以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明における一実施の形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられる。この表示装置は、基板111の上に表示領域110が形成されたものである。基板111上の表示領域110の周辺には、例えば映像表示用のドライバである信号線駆動回路120、走査線駆動回路130および電源供給線駆動回路140が形成されている。
表示領域110には、マトリクス状に二次元配置された複数の有機発光素子10(10R,10G,10B)と、それらを駆動するための画素駆動回路150とが形成されている。画素駆動回路150において、列方向(Y方向)には複数の信号線120A(120A1,120A2,・・・,120Am,・・・)が配置され、行方向(X方向)には複数の走査線130A(130A1,・・・,130An,・・・)および複数の電源供給線140A(140A1,・・・,140An,・・・)が配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの各交差点に、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つが対応して設けられている。各信号線120Aは信号線駆動回路120に接続され、各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、各電源供給線140Aは電源供給線駆動回路140に接続されている。
信号線駆動回路120は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧を、信号線120Aを介して選択された有機発光素子10R,10G,10Bに供給するものである。
走査線駆動回路130は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。走査線駆動回路130は、各有機発光素子10R,10G,10Bへの映像信号の書き込みに際し行単位でそれらを走査し、各走査線130Aに走査信号を順次供給するものである。
電源供給線駆動回路140は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。電源供給線駆動回路140は、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し互いに異なる第1電位および第2電位のいずれかを適宜供給する。これにより、後述する駆動トランジスタTr1の導通状態または非導通状態の選択が行われる。
画素駆動回路150は、基板111と有機発光素子10との間の階層(後述の画素駆動回路形成層112)に設けられている。図2に、画素駆動回路150の一構成例を表す。図2に示したように、画素駆動回路150は、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、有機発光素子10とを有するアクティブ型の駆動回路である。有機発光素子10は、電源供給線140Aおよび共通電源供給線(GND)の間において駆動トランジスタTr1と直列に接続されている。駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
書込トランジスタTr2は、例えばドレイン電極が信号線120Aと接続されており、信号線駆動回路120からの映像信号が供給されるようになっている。また、書込トランジスタTr2のゲート電極は走査線130Aと接続されており、走査線駆動回路130からの走査信号が供給されるようになっている。さらに、書込トランジスタTr2のソース電極は、駆動トランジスタTr1のゲート電極と接続されている。
駆動トランジスタTr1は、例えばドレイン電極が電源供給線140Aと接続されており、電源供給線駆動回路140による第1電位または第2電位のいずれかに設定される。駆動トランジスタTr1のソース電極は、有機発光素子10と接続されている。
保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート電極(書込トランジスタTr2のソース電極)と、駆動トランジスタTr1のソース電極との間に形成されるものである。
図3に、XY平面に広がる表示領域110の一構成例を表す。ここでは、第2電極層16、保護膜18および封止基板19(いずれも後出)を取り去った状態の表示領域110を、上方から眺めた平面構成を表す。表示領域110には、複数の有機発光素子10が、全体としてマトリックス状に順に配列されている。より詳細には、補助配線層としての金属層17が格子状に設けられており、それによって区画された各領域に有機発光素子10R,10G,10Bが1つずつ配置されている。有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、素子分離絶縁層24によって輪郭が規定された発光領域20を含んでいる。図3において、発光領域20を取り囲む矩形の破線は、有機発光素子10に含まれる第1電極層13(後出)を表している。有機発光素子10Rは赤色光を発し、有機発光素子10Gは緑色光を発し、有機発光素子10Bは青色光を発する。ここでは、同色光を発する有機発光素子10をY方向に一列に並べ、それをX方向に順に繰り返し配置するようにしている。したがって、X方向において隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
X方向において有機発光素子10同士に挟まれた複数の間隙領域VZには、Y方向へ延在する信号線120A(図3では示さず)が設けられている。また、図3に示したように、素子分離絶縁層24には、Y方向に隣り合う有機発光素子同士の間の金属層17と重なる領域の一部にいくつかの開口24Kが設けられている。この開口24Kに囲まれた領域では、金属層17と有機発光素子10の第2電極層16との接続を図るための接続部21が構成される。なお、X方向およびY方向に並ぶ有機発光素子10の数は任意に設定されるものであり、図3に示した数に限定されるものではない。また、1つの画素を4以上の有機発光素子によって構成してもよいし、白色光を発する有機発光素子をさらに設けるようにしてもよい。
図4は、表示領域110における、図3に示したIV−IV線に沿ったXZ断面の概略構成を示すものである。図4に示したように、表示領域110では、基板111に画素駆動回路形成層112が設けられてなる基体11の上に、有機発光素子10を含む発光素子形成層12が形成されている。有機発光素子10の上には、保護膜18と封止基板19とが順に設けられている。有機発光素子10は、基板111の側から、アノード電極としての第1電極層13、発光層14C(後出)を含む有機層14、およびカソード電極としての第2電極層16が各々順に積層されたものである。有機層14および第1電極層13は、素子分離絶縁層24によって有機発光素子10ごとに分離されている。一方、第2電極層16は、全ての有機発光素子10に共通して設けられている。金属層17は、開口24Kに対応した領域を除き、素子分離絶縁層24によって埋設されている。
素子分離絶縁層24は、隣り合う有機発光素子10における第1電極層13および有機層14同士の隙間を埋めるように設けられている。素子分離絶縁層24は、例えばポリイミドなどの有機材料からなり、第1電極層13と、第2電極層16および金属層17との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10の発光領域20を正確に画定するものでもある。
有機発光素子10を覆う保護膜18は、窒化ケイ素(SiNx )などの絶縁材料からなる。また、その上に設けられた封止基板19は、保護膜18や接着層(図示せず)などと共に有機発光素子10を封止するものであり、発光層14Cにおいて発生した光を透過する透明なガラスなどの材料により構成されている。
次に、図4に加えて図5および図6を参照して、基体11および有機発光素子10の詳細な構成について説明する。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは、互いに有機層14の構成が一部異なることを除き、他は共通の構成であるので、以下では、まとめて説明する。
図5は、一の有機発光素子10における、画素駆動回路形成層112に設けられた画素駆動回路150の平面構成を表す概略図である。なお、図4は、図5に示したIV−IV線に沿った断面に相当する。また、図6は図4に示した有機層14の断面の一部を拡大して表したものである。
基体11は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板111に、画素駆動回路150を含む画素駆動回路形成層112が設けられたものである。基板111の表面には、第1階層の金属層として、駆動トランジスタTr1のゲート電極である金属層211Gと、書込トランジスタTr2のゲート電極である金属層221Gと、信号線120Aの一部(図5)とがそれぞれ設けられている。これら金属層211G,221Gおよび信号線120Aは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などからなるゲート絶縁膜212によって覆われている。
駆動トランジスタTr1において、ゲート絶縁膜212上の、金属層211Gに対応する領域の一部には、アモルファスシリコンなどの半導体薄膜からなるチャネル層213が設けられている。チャネル層213上には、その中心領域であるチャネル領域213Rを占めるように絶縁性のチャネル保護膜214が設けられており、その両側の領域には、n型アモルファスシリコンなどのn型半導体薄膜からなるドレイン電極215Dおよびソース電極215Sが設けられている。これらドレイン電極215Dおよびソース電極215Sは、チャネル保護膜214によって互いに分離されており、それらの端面がチャネル領域213Rを挟んで互いに離間している。さらに、ドレイン電極215Dおよびソース電極215Sをそれぞれ覆うように、第2階層の金属層として、ドレイン配線としての金属層216Dおよびソース配線としての金属層216Sが設けられている。金属層216Dおよび金属層216Sは、例えばチタン(Ti)層、アルミニウム(Al)層、およびチタン層を順に積層した構造を有するものである。書込トランジスタTr2においても、駆動トランジスタTr1と同様の構成となっている。なお、図5では、第1階層の金属層としての金属層221Gと、第2階層の金属層としての金属層226D(ドレイン配線)および金属層226S(ソース配線)とを、書込トランジスタTr2の構成要素として記載している。
第2階層の金属層としては、上記の金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sのほか、走査線130Aおよび電源供給線140Aが設けられている。なお、ここでは、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)の駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2について説明したが、スタガー構造(いわゆるトップゲート型)のものであってもよい。また、信号線120Aについては、走査線130Aおよび電源供給線140Aとの交差点以外の領域では第2階層の金属層として設けるようにしている。
画素駆動回路150は、窒化ケイ素などからなる保護膜(パッシベーション膜)217によって全体的に覆われており、その上には、さらに絶縁性の平坦化膜218が設けられている。平坦化膜218は、その表面が極めて高い平坦性を有するものであることが望まれる。また、平坦化膜218および保護膜217の一部領域には、微細な接続孔124が設けられている(図5参照)。平坦化膜218は、特に保護膜217に比べて厚みが大きいので、例えばポリイミド等の有機材料など、パターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。接続孔124には第1電極層13が充填されており、駆動トランジスタTr1のソース配線を構成する金属層216Sとの導通がなされている。
平坦化膜218の上に形成された第1電極層13は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有する材料によって構成することが発光効率を高める上で望ましい。そのため、第1電極層13は、アルミニウム(Al)やアルミニウムネオジウム合金(AlNd)などの高反射率材料によって構成される。なお、アルミニウムは、素子分離絶縁層24の開口24Kを形成する際の現像処理に用いる現像液に対し、耐性が低く腐食しやすい。これに対し、AlNdは、現像液に対して耐性が高く腐食しにくい。したがって、第1電極層13は、AlNdからなる単層構造、もしくは、アルミニウム層とAlNdとの2層構造「Al層(下層)\AlNd層(上層)」とするとよい。特に、Al層(下層)\AlNd層(上層)の2層構造の場合、単層のAlNd層と比べて低抵抗となるので好ましい。第1電極層13は、全体の厚みが例えば100nm以上1000nm以下である。さらに、第1電極層13を2層構造とし、そのうちの上層(有機層14と接する層)を上記の高反射率材料によって構成し、下層(平坦化膜218と接する層)をモリブデン(Mo)やその化合物(合金)などの、低反射率材料によって構成するようにしてもよい。このように、駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2が設けられた画素駆動回路形成層112と接する面に光吸収率の高い層を設けることにより、外光や有機発光素子10から洩れた光などの不要光を吸収することができるからである。なお、第1電極層13は、上述したように、平坦化膜218の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成されている。
有機層14は、素子分離絶縁層24によって画定された発光領域20に全面に亘って隙間無く形成されている。有機層14は、例えば図6に示したように、第1電極層13の側から正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dが順に積層された構成を有する。但し、発光層14C以外の層は、必要に応じて設ければよい。
正孔注入層14Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層14Bは、発光層14Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層14Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層14Dは、発光層14Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層14Dと第2電極層16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
また、有機層14は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっている。有機発光素子10Rの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
有機発光素子10Gの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
有機発光素子10Bの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
第2電極層16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。第2電極層16は、例えば全ての有機発光素子10R,10G,10Bに共通に設けられており、各有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極層13と対向配置されている。さらに第2電極層16は、有機層14のみならず、素子分離絶縁層24をも覆うように形成されている。
図4に示したように、素子分離絶縁層24は、間隙領域VZにおいて凸部24Tを有している。間隙領域VZとは、上述したように、互いに異なる色光を発光する有機発光素子10の並び方向であるX方向において隣り合う有機発光素子10同士に挟まれた領域である。
図7に、図4に示した凸部24Tの近傍を拡大して表す。信号線120Aは、間隙領域VZのうち、厚さ方向(Z方向)において素子分離絶縁層24の凸部24Tと重なり合う重複領域DZに配置されている。また、X方向において隣り合う有機発光素子10における第2電極層16同士は、素子分離絶縁層24の凸部24Tによって互いに分離されている。凸部24Tは、その上面24TSと側壁24WSとのなす角α,βのうちの少なくとも一方が90°以下(好ましくは90°未満)となっている。具体的には例えば図7のように矩形の断面形状を有し、あるいは例えば図8に示した他の構成例のように逆台形の断面形状を有している。このような凸部24Tの存在により、例えば蒸着法により、第2電極層16の構成材料を表示領域110の全体に亘って一括して堆積させた場合であっても、隣り合う有機発光素子10における第2電極層16同士が必然的に分離されることとなる。エッジ24EGにおける角度α,βが90°以下であることからその近傍には被蒸着材料が堆積しづらく、結果的に発光領域20に設けられた第2電極層16と、凸部24Tの上面TSを覆う金属層16Zとがエッジ24EGにおいて途切れるからである。特に凸部24Tが図8のように逆台形の断面形状を有する場合に、より確実に第2電極層16同士が分断される。
このように第2電極層16は、重複領域DZにおいて分断されているので、その平面形状は、ここではY方向を長手方向とする短冊形状となっている(図9参照)。図9は、基板111上に設けられた第2電極層16およびその周辺の配線パターンの平面形状を表す概略図である。図9に示したように、この表示装置では、複数の第2電極層16が各々表示領域110を貫くようにY方向へ延在すると共に互いにX方向に並んでいる。さらに、複数の第2電極層16の両端は、それぞれ共通の配線パターンに接続されており、パッドP1〜P4を介して共通電源供給線GND(図2参照)と接続されている。
図10に、図3に示した接続部21近傍の断面を拡大して表す。金属層17は、第1電極層13と同様に平坦化膜218の表面に形成されており、主たる電極としての第2電極層16における電圧降下を補う補助配線として機能するものである。すでに述べたように、金属層17は、開口24Kの領域内の接続部21において第2電極層16によって覆われており、第2電極層16と電気的に接続された状態となっている(図10参照)。また、図4,図7および図8に示したように、間隙領域VZにおける金属層17は、間隙領域VZのうちの重複領域DZ以外の領域に設けられ、信号線120Aと平行に延在している。
この金属層17が存在しない場合、電源(図示せず)から個々の有機発光素子10R,10G,10Bまでの距離に応じた電圧降下により、共通電源供給線GND(図2参照)と接続された第2電極層16の電位が各有機発光素子10R,10G,10B間で一定とならず、顕著なばらつきを生じ易い。このような第2電極層16の電位のばらつきは、表示領域110における輝度むらの原因となるので好ましくない。金属層17は、表示装置が大画面化した場合であっても電源から第2電極層16に至るまでの電圧降下を最小限度に抑え、このような輝度むらの発生を抑制するように機能する。
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。以下、図4〜図7などを参照して、本実施の形態の表示装置の製造方法について説明する。
まず、上述した材料よりなる基板111の上に、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2を含む画素駆動回路150を形成する。具体的には、まず、基板111上に例えばスパッタリングにより金属膜を形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングによりその金属膜をパターニングすることで、基板111上に金属層211G,221Gと、信号線120Aの一部とを形成する。次いで、全面をゲート絶縁膜212によって覆う。さらに、ゲート絶縁膜212の上に、チャネル層、チャネル保護膜、ドレイン電極およびソース電極、ならびに、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sを順に、所定形状に形成する。ここで、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sの形成と併せて、信号線120Aの一部、走査線130Aおよび電源供給線140Aを第2の金属層として各々形成する。その際、金属層221Gと走査線130Aとを接続する接続部、金属層226Dと信号線120Aとを接続する接続部、金属層226Sと金属層211Gとを接続する接続部を予め形成しておく。そののち、全体を保護膜217で覆うことにより、画素駆動回路150を完成させる。その際、保護膜217における金属層216S上の所定位置に、ドライエッチングなどにより開口を形成しておく。
画素駆動回路150を形成したのち、スピンコート法などにより、例えばポリイミドを主成分とする感光性樹脂を全面に亘って塗布する。次に、その感光性樹脂に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより、接続孔124を有する平坦化膜218を形成する。具体的には、例えば所定位置に開口を有するマスクを用いた選択的な露光および現像により、保護膜217に設けられた開口と連通する接続孔124を形成する。そののち、平坦化膜218を必要に応じて焼成してもよい。これにより画素駆動回路形成層112を得る。
さらに、上述した所定の材料よりなる第1電極層13および金属層17を形成する。具体的には、例えばスパッタリングによって上述の材料からなる金属膜を全面成膜したのち、その積層膜上に所定のマスクを用いて所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成する。さらにそのレジストパターンをマスクとして用い、金属膜の選択的なエッチングを行う。その際、第1電極層13については、平坦化膜218の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成する。また、金属層17については、平坦化膜218の表面に、第1電極層13の周囲を取り囲み、かつ、信号線120Aと重ならないように形成する。金属層17は、第1電極層13と同種の材料を用いて、第1電極層13と共に一括して形成することが望ましい。
こののち、隣り合う第1電極層13同士の隙間を充填し、かつ、金属層17を覆うように素子分離絶縁層24を形成する。その際、所定位置に開口24Kを設けるようにする。さらに、信号線120Aと重なり合う重複領域DZに、Y方向へ延在する凸部24Tを形成する。凸部24Tは、例えばハーフトーンマスクを用いた露光処理により形成する。あるいは、多重露光処理を行うことにより、凸部24Tを形成してもよい。
次いで、第1電極層13のうち、露出している部分を完全に覆うように上述した所定の材料および厚みの正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dを、例えば蒸着法によって順に積層することで有機層14を形成する。さらに、有機層14を挟んで第1電極層13と対向するように覆い、かつ、接続部21において金属層17を覆うように全面に亘って第2電極層16を形成することで有機発光素子10を完成させる。その際、凸部24Tのエッジ24EGによってX方向において分断されるように第2電極層16の厚さを調整する。
こののち、全体を覆うように、上述した材料よりなる保護膜18を形成する。最後に、保護膜18の上に、接着層を形成し、この接着層を間にして封止基板19を貼り合わせる。以上により、表示装置が完成する。
このようにして得られた表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書込トランジスタTr2のゲート電極(金属層221G)を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。その一方で、電源供給線駆動回路140が、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し第2電位よりも高い第1電位を供給する。これにより駆動トランジスタTr1の導通状態が選択され、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極層13と第2電極層16との間で多重反射し、第2電極層16、保護膜18および封止基板19を透過して取り出される。
以上、説明したように、本実施の形態では、X方向に隣り合う第2電極層16同士が、間隙領域VZにおいて素子分離絶縁層24の凸部24Tによって互いに分離されている。そのうえ、有機発光素子10を駆動する画素駆動回路150に含まれる信号線120Aが、間隙領域VZのうち、厚さ方向(Z方向)において凸部24Tと重なり合う重複領域DZに配置されてY方向に延在している。このため、信号線120Aと、有機発光素子10を構成する第1電極層13および第2電極層16との間に、不要な寄生容量が形成されるのを回避することができ、あるいは、その大きさを十分に低減することができる。その結果、意図しない信号遅延の発生を抑制し、所定の映像信号に対応した正確な画像表示を実現することが可能となる。
また、本実施の形態では、Y方向に延在すると共にX方向に並ぶ複数の第2電極層16は、素子分離絶縁層24に予め凸部24Tを形成しておき、表示領域110の全体を覆うように所定材料を堆積させることにより、自ずと形成されるものである。したがって、高精度のパターニング処理を要することなく、信号線120Aと重なり合わない領域(重複領域DZ以外の領域)に第2電極層16を適切かつ容易に配置することができる。
なお、スリット状の開口を有するメタルマスクを用いて上記の短冊状の第2電極層16を複数形成する方法も考えられる。しかしながら、第2電極層16の幅が狭小であることから、(スリット幅は20μm程度が限度であるため)それに対応可能なメタルマスク自体の作製が困難である。仮に、そのようなメタルマスクを作製できたとしても、その強度が不足する懸念がある。さらに、メタルマスクのアライメント精度にも限界がある。これに対し、本実施の形態では、素子分離絶縁層24における凸部24Tの形成を、例えばハーフトーンマスクを用いた露光や多重露光により実施することができる。このため、凸部24Tを形成するにあたって高精度の位置制御は要求されない。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、素子分離絶縁層24のうちの重複領域DZに凸部24Tを設けることにより、隣り合う第2電極層16を分離するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図11および図12の第1および第2の変形例のように、重複領域DZに凹部24G1,24G2を設けるようにしてもよい。あるいは、図13に示した第3の変形例のように、重複領域DZにおける素子分離絶縁層24に凹部24G3および凸部24T1,24T2の双方を設けるようにしてもよい。いずれの場合であっても上記実施の形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態では、同色光を発光する有機発光素子10の並び方向(Y方向)に延在する信号線120Aと、第2電極層16との重なりを回避するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばX方向に延在する走査線130Aおよび電源供給線140Aと、第2電極層16との重なりを回避するようにしてもよい。その場合には、素子分離絶縁層のうち、走査線130Aおよび電源供給線140Aと重なる重複領域にX方向に延在する凹部または凸部を形成すればよい。但し、信号線120Aと第2電極層16との重なりを回避することにより、特に以下のような技術上の利点が得られる。一般に、共通の第2電極層16(カソード電極)に対し、それと厚さ方向に重なり合うように複数の信号線120Aが設けられた場合、信号線120Aと第2電極層16との間の寄生容量にばらつきが存在することが多い。この場合、互いに異なる大きさの寄生容量(信号線120Aと第2電極層16との間の寄生容量)が隣り合うこととなる。このような寄生容量のばらつきは、各有機発光素子10の輝度のばらつきの原因となる。そこで、信号線120Aと第2電極層16との重なりを回避すれば、それらの間における寄生容量の発生を回避することができ、その結果、信号線120Aへの印加電圧を制御することにより、正確な諧調表現を行うことができる。
また、本発明は、上記実施の形態において説明した各層の材料や積層順序、あるいは成膜方法などに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、第1電極層13をアノード、第2電極層16をカソードとする場合について説明したが、第1電極層13をカソード、第2電極層16をアノードとしてもよい。さらに、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層をさらに備えていてもよい。例えば、第1電極層13と有機層14との間に、酸化クロム(III)(Cr2 O3 ),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
加えてまた、上記実施の形態では、第2電極層16が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、第2電極層16は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極層13の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んで半透過性電極に対向する位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設けた上で、有機発光素子10R,10G,10Bを保護膜18で覆うようにし、この保護膜18を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜18を共振部の一部とすることができ、好ましい。
加えてまた、上記各実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。