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JP2010516717A - アルコール性糖ベースのバッファーを有するオキサリプラチン薬学的組成物 - Google Patents

アルコール性糖ベースのバッファーを有するオキサリプラチン薬学的組成物 Download PDF

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Abstract

特に潜在的投与及びオキサリプラチンに感受性がある腫瘍疾患の治療を目的とする薬学的組成物が、活性化合物としてオキサリプラチンと、薬学的に許容可能な水性溶媒と、安定化的に有効な量の安定剤とを含む。安定剤は、中性のアルコール性糖に由来する酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む。このような薬学的組成物を製造する方法では、オキサリプラチンを水性溶媒中に溶解して、直ちに少なくとも1つの中性のアルコール性糖に由来する酸、及び/又は少なくとも1つのこれらの酸のラクトン、及び/又は少なくとも1つのこれらの酸の塩を、得られたオキサリプラチン溶液に添加し、任意でアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を添加することによって、溶液のpH値をpH3.5〜6.5に調整して、直ちに得られた溶液を滅菌し、個々のパッケージユニットに充填して、任意で窒素又はアルゴンで不活性化する。

Description

本件は、アルコール性糖類ベースのバッファーを有するオキサリプラチン薬学的組成物に関する
オキサリプラチンは、白金原子が1,2−シクロヘキサンジアミンとシュウ酸リガンドとの錯体中で結合した白金誘導体群に属する抗新生物化合物である。1978年に、Kidaniによって初めて、異性体の混合物から単離することで、光学的に純粋な形態のオキサリプラチンが調製された。これは化学的には、{トランス−(1R,2R)−1,2−シクロヘキサン−ジアミン}−(オキサラト)白金(II)錯体である。
Figure 2010516717
オキサリプラチン(I)は、水溶性が制限され(37℃で約8mg/ml)、実際にはエーテル及びエタノールに不溶性である白色の微結晶性物質である。
オキサリプラチンは、広範な腫瘍モデルシステムにおいて広範なin vitro細胞傷害性及びin vivo抗腫瘍活性を示す。オキサリプラチンは、シスプラチン耐性モデルにおいてはin vitro及びin vivoでも活性である。オキサリプラチンは、5−FUと併用することで、in vitro及びin vivoで相乗的な細胞傷害効果を示すことが見出されている。
薬剤形態のオキサリプラチン(現在までに世界的に最も売れている)は、オキサリプラチンと好適な構成物質との溶液を凍結乾燥することによって製造した製剤である。
患者に適用する前に、凍結乾燥物を戻し、得られた溶液を、注入媒体(5%グルコース溶液)で最終濃度0.2mg/ml〜0.7mg/mlに希釈する必要がある。通常、85mg/mの用量で2時間〜6時間、末梢静脈への注入形態で、又は中心静脈カテーテルを使用して、オキサリプラチンを投与する。
幾つかの工程でオキサリプラチンを合成する。基本となる合成方法は、Kidaniの研究(非特許文献1)、特許文献1(非特許文献2)及び特許文献2に記載されている。合成の第1の工程は、テトラクロロ白金(II)カリウムと、1,2−シクロヘキサンジアミンのトランス−(1R,2R)異性体との反応を含む。この反応では、テトラクロロ白金(II)アニオン中の2つの塩素リガンドを、好ましい立体配置の中心白金原子を伴う熱力学的に安定な5員環を閉鎖して、錯体[PtCl(dach)]を形成しながら二価のリガンドのアミノ基に置き換える。次の工程で、硝酸銀との反応によって、シュウ酸又はシュウ酸カリウムで処理したアクア錯体[Pt(dach)(HO)2+が得られる。この反応は、その二価のシュウ酸リガンドがさらに中心白金原子を有する安定な5員環を形成するオキサリプラチンを与える。
これは一般的に、文献中に記載される合成経路、又は一連の非常に多くの発明に従った修正を用いたが、付随する不純物として最終産物、即ちオキサリプラチンを不純にする可能性がある非常に多くの有機剤及び無機剤の使用から成る欠点がある。
特に、このような不純物は、アルカリ金属イオン(ナトリウムイオン又はカリウムイオン及びアルカリ土類金属イオン)、銀イオン、及び対応するアニオン、即ち塩化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン又は酢酸イオン、また最後に重要なものとして残留シュウ酸イオンであり得る。したがって、言及した付随する不純物によって、注入製剤に用いられる薬剤形態の品質が低減する。
一般的に知られているように、水溶液中では、オキサリプラチンは、中心白金原子の酸化数が2である単量体及び二量体のアクア錯体を形成しながら分解する。中心白金原子の酸化数が4である分解産物も形成し得る。したがって、これらの分解産物の量が、製剤の毒性プロファイルに大きく影響する。上記のような医療における、即ち静注形態でのオキサリプラチンの現行の使用に関しては、この薬剤形態の長期にわたって保証された高品質、またこれに伴う安全性を確かなものにすることが必須である。
長期にわたって製剤の品質を確かなものにする方法の1つの可能性は、好適な組成物の凍結乾燥物を使用することであり、このプロセスでは、初めに組成物の溶液を凍結した後、溶媒、通常は水の含有量が、低温での昇華、及びその後の分解化学反応を抑えるレベルへの吸収によって低減する。
最終適用形態、即ち液体注入溶液の調製の観点から、凍結乾燥物には或る種の欠点がある。初めに凍結乾燥物を戻し、その後に所望の濃度に希釈しなければいけない。戻している間、凍結乾燥ケーク(cake)を完全に溶解するために溶液の振盪が必要な場合がある。この冗長な手法によって、作業者及び環境が汚染する危険性が高まり、このことは化合物の毒性のために望ましくない。同時に、この手法によって、産物自体の微生物汚染の可能性が高まる。
別の明らかな欠点は、凍結乾燥形態の薬学的産物が非常に高価であり、且つ特別な機器及び熟練者を必要とするため、凍結乾燥形態の産物には技術的及び経済的な要求が多いことである。
凍結乾燥物の再溶解(reconstitution)及び希釈による最終適用形態の複雑な製剤、及び凍結乾燥形態の経済的な要求が多い産物に関連する欠点は、液体形態のオキサリプラチン含有製剤(しかし、凍結乾燥形態と同程度の十分な安定性及び治療効率がなければいけない)によって解決する。
この目的は、これを達成するために様々なアプローチを試みた多くの発明者らによって遂行されている。これらのうちの1つは、活性物質、即ちオキサリプラチンの合成過程で多少効果的な精製プロセスを導入すること、及びその分解を触媒し得る付随する不純物を含まない産物を調製することであった。このため、特許文献3に従って、濾過による塩化銀の除去後にオキサリプラチン溶液に残る残留銀イオンを、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化カリウムの添加によって析出した。
特許文献4の発明者らは、調製されたアクア錯体を逆浸透によって精製し、このようにして言及したアニオン及びカチオン等の付随する不純物を顕著に少ない量しか含有していない最終産物を得た。
特許文献5は、高純度のオキサリプラチンの調製のために高速液体クロマトグラフィを使用する方法を記載している。
活性化合物の効果的な精製は、個々の従来型の精製手法における喪失の結果、また場合によっては最新の分離技法に基づき提案されたアプローチに伴う費用によって、その調製コスト、したがってまた最終薬剤形態の価格を増大させる。
高純度のオキサリプラチンの調製が、即時型非経口適用のためのオキサリプラチンベースの薬学的に安定な製剤を開示する特許文献6に記載されるように、活性化合物及び水だけを含有する溶液を含む液体薬剤形態を得ることを可能にした。この溶液は、濃度が1mg/ml〜5mg/mlのオキサリプラチン水溶液であり、pHが4.5〜6.5の範囲であり、保存の際、許容可能な時間、析出することなく無色透明を維持して、活性化合物の含有量が元の値の95%未満には下がらない。
しかしながら、通常の検査法では検出することができず、精製した活性化合物にも存在し得る微量の不純物によってさえも、活性化合物の分解が触媒される可能性がある。
したがって、オキサリプラチン水溶液は、たとえ精製物質から調製したとしても、常に十分安定ではなかった。そのため、さらなる研究の目的は、分解を開始させる付随する不純物の負の影響から活性化合物を保護すると考えられる様々な安定剤の添加によって、液体オキサリプラチン含有製剤の安定化を増大させることであった。
特許文献7は、オキサリプラチンの溶液によって形成される薬学的に安定な組成物、オキサリプラチン溶液の安定化方法を含む、癌の治療におけるその使用及びその調製を開示している。この方法は、シュウ酸又はそのアルカリ金属塩に基づくバッファーを効果的に安定化する量をオキサリプラチン水溶液に添加することを含む。安定化は、反応平衡移動のル・シャトリエの法則に基づく。オキサリプラチンの分解によってシュウ酸が生じるため、平衡システムにおいて、その添加が分解を抑制し得ると推測される。しかしながら、シュウ酸は毒性があり、腎臓及び他の器官を損傷させる可能性がある。この場合、錯体中のリガンドがキレート結合しているとは考えられないので、シュウ酸及び/又はその塩によるオキサリプラチン溶液の安定化の適合性には疑問が残る。この安定化方法の不適合性は特に、他の特許出願(特許文献8)が、シュウ酸を取り除くためにさらに精製したオキサリプラチンの調製に関するということによって示されている。
オキサリプラチンベースの製剤を安定化する別の方法は、特許文献9に記載されいている。液体製剤の安定化は実際、安定剤として有効量の乳酸、その塩又は乳酸バッファーをオキサリプラチン水溶液に添加することにある。
特許文献10は、マロン酸及び/又はその塩と、水として規定される薬学的に許容可能なビヒクルとを含有する安定な液体注入形態を開示している。その請求項はさらに、マロン酸又はその塩の濃度、溶液のpH、オキサリプラチン量(最大10mg/ml)、オキサリプラチンの純度及び融点、注入溶液の作製方法及びその使用を特定している。
特許文献11は、1,2−プロパンジオール、グリセロール、マルチトール、スクロース及びイノシトールを含む群から選択される少なくとも1つのヒドロキシ誘導体を十分量含有する溶媒中で濃度が少なくとも7mg/mlのオキサリプラチンを含有する液体製剤を開示している。しかしこの場合、この特許は、注入製剤の安定化ではなく、オキサリプラチンの可溶性の増大に関係がある。溶媒中「十分量」の可溶化剤は少なくとも10%であり、最も高濃度のオキサリプラチン(14.01mg/ml又は14.33mg/ml)は、同量の1,2−プロパンジオールと水とから成る溶媒中で達成された。
特許文献11自体は製剤の安定化には関係ないが、関連の特許文献12は、濃度が少なくとも7mg/mlの熱によって滅菌した液体注入形態のオキサリプラチンに関し、これは同じ可溶化剤を含有し、そのため非常に安定であり、高温への加熱にも耐える。
特許文献11で特許請求される化合物の他に、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、ポリアルキレングリコール及びシクロデキストリン等の他のポリヒドロキシ化合物を幾つか調べている。しかしながら言及した特許出願におけるデータによると、これらの化合物は十分に機能するものではなかった。調べた他のオリゴ糖の幾つかは、良好な可溶化剤であると報告されたが、これらは非常に高価である。特許文献11は、注入バッグ及び充填済(pre-filled)シリンジを含む、非経口投与に適した製剤の様々なパッケージング型、並びに液体薬物形態を調製する方法にも関する。
特許文献13は、水と、オキサリプラチンと、さらにグルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース及びデキストランとして特定される生理的に許容可能な糖又はそれらの混合物とを含む薬学的組成物に関する。糖濃度は少なくとも5%であり、オキサリプラチン濃度は、5mg/ml〜25mg/mlであるものとする。糖の他に、液体組成物は、トニファイング(tonifying)(浸透圧調整)物質又はpH調整物質、又は保存剤をさらに含有してもよい。この溶液は、さらにリン酸、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸として特定される酸、並びにそれらの混合物を含有してもよい。
特許文献14は、オキサリプラチンと、水と、シュウ酸を除いた無機酸又は有機酸と、「溶液の安定性に影響しないアニオン」とを含む組成物を開示している。したがってこの酸は、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸及びそれらの混合物として特定される。さらにこの請求項は、安定なオキサリプラチン水溶液を調製するための1つ又は複数の無機酸又は有機酸(シュウ酸を除く)の使用、及びオキサリプラチン溶液を安定化するための酸の使用に関する。
上記特許出願の請求項3によると、この組成物は、浸透圧又はpHを調節する賦形剤、又は不特定の保存剤をさらに含有してもよい。請求項6によって、0.025mg/ml〜25mg/mlの広域濃度のオキサリプラチンが与えられる。
特許文献15は、酒石酸、その塩及びその誘導体を使用する、非経口投与を目的としたオキサリプラチン含有組成物の安定化に関する。対応出願(equivalent application)である特許文献16は、原則としてシュウ酸、乳酸及びマロン酸を除いた任意の「安定剤」を、非経口投与を目的としたオキサリプラチンと共に液体薬学的製剤に投与することを特許請求している。特許文献16の請求項2では、安定化酸はカルボン酸として特定され、請求項3ではジカルボン酸、したがってクエン酸、マレイン酸、糖酸(グルカル酸)、コハク酸、リンゴ酸、及び酒石酸、並びにこれらの混合物として特定される。最終的に、選択して、酒石酸まで減らされる。しかしながら、これらの請求項で挙げられる酸の幾つかは安定剤として明らかに有用ではなく、このことは、特許文献16で直接記載される実施例によって文書化されている。
安定性試験は、40℃で5週間の保存後、乳酸を添加した組成物が、一見したところ金属白金が低減した少量の黒色粒子を沈殿した一方で、糖酸を使用して調製した組成物中で、より多くの白色粒子が見出されたことを示している(特許文献16における33頁の表22を参照されたい)。特許文献16の請求項で挙げられる幾つかの他の酸の不十分な安定化効果は、他の文献に従う。コハク酸の使用は、特許文献10における実施例と、さらに特許文献17を参照するとこれまでに記載されているが、いずれの文献でも特許請求はされていない。またクエン酸及びその塩で形成される酸性のクエン酸バッファー(pH3)の使用が特許文献で記載されているが、これもいずれの請求項でも明らかにされていない(上述の特許文献7の16頁表2、及びその米国の対応特許出願である特許文献17を参照されたい)。
特許文献18は、5mg/mlを超えるオキサリプラチンと、水と、安定剤として有効量のシクロデキストリンとを含む非経口投与用の液体薬学的製剤を保護している。本発明はさらに、癌の治療における製剤の使用、及びこの薬学的製剤を製造する方法に関する。
特許文献19によると、酢酸ナトリウム又は酢酸バッファー(しかし、ごくわずかの濃度、即ち0.005M〜0.00005Mで存在しなければいけない)を添加して、非経口投与用の液体薬剤形態のオキサリプラチンに対する安定化効果を観察した。最良の安定化結果が、pH4〜6で得られた。
安定化溶液中のオキサリプラチンの濃度は、0.1mg/ml〜10mg/ml、好ましくは2mg/ml〜5mg/mlの範囲であり得る。
上記で示されるように、場合によっては驚くべきことに矛盾する化学的特性を伴って、多くの補助物質、有機酸又は無機酸、単糖、二糖及びオリゴ糖、又は高分子化合物を使用して、水中でオキサリプラチンを安定化及び/又は可溶化する試みが行われている。付随する不純物の負の効果に関係なく、主に有効な化合物、即ちオキサリプラチンを安定化する目的で、これらの研究を行った。おそらく、活性化合物の分解の原因を理解せずに、偶然安定化化合物を選択した。またこのことが、言及した特許出願に記載されている結果が矛盾する理由である。他の発明者らによって1つの文献で有力な安定剤として特許請求された化合物は安定化活性を示していなかった。活性化合物中の触媒的に有効な不純物の様々な含有量によって、結果の不一致及び非再現性を説明することができる。このような不純物は一般的に、現在使用されている解析手法では検出することができず、したがってオキサリプラチンの品質確認では見出すことができないくらい微量で存在している。
活性化合物の水性ビヒクル溶液から成るオキサリプラチンの液体組成物は、一見単純である。実際は、これらは非常に複雑なシステムであり、その成分は互いに相互作用し、それらの相互作用がシステムの挙動及び特性に影響する。多くの物理的要因及び化学的要因によって、水性システム中のオキサリプラチンの分解が影響され、これによって不活性であるか、又は最悪の場合、深刻な悪影響がある様々な産物が生じる。
重要な分解反応は、シュウ酸リガンドの喪失及びアクア錯体を形成しながらの水への置き換えである。溶液が白金錯体を形成することができる物質を幾つか含有する場合、主に発生するアクア錯体中でのシュウ酸部分、又は偶然にも水分子を、他のリガンド、例えば溶液がカルボン酸及び/又はそれらの塩を含有する場合にはカルボン酸リガンドに置き換えることもできる。
他の分解反応は、錯体中の白金の酸化状態の変化、即ち三価の白金錯体への酸化、又はこれに対して黒色粒子形態で沈殿し得る金属白金への錯体の還元のいずれかに関連する。
オキサリプラチンの純粋な水溶液中では、このような分解反応は比較的ゆっくりであるが、これらの速度は無視できるものではなく、触媒的に活性のある不純物の存在によって有意に上昇する可能性がある。
シュウ酸リガンドの喪失は、一般的に酸又は塩基で触媒され得る加水分解反応である。
水媒体において、共役酸−塩基対を形成しながら、酸又は塩基が完全に又は部分的にイオン化する。水自体も或る程度までイオン化し、ヒドロニウムカチオン及びヒドロキシルアニオンによって形成される共役対を形成する。他の水分子は、両方のイオンと水素結合によって結合し、それにより水和ヒドロニウム又はH 及びH 又はH 等のヒドロキシルイオンが得られ、これらは加水分解反応に関与する。溶液がカルボン酸等の他の化合物を含有する場合、水和ヒドロニウム及びヒドロキシルイオンの他に、カルボン酸R−COOHとその共役塩基R−COOとの対も関与するシステムにおいて、さらにより多くの錯体平衡が生じる。酸及び塩基の触媒効果は、それらの濃度及び強度によって変わる。平衡システムにおいて、酸及びそれらの共役塩基の濃度は、媒体のpHによって変わる。酸強度の評価基準は、解離定数pKの値である。酸の解離が容易になれば、酸は強くなり、逆に共役塩基は弱くなる。
したがって、酸、又は酸とその塩との混合物によって形成されるバッファーを添加してpHを調整することによって、オキサリプラチン水溶液の分解における酸−塩基触媒の有効性にも影響し得ることは明らかである。理論上は、オキサリプラチン水溶液は中性値のpHで最も安定であるものとする。
オキサリプラチン分子からのシュウ酸の切断は2工程の平衡プロセスである。第1の工程では、単座シュウ酸中間体を形成しながら、シュウ酸5員環を切断し、第2の工程でジアクア錯体を形成しながらシュウ酸イオンを喪失する。両方の反応速度は、ヒドロキシルイオンの濃度によって変わり、シュウ酸の開環は、シュウ酸イオンの喪失よりも約6倍早い(E. Jerrelmam et al.、非特許文献3)。この平衡反応のために、オキサリプラチン(oxyliplatinum)水溶液の最適な安定性は、弱酸性領域、即ちpH4〜6に移る。オキサリプラチン溶液の酸性度が依然として高い場合、酸触媒分解の結果として白金錯体の安定性が下がる。
溶液中に存在する塩基は、生じるアクア錯体中の水を置き換えて、様々なカルボン酸錯体を形成してもよい。塩基が強ければ、このような錯体が形成される可能性が高くなる。シュウ酸は、比較的強いジカルボン酸であり、その第1及び第2の解離定数pKはそれぞれ、1.27及び4.28である(メルクインデックス)。したがって、対応するモノアニオンは弱塩基であり、ジアニオンの塩基性は、現行のバッファーの調製に使用する有機酸のアニオンの塩基性と同程度であるか、又はそれより低い。
オキサリプラチンの分解がシュウ酸アニオンを遊離させ、溶液が他の有機酸のアニオン(このアニオンはより強い塩基である)を含有する場合、逆反応において単座のシュウ酸錯体の代わりに別のカルボン酸錯体が生じ得るように、平衡を破壊し得る。酸分子が中央白金原子と結合することができるさらなる基を含有する場合、非環状錯体よりも安定な別の二座の環状錯体が生じ得る。当然ながら、競合反応の進行は、平衡システムにおいて添加する成分の量、及び解離度を決定する溶液のpHに応じた塩基濃度によっても変わる。
酸−塩基触媒に加えて、存在する金属イオンの不要な触媒効果が、オキサリプラチンの分解中に働き得る。これらの金属イオンは通常、活性成分に直接作用しないが、活性化合物を攻撃するフリーラジカルの形成を触媒する。このようにして、例えば水媒体では、第二鉄イオンの存在によって、様々な化合物を酸化するヒドロキシルラジカル又はスーパーオキシドラジカルが生じ得る。オキサリプラチンの酸化によって、全く異なる特性を有する三価の白金錯体が生じ、このようにして組成物中の活性化合物の濃度が低減する。
注入水を分配させる機器及び管のほとんどがスチール製であるだけでは、水性薬学的組成物中の微濃度の鉄の存在を除外することはできない。
非経口投与を目的とした様々な薬剤の液体組成物中で、金属不純物は通常、EDTA型のキレート化合物を添加することによって覆い隠される。しかしながら、それ自体が金属錯体の特徴を有するオキサリプラチン等の薬剤の場合、元のリガンドの置換及び添加するキレート剤のリガンドへの置き換えの可能性も考慮しなければいけない。したがって、このことが、活性成分の量の減少、ひいては治療効果の低下をもたらす。EDTAと二価の白金との非常に強い錯体が、前世紀の1950年代から知られており研究されている。白金細胞増殖抑制剤の安定性に対する金属イオンの不要な触媒効果を抑制するために、溶液中の不要なイオンを覆い隠すことができるが、治療的に有効な白金錯体を分解しない化合物を使用する必要がある。
水溶液中のオキサリプラチンの挙動解析、並びに組成物の安定性に対する付随する不純物及び添加物の負の効果の研究の間、本発明者らは、活性成分としてオキサリプラチンを含有する液体組成物の安定化方法を提案すること、及びこのようにして特別な分離技法で、使用する物質を精製する必要なく、非経口適用に適した安定な滅菌薬剤形態の物質を調製することを可能にする重要な独自の考えに辿り着いた。
特開昭53−031648号公報 米国特許第4169846号明細書 欧州特許第0617043号明細書 特許第5301884号公報 欧州特許第567438号明細書 国際公開第9604904号パンフレット 国際公開第9943355号パンフレット 国際公開第03004505号パンフレット 国際公開第03047587号パンフレット 米国特許出願公開第2003109515号明細書 国際公開第0115691号パンフレット 国際公開第2002047725号パンフレット 欧州特許第1466599号明細書 欧州特許第1466600号明細書 米国特許出願公開第20050090544号明細書 国際公開第2005020980号パンフレット 米国特許第6306902号明細書 国際公開第2005102312号パンフレット 国際公開第2006/048194号パンフレット 米国特許第4477387号明細書
Kidani Y. at al, Gann, Vol. 71, 637; Chem. Abstr. Vol. 94, 4129d Chem. Abstr. Vol. 89, 199862y E. Jerrelman et al., J. Pharm. Sci, 2002, 91(10): 2116 - 2121 Y. Pocker, E. Green, Hydrolysis of D-glucono-δ-lactone. I. General Acid-Base Catalysis, Solvent Deuterium Isotope Effects, and Transition State Characterization, J. Am. Chem. Soc. 1973, 95(1): 113-119
本発明は、オキサリプラチンとアルコール性の糖ベースの安定剤とを含む薬学的組成物、及びこのような薬学的組成物を製造する方法に関する。
一実施の形態において、本発明は、オキサリプラチンと、薬学的に許容可能な水性溶媒と、安定化的に有効な量の安定剤とを含む薬学的組成物に関する。安定剤は、中性のアルコール性糖に由来する酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む。
別の実施の形態において、本発明は、薬学的組成物を製造する方法に関する。この方法の1つの特定の実施の形態では、オキサリプラチンを水性溶媒中に溶解し、オキサリプラチン水溶液を形成する。オキサリプラチン水溶液を、中性のアルコール性糖に由来する酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む安定剤と組合せ、オキサリプラチン−安定剤混合物を形成する。任意でアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物をオキサリプラチン−安定剤混合物に添加することによって、オキサリプラチン−安定剤混合物のpHを3.5〜6.5のpH値に調整し、それにより安定なオキサリプラチン溶液を形成する。安定なオキサリプラチン溶液を滅菌する。個々のパッケージユニットに滅菌した安定なオキサリプラチン溶液を充填し、任意で窒素又はアルゴンで不活性化する。
本発明の方法の別の特定の実施の形態において、オキサリプラチンと、中性のアルコール性糖に由来する酸のラクトンを含む安定剤とを混合し(例えば好ましくは、中性のアルコール性糖に由来する酸のラクトンと、その対応する酸との平衡水性混合物)、オキサリプラチン−安定剤混合物を形成することによって、薬学的組成物を調製する。任意でアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物をオキサリプラチン−安定剤混合物に添加することによって、オキサリプラチン−安定剤混合物のpHを3.5〜6.5のpH値に調整し、安定化されたオキサリプラチン溶液を形成する。
本発明の薬学的組成物は、水媒体中でかなり高い安定性を有する(実施例A及び実施例Bを参照されたい)。したがって、例えばオキサリプラチン感受性腫瘍疾患を治療するために、被験者への非経口投与に本発明の薬学的組成物を使用することができる。
本発明は、活性成分としてオキサリプラチンと、薬学的に許容可能な水性溶媒と、安定化的に有効な量の安定剤とを含む、滅菌液体薬学的組成物等の薬学的組成物であって、当該安定剤が、中性のアルコール性糖に由来する酸、好ましくはモノカルボン酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む、薬学的組成物に関する。
典型的に、オキサリプラチンの濃度は、1mg/ml〜10mg/mlの量である。特定の実施形態では、オキサリプラチンの濃度は、3mg/ml(組成物)〜7mg/ml(組成物)の量である。別の特定の実施形態では、オキサリプラチンの濃度は、3mg/ml(組成物)〜6mg/ml(組成物)の量である。さらに別の特定の実施形態では、オキサリプラチンの濃度は、5mg/mlの量である。
典型的に、少なくとも1つの中性のアルコール性糖に由来する酸、及び/又は少なくとも1つのこの酸のラクトン、及び/又は少なくとも1つのこの酸の塩の濃度は全体で、0.0005mg/ml(組成物)〜0.5mg/ml(組成物)の範囲である。特定の一実施形態では、全体の濃度は、0.005mg/ml〜0.1mg/mlの範囲である。別の特定の実施形態では、全体の濃度は、0.01mg/ml〜0.05mg/mlの範囲である。さらに別の特定の実施形態では、全体の濃度は、0.015mg/ml〜0.025mg/mlの範囲(0.018mg/mlの量等)である。
特定の実施形態において、安定剤として、本発明の組成物は、マンニトール及び/又はソルビトールに由来する酸、より好ましくはモノカルボン酸、及び/又はこの酸のラクトン及び/又はこの酸の塩を少なくとも1つ含む。別の特定の実施形態では、安定剤として、組成物は、水溶液中でラクトンと平衡状態にある中性のアルコール性糖に由来する酸、より好ましくはモノカルボン酸を含む。さらに別の特定の実施形態では、安定剤として、組成物は、グルコン酸及び/又はグロン酸及び/又はマンノン酸、及び/又はこれらの酸のラクトン及び/又はこれらの酸の塩を含む。さらに別の特定の実施形態では、中性のアルコール性糖に由来する酸の塩として、組成物は、これらの酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、具体的にこれらの酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩及び/又はマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩を含む。
本発明の構成内でのオキサリプラチン水溶液の安定化に関する研究によって、本発明における安定化化合物として、カルボン酸、特に例えばソルビトール又はマンニトール等の中性のアルコール性糖の構造物に由来するモノカルボン酸、即ちグルコン酸又はグロン酸又はマンノン酸、及びこれらのラクトン並びにこれらの塩が、安定なオキサリプラチン水溶液を提供することができることが示されている。これらの3つの酸を使用して、本発明を詳細に説明するが、以下に言及されることは他で規定する酸にも関連する。
言及した酸は、水媒体中で一部だけイオン化するラクトン形態で存在し、溶液中でラクトンと酸との平衡混合物を形成するため都合が良い。このため、例えばグルコン酸は、グルコノ−δ−ラクトン形態で混合物に添加してもよく、溶液中でδ−ラクトン、γ−ラクトンと遊離酸との平衡が確立される。平衡が確立してから直ちに、溶液の分光学的変化又はpH変化の旋光度測定又は研究を行う(Y. Pocker, E. Green, Hydrolysis of D-glucono-δ-lactone. I. General Acid-Base Catalysis, Solvent Deuterium Isotope Effects, and Transition State Characterization, J. Am. Chem. Soc. 1973, 95(1): 113-119(非特許文献4))。グルコノ−δ−ラクトンは、グルコン酸溶液を濃縮して結晶化した規定の結晶物質である。他方でグルコン酸は現在、その50%水溶液形態で市販されており、結晶性の酸の調製には特別な手法が必要である。グルコノ−δ−ラクトン及びその解析方法が薬局方で記載されているが、グルコン酸自体は記載されていないため、薬剤形態で使用するのに、δ−ラクトンを溶解することによってグルコン酸溶液を調製することは都合が良い。以下、用語「グルコン酸」は、水中でのグルコノ−δ−ラクトンの溶解によって得られる溶液に使用する。
組成物のpH値を下げることによって、オキサリプラチンの加水分解を抑制することができる。これは、様々な酸及び/又はバッファーの使用によって達成され得るが、上述の特許出願から明らかなように、多くの酸及び/又はこれらの塩が、オキサリプラチン溶液の安定性に負の影響を与えると報告されているため、好適な作用物質の選択を一般化することができない。しかしながら、本発明によれば、D−グルコン酸又はD−グルコン酸とその塩との混合物によって、安定化を達成することができる。グルコン酸及び/又はその塩が、オキサリプラチンの安定化に有利な多くの特性を示す。グルコン酸は、マンニトール又はソルビトールと同様に或る程度、水の構造を安定化し、このようにして白金錯体の加水分解における反応成分としての水分子の利用可能性を低減し得るポリヒドロキシ化合物である。グルコン酸は、中程度の強度、即ち3.70の解離定数を有するモノカルボン酸であり、したがってその共役塩基はあまり強くない塩基である。グルコン酸は、白金錯体を形成することができ、このような錯体を有利な特性を有する抗腫瘍薬物(Kidani et al.、米国特許第4477387号明細書(特許文献20))と共に調製したが、調製には事前のジアクア錯体への変換が必要であり、かなりの時間がかかり、少なくとも等モル量のグルコン酸ナトリウムの使用が要求される。反応は完全には進行せず、反応混合物は、所望のジグルコナト錯体の他に有意量の開始ジアクア錯体と中間体であるモノアクア−モノグルコナト錯体とを含む。
液体の薬学的なオキサリプラチン組成物の安定化に関する研究は、少量のグルコン酸又はグルコン酸とその塩との混合物を組成物に添加することによってpH値を調整すると共に安定させることができ、それによってオキサリプラチンのジアクア錯体への加水分解が抑制されるが、溶液中のグルコン酸濃度がグルコン酸リガンドの効果的な結合を可能にするには不十分であることを示していた。
グルコン酸の使用が、組成物の安定性に対してさらに別の重要な効果を有する。白金のグルコン酸錯体をオキサリプラチン溶液中に生じさせるのが困難であるのに対し、グルコン酸は、組成物中に微量で存在し得る金属イオンとの安定な錯体を容易に形成することができる。このことは特に、三価の鉄イオン錯体に関するが、製造に使用する金属材料によって溶液が不純になる可能性がある、ニッケル、コバルト、クロム、銅等のイオンにも関する(D.T. Sawyer, Metal-Gluconate Complexes, Chem. Rev. 1964, 64, 633-643)。
D−グルコン酸のように、マンノン酸又はグロン酸も同様に、水性オキサリプラチン組成物の安定性に作用する。しかしながらこれまでに、これらの酸もそれらのラクトンも、薬学的製剤を製造する際のこれらの利用を複雑にする薬局方の賦形剤の中に挙げられていない。
特定の実施形態において、グルコン酸、グロン酸又はマンノン酸を利用し、グルコン酸、グロン酸又はマンノン酸の濃度は、0.0005mg/ml(組成物)〜0.5mg/ml(組成物)の範囲であり得る。代替的に、グルコン酸、グロン酸又はマンノン酸の濃度は、0.005mg/ml〜0.1mg/ml(0.01mg/ml〜0.05mg/ml等)の範囲である。別の代替的な実施形態では、グルコン酸、グロン酸又はマンノン酸の濃度は、0.015mg/ml〜0.025mg/mlの範囲(0.018mg/mlの量等)である。
任意で、本発明の薬学的組成物は、中性のアルコール性糖に由来する酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される上述の化合物の少なくとも1つと組合せて、安定剤として中性のアルコール性糖を少なくとも1つさらに含むことができる。中性のアルコール性糖の好適な例としては、マンニトール及びソルビトールが挙げられる。マンニトール又はソルビトールは、注入薬剤形態の調製のために高品質で市販されている賦形剤である。これらは、他のアルコール性糖又はマルチトール等のヒドロキシル基を有する同様の可溶化剤よりも低い可溶化能を示すが、これらの利点は、それらの品質要件及び試験方法が薬局方で特定されていることにある。本発明の組成物において、中性のアルコール性糖(マンニトール及びソルビトール等)が、水の構造を安定化させ、このようにして加水分解中のオキサリプラチン分子の反応中心周辺の活性を下げることができる。
概して、中性のアルコール性糖(マンニトール又はソルビトール等)の濃度は、水の構造を申し分なく安定化させるのに十分高いと同時に、白金とアルコール性糖との錯体が形成される可能性を低減するのに十分低い。特定の実施形態では、濃度は、5mg/ml(組成物)〜50mg/ml(組成物)の範囲である。別の特定の実施形態では、濃度は、10mg/ml(組成物)〜25mg/ml(組成物)の範囲である。
概して、本発明の薬学的組成物は、3.5〜7.5の範囲のpH値を有する。特定の一実施形態では、pH値は、3.5〜6.5の範囲である。別の特定の実施形態では、pH値は、3.5〜5.5の範囲である。さらに別の特定の実施形態では、pH値は、3.8〜5.0の範囲である。さらに別の特定の実施形態では、pH値は、4.0〜5.0の範囲である。さらに別の特定の実施形態では、pH値は、3.8〜4.4の範囲である。さらに別の特定の実施形態では、pH値は、4.0〜4.4の範囲(即ちpH4.2±0.2)である。必要に応じて、これらの実施形態は、上述の中性のアルコール性糖を少なくとも1つさらに含むことができる。
特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、総量0.01mg/ml〜0.05mg/ml(例えば0.01mg/ml〜0.025mg/ml)で安定剤としてグルコン酸及び/又はグルコノラクトン及び/又はグルコン酸の塩を含み、組成物のpHは3.8〜5.0の範囲である。別の特定の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、総量0.015mg/ml〜0.025mg/ml(例えば0.018mg/ml)で安定剤としてグルコン酸及び/又はグルコノラクトン及び/又はグルコン酸の塩を含み、組成物のpHは3.8〜5.0の範囲である。別の特定の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、総量0.015mg/ml〜0.025mg/ml(例えば0.018mg/ml)で安定剤としてグルコン酸及び/又はグルコノラクトン及び/又はグルコン酸の塩を含み、組成物のpHは3.8〜4.4、より具体的には4.0〜4.4(即ちpH4.2±0.2)の範囲である。これらの特定の実施形態の一態様では、安定剤は、グルコン酸と、グルコノラクトン(例えばδ−グルコノラクトン)と、グルコン酸の塩とを含む。これらの特定の実施形態の別の態様では、オキサリプラチンの量は、3mg/ml〜6mg/mlの範囲(5mg/ml等)である。これらの特定の実施形態のさらに別の態様では、オキサリプラチンの量が5mg/mlであり、且つ安定剤が、グルコン酸と、グルコノラクトン(例えばδ−グルコノラクトン)と、グルコン酸の塩とを含む。
本発明に用いることができる薬学的に許容可能な水性溶媒の好適な例は水を含む。特定の実施形態では、水は薬学的注入用の品質を有する。
本発明は、上述の滅菌液体薬学的組成物を製造する方法であって、オキサリプラチンを水性溶媒中に溶解して、直ちに少なくとも1つの中性のアルコール性糖に由来する酸、及び/又は少なくとも1つのこの酸のラクトン、及び/又は少なくとも1つのこの酸の塩をこのオキサリプラチン溶液に添加し、任意でアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を添加することによって、溶液のpH値を所望のpHに調整して、直ちに濾過によって得られた溶液を滅菌し、個々のパッケージユニットに充填して、任意で窒素又はアルゴンで不活性化することを特徴とする、上述の滅菌液体薬学的組成物を製造する方法にも関する。少なくとも1つの中性のアルコール性糖を用いる場合、水に中性のアルコール性糖を溶解することよって作製した(maded)糖溶液中にオキサリプラチンを溶解し、オキサリプラチン−糖溶液を形成する。代替的に、中性のアルコール性糖をオキサリプラチン水溶液中に溶解するか、又はオキサリプラチンと共に水に溶解する。
一実施形態では、オキサリプラチンと、中性のアルコール性糖に由来する酸のラクトンを含む安定剤とを混合し(例えば好ましくは、中性のアルコール性糖に由来する酸のラクトンと、その対応する酸との平衡水性混合物)、オキサリプラチン−安定剤混合物を形成することによって、本発明の薬学的組成物を調製する。水にラクトンを溶解すること、又は任意の他の好適な手段(例えば水中でラクトンとその対応する酸とを混合すること)によって、ラクトンとその対応する酸との平衡水性混合物を調製することができる。具体的に、水にラクトンを溶解することによって、ラクトンとその対応する酸との平衡水性混合物を調製することができる。特定の実施形態では、水性溶媒中にオキサリプラチンを溶解し、オキサリプラチン水溶液を形成し、オキサリプラチン水溶液を安定剤と組合せて、オキサリプラチン−安定剤混合物を形成する。別の特定の実施形態では、安定剤を含む水溶液中にオキサリプラチンを溶解し、オキサリプラチン−安定剤混合物を形成する。
先行の段落で記載した実施形態において、必要に応じて、少なくとも1つのアルコール性糖(例えばマンニトール及び/又はソルビトール)をオキサリプラチン及び安定剤と混合することもできる。一例では、1mg/ml〜10mg/ml(特に、3mg/ml〜7mg/ml(例えば5mg/ml))の濃度でアルコール性糖(複数可)を含む糖溶液中にオキサリプラチンを溶解し、オキサリプラチン−糖溶液を形成することができ、オキサリプラチン−糖溶液を安定剤と組合せる。別の例では、アルコール性糖(複数可)(固体で又は糖水溶液としてのいずれか)をオキサリプラチン水溶液と混合し、オキサリプラチン−糖溶液を形成し、オキサリプラチン−糖水溶液を安定剤と組合せる。さらに別の例では、アルコール性糖(複数可)(固体で又は糖水溶液としてのいずれか)を、先行の段落で記載した方法で形成したオキサリプラチン−安定剤混合物と混合する。
特定の一実施形態では、ラクトンは、グルコン酸及び/又はグロン酸及び/又はマンノン酸に由来する。別の特定の実施形態では、ラクトンは、グルコノラクトン(δ−グルコノラクトン等)である。典型的に、本発明で用いるラクトンの量は、0.0005mg/ml〜0.5mg/mlの範囲である。特定の一実施形態では、本発明で用いるラクトンの量は、0.01mg/ml〜0.05mg/mlの範囲である。別の特定の実施形態では、本発明で用いるラクトンの量は、0.015mg/ml〜0.025mg/mlの範囲(例えば0.018mg/ml)である。
本発明の方法において、任意でアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物をオキサリプラチン−安定剤混合物に添加することによって、オキサリプラチン−安定剤混合物のpHを所望のpH値を有するように調整する。典型的に、所望のpH値は、約3.5〜約7.5の範囲である。一例では、所望のpH値は、約3.5〜約6.5の範囲である。別の例では、所望のpH値は、約3.5〜約5.5の範囲である。さらに別の例では、所望のpH値は、約3.8〜約5.0の範囲である。さらに別の例では、所望のpH値は、約3.8〜約4.4の範囲である。さらに別の例では、所望のpH値は、約4.0〜約4.4の範囲(即ちpH4.2±0.2)である。上記の中性のアルコール性糖をラクトンと組合せて用いる場合、所望のpH値は典型的に約3.5〜約7.5、代替的に約3.5〜約6.5、代替的に約3.5〜約5.5、代替的に約3.8〜約5.0、代替的に約3.8〜約4.4、又は代替的に約4.0〜約4.4の範囲(即ち、pH4.2±0.2)である。
特定の一実施形態において、本発明の安定化された滅菌組成物を以下のように調製する。任意で一定速度で撹拌しながら、3mg/ml〜6mg/ml(例えば、5mg/ml)の濃度で活性のある成分であるオキサリプラチンを水に溶解し、透明なオキサリプラチン水溶液を形成する。代替的に、任意で一定速度で撹拌しながら、1mg/ml〜10mg/ml、特に3mg/ml〜7mg/ml(例えば、5mg/ml)の濃度で少なくとも1つのアルコール性糖(例えば、マンニトール及び/又はソルビトール)を含む糖溶液中にオキサリプラチンを溶解し、透明なオキサリプラチン−糖溶液を形成する。オキサリプラチン水溶液又はオキサリプラチンの糖溶液に、0.0005mg/ml〜0.5mg/ml(例えば、0.01mg/ml〜0.05mg/ml、0.015mg/ml〜0.025mg/ml、又は0.018mg/ml)に対応する量でグルコン酸水溶液をさらに添加し、任意で得られた溶液のpHを、3.5〜6.5(例えば、3.5〜5.5、3.8〜5.0、4〜5、3.8〜4.4、又は4.0〜4.4(即ちpH4.2±0.2))の範囲の最終pH値を有するように調整する。孔径(porosity)0.22μmのフィルターで得られた溶液を濾過し、1つのバイアルの活性化合物の利用可能用量が50mg又は100mgになるように、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填する。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定する。
さらなる特定の実施の形態において、グルコノラクトンを溶解することによって調製するグルコン酸塩とグルコン酸との平衡混合物の水溶液を、オキサリプラチン水溶液又はオキサリプラチンの糖溶液と混合する。それから任意で、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を添加することによって、得られた溶液のpH値を3.5〜6.5(例えば、3.5〜5.5、3.8〜5.0、4〜5、3.8〜4.4、又は4.0〜4.4(即ち、pH4.2±0.2))に調整する。グルコノラクトンの量は、0.0005mg/ml〜0.5mg/mlの範囲である。代替的に、グルコノラクトンの量は、0.01mg/ml〜0.05mg/mlの範囲である。代替的に、グルコノラクトンの量は、0.015mg/ml〜0.025mg/mlの範囲(例えば0.018mg/ml)である。典型的に、濾過によって得られた溶液を滅菌し、個々のパッケージユニットに充填して、任意で窒素又はアルゴンで不活性化する。一例では、孔径0.22μmのフィルターで得られた溶液を濾過し、1つのバイアルの活性化合物の利用可能用量が50mg又は100mgになるように、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填する。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定する。グルコン酸塩とグルコン酸との平衡混合物の水溶液の調製に使用することができるグルコン酸塩の例は、1%のδ−グルコノラクトンである。
以下の実施例は、本発明の範囲を何ら限定することなく、活性化合物としてオキサリプラチンと、薬学的に許容可能な溶媒と、活性化合物を物理的及び化学的に安定化する物質とを含有する、組成物及び非経口投与に適した滅菌液体組成物を製造する方法を説明する。
実施例A
グルコノラクトン/グルコン酸を用いた薬学的組成物
実施例A1
活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成した。さらにこの溶液に、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の水溶液を添加した。グルコノラクトンを水に溶解することによって(1g/100ml)、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物を調製した。得られた混合物のpHをpH3に調整するまで、平衡混合物をオキサリプラチン溶液に添加した。孔径0.22μmのフィルターで得られた溶液を濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例A2
活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成した。さらにこの溶液に、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の水溶液を添加した。グルコノラクトンを水に溶解することによって(1g/100ml)、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物を調製した。得られた混合物のpHをpH4に調整するまで、平衡混合物をオキサリプラチン溶液に添加した。孔径0.22μmのフィルターで得られた溶液を濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例A3
活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成した。さらにこの溶液に、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の水溶液を添加した。グルコノラクトンを水に溶解することによって(1g/100ml)、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物を調製した。得られた混合物のpHをpH5に調整するまで、平衡混合物をオキサリプラチン溶液に添加した。孔径0.22μmのフィルターで得られた溶液を濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例A4
活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成した。さらにこの溶液に、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の水溶液を添加した。グルコノラクトンを水に溶解することによって(1g/100ml)、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物を調製した。得られた混合物のpHをpH6に調整するまで、平衡混合物をオキサリプラチン溶液に添加した。孔径0.22μmのフィルターで得られた溶液を濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例A5(参照)
活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌し、透明な溶液を得て、これを孔径0.22μmのフィルターで濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例A6(安定性試験)
実施例A1〜実施例A5で調製したバイアルを、40℃及び相対湿度75%の「栓を空けた(stopper up)」位置で加速安定性試験に付した。開始時(T)及び6ヵ月後(6M)、活性化合物の含有量及び純度に関して、サンプルを分析した。液体クロマトグラフィによって、解析を行った。結果を表1に与える。
表1:試験開始時及び6ヵ月後の解析結果
Figure 2010516717
表1のデータは、pH4〜5の範囲のオキサリプラチン溶液の安定性に対する、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の水溶液を添加することの正の効果を示している。単純なオキサリプラチン水溶液(参照実施例A5)に比べて、40℃及び相対湿度75%で6ヶ月の保存後、実施例A2及び実施例A3の組成物が、かなり少ない量のシュウ酸及び総量がより少ない不純物を含有している。
実施例B
マンニトールとグルコノラクトン/グルコン酸とを用いた薬学的組成物
実施例B1(参照)
マンニトール(25mg/ml)及び活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成した。得られた溶液を孔径0.22μmのフィルターで濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例B2(参照)
マンニトール(12.5mg/ml)及び活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成した。得られた溶液を孔径0.22μmのフィルターで濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例B3
マンニトール(25mg/ml)及び活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成し、さらにこれに、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の水溶液を添加した。グルコノラクトンを水に溶解することによって(1g/100ml)、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物を調製した。得られた混合物のpHをpH4〜5に調整するまで、平衡混合物をオキサリプラチン溶液に添加した。孔径0.22μmのフィルターで得られた溶液を濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例B4
マンニトール(12.5mg/ml)及び活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌しながら、透明な溶液を形成し、さらにこれに、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の水溶液を添加した。グルコノラクトンを水に溶解することによって(1g/100ml)、グルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物を調製した。得られた混合物のpHを4〜5に調整するまで、平衡混合物をオキサリプラチン溶液に添加した。孔径0.22μmのフィルターで得られた溶液(The obtained solution was The obtained solution was)を濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例B5(参照)
活性化合物であるオキサリプラチン(5mg/ml)を注入用水に溶解した。一定速度で撹拌し、透明な溶液を得て、これを孔径0.22μmのフィルターで濾過し、第1の加水分解群の無色透明なガラスバイアルに充填した。バイアルをブロモブチルゴム栓で蓋をし、ポリプロピレンで覆われたアルミニウムキャップで固定した。
実施例B6(安定性試験)
実施例B1〜実施例B5で調製したバイアルを、40℃及び相対湿度75%の「栓を空けた」位置で加速安定性試験に付した。開始時及び3ヵ月後、活性化合物の含有量及び純度に関して、サンプルを分析した。液体クロマトグラフィによって、解析を行った。結果を表2に与える。
表2:試験開始時及び3ヵ月後の解析結果
Figure 2010516717
表2のデータは、高温及び高相対湿度で3ヶ月保存した後、実施例B1及び実施例B2に従って調製した組成物は、注入用の単純なオキサリプラチン水溶液(参照実施例B5)に比べて低い濃度の加水分解産物、即ちシュウ酸を含有していることを示している。
さらに、実施例B3及び実施例B4に従って、即ちグルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物の溶液を添加して調製した組成物は、高温及び高相対湿度で3ヶ月保存した後、実施例B1及び実施例B2に比べてもより高い純度(不純物の合計として表される)を示す。このことは、安定剤としてアルコール性糖を使用することの利点だけでなく、アルコール性糖の混合物、及びグルコノラクトンとグルコン酸との平衡混合物を使用することのさらに大きい利点をはっきりと示している。

Claims (30)

  1. オキサリプラチンと、薬学的に許容可能な水性溶媒と、安定化的に有効な量の安定剤とを含む薬学的組成物であって、該安定剤が、中性のアルコール性糖に由来する酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む、薬学的組成物。
  2. 前記安定剤が、マンニトール及び/又はソルビトールに由来する酸、及び/又はこれらの酸のラクトン及び/又はこれらの酸の塩を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  3. 前記安定剤が、水溶液中でラクトンと平衡状態にある中性のアルコール性糖に由来する酸を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  4. 前記安定剤が、グルコン酸及び/又はグロン酸及び/又はマンノン酸、及び/又はこれらの酸のラクトン及び/又はこれらの酸の塩を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  5. 前記中性のアルコール性糖に由来する酸の塩が、これらの酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  6. 前記中性のアルコール性糖に由来する酸の塩が、これらの酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩及び/又はマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  7. 前記薬学的に許容可能な水性溶媒が水である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  8. 前記水が注入用品質の水である、請求項7に記載の薬学的組成物。
  9. 前記安定剤が、総量0.0005mg/ml(前記組成物)〜0.5mg/ml(前記組成物)で少なくとも1つの中性糖に由来する酸、及び/又は少なくとも1つのこの酸のラクトン、及び/又は少なくとも1つのこの酸の塩を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  10. オキサリプラチンが、3mg/ml(前記組成物)〜6mg/ml(前記組成物)の量である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  11. そのpH値が3.5〜6.5である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  12. そのpH値が4〜5である、請求項11に記載の薬学的組成物。
  13. 薬学的組成物を製造する方法であって、
    水性溶媒中にオキサリプラチンを溶解し、オキサリプラチン水溶液を形成する、溶解すること、
    前記オキサリプラチン水溶液を、中性のアルコール性糖に由来する酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む安定剤と組合せ、オキサリプラチン−安定剤混合物を形成する、組合せること、
    任意でアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を前記オキサリプラチン−安定剤混合物に添加することによって、該オキサリプラチン−安定剤混合物のpH値をpH3.5〜6.5に調整し、それにより安定なオキサリプラチン溶液を形成する、調整すること、
    前記安定なオキサリプラチン溶液を滅菌すること、及び
    任意で窒素又はアルゴンで不活性化して、個々のパッケージユニットに前記安定なオキサリプラチン溶液を充填することを含む、薬学的組成物を製造する方法。
  14. 前記安定剤が、中性のアルコール性糖に由来するモノカルボン酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  15. 前記安定剤が、マンニトール又はソルビトールに由来するモノカルボン酸、これらの酸のラクトン、及びこれらの酸の塩から成る群から選択される化合物を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  16. 前記安定剤が、水溶液中でラクトンと平衡状態にある中性のアルコール性糖に由来するモノカルボン酸を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  17. 前記安定剤が、総量0.005mg/ml(前記組成物)〜0.1mg/ml(前記組成物)で少なくとも1つの中性糖に由来する酸、及び/又は少なくとも1つのこの酸のラクトン、及び/又は少なくとも1つのこの酸の塩を含む、請求項1〜8及び14〜16のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  18. 前記安定剤が、総量0.01mg/ml(前記組成物)〜0.05mg/ml(前記組成物)で少なくとも1つの中性糖に由来する酸、及び/又は少なくとも1つのこの酸のラクトン、及び/又は少なくとも1つのこの酸の塩を含む、請求項17に記載の薬学的組成物。
  19. 前記安定剤が、総量0.015mg/ml(前記組成物)〜0.025mg/ml(前記組成物)で少なくとも1つの中性糖に由来する酸、及び/又は少なくとも1つのこの酸のラクトン、及び/又は少なくとも1つのこの酸の塩を含む、請求項18に記載の薬学的組成物。
  20. 前記安定剤が、グルコン酸及び/又はグルコノラクトン及び/又はグルコン酸の塩を含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
  21. オキサリプラチンが、3mg/ml(前記組成物)〜6mg/ml(前記組成物)の量で存在する、請求項19に記載の薬学的組成物。
  22. 前記組成物が、3.8〜5.0の範囲のpH値を有する、請求項21に記載の薬学的組成物。
  23. オキサリプラチンが、5mg/ml(前記組成物)の量で存在する、請求項22に記載の薬学的組成物。
  24. 前記組成物が、3.8〜4.4の範囲のpH値を有する、請求項23に記載の薬学的組成物。
  25. 薬学的組成物を製造する方法であって、
    オキサリプラチンと、中性のアルコール性糖に由来する酸のラクトンを含む安定剤とを混合し、オキサリプラチン−安定剤混合物を形成する、混合すること、及び
    任意でアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を前記オキサリプラチン−ラクトン混合物に添加することによって、該オキサリプラチン−ラクトン混合物のpH値を3.5〜6.5に調整することを含む、薬学的組成物を製造する方法。
  26. 前記安定剤のラクトンが、水中の対応する酸と平衡状態にある、請求項25に記載の方法。
  27. 水性溶媒中にオキサリプラチンを溶解し、オキサリプラチン水溶液を形成する、溶解すること、及び
    前記オキサリプラチン水溶液を前記安定剤と組合せ、前記オキサリプラチン−安定剤混合物を形成する、組合せることによって、前記オキサリプラチン及び前記安定剤を混合する、請求項26に記載の方法。
  28. 前記ラクトンが、グルコン酸及び/又はグロン酸及び/又はマンノン酸に由来する、請求項26に記載の方法。
  29. 前記ラクトンがグルコノラクトンである、請求項28に記載の方法。
  30. 前記ラクトンがδ−グルコノラクトンである、請求項29に記載の方法。
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