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JP2015075707A - 透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品およびその製造方法 - Google Patents

透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品およびその製造方法 Download PDF

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JP2015075707A
JP2015075707A JP2013213109A JP2013213109A JP2015075707A JP 2015075707 A JP2015075707 A JP 2015075707A JP 2013213109 A JP2013213109 A JP 2013213109A JP 2013213109 A JP2013213109 A JP 2013213109A JP 2015075707 A JP2015075707 A JP 2015075707A
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洋平 河合
Yohei Kawai
洋平 河合
敏 本谷
Satoshi Mototani
敏 本谷
義美 大谷
Yoshimi Otani
義美 大谷
一倫 森
Kazumichi Mori
一倫 森
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Abstract

【課題】本発明は、シリカ系多孔質層の反射防止性能を維持しつつ防汚性を高めた、透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品およびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の物品は、透明基材と、前記透明基材上に設けられた防汚性反射防止膜とを備え、前記防汚性反射防止膜は、前記透明基材側から順にシリカ系多孔質層と、ナノシート層とを有し、前記シリカ系多孔質層の屈折率は、1.10〜1.38の範囲内であり、前記ナノシート層は、屈折率が1.30〜1.80のナノシートを複数有し、前記防汚性反射防止膜の表面の水接触角は、60?未満であり、前記防汚性反射防止膜の表面に開口した開口径20nm以上の空孔の数は、8個/106nm2以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品およびその製造方法に関する。
反射防止膜をガラス板等の透明基材の表面に有する物品は、太陽電池のカバー部材、各種ディスプレイおよびそれらの前面板、各種窓ガラス、タッチパネルのカバー部材等として用いられている。
反射防止膜は、その機能上、物品の最表層に配置されている。そのため、反射防止膜には防汚性(汚れが付着しにくいこと、付着しても除去しやすいこと)が要求される。
ガラス板等の透明基材に用いられる反射防止膜の一つとしてシリカ系多孔質膜(本明細書では、「シリカ系多孔質層」ともいう。)がある(たとえば特許文献1)。シリカ系多孔質膜は、シリカを主成分とするマトリックス中に空孔を有することから、空孔を有さない場合に比べて屈折率が低くなっている。
しかし、シリカ系多孔質膜は、表面に微細な開放孔や凹凸が多数存在しているため、油汚れや樹脂等の汚れが付着しやすく、また付着した汚れが除去しにくい。
たとえば太陽電池モジュールの製造工程では、カバー部材と太陽電池セルを封止材で接着する工程が行われる。反射防止膜としてシリカ系多孔質膜を用いると、該製造工程にて、封止材であるEVAがシリカ系多孔質膜に浸み込み、反射防止性能が低下する問題がある。また、浸み込んだEVAはシリカ系多孔質膜から除去しにくく、除去した後も、シリカ系多孔質膜のEVAが浸み込んだ部分が、他の部分とは異なった色味となり見栄えが悪い等の問題もある。
上記の製造工程等における問題への対策として、シリカ系多孔質膜の表面に、フッ素系のコート剤を塗布する方法が提案されている(たとえば特許文献2)。すなわち、この方法では、フッ素系のコート剤を塗布することにより、油脂汚れやEVAに対する防汚性を向上させることができる。
しかし、コート剤によっては、塗布時にシリカ系多孔質膜中に浸み込んで反射防止性能を低下させる懸念がある。
また、シリカ系多孔質膜の表面を樹脂製の防汚性シートで覆って、上記製造工程後に当該防汚性シートを剥がす等の対策も有るが、コスト面での課題が大きい。
特表2010−509175号公報 特開平5−330856号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、シリカ系多孔質層の反射防止性能を維持しつつ防汚性を高めた、透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。
[1]透明基材と、前記透明基材上に設けられた防汚性反射防止膜とを備え、
前記防汚性反射防止膜は、前記透明基材側から順にシリカ系多孔質層と、ナノシート層とを有し、
前記シリカ系多孔質層の屈折率は、1.10〜1.38の範囲内であり、
前記ナノシート層は、屈折率が1.30〜1.80のナノシートを複数有し、
前記防汚性反射防止膜の表面の水接触角は、60°未満であり、
前記防汚性反射防止膜の表面に開口した開口径20nm以上の空孔の数は、8個/10nm以下である、物品。
[2]前記シリカ系多孔質層が前記ナノシート層側に緻密層を備え、前記緻密層と前記ナノシート層とを合わせた平均層厚d1が1〜10nmである、[1]に記載の物品。
[3]前記シリカ系多孔質層が前記透明基材側に多孔層を備え、該多孔層の平均層厚d2が60〜200nmである、[2]に記載の物品。
[4]前記多孔層の平均層厚d2に対する前記平均層厚d1の割合(d1/d2)が0.005〜0.17である、[2]または[3]に記載の物品。
[5]前記ナノシートが、層状ポリケイ酸塩および粘土鉱物から選ばれる無機層状化合物に由来するものである、[1]〜[4]のいずれか一に記載の物品。
[6]前記透明基材と前記防汚性反射防止膜との間にアンダーコート層を備える、[1]〜[5]のいずれか一に記載の物品。
[7]前記シリカ系多孔質層の縦断面における空孔の平均開口径が15〜100nmである、[1]〜[6]のいずれか一に記載の物品。
[8]透明基材と、前記透明基材上に設けられた防汚性反射防止膜とを備える、物品の製造方法であって、
マトリックス前駆体(A)と、粒子(B)と、液体媒体(C)とを含有するシリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材上に塗布する段階と、熱処理によりマトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成する段階と、前記塗布後、前記熱処理前後または前記熱処理中に前記粒子(B)を除去する段階とを有する、シリカ系多孔質層を形成する工程と、
前記シリカ系多孔質層の表面に、ナノシート層形成用塗布液を塗布し、乾燥して、ナノシート層を形成する工程とを有し、
前記マトリックス前駆体(A)が、下記一般式(a1)で表される化合物(a1)、その加水分解物および部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A1)と、下記一般式(a2)で表される化合物(a2)、その加水分解物および部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A2)と、を含有し、前記マトリックス前駆体(A)中の、前記化合物(A1)と前記化合物(A2)との含有量の比率が、前記化合物(a1)と前記化合物(a2)とのモル比((a1)/(a2))に換算して5〜60の範囲内であり、前記粒子(B)の平均一次粒子径が20〜130nmであり、
前記ナノシート層形成用塗布液は、複数のナノシートと該ナノシートの分散媒とを含有し、前記ナノシートは屈折率が1.30〜1.80である、物品の製造方法。
SiX …(a1)
SiX4−n …(a2)
[式中、Xは加水分解性基を示し、Yは、Y−OHの誘電率が35F/m以下である非加水分解性基を示し、nは1〜3の整数を示す。]
[9]前記シリカ系多孔質層を形成する工程が、マトリックス前駆体(A)と、熱処理により除去可能な粒子(B1)と、液体媒体(C)とを含有するシリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材上に塗布する段階と、熱処理によりマトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成すると共に前記粒子(B1)を除去する段階とを有する、[8]に記載の物品の製造方法。
[10]前記ナノシート層を形成する工程における前記乾燥の温度が300℃以下である、[8]または[9]に記載の物品の製造方法。
本発明によれば、シリカ系多孔質層の反射防止性能を維持しつつ防汚性を高めた、透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品およびその製造方法を提供できる。
本発明の第一の実施形態の物品を示す概略断面図である。 本発明の第二の実施形態の物品を示す概略断面図である。
<本発明の第一の実施形態>
図1に、本発明の第一の実施形態の物品の概略断面図を示す。
本実施形態の物品1は、透明基材10と、透明基材10の表面に形成された防汚性反射防止膜20とを有する。
(透明基材10)
透明基材10の形状としては、板、フィルム等が挙げられる。
透明基材10の材料としては、ガラス、樹脂等が挙げられる。
ガラスとしては、たとえば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
透明基材10としては、ガラス板が好ましい。
ガラス板は、フロート法等により成形された平滑なガラス板であってもよく、表面に凹凸を有する型板ガラスであってもよい。また、平坦なガラスのみでなく曲面形状を有するガラスでもよい。
ガラス板の厚みは特に限定されるものではなく、厚さ10mm以下のガラスを使用することができる。厚さが薄いほど光の吸収を低く抑えられるため、透過率向上を目的とする用途にとって好ましい。
ガラス板がソーダライムガラスの場合、下記の組成を有するものが好ましい。
酸化物基準の質量百分率表示で、
SiO :65〜75%、
Al:0〜10%、
CaO :5〜15%、
MgO :0〜15%、
NaO :10〜20%、
O :0〜3%、
LiO :0〜5%、
Fe:0〜3%、
TiO :0〜5%、
CeO :0〜3%、
BaO :0〜5%、
SrO :0〜5%、
:0〜15%、
ZnO :0〜5%、
ZrO :0〜5%、
SnO :0〜3%、
SO :0〜0.5%、を含む。
ガラス板が無アルカリガラスの場合、下記の組成を有するものが好ましい。
酸化物基準の質量百分率表示で、
SiO :39〜70%、
Al:3〜25%、
:1〜30%、
MgO :0〜10%、
CaO :0〜17%、
SrO :0〜20%、
BaO :0〜30%、を含む。
ガラス板が混合アルカリ系ガラスの場合、下記の組成を有するものが好ましい。
酸化物基準の質量百分率表示で、
SiO :50〜75%、
Al:0〜15%、
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:6〜24%、
NaO+KO:6〜24%、を含む。
太陽電池用カバーガラスとして使用する場合、ガラス板としては表面に凹凸をつけた梨地模様の型板ガラスが好ましい。型板ガラスとしては、通常の窓ガラス等に用いられるソーダライムガラス(青板ガラス)よりも鉄の成分比が少ない(透明度が高い)ソーダライムガラス(白板ガラス)が好ましい。
ガラス板にはあらかじめ強化処理が施されていてもよい。強化処理としては、ガラス板を高温下に晒した後に風冷する物理強化、または、ガラス板を、アルカリ金属を含む溶融塩中に浸漬させ、ガラス基板の最表面に存在する原子径の小さなアルカリ金属(イオン)を、溶融塩中に存在する原子径の大きなアルカリ金属(イオン)と置換する化学強化が挙げられる。強化処理により、ガラスの強度が向上し、たとえば強度を維持しながら板厚みを削減することが可能となる。カバーガラスの重量削減の観点から、厚みが2mm以下のガラス板が必要とされる場合、ガラス板は酸化アルミニウムの成分が多いアルミノシリケートガラスであって、かつ化学強化処理により強化されたガラスであることが好ましい。
(防汚性反射防止膜20)
防汚性反射防止膜20は、透明基材10側から順にシリカ系多孔質層21と、ナノシート層26とを備える。
{シリカ系多孔質層21}
シリカ系多孔質層21は、シリカを主成分とするマトリックス23中に複数の空孔を有し、該空孔として直径20nm以上の空孔24を含む。また、シリカ系多孔質層21の屈折率は、1.10〜1.38の範囲内である。
また、シリカ系多孔質層21は、透明基材側に多孔層22、ナノシート層側に緻密層25を備える。
シリカ系多孔質層21は、マトリックス23がシリカを主成分とすることから、屈折率(反射率)が低い。また、化学的安定性、透明基材10との密着性、耐摩耗性等に優れる。また、前記マトリックス23中に直径20nm以上の空孔24を有するため、該空孔24を有しない場合に比べて屈折率がさらに低くなっている。
また、シリカ系多孔質層21は、マトリックス23中に開口径20nm未満の空孔を有していてもよい。
多孔層22:
シリカ系多孔質層21は、透明基材側に多孔層22を備える。多孔層22は、緻密層25に比べ空孔24を多く含み、マトリックス部分が少ない。
本明細書では、多孔層22は、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)を用いて得られる防汚性反射防止膜20の縦断面の像において、最表面と平行な900nmの線上のうち、後述するマトリックス23部分の割合が50%以下である層と定義される。
多孔層22の平均層厚d2:
多孔層22の平均層厚d2は、60〜200nmが好ましく、80〜150nmがより好ましい。シリカ系多孔質層21の平均層厚が前記下限値以上であれば、可視光領域において光の干渉が起こり、反射防止性能が発現する。シリカ系多孔質層21の平均層厚が前記上限値以下であれば、クラックが発生せずに成膜できる。
平均層厚の測定方法は後述の実施例に示すとおりである。
マトリックス23:
マトリックス23がシリカを主成分とするとは、シリカの割合がマトリックス(100質量%)のうち90質量%以上であることを意味する。
マトリックス23としては、実質的にシリカからなるものが好ましい。実質的にシリカからなるとは、不可避不純物(たとえば後述する化合物(a2)に由来する構造)を除いてシリカのみから構成されていることを意味する。
マトリックス23はシリカ以外の成分を少量含んでもよい。該成分としては、Li,B,C,N,F,Na,Mg,Al,P,S,K,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Pt,Au,Biおよびランタノイド元素より選ばれる1つもしくは複数のイオンおよびまたは酸化物等の化合物が挙げられる。
マトリックス23は2次元的に重合されたマトリックス成分だけでなく、3次元的に重合されたナノ粒子を含んでもよい。ナノ粒子の組成としてAl,SiO,SnO,TiO,ZnO,ZrO等が挙げられる。ナノ粒子のサイズは1〜100nmが好ましい。ナノ粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、針状、中空状、シート状、角状等が挙げられる。
空孔24:
シリカ系多孔質層21は、直径20nm以上の空孔24を有する。これにより、優れた反射防止性能が得られる。
従来のシリカ系多孔質層は、直径20nm以上の空孔を含む場合、空孔が連通化することで連続孔を形成し、また、膜表面にも多くの開放孔が形成される。そのため、耐久性が悪く、耐湿試験や摩耗試験を行ったときに多孔質構造が壊れて反射防止性能が低下しやすい。しかし、本発明においては、開放孔が少ないため、マトリックス23中に直径20nm以上の空孔24を含んでいるにもかかわらず、優れた耐久性を有する。
マトリックス23中に直径20nm以上の空孔24が存在するか否かは、SEMを用いて得られる防汚性反射防止膜20の縦断面900nm×900nmの像中に開口径20nm以上の空孔が観察されるか否かによって判断する。該像で観察される開口の形状が真円状でない場合は、短径と長径の平均値をその空孔の開口径とする。
シリカ系多孔質層21の縦断面における空孔の平均開口径(以下、「平均開口径」ともいう。)は、15〜100nmであることが好ましく、20〜80nmがより好ましい。平均開口径が前記下限値以上であれば、反射防止膜として充分な反射防止性能が得られ、前記上限値以下であれば、シリカ系多孔質層21の耐久性、光透過性等が良好である。
平均開口径は、SEMを用いて得られる防汚性反射防止膜20の縦断面においてランダムに選択した100個の空孔の開口径を平均することで求められる。なお、平均開口径の算出の際には、開口径3nm以下の空孔については対象から除外した。
シリカ系多孔質層21の内部に存在する直径20nm以上の空孔24は、連続孔ではなく、独立孔であることが好ましい。
独立孔とは、マトリックス中に独立して存在している粒状の空孔を示す。シリカ系多孔質層21の内部に存在する空孔24が独立孔であることにより、水蒸気等がガラスと膜の界面に浸透しにくく、耐湿熱性に優れるため好ましい。また、空孔24が独立孔であれば、防汚性も向上させることができる。
たとえば、後述する製造方法にて、粒子(B)として有機ポリマーナノ粒子を用い、これを熱分解して得られるシリカ系多孔質層の内部に存在する空孔24は独立孔であり、複数の空孔24が1個ずつ分かれて存在する。
一方、従来、シリカ系多孔質層の製造方法として一般的な、無機ナノ粒子をマトリックス中に分散させる方法により得られるシリカ系多孔質層は、粒子同士の間にある空隙が連続孔を形成しやすい。膜内部が連続孔からなる場合は、最表面に緻密層が形成されても水蒸気等がガラスと膜の界面に浸透しやすいため、耐湿熱性が不足しやすい。
緻密層25:
シリカ系多孔質層21は、ナノシート層側に緻密層25を備える。緻密層25は、多孔層22に比べ空孔24が少なく、マトリックス部分が多い。
本明細書では、緻密層25は、SEMを用いて得られる防汚性反射防止膜20の縦断面の像において、最表面と平行な900nmの線上のうち、マトリックス23部分の割合が50%超である層と定義される。
シリカ系多孔質層21を、後述するシリカ系多孔質層形成用塗布液(化合物(A1)、化合物(A2)、粒子(B)および液体媒体(C)を含有する塗布液)を塗布し、熱処理する工程を経て形成する場合、緻密層25のマトリックス23の組成は、多孔層22と異なる。
詳しくは後の「物品1の製造方法」で説明するが、シリカ系多孔質層形成用塗布液をガラス板等の物品の表面に塗布すると、化合物(A2)が塗布液の相分離により塗膜の上層に移行する。これにより塗膜のナノシート層側に形成された化合物(A2)相が、熱処理によって緻密層25となる。
そのため、緻密層25を構成するマトリックス23は、実質的に化合物(A2)の熱処理物からなり、化合物(a2)に由来する構造(たとえば非加水分解性基Y)を含む。
なお、多孔層22を構成するマトリックス23は、実質的に化合物(A1)の熱処理物から構成され、化合物(a2)に由来する構造を含まないか、含んでもごくわずかである。
屈折率:
シリカ系多孔質層21の屈折率は、1.10〜1.38の範囲内である。好ましくは、1.10〜1.30の範囲内であり、より好ましくは1.15〜1.25の範囲内である。シリカ系多孔質層21の屈折率が前記上限値以下であれば、シリカ系多孔質層21中に充分な空孔24が存在し、シリカ系多孔質層21の反射率が充分に低くなり、優れた反射防止性能を発揮する。シリカ系多孔質層21の屈折率が前記下限値以上であれば、シリカ系多孔質層21の空隙率が高くなりすぎず、耐久性が向上する。
シリカ系多孔質層21の屈折率の測定方法は、後述の実施例に示す「屈折率」の測定方法と同様である。
{ナノシート層26}
ナノシート層26は、複数のナノシートを含有する。ナノシート層26は、必ずしもシリカ系多孔質層21の表面全体を被覆している必要はないが、シリカ系多孔質層21の表面全体を被覆していることが、防汚性の点からは好ましい。
ナノシートの屈折率は、1.30〜1.80であり、1.35〜1.5が好ましい。
ナノシートの屈折率は、分光反射率測定により得られた反射率より算出して求められる値である。
ナノシート:
ナノシートは、無機層状化合物を剥離することにより得られる平面状の物質であり、本発明では屈折率が1.30〜1.80であればよく、公知のナノシートから適宜選択できる。
屈折率が1.30〜1.80のナノシートは、層状ポリケイ酸塩(屈折率1.45)および粘土鉱物(屈折率1.56〜1.58)から選ばれる無機層状化合物に由来するものが好ましい。該無機層状化合物由来のナノシートは、フッ素系のコート剤に比べて疎水性が低く、形成される防汚層表面の撥水性が比較的低い。そのため、物品1は、無機層状化合物由来のナノシートを含むナノシート層26を備えていれば、屋外に設置したときに、フッ素系のコート剤で生じやすい、汚れが雨水等により均一に流れ落ちず点在して残る、雨水等により流水跡が付く、といった問題が生じにくくなる。また、長期に渡って良好な外観を維持しやすくなる。
該無機層状化合物は、複数のナノシートが積層した構造を有しており、天然品、合成品等が市販されている。該無機層状化合物を構成する層を剥離することでナノシートが得られる。
本発明において、粘土鉱物は、結晶構造中にAlO等の八面体構造を有するものを意味し、層状ポリケイ酸塩は、該八面体構造を有さない点で粘土鉱物と相違する。
層状ポリケイ酸塩としては、たとえば、カネマイト、マカタイト、マガディアイト、ケニヤイト、オクトシリケート等が挙げられる。
層状ポリケイ酸塩の組成は、下記の組成式(1)で表すことができる。Mにおけるアルカリ金属原子としては、Na、K、Li等が挙げられる。
O・xSiO・yHO …(1)[式中、Mはアルカリ金属原子子であり、xは2〜40の整数であり、yは1〜20の整数である。]
粘土鉱物としては、スメクタイト、バーミキュライト、層状複水酸化物(LDH)等が挙げられる。スメクタイトとしては、2−八面体型(サポナイト、ヘクトライト等)、3−八面体型(モンモリロナイト、バイデライト等)等が挙げられる。
2−八面体型スメクタイトの組成は、下記の組成式(2)で表すことができる(層間カチオンを含む)。3−八面体型スメクタイトの組成は、下記の組成式(3)で表すことができる(層間カチオンを含む)。
(M,M0.3(M,M(Si,Al)10(F,OH)・4HO …(2)
(M,M0.3(M,M(Si,Al)10(F,OH)・4HO …(3)
式中、M〜Mはそれぞれ独立にはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または遷移金属原子である。アルカリ金属原子としては前記と同様のものが挙げられる。アルカリ土類金属としては、Mg、Ca等が挙げられる。遷移金属原子としては、Fe、Al等が挙げられる。
バーミキュライトの組成は、下記の組成式(4)で表すことができる。
(Mg,Fe,Al)(Al,Si)10(OH)・4HO …(4)
LDHの組成は、下記の組成式(5)で表すことができる(層間アニオンを含む)。
[M 1−p (OH)]・[Ap/n・qHO] …(5)
式中、Mは2価の金属イオン(Mg2+、Ca2+、Zn2+、Ni2+等)であり、Mは3価の金属イオン(Al3+、Fe3+、Cr3+等)であり、Aはn価のアニオンであり、nは1〜3の整数である。Aとしては、たとえばCl、NO3−、CO 2−等が挙げられる。
無機層状化合物としては、上記のなかでも、粘土鉱物が好ましく、スメクタイトが特に好ましい。層状ポリケイ酸塩は層表面に水酸基が露出しているのに対し、粘土鉱物は水酸基が層表面に露出していない。このため、層状ポリケイ酸塩から得られるナノシートに比べ、粘土鉱物から得られるナノシートはシリカ系多孔質層21に対する密着性が弱く、屋外での暴露などによりナノシート層26が流去しやすい。ナノシート層26が経時的に無くなることによって、シリカ系多孔質層21の低反射特性が十分発現するようになる。
なお、ナノシートの材料として、Ti0.91、Ti1.73Li0.27等の酸化チタン系、MnO等の酸化マンガン系、Nb17、Nb等の酸化ニオブ系、WO等の酸化タングステン系などの遷移金属酸化物系のもの;MoS等の遷移金属カルコゲナイド系のもの;CaNb10、LaNb等の層状ペロブスカイト系のもの;等もあるが、これらの材料は、透明性が低かったり、透明でも屈折率が高かったりする。そのため、これらの材料に由来するナノシートを防汚層に用いた場合、反射防止性能が低下するため好ましくない。
前記ナノシートの平均厚みは0.5〜5nmであることが好ましく、0.7〜3nmがより好ましい。ナノシートの平均厚みが前記下限値以上であれば、個々のナノシートの構造が破壊されにくくなり、ナノシート層26の耐久性が増す。ナノシートの平均厚みが前記上限値以下であれば、後述する防汚層を薄膜(たとえば平均層厚d1が10nm以下)に形成しやすくなる。前記ナノシートの平均厚みは、例えばSEM画像から算出できる。
前記ナノシートの面積は、100nm以上であることが好ましく、200nm以上がより好ましく、400nm以上がさらに好ましい。ナノシートの面積が100nm以上であれば、後述するナノシート層形成用塗料液を塗布してナノシート層26を形成する際に、ナノシートがシリカ系多孔質層21中に入り込みにくく、シリカ系多孔質層の表面がうまくナノシートで被覆される。ナノシートの面積の上限は特に限定されないが、ナノシート層形成用塗料組成物中での分散性、入手しやすさ等を考慮すると、1000000nm以下が好ましく、250000nm以下がより好ましい。前記ナノシートの面積は、例えばSEM画像から算出できる。
これらのことを考慮すると、前記ナノシートとしては、0.5〜5nmの平均厚みと100〜1000000nmの平均面積とを有するものが好ましく、0.7〜3nmの平均厚みと200〜1000000nmの平均面積とを有するものがより好ましく、0.7〜3nmの平均厚みと200〜250000nmの平均面積とを有するものがさらに好ましい。
ナノシートとして、界面活性剤等の処理剤で表面修飾されたナノシートを含有してもよい。表面修飾されているナノシートを含有することで、付着した汚れが剥離しやすくなり、少量で充分な防汚性を得ることができる。
界面活性剤としては、オクタン酸ナトリウム、オクタン酸カリウム、デカン酸ナトリウム、デカン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアルキルカルボン酸塩、ヘキサンスルホン酸ナトリウム、ヘキサンスルホン酸カリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸カリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸カリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸カリウム等のアルキルスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸カリウム等の硫酸エステル、ラウリルリン酸ナトリウムやトリポリリン酸ナトリウム等のリン酸エステル、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエタノールアミンクロライド、トリエタノールアミンブロミド、トリプロパノールアミンクロライド、トリプロパノールアミンブロミド、ポリオキシエチレンアルキルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンアルキルアンモニウムブロミド等の4級アルキルアンモニウムや、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、セタノール、オレイルアルコール等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤以外の処理剤としては、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、t−ブチルジメチルシラン、トリ−i−プロピルシリルクロライド、クロロメチルトリメチルシラン、トリエチルシラン、ブチルジメチルシラン、トリメチルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザンをはじめとするシリル化剤等が挙げられる。
なお、無機層状化合物からナノシートを剥離するときに、該剥離を、界面活性剤を含む水中で行うことがある。こうして得られるナノシート分散液中には、界面活性剤で表面修飾されたナノシートが含まれる。
ナノシート層26に含まれるナノシートは1種でも2種以上でもよい。
バインダー:
ナノシート層26は、ナノシートのほかに、バインダーを含有してもよい。バインダーを含有させることで、複数のナノシート間の密着性、ナノシート層26の緻密性、屋外暴露時のナノシート層26の除去性等を高めることができる。
バインダーとしては、特に限定されないが、後述するナノシート層形成用塗布液に用いられる分散媒に溶解するものが好ましい。ナノシート層形成用塗料組成物の分散媒が水を含むことが多いため、バインダーとしては、バインダー自体またはその前駆体が水溶性であるものが好ましく、たとえば、加水分解性シラン化合物の加水分解物(シラン加水分解ゾル)やその縮合物、水溶性高分子等が挙げられる。バインダーとしては水溶性高分子がより好ましい。水溶性高分子は、屋外暴露時に紫外線や風雨などによって容易に劣化するため、ナノシート層26の除去性を高める効果がある。
加水分解性シラン化合物としては、たとえば、SiZ4−m(mは2〜4の整数であり、Zは加水分解性基であり、Wは非加水分解性基である。)で表される化合物が挙げられる。加水分解性シラン化合物の加水分解物は、加水分解によりSiZ4−mのSi−Z基がSi−OHとなった構造を有しており、Si−OHはナノシート表面に結合し得る。該加水分解物は、Si−OHを2以上有することで、ナノシート同士を結合し得る。また、加水分解物同士が縮合して縮合物を形成し得る。
mは3または4であることが好ましい。
Zの加水分解性基とは、加水分解によりSi−Z基をSi−OH基に変換し得る基である。加水分解性基としては、ハロゲン原子(たとえば塩素原子)、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノキシ基、アミド基、ケトキシメート基、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基等が挙げられ、アルコキシ基が特に好ましい。
Wの非加水分解性基とは、加水分解によりSi−Z基がSi−OH基となる条件下で、構造が変化しない官能基である。非加水分解性基としては、特に限定されず、シランカップリング剤等における非加水分解性基として公知の基であってよい。
加水分解性シラン化合物の具体例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等)、アルキル基を有するアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等)、アリール基を有するアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等)、ペルフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロポリエーテルトリエトキシシラン等)、ペルフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(パーフルオロエチルトリエトキシシラン等)、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等)等が挙げられる。
上記のうち、ナノシート層26を親水性とする場合には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラルコキシシランンが好ましい。ナノシート層26を撥水性とする場合には、アルキル基を有するアルコキシシランやペルフルオロアルキル基を有するアルコキシシランが好ましい。
加水分解性シラン化合物の加水分解は、加水分解性シラン化合物の加水分解性基をすべて加水分解できる量の水(たとえばテトラアルコキシシランの場合、テトラアルコキシシランの4倍モル以上の水)および触媒として酸またはアルカリを用いて行う。酸としては、無機酸(HNO、HSO、HCl等)、有機酸(ギ酸、しゅう酸、モノクロル酢酸、ジクロルム酢酸、トリクロル酢酸等)が挙げられる。アルカリとしては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。触媒としては、長期保存性の点から、酸が好ましい。また、触媒としては、ナノシートの分散を妨げないものが好ましい。
水溶性高分子としては、たとえばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニル硫酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、カチオン化グアーガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、コーンスターチ、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、デンプン、加工デンプン、にかわ、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、ペクチン等が挙げられる。
水溶性高分子の分子量は1000〜100000が好ましい。分子量が1000未満であると、シリカ系多孔質層21の内部に水溶性高分子が浸み込みやすく、透過率の低下を起こしやすい。分子量が100000より大きいと、溶媒に溶けにくくなり、かつ塗料中でナノシートと凝集物を生成し、塗料の安定性が低下する可能性がある。
他の成分:
ナノシート層26は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ナノシートおよびバインダー以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、たとえば、ナノシートの表面を修飾していない界面活性剤、シリカ微粒子、チタニア微粒子等が挙げられる。チタニア微粒子を含有する場合、光触媒効果により、付着汚れの分解が期待できる。
ナノシート層26をシリカ系多孔質層21の表面上に設けることで、反射防止性能を低下させることなく、防汚性を高めることができる。
ナノシートの屈折率が低く、ナノシート層26全体の厚みが薄いため、多孔層22に比べて緻密ではあるものの、防汚性反射防止膜20全体の反射防止性能にはほとんど影響しない。
ナノシート層26は、複数のナノシートが液体媒体中に分散したナノシート層形成用塗料液をシリカ系多孔質層21の表面に塗布し、乾燥して形成される。その際、複数のナノシートはシリカ系多孔質層21表面上に堆積する。そのため、複数のナノシートが堆積して形成されるナノシート層26は、シリカ系多孔質層21に比べ、さらに緻密で表面平滑性が高まるため、汚れが入り込みにくい。そのため汚れが付着しにくい。
本発明のシリカ系多孔質層21は、緻密層25を有するため、シリカ系多孔質層21だけでもEVA等の汚れの侵入を充分抑制できる。本発明では、ナノシート層26をさらに形成させることにより、EVA等の汚れの侵入をさらに抑制でき、また、表面に汚れが付着しても汚れとともにナノシートの一部がはがれるため、汚れの跡が残りにくいという効果も得られる。
{防汚層}
物品1では、上記シリカ系多孔質層21中の緻密層25と上記ナノシート層26とが組合せられていることにより、優れた防汚性能が発揮される。
以下、緻密層25とナノシート層26とからなる層を、防汚層と称する。
防汚層の平均層厚d1:
防汚層の平均層厚d1は、1〜10nmであり、2〜7nmが好ましい。防汚層の平均層厚d1が0.4nm以上であると、充分な防汚性が得られる。前記下限値以上であれば、充分な防汚性能が確保できる。一方、前記上限値以下であると、防汚層が多孔層22の反射防止性能に与える影響が少なく、防汚層を設けることによる最大透過率の低下を抑制できる。
防汚層の平均層厚d1の測定方法は、後述する実施例に示すとおりである。
多孔層22の平均層厚d2に対する防汚層の平均層厚d1の割合:
多孔層22の平均層厚d2に対する防汚層の平均層厚d1の割合(d1/d2)は、0.0013〜0.5の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは0.005〜0.25である。
d1/d2が前記下限値以上であれば、充分な防汚性能が確保できる。一方、前記上限値以下であれば、充分な反射防止性能が確保できる。すなわち、防汚層とシリカ系多孔質層の平均層厚の比が上記範囲内であることにより、防汚性と反射防止性能が充分に両立できる。
水接触角:
防汚層の表面、すなわち、防汚性反射防止膜20の表面の水接触角は、60°未満であり、50°未満が好ましい。防汚性反射防止膜20の表面の水接触角が60°未満であることで、有機物を含有する汚れが付着しにくくなり、また、付着した汚れも除去しやすくなるため、防汚性を高めることができる。
表面の水接触角の下限は、特に限定されないが、無機物を含有する汚れの付着およびEVAの密着性が軽減されるため、30°以上が好ましく、40°以上がより好ましい。
水接触角の測定方法は後述の実施例に示す「水接触角」の測定方法と同様である。
防汚性反射防止膜20の表面、つまり防汚層の表面の水接触角は、ナノシート層26の組成によって決まる。したがって、防汚層の表面の水接触角は、ナノシートの種類または添加する界面活性剤の種類によって適宜調整できる。
最表面開口空孔数:
ナノシート層26がシリカ系多孔質層21の表面全体を被覆していない場合、ナノシート層26が存在しない部分では、緻密層25が防汚性反射防止膜20の最表面となる。その場合、該防汚性反射防止膜20の最表面において、シリカ系多孔質層21中の空孔24が開口する可能性がある。
本実施形態では、防汚性反射防止膜20の最表面(または、防汚層の表面)に開口した開口径20nm以上の空孔の数(以下、「最表面開口空孔数」ともいう。)は、8個/10nm以下である。最表面開口空孔数は、5個/10nm以下が好ましく、0個/10nmであることが特に好ましい。
最表面開口空孔数は、SEMで観察した防汚性反射防止膜20の表面の像において、900nm×900nmの領域内に存在する開口径20nm以上の空孔の数から、10nm当たりの数に換算して求められる。
防汚性反射防止膜20は、最表面開口空孔数が前記上限値以下または0個/10nmであることにより、防汚性のほか、優れた耐久性も有する。
たとえば、従来の反射防止膜を透明基材10としてのガラスの表面に直接形成した場合、湿熱条件下で透明基材10と接する部分の多孔質構造がアルカリの影響により壊れ、反射防止性能が低下する。これに対し、防汚性反射防止膜20は、透明基材10の表面に直接形成して湿熱条件下においた場合でも、長期に渡って多孔質構造が維持され、反射防止性能が低下しにくい。上記効果は、防汚層によって、外気中の水分がシリカ系多孔質層21を透過しにくくなり、シリカ系多孔質層21とガラスである透明基材10との境界面でガラス成分由来のアルカリが生成しにくくなることによると考えられる。
また、防汚性反射防止膜20の最表面に大径の空孔がほとんど無く平滑であることにより、耐摩耗性も向上する。また、汚れが膜内部の空孔に浸透しにくく、付着した汚れが除去しやすい等、防汚性が向上し、反射防止膜としての有用性が向上する。
なお、開口径20nm未満の空孔が耐久性に与える影響は少ない。そのため、シリカ系多孔質層21は、緻密層25や多孔層22のマトリックス23中に、図示しない開口径20nm未満の空孔を有していてもよい。
{防汚性反射防止膜20の平均反射率}
物品1の防汚性反射防止膜20側の表面に入射角0°で入射する波長400〜1100nmの光の平均透過率(以下、「平均透過率(0°入射)」ともいう。)は、94.0%以上であることが好ましく、94.2%以上がより好ましい。物品1の平均透過率(0°入射)が前記下限値以上であれば、太陽電池のカバーガラス等に要求される光透過性を充分に満足する。
物品1における透明基材10の代わりに他の透光性基板を用いた物品の平均透過率も、上記と同様、94.0%以上であることが好ましい。
物品1の防汚性反射防止膜20側の表面に入射角5°で入射する波長400〜1100nmの光の平均反射率(以下、「平均反射率(5°入射)」ともいう。)は、2.0%以下であることが好ましく、1.7%以下がより好ましい。防汚性反射防止膜20の平均反射率(5°入射)が前記上限値以下であれば、太陽電池のカバーガラス等に要求される反射防止性能を充分に満足する。
本明細書における入射角は、光の入射方向と防汚性反射防止膜20の表面の法線とのなす角度である。
(物品1の製造方法)
物品1は、マトリックス前駆体(A)と、粒子(B)と、液体媒体(C)とを含有するシリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材上に塗布する段階と、熱処理によりマトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成する段階と、前記塗布後、前記熱処理前後または前記熱処理中に前記粒子(B)を除去する段階とを有する、シリカ系多孔質層を形成する工程(以下、「第一工程」という。)と、前記シリカ系多孔質層の表面に、ナノシート層形成用塗布液を塗布し、乾燥して、ナノシート層を形成する工程(以下、「第二工程」という。)と、により製造される。
前記第一工程は、マトリックス前駆体(A)と、熱処理により除去可能な粒子(B1)と、液体媒体(C)とを含有するシリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材上に塗布する段階と、熱処理によりマトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成すると共に前記粒子(B1)を除去する段階とを有する、シリカ系多孔質層を形成する工程であることが好ましい。
{第一工程}
第一工程は、透明基材10上にシリカ系多孔質層21を形成する工程である。
シリカ系多孔質層21の形成においては、まず、以下に示すマトリックス前駆体(A)と、粒子(B)と、液体媒体(C)とを含有するシリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材10の表面に塗布し、熱処理する。
該シリカ系多孔質層形成用塗布液の塗膜を熱処理することで、マトリックス前駆体(A)からマトリックス23が形成される。
粒子(B)が熱処理により除去可能であれば、該熱処理により粒子(B)が除去され、シリカ系多孔質層21が形成される。具体的には、粒子(B)が、熱分解性材料(たとえば熱分解性の有機ポリマー等)で構成される場合、マトリックス23を形成する際の熱処理温度を、該熱分解性材料の熱分解温度以上の温度とすることにより、粒子(B)が分解後に気化し、マトリックス23中の微細な空孔を通過してマトリックス23外に放出され、シリカ系多孔質層21が形成される。マトリックス23を形成するための熱処理を、該熱分解温度よりも低い温度で行い、成膜後、再度、熱分解温度以上の温度での熱処理を行ってもよい。
熱処理により粒子(B)を除去しない場合は、熱処理によりマトリックス23を形成する前、または形成した後に、粒子(B)を構成する材料に応じた除去処理を行うことで、シリカ系多孔質層21を形成できる。
マトリックス前駆体(A):
マトリックス前駆体(A)は、下記一般式(a1)で表される化合物(a1)、その加水分解物および部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A1)と、下記一般式(a2)で表される化合物(a2)、その加水分解物および部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A2)と、を含有する。
SiX …(a1)
SiX4−n …(a2)
[式中、Xは加水分解性基を示し、Yは、Y−OHの誘電率が35F/m以下となる非加水分解性基を示し、nは1〜3の整数を示す。]
式(a1)中、Xは加水分解性基を示す。加水分解性基とは、加水分解によりSi−X基をSi−OH基に変換し得る基である。
Xとしては、ハロゲン原子(たとえば塩素原子)、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノキシ基、アミド基、ケトキシメート基、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基等が挙げられ、大気中での取り扱いが容易で加水分解重縮合反応が制御しやすい点から、アルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。
化合物(a1)が有する4つのXは、同じでも異なってもよい。入手しやすさ、加水分解重集合反応の制御のしやすさ等の点では、同じ基であることが好ましい。
化合物(a1)の具体例としては、たとえば、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等)等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の製造方法においては、誘電率(極性)が異なる2種以上のマトリックス前駆体(化合物(A1)および(A2))を用いることで相分離を引き起こして緻密層25が形成されると考えられる。したがって、誘電率の大きい化合物(A1)と、誘電率の小さい化合物(A2)の誘電率差が大きいほど相分離が顕著に引き起こされ、緻密層25の層厚が厚くなると考えられる。化合物(a1)が有する加水分解性基がアルコキシ基である場合、該アルコキシ基の炭素数が小さいほど、加水分解の進行が速いためSi−OHへの転換が進みやすい。結果として化合物(A1)の誘電率が大きくなる(誘電率:Si−X<Si−OH)ため、誘電率の小さい化合物(A2)との間の相分離が顕著に引き起こされることで、緻密層25の層厚が厚くなる傾向がある。
そのため、化合物(a1)はテトラアルコキシシランのなかでも、アルコキシ基の炭素数が1または2であるテトラアルコキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが特に好ましい。
化合物(a1)の加水分解物、部分縮合物は、常法により得ることができる。
化合物(a1)は反応性が高く、化合物(a1)に水を添加するだけでも加水分解反応や部分縮合反応が進行し得る。そのため、化合物(a1)と水とを混合することで、加水分解物や部分縮合物を得ることができる。
水の添加量は、化合物(a1)の4倍モル以上が好ましい。
このとき、水とともに触媒を添加することが好ましい。触媒としては、酸またはアルカリを用いることができる。酸としては、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)、有機酸(ギ酸、シュウ酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸等)が挙げられる。アルカリとしては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。触媒としては、化合物(a1)の加水分解物や部分縮合物の長期保存性の点から、酸が好ましい。
得られた反応液は、通常、そのまま、または適宜希釈して、前記シリカ系多孔質層形成用塗布液の調製に用いられる。そのため、加水分解に用いる触媒としては、粒子(B)の分散を妨げないものが好ましい。
化合物(a1)を加水分解、部分重縮合反応を行う際の温度は、5〜80℃が好ましく、10〜70℃がより好ましい。前記下限値以上であれば、加水分解重縮合反応が充分に進行し、前記上限値以下であれば、加水分解重縮合反応制御が容易である。
式(a2)中、nは1〜3の整数を示し、1または2が好ましく、1が特に好ましい。
Xの加水分解性基としては前記と同様のものが挙げられる。
nが1または2である場合、化合物(a2)が有する複数のXは、同じでも異なってもよい。入手しやすさ、加水分解反応の制御のしやすさ等の点では、同じ基であることが好ましい。
Yは、Y−OHの誘電率が35F/m以下である非加水分解性基を示す。
非加水分解性基とは、加水分解によりSi−X基がSi−OH基となる条件下で、構造が変化しない官能基である。
本来は、化合物(a1)の加水分解物および部分縮合物であるSi(OH)および化合物(a2)の加水分解物および部分縮合物YSi(OH)4−nの誘電率で議論すべきであるが、各化合物の加水分解物および部分縮合物自体の誘電率を測定することは困難である。したがって、類似化合物の誘電率を適用しモデル化して検証を行った。具体的には、化合物(a1)の加水分解物および部分縮合物Si−OHの類似化合物としてHO−OH(過酸化水素)、化合物(a2)の加水分解物および部分縮合物としてY−OHを選定した。結果として、HO−OHとY−OHの誘電率差が大きければ相分離が引き起こされ、緻密層25が形成されやすいことが判明した。
Y−OHの誘電率は、文献値を用いてもよいが、以下の測定方法によって測定することができる。
Y−OHの誘電率は、JIS−R1627の規定に準拠し、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、PNAマイクロ波ベクトル・ネットワーク・アナライザ)を用いて、ブリッジ回路によって試料に電場を印加し、反射係数と位相を測定した値から算出した。
Yとしては、ペルフルオロポリエーテル基、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基(フェニル基等)等が挙げられる。
なお、以下に示すように、炭化水素基の鎖長が長いほど、または炭化水素基の水素原子を置換するフッ素原子の数が多いほど、Y−OHの誘電率が小さい傾向がある。一方、化合物(a1)の加水分解物の大部分はSi−OHであり、HO−OH(過酸化水素)の誘電率は、89.2F/mである。
[化合物(a1)の類似化合物]
HO−OH(過酸化水素:誘電率89.2F/m)。
[化合物(a2)の類似化合物]
CH−OH(メタノール:誘電率33.1F/m)。
CHCH−OH(エタノール:誘電率23.8F/m)。
CH(CH−OH(1−ヘキサノール:誘電率13.3F/m)。
−OH(フェノール:誘電率2.9F/m)。
CFCH−OH(トリフルオロエタノール:誘電率2.1F/m)。
化合物(a2)の具体例としては、たとえば、モノアルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン等)、トリアルキルモノアルコキシシラン(トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン等)、モノアリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等)、ジアリールジアルコキシシラン(ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等)、トリアリールモノアルコキシシラン(トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等)、ペルフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロポリエーテルトリエトキシシラン等)、ペルフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロエチルトリエトキシシラン等)、シリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル等)等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
化合物(a2)としては、上記のなかでも入手が容易で熱分解時に不活性ガスを発生しないことから、モノアルキルトリアルコキシシラン、モノアリールトリアルコキシシランが好ましく、モノアリールトリアルコキシシランがより好ましい。
化合物(a2)の加水分解物および部分縮合物は、化合物(a1)の加水分解物および部分縮合物と同様の方法で得ることができる。また、化合物(a1)と(a2)をあらかじめ混合して共加水分解重縮合反応を行ってもよい。
マトリックス前駆体(A)中、化合物(A1)と化合物(A2)との含有量の比率は、化合物(a1)と化合物(a2)とのモル比((a1)/(a2))に換算して、5〜60の範囲内であり、10〜30の範囲内であることが好ましい。
(a1)/(a2)の値を前記上限値以下とすることで、緻密層25が充分な厚みで形成され、防汚層の最表面開口空孔数を8個/10nm以下にすることができる。最表面開口空孔数が少ないことで、汚れが付着しにくくなり、また、優れた耐湿性および汚れ除去性も得られる。一方、(a1)/(a2)の値を下限値以上とすることで、本第一工程で行う熱処理後に緻密層25が親水性となるため、後述する第二工程において、該緻密層25上にナノシート層26を均一に形成しやすくなる。
化合物(a1)、(a2)の加水分解物および部分縮合物、または(a1)と(a2)の共加水分解物および部分縮合物の平均分子量は、200〜2000の範囲が好ましく、300〜1500の範囲がより好ましい。平均分子量が前記下限値以上であれば、未反応成分の揮発が抑えられ、前記上限値以下であれば、充分な透明性が確保できる。平均分子量は、水の添加量、反応温度およびマトリックス前駆体(A)の含有量等によって制御可能である。平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
シリカ系多孔質層形成用塗布液中のマトリックス前駆体(A)の含有量は、シリカ系多孔質層形成用塗布液が塗布可能な範囲内であれば特に限定されないが、シリカ系多孔質層形成用塗布液の全量(100質量%)に対し、SiO換算固形分濃度として、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。0.2質量%以上であると、加水分解重縮合反応が充分に進み、20質量%以下であると、加水分解重縮合反応制御が容易であり長期保存性が良好である。
なお、SiO換算固形分は、シリカ系多孔質層形成用塗布液中に含まれるマトリックス前駆体(A)のすべてのSiがSiOに転化したときの固形分である。
粒子(B):
粒子(B)は、マトリックス前駆体(A)またはマトリックス中から除去可能な粒子である。
粒子(B)は、シリカ系多孔質層形成用塗布液を透明基材上に塗布した後、マトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成する際の熱処理の前後又は熱処理中に、除去される。粒子(B)の除去方法としては、熱処理、プラズマ処理、溶剤浸漬、酸又はアルカリ浸漬、光照射等が挙げられる。
マトリックス前駆体(A)またはマトリックス中から除去可能な粒子としては、たとえば、熱処理により除去可能な粒子(B1)、プラズマ処理により除去可能な粒子(B2)、溶剤浸漬により除去可能な粒子(B3)、酸またはアルカリ浸漬により除去可能な粒子(B4)、光照射により除去可能な粒子(B5)等が挙げられる。中でも、マトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成する際の熱処理と同時に、該熱処理により除去することができる、熱処理により除去可能な粒子(B1)が好ましい。
熱処理により除去可能な粒子(B1)としては、熱分解性材料または熱昇華性材料からなる粒子が挙げられる。
熱分解性材料の熱分解温度は、100〜800℃が好ましく、200〜700℃がより好ましい。
熱分解性材料としては、たとえばカーボン、有機ポリマー、界面活性剤ミセル等が挙げられる。これらの中でも、経時安定性の点から、カーボンまたは有機ポリマーが好ましい。
なお、空気中でのカーボンの熱分解温度は500℃程度である。空気中での有機ポリマーの熱分解温度は、有機ポリマーの種類や分子量によっても異なるが、一般的には200〜600℃程度である。有機ポリマーの熱分解温度は、示差熱−熱重量同時測定(TG−DTA)により測定できる。
熱処理により除去可能な粒子は、熱処理により除去されないSiO等の無機酸化物によって被覆されたコア−シェル粒子でもよい。シェルの厚みが厚いと膜表面に粒子由来の凹凸が形成されやすく、耐摩耗性の不足や汚れが付着しやすくなるために、シェルの厚みは5nm以下が好ましい。反射防止性能の観点からは、加熱により除去できない成分が含まれないことがより好ましい。
前記有機ポリマーとしては、所望の粒子径のナノ粒子を合成が得られれば特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ジエン系モノマー、イミド系モノマー、アミド系モノマーからなる群(以下、「特定モノマー群」ともいう。)から選ばれるモノマーの単独重合体または共重合体が好ましい。
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールのジアクリル酸エステル、ジエチルグリコールのジアクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジアクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジアクリル酸エステル、エチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、プロピレングリコールのジメタクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル等が挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、アルキルスチレンとしては;スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、フロロスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、クロルメチルスチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、イソプレイン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
イミド系モノマーとしては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、6−アミノヘキシルコハク酸イミド、2−アミノエチルコハク酸イミド等が挙げられる。
アミド系モノマーとしては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体、N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアリルアミン系誘導体、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体、N−アミノスチレン等のアミノスチレン類等が挙げられる。
前記有機ポリマーが、前記特定モノマー群から選ばれるモノマーの共重合体である場合、該共重合体は、前記特定モノマー群から選ばれる2種以上のモノマーを共重合させたものであってもよく、前記特定モノマー群から選ばれる少なくとも1種と、特定モノマー群から選ばれるモノマー以外の他のモノマーの少なくとも1種とを共重合させたものであってもよい。
該他のモノマーとしては、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリル酸、メタアクリル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、メチレンマロン酸、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノオクチル、 カルボキシアルキルビニルエーテル、カルボキシアルキルビニルエステル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体、アリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアリルアミン系誘導体、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、サリチル酸ビニル、塩化ビニリデン、クロロヘキサンカルボン酸ビニル、アクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−2−クロロエチル、アクリルニトリル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体、アリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアリルアミン系誘導体、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体、p−アミノスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミド、6−アミノヘキシルコハク酸イミド、2−アミノエチルコハク酸イミド、グリシジルメタクリレート、マレイン酸のモノおよびジグリシジルエステル、フマル酸のモノおよびジグリシジルエステル、クロトン酸のモノおよびジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸のモノおよびジグリシジルエステル、イタコン酸のモノおよびグシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノおよびジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノおよびジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノおよびグリシジルエステル等のジカルボン酸モノおよびアルキルグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエテール、メタアクリル酸グリシジルエテール、アクリル酸−2−エチルグリシジルエテール、メタアクリル酸−2−エチルグリシジルエテール、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、アクリル酸−2−ヒドリキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドリキシエチル、アクリル酸−2−ヒドリキシプロピル、アクリル酸またはメタクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル、(メタ)アクリル酸パ−フルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、塩化ビニリデン、クロロヘキサンカルボン酸ビニル、アクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−2−クロロエチル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクレート、β−メタクロリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクレレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、N−メチロールアクリルアマイド等が挙げられる。
共重合体中、特定モノマー群から選ばれるモノマー単位の割合は、全モノマー単位の合計に対し、80モル%以上が好ましく、100モル%が特に好ましい。
前記単独重合体または共重合体の熱分解温度は、200〜600℃が好ましく、300〜500℃がより好ましい。
有機ポリマーとして、前記特定モノマー群の単独重合体または共重合体以外に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドのジブロックポリマー、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドのトリブロックポリマー、ポリビニルアルコール、シリコーン等を用いることもできる。
プラズマ処理により除去可能な粒子(B2)は、マトリックス前駆体(A)および粒子(B)からなる膜にプラズマを照射することで分解、除去できる。該粒子(B)の材質としては、前記の有機ポリマーが挙げられる。
溶剤浸漬により除去可能な粒子(B3)は、マトリックス前駆体(A)および粒子(B)からなる膜を溶剤中に浸漬させることで溶解、除去できる。該粒子(B)の材質としては、たとえば、ジグライム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、N−メチル−2−ピロリジノン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリクレン、ミネラルスピリット、ベンゾール、キシロール、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化メチレン等の溶剤に溶解するものとして、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル等が挙げられる。
酸またはアルカリ浸漬により除去可能な粒子(B4)は、マトリックス前駆体(A)および粒子(B)からなる膜を酸またはアルカリ中に浸漬させることで溶解、除去できる。該粒子の材質としては、たとえば塩酸、硝酸、硫酸等の酸に溶解するものとして、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリに溶解するものとして、酸化亜鉛等が挙げられる。
光照射により除去可能な粒子(B5)は、マトリックス前駆体(A)および粒子(B)からなる膜に対し、光(たとえば紫外線等)を照射し、光溶解することで除去できる。該粒子の材質としては、たとえば酸化亜鉛、硫化カドミウム等が挙げられる。
前記プラズマ処理、溶剤浸漬、酸もしくはアルカリ浸漬、または光照射により粒子(B)を除去する場合、緻密層25を形成するため、粒子(B)を除去する工程の前およびまたは後に熱処理を行うことが好ましい。
マトリックス前駆体(A)をマトリックスとする際の熱処理と同時に粒子(B)を除去することができ、製造工程が簡便になる点では、粒子(B)は、熱分解性材料からなることが好ましい。なかでも、熱分解温度の点で、カーボンまたは有機ポリマーからなることが好ましい。すなわち、粒子(B)は、カーボン粒子または有機ポリマー粒子であること好ましい。
カーボン粒子としては、市販のものを用いてもよく、公知のカーボンナノ粒子の製造方法により製造したものを用いてもよい。
有機ポリマー粒子としては、市販のものを用いてもよく、公知の有機ポリマーナノ粒子の製造方法により製造したものを用いてもよい。たとえば、公知の乳化重合法により、有機ポリマーナノ粒子が分散した分散液を得ることができる。具体的には、界面活性剤を含む水中にモノマーを添加し、混合してミセルを形成させ、重合開始剤を加えて重合させることにより、有機ポリマーナノ粒子の水分散液が得られる。また、界面活性剤を用いないソープフリー重合法によって得られた有機ポリマーナノ粒子を用いてもよい。
粒子(B)の平均一次粒子径は、20〜130nmであり、30〜100nmであることが好ましい。粒子(B)の平均一次粒子径が20nm以上であると、開口径20nmの空孔を有するシリカ系多孔質層を形成でき、130nm以下であると、最表面開口空孔数を8個/10nm以下にすることができる。また、粒子(B)の平均一次粒子径が20〜130nmの範囲内であると、平均開口径が15〜100nmの範囲内となりやすい。
本明細書における平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡にて観察して得られる像から100個の粒子を無作為に選び出し、各粒子の粒子径を測定し、100個の粒子の粒子径を平均したものである。
粒子(B)としては、1種を単独で用いてもよく、材料、平均一次粒子径等が異なる2種以上を併用してもよい。
シリカ系多孔質層形成用塗布液中の粒子(B)の含有量は、マトリックス前駆体(A)のSiO換算の固形分含有量と、粒子(B)の含有量との質量比((A)/(B))が0.3〜4.0の範囲内となる量であることが好ましく、0.5〜3.0の範囲内となる量であることがより好ましい。
(A)/(B)が前記上限値以下であれば、シリカ系多孔質層21中の空隙率が充分に高くなり、シリカ系多孔質層21の屈折率が充分に低く(たとえば1.38以下)になる。(A)/(B)が前記下限値以上であれば、シリカ系多孔質層21中の空隙率が高くなりすぎず、独立孔を形成しやすく、また、耐久性に優れる。
液体媒体(C):
液体媒体(C)は、マトリックス前駆体(A)を溶解し、かつ粒子(B)を分散する液体であり、単一の液体からなるものでも2種以上の液体を混合した混合液であってもよい。
化合物(a1)、(a2)の加水分解に水が必要となるため、液体媒体(C)は少なくとも水を含むことが好ましい。
水と他の液体とを併用してもよい。該他の液体としては、たとえば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテル等)、含窒素化合物(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
前記他の液体のうち、マトリックス前駆体(A)の溶媒としては、アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。
前記他の液体のうち、粒子(B)の分散媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物、含硫黄化合物等のいずれを用いてもよい。
シリカ系多孔質層形成用塗布液は、本発明の効果を損なわない範囲で、マトリックス前駆体(A)、粒子(B)以外の他の成分を含有してもよい。
該他の成分としては、たとえば、マトリックス前駆体(A)の反応性を向上させるための硬化触媒(金属キレート、金属アルコレート、有機スズ等)等が挙げられる。
シリカ系多孔質層形成用塗布液の調製方法:
シリカ系多孔質層形成用塗布液の調製方法としては、マトリックス前駆体(A)の溶液と、粒子(B)の分散液とを混合する方法が挙げられ、より具体的には、下記の方法(α)〜(γ)が挙げられる。これらのなかでも、透明基材10の表面にシリカ系多孔質層形成用塗布液を塗布した際に化合物(a2)が塗膜の表面に移行しやすい点から、方法(β)が好ましい。また、粒子(B)の分散液は、粒子(B)の凝集を抑制する点から、マトリックス前駆体の溶液を希釈した後に加えることが好ましい。
(α)溶液中の化合物(a1)および化合物(a2)を加水分解した後、必要に応じて溶媒で希釈し、次いで粒子(B)の分散液を加える方法。
(β)溶液中の化合物(a1)を加水分解した後(好ましくは加水分解から2時間以上経過した後)、化合物(a2)の溶液を加え、必要に応じて溶媒で希釈し、次いで粒子(B)の分散液を加える方法。
(γ)溶液中の化合物(a1)を加水分解した後、溶媒で希釈し、次いで化合物(a2)の溶液を加え、次いで粒子(B)の分散液を加える方法。
塗布方法:
シリカ系多孔質層形成用塗布液の塗布方法としては、公知のウェットコート法(スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フローコート法、グラビアコート法、バーコート法、フレキソコート法、スリットコート法、ロールコート法、スポンジコート法等)等を用いることができる。
塗布温度(基材)は、10〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。
熱処理:
熱処理温度(基材)は、透明基材10、粒子(B)またはマトリックス前駆体(A)に応じて適宜決定すればよい。
マトリックス前駆体(A)をマトリックス23とするためには、80℃以上で熱処理すればよいが、100℃以上が好ましく、200〜700℃がより好ましい。熱処理温度(基材)が前記下限値以上であれば、マトリックス23が緻密化して耐久性が向上する。熱処理温度(基材)が前記上限値以下であれば、ガラスからのアルカリ拡散が低く抑えられるため耐湿性が良好である。
粒子(B)が、カーボン、有機ポリマー等の熱分解性材料で構成され、該粒子(B)を熱処理により除去する場合、該熱分解性材料の熱分解温度以上の温度で熱処理を行うことにより、粒子(B)を除去できる。この場合の熱処理温度は、(熱分解温度+100℃)以上が好ましく、(熱分解温度+50℃)以上がより好ましい。
粒子(B)を熱処理により除去する場合、該熱処理の前に、該熱分解温度よりも低い温度で、マトリックス前駆体(A)をマトリックス23とするための熱処理を行ってもよい。
熱処理はガラスを強化する工程を兼ねてもよい。太陽電池用途等にガラスを使用する際には安全性の観点から、強化ガラスが用いられる。強化ガラスは表面に圧縮応力を有しており、一般的なフロート板ガラスに比べ高い強度を持ち、破損しても粒状になるために安全性に優れている。ガラスを強化する手法としては、ガラスを600〜700℃に加熱した後に表面に空気を吹き付けて急冷する熱強化法および、ナトリウムイオンを含有したガラスを、カリウムイオンを含有した300〜500℃の溶融塩に含浸させることで、ガラス表面でイオン交換を行う化学強化法が挙げられる。
熱処理により粒子(B)を除去できない場合は、熱処理の前または後に、粒子(B)を、熱処理以外の方法で除去する。
熱処理以外の除去方法としては、粒子(B)の説明で挙げたように、プラズマ処理、溶剤浸漬、酸またはアルカリ浸漬、光照射等が挙げられる。具体的には、マトリックス前駆体(A)および粒子(B)からなる膜にプラズマを照射する方法、該膜を溶剤中に浸漬する方法、該膜を酸またはアルカリ中に浸漬する方法、該膜に対し光照射する方法等が挙げられる。
製造工程に簡便性の点では、粒子(B)として、カーボン、有機ポリマー等の熱分解性材料で構成されるものを使用し、熱処理により粒子(B)を除去することが好ましい。
以上説明した製造方法においては、前記シリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材10上に塗布し、必要に応じて予熱し、熱処理し、粒子(B)を除去する一連の工程を1回行うことで、空孔24の分布状態が異なる2層構造(直径20nm以上の空孔24が存在しない緻密層25と、それよりもガラス基板12側の、直径20nm以上の空孔24が存在する多孔層22)を有するシリカ系多孔質層21を形成することができる。
これは、以下の理由によると考えられる。
Si−OH基に関してHO−OHの誘電率は89.2F/mである。これよりも誘電率が小さいY−OHにおけるYを有することにより、化合物(a2)の加水分解物や部分縮合物の界面自由エネルギーは、化合物(a1)の加水分解物(Si(OH))や部分縮合物の界面自由エネルギーよりも低い。
そのため、化合物(A1)および化合物(A2)を含むシリカ系多孔質層形成用塗布液をガラス板等の透明基材の表面に塗布すると、化合物(A2)が塗膜中を浮上し、結果、上相(化合物(A2)相)と下相(化合物(A1)相)とに相分離する。粒子(B)は、ある程度大きい平均一次粒子径を有するため浮上せず、そのまま下相側に残留する。そのため、塗膜を熱処理して化合物(A1)、(A2)をそれぞれマトリックスとし、該熱処理と同時に、または熱処理の前または後に、粒子(B)の材質に応じた除去処理を施すことで、粒子(B)の形状に対応した形状の空孔24を有するシリカ系多孔質層21が形成される。
そのため、上記のようにして形成されるシリカ系多孔質層21においては、緻密層25と多孔層22とは、マトリックス23における組成が異なると考えられる。つまり、緻密層25を構成するマトリックス23は、実質的に化合物(A2)の熱処理物からなり、化合物(A2)に由来する構造(たとえば非加水分解性基Y)を含む。多孔層22を構成するマトリックス23は、実質的に化合物(A1)の熱処理物から構成され、化合物(A2)に由来する構造を含まないか、含んでもごくわずかである。
後述する第二工程でナノシート層形成用塗布液を塗布しやすくするためには、シリカ系多孔質層21の表面の水接触角が50°以下となるようにするのが好ましい。
シリカ系多孔質層21の表面の水接触角は、緻密層25を構成するマトリックス23の成分やその含有量等を調節することにより設定できる。たとえば、シリカ系多孔質層形成用塗布液に含ませる化合物のうち、化合物(A2)の種類や配合量を調製すれば、シリカ系多孔質層の表面の水接触角を50°以下にすることができる。
具体的には、シリカ系多孔質層形成用塗布液に配合する化合物(A)の濃度を、該塗布液中の総固形分量に対し5質量%以下とするのが好ましい。一方、緻密層25を充分に形成させるためには、2質量%以上とするのが好ましい。
以上の第一工程によれば、形成されるシリカ系多孔質層21の屈折率を1.38以下とすることができる。屈折率が低いほど、反射率が低くなり、反射防止性能が向上する。
{第二工程}
第二工程では、前記第一工程により透明基材10の表面に形成したシリカ系多孔質層21の表面に、複数のナノシートと、該ナノシートの分散媒とを含有するナノシート層形成用塗布液を塗布し、乾燥してナノシート層26を形成する。これにより物品1が得られる。
ナノシート層形成用塗布液は、複数のナノシートと、該ナノシートの分散媒とを含有する。
ナノシート:
ナノシートについての説明は前記と同じである。
ナノシートは、市販の層状ポリケイ酸塩、層状粘土鉱物等の層状化合物を層剥離させたものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
ナノシートは、たとえば、天然または合成の前記無機層状化合物を構成する層を、常法により剥離することで得ることができる。たとえば、水中に無機層状化合物を添加して膨潤させ、撹拌することで、ナノシートが水に分散したナノシート分散液が得られる。また、無機層状化合物としては、溶媒への分散性を高めるために、あらかじめ界面活性剤等で表面や層間が処理されたものを用いてもよい。
ナノシート分散液はそのままナノシート層形成用塗布液として、またはナノシート層形成用塗布液の調製に用いることができる。たとえば、ナノシート分散液と、任意成分(バインダーまたはその前駆体等)の溶液とを混合することによりナノシート層形成用塗布液を調製できる。また、ナノシート分散液からナノシートを回収してナノシート層形成用塗布液の調製に用いてもよい。
ナノシート層形成用塗布液中、ナノシートの含有量は、ナノシート層形成用塗布液が塗布可能な範囲内であれば特に限定されないが、ナノシート層形成用塗布液の全量(100質量%)に対し、0.05〜0.50質量%が好ましく、0.10〜0.35質量%がより好ましい。ナノシートの含有量が前記下限値以上であれば、ナノシート層形成用塗布液を塗布したときに、ナノシート層形成用塗布液に溶解した任意成分がシリカ系多孔質層21に浸み込みにくい。ナノシートの含有量が前記上限値以下であれば、ナノシート層形成用塗布液の塗布性が良好で、薄膜のナノシート層26を形成でき、形成されるナノシート層26の層厚の均一性も良好である。
分散媒:
分散媒は、ナノシートを分散する液体である。ナノシート層形成用塗布液にバインダーが配合される場合は、分散媒が、バインダーを溶解する溶媒であることが好ましい。分散媒は、単一の液体からなるものでも2種以上の液体を混合した混合液であってもよい。
分散媒としては、水が好ましく用いられる。必要に応じて、水と有機溶剤とを併用してもよい。分散媒として、有機溶剤単独で用いてもよい。
有機溶剤としては、たとえば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテル等)、含窒素化合物(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。これらの中でも、溶剤の乾燥性、水との相溶性、表面張力の点で、アルコール類が好ましく、メタノール、エタノールが特に好ましい。
バインダーまたはその前駆体:
ナノシート層26としてバインダーを含む層を形成する場合、ナノシート層形成用塗布液にはバインダーまたはその前駆体が配合される。たとえばバインダーが、加水分解性シラン化合物の加水分解物の縮合物である場合、ナノシート層形成用塗布液にはバインダー前駆体が配合される。該バインダー前駆体としては、加水分解性シラン化合物の加水分解物でも、その前駆体である加水分解性シラン化合物でもよい。
バインダーおよびその前駆体についての説明は前記と同じである。
ナノシート層形成用塗布液がバインダーを含有する場合、その含有量は、ナノシートと、バインダーまたはその前駆体との合計量に対するナノシートの含有量の質量比(ナノシート/(ナノシート+バインダー))が0.25以上となる量であることが好ましい。ナノシート/(ナノシート+バインダー)の値は、0.375以上がより好ましく、0.50以上が特に好ましい。ナノシート/(ナノシート+バインダー)が0.25以上であると、バインダーの浸み込みによるシリカ系多孔質層21の反射防止性能の低下が抑制され、ナノシート層26を設けることによる最大透過率の低下を充分に抑制できる。ナノシートと、バインダーまたはその前駆体との合計量は、ナノシート層形成用塗布液中の固形分の総質量に対し、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
バインダーが加水分解性シラン化合物の加水分解物である場合、バインダーまたはその前駆体の含有量は、SiO換算固形分である。
バインダーまたはその前駆体を含む場合、ナノシート層形成用塗布液は、たとえば、ナノシート分散液と、バインダーまたはその前駆体の溶液とを混合することにより調製される。
他の成分:
ナノシート層形成用塗布液には、必要に応じて、ナノシート、バインダーおよびその前駆体以外の他の成分を配合してもよい。
該他の成分としては、界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の配合量は、ナノシートの含有量に対する界面活性剤の含有量の質量比(界面活性剤/ナノシート)が1.5以下となる量であることが好ましい。界面活性剤/ナノシートが1.5を超えると、シリカ多孔質膜中への界面活性剤成分の浸み込みによる透過率低下が起こりやすい。
ナノシート層形成用塗布液中の固形分濃度は、0.05〜0.20質量%であることが好ましく、0.05〜0.15質量%であることがより好ましい。ナノシート層形成用塗布液中の固形分濃度が下限値以上であると防汚性が良好になる。一方、前記上限値以下であるとナノシート層26が厚くなることによる平均透過率の低下を防げる。
塗布方法:
ナノシート層形成用塗布液の塗布方法としては、公知のウェットコート法(スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フローコート法、グラビアコート法、バーコート法、フレキソコート法、スリットコート法、ロールコート法、スポンジロールコート法、スキージーコート法等)等を用いることができる。
塗布温度(基材)は、室温〜80℃が好ましく、35〜60℃がより好ましい。
乾燥:
塗布後、乾燥等を行ってナノシート層26を形成する。
ナノシート層形成用塗布液が、固形分としてナノシートのみを含有する場合、つまりナノシート以外の任意成分(バインダーまたはその前駆体、界面活性剤等)を含有しない場合、塗布後の乾燥は、分散媒を除去できればよく、乾燥条件に特に制限はないが、以下の乾燥条件1を満たすことが好ましい。
乾燥条件1:300℃以下(より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下)の乾燥温度で行う。前記上限値以下であればナノシートとシリカ系多孔質層間、およびナノシート同士が強く焼結することを防ぐことができ、屋外暴露時のナノシート層26の除去性が犠牲とならない。
乾燥温度の下限は、特に制限されないが、基板温度で室温以上あればよく、60℃以上が好ましく、80℃がより好ましい。前記下限値以上であれば、分散媒が短時間で充分に除去される。
ナノシート層形成用塗布液がバインダーまたはその前駆体を含有する場合は、塗布後の乾燥を、上記の乾燥条件1を満たし、かつ該バインダーの熱分解温度を超えない温度で行うことが好ましい。熱分解温度以上の温度に加熱すると、ナノシート層26中のバインダーが熱分解して、バインダーを含有させることによる効果(たとえばナノシート層26におけるナノシート同士の密着性向上、ナノシート層26の緻密性向上等)が損なわれるおそれがある。
乾燥温度の下限は、特に制限されないが、基板温度で室温以上あればよく、60℃以上が好ましく、80℃がより好ましい。前記下限値以上であれば、分散媒が充分に除去される。
ナノシート層形成用塗布液が、バインダーおよびその前駆体以外の有機物、たとえば界面活性剤等を含む場合は、塗布後の乾燥を、上記の乾燥条件1を満たし、かつ該有機物の熱分解温度を超えない温度で乾燥を行うことが好ましい。熱分解温度以上の温度に加熱すると、有機物が熱分解して、含有させることによる効果が損なわれるおそれがある。
乾燥温度の下限は、特に制限されないが、基板温度で室温以上あればよく、60℃以上が好ましく、80℃がより好ましい。前記下限値以上であれば、分散媒が充分に除去される。
有機物の熱分解温度は、示差熱−熱重量同時測定(TG−DTA)により測定できる。
<本発明の第二の実施形態>
本発明の物品は、透明基材と防汚性反射防止膜との間に機能層30を備えていてもよい。
本発明の物品が機能層30を有する第二の実施形態の概略断面図を図2に示す。
物品2は、透明基材10と防汚性反射防止膜20との間に機能層30を有するほかは、物品1と同じである。
なお、本実施形態において、上記第一の実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
(機能層30)
機能層30としては、アンダーコート層、密着改善層、保護層、指紋除去層、帯電防止層、撥水性ナノシート層、親水性ナノシート層、紫外線遮蔽層、赤外線遮蔽層、波長変換層、防眩層等が挙げられる。
たとえば、アンダーコート層は、アルカリバリア層やワイドバンドの低屈折率層としての機能を有する。アンダーコート層を透明基材10とシリカ系多孔質層21との間に有することで、耐久性、特に耐湿熱性がより向上する。また、反射防止性能および反射色が無彩色化するため外観等も向上する。
アンダーコート層としては、シリカを主成分とするマトリックスのみから構成される層、シリカを主成分とするマトリックス中に複数の空孔を有する層、シリカを主成分とするマトリックス中にシリカ中実粒子を有する層、シリカを主成分とするマトリックス中にシリカ中空粒子を有する層等が挙げられる。
シリカを主成分とするマトリックスとしては、ゾルゲルシリカ(アルコキシシランの加水分解物または部分縮合物)の熱処理物、シラザンの熱処理物等が挙げられ、ゾルゲルシリカの熱処理物が好ましい。
アンダーコート層の層厚は、60〜200nmが好ましく、80〜150nmがより好ましい。
アンダーコート層の屈折率は、1.30〜1.46が好ましく、1.35〜1.42がより好ましい。
アンダーコート層の層厚、屈折率の測定方法は、それぞれ後述の実施例に示す「平均層厚」、「屈折率」の測定方法と同様である。
ゾルゲルシリカに用いるアルコキシシランとしては、前記化合物(a1)、前記化合物(a2)、その他公知のアルコキシシランを用いることができ、たとえばテトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等)、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(パーフルオロポリエーテルトリエトキシシラン等)、パーフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(パーフルオロエチルトリエトキシシラン等)、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等)等が挙げられる。
アルコキシシランの加水分解物および部分縮合物は、化合物(a1)の加水分解物および部分縮合物と同様の方法で得ることができる。
(物品2の製造方法)
物品2は、たとえば、透明基材10の上に、機能層30、シリカ系多孔質層21、ナノシート層26を順次形成することによって製造できる。
以下、機能層30がアンダーコート層である場合の物品2の製造方法の詳細を説明する。
{アンダーコート層形成工程}
アンダーコート層形成工程では、透明基材10の表面に、アンダーコート層を形成するための塗布液(以下、「アンダーコート層形成用塗布液」という。)を塗布し、熱処理等により乾燥して、アンダーコート層を形成する。これにより透明基材30が得られる。
アンダーコート層形成用塗布液:
アンダーコート層形成用塗布液としては、マトリックス前駆体の溶液(ゾルゲルシリカの溶液、シラザンの溶液等);粒子(B)または中空粒子の分散液とマトリックス前駆体の溶液との混合物;シリカ中実粒子の分散液とマトリックス前駆体の溶液との混合物等が挙げられる。
アンダーコート層形成用塗布液は、レベリング性向上のための界面活性剤、塗膜の耐久性向上のための金属化合物等を含んでいてもよい。
マトリックス前駆体としては、ゾルゲルシリカ(アルコキシシランの加水分解物または部分縮合物)、シラザン等が挙げられ、ゾルゲルシリカが好ましい。
アルコキシシランとしては、前記化合物(a1)、化合物(a2)、その他公知のアルコキシシランを用いることができ、たとえばテトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等)、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(パーフルオロポリエーテルトリエトキシシラン等)、パーフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(パーフルオロエチルトリエトキシシラン等)、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等)等が挙げられる。
ゾルゲルシリカは、化合物(a1)の加水分解物および部分縮合物と同様の方法で得ることができる。
マトリックス前駆体の溶媒としては、前記液体媒体(C)と同様のものが挙げられ、水とアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等)との混合溶媒が好ましい。
粒子(B)、中空粒子またはシリカ中実粒子の分散液の分散媒としては、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物、含硫黄化合物等が挙げられ、それぞれ前記液体媒体(C)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
塗布方法:
アンダーコート層形成用塗布液の塗布方法としては、公知のウェットコート法(スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フローコート法、グラビアコート法、バーコート法、フレキソコート法、スリットコート法、ロールコート法等)等が挙げられる。
アンダーコート層形成用塗布液の塗布温度(基材)は、室温〜200℃が好ましく、室温〜150℃がより好ましい。
熱処理:
熱処理は、シリカ系多孔質層形成用塗布液を塗布した後にのみ行ってもよく、アンダーコート層形成用塗布液とシリカ系多孔質層形成用塗布液の塗布後ごとに行ってもよい。また、透明基材10をあらかじめ熱処理温度に加熱しておき、該透明基材10の表面にアンダーコート層形成用塗布液、シリカ系多孔質層形成用塗布液を順次塗布してもよい。
アンダーコート層形成用塗布液の塗布後、シリカ系多孔質層形成用塗布液を塗布する前に熱処理を行う場合の熱処理温度は、50〜300℃が好ましく、80〜200℃がより好ましい。
{第一工程および第二工程}
アンダーコート層を形成した後、シリカ系多孔質層21およびナノシート層26の形成を順次行う。なお、シリカ系多孔質層21を形成する工程およびナノシート層26を形成する工程は、それぞれ上記「物品1の製造方法」の第一工程および第二工程と同様に行えばよい。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明について、第一および第二の実施形態を示して説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されない。これら実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、上記実施形態では、シリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材10上に塗布し、熱処理し、粒子(B)を除去する一連の工程を1回行うことによってシリカ系多孔質層21を形成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。たとえばシリカ系多孔質層21は、前記の工程を複数回行うことによって形成された膜であってもよい。製造の簡便性、膜の均質性等の点からは、前記の工程を1回または2回行うことによって形成された膜であることが好ましく、前記の工程を1回行うことによって形成された膜であることが特に好ましい。
前記の工程を2回以上行う場合、各工程で用いる塗布液の組成(マトリックス前駆体(A)、粒子(B)の種類や配合量等)は同じでも異なってもよい。
<本発明による作用効果>
本発明では、透明基材と、上述した所定のシリカ系多孔質層およびナノシート層を有する防汚性反射防止膜とを備えることにより、該シリカ系多孔質層中の多孔層の反射防止性能を維持しつつ、表面の防汚性が高い物品および製造方法を提供することができる。
以上、本発明について、実施形態例を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
<評価方法>
(平均透過率)
製造した透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品の防汚性反射防止膜側の表面に入射角0°で入射する光の透過率を分光光度計(日立製作所社製、型式:U−4100)により測定し、波長400〜1100nmの範囲内における平均透過率(%)を求めた。なお、ガラス板の裏面光拡散を防ぐために裏面に石英ガラスをアニソールで張り付けて測定を行った。
(平均層厚)
アンダーコート層の平均層厚、多孔層の平均層厚d2、防汚層の平均層厚d1は、製造した透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品の断面を走査型電子顕微鏡SEM(日立製作所社製、型式:S−4300)にて観察して得られる像から計測した。平均層厚は、各層それぞれ100箇所計測し、それらの平均値を算出して求めた。
(屈折率)
アンダーコート層、シリカ系多孔質層、ナノシート層の屈折率は、透明基材上に各層または膜を各々形成したサンプルをエリプソメーター(J.A.Woollam社製、型式:M−2000DI)で測定し、波長589.3nmの屈折率を求めた。なお、透明基材の裏面光反射を防ぐために裏面を黒色で塗りつぶして測定を行った。
(平均開口径)
製造した透明基材と防汚性反射防止膜とを備える物品のシリカ系多孔質層における平均開口径は、走査型電子顕微鏡SEM(日立製作所社製、型式:S−4300)により、SEMを用いて得られる防汚性反射防止膜の縦断面においてランダムに選択した100個の空孔の開口径を計測し、それらの平均値(nm)を算出して求めた。
ただし、平均開口径の算出の際には、開口径3nm以下の空孔については対象から除外した。
(水接触角)
注射針から1μLの水滴(20±5℃)を防汚性反射防止膜の最表面上に1.5cm間隔で6箇所に滴下し、水平方向より撮影した水滴の半径と高さからθ/2法により、それぞれの接触角を算出し、6点の平均値をその膜の接触角(°)とした。
(最表面開口空孔数)
最表面開口空孔数(個/10nm)は、走査型電子顕微鏡SEM(日立製作所社製、型式:S−4300)により得られる物品の最表面の像から、900nm×900nmの領域内に存在する開口径20nm以上の空孔の数を計数し、これを10nm当たりに換算することで求めた。
(樹脂剥離強度試験)
厚さ0.8mmのエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂フィルム(以下、「EVAフィルム」という。)を幅5mm、長さ80mmに切り出し、各実施例で得た物品のナノシート層側の表面にのせ、160℃で30分間、乾燥炉中で保持することで、該EVAフィルムを該物品に付着させた。EVAフィルムを付着させた物品を乾燥炉から取り出し、透明基板温度が室温まで下がった後、ばね秤を用いて、ナノシート層に付着したEVAフィルムを引き剥がすのに必要な力(以下、「剥離力」という。単位:g/5mm)を測定した。
剥離力が小さいほど、EVAフィルムが剥がれやすい、つまり防汚性に優れていることを示す。具体的には、剥離力が700g/5mm以下であると、防汚性に優れているといえ、500g/5mm以下であるとより顕著に優れているといえる。
(樹脂付着前と剥離後の明度差)
EVAフィルムの幅を25mmに変更した以外は、上記樹脂剥離強度試験と同様の手順で、該EVAフィルムを物品に付着し、剥離した。
色差計(コニカミノルタ社製「CR−200」)を用いて、EVAフィルム付着前と剥離後の明度差(ΔY)(以下、単に「明度差(ΔY)」という。)を測定した。該明度差(ΔY)が0.6以下であると防汚性に優れているといえ、0.3以下であると顕著に防汚性に優れているといえる。
<実施例1>
(アンダーコート層形成用塗布液の調整)
水に、SiO換算固形分濃度が20質量%となるように中空シリカ粒子(日揮触媒化成社製「スルーリア4110」、平均一次粒子径:60nm)を分散し、これを中空シリカ粒子分散液(A液)とした。
90質量%エタノール水溶液に、SiO換算固形分濃度が3質量%となるようにテトラエトキシシラン(関東化学社製)をマトリックス原料として溶解し、これをマトリックス溶液(D液)とした。
A液、D液、イソプロパノールを表1に示す量で混合することで、SiO換算固形分濃度が2.0質量%のアンダーコート層形成用塗布液を調製した。
なお、本実施例においてSiO換算固形分濃度とは、固形分がシラン化合物を含む場合、該シラン化合物のすべてのSiがSiOに転化したときの固形分濃度とし、これに他の固形分の濃度を合計した濃度を意味する。
Figure 2015075707
(シリカ系多孔質層形成用塗布液の調製)
水に、固形分濃度が15質量%となるようにポリメタクリル酸メチル(日本触媒社製「エポスターMX050W」、平均一次粒子径:50nm)を分散し、これを有機ポリマーナノ粒子分散液(B液)とした。
水に、固形分濃度が15質量%となるようにシリカ(日産化学社製「スノーテックスOUP」、一次粒子径:15〜100nm)を分散し、これを鎖状シリカナノ粒子分散液(C液)とした。
90質量%エタノール水溶液に、SiO換算固形分濃度が3質量%となるように、テトラエトキシシラン(関東化学社製)(化合物(A1)として)(97質量%)とポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製)(化合物(A2)として)(3質量%)の混合物を溶解し、これをマトリックス溶液(E液)とした。なお、該E液における化合物(A1)と化合物(A2)の含有量の比率は、「(a1)/(a2)」のモル比に換算すると19である。
B液又はC液、ならびにE液およびイソプロパノールを表1に示す量で混合することで、固形分濃度が2.0質量%のシリカ系多孔質層形成用塗布液を調製した。
(ナノシート層形成用塗布液の調整)
屈折率1.58、平均厚み4.1nm、平均幅134nm、平均面積が9471nmの合成スメクタイト(コープケミカル社製「ルーセンタイトSWN」)を水に分散して、これをF液とした。
F液と水を表1に示す質量で混合することで、固形分濃度が0.05質量%のナノシート層形成用塗布液を調製した。
(透明基材)
透明基材として型板ガラス(旭硝子社製、Solite、低鉄分のソーダライムガラス(白板ガラス)、サイズ:400mm×400mm、厚さ:3.2mm)を用いた。
型板ガラスの表面を酸化セリウム水分散液で研磨し、水で酸化セリウムを洗い流した後、イオン交換水でリンスし、乾燥させた。
(アンダーコート層形成工程)
ロールコートにより、上記アンダーコート層形成用塗布液を上記透明基材に塗布した。
ロールコートは、ロール回転数が13m、搬送速度が8.5mの条件で行った。
次いで、アンダーコート層形成用塗布液を塗布した型板ガラスを、80℃で1分間熱処理した。
(第一工程)
次いで、型板ガラスを予熱炉(ISUZU社製、VTR−115)にて予熱し、ガラス面温が30℃に保温された状態にて、アンダーコート層上に、リバースロールコータ(三和精機社製)のコーティングロールによって上記シリカ系多孔質層形成用塗布液を塗布した。
塗布条件は、基材の搬送速度:8.5m/分、コーティングロールと搬送ベルトとのギャップ:2.9mm、コーティングロールとドクターロールとの押込み厚:0.6mmとした。
コーティングロールとしては、表面の硬度(JIS−A)が30のゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)がライニングされたゴムライニングロールを用いた。
ドクターロールとしては、格子状の溝が表面に形成されたメタルロールを用いた。
次いで、大気中、650℃で5分間熱処理した。
(第二工程)
アンダーコート層とシリカ系多孔質層を形成した透明基材をガラス面温が45℃となるように保温し、PUローラー(ACケミカル社製)を用いて、シリカ系多孔質層上に、上記ナノシート層形成用塗布液を塗布した。
次いで、室温乾燥させることで、透明基材上に防汚性反射防止膜が形成された物品を得た。
<実施例2〜4>
実施例2〜4については、ナノシート層形成用塗布液の調整に使用したF液と水の質量を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、透明基材上に防汚性反射防止膜が形成された物品を得た。
<比較例1>
比較例1については、第二工程を行わないことでナノシート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、透明基材上に防汚性反射防止膜が形成された物品を得た。
<比較例2>
比較例2については、シリカ系多孔質層形成用塗布液の調整に使用したB液をC液に替え、該C液、E液、イソプロパノールの質量、およびナノシート層形成用塗布液の調整において使用したF液と水の質量を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、透明基材上に防汚性反射防止膜が形成された物品を得た。
上記実施例1〜4および比較例1,2の評価結果を表2に示す。
なお、比較例2で製造した物品は、シリカ系多孔質層の空孔が連続孔となったため、空孔の開口径を計測することができず、平均開口径を算出できなかった。
Figure 2015075707
表2に示すように、ナノシート層を有する実施例1〜4で製造した物品は、ナノシート層を有しない比較例1に比べ、最表面開口空孔数が少なく、また、EVA剥離力、明度差(ΔY)が低かった。これは、実施例1〜4がナノシート層を有するため、防汚性に優れていることを意味する。
ただ、実施例4で製造した物品は、用いたナノシート層形成用塗布液に含ませるナノシートの質量を増やしたため、防汚層の平均層厚が12.0nmとなり、その結果、平均透過率が比較例1に比べ、やや低くなった。
一方、実施例1〜3の物品の防汚層の平均層厚(それぞれ1.0nm、2.0nm、7.0nm)程度とすれば、緻密層の上にナノシート層を設けることによる平均透過率の低下は生じなかった。これは、実施例1〜3の物品を太陽電池のカバー部材として使用した場合、良好な発電効率を維持することを意味する。
比較例2で製造した物品は、実施例4の物品と同様に、用いたナノシート層形成用塗布液に含ませるナノシートの質量を増やしたため、防汚層の平均層厚が実施例1〜3よりも厚くなった。そのため、比較例2の物品の平均透過率は、比較例1に比べ、やや低くなった。
また、比較例2では、シリカ系多孔質層形成用塗布液に含ませる粒子として、有機ポリマーナノ粒子に替えて鎖状シリカナノ粒子を用いた。その結果、空孔が連続孔になると共に、最表面開口空孔数が多くなった。そのため、比較例2の物品のEVA剥離力、明度差(ΔY)は、実施例1〜4に比べ高くなった。これは、実施例1〜4の物品が、シリカ系多孔質層内の空孔が独立孔であり、最表面開口空孔数が少ないため、その結果、防汚性に優れていることを意味する。
本発明の物品は、車両用透明部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板等) 、車両用透明部品(インスツルメントパネル表面等)、メーター、建築窓、ショーウインドウ、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニター、LCD、PDP 、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルター、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、光学レンズ、眼鏡レンズ、カメラ部品、ビデオ部品、CCD用カバー基板、光ファイバー端面、プロジェクター部品、複写機部品、太陽電池用透明基板、携帯電話窓、バックライトユニット部品(たとえば、導光板、冷陰極管等)、バックライトユニット部品液晶輝度向上フィルム(たとえば、プリズム、半透過フィルム等)、液晶輝度向上フィルム、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルター、光学部品の端面、照明ランプ、照明器具のカバー、増幅レーザー光源、反射防止フィルム、偏光フィルム、農業用フィルム等として有用である。
1,2 物品
10 透明基材
20 防汚性反射防止膜
21 シリカ系多孔質層
22 多孔層
23 マトリックス
24 空孔
25 緻密層
26 ナノシート層
30 機能層

Claims (10)

  1. 透明基材と、前記透明基材上に設けられた防汚性反射防止膜とを備え、
    前記防汚性反射防止膜は、前記透明基材側から順にシリカ系多孔質層と、ナノシート層とを有し、
    前記シリカ系多孔質層の屈折率は、1.10〜1.38の範囲内であり、
    前記ナノシート層は、屈折率が1.30〜1.80のナノシートを複数有し、
    前記防汚性反射防止膜の表面の水接触角は、60°未満であり、
    前記防汚性反射防止膜の表面に開口した開口径20nm以上の空孔の数は、8個/10nm以下である、物品。
  2. 前記シリカ系多孔質層が前記ナノシート層側に緻密層を備え、前記緻密層と前記ナノシート層とを合わせた平均層厚d1が1〜10nmである、請求項1に記載の物品。
  3. 前記シリカ系多孔質層が前記透明基材側に多孔層を備え、該多孔層の平均層厚d2が60〜200nmである、請求項2に記載の物品。
  4. 前記多孔層の平均層厚d2に対する前記平均層厚d1の割合(d1/d2)が0.005〜0.17である、請求項2または3に記載の物品。
  5. 前記ナノシートが、層状ポリケイ酸塩および粘土鉱物から選ばれる無機層状化合物に由来するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
  6. 前記透明基材と前記防汚性反射防止膜との間にアンダーコート層を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。
  7. 前記シリカ系多孔質層の縦断面における空孔の平均開口径が15〜100nmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
  8. 透明基材と、前記透明基材上に設けられた防汚性反射防止膜とを備える、物品の製造方法であって、
    マトリックス前駆体(A)と、粒子(B)と、液体媒体(C)とを含有するシリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材上に塗布する段階と、熱処理によりマトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成する段階と、前記塗布後、前記熱処理前後または前記熱処理中に前記粒子(B)を除去する段階とを有する、シリカ系多孔質層を形成する工程と、
    前記シリカ系多孔質層の表面に、ナノシート層形成用塗布液を塗布し、乾燥して、ナノシート層を形成する工程とを有し、
    前記マトリックス前駆体(A)が、下記一般式(a1)で表される化合物(a1)、その加水分解物および部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A1)と、下記一般式(a2)で表される化合物(a2)、その加水分解物および部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A2)と、を含有し、前記マトリックス前駆体(A)中の、前記化合物(A1)と前記化合物(A2)との含有量の比率が、前記化合物(a1)と前記化合物(a2)とのモル比((a1)/(a2))に換算して5〜60の範囲内であり、前記粒子(B)の平均一次粒子径が20〜130nmであり、
    前記ナノシート層形成用塗布液は、複数のナノシートと該ナノシートの分散媒とを含有し、前記ナノシートは屈折率が1.30〜1.80である、物品の製造方法。
    SiX …(a1)
    SiX4−n …(a2)
    [式中、Xは加水分解性基を示し、Yは、Y−OHの誘電率が35F/m以下である非加水分解性基を示し、nは1〜3の整数を示す。]
  9. 前記シリカ系多孔質層を形成する工程が、マトリックス前駆体(A)と、熱処理により除去可能な粒子(B1)と、液体媒体(C)とを含有するシリカ系多孔質層形成用塗布液を、透明基材上に塗布する段階と、熱処理によりマトリックス前駆体(A)からマトリックスを形成すると共に前記粒子(B1)を除去する段階とを有する、請求項8に記載の物品の製造方法。
  10. 前記ナノシート層を形成する工程における前記乾燥の温度が300℃以下である、請求項8または9に記載の物品の製造方法。
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