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JP2011042812A - 強靭性に優れた鍛鋼品の製造法 - Google Patents

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恵太 河野
Yoshihiro Okamura
義弘 岡村
Koichi Uchino
耕一 内野
Yasushi Wakeshima
泰 分島
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Abstract

【課題】蒸気タービンロータ材やガスタービンディスク材などで使用されるNiCrMoV含有鋼の強靭性を高め焼戻脆化感受性を低めた鍛鋼品を提供するものである。
【解決手段】質量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.01〜0.20%、Mn:0.01〜0.50%、Ni:4.10〜4.70%、Cr:1.6〜2.0%、Mo:0.30〜0.50%、V:0.07〜0.15%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鍛鋼部材を、800〜1000℃で焼入れし、500〜700℃で焼戻しすることを特徴とする鍛鋼品の製造法。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱処理後に高強度と高靱性を有しかつ長時間の使用においても焼戻脆化を生じない鋼質で、蒸気タービンロータ材、ガスタービンディスク材、高温圧力容器用材等に使用されるNiCrMoV含有鍛鋼品の製造法に関するものである。
発電プラント事業では、省エネルギー問題などの観点から熱効率を高効率化するために、蒸気タービンの蒸気温度あるいはガスタービンのガス化温度を上昇させる手段や発電プラントの大容量化などが求められている。それらプラントに用いられる大型タービン用部材は、一般に高温用部材と低温用部材に大別され、高温用部材には高温強度に優れたCrMoV鋼、高Cr耐熱鋼、Ni基合金などが使用され、低温用のタービンロータ材やガスタービンディスク材には、強度・靱性に優れたASTM−A469/470に規定されているNiCrMoV鍛造鋼(3.25〜4.00%Ni−1.25〜2.00%Cr−0.25〜0.60%Mo−0.05〜0.15%V鋼)などが一般に使用されている。
また、この種の鋼質を改善したNiCrMoV鋼も多く開発されている。例えば、特許文献1には、質量%でC:0.10〜0.35%、Si:0.35%以下、Mn:1.0%以下、Ni:0.3〜2.5%、Cr:1.5〜3.5%、Mo:0.3〜1.5%、V:0.05〜0.30、W:0.1〜2.0%を含み、さらに必要によってはNb、N、Bの少量を1種または2種以上を含むFe基合金のタービンロータ形状体を1000〜1150℃に加熱して焼鈍した後、900〜970℃に加熱して焼入れ、さらに600〜700℃に加熱して焼戻した、強度と靱性に優れたタービンロータの製造法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲を参照)。
さらに、特許文献2には、質量%でC:0.15〜0.35%、Si:0.15%以下、Mn:1.2%以下、Ni:0.5〜2.0%、Cr:2.0〜2.5%、Mo:0.5〜1.5%、W:0.5〜1.0%、V:0.2〜0.45%を含有し、さらにNb、Ta、Nの少量を1種または2種以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、タービンロータ材やディスク材に使用される高温強度に優れた高靱性低合金鋼が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲を参照)。
また、非特許文献1の「低圧タービンロータ用3.5%NiCrMoV鋼の長時間恒温焼戻脆化におよぼす不純物元素およびSi、Mn量の影響」と題する論文においては、P,Sbなどの不純物元素やSi,Mnは、鋼質を脆化するため低減するのが効果的である旨が開示されている。
あるいは、非特許文献2の「NiCrMoV鋼の強度・衝撃特性に及ぼす化学組成と焼戻し熱処理の影響」と題する論文においては、従来のロータ材鋼組成を供試材にしてNi量の増加によって強度が増し、Sなどの不純物量の極低下に衝撃破面遷移温度(50%FATT)が低温側に移行する改善が認められる旨の記載がある。
タービンロータ用鍛造材としては上記文献以外にも、NiMoVの少量を含有する低合金鋼にCrを8〜13質量%含有させた強靭性のタービンロータ材(特許文献3を参照)や、Niを含有しない低合金系で強靭性に優れたタービンロータ材(特許文献4,5を参照)が開示されている。
特開平1−230723号公報 特開平6−256893号公報 特開平7−118811号公報 特開平8−260091号公報 特開平9−105305号公報
鉄と鋼 Vol.79(1993)No.4 80〜86頁 鉄と鋼 Vol.89(2003)No.6 83〜88頁
低温用のタービンロータやガスタービンディスクは構造的に大型部材であり、部材の表層から中心まで均一で優れた強度・靱性が求められる。このため、これらの低温用大型部材には、低合金鋼の中でも焼入れ性が優れている3.5NiCrMoV鋼の鍛鋼製品が使用されている。さらに、この種の鍛鋼品は380〜500℃の範囲で衝撃抵抗が減少する焼戻脆化感受性が高いために、脆化を助長するP,Sb,Snなどの不純物元素低減化の他に、焼戻脆化を助長するSi,Mn量を低減化する製鋼技術も確立されている。
しかしながら、焼戻脆化感受性の抑制のためにMnを低減する場合、Mnによる焼入れ効果が減少し、大型鍛鋼品の強度および靱性が低下する問題があった。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するものであり、蒸気タービンロータ材やガスタービンディスク材などで使用されるNiCrMoV含有鋼の強靭性を確保しつつも焼戻脆化感受性を低めた鍛鋼品を提供することを目的とする。
本発明者らは、焼戻脆化感受性が低く強靭性に優れた鍛鋼品を製造することを目的に、現在の製鋼技術を考慮しつつ、NiCrMoV鍛鋼部材の成分組成とその含有量、さらには鍛造後の熱処理条件などから種々検討した。そして、4.3%前後のNiを含有するNiCrMoV鋼を鋳造し鍛造した部材を高温度から冷却した場合に、ベイナイト変態領域が低速度側に移行し、またベイナイト変態開始・終了点が低温度側に移行するため、他の鋼種、例えば3.5NiCrMoV鋼や5NiCrMoV鋼よりも緻密なベイナイト組織を生成して強靭性を改善することを知見した。
また、本発明者らは、SiおよびMnの含有量を低減し、さらに必要によってはP,Sn,Sbなど不純物元素の含有量との関係を一定量以下に管理制御することによって、380〜500℃の範囲の長時間使用において衝撃抵抗が減少する焼戻脆化感受性が低められる事も知見した。
本発明は上記知見に基づいて構成したものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.01〜0.20%、Mn:0.01〜0.50%、Ni:4.10〜4.70%、Cr:1.6〜2.0%、Mo:0.30〜0.50%、V:0.07〜0.15%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鍛鋼部材を、800〜1000℃で焼入れし、500〜700℃で焼戻しすることを特徴とする鍛鋼品の製造法。
(2)質量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.01〜0.20%、Mn:0.01〜0.50%、Ni:4.10〜4.70%、Cr:1.6〜2.0%、Mo:0.30〜0.50%、V:0.07〜0.15%を含有し、不可避的不純物であるP,SnおよびSbが、P:0.01%以下、Sn:0.005%以下、Sb:0.003%以下で、Si,Mn,P,Sn,およびSbの含有量については、(Si+Mn)(P+Sn+Sb)×10≦10の関係を満たす、残部がFeおよびその他の不可避的不純物からなる鍛鋼部材を、800〜1000℃で焼入れし、500〜700℃で焼戻しすることを特徴とする鍛鋼品の製造法。
上記の様な成分組成と熱処理で製造された本発明に係るNiCrMoV鍛鋼品は、焼戻温度によっては引張強さで1000MPa以上の高強度を示し、また50%FATTも−100℃以下の優れた靱性を示す。この数値は従来の3.5NiCrMoV鍛鋼品よりも高く、優れた強靭性を示すものである。
衝撃試験片破面の延性破壊部で囲まれた劈開面の単位であるティアリッジ間隔と50%FATTの関係をプロットしたグラフである。
以下、本発明に係る鍛鋼品の製造法について詳細に説明する。
鍛鋼部材となる合金原料を電気炉や真空誘導溶解炉などの溶解炉あるいはさらに真空カーボン脱酸法あるいはエレクトロスラグ再溶解法などを経て目標の成分組成に精錬した溶鋼から、自由鍛造用や型鍛造用など鍛造加工に適する形状の鋼塊を作り、この鋼塊を熱間鍛造加工し、所定形状の鍛造部材に成形する。このときの本発明の鍛鋼部材の成分組成は、本発明の試験結果と検討結果に基づいて本発明が目的の鍛鋼品が製造される範囲から限定したもので、各成分の限定理由について次に説明する。なお、各成分の含有量は質量%表示である。
Cの0.25%以上は、熱処理時の焼入れ性を確保し、またCrなどの他の成分と結合して複炭化物を作り強度を高める有効な成分として含有させるものである。しかしながら0.35%を超える多量なCの含有は、Crの複炭化物を多量に生成し強度が高くなりすぎるために靱性が低下するという問題がある。従って、Cの含有量を0.25〜0.35%に限定した。
Siは、0.01%以上の含有で脱酸効果があり、また溶鋼の流動性を高めると共に鋼の強度を高める効果があるが、0.20%を超える多量な含有量では、鋼中に過度に残存した場合、鋼の清浄度を害し強度と靱性を低下させる。従って、本発明においてSiは、鍛鋼品の靱性を高める最適な範囲として0.01〜0.20%の含有量に限定する。
Mnは、0.01%以上の含有で溶鋼の脱酸効果と焼入性を高めて鍛鋼品の強度と靱性を向上する効果があるが、0.50%を超える多量な含有量では焼入れ性が過度に向上し、逆に靱性を低下する問題を来たす。従って、Mnは0.01〜0.50%の含有量に限定する。
Niは鍛鋼部材の焼入性を向上し、鍛鋼品の優れた値の強度と靱性を付与する有効な成分であり、4.10〜4.70%好ましくは4.20〜4.60とすることが望ましい。これにより、焼入れ時の冷却速度が小さい大型鍛鋼品においても焼入れ後に主として下部ベイナイト組織を呈し、焼戻し後に優れた強度と靱性を得ることができる。また、Ni含有量が4.70%以下では、焼戻し脆化による長時間使用による靱性の低下は起こらない。しかし、Ni含有量が4.10%未満の少ない含有量では焼入れ性の向上が十分でなく、上部ベイナイトを主体とする組織を呈するために強度と靱性の向上に有効でない。また、4.70%を超える過剰な含有量では、過大な焼入れ性の向上によってマルテンサイト組織を主体とする組織を呈し、強度は高いが靱性を損なうという問題がある。従って、Niの含有量は、大型鍛鋼品において優れた強度と靱性が確保され、焼戻し脆化が起こらない4.10〜4.70%に限定した。
Crは耐酸化性を付与すると共に、焼入れ性を増大させて強度を向上させる有効な成分である。しかし、Cr含有量が1.6%未満の少ない含有量ではこれらの有効な効果が得られず、また2.0%を超える過剰な含有量では強度が高くなりすぎて靱性を損なう問題がある。従って、Crの含有量は1.6〜2.0%に限定した。
Moは0.30%以上の含有で、Crと同様に焼入れ性を増大し、また焼戻し処理時の軟化抵抗を大きくして、強度を増加する有効な成分である。しかしながら、0.50%を超える過剰な含有量のMoは、焼入れ性を過大にし、焼入れ・焼戻し後の組織はマルテンサイト主体となるため、十分な靱性が得られない問題がある。従って、Moは強度および靱性のバランスを考慮して0.30〜0.50%に規定した。
Vは、焼戻し処理をした際にマトリックスに微細なV炭窒化物を析出して強度を高める有効な成分として0.07%以上の含有量が必要である。その反対にVが0.15%を超える過剰な含有量は、高い強度が保持できず靱性も低下する傾向がある。従って、Vの含有量は、鍛鋼品の強度と靱性のバランスを考慮して0.07〜0.15%に限定した。
上記の様な成分組成を含有し残部がFeおよび不可避的不純物からなる鍛鋼部材は、本発明が目的とする焼戻脆化感受性が低く強靭性に優れた鍛鋼品を製造することができる。
不可避的不純物として含有されるP,Sn,Sbは、焼戻脆化感受性を増大させる元素であり、極力低減することが望ましい。これら不可避的不純物の許容含有量は、現在の精錬技術または原材料に付随して不可避的に混入する量を考慮して、Pは0.01%以下、Snは0.005%以下、Sbは0.003%以下に限定する。
本発明者らは鋼の強度を高める有効な成分として含有させたSiおよびMnと不可避的不純物として含有されるPとSnとSbが相俟って焼戻脆化感受性を高め靱性を著しく低下する問題を抑制するために、強度増加成分であるSiおよびMnの含有量と不可避的不純物であるP,SnおよびSbの含有量が焼戻脆性に及ぼす相関関係について調査し整理した。その結果、焼戻脆化助長成分であるSiとMnの含有量(単位は質量%)の和と不可避的不純物であるP,Sn,Sbの含有量(単位は質量%)の和の積に、さらに10を掛け合わせた値が10以下を満たせば、焼戻脆化感受性が抑制されることを知見した。すなわち、Si,Mn,P,Sn,およびSbの含有量について、(Si+Mn)(P+Sn+Sb)×10≦10の関係を満たすように鍛鋼部材の成分を製鋼時に調整する事によって焼戻脆化感受性が抑制されることを知見した。
上記関係を満たすようにSi,Mn,P,Sn,およびSbの含有量を調整することで焼戻脆化感受性が抑制される理由は、P,Sn,Sbなどの不純物元素は粒界偏析によって粒界脆化を起こし、また、Si,Mnは上記不純物元素の粒界脆化を加速させる働きがあることによるものと考えられる。
そして、これらの知見によって、必須成分であるC,Si,Mn,Ni,Cr,MoおよびV、ならびに不可避的不純物であるP,SnおよびSbについて上記のような成分組成を含有し、Si,Mn,P,Sn,およびSbの含有量については(Si+Mn)(P+Sn+Sb)×10≦10の関係を満たす、残部がFeおよびその他の不可避的不純物からなる鍛鋼部材は、本発明が目的とする焼戻脆化感受性をより低く抑制し、なおかつ強靭性に優れた鍛鋼品を製造することができる。なお、その他の不可避的不純物とは、P,SnおよびSbを除くその他の不可避的不純物をいう。
上記の様な成分組成に調整され鍛造加工で製品形状に成型された鍛鋼部材は、強靭性などの鍛鋼品に要求される性質を改善するため、加熱温度と冷却操作で操作する各種の熱処理が施される。
先ずは鍛造工程において高温度の熱と過酷な鍛造圧によって粗大化した鋼組織を改善し、またCr,Mo,Vなどの金属炭化物や金属間複炭化物などの析出物を単一な固溶体に溶体化処理するために、鍛鋼部材を800〜1000℃に加熱し、続いて鍛鋼部材の中心部の平均冷却速度が1℃/分以上の速度でベイナイト変態完了温度まで冷却する焼入れ処理を施した後、500〜700℃で焼戻し処理を施す。
焼入れ処理を終えた本発明の鍛鋼焼入れ部材は、主として下部ベイナイト組織を呈しており、焼戻し後の強度は高く、従来のNiCrMoV鍛鋼焼入れ部材に比べて靱性も高く、焼戻脆化感受性も従来鋼と同等の鋼質が得られる。この鋼質はこの焼入れ温度に本発明における鍛鋼部材の成分組成が絡んで得られる作用効果であって、800℃未満の低い焼入れ温度ではオーステナイト化が十分でなく、焼入れ後に下部ベイナイト主体の組織を得ることが難しく、また1000℃を超える過剰な焼入れ温度では結晶粒が粗大化し、焼入れ性が過大となり、焼入れ・焼戻し後の組織はマルテンサイト主体となるために十分な靱性が得られない。
本発明においては、焼入れ処理された鍛鋼焼入れ部材の靱性を改善し、また焼戻脆化感受性を低め要求される材質の鍛鋼品に供するために、500〜700℃に加熱した後過激な熱歪を残さない程度の速さで冷却する焼戻し処理を施す。焼戻し処理は、焼入れ処理を施して低下した靱性や高められた焼戻脆化感受性を要求される強度に配慮しつつ改質するものであって、焼入れ処理で溶体化された金属炭化物などの析出硬化を利用して材質改善するものである。焼戻し処理におけるこの様な作用効果は、500℃未満の低い温度では金属炭化物などの析出が十分でなく、700℃を超える過剰な温度では焼入れ処理効果を消失する問題がある。
また本発明においては、鋳造した際の鋳造組織を微細化したり、あるいは熱間鍛造時の高温度や急冷などで生じた内部歪を除去して標準状態のものにする焼準処理を、必要によっては、熱間鍛造前の鋼塊、または焼入れ処理前の鍛鋼部材に施してもよい。
上記の様な成分組成で製造された例えば蒸気タービンロータ材やガスタービンディスク材、高温圧力容器材などの鍛鋼品は、強度が高く、靱性も優れ、焼戻脆化感受性が低いため、高温域から低温域まで広い用途分野で長期間使用できる。
次に本発明の実施例について説明する。
塩基性電気炉にて溶解し、精錬後、造塊した鋼塊は、1000℃以上で熱間鍛造してガスタービンディスクを想定した鍛造材を製造した。表1は、その時の鍛造材の成分組成、(Si+Mn)(P+Sn+Sb)×10の演算値(以下、J*値と称する。)、熱処理条件、機械的性質および焼戻脆化感受性の評価結果を掲載したものである。供試番号の6〜8、10〜11、13〜16、18〜19、22〜23、26〜27、29〜30は本発明の実施例を示し、その他の供試番号は本発明から逸脱する成分組成または熱処理温度を比較例に挙げたものである。
Figure 2011042812
表1の0.2%耐力、引張強さおよび50%FATTの結果から明らかな様に、本発明鋼(No.4〜5、8〜10、12〜13、15〜18、20〜21、24〜25、28〜29、31〜33)は、下部ベイナイト主体の鋼組織を呈して強度と靱性が高い。特に本発明鋼の50%FATT(℃)は、上部ベイナイト組織主体の鋼組織を呈する比較鋼(No.1〜3、6、19、23、27)およびマルテンサイト組織主体の鋼組織を呈する比較鋼(No.14、22、26、30、34)に比べ相当に低く、優れた低温靱性を示す。
また、本発明鋼は、焼戻温度が低く高強度・低靱性を示す比較鋼(No.7)や焼戻温度が高く低強度・高靱性を示す比較鋼(No.11)と比較し、強度と靱性のバランスに優れている。すなわち本発明鋼は焼戻処理後においても強度・靭性共に優れた鋼質を実証するものである。
ここで、図1は、衝撃試験片破面の延性破壊部で囲まれた劈開面の単位であるティアリッジ間隔と50%FATTの関係をプロットしたグラフである。本発明鋼(No.10、12、16、18、20、21、24、25、33)のティアリッジ間隔は8μm以下を示し、比較鋼(No.1、2、26、30)よりも小さくなることを確認することができる。そして、これにより高靭性を達成していることを確認することができる。上記のように本発明においては成分組成と熱処理条件とを最適化することによって下部ベイナイトを主体とする鋼組織を獲得するところ、当該グラフについても、このような組織を呈することによって衝撃試験時のティアリッジ間隔(破面単位)を小さくし、これにより高靭性が得られることを実証するものである。
更に表1の本発明鋼のうちJ*値が10以下の供試番号8、18、20、21、32は、脆化度ΔFATT(400℃で3000時間時効処理後の50%FATT(℃)−焼戻処理後の50%FATT(℃))がゼロとなるが、これは、本発明鋼においてJ*値を10以下に調整することによって経時劣化を起こす事なく、焼戻脆化温度域においても長時間の利用が可能である事を実証するものである。
上記の実験結果から明らかな様に、本発明で製造された鍛鋼品は、焼戻脆化温度域での長時間使用においても脆化することなく、焼戻脆化感受性が低く強靭性が維持されることが確認された。
上記で述べた様に本発明の鍛鋼成分で製造された鍛鋼品は、強靭性に優れしかも焼戻脆化感受性が低いため、各種のタービン用の部材として、また高温圧力容器材など広い用途分野で長期間にわたって使用できるため、安価なコスト部材として今後益々使用される可能性が高い。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C :0.25〜0.35%、
    Si:0.01〜0.20%、
    Mn:0.01〜0.50%、
    Ni:4.10〜4.70%、
    Cr:1.6〜2.0%、
    Mo:0.30〜0.50%、
    V :0.07〜0.15%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる鍛鋼部材を、800〜1000℃で焼入れし、500〜700℃で焼戻しすることを特徴とする鍛鋼品の製造法。
  2. 質量%で、
    C :0.25〜0.35%、
    Si:0.01〜0.20%、
    Mn:0.01〜0.50%、
    Ni:4.10〜4.70%、
    Cr:1.6〜2.0%、
    Mo:0.30〜0.50%、
    V :0.07〜0.15%を含有し、
    不可避的不純物であるP,SnおよびSbが、
    P :0.01%以下、
    Sn:0.005%以下、
    Sb:0.003%以下で、
    Si,Mn,P,Sn,およびSbの含有量については、
    (Si+Mn)(P+Sn+Sb)×10≦10の関係を満たす、
    残部がFeおよびその他の不可避的不純物からなる鍛鋼部材を、800〜1000℃で焼入れし、500〜700℃で焼戻しすることを特徴とする鍛鋼品の製造法。
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