以下、本発明の加熱調理器における好ましい実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、加熱調理器であるオーブンレンジの外観図である。矩形箱状に形成される本体1の内部には、被加熱物を収納して加熱調理する加熱室としてのオーブン庫2が形成される。このオーブン庫2は、左右方向に幅広とし、その大きな前面開口を開閉するための扉3が設けられる。従って、扉3は本体1の前面のほぼ全体を覆うように設けられ、その下端部が回動自在に軸支される。
扉3の上部には、扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の下部には、表示や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、操作手段7として、調理に関する加熱条件を設定するための第1加熱条件設定手段8および第2加熱条件設定手段9や、加熱の開始を指示する加熱開始指示手段10や、設定を取消したり調理を中止したりするための取消指示手段11を備えて構成される。操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、マイコンを搭載した操作パネルPC(印刷回路)板(図示せず)が配置される。
第1加熱条件設定手段8は、電子式のタッチキーであり、調理の時間や温度の設定が不要な自動調理のための調理メニューの選択を行なう「のみもの」キーや「ゆで物」キーの他に、調理の時間や温度または出力の設定が必要な手動調理の選択を行なう「レンジ」キーや、「オーブン」キーや、「スチーム」キーからなり、これらの複数の押釦式キーを並設して構成される。また第2加熱条件設定手段9は、手動調理における調理の時間や温度を設定する他に、自動調理において「のみもの」や「ゆで物」以外の調理メニューを選択するために、回転を検知するエンコーダで構成される回動自在なダイヤルである。加熱開始指示手段10は、第1加熱条件設定手段8や第2加熱条件設定手段9で加熱条件を設定した後に、オーブン庫2内の被加熱物に対する加熱を開始するためのキーで、取消指示手段11は、加熱条件の取消しや加熱調理を中止するためのキーである。これらの加熱開始指示手段10や取消指示手段11は、メカ式のキー(タクタイルスイッチ)である。
表示手段6は、例えば調理メニューの番号や、温度や、時間や、出力などを表示する液晶表示手段14と、調理の進行状況に応じて点滅や点灯表示するLED表示手段15とにより構成される。ここでのLED表示手段15は、図示しない光受信部を備えた本体1とは別な外部装置との間で光通信を行なう光表示器として、操作パネル部5の適所に配設される。
図2は、オーブンレンジの主にオーブン機能に関係する内部構造を示した図である。同図において、本体1の内部には、オーブン庫2の後方に位置して、熱風を発生する熱風ファンユニット21が設けられる。この熱風ファンユニット21は、オーブン庫2内の被加熱物を加熱する加熱ユニットとして、オーブン庫2を形成する庫内壁面22の奥側に配置され、空気を加熱する熱風ヒータ23と、その加熱された空気をオーブン庫2内に送るための熱風ファン24と、熱風ファン24を回転させるための熱風モータ25とを主な構成要素にしている。熱風ファン24は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ23は熱風ファン24の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ23は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。
熱風ファンユニット21とは別に、オーブン庫2の上部には、オーブン庫2内の被加熱物を加熱する輻射ヒータ27が設けられる。つまり、本実施例のオーブンレンジは、複数の加熱手段として熱風ヒータ23と輻射ヒータ27をそれぞれ別個に備えた構成となっている。また、オーブン庫2の下部には、オーブンレンジに組み込まれた各負荷の動作を制御するための制御手段28が配設される。
図3は、扉3を取り外した状態の本体1を正面から見た図である。同図において、庫内壁面22には吸入口29や排出口30が形成され、オーブン庫2と熱風ファンユニット21の内部空間との間で、空気(熱風)の流れを可能にしている。特に本実施例では、制御手段28からのモータ駆動信号を受けて、熱風モータ25に駆動電圧が印加され、熱風ファンユニット21の内部空間で熱風ファン24が回転すると、オーブン庫2の奥側の中心部分に位置する吸入口29から、熱風ファン24に向けて空気が吸い込まれ、この空気が熱風ファンユニット21の内部空間で通電した熱風ヒータ23を通過することで加熱される。そして、加熱された空気は吸入口29の周囲に配置された複数の排出口30から排出され、オーブン庫2内の全体を循環して、そこに収納された被加熱物を加熱調理する構成となっている。
図4は、オーブンレンジの内部構造を示す縦断面図である。同図において、オーブン庫2の側面上部には、オーブン庫2に臨む赤外線センサ31が取付けられている。赤外線センサ31は、図示しないが例えば8個の直線状に並んだ赤外線温度検出素子からなり、この赤外線センサ31を本体1の内部でスイング動作させることにより、オーブン庫2内のほぼ全体の温度分布を検出することを可能にしている。また、オーブン庫2の下側には、マイクロ波を発生させる発生源となるマグネトロン32と、マグネトロン32からのマイクロ波をオーブン庫2の内部に導く導波管33と、導波管33からオーブン庫2にマイクロ波を放射するアンテナ34と、直立した軸35を中心にアンテナ34を水平回転させるACモータなどのアンテナモータ36と、アンテナ34の近傍に取付けられるマイクロスイッチ37が、それぞれ配置される。
図5は、アンテナ34とその周辺の構成を示したものである。同図において、アンテナ34は放射指向性を有し、アンテナモータ36の軸35がその中心に取付けられる。また、アンテナ34はオーブン庫2の底面のほぼ中央に一つだけ配置される。本実施例のアンテナ34は円板状の外形を有するが、軸35から見てマイクロ波の放射指向性が大きい部位には、V字状の切欠き39を形成しており、軸35から見て切欠き39の反対側が、マイクロ波の放射指向性の小さい部位となっている。なお、ここでいう「放射指向性が大きい部位」とは、他の部位に比べてマイクロ波が一方向に集中して放射される指向性の高い部位を意味し、「放射指向性が小さい部位」とは、他の方向に比べてマイクロ波が拡散して放射される指向性の低い部位を意味する。
マイクロスイッチ37は、アンテナ34の回転位置に応じて可動するアクチュエータを備えており、ここではアンテナ34の回転時に、軸35を原点としてマイクロ波の放射指向性の大きい部位に対して、アンテナ34の回転方向の反対側で90度をなす角度の方向にマイクロスイッチ37が位置する毎に、図示しないアクチュエータが動作して、アンテナ34が原点位置にあることを示す電気的な検出信号を、マイクロスイッチ37から制御手段28に出力する構成となっている。図5は、回転するアンテナ34が原点位置にあるときの、アンテナ34とマイクロスイッチ37との位置関係を示しているが、マイクロスイッチ37に代わり、フォトインタラプタのような非接触の検出素子を利用してもよい。
図6は、上述したオーブンレンジの電気的構成を示している。41は制御手段28に相当するマイクロコンピュータ(マイコン)であり、これは演算処理手段としてのCPUや、記憶手段としてのメモリや、入出力デバイスなどを備えている。マイコン41の入力ポートには、前述した第1加熱条件設定手段8や、第2加熱条件設定手段9や、加熱開始指示手段10や、取消指示手段11の他に、オーブン庫2内の温度を検出する庫内温度検出手段42や、赤外線センサ21にスイング機構を装備して構成され、オーブン庫2内の温度分布を検出することで、そこに収容された被加熱物の温度を検出可能にする庫内温度分布検出手段43や、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段44や、マイクロスイッチ37などを含んで構成され、アンテナ34の回転の原点を検出する位置検出手段45が、それぞれ電気的に接続される。また、マイコン41の出力ポートには、表示手段6の他に、オーブン庫2内の被加熱物に対してレンジ加熱を行なうために、マグネトロン32などを含むマイクロ波加熱手段46と、オーブン庫2内の被加熱物に対してヒータ加熱を行なうために、熱風ファンユニット21の熱風ヒータ23や輻射ヒータ27をそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段47と、導波管33の出口側に設けたアンテナ34を回転駆動させるために、アンテナモータ36などを含むアンテナ駆動手段48と、調理の終了などの進行状況を使用者に音で知らせるブザー報知手段49と、熱風ファン24を回転駆動させるために、熱風モータ25を含むモータ駆動手段50が、それぞれ電気的に接続される。
そしてマイコン41は、庫内温度検出手段42や、庫内温度分布検出手段43や、扉開閉検出手段44や、位置検出手段45からの各検知信号と、第1加熱条件設定手段8や、第2加熱条件設定手段9や、加熱開始指示手段10や、取消指示手段11からの各操作信号を受けて、マイクロ波加熱手段46や、ヒータ駆動手段47や、アンテナ駆動手段48や、ブザー報知手段49や、モータ駆動手段50に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。
マイコン41は、第1加熱条件設定手段8や、第2加熱条件設定手段9や、加熱開始指示手段10からの押動操作に伴う操作信号を受け取ると、その操作信号に応じてマイクロ波加熱手段44やヒータ駆動手段45を所定のタイミングで駆動して、加熱調理を制御する。その制御時には、オーブン庫2内の温度を検出するサーミスタなどの庫内温度検出手段42からの検出信号や、オーブン庫2内の温度分布を検出する庫内温度分布検出手段43からの検出信号を参照にして、加熱温度を所定の値に制御する。また、加熱調理が終了すると、マイコン41はブザー報知手段49に制御信号を送出して、ブザー報知手段49を鳴動させる。さらに、加熱調理中に扉3が開いたことを示す検出信号を、扉開閉検出手段44から受け取った場合や、取消指示手段11からの押動操作に伴う操作信号を受取った場合に、マイコン41はマイクロ波加熱手段46やヒータ加熱手段47への制御信号の送出を中断して、加熱調理の制御を停止する。
本実施例では、操作手段7の例えば第2加熱条件設定手段9を手動操作することにより、制御手段28(マイコン41)の記憶部に格納したオーブンレンジに対する定格消費電力の設定を切替できる構成となっており、ここでの第2加熱条件設定手段9は、定格消費電力の設定を可変可能にする設定手段として設けられる。また制御手段28は、操作手段7で選択できる全ての調理メニューに対応して、オーブンレンジの制御対象となる熱風ヒータ23や、熱風モータ25や、輻射ヒータ27や、マグネトロン32を、どのように動作させるのかという制御シーケンスをそれぞれ備えており、特にヒータ加熱によるオーブン調理では、操作手段7により自動調理のための調理メニューを選択すると、その調理メニューに対応した特定の制御シーケンスに従って、自動的に調理の時間や温度を設定し、熱風ヒータ23や輻射ヒータ27の動作を個別に制御する自動調理機能としてのオーブン自動調理制御手段55を備えている。
特に本実施例におけるオーブン自動調理制御手段55は、第2加熱条件設定手段9で設定した定格消費電力に応じて、その調理メニューで使用する加熱手段の組み合わせを可変させる構成を備えている。これは例えば、熱風ヒータ23の消費電力が1.4kWで、輻射ヒータ27の消費電力が1.1kWであるとき、第2加熱条件設定手段9でオーブンレンジとしての定格消費電力を3kW(入力電圧が交流100Vで30A)と、1.5kW(入力電圧が交流100Vで15A)の何れかに設定できる構成とし、定格消費電力を下げる方向の1.5kWに切替え設定した場合には、熱風ヒータ23の使用時に輻射ヒータ27を同時使用できないように制御する一方で、定格消費電力を上げる方向の3kWに切替え設定した場合には、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27を同時使用できるように、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27の組み合わせを可変させる。
なお本実施例では、第2加熱条件設定手段9を用いて手動操作により定格消費電力の設定を切替えているが、例えばオーブンレンジを設置する宅内の使用電流量をデマンドコントロール装置で監視し、そのデマンドコントロール装置から出力される使用電流量に応じた制御信号を受けて、本体1の内部に備えた設定手段が、定格消費電力の設定を任意に可変できる構成としてもよい。このようにすれば、宅内の使用電流量に応じて、オーブンレンジの最適な定格消費電力が自動的に設定され、その定格消費電力に基いて、自動のオーブン調理による熱風ヒータ23と輻射ヒータ27の組み合わせを可変できる。
また制御手段28は、操作手段7からレンジ調理を行なう旨の操作信号を受け取ると、位置検出手段45からの検出信号に基いて、アンテナ34が一定の速度で回転するような制御信号をアンテナ駆動手段48に送出すると共に、庫内温度分布検出手段43からの検出信号を取り込んで、オーブン庫2内の温度分布の状況に応じて、一定の速度で回転するアンテナ34からのマイクロ波の出力を可変させるような制御信号をマイクロ波加熱手段46に送出するレンジ調理制御手段56を備えている。例えば図5に示す例では、庫内温度分布検出手段43からの検出信号に基づき、アンテナ34を中心として本体1の左半分の領域よりも右半分の領域の温度分布が低いと判断すると、アンテナ34の切欠き39を形成した部位が、本体1の右半分の領域に相当する矢印S1の範囲に向いたときに、アンテナ34からの出力が600Wとなるようにする一方で、アンテナ34の切欠き39を形成した部位が、本体1の左半分の領域に相当する矢印S2の範囲に向いたときに、アンテナ34からの出力が400Wとなるように、レンジ調理制御手段56からマイクロ波加熱手段46に送出する制御信号によって、マグネトロン32から発生するマイクロ波の出力を調整する。
レンジ調理制御手段56は、例えば庫内温度分布検出手段43からの検出信号に基いて、オーブン庫2内の温度分布から、そのオーブン庫2内に収容された複数の食品部分の温度を抽出することができる。この場合、抽出した複数の食品部分の中で、最も温度の低い食品部分にアンテナ34からのマイクロ波が集中して放射されるような制御信号をマイクロ波加熱手段46に送出してもよいし、複数の食品部分の間で温度差がある場合、その温度差の程度に応じて、アンテナ34からのマイクロ波の出力を可変させる度合が変化するような制御信号をマイクロ波加熱手段46に送出してもよい。
次に、上記構成のオーブンレンジについて、オーブン調理に関する動作から説明する。
調理が行われていない切状態から、第1加熱条件設定手段8の「オーブン」キーを押動操作し、次に第2加熱条件設定手段9をダイヤル操作すると、オーブン調理の時間や温度が手動で設定される。その後、加熱開始指示手段10を押動操作して、加熱開始を指示すると、マイコン41からモータ駆動手段50への制御信号により、熱風ファン24が所望の回転数で回転駆動するように、熱風モータ25の入力を制御すると共に、庫内温度検出手段42や庫内温度分布検出手段43からの各検出信号を取り込んで、オーブン庫2内若しくは被加熱物が所望の温度となるように、熱風ヒータ23や輻射ヒータ27の入力を制御する。
なお、上記一連の手順で、例えば「オーブン」キーを2回押動操作して、予熱なしにオーブン調理を行なう場合には、その「オーブン」キーを操作する前に、被加熱物である食品をオーブン庫2内に入れておく。これに対して、例えば「オーブン」キーを1回押動操作して、予熱ありでオーブン調理を行なう場合は、加熱開始指示手段10の押動操作後、オーブン庫2内の予熱の終了がブザー報知手段49で鳴動報知された後に、被加熱物である食品をオーブン庫2内に入れる。予熱の有るなしに拘らず、オーブン庫2内に食品を入れた状態で、熱風ファン24が回転することで、オーブン庫2の内部から吸入口29を通して熱風ファンユニット21内に吸引された空気が、熱風ファン24の遠心力によって放射方向に吹き出し、熱風ファン24の略全周を取り囲む発熱した熱風ヒータ23に万遍なく当たって、オーブン庫2と隔離された熱風ファンユニット21内で熱風が生成される。熱風ヒータ23に当たった熱風は、熱風ヒータ23に対向して配置された複数の排出口30を通して排出され、オーブン庫2内の全体を循環して、そこに収納された食品を加熱調理する。また、熱風ファンユニット21とは別に、マイコン41からヒータ駆動手段47への制御信号によって、輻射ヒータ27を通電して発熱させることで、オーブン庫2内の食品を加熱することもできる。
こうした手動調理とは別に、本実施例のオーブンレンジは、マイコン41に組み込まれたオーブン自動調理制御手段55によって、操作手段7から調理の時間や温度を設定せずに、特定の調理メニューを選択するだけで、調理の時間や温度が自動的に設定される自動調理機能を備えている。ここでは具体例として、特定の調理メニューとして「ピザ」を選択した場合を説明すると、予めオーブン庫2内に食品を入れた状態で、第2加熱条件設定手段9をダイヤル操作して、液晶表示手段14に表示される調理メニューに対応した番号を確認しながら、「ピザ」の調理メニューを選択する。
また本実施例では、切状態で第2加熱条件設定手段9を手動操作することにより、制御手段28に記憶された定格消費電力の設定を可変できるようになっており、後述する加熱開始指示手段10を操作する時点で、定格消費電力は1.5kWまたは3kWの何れかに設定される。
その後、加熱開始指示手段10を押動操作して、加熱開始を指示すると、オーブン自動調理制御手段55は、「ピザ」の調理メニューに対応した制御シーケンスに従って、複数の加熱手段である熱風ヒータ23や輻射ヒータ27をそれぞれ制御し、加熱室内の被加熱物を自動的に加熱調理する。このときオーブン自動調理制御手段55は、予め設定した定格消費電力に基づき、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27の使用パターンと、それに伴う被加熱物への調理時間を可変する。
図7は、「ピザ」の調理メニューにおいて、定格消費電力の違いに応じた熱風ヒータ23と輻射ヒータ27の制御シーケンスの一例を示している。前述のように、熱風ヒータ23の消費電力が1.4kWで、輻射ヒータ27の消費電力が1.1kWであるとき、第2加熱条件設定手段9でオーブンレンジの定格消費電力を1.5kWに設定した場合には、同図(A)に示すように、オーブン自動調理制御手段55は、加熱開始後0分から15分の間に、輻射ヒータ27だけを「ON」すなわちオンにし、熱風ヒータ23を「OFF」すなわちオフにした後、加熱開始後15分から30分の間に、熱風ヒータ23だけをオンにし、輻射ヒータ27をオフにするような制御信号を、ヒータ駆動手段47に送出する。また図示しないが、熱風ヒータ23のオン時には、熱風ファン24も回転し、熱風ファンユニット21内で生成された熱風が、オーブン庫2内の全体を循環して、そこに収納された被加熱物を加熱調理する。こうして、定格消費電力を低く設定した「ピザ」の調理メニューでは、設定した定格消費電力を超えないように熱風ヒータ23と輻射ヒータ27の一方だけが通電制御され、オーブン庫2内の被調理物は30分の調理時間でピザに焼き上がる。
一方、第2加熱条件設定手段9でオーブンレンジの定格消費電力を3kWに設定した場合には、同図(B)に示すように、オーブン自動調理制御手段55は、加熱開始後0分から15分の間に、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27を共にオンするような制御信号を、ヒータ駆動手段47に送出する。この場合も熱風ヒータ23のオン時には、熱風ファン24が回転し、熱風ファンユニット21内で生成された熱風が、オーブン庫2内の全体を循環して、そこに収納された被加熱物を加熱調理する。こうして、定格消費電力を高く設定した「ピザ」の調理メニューでは、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27の両方を同時に通電制御することで、オーブン庫2内の被加熱物は15分の調理時間でピザに焼き上がる。
また別な例として、被加熱物として例えばハンバーグをオーブン調理で焼き上げる場合、手動調理では温度と時間を300℃と30分にそれぞれ設定するが、定格消費電力を低く設定した「ハンバーグ」の調理メニューでは、加熱開始後0分から15分の間に、輻射ヒータ27だけをオンにし、加熱開始後15分から30分の間に、熱風ヒータ23だけをオンにして、30分の調理時間でハンバーグを焼き上げる。また、定格消費電力を高く設定した「ハンバーグ」の調理メニューでは、加熱開始後0分から15分の間に、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27を共にオンにして、15分の短い調理時間でハンバーグに焼き上げる。
このように、本実施例のオーブン自動調理制御手段55は、第2加熱条件設定手段9で定格消費電力を1.5kWに設定した場合には、熱風ヒータ23の使用時に輻射ヒータ27を同時使用できないようにする一方で、第2加熱条件設定手段9で定格消費電力を3kWに切替え設定した場合には、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27を同時使用できるように、熱風ヒータ23と輻射ヒータ27の組み合わせを可変させる。これにより、定格消費電力を上げる方向に切替えた場合には、被加熱物に対する加熱量を抑制する不要な制限を行なわないようにし、オーブンレンジとして調理時間の短縮や、高加熱量による食味の向上を図ることが可能になる。
ここで、オーブン自動調理制御手段55による自動調理機能の温度設定について説明する。前述の図7では、設定した定格消費電力が1.5kWまたは3kWの何れにおいても、熱風ヒータ23や輻射ヒータ27が「ON」すなわちオンしているときに、それらの熱風ヒータ23や輻射ヒータ27を連続通電させると、温度帯によってはコントロール温度(=温度設定)を超えることがある。そこで、オーブン自動調理制御手段55は、庫内温度検出手段42からの検出信号に基づき、オーブン庫2内の検出温度が、予め設定したコントロール温度を超えた場合に、熱風ヒータ23や輻射ヒータ27を全てオフにし、コントロール温度未満に下がると、熱風ヒータ23や輻射ヒータ27をオンして、これらの熱風ヒータ23や輻射ヒータ27を「ON」の期間に通断電制御する。
図8は、設定した定格消費電力に応じたコントロール温度すなわち温度設定の一例を示している。定格消費電力を1.5kWに設定した場合、オーブン自動調理制御手段55は、250℃〜300℃の範囲に自動調理機能のコントロール温度を設定する。これに対して、定格消費電力を3kWに設定した場合には、前述のように熱風ヒータ23と輻射ヒータ27とを同時に使用でき、オーブン庫2内をより高い温度にキープできることから、オーブン自動調理制御手段55は、250℃〜400℃の範囲に自動調理機能のコントロール温度を設定可能にする。つまり、第2加熱条件設定手段9で設定した定格消費電力が高くなる程、自動調理機能のコントロール温度も高い温度に可変して設定可能になる。
これは、自動調理機能の最大出力を制限するのに、定格消費電力を低い値の1.5kWに設定した場合、選択した調理メニューに合わせてコントロール温度を設定すると、例えば400℃のような高い温度設定では、熱風ヒータ23または輻射ヒータ27を連続通電しても、電力が足りない虞があるからである。本実施例では、定格消費電力を低い値に設定した場合は、オーブン自動調理制御手段55により高い温度設定を不可にして、250℃〜300℃の範囲にコントロール温度を設定することで、自動調理機能であっても、設定した定格消費電力に応じて、オーブン庫2内の被加熱物に対する温度設定を最適なものとすることが可能になる。
次に、レンジ調理に関する動作を説明すると、予めオーブン庫2内に食品を入れた状態で、第1加熱条件設定手段8の「レンジ」キーを一乃至複数回押動操作して出力を選択し、次に第2加熱条件設定手段9をダイヤル操作すると、調理の時間が手動で設定される。その後、加熱開始指示手段10を押動操作して、加熱開始を指示すると、レンジ調理制御手段56は選択した出力の範囲で設定した時間に、アンテナ34からマイクロ波が放射されるような制御信号をマイクロ波加熱手段46に送出し、オーブン庫2内の食品を加熱調理する。
また、こうした手動調理とは別に、本実施例のオーブンレンジは、予めオーブン庫2内に食品を入れた状態で、第2加熱条件設定手段9をダイヤル操作して、液晶表示手段14に表示される調理メニューに対応した番号を確認しながら、レンジ調理に関する特定の調理メニューを選択すると、その特定の調理メニューに対応した制御シーケンスに基づき、レンジ調理制御手段56が調理の時間や出力を自動的に設定する自動調理機能を備えている。この場合もレンジ調理制御手段56は、設定された出力の範囲で設定した時間に、アンテナ34からマイクロ波が放射されるような制御信号をマイクロ波加熱手段46に送出し、オーブン庫2内の食品を加熱調理する。
上述のレンジ調理では従来通り、ACモータであるアンテナモータ36によって、アンテナ34を一定の回転数で回転させる制御が行われる。これは、アンテナ34が原点位置となったときに発生する位置検出手段45からの検出信号をレンジ調理制御手段56で取得し、その検出信号が一定間隔で発生するように、レンジ調理制御手段56からアンテナ駆動手段48に制御信号を送出することで実現する。アンテナ34の回転数は、例えば50Hzの周波数で1回転/3秒とする。こうした制御の下で、レンジ調理制御手段56は、位置検出手段45からの検出信号と、アンテナ34の回転数とにより、アンテナ34の回転位置を算出し、庫内温度分布検出手段43からの検出信号を元に、アンテナ34がオーブン庫2内の特定の位置を向いたときに、が可変するような制御信号をマイクロ波加熱手段46に送出する。
具体的には、図9(A)に示すように、被加熱物Xを置いた位置がオーブン庫2の奥側にある場合、レンジ調理制御手段56は、庫内温度分布検出手段43からの検出信号に基づき、被加熱物Xを置いた部分の温度と、その他の部分の温度との差を利用して、オーブン庫2内における被加熱物Xの位置を特定し、回転するアンテナ34の切欠き39が被加熱物Xの位置を向いたときに、アンテナ34から放射されるマイクロ波の出力を、それ以外の部分を向いたときの出力よりも大きくなるように可変させる。これにより、オーブン庫2内における被加熱物Xを置いた特定の部分を局所的に集中加熱できる。またこれは、一つのアンテナ34を一定の回転数で回転させるだけでよく、複雑な回転制御を必要としない。さらにレンジ調理制御手段56は、アンテナ34を一定の回転数で回転させながら、アンテナ34からオーブン庫2内に一定の出力でマイクロ波を放射するような制御信号をマイクロ波加熱手段46に送出すれば、オーブン庫2全体を均一に加熱することもできる。
また、図9(B)に示すように、オーブン庫2内に冷蔵食品である被加熱物X1と、冷凍食品である被加熱物X2がそれぞれ置かれた場合、レンジ調理制御手段56は、庫内温度分布検出手段43からの検出信号に基づき、被加熱物X1,X2を置いた部分の温度と、その他の部分の温度との差を利用して、オーブン庫2内における被加熱物X1,X2の各位置を特定すると共に、被加熱物X1,X2の温度をそれぞれ抽出する。そして、アンテナ34を一定の回転数で回転させながら、複数の被加熱物X1,X2の中で最も温度の低い被加熱物X2の部分に、アンテナ34からのマイクロ波を集中させるために、アンテナ34の切欠き39が被加熱物X2の位置を向いたときに、アンテナ34から放射されるマイクロ波の出力を、被加熱物X1や、それ以外の部分を向いたときの出力よりも大きくなるように可変させる。これにより、オーブン庫に温度差のある複数の被加熱物X1,X2を収容した場合でも、これらの被加熱物X1,X2の仕上がりを均一に近づけることが可能となる。
さらに、本実施例のレンジ調理制御手段56は、オーブン庫2に収容した複数の被加熱物X1,X2間で温度差がある場合、その温度差の程度に応じて、マイクロ波の出力を可変させる度合が変わるような制御信号を、マイクロ波加熱手段46に送出している。次の表1は、そうした温度差の程度に応じた被加熱物X1,X2に対するマイクロ波出力の一例を示している。
上記表1において、例えば冷蔵食品のような高温側の食品を被加熱物X1とし、冷凍食品のような低温側の食品を被加熱物X2としたときに、レンジ調理制御手段56は、被加熱物X1,X2の温度差が無い(=0℃)場合に、アンテナ34の切欠き39が被加熱物X1,X2の位置を向いたときのマイクロ波の各出力が同じ(例えば800W)となるように制御するが、被加熱物X1,X2の温度差が大きくなるにしたがって、アンテナ34の切欠き39が被加熱物X2の位置を向いたときのマイクロ波の出力(例えば800W)は同じ値に維持するのに対して、アンテナ34の切欠き39が被加熱物X2の位置を向いたときのマイクロ波の出力(例えば700W〜200W)を小さくして、結果的に双方の出力差が大きくなるように制御する。このように、被加熱物X1,X2の温度差が大きくなる程、被加熱物X1,X2に放射されるマイクロ波の出力差を大きくして、より温度の低い被加熱物X2の部分に、より多くのマイクロ波を集中させることで、複数の被加熱物X1,X2の間でどのような温度差があったとしても、被加熱物X1,X2の仕上がりを均一に安定させることができる。
以上のように、本実施例の加熱調理器としてのオーブンレンジは、複数の加熱手段としての熱風ヒータ23や輻射ヒータ27と、これらの熱風ヒータ23や輻射ヒータ27を制御する制御手段28と、使用者が操作する操作手段7と、操作手段7による調理状態を表示する表示手段6とを備え、操作手段7には定格消費電力の設定を可変可能にする設定手段として、第2加熱条件設定手段9を備えており、制御手段28は、調理メニューに対応した制御シーケンスに従って、熱風ヒータ23や輻射ヒータ27を制御する自動調理機能を行なうために、オーブン自動調理制御手段55を具備すると共に、このオーブン自動調理制御手段55は、第2加熱条件設定手段9で設定した定格消費電力に応じて、自動調理機能で使用する熱風ヒータ23や輻射ヒータ27の組み合わせを可変させる構成を備えている。
この場合、制御手段28に備えた自動調理機能を行なうオーブン自動調理制御手段55により、選択した調理メニューに応じて、オーブン庫2内の被加熱物を自動的に加熱調理する場合、制御手段28のオーブン自動調理制御手段55は、同じ調理メニューであっても、第2加熱条件設定手段9で設定した定格消費電力に応じて、熱風ヒータ23や輻射ヒータ27をどのようにして組み合わせて加熱調理を行なうのかを可変することができる。そのため、第2加熱条件設定手段9により定格消費電力を上げるように切替えた場合には、熱風ヒータ23または輻射ヒータ27の一つだけを使用して加熱調理を行なうような不要な制限を、制御手段28のオーブン自動調理制御手段55で行なわないようにすることができ、自動調理機能であっても、設定した定格消費電力に応じて、使用する熱風ヒータ23や輻射ヒータ27の組み合わせを最適なものとすることが可能になる。
また、本実施例の制御手段28は、第2加熱条件設定手段9で設定した定格消費電力に応じて、自動調理機能の温度設定を可変させるような構成を、オーブン自動調理制御手段55に備えている。
この場合、制御手段28に備えた自動調理機能を行なうオーブン自動調理制御手段55により、調理メニューに応じて被加熱物に対する温度設定が行われる場合、第2加熱条件設定手段9で設定した定格消費電力に応じて、その設定した温度を可変することができる。そのため、第2加熱条件設定手段9により定格消費電力を下げるように設定して、自動調理機能の最大加熱量を制限した場合は、単に調理メニューに合わせて高い温度を設定すると、加熱手段の電力では加熱量が不足して、その設定温度に加熱できなくなる虞があるので、制御手段28のオーブン自動調理制御手段55がより低い温度に設定を変更することで、自動調理機能であっても、設定した定格消費電力に応じて、被加熱物に対する温度設定を最適なものとすることが可能となる。
また、本実施例のオーブンレンジは、被加熱物を収容する加熱室としてのオーブン庫2と、オーブン庫2内にマイクロ波を放射する一つのアンテナ34と、アンテナ34を回転駆動する駆動手段としてのアンテナ駆動手段48と、アンテナ34の原点位置を検出する位置検出手段45と、オーブン庫2内の温度分布を検出する温度分布検出手段としての庫内温度分布検出手段43と、庫内温度分布検出手段43からの検出結果である検出信号に基づき、アンテナ34が特定の位置を向いたときに、マイクロ波の出力を可変させる制御手段28のレンジ調理制御手段56と、を備えている。
この場合は従来のように、アンテナ駆動手段48によりアンテナ34を一定の回転数で回転させる制御を行ないつつ、アンテナ34の回転数と位置検出手段45で検出したアンテナ34の原点位置とにより、アンテナ34の回転位置を算出し、庫内温度分布検出手段43からの検出信号を元に、アンテナ34が特定の位置を向いたときに、アンテナ34からオーブン庫2内に放射されるマイクロ波の出力を可変することで、オーブン庫2内を局所的に集中加熱することができる。また例えば、アンテナ34を一定の回転数で回転させながら、アンテナ34からオーブン庫2内に一定の出力でマイクロ波を放射すれば、オーブン庫2全体を均一に加熱することができる。そのため、複数のアンテナ34を複雑に回転制御することなく、オーブン庫2内の局部集中加熱を実現しつつ、オーブン庫2全体の均一加熱を実現したオーブンレンジを提供できる。
また本実施例では、庫内温度分布検出手段43からの検出信号により、オーブン庫2内に収容された複数の食品である被加熱物X1,X2の部分の温度を抽出し、最も温度の低い被加熱物X2の部分にアンテナ34からのマイクロ波を集中させるように、制御手段28のレンジ調理制御手段56が制御する構成となっている。
この場合、オーブン庫2内で複数の被加熱物X1,X2を同時に加熱する場合、最も温度の低い被加熱物X2の部分に対して、アンテナ34からマイクロ波を集中して放射することにより、複数の被加熱物X1,X2の仕上がりを均一に近づけることができる。
また本実施例では、庫内温度分布検出手段43からの検出信号により、複数の被加熱物X1,X2の間で温度差があると判断した場合、その温度差の程度に応じて、アンテナ34からのマイクロ波の出力を可変させる度合が変化するように、制御手段28のレンジ調理制御手段56が制御する構成となっている。
この場合、オーブン庫2内で例えば冷蔵食品となる被加熱物X1と冷凍食品となる被加熱物X2を同時に加熱する場合、制御手段28のレンジ調理制御手段56で被加熱物X1,X2の間の温度差が大きいと判断すれば、被加熱物X2の部分でより多くのマイクロ波を集中させるために、温度差に応じてアンテナ34からのマイクロ波の出力をより大きく変化させる。これにより、複数の被加熱物X1,X2の間で温度差があっても、仕上がりを均一に安定させることができる。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。本実施例では、熱風ファンユニット21の熱風ヒータ23と、輻射ヒータ27とを組み合せているが、オーブン庫2の上下に輻射ヒータを別個に配設した2つの加熱手段や、それらの輻射ヒータに熱風ファンユニット21を組み合わせた3つの加熱手段で構成してもよい。また、定格消費電力の切替えも、実施例のような2段階ではなく、3段階以上若しくは段階的ではなく任意の値に設定できる構成としてもよい。さらに、表1に示す数値はあくまでも一例に過ぎず、オーブンレンジの仕様などを考慮して適宜変更してよい。