R、画素130G、および画素130Bのみで構成する場合、画素140の発光色を白としたい時は、画素130R、画素130G、および画素130Bの全てを発光させる必要がある。一方、画素130R、画素130G、および画素130Bに加えて、画素130Yを設けることで、画素130Bと画素130Yのみを発光させて、白色光を得ることが可能となる。よって、画素130Rと画素130Gを発光させなくても白色光を得ることができるため、発光装置の消費電力を低減することができる。
また、画素130Yに代えて、白色の光151Wを発光することができる画素130Wを用いてもよい。画素130Yに代えて、画素130Wを用いることで、画素130Wのみの発光により白色光を得ることができるため、発光装置の消費電力をより低減することができる。
なお、画素130Wを用いる場合は、画素130Wに着色層を設けなくてもよい。着色層を設けないことで、表示領域の輝度が向上し、視認性の良好な発光装置を実現することができる。また、発光装置の消費電力をより低減することができる。
また、画素130Wに可視光領域のほぼ全体を透過する着色層266Wを設けてもよい。これにより、白色の光151Wの色温度を変化させることができる。よって、表示品位の良好な発光装置を実現することができる。
また、マイクロキャビティ構造の発光素子125と着色層266を組み合わせて用いることにより、光151の色純度をさらに高めることができる。よって、発光装置200の色再現性を高めることができる。また、外部から入射した光は、着色層266で大部分が吸収されるため、外部から入射した光の表示領域231への映り込みを軽減し、発光装置の視認性を高めることができる。よって、表示品位の良好な発光装置を実現することができる。
また、本実施の形態では、発光装置の一例として、アクティブマトリクス型の発光装置について例示したが、パッシブマトリクス型の発光装置に適用することも可能である。また、ボトムエミッション構造の発光装置、デュアルエミッション構造の発光装置にも適用可能である。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、発光素子125に用いることができる発光素子の構成例について説明する。なお、本実施の形態に示すEL層620が、他の実施の形態に示したEL層117に相当する。
[発光素子の構成]
図25(A)に示す発光素子630は、一対の電極(電極618、電極622)間にEL層620が挟まれた構造を有する。なお、以下の本実施の形態の説明においては、例として、電極618を陽極として用い、電極622を陰極として用いるものとする。
また、EL層620は、少なくとも発光層を含んで形成されていればよく、発光層以外の機能層を含む積層構造であっても良い。発光層以外の機能層としては、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層を用いることができる。具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の機能層を適宜組み合わせて用いることができる。
図25(A)に示す発光素子630は、電極618と電極622との間に与えられた電位差により電流が流れ、EL層620において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまりEL層620に発光領域が形成されるような構成となっている。
本発明において、発光素子630からの発光は、電極618、または電極622側から外部に取り出される。従って、電極618、または電極622のいずれか一方は透光性を有する物質で成る。
なお、EL層620は図25(B)に示す発光素子631のように、電極618と電極622との間に複数積層されていても良い。n層(nは2以上の自然数)の積層構造を有する場合には、m番目(mは、1以上かつnより小さい自然数)のEL層620と、(m+1)番目のEL層620との間には、それぞれ電荷発生層620aを設けることが好ましい。電極618と電極622を除く構成が上記実施の形態のEL層117に相当する。
電荷発生層620aは、有機化合物と金属酸化物の複合材料を用いて形成することができる。金属酸化物としては、例えば、酸化バナジウムや酸化モリブデンや酸化タングステン等が挙げられる。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、または、それらを基本骨格とするオリゴマー、デンドリマー、ポリマー等、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10−6cm2/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、電荷発生層620aに用いるこれらの材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、発光素子630の低電流駆動、および低電圧駆動を実現することができる。上記複合材料以外にも上記複合材料にアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを加えた材料を電荷発生層620aに用いることができる。
なお、電荷発生層620aは、有機化合物と金属酸化物の複合材料と他の材料とを組み合わせて形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
このような構成を有する発光素子631は、隣接するEL層620同士でのエネルギーの移動が起こり難く、高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方の発光層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。
なお、電荷発生層620aとは、電極618と電極622に電圧を印加したときに、電荷発生層620aに接して形成される一方のEL層620に対して正孔を注入する機能を有し、他方のEL層620に電子を注入する機能を有する。
図25(B)に示す発光素子631は、EL層620に用いる発光物質の種類を変えることにより様々な発光色を得ることができる。また、発光物質として発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、ブロードなスペクトルの発光や白色発光を得ることもできる。
図25(B)に示す発光素子631を用いて、白色発光を得る場合、複数のEL層の組み合わせとしては、赤、青及び緑色の光を含んで白色に発光する構成であればよく、例えば、青色の蛍光材料を発光物質として含むEL層と、緑色と赤色の燐光材料を発光物質として含むEL層を有する構成が挙げられる。また、赤色の発光を示すEL層と、緑色の発光を示すEL層と、青色の発光を示すEL層とを有する構成とすることもできる。または、補色の関係にある光を発するEL層を有する構成であっても白色発光が得られる。EL層が2層積層された積層型素子において、これらのEL層からの発光色を補色の関係にする場合、補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色の組合せなどが挙げられる。
なお、上述した積層型素子の構成において、積層される発光層の間に電荷発生層を配置することにより、電流密度を低く保ったまま高輝度の発光が得られ、また長寿命素子を実現することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態に示したトランジスタ232および/またはトランジスタ252に置き換えて用いることができるトランジスタの一例について、図26乃至図29を用いて説明する。
〔ボトムゲート型トランジスタ〕
図26(A1)に例示するトランジスタ400は、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネルエッチング型のトランジスタである。トランジスタ400は、基板216上に、絶縁層119を介して形成されている。また、トランジスタ400は、電極206と、電極206上に形成された絶縁層207と、絶縁層207上に形成された半導体層208と、半導体層208の一部に接する電極214および電極215を有する。電極206はゲート電極として機能できる。絶縁層207はゲート絶縁層として機能できる。電極214および電極215は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能できる。また、半導体層208、電極214および電極215を覆って、絶縁層210と絶縁層211が形成されている。
基板216としては、実施の形態2で説明した基板111と同様の材料を用いることができる。特に、有機樹脂材料は、ガラス材料や金属材料に比べて重が小さい。よって、基板216として有機樹脂材料を用いると、発光装置を軽量化できる。
また、基板216には、靱性が高い材料を用いることが好ましい。これにより、耐衝撃性に優れ、破損しにくい発光装置を実現できる。有機樹脂材料および金属材料は、ガラス材料に比べて靱性が高いことが多い。基板216として有機樹脂材料または金属材料を用いると、ガラス材料を用いた場合と比較して、破損しにくい発光装置を実現できる。
また金属材料は、有機樹脂材料やガラス材料よりも熱伝導性が高く、基板全体に熱を容易に伝導できる。よって、発光装置の局所的な温度上昇を抑制することができる。
絶縁層119としては、実施の形態2で説明した材料を用いることができる。絶縁層207、絶縁層210、絶縁層211は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどの酸化物材料や、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物材料などを、単層または多層で形成することができる。例えば、絶縁層119を、酸化シリコンと窒化シリコンを積層した2層構造としてもよいし、上記材料を組み合わせた5層構造としてもよい。絶縁層119、絶縁層207、絶縁層210、絶縁層211は、スパッタリング法やCVD法、熱酸化法、塗布法、印刷法等を用いて形成することが可能である。なお、半導体層208として有機半導体を用いる場合は、絶縁層207にポリイミド、アクリル樹脂等の有機材料を用いてもよい。
電極206を形成するための導電性材料としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム等から選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、または上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。導電層の形成方法は特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種形成方法を用いることができる。
また、電極206、電極214、電極215は、ITO、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したITOなどの酸素を含む導電性材料、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を適用することもできる。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造とすることもできる。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造とすることもできる。また、前述した金属元素を含む材料、酸素を含む導電性材料、および窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造とすることもできる。
また、電極206、電極214、電極215は、導電性高分子材料(導電性ポリマーともいう)を用いて形成してもよい。導電性高分子材料としては、π電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、またはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体等が挙げられる。
電極206、電極214、電極215は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム層の単層構造、アルミニウム層上にチタン層を積層する二層構造、窒化チタン層上にチタン層を積層する二層構造、窒化チタン層上にタングステン層を積層する二層構造、窒化タンタル層上にタングステン層を積層する二層構造、チタン層と、そのチタン層上にアルミニウム層を積層し、さらにその上にチタン層を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の層、または複数組み合わせた合金層、もしくは窒化物層を用いてもよい。
半導体層208としては、実施の形態3で説明した材料を用いることができる。
図26(A2)に例示するトランジスタ401は、絶縁層211上にバックゲート電極として機能できる電極213を有する点が、トランジスタ400と異なる。電極213は、電極206と同様の材料および方法で形成することができる。また、電極213は、絶縁層210と絶縁層211の間に形成してもよい。
一般に、バックゲート電極は導電層で形成され、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。よって、バックゲート電極は、ゲート電極と同様に機能させることができる。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、GND電位や、任意の電位としてもよい。また、バックゲート電極の電位とゲート電極の電位とを個別に変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
電極206および電極213は、どちらもゲート電極として機能することができる。よって、絶縁層207、絶縁層210、および絶縁層211は、ゲート絶縁層として機能することができる。
なお、電極206または電極213の一方を、「ゲート電極」という場合、他方を「バックゲート電極」という場合がある。例えば、トランジスタ401において、電極213を「ゲート電極」と言う場合、電極206を「バックゲート電極」と言う場合がある。また、電極213を「ゲート電極」として用いる場合は、トランジスタ401をトップゲート型のトランジスタの一種と考えることができる。また、電極206および電極213のどちらか一方を、「第1のゲート電極」といい、他方を「第2のゲート電極」という場合がある。
半導体層208を挟んで電極206および電極213を設けることで、更には、電極206および電極213を同電位とすることで、半導体層208においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ401のオン電流が大きくなる共に、電界効果移動度が高くなる。
したがって、トランジスタ401は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ401の占有面積を小さくすることができる。
また、ゲート電極とバックゲート電極は導電層で形成されるため、トランジスタの外部で生じる電界が、チャネルが形成される半導体層に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)を有する。
また、電極206および電極213は、それぞれが外部からの電界を遮蔽する機能を有するため、基板216側もしくは電極213上方に生じる荷電粒子等の電荷が半導体層208のチャネル形成領域に影響しない。この結果、ストレス試験(例えば、ゲートに負の電荷を印加する−GBT(Gate Bias−Temperature)ストレス試験)の劣化が抑制されると共に、閾値電圧の変動を抑制することができる。なお、この効果は、電極206および電極213が、同電位、または異なる電位の場合において生じる。
なお、BTストレス試験は加速試験の一種であり、長期間の使用によって起こるトランジスタの特性変化(すなわち、経年変化)を、短時間で評価することができる。特に、BTストレス試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変動量は、信頼性を調べるための重要な指標となる。BTストレス試験前後において、しきい値電圧の変動量が少ないほど、信頼性が高いトランジスタであるといえる。
また、電極206および電極213を有し、且つ電極206および電極213を同電位とすることで、しきい値電圧の変動量が低減される。このため、複数のトランジスタにおける電気特性のばらつきも同時に低減される。
また、バックゲート電極を有するトランジスタは、ゲートに正の電荷を印加する+GBTストレス試験前後におけるしきい値電圧の変動も、バックゲート電極を有さないトランジスタより小さい。
また、バックゲート電極を、遮光性を有する導電膜で形成することで、バックゲート電極側から半導体層に光が入射することを防ぐことができる。よって、半導体層の光劣化を防ぎ、トランジスタのしきい値電圧がシフトするなどの電気特性の劣化を防ぐことができる。
図26(B1)に例示するトランジスタ410は、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネル保護型のトランジスタである。トランジスタ410は、半導体層208のチャネル形成領域上に、チャネル保護層として機能できる絶縁層209を有する。絶縁層209は、絶縁層207と同様の材料および方法により形成することができる。電極214の一部、および電極215の一部は、絶縁層209上に形成される。
チャネル形成領域上に絶縁層209を設けることで、電極214および電極215の形成時に生じる半導体層208の露出を防ぐことができる。よって、電極214および電極215の形成時に半導体層208の薄膜化を防ぐことができる。
図26(B2)に示すトランジスタ411は、絶縁層211上にバックゲート電極として機能できる電極213を有する点が、トランジスタ410と異なる。電極213は、電極206と同様の材料および方法で形成することができる。また、電極213は、絶縁層210と絶縁層211の間に形成してもよい。
図26(C1)に例示するトランジスタ420は、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネル保護型のトランジスタの1つである。トランジスタ420は、トランジスタ410とほぼ同様の構造を有しているが、絶縁層209が半導体層208の側面を覆っている点が異なる。また、絶縁層209の一部を選択的に除去して形成した開口部において、半導体層208と電極214が電気的に接続している。また、絶縁層209の一部を選択的に除去して形成した開口部において、半導体層208と電極215が電気的に接続している。絶縁層209の、チャネル形成領域と重なる領域は、チャネル保護層として機能できる。
図26(C2)に示すトランジスタ421は、絶縁層211上にバックゲート電極として機能できる電極213を有する点が、トランジスタ420と異なる。
絶縁層209を設けることで、電極214および電極215の形成時に生じる半導体層208の露出を防ぐことができる。よって、電極214および電極215の形成時に半導体層208の薄膜化を防ぐことができる。
また、トランジスタ420およびトランジスタ421は、トランジスタ410およびトランジスタ411よりも、電極214と電極206の間の距離と、電極215と電極206の間の距離が長くなる。よって、電極214と電極206の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。また、電極215と電極206の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。
〔トップゲート型トランジスタ〕
図27(A1)と図27(A2)に例示するトランジスタ430,431は、トップゲート型のトランジスタの1つである。トランジスタ430は、絶縁層119の上に半導体層208を有し、半導体層208および絶縁層119上に、半導体層208の一部に接する電極214および半導体層208の一部に接する電極215を有し、半導体層208、電極214、および電極215上に絶縁層207を有し、絶縁層207上に電極206を有する。また、電極206上に絶縁層210と、絶縁層211を有する。
トランジスタ430は、電極206および電極214、並びに、電極206および電極215が重ならないため、電極206および電極214間に生じる寄生容量、並びに、電極206および電極215間に生じる寄生容量を小さくすることができる。また、電極206を形成した後に、電極206をマスクとして用いて不純物元素225を半導体層208に導入することで、半導体層208中に自己整合(セルフアライメント)的に不純物領域を形成することができる(図27(A3)参照)。
なお、不純物元素225の導入は、イオン注入装置、イオンドーピング装置またはプラズマ処理装置を用いて行うことができる。また、イオンドーピング装置として、質量分離機能を有するイオンドーピング装置を用いてもよい。
不純物元素225としては、例えば、第13族元素または第15族元素のうち、少なくとも一種類の元素を用いることができる。また、半導体層208に酸化物半導体を用いる場合は、不純物元素225として、希ガス、水素、および窒素のうち、少なくとも一種類の元素を用いることも可能である。
図27(A2)に示すトランジスタ431は、電極213および絶縁層217を有する点がトランジスタ430と異なる。トランジスタ431は、絶縁層119の上に形成された電極213を有し、電極213上に形成された絶縁層217を有する。前述した通り、電極213は、バックゲート電極として機能することができる。よって、絶縁層217は、ゲート絶縁層として機能することができる。絶縁層217は、絶縁層205と同様の材料および方法により形成することができる。
トランジスタ401と同様に、トランジスタ431は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ431の占有面積を小さくすることができる。
図27(B1)と図27(B2)に例示するトランジスタ440,441は、トップゲート型のトランジスタの1つである。トランジスタ440,441は、電極214および電極215を形成した後に半導体層208を形成する点が、トランジスタ430,431とそれぞれ異なる。また、図27(B2)に例示するトランジスタ441は、電極213および絶縁層217を有する点が、トランジスタ440と異なる。よって、トランジスタ440およびトランジスタ441において、半導体層208の一部は電極214上に形成され、半導体層208の他の一部は電極215上に形成される。
トランジスタ401と同様に、トランジスタ441は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ441の占有面積を小さくすることができる。よって、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
トランジスタ440およびトランジスタ441も、電極206を形成した後に、電極206をマスクとして用いて不純物元素225を半導体層208に導入することで、半導体層208中に自己整合的に不純物領域を形成することができる。
〔s−channel型トランジスタ〕
図28(A)はトランジスタ450の上面図である。図28(B)は、図28(A)中のX1−X2の一点鎖線で示した部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。図28(C)は、図28(A)中のY1−Y2の一点鎖線で示した部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
絶縁層119に設けた凸部上に半導体層208を設けることによって、半導体層208の側面も電極206で覆うことができる。すなわち、トランジスタ450は、電極206の電界によって、半導体層208を電気的に取り囲むことができる構造を有している。このように、導電膜の電界によって、半導体を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。また、s−channel構造を有するトランジスタを、「s−channel型トランジスタ」もしくは「s−channelトランジスタ」ともいう。
s−channel構造では、半導体層208の全体(バルク)にチャネルが形成される場合がある。s−channel構造では、トランジスタのドレイン電流を大きくすることができ、さらに大きいオン電流を得ることができる。よって、トランジスタの占有面積を小さくすることができ、発光装置の高精細化が可能となる。また、半導体装置の高集積化が可能となる。
また、電極206の電界によって、半導体層208に形成されるチャネル形成領域の全領域を空乏化することができる。したがって、s−channel構造では、トランジスタのオフ電流をさらに小さくすることができる。よって、発光装置の消費電力を低減することができる。また、半導体装置の消費電力を低減することができる。
なお、絶縁層119の凸部を高くし、また、チャネル幅を小さくすることで、s−channel構造によるオン電流の増大効果、オフ電流の低減効果などをより高めることができる。
また、図29に示すトランジスタ451のように、半導体層208の下方に、絶縁層を介して電極213を設けてもよい。図29(A)はトランジスタ451の上面図である。図29(B)は、図29(A)中のX1−X2の一点鎖線で示した部位の断面図である。図29(C)は、図29(A)中のY1−Y2の一点鎖線で示した部位の断面図である。
<酸化物半導体の構造>
ここで、酸化物半導体の構造について説明する。
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(c−axis−aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体およびnc−OSなどがある。
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配置が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さない、などといわれている。
即ち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a−like OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造である。不安定であるという点では、a−like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体に近い。
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一種である。
CAAC−OSをX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析した場合について説明する。例えば、空間群R−3mに分類されるInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図30(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSでは、結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)、または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。なお、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、空間群Fd−3mに分類される結晶構造に起因する。そのため、CAAC−OSは、該ピークを示さないことが好ましい。
一方、CAAC−OSに対し、被形成面に平行な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。そして、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図30(B)に示すように明瞭なピークは現れない。一方、単結晶InGaZnO4に対し、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図30(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、CAAC−OSの被形成面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図30(D)に示すような回折パターン(制限視野電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図30(E)に示す。図30(E)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、プローブ径が300nmの電子線を用いた電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図30(E)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、図30(E)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像であってもペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない場合がある。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
図31(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって観察することができる。
図31(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるペレットを確認することができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。ペレットは、CAAC−OSの被形成面または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
また、図31(B)および図31(C)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図31(D)および図31(E)は、それぞれ図31(B)および図31(C)を画像処理した像である。以下では、画像処理の方法について説明する。まず、図31(B)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取得したFFT像において原点を基準に、2.8nm−1から5.0nm−1の間の範囲を残すマスク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理することで画像処理した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFTフィルタリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格子配列を示している。
図31(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が、一つのペレットである。そして、破線で示した箇所がペレットとペレットとの連結部である。破線は、六角形状であるため、ペレットが六角形状であることがわかる。なお、ペレットの形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が多い。
図31(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間を点線で示し、格子配列の向きの変化を破線で示している。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線近傍の格子点を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形が形成できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制していることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において原子配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
以上に示すように、CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のペレット(ナノ結晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。よって、CAAC−OSを、CAA crystal(c−axis−aligned a−b−plane−anchored crystal)と称することもできる。
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。例えば、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。具体的には、8×1011個/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010個/cm3未満であり、1×10−9個/cm3以上のキャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
nc−OSをXRDによって解析した場合について説明する。例えば、nc−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、配向性を示すピークが現れない。即ち、nc−OSの結晶は配向性を有さない。
また、例えば、InGaZnO4の結晶を有するnc−OSを薄片化し、厚さが34nmの領域に対し、被形成面に平行にプローブ径が50nmの電子線を入射させると、図32(A)に示すようなリング状の回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)が観測される。また、同じ試料にプローブ径が1nmの電子線を入射させたときの回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)を図32(B)に示す。図32(B)より、リング状の領域内に複数のスポットが観測される。したがって、nc−OSは、プローブ径が50nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認されないが、プローブ径が1nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認される。
また、厚さが10nm未満の領域に対し、プローブ径が1nmの電子線を入射させると、図32(C)に示すように、スポットが略正六角状に配置された電子回折パターンが観測される場合がある。したがって、厚さが10nm未満の範囲において、nc−OSが秩序性の高い領域、即ち結晶を有することがわかる。なお、結晶が様々な方向を向いているため、規則的な電子回折パターンが観測されない領域もある。
図32(D)に、被形成面と略平行な方向から観察したnc−OSの断面のCs補正高分解能TEM像を示す。nc−OSは、高分解能TEM像において、補助線で示す箇所などのように結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下の大きさであり、特に1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体(micro crystalline oxide semiconductor)と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
このように、nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
なお、ペレット(ナノ結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
図33に、a−like OSの高分解能断面TEM像を示す。ここで、図33(A)は電子照射開始時におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。図33(B)は4.3×108e−/nm2の電子(e−)照射後におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。図33(A)および図33(B)より、a−like OSは電子照射開始時から、縦方向に延伸する縞状の明領域が観察されることがわかる。また、明領域は、電子照射後に形状が変化することがわかる。なお、明領域は、鬆または低密度領域と推測される。
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OSおよびnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
試料として、a−like OS、nc−OSおよびCAAC−OSを準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有する。
なお、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、以下では、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と見なした。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa−b面に対応する。
図34は、各試料の結晶部(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例である。なお、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図34より、a−like OSは、TEM像の取得などに係る電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。図34より、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、電子(e−)の累積照射量が4.2×108e−/nm2においては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。図34より、電子の累積照射量によらず、nc−OSおよびCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.3nm程度および1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射およびTEMの観察は、日立透過電子顕微鏡H−9000NARを用いた。電子線照射条件は、加速電圧を300kV、電流密度を6.7×105e−/(nm2・s)、照射領域の直径を230nmとした。
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られない。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3である。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満である。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を用いることができるタッチパネルについて図面を用いて説明する。なお、上記実施の形態で説明した発光装置と同様の構成については、先の記載も参照することができる。また、本実施の形態では、発光素子を用いたタッチパネルを例示するが、これに限られない。例えば、実施の形態2で説明した他の素子(表示素子など)を用いたタッチパネルも本発明の一態様の発光装置に用いることができる。
[構成例1]
図35(A)はタッチパネルの上面図である。図35(B)は図35(A)の一点鎖線A−B間及び一点鎖線C−D間の断面図である。図35(C)は図35(A)の一点鎖線E−F間の断面図である。
図35(A)に示すタッチパネル390は、表示部301(入力部も兼ねる)、走査線駆動回路303g(1)、撮像画素駆動回路303g(2)、画像信号線駆動回路303s(1)、及び撮像信号線駆動回路303s(2)を有する。
表示部301は、複数の画素302と、複数の撮像画素308と、を有する。
画素302は、複数の副画素を有する。各副画素は、発光素子及び画素回路を有する。
画素回路は、発光素子を駆動する電力を供給することができる。画素回路は、選択信号を供給することができる配線と電気的に接続される。また、画素回路は、画像信号を供給することができる配線と電気的に接続される。
走査線駆動回路303g(1)は、選択信号を画素302に供給することができる。
画像信号線駆動回路303s(1)は、画像信号を画素302に供給することができる。
撮像画素308を用いてタッチセンサを構成することができる。具体的には、撮像画素308は、表示部301に触れる指等を検知することができる。
撮像画素308は、光電変換素子及び撮像画素回路を有する。
撮像画素回路は、光電変換素子を駆動することができる。撮像画素回路は、制御信号を供給することができる配線と電気的に接続される。また、撮像画素回路は、電源電位を供給することができる配線と電気的に接続される。
制御信号としては、例えば、記録された撮像信号を読み出す撮像画素回路を選択することができる信号、撮像画素回路を初期化することができる信号、及び撮像画素回路が光を検知する時間を決定することができる信号などを挙げることができる。
撮像画素駆動回路303g(2)は、制御信号を撮像画素308に供給することができる。
撮像信号線駆動回路303s(2)は、撮像信号を読み出すことができる。
図35(B)、(C)に示すように、タッチパネル390は、基板701、接着層703、絶縁層705、基板711、接着層713、及び絶縁層715を有する。また、基板701及び基板711は、接着層360で貼り合わされている。
基板701と絶縁層705は接着層703で貼り合わされている。また、基板711と絶縁層715は接着層713で貼り合わされている。
基板701および基板711は、可撓性を有することが好ましい。
基板、接着層、及び絶縁層に用いることができる材料については上記実施の形態を参照することができる。
画素302は、副画素302R、副画素302G、及び副画素302Bを有する(図35(C))。また、副画素302Rは発光モジュール380Rを有し、副画素302Gは発光モジュール380Gを有し、副画素302Bは発光モジュール380Bを有する。
例えば副画素302Rは、発光素子350R及び画素回路を有する。画素回路は、発光素子350Rに電力を供給することができるトランジスタ302tを含む。また、発光モジュール380Rは、発光素子350R及び光学素子(例えば赤色の光を透過する着色層367R)を有する。
発光素子350Rは、下部電極351R、EL層353、及び上部電極352をこの順で積層して有する(図35(C))。
EL層353は、第1のEL層353a、中間層354、及び第2のEL層353bをこの順で積層して有する。
なお、特定の波長の光を効率よく取り出せるように、発光モジュール380Rにマイクロキャビティ構造を配設することができる。具体的には、特定の光を効率よく取り出せるように配置された可視光を反射する膜及び半反射・半透過する膜の間にEL層を配置してもよい。
例えば、発光モジュール380Rは、発光素子350Rと着色層367Rに接する接着層360を有する。
着色層367Rは発光素子350Rと重なる位置にある。これにより、発光素子350Rが発する光の一部は、接着層360及び着色層367Rを透過して、図中の矢印に示すように発光モジュール380Rの外部に射出される。
タッチパネル390は、遮光層367BMを有する。遮光層367BMは、着色層(例えば着色層367R)を囲むように設けられている。
タッチパネル390は、反射防止層367pを表示部301に重なる位置に有する。反射防止層367pとして、例えば円偏光板を用いることができる。
タッチパネル390は、絶縁層321を有する。絶縁層321はトランジスタ302t等を覆っている。なお、絶縁層321は画素回路や撮像画素回路に起因する凹凸を平坦化するための層として用いることができる。また、不純物のトランジスタ302t等への拡散を抑制することができる層が積層された絶縁層を、絶縁層321に適用することができる。
タッチパネル390は、下部電極351Rの端部に重なる隔壁328を有する。また、基板701と基板711の間隔を制御するスペーサ329を、隔壁328上に有する。
画像信号線駆動回路303s(1)は、トランジスタ303t及び容量303cを含む。なお、駆動回路は画素回路と同一の工程で同一基板上に形成することができる。図35(B)に示すようにトランジスタ303tは絶縁層321上に第2のゲート304を有していてもよい。第2のゲート304はトランジスタ303tのゲートと電気的に接続されていてもよいし、これらに異なる電位が与えられていてもよい。また、必要であれば、第2のゲート304をトランジスタ308t、トランジスタ302t等に設けてもよい。
撮像画素308は、光電変換素子308p及び撮像画素回路を有する。撮像画素回路は、光電変換素子308pに照射された光を検知することができる。撮像画素回路は、トランジスタ308tを含む。
例えばpin型のフォトダイオードを光電変換素子308pに用いることができる。
タッチパネル390は、信号を供給することができる配線311を有し、端子319が配線311に設けられている。なお、画像信号及び同期信号等の信号を供給することができるFPC309が、開口333において端子319に電気的に接続されている。開口333は、基板711、接着層713、絶縁層715および接着層360にわたって設けられている。開口333の形成方法としては、実施の形態1または実施の形態2の記述を参照できる。なお、FPC309にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。
なお、トランジスタ302t、トランジスタ303t、トランジスタ308t等のトランジスタは、同一の工程で形成することができる。又は、それぞれ異なる工程で形成してもよい。
[構成例2]
図36(A)、(B)は、タッチパネル505Aの斜視図である。なお明瞭化のため、代表的な構成要素を示す。図37(A)は、図36(A)に示す一点鎖線G−H間の断面図である。
図36(A)、(B)に示すように、タッチパネル505Aは、表示部501、走査線駆動回路303g(1)、及びタッチセンサ595等を有する。また、タッチパネル505Aは、基板701、基板711、及び基板590を有する。
タッチパネル505Aは、複数の画素及び複数の配線311を有する。複数の配線311は、画素に信号を供給することができる。複数の配線311は、基板701の外周部にまで引き回され、その一部が端子319を構成している。端子319は開口555においてFPC509(1)と電気的に接続される。開口333は基板711、接着層713、絶縁層715および接着層360にわたって設けられている。開口333の形成方法としては、実施の形態1または実施の形態2の記述を参照できる。
タッチパネル505Aは、タッチセンサ595及び複数の配線598を有する。複数の配線598は、タッチセンサ595と電気的に接続される。複数の配線598は基板590の外周部に引き回され、その一部は端子を構成する。そして、当該端子はFPC509(2)と電気的に接続される。なお、図36(B)では明瞭化のため、基板590の裏面側(基板701と対向する面側)に設けられるタッチセンサ595の電極や配線等を実線で示している。
タッチセンサ595には、例えば静電容量方式のタッチセンサを適用できる。静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。ここでは、投影型静電容量方式のタッチセンサを適用する場合を示す。
投影型静電容量方式としては、主に駆動方式の違いから自己容量方式、相互容量方式などがある。相互容量方式を用いると同時多点検出が可能となるため好ましい。
なお、タッチセンサ595には、指等の検知対象の近接又は接触を検知することができるさまざまなセンサを適用することができる。
投影型静電容量方式のタッチセンサ595は、電極591と電極592を有する。電極591は複数の配線598のいずれかと電気的に接続し、電極592は複数の配線598の他のいずれかと電気的に接続する。
電極592は、図36(A)、(B)に示すように、一方向に繰り返し配置された複数の四辺形が角部で接続された形状を有する。
電極591は四辺形であり、電極592が延在する方向と交差する方向に繰り返し配置されている。なお、複数の電極591は、一の電極592と必ずしも直交する方向に配置される必要はなく、90度未満の角度をなすように配置されてもよい。
配線594は電極592と交差して設けられている。配線594は、電極592を挟む二つの電極591を電気的に接続する。このとき、電極592と配線594の交差部の面積ができるだけ小さくなる形状が好ましい。これにより、電極が設けられていない領域の面積を低減でき、透過率のムラを低減できる。その結果、タッチセンサ595を透過する光の輝度ムラを低減することができる。
なお、電極591、電極592の形状はこれに限られず、様々な形状を取りうる。例えば、複数の電極591をできるだけ隙間が生じないように配置し、絶縁層を介して電極592を、電極591と重ならない領域ができるように離間して複数設ける構成としてもよい。このとき、隣接する2つの電極592の間に、これらとは電気的に絶縁されたダミー電極を設けると、透過率の異なる領域の面積を低減できるため好ましい。
なお、タッチセンサ595のより具体的な構成例については後述する。
図37(A)に示すように、タッチパネル505Aは、基板701、接着層703、絶縁層705、基板711、接着層713、及び絶縁層715を有する。また、基板701及び基板711は、接着層360で貼り合わされている。
接着層597は、タッチセンサ595が表示部501に重なるように、基板590を基板711に貼り合わせている。接着層597は、透光性を有する。
電極591及び電極592は、透光性を有する導電材料を用いて形成する。透光性を有する導電性材料としては、酸化インジウム、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる。なお、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法としては、熱を加える方法等を挙げることができる。
また、電極591、電極592、配線594などの導電膜、つまり、タッチパネルを構成する配線や電極に用いる材料の抵抗値が低いことが望ましい。一例として、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、銀、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェンなどを用いてもよい。さらに、非常に細くした(例えば、直径が数ナノメートル)、多数の導電体を用いて構成される金属ナノワイヤを用いてもよい。なお、透過率が高いため、表示素子に用いる電極、例えば、画素電極や共通電極に、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェンなどを用いてもよい。
透光性を有する導電性材料を基板590上にスパッタリング法により成膜した後、フォトリソグラフィ法等の様々なパターニング技術により、不要な部分を除去して、電極591及び電極592を形成することができる。
電極591及び電極592は絶縁層593で覆われている。また、電極591に達する開口が絶縁層593に設けられ、配線594が隣接する電極591を電気的に接続する。透光性の導電性材料は、タッチパネルの開口率を高めることができるため、配線594に好適に用いることができる。また、電極591及び電極592より導電性の高い材料は、電気抵抗を低減できるため配線594に好適に用いることができる。
なお、絶縁層593及び配線594を覆う絶縁層を設けて、タッチセンサ595を保護することができる。
また、接続層599は、配線598とFPC509(2)を電気的に接続する。
表示部501は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。画素は、構成例1と同様であるため、説明を省略する。
なお、様々なトランジスタをタッチパネルに適用できる。ボトムゲート型のトランジスタを適用する場合の構成を、図37(A)、(B)に示す。
例えば、酸化物半導体、アモルファスシリコン等を含む半導体層を、図37(A)に示すトランジスタ302t及びトランジスタ303tに適用することができる。
例えば、レーザーアニールなどの処理により結晶化させた多結晶シリコンを含む半導体層を、図37(B)に示すトランジスタ302t及びトランジスタ303tに適用することができる。
また、トップゲート型のトランジスタを適用する場合の構成を、図37(C)に示す。
例えば、多結晶シリコン又は単結晶シリコン基板等から転置された単結晶シリコン膜等を含む半導体層を、図37(C)に示すトランジスタ302t及びトランジスタ303tに適用することができる。
[構成例3]
図38は、タッチパネル505Bの断面図である。本実施の形態で説明するタッチパネル505Bは、供給された画像情報をトランジスタが設けられている側に表示する点、タッチセンサが表示部の基板701側に設けられている点、及びFPC509(2)がFPC509(1)と同じ側に設けられている点が、構成例2のタッチパネル505Aとは異なる。ここでは異なる構成について詳細に説明し、同様の構成を用いることができる部分は、上記の説明を援用する。
着色層367Rは発光素子350Rと重なる位置にある。また、図38(A)に示す発光素子350Rは、トランジスタ302tが設けられている側に光を射出する。これにより、発光素子350Rが発する光の一部は着色層367Rを透過して、図中に示す矢印の方向の発光モジュール380Rの外部に射出される。
タッチパネル505Bは、光を射出する方向に遮光層367BMを有する。遮光層367BMは、着色層(例えば着色層367R)を囲むように設けられている。
タッチセンサ595は、基板711側でなく、基板701側に設けられている(図38(A))。
接着層597は、タッチセンサ595が表示部に重なるように、基板590を基板701に貼り合わせている。接着層597は、透光性を有する。
なお、ボトムゲート型のトランジスタを表示部501に適用する場合の構成を、図38(A)、(B)に示す。
例えば、酸化物半導体、アモルファスシリコン等を含む半導体層を、図38(A)に示すトランジスタ302t及びトランジスタ303tに適用することができる。
例えば、多結晶シリコン等を含む半導体層を、図38(B)に示すトランジスタ302t及びトランジスタ303tに適用することができる。
また、トップゲート型のトランジスタを適用する場合の構成を、図38(C)に示す。
例えば、多結晶シリコン又は転写された単結晶シリコン膜等を含む半導体層を、図38(C)に示すトランジスタ302t及びトランジスタ303tに適用することができる。
[タッチセンサの構成例]
以下では、タッチセンサ595のより具体的な構成例について、図面を参照して説明する。
図39(A)に、タッチセンサ595の上面概略図を示す。タッチセンサ595は、基板590上に複数の電極531、複数の電極532、複数の配線541、複数の配線542を有する。また基板590には、複数の配線541及び複数の配線542の各々と電気的に接続するFPC550が設けられている。
図39(B)に、図39(A)中の一点鎖線で囲った領域の拡大図を示す。電極531は、複数の菱形の電極パターンが、紙面横方向に連なった形状を有している。一列に並んだ菱形の電極パターンは、それぞれ電気的に接続されている。また電極532も同様に、複数の菱形の電極パターンが、紙面縦方向に連なった形状を有し、一列に並んだ菱形の電極パターンはそれぞれ電気的に接続されている。また、電極531と、電極532とはこれらの一部が重畳し、互いに交差している。この交差部分では電極531と電極532とが電気的に短絡(ショート)しないように、絶縁体が挟持されている。
また図39(C)に示すように、電極532が菱形の形状を有する複数の電極533と、ブリッジ電極534によって構成されていてもよい。島状の電極533は、紙面縦方向に並べて配置され、ブリッジ電極534により隣接する2つの電極533が電気的に接続されている。このような構成とすることで、電極533と、電極531を同一の導電膜を加工することで同時に形成することができる。そのためこれらの膜厚のばらつきを抑制することができ、それぞれの電極の抵抗値や光透過率が場所によってばらつくことを抑制できる。なお、ここでは電極532がブリッジ電極534を有する構成としたが、電極531がこのような構成であってもよい。
また、図39(D)に示すように、図39(B)で示した電極531及び532の菱形の電極パターンの内側をくりぬいて、輪郭部のみを残したような形状としてもよい。このとき、電極531及び電極532の幅が、使用者から視認されない程度に細い場合には、後述するように電極531及び電極532に金属や合金などの遮光性の材料を用いてもよい。また、図39(D)に示す電極531または電極532が、上記ブリッジ電極534を有する構成としてもよい。
1つの電極531は、1つの配線541と電気的に接続している。また1つの電極532は、1つの配線542と電気的に接続している。
ここで、タッチセンサ595を発光装置の表示面に重ねて、タッチパネルを構成する場合には、電極531及び電極532に透光性を有する導電性材料を用いることが好ましい。また、電極531及び電極532に透光性の導電性材料を用い、発光装置からの光を電極531または電極532を介して取り出す場合には、電極531と電極532との間に、同一の導電性材料を含む導電膜をダミーパターンとして配置することが好ましい。このように、電極531と電極532との間の隙間の一部をダミーパターンにより埋めることにより、光透過率のばらつきを低減できる。その結果、タッチセンサ595を透過する光の輝度ムラを低減することができる。
透光性を有する導電性材料としては、酸化インジウム、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる。なお、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法としては、熱を加える方法等を挙げることができる。
または、透光性を有する程度に薄い金属または合金を用いることができる。例えば、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、またはチタンなどの金属や、該金属を含む合金を用いることができる。または、該金属または合金の窒化物(例えば、窒化チタン)などを用いてもよい。また、上述した材料を含む導電膜のうち、2以上を積層した積層膜を用いてもよい。
また、電極531及び電極532には、使用者から視認されない程度に細く加工された導電膜を用いてもよい。例えば、このような導電膜を格子状(メッシュ状)に加工することで、高い導電性と表示装置の高い視認性を得ることができる。このとき、導電膜は30nm以上100μm以下、好ましくは50nm以上50μm以下、より好ましくは50nm以上20μm以下の幅である部分を有することが好ましい。特に、10μm以下のパターン幅を有する導電膜は、使用者が視認することが極めて困難となるため好ましい。
一例として、図40(A)乃至(D)に、電極531または電極532の一部(図39(B)において一点鎖線の円で囲んだ部分)を拡大した概略図を示している。図40(A)は、格子状の導電膜561を用いた場合の例を示している。このとき、導電膜561が表示装置が有する表示素子と重ならないように配置することで、表示装置からの光を遮光することがないため好ましい。その場合、格子の向きを表示素子の配列と同じ向きとし、また格子の周期を表示素子の配列の周期の整数倍とすることが好ましい。
また、図40(B)には、三角形の開口が形成されるように加工された格子状の導電膜562の例を示している。このような構成とすることで、図40(A)に示した場合に比べて抵抗をより低くすることが可能となる。
また、図40(C)に示すように、周期性を有さないパターン形状を有する導電膜563としてもよい。このような構成とすることで、表示装置の表示部と重ねたときにモアレが生じることを抑制できる。なお、ここでモアレとは、微細な幅で等間隔に設けられた導電膜等に、外部の光等が透過するとき、又は外部の光が反射するときに、回折や干渉により生じる干渉模様をいう。
また、電極531及び電極532に、導電性のナノワイヤを用いてもよい。図40(D)には、ナノワイヤ564を用いた場合の例を示している。隣接するナノワイヤ564同士が接触するように、適当な密度で分散させることにより、2次元的なネットワークが形成され、極めて透光性の高い導電膜として機能させることができる。例えば直径の平均値が1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは5nm以上25nm以下のナノワイヤを用いることができる。ナノワイヤ564としては、Agナノワイヤや、Cuナノワイヤ、Alナノワイヤ等の金属ナノワイヤ、または、カーボンナノチューブなどを用いることができる。例えばAgナノワイヤの場合、光透過率は89%以上、シート抵抗値は40以上100以下Ω/cm2を実現することができる。
図39(A)等では、電極531及び電極532の上面形状として、複数の菱形が一方向に連なった形状とした例を示したが、電極531及び電極532の形状としてはこれに限られず、帯状(長方形状)、曲線を有する帯状、ジグザグ形状など、様々な上面形状とすることができる。また、上記では電極531と電極532とが直交するように配置されているように示しているが、これらは必ずしも直交して配置される必要はなく、2つの電極の成す角が90度未満であってもよい。
図41(A)乃至(C)には、電極531及び電極532に代えて、細線状の上面形状を有する電極536及び電極537を用いた場合の例を示している。図41(A)において、それぞれ直線状の電極536及び電極537が、格子状に配列している例を示している。
また、図41(B)では、電極536及び電極537がジグザグ状の上面形状を有する場合の例を示している。このとき、図41(B)に示すように、それぞれの直線部分の中心位置を重ねるのではなく、相対的にずらして配置することで、電極536と電極537とが平行に対向する部分の長さを長くすることができ、電極間の相互容量が高められ、検出感度が向上するため好ましい。または、図41(C)に示すように、電極536及び電極537の上面形状として、ジグザグ形状の直線部分の一部が突出した形状とすると、当該直線部分の中心位置を重ねて配置しても、対向する部分の長さを長くすることができるため電極間の相互容量を高めることができる。
図41(B)中の一点鎖線で囲った領域の拡大図を図42(A)(B)(C)に、図41(C)中の一点鎖線で囲った領域の拡大図を図42(D)(E)(F)にそれぞれ示す。また各図には電極536、電極537、およびこれらが交差する交差部538を示している。図42(B)、(E)に示すように、図42(A)、(D)における電極536及び電極537の直線部分が、角部を有するように蛇行する形状であってもよいし、図42(C)、(F)に示すように、曲線が連続するように蛇行する形状であってもよい。
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様を適用して作製できる電子機器及び照明装置について、図43及び図44を用いて説明する。
本発明の一態様の作製方法によって作製された発光装置は可撓性を有する構成とすることができる。したがって、可撓性を有する電子機器や照明装置に好適に用いることができる。
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、本発明の一態様の発光装置は可撓性を有するため、家屋やビルの内壁もしくは外壁、又は、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図43(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402のほか、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、本発明の一態様の発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高い携帯電話機を提供できる。
図43(A)に示す携帯電話機7400は、指などで表示部7402に触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指などで表示部7402に触れることにより行うことができる。
また、操作ボタン7403の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部7402に表示される画像の種類を切り替えることができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
図43(B)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7100は、筐体7101、表示部7102、バンド7103、バックル7104、操作ボタン7105、入出力端子7106などを備える。
携帯情報端末7100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7102はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7102はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7102に表示されたアイコン7107に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7105は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7105の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7100は入出力端子7106を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7106を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7106を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7100の表示部7102には、本発明の一態様の発光装置が組み込まれている。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高い携帯情報端末を提供できる。
図43(C)乃至図43(E)は、照明装置の一例を示している。照明装置7200、照明装置7210、及び照明装置7220は、それぞれ、操作スイッチ7203を備える台部7201と、台部7201に支持される発光部を有する。
図43(C)に示す照明装置7200は、波状の発光面を有する発光部7202を備える。したがってデザイン性の高い照明装置となっている。
図43(D)に示す照明装置7210の備える発光部7212は、凸状に湾曲した2つの発光部が対称的に配置された構成となっている。したがって照明装置7210を中心に全方位を照らすことができる。
図43(E)に示す照明装置7220は、凹状に湾曲した発光部7222を備える。したがって、発光部7222からの発光を、照明装置7220の前面に集光するため、特定の範囲を明るく照らす場合に適している。
また、照明装置7200、照明装置7210及び照明装置7220の備える各々の発光部はフレキシブル性を有しているため、発光部を可塑性の部材や可動なフレームなどの部材で固定し、用途に合わせて発光部の発光面を自在に湾曲可能な構成としてもよい。
なおここでは、台部によって発光部が支持された照明装置について例示したが、発光部を備える筐体を天井に固定する、又は天井からつり下げるように用いることもできる。発光面を湾曲させて用いることができるため、発光面を凹状に湾曲させて特定の領域を明るく照らす、又は発光面を凸状に湾曲させて部屋全体を明るく照らすこともできる。
ここで、各発光部には、本発明の一態様の発光装置が組み込まれている。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高い照明装置を提供できる。
図43(F)には、携帯型のタッチパネルの一例を示している。タッチパネル7300は、筐体7301、表示部7302、操作ボタン7303、引き出し部材7304、制御部7305を備える。
タッチパネル7300は、筒状の筐体7301内にロール状に巻かれたフレキシブルな表示部7302を備える。
また、タッチパネル7300は制御部7305によって映像信号を受信可能で、受信した映像を表示部7302に表示することができる。また、制御部7305にはバッテリをそなえる。また、制御部7305にコネクターを接続する端子部を備え、映像信号や電力を有線により外部から直接供給する構成としてもよい。
また、操作ボタン7303によって、電源のON、OFF動作や表示する映像の切り替え等を行うことができる。
図43(G)には、表示部7302を引き出し部材7304により引き出した状態のタッチパネル7300を示す。この状態で表示部7302に映像を表示することができる。また、筐体7301の表面に配置された操作ボタン7303によって、片手で容易に操作することができる。また、図43(F)のように操作ボタン7303を筐体7301の中央でなく片側に寄せて配置することで、片手で容易に操作することができる。
なお、表示部7302を引き出した際に表示部7302の表示面が平面状となるように固定するため、表示部7302の側部に補強のためのフレームを設けていてもよい。
なお、この構成以外に、筐体にスピーカを設け、映像信号と共に受信した音声信号によって音声を出力する構成としてもよい。
表示部7302には、本発明の一態様の発光装置が組み込まれている。本発明の一態様により、軽量で、且つ信頼性の高いタッチパネルを提供できる。
図44(A)乃至図44(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末3310を示す。図44(A)に展開した状態の携帯情報端末3310を示す。図44(B)に展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末3310を示す。図44(C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末3310を示す。携帯情報端末3310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
表示パネル3316はヒンジ3313によって連結された3つの筐体3315に支持されている。ヒンジ3313を介して2つの筐体3315間を屈曲させることにより、携帯情報端末3310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を表示パネル3316に用いることができる。例えば、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる発光装置を適用できる。
図44(D)(E)に、折りたたみ可能な携帯情報端末3320を示す。図44(D)に表示部3322が外側になるように折りたたんだ状態の携帯情報端末3320を示す。図44(E)に、表示部3322が内側になるように折りたたんだ状態の携帯情報端末3320を示す。携帯情報端末3320を使用しない際に、非表示部3325を外側に折りたたむことで、表示部3322の汚れや傷つきを抑制できる。本発明の一態様の発光装置を表示部3322に用いることができる。
図44(F)は携帯情報端末3330の外形を説明する斜視図である。図44(G)は、携帯情報端末3330の上面図である。図44(H)は携帯情報端末3340の外形を説明する斜視図である。
携帯情報端末3330、3340は、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとしてそれぞれ用いることができる。
携帯情報端末3330、3340は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン3339を一の面に表示することができる(図44(F)(H))。また、破線の矩形で示す情報3337を他の面に表示することができる(図44(G)(H))。なお、情報3337の例としては、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の通知、電子メールや電話などの着信を知らせる表示、電子メールなどの題名、電子メールなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報3337が表示されている位置に、情報3337の代わりに、操作ボタン3339、アイコンなどを表示してもよい。なお、図44(F)(G)では、上側に情報3337が表示される例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、図44(H)に示す携帯情報端末3340のように、横側に表示されていてもよい。
例えば、携帯情報端末3330の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末3330を収納した状態で、その表示(ここでは情報3337)を確認することができる。
具体的には、着信した電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末3330の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末3330をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
携帯情報端末3330の筐体3335、携帯情報端末3340の筐体3336がそれぞれ有する表示部3333には、本発明の一態様の発光装置を用いることができる。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高いタッチパネルを提供できる。
また、図44(I)に示す携帯情報端末3345のように、3面以上に情報を表示してもよい。ここでは、情報3355、情報3356、情報3357がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。
携帯情報端末3345の筐体3354が有する表示部3358には、本発明の一態様の発光装置を用いることができる。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高いタッチパネルを提供できる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことが出来る。
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることが出来る。
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念を導き出すことは、当業者であれば容易に理解される。したがって、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、その発明の一態様は、明確であると言える。
なお、本明細書等においては、少なくとも図に記載した内容(図の中の一部でもよい)は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。したがって、ある内容について、図に記載されていれば、文章を用いて述べていなくても、その内容は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。同様に、図の一部を取り出した図についても、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、その発明の一態様は明確であると言える。
本実施例では、本発明の一態様の発光装置の作製方法によって発光装置の備える端子電極を露出させた結果について説明する。
[試料について]
まず、本実施例に用いた試料について説明する。図45(A)に、本発明の一態様の発光装置の一部の写真を示す。図45(B)は、図45(A)において破線で囲われた部分の斜視模式図であり、また図45(C)は、図45(A)、(B)中にA5−A6の一点鎖線で示す部位近傍の断面図に相当する。図45(B)、(C)は、発光装置の一部である加工部材290を示す。図45(A)は、本発明の一態様の発光装置から端子電極を含む一部を切り離したものである。
加工部材290は、基板111、端子電極116、分離層221、接着層120および基板121を有する。基板111及び基板121の表面にはそれぞれ保護フィルム107、108が設けられている。端子電極116は電極116a、電極116bおよび電極116cの積層構造であり、電極116bは発光装置が有するトランジスタや発光素子等と電気的に接続される。電極116c上に分離層221が設けられる。分離層221は第1の層221aおよび第2の層221bの積層構造である。本実施例では、加工部材290に対して回転することで切削加工が可能な刃によって溝部(第1の溝部及び第2の溝部)を形成し、端子電極116上の各層(保護フィルム108、基板121、接着層122、絶縁層129、オーバーコート層268、接着層120および第2の層221b)のうち該溝部に囲まれた領域と重なる部分(以下、被除去層とも表記する)を除去した。該除去は、溝部を形成した際に浮き上がった被除去層をピンセットで持ち上げることで行った。
加工部材290を構成する各層の材料および膜厚は、以下の通りである。
基板111および基板121としては、厚さ約20μmのアラミドフィルムを用いた。保護フィルム107および保護フィルム108としては、厚さ約100μmのPETを用いた。接着層112および接着層122としては、厚さ約2μmの接着性エポキシ樹脂を用いた。接着層120としては、厚さ約5μmの接着性エポキシ樹脂を用いた。絶縁層119としては、厚さ約600nmの酸化窒化シリコン、厚さ約200nmの窒化シリコン、厚さ約200nmの酸化窒化シリコン、厚さ約140nmの窒化酸化シリコン、および厚さ約100nmの酸化窒化シリコンの積層膜を用いた。絶縁層129としては、厚さ約600nmの酸化窒化シリコン、厚さ約280nmの窒化シリコン、厚さ約180nmの酸化窒化シリコン、厚さ約140nmの窒化シリコン、および厚さ約215nmの酸化窒化シリコンの積層膜を用いた。オーバーコート層268としては、厚さ約200nmのアルミニウム(Al)とチタン(Ti)の合金(Al−Ti)、および膜厚約10nmのITOの積層膜を用いた。絶縁層207としては、厚さ約400nmの窒化シリコンおよび厚さ約50nmの酸化窒化シリコンの積層膜を用いた。絶縁層210としては、厚さ約450nmの酸化窒化シリコン膜を用いた。絶縁層211としては、厚さ約100nmの窒化シリコン膜を用いた。絶縁層212aおよび絶縁層212bとしては、それぞれ厚さ約2μmのポリイミドを用いた。電極116aとしては、厚さ約50nmのタングステン、厚さ約400nmのアルミニウム、および厚さ約100nmのチタンの積層膜を用いた。電極116bとしては、厚さ約100nmのチタン、厚さ約400nmのアルミニウム、および厚さ約100nmのチタンの積層膜を用いた。電極116cとしては、厚さ約100nmのAPC(Ag−Pd−Cu、銀とパラジウムと銅の合金)膜を用いた。第1の層221aとしては、発光性の有機化合物を含む厚さ約800nmの有機材料を用いた。第2の層221bとしては、厚さ約80nmの銀とマグネシウムの合金およびITOの積層膜を用いた。
[切削加工を行う装置について]
本実施例において切削加工に用いた装置は、ローランド ディージー社のDesktop Engraver EGX−350である。該装置において使用した刃は材質が超硬合金、工具径が3.175mm、工具長が、114mm、刃先幅が0.127mmの文字用カッターである。
[切削条件を決定する実験について]
次に、端子電極116にダメージを与えることなく被除去層の除去を行うために、溝部を形成する際の加工条件の検討を行った。
まず刃の走査速度、切削深さを固定して、刃の回転数を変えて加工を行った。刃の走査速度は、XY方向は15mm/sec、Z方向は5mm/secとした。ここで、XY方向とは加工部材290の表面に平行な方向であり、Z方向とは加工部材290の表面に垂直な方向である(図45(B)参照)。また、切削深さは、200μmとした。ここで、切削深さの原点(0μm)とは、加工部材290を装置のステージ上に固定した際に、加工部材290の表面(保護フィルム108)と刃の先端が接触する位置を示している。なお、本実施例に示す切削深さは装置の設定値であり、刃の状態や加工部材を固定するステージの水平精度等によって、実際に加工される加工部材290の表面からの切削深さと異なる場合がある。
回転させた刃を保護フィルム108の側からZ方向に移動させて加工部材290に挿入し、上記の切削深さに達した後に、該切削深さを維持したままXY方向に移動させた。XY方向の移動は角が丸みを帯びた矩形に沿って行い、刃の軌跡が閉曲線となってから、すなわち刃が形成した溝の上面形状が閉曲線となってから、刃をZ方向に移動させて加工部材290から離した。該矩形に囲まれた領域は上面形状において、第2の層221bの内側に含まれる。該矩形の長辺の長さは約34mm、短辺の長さは約3mmである。
上記の切削加工を行い、被除去層を除去して開口部を形成した結果を図46に示す。図46(A)は加工部材290から被除去層を除去した後の斜視模式図である。図46(B1)乃至(B3)は刃の回転数を10000rpmとして切削加工を行った場合の加工部材290の開口部を光学顕微鏡の透過モードで観察した結果である。また図46(C1)乃至(C3)は刃の回転数を20000rpmとして切削加工を行った場合の加工部材290の開口部を光学顕微鏡の透過モードで観察した結果である。なお、図46(B1)乃至(B3)及び図46(C1)乃至(C3)は、それぞれ図46(A)に示す領域P1乃至P3と対応している。
図46(B1)乃至(C3)に示す写真において、明るい領域には可視光を遮る膜が存在しない。また暗い領域のうち、ストライプ状に並んでいる部分は端子電極116である。刃の回転数が10000rpmの条件では問題なく被除去層の除去が行えている一方、刃の回転数が20000rpmの条件では、刃の走査領域の一部において端子電極116が破壊され、光が透過している(図46(C1)、(C3)の破線囲み部)。また、刃の回転数が20000rpmの条件では開口部の縁(保護フィルム108、基板121等の露出部)の表面荒れが大きい。これらは、刃の回転数が大きいと、切削において刃が接触する位置から離れた領域をも巻き込むことが原因と考えられる。以上の結果から、刃の回転数は10000rpmとした。
次に刃の回転数、切削深さを固定して刃の走査速度を変えて加工を行った。刃の回転数は10000rpmとし、切削深さは、200μmとした。加工部材290を切削する際の刃の軌跡は、上記の刃の回転数を決定する実験と同様である。
図47(A1)乃至(A3)は、刃の走査速度を遅い条件(XY方向は3mm/sec、Z方向は1mm/sec)として切削加工を行った場合の加工部材290の観察結果である。また図47(B1)乃至(B3)は、刃の走査速度を速い条件(XY方向は25mm/sec、Z方向は5mm/sec)として切削加工を行った場合の加工部材290の観察結果である。なお、図47(A1)乃至(A3)及び図47(B1)乃至(B3)は、それぞれ図46(A)に示す領域P1乃至P3と対応している。
刃の走査速度が速い条件では問題なく被除去層の除去が行えている一方、刃の走査速度が遅い条件では、刃の走査領域の大部分で端子電極116が破壊され、光が透過している(図47(A1)乃至(A3)参照)。また、刃の走査速度が遅い条件では開口部の縁の表面荒れが大きい。以上の結果から、刃の走査速度は速い方が好ましいことがわかった。
[実験結果について]
以上の加工条件を検討する実験の結果をもとに、本発明の一態様の発光装置の作製方法によって加工部材290の備える端子電極116を露出させる実験を行った。
刃の回転数は10000rpmとし、刃の走査速度はXY方向を30mm/sec、Z方向を10mm/secとした。また、切削深さを刃が走査する矩形の各辺に対してそれぞれ決定した。図48(A)に、加工部材290の上面模式図を示す。加工部材290の最表面は保護フィルム108であり、分離層221及び端子電極116は点線で示している。また図48(A)には加工部材290の切削において刃が走査する軌跡235を示している。
軌跡235は、刃をいちど加工部材290に挿入してから引き抜くまでの軌跡である。図48(A)に示すように軌跡235は軌跡235a(二点鎖線)、軌跡235b(破線)、軌跡235c(一点鎖線)、軌跡235d(破線)からなり、それぞれの軌跡における切削深さは230μm、180μm、120μm、170μmである。それぞれの軌跡においては一定の深さで切削を行うため刃はXY方向のみに移動させ、隣接する2つの軌跡の境界(図48(A)に黒丸で示す)において刃をZ方向に移動させた。刃が軌跡235b乃至235dを通過することで第1の溝部が形成され、刃が軌跡235aを通過することで第2の溝部が形成される。第2の溝部の深さは、第1の溝部の深さよりも大きい。
上記の切削加工を行い、被除去層を除去して開口部を形成した結果を図48(B)、図48(C1)乃至(C6)に示す。図48(B)は加工部材290から被除去層を除去した後の斜視模式図であり、図48(C1)乃至(C6)は該開口部を光学顕微鏡の透過モードで観察した結果である。図48(C1)乃至(C6)は、それぞれ図48(B)に示す領域Q1乃至Q6と対応している。なお、加工部材290から被除去層を除去した後に、アセトンを用いて端子電極116上に残留した第1の層221aを除去している。図48(C1)乃至(C6)に示すように、上記の切削加工において端子電極116にダメージを与えることなく、端子電極116を露出させることができた。
本実施例により、本発明の一態様の発光装置の作製方法によって、端子電極に対するダメージを抑制することが示された。
[深さ方向の加工マージンについて]
なお、本発明の一態様の発光装置の作製方法に関連して、刃の切削における深さ方向の加工マージンの大きさを調査する実験を行った。
加工マージンを調査する実験に用いた切削装置は、ローランド ディージー社のMODELA MDX−40Aである。該切削装置において使用した刃は材質が超硬合金、工具径が3.175mm、工具長が、114mm、刃先幅が0.127mmの文字用カッターである。また、該切削装置の切削におけるZ方向の分解能は2μm/stepである。
上記の加工部材290と同様の加工部材に対して、刃の走査速度及び回転数を固定し、切削深さを変えて加工を行った。具体的には、刃の走査速度は、XY方向は25mm/sec、Z方向は30mm/secとし、刃の回転数は11000rpmとした。該加工部材を切削する際の刃の軌跡は、切削深さを除いて図48(A)に示した軌跡235と同様である。軌跡235aにおける切削深さは本実験において190μmで固定し、軌跡235b、235c、235dにおける切削深さ(以下、端子電極部の切削深さとも記す)を表1に示すように変えて加工を行った。
実験結果を表1に示す。
端子電極部の切削深さが122μm以上の場合に、切削加工後に被除去層の除去を行うことができた。これは、切削加工時に刃が保護フィルム108を貫通して基板121まで達することで、被除去層の除去が行えることを示している。また、端子電極部の切削深さが142μm以下の場合に、端子電極116にダメージを与えることなく切削加工を行うことができた。以上の結果より、切削装置の切削深さを122μm以上142μm以下とすることで、端子電極116にダメージを与えることなく端子電極116を露出させることができることが分かった。すなわち、上記の切削装置を用いて加工部材290と同様の加工部材を切削加工する際の、深さ方向の加工マージンは約20μmであるといえる。
[量産を想定したタクトタイムについて]
ところで、本発明の一態様の表示装置の量産を想定して、上記の切削装置MDX−40Aを用いて溝部を形成する場合のタクトタイムの計算結果を図49に示す。ここでタクトタイムとは、一基板上に設けられた複数の表示装置(ここでは110個の表示装置)の切削加工に要する時間を指す。
本計算における条件は以下の通りである。第6世代(1500mm×1850mm)の大型ガラス基板(以下、G6とも表記する)のハーフサイズである750mm×1850mmのガラス基板上に、表示領域が対角5インチの表示装置(131mm×82mm)を5×22=110個配設する。切削装置の刃の位置出しに要する時間を30sec、溝部を形成する切削に要する時間を5sec/panel、刃のXY方向の走査速度を50mm/secとしている。切削装置のヘッド数、すなわち同時に加工できる刃の数を増やすことで生産性が向上し、ヘッド数を6とすることでタクトタイム180sec以下を達成することができる(図49参照)。
なお、図49ではG6の短辺を半分としたガラス基板の計算結果を示しているが、G6の長辺を半分としたガラス基板の計算結果を図50に示す。図50は図49と比較して、1500mm×925mmのガラス基板上に、対角5インチの表示装置を11×10=110枚配設する点が異なる。図50より、ヘッド数を5以上とすることでタクトタイム180sec以下を達成することができる。
本実施例では、剥離層と絶縁層の密着性と、EL層と陰極の密着性と、を評価した。
本発明の一態様の発光装置を構成する積層構造中に密着性の低い部分を有すると、発光装置の作製工程において、所望の界面(例えば剥離層と絶縁層の界面)での剥離が困難になる恐れがある。例えば、EL層と電極の密着性や、EL層を構成する層どうしの密着性は、比較的低い場合があり、これらの界面で膜剥がれが生じることで、歩留まりが低下することがある。
そこで、本実施例では、剥離層と絶縁層の界面での剥離に要する力と、EL層と陰極の界面での剥離に要する力と、をそれぞれ測定することで、剥離層と絶縁層の密着性と、EL層と陰極の密着性とを評価した。
本実施例では、剥離層と絶縁層の界面での剥離に要する力を測定するための試料Aと、EL層と陰極の界面での剥離に要する力を測定するための試料Bを用いた。
図51(A)に示すように、試料Aは、ガラス基板801、剥離層803、絶縁層805、素子層807、及びフィルム基板809を有する。
まず、ガラス基板801上に、剥離層803として、厚さ約30nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成した。
次に、剥離層803上に、絶縁層805として、厚さ約600nmの酸化窒化シリコン膜、厚さ約200nmの窒化シリコン膜、厚さ約200nmの酸化窒化シリコン膜、厚さ約100nmの窒化シリコン膜、及び厚さ約100nmの酸化窒化シリコン膜を、プラズマCVD法により形成した。
そして、窒素雰囲気下、450℃で1時間の加熱処理を行った。
その後、絶縁層805上に、素子層807として、酸化物半導体を用いたトランジスタ等を形成した。そして、素子層807とフィルム基板809とを貼り合わせた。フィルム基板809には、有機樹脂フィルムを用いた。以上により、試料Aを作製した。
図51(B)に示すように、試料Bは、ガラス基板801、素子層817、及びフィルム基板809を有する。
まず、ガラス基板801上に、素子層817を形成した。素子層817としては、素子層807と同様の構成(酸化物半導体を用いたトランジスタ等)を形成した後、その上に、有機EL素子を形成した。
有機EL素子には、青色の蛍光材料を発光物質として含む発光層を有する蛍光発光ユニットと、緑色の燐光材料を発光物質として含む発光層及び赤色の燐光材料を発光物質として含む発光層を有する燐光発光ユニットと、が積層された構成を適用した。有機EL素子は、ガラス基板801側から、陽極、EL層、及び陰極を有する。陰極としては、厚さ約15nmのマグネシウム−銀合金膜と、厚さ約70nmのITO膜とを形成した。
ここで、ITO膜の成膜条件によって、EL層と陰極の密着性が変化することがある。本実施例では、アルゴン流量50sccm、酸素流量2sccm、圧力1Pa、電流2Aの条件でITO膜を形成した。
そして、素子層817とフィルム基板809とを貼り合わせた。以上により、試料Bを作製した。
本実施例の試料の密着性の評価には、図51(C)に示すような治具を用いた。図51(C)に示す治具は、複数のガイドローラ854と、サポートローラ853を有する。測定方法としては、まず、予めガラス基板801上に形成された積層体850にテープ851を貼り付け、端部を一部剥離しておく。次に、テープ851及び積層体850をサポートローラ853に引っ掛けるようにガラス基板801を治具に取り付け、予め剥離したテープ851及び積層体850の一部がガラス基板801に対して垂直方向になるようにする。ここで、テープ851をガラス基板801に対して垂直方向に引っ張り(速度20mm/min)、積層体850をガラス基板801から剥離する際に、垂直方向に引っ張る力を測定することで、剥離に要する力を測定することができる。ここで、試料Aにおける積層体850は、絶縁層805、素子層807、及びフィルム基板809を有する。つまり、図51(C)に示すように、剥離が進行している間、試料Aでは、剥離層803が露出した状態でガラス基板801がガイドローラ854に沿ってその面方向に走行する。一方、試料Bにおける積層体850は、陰極及びフィルム基板809を有する。つまり、剥離が進行している間、試料Bでは、EL層が露出した状態でガラス基板801がガイドローラ854に沿ってその面方向に走行する。サポートローラ853及びガイドローラ854は、積層体850及びガラス基板801の走行中の摩擦の影響を無くすために回転可能に設けられている。
密着性の評価には、島津製作所製の小型卓上試験機(EZ−TEST EZ−S−50N)を用いた。剥離試験方法には、日本工業規格(JIS)の規格番号JIS Z0237に準拠する粘着テープ・粘着シート試験方法を用いた。各試料の寸法は、126mm×25mmとした。
本実施例では、測定開始位置から20mm以上50mm以下の範囲の剥離に要する力の中央値を算出した。なお、試料A及び試料Bはそれぞれ2つ作製して評価し、得られた中央値の平均値を算出した。
その結果、試料Aにおける、剥離層803と絶縁層805の界面での剥離に要する力は、0.094Nであった。また、試料Bにおける、EL層と陰極の界面での剥離に要する力は、0.270Nであった。つまり、本実施例では、EL層と陰極の密着力が、剥離層803と絶縁層805の密着力の2倍以上であった。
以上、本実施例では、剥離層と絶縁層よりも高い密着性を有するEL層と陰極を含む有機EL素子を作製できることが示された。これにより、発光装置の作製工程において、有機EL素子の膜剥がれを抑制し、剥離層と絶縁層の界面での剥離の歩留まりを高めることができる。