図1Aは、完全に酸化された半抗体(half−antibody)を示している。「ノブ(knob)」又は「ホール(hole)」又は他のヘテロ二量体化ドメインは示されていない。この図に示されている半抗体は、IgG1アイソタイプである。当業者は、他の免疫グロブリンのアイソタイプは、対応する鎖間結合及び鎖内結合を有する半抗体として想定することができることを理解するであろう。インタクトな抗体(Ab)において、ヒンジのシステインは、鎖間ジスルフィド結合を形成することになる。
図1Bは全長二重特異性抗体を示している。ヒンジ領域にある重鎖間ジスルフィド結合は示されていない。
図2A&Bは、ノブ(knob)半抗体及びホール(hole)半抗体をコードするプラスミドを示している。
図3は、別々に操作されて発現された半抗体を用いる、ヘテロ多量体タンパク質、例えば、二重特異性抗体の産生を示している。産生されたBsAbは、各々が同族の軽鎖と対をなしている2つの異なる重鎖を有する。この方法では、各軽鎖は、各半抗体に対して同じである必要はない。
図4Aは、別々に操作されて発現された半抗体を用いる、二重特異性抗体の産生についてのフロー図である。この方法では、酸化還元化学が用いられる。
図4Bは、クマシー染色したゲルを示す。この2つの半抗体を、SDS−PAGEにより、還元条件および非還元条件下で分析した。主たる画分は、非還元条件下での各半抗体の75kDの軽鎖と重鎖の対である。還元条件下(例えば、DTTによる処置)では、各鎖は別々のバンドとして見える。
図4Cは、1mMのN−エチルマレイミド(NEM)処置のある場合と無い場合での半抗体のESI−TOF質量分析の結果を示す。NEMによる処置により半抗体の質量には変化が観察されず、このことは全てのシステインが完全に参加されていることを示している。酸化されたヒンジシステインは、表示アミノ酸配列において環状ジスルフィドとして表されている。半抗体の予想質量は72548ダルトンであり、これは質量分析により観察されているものであって、全く共有結合付加物がないことを示している。
図4Dは、カルボキシメチル(CM)のクロマトグラム、SDS−PAGEゲルの写真、及び抗EGFR/抗−c−met二重特異性抗体の産生についてデコンボリューションされた質量を示す。CMのクロマトグラフィーはその後、SDS−PAGEにより分析された単一のピークを生成する。ゲル上の主要なバンドは、全長(すなわち、インタクトな)二重特異性抗体である。マイナーなバンドも75kDの範囲で見ることができる。主要バンドはその後、質量分析により分析され、検出可能なインタクトな抗体製品のみが抗EGFR/抗c−met二重特異性抗体の理論的な分子量(MW)と一致したことが示された。
図5は、別々に操作されて発現された半抗体を用いる、二重特異性抗体の大規模生産についてのフロー図である。
図6は、ノブ・イントゥー・ホール(knob−into−holes)のFcヘテロダイマーの図解である。ヘテロダイマーはミニZドメインペプチドの存在で結晶化された(非表示)。ミニZドメインペプチドはCH2−CH3界面に結合し、恐らくFcのCH2領域を安定化することに役だっている。ノブとホールの構造が、2つのCH3ドメインによる接触を作成し、グリコシル化されていない(aglycosylated)野生型IgG1のFcとは有意には異ならない。
図7は、Fcの結晶構造解析により示唆された頭尾対形成の図解である。対形成は、酸化還元の非効率性に部分的に原因があり得る。Fcの頭尾対形成は、抗体の一部にヒンジのジスルフィド対形成を回避させる。ダイマーではあるが、それらの真の同一性の不確かさは、それらの除去を必要とする。このことは、アニーリング工程の全収率/効率に影響し、依然としてプラットフォーム改良のための標的となっている。
図8A−Dは、異なるFc変異体の二量体含量を示す。Fcのゲル濾過解析は異なる程度の二量体化を示している。ノブ(Knob)変異体は、ノブ(knob)及びホール(hole)の両方の野生型バージョンと比較すると、非共有性ホモ二量体化の減少を示している。
図9は、ノブ(Knob)Fc−ノブ(Knob)Fcの間の接触領域を示す。パネルAは、疎水性接触を示す。ノブ(Knob)−ノブ(Knob)Fcホモダイマーが、薄い陰影のA鎖と濃い陰影のB鎖で漫画として描出されている。 A鎖のCH2ドメインの疎水性残基Y349,L368,K370,F405及びY407はB鎖のCH3ドメインの残基F241,F243,V262,及びV264と会合する。P395とP396は2つのCH2ドメイン間に疎水性ポケットを作り出す。パネルBはこのパネル内で示される疎水性接触を示す。ノブ(Knob)−ノブ(Knob)Fcホモダイマーが、薄い陰影のA鎖と濃い陰影のB鎖で漫画として描出されている。A鎖のCH2ドメインの残基T350,K370,及びD399はB鎖のCH3ドメインの残基S239,V240,R301,及びK334と会合する。N389,Y391及びK392は2つのドメイン間で相互作用を形成する。
図10は、正しいノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)ヘテロダイマーを産生するジスルフィド形成の割合を示す棒グラフである。半抗体が最初に一緒に混合されると、時刻ゼロで低レベルのホモダイマーが見られる。還元されたグルタチオンがヒンジのジルスフィドを還元し始めるので、ホモダイマーが消失し始める。時間が経過するにつれて、グルタチオンは酸化プロセスを開始し、インタクトなIgGの形成の増加が見られる。
図11は、固定化リガンドを用いた実験からの表面プラズモン共鳴(SPR)スペクトルの一連の曲線である。分析物はリガンド上を通過させ、ホモ二量体化をモニタリングした。分析物の濃度は6.25nM、12.5nM、25nM、50nM、100nM及びと200nMにて試験された。リガンドは:(A)ノブ(knob)野生型、(B)ホール(hole)野生型、(C)ノブ(knob)F241R/F243S、(D)ノブ(knob)F241S/F243R、及び(E)ホール(hole)F241S/F243Rであった。y軸は応答単位を、x軸は時間(秒)を示す。
略語
ADCC=抗体依存性細胞傷害
API=抗病原体イムノアドヘシン
BPI=殺菌性/透過性増加タンパク質
C1q=補体因子1q
CD=分化のクラスター
CDC=補体依存性細胞傷害
CH1又はCH1=重鎖第一定常ドメイン
CH2又はCH2=重鎖第二定常ドメイン
CH3又はCH3=重鎖第三定常ドメイン
CH4又はCH4=重鎖第四定常ドメイン
CL又はCL=軽鎖定常ドメイン
CLTA=細胞傷害性Tリンパ球関連分子
Fc=結晶化可能断片
FcγR=IgGのFcタンパク質のレセプターガンマ
HIV=ヒト免疫不全ウイルス
ICAM=細胞間接着分子
BsAb=二重特異性抗体
BsDb=二重特異性ダイアボディー
dsFv=ジスルフィド安定化Fv
Fc=抗体の定常ドメイン
Fd=抗体のVH+CH1
FcR=Fcレセプター
Fv=抗体の可変ドメイン
IgG=免疫グロブリンG
mAb=モノクローナル抗体
PBL=末梢血リンパ球
scDB=単鎖ダイアボディ
scFv=単鎖Fv
(scFv)2=scFv−scFvタンデム型
Tandab=タンデムダイアボディ
VH又はVH=抗体の重鎖の可変ドメイン
VL又はVL=抗体の軽鎖の可変ドメイン
詳細な説明
本発明は、以下の定義及び実施例を使用する参照によってのみ詳細に説明される。本明細書で言及されるような特許及び刊行物は、そのような特許及び刊行物に開示すべての配列を含み、参照により明示的に援用される。
本明細書において別に規定されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるように、使用されるすべての技術用語および科学用語は、本明細書と同じ意味を持つ。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,2D ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)及びHale&Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,NY(1991)は、本発明において使用される数多くの用語多くの一般的な辞書を使う技能を提供する。本明細書に記載したものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実行又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。数値の範囲は、範囲を定める数値が含まれる。特に断らない限り、核酸は5’から3’の向きで左から右に書かれ、アミノ酸配列は、アミノ基からカルボキシの向きで左から右に書かれている。実行者は、定義と技術の用語について、特にSambrook et al.,1989、及びAusubel FM et al.,1993に向いている。本発明は、特定の方法論、プロトコール、及び記載された試薬に対し、これらが変更し得るため、限定されるものでないことが理解されるべきである。
数値の範囲は、範囲を定める数値が含まれる。
特に断らない限り、核酸は5’から3’の向きで左から右に書かれ、アミノ酸配列は、アミノ基からカルボキシの向きで左から右に書かれている。
本明細書で提供される見出しは、本明細書を全体として参照することにより有することができる本発明の種々の態様又は実施態様を制限するものではない。従って、すぐ下に定義された用語は、本明細書を全体として参照することにより、より完全に定義される。
I.定義
「ヘテロ多量体」、「ヘテロ多量体複合体」、又は「ヘテロ多量体タンパク質」とは、少なくとも第一のFc含有ポリペプチド及び第二のFc含有ポリペプチドを指し、ここで第二のFc含有ポリペプチドがアミノ酸配列において、第一のFc含有ポリペプチドと少なくとも一つのアミノ酸残基だけ異なる。ヘテロ多量体は、第一及び第二のFc含有ポリペプチドで形成される「ヘテロダイマー」を含むことができ、又は第一及び第二のFc含有ポリペプチドに加えてポリペプチドが存在している高次立体構造を形成することができる。ヘテロ多量体のポリペプチドは、非ペプチド性、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)及び/又は非共有結合性相互作用(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び/又は疎水性相互作用)により相互作用し得る。
本明細書に記載されるように、「ヘテロ多量体化ドメイン」は生体分子に対して、ヘテロ多量体形成を促進し、ホモ多量体の形成を阻害するなどの改変や追加を指す。ホモダイマーよりもヘテロダイマーの形成について強い優先度を持つ任意のヘテロ二量体化ドメインが、本発明の範囲内にある。実例となる例として、限定されないが、例えば、米国特許出願公開第20030078385号(Arathoon et al.Genentech;ノブ・イントゥー・ホールを記載);国際公開第2007147901号(Kjaergaard et al.Novo Nordisk:イオン性相互作用を記述);国際公開第2009089004号(Kannan et al.Amgen:静電的ステアリング効果(electrostatic steering effects)を記載);米国仮特許出願第61/243,105号(Christensen et al.−Genentech;コイルドコイルを記述)を含む。また、例えば、ロイシンジッパーを記述するPack,P.&Plueckthun,A.,Biochemistry 31,1579−1584(1992)、又はヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフを記述するPack et al.,Bio/Technology 11,1271−1277(1993)を参照。語句「ヘテロ多量体化ドメイン」及び「ヘテロ多二量体化ドメイン」は、本明細書にて互換的に用いられる。
本明細書における用語「抗体」は、最も広義の意味で使用され、2本の重鎖と2本の軽鎖、及び所望の生物学的活性(例えば、エピトープ結合活性)を示す限り、それらの任意の断片、突然変異体、変異体又は誘導体を含む、任意の免疫グロブリン(Ig)分子を指す。抗体の例には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体および抗体断片が含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化、及び/又は親和性成熟であり得る。
参照の骨組みとして、本明細書で使用される場合、抗体は免疫グロブリンG(IgG)の構造を参照することにする。しかし、任意の免疫グロブリンクラスの抗体は、本明細書に記載の本発明の方法で利用することができることを当業者は理解する/認識するであろう。明確にするために、IgG分子は一対の同一の重鎖(HCs)、及び一対の同一の軽鎖(LCs)を含む。各LCは一可変ドメイン(VL)と一定常ドメイン(CL)を有し、一方各HCは一可変ドメイン(VH)と三つの定常ドメイン(CH1,CH2,及びCH3)を有する。CH1ドメイン及びCH2ドメインはヒンジ領域により連結されている。この構造は、当該技術分野において周知である。図1Bを参照する。
本明細書において用いられる場合、「半抗体」は、一免疫グロブリン軽鎖に結合する一免疫グロブリン重鎖を指す。典型的な半抗体が、図1Aに示されている。半抗体はまた、単一の可変ドメインを含む抗原結合ドメインを有し得ることを、当業者は容易に理解するであろう。
用語「マキシボディ」は、Fcポリペプチドに融合したscFvを含む融合タンパク質を指す。国際公開第2009089004号の図8aに参照が行われる。二重特異性マキシボディについて、国際公開第2009089004号の図2に参照が行われる。
ヒトIgGのFc領域の用語「CH2ドメイン」は、EU番号付けに従い、通常IgGの約231残基から約340残基に伸展する。CH2ドメインは、それが他のドメインと密接に対をなしていない点でユニークである。むしろ、2つのN−結合型分枝糖鎖がインタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入されている。糖は、ドメイン−ドメインの対合の代替を提供し、CH2ドメインの安定化を助長し得ることが推測されている。Burton,Molec.Immunol.22:161−206(1985).
用語「CH3ドメイン」は、Fc領域のC末端からCH2ドメインへの残基(即ち、EU番号付けシステムによって、IgGのアミノ酸残基341あたりからアミノ酸残基447あたりへ)の伸展を含む。
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、一般に、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチドを含む二量体複合体を指し、ここで、C末端ポリペプチド配列は、インタクトな抗体のパパイン消化により得ることができるものである。Fc領域は、天然型又は変異体Fc配列を含んでもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Fc配列の位置Cys226のアミノ酸残基から、又はPro230から、そのカルボキシル末端への伸展と定義される。本明細書に明記されていない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。免疫グロブリンのFc配列は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意でCH4ドメインを含む。本明細書の「Fcポリペプチド」により、Fc領域、例えば単量体Fcを構成するポリペプチドの一つを意味する。Fcポリペプチドは、任意の適切な免疫グロブリン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD又はIgMから得られ得る。Fc領域は、ジスルフィドにより一緒に保持される、両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、この領域はまた、特定の種類の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部分である。幾つかの実施態様において、Fcポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部又は全部を(一般に、そのN末端で)含む。幾つかの実施態様において、Fcポリペプチドは、機能性又は野生型ヒンジ配列を含まない。
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;CDC;Fcレセプター結合;ADCC;貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター;BCR)のダウンレギュレーションなどが含まれる。そのようなエフェクター機能は、結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わせるためにFc領域を一般に必要とするので、例えば本明細書における定義に開示するような、様々なアッセイを用いて該エフェクター機能を評価することができる。
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ);天然配列ヒトIG2 Fc領域;天然配列ヒトIG3 Fc領域;および天然配列ヒトIG4 Fc領域;ならびにこれらの天然に生じる変異体が含まれる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1のアミノ酸修飾、好ましくは1以上のアミノ酸置換によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域と又は親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1のアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域に又は親ポリペプチドのFc領域に約1から約10のアミノ酸置換、および好ましくは約1から約5のアミノ酸置換を有する。本明細書での変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域との及び/又は親ポリペプチドのFc領域との少なくとも約80%の相同性、ならびに最も好ましくはそれらとの少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれらとの少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の相同性を有する。
本明細書で用いる「Fc複合体」は、Fc領域のヒンジ領域、CH2ドメイン又はCH3ドメインを指す。
所定の実施態様において、Fc含有ポリペプチドは、好ましくは野生型ヒトIgGのFc領域に由来のIgGのFc領域を含む。「野生型」ヒトIgGのFcによって、ヒトの集団内で自然に発生するアミノ酸の配列を意味する。もちろん、Fc配列が個体間で若干差があり得るのと同様に、一以上の改変が野生型配列に作られる場合があり、それでもなお本発明の範囲内で維持される。例えば、Fc領域は、本発明に関連していない更なる改変、例えば、グリコシル化部位における変異、又は非天然アミノ酸の包含などを含めることができる。ノブ、ホール又はノブ/ホールと併せて使用されるとき、「野生型」は、ノブ、ホール又はノブ/ホールの導入された変異のみを有するタンパク質配列を指すことを意味し、そうでなければヒトの集団内で天然に生じる配列を含むことを意味する。
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然型抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)を含む各ドメインを持ち、一般的に似たような構造を有する。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,頁91(2007)を参照)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、相補的なVL又はVHドメインのそれぞれのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体由来のVH又はVLドメインを用いて単離することができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880−887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624−628(1991)を参照。
本明細書で使用する用語「Fab」は、抗体の抗原結合断片を指す。上述したように、パパインはインタクトな抗体を消化するために用いることができる。抗体のパパイン消化は、2つの同一な抗原結合断片、即ち、「Fab」断片、及び残りの「Fc」断片(即ち、上掲のFc領域)を生成する。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)と一緒のL鎖の全体、及び一方の重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)からなる。
語句「抗原結合アーム」、「標的分子結合アーム」、「標的結合アーム」及びそれらの変形は、本明細書にて使用される場合、目的の標的に特異的に結合する能力を有する本発明のヘテロ多量体化タンパク質の構成部分を指す。一般的にかつ好ましくは、抗原結合アームは免疫グロブリンポリペプチド配列、例えば、CDR及び/又は免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の可変ドメイン配列の複合体である。
「標的」又は「標的分子」は、ヘテロ多量体タンパク質の結合アームによって認識される部分をいう。例えば、ヘテロ多量体タンパク質が抗体である場合、標的は、文脈に応じて、単一分子上又は異なる分子上、又は病原体又は腫瘍細胞上のエピトープであり得る。同様に、ヘテロ多量体タンパク質が、レセプター−Fc融合タンパク質である場合、標的はレセプターに対して同族の結合パートナーとなるであろう。当業者は、標的は標的結合アームとの結合特異性によって決定され、異なる標的結合アームは異なる標的を認識することができることを理解するであろう。標的は、好ましくは1uMのKd(スキャッチャード分析による)よりも高い親和性を有する本発明のヘテロ多量体タンパク質に結合する。標的分子の例は、限定されないが、血清可溶性タンパク質及び/又はそれらのレセプター、例えば、サイトカイン及び/又はサイトカインレセプター等、アドヘシン、成長因子及び/又はそれらのレセプター、ホルモン、ウイルス粒子(例えば、RSV Fタンパク質、CMV、StaphA、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス)、微生物(例えば、細菌細胞タンパク質、真菌細胞)、アドヘシン、CDタンパク質及びそれらのレセプターを含む。
「インタクト」又は「全長」抗体の一例は、抗原結合アーム並びにCL及び少なくとも重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であり得る。
本明細書にて使用される用語「カップリング」は、第一のFc含有ポリペプチド及び第二のFc含有ポリペプチドをお互いに連結させること、例えば共有結合の形成に必要な工程を指す。このような工程は、鎖間ジスルフィド結合を形成するために、第一及び第二のFc含有ポリペプチドのシステイン残基の還元、アニーリング及び/又は酸化を含む。カップリングは、化学的架橋,又は酸化還元系を用いることによって達成することができる。例えば、Humphreys et al.,J.Immunol.Methods(1998)217:1−10 及びZhu et al.,Cancer Lett.,(1994)86:127−134を参照。
用語「多特異性抗体」は最も広い意味で使用され、具体的にはポリエピトープ特異性を有する抗体を網羅する。このような多重特異性抗体は、限定されないが、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を含み、VHVLユニットはポリエピトープ特異性、2以上のVLドメイン及びVHドメインを有し、各VHVLユニットは異なるエピトープに結合する抗体、2以上の単一可変ドメインを有し、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する抗体、全長抗体、抗体断片、例えばFab、Fvを、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ及びトリアボディなど、共有結合又は非共有結合で連結している抗体断片を含む。「ポリエピトープ特異性」とは、同一または異なる標的(複数)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」は唯一つのエピトープに結合する能力を指す。一実施態様によれば、多重特異性抗体は、各エピトープに、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM,、0.5μMから0.001pM、又は0.1μMから0.001pMの親和性で結合するIgG抗体である。二重特異性抗体の説明図が図1Bに与えられる。
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies)(Db);タンデムダイアボディ(taDb);直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995));一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体(例えば、Db−Fc、taDb−Fc、taDb−CH3および(scFV)4−Fcが含まれるがこれらに限定されない)を含む。
「単一ドメイン抗体」(sdAb)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、単一可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合を付与することができる抗体を一般に指す。言い換えると、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体は、各抗原結合アーム上の単一の単量体可変抗体ドメイン(VH又はVL)からなる。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科(ラマおよびラクダ)および軟骨魚(例えばテンジクザメ)に由来するものならびにヒトおよびマウス抗体からの組換え法から得られるものが含まれる(Ward et al.,Nature(1989)341:544−546;Dooley and Flajnik,Dev Comp Immunol(2006)30:43−56;Muyldermans et al.,Trend Biochem Sci(2001) 26:230−235;Holt et al.,Trends Biotechnol(2003):21:484−490;国際公開第2005/035572号;国際公開第03/035694号;Davies and Riechmann,Febs Lett(1994) 339:285−290;国際公開第00/29004号;国際公開第02/051870号)。単一可変ドメイン抗体は、他の可変領域又は可変ドメインを持つ抗原結合アーム(例えば、ホモ又はヘテロ多量体)中に存在することができる、その場合には、それは単一ドメイン抗体ではない。
本明細書において言及する「ノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)」または「KnH」技術という用語は、インビトロまたはインビボで2つのポリペプチドの相互的な対合を導く技術であって、それらが相互作用する界面において一方のポリペプチドに突起(ノブ)をおよび他方のポリペプチドに空洞(ホール)を導入することによる技術を指す。例えば、KnHは、抗体のFc:Fc結合界面、CL:CH1界面またはVH/VL界面において導入されている(例えば、米国特許出願公開第2007/0178552号、国際公開第96/027011号、国際公開第98/050431号及びZhu et al.(1997)Protein Science 6:781−788)。これは、多重特異性抗体の製造中に2つの異なる重鎖の相互的な対合を駆動するのに特に有用である。例えば、Fc領域にKnHを有する多重特異性抗体は、各Fc領域に連結された単一可変ドメインをさらに含むことができ、または類似したもしくは異なる軽鎖可変領域と対合する異なる重鎖可変ドメインをさらに含むことができる。KnH技術を用いて、2つの異なるレセプター細胞外ドメインを互いに対合させること、又は(例えばアフィボディ、ペプチボディおよび他のFc融合体を含む)異なる標的認識配列を含む任意の他のポリペプチド配列を対合させることもできる。
「Fv」は1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg及びMoore編,Springer−Verlag,New York,頁269−315(1994);Malmborg et al.,J.Immunol.Methods 183:7−13,1995を参照のこと。
用語「ダイアボディ(diabodies)」は、鎖間ではなく鎖内でVドメインを対形成させ、結果として二価の断片、すなわち2つの抗原−結合部位を有する断片が得られるように、VHとVLドメインとの間に、短いリンカー(約5−10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sFv断片のヘテロダイマーであり、そこでは2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)により十分に記載されている。
用語「ワンアームド抗体」は、(1)CH2ドメイン、CH3ドメイン又はCH2−CH3ドメインを含むポリペプチドに結合したペプチドによって連結された可変ドメインと(2)第二CH2、CH3又はCH2−CH3ドメインとを含む抗体であって、該可変ドメインが、該第二CH2、CH3又はCH2−CH3ドメインを含むポリペプチドに結合したペプチドによって連結されていない抗体を指す。一実施態様において、ワンアームド抗体は、(1)可変ドメイン(例えばVH)、CH1、CH2およびCH3を含む第一ポリペプチドと(2)可変ドメイン(例えばVL)およびCLドメインを含む第二ポリペプチドと(3)CH2およびCH3ドメインを含む第三ポリペプチドの3つのペプチドとを含む。別の実施態様では、ワンアームド抗体は、定常重鎖を連結するジスルフィド結合を形成する2つのシステイン残基を含有する部分的ヒンジ領域を有する。一実施態様では、ワンアームド抗体の可変ドメインは抗原結合領域を形成する。別の実施態様では、ワンアームド抗体の可変ドメインは単一可変ドメインであり、各単一可変ドメインが抗原結合領域である一実施態様において、ワンアームド抗体は単一の可変ドメイン抗体である。
本発明の抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種に由来する又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であるが、その(それらの)鎖の残部は別の種に由来する又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4816567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。本明細書における対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿など)及びヒト定常領域配列に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む霊長類化抗体が含まれる。
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から得られた最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び性能を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などのヒト以外の種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非−ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体において見いだされない残基を含むことが可能である。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良するために作成される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれを含むであろう。更なる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992)を参照。
「ペプチボディ」又は「ペプチボディ(複数)」はにランダムに生成されたペプチドのFcドメインとの融合体を指す。Feige et al.に対して2003年12月9日に発行された米国特許第6,660,843号を参照(参照によりその全体が援用される)。それらは、N末端、C末端、アミノ酸側鎖に対して、又はこれらの部位の一以上に対して結合した一以上のペプチドを含む。ペプチボディ技術は、リガンド及び受容体、腫瘍帰巣ペプチド、膜輸送ペプチドなどのペプチドを組み込んだ治療薬の設計を可能にする。ペプチボディ技術は、ジスルフィドによって拘束された線状ペプチド、「直列ペプチド多量体」(すなわち、Fcドメインの単鎖上の1つより多くのペプチド)を含めて、多数のそのような分子の設計において有用であることが証明された。例えば、米国特許第6,660,843号;2003年10月16日に公開された米国特許出願公開第2003/0195156号(2002年11月21日に公開された国際公開第02/092620号に対応する);2003年9月18日に公開された米国特許出願公開第2003/0176352号(2003年4月17日に公開された国際公開第03/031589号に対応する);1999年10月22日に出願された米国特許出願第09/422,838号(2000年5月4日に公開された国際公開第00/24770号に対応する);2003年12月11日に公開された米国特許出願公開第2003/0229023号;2003年7月17日に公開された国際公開第03/057134号;2003年12月25日に公開された米国特許出願公開第2003/0236193号(2004年4月8日に出願されたPCT/US04/010989号に対応する);2003年9月18日に出願された米国特許出願第10/666,480号(2004年4月1日に公開された国際公開第04/026329号に対応する)を参照のこと。これらの各々は出典明記によりその全体が本明細書に組み込まれる。
「アフィボディ」は、標的分子のための結合表面を生じさせるためにタンパク質を足場として使用する、ペプチド結合によりFc領域に連結されたタンパク質の使用を指す。前記タンパク質は、多くの場合、天然に生じるタンパク質、例えばブドウ球菌プロテインAもしくはIgG結合Bドメイン、またはそれらに由来するZタンパク質(Nilsson et al(1987),Prot Eng 1,107−133、および米国特許第5,143,844号を参照)またはそれらの断片もしくは誘導体である。例えば、標的分子を結合できる変異体のライブラリを生じさせるようにランダム突然変異誘発によってZタンパク質のセグメントを突然変異させたものである、標的分子への結合親和性が改変されたZタンパク質変異体から、アフィボディを作ることができる。アフィボディの例には、米国特許第6534628号、Nord K et al,Prot Eng 8:601−608(1995)およびNord K et al,Nat Biotech 15:772−777(1997).Biotechnol Appl Biochem.2008 Jun;50(Pt 2):97−112が含まれる。
本明細書において用いる場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を兼備する分子を示す。構造的には、イムノアドヘシンは、アミノ酸配列が抗体の抗原認識および結合部位以外である(すなわち、抗体の定常領域と比較して「異種」である)、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列(例えばIgGのCH2及び/又はCH3配列)との融合体を含む。例示的なアドヘシン配列には、対象のタンパク質に結合するレセプターまたはリガンドの一部分を含む隣接アミノ酸配列が含まれる。アドヘシン配列は、対象のタンパク質を結合するがレセプター又はリガンド配列ではない配列(例えばペプチボディ中のアドヘシン配列)でもあり得る。そのようなポリペプチド配列を、ファージディスプレイ技術及びハイスループット選別法をはじめとする様々な方法によって、選択または同定することができる。前記イムノアドヘシンにおける免疫グロブリンの定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD、又はIgMから得ることができる。
本明細書で用いられる「複合体」または「複合体化した」は、ペプチド結合でない結合及び/又は力(例えば、ファンデルワールス、疎水性、親水性力)によって互いに相互作用する2つ以上の分子の会合を指す。一実施態様では、複合体はヘテロ多量体である。本明細書で用いられる「タンパク質複合体」又は「ポリペプチド複合体」という用語が、タンパク質複合体中のタンパク質にコンジュゲートした非タンパク質エンティティー(例えば、限定するものではないが、化学分子、例えば毒素又は検出剤を含む)を有する複合体を含むことは理解されるはずである。
本明細書で用いられる「ヘテロ多量体」とは、対象の抗原に結合し、ヘテロ多量体タンパク質が、タンパク質又は標的を発現する細胞又は組織を標的とする診断及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性で標的に結合し、他のタンパク質とは有意に交差反応しないものである。そのような実施態様では、「非標的」タンパク質に対するヘテロ多量体タンパク質の結合範囲は、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)又はELISAにより決定した場合、その特定の標的タンパク質に対する抗体の結合の約10%未満である。標的分子へのヘテロ多量体タンパク質の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的な」といった用語は、非特異的な相互作用とは測定可能な差異を有する結合を意味する(例えば、非特異的な相互作用はウシ血清アルブミンまたはカゼインへの結合であってよい)。特異的結合は、例えば、コントロール分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、標的、例えば標識していない過剰な量の標的に類似したコントロール分子との競合により決定することができるこの場合、プローブに対する標識した標的の結合が、標識していない過剰な量の標的により競合的に阻害された場合、特異的結合が示される。ここで用いる特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的である」といった用語は、例えば、少なくともおよそ200nM、あるいは少なくともおよそ150nM、あるいは少なくともおよそ100nM、あるいは少なくともおよそ60nM、あるいは少なくともおよそ50nM、あるいは少なくともおよそ40nM、あるいは少なくともおよそ30nM、あるいは少なくともおよそ20nM、あるいは少なくともおよそ10nM、あるいは少なくともおよそ8nM、あるいは少なくともおよそ6nM、あるいは少なくともおよそ4nM、あるいは少なくともおよそ2nM、あるいは少なくともおよそ1nM又はそれ以上の対標的Kdを有する分子によって提示されうる。一実施態様では、用語「特異的な結合」は、ヘテロ多量体タンパク質が他のいかなるポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合しないで特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
一般的に「結合親和性」は、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的な相互作用の総合的な強度を意味する。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(Kd)で表すことができる。例えば、Kdは、200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM又はそれ以上の強さでありうる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は抗原により密接により長く結合したままとなる。結合親和性の様々な測定方法が当分野で公知であり、それらの何れかを本発明のために用いることができる。
一実施態様では、本発明の「Kd」又は「Kd値」は、およそ10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcoreTM−2000又はBIAcoreTM−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)にて表面プラズモン共鳴アッセイを行って測定される。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入する。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学的な測定のために、Fabの2倍の段階希釈(例えば、0.78nMから500nM)を、25℃で、およそ25μl/分の流速で、0.05%のTween20(PBST)を含むPBSに注入した。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one−to−one Langmuir binding model)(BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出した。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が106M−1S−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop−flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズのSLM−AMINCO分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃で、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。
抗体、断片又はこれらの誘導体といった本発明のヘテロ多量体タンパク質に関して「生物学的に活性な」及び「生物学的活性」及び「生物学的特徴」は、特段の記載がない限り、生物学的分子に結合する能力を有することを意味する。
「単離された」とは、様々なヘテロ多量体ポリペプチドを記述するために使用するときは、発現された細胞又は細胞培養物から分離され及び/又は回収されたヘテロ多量体を意味する。その自然環境の混入成分は、ヘテロ多量体の診断または治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が含まれる。所定の実施態様において、ヘテロ多量体は、(1)ローリー法により判定してタンパク質95重量%超、および最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いる還元もしくは非還元条件下でSDS−PAGEにより均一になるまで精製される。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
本発明のヘテロ多量体は、実質的に均一になるまで一般には精製される。「実質的に均一な」、「実質的に均一な形態」および「実質的均一」という句は、その産物に、望ましくないポリペプチドの組み合わせ(例えばホモ多量体)起源の副産物が実質的にないことを示すために用いられる。
純度に関して表現される、実質的に均一とは、副産物の量が、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、4重量%、3重量%、2重量%もしくは1重量%を超えない、または1重量%未満であることを意味する。一実施態様では、副産物は5%未満である。
「生物学的分子」は、核酸、タンパク質、糖質、脂質およびこれらの組合せを指す。一実施態様では、生物学的分子は天然に存在する。
本明細書で用いられる「連結された」または「連結する」とは、第一アミノ酸配列と第二アミノ酸配列の間の直接的なペプチド結合による結合、または第一および第二アミノ酸配列に結合した、該配列間のペプチドである、第三アミノ酸配列を伴う結合のいずれかを意味する。例えば、あるアミノ酸配列のC末端におよび他のアミノ酸配列のN末端に結合したリンカーペプチド。
本明細書で用いられる「リンカー」とは、2以上のアミノ酸長のアミノ酸配列を意味する。リンカーは、天然極性または非極性アミノ酸から成り得る。リンカーは、例えば、2から100アミノ酸長、例えば2アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸長であり得る。リンカーは、例えば自己切断または酵素的もしくは化学的切断により、「切断可能」であり得る。アミノ酸配列内の切断部位ならびにそのような部で切断する酵素および化学物質は、当該技術分野において周知であり、本明細書にも記載する。
本明細書で用いられる「テザー」とは、2つの別のアミノ酸配列を連結するアミノ酸リンカーを意味する。本明細書に記載するテザーは、免疫グロブリン重鎖可変ドメインのN末端と免疫グロブリン軽鎖定常領域のC末端を連結することができる。特定の実施態様において、テザーは、約15アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、20アミノ酸長と26アミノ酸長の間(例えば、20、21、22、23、24、25または26アミノ酸長)である。テザーは、例えば、当該技術分野において標準的な方法および試薬を用いる自己切断または酵素的もしくは化学的切断により、「切断可能」であり得る。
「リンカー」または「テザー」の酵素的切断は、例えばLys−C、Asp−N、Arg−C、V8、Glu−C、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、パパイン、トロンビン、ゲネナーゼ、第Xa因子、TEV(タバコエッチウイルスシステインプロテアーゼ)、エンテロキナーゼ、HRV C3(ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ)、キニノゲナーゼ、ならびにスブチリシン様プロプロテイン転換酵素(例えば、フリン(PC1)、PC2もしくはPC3)またはN−アルギニン二塩基性転換酵素などの、エンドペプチダーゼの使用を必要とし得る。化学的切断は、例えば、ヒドロキシルアミン、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、または臭化シアンの使用を必要とし得る。
本明細書で用いられる「Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位」は、Lys−CエンドペプチダーゼによってC末端側で切断され得るアミノ酸配列内のリシン残基である。Lys−Cエンドペプチダーゼは、リシン残基のC末端側で切断する。
「カオトロピック剤」とは、分子内相互作用(例えば水素結合、ファンデルワールス力または疎水性作用)の安定化を妨害することによりタンパク質(例えば抗体)の三次元構造を破壊する水溶性物質を意味する。例示的なカオトロピック剤には、限定するものではないが、尿素、グアニジン−HCl、過塩素酸リチウム、ヒスチジンおよびアルギニンが含まれる。
「中性(mild)界面活性剤」とは、分子内相互作用(例えば水素結合、ファンデルワールス力または疎水性作用)の安定化を妨害することによりタンパク質(例えば抗体)の三次元構造を破壊するが、生物学的活性を喪失させるようにタンパク質構造を永久破壊しない(すなわち、タンパク質を変性しない)、水溶性物質を意味する。例示的な中性界面活性剤には、限定するものではないが、Tween(例えばTween−20)、Triton(例えばTriton X−100)、NP−40(ノニルフェノキシポリエトキシエタノール)、Nonidet P−40(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原−担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する初代細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464ページの表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等,PNAS(USA)95:652−656(1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine−based activation motif;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine−based inhibition motif;ITIM)を含んでいる(Daeron,Annu.Rev.immunol.15:203−234(1997)を参照)。FcRsに関しては、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991);Capel等,Immunomethods 4:25−34(1994);及びde Haas等,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRsはここでの「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGの胎児への移送を担い(Guyer等,J.Immunol.117:587(1976)及びKim等,J.Immunol.24:249(1994))、免疫グロブリンのホメオスタシスを調節する新生児性レセプターFcRnも含まれる。
「ヒトエフェクター細胞」は、一又は複数のFcRを発現する白血球であり、エフェクター機能を果たす。好ましくは、細胞は少なくともFCγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球を含み;PBMC類及びNK細胞が好まれる。エフェクター細胞は、天然源、例えば血液から単離することができる。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。古典的補体経路の活性化は、その同族抗原に結合する(適切なサブクラスの)抗体に対する補体系(C1q)の第一の成分の結合によって開始される。補体活性を評価するために、CDCアッセイが、例えばGazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるように実施することができる。
「治療的有効量」なる用語は、対象の疾患又は疾病を治療するための抗体、抗体断片または誘導体の量を指す。腫瘍(例えば癌性腫瘍)の場合は、治療的有効量の抗体ないし抗体断片(例えば多選択性抗体ないし抗体断片)は、癌細胞の数を減少させる、腫瘍の大きさを小さくする、癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)、腫瘍の転移を阻害する(すなわち、ある程度遅く、好ましくは止める)、腫瘍の成長をある程度阻害する、及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげうる。抗体ないし抗体断片が、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を死滅させる範囲において、それは細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、例えば生存期間、病状の進行時間(TTP)、応答速度(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。
「低減する又は阻害する」とは、概して好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%、85%、90%、95%又はそれ以上の減少を引き起こす能力を指す。低減する又は阻害するとは、治療する疾患の症状、転移の存在又は大きさ、原発腫瘍のサイズ、又は血管形成性疾患の血管の大きさ又は数を指しうる。
用語「癌」及び「癌性」は、無秩序な細胞成長/細胞増殖を典型的に特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を言う。良性及び悪性の癌は、この定義に含まれる。癌の例には、これらに限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞性癌、胃腸癌を含む胃(gastric及びstomach)癌、膵癌、神経膠芽腫、膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌(例えば、腎臓細胞癌腫)、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門部の癌腫、陰茎癌腫、メラノーマ、及び様々な種類の頭頸部癌が含まれる。「初期段階の癌」は、浸潤性でも転移性でもなく、又はステージ0、I又はIIの癌として分類される癌を意味する。「前癌性」なる用語は、典型的に癌に進行する又は癌に発達する症状ないし成長を指す。「非転移性」とは、良性である癌、又は原発部位に止まり、リンパ管や血管系ないしは原発部位以外の組織に浸透しない癌を意味する。一般的に、非転移性癌は、ステージ0、I又はIIの癌、場合によってステージIIIの癌のいずれかの癌である。
本明細書において「アレルギー性又は炎症性の疾患」は、個体の免疫系の過剰活性化から生じる疾患又は疾病である。例示的なアレルギー性又は炎症性の疾患には、喘息、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、全身狼瘡、エリテマトーデス、湿疹、臓器移植、年齢性黄斑変性、クローン病、潰瘍性大腸炎、好酸性食道炎および炎症に関連する自己免疫性疾患が含まれるが、これに限定されない。
本明細書中の「自己免疫疾患」は、個体の自己組織又は同時分離又はその徴候又は結果として生じるその症状に対する及びそれらから生じる疾患又は症状である。自己免疫疾患又は症状の例として、限定するものではないが、関節炎(関節リウマチ(例えば急性の関節炎、慢性の関節リウマチ、痛風性関節炎、急性の痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、椎骨関節炎及び若年性発症関節リウマチ、骨関節炎、関節炎慢性化、関節炎変形、関節炎慢性原発、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬)、皮膚炎、例として接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、ヘルペス状の皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激物接触皮膚炎及び過敏性皮膚炎、X連鎖性過剰IgM症候群、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹、例として慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎−眼(spino−optical)MS)、一次進行性MS(PPMS)及び再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、硬化症汎発、失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、微細な大腸炎、膠原性大腸炎、大腸ポリープ、壊死性全腸炎及び経壁の大腸炎、及び自己免疫炎症性腸疾患)、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸窮迫症候群、例として成人性又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫血液疾患、リウマチ様脊椎炎、リウマチ様関節滑膜炎、突発性聴力障害、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例として、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例として、慢性又は急性の糸球体腎炎、例として原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN又は特発性膜性ネフロパシ、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、急速進行性GN、アレルギー性症状、アレルギー性反応、湿疹、例としてアレルギー性又はアトピー性湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、全身性エリテマトーデス(SLE)又は全身性ループスエリテマトーデス、例えば皮膚SLE、亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)、紅班性狼瘡汎発、ループス(例としてループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス、脱毛症ループス)、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例として小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、ヴェゲナーの肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例として血管炎、大血管性血管炎(例えば大脈管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、微小多発動脈炎、CNS脈管炎、壊死性血管炎、皮膚性血管炎又は過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎、及びANCA関連の脈管炎、例としてチャーグ−ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原−抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット又はベーチェット病、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天ぽうそう及び類天疱瘡皮膚、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡及び天疱瘡エリテマトーデスを含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、自己免疫多腺性症候群、例として多腺性症候群(又は、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として神経系新生物関連症候群、例えばランバート−イートン筋無力症症候群又はイートン―ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例として、アレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)及び感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、リンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン‐バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、原発性胆管萎縮症、肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアック病、コエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(Lou Gehrig’s disease))、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例として、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直徴候(OMS)、多発性軟骨炎、例として、抵抗性又は再発性多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症、これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び未同定の有意なモノクローナル免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、MGUS)が含まれる、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例として自己免疫脱髄性病、糖尿病性ネフロパシ、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間質性肺線維形成、間質性肺線維形成、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎、又はFuchの毛様体炎)、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウィルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンの症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血−再灌流障害、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、結節性紅斑、leprosum、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、一次特発性の粘液水腫、ネフローゼ、眼炎symphatica、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、Quervain甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体による不妊性、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタインバーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(エイズ)、寄生虫病、例えばLesihmania、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球−粘着力欠損、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、末梢性神経障害、自己免疫多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症−筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム又は好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジ
ダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、神経病学的疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、antgiectasis、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
本明細書で用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、Ra223、P32及びLuの放射性同位体)、化学治療薬、例としてメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そしてここに開示する種々の抗腫瘍剤、抗癌剤および化学療法剤を含むように意図されている。他の細胞障害性薬が本明細書に記載されている。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学物質である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);βラパチョーネ;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl.33:183−186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT−2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,NJ)、ABRAXANETMパクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;ゲムシタビン(gemcitabine)(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標);上述したもののいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体:並びに上記のうち2以上の組み合わせ、例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロン併用療法の略称であるCHOP、及び5−FU及びロイコボビン(leucovovin)とオキサリプラチン(ELOXATINTM)を組み合わせた治療法の略称であるFOLFOXが含まれる。
また、癌の成長を促進しうるホルモンの影響を調節、低減、阻止(ブロック)又は阻害するように作用し、たびたび全身性、又は全身治療の形態にある抗ホルモン剤もこの定義に含まれる。これらはホルモン類自体でもよい。例として、抗卵胞ホルモン類及び、選択的なエストロゲンレセプターモジュレータ類(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(登録商標)トレミフェン、抗プロゲステロン類、エストロゲンレセプター下方制御因子(ERD)、卵巣を抑制するか又は一時停止させるように機能する薬剤、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば、LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸ロイプロリド、ゴセレリンアセテート、ブセレリンアセテート及びトリプトレリン(tripterelin)、他の抗アンドロゲン類、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド、及び、副腎のエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬、例として、例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどがある。加えて、化学療法剤のこのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロン酸(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロン酸、NE−58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロン酸、SKELID(登録商標)チルドロン酸又はACTONEL(登録商標)、リセドロン酸、並びにトロキサチタビン(troxacitabine)(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例として、例えばPKC−α、Raf、H−Ras及び上皮性成長因子レセプター(EGF−R)、ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン、LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター、ABARELIX(登録商標)rmRH、ラパチニブジトシラート(ErbB−2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子インヒビター、GW572016とも称される)、及び、上記の何れかの薬学的に受容可能な塩類、酸又は誘導体が含まれる。
本明細書で用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞の増殖をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、増殖阻害剤は、S期でHip発現細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、及びアラ−Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn及びIsrael,編,Chapter1,表題「Cell cycle regulation,oncogene,and antineoplastic drugs」,Murakami等,(WB Saunders:Philadelphia,1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル−マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
本明細書で用いる「抗癌療法」は、被検体の癌を低減するか又は阻害する処置を指す。抗癌療法の例には、細胞障害性放射線療法、並びに細胞障害性剤、化学療法剤、増殖阻害性剤、癌ワクチン、脈管形成インヒビター、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、副腎皮質ステロイド、免疫抑制因子、制吐剤、抗体ないし抗体断片又は鎮痛剤の治療上の有効量の被検体への投与が含まれる。
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」なる用語は、親薬剤と比較して腫瘍細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換されうる薬学的に活性な物質の前駆体又は誘導体の形態を指す。例として、Wilman,”Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,頁375−382,615th Meeting Belfast(1986)およびStella et al.,”Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,” Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),頁247−267,Humana Press(1985)を参照のこと。プロドラッグには、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5−フルオロシトシン及び他の5−フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
「サイトカイン」なる用語は、一つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン(HGH)、N−メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);上皮性増殖因子(EGF);肝臓成長因子;線維芽成長因子(FGF);プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF−α及びTGF−β等のトランスフォーミング成長因子(TGFs);インシュリン様成長因子−I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン−α、−β、及び−γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ−CSF(M−CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);及び顆粒球−CSF(G−CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL−1、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−18;腫瘍壊死因子、例えばTNF−α及びTNF−β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。本明細書で用いられる際、用語サイトカインには、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
「サイトカインアンタゴニスト」とは、少なくとも一のサイトカインの生物学的活性を一部又は完全に遮断、阻害、又は中和する分子を意味する。例えば、サイトカインアンタゴニストは、サイトカイン発現および/または分泌を阻害することによって、または、サイトカイン又はサイトカインレセプターに結合することによってサイトカイン活性を阻害してよい。サイトカインアンタゴニストには、抗体、合成又は天然の配列ペプチド、イムノアドヘシン、及びサイトカイン又はサイトカインレセプターに結合する小分子アンタゴニストが含まれる。サイトカインアンタゴニストは場合によって、細胞障害性剤とコンジュゲートされるか又は融合される。例示的なTNFアンタゴニストは、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))およびアダリムマブ(HUMIRATM)である。
本明細書中で用いる「免疫抑制剤」なる用語は、治療される被検体の免疫系を抑制するか又は隠すために作用する物質を指す。これには、サイトカイン産生を抑制する物質、自己抗原発現を下方制御は又は抑制する物質、又は、MHC抗原をマスキングする物質が含まれる。免疫抑制剤の例には、2−アミノ−6−アリル−5−置換ピリミジン(米国特許第4665077号を参照);ミコフェノール酸モフェチル、例えばCELLCEPT(登録商標);アザチオプリン(IMURAN(登録商標)、AZASAN(登録商標)/6‐メルカプトプリン;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタールアルデヒド(米国特許第4120649号に記載のように、MHC抗原をマスキングするもの);MHC抗原およびMHC断片のための抗イディオタイプ抗体;サイクロスポリンA;副腎皮質ステロイドおよび糖質コルチコイドといったステロイド、例えばプレドニゾン、プレドニソロン、例えばPEDIAPRED(登録商標)(プレドニソロンリン酸ナトリウム)又はORAPRED(登録商標)(プレドニソロンリン酸ナトリウム経口溶液)、メチルプレドニゾロンおよびデキサメサゾン;メトトレキセート(経口又は皮下)(RHEUMATREX(登録商標)、TREXALLTM);ヒドロキシクロロキン/クロロキン;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト、例として抗インターフェロン−γ、−β、又は−α抗体、抗腫瘍壊死因子−α抗体(インフリキシマブ又はアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(ENBREL(登録商標)、エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子−β抗体、抗インターロイキン2抗体、及び抗IL−2レセプター抗体;抗CD11aおよび抗CD18抗体を含む抗LFA−1抗体;抗L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;ポリクローナル又はパンT抗体、又はモノクローナル抗CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA−3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開の国際公開1990/08187);ストレプトキナーゼ;TGF−β;ストレプトドルナーゼ;宿主のRNA又はDNA;FK506;RS−61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞レセプター(Cohen et al.、米国特許第5114721号);T細胞レセプター断片(Offner et al. Science,251:430−432(1991);国際公開1990/11294;Ianeway,Nature,341:482(1989);及び国際公開1991/01133);T10B9といったT細胞レセプター抗体(欧州特許第340109号);シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));ダプソン;ペニシラミン(CUPRIMINE(登録商標));血漿交換;または、静脈免疫グロブリン(IVIG)が含まれる。これらは単独で用いられても、互いに、特にステロイド及び他の免疫抑制剤との組合せ、又はこの組合せの後にステロイドの必要性を低減するために維持用量の非ステロイド剤を組み合わせて用いられてもよい。
「鎮痛剤」は、被検体の痛みを阻害するかまたは抑制するために作用する薬剤を指す。例示的な鎮痛剤には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばイブプロフェン(MOTRIN(登録商標))、ナプロキセン(NAPROSYN(登録商標))、アセチルサリチル酸、インドメタシン、スリンダクおよびトルメチン、これらの塩類及び誘導体、並びに、生じうる鋭い痛みを低減するために用いられる様々な他の医薬、例えば抗痙攣剤(ガバペンチン、phenyloin、カルバマゼピン)又は三環系抗鬱薬が含まれる。具体例には、アセトアミノフェン、アスピリン、アミトリプチリン(ELAVIL(登録商標))、カルバマゼピン(TEGRETOL(登録商標))、phenyltoin(DILANTIN(登録商標))、ガバペンチン(NEURONTIN(登録商標))、(E)−N−バニリル−8−メチル−6−ノネアミド(CAPSAICIN(登録商標))又は神経遮断薬が含まれる。
「副腎皮質ステロイド」は、天然に生じる副腎皮質ステロイドの効果を模倣するかあるいは増大するステロイドの一般的な化学構造を有するいくつかの合成又は天然に生じる物質の何れか一つを指す。合成副腎皮質ステロイドの例として、プレドニゾン、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロンを含む)、デキサメサゾン、トリアムシノロン及びベタメサゾンが含まれる。
本明細書で用いる「癌ワクチン」は、癌に対して被検体において免疫応答を刺激する組成物である。癌ワクチンは典型的に、抗原に対して免疫応答を更に刺激してブーストする他の構成成分(例えばアジュバント)とともに、被検体に対して自己由来性(自己から)又は同種異系性(他から)である癌関連の物質又は細胞(抗原)の供与源からなる。癌ワクチンにより望ましくは、被検体の免疫系が刺激され、1又はいくつかの特異的抗原に対して抗体が産生され、および/またはそれらの抗原を有する癌細胞を攻撃するためにキラーT細胞が産生される。
本明細書で用いる「細胞障害性放射線療法」は、細胞の機能を阻害又は予防し、および/または細胞の破壊を引き起こす放射線療法を指す。放射線療法には、例えば、外的光線照射又は抗体などの放射性標識した薬剤による療法が含まれうる。この用語は、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、Ra223、P32およびLuの放射性同位体)の使用を含むことを目的とする。
「被検体」は、脊椎動物、例として哺乳動物、例えばヒトである。哺乳動物には、家畜(例えばウシ)、スポーツ用動物、愛玩動物(例えばネコ、イヌおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されない。
文脈により特に指示がある場合を除き、用語「第一の」ポリペプチド及び「第二の」ポリペプチド、及びその変形は単に汎用的な識別子であり、本発明の抗体の特異的又は特定のポリペプチド又は成分を識別していると取られるべきではない。
実施例において示す市販の試薬は、特に明記しない限り製造業者の指示に従って使用した。以下の実施例及び明細書全体にわたってATCC受託番号によって識別される細胞の供与源は、American Type Culture Collection,Manassas,VAである。特に明記しない限り、本発明は、本明細書中、及び以下のテキスト:上掲のSambrook et al.;Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989);Innis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,Inc.:N.Y.,1990);Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press:Cold Spring Harbor,1988);Gait,Oligonucleotide Synthesis(IRL Press:Oxford,1984);Freshney,Animal Cell Culture,1987;Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,1991に記載されるものなど、組換えDNA技術の標準的な手順を用いる。
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」なる語彙、又は「含む」ないし「含んでいる」の変形型は、定めた完全体又は完全体の群を包含するもので、任意の他の完全体又は完全体の群を除外するものではない。
II.ヘテロ多量体タンパク質の構築
一般的に、本明細書に記載されるヘテロ多量体タンパク質は、抗体のFc領域の大部分を含む。
ヘテロ多量体化ドメイン
ヘテロ多量体タンパク質は、ヘテロ多量体化ドメインを含む。ヘテロ二量体分子の実質的に均一な集団を生成するため、ヘテロ二量体化ドメインは、ホモ二量体よりもヘテロ二量体を形成について強い優先度を持っている必要がある。本明細書に例示されるヘテロ多量体タンパク質は、ヘテロ二量体化を容易にするためノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)技術を用いるが、当業者は、本発明において有用な他のヘテロ二量体化ドメインを認識するであろう。
ノブ・イントゥー・ホール
多重特異性抗体を産生する方法としてのノブ・イントゥー・ホールの使用は当技術分野でよく知られている。Genentechに割り当てられ、1998年3月24日に付与された米国特許第5731168号、Amgenに割り当てられ、2009年7月16日に付与されたPCT公開国際公開第2009089004号、及びNovo Nordisk A/Sに割り当てられ、2009年7月16日に公開された米国特許出願公開第20090182127号を参照。また、Marvin and Zhu,Acta Pharmacologica Sincia(2005)26(6):649−658及びKontermann(2005) Acta Pharacol.Sin.,26:1−9を参照。簡潔な議論がここに提供される。
「突起」とは、ヘテロ多量体を安定させ、それによって、例えばホモ多量体形成よりもヘテロ多量体形成を支持するように、第一のポリペプチドの界面から突き出し、従って隣接界面(即ち、第二のポリペプチドの界面)の代償空洞内に配置可能である少なくとも一つのアミノ酸側鎖を指す。突起は、元の界面に存在し得るか又は(例えば界面をコードする核酸を変更することで)合成的に導入することができる。通常は、第1のポリペプチドの界面をコードする核酸は、突起をコード化するために変更される。これを達成するために、第一のポリペプチドの界面において少なくとも一の「元の」アミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基より大きい側鎖体積を有する少なくとも一つの「移入」アミノ酸残基をコードする核酸に置換される。複数の元の残基及びそれに対応する移入残基が存在し得ることが理解されるであろう。置換される元の残基の数の上限は、第一のポリペプチドの界面における残基の総数である。種々のアミノ酸残基の側鎖の体積を以下の表に示す。
突起の形成に好適な輸入残基は、一般に、天然に生じるアミノ酸残基であり、好ましくはアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)から選択される。最も好ましいのは、トリプトファンとチロシンである。一実施態様において、突起の形成のための元の残基は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン又はバリンなど小さな側鎖の体積を有する。
「空洞(cavity)」は、第二のポリペプチドの界面から窪み、従って、第一のポリペプチドの隣接界面上の対応する突起を収容する少なくとも一つのアミノ酸側鎖を指す。空洞は、元の界面に存在し得るか又は(例えば界面をコードする核酸を変更することで)合成的に導入することができる。通常は、第二のポリペプチドの界面をコードする核酸が、空洞をコード化するために変更される。これを達成するために、第二のポリペプチドの界面において少なくとも一の「元の」アミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基より小さい側鎖体積を有する少なくとも一つの「移入」アミノ酸残基をコードするDNAに置換される。複数の元の残基及びそれに対応する移入残基が存在し得ることが理解されるであろう。置換される元の残基の数の上限は、第二のポリペプチドの界面における残基の総数である。種々のアミノ酸残基の側鎖の体積を上の表2に示す。空洞の形成に好適な輸入残基は、一般に、天然に生じるアミノ酸残基であり、好ましくはアラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)及びバリン(V)から選択される。最も好ましいのは、セリン、アラニン又はスレオニンである。一実施態様において、空洞の形成のための元の残基は、チロシン、アルギニン、フェニルアラニン又はトリプトファンなど大きな側鎖の体積を有する。
「元の」のアミノ酸残基は、元の残基より小さいか又は大きい側鎖の体積を持つことができる「移入」残基で置換されているものである。移入アミノ酸残基は、天然に生じるアミノ基残基か又は非天然型アミノ酸残基であり得るが、好ましくは前者である。「天然に生じる」アミノ基残基は、遺伝子コードによりコード化され、上記の表2に記載されているものである。「非天然型」アミノ酸残基とは、遺伝コードによってコード化されていないが、ポリペプチド鎖中で隣接するアミノ酸残基に共有結合することができる残基を意味する。非天然型アミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及び他のアミノ酸残基アナログ、例えば、Ellman et al.,Meth.Enzym.202:301−336(1991)に記載されるものなどである。非天然型アミノ酸残基を生成するために、Noren et al.Science 244:182(1989)及び上掲のEllman et al.,の手順を使用することができる。簡潔には、これは非天然型アミノ酸残基でサプレッサーtRNAを化学的に活性化し、続くインビトロでのRNAの転写及び翻訳を含む。本発明の方法は、少なくとも一つの元のアミノ酸残基の置換を含むが、複数の元の残基を置換することができる。通常、第一又は第二のポリペプチドの界面における全残基だけが、置換される元のアミノ酸残基を含む。典型的には、置換される元の残基は「埋没」されている。「埋没」とは、残基が溶剤に本質的に接近不能であることを意味する。一般的に、移入残基は、酸化の可能性又はジスルフィド結合の誤対合を防止するために、システインではない。
突起は、空洞内に「配置することが可能」であり、このことは、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドのそれぞれの界面上の突起と空洞の空間的位置、及びその突起と空洞の大きさが、界面での第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドの正常な会合を著しくを乱すことなく、その突起が空洞中に配置され得るようなものであることを意味している。Tyr、Phe及びTrpなどの突起は通常、界面の軸から垂直に延びておらず、好適なコンフォメーションをとっていないので、対応する空洞と突起の位置合わせは、X線結晶構造解析又は核磁気共鳴(NMR)により得られたものなど三次元構造に基づく突起/空洞の対のモデリングに依存している。このことは、当該技術分野において広く受け入れられている技術を用いて達成することができる。
「元の又は鋳型核酸」とは、突起又は空洞をコードするため、「改変」されうる(すなわち、遺伝子操作され又は変異され得る)目的のポリペプチドをコードする核酸を意味する。元の又は出発核酸は、天然に存在する核酸であってもよいし、又は事前の改変が施されている核酸(ヒト化抗体断片など)を含んでもよい。核酸を「改変する」とは、目的のアミノ基残基をコード化する少なくとも一のコドンの挿入、欠失、又は置換により元の核酸が変異されることを意味する。通常は、元の残基をコードするコドンは、移入残基をコード化するコドンに置換される。この方法により遺伝子的にDNAを修飾するための技法がMutagenesis:a Practical Approach,M.J. McPherson,Ed.,(IRL Press,Oxford,UK.(1991)に概説されており、例えば、部位特異的変異誘発、カセット変異導入、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異を含む。元の/鋳型核酸を変異させることにより、元の/鋳型核酸によってコードされた元の/鋳型ポリペプチドが、従ってそれに応じて改変される。
突起又は空洞は、合成手段によって、例えば、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的又は化学的カップリング又はこれらの技術のある組合わせによる、先に説明した非天然型アミノ基残基を導入するための技術によって、第一又は第二ポリペプチドの界面に「導入」することができる。従って、「導入」されている突起又は空洞は、「非天然型」又は「非天然」であり、このことは、それが自然の中で、または元のポリペプチドにおいて存在しないことを意味する(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)。
一般的に、突起を形成するための移入アミノ酸残基は、比較的少数の「回転異性体」を持っている(例えば、約3から6)。「回転異性体」はエネルギー的に好都合なアミノ酸側鎖のコンフォメーションである。様々なアミノ基残基の回転異性体の数は、Ponders and Richards,J.Mol.Biol.193:775−791(1987)に総説されている。
他の変異
本明細書に記載されるFcポリペプチドは、野生型Fcポリペプチド又はノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)Fcポリペプチドと比較した場合に、誤対合の減少、頭尾形成の減少、又は全収率の増大を与える変異を有し得る。Fc変異体は、少なくとも一つの重鎖上で、S239,V240,F241,F243,V264,R301,K334,Y349,T350,L368,K370,N389,Y391,K392,P395,P396,D399,F405,Y407から選択される残基での、野生型Fcポリペプチドに存在するものと異なるアミノ酸との、少なくとも一、二、三、四、五、六、七、八、九又は10の置換を含む。エフェクター機能を変えることが望まれる場合があり、変異の幾つかはエフェクター機能を亢進又は減少させ得ることが熟慮されている。変異は、抗体の別の機能的特徴、例えばエフェクター機能を有意には変えないのが望まれる。
III.ベクター、宿主細胞及び組換え法
本発明のヘテロ多量体タンパク質(例えば抗体)の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)用又は発現用に、複製可能なベクターへ挿入される。抗体をコードする核酸は容易に単離され、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定することができる。多くのベクターが利用可能である。ベクタ−の選択は、使用される宿主細胞に一部は依存する。一般には、好ましい宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般には、哺乳動物であるが、菌類(例えば、酵母)、昆虫、植物、その他の多細胞生物からの有核細胞も含む)起源のどちらかのものである。IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む、任意のアイソタイプの定常領域が、この目的用に使用することができ、そのような定常領域は任意のヒト又は動物種から得ることができると理解されるであろう。
a.原核生物の宿主細胞を使用してヘテロ多量体タンパク質を生成する
i.ベクターの構築
本発明のヘテロ多量体タンパク質(例えば抗体)のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列を標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列が、例えばハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離され、配列決定され得る。あるいは、ポリヌクレオチドをヌクレオチド合成装置又はPCR技術を使用して合成することができる。一たび得られると、ポリペプチドをコードする配列を、原核生物の宿主において異種ポリヌクレオチドを複製し発現することができる組換えベクターに挿入される。入手可能で当該技術分野で公知のベクターが本発明の目的用に使用することができる。適切なベクターの選別はベクターに挿入される核酸の大きさ及びそのベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存するであろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅又は発現、或いは両方)、及びそれが属する特定の宿主細胞との適合性に依存して、様々な成分を含有する。ベクターの成分は、限定されないが、一般的に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入及び転写終結配列を含む。
一般に、宿主細胞と適合した種に由来するレプリコン及び制御配列を含むプラスミドベクターが、これらのホストに関連して使用される。ベクターは通常、複製部位、並びに形質転換細胞の表現型選択を提供することができるマーキング配列を運ぶ。例えば、大腸菌は典型的には、大腸菌種から由来したプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tetリ)耐性をコードする遺伝子を含有し、従って形質転換された細胞を同定するための簡便な手段を提供する。pBR322、その誘導体、又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージもまた含んでいてもよく、又は内因性タンパク質の発現用に微生物生物体によって使用することができるプロモーターを含むように改変され得る。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322の誘導体の例は、Carterらの米国特許第5648237号に詳細に記載されている。
更に、宿主微生物と適合したレプリコン及び制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主に関連した形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.−11などのバクテリオファージを、大腸菌LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えベクターの作成に利用することができる。
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする、二つ以上のプロモーター−シストロン対を含んでもよい。プロモーターは、その発現を調節するシストロンに対する上流(5’)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物のプロモーターは、典型的には、誘導性と構成性の2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の有無または温度の変化に応じて、その制御下でシストロンの転写レベルの上昇を開始するプロモーターである。
様々な潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。選択されたプロモーターは、例えば、制限酵素消化を介して供給源のDNAからプロモーターを除去し、そして、本発明のベクターに単離されたプロモーター配列を挿入することにより、軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに結合させることができる。天然のプロモーター配列及び数多くの異種プロモーターの両方を、標的遺伝子の直接増幅及び/又は発現に用いることができる。幾つかの実施態様において、異種プロモーターが一般に天然の標的ポリペプチドプロモーターに比べて標的遺伝子のより高い転写収率および高い発現収率を可能にするようため、異種プロモーターが利用されている。
原核生物宿主での使用に適したプロモーターには、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及び例えばtac又はtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、(他の既知の細菌又はファージプロモーターなど)細菌内で機能している他のプロモーターも同様に適している。それらのヌクレオチド配列は公開されており、それによって当業者が、任意の必要な制限部位を供給するリンカー又はアダプターを使用して、例えば、ターゲットの軽鎖および重鎖などのヘテロ多量体タンパク質の遺伝子をコードするシストロンにそれらを操作可能に連結できる(Siebenlist et al.,(1980)Cell 20:269)。
本発明の一実施態様において、組換えベクター内の各シストロンは、発現されたポリペプチドの膜を横断する移行を導く分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分であってもよいし、又はベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明の目的のために選択されたシグナル配列は、宿主細胞によって認識されてプロセスされる(即ちシグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。認識し、異種ポリペプチドを原産とするシグナル配列を認識せずプロセスしない原核宿主細胞について、そのシグナル配列は、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から、例えば、選択された原核生物のシグナル配列で置換される。本発明の一実施態様において、発現系の両方のシストロンで使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその変異体である。
別の実施態様において、本発明による免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質中で生じ得るので、従って各シストロン内における分泌シグナル配列の存在を必要としない。その点において、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖が発現され折り畳まれ、細胞質内の機能的な免疫グロブリンを形成するように会合される。特定の宿主株(例えば、大腸菌trxB−株)が、ジスルフィド結合の形成のために好ましい細胞質の条件を提供し、それにより発現されるタンパク質サブユニットの適切な折り畳みと会合を可能にしている。Proba and Pluckthun Gene,159:203(1995)を参照。
本発明のヘテロ多量タンパク質(例えば、抗体)を発現するのに適した原核生物宿主細胞は、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性生物などが含まれる。有用な細菌の例としては、大腸菌類(例えば、大腸菌)、桿菌(例えば、枯草菌)、腸内細菌、シュードモナス種(例えば、緑膿菌)、ネズミチフス菌、霊菌(Serratia marcescans)、クレブシエラ、プロテウス、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ、又はパラコッカスを含む。一実施態様において、グラム陰性細胞が用いられる。一実施態様において、大腸菌細胞が、本発明のための宿主として使用される。大腸菌株の例としては、W3110株(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,第2巻(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),頁1190−1219;ATCC寄託番号27,325)、及び遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE) degP41 kanR(米国特許第5,639,635号)を有する菌株33D3を含む、その誘導体が含まれる。他の菌株及びその誘導体、例えば大腸菌294(ATCC31446)、大腸菌B、大腸菌λ1776(ATCC31537)及び大腸菌RV308(ATCC31608)なども適している。一実施態様において、大腸菌Δlppは特定の用途を見いだしている。これらの実施例は、限定ではなく例示である。定められた遺伝子型を有する上記細菌の任意の誘導体を構築するための方法は当該技術分野で公知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309−314(1990)に記載されている。細菌の細胞内のレプリコンの複製能を考慮して適切な細菌を選択することが一般的に必要である。良く知られたプラスミド、例えばpBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410がレプリコンを供給するために使用されるとき、例えば、大腸菌、セラチア、またはサルモネラ属を、宿主として適切に用いることが可能である。典型的には、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する必要があり、更なるプロテアーゼ阻害剤を、望ましくは、細胞培養物に組み込むことができる。
II.ポリペプチド産生
宿主細胞が上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修飾された従来の栄養培地で培養される。
形質転換は、DNAが、染色体外要素として、或いは染色体組込み体により、の何れかによって、複製可能であるように、原核生物の宿主にDNAを導入することを意味する。使用する宿主細胞に応じて、形質転換は、そのような細胞に適した標準的な技術を用いて行われる。塩化カルシウムを採用したカルシウム処理は、一般に、実質的な細胞壁障壁を含有する細菌細胞のために使用される。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。更に使用される別の手法は、エレクトロポレーションである。
本発明のポリペプチドを生成するために用いられる原核細胞は、当該技術分野で知られており、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖される。適切な媒体の例としては、ルリア培地(LB)と必要な栄養素補給が含まれている。幾つかの実施態様において、培地は、発現ベクターを含む原核細胞の増殖を選択的に可能にする発現ベクターの構築に基づいて選択された選択剤を含有する。例えば、アンピシリンが、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のための培地に添加される。
炭素、窒素、及び無機リン酸塩の供給源以外の任意の必要な栄養補助剤も、単独で又は他の栄養補助剤もしくは複合窒素供給源などの培地との混合物として導入され、適切な濃度で含まれてよい。任意で選択培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコール酸、ジチオエリスリトール及びジチオスレイトールとからなる群から選択される一以上の還元剤を含んでもよい。
原核生物宿主細胞は適当な温度で培養される。大腸菌の増殖において、例えば、好ましい温度は、約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲であり、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、宿主生物に主に依存して、約5から約9の範囲の任意のpHであり得る。大腸菌については、pHは好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
誘導性プロモーターが、本発明の発現ベクターに使用される場合には、タンパク質の発現は、プロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。本発明の一実施態様において、PhoAプロモーターが、ポリペプチドの転写の制御のために使用される。従って、形質転換された宿主細胞は、誘導のためにリン酸塩制限培地で培養される。好ましくは、リン酸塩制限培地はC.R.A.P培地である(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.Methods(2002),263:133−147を参照)。当技術分野で知られているように、採用されたベクターコンストラクトに従って、他の様々な誘導因子を使用することができる。
一実施態様において、第一及び第二のFc含有宿主細胞が別々に培養され、発現された本発明のポリペプチドが、宿主細胞のペリプラズムに分泌され別々に回収される。第二の実施態様において、第一及び第二のFc含有宿主細胞が別々に培養され、そしてFc含有ポリペプチドの分離の前に、2つの宿主細胞培養物を一緒に混合し、細胞がペレット状にされる。第三の実施態様において、第一及び第二のFc含有宿主細胞が別々に培養され、遠心分離し、別々に再懸濁し、その後、Fc含有ポリペプチドの分離の前に一緒に混合する。第四の実施態様において、第一及び第二のFc含有宿主細胞は同じ培養容器中で一緒に培養される。タンパク質の回収は、一般的に浸透圧ショック、超音波処理や溶解などの手段によって、典型的には微生物の細胞膜を破壊することが含まれる。一度細胞が破壊されると、細胞の破片又は全細胞を、遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製することができる。あるいは、タンパク質は、培地に移され、そこで単離することができる。細胞は培養物から除去することができ、培養上清を、産生されるタンパク質の更なる精製のために、濾過し、濃縮した。発現されたポリペプチドは更に、単離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットアッセイ等の一般に知られている方法を用いて同定することができる。単離されたポリペプチドは、ヘテロ多量体タンパク質を生産するために使用される。
本発明の一実施態様において、ヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体)の産生は、発酵プロセスにより大量に行われる。様々な大規模流加発酵手順が、組換えタンパク質の生産のために利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000から100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素及び栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分配するために攪拌羽根車を使用している。小規模発酵は一般的に容積がわずか約100リットルしかない、約1リットルから約100リットルの範囲であり得る発酵槽での発酵を指す。
発酵プロセスにおいて、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が適した条件下で所望の濃度、例えば、細胞が初期の静止期にある段階である、OD550が約180〜220まで増殖した後に開始される。当技術分野で知られ、上述されるように、採用されたベクターコンストラクトに従って、様々な誘導因子を使用することができる細胞は、誘導に先だって短い期間増殖させることができる。細胞は通常約12〜50時間誘導されるが、それより長いか又は短い誘導時間である場合がある。
本発明のポリペプチドの生産収率や品質を向上させるために、様々な発酵条件を変更することができる。例えば、分泌されたヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体)の適切な会合とフォールディングを改善するために、シャペロンタンパク質、例えばDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルシス、トランス−イソメラーゼ)を過剰発現する追加ベクターを、宿主の原核細胞を共形質転換することに用いることができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞中で産生される異種タンパク質の溶解性及び適切なフォールディングを促進することが実証されている。Chen et al.(1999)J Bio Chem 274:19601−19605;Georgiou et al., 米国特許第6,083,715号;Georgiou et al.,米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100−17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106−17113;Arie et al.(2001)Mol.Microbiol.39:199−210.
発現された異種タンパク質(特にタンパク質分解感受性であるもの)のタンパク質分解を最小限にするために、タンパク質分解酵素が欠損した特定の宿主株を本発明に用いることができる。例えば、宿主細胞株は、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIなどの公知の細菌プロテアーゼ及びそれらの組合せをコードする遺伝子の遺伝的変異をもたらすように修飾することができる。幾つかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、Joly et al.(1998),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:2773−2777;Georgiou et al.,米国特許第5,264,365号;Georgiou et al.,米国特許第5,508,192号;Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63−72(1996)に記載されている。
一実施態様において、タンパク質分解酵素が欠損し、一以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換された大腸菌株が、本発明の発現系において宿主細胞として使用される。第二の実施態様において、大腸菌株は外膜のリポタンパク質を欠損している(Δlpp)。
III.ヘテロ多量体タンパク質の精製
一実施態様において、本明細書において生産されるヘテロ多量体タンパク質が更に精製され、更なるアッセイ及び用途のために実質的に均一である調製物を得る。当技術分野で公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の手順は適切な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上或いはDEAEなどの陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、セファデックスG−75を例えば使用するゲル濾過。
一実施態様において、固相に固定されたプロテインAが、例えば、本発明の完全長抗体製品のの免疫親和性精製において使用される。プロテインAは黄色ブドウ球菌由来の41kDの細胞壁タンパク質であり、抗体のFc領域に高い親和性で結合する。Lindmark et al.(1983) J.Immunol.Meth.62:1−13.プロテインAが固定化された固相は、好ましくはガラス又はシリカ表面を含むカラムであり、より好ましくは制御された細孔ガラスカラム又はケイ酸カラムを含む。幾つかの用途では、カラムは、汚染物質の非特異的な付着を防止する試みにおいて、グリセロールなどの試薬でコーティングされている。
精製の第一工程として、上述したように、細胞培養物に由来する調製物がプロテインA固定化固相にアプライされ、目的の抗体のプロテインAに対する特異的結合を可能にする。固相は、その後、非特異的に固相に結合した汚染物質を除去するために洗浄される。ヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体)は溶出により固相から回収される。
b.真核生物の宿主細胞を使用してヘテロ多量体タンパク質を生成する
ベクター成分は、限定されないが、一般的に以下の一つ以上を含む:シグナル配列、複製起点、一つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
i.シグナル配列成分
真核生物の宿主細胞において使用するためのベクターはまた、目的の成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する、シグナル配列或いは他のポリペプチドを含んでいてもよい。好ましく選択された異種性シグナル配列は、宿主細胞によって認識されてプロセスされる(即ちシグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。哺乳動物の細胞発現においては、哺乳動物のシグナル配列、並びにウイルスの分泌性リーダー、例えば、単純ヘルペスgDのシグナルを利用可能である。そうした前駆体領域のDNAは、所望のヘテロ多量タンパク質(例えば、抗体)をコードするDNAにリーディング・フレーム中で連結されている。
II.複製起点
一般的に、複製起点の成分は哺乳動物の発現ベクターにおいて必要ではない。例えば、SV40起点が典型的には使用され得るが、ただそれが初期プロモーターを含有するためだからである。
III.選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含んでいてもよい。典型的な選択遺伝子は、(a)例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、又はテトラサイクリンなどの抗生物質或いは他の毒素に対する耐性を付与し、(b)該当する場合に栄養要求性欠乏症を補完し、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
選択方式の一例は、宿主細胞の増殖を阻止する薬物を利用する。異種性遺伝子で首尾よく形質転換された細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択レジメンを生き残る。このような優性選択の例としては、薬物のネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物の細胞に適した選択マーカーの他の例は、例えば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iと−II、好ましくは、霊長類のメタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなど抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするものである。
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、メトトレキサート(Mtx)、DHFRの競合的拮抗薬を含有する培地中で形質転換体の全てを培養することにより同定される。野生型DHFRを用いたときの適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)である。
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR蛋白質、および3’−ホスアミノグリコシドなどの別の選択可能なマーカー(APH)で形質転換又は同時形質転換される宿主細胞(特に内因性DHFRを含有する野生型ホスト)は、アミノグリコシド系抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、又はG418などの選択可能なマーカーの選択剤を含有する培地中の細胞増殖により選択することができる。例えば、米国特許第4,965,199号を参照。
iv.プロモーター成分
発現ベクター及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、操作可能に所望のFc含有ポリペプチド(例えば、抗体)を核酸に連結されているプロモーターを含んでいる。プロモーター配列は、真核生物で知られている。実質的にすべての真核生物の遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25から30塩基上流に位置するATに富んだ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始点から70から80塩基上流に見いだされる別の配列はCNCAAT領域であり、ここで、Nは任意のヌクレオチドである。大部分の真核生物遺伝子の3’末端で、コード配列の3’末端にポリA尾部を追加するためのシグナルであり得るAATAAA配列である。これらの配列の全ては、適切に真核生物の発現ベクターに挿入される。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの所望のFc含有ポリペプチド(例えば、抗体)の転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルスは、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーターにより、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、または熱ショックプロモーターから、そうしたプロモーターが宿主細胞系と適合するという条件で、制御される。
SV40ウイルスの初期プロモーター及び後期プロモーターは、複製のSV40ウイルス起源をも含有するSV40制限酵素断片として都合良く得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限酵素断片として好都合に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを用いて哺乳動物宿主でDNAを発現させるためのシステムは、米国特許第4419446号に開示されている。このシステムの改変は、米国特許第4601978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下で、マウス細胞におけるヒトβインターフェロンのcDNAの発現に関しては、Reyes et al.,Nature 297:598−601(1982)を参照。あるいは、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復をプロモーターとして使用することができる。
v.エンハンサーエレメント成分
所望のFc含有ポリペプチド(例えば、抗体)をコードするDNAの高等真核生物による転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって高めることができる。多くのエンハンサー配列が現在哺乳動物遺伝子(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、及びインスリン遺伝子)から知られている。また、真核細胞ウイルスからのエンハンサーを使用する場合がある。例としては、複製起点の後期側(bp100−270)にSV40エンハンサーを、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサーを、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサーを、及びアデノウイルスエンハンサーを含む。真核生物プロモーターの活性化を増強するための要素の説明については、Yaniv,Nature 297:17−18(1982)も参照。エンハンサーは、増強が達成されることを条件として、抗体ポリペプチドをコードする配列に対して5’又は3’の位置で、しかし一般的にはプロモーターから5’位に位置しているベクター中にスプライシングされ得る。
vi.転写終結成分
真核生物宿主細胞中で用いられる発現ベクターは、典型的には、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含むであろう。そのような配列は、真核生物又はウィルスのDNA或いはcDNAの非翻訳領域の5’から、場合によっては3’から一般的に利用可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分において、ポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンのポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号及びそこに開示される発現ベクターを参照。
vii.宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書におけるベクター中でのDNAのクローニング又は発現用に適した宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞を含む本明細書に記載の高等真核細胞が含まれる。培養液(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は日常的な手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS−7、ATCC CRL1651)によって形質転換されたサル腎臓V1株;ヒト胚腎臓株(懸濁培養液中での増殖のためにサブクローン化された293細胞又は293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc. Natl.Acad. Sci. USA 77:4216(1980));マウスのセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol. Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞が上述の例えば所望のFc含有ポリペプチド(抗体)産生のための発現ベクター又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修飾された従来の栄養培地で培養される。
viii宿主細胞を培養する
本発明の所望のFc含有ポリペプチド(例えば、抗体)を生成するために使用される宿主細胞は種々の培地において培養され得る。市販で入手可能な培地が、例えばHam’s F10(Sigma)、基礎培地((MEM),(Sigma),RPMI−1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM),Sigma)などが本宿主細胞の培養用に適している。更に、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;又は同第5,122,469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許Re.30,985号に記載される任意の培地が本宿主細胞用の培養培地として使用され得る。任意のこれらの培地は、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子など)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(ゲンタマイシンTM薬)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在すると定義される無機化合物)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な栄養補助剤もまた、当業者に知られている適当な濃度で含まれていてもよい。培養条件、例えば、温度、pH等は、発現のために選択された宿主細胞で以前に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
ix.ヘテロ多量体タンパク質の精製
組換え技術を使用するとき、Fc含有ポリペプチドは細胞内に産生され、又は直接培地に分泌することができる。Fc含有ポリペプチドが、第一工程として、細胞内に産生されると、宿主細胞又は溶解された断片の何れかの粒状破片は、例えば遠心分離または限外濾過によって除去される。Fc含有ポリペプチドが培地に分泌される場合、その発現系からの上清は、一般にまず最初に、例えば、アミコン又はミリポアペリコン限外濾過ユニットなど、市販のタンパク質濃度フィルターを使用して濃縮される。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために以上の工程の何れかに含まれ、そして抗生物質が、外来性の汚染物の増殖を防止するために含まれ得る。
細胞から調製されたヘテロ多量体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを用いて精製することができ、とりわけ親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAが、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づいた抗体の精製に用いることができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。プロテインGがマウスの全アイソタイプ及びヒトγ3について推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが付着したマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスは利用可能である。制御された細孔ガラス(controlled pore glass)などの機械的に安定したマトリックス、又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成することができるよりもより速い流速とより短い処理時間を可能にする。抗体が、CH3ドメインを含有する場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が精製のために有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのヘパリンSEPHAROSETMクロマトグラフィー上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿もまた回収する抗体に依存して利用できる。
任意の予備的精製工程に続いて、目的の抗体と夾雑物を含む混合物は、pHが約2.5から4.5の間での溶出バッファーを使用して、低いpHの疎水性相互作用クロマトグラフィーに供され、好ましくは低塩濃度(例えば約0−0.25Mの塩)で実施され得る。ヘテロ多量体タンパク質の産生は、(前述の特定の方法の何れかに対して)別法で又は付加的に、ポリペプチドの混合物を含む溶液を透析することを含む。
x.バキュロウイルスを使用する抗体産生
組換えバキュロウイルスは、抗体又は抗体断片をコードするプラスミドとBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)は、例えば、リポフェクチン(GIBCO−BRLから市販される)を使用して、ヨトウガ細胞(例えば、Sf9細胞;ATCC CRL1711)などの昆虫細胞、又はキイロショウジョウバエS2細胞に同時導入することにより生成することができる。特定の実施例において、抗体配列が、バキュロウイルス発現ベクター内に含まれるエピトープタグの上流に融合される。このようなエピトープタグは、ポリHisタグを含める。pVL1393(Novagen)又はpAcGP67B(Pharmingen)などの市販のプラスミド由来のプラスミドを含む、様々なプラスミドを用いることができる。簡潔には、抗体又はその断片をコードする配列は、その5’および3’領域に相補的なプライマーを用いてPCRにより増幅することができる。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を組み込むことができる。生成物は、次いで選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされ得る。
発現ベクターによるトランスフェクションの後、宿主細胞(例えば、Sf9細胞)は、28℃で4−5日間インキュベートされ、放出されるウイルスは回収され、更なる増幅するために使用される。ウイルス感染及びタンパク質の発現は、例えば、O’Reilley et al.(Baculovirus expression vectors:A Laboratory Manual.Oxford:Oxford University Press(1994))により説明したように実行され得る。
次いで、発現されたポリHisタグ付き抗体を、例えば、NI2+−キレート親和性クロマトグラフィーにより以下のとおり精製する。Rupert et al.(Nature 362:175−179(1993))により説明されるように、抽出物を組換えウイルスに感染したSf9細胞から調製することができる。簡潔には、Sf9細胞が洗浄され、超音波処理バッファ−(25mL HEPES pH 7.9;12.5mM MgCl2;0.1mM EDTA;10%グリセロールl;0.1% NP−40;0.4M KCl)に再懸濁され、氷上で20秒間2回超音波処理される。超音波処理物を遠心分離によって除去し、上清を添加液(50mM phosphate;300mM NaCl;10%グリセロールpH7.8)で50倍に希釈し、0.45μmのフィルターを介して濾過する。Ni2+−NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)が、5mLのベッドボリュームで調製され、25mLの水で洗浄し、25mLの添加液で平衡化される。濾過された細胞抽出物が毎分0.5mlでカラムにロードされる。カラムを添加液によりベースラインA280まで洗浄し、その時点で分別捕集を開始する。次に、カラムを2次洗浄バッファー(50mMのリン酸、300mMの塩化ナトリウム、10%グリセロールでpH6.0)で洗浄し、非特異的に結合したタンパク質を溶出する。A280ベースラインに再び到達後、カラムは、二次洗浄バッファーで0から500mMのイミダゾール勾配で展開される。1mLの分画が収集され、SDS−PAGE、銀染色又はアルカリホスファターゼコンジュゲートしたNi2+−NTAを用いたウェスタンブロットにより分析される(Qiagen)。溶出したHis10タグ付き抗体を含む画分がプールされ、添加液に対して透析される。
あるいは、抗体の精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含めた公知のクロマトグラフィー技術を用いて行うことができる。一実施態様において、目的の抗体は、カオトロピック剤又は中性洗剤を含有する溶液中への溶出により、カラムの固相から回収することができる。典型的なカオトロピック剤及び中性洗剤としては、限定されないが、グアニジン塩酸、尿素、リチウム過塩素酸塩(perclorate)、アルギニン、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、Tween、トリトン、及びNP−40を含み、それらの全ては市販に入手可能である。
IV.ヘテロ多量体タンパク質の形成/構築
完全なヘテロ多量体タンパク質の形成は、本発明において再フォールディングと呼ばれている、ジスルフィド結合の形成により第一のFc含有ポリペプチド及び第二のFc含有ポリペプチドの再構築が含まれる。再フォールディングは、第一のFc含有ポリペプチドの第二のFc含有ポリペプチドとの会合、及び鎖間ジスルフィド結合の形成を含む。再フォールディングはまた、再生とも呼ばれ、本発明においてはインビトロで行われる。
宿主細胞は、別々の培養として、又は、単一培養のいずれかとして、上記の方法を用いて培養することができる。一つの方法において、第一宿主細胞と第二宿主細胞は、同じ培養容器で増殖される(時には共培養又は混合培養とも称される)。別の方法において、第一及び第二の宿主細胞は、別々の培養容器で増殖される。一つの方法において、別々の培養液は別々に処理され、次いで細胞膜の破壊に先だって、混合され/組み合わされる。一つの方法において、別々の培養液は混合され、次いで細胞膜の破壊に先だって処理される。一つの方法において、別々の培養液は、細胞膜の破壊に先だって更に処理されること無く、混合される。一つの方法において、第一宿主細胞及び第二宿主細胞を含む単一培養液が、細胞膜の破壊に先だって処理される。その他の方法において、共培養された細胞は細胞膜の破壊に先だって処理されない。細胞の処理は、遠心分離及び適切な緩衝液中(例えば、抽出緩衝液)での再懸濁を含む。
抽出緩衝液は当技術分野で知られており、当業者は、過度の実験によらず使用する緩衝液を決定することができるであろう。
宿主細胞膜は、当技術分野で公知の方法を用いて破砕する。そのような方法は、細胞膜の透過処理及び細胞膜の分解を含む。細胞膜の透過処理は、例えば、細胞が生きたままでいるように膜全体の完全性を破壊することなく、穴を導入することによって、膜を「漏れやすい」状態にすることを指す。言い換えれば、透過処理は、細胞膜を通過する高分子の移動を与え、細胞の生存を存続させるのを可能にするために十分な細胞構造を維持する。これとは対照的に、細胞膜の崩壊は、細胞内容物を細胞外環境に放出し、細胞死に至る。
細胞膜を破壊するための方法としては、限定されないが、酵素的溶解、超音波処理、浸透圧ショック、マイクロフルイダイザーの通過、EDTAの添加、種々の界面活性剤、溶媒(例えば、トルエン、ジメチルスルホキシド等)、界面活性剤(例えば、トリトンX−100、Tween 20等)、低張バッファーの使用、凍結/解凍技術、エレクトロポレーションの使用、ステンレス鋼のボールホモジナイザーの通過を含む。
Fc含有ポリペプチドが(透過処理又は崩壊のどちらかによって)細胞から放出された後、ヘテロ多量体化ドメインは、ヘテロ多量体タンパク質の会合を促進するであろう。会合したFc含有ポリペプチドの鎖間ジスルフィド形成が、還元剤を添加若しくは添加せずに進行する場合がある。得られたジスルフィド結合化ヘテロ多量体タンパク質は、その後精製される。任意で、それを、研究、診断、治療又は他の目的のために処方することができる。
V.標的分子
本発明のヘテロ多量タンパク質により標的とすることができる分子の例としては、限定されないが、水溶性の血清タンパク質及びそれらの受容体及び他の膜結合タンパク質(例えば、アドヘシン)を含む。
他の実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、BMPl、BMP2、BMP3B(GDFlO)、BMP4、BMP6、BMP8、CSFl (M−CSF)、CSF2(GM−CSF)、CSF3(G−CSF)、EPO、FGFl (aFGF)、FGF2(bFGF)、FGF3(int−2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST−2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNAl、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNBl、IFNG、IFNWl、FELl、FELl(EPSELON)、FELl(ZETA)、ILlA、ILlB、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、ILIl、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、LTA(TNF−b)、LTB、TNF(TNF−a)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4−1BBリガンド)、TNFSFl0(TRAIL)、TNFSF1l(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM−L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、HGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、ILlR1、IL1R2、IL1RL1、LL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、ILl0RA、ILl0RB、IL1lRA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、ILlRAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、ILlRN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIFl、HGF、LEP(レプチン)、PTN、およびTHPOからなる群から選択される1、2またはそれ以上のサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質およびサイトカインレセプターを結合することができる。
他の実施態様では、標的分子は、CCLl(I−309)、CCL2(MCP−1/MCAF)、CCL3(MIP−Ia)、CCL4(MIP−Ib)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP−3)、CCL8(mcp−2)、CCLH(eotaxin)、CCL13(MCP−4)、CCL15(MIP−Id)、CCL16(HCC−4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MDP−3b)、CCL20(MIP−3a)、CCL21(SLC/exodus−2)、CCL22(MDC/STC−I)、CCL23(MPIF−I)、CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン−3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CXCLl(GROl)、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GR03)、CXCL5(ENA−78)、CXCL6(GCP−2)、CXCL9(MIG)、CXCL1O(IP 10)、CXCL11(I−TAC)、CXCL12(SDFl)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL1(SCYDl)、SCYEl、XCLl(リンホタクチン)、XCL2(SCM−Ib)、BLRl(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCRl(CKRl/HM145)、CCR2(mcp−lRB/RA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR−L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBIl)、CCR8(CMKBR8/TERl/CKR−Ll)、CCR9(GPR−9−6)、CCRLl(VSHKl)、CCRL2(L−CCR)、XCRl(GPR5/CCXCRl)、CMKLRl、CMKORl(RDCl)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCRlO)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR−L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/ボンゾー)、HM74、IL8RA(IL8Ra)、IL8RB(IL8Rb)、LTB4R(GPR16)、TCPlO、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5R1、CSF3、GRCClO(ClO)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HDFlA、DL8、プロラクチン、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREMl、TREM2およびVHLからなる群から選択される、ケモカイン、ケモカインレセプターまたはケモカイン関連タンパク質である。
他の実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、ABCFl;ACVRl;ACVRlB;ACVR2;ACVR2B;ACVRLl;AD0RA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIFl;AIGl;AKAPl;AKAP2;AMH;AMHR2;ANGPTl;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOCl;AR;AZGPl(亜鉛−a−糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF(BLys);BAGl;BAIl;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLRl(MDR15);BMPl;BMP2;BMP3B(GDFlO);BMP4;BMP6;BMP8;BMPRlA;BMPRlB;BMPR2;BPAGl(プレクチン);BRCAl;C19orflO(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANTl;CASP1;CASP4;CAVl;CCBP2(D6/JAB61);CCLl(1−309);CCLIl(エオタキシン);CCL13(MCP−4);CCL15(MIP−Id);CCL16(HCC−4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP−3b);CCL2(MCP−1);MCAF;CCL20(MIP−3a);CCL21(MTP−2);SLC;exodus−2;CCL22(MDC/STC−I);CCL23(MPIF−1);CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン−3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MTP−Ia);CCL4(MDP−Ib);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL8(mcp−2);CCNAl;CCNA2;CCNDl;CCNEl;CCNE2;CCRl(CKRl/HM145);CCR2(mcp−lRB/RA);CCR3(CKR3/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR−L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKR7/EBIl);CCR8(CMKBR8/TERl/CKR−Ll);CCR9(GPR−9−6);CCRLl(VSHKl);CCRL2(L−CCR);CD164;CD19;CDlC;CD20;CD200;CD22;CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD52;CD69;CD72;CD74;CD79A;CD79B;CD8;CD80;CD81;CD83;CD86;CDHl(Eカドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKNlA(p21Wapl/Cipl);CDKNlB(p27Kipl);CDKNlC;CDKN2A(P16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CERl;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン−7);CLN3;CLU(クラステリン);CMKLRl;CMKORl(RDCl);CNRl;COL18A1;COLlAl;COL4A3;COL6A1;CR2;CRP;CSFl(M−CSF);CSF2(GM−CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNBl(b−カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYDl);CX3CR1(V28);CXCLl(GROl);CXCL10(IP−10);CXCLIl(I−TAC/IP−9);CXCL12(SDFl);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA−78/LIX);CXCL6(GCP−2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR−L2);CXCR4;CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo);CYB5;CYCl;CYSLTRl;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCLl;DPP4;E2F1;ECGFl;EDGl;EFNAl;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EPO;ERBB2(Her−2);EREG;ERK8;ESRl;ESR2;F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCERlA;FCER2;FCGR3A;FGF;FGFl(aFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int−2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST−2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR3;FIGF(VEGFD);FELl(EPSILON);FILl(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRTl(フィブロネクチン);FLTl;FOS;FOSLl(FRA−I);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEBl;GAGECl;GALNAC4S−6ST;GATA3;GDF5;GFI1;GGT1;GM−CSF;GNASl;GNRHl;GPR2(CCRlO);GPR31;GPR44;GPR81(FKSG80);GRCClO(ClO);GRP;GSN(ゲルソリン);GSTPl;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIFlA;HDPl;ヒスタミンおよびヒスタミンレセプター;HLA−A;HLA−DRA;HM74;HMOXl;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;ID2;IFN−a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNガンマ;DFNWl;IGBPl;IGFl;IGFlR;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL−I;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL−12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;ILlF10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HYl;IL1Rl;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2(ILlRN);IL2;IL20;IL20RA;IL21R;IL22;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);EL7;EL7R;EL8;IL8RA;DL8RB;IL8RB;DL9;DL9R;DLK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;IRAKI;ERAK2;ITGAl;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b4インテグリン);JAGl;JAKl;JAK3;JUN;K6HF;KAIl;KDR;KITLG;KLF5(GCボックスBP);KLF6;KLKlO;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KHTHB6(毛特異的タイプHケラチン);LAMAS;LEP(レプチン);Lingo−p75;Lingo−Troy;LPS;LTA(TNF−b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;MACMARCKS;MAG又はOmgp;MAP2K7(c−Jun);MDK;MIBl;ミッドカイン;MEF;MIP−2;MKI67;(Ki−67);MMP2;MMP9;MS4A1;MSMB;MT3(メタロチオネクチン−III);MTSSl;MUCl(ムチン);MYC;MYD88;NCK2;ニューロカン;NFKBl;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR−Lingo;NgR−Nogo66(Nogo);NgR−p75;NgR−トロイ;NMEl(NM23A);N0X5;NPPB;NROBl;NR0B2;NRlDl;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR1I2;NR1I3;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRPl;NRP2;NT5E;NTN4;ODZl;OPRDl;P2RX7;PAP;PARTl;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PDGFA;PDGFB;PECAMl;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDCl;PPBP(CXCL7);PPID;PRl;PRKCQ;PRKDl;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA;PTAFR;PTEN;PTGS2(COX−2);PTN;RAC2(p21Rac2);RARB;RGSl;RGS13;RGS3;RNFIlO(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYEl(内皮性単球活性化サイトカイン);SDF2;SERPINAl;SERPINA3;SERP1NB5(マスピン);SERPINEl(PAI−I);SERPDMF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPPl;SPRRlB(Sprl);ST6GAL1;STABl;STAT6;STEAP;STEAP2;TB4R2;TBX21;TCPlO;TDGFl;TEK;TGFA;TGFBl;TGFBlIl;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBRl;TGFBR2;TGFBR3;THlL;THBSl(トロンボスポンジン−1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie−1);TMP3;組織因子;TLRlO;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TNF;TNF−a;TNFAEP2(B94);TNFAIP3;TNFRSFIlA;TNFRSFlA;TNFRSFlB;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSFlO(TRAIL);TNFSFl 1(TRANCE);TNFSF12(APO3L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM−L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSF8(CD30リガンド);TNFSF9(4−1BBリガンド);TOLLIP;Toll様レセプター;TOP2A(トポイソメラーゼEa);TP53;TPMl;TPM2;TRADD;TRAFl;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREMl;TREM2;TRPC6;TSLP;TWEAK;VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;VLA−4;XCLl(リンホタクチン);XCL2(SCM−Ib);XCRl(GPR5/CCXCRl);YYl;およびZFPM2からなる群から選択される一又は複数の標的を結
合することができる。
本発明に包含される抗体に対する好適な分子標的分子には、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD16、CD19、CD20、CD34;CD64、EGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプターのようなErbBレセプターファミリのCD200メンバー;細胞接着分子、例えばLFA−1、Mac1、p150.95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、α4/β7インテグリン、およびそのαまたはβサブユニットを含むαv/β3インテグリン(例えば抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);増殖因子、例えばVEGF−A、VEGF−C;組織因子(TF);αインターフェロン(αIFN);TNFα、インターロイキン、例としてIL−1β、IL−3、IL−4、IL−5、IL−8、IL−9、IL−13、IL17A/F、IL−18、IL−13Rα1、IL13Rα2、IL−4R、IL−5R、IL−9R、IgE;血液群抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA−4;RANKL、RANK、RSV Fタンパク質、プロテインCなどが含まれる。
一実施態様において、本発明おヘテロ多量体タンパク質は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の(LRP)−1又はLRP−8、又はトランスフェリンレセプター、及び、1)β−セクレターゼ(BACE1またはBACE2)、2)α−セクレターゼ、3)γ−セクレターゼ、4)τ−セクレターゼ、5)アミロイド前駆体タンパク質(APP)、6)デスレセプター6(DR6)、7)アミロイドβペプチド、8)α−シヌクレイン、9)パーキン、10)ハンチンチン、11)p75 NTR、および12)カスパーゼ6からなる群から選択される少なくとも一の標的に結合する。
一実施態様では、本発明のヘテロ多量体複合体は、IL−lαおよびIL−lβ、IL−12およびIL−18;IL−13およびIL−9;IL−13およびIL−4;IL−13およびIL−5;IL−5およびIL−4;IL−13およびIL−1β;IL−13およびIL−25;IL−13およびTARC;IL−13およびMDC;IL−13およびMEF;IL−13およびTGF−β;IL−13およびLHRアゴニスト;IL−12およびTWEAK、IL−13およびCL25;IL−13およびSPRR2a;IL−13およびSPRR2b;IL−13およびADAM8、IL−13およびPED2、IL17AおよびIL17F、CD3およびCD19、CD138およびCD20;CD138およびCD40;CD19およびCD20;CD20およびCD3;CD38およびCD138;CD38およびCD20;CD38およびCD40;CD40およびCD20;CD−8およびIL−6;CD20およびBR3、TNFαおよびTGF−β、TNFαおよびIL−1β;TNFαおよびIL−2、TNFαおよびIL−3、TNFαおよびIL−4、TNFαおよびIL−5、TNFαおよびIL6、TNFαおよびIL8、TNFαおよびIL−9、TNFαおよびIL−10、TNFαおよびIL−11、TNFαおよびIL−12、TNFαおよびIL−13、TNFαおよびIL−14、TNFαおよびIL−15、TNFαおよびIL−16、TNFαおよびIL−17、TNFαおよびIL−18、TNFαおよびIL−19、TNFαおよびIL−20、TNFαおよびIL−23、TNFαおよびIFNα、TNFαおよびCD4、TNFαおよびVEGF、TNFαおよびMIF、TNFαおよびICAM−1、TNFαおよびPGE4、TNFαおよびPEG2、TNFαおよびRANKリガンド、TNFαおよびTe38;TNFαおよびBAFF;TNFαおよびCD22;TNFαおよびCTLA−4;TNFαおよびGP130;TNFαおよびIL−12p40;VEGFおよびHER2、VEGF−AおよびHER2、VEGF−AおよびPDGF、HER1およびHER2、VEGF−AおよびVEGF−C、VEGF−CおよびVEGF−D、HER2およびDR5、VEGFおよびIL−8、VEGFおよびMET、VEGFRおよびMETレセプター、VEGFRおよびEGFR、HER2およびCD64、HER2およびCD3、HER2およびCD16、HER2およびHER3;EGFR(HER1)およびHER2、EGFRおよびHER3、EGFRおよびHER4、IL−13およびCD40L、IL4およびCD40L、TNFR1およびIL−1R、TNFR1およびIL−6RおよびTNFR1およびIL−18R、EpCAMおよびCD3、MAPGおよびCD28、EGFRおよびCD64、CSPGsおよびRGM A;CTLA−4およびBTNO2;IGF1およびIGF2;IGF1/2およびErb2B;MAGおよびRGM A;NgRおよびRGM A;NogoAおよびRGM A;OMGpおよびRGM A;PDL−IおよびCTLA−4;そして、RGM AおよびRGM Bからなる群から選択される少なくとも2の標的分子に結合する。
場合によって、他の分子にコンジュゲートした可溶性抗原ないしその断片は、抗原を生成するための免疫原として用いられうる。膜貫通分子、例えばレセプター、これらの断片(例えばレセプターの細胞外ドメイン)が免疫原として使われてよい。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使われてよい。このような細胞は、天然の供与源(例えば癌細胞株)から得られてもよいし、膜貫通分子を発現するように組換え技術によって形質移入された細胞であってもよい。抗体を調製するために有用な他の抗原およびその形態は、当業者には明らかであろう。
VI.活性のアッセイ
本発明のヘテロ多量体タンパク質は、当該分野で公知の種々のアッセイにより、それらの物理的/化学的性質及び生物学的機能について特徴づけることができる。
精製されたヘテロ多量体タンパク質は、限定されないが、N末端配列決定、アミノ酸分析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析法、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化を含む、一連のアッセイによって更に特徴づけることができる。
本発明の所定の実施態様において、本明細書にて産生された生産免疫グロブリンは、その生物学的活性について分析される。幾つかの実施態様において、本発明の免疫グロブリンはその抗原結合活性について試験される。当技術分野で知られており、本明細書で使用することができる抗原結合アッセイとしては、限定されないが、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイなどの技術を使用する任意の直接的又競合的結合アッセイを含む。例示的な抗原結合アッセイは、実施例の項で以下に提供される。
一実施態様において、本発明は、インビボにおける抗体の半減期が重要であるが、ある種のエフェクター機能(例えば補体およびADCCなど)が不要または有害である多くの用途のための望ましい候補とならしめる、全てではないが一部のエフェクター機能を有する改変抗体を意図している。所定の実施態様において、所望の特性だけが維持されていることを確実にするために、生成されたヘテロ多量体タンパク質のFc活性が測定される。インビトロ及び/又はインビボでの細胞毒性アッセイを、CDC活性及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認するために行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、ヘテロ多量体タンパク質がFcγR結合を欠くが(それゆえ、おそらくADCC活性を欠くが)、FcRn結合能力を保持していることを確認するために行うことができる。ADCC、NK細胞を媒介する初代細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet,Annu. Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロでのアッセイの一例が、米国特許第5,500,362号又は米国特許第5,821,337号に記載されている。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、Clynes et al.PNAS(USA)95:652−656 (1998)に開示されるように、インビボで、例えば動物モデルにおいて評価することができるC1q結合アッセイはまた、抗体が体C1qを結合することができないこと、したがって、CDC活性を欠いていることを確認するために行うことができる。補体活性を評価するために、CDCアッセイが、例えばGazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるように実施することができる。FcRn結合、及びインビボでのクリアランス/半減期の測定はまた、当該分野で公知の方法を用いて行うことができる。
VII.コンジュゲートタンパク質
また、本発明は、本明細書中に記載のヘテロ多量体タンパク質(例えば本明細書において記述される方法に従って作製される抗体)の何れかを含む、コンジュゲート抗体又はイムノコンジュゲート(例えば「抗体−薬剤コンジュゲート」又は「ADC)といったコンジュゲートされたタンパク質であって、このとき軽鎖または重鎖の定常領域のうちの一つが、色素又は細胞障害性剤、例えば化学療法剤、薬剤、増殖阻害性剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物又は動物の起源の酵素的に活性な毒素ないしその断片)又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)のような化学的分子にコンジュゲートしている、コンジュゲートされたタンパク質を提供する。特に、本明細書に記述されるように、ヘテロ多量体化ドメインの使用により2の異なる重鎖(HC1およびHC2)並びに2の異なる軽鎖(LC1およびLC2)を含有する抗体の構築が可能となる。本明細書に記述される方法を用いて構築されるイムノコンジュゲートは、重鎖のうちの一つ(HC1又はHC2)又は軽鎖のうちの一つ(LC1又はLC2)の定常領域にコンジュゲートした細胞障害性剤を含有してよい。また、イムノコンジュゲートがただ一つの重鎖または軽鎖に接着した細胞障害性剤を有しうるので、被検体に投与される細胞障害性剤の量は、重鎖と軽鎖の両方に接着した細胞障害性剤を有する抗体の投与と比較して低い。被検体に投与される細胞障害性剤の量を減らすことは、細胞障害性剤と関係する副作用を制限する。
細胞障害性又は細胞分裂停止性の薬剤、すなわち癌治療における腫瘍細胞を死滅させる又は阻害するための薬剤の局所的送達に抗体−薬剤コンジュゲートを用いることは(Syrigos及びEpenetos(1999)Anticancer Research 19:605−614;Niculescu−Duvaz and Springer(1997)Adv.Drg Del.Rev.26:151−172;米国特許第4975278号)、腫瘍への薬剤成分の標的送達及びそこでの細胞内集積を可能とし、これらの非コンジュゲート薬物剤の全身性投与により正常細胞並びに除去しようとする腫瘍細胞への毒性が容認できないレベルとなりうる(Baldwin等,(1986)Lancetpp.(1986年3月15日):603−05;Thorpe,(1985)「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,」、Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,A.Pincheraら.(ed.s),頁475−506)。これによって、最小限の毒性で最大限の効果を求める。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体はこの方策に有用であるとして報告されている(Rowland et al.,Cancer Immunol.Immunother.21:183−187(1986))。この方法に用いる薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビジン、メトトレキサート及びビンデジンが含まれる(Rowland等,(1986)、上掲)。抗体−毒素コンジュゲートに用いる毒素には、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、ゲルダナマイシン(Mandlerら(2000)Jour. of the Nat. Cancer Inst.92(19):1573−1581;Mandlerら(2000)Bioorganic&Med.Chem.Letters 10:1025−1028;Mandlerら(2002)Bioconjugate Chem.13:786−791)、メイタンシノイド(欧州特許第1391213号;Liu等,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623)、及びカリケアマイシン(Lode等,(1998)Cancer Res.58:2928;Hinman等,(1993)Cancer Res.53:3336−3342)などのリシン、小分子毒素などの植物毒が含まれる。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機能によりその細胞障害性及び細胞分裂停止性の効果に影響しうる。ある種の細胞障害性剤は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
免疫複合体(イムノコンジュゲート)の生成に有用な化学治療薬を本明細書中(例えば、上記)に記載した。使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP−S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6−ジイソシアネート等)、及びビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等,Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。カーボン−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
i.メイタンシン及びメイタンシノイド
幾つかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している本発明の抗体(完全長又は断片)を含んでなる。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC−3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤成分は、(i)発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化によって調製するために相対的に利用可能である(ii)抗体に対する非ジスルフィドリンカーによる共役に好適な官能基による誘導体化に従う、(iii)血漿中で安定、そして(iv)様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その作製方法及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5208020号、同5416064号、欧州特許第0425235 B1号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liu等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等,Cancer Research,52:127−131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER−2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合しているイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK−BR−3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3×105HER−2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7−メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。
抗体−メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5208020号(この開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)を参照。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞障害性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞障害性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
例えば、米国特許第5208020号又は欧州特許第0425235 B1号、Chari等,Cancer Research,52:127−131(1992)、及び米国特許出願公開2005/0169933号(これらの開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)に開示されているもの等を含め、抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体−メイタンシノイドコンジュゲートは、米国特許出願公開2005/0169933に開示されるように調製されうる。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。更なる結合基を本願明細書中に記載し、例示する。
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合を提供するN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson et al.,Biochem.J.173:723−737(1978))が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位、及びヒドロキシル基を有するC−20位で生じる。好ましい実施形態において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC−3位で形成される。
ii.アウリスタチン類及びドラスタチン類
幾つかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin)(米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含んでなる。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke等(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580−3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌性活性(Pettit等(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961−2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤成分は、ペプチジル薬剤分子のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端により抗体に接着しうる(国際公開公報02/088172)。
例示的なアウリスタチンの実施態様は、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤成分DE及びDFを含み、”Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands”,米国出願公開2005/0238649号に開示され、その開示内容は出典明記によってその全体が明示的に組み込まれる。
典型的には、ペプチドベースの薬剤成分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製されうる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知の液相合成方法に従って調製することができる(E.Schroder and K.Lubke,”The Peptides”,1巻,頁76−136,1965,Academic Pressを参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤成分は、米国特許第5635483号;同第5780588号;Pettit et al.,J.Nat.Prod.44:482−485(1981);Pettit et al.,Anti−Cancer Drug Design 13:47−66(1998);Poncet,Curr.Pharm.Des.5:139−162(1999);およびPettit,Fortschr.Chem.Org.Naturst.70:1−79(1997)の方法に従って調製されうる。また、Doronina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778−784;および”Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands” 米国出願公開20050238649も参照のこと。これらは出典明記によってその全体が本願明細書中に組み込まれる(例えば、リンカー及びモノメチルバリン化合物、例えばMMAE及びリンカーにコンジュゲートしたMMAFの調整方法を開示している)。
iii.カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した本発明の抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ−ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ1 I、α2 I、α3 I、N−アセチル−γ1 I、PSAG及びθI 1(Hinman等,Cancer Research,53:3336−3342(1993)、Lode等 Cancer Research,58:2925−2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
iv.他の細胞傷害性薬物
本発明の抗体またはここに記載の方法に従って作製された抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5−フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL−E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP−S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートを更に熟考する。
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性原子を含有してよい。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲート抗体の生産のために入手可能である。例としては、At211,I131,I125,Y90,Re186,Re188,Sm153,Bi212,P32,Pb212 及びLuの放射性同位体を含む。コンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射−又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素−19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム−90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49−57)は、ヨウ素−123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal,CRC Press 1989)に記載されている。
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン−2,6−ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等,Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。カーボン−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号参照。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等,Cancer Research,52:127−131(1992);米国特許第5208020号)。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、及びSVSB(succinimidyl−(4−ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。Applications Handbook and Catalog 2003−2004の467−498頁を参照。
v.コンジュゲート抗体の調製
本発明のコンジュゲート抗体において、抗体を、場合によってリンカーを介して、一つ以上の薬剤部分(例えば薬剤部分)、例えば抗体につき約1〜約20の部分にコンジュゲートする。コンジュゲート抗体はいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態及び試薬を用いて調製されうる:(1)共有結合による二価のリンカー試薬と抗体の求核基との反応の後に対象の部分と反応;及び(2)共有結合による二価のリンカー試薬と部分の求核基との反応の後に抗体の求核基との反応、が含まれる。コンジュゲート抗体を調製するための更なる方法は本願明細書中に記載される。
リンカー試薬は、一つ以上のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分は、6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」)、p−アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N−スクシンイミジル4(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN−スクシンイミジル(4−イオド−アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書において記述される。また、”Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands”、米国出願公開2005/0238649を参照。その内容は出典明記により本願明細書に組み込まれる。
幾つかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分には、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドなどがある。例示的なジペプチドは、バリン−シトルリン(vc又はval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(af又はala−phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)及びグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含んでなるアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸類似体、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分は設定され、特に酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性に最適化できる。
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv)抗体がグリコシル化される糖水酸基又はアミノ基。アミン、チオール及び水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分上の求電子性の群及びリンカー試薬により共有結合を形成することができる:(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物;(ii)アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド群、が含まれる。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)による処置によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲート反応を行ってもよい。ゆえに、各々のシステイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。チオールにアミンを転換させる2−イミノチオラン(トラウトの試薬)を用いてリシンを反応させることによって抗体に付加的な求核基を導入することができる。反応性のチオール基は、1、2、3、4又はそれ以上のシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然のシステインアミノ酸残基を含んでなる変異体抗体を調製する)ことによって抗体(又は、その断片)に導入されてもよい。
また、本発明のコンジュゲート抗体は、抗体を修飾して求電子性の部分を導入する(リンカー試薬又は薬剤又は抗体部分上の求核置換基と反応させることができる)ことによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬剤又は他の部分のアミン基と反応するアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元してもよい。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤又は他の部分(Hermanson,Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含んでいるタンパク質はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh,(1992)Bioconjugate Chem.3:138−146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応することができる。
同様に、部分(例えば薬剤部分)上の求核基には、限定するものではないが、以下のものを含む:反応して、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステル及びアリールヒドラジド基:(i)活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物);(ii)アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;および(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基、が含まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体−レセプターコンジュゲートを個体に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
VIII.実用性
本明細書に記載されるFc変異体ポリペプチドは、ヘテロ多量体タンパク質の生産において産業上の利用可能性を見いだしている。
本明細書中に記載のヘテロ多量体タンパク質は、例えば、インビトロ、エクスビボ及びインビボでの治療方法に用途を見出している。本発明は、これらの分子の1つまたは複数を使用することに基づく様々な方法を提供する。特定の病的状態において、ヘテロ多量体タンパク質、例えば、多重特異性を利用することが必要であるか及び/又は望ましい。本発明は、例えば、治療薬、予防薬及び診断薬として、様々な目的のために使用することができるヘテロ多量体タンパク質を提供する。例えば、本発明は、疾患を治療する方法を提供し、該方法は、治療を必要とする被検体に、本発明のヘテロ多量体タンパク質を投与することを含み、それによって疾患が治療される。本明細書に記載された本発明のヘテロ多量体タンパク質のいずれかは、本明細書に記載の治療(又は予防又は診断)の方法で使用することができる。
例えば、ヘテロ多量体タンパク質が多価である場合には、価値ある利点は、それらの抗原に対してそれらが提示する結合活性の増強である。抗原ベースに対する結合単位(すなわちFab)の本質的な高い親和性を有することに加え、正常なIgG抗体はまた、標的に対するそれらの二価結合の結果として、抗原との結合を増加させる結合活性効果を利用している。
同じ抗原分子上の2つの別々のエピトープに対するヘテロ多量体タンパク質は、(二価結合のため)強化された結合親和力の利点を与え得るだけでなく、親抗体の何れかに結合していない新規な特性を獲得し得る。従って、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、例えば、レセプター−リガンド相互作用の遮断に用途を見出している。
本明細書に記載のヘテロ多量体タンパク質はまた、一つの分子で2つの標的のシグナル伝達経路を遮断することの用途における使用を見いだしている。
IX.治療的用途
本明細書に記載の抗体又は抗体断片などのヘテロ多量体タンパク質(例えば本明細書に記述される方法に従って作製される抗体及び/又はその断片)は、治療上の適用のために使われてよい。例えば、このようなヘテロ多量体タンパク質は、前癌性、非転移性、転移性および癌性の腫瘍(例えば初期癌)を含む腫瘍の治療のため、アレルギー性または炎症性の疾患の治療のため、または自己免疫性疾患の治療のため、または、癌(例えば乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞カルチノーマ、膠腫又は卵巣癌)、アレルギー性または炎症性の疾患又は自己免疫性疾患を発症するリスクがある被検体の治療のために使われてよい。
癌なる用語は、前癌性の増殖、良性腫瘍及び悪性腫瘍を含むがこれに限らず、一まとまりの増殖性疾患を包含する。良性腫瘍は、起源の部位に限局化されたままであり、遠位部位に浸潤、侵入又は転移する能力を有していない。悪性腫瘍は、周辺の他の組織に侵入して、障害を与える。また、それらは、起源の部位から切り離れる能力を獲得し、通常はリンパ節が配置されるリンパ系や血流を介して身体の他の部位に拡がりうる(転移する)。原発性腫瘍は、それらが生じる組織の種類によって分類され、転移性腫瘍は、癌細胞が由来する組織の種類によって分類される。時間とともに、悪性腫瘍の細胞は、より異常になり、正常細胞のようではなくなる。癌細胞にみられるこの変化は、腫瘍グレードと呼ばれており、癌細胞は、十分に分化されている、中程度に分化されている、ほとんど分化されていない、又は、未分化であると表される。十分に分化した細胞はで全く正常な見かけであり、起源の正常細胞のようである。未分化な細胞は、細胞の起源を決定することがもはや不可能であるほど異常となっている細胞である。
腫瘍は固形腫瘍であるか、或いは非固形腫瘍又は軟組織腫瘍でありうる。軟組織腫瘍の例には、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、又はヘアリーセル白血病)、或いはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、又はホジキン病)が含まれる。固形腫瘍には、血液、骨髄、又はリンパ系以外の身体組織のあらゆる癌が含まれる。固形腫瘍は更に、上皮細胞を起源とするものと、非上皮細胞を起源とするものとに分けられる。上皮細胞固形腫瘍の例には、胃腸管、結腸、胸部、前立腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣、頭頸部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、下唇、鼻いん頭、皮膚、子宮、男性生殖器、泌尿器、膀胱、及び皮膚の腫瘍が含まれる。非上皮起源の固形腫瘍には、肉腫、脳腫瘍、及び骨腫瘍が含まれる。非上皮起源の固形腫瘍には、肉腫、脳腫瘍、及び骨腫瘍が含まれる。
上皮性癌は一般に、良性腫瘍から侵襲前段階(例えばインサイツでの癌腫)、基底膜を透過して、上皮下間質に侵入した悪性癌に発達する。
また、多選択性タンパク質複合体は治療上の適用にも用いることができ、HER2を結合する抗体は、特に、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞癌腫、膠腫又は卵巣癌を治療するために用いることができる。
本発明の組成物が投与される候補にある他の患者は、血管結合組織の異常増殖、赤瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット疾患、血液が媒介する腫瘍、頸動脈閉塞性疾患、脈絡叢血管新生、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、コンタクトレンズ疲労、角膜移植片拒絶、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、クローン病、イールズ病、流行性角結膜炎、真菌潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、過粘稠度症候群、カポシ肉腫、白血病、脂質変性、ライム病、周縁表皮剥離、モーレン潰瘍、ハンセン病以外のマイコバクテリア感染、近視、眼性新生血管疾患、視神経窩、オスラー−ウェーバー症候群(オスラー−ウェーバー−ランデュ)、骨関節炎、パジェット病、毛様体扁平部炎、類天疱瘡、phylectenulosis、多発動脈炎、レーザー後合併症、原生動物の感染、弾性線維性偽性黄色腫、翼状片角膜炎乾燥、放射状角膜切開、網膜血管新生、未熟児の網膜症、水晶体後繊維増殖、類肉腫、強膜炎、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、固形腫瘍、シュタルガルト病、スティーブンジョンソン病、上辺縁角膜炎、梅毒、全身狼瘡、テリアン周縁変性、トキソプラズマ症、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎、静脈閉塞、ビタミンA欠乏、ヴェゲナー肉芽腫、糖尿病と関係している望ましくない脈管形成、寄生虫病、異常な創傷治癒、手術、損傷又は外傷後の肥大(例えば急性の肺損傷/ARDS)、体毛成長の阻害、排卵および黄体形成の阻害、移植の阻害および子宮における胚発達の阻害を有するか、又は発症するリスクにある。
本明細書中に記載の方法に従って作製されるコイルドコイル含有抗体、テザー抗体又は抗体を用いて治療されうるアレルギー性ないし炎症性疾患または自己免疫性疾患の例には、限定するものではないが、関節炎(関節リウマチ(例えば急性の関節炎、慢性の関節リウマチ、痛風性関節炎、急性の痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、椎骨関節炎及び若年性発症関節リウマチ、骨関節炎、関節炎慢性化、関節炎変形、関節炎慢性原発、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬)、皮膚炎、例として接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、ヘルペス状の皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激物接触皮膚炎及び過敏性皮膚炎、X連鎖性過剰IgM症候群、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹、例として慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎−眼(spino−optical)MS)、一次進行性MS(PPMS)及び再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、硬化症汎発、失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、微細な大腸炎、膠原性大腸炎、大腸ポリープ、壊死性全腸炎及び経壁の大腸炎、及び自己免疫炎症性腸疾患)、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸窮迫症候群、例として成人性又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫血液疾患、リウマチ様脊椎炎、リウマチ様関節滑膜炎、突発性聴力障害、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例として、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例として、慢性又は急性の糸球体腎炎、例として原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN又は特発性膜性ネフロパシ、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、急速進行性GN、アレルギー性症状、アレルギー性反応、湿疹、例としてアレルギー性又はアトピー性湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、全身性エリテマトーデス(SLE)又は全身性ループスエリテマトーデス、例えば皮膚SLE、亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)、紅班性狼瘡汎発、ループス(例としてループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス、脱毛症ループス)、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例として小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、ヴェゲナーの肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例として血管炎、大血管性血管炎(例えば大脈管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、微小多発動脈炎、CNS脈管炎、壊死性血管炎、皮膚性血管炎又は過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎、及びANCA関連の脈管炎、例としてチャーグ−ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原−抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット又はベーチェット病、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天ぽうそう及び類天疱瘡皮膚、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡及び天疱瘡エリテマトーデスを含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、自己免疫多腺性症候群、例として多腺性症候群(又は、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として神経系新生物関連症候群、例えばランバート−イートン筋無力症症候群又はイートン―ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例として、アレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)及び感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、リンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン‐バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、原発性胆管萎縮症、肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアック病、コエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(Lou Gehrig’s disease))、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例として、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直徴候(OMS)、多発性軟骨炎、例として、抵抗性又は再発性多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症、これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び未同定の有意なモノクローナル免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、MGUS)が含まれる、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例として自己免疫脱髄性病、糖尿病性ネフロパシ、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間質性肺線維形成、間質性肺線維形成、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎、又はFuchの毛様体炎)、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウィルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンの症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血−再灌流障害、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、結節性紅斑、leprosum、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、一次特発性の粘液水腫、ネフローゼ、眼炎symphatica、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、Quervain甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体による不妊性、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタインバーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(エイズ)、寄生虫病、例えばLesihmania、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球−粘着力欠損、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、末梢性神経障害、自己免疫多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症−筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム又は好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症
候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、神経病学的疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、antgiectasis、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
治療的な使用に加えて、本発明の抗体は、本明細書中に記載の疾患および症状についての診断的方法といった診断方法を含む他の目的のために用いられうる。
X.用量、製剤および持続時間
本発明のタンパク質は、良好な医療行為に一致した形で処方され、投与量が決められ、投与される。この場合に考慮される因子には、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の被検体の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に知られている他のファクターが含まれる。投与されるタンパク質の「治療上有効量」は、このような考慮によって調整され、特定の疾患(例えば癌、アレルギーないし炎症性疾患または自己免疫性疾患)を予防するか、改善するかまたは治療するために必要な最小限量である。タンパク質は、必ずしもそうする必要はないが、場合によっては、疾患の予防又は治療のために現在使用されている一又は複数の薬剤と共に処方される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するタンパク質の量、疾患又は治療のタイプ、及び上で検討した他の因子に依存する。これらは、一般に、これまで使用されたものと同じ用量及び投与経路で、あるいはこれまで用いられた投薬量の約1から99%で使用される。一般に、癌の寛解又は治療は、癌と関係する一又は複数の症状又は医学的な問題を少なくすることを伴う。治療上有効な量の薬剤によって、以下の何れか又はいくつかが達成される。癌細胞数の(少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%以上の)減少;腫瘍サイズ又は腫瘍負担の低減又は阻害;周辺臓器への癌細胞の浸潤の阻害(すなわちある程度の減少及び/又は停止);腺腫の場合のホルモン分泌の低減;血管密度の低減;腫瘍転移の阻害;腫瘍増殖の低減又は阻害;及び/又は、癌関連の一又は複数の症状のある程度の軽減。幾つかの実施態様では、タンパク質を用いて、被検体の癌又は自己免疫性疾患の発症又は再発を防ぐ。
一実施態様では、本発明は、癌又は自己免疫性疾患に罹りやすいか又はそうと診断されたヒト被検体の生存期間を増すために用いられうる。生存期間は、薬剤の最初の投与から死亡の時と定める。また、生存期間は治療中の被検体の死亡のリスクを表す、コントロール群に対する治療群の危険率(HR)を層別化することによって測定することもできる。
更に他の実施態様では、本発明の治療法は、様々な抗癌療法にて治療される癌であると疑われるか診断された一群のヒト被検体において奏効率を有意に増加させる。奏効率は治療に反応した治療された患者の割合と定義される。一実施態様では、本発明のタンパク質と、手術、放射線療法又は一又は複数の化学療法剤を使用する本発明の併用治療法は、手術、放射線療法又は化学療法単独で治療された群と比較して治療被検体群において奏効率を有意に増大させ、該奏効率は0.005未満のχ二乗p値を有する。癌の治療における治療上の有効性の更なる測定は米国特許出願公開20050186208に記載される。
治療用製剤は、所望の純度を有する活性成分を、任意の生理的に許容される担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって、当分野で公知の標準的な方法を用いて調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences(20th edition),ed.A.Gennaro,2000,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,PA)。許容可能な担体には、生理食塩水、又はリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などのバッファ;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(およそ10未満の残基)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例として、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖、二糖および他の炭水化物、例としてグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTM又はPEGが含まれる。
場合によって、しかし、好ましくは、製剤は、薬学的に許容可能な塩、好ましくは塩化ナトリウムを、好ましくは生理的濃度で含有する。場合によって、本発明の製剤は、薬学的に許容可能な防腐剤を含有してもよい。いくつかの実施態様では、保存の濃度は、0.1から2.0%、一般的にv/vの範囲である。好適な防腐剤には製薬の分野で知られているものが含まれる。ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンは、好適な防腐剤である。場合によって、本発明の製剤は、0.005〜0.02%の濃度で、薬学的に許容可能な界面活性剤を含んでもよい。
また、本明細書中の製剤は、治療される特定の徴候の必要に応じて、一よりも多い活性な化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を有するものを含有してもよい。そのような分子は意図する目的に有効な量で適切に組み合わせる。
活性成分はまた、コロイド性薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロカプセル、ミクロエマルション、ナノ−粒子、およびナノカプセルなど)又はマクロエマルション中、例えば、それぞれ、コアセルベーション法又は界面重合法によって製造された、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシラート)(poly−(methylmethacylate)マイクロカプセルに取込むことができる。このような技術は、上掲のRemington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて開示される。
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例には、ヘテロ多量体タンパク質を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルムやマイクロカプセル等の成形品の形である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタマートの共重合体、非−分解性エチレン−ビニルアセテート、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)から構成される注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化されたヘテロ多量体タンパク質が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
ここに記載のタンパク質(例えばヘテロ多量体タンパク質またはここに記載の方法に従って作製された多選択性抗体)は、ボーラスとして又はある期間の連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、包膜内、経口、局所などの投与経路又は吸入経路などの既知の方法でヒト患者に投与される。広範囲な副作用又は毒性がタンパク質が認識する標的分子に対する拮抗作用と関係している場合、局所投与が特に望ましい。また、エクスビボ方策が医療適用のために用いられてもよい。エクスビボ方策は、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを被検体から得られる細胞に形質移入させるか又は形質導入させることを伴う。形質移入させるか又は形質導入させた細胞は、次いで被検体に戻される。細胞は、造血性細胞(例えば骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞又はB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチン合成細胞又は筋細胞を含むが、これらに限定されるものではない様々な範囲のいずれかでありうる。
一例では、タンパク質(例えばヘテロ多量体タンパク質、またはここに記載の方法に従って作製された多選択性抗体)は、疾患又は腫瘍の位置が許す限り、例えば直接注射によって局所的に投与され、この注射は周期的に繰り返されうる。また、タンパク質複合体は、局所の再発又は転移を予防するかまたは低減するために、被検体に全身的に、又は腫瘍細胞、例えば腫瘍の外科的切除後の腫瘍又は腫瘍巣に直接、送達されてよい。
XI.製造品
本発明の他の実施態様は、本明細書中に記載の一又は複数のタンパク質複合体と疾患(例えば自己免疫性疾患または癌)の治療または診断に有用な材料を具備する製造品である。製造品は、容器と容器上ないしは容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な物質から形成されうる。容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成されてよい。容器は、症状の治療に有効である組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性薬剤は本発明のヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体又は抗体断片)である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が特定の疾患の治療に用いられることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物は更に、ヘテロ多量体タンパク質の組成物を被検体に投与するための指示を含む。また、本明細書中に記載の併用治療薬を含む製造品及びキットも考慮される。
パッケージ挿入物は、慣習的に治療用製品の市販パッケージに含まれる指示書を指し、効能、使用、用量、投与、禁忌及び/又はこのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含むものである。ある実施態様では、パッケージ挿入物は、組成物が、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞癌腫、膠腫又は卵巣癌の治療のために用いられることを示す。
さらに、製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
また、様々な目的、例えば抗原(例えばHER2またはEGFR)を細胞から精製する又は免疫沈降するために有用なキットが提供される。抗原(例えばHER2またはEGFR)の単離又は精製のために、キットは、ビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合したヘテロ多量体タンパク質(例えばEGFR/HER2抗体)を含みうる。例えば、ELISA又はウエスタンブロットにおいて、抗原をインビトロで検出及び定量するためのヘテロ多量体タンパク質を具備するキットが提供されうる。製造品と同様に、キットは、容器と容器上ないしは容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。容器は、本発明の少なくとも一のヘテロ多量体タンパク質(例えば、多選択性抗体又は抗体断片)を含む組成物を収容する。例えば希釈剤及びバッファ又はコントロール抗体を具備する他の容器が具備されてよい。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物の説明並びにインビトロでの使用又は診断上の使用についての指示を提供してよい。
前述の記載は当業者が本発明を実施するために十分であるとみなされる。以下の実施例は、事例のためだけであって、本発明の権利範囲が制限されるものでは決してない。事実、本明細書に示したもの及び記載内容に本発明の様々な変更が加わることは、前述の記載から当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲内のものである。
後の実験の開示において;以下の略語が適用される:当量(当量);M(モル);μM(マイクロモル);N(正常);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒);ADCC(抗体依存性細胞傷害));BsAb(二重特異性抗体);CL(軽鎖の定常ドメイン);CH(重鎖の定常ドメイン);CMC(補体媒介性細胞傷害)のFab(抗原結合断片);Fc(結晶化断片);FV(可変断片(VL+VH));EGFR(上皮成長因子受容体);HC(重鎖);IGFR(インスリン様成長因子受容体);LC(軽鎖);scFv(単鎖可変断片(アミノ酸リンカーによって繋がったVLおよびVH);VEGF(血管内皮増殖因子);VEGFR2(血管内皮増殖因子受容体2);VH(可変重鎖ドメイン);VL(可変軽鎖ドメイン)。
第一の実施態様において、野生型FcポリペプチドのFc変異体を含む変異体ヘテロ多量体タンパク質が与えられる。様々な実施態様において、Fc変異体は、前記野生型FcポリペプチドのFc領域において、少なくとも一、二、三、四、五、六、七、八、九又は十のアミノ酸修飾を含み、野生型Fcポリペプチドと比較した場合に、誤対合(例えばノブ/ノブ対合)の減少、頭尾形成の減少、又は全収率の増加を示す変異体タンパク質を生じる。幾つかの実施態様において、Fc変異体は、本明細書に記載されるようにホモダイマーの形成を破壊することができる二、三、又は四のアミノ酸修飾を含む。幾つかの実施態様において、Fc変異体は、少なくとも一つの重鎖の残基241及び243で、野生型Fcポリペプチドに存在するものと異なるアミノ酸との置換を含む。幾つかの実施態様において、少なくとも一つの重鎖の変異は、F241R/F243S及びF241S/F243Rから選択される。幾つかの実施態様において、Fc変異体は、ノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)修飾(複数)を更に含む。
一実施態様において、第一のFcポリペプチド及び/又は第二のFcポリペプチドの界面が、少なくとも一つの重鎖の残基241及び243で、野生型Fcポリペプチドに存在するものと異なるアミノ酸との置換を含むように変異されている。幾つかの実施態様において、少なくともFcポリペプチド、例えば一つの重鎖における変異は、F241R/F243S及びF241S/F243Rから選択される。幾つかの実施態様において、Fc変異体は、ノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)修飾(複数)を更に含む。