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JP2013073832A - リチウムイオン二次電池用正極活物質 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質 Download PDF

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JP2013073832A
JP2013073832A JP2011212977A JP2011212977A JP2013073832A JP 2013073832 A JP2013073832 A JP 2013073832A JP 2011212977 A JP2011212977 A JP 2011212977A JP 2011212977 A JP2011212977 A JP 2011212977A JP 2013073832 A JP2013073832 A JP 2013073832A
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lithium
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nickel
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Kazuhiko Hagiwara
和彦 萩原
Takayuki Osaki
貴之 大崎
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Cosmo Oil Co Ltd
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Cosmo Oil Co Ltd
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Abstract

【課題】充放電サイクル時の放電容量の低下が少なく、かつ高い充放電速度でも容量低下が少ないリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供する。
【解決手段】一般式(1)LiNi1−y(式中、MはCo、Fe、及びAlから選択される1種以上の元素を表し、0<x<1.5であり、0≦y<0.2である。)で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物と、リチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質とを含み、前記リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径が30〜100nmであり、前記非晶質性物質の含有量が、ケイ素換算で1〜10質量%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質、及び前記リチウムイオン二次電池用正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケルを含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。さらに詳しくは、リチウム−ニッケル複合酸化物とリチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質とを含むリチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、携帯電話、ポータブルパーソナルコンピュータ等に広く使用されている。また、非水電解質二次電池は、パワーツール用電源として採用され、将来のハイブリッド自動車用電源としても大きな期待を担っている。そのため、より高容量化された非水電解質二次電池が切望されている。
ところで、1991年にリチウムイオン二次電池の量産化が開始されてから10年の間に、電池構造の改良が進み、高密度充填の技術は大きく進歩した。しかし、正極活物質をコバルト酸リチウム等のリチウム−コバルト複合酸化物とし、負極活物質を黒鉛とする基本構成は、現在も変わらず主流となっている。そのような中、リチウムイオン二次電池のさらなる高性能化、低コスト化が望まれており、リチウム−コバルト複合酸化物に替わる新たな正極材へのニーズが高まっている。
リチウム−コバルト複合酸化物に替わる有望な正極材として、ニッケルやマンガン、鉄を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が活発に研究されている。その中でもリチウム−ニッケル複合酸化物は、リチウム−コバルト複合酸化物よりも高容量であることから、正極材への応用が期待されている。
しかし、ニッケル酸リチウム等のリチウム−ニッケル複合酸化物の場合、LiとNi2+のイオン半径がほぼ等しいため、本来Liが占有すべきサイトにNi2+が混入しやすい。そのため、合成時に化学量論組成であるLiNiOとは異なる結晶構造になる場合が多く、その結果として充放電サイクル時(充放電を繰り返した場合)に放電容量の低下が大きい等の課題がある。
当該課題に対して、例えばLiNi1−x−yのMやNにCo、Mn、Al、Si等を含有させる方法(例えば、特許文献1参照。)や、活物質の粒子表面を炭素、SiO、高分子化合物等でコーティングする方法(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)、活物質の粒子径を制御する方法(例えば、特許文献4参照。)等が開示されている。これらの方法により充放電サイクル時の放電容量の低下がある程度抑制されると報告されているものの、より一層の性能向上が望まれている。
また、正極材には、単に充放電サイクル時の放電容量の低下が少ないだけではなく、高い充放電速度でも容量低下が少ないことも同時に求められており、この点についてもより一層の性能向上が求められている。
特開2008−293661号公報 特開2003−059491号公報 特開2009−087891号公報 特開2000−030693号公報
これらの課題を鑑み、本発明においては、充放電サイクル時の放電容量の低下が少なく、かつ高い充放電速度でも容量低下が少ないリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、リチウムイオン二次電池の正極材に、結晶子径が特定の大きさであるリチウム−ニッケル複合酸化物と、リチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質とを含み、かつ前記非晶質性物質の含有量が、特定の範囲内である正極活物質を用いることにより、充放電サイクル時の放電容量の低下を少なくし、かつ高い充放電速度でも容量低下を少なくできることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 下記一般式(1)で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物と、リチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質とを含み、
前記リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径が30〜100nmであり、
前記非晶質性物質の含有量が、ケイ素換算で1〜10質量%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質;
一般式(1)・・・LiNi1−y
[式中、MはCo、Fe、及びAlから選択される1種以上の元素を表し、0.5<x<1.5であり、0≦y<0.2である。]、
(2) 前記非晶質性物質が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記(1)に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質、
一般式(2)・・・LiSi
[式中、a及びbは、それぞれ独立して正の実数である。]、
(3) 前記リチウム−ニッケル複合酸化物の少なくとも一部の結晶において、結晶間に前記非晶質性物質が存在していることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質、
(4) 前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて得られることを特徴とするリチウムイオン二次電池、
を提供するものである。
本発明によれば、繰り返しの充放電でも容量低下が少なく、かつ高い充放電速度でも容量の低下が少ないニッケルを含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質が提供される。
実施例1において得られた正極活物質Aの粉末X線回折パターンの測定条件及び結果を示した図である。 実施例2において得られた正極活物質Bの透過電子顕微鏡写真である。 図2中の物質Aのエネルギー分散X線分光法のチャートである。 図2中の物質Bのエネルギー分散X線分光法のチャートである。
<リチウムイオン二次電池用正極活物質>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、本発明の正極活物質)は、リチウム−ニッケル複合酸化物と、リチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質(以下、リチウムシリケート)とを含み、前記リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径が30〜100nmであり、前記非晶質性物質の含有量が、ケイ素換算で1〜10質量%であることを特徴とする。本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質が、充放電サイクル時の放電容量の低下及び高い充放電速度における容量低下が低減されるという効果が得られる理由は明らかではないが、結晶子径が特定の大きさであるリチウム−ニッケル複合酸化物に、リチウムシリケートが特定の割合で含まれていることにより、イオン伝導体(電解質)であるリチウムシリケートによって活物質中のリチウムイオンの拡散が促進される結果、充放電速度が速まり、高い充放電速度とした場合の容量低下が抑制されると推察される。
[リチウム−ニッケル複合酸化物]
本発明の正極活物質に含まれるリチウム−ニッケル複合酸化物は、下記一般式(1)で表される。下記一般式(1)中、MはCo、Fe、及びAlから選択される1種以上の元素を表し、0.5<x<1.5であり、0≦y<0.2である。
一般式(1)・・・LiNi1−y
リチウム−ニッケル複合酸化物中のリチウムイオン量が過剰に存在した場合には、充放電時の正負極間でのLiイオンの移動を阻害し正極材としての性能が低下するおそれがある。そこで、一般式(1)中、xは0.5<x<1.5を満たす正の実数である。本発明において用いられるリチウム−ニッケル複合酸化物としては、0.8<x<1.3であることが好ましく、0.95<x<1.15であることがより好ましい。
一般式(1)中、yは0≦y<0.2である。yが0の場合、リチウム−ニッケル複合酸化物はLiNiである。yが0.2未満であるため、本発明の正極活物質は充分量のNiを含有することができ、本発明の正極活物質を用いて得られた正極材の放電容量の低下を抑制される。本発明においては、yは0であってもよいが、結晶構造の安定化による充放電時の容量低下抑制の観点からは、0<y<0.2であることが好ましく、0.01≦y<0.2であることがより好ましく、0.01≦y≦0.1であることがよりさらに好ましく、0.02≦y≦0.06であることがよりさらに好ましい。
一般式(1)中、Mは、コバルト、鉄、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種以上の元素である。すなわち、リチウム−ニッケル複合酸化物は、Mとしてコバルト、鉄、又はアルミニウムのうちのいずれか1種類のみからなる化合物であってもよく、Mとして上記元素群のうち2種類以上を含む化合物であってもよい。本発明において用いられるリチウム−ニッケル複合酸化物としては、上記元素のうち、特に好ましいものは、大気中で安定に存在する酸化数が3のみであるアルミニウムである。
本発明の正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径は、30nm〜100nmである。本発明の正極活物質の結晶子径の大きさが小さすぎる場合には、一次粒子(本発明における一次粒子はリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶とリチウムシリケートからなる)の大きさが小さくなりすぎ、その結果、粒界が増加し、粒子間のリチウムイオン拡散性が著しく低下することがある。一方で本発明の正極活物質の結晶子径の大きさが大きすぎる場合には、当該正極活物質中でリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶構造中にリチウム欠損が生成しやすくなる。リチウム欠損は、充放電時に結晶の相転移を引き起こすため、充放電を繰返し行うと、電気化学活性ではない結晶構造が増加し容量が低下する。
本発明の正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径は、正極活物質の粉末試料のX線回折パターン(XRD)を測定し、得られた測定結果から以下のように解析することによって求められる。すなわち、一般式(1)で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物はα−NaFeO型(空間群R−3m)と呼ばれる層状岩塩型の結晶構造を有しており、そのXRDを測定すると、(104)面に帰属される回折ピーク「P104」が2Θ=43〜44°に現れる。測定したP104の半値幅を用いて、下記のSherrer式により、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径を算出することができる。Sherrer式中、Dはリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径(nm)であり、KはSherrer定数(0.9)であり、λは回折X線の波長(nm)であり、βはP104の半値幅(rad)であり、θはP104の回折角(°)である。
D = Kλ/(βcosΘ) ・・・Sherrer式
なお、上記式に用いる回折ピークP104の半値幅は、粉末X線回折装置を用い、単色化CuKα線をX線源として使用し、ゴニオメーターの走査モードを連続として、XRDを測定し求めることができる。
本発明の正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物のXRDでは、前記2Θ=43〜44°にある(104)面に帰属される回折ピーク「P104」の他に、2Θ=18〜19°にある(003)面に帰属されるピーク「P003」を有する。このP003の積分強度「I003」とP104の積分強度「I104」の積分強度比[I003/I104]は、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶構造におけるLiとNi3+の配置に依存しており、リチウム−ニッケル複合酸化物の層状岩塩構造におけるLiサイト量を反映するため、リチウム−ニッケル複合酸化物の放電容量の指標となる(例えば、P. Kalyani, N. Kalaiselvi, Adv. Mater. vol.6, p689 (2005).)。[I003/I104]が1.2以上であると、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶が十分に成長しており、正極活物質として高容量を示すため好ましい。[I003/I104]は大きいほど高容量となるため好ましいが、実際に合成可能なものは2.0以下となる。
本発明の正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物の含有量は、多いほど高容量となるため好ましいが、高い充放電速度での容量の低下を抑制する効果のあるリチウムシリケートの含有量を確保するためには、80質量%〜95質量%であることが好ましく、90質量%〜95質量%であることがより好ましい。
本発明の正極活物質としては、リチウム−ニッケル複合酸化物の少なくとも一部の結晶において、結晶間にリチウムシリケートが存在しているものが好ましい。正極活物質中において、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶と結晶の隙間にリチウムシリケートが存在していることにより、より高い本発明の効果(高い充放電速度における優れた容量低下抑制効果)を得ることができる。これは、イオン伝導体(電解質)であるリチウムシリケートがリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶間の隙間を埋めることにより、活物質中のリチウムイオンの拡散がより促進され、充放電速度が速くなるためと推察される。
結晶子径が30nm〜100nmであり、かつ[I003/I104]が1.2以上であるリチウム−ニッケル複合酸化物は、例えば、水酸化ニッケルや炭酸ニッケル等のニッケル前駆体を350〜500℃で焼成した後に、水酸化リチウム等のリチウム源をニッケルとリチウムのモル比が1〜1.2になる比率で混合し、600〜700℃で1〜5時間焼成する方法等で得ることができる。
[リチウムシリケート]
本発明の正極活物質に含まれるリチウムシリケートは、リチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質である。リチウムシリケートの組成は特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(2)中、a及びbは、正の実数である。
一般式(2)・・・LiSi
一般式(2)で表わされるリチウムシリケートとしては、a及びbが、1<a/b<6を満たす物質であることが好ましい。a/bを上記範囲内とすることにより、リチウムシリケート中のリチウム含有量を、イオン伝導体としての性能をより効果的に発揮するために充分であり、かつリチウムイオンの拡散が阻害されない程度のより好ましい量にすることができる。なお、一般式(2)で表わされるリチウムシリケートにおいて、a/bが大きくなりすぎる場合には、高コストとなるため、製造コストの点からも好ましくない。一般式(2)で表わされるリチウムシリケートとしては、例えば、LiSiO、LiSiO、LiSi、及びこれらの混合物が挙げられる。
本発明の正極活物質中のリチウムシリケートの含有量は、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径等の物性や、所望の正極活物質の容量等を考慮して適宜決定することができる。本発明においては、正極活物質中のリチウムシリケートの含有量は、ケイ素(Si)換算で1〜10質量%であり、1〜6質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。リチウムシリケートをケイ素(Si)換算で1質量%以上含有させることにより、高い充放電速度でも容量の低下がより少ない正極活物質を得ることができる。但し、本発明の正極活物質中のリチウムシリケートの含有量が多すぎると、相対的にリチウム−ニッケル複合酸化物の含有量が低下するため、所望の性能が発現されないおそれがある。
[一次粒子の平均粒子径]
本発明の正極活物質は、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶間にリチウムシリケートが入り込んだ一次粒子を形成している。当該一次粒子の平均粒子径の下限値は、実質的には、本発明の正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径よりも大きくなる。この一次粒子の平均粒子径は30〜200nmであることが好ましい。一次粒子の平均粒子径を200nm以下とすることで、充放電の際にリチウムイオンの粒子間移動がより容易となるため、高い充放電速度(Cレート)でもより高い容量が得られる。なお、本発明の正極活物質においては、二次粒子の粒子径は特に制限はない。
<リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法>
本発明の正極活物質は、どのような製造方法によって製造されたものであってもよい。本発明の正極活物質の好ましい製造方法としては、例えば、ニッケルとケイ素を含む共沈物を共沈法で製造し、当該共沈物を特定温度で焼成後、リチウム塩を添加し、再度特定温度で焼成することによって製造する方法が挙げられる。当該製造方法を用いることにより、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径を30nm〜100nmの範囲内に制御し、[I003/I104]を1.2以上とし、リチウムシリケートの含有量をケイ素換算で1〜10質量%とし、さらに得られた正極活物質中において、リチウムシリケートを偏在させることなく、リチウムシリケートをリチウム−ニッケル複合酸化物中に比較的均一に分散させやすい。詳細には、当該製造方法は、下記の共沈工程、第1焼成工程、リチウム混合工程、及び第2焼成工程を有することを特徴とする。
[共沈工程]
まず、ニッケル化合物を含有する水溶液(以下、ニッケル化合物溶液)とケイ素化合物を含有する水溶液(以下、ケイ素化合物溶液)とを混合し、得られた混合液中でニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る。
ニッケル化合物溶液中のニッケル化合物は、水溶性のニッケル化合物であれば特に限定されるものではない。また、1種類のニッケル化合物を含む水溶液であってもよく、2種類以上のニッケル化合物を含む水溶液であってもよい。ニッケル化合物溶液中のニッケル化合物としては、具体的には、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等の水溶性ニッケル化合物やこれらの混合物を用いることができ、特に硫酸ニッケルを用いることが好ましい。
ケイ素化合物溶液中のケイ素化合物は、水溶性のケイ素化合物であれば特に限定されるものではない。また、1種類のケイ素化合物を含む水溶液であってもよく、2種類以上のケイ素化合物を含む水溶液であってもよい。ケイ素化合物溶液中のケイ素化合物としては、具体的には、シリカ、水ガラス、コロイダルシリカ等の水溶性ケイ素化合物やこれらの混合物を用いることができ、特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。
ニッケル化合物溶液は、酸性水溶液であることが好ましく、pHが1〜3であることが好ましく、pHが1〜2であることがより好ましい。一方、ケイ素化合物溶液は、塩基性水溶液であることが好ましく、pH9〜11であることが好ましく、pH9〜10であることがより好ましい。いずれの水溶液であっても、pHは酸やアンモニアを用いて好ましい範囲に調整することができる。
また、ケイ素化合物溶液には、炭酸アルカリを混合することもできる。ケイ素化合物溶液及びニッケル化合物溶液を混合した混合液に、さらに炭酸アルカリ溶液を添加してもよい。炭酸アルカリの存在下で反応を行うことにより、ニッケル及びケイ素を含む共沈物をより効率的に得ることが出来る。炭酸アルカリは、ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液の混合液中において、炭酸アルカリに対するニッケルのモル比が0.7〜1.0になるように混合させることが好ましい。炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液は、混合後の混合液中に含まれるニッケルのモル数に対する当該混合液中に含まれるケイ素のモル数の比が0.05〜0.3となるように混合することが好ましく、0.06〜0.27となるように混合することがより好ましく、0.07〜0.25となるように混合することがさらに好ましい。混合液中のニッケルとケイ素のモル比が当該範囲内であれば、当該混合液中で反応を行った際に共沈物が生じやすく、良好な収率で共沈物を得ることができる。
ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液の混合液のpHは6〜9の範囲内であることが好ましく、6〜8の範囲内であることがより好ましく、6.5〜7.5の範囲内であることがさらに好ましい。混合液のpHが当該範囲内であれば、当該混合液中で反応を行った際に共沈物が生じやすく、良好な収率で共沈物を得ることができる。
次いで、得られた混合液を70〜90℃に保持することにより、ニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る。ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液を混合した後に、得られた混合液を70〜90℃に加温してもよいが、ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液を70〜90℃に予め加温した後に、両液を混合することが好ましい。
反応時間は混合液中のニッケル化合物及びケイ素化合物の含有量、反応温度等を考慮して適宜決定することができる。また、反応中、混合液は静置していてもよく、撹拌等してもよい。例えば、混合液を70〜90℃で0.5〜2時間程度撹拌することにより、ニッケルとケイ素を含む共沈物を得ることができる。
得られた共沈物は、ろ過、水洗後、乾燥させておくことが好ましい。乾燥処理は、共沈物に含まれている水分をある程度除去できる方法であればよい。例えば、公知の方法により100〜150℃程度の温度で乾燥処理することによって、水洗後の固形物(共沈物)を乾燥することができる。
[第1焼成工程]
次いで、共沈工程により得られた共沈物を焼成する。焼成温度は、350〜500℃であることが好ましく、350〜450℃であることがより好ましい。焼成温度を350℃以上とすることにより、ニッケル酸化物が効率よく得られ、500℃以下とすることにより、ニッケル酸化物の焼結を充分に抑制できる。その結果、最終的に得られるリチウム−ニッケル複合酸化物を、XRDによる「I003/I104」が高い結晶にしやすい。
また、焼成時間は、共沈物中のニッケルやケイ素から酸化物が合成されるために十分な時間であれば特に限定されるものではなく、焼成温度や共沈物の量等を考慮して適宜決定できる。例えば、0.5〜3時間であることが好ましく、0.5〜2時間であることが好ましい。
以上の工程により、本発明の正極活物質の原料である、「ニッケル酸化物」と、「ケイ素酸化物」との混合物(以下、単に「共沈後焼成物」と記載することがある。)が製造される。なお、当該方法では、共沈後焼成物において、ニッケル酸化物の結晶中にケイ素が入り込むことはない。
[リチウム混合工程]
次いで、得られた共沈後焼成物にリチウム原料を混合させる。リチウム原料としては、硝酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム等が使用できるが、好ましくは水酸化リチウムである。
共沈後焼成物とリチウム原料の混合方法は特に限定されるものではなく、共沈後焼成物とリチウム原料を物理的に混合してもよく、共沈後焼成物にリチウム原料を含浸させてもよい。物理的に混合する場合、例えば、共沈後焼成物を粉砕後、リチウム原料を添加し、乳鉢ですり潰しながら十分に混合することにより、共沈後焼成物及びリチウム原料の均一な混合物を得ることができる。
リチウム原料中のリチウムが、共沈後焼成物中のニッケル酸化物及びケイ素酸化物に取り込まれることにより、リチウム−ニッケル複合酸化物とリチウムシリケートを含む本発明の正極活物質が製造される。このため、共沈後焼成物に、当該共沈後焼成物中に含まれるニッケルのモル数の1〜1.2倍のモル数と、当該共沈後焼成物中に含まれるケイ素のモル数の3〜6倍、好ましくは4〜6倍のモル数とを合計したモル数に相当する量のリチウムを含有するリチウム原料を混合させることが好ましい。
[第2焼成工程]
共沈後焼成物及びリチウム原料の混合物を、600〜700℃で焼成する。焼成温度を600℃以上とすることにより、一般式(1)で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶を合成することができ、700℃以下とすることにより、リチウムの揮散を防ぐことができる。その結果、最終的に得られるリチウム−ニッケル複合酸化物を、XRDによる「I003/I104」が高い結晶にしやすい。
第2焼成工程により得られた焼成物が本発明の正極活物質である。当該製造方法では、ニッケルとケイ素を共沈させた共沈物を焼成した後、得られた共沈後焼成物にリチウムを担持させることによって本発明の正極活物質を製造する。共沈後焼成物中では、ニッケル酸化物とケイ素酸化物が比較的近接して存在しており、このため、当該共沈後焼成物にリチウムを担持させることによって、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶とリチウムシリケートが比較的近接して存在する正極活物質が得られると推察される。
第2焼成工程により得られた焼成物を粉砕したものが、本発明の正極活物質の一次粒子である。粉砕方法は特に限定されるものではなく、乳鉢等によりすり潰してもよく、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕してもよい。
[金属Mを含有する正極活物質]
リチウム−ニッケル複合酸化物として、前記一般式(1)で表される化合物のうち、0<y<0.2である化合物を含む正極活物質を製造する場合、すなわち、金属Mとしてコバルト、鉄、及びアルミニウムから選択される1種以上の元素を含む正極活物質を製造する場合には、共沈工程において、ケイ素化合物溶液又はニッケル化合物溶液の少なくとも一方に、コバルト、鉄、又はアルミニウムを溶解させておき、これらの原子をニッケル及びケイ素と共沈させた後、得られた共沈物を第1焼成工程により焼成することが好ましい。コバルト等の金属Mを共に共沈させることにより、ケイ素酸化物と、金属Mがニッケル酸化物の格子内に組み込まれたニッケル複合酸化物(Ni1−y、0<y<0.2)とを得ることができる。なお、金属Mは、そのほとんどがニッケル酸化物の結晶中に入り込み、結晶中のニッケル原子と置き換わった状態で存在する。その後、得られた共沈後焼成物に、前記したリチウム混合工程によってリチウムを混合させた後、さらに焼成することにより、金属Mを含むリチウム−ニッケル複合酸化物(LiNi1−y、0<y<0.2)の結晶及びリチウムシリケートを含む正極活物質が得られる。共沈によりこれらの金属を含有させることにより、結晶中にリチウム、ニッケル、金属M(アルミニウム、コバルト、鉄)をより均一に分散させることができる。
金属Mとしてコバルトを含有させる場合には、コバルト原料として、硫酸コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト等の化合物を用いることができる。また、鉄を含有させる場合には、鉄原料として、硫酸鉄、硝酸鉄、炭酸鉄等を用いることができる。アルミニウムを含有させる場合には、アルミニウム原料として、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト等を用いることができる。これらの金属Mの原料は、ケイ素化合物溶液又はニッケル化合物溶液のうち、酸性水溶液である方に溶解させることが好ましい。また、金属Mの原料を含む酸性溶液を、ケイ素化合物溶液及びニッケル化合物溶液の混合液に添加した後、共沈させてもよい。
また、前記一般式(1)で表される化合物のうち、0<y<0.2である化合物を含む正極活物質は、金属Mを含まない共沈物を得た後に、金属M原料を添加することによっても製造できる。例えば、乾燥処理した後の共沈物に、粉末状の金属M原料を物理的に混合した後、第1焼成工程以降の工程を行ってもよく、第1焼成工程後の共沈後焼成物に、粉末状の金属M原料をリチウム原料と共に物理的に混合した後、後述の第2焼成工程を行ってもよく、第1焼成工程後の共沈後焼成物にリチウム原料と共に金属M原料を含浸させた後に後述の第2焼成工程を行ってもよい。金属M原料としては、ケイ素化合物溶液又はニッケル化合物溶液に添加される金属M原料として例示されたものを用いることができる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極活物質を用いて得られることを特徴とする。
リチウムイオン二次電池は、正極活物質を正極集電体に結着してなる正極と、負極活物質を負極集電体に結着してなる負極と、有機溶媒等の非水溶媒にリチウム塩等の電解質を溶解してなる非水電解液とを主要な構成とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極活物質として本発明の正極活物質を用いる以外は、常法により製造することができる。
正極集電体に結着させる正極活物質は、本発明の正極活物質のみであってもよく、本発明の正極活物質とその他の正極活物質とを組み合わせて用いてもよい。また、負極活物質としては、例えば黒鉛やコークス等の炭素材料や金属リチウム等を用いることができる。正極集電体としては、板状のアルミニウム等が用いられ、負極集電体としては、板状の銅等が用いられる。非水溶媒としては、エチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、及びこれらの混合溶媒等を用いることができる。電解質としては、LiPF等のリチウム塩を用いることができる。
正極又は負極は、例えば正極活物質又は負極活物質、導電助剤、バインダー、及び分散剤等を混合して、適当な粘度に調整した活物質ペーストを作製し、この活物質ペーストを集電体に塗工し、プレスして作製することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものではなく、コイン型であってもよく、円筒型であってもよく、角型であってもよく、ポリマータイプ(ラミネートフィルムで包まれた角型形状のもの)であってもよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら制限されるものではない。
[実施例1]
イオン交換水1Lに、Ni(SO)・6HO(和光純薬製)126.5g、ベーマイトAP−3(触媒化成工業製)1.24gを加え、80℃に加温し酸性のニッケル化合物溶液を得た。別途用意したイオン交換水1Lに、コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム59.4gを加え、80℃に加温し塩基性のケイ素化合物溶液を得た。ニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を80℃に保持しながら、ケイ素化合物溶液をニッケル化合物溶液に30分間連続的に加えて1時間攪拌することにより、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量をニッケル化合物溶液に加えた時点における混合液のpHは7.1であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより共沈物aを得た。
続いて、この共沈物aを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した共沈物a3.004gと水酸化リチウム(関東化学製)2.917gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、得られた混合物Aを660℃にて3時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Aを得た。正極活物質A中のLiNi1−yAlにおけるx、yは、元素分析の結果から、それぞれ1.14、0.038であった。また、正極活物質A中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。
得られた正極材活物質A中のケイ素の量を元素分析により測定した結果を表1に示す。なお、この測定値は、仕込み量から計算される数値とほぼ一致した。
得られた正極材活物質Aの粉末X線回折パターンを以下に示す条件で測定した。測定条件と結果を図1に示す。この測定結果から前記したScherrerの式により結晶子径を算出した。結果は表1に示す。また、LiNi1−yAl結晶の(003)面/(104)面の強度比I003/I104についても表1に示す。
(XRD測定条件)
粉末X線回折装置:RINT−2500V(リガク製)、
X線::
単色化:CuKα線、管電圧:50kV、管電流:150mA、
ゴニオメーター:縦型
検出器:シンチレーションカウンター
走査軸:2θ/θ
走査モード:連続
スキャン::
スキャンステップ:0.002°、スキャンスピード:0.25°/min
スリット::
固定スリット:使用、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm
以上のようにして得られた正極活物質A0.2258gを、ケッチェンブラック 0.01257g及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)0.01261gと混合して乳鉢にて30分間混練りした。その後、この混練り物にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)300μLを添加してアルミ箔に塗布して乾燥させ、コインセル電池の正極に使用する塗布電極を作製した。作製した塗布電極は直径14mmで、活物質の厚さは13μmであった。この塗布電極を正極に、金属リチウムを負極として、不活性ガス雰囲気でリチウムイオン電池の2032コインセルを作製した。
このコインセルを充放電評価装置(北斗電工製、製品名:HJ1001−SD8)に装填し、25℃、不活性ガス雰囲気で、正極活物質Aの充放電特性を評価した。この評価は、Cレート換算で0.1C、及び1Cに相当する電流値での定電流モードで、カットオフ電位3Vから4.3V vs. Li/Liで行った。
[実施例2]
イオン交換水1Lに、Ni(SO)・6HO(和光純薬製)126.5g、ベーマイトAP−3(触媒化成工業製)1.24gを加え、80℃に加温し酸性のニッケル化合物溶液を得た。別途用意したイオン交換水1Lに、コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)17.0g、炭酸ナトリウム59.4gを加え、80℃に加温し、塩基性のケイ素化合物溶液を得た。ニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を80℃に保持しながら、ケイ素化合物溶液をニッケル化合物溶液に30分間連続的に加えて1時間攪拌することにより、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量をニッケル化合物溶液に加えた時点における混合液のpHは7.2であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより共沈物bを得た。
続いて、この共沈物bを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した前駆体b3.001gと水酸化リチウム(関東化学製)2.490gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、この混合物Bを660℃で3時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Bを得た。なお、正極活物質B中のLiNi1−yAlにおけるx、yは、元素分析の結果から、それぞれ1.11、0.036であった。また、正極活物質B中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。この正極活物質Bの充放電特性を、実施例1と同様の条件で評価した。
また、正極活物質Bの中の一次粒子を、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散X線分光法で観察した。透過型電子顕微鏡の写真を図2に、図2中の物質A及び物質Bのエネルギー分散X線分光法の測定結果をそれぞれ図3、4に示す。
図2に示すように、透過型電子顕微鏡写真から、画像の濃淡の異なる2種類の物質が確認された。濃くみえる物質は粒子状であり(図2中の物質A)、この粒子状の物質の周囲に、薄く輪郭があまり鮮明ではない物質が存在していた(図2中の物質B)。濃い粒子状の物質がLiNi1−yAlの結晶であり、薄い物質が非晶質性のリチウムシリケートであると推察された。そこで、図2中の物質A及び物質Bについて、エネルギー分散X線分光法により測定したところ、物質Aはニッケルを多く含んでおり、物質Bはケイ素を多く含んでいたことから、実際に物質AがLiNi1−yAlの結晶であり、物質Bがリチウムシリケートであることが確認された(図3及び4)。
つまり、正極活物質Bの透過型電子顕微鏡写真から、本発明の正極活物質では、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶と結晶の間に、非晶質性のリチウムシリケートが存在していることが確認された。
[実施例3]
実施例1で得られた混合物Aを680℃で3時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Cを得た。なお、正極活物質C中のLiNi1−yAlにおけるx、yは、元素分析の結果から、それぞれ1.10、0.038であった。また、正極活物質C中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。この正極活物質Cの充放電特性を、実施例1と同様の条件で評価した。
[実施例4]
イオン交換水1Lに、Ni(SO)・6HO(和光純薬製)126.5g、ベーマイトAP−3(触媒化成工業製)0.72gを加え、80℃に加温し酸性のニッケル化合物溶液を得た。別途用意したイオン交換水1Lに、コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム59.4gを加え、80℃に加温し、塩基性のケイ素化合物溶液を得た。ニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を80℃に保持しながら、ケイ素化合物溶液をニッケル化合物溶液に30分間連続的に加えて1時間攪拌することにより、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量をニッケル化合物溶液に加えた時点における混合液のpHは7.1であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより、ニッケル化合物からなる共沈物dを得た。
続いて、この共沈物dを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した共沈物d3.004gと水酸化リチウム(関東化学製)2.917gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、得られた混合物Dを660℃にて3時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Dを得た。正極活物質D中のLiNi1−yAlにおけるx、yは、元素分析の結果から、それぞれ1.10、0.024であった。また、正極活物質D中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。この正極活物質Dの充放電特性を、実施例1と同様の条件で評価した。
[比較例1]
イオン交換水1Lに、Ni(SO)・6HO(和光純薬製)126.5g、ベーマイトAP−3(触媒化成工業製)1.24gを加え、80℃に加温し、ニッケル化合物溶液を得た。別途用意したイオン交換水1Lに、コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)4.9g、炭酸ナトリウム59.4gを加え、80℃に加温し、ケイ素化合物溶液を得た。ニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を80℃に保持しながら、ケイ素化合物溶液をニッケル化合物溶液に30分間連続的に加えて1時間攪拌することにより、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量を酸性溶液に加えた時点における混合液のpHは7.2であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより共沈物eを得た。
続いて、この共沈物eを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した前駆体e3.002gと水酸化リチウム(関東化学製)1.985gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、この混合物Eを660℃にて3時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Eを得た。なお、正極活物質E中のLiNi1−yAlにおけるx、yは、元素分析の結果から、それぞれ1.10、0.038であった。また、正極活物質E中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。この正極活物質Eの充放電特性を、実施例1と同様の条件で評価した。
[比較例2]
イオン交換水1Lに、Ni(SO)・6HO(和光純薬製)126.5g、ベーマイトAP−3(触媒化成工業製)1.24gを加え、80℃に加温し、ニッケル化合物溶液を得た。別途用意したイオン交換水1Lに、コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)86.6g、炭酸ナトリウム59.4gを加え、80℃に加温し、ケイ素化合物溶液を得た。ニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を80℃に保持しながら、ケイ素化合物溶液をニッケル化合物溶液に30分間連続的に加えて1時間攪拌することにより、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量を酸性溶液に加えた時点における混合液のpHは7.2であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより共沈物fを得た。
続いて、この共沈物fを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した前駆体f3.002gと水酸化リチウム(関東化学製)1.985gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、この混合物Fを660℃にて3時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Eを得た。正極活物質E中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。この正極活物質Eの充放電特性を、実施例1と同様の条件で評価した。
[比較例3]
実施例1で得られた混合物Aを750℃で10時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Gを得た。なお、正極活物質G中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。この正極活物質Gの充放電特性を、実施例1と同様の条件で評価した。
[比較例4]
実施例1で得られた混合物Aを570℃で10時間焼成し、LiNi1−yAlとリチウムシリケートからなる正極活物質Hを得た。なお、正極活物質H中のリチウムシリケートは、元素分析の結果から、LiSiOと推定された。この正極活物質Hの充放電特性を、実施例1と同様の条件で評価した。
表1に示すように、正極活物質中のリチウムシリケートの含有量がケイ素換算で1〜10質量%であり、かつLiNi1−yAlの結晶子径が30〜100nmである正極活物質A〜D(実施例1〜4)は、0.1Cに相当する電流値での定電流モードにおける充放電サイクルにおける、1サイクル目の放電容量に対する、30サイクル目の放電容量の低下量(0.1Cに相当する電流値での定電流モードにおける充放電サイクル時の放電容量の低下量)が少なかった。また、0.1Cに相当する電流値での定電流モードと1Cに相当する電流値での定電流モードでの30サイクル目の放電容量の比率([1Cに相当する電流値での定電流モードにおける30サイクル目の放電容量]/[0.1Cに相当する電流値での定電流モードにおける30サイクル目の放電容量])(以下、放電容量比率[1C/0.1C])はいずれも80%以上と高く、高い充放電速度でも放電容量の低下は少なかった。
正極活物質中のリチウムシリケートの含有量がケイ素換算で1質量%未満である正極活物質E(比較例1)は、0.1Cに相当する電流値での定電流モードにおける充放電サイクル時の放電容量の低下量は、正極活物質A〜Dと同程度に少なかったものの、放電容量比率[1C/0.1C]は45%であり、正極活物質A〜Dよりも明らかに低かった。
正極活物質中のリチウムシリケートの含有量がケイ素換算で10質量%超である正極活物質F(比較例2)は、0.1Cに相当する電流値での定電流モードにおける充放電サイクル時の放電容量の低下量、放電容量比率[1C/0.1C]のいずれも、正極活物質A〜Dと同程度であったものの、放電容量自体が正極活物質A〜Dよりも明らかに低かった。
結晶子径が100nmよりも大きかった正極活物質G(比較例3)では、放電容量比率[1C/0.1C]は正極活物質A〜Dよりもやや小さい程度であったが、0.1Cに相当する電流値での定電流モードにおける充放電サイクル時の放電容量の低下量が正極活物質A〜Dよりも明らかに多かった。
結晶子径が30nmよりも小さかった正極活物質H(比較例4)では、[I003/I104]が1.2よりも小さかった。また、正極活物質Hの0.1Cに相当する電流値での定電流モードにおける充放電サイクル時の放電容量の低下量及び放電容量比率[1C/0.1C]は、正極活物質A〜Dと同等かやや小さい程度であったが、放電容量自体が正極活物質A〜Dよりも明らかに低かった。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物と、リチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質とを含み、
    前記リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径が30〜100nmであり、
    前記非晶質性物質の含有量が、ケイ素換算で1〜10質量%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
    一般式(1)・・・LiNi1−y
    [式中、MはCo、Fe、及びAlから選択される1種以上の元素を表し、0.5<x<1.5であり、0≦y<0.2である。]
  2. 前記非晶質性物質が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
    一般式(2)・・・LiSi
    [式中、a及びbは、それぞれ独立して正の実数である。]
  3. 前記リチウム−ニッケル複合酸化物の少なくとも一部の結晶において、結晶間に前記非晶質性物質が存在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて得られることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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