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JP2013139286A - 植物由来のポリオレフィンを含有する膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ - Google Patents

植物由来のポリオレフィンを含有する膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ Download PDF

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JP2013139286A
JP2013139286A JP2012000641A JP2012000641A JP2013139286A JP 2013139286 A JP2013139286 A JP 2013139286A JP 2012000641 A JP2012000641 A JP 2012000641A JP 2012000641 A JP2012000641 A JP 2012000641A JP 2013139286 A JP2013139286 A JP 2013139286A
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Makoto Umetani
梅谷  誠
Yasuo Sakashita
保夫 坂下
Yuya Tayasu
祐也 田安
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Abstract

【課題】カーボンオフセット性を有し、耐久性及び操作性が良好で、キャップ取付け工程でのキャップの移送性が良好な、膜状ヒンジ機構を備える樹脂製ヒンジキャップを提供すること。
【解決手段】キャップ本体、オーバーキャップ、及び、キャップ本体とオーバーキャップを揺動可能に連結する膜状ヒンジ機構を備え、かつ、ASTM D6866-11によるモダン炭素比率が56.7〜118pMCのポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体成形されたヒンジキャップであって、
膜状ヒンジの端部の厚みが中央部の厚みより大きく、膜状ヒンジの厚みが最小となる位置が記中央部と端部との間に存在し、かつ、ヒンジ機構が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる、植物由来のポリオレフィンを含有し、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
【選択図】図2

Description

本発明は、容器から取り外すことなく容器の内容物を注出することのできるキャップに関し、特に、カーボンオフセット性で温室効果ガスの排出削減に寄与するとともに、キャップに用いられるヒンジ機構に特徴を有する、ポリオレフィンを含有する合成樹脂材料から一体に成形された膜状ヒンジを備えるヒンジキャップに関する。
物品または材料の保管、または輸送には、容器が用いられることが通常である。容器の内容物としては、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、ゼリー等の粘稠な液状物、ジュース、酒類等の比較的流動性が高い液状物、粉粒体など多様なものがある。容器の形状は、全体形状及び部分形状において、多種多様なものがあり、容器の材料としては、金属、合成樹脂、ゴム、紙、陶磁器、ガラスなどが使用され、これらの複合材や積層体も使用される。
例えば、合成樹脂材料製容器としては、合成樹脂材料製の筒状のパリソンを押し出し、続いて、成形金型内で容器の形状にブロー成形されて得られるダイレクトブロー成形容器や、射出成形により得られる射出成形容器などが知られている。合成樹脂材料製容器の層構成としては、単層の容器または多層の容器があり、合成樹脂材料としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミドなどが用いられている。多層の合成樹脂材料製容器としては、表層(外層及び/または内層)として、ポリオレフィンを使用し、中間層に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのバリア層を備えた多層構造のものが広く使用されている。
金属製容器としては、アルミニウム、スチール等の金属薄板を巻き回して略円筒状としたものや、金属厚板を略コップ状に深絞り成形したものなどがある。また、紙製容器としては、板状紙材を巻き回して略円筒状や角柱状としたものなどがある。
〔容器リサイクル〕
これら各種容器は、容積比で家庭ゴミの過半を占めることや、循環型社会構築の世論の高まりにより、リサイクルや分別処理が進んでいる。容器包装リサイクル法や資源有効利用促進法の制定も相まって、アルミニウム容器やPETボトル等のリサイクル率は向上し、資源の再利用率も向上している。
これら容器としては、胴部に比較して小径の首部(以下、「口頚部」ということがある。)を備える容器(「瓶」ということもある。)が広く知られており、通例、天部(瓶を正立させた場合の上方部をいう。)に、内容物を充填したり、注出したりするための開口部を有する。該開口部には、容器の首部(口頚部)と略同径の蓋またはキャップ(以下、総称して、「キャップ」ということがある。)が取り付けられる。キャップの材料としては、金属、合成樹脂、紙等、またはこれらの複合材や積層材が使用されており、合成樹脂としては、ポリオレフィンが広く使用されている。キャップも、前記の容器包装リサイクル法によるリサイクルの対象であるが、資源の再利用は容器本体ほど進んでおらず、例えば、合成樹脂材料製のキャップは、最終的に燃焼処理されることも少なくない。
〔カーボンオフセット〕
ポリオレフィン等の合成樹脂材料製のキャップを始め、有機物であるポリオレフィン等の合成樹脂を燃焼させると、二酸化炭素が発生する。二酸化炭素は、地球環境を温暖化するガス、すなわち温室効果ガス(「グリーンハウスガス」ともいう。)の一つであり、人による産業活動とともに増え続け、特に産業革命以後、急増し続けている。人の生存が持続可能な地球環境を維持するために、二酸化炭素については、地球の海や大気に循環する二酸化炭素の総量を現在以上に増やさない理念が共有されている。
現在、合成樹脂材料のほとんど、例えばポリオレフィン等は、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料由来の化合物を出発原料として使用して製造されたものが使用されている。化石燃料は、周知のとおり、長年月の間、地中に固定されてきた炭素を含有する。化石燃料、または化石燃料由来の化合物を出発原料とする製品を燃焼させて、二酸化炭素を大気中に放出することは、地中深くに固定され、大気中には存在しなかった炭素を、二酸化炭素として急激に大気中に放出することになるので、大気中の二酸化炭素が大きく増加し、地球温暖化の原因となる。
一方、地球環境内において循環する二酸化炭素を、吸収したり有機物に変化させたりして育つ生物(植物、動物)を、地球の大気で燃やして二酸化炭素を発生しても、地球環境内に存在する二酸化炭素の循環であるので、その二酸化炭素を構成する炭素の総量には変化がない。この炭素の出入りは、炭素の相殺〔(カーボンオフセット(carbon offset) 〕または出入りのない〔カーボンニュートラル(carbon neutral) 〕の状態といわれ、地球環境内に存在する二酸化炭素を増大させるカーボンネガティブ(carbon negative)と区別される。
地球環境内で循環する二酸化炭素を構成し、現存する炭素は、再生可能な炭素(renewable carbon)、モダン炭素(modern carbon、 contemporary carbon)、バイオ起源炭素(bio-resourced carbon、 biogenic carbon)、バイオマス由来炭素( bio mass derived carbon)、グリーン炭素(green carbon)、地球環境炭素(atmospheric carbon、 environmentally friendly carbon) またはライフサイクル炭素(life-cycle carbon)等といわれ、その対極である化石燃料由来の炭素(fossil carbon、 fossil fuel based carbon、 petrochemical based carbon、 carbon of fossil origin)と区別される。
特に、植物は、地球環境内で循環する二酸化炭素を吸収し、二酸化炭素と水とを原料とする光合成反応を行い、有機体に変化させて生育する生物であることから、炭素源として注目されている。例えば、サトウキビやトウモロコシ等の植物原料から抽出する糖の発酵物またはセルロース発酵物からアルコール成分、特にエチルアルコールを蒸留分離し、その脱水反応によりアルケンであるエチレンを得て、通常の樹脂合成手段を介してエチレン系樹脂またはオレフィン系樹脂を得ることができる。この履歴を有する合成樹脂は、カーボンオフセットポリオレフィン(carbon offset polyolefin)、バイオ起源ポリオレフィン(biogenic polyolefin)または植物由来の合成樹脂(plant based resin)などといわれる。
地球環境内で循環する二酸化炭素を構成する炭素は、同位体(アイソトープ)である放射性の炭素14(「14C」ということもある。)、安定な炭素12(「12C」ということもある。)及び準安定な炭素13(「13C」ということもある。)の混合物であり、その質量比率が、12C(98.892質量%)、13C(1.108質量%)及び14C(痕跡量である1.2×10−10質量%)であることは周知である。12Cと13Cとの比率は安定している。また、放射性の14Cは、大気上層で一次宇宙線によって生成された二次宇宙線に含まれる中性子が、大気中の窒素原子(14N)に衝突することによって生成されるので、太陽の黒点活動の強弱等により若干変動するものの、常に供給され続けており、一方、半減期5730年で減少する。
地球環境内で循環する二酸化炭素を絶えず呼吸する、または、吸収して、有機体に変化させて育つ生物(植物または動物)は、その生存中、地球環境内で循環する二酸化炭素を構成する3種類の炭素同位体の質量比率を引き継ぎ続ける。生物が死滅すれば、生物内部における種類の炭素同位体の質量比率は、死滅時点の比率で固定化される。14Cの半減期は、5730年であり、これを利用して種々の試料の年代を推定する考古学的年代測定法が周知である。一方、太古に生息した生物の死滅から長期間が経過して形成された化石燃料中の14Cは、ほぼ0(測定機器の検出限界未満)とみなすことができるので、化石燃料由来の合成樹脂中の14Cは、ほぼ0とみなすことができる。
したがって、植物由来の合成樹脂と化石燃料由来の合成樹脂とは、含有される14Cの比率によって区別することが可能である。なお、生育している植物を収穫して、それを糖化してアルコールとし、その脱水反応によるアルケンであるエチレンを原料として、通常の樹脂合成手段を介して植物由来の合成樹脂とするまでの時間は、数か月間程度で、14Cの半減期5730年からみれば、無視できるので、植物由来の合成樹脂を製造するまでのタイムラグは、植物由来の合成樹脂か、化石燃料由来の合成樹脂かの判別に、実質的な影響がない。
地球環境内で循環する二酸化炭素を構成する放射性の14Cの比率は、産業革命以来、人類が大量の化石燃料を燃焼させることで、希釈され、低減されていたが、西暦1950年以降の大気圏内核実験によって増加に転じた。すなわち、大気圏内核実験により放射性の14Cの生成量は、14Nの原子核反応による放射性の14Cの生成量を超えていた。その後、1964年の核実験停止条約により、放射性の14Cの比率は、1963年をピークとして減少に転じ、その後の原発事故等による変動があるものの、1950年における放射性の14Cの比率には至っていない。
そこで、植物由来の合成樹脂と化石燃料由来の合成樹脂との区別については、1950年時点の放射性の14Cの存在比率を参照基準とする標準化方法が知られており、米国国立標準局(NIST)による、ASTM D6866−11(Determining the Biobased Control of Solid, Liquid, and Gaseous Samples Using Radiocarbon Analysis)がある。ASTM D6866は、放射性炭素年代測定法を利用した固体・液体・気体試料中の生物起源炭素濃度を決定するASTM(米国材料試験協会;American Society for Testing and Materials)の標準規格であり、2004年に承認されて以来、改訂が重ねられ、現在の最新規格ASTM D6866−11は、2011年7月改訂のものである。
ASTM D6866−11が規定する原理は、概略以下のとおりである。すなわち、化石燃料由来の有機物質は、1950年よりはるか昔の時代に、生物(動物・植物)の死滅または刈取りがあり、そのときの炭素同位体の比率組成が固定されているので、植物由来の有機物質を構成する炭素の存在比率は0(zero)である。そこで、炭素同位体の比率組成において、安定比率である13C/12Cと、放射性の14Cとの関数で規定するモダン炭素比率(percent modern carbon:pMC)単位を用いて、化石燃料由来の有機物質のモダン炭素比率を、0pMCとする(測定機器の検出限界未満。ただし、1950年以後に行われた核実験や原発事故に由来する放射性の14Cの混入により、化石燃料由来の有機物質が、0.01〜0.03pMCを示すことがある。)。また、1950年時点の炭素存在比率の標準物質〔NISTが供給するシュウ酸(SRM4990)、または同等有機物質〕を100pMCとする。この0〜100%pMCを基準として、試料のモダン炭素比率を求めることにより、化石燃料由来の有機物質と植物由来の有機物質との割合を決定するものである。現在製造される植物由来の合成樹脂のモダン炭素比率は、1950年以降に行われた大気圏内核実験等により人為的に増加した14Cの影響により、少なくとも103pMCを下回ることはない。核実験停止条約前の1963年におけるモダン炭素比率は、118pMCであった。したがって、合成樹脂のモダン炭素比率が、103〜118pMCであれば、確実に植物由来の合成樹脂が含有されているということができる。
また、既知の植物由来の合成樹脂のモダン炭素比率の値から、該植物由来の合成樹脂と化石燃料由来の合成樹脂(モダン炭素比率は、0pMCである。)との混合物である合成樹脂材料(樹脂組成物)における植物由来の合成樹脂の含有比率を算出することができ、植物由来の合成樹脂の質量比率を、「%Corg.renew」と記載することがある。例えば、樹脂組成物における植物由来の合成樹脂(モダン炭素比率:104pMCとする。)と化石燃料由来の合成樹脂との質量比率が50:50であるときは、この樹脂組成物は50%Corg.renewであり、モダン炭素比率は52pMC(104pMC×0.50=52pMCとして計算される。)である。また、その樹脂組成物の前記の質量比率が55:45であるときは、55%Corg.renewであり、モダン炭素比率は57.2pMC(104pMC×0.55=57.2pMCとして計算される。)である。先に述べたように、植物由来の合成樹脂のモダン炭素比率は、103pMCを下回ることはないので、ある植物由来の合成樹脂と化石燃料由来の合成樹脂との混合物である合成樹脂材料(樹脂組成物)のモダン炭素比率が、56.7pMC以上であれば、植物由来の合成樹脂のモダン炭素比率が55質量%以上(56.7pMC>103pMC×0.55=56.65pMCとして計算される。)であるといえる。
植物由来の合成樹脂を使用した樹脂製品と、化石燃料由来の合成樹脂を使用した樹脂製品とは、原理的には、モダン炭素比率において相違するのみであるので、地球環境に与える影響を除くほかは、取扱いにおける変化や差異はないと考えられている。しかし、現実には、例えば、相溶性や機械的特性において差異がある場合があることも知られている(特許文献1)
〔ヒンジキャップ〕
瓶の開口部に取り付けられるキャップとしては、容器の内容物を注出するために容器から取り外すものと、容器から取り外すことなく容器の内容物を注出することができるものとがある。
容器から取り外すことなく容器の内容物を注出することのできるキャップとしては、図1に示すように、容器の口頚部に取り付けられるキャップ本体(1)、キャップ本体の天部を覆うオーバーキャップ(2)、及び、前記キャップ本体(1)に対して前記オーバーキャップ(2)を閉蓋状態と開蓋状態との間で揺動可能に連結するヒンジ機構(3)を備えるヒンジキャップが知られている。なお、通例、キャップ本体(1)の内周面には、容器の口頚部外周面と螺合するためのネジ部(1a)が設けられ、外周面には、滑り防止のためのローレット加工(「刻み加工」ともいう。図示しない。)が施されている。
ヒンジキャップは、オーバーキャップ(2)をヒンジ機構(3)の揺動軸を中心にして揺動させて開蓋状態とすることにより、図2に示すように、容器の天部に、容器の内容物を注出するための注出口(4)を形成することができる。このようなヒンジキャップは、容器の内容物を注出するに際し、キャップ全体を容器から取り外す必要がないため、近年では液体調味料等の容器のキャップとして広く用いられており、射出成形法などによりポリオレフィン等の合成樹脂材料から一体に成形することができる。
ヒンジキャップのヒンジ機構(3)としては、特許文献2に記載されるようないわゆる三点ヒンジ機構のほか、特許文献3〜6に記載される膜状ヒンジ機構などが知られている。汎用されている三点ヒンジ機構は、キャップ本体(1)に対してオーバーキャップ(2)を回動自在に支持するヒンジ本体と、該ヒンジ本体の両側に配置される一対の弾性片とを有するヒンジ機構である。
一方、膜状ヒンジのヒンジ機構(3)(以下、「膜状ヒンジ(3)」ということがある。)は、図2〜5に一例を示すように、両端部が、それぞれ対応する前記キャップ本体(1)の外周面と前記オーバーキャップ(2)の外周面に沿って連結され、キャップ本体(1)とオーバーキャップ(2)とを互いに揺動可能に接続する、薄膜状、厚膜状、フィルム状またはシート状等の、厚みに対して面積が顕著に大きい形状(以下、これらの形状を総称して「膜状」という。)を有する膜状体を、ヒンジ機構の主要部として備えるヒンジ機構である。図示した例では、膜状ヒンジ(3)は、膜状のヒンジ本体(3a)のみで構成され、三点ヒンジ機構が備える弾性片を備えない。キャップ本体(1)とオーバーキャップ(2)を揺動可能に連結する該ヒンジ本体(3a)は、厚肉部(3b)を有し、前記ヒンジ本体(3a)の両脇部(3c)から厚肉部(3b)に挟まれる領域まで延びている。膜状ヒンジ(3)は、オーバーキャップ(2)の開閉時に、後述する不安定平衡位置(死点位置)が存在するように構成され、該不安定平衡状態を挟む両側で、オーバーキャップ(2)の開放及び閉鎖に必要な弾性を発生させることができる。
すなわち、膜状ヒンジ(3)において、オーバーキャップ(2)を開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる場合、オーバーキャップ(2)が、所定位置(「死点」または「思案点」ということがある。)に達するまでは、該膜状ヒンジ(3)が徐々に伸長し、この過程では、オーバーキャップ(2)を揺動させるのに適度な抵抗を感じることとなる。オーバーキャップ(2)が思案点(死点)を越えると、膜状ヒンジ(3)はそれ自体の弾性復元力により収縮し、オーバーキャップ(2)を閉蓋状態の方向に引っ張る。オーバーキャップ(2)が、思案点(死点)を越えるときに感じる抵抗感(クリック感)や思案点から閉蓋状態に移動する際、または、思案点(死点)から開蓋状態に移動する際の動作特性(スナップ性)は、膜状ヒンジ(3)の弾性係数、寸法や伸び量等により定まる。思案点(死点)での引張力がある程度の大きさを有すると、スナップ性またはクリック感がよいとされる。思案点(死点)での引張力が小さすぎると、オーバーキャップ(2)の開閉にメリハリ感がなく、オーバーキャップ(2)を確実な閉蓋状態とすることができなくなることがある。他方、思案点(死点)での引張力が大きすぎると、オーバーキャップ(2)の開閉がしにくくなることがあり、更に、場合によっては、膜状ヒンジ(3)が破損したり、膜状ヒンジ(3)のキャップ本体(1)の外周面及び/またはオーバーキャップ(2)の外周面との連結部の近傍箇所が破損したりすることがある。
膜状ヒンジ(3)のスナップ性またはクリック感を改善または調整するために、膜状ヒンジ(3)の肉厚を不均一にしたり、膜状ヒンジ(3)の一部に厚肉部分を設けたり、また、膜状ヒンジ(3)の一部に、屈折部、薄肉部、スリットまたはたるみ等を設けたりすることが行われている。また、多くの場合、膜状ヒンジ(3)のキャップ本体(1)の外周面及び/またはオーバーキャップ(2)の外周面との連結部を厚肉部として、連結部の強度を高めることが行われている。また、膜状ヒンジ(3)は、キャップ本体(1)及び/またはオーバーキャップ(2)に近接する側と、それ以外の箇所とにおいては、伸び量や応力分布が不均一となる傾向がある。さらに、膜状ヒンジ(3)の、キャップ本体(1)及び/またはオーバーキャップ(2)との接続位置や接続部分の形状により、膜状ヒンジ(3)に捩れや局部的な応力集中が生ずることがある。膜状ヒンジ(3)の捩れ、大きな応力や応力集中は、膜状ヒンジ(3)の早期の疲れ破損の原因となり、ヒンジキャップの使用期間が短縮することがある。
膜状ヒンジ(3)の捩れを抑えるために、膜状ヒンジ(3)全体をオーバーキャップ(2)及びキャップ本体(1)の側面よりも外方に突出させたり、または、大きな応力が生じても耐久性が維持されるよう、膜状ヒンジ(3)の厚みや面積を大きくしたりすることがある。しかし、膜状ヒンジ(3)を突出させたり、膜状ヒンジ(3)の厚みや面積を大きくしたりすると、指先が膜状ヒンジ(3)に当たり、キャップの操作性を損なうという問題が生じる場合がある。
一方、ヒンジキャップは、他の多くの種類の蓋やキャップと同様に、内容物を容器に充填した容器(以下、「充填容器」ということがある。)の製造工程において、内容物を容器に充填した後に、容器の口頚部に取り付けられる。容器へのキャップの取り付け装置としては、例えば、図6に示されるような装置が知られている(特許文献7)。この装置においては、図示されないキャップ供給部(以下、「ホッパー」ということがある。)から順次送り出されてくるキャップ(c)は、傾斜したシュート等のキャップ供給手段(d)によって、整列しながら滑り移送され、受渡装置であるキャップ支持装置(D)を介して、キャッパー(e)にキャップ(c)が一個ずつ受け渡される。キャッパー(e)は、グリッパー(f)でキャップ(c)を把持し、充填容器(b)の上方に移動した後、グリッパー(f)に把持されたキャップ(c)を充填容器(b)の口頚部に当接させ、キャップ(c)を口頚部に嵌着または螺着する。次いで、通常、グリッパー(f)に把持されたキャップ(c)を回転させることにより、キャップ(c)が充填容器(b)の口頚部に螺合して口頚部に取り付けられるとともに、グリッパー(f)によるキャップ(c)の把持が開放されて、キャップ(c)が取り付けられた充填容器(b)が製造される。なお、キャップ供給手段(d)としては、図示した傾斜状のもののほかに、ほぼ垂直にキャップ(c)を供給するものや、スプロケットやギアの回転によりキャップ(c)を供給するもの、キャップ(c)を並列して移送するものやキャップ(c)を上下に積み重ねた状態で移送するものなど、種々の装置が知られており、シュート等の径、形状または長さは、種々のものが知られている。
近年、生産性向上のために、充填容器の製造装置の高速化が進み、容器へのキャップ(c)の取り付け装置も操作の高速化が求められている。それに伴い、キャップ供給手段(d)においては、キャップ(c)が、迅速かつ確実に、整列しながら移送されることが求められる。
キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)及びヒンジ機構(3)を備えるヒンジキャップは、キャップ供給手段(d)においては、通常、閉蓋状態で、供給、移送される。ヒンジキャップは、キャップ本体(1)及びオーバーキャップ(2)に加えて、キャップ本体(1)及びオーバーキャップ(2)を揺動可能に連結するヒンジ機構(3)を備えているため、通常、キャップ(c)に突出部または突起部が存在する。キャップ供給手段(d)において、キャップ(c)が、キャップ供給手段(d)の内面に接触したり、引っかかったりすることがある。また、複数のヒンジキャップのヒンジ機構(3)が相互に接触したり、引っかかったりして、迅速かつ確実な整列や移送が行われにくい場合がある。
ヒンジ機構(3)が、膜状ヒンジであるヒンジキャップについては、該膜状ヒンジ(3)全体をオーバーキャップ(2)及びキャップ本体(1)の側面の外方に突出させたり、膜状ヒンジ(3)の面積を大きくしたりすることがあるので、キャップ供給手段(d)において、キャップ(c)を、迅速かつ確実に整列しながら移送することが一層難しくなる場合がある。したがって、ヒンジ機構(3)が、膜状ヒンジであるヒンジキャップについては、指先がヒンジ機構(3)に当たって、キャップの操作性を損なうという、先に述べた問題点に加えて、ヒンジキャップの迅速かつ確実な整列や滑り移送がしにくく、キャッパー(e)に受け渡されるキャップ(c)の姿勢や位置が所定範囲外であったり、場合によっては、キャップ供給手段(d)内で、ヒンジキャップが詰まったり、キャッパー(e)へのキャップ(c)の供給が滞ることにより、充填容器(b)の製造装置が停止することがあるなどの問題点があるので、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における良好な移送性の解決も求められている。
一方、ポリオレフィン等の合成樹脂材料製容器については、容器の使用時や容器の製造時における容器内外表面の滑り性を改善するために、ポリオレフィン等の原料樹脂に、滑剤(スリップ剤)を添加することが行われている(特許文献8)。滑剤は、通常、原料樹脂に、マスターバッチ方式で添加されたり、練り込まれたりする。合成樹脂材料製容器が多層容器である場合は、表面層(最外層または最内層)に滑剤を添加することが多い。滑剤としては、例えば、脂肪酸アミドが汎用され、具体的には、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド)などが使用される。これらの滑剤は、2種以上を混合して使用することも行われてきた。
特開2011−132525号公報 特開平9−66955号公報 特公昭63−17707号公報 特開2005−8209号公報 特開2006−89068号公報 実用新案登録第2524636号公報 特開平8−119386号公報 特開平6−72422号公報
本発明の課題は、カーボンオフセット性を有し、化石燃料由来の合成樹脂を含有する合成樹脂材料から一体に成形された膜状ヒンジを備えるヒンジキャップと遜色がない成形性を有するとともに、スナップ性、耐久性及び操作性が良好で、かつ、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性が良好である、植物由来の合成樹脂を含有する合成樹脂材料から一体に成形された、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップにおいて、ヒンジ機構を形成する合成樹脂材料の組成を特定のものとするとともに、膜状ヒンジの厚みを特定のものとすることにより、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、容器の口頚部に取り付けられるキャップ本体、該キャップ本体の天部を覆うオーバーキャップ、及び、前記キャップ本体に対して前記オーバーキャップを閉蓋状態と開蓋状態との間で揺動可能に連結するヒンジ機構を備え、かつ、ASTM_D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCであるポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップであって、以下のa)〜c):
a)該ヒンジ機構は、両端部が、それぞれ対応する前記キャップ本体の外周面及び前記オーバーキャップの外周面に沿って連結される、膜状ヒンジのヒンジ機構であり、
b)該膜状ヒンジは、
b−1)端部における厚みが、膜状ヒンジの中央部における厚みより大きく、
b−2)膜状ヒンジの厚みが最小となる位置が、前記中央部と端部との間に存在し、かつ、
c)該ヒンジ機構が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる、
ことを特徴とする、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップが提供される。なお、本発明において、「合成樹脂材料から一体に成形された」とは、植物由来のポリオレフィン単独、または、植物由来のポリオレフィンと化石燃料由来のポリオレフィンに加えて、合成樹脂の成形に際して通常使用される添加剤や配合剤等を含有する合成樹脂材料(以下、「樹脂材料」または「樹脂組成物」ということがある。)から一体に成形されたことを意味する。
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(11)の膜状ヒンジを備えるヒンジキャップが提供される。
(1)前記のキャップ本体、オーバーキャップ及びヒンジ機構が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(2)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、以下の(A)、(A)及び(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(3)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(4)前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(5)前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(6)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(A11):
(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(7)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(8)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有する合成樹脂材料が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(9)前記の植物由来のポリオレフィンが、植物由来のエチレン系樹脂である前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(10)閉蓋状態で熱固定されてなる前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
(11)前記の膜状ヒンジが、厚肉部を有する前記の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
本発明によれば、容器の口頚部に取り付けられるキャップ本体、該キャップ本体の天部を覆うオーバーキャップ、及び、前記キャップ本体に対して前記オーバーキャップを閉蓋状態と開蓋状態との間で揺動可能に連結するヒンジ機構を備え、かつ、ASTM_D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCであるポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップであって、以下のa)〜c):
a)該ヒンジ機構は、両端部が、それぞれ対応する前記キャップ本体の外周面及び前記オーバーキャップの外周面に沿って連結される、膜状ヒンジのヒンジ機構であり、
b)該膜状ヒンジは、
b−1)端部における厚みが、膜状ヒンジの中央部における厚みより大きく、
b−2)膜状ヒンジの厚みが最小となる位置が、前記中央部と端部との間に存在し、かつ、
c)該ヒンジ機構が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる、
ことを特徴とする、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップであることによって、カーボンオフセット性を有し、化石燃料由来の合成樹脂を含有する合成樹脂材料から一体に成形された膜状ヒンジを備えるヒンジキャップと遜色がない成形性を有するとともに、スナップ性、耐久性及び操作性が良好で、かつ、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性が良好である、植物由来の合成樹脂を含有する合成樹脂材料から一体に成形された、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを提供することができるという効果を奏する。
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態で示す一部断面側面図である。 本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを開蓋状態で示す一部断面側面図である。 本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップの開蓋状態における平面図である。 図3のヒンジキャップの膜状ヒンジの一例を示す拡大平面図である。 膜状ヒンジの一例を示す、図4のI−I線に沿う断面図である。 容器へのキャップの取り付け装置の具体例の略図である。
I.ヒンジキャップ
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、容器の口頚部に取り付けられるキャップ本体(1)、該キャップ本体(1)の天部を覆うオーバーキャップ(2)、及び、前記キャップ本体(1)に対して前記オーバーキャップ(2)を閉蓋状態と開蓋状態との間で揺動可能に連結するヒンジ機構(3)を備える、植物由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料から一体に成形された、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップである。なお、本発明を図面を参照しつつ説明するに当たっては、図面中の番号及び記号は、先に従来技術の説明において使用した番号及び記号と同じものを用いる。
1.キャップ本体
容器の口頚部に取り付けられるキャップ本体(1)は、容器の口頚部に、嵌合または螺合により、直接取り付けられるカップ状の部材である。キャップ本体(1)は、通常、図1及び2に示すように、口頚部を囲む略円筒状の部分と、口頚部の先端面(上端)に当接する天板部分とを、更に有してもよい。天板部分の中央部には開口部が形成されており、この開口部が、容器の内容物を注出するための注出口(4)を形成する。キャップ本体(1)の天板部分には、注出口(4)を囲むようにして略円筒状部材を突設してもよく、これにより、容器の内容物を注出することが容易となる。なお、容器の内容物の腐敗防止の観点から、必要に応じて、容器の内容物が接触する天板部分の内面に、酸素ガスバリヤー性の単層または多層のシートまたはフィルム(図示せず)を配設してもよい。キャップ本体(1)の内周面に、容器の口頚部外周面と螺合するためのネジ部(1a)を設け、外周面には、滑り防止のためのローレット加工(刻み加工)を施してもよい。
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップにおけるキャップ本体(1)の大きさは特に限定されないが、通常、口頚部を囲む略円筒状の部分は、径(外径及び内径)10〜80mm、高さ5〜50mm程度の大きさであり、オーバーキャップ(2)及びヒンジ機構(3)の大きさは、キャップ本体(1)の大きさに対応して、定めることができる。
2.オーバーキャップ
キャップ本体(1)の天部を覆うオーバーキャップ(2)は、キャップ本体(1)の天板部分を覆い、注出口(4)を閉じるためのものであり、ヒンジ機構(3)を介して、キャップ本体(1)に対して揺動可能に取り付けられている。図1及び2に示すように、オーバーキャップ(2)の内面(図1の閉蓋状態のキャップ本体(1)側の面)には、閉蓋時にキャップ本体(1)の天板部分に形成した開口部に嵌合され、容器の内容物が注出口(4)から漏出することを防止する円筒状の部材を設けてもよい。また、オーバーキャップ(2)を閉蓋状態で維持するために、係止手段(図示せず)を設けてもよい。係止手段は、限定されないが、例えば、キャップ本体(1)の天板部分の外周部に係止リングを設け、オーバーキャップ(2)の内周面とが、弾性変形を利用する係止関係となるようにしてもよい。
3.ヒンジ機構
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップにおける、前記キャップ本体(1)に対して前記オーバーキャップ(2)を閉蓋状態と開蓋状態との間で揺動可能に連結するヒンジ機構(3)は、膜状ヒンジのヒンジ機構であることを特徴とする。膜状ヒンジ(3)は、両端部が、それぞれ対応する前記キャップ本体の外周面及び前記オーバーキャップの外周面に沿って連結される。
膜状ヒンジ(3)は、図3及び図4に略示したように、該膜状ヒンジ(3)の両端部がそれぞれ結合している、前記キャップ本体の外周面から前記オーバーキャップの外周面に亘って延びる膜状のヒンジ本体(3a)が、厚肉部(3b)を有するものであることが好ましい。図3及び図4に略示した例においては、厚肉部(3b)は、膜状ヒンジ(3)の両端部がそれぞれ結合するキャップ本体(1)の外周面及びオーバーキャップ(2)の外周面の略中央部(以下、「膜状ヒンジ(3)の結合部の中央部」ということがある。)に沿って設けられているが、オーバーキャップ(2)の閉蓋状態と開蓋状態との間での揺動軸方向の両端部近傍に設けることもできる。ヒンジ本体(3a)が、厚肉部(3b)を有することにより、膜状ヒンジ(3)の前記両端部の強度を確保し、また、該両端部の捩れを防止することができるが、厚肉部(3b)は必須ではない。ヒンジ本体(3a)の厚み、面積、輪郭形状及び断面形状等、並びに、厚肉部(3b)の位置、厚み、幅及び長さ(面積)、輪郭形状及び断面形状等は、適宜変更することができるが、ヒンジ本体(3a)の面積は、厚肉部(3b)の面積に対して、少なくとも10倍以上、好ましくは12倍以上、より好ましくは15倍以上であり、要するところ、ヒンジ本体(3a)は、膜状ヒンジ(3)の主要部を構成する。したがって、本発明において、膜状ヒンジ(3)の厚みとは、通常、ヒンジ本体(3a)の厚みを意味する。
4.ヒンジ本体
本発明のヒンジキャップの膜状ヒンジ(3)のヒンジ本体(3a)は、両脇部(3c)から延びてなり、該膜状ヒンジ(3)の両端部がそれぞれ結合している、キャップ本体(1)の外周面からオーバーキャップ(2)の外周面に亘って延びる膜状のヒンジ本体(3a)である。図3には、ヒンジ本体(3a)として、最も単純な輪郭形状である、邦楽で用いる鼓(つづみ)の軸線を含む断面図の形状(以下、「断面形状」ということがある。)を示している。該鼓の断面形状の軸方向の両端部〔ヒンジ本体(3a)の両脇部(3c)に相当〕は、略直線状であり、該鼓の断面形状の両側面部は、略円弧状である。該鼓の断面形状の両側面部が、膜状ヒンジ(3)の両端部であり、それぞれ対応する前記キャップ本体(1)の外周面及び前記オーバーキャップ(2)の外周面に沿い、弧をなして、連結されている。ただし、ヒンジ本体(3a)と、キャップ本体(1)の外周面及び/またはオーバーキャップ(2)の外周面との接合部の形状は、弧をなすようにする必要はなく、キャップ本体(1)またはオーバーキャップ(2)の外周面に沿う、1つまたは複数の直線状の形状を有するようにしてもよい。
膜状ヒンジ(3)のヒンジ本体(3a)の輪郭形状は、特に限定されず、種々の輪郭形状を採用することができる。例えば、前記の鼓の断面形状の両端面〔両脇部(3c)〕を凹曲面状としてもよいし、所望によっては凸曲面状としてもよい。また、膜状ヒンジ(3)のスナップ性またはクリック感を改善または調整したり、連結部の強度を高めたりするために、ヒンジ本体(3a)の肉厚を不均一にしたり、該ヒンジ本体(3a)の一部に、屈折部、薄肉部、スリットまたはたるみ等を設けたりすることができる。例えば、薄肉部の位置、大きさ、輪郭形状の如何によって、蓋を開閉するときに感じる最大引張力の大きさ、最大引張力を感じる位置、引張力を感じている時間等が変化するので、スナップ性またはクリック感を調整することができる。ヒンジ本体(3a)の輪郭形状、屈折部、スリットまたはたるみ等を変更することによっても、同様である。
さらに、膜状ヒンジ(3)のヒンジ本体(3a)の断面形状を変更することによっても、スナップ性またはクリック感を調整することができる。図5は、膜状ヒンジの一例を示す、図4のI−I線に沿う断面図である。(なお、図5は、趣旨を説明するための概念図であり、寸法や縮尺は、実寸の表記ではない。)ヒンジ本体(3a)は、キャップ本体(1)の外周面またはオーバーキャップ(2)の外周面に沿って連結する端部における厚みが、ヒンジ本体(3a)の中央部における厚みより大きい。すなわち、膜状ヒンジ(3)は、端部における厚みが、膜状ヒンジの中央部における厚みより大きい。また、ヒンジ本体(3a)の厚み、すなわち膜状ヒンジ(3)の厚みが最小となる位置が、該中央部と端部との間の位置に存在している。
膜状ヒンジ(3)の厚みであるヒンジ本体(3a)の厚みにおいて、ヒンジ本体(3a)の端部における厚みを、中央部における厚みより大きくすることにより、ヒンジ本体(3a)の応力分布が均一化され、ヒンジ本体(3a)及び膜状ヒンジ(3)の耐久性が向上する。ヒンジ本体(3a)の端部における厚みの、中央部における厚みに対する比率(以下、「端部/中央部厚み比率」ということがある。)は、いうまでもなく1より大きいが、通常1.05〜5の範囲となるようにヒンジ本体(3a)の形状を定めることが適切であり、該比率は、好ましくは1.07〜4、より好ましくは1.1〜3.5、更に好ましくは1.12〜3の範囲である。該比率が小さすぎると、膜状ヒンジ(3)の端部にかかる応力が大きくなり、ヒンジ本体(3a)及び膜状ヒンジ(3)の耐久性が低下するおそれがある。該比率が大きすぎると、ヒンジ本体(3a)の中央部が応力に耐えられず、ヒンジ本体(3a)及び膜状ヒンジ(3)の耐久性が低下するおそれがある。膜状ヒンジ(3)の端部における厚みが、膜状ヒンジ(3)の中央部における厚みより大きくないと、スナップ性またはクリック感が快いものとならず、また、連結部の強度が不足して、膜状ヒンジ(3)の早期の疲れ破損の原因となり、ヒンジキャップの使用期間が短縮することがある。
また、膜状ヒンジ(3)の厚みであるヒンジ本体(3a)の厚みが最小となる位置が、ヒンジ本体(3a)の中央部と端部との間に存在することにより、オーバーキャップ(2)を揺動させるときのスナップ性またはクリック感が良好なものとなる。すなわち、ヒンジ本体(3a)の厚みが最小となる位置、及び/または、ヒンジ本体(3a)の最小の厚みのヒンジ本体(3a)の中央部の厚みに対する比率を調整することにより、思案点における引張力を調節することができ、オーバーキャップ(2)を揺動させるときのスナップ性またはクリック感を最適なものとすることができるとともに、ヒンジキャップの耐久性が向上する。ヒンジ本体(3a)の最小の厚みの、該ヒンジ本体(3a)の中央部の厚みに対する比率(以下、「最小部/中央部厚み比率」ということがある。)は、いうまでもなく1未満であり、通常0.55〜0.9の範囲となるようにヒンジ本体(3a)の形状を定めることが適切であり、該比率は、好ましくは0.6〜0.85、より好ましくは0.62〜0.8、更に好ましくは0.65〜0.75の範囲である。該比率が小さすぎると、オーバーキャップ(2)を揺動させるときの引張力の変化がなだらかでなく、違和感を覚えることがある。該比率が大きすぎると、オーバーキャップ(2)を揺動させるときの引張力の変化が単調でスナップ性またはクリック感が良好でないことがある。ヒンジ本体(3a)の中央部と端部との間の距離に対する、ヒンジ本体(3a)の厚みが最小となる位置の、ヒンジ本体(3a)の中央部からの距離の比率(以下、「厚み最小部距離比率」ということがある。)は、0.001以上1未満であり、通常0.05〜0.95の範囲となるようにヒンジ本体(3a)の形状を定めることが適切であり、該比率は、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8、更に好ましくは0.3〜0.7の範囲である。該比率が小さすぎると、ヒンジ本体(3a)の厚みが最小となる位置が、ヒンジ本体(3a)の中央部に近接しすぎるので、オーバーキャップ(2)を揺動させるときの引張力の変化が単調でスナップ性またはクリック感が良好でないことがある。該比率が大きすぎると、ヒンジ本体(3a)の厚みが最小となる位置が、オーバーキャップ(2)を揺動させるときに大きな応力が生じるヒンジ本体(3a)の端部に近接しすぎるので、ヒンジ本体(3a)及び膜状ヒンジ(3)の耐久性が低下するおそれがある。
5.厚肉部
本発明のヒンジキャップにおける膜状ヒンジ(3)は、ヒンジ本体(3a)が、厚肉部(3b)を有するものであることが好ましい。本発明において、厚肉部(3b)とは、ヒンジ本体(3a)の平均厚みに対して、1.5倍以上の平均厚みを有する部位をいい、キャップ本体(1)及びオーバーキャップ(2)の回動が妨げられず、ヒンジ機構(3)が優れたクリック感やスナップ感及び耐久性を有するものである限り、先に述べたように、厚肉部(3b)の位置、厚み、幅及び長さ(面積)、輪郭形状及び断面形状等は、適宜変更することができる。すなわち、図3及び図4に示すように、略長方形形状の輪郭形状のほか、多角形、楕円形、円形等の輪郭形状でもよいし、断面形状は、上面が平坦な台地状でもよいし、角錐台形状でもよいし、上面が凹凸の形状でもよい。また、厚肉部(3b)の位置は、例示した膜状ヒンジ(3)の結合部の中央部のほか、該膜状ヒンジ(3)の結合部の中央部の隣接部位や、該膜状ヒンジ(3)の、オーバーキャップ(2)の閉蓋状態と開蓋状態との間での揺動軸方向の両端部近傍、これらの中間位置などとすることができる。
II.植物由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップ
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、ヒンジ機構(3)を備える、ASTM D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCであるポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップである。なお、先に述べたように、「合成樹脂材料」とは、ポリオレフィンに加えて、添加剤や配合剤等を含有する樹脂材料を意味する。
キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、ヒンジ機構(3)を形成する植物由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料の組成は、同一でもよいし、異なってもよいが、成形性や取り扱い性等の観点から、同一の組成とすることが好ましい。また、キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び/または、ヒンジ機構(3)のそれぞれについても、合成樹脂材料の組成は、同一または均一の組成であってもよいし、それぞれにおいて不均一な組成のものであってもよい。樹脂の組成が連続的に変化する、いわゆる傾斜材料であってもよい。例えば、ヒンジ機構(3)のヒンジ本体(3a)と厚肉部(3b)の組成は、同一でもよいし、異なるものでもよい。なお、キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、または、ヒンジ機構(3)は、単層でもよいし、インモールドラベル成形法などによる積層でもよい。
1.植物由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、ASTM D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCであるポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体に成形されたものである。
一般に、植物由来の合成樹脂は、2つに大別される。第一は、トウモロコシに由来する乳酸から得られる生分解性樹脂であるポリ乳酸、ひまし油に由来するセバシン酸を使用して得られるナイロン610、ポリウレタン、セルロースを塩基性溶液で分解して得たグルコースに由来する1,3−プロパンジオールを使用して得られるポリトリメチレンテレフタレートなど、従来からの石油化学を利用して人工的に合成することが困難である植物由来の化合物を出発原料に用いて得られる合成樹脂である。第二は、従来からの樹脂合成プロセスを用いる製造プラントを利用して人工的に合成することができる化合物、例えば化石燃料由来のアルコールの脱水反応を介するアルケンを、植物由来の化合物である原料、例えば植物由来のアルコールの脱水反応を介するアルケンに置き換える出発原料を用いて得られる合成樹脂である。例えば、サトウキビやトウモロコシ等の植物原料から抽出する糖の発酵物またはセルロース発酵物から得たエチルアルコールを用いて、アルコール脱水反応を介して植物由来のエチレンやプロピレンを製造し、該植物由来のエチレンやプロピレンを出発原料に用いて得られるポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂であり、生分解性がない合成樹脂である。後者は、化石燃料由来のカーボンネガティブな合成樹脂を、植物由来のカーボンニュートラルな、またはカーボンオフセットに寄与する合成樹脂に転換することとなるので、地球温暖化対策として好ましい。
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、植物由来の合成樹脂として、入手の容易性、成形性、機械的特性、及び、ヒンジキャップに求められる特性の観点、並びに、カーボンオフセットへの寄与の観点から、植物由来のエチレン系樹脂や植物由来のプロピレン系樹脂等の植物由来のポリオレフィン、好ましくは植物由来のエチレン系樹脂を使用するものである。
〔植物由来のポリオレフィン〕
本発明の膜状ヒンジを備えるヒンジキャップに含有することができる植物由来のポリオレフィンは、植物由来のエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等の植物由来アルケンのオレフィン系単量体の単独重合体または共重合体である。
〔植物由来のエチレン系樹脂〕
また、植物由来のエチレン系樹脂は、植物由来のエチレンの単独重合体、または、植物由来のエチレンを主成分とする植物由来のエチレン共重合体であり、該共重合体は、植物由来のエチレンと他の植物由来アルケン及び/または他の植物由来の不飽和単量体との共重合体である。好ましい植物由来のエチレン系樹脂としては、植物由来の高密度ポリエチレン、及び植物由来の低密度ポリエチレン等がある。
植物由来の高密度ポリエチレンは、一般に、密度が0.942g/cm以上の植物由来のポリエチレンである。通常は、密度が0.980g/cm以下の植物由来のポリエチレンであり、好ましくは、0.945〜0.970g/cm、より好ましくは0.948〜0.965g/cmである。なお、植物由来のポリエチレンの密度は、JIS K6922−2に準拠して測定したものである。また、植物由来の高密度ポリエチレンは、MFR(温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分、より好ましくは10〜50g/10分のものを使用することができる。なお、植物由来のポリエチレンのMFRは、JIS K6922−2に準拠して測定したものである。植物由来の高密度ポリエチレンは、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、ブラスケム社(ブラジル)製のグリーンポリエチレンに属する植物由来の高密度ポリエチレンなどがある。
植物由来の低密度ポリエチレンは、一般に、密度が0.910〜0.930g/cmの植物由来のポリエチレンであり、好ましくは0.912〜0.928g/cmである。また、植物由来の低密度ポリエチレンは、MFR(温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分、より好ましくは10〜50g/10分のものを使用することができる。植物由来の低密度ポリエチレンとしては、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた植物由来の高圧法ポリエチレン(軟質ポリエチレン)のほか、植物由来の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の植物由来のエチレンと植物由来の他のオレフィンとの共重合体も使用することができる。植物由来の線状低密度ポリエチレン等の植物由来の低密度ポリエチレンとしては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、ブラスケム社製のグリーンポリエチレンに属する植物由来の線状低密度ポリエチレンなどがある。
なお、周知のとおり、植物由来の合成樹脂と生分解性の合成樹脂とは、直接の関係はないことに留意する必要がある。例えば、植物由来の合成樹脂であるポリ乳酸(植物由来のポリオレフィンには属しない。)は、NatureWorks社製のNatureWorks(登録商標)PLAとして市販されており、生分解性樹脂としても知られている。
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、合成樹脂材料中に、ASTM D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCであるポリオレフィンを含有する、すなわち、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップである。本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、具体的には、合成樹脂材料中に、植物由来のポリオレフィンを55質量%以上含有するポリオレフィン、すなわち、55%Corg.renew以上であるポリオレフィンを含有する合成樹脂材料を意味する。
合成樹脂材料中のポリオレフィンが、植物由来のポリオレフィンを55質量%以上含有することは、先に述べたように、モダン炭素比率が56.7pMC(103pMC×0.55=56.65pMCとして計算された結果に基づいて定めた。)以上であることで確認できる。すなわち、本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップが、合成樹脂材料中のポリオレフィンとして、植物由来のポリオレフィンと化石燃料由来のポリオレフィンとを含有する場合、化石燃料由来のポリオレフィンのASTM D6866−11に規定されるモダン炭素比率は、ほぼ0pMCとみなすことができるので、両者の含有比率は、植物由来のポリオレフィンのモダン炭素比率の値が既知であれば、その植物由来のポリオレフィンのモダン炭素比率の値と、合成樹脂材料中のポリオレフィンのモダン炭素比率の値とを比較することによって、算出することができる。例えば、モダン炭素比率が104pMCであることが知られている植物由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料中のポリオレフィンのモダン炭素比率の値が57pMCであれば、この合成樹脂材料中のポリオレフィンは、植物由来のポリオレフィン55質量%と、化石燃料由来のポリオレフィン45質量%とからなるものであるということができる。
合成樹脂材料中のポリオレフィンは、植物由来のポリオレフィン100質量%(100%Corg.renew)であるものでもよい(その場合、モダン炭素比率の上限は、118pMCである。)。植物由来のポリオレフィンは、好ましくは60質量%(すなわち、60%Corg.renew)以上(61.8pMC以上であることに相当する。)、より好ましくは70質量%(すなわち、70%Corg.renew)以上(72.1pMC以上であることに相当する。)、更に好ましくは80質量%(すなわち、80%Corg.renew)以上(82.4pMC以上であることに相当する。)であることが、カーボンオフセット性の観点から望まれる。したがって、本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、合成樹脂材料中の合成樹脂中において、化石燃料由来のポリオレフィン等の合成樹脂を45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、含有することができるが、化石燃料由来のポリオレフィン等の合成樹脂を全く含有しなくてもよい。化石燃料由来のポリオレフィン等の合成樹脂が45質量%を超えると、カーボンネガティブになることがある。
2.化石燃料由来のポリオレフィン
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、先に述べたとおり、植物由来のポリオレフィンに加え、本発明の目的を損なわない範囲内において、化石燃料由来のポリオレフィンを含有することができる。好ましくは、化石燃料由来のポリオレフィンとしては、以下のポリオレフィンが使用できる。
〔化石燃料由来のポリオレフィン〕
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップに含有することができる化石燃料由来の合成樹脂として、好ましく使用される化石燃料由来のポリオレフィンは、化石燃料由来のエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等の化石燃料由来アルケンのオレフィン系単量体の単独重合体または共重合体である。好ましくは、化石燃料由来のエチレン系樹脂または化石燃料由来のプロピレン系樹脂であり、耐繰返し疲労性を重視するときには、化石燃料由来のプロピレン系樹脂を用いることができる。
〔化石燃料由来のエチレン系樹脂〕
化石燃料由来のエチレン系樹脂は、化石燃料由来のエチレンの単独重合体、または、化石燃料由来のエチレンを主成分とする化石燃料由来のエチレン共重合体であり、該共重合体は、化石燃料由来のエチレンと他の化石燃料由来のオレフィン及び/または他の化石燃料由来の不飽和単量体との共重合体である。好ましい化石燃料由来のエチレン系樹脂としては、化石燃料由来の低密度ポリエチレン、化石燃料由来の高密度ポリエチレン及び化石燃料由来のメタロセン触媒エチレン系ポリオレフィン等がある。
化石燃料由来の高密度ポリエチレンは、密度、MFR等が、植物由来の高密度ポリエチレンと同程度であるものを使用することができ、一般に、密度が0.942g/cm以上の化石燃料由来のポリエチレンである。化石燃料由来の高密度ポリエチレンは、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知である、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒(以下、「チーグラー触媒」ということもある。)を用いて得られた化石燃料由来の低圧法高密度ポリエチレンである、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックHD(登録商標)、株式会社プライムポリマー製のハイゼックス(登録商標)、ブラスケム社製の高密度ポリエチレン(銘柄名IE59U3)などがある。
化石燃料由来の低密度ポリエチレンは、密度、MFR等が、植物由来の低密度ポリエチレンと同程度のものを使用することができる。化石燃料由来の低密度ポリエチレンとしては、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた化石燃料由来の高圧法ポリエチレン(軟質ポリエチレン)のほか、化石燃料由来の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の化石燃料由来のエチレンと他の化石燃料由来のオレフィンとの共重合体も使用することができる。化石燃料由来の低密度ポリエチレンとしては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLD(登録商標)、三井・デュポンポリケミカル株式会社製の化石燃料由来の低密度ポリエチレンなどがある。
化石燃料由来のメタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、メタロセン触媒を用いて得られた化石燃料由来のエチレン系樹脂を意味し、化石燃料由来のエチレン、または、化石燃料由来のエチレンを主成分とし、化石燃料由来のα−オレフィンを副成分とする混合単量体を、メタロセン触媒の存在下に重合させることにより得られるエチレン系樹脂である。したがって、化石燃料由来のメタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、メタロセン触媒の存在下で重合反応を行って得られる化石燃料由来のポリエチレンまたは化石燃料由来のエチレン・α−オレフィン共重合体を含むものである。化石燃料由来のα−オレフィンとしては、炭素数が3〜10の範囲にあるものが好ましく、化石燃料由来のプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等を挙げることができる。これらの化石燃料由来のα−オレフィンは共重合体中に3〜15モル%の量で存在するのが好ましい。
化石燃料由来のメタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、分子量分布が狭いのが特徴であり、本発明においては、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn、JIS K6922−2に準拠して測定)通常1.2〜6、好ましくは1.5〜4であるものが使用される。なお、成形性を改善する目的で、重合時またはその後の工程にて比較的長鎖の分岐を導入したものも好適に使用される。また、化石燃料由来のメタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、通常、密度が0.890〜0.920g/cm、好ましくは0.892〜0.918g/cm程度であり、MFR(温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分、より好ましくは10〜50g/10分程度のものを使用することができる。化石燃料由来のメタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、住友化学株式会社製のエクセレン(登録商標)、日本ポリエチレン株式会社製のハーモレックス(登録商標)などがある。
〔化石燃料由来のプロピレン系樹脂〕
化石燃料由来のプロピレン系樹脂は、化石燃料由来のプロピレンの単独重合体、または、化石燃料由来のプロピレンを主成分とする化石燃料由来のプロピレン共重合体であり、該共重合体は、化石燃料由来のプロピレンと、化石燃料由来のエチレン等の他の化石燃料由来のオレフィン(α−オレフィン)及び/または他の化石燃料由来の不飽和単量体との共重合体である。好ましい化石燃料由来のプロピレン系樹脂としては、化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンホモ重合体または化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体、化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンホモ重合体または化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンランダム共重合体、化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレン系ブロック共重合体等がある。
化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、化石燃料由来のプロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のプロピレンランダム共重合体である。化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、共重合体中における化石燃料由来のプロピレンモノマー単位の含有率が、100〜94質量%(ただし100質量%を除く。)、好ましくは99.7〜95質量%、より好ましくは99.5〜95.5質量%であり、化石燃料由来のα−オレフィンモノマー単位の含有率が、0〜6質量%(ただし0質量%を除く)、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4.5質量%の割合である化石燃料由来のランダム共重合体である。化石燃料由来のプロピレンと共重合される化石燃料由来のα−オレフィンとしては、化石燃料由来のエチレン及び/または化石燃料由来の炭素数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられ、具体的には、化石燃料由来のエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。該化石燃料由来のα−オレフィンは、2種以上を併用することもできる。
化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、密度が、通常0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cmの範囲であり、MFR(温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分、より好ましくは10〜50g/10分程度のものを使用することができる。また、多分散度(Mw/Mn)は、通常1.2〜6、好ましくは1.5〜4の範囲にあるものが成形性の改善等の点で有効である。化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体としては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPP(登録商標)、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー株式会社製のサンアロマー(登録商標)、プライムポリマー株式会社製のプライムポリプロ(登録商標)などがある。
化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンランダム共重合体は、メタロセン触媒を用いて得られた、化石燃料由来のプロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のプロピレンランダム共重合体である。化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンランダム共重合体は、共重合体中における化石燃料由来のプロピレンモノマー単位の含有率が、100〜94質量%(ただし100質量%を除く。)、好ましくは99.7〜95質量%、より好ましくは99.5〜95.5質量%であり、化石燃料由来のα−オレフィンモノマー単位の含有率が、0〜6質量%(ただし0質量%を除く)、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4.5質量%の割合であるランダム共重合体である。化石燃料由来のプロピレンと共重合される化石燃料由来のα−オレフィンとしては、化石燃料由来のエチレン及び/または化石燃料由来の炭素数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられ、具体的には、化石燃料由来のエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。該化石燃料由来のα−オレフィンは、2種以上を併用することもできる。
化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンランダム共重合体は、通常、密度が0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cm程度であり、MFR(温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分、より好ましくは10〜50g/10分程度のものを使用することができる。また、多分散度(Mw/Mn)が、通常1.2〜6、好ましくは1.5〜4の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンホモ重合体、または、化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレンランダム共重合体は、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリプロ株式会社製のウインテック(登録商標)などがある。
化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレン系ブロック共重合体は、メタロセン触媒を用いて得られた、化石燃料由来のポリプロピレンからなる重合体のブロックと、化石燃料由来のエチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体である。具体的には、化石燃料由来のポリプロピレンからなる重合体のブロック(以下「PPブロック」ということがある。)と、化石燃料由来のプロピレン・エチレン共重合体からなる重合体のブロック(以下「EPブロック」ということがある。)とが、それぞれ1ブロック以上結合してなる、メタロセン触媒を用いて得られたブロック共重合体であって、ポリプロピレンの剛性を保持しつつ、プロピレン・エチレン共重合体により耐繰返し疲労性を改良した高剛性、耐衝撃性をバランスよく発揮する、それ自体公知の化石燃料由来のブロック共重合体である。
化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレン系ブロック共重合体は、通常、密度が0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cm程度であり、MFR(温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分、より好ましくは10〜50g/10分程度のものを使用することができる。また、多分散度(Mw/Mn)が、通常1.2〜6、好ましくは1.5〜4の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。化石燃料由来のメタロセン触媒プロピレン系ブロック共重合体は、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPP(登録商標)、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー株式会社製のサンアロマー(登録商標)、プライムポリマー株式会社製のプライムポリプロ(登録商標)、日本ポリエチレン株式会社製のカーネル(登録商標)などがある。
なお、植物由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップが、チーグラー触媒やメタロセン触媒を使用して得られた合成樹脂を含有することは、ヒンジキャップから削りだした樹脂ペレット検体を、エネルギー分散型X線検出器を装着した走査型電子顕微鏡を使用して定性分析を行い、検体に残存する微量の触媒の元素種を検出し、周期律表第4周期の遷移金属である第IVa族のTi、第4周期の遷移金属である第Va族のV若しくは第4周期の遷移金属である第VIa族のCrのエネルギーに相当する出現ピークを確認(チーグラー触媒)、または、周期律表第5周期の遷移金属である第IVa族のZr若しくは第6周期の遷移金属である第IVa族のHfのエネルギーに相当するピークの存在を確認(メタロセン触媒)することにより、確認することができる。
3.改質剤または成形性改良剤
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、先に例示した化石燃料由来のポリオレフィンの外に、さらに、所望により、改質剤または成形性改良剤として、化石燃料由来のエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの化石燃料由来の樹脂成分を含有することができる。これら改質剤または成形性改良剤として含有する化石燃料由来の樹脂成分の含有量は、合成樹脂材料中の樹脂成分において、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
4.不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、ヒンジ機構(3)が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる。すなわち、本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、少なくともヒンジ機構(3)が、前記の植物由来のポリオレフィン単独、または、植物由来のポリオレフィン及び化石燃料由来のポリオレフィン等の合成樹脂(改質剤または成形性改良剤として含有する化石燃料由来の樹脂成分を含有してもよい。)に加えて、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、ヒンジ機構(3)を形成する合成樹脂材料の全質量に対して、100〜4500ppm含有するものである。また、キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)及びヒンジ機構(3)が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなるものとすることが好ましい。不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)(以下、「(A)の不飽和脂肪酸アミド」ということがある。)とは、脂肪酸アミドの分子構造中に少なくとも1結合の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドであって、該炭素二重結合のすべてが不飽和cis構造の炭素二重結合である不飽和脂肪族アミドである。
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、少なくともヒンジ機構(3)が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなることによって、スナップ性、耐久性及び操作性が良好であるとともに、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性が良好である、合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップを提供することができる。(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量は、好ましくは110〜4400ppm、より好ましくは115〜4300ppm、更に好ましくは120〜4200ppm、特に好ましくは125〜4100ppmである。なお、前記(A)の不飽和脂肪酸アミドが、後述するように2種類以上の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物である場合は、脂肪酸アミドの合計含有量が上記の範囲に含まれる必要がある。
(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が上記の範囲であることにより、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性を良好なものとすることができる。(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が上記の範囲を外れると、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給手段内で、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップが詰まったり、キャッパーへの膜状ヒンジを備えるヒンジキャップの供給が滞ることにより、充填容器の製造装置が停止するなどのトラブルが生じるおそれもある。
脂肪酸アミド、特に不飽和結合を有する脂肪酸アミドは、従来、種々の合成樹脂の滑剤として機能することが知られているが、不飽和脂肪酸アミドが、trans構造の炭素二重結合を有するものであると、樹脂材料の均一配合が不十分となったり、該trans構造を有する不飽和脂肪酸アミドが、ヒンジ機構(3)、及び、場合によってはキャップ本体(1)やオーバーキャップ(2)を含むヒンジキャップの外表面に、局所発泡による樹脂抜けを生じたり、析出したりすることがあり、その結果、ヒンジ機構(3)等のヒンジキャップの外表面の表面光沢や触感が悪化したり、ヒンジ機構(3)等のヒンジキャップの滑り性が悪化して、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性が良好でなくなる場合がある。
(A)の不飽和脂肪酸アミドは、好ましくは、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミドである。また、(A)の不飽和脂肪酸アミドは、分子構造中に複数の不飽和cis構造の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドでもよく、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を、好ましくは6結合以下、より好ましくは5結合以下、更に好ましくは4結合以下有する化合物である。したがって、(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する化合物を含有するものでもよい。
〔分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミド〕
不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の式(A)〜(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミド化合物が挙げられる。(以下、(A)の式で表される脂肪酸アミドを、「式(A)の脂肪酸アミド」ということがあり、更に単に「式(A)」ということがある。(A)または(A)の式で表される脂肪酸アミドについても同様である。)
好ましい不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の式(A)〜(A)で表される化合物が挙げられる。
式(A):HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)
cis−8,9−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=6に相当)
cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)
cis−10, 11−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=8に相当)
cis−11, 12− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=9に相当)
cis−12, 13− tetraeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(n=10に相当)
式(A):HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)
cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6に相当)
cis−7,8−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=7に相当)
cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8に相当)
cis−9,10−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=9に相当)
cis−10, 11− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(m=10に相当)
式(A):HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)
cis−12,13− eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=6に相当)
cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7に相当)
cis−14,15− tetracosenoamide〔HN−CO−(−CH−)12−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=8に相当)
cis−15,16−hexacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)13−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=9に相当)
cis−16,17− octacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)14−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(k=10に相当)
〔分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する不飽和脂肪酸アミド〕
また、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を4結合有する以下の化合物が挙げられる。
cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH
分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドは、単独で、または、他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとの混合物として使用することもできる。
〔(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物〕
(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、前記式(A)〜(A)の脂肪酸アミド、または、前記の分子構造中に2結合〜4結合の不飽和cis構造の炭素二重結合を有する脂肪酸アミド等から選ばれる1種類の不飽和脂肪酸アミドを使用すれば、十分所期の効果を奏することができるが、2種以上の(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物を使用してもよい。該(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(A)の脂肪酸アミドを含有するものであることが好ましい。
したがって、好ましい(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物は、前記の式(A)の脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である。該混合物中の式(A)の脂肪酸アミドの割合は、0.05〜99.95質量%、好ましくは0.1〜99.9質量%、より好ましくは0.15〜99.85質量%である。したがって、前記の式(A)の脂肪酸アミド、または、式(A)の脂肪酸アミドの割合は、99.95〜0.05質量%、好ましくは99.9〜0.1質量%、より好ましくは99.85〜0.15質量%である。
特に、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)であって、m=n+1またはm=n−1である該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
具体的には、式(A)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、
式(A)が、cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6=n−1に相当)、または、cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8=n+1に相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用でき、更に、cis−10, 11−ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(m=10)との組み合わせの混合物も使用できる。
また、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)であって、k=nである該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
具体的には、式(A)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、式(A)が、cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7=nに相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用できる。
さらに、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(A)の脂肪酸アミドに属し、nの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することができる。すなわち、(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。)との混合物を使用することができる。
具体的には、例えば、式(A)として、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)と、式(A11)として、cis−8,9−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(j=6に相当)との混合物などが好ましく使用できる。
さらにまた、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドを、他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとの混合物として使用することもできる。該他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、前記の式(A)〜(A)の脂肪酸アミドが好ましく用いられ、特に、式(A)の脂肪酸アミドが好ましい。具体的には、cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH〕と、式(A)で表されるcis−9,10−octadecenoamideとの混合物などが好ましく使用できる。
〔(A)の不飽和脂肪酸アミドの製造方法〕
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップにおいて、少なくともヒンジ機構(3)に含有される(A)の不飽和脂肪酸アミドは、市販品を使用してもよいし、市販品が混合物であったり、不純物を含有する場合は、抽出等の操作により、所望の不飽和脂肪酸アミドを分離して得てもよい。また、例えば、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)は、以下の方法により製造することができるので、合成品として得てもよい。
α,ω位にCHO−CO−末端基と水酸基末端またはカルボン酸末端とを有し、(m−1)連鎖のメチレン基(−CH−)m−1を有する以下の(式a)で表される化合物を出発原料とする。((式a)では、水酸基末端を有する化合物を例示している。)
(式a)CHO−CO−(−CH−)m−1−OH
(式a)で表される化合物の水酸基末端を、四臭化炭素(CBr)を用いて臭素置換し、次いで、トリフェニルフォスフィン(PPh,triphenylphosphine)を用いてシアン化メチル(CHCN)溶媒中で、臭素をPPhと反応させ、(式b)で表されるイオン性中間体を得る。
(式b)[CHO−CO−(−CH−)m−1−PPh]+Br
イオン性中間体(式b)に、デシルアルデヒド(decyl aldehyde)を反応させて、PPh基を不飽和cis構造の炭素二重結合を有するアルキル基末端とした(式c)で表されるα,ω構造化合物とする。
(式c)CHO−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
次いで、(式c)のα,ω構造化合物のCHO−CO−末端基に水酸化リチウムを反応させて水酸基末端とし、これを塩化オキサリル(oxalyl chrolide)と塩化メチレンの溶媒中で飽和アンモニウムと反応させることでアミド基末端に変更し、以下の(式d)で表される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド、すなわち、(A)の脂肪酸アミドを合成する。
(式d)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
m(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)を変更することにより、この合成経路を用いて所望の炭素数を有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを得ることができる。
なお、不飽和炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの合成においては、周知のように、不飽和cis構造の炭素二重結合を有する化合物と不飽和trans構造の炭素二重結合を有する化合物とが同時に得られるので、酢酸エチルとヘキサンとを100質量%(初展開)〜40質量%の濃度勾配を付けた混合溶媒を用いて、クロマトグラフィー展開を行い、不飽和cis構造と不飽和trans構造の異性体を分離する。その際、あらかじめ、クロマトグラフィー展開時間毎の分画液に対して、プロトンH−NMR核磁気共鳴装置を使用して、化学シフト値に応じた同定をAldorich製標準物質を基に行い、分画液を特定する。その分画液を減圧乾燥して、所望する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを回収する。
3.その他の配合剤
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップのキャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、ヒンジ機構(3)においては、少なくともヒンジ機構(3)が、(A)の不飽和脂肪酸アミドを100〜4500ppm含有することが必須であることの外、必要に応じて、その他の配合剤として、補強材、充填剤、抗酸化剤、光劣化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、または核剤などの添加剤を配合することができる。補強材または充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ等を使用することができる。これら添加剤の配合量は、合成樹脂100質量部に対して、通常0.01〜100質量部の範囲で添加剤の目的に応じて最適な範囲の量を選定すればよい。例えば、補強材または充填剤は、通常10〜100質量部、好ましくは15〜80質量部、より好ましくは20〜60質量部配合することができる。添加剤の種類によっては、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部の配合でよいことがある。
特に、その他の配合剤としては、滑剤として知られている他の化合物を使用することもできる。該滑剤としては、飽和脂肪酸アミドが好ましく、本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップにおける、少なくともヒンジ機構(3)が、所定量の(A)の不飽和脂肪酸アミドを含有するとともに、該飽和脂肪酸アミドを含有することにより、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性を更に改善できるなどの効果が奏される。飽和脂肪酸アミドとしては、通常、滑剤として使用されている化合物を使用することができ、例えば、ブチルアミド、吉草酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、好ましくは、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドである。飽和脂肪酸アミドを含有する場合の含有量は、(A)の不飽和脂肪酸アミドと該飽和脂肪酸アミドの合計量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、その含有量の下限値は、0.5質量%程度であり、1質量%であれば十分な効果が実現できる。
III.植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップの評価
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、スナップ性、耐久性及び操作性が良好で、かつ、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性が良好である、合成樹脂材料から一体に成形された、膜状ヒンジのヒンジ機構を備えるヒンジキャップである。
〔キャップ供給における移送性の評価(シュート詰まり評価)〕
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップが、容器へのキャップの取り付け工程においてキャップ供給の移送性が良好なものであることは、例えば図6に略示するように、以下の方法により評価することができる。すなわち、ホッパ(図示しない)に、1万個のあらかじめ閉蓋状態としたヒンジキャップ(c)を投入し、該ホッパから、縦40mm、横40mmの正方形の断面を持ち、長さ500mmの角柱状導管(シュート)に、閉蓋状態のヒンジキャップ(c)を、2個/秒の供給速度で連続的に投入し、受渡装置(D)を用いてキャッパー装置に移送する。この一連の移送工程において、シュートでのシュート詰まりが発生した回数(1万個中)を数える。測定は3回行い、その平均値をシュート詰まり回数として、以下の基準で、シュート詰まり評価を行う。シュート詰まり評価が「○」であれば、容器へのキャップの取り付け工程においてキャップ供給の移送性が良好であるといえる。
<シュート詰まり評価>
シュート詰まり評価 ○: シュート詰まり回数が、0〜2回
シュート詰まり評価 ×: シュート詰まり回数が、3回以上
〔スナップ性の評価〕
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップのスナップ性は、以下のクリック感評価による判定によって行うことができる。すなわち、一体成形されたヒンジキャップのヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返す試験を、5名の被験者(年齢18〜60歳)が行い、快いクリック感が持続すると感じられるかどうかを感性評価する。過半数の被験者が、快いクリック感が持続すると評価した膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、クリック感が良好であると判定する。
IV.合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップの製造方法
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップの製造方法は、特に限定されないが、例えば、植物由来のポリオレフィン単独、または、植物由来のポリオレフィン及び化石燃料由来のポリオレフィン等の合成樹脂、並びに、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)、必要に応じて、その他の材料を含有する合成樹脂材料を、キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、ヒンジ機構(3)を備えるヒンジキャップに対応したキャビティ形状の金型を使用して、射出成形、圧縮成形、注型成形、真空成形、圧空成形、粉末成形その他の樹脂の成形方法によって製造することができる。
本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップは、いわゆる膜状ヒンジのヒンジ機構、すなわち膜状ヒンジ(3)を備え、かつ、該膜状ヒンジ(3)は、端部における厚みが、中央部における厚みより大きく、かつ、膜状ヒンジ(3)の厚みが最小となる位置が、膜状ヒンジ(3)の中央部と端部との間に存在するとともに、該ヒンジ機構である該膜状ヒンジ(3)が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなることに特徴を有するものである。したがって、本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを製造するに当たっては、膜状ヒンジ(3)に対応したキャビティ形状の金型を使用すること、及び、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂を、膜状ヒンジ(3)に対応したキャビティ形状の金型に確実に供給することが求められる。
形状の正確性や成形の容易性等の観点から、本発明の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを製造するためには、略180度の開蓋状態としたキャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、ヒンジ機構(3)を備えるヒンジキャップに対応するキャビティ形状の金型を使用して、キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、ヒンジ機構(3)を一体に成形することが好ましい。特に、射出成形によって植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体に成形することが好ましい。
さらに、上記した成形方法によって、植物由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップを金型から取り出した後、通常は、ヒンジ機構(3)を揺動させて、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態とし、閉蓋状態で熱固定することにより、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップの形状や寸法が整えられ、かつ安定したものとなり、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性やスナップ性が一層良好なものとなる。熱固定は、温度30〜80℃、好ましくは35〜75℃、より好ましくは40〜70℃において、恒温室保存、熱風吹き付け等、それ自体周知の方法により熱処理を行う。熱固定を行う時間は、熱処理の温度その他の条件に応じて適宜選択することができるが、通常0.5時間〜3月間、好ましくは5時間〜1月間、より好ましくは1日間〜2週間とすればよい。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における合成樹脂原料及び膜状ヒンジを備えるヒンジキャップの特性または物性の測定方法は、以下のとおりである。
〔密度及びMFR〕
ポリオレフィンの密度及びMFRは、JIS K6922−2に準拠して測定した。
〔モダン炭素比率〕
ポリオレフィンのモダン炭素比率は、ベータ・アナリティック社(日本における総合代理店である株式会社地球科学研究所)に委嘱し、ASTM D6866−11に準拠して測定した。
〔シュート詰まり評価〕
膜状ヒンジを備えるヒンジキャップが、容器へのキャップの取り付け工程においてキャップ供給の移送性が良好であることは、以下の方法によって評価した。すなわち、ホッパに、1万個のあらかじめ閉蓋状態とした膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ(c)を投入し、該ホッパから、縦40mm、横40mmの正方形の断面を持ち、長さ500mmの角柱状導管(シュート)に、閉蓋状態の膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ(c)を、2個/秒の供給速度で連続的に投入し、受渡装置(D)を用いてキャッパー装置に移送する。この一連の移送工程において、シュートでのシュート詰まりが発生した回数(1万個中)を数えた。測定は3回行い、その平均値をシュート詰まり回数として、以下の基準で、シュート詰まり評価を行った。
<シュート詰まり評価>
シュート詰まり評価 ○: シュート詰まり回数が、0〜2回
シュート詰まり評価 ×: シュート詰まり回数が、3回以上
〔クリック感評価〕
一体成形されたヒンジキャップのヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返す試験を、5名の被験者(年齢18〜60歳)が行い、快いクリック感が持続すると感じられるかどうかを感性評価し、過半数の被験者が、快いクリック感が持続すると評価した膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、クリック感が良好であると判定した。
植物由来の高密度ポリエチレン〔ブラスケム社製、銘柄名SGF4950、密度0.956g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)28g/10分、モダン炭素比率104pMC。以下、「植物由来ポリエチレン」ということがある。ポリオレフィンは、100%Corg.renewである。〕に対し、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)として、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (98.0質量%)、及び、cis-13,14-docosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(2.0質量%)の混合物を、植物由来の高密度ポリエチレンに対して、3500ppmとなるように配合して、(A)の不飽和脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物を得た。
得られた(A)の不飽和脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物を、射出成形機に供給して、180度の開蓋状態としたキャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、膜状ヒンジのヒンジ機構(3)を備えるヒンジキャップに対応するキャビティ形状の金型を使用して、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体に成形した。
膜状ヒンジ(3)を備えるヒンジキャップのキャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、膜状ヒンジ(3)の形状及び大きさは、以下のとおりとした。
1)キャップ本体(1): 外径37mm、内径32mm、高さ27mmの略円筒形。注出口の開口径10mm
2)オーバーキャップ(2): 外径37mm、内径33mm、高さ9mmの略円筒形
3)膜状ヒンジ(3)
ヒンジ本体(3a): 長さ(揺動軸方向)10mm及び最大幅(揺動軸の直交方向)4mmの鼓の断面形状、中央部の厚み0.2mm、端部の厚み0.3mm
端部/中央部厚み比率: 1.50
最小部/中央部厚み比率: 0.730
厚み最小部距離比率: 0.45
厚肉部(3b): 膜状ヒンジ(3)の結合部の中央部〔キャップ本体(1)側及びオーバーキャップ(2)側〕に、幅1.5mm及び長さ5mmの長方形断面、厚み1mm
射出成形によって成形された植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定した。
〔クリック感評価及びシュート詰まり評価〕
熱固定後の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、快いクリック感が持続し、クリック感が良好であると判定された。また、この膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
[実施例2]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、植物由来ポリエチレンに対して、130ppmとなるようにした配合の変更を除いて、実施例1と同様にして、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。
射出成形によって成形された植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定したところ、形状の歪み等はみられなかった。
〔クリック感評価及びシュート詰まり評価〕
熱固定後の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、快いクリック感が持続し、クリック感が良好であると判定された。また、この膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
[実施例3]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis-13,14-docosenoamide 〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(98.0質量%)、及び、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (2.0質量%)の混合物に変更し、植物由来ポリエチレンに対して、4000ppmとなるようにした配合の変更を除いて、実施例1と同様にして、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。
射出成形によって成形された植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定したところ、形状の歪み等はみられなかった。
〔クリック感評価及びシュート詰まり評価〕
熱固定後の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、快いクリック感が持続し、クリック感が良好であると判定された。また、この膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
[実施例4]
前記の植物由来ポリエチレンの単独使用に代えて、該植物由来ポリエチレン 90質量%、及び、化石燃料由来の高密度ポリエチレン〔ブラスケム社製、銘柄名IE59U3、密度0.959g/cm、MFR(温度190℃、荷重2.12N)5g/10分、モダン炭素比率0pMC。以下、「化石燃料由来ポリエチレン」ということがある。〕 10質量%とした配合の変更(合成樹脂材料は、90%Corg.renewであり、モダン炭素比率は、93pMCである。)、並びに、膜状ヒンジ(3)における最小部/中央部厚み比率を0.760としたヒンジキャップの形状の変更を除いて、実施例1と同様にして、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。
射出成形によって成形された膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定したところ、形状の歪み等はみられなかった。
〔クリック感評価及びシュート詰まり評価〕
熱固定後の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、快いクリック感が持続し、クリック感が良好であると判定された。また、この膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
[実施例5]
前記の植物由来ポリエチレン58質量%、及び、前記の化石燃料ポリエチレン 42質量%とした配合の変更(合成樹脂材料は、58%Corg.renewであり、モダン炭素比率は、60pMCである。)を除いて、実施例4と同様にして、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。
射出成形によって成形された植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定したところ、形状の歪み等はみられなかった。
熱固定後の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、快いクリック感が持続し、クリック感が良好であると判定された。また、この弾性片を備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
[参考例]
前記の植物由来ポリエチレンを配合せず、前記の化石燃料ポリエチレンの単独使用とした配合の変更(合成樹脂材料は、0%Corg.renewであり、モダン炭素比率は、0pMCである。)を除いて、実施例4と同様にして、射出成形によって、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。
射出成形によって成形された弾性片を備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定したところ、形状の歪み等はみられなかった。
〔クリック感評価及びシュート詰まり評価〕
成形された膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、快いクリック感が持続し、クリック感が良好であると判定された。また、この膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
[比較例1]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、植物由来ポリエチレンに対して、5500ppmとなるようにした配合の変更、並びに、膜状ヒンジ(3)の厚みが最小となる位置が、該膜状ヒンジ(3)の中央部と端部との間に存在しない、すなわち、膜状ヒンジ(3)の厚みが最小となる位置が、膜状ヒンジ(3)の中央部にあり、したがって、膜状ヒンジ(3)における最小部/中央部厚み比率を1.000とした膜状ヒンジ(3)の厚み構造の変更を除いて、実施例1と同様にして、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。
射出成形によって成形された植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定したところ、形状の歪み等はみられなかった。
〔クリック感評価及びシュート詰まり評価〕
熱固定後の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、やや強めのクリック感が感じられた。また、この膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
[比較例2]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、trans−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミドのtrans構造に相当する。〕(単独使用)に変更し、植物由来ポリエチレンに対して、2000ppmとなるようにした配合の変更を除いて、比較例1と同様にして、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。
射出成形によって成形された植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを、金型から取り出した後、ヒンジ機構(3)を揺動させて、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを閉蓋状態として、温度40℃で1週間熱処理して熱固定したところ、形状の歪み等はみられなかった。
〔クリック感評価及びシュート詰まり評価〕
成形された植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、ヒンジ機構(3)を、閉蓋状態から開蓋状態に揺動させ、次いで、開蓋状態から閉蓋状態に揺動させる操作を50回繰り返したところ、やや強めのクリック感が感じられた。また、この膜状ヒンジを備えるヒンジキャップについて、シュート詰まり評価を行った結果を、表1に示す。
Figure 2013139286
表1の結果から、実施例1〜5の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ、すなわち、ASTM D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCである、植物由来ポリエチレン、または、植物由来ポリエチレンと化石燃料由来ポリエチレンとを含有し、かつ、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を130〜4000ppm含有する合成樹脂材料から一体成形された、キャップ本体(1)、オーバーキャップ(2)、及び、膜状ヒンジのヒンジ機構(3)を備える、合成樹脂材料から一体に成形された、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップであって、膜状ヒンジ(3)は、端部における厚みが、中央部における厚みより大きく、かつ、膜状ヒンジ(3)の厚みが最小となる位置が、膜状ヒンジ(3)の中央部と端部との間に存在する該ヒンジキャップは、
i)カーボンオフセット性を有し、
ii)植物由来のポリエチレンを含有せず、化石燃料由来のポリエチレンからなる参考例の弾性片を備えるヒンジキャップと同等に、射出成形及び熱処理によって形状の歪み等が生じない形状安定性を有するとともに、
iii)快いクリック感が持続して得られることからスナップ性に優れ、シュート詰まり評価が「○」であり、容器へのキャップの取り付け工程においてキャップ供給の移送性が良好であるものであることが分かった。
これに対して、モダン炭素比率が104pMCである植物由来のポリエチレンを含有するが、いずれも、膜状ヒンジ(3)の端部における厚みが、中央部における厚みより大きいものの、該膜状ヒンジ(3)の厚みが最小となる位置が、該中央部と端部との間に存在するものではなく、さらに、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を5500ppmと多量に含有する比較例1のヒンジキャップ、及び、さらに、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有しない比較例2のヒンジキャップは、強めのクリック感があるとともに、シュート詰まり評価が「×」であり、容器へのキャップの取り付け工程においてキャップ供給の移送性が良好ではないことが示唆された。
本発明は、容器の口頚部に取り付けられるキャップ本体、該キャップ本体の天部を覆うオーバーキャップ、及び、前記キャップ本体に対して前記オーバーキャップを閉蓋状態と開蓋状態との間で揺動可能に連結するヒンジ機構を備え、かつ、ASTM D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCであるポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップであって、以下のa)〜c):
a)該ヒンジ機構は、両端部が、それぞれ対応する前記キャップ本体の外周面及び前記オーバーキャップの外周面に沿って連結される、膜状ヒンジのヒンジ機構であり、
b)該膜状ヒンジは、
b−1)端部における厚みが、膜状ヒンジの中央部における厚みより大きく、
b−2)膜状ヒンジの厚みが最小となる位置が、前記中央部と端部との間に存在し、かつ、
c)該ヒンジ機構が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる、
ことを特徴とする、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップであることによって、カーボンオフセット性を有し、化石燃料由来のポリオレフィンを含有する合成樹脂材料から一体に成形された膜状ヒンジを備えるヒンジキャップと遜色がない成形性を有するとともに、スナップ性、耐久性及び操作性が良好で、かつ、容器へのキャップの取り付け工程において、キャップ供給における移送性が良好である、植物由来のポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体に成形された、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
1: キャップ本体
1a: ネジ部
2: オーバーキャップ
3: ヒンジ機構(膜状ヒンジ)
3a: ヒンジ本体
3b: 厚肉部
3c: 両脇部
4: 注出口
D: キャップ支持装置(受渡装置)
b: 容器
c: キャップ
d: キャップ供給手段
e: キャッパー
f: グリッパー

Claims (12)

  1. 容器の口頚部に取り付けられるキャップ本体、該キャップ本体の天部を覆うオーバーキャップ、及び、前記キャップ本体に対して前記オーバーキャップを閉蓋状態と開蓋状態との間で揺動可能に連結するヒンジ機構を備え、かつ、ASTM_D6866−11に規定されるモダン炭素比率が56.7〜118pMCであるポリオレフィンを含有する、合成樹脂材料から一体に成形されたヒンジキャップであって、以下のa)〜c):
    a)該ヒンジ機構は、両端部が、それぞれ対応する前記キャップ本体の外周面及び前記オーバーキャップの外周面に沿って連結される、膜状ヒンジのヒンジ機構であり、
    b)該膜状ヒンジは、
    b−1)端部における厚みが、膜状ヒンジの中央部における厚みより大きく、
    b−2)膜状ヒンジの厚みが最小となる位置が、前記中央部と端部との間に存在し、かつ、
    c)該ヒンジ機構が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる、
    ことを特徴とする、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  2. 前記のキャップ本体、オーバーキャップ及びヒンジ機構が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4500ppm含有する合成樹脂材料からなる請求項1記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  3. 前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、以下の(A)、(A)及び(A):
    (A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
    (A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
    (A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
    からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する請求項1または2記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  4. 前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である請求項3記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  5. 前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である請求項4記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  6. 前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである請求項4記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  7. 前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(A11):
    (A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
    の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である請求項4記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  8. 前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  9. 前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有する合成樹脂材料が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  10. 前記の植物由来のポリオレフィンが、植物由来のエチレン系樹脂である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  11. 閉蓋状態で熱固定されてなる請求項1乃至10のいずれか1項に記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
  12. 前記の膜状ヒンジが、厚肉部を有する1乃至11のいずれか1項に記載の植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップ。
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