[go: up one dir, main page]

JP2016132599A - サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法 - Google Patents

サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016132599A
JP2016132599A JP2015008959A JP2015008959A JP2016132599A JP 2016132599 A JP2016132599 A JP 2016132599A JP 2015008959 A JP2015008959 A JP 2015008959A JP 2015008959 A JP2015008959 A JP 2015008959A JP 2016132599 A JP2016132599 A JP 2016132599A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
crystal
crucible
single crystal
sapphire single
growth
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015008959A
Other languages
English (en)
Inventor
富男 梶ヶ谷
Tomio Kajigaya
富男 梶ヶ谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2015008959A priority Critical patent/JP2016132599A/ja
Publication of JP2016132599A publication Critical patent/JP2016132599A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

【課題】温度勾配凝固法による単結晶育成後、室温までの冷却時におけるクラック発生を抑制できるサファイア単結晶製造装置の提供。【解決手段】坩堝41内の底部側に種結晶44を設置し、坩堝41の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、原料45を溶融し、種結晶44側から原料融液を固化させることで単結晶育成を行うサファイア単結晶製造装置であって、底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁411を有する坩堝41と、坩堝41内で育成結晶46を支持する育成結晶支持部421、及び育成結晶支持部421と接続され育成結晶支持部421を坩堝41内で上下方向に移動できる結晶移動軸422を含む育成結晶移動機構42と、を備え、坩堝41の底部412には底部開口部412Aが設けられており、結晶移動軸422は底部開口部412Aを通り、少なくとも一部が坩堝41内に収容されるサファイア単結晶製造装置。【選択図】図4

Description

本発明は、サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法に関する。
サファイア単結晶は、酸化アルミニウムのコランダム構造を有する結晶体であり、優れた機械的および熱的特性、化学的安定性、光透過性を有することから、多くの分野で利用されている。サファイア単結晶は、特に、半導体分野において、窒化ガリウム(GaN)系発光ダイオードの発光層を成長させるための基板として、あるいは、シリコン・オン・サファイア(SOS)デバイス用の基板などに用いられており、これらの用途の重要性が高まるに応じて、その需要が飛躍的に伸びてきている。
サファイア単結晶の製造方法として、チョクラルスキー法(Cz法)やカイロポーラス法(KY法)、EFG法(edge−defined film−fed growth 法)などが知られている。これらの方法は、サファイア原料を坩堝内で融解し、その原料融液表面に種結晶を接触させて徐々に引き上げることにより単結晶を育成する方法である。
また、その他のサファイア単結晶の製造方法として、ブリッジマン法やグラディエントフリーズ法(GF法)が知られている。これらの方法は、予め坩堝内に原料とともに種結晶を設置し、種結晶部が最も温度が低くなるように形成した温度勾配下で、種結晶を起点として原料融液を一方向凝固させることで単結晶を得る方法である。ブリッジマン法やGF法の中で、種結晶を坩堝底部に設置し、坩堝底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配下で、坩堝底部の種結晶から上方に向かって結晶育成を行う場合は、特に、垂直ブリッジマン法(VB法)、垂直GF法(VGF法)と呼ばれている。
なお、これらの方法で育成されたサファイア単結晶は、所定の結晶方位で基板状に加工され、表面を鏡面研磨することによりサファイア単結晶基板として出荷されている。
近年、需要が伸びている発光ダイオード作製用途のサファイア基板は、Cz法、KY法、EFG法で育成されることが一般的である。これらの方法では、種結晶を原料融液に浸す温度(シーディング温度)の制御と育成中及び冷却中の温度勾配の適正化が、結晶育成の収率、再現性を決定する要因である。
しかし、サファイア単結晶の原料となる酸化アルミニウムの融点が2000℃を越えるので、Cz法等によりサファイア単結晶を育成する際、坩堝を設置した炉内の熱の伝達は輻射が主体となっている。従って、低コスト化のために育成結晶を大型化するに伴って、所望の形状の結晶を得るためのシーディング温度の制御や温度勾配の適正化の難易度が高くなる。結晶育成の制御性、再現性を高めるためには、温度勾配を大きくすることが有利であるが、高温度勾配下で育成された結晶は、結晶内の温度差に起因する熱応力で歪を生じ、結晶性が悪化したり、クラックが発生するという欠点がある。
それに対して、VB法やVGF法のような容器内(坩堝内)の一部に種結晶を設置し、その種結晶から容器の形状に従って原料融液を固化させることで単結晶育成を行う方法は、結晶形状が容器形状で規定され、結晶形状の制御が不要となる。このため、低温度勾配下での育成が可能で、高品質結晶を得ることが可能である。
例えば特許文献1には、融点1700℃以上の金属又は金属化合物からなる高融点単結晶材料の製造方法において、溶融原料が封入された坩堝を温度勾配を有する炉内を移動させて単結晶を育成するブリッジマン法を用いて単結晶を製造する方法が開示されている。
ところで、前記のようなVB法、あるいはVGF法によって容器内で容器の内壁形状に沿った形状で育成されたサファイア単結晶においては、クラック発生率が高いことが問題となっている。これは、主にサファイア単結晶と坩堝材の熱膨張係数の違いに起因していると考えられる。つまり、サファイア単結晶の熱膨張係数よりも坩堝に用いている金属部材の熱膨張係数の方が大きい場合は、育成終了後に室温まで冷却する過程において、サファイア単結晶の収縮率よりも、その周囲にある坩堝の収縮率の方が大きくなるために、温度降下に伴って、育成結晶に圧縮応力が加わる。この圧縮応力が育成結晶にクラックを発生させる原因となっている。
そこで、例えば特許文献2には、ルツボに、サファイア融点と常温との2点間における線膨張係数が、製造されるサファイア単結晶の成長軸に垂直な方向のサファイア融点と常温との2点間における線膨張係数よりも小さい材料からなるルツボを用いるサファイア単結晶の製造方法が開示されている。具体的なルツボ材料としては、タングステン、モリブデン、タングステンとモリブデンの合金が開示されている。
特開2007−119297号公報 特開2011−042560号公報
しかしながら、特許文献2に開示された方法を用いてもクラックを完全に抑制することは困難であった。特に育成するサファイア単結晶のサイズが大型化するに従ってクラック発生率が高くなっており、例えば6インチφのサファイア単結晶を育成する場合は、ほぼ100%の確率でクラックが発生していた。
これは、冷却開始からの同一経過時間で比較した場合、育成結晶の直径が大きくなるに従って、坩堝の内側に存在する結晶の中心部温度よりも、結晶の外周部に存在する坩堝の温度の方がより低くなり、冷却時の半径方向の温度差が大きくなる。このため、冷却開始からの同一経過時間で比較した場合、坩堝の方が結晶よりも収縮率が大きくなり、坩堝により結晶に応力が加えられることに起因すると考えられる。
そこで、本発明の一側面では、上記従来技術が有する問題に鑑み、坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、種結晶から原料融液を固化させることでサファイア単結晶の育成を行う際にクラックの発生を抑制できるサファイア単結晶製造装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、前記種結晶側から原料融液を固化させることで単結晶育成を行うサファイア単結晶製造装置であって、
底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝と、
前記坩堝内で育成結晶を支持する育成結晶支持部、及び前記育成結晶支持部と接続され前記育成結晶支持部を前記坩堝内で上下方向に移動できる結晶移動軸を含む育成結晶移動機構と、を備え、
前記坩堝の底部には底部開口部が設けられており、前記結晶移動軸は前記底部開口部を通り、少なくとも一部が前記坩堝内に収容されるサファイア単結晶製造装置を提供することができる。
本発明の一態様によれば、坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、種結晶から原料融液を固化させることでサファイア単結晶の育成を行う際にクラックの発生を抑制できるサファイア単結晶製造装置を提供することができる。
VGF法によりサファイア単結晶を製造する場合のサファイア単結晶製造装置の構成例。 VGF法によりサファイア単結晶を製造する場合の手順、及び温度分布変化の説明図。 VGF法によりサファイア単結晶を育成、冷却する際の熱の流れの説明図。 本発明の実施形態におけるサファイア単結晶製造装置の構成説明図。 坩堝の側壁のテーパー角度の説明図。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
(サファイア単結晶製造装置)
本実施形態のサファイア単結晶製造装置の一構成例について説明する。
本実施形態のサファイア単結晶製造装置は坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、種結晶側から原料融液を固化させることで単結晶育成を行うサファイア単結晶製造装置に関し、以下の構成を有することができる。
底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝。
坩堝内で育成結晶を支持する育成結晶支持部、及び育成結晶支持部と接続され育成結晶支持部を坩堝内で上下方向に移動できる結晶移動軸を含む育成結晶移動機構。
そして、坩堝の底部には底部開口部が設けられており、結晶移動軸は底部開口部を通り、少なくとも一部が前記坩堝内に収容された構成とすることができる。
上述のように本実施形態のサファイア単結晶製造装置は、坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、種結晶側から原料融液を固化させることで単結晶育成を行うサファイア単結晶製造装置に関する。具体的には例えばVB法やVGF法によりサファイア単結晶を製造する際に好適に用いることができるサファイア単結晶製造装置に関する。
ここでまず、VGF法によりサファイア単結晶を製造する場合の、従来のサファイア単結晶製造装置の構成例、及びサファイア単結晶の製造手順について図1、図2を用いて説明する。
従来、VGF法によりサファイア単結晶を製造する場合、図1に示すような構成を有するサファイア単結晶製造装置10が用いられていた。図1はサファイア単結晶製造装置の坩堝の中心軸を通る面における断面構成図を示している。
サファイア単結晶製造装置10はチャンバー11の内壁に沿って断熱材12が設けられている。そして、断熱材12に囲まれた内部空間にはヒーター13、及びヒーター13に囲まれるようにして坩堝14が設けられている。坩堝14は坩堝軸15により底部側から支持することができる。坩堝14内にはサファイア単結晶の製造開始時、坩堝14の底部側に種結晶141を配置し、種結晶141の上部に原料を充填しておくことができる。
坩堝14の材質は、サファイアの融点2050℃を越える温度でも安定で、且つ、原料融液と反応しない材料であることが好ましい。このため、坩堝14の材質として例えばイリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデンータングステン合金(Mo−W合金)等を用いることができる。特に、Mo、W、Mo−W合金のように、線膨張係数がサファイア単結晶と近いか、もしくはサファイア単結晶よりも小さなものを好ましく用いることができる。
ヒーター13と断熱材12の材質については特に限定されないが、例えばタングステン製ヒーターと、タングステン製及びモリブデン製のリフレクタとの構成とすることができる。また、カーボン製ヒーターと、カーボン製積層断熱材との構成とすることもできる。
ヒーター13は坩堝14を配置した該ヒーター13で囲まれた領域内に所望の温度勾配を形成することができるように、例えば高さ方向に複数のヒーターを組み合わせた構成とし、各ヒータ―毎に温度制御するように構成することもできる。
そして、サファイア単結晶を育成する際に種結晶141の温度を測定するため、底部側温度測定手段16を設けることができる。底部側温度測定手段16としては例えば放射温度計や熱電対を用いることができ、坩堝軸15を貫通するように形成した貫通孔や、観察窓151を介して温度を測定することができる。また、坩堝14内に充填した原料、または原料が融解した原料融液142の温度を測定するため、上部側温度測定手段17を設けることができる。上部側温度測定手段17としては例えば放射温度計を用いることができ、チャンバー11や断熱材12を貫通する貫通孔、及び観察窓18を介して温度を測定することができる。
なお、チャンバー11内を所定の雰囲気とするために図示しないガス供給手段や、ガス排気手段等を設けることができる。必要に応じて任意にさらに各種手段を設けることもできる。
そして、図1に示したサファイア単結晶製造装置を用いてVGF法によりサファイア単結晶を製造する際、サファイア単結晶を育成する単結晶育成工程における手順、及び温度分布の変化について図2(a)〜図2(c)を用いて説明する。図2(a)〜図2(c)の各図では右側に坩堝14内の種結晶141、原料融液142、育成したサファイア単結晶21の分布を模式的に示しており、左側に坩堝14内の高さ方向の温度分布を示している。なお、図2(a)〜図2(c)においては坩堝14、及びヒーター13以外の構成については記載を省略している。図2(a)〜図2(c)の左側に示した温度分布のグラフは縦軸が坩堝14の高さ方向の位置を、横軸が温度を示している。横軸におけるTmはサファイア(酸化アルミニウム)の融点を示している。
図2(a)は右側の図に示すように坩堝14に充填した原料を融解させ、サファイア単結晶の育成を開始した原料融解ステップを実施している状態を示している。
単結晶育成工程を開始する前に予め、坩堝14の底部に種結晶141を設置し、その上部に原料を配置しておくことができる。そして、図2(a)に示した原料融解ステップにおいては坩堝14の底部が坩堝14の上部よりも低温となる温度勾配下で昇温し、原料を全量融解して原料融液142とすることができる。特に左側の図に示すように、種結晶141の部分についてはサファイアの融点以下、原料融液142の部分についてはサファイアの融点以上となるように温度分布を制御することができる。
図2(a)の原料融解ステップでは、種結晶141の形状加工時に発生し表面に残った加工歪層を取り除くために、種結晶141の上表面部数mmから1cm程度の範囲で融解させることができる。種結晶の上表面部を融解させることにより、歪が取り除かれた種結晶141表面が原料融液142と良く馴染むようにすることができる。
そして、図2(a)に示した温度分布の状態まで昇温した後、十分な時間を置き、温度を安定させることが好ましい。この時、種結晶141の融解表面と原料融液142との境界(固液界面)をサファイアの融点である2050℃とすることができる。
なお、図2(a)に示した原料融解ステップにおいて、原料、及び種結晶141の融解不足、あるいは、種結晶141の過融解が起こらないように温度を制御することが好ましい。制御は例えば、図1に示したサファイア単結晶製造装置10で説明したように、底部側温度測定手段16、及び上部側温度測定手段17により、坩堝14の底部側の温度、及び原料融液142表面の温度をモニターし、モニターした温度に基づいて実施できる。この際、モニターした温度から坩堝内温度分布が、予備試験で求めた適切な温度プロファイルと一致していることを確認しながら制御を実施することが好ましい。
チャンバー11内の雰囲気は、チャンバー内に設置した部材の材質等に応じて任意に選定することができ、特に限定されるものではない。例えば、不活性ガス雰囲気、もしくは真空雰囲気とすることが好ましい。
図2(a)を用いて説明したように原料が完全に融解し、且つ、種結晶141の上表面が融解し原料融液142と馴染んだと判断した後、降温ステップを実施することができる。
図2(b)に示すように降温ステップでは、上下方向の温度勾配を保持したまま、所定の速度で全体の温度を降下させることができる。
具体的には、図2(b)の左側のグラフに示したように、原料融解ステップでは温度分布が点線Aで示されていたところ、実線Bの温度分布となるように温度勾配を保持したまま、全体の温度を降下させることができる。図2(b)の左側のグラフから明らかなように、温度勾配を保持したまま全体の温度を降下させることによって、温度勾配に従って、坩堝内におけるサファイアの融点と同じ温度になっている位置が上部へ移動する。その移動に伴って、固液界面も上部へ移動して行く。つまり、種結晶を元に、種結晶と同じ結晶方位を持つサファイア単結晶が坩堝底部から上部に向かって育成され、図2(b)の右側の図に示したように、坩堝14内には底部側から種結晶141、育成結晶21、原料融液142が配置された状態となる。
降温ステップでは、原料融解ステップにおける温度分布を示す点線Aから上述のように実線Bの温度分布となるように全体の温度を降下させた後、さらに、図2(c)の左側のグラフに示すように、実線Cで示した温度分布まで全体の温度を降下させることができる。実線Cで示した温度分布では、坩堝14内の原料融液142全体がサファイアの融点未満となっており、図2(a)において原料融液142であった部分全体が育成結晶21となり結晶化したところで結晶育成は終了となる。
その後、所定の冷却速度で室温まで温度を降下させる冷却工程を実施し、坩堝14から育成結晶21を取出しサファイア単結晶とすることができる。得られたサファイア単結晶は例えば製品基板とするため各種加工をすることができる。
しかし、既述のようにVGF法等によりサファイア単結晶を製造した場合、得られるサファイア単結晶がクラック等を含む場合があった。そこで、本発明の発明者らは、従来のサファイア単結晶の製造装置でサファイア単結晶にクラック等が生じる具体的なメカニズムについて検討を行った。この点について以下に説明する。
図3(a)は坩堝14内に種結晶141、及び原料を充填後、ヒーター13により坩堝14の外周部から加熱して原料を融解して原料融液142とした後、全体的に温度を降下させて原料融液142の一部を育成結晶21とした際の状態を示している。図中の矢印は熱の流れを示している。また、図3(a)、(b)は坩堝14及びヒーター13の周辺のみを拡大して示した図であり、断熱材等周囲の部材については記載を省略している。
図3(a)に示すように、坩堝14の外周部に設置されたヒーター13によって、坩堝14を通して坩堝14内部の種結晶141、原料融液142、育成結晶21を加熱している。このため、坩堝14及び育成結晶21の温度を例えば図中点線X1−X1´に沿って水平方向で比較すると、坩堝14の方が高くなっている。なお、図3(a)中矢印で示したようにヒーター13により原料融液142等に加えられた熱は種結晶141を通って、坩堝軸15の方へ流れることになる。
そして、坩堝14の外壁のうち、サファイアの融点である2050℃よりも高温となった部分の水平方向内部に、育成中の結晶の成長界面Yは存在している。また、育成結晶21の直径は、坩堝14の内径で決まる。このため、まず坩堝14はサファイアの融点よりも高温に曝され、その温度で決まる膨張率に応じて坩堝14の内径が拡大されている。そして、育成結晶21は、該拡大した坩堝14の内径により直径が規定されて成長している。
育成中の結晶は、結晶内の温度差に起因する熱歪によって発生するクラックや転位、リネージ等の結晶欠陥の発生を抑制するために、結晶内の温度差を可能な範囲で小さくするように設定した温度勾配下に存在している。そして、結晶育成を進行させるため、原料融液を生成後、温度勾配を保ちつつ全体として温度を降下させるが、この際の降温速度は、急成長による結晶性の悪化を回避するために非常に低速である。
具体的には例えば、サファイア単結晶の単結晶育成工程における縦方向、すなわち坩堝14の高さ方向の温度勾配は10℃/cm程度以下で実施される。また、成長界面の前進速度(結晶成長速度)は結晶性悪化を抑制するために3mm/h〜5mm/h程度以下で実施される。このため、先の温度勾配を保ちつつ全体として温度を降温させる際の降温速度は、1時間当たり数℃程度である。
また、坩堝14の材質としては既述のように例えば、Mo、W、Mo−W合金のように、線膨張係数がサファイア単結晶と近いか、もしくはサファイア単結晶よりも小さなものを好ましく用いることができる。従って、結晶育成が進行している時は、低温度勾配下で且つ低降温速度であるために、既に結晶化した部分とその周囲にある坩堝の収縮率の差に起因する結晶への圧縮応力は非常に小さいか、もしくは0と考えられる。
しかしながら、単結晶育成工程終了後、育成したサファイア単結晶を室温まで冷却する冷却工程では、図3(b)に矢印で示すように、熱は坩堝14の外壁や育成結晶21の表面から外側の空間に向かって流れる。従って、坩堝14の温度と育成結晶21の温度とを例えば図中の点線X2−X2´に沿って水平方向で比較した場合、育成結晶21の方が高くなっている。加えて、冷却過程では、育成結晶21を短期間で効率よく取り出すために、降温速度は、単結晶育成工程における降温速度と比較すると一桁以上大きな値とするのが一般的である。
そのため、冷却工程における、図中の点線X2−X2´に沿った水平方向での坩堝14の収縮率と育成結晶21の収縮率とを比較すると、坩堝14として線膨張係数がサファイア単結晶よりも僅かに小さいMo−W製坩堝等を用いても、坩堝14の方が大きくなる。従って、冷却工程において坩堝14により、育成結晶21に圧縮応力が加えられる。この圧縮応力によって、育成結晶21にクラックの発生、結晶性の悪化を招いていた。
そして、育成する結晶の直径が大きくなればなるほど、水平面内での温度差が大きくなるために、育成結晶に加わる圧縮応力が大きくなり、既述のようにクラック発生率は高くなると考えられる。
冷却工程におけるクラックの発生を回避するために、冷却工程における降温速度を、育成時と同程度に低速にすることも考えられる。しかしながら、そのような低速冷却では、2000℃を越えるサファイア単結晶の育成温度から室温まで温度を降下させるのに2週間から1カ月程度の時間が掛ってしまい、非常に効率が悪く生産に用いることはできない。
そこで、本発明の発明者らはクラックの発生を抑制できるサファイア単結晶製造装置について検討を行い、本発明のサファイア単結晶製造装置を完成させた。以下に具体的に説明する。
図4に本実施形態のサファイア単結晶製造装置の断面構成図を示す。図4は、坩堝の中心軸を通る断面における断面図を示しており、坩堝及びこれに接続された部材を拡大して示している。このため、図4に示した坩堝及びこれに接続された部材以外については記載を省略している。
図4を用いて本実施形態のサファイア単結晶製造装置の構成について説明する。
図4(a)、(b)に示すように、本実施形態のサファイア単結晶製造装置40は、坩堝41、及び育成結晶移動機構42を有することができる。
坩堝41は側壁411が底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状を有することができる。すなわち、図4(a)に示した坩堝41の底部(底面)の直径L1よりも上部の直径L2の方が長くなるように構成することができる。
育成結晶移動機構42は、坩堝41内で育成結晶を支持する育成結晶支持部421と、育成結晶支持部421と接続され育成結晶支持部を坩堝41内で上下方向に移動できる結晶移動軸422とを含む。
育成結晶支持部421は、種結晶44、及び種結晶44上に配置した原料45や、育成した育成結晶46を支持できるように構成されていればよく、その形状は特に限定されないが、例えば図4(a)、(b)に示すように板状形状とすることができる。この場合、育成結晶支持部421は坩堝41の底部の形状にあわせた形状を有することが好ましく、例えば坩堝41の底部(底面)が円形状を有する場合、育成結晶支持部421は円板形状を有することが好ましい。
育成結晶支持部421は、図4(a)、(b)に示すように上面側には種結晶44等を配置することができ、下面側には結晶移動軸422を接続することができる。
そして育成結晶支持部421が上述のように円板形状を有する場合、育成結晶支持部421の直径は、坩堝41の底部(底面)の直径L1と同じ、または直径L1よりもわずかに小さいことが好ましい。
また、育成結晶支持部421の直径は、育成結晶支持部421上に支持する種結晶44の直径よりも3%以上10%以下小さいことが好ましい。すなわち種結晶44の直径を100とした場合に、育成結晶支持部421の直径は90以上97以下であることが好ましい。これは、種結晶44の直径よりも育成結晶支持部421の直径を小さくすることで、原料融液が種結晶44の側面を伝って育成結晶支持部421まで流れ込んだ場合でも、育成結晶支持部421及び結晶移動軸422と、坩堝41との固着を防止できるからである。
なお、種結晶44の側面は坩堝41の形状にあわせて底部側(坩堝41の底部と対向する面側)から、上部側に向かってテーパー形状としてもよい。
種結晶44の側面がテーパー形状を有する場合、育成結晶支持部421の種結晶44と対向する面の直径と、種結晶44の育成結晶支持部421と対向する面の直径とが上記関係を満たすことが好ましい。
そして坩堝41の底部412には底部開口部412Aが設けられており、結晶移動軸422は底部開口部412Aを通り、少なくとも一部が坩堝41内に収容された構成とすることができる。なお、底部開口部412Aも坩堝41を構成しているため、図4(a)のように底部開口部412A内に結晶移動軸422が配置されている場合でも坩堝41内に結晶移動軸422の一部が収容されていることとなる。
結晶移動軸422の直径は特に限定されるものではなく、育成結晶46の重量と結晶移動軸422の材質による強度及び熱伝導率に応じて、任意に決定することができる。
また、坩堝41の底部412に形成した底部開口部412Aは坩堝41の底部412中心部に形成することが好ましく、その開口径は特に限定されない。ただし、図4(a)、(b)に示すように底部開口部412Aには、結晶移動軸422が挿入されることから、結晶移動軸422の直径に応じて選択できる。
また、坩堝41を支持するため、坩堝41の下部には坩堝軸43を設けることができる。この場合坩堝軸43の中央部にも貫通孔を設けておき、結晶移動軸422を該貫通孔内に収容するように構成することができる。坩堝軸43に設けた貫通孔についても結晶移動軸422を収容できるように結晶移動軸422の直径に応じて貫通孔の直径を選択することができる。この際、結晶移動軸422の上下方向の移動を阻害しない程度に該貫通孔の直径を選択することが好ましい。
坩堝41の材質は特に限定されるものではないが、サファイアの融点2050℃を越える温度でも安定で、且つ、原料融液と反応しない材料であることが好ましい。このため、坩堝41の材質として例えばイリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデンータングステン合金(Mo−W合金)等を用いることができる。特に、Mo、W、Mo−W合金のように、線膨張係数がサファイア単結晶と近いか、もしくはサファイア単結晶よりも小さなものを好ましく用いることができる。
また、育成結晶移動機構42についてもその材質は特に限定されるものではないが、坩堝41や坩堝41内に配置される種結晶44と接し、同様にヒーターにより加熱されるため、サファイアの融点を超える温度でも安定であることが好ましい。特に結晶移動軸422は坩堝41の底部開口部412A内に挿入されるため、坩堝41と熱膨張係数が同じ、または近い材質であることが好ましい。特に、育成結晶移動機構42は坩堝41と同じ材質により構成されていることがより好ましい。
なお、図4に示したサファイア単結晶製造装置40は既述のように坩堝41及びそれに接続された部材のみを拡大して示しており、サファイア単結晶を製造するにあたって必要な各種部材をさらに有することができる。例えば図1における坩堝14、及び坩堝軸15に替えて、図4に示した坩堝41、及び育成結晶移動機構42、坩堝軸43を設けた構成とすることができる。
具体的には図1を用いて説明したように坩堝41の側面を取り囲むようにヒーターを設けることができる。また、ヒーター、及び坩堝41を取り囲むようにチャンバーや、チャンバーの内壁面に沿って断熱材を設けることができる。断熱材や、ヒーターについては特に限定されるものではなく、例えば図1のサファイア単結晶製造装置10で説明した場合と同様に構成することができるため、ここでは説明を省略する。
そして、サファイア単結晶を育成する際に坩堝41の底部側の温度、特に種結晶の温度を測定するため、底部側温度測定手段を設けることができる。また、坩堝41内に充填した原料や原料融液の温度を測定するため、上部側温度測定手段を設けることができる。底部側温度測定手段や、上部側温度測定手段としては、熱電対や放射温度計を用いることができ、図1で説明したように必要に応じて観察窓等を設けることができる。
なお、底部側温度測定手段を設ける場合、底部側温度測定手段により坩堝41の底部側の温度を測定できるように、結晶移動軸422には、図4(a)、(b)に示したように貫通孔422Aを形成し、中空構造とすることが望ましい。貫通孔422Aの下端部には図示しない観察窓を形成し、該観察窓を介して底部側温度測定手段により坩堝41の底部側の温度を測定することができる。
また、本実施形態のサファイア単結晶製造装置については必要に応じてさらに任意の部材を設けることができる。例えば、チャンバー内を所定の雰囲気とするために図示しないガス供給手段や、ガス排気手段等を設けることもできる。
ここで、本実施形態のサファイア単結晶製造装置40を用いてサファイア単結晶を育成する場合の手順について説明する。
サファイア単結晶製造装置40を用いてサファイア単結晶を育成する際には、図4(a)に示すように育成結晶移動機構42を構成する育成結晶支持部421が坩堝41の底部412側に位置するように、結晶移動軸422を図中下側に引き下げておくことができる。この場合、図4(a)に示すように育成結晶支持部421は坩堝41の底部と接した状態とすることができる。
そして、単結晶育成工程を開始する前に図4(a)に示すように育成結晶支持部421上には種結晶44、及び原料45を配置しておくことができる。
なお、単結晶育成工程を実施している間には原料45を溶融した原料融液や、原料融液から形成した育成結晶46は坩堝41の側壁411と接することになるが、既述のように単結晶育成工程では坩堝41から育成結晶に対して圧縮応力はほとんど加わらない。このため、育成結晶46にクラック等を生じる恐れはない。
次に、単結晶育成工程終了後、育成結晶46を室温まで冷却する冷却工程の後述する冷却ステップを開始する前、または開始後所定のタイミングに、図4(b)に示すように育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422を坩堝41内に押し上げることができる。これにより、結晶移動軸422と接続された育成結晶支持部421を坩堝41内で上方に移動できる。そして、育成結晶支持部421上には種結晶44及び育成結晶46が支持されているため育成結晶支持部421が坩堝41内で上方に移動するのにあわせて種結晶44及び育成結晶46も、坩堝41内で坩堝41とは独立して上方に移動させることができる。
この際、上述のように坩堝41の側壁411は底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状を有するため、育成結晶46の直径よりも、移動後の位置において育成結晶46が対向する坩堝41の側壁の方が直径が大きくなっている。このため、図4(b)に示すように育成結晶46を上方に移動させることにより、育成結晶46の外周部と、坩堝41の側壁411との間に隙間(空間)を形成することができる。
このようにサファイア単結晶の育成終了後、冷却時に育成結晶46と坩堝41との間に隙間を形成する操作(隙間形成ステップ)を実施することにより育成結晶46と坩堝41の収縮率の差に起因して結晶に圧縮応力が加わることを回避することができる。それによって、育成結晶の結晶性の悪化やクラック発生を防止することができる。
上述のように本実施形態のサファイア単結晶製造装置を用いた場合、冷却工程で育成結晶にクラック等を生じることを抑制できる。このため、冷却工程において、単結晶育成工程の降温速度と比較して一桁以上大きな、生産上実用的な冷却速度で育成結晶を冷却することが可能となり、高品質サファイア単結晶が効率よく高収率で得ることが可能となる。
ここで、本実施形態のサファイア単結晶製造装置40の構成についてさらに説明する。
本実施形態のサファイア単結晶製造装置40において、育成に用いる坩堝41の側壁のテーパー角度は、坩堝41の材質の線膨張係数等により任意に選択することができるが、坩堝41の側壁のテーパー角度は0.3°以上3°以下であることが好ましい。
これは、テーパー角度が0.3°未満の場合、隙間形成ステップにおいて育成結晶46の外周部と坩堝41の側壁との間に、育成結晶46に応力が掛らないようにするに十分な幅の隙間を形成するために行う結晶上昇の距離を長くすることが必要になる場合がある。それに応じて、冷却時の均熱性を確保するために、育成結晶長に対するヒーター高さ、坩堝高さ、更にはサファイア単結晶製造装置全体の高さの比を大きくする必要性が生じるために、部材、装置が大型化し効率的ではないからである。
なお、上述の隙間形成ステップで、育成結晶の一部を坩堝やヒーターに囲まれた領域よりも上方まで移動させると、育成結晶には、坩堝等で囲まれた領域と、坩堝等で囲まれていない領域とが生じ、該2つの領域間で大きな温度差を生じる場合がある。そして、育成結晶内に上述のような大きな温度差が生じた場合、育成結晶にクラックを生じる恐れがある。
このため、隙間形成ステップにおいては、例えば図4(b)に示したように、育成結晶46は坩堝41及び図示しないヒーターで囲まれた領域内に配置することが好ましい。
一方、テーパー角度が例えば3°よりも大きいと、育成結晶の直径が成長後半部に行くに従って、必要径から乖離する割合が高くなるために、育成後、取出した結晶の外周部を必要径に成形する際の削り代が大きくなる場合がある。このため、研削の時間が長時間となり、また研削部分については原料の無駄となり効率的ではないからである。
特に坩堝41の側壁411のテーパー角度は0.5°以上2°以下であることがより好ましい。
なお、テーパー角度とは、坩堝41の底部412と垂直な面からの側壁411の傾き角度のことを意味している。ここで、図4(b)中、点線で囲んだ領域aを拡大した図5を用いてテーパー角度について説明する。図5には、坩堝41の底部(底面)412と、側壁411とを示している。図中点線で、底部412と垂直な面51を示している。そうすると、図5において、坩堝41の底部412と垂直な面51と、側壁411とが形成している角度52が該側壁411のテーパー角度を示している。
また、冷却工程開始時等に育成結晶移動機構42により育成結晶46の外周部と、坩堝41の側壁との間に隙間(空間)を形成する際、該隙間の間隔Lは特に限定されるものではなく、坩堝41の材質の線膨張係数等に応じて任意に選択することができる。ただし、係る育成結晶46の外周部と、坩堝41の側壁との間の隙間の幅Lは、例えば0.1mm以上3mm以下とすることが好ましい。
これは、該隙間の幅Lが0.1mmよりも小さいと、冷却中に、坩堝41の収縮による圧縮応力が育成結晶46に負荷されてしまう可能性が高くなるためである。
一方、該隙間の幅Lが3mmよりも大きいと、隙間を形成するために行う育成結晶上昇の距離を大きくすることが必要になる場合がある。それに応じて、育成結晶長に対するヒーター高さ、坩堝高さ、更にはサファイア単結晶製造装置全体の高さの比を大きくする必要性が生じる場合がある。このため、効率的ではなくなるからである。
以上に説明した本実施形態のサファイア単結晶製造装置によれば、坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配下、種結晶から原料融液を固化させてサファイア単結晶の育成を行った後、冷却の際に坩堝と育成結晶との間に隙間を形成できる。このため、サファイア単結晶にクラックが発生することを抑制できる。
(サファイア単結晶の製造方法)
次に、本実施形態のサファイア単結晶の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態のサファイア単結晶の製造方法は坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配のもとで、種結晶側から原料融液を固化させることで単結晶育成を行うサファイア単結晶製造方法に関し、以下の工程を有することができる。
底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝内でサファイア単結晶を育成する単結晶育成工程。
単結晶育成工程終了後、サファイア単結晶を冷却する冷却工程。
そして、冷却工程では育成結晶移動機構により、サファイア単結晶の位置を上昇させ、サファイア単結晶の外周部と坩堝の側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを有することができる。なお、育成結晶移動機構は、坩堝内で育成したサファイア単結晶を支持している育成結晶支持部、及び育成結晶支持部と接続され、坩堝の底部に設けられた底部開口部を通り、育成結晶支持部を前記坩堝内で上下方向に移動できる結晶移動軸を含む。
各工程について以下に具体的に説明する。なお、本実施形態のサファイア単結晶の製造方法においては既述のサファイア単結晶製造装置を好適に用いることができる。このため、サファイア単結晶製造装置と説明が重複する部分については一部説明を省略する。
単結晶育成工程においては、底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝内でサファイア単結晶を育成することができる。
具体的には、坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、種結晶から原料融液を固化させることで単結晶育成を行うことができる。特に、VB法(Vertical Bridgeman法)やVGF法(Vertical Gradient Freeze法)によりサファイア単結晶を育成することができる。なお、単結晶育成工程で用いる坩堝には後述する冷却工程で用いるため、育成結晶移動機構を備えておくことができる。
単結晶育成工程は以下のステップを有することができる。
まず、坩堝内の底部側に種結晶を、その上部に原料である酸化アルミニウム多結晶粒子を配置した後、原料を融解させる原料融解ステップを実施することができる。この際、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配を形成することができ、例えば、種結晶と原料(原料融液)との境界をサファイアの融点になるようにすることができる。
そして、原料融解ステップにおいて形成した温度勾配を維持しつつ、全体の温度を降下させることで結晶の成長界面(固液界面)を坩堝の上部の方へ移動させ、サファイア単結晶を育成する降温ステップを実施することができる。
単結晶育成工程が有するこれらのステップについては、坩堝の形状が異なる点、及び育成結晶移動機構を備えた坩堝を用いる点を除いては図2を用いて説明した場合と同様にして実施することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
単結晶育成工程における温度勾配の大きさや、坩堝に充填した原料を融解して原料融液を形成した後、全体の温度を下げる際の降温速度等については特に限定されるものではなく、用いる坩堝のサイズ等に応じて任意に選択することができる。
また、単結晶育成工程においては坩堝周辺を不活性雰囲気、または真空雰囲気とすることが好ましい。例えばアルゴン雰囲気とすることができる。
単結晶育成工程において用いることができる底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝については、図4を用いて既に説明したとおりである。該坩堝の、側壁のテーパー角度については特に限定されるものではなく、坩堝の材質の線膨張係数等により任意に選択することができるが、坩堝の側壁のテーパー角度は0.3°以上3°以下であることが好ましい。
これはテーパー角度が0.3°未満の場合、後述する冷却工程の隙間形成ステップにおいて育成結晶46の外周部と坩堝の側壁との間に、育成結晶に応力がからないようにするに十分な間隔の隙間を形成するために必要となる結晶上昇の距離が長くなる場合がある。そしてそれに応じて、冷却時の均熱性を確保するために、育成結晶長に対するヒーター高さ、坩堝高さ、更に育成装置全体の高さの比を大きくする必要性が生じるために、部材、装置が大型化し効率的ではないからである。
一方、テーパー角度が例えば3°よりも大きいと、育成結晶の直径が成長後半部に行くに従って、必要径から乖離する割合が高くなるために、育成後、取出した結晶の外周部を必要径に成形する際の削り代が大きくなる場合がある。このため、研削の時間も長時間となるため、原料の無駄、時間の無駄が生じ効率的ではないからである。
特にテーパー角度は0.5°以上2°以下であることがより好ましい。
次に、冷却工程について説明する。冷却工程においては、単結晶育成工程終了後、育成したサファイア単結晶を室温まで冷却することができる。
なお、単結晶育成工程においては既述のように坩堝の底部側から上部側に向かって温度が高くなる温度勾配を形成し、該温度勾配を維持したまま、全体の温度を下げることによりサファイア単結晶を育成することができる。従って、坩堝の種結晶を配置した底部側から上部側に向かってサファイア単結晶が育成されることになる。このため、坩堝内に充填した原料(原料融液)の上端部の温度がサファイアの融点未満になった時を、単結晶育成工程の終了時とすることができる。
既述のように、冷却工程における坩堝の収縮率が、育成したサファイア単結晶の収縮率よりも高く、従来のサファイア単結晶の製造方法においては、坩堝によりサファイア単結晶に対して圧縮応力が加えられ、サファイア単結晶にクラックが生じる場合があった。
そこで、本実施形態のサファイア単結晶の製造方法の冷却工程は、育成結晶移動機構により、坩堝とは独立にサファイア単結晶の位置を上昇させ、サファイア単結晶の外周部と坩堝の側壁との間に隙間(空間)を形成する隙間形成ステップを有することができる。なお、育成結晶移動機構については図4を用いて既に説明したためここでは説明を省略する。
上述の隙間形成ステップにおいて、育成結晶の外周部と、坩堝の側壁との間に形成する隙間の幅については特に限定されるものではなく、坩堝の材質の線膨張係数等に応じて選択することができる。係る育成結晶の外周部と、坩堝の側壁との間の隙間の幅は、例えば0.1mm以上3mm以下とすることが好ましい。
これは、該隙間の間隔が0.1mmよりも小さいと、冷却中に坩堝の収縮による圧縮応力が育成結晶に負荷されてしまう可能性が高くなるためである。
一方、該隙間の間隔が3mmよりも大きいと、隙間を形成するために行う育成結晶上昇の距離を大きくすることが必要になり、育成結晶長に対するヒーター高さ、坩堝高さ、更に育成装置全体の高さの比を大きくする必要性が生じる場合がある。このため、効率的ではなくなるからである。
そして、冷却工程は上述のように単結晶育成工程で育成したサファイア単結晶(育成結晶)を室温まで冷却する冷却ステップを有することができる。冷却ステップでは、坩堝の周囲に配置したヒーターの出力を調整することにより所望の降温速度でサファイア単結晶を冷却することができる。
隙間形成ステップを実施するタイミングについては特に限定されるものではないが、坩堝の収縮によりサファイア単結晶に対して圧縮応力が加わる前に実施することが好ましい。
例えば、冷却ステップと、隙間形成ステップとは平行して実施することもできる。具体的には、単結晶育成工程終了後、ヒーターの出力や温度を制御して冷却ステップを開始しつつ、隙間形成ステップを実施することができる。
特に、より確実にサファイア単結晶にクラック等が生じることを防ぐため、単結晶育成工程終了後、育成したサファイア単結晶を室温まで冷却する冷却ステップの開始前に隙間形成ステップを実施することがより好ましい。
冷却工程終了後は坩堝からサファイア単結晶を取り出し、用途に応じて所望の形状に加工することができ、必要に応じて任意の工程を実施することができる。
例えばサファイア単結晶基板(サファイアウエハー)とする場合には、サファイア単結晶を板状にスライスする切断工程や、サファイア単結晶基板の主平面や、端面を研磨する研磨工程等を実施することができる。
以上に説明した本実施形態のサファイア単結晶の製造方法によれば、坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、種結晶から原料融液を固化させることでサファイア単結晶の育成を行う際にクラックの発生を抑制できる。このため、サファイア単結晶を歩留まり良く製造することが可能になる。
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ここでまず、以下の実施例および比較例において育成したサファイア単結晶の評価方法について説明する。
(偏光検査)
偏光検査は、育成によって得られたサファイア単結晶をヨウ化メチレンに浸して白色光源を照射することで行った。
(X線トポグラフ像撮影、評価)
X線トポグラフ像撮影は、大試料ラングカメラ(株式会社リガク製、LGL−8)を用いて行い、得られたX線トポグラフ像について評価を行った。
(X線回折の半値全幅)
X線回折の半値全幅(FWHM)は、精密X線回折装置(PANalytical社製、X‘Pert PRO)を用いて測定、算出し、評価した。
次に各実施例、比較例におけるサファイア単結晶の育成条件について説明する。
[実施例1]
本実施例では、以下の構成を有するサファイア単結晶製造装置を用いてサファイア単結晶を製造し、その評価を行った。
まず、用いたサファイア単結晶製造装置について説明する。
図1における坩堝14、及び坩堝軸15に替えて、図4に示した坩堝41、及び育成結晶移動機構42、坩堝軸43を設けた点以外は、図1に示したサファイア単結晶製造装置と同様の断面構造を有するサファイア単結晶製造装置を用いた。
坩堝は、図4(a)、(b)に示したように、底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝41を用いた。具体的には、底部(底面)の直径L1が150mmφ、上方に向かう側壁のテーパー角度を1.5゜、内高500mmのタングステン製の坩堝を用いた。
そして、図4(a)、(b)に示したように、育成結晶支持部421、及び結晶移動軸422を有する育成結晶移動機構42を設けた。この際、結晶移動軸422は育成結晶支持部421と接続され、坩堝41の底部412に形成された底部開口部412Aに挿入され、結晶移動軸422は一部が坩堝41内に収容されるように構成している。
育成結晶支持部421は円板形状を有し、直径95mmφ、厚さ10mmのタングステン製とした。また、結晶移動軸422は直径35mmφの円柱形状を有する棒状体であり、タングステン製とした。
そして、サファイア単結晶製造装置は、図1に示したように坩堝の側面を囲むようにヒーター13が配置され、坩堝や、ヒーター13はチャンバー11内に配置されている。また、チャンバー11の内壁に沿って断熱材12が設けられている。
本実施例ではヒーター13としては高さ方向に分割された3つの領域ごとに温度勾配、及び温度を制御できるように構成された3ゾーン・ヒーターを用いた。ヒーター13及び断熱材12の材質はカーボンとした。
サファイア単結晶製造装置内の温度測定は、図1に示すように装置中心軸上の上下方向から上部側温度測定手段17、及び底部側温度測定手段16を用いて行った。各温度測定手段としては二色放射温度計を用いた。なお、底部側温度測定手段16は、坩堝軸43に設けた貫通孔422Aの下端部に設けた観察窓を介して観察するように構成した。
また、チャンバー11内を所定の雰囲気とするため、図示しないガス供給手段、及びガス排気手段を有している。
次に、サファイア単結晶の製造方法について説明する。
まず、坩堝の底部側、すなわち図4(a)における育成結晶支持部421の上に種結晶44を配置した。種結晶44としては、直径150mmφ、厚さ40mmのサファイア単結晶円板を用いた。種結晶円板の面方位(育成方位)はc面であった。次いで、図4(a)に示すように、坩堝41内の種結晶44上にサファイア単結晶の原料45として、酸化アルミニウム多結晶体粒子を25kgチャージした。
次に、単結晶育成工程を開始した。
具体的にはまず、サファイア単結晶製造装置のチャンバー11を密閉し、チャンバー11内をArガスで置換した後に昇温を開始して原料を融解させた(原料融解ステップ)。
なお、予め融解試験を実施し、上部側温度測定手段17及び底部側温度測定手段16による測定温度と、坩堝内の種結晶の融解量、温度勾配、及び結晶台下面の温度の関係を求めておいた。
そして昇温時に、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段による測定値と、溶融試験の結果とを基に、3ゾーン・ヒーターの出力比を調節し、坩堝底部から上部に向かって、平均5℃/cmの勾配で温度が高くなる温度分布を形成した。
またこの際、底部側温度測定手段の測定値が所望の値となるようにヒーターの出力合計値を調整し、種結晶の上端面を5mm程融解させた。
上述の種結晶の上端面が5mm程融解させた際の温度分布の状態で30分間放置した後に、ヒーター出力を全体的に徐々に降下させて結晶育成を開始した(降温ステップ)。具体的には、炉内温度の降温速度が2.5℃/Hとなるように、ヒーター出力の降温速度を調整した。
この時の成長界面の前進速度(成長速度)は5mm/Hとなっていると推定される。この降温速度で一定として、原料全体が結晶化するまで温度降下を行った。上部側温度測定手段により測定された温度がサファイアの融点未満になった時点で単結晶育成工程が終了したと判断した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段と、底部側温度測定手段の温度差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして、冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で4mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が0.1mmの隙間を形成する隙間形成ステップを実施した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が、50℃/Hとなるようにヒーター出力を降下させて室温までの冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、クラックが全くない6インチφ結晶であることが確認できた。得られた結晶の最大径(結晶上端部直径)は、約168mmであった。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回ともクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
得られたサファイア単結晶について評価を行った。
得られたサファイア単結晶のうち、1回目に作製したサファイア単結晶について上述のように偏光検査による結晶性の評価を行ったところ、粒界が全くない単結晶であることが確認できた。
また、同様に1回目に作製したサファイア単結晶からc面基板を切り出して鏡面加工した後に、X線トポグラフ像の撮影、評価、及びX線回折の半値全幅の評価を行った。これらの評価は、種結晶直上部、結晶長の1/2部、育成最終部近傍の3ヵ所から切り出された基板1枚ずつ、合計3枚を用いて行った。更に、X線回折の半値全幅の評価は、それら基板の中央部と最外周部から10mm内側を90゜おきに4点の計5点を3枚全ての基板で測定した。
X線トポグラフ像を撮影したところ、3枚の基板ともリネージ等の転位の集積が見られず、結晶全体に渡って均質な結晶性であることが確認できた。
X線回折の半値全幅の評価結果は、種結晶直上部基板の5点平均値で10”、結晶長1/2部の基板の5点平均値9”、育成最終部基板の5点平均値で9”と、これらも結晶内で分布が無く、高品質結晶であることが確認できた。
[実施例2]
用いた坩堝の材質と、育成結晶移動機構を構成する育成結晶支持部、及び結晶移動軸の材質とをMoとした以外は、実施例1と全く同様の構成、同様の条件で単結晶育成工程を実施した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段の温度の差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で120mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が3mmの隙間を形成する隙間形成ステップを実施した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が、50℃/Hとなるようにヒーター出力を降下させて室温までの冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、実施例1と同様に、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、クラックが全くない6インチφ結晶であることが確認できた。得られた結晶の最大径(結晶上端部直径)は、約168mmであった。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回ともクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
得られたサファイア単結晶について実施例1と同様に評価を行った。
偏光検査、X線トポグラフ像の撮影、評価、X線回折の半値全幅評価結果とも、実施例1と同様な結果で、高品質結晶であることが確認できた。
[実施例3]
用いた坩堝の側壁のテーパー角度を0.3゜とした点以外は、実施例1と全く同様の構成、同様の条件で単結晶育成工程を実施した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段の温度の差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で50mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が0.1mmの隙間を形成する隙間形成ステップを実施した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が50℃/Hとなるように冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、クラックが全くない6インチφ結晶であることが確認できた。得られた結晶の最大径(結晶上端部直径)は約156mmであった。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回ともクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
得られた結晶の評価を実施例1と同様に行ったところ、偏光検査、X線トポグラフ像の撮影、評価、X線回折の半値全幅評価結果とも、実施例1と同様な結果で、高品質結晶であることが確認できた。
[実施例4]
用いた坩堝の側壁のテーパー角度を3゜とした点以外は、実施例1と全く同様の構成、同様の条件で単結晶育成工程を実施した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段の温度の差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で2mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が0.1mmの隙間を形成する隙間形成ステップを実施した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が50℃/Hとなるように冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、クラックが全くない6インチφであることが確認できた。得られた結晶の最大径(結晶上端部直径)は約186mmであった。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回ともクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
得られた結晶の評価を実施例1と同様に行ったところ、偏光検査、X線トポグラフ像の撮影、評価、X線回折の半値全幅評価結果とも、実施例1と同様な結果で、高品質結晶であることが確認できた。
[実施例5]
実施例1と全く同様の構成、同様の条件で単結晶育成工程を実施した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段の温度の差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で2mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が0.05mmの隙間を形成した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が50℃/Hとなるように冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、6インチφ結晶であることが確認できた。しかし、結晶の約1/3の領域にクラックが発生していた。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回中6回はクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
最初に作製したクラックを含有するサファイア単結晶について、クラックが無い部分から6インチφ基板を加工し、実施例1と同様のX線トポグラフ像の撮影、X線回折の半値全幅の評価を行った。
X線トポグラフ像を撮影したところ、特に基板外周付近に、転位の集積であるリネージが多数存在していることが確認できた。
また、X線回折の半値全幅の評価結果は、基板中心部の値は10”と実施例1で得られた結晶と同程度の結果であったが、基板外周部の値は、20〜30”の範囲にあり、実施例1で得られた結晶よりも結晶性に劣る結果であった。
[実施例6]
用いた坩堝の材質と、育成結晶移動機構を構成する育成結晶支持部、及び結晶移動軸の材質とをMoとした以外は、実施例1と全く同様の構成、同様の条件で単結晶育成工程を実施した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段の温度の差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で140mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が3.5mmの隙間を形成する隙間形成ステップを実施した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が、50℃/Hとなるようにヒーター出力を降下させて室温までの冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、6インチφ結晶であることが確認できた。しかし、結晶の上端部にクラックが発生していた。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回中6回はクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
最初に作製したクラックを含有するサファイア単結晶について、クラックが無い部分から6インチφ基板を加工し、実施例1と同様のX線トポグラフ像の撮影、評価、X線回折の半値全幅の評価を行ったところ、何れの検査においても実施例1と同様な結果であり、結晶上端部を除けば高品質結晶であることが確認できた。
[実施例7]
用いた坩堝の側壁のテーパー角度を0.2゜とした点以外は、実施例1と全く同様の構成、同様の条件で単結晶育成工程を実施した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段の温度の差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で140mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が0.1mmの隙間を形成する隙間形成ステップを実施した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が50℃/Hとなるように冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、6インチφの結晶であることが確認できた。しかし、結晶の上端部にクラックが発生していた。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、6回はクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
クラックが無い部分から6インチφ基板を加工し、実施例1と同様のX線トポグラフ像の撮影、評価、X線回折の半値全幅の評価を行ったところ、何れの検査においても実施例1と同様な結果であり、結晶上端部を除けば高品質結晶であることが確認できた。
[実施例8]
用いた坩堝の側壁のテーパー角度を3.5゜とした点以外は、実施例1と全く同様の構成、同様の条件で単結晶育成工程を実施した。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。
まず、上部側温度測定手段、及び底部側温度測定手段の温度の差が3℃以下となるようにヒーターの出力及び出力比を調整して冷却ステップを開始した。そして冷却ステップを開始するとともに、育成結晶移動機構42を構成する結晶移動軸422、及びこれに接続された育成結晶支持部421を1mm/minの速度で0.5mm上昇させて、サファイア単結晶外周部と坩堝側壁との間に幅が0.1mmの隙間を形成する隙間形成ステップを実施した。
次に冷却ステップは、上述のようにサファイア単結晶外周部と、坩堝側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを実施した後に、平均降温速度が50℃/Hとなるように冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、種結晶部を除いた育成部の長さが約310mmで、最大径(結晶上端部直径)は約192mmのクラックを全く含まない結晶であることが確認できた。しかし、結晶の外周部を6inφに研削する際の時間と削り代のロスが実施例1等と比較すると生産効率が下がった。
同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回ともクラックが全くないサファイア単結晶を得られることを確認できた。
得られた結晶の評価を実施例1と同様に行ったところ、偏光検査、X線トポグラフ像の撮影、評価、X線回折の半値全幅評価結果とも、実施例1と同様な結果で、高品質結晶であることが確認できた。
[比較例1]
育成結晶移動機構を有しない点以外は実施例1と同様の構成を有するサファイア単結晶製造装置を用いて単結晶育成工程を実施した。なお、育成結晶移動機構を有していないため、坩堝の底部には底部開口部が設けられておらず、坩堝の底部に種結晶を直接配置した。また、単結晶育成工程における条件は実施例1と同様の条件とした。
単結晶育成工程が終了したと判断した直後から、冷却工程を実施した。冷却工程では、隙間形成ステップは実施せずに、冷却ステップのみを実施した。
冷却ステップでは、平均降温速度50℃/Hで室温まで冷却を行った。
そして、育成したサファイア単結晶が室温まで冷却されたことを確認し、単結晶育成工程終了後から、約2日後に育成装置内から坩堝と結晶を取出した。その後、坩堝から結晶を取出したところ、結晶のサイズは、実施例1と同様の6インチφで育成部の長さが約310mmのものであったが、結晶の約2/3の領域にクラックが発生していた。同様にして上記1回を含めて合計10回サファイア単結晶を育成したところ、10回ともサファイア単結晶にクラックが発生した。
最初に作製したサファイア単結晶のクラックが無い部分から6インチφの基板を加工し、実施例1と同様の手順でX線トポグラフ像の撮影、評価、X線回折の半値全幅の評価を行った。
X線トポグラフ像を撮影したところでき、特に基板外周付近に、転位の集積であるリネージが多数存在していることが確認できた。
また、X線回折の半値全幅の評価結果は、基板中心部の値は10”と実施例1で得られた結晶と同程度の結果であったが、基板外周部の値は、25〜30”の範囲にあり、実施例1で得られた結晶よりも結晶性に劣る結果であることを確認できた。
実施例1〜8と比較例1とを比較すると、育成結晶移動機構を備えていないサファイア単結晶製造装置を用いた比較例1においては、製造した全てのサファイア単結晶にクラックが発生することを確認できた。
これに対して、実施例1〜4、8は10回実施した場合に10回ともクラックを含まないサファイア単結晶を製造できることが確認できた。また、実施例5〜7においても10回実施した場合6回はクラックを含まないサファイア単結晶を製造できることを確認できた。これらの結果から、育成結晶移動機構を備えたサファイア単結晶製造装置を用いることで、クラックの発生を抑制できることを確認できた。
なお、実施例5においては、育成結晶移動機構を備えていたものの、サファイア単結晶の外周部と、坩堝の側壁との間の隙間の間隔が小さかったため、サファイア単結晶を10回作製したうち、4回クラックが発生したものと考えられる。
実施例6においては、育成結晶移動機構によりサファイア単結晶を上昇させることで、3.5mmとサファイア単結晶の外周部と、坩堝の側壁との間の距離を十分に確保できた。しかし、サファイア単結晶の一部が坩堝や、ヒーターで覆われている領域から外れたため、サファイア単結晶内に大きな温度勾配が形成され、サファイア単結晶を10回作製したうち、4回クラックが発生したものと考えられる。
実施例7においては、坩堝の側壁のテーパー角度が0.2°と他の実施例と比較して小さかったため、サファイア単結晶の外周部と坩堝の内壁との間の距離を十分に取ろうとすると、育成結晶移動機構によるサファイア単結晶の上昇幅が大きくなった。このため、実施例6の場合と同様に、サファイア単結晶の一部が坩堝や、ヒーターで覆われている領域から外れたため、サファイア単結晶内に温度勾配が形成され、サファイア単結晶を10回作製したうち、4回クラックが発生したものと考えられる。
10 サファイア単結晶製造装置
14、41 坩堝
411 側壁
412 底部
412A 底部開口部
141、44 種結晶
142 原料融液
421 育成結晶支持部
422 結晶移動軸
42 育成結晶移動機構
21、46 育成結晶(サファイア単結晶)
52 テーパー角度

Claims (4)

  1. 坩堝内の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配の下で、前記種結晶側から原料融液を固化させることで単結晶育成を行うサファイア単結晶製造装置であって、
    底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝と、
    前記坩堝内で育成結晶を支持する育成結晶支持部、及び前記育成結晶支持部と接続され前記育成結晶支持部を前記坩堝内で上下方向に移動できる結晶移動軸を含む育成結晶移動機構と、を備え、
    前記坩堝の底部には底部開口部が設けられており、前記結晶移動軸は前記底部開口部を通り、少なくとも一部が前記坩堝内に収容されるサファイア単結晶製造装置。
  2. 坩堝の底部側に種結晶を設置し、坩堝の底部から上部に向かって温度が高くなる温度勾配のもとで、前記種結晶側から原料融液を固化させることでサファイア単結晶の育成を行うサファイア単結晶の製造方法であって、
    底部から上部に向かって内径が大きくなるテーパー形状の側壁を有する坩堝内でサファイア単結晶を育成する単結晶育成工程と、
    前記単結晶育成工程終了後、前記サファイア単結晶を冷却する冷却工程と、を有し、
    前記冷却工程は、前記坩堝内で育成したサファイア単結晶を支持している育成結晶支持部、及び前記育成結晶支持部と接続され、前記坩堝の底部に設けられた底部開口部を通り、前記育成結晶支持部を前記坩堝内で上下方向に移動できる結晶移動軸を含む育成結晶移動機構により、前記サファイア単結晶の位置を上昇させ、前記サファイア単結晶の外周部と前記坩堝の側壁との間に隙間を形成する隙間形成ステップを有するサファイア単結晶の製造方法。
  3. 前記隙間形成ステップにおいて形成する、前記サファイア単結晶の外周部と、前記坩堝の側壁との隙間の幅が0.1mm以上3mm以下である請求項2に記載のサファイア単結晶の製造方法。
  4. 前記坩堝の、側壁のテーパー角度が0.3゜以上3゜以下である請求項2または3に記載のサファイア単結晶の製造方法。
JP2015008959A 2015-01-20 2015-01-20 サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法 Pending JP2016132599A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015008959A JP2016132599A (ja) 2015-01-20 2015-01-20 サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015008959A JP2016132599A (ja) 2015-01-20 2015-01-20 サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016132599A true JP2016132599A (ja) 2016-07-25

Family

ID=56437208

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015008959A Pending JP2016132599A (ja) 2015-01-20 2015-01-20 サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016132599A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019034875A (ja) * 2017-08-14 2019-03-07 住友金属鉱山株式会社 単結晶育成方法及び単結晶育成用坩堝

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019034875A (ja) * 2017-08-14 2019-03-07 住友金属鉱山株式会社 単結晶育成方法及び単結晶育成用坩堝
JP7023458B2 (ja) 2017-08-14 2022-02-22 住友金属鉱山株式会社 単結晶育成方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5633732B2 (ja) サファイア単結晶の製造方法およびサファイア単結晶の製造装置
JP5858097B2 (ja) 単結晶製造装置、単結晶の製造方法
CN102191535B (zh) 蓝宝石单晶体的制造装置
JP7155968B2 (ja) 単結晶育成用ルツボ及び単結晶製造方法
US20060260536A1 (en) Vessel for growing a compound semiconductor single crystal, compound semiconductor single crystal, and process for fabricating the same
TW202113167A (zh) ScAlMgO4單晶及其製作方法和自支撐基板
JP2016033102A (ja) サファイア単結晶およびその製造方法
JP2008120614A (ja) 化合物半導体単結晶基板及びその製造方法
JP4060106B2 (ja) 一方向凝固シリコンインゴット及びこの製造方法並びにシリコン板及び太陽電池用基板及びスパッタリング用ターゲット素材
JP2014162665A (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP2010064936A (ja) 半導体結晶の製造方法
JP2016130205A (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP2016132599A (ja) サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法
JPWO2011096597A1 (ja) 結晶成長用熱分解窒化ホウ素製容器、およびそれを用いた半導体結晶の成長方法
JP2013256424A (ja) サファイア単結晶育成装置
JP2016169112A (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP2010248003A (ja) SiC単結晶の製造方法
JP2010265150A (ja) サファイア単結晶の製造方法及び種結晶の製造方法
JP2016132600A (ja) サファイア単結晶製造装置、及びサファイア単結晶の製造方法
KR20190075411A (ko) 리니지 결함을 제거할 수 있는 도가니부재, 이를 이용한 고품질 사파이어 단결정 성장장치 및 그 방법
JP4292300B2 (ja) 半導体バルク結晶の作製方法
JP2016147767A (ja) 単結晶育成用坩堝、単結晶製造装置、単結晶の製造方法
JPH03193689A (ja) 化合物半導体の結晶製造方法
JP2010150136A (ja) 化合物半導体単結晶の製造装置及びその製造方法
JP2010006646A (ja) シリコン単結晶の製造方法及びシリコン単結晶