JP2010247579A - 車両の制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 モータ回路の過熱保護のために操舵アシストを制限する必要があるときには、運転者に対して電動モータ20が過負荷となるような操舵操作を抑制させる。
【解決手段】 モータ温度Tが第1基準温度T1を越えた場合に、報知器54,55の報知開始閾値を低減する。これにより、車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップに対して、早めに報知器54,55が作動する。運転者は車両の走行状態が車両限界に近いものと思い、自然に運転を抑制する。モータ温度Tが第2基準温度T2(>T1)を越えた場合に、スキッド制御の制御開始閾値を低減する。これにより、車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップに対して、早めにスキッド制御が開始され、車速が上がりにくくなり操舵速度が低下して電動モータ20の負荷が軽くなる。
【選択図】 図1
【解決手段】 モータ温度Tが第1基準温度T1を越えた場合に、報知器54,55の報知開始閾値を低減する。これにより、車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップに対して、早めに報知器54,55が作動する。運転者は車両の走行状態が車両限界に近いものと思い、自然に運転を抑制する。モータ温度Tが第2基準温度T2(>T1)を越えた場合に、スキッド制御の制御開始閾値を低減する。これにより、車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップに対して、早めにスキッド制御が開始され、車速が上がりにくくなり操舵速度が低下して電動モータ20の負荷が軽くなる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、電動モータの駆動により操舵アシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置と、旋回時の挙動安定制御やトラクション制御を行うスキッド制御装置とを通信可能に備えた車両の制御システムに関する。
電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドルの操舵操作に対して操舵アシストトルクを発生する電動モータと、この電動モータの通電を制御する電子制御ユニットとを備えている。電子制御ユニットは、運転者が操舵ハンドルに入力した操舵トルクが大きくなるほどモータ電流が増加するように電動モータを駆動制御する。従って、山岳路などの曲がりくねった道を走行している場合には、速い操舵操作が繰り返されるため電動モータが過負荷となりやすい。電動モータが過負荷になった場合には、電動モータやモータ駆動回路(以下、これらをモータ回路と総称する)が大きく発熱する。このため、従来から、モータ回路の過熱損傷を防止するためにモータ回路の温度をモニターし、モータ回路の温度が過熱防止用の設定温度を上回った場合には、電動モータに流す電流を制限するようにしている。例えば、過熱防止時においては、電動モータに流す電流の上限電流値を低めに設定する。こうした過熱防止を図る電動パワーステアリング装置としては、例えば、特許文献1等に提案されている。
過熱防止用の電流制限を行っているときには、通常時に比べて操舵アシストが少なくなりハンドル操作が重くなる。このため、運転者は不快に感じたり異常が発生していると思ったりする。また、運転者はどのように対処すればよいか分からないため、電動モータが過負荷となるような速い操舵操作を継続してしまい電流制限が終了しない。このため、例えば、緊急操舵回避時において充分な操舵アシストが得られなくなるおそれもある。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、モータ回路の過熱保護のために操舵アシストを制限する必要があるときには、運転者に対して電動モータが過負荷となるような操舵操作を抑制させることにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、旋回時における車両の横滑り状態あるいは加速時における駆動輪のスリップ状態を検出し、その検出値が制御開始閾値を超えたときに車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップを抑制する制御を開始するスキッド制御装置と、前記検出値が報知開始閾値を越えたときに前記車両の横滑り状態あるいは前記駆動輪のスリップ状態が発生していることを運転者に報知する報知器と、電動モータを駆動制御して操舵アシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置と、前記電動パワーステアリング装置の電動モータ、あるいは、前記電動モータへ電力を供給する回路の温度を検出する温度検出手段と、前記検出した温度が第1基準温度を超える場合には、前記報知器の報知開始閾値を低くする前記報知開始閾値低減手段と、前記検出した温度が前記第1基準温度より高い第2基準温度を超える場合には、前記スキッド制御装置の制御開始閾値を低くする制御開始閾値低減手段とを備え、前記検出した温度にしたがって前記スキッド制御装置の制御開始タイミングと前記報知器の報知開始タイミングとを制御することにある。
本発明においては、スキッド制御装置が旋回時における車両の横滑り状態あるいは加速時における駆動輪のスリップ状態を検出する。車両の横滑り状態は、例えば、車両のヨーレートを検出するとともに、この検出ヨーレートと、車両の走行状態から得られる本来発生すべき目標ヨーレートとの偏差を算出することで検出できる。また、車体のスリップ角とスリップ角速度の値から検出することもできる。駆動輪のスリップ状態は、例えば、駆動輪の車輪速と従動輪の車輪速(車速)との偏差を算出することで検出できる。スキッド制御装置は、これらの検出値が制御開始閾値を超えたとき、車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップを抑制する制御を開始する。例えば、各車輪毎のブレーキ制御あるいはエンジンの出力制御を開始する。一般に、こうした旋回時の車両横滑り抑制制御は挙動安定制御と呼ばれ、加速時の駆動輪のスリップ抑制制御はトラクション制御と呼ばれる。
報知器は、車両の横滑り状態あるいは加速時における駆動輪のスリップ状態の検出値が報知開始閾値を超えると、車両の横滑り状態あるいは駆動輪のスリップ状態が発生していることを運転者に報知する。報知器としては、例えば、インジケータやブザーを用いることができる。従来の車両の制御システムにおいては、スキッド制御(車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップの抑制制御)の開始と同時に報知器が作動するものであったが、本発明においては、電動パワーステアリング装置においてモータ回路の過熱防止を図るときには、報知器の作動開始タイミングが変化する。
電動パワーステアリング装置は、ステアリング機構に電動モータが組み込まれ、この電動モータを駆動制御することにより操舵アシストトルクを発生する。例えば、運転者が操舵ハンドルに入力した操舵トルクが大きくなるほどモータ電流が増加するように電動モータを駆動制御する。これにより、ハンドル操作が軽くなる。山岳路などの曲がりくねった道を高速で走行している場合には、速い操舵操作が繰り返されるため電動モータが過負荷となりやすい。電動モータが過負荷になった場合には、電動モータやモータ駆動回路が発熱するため、過熱保護の観点から、運転者に対して、ハンドル操作を抑制させる、つまり、速いハンドル操作を行わないようにさせるとよい。
そこで本発明においては、温度検出手段により、電動パワーステアリング装置の電動モータ、あるいは、電動モータへ電力を供給する回路の温度(これらの温度をモータ温度と呼ぶ)を検出し、モータ温度が高くなってきたときに、スキッド制御装置と報知器とを有効に使って、運転者の操舵操作を抑制する。温度検出手段により検出したモータ温度が第1基準温度を超えると、報知開始閾値低減手段が報知器の報知開始閾値を低くする。従って、車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップに対して、通常時よりも早いタイミングで報知器が作動するようになる。このため、運転者は、報知器の作動から、車両の走行状態が車両限界に近いものと思い、自然に運転を抑制する。つまり、車速を抑え、急なハンドル操作をしないようになる。これにより操舵速度が低下し、電動パワーステアリング装置の電動モータの負荷が軽くなる。
また、こうした報知器の作動にかかわらず、温度検出手段により検出したモータ温度がさらに上昇して第2基準温度を超えた場合には、制御開始閾値低減手段がスキッド制御装置の制御開始閾値を低くする。従って、車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップに対して、通常時よりも早いタイミングでスキッド制御が開始されるようになる。このため、車速が上がりにくくなる。これに伴って、ハンドル操作も安定したものとなり、操舵速度が低下して電動パワーステアリング装置の電動モータの負荷が軽くなる。
また、例えば、スキッド制御と電動パワーステアリング装置による操舵アシスト制御との協調機能、つまり、車両の横滑りを抑制する方向に操舵トルクを発生させる機能を備えた車両においては、スキッド制御が早いタイミングで開始されることで、この協調機能でのモータ制御量が少なくなり電動モータの負荷が更に軽くなる。
これらの結果、モータ回路の過熱保護を図る必要が生じているときには、速い操舵操作が抑制され電動モータの負荷を軽くすることができる。従って、例えば、モータ回路温度の上昇に伴って電動モータの通電量の制限を大きくする電流制限手段を備えた場合であっても、通電量の制限を加える期間が短くなる。尚、電動モータの通電量の制限にあたっては、上限電流値を通常時に比べて低下させる構成、あるいは、目標電流値に乗じる電流制限係数を通常時に比べて低下させる構成など採用することができる。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両の制御システムを示す概略図である。
この車両の制御システムは、電動パワーステアリング装置10とスキッド制御装置50とを備えている。電動パワーステアリング装置10は、図示しないステアリング機構に設けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動制御する電子制御ユニット30(以下、EPS・ECU30と呼ぶ)とを備えている。
電動モータ20は、ステアリング機構の一部を構成するステアリングシャフト、あるいは、ラックバーに設けられ(以上図示略)、その出力軸の回転運動によりステアリングシャフトに回転トルクを付与する、あるいは、ラックバーに軸線方向の変位力を付与することで、左右前輪(操舵輪)に転舵力を付与して操舵操作をアシストする。
ステアリングシャフトには、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、運転者のハンドル回動操作によってステアリングシャフトに作用する操舵トルクに応じた信号を出力する。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTrと呼ぶ。操舵トルクTrは、その符号(正負)によりトルクの働く方向(右方向、左方向)を表し、その絶対値によりトルクの大きさを表す。
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22の検出信号は、電動モータ20の回転角および回転角速度の計算に利用される
EPS・ECU30は、CPU,ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要部として備えた演算部31と、モータ駆動回路32とを備えている。モータ駆動回路32は、例えば、三相インバータ回路にて構成され演算部31からのPWM制御信号を入力して、内部のスイッチング素子のデューティ比を制御することにより電動モータ20への通電量を調整する。モータ駆動回路32には、電動モータ20に流れる電流を検出する電流センサ23が設けられる。この電流センサ23により検出される電流値をモータ電流imと呼ぶ。
また、モータ駆動回路32には、スイッチング素子の発熱状態を検出するための温度センサ24が設けられる。電動パワーステアリング装置10においては、後述する操舵アシスト制御を実行しているとき、電動モータ20が過負荷状態で駆動されると、電動モータ20およびモータ駆動回路32のスイッチング素子が大きく発熱し過熱損傷するおそれがある。そこで、発熱状態をモニターするために温度センサ24が設けられる。温度センサ24は、電動モータ20を過負荷状態で駆動したときに、一番最初に過熱防止温度に到達する個所に設けられる。本実施形態においては、電動モータ20よりも先にモータ駆動回路32のスイッチング素子が過熱保護を行うべき温度に到達するため温度センサ24をモータ駆動回路32に設けるが、電動モータ20がモータ駆動回路32よりも先に過熱状態になるのであれば温度センサ24を電動モータ20に設けるようにすればよい。また、電動モータ20とモータ駆動回路32の両方に設けてもよい。以下、電動モータ20とモータ駆動回路32においてモニターすべき個所の温度(一番最初に過熱防止温度に到達する個所の温度)をモータ温度と呼び、温度センサ24により検出されたモータ温度をモータ温度Tと呼ぶ。尚、モータ温度Tの検出は、電動モータ20に流す電流値の積算値と放熱量とに基づいて推定により行っても良い。
演算部31は、ROM内に記憶した制御プログラムにしたがって操舵アシスト制御を実行することにより電動モータ20を駆動制御して運転者の操舵操作に応じた最適なアシストトルクをステアリング機構(ステアリングシャフトやラックバー)に付与する。演算部31は、図示しない通信インタフェースを介してCAN(Controller Area Network)通信システムの通信線100と接続されており、CAN通信によりスキッド制御装置50のスキッドECU51と送受信可能となっている。
スキッド制御装置50は、CPU,ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要部として備えたスキッドECU51と、スキッドECU51からの出力信号により4輪(前後輪)のホイールシリンダーの油圧を独立して制御するブレーキアクチュエータ52とを備えている。スキッドECU51は、急発進,急加速時の駆動輪のスリップを抑制するトラクション制御、旋回時における車両の横滑りを抑制して安定性を確保する挙動安定制御を行う。以下、トラクション制御と挙動安定制御とを総称する場合にはスキッド制御と呼ぶ。
スキッドECU51は、4輪の車輪速センサ53fl,53fr,53rl,53rrを接続するとともに、操舵角θ、ヨーレートγ、水平方向の加速度Gを表す情報をCAN通信システムの通信線100から取得する。車輪速センサ53fl,53fr,53rl,53rrは、左前輪の車輪速Vfl,右前輪の車輪速Vfr,左後輪の車輪速Vrl,右後輪の車輪速Vrrを検出する。CAN通信システムには、EPS・ECU30やスキッドECU51の他にエンジンECU60などの車両制御装置、および、操舵角センサ71、ヨーレートセンサ72、加速度センサ73といったセンサ類が通信可能に接続されている。
操舵角センサ71は、ステアリングシャフトに設けられ、操舵ハンドルの中立位置に対する操舵角θを表す操舵角信号を出力する。ヨーレートセンサ72は、車体のヨーレートγを表すヨーレート信号を出力する。加速度センサ73は、車両の水平方向の加速度Gを表す加速度信号を出力する。
スキッドECU51は、さらに、車両の横滑り状態あるいは駆動輪のスリップ状態が発生していることをランプの点滅で運転者に報知するスリップインジケータ54と、断続音で運転者に報知するブザー55とを接続している。スリップインジケータ54には、車両がスリップ(横滑りを含む)している様子を表す図柄が表示されている。従って、運転者は、このスリップインジケータ54が点滅したときには、車両がスリップしていることを認識できるようになっている。
次に、EPS・ECU30により行われる操舵アシスト制御について説明する。図2は、演算部31により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表す。操舵アシスト制御ルーチンは、演算部31のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ(図示略)がオンされて初期診断が完了した後に起動し、所定の短い周期で繰り返される。
本制御ルーチンが起動すると、演算部31は、まず、ステップS11において、CAN通信システムから情報提供される車速Vと、操舵トルクセンサ21によって検出された操舵トルクTrとを読み込む。車速Vは、例えば、スキッドECU51が従動輪(前輪)の車輪速センサ53fl,53frにより検出される車輪速Vfr,Vrlから車速Vを算出してCAN通信システムに送信することで各車両制御装置側で検出できるようになっている。
続いて、ステップS12において、図示しないアシストトルクマップを参照して、入力した車速Vおよび操舵トルクTrに応じて設定される目標アシストトルクTr*を計算する。目標アシストトルクTr*は、操舵トルクTrの増加にしたがって増加し、しかも、車速Vが低くなるほど大きな値となるように設定される。続いて、ステップS13において、目標アシストトルクTr*に対応した電流値である目標電流値ias*を計算する。目標電流値ias*は、目標アシストトルクTr*をトルク定数で除算することにより求められる。
続いて、演算部31は、ステップS14において、温度センサ24により検出されるモータ温度Tを読み込む。続いて、ステップS15において、モータ温度Tに応じて設定される上限電流値ilimを計算する。上限電流値ilimは、電動モータ20やモータ駆動回路32の過電流保護を図るために、電動モータ20に流すことのできる最大値を設定したものである。この上限電流値ilimは、例えば、図3の上限電流値マップに示すように、モータ温度Tの増加に伴って上限電流値ilimが低減されるように設定される。この例では、モータ温度Tが温度Ta以下の場合は、一定の上限電流値ilim1が設定される。この上限電流値ilim1は、例えば、電動モータ20あるいはモータ駆動回路32の定格電流により制限される値に設定される。そして、モータ温度Tが温度Taを越えると、過熱保護のために、モータ温度Tが増加するほど減少する上限電流値ilimが設定される。また、モータ温度Tが温度Tbを越える状況においては、最小となる上限電流値ilim2が設定される。尚、モータ温度Tと上限電流値ilimとの関係は、図3に示す特性に限るものではなく、モータ温度Tの増加に伴って上限電流値ilimが低下するように設定するものであればどのようなものでもよい。例えば、モータ温度Tが基準温度を越えた場合には、上限電流値ilimをゼロにする、つまり、操舵アシストを停止するようにしてもよい。また、モータ温度Tと上限電流値ilimとの対応関係の設定は、マップに限らず、関数等を用いることもできる。
続いて、演算部31は、ステップS16において、先のステップS13で計算した目標電流値ias*がステップS15で設定した上限電流値ilimよりも大きいか否かを判断する。そして、目標電流値ias*が上限電流値ilimよりも大きい場合には(S16:Yes)、ステップS17において、目標電流値ias*を上限電流値ilimに設定する。一方、目標電流値ias*が上限電流値ilim以下であれば(S16:No)、目標電流値ias*を変更しない。
続いて、演算部31は、ステップS18において、温度フラグ送信処理を行う。この処理は、スキッド制御装置50に対して、モータ温度Tの状況を伝達するものであり、詳細に関しては後述する。
続いて、演算部31はステップS19において、電動モータ20に流れるモータ電流imを電流センサ23から読み込む。続いて、ステップS20において、このモータ電流imと先に計算した目標電流値ias*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)により目標指令電圧v*を計算する。
そして、演算部31は、ステップS21において、目標指令電圧v*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路32に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、モータ駆動回路32のスイッチング素子のデューティ比が制御されて、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。
山岳路などの曲がりくねった道を走行している場合には、速い操舵操作が繰り返されるため電動モータ20が過負荷となりやすい。電動モータ20が過負荷状態となると、モータ温度Tが上昇し、それに伴って上限電流値ilimが低減設定され。従って、操舵アシストが少なくなり、ハンドル操作が重くなる。こうしたケースにおいては、車速を落とし、ゆっくりした操舵操作を行うようにすれば、電動モータ20の負荷が軽くなり、電流制限も抑えられて充分な操舵アシストが得られるようになる。しかし、従来の車両の制御システムにおいては、運転者は、操舵アシストが少なくなってハンドル操作が重くなったとき、どのように対応してよいか分からず、そのまま速い操舵操作を続けてしまう。
そこで、本実施形態においては、モータ温度Tが上昇して過熱保護を図るときに、スキッド制御装置50を使って、運転者に対して、現在の車両の走行状態が限界に近いものと思わせ、運転を抑制させる。つまり、車速を抑え、急なハンドル操作をしないようにさせる。演算部31は、スキッド制御装置50に対して、モータ温度Tの状況を知らせるために、操舵アシスト制御ルーチンの中にステップS18の温度フラグ送信処理を組み込んでいる。以下、温度フラグ送信処理について説明する。
図4は、ステップS18の処理である温度フラグ送信ルーチン(サブルーチン)を表す。演算部31は、本ルーチンを開始すると、まず、ステップS181において、モータ温度Tが第1基準温度T1を越えているか否かを判断する。モータ温度Tが第1基準温度以下であれば(S181:No)、ステップS182において、温度フラグFを「0」に設定する。この第1基準温度T1は、モータ回路の過熱保護のために上限電流値ilimが低減設定開始される温度Ta以上の温度に予め設定されている。
演算部31は、ステップS181において、「No」、つまり、モータ温度Tが第1基準温度を越えていると判定した場合は、ステップS183において、モータ温度Tが第2基準温度T2を越えているか否かを判断する。この第2基準温度T2は、第1基準温度T1よりも高い温度に設定されている。モータ温度Tが第2基準温度以下であれば(S183:No)、ステップS184において、温度フラグFを「1」に設定する。一方、モータ温度Tが第2基準温度を越えている場合(S183:Yes)には、ステップS185において、温度フラグFを「2」に設定する。
演算部31は、こうしてモータ温度Tに応じて温度フラグFを設定すると、続くステップS186において、温度フラグFの設定状況を表す情報を通信線100を介してCAN通信システムに出力する。演算部31は、温度フラグFの設定状況を表す情報をCAN通信システムに出力すると、温度フラグ送信ルーチンをいったん終了して、その処理を操舵アシスト制御ルーチン(メインルーチン)のステップS19に進める。温度フラグ送信ルーチンは、操舵アシスト制御ルーチンに組み込まれて所定の短い周期で繰り返されることから、CAN通信システムに接続された各種の車両制御装置側では、モータ回路の発熱状況を逐次把握できることになる。
次に、スキッド制御装置50のスキッドECU51の行う処理について説明する。スキッド制御装置50は、EPS・ECU30の演算部31において設定した温度フラグFに基づいて、スキッド制御(挙動安定制御およびトラクション制御)の作動を開始する閾値(以下、制御開始閾値と呼ぶ)、および、報知器であるスリップインジケータ54とブザー55の作動を開始する閾値(以下、報知開始閾値と呼ぶ)を設定する。
図5は、スキッドECU51の実行する閾値設定ルーチンを表す。閾値設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実施される。本ルーチンが起動すると、スキッドECU51は、ステップS31において、CAN通信システムから情報提供される温度フラグFの設定状況を読み込む。続いて、ステップS32において、温度フラグFの設定状況を判定する。温度フラグFが「0」に設定されている場合には、ステップS33において、挙動安定制御に係る報知開始閾値AinをAin0に設定し、挙動安定制御に係る制御開始閾値AcoをAco0に設定する。この報知開始閾値Ain0と制御開始閾値Aco0とは、同じ値であり、挙動安定制御の作動および報知を開始すべき適正値に予め定められている。続いて、ステップS34において、トラクション制御に係る報知開始閾値BinをBin0に設定し、トラクション制御に係る制御開始閾値BcoをBco0に設定する。この報知開始閾値Bin0と制御開始閾値Bco0とは、同じ値であり、トラクション制御の作動および報知を開始すべき適正値に予め定められている。従って、例えば、報知開始閾値Ain0,制御開始閾値Aco0および報知開始閾値Bin0,制御開始閾値Bco0は、従来から使われている閾値を用いることができる。
一方、温度フラグFが「1」に設定されている場合には、ステップS35において、挙動安定制御に係る報知開始閾値AinをAin1に設定し、挙動安定制御に係る制御開始閾値AcoをAco0に設定する。この報知開始閾値Ain1は、報知開始閾値Ain0に比べて小さな値に予め定められている。続いて、ステップS36において、トラクション制御に係る報知開始閾値BinをBin1に設定し、トラクション制御に係る制御開始閾値BcoをBco0に設定する。この報知開始閾値Bin1は、報知開始閾値Bin0に比べて小さな値に予め定められている。
また、温度フラグFが「2」に設定されている場合には、ステップS37において、挙動安定制御に係る報知開始閾値AinをAin1に設定し、挙動安定制御に係る制御開始閾値AcoをAco1に設定する。この制御開始閾値Aco1は、制御開始閾値Aco0に比べて小さな値であって、例えば、報知開始閾値Ain1と同じ値に予め定められている。続いて、ステップS38において、トラクション制御に係る報知開始閾値BinをBin1に設定し、トラクション制御に係る制御開始閾値BcoをBco1に設定する。この制御開始閾値Bco1は、制御開始閾値Bco0に比べて小さな値であって、例えば、報知開始閾値Bin1と同じ値に予め定められている。
こうして、温度フラグFに応じて挙動安定制御に係る報知開始閾値Ain,制御開始閾値Aco、および、トラクション制御に係る報知開始閾値Bin,制御開始閾値Bcoを設定すると閾値設定ルーチンを終了する。閾値設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返されることから、最新の温度フラグF応じた閾値が設定される。従って、モータ温度Tが過熱損傷防止を図る必要のない温度(以下、通常温度と呼ぶ)となる状況においては、報知開始閾値Ain,制御開始閾値Aco,報知開始閾値Bin,制御開始閾値Bcoが、最適な報知開始閾値Ain0,制御開始閾値Aco0(=Ain0),報知開始閾値Bin0,制御開始閾値Bco0(=Bin0)に設定される。また、モータ回路が発熱しモータ温度Tが第1基準温度T1より高く第2基準温度T2以下となる状況においては、報知開始閾値Ain,報知開始閾値Binが、最適値Ain0,Bin0よりも小さな値Ain1,Bin1に設定される。さらに、モータ回路が発熱してモータ温度Tが第2基準温度T2より高くなる状況においては、制御開始閾値Aco,制御開始閾値Bcoも、最適値Aco0,Bco0よりも小さな値Aco1,Bco1に設定される。
次に、スキッドECU51の行う挙動安定制御処理について説明する。図6は、スキッドECU51の行う挙動安定制御ルーチンを表す。挙動安定制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実施される。本ルーチンが起動すると、スキッドECU51は、ステップS41において、ヨーレートγ、操舵角θ、車速Vを読み込む。ヨーレートγと操舵角θは、CAN通信システムから情報提供される。また、車速Vは、従動輪(本実施形態の車両は後輪駆動であるため前輪となる)の車輪速センサ53fl,53frにより検出される車輪速Vfl,Vfrから算出される。
続いて、スキッドECU51は、ステップS42において、操舵角θと車速Vとから、本来車両に発生すべきヨーレートγ*を計算する。このヨーレートγ*を、以下、目標ヨーレートγ*と呼ぶ。目標ヨーレートγ*は、操舵角θが大きくなるほど、かつ、車速Vが大きくなるほど増加する特性を有する。スキッドECU51は、操舵角θと車速Vを入力パラメータとし、この入力パラメータと目標ヨーレートγ*との対応関係を設定した参照マップをROMに記憶しており、この参照マップを使って目標ヨーレートγ*を算出する。
続いて、スキッドECU51は、ステップS43において、検出した実際のヨーレートγと目標ヨーレートγ*との偏差Δγ=|γ*−γ|を計算する。ヨーレートγが目標ヨーレートγ*よりも少なくなれば、車体が旋回していないことを意味するため、車両が横滑り状態(特に、前輪横滑り状態)の傾向にあるといえる。従って、ヨーレート偏差Δγが大きいほど横滑り傾向が大きいと判断できる。
続いて、スキッドECU51は、ステップS44において、ヨーレート偏差Δγが挙動安定制御に係る報知開始閾値Ainを越えているか否かを判断する。ヨーレート偏差Δγが報知開始閾値Ain以下である場合(S44:No)には、そのまま本ルーチンをいったん終了する。従って、挙動安定制御の作動、および、スリップインジケータ54とブザー55の作動が開始されない。
一方、ステップS44において、ヨーレート偏差Δγが挙動安定制御に係る報知開始閾値Ainを越えていると判定した場合には、続くステップS45において、ヨーレート偏差Δγが挙動安定制御に係る制御開始閾値Acoを越えているか否かを判断する。ヨーレート偏差Δγが制御開始閾値Acoを越えていない場合(S45:No)には、ステップS46において、スリップインジケータ54の点滅とブザー55の鳴動を行う。また、ヨーレート偏差Δγが制御開始閾値Acoを越えている場合(S45:Yes)には、ステップS47において、スリップインジケータ54の点滅とブザー55の鳴動に加えて、挙動安定制御を実施する。
つまり、ヨーレート偏差Δγが報知開始閾値Ainと制御開始閾値Acoとのあいだにある場合は、実際に挙動安定制御(横滑り抑制制御)を行わずにスリップインジケータ54とブザー55といった報知器のみを作動させて、運転者に対してスリップ状態であることを報知し、ヨーレート偏差Δγが制御開始閾値Acoを越えているときには、報知器の作動に加えて、実際に挙動安定制御を実施する。
挙動安定制御は、種々の手法が周知であるため、その中から任意の手法を採用すればよい。例えば、ヨーレート偏差Δγの大きさに応じてエンジン出力の低減指令をエンジンECU60に出力するとともに、ブレーキアクチュエータ52を作動させて左右後輪ブレーキと旋回外側の前輪ブレーキを作動させて横力を減少させる。
この挙動安定制御ルーチンは、上述した閾値設定ルーチンと並行して所定の短い周期で繰り返される。従って、ステップS44,S45にて比較判定される閾値Ain,Acoは、閾値設定ルーチンにて設定されたものとなっている。そして、この閾値Ain,Acoは、モータ温度Tの状態を表す温度フラグFにより設定される。このため、モータ温度Tが第1基準温度T1以下となって操舵アシストを制限する必要がない通常温度となる状況(つまり、温度フラグF=0)においては、閾値Acoが挙動安定制御を開始すべき最適値(Aco0)に設定され、かつ、閾値Ainが挙動安定制御の開始と同時にその旨を報知するように閾値Acoと同じ値に設定される。このため、モータ温度Tが操舵アシスト制限を行う必要のない通常温度となる状況であれば、従来通りのタイミングで挙動安定制御と報知動作とを行うことができる。
一方、モータ温度Tが上昇して第1基準温度T1を越えると、その段階で報知開始閾値Ainが通常温度状況における値よりも小さな値(Ain1)に設定される。従って、車両の横滑りが発生した場合、その横滑り傾向が小さい段階から、つまり、通常時よりも早い段階から、スリップインジケータ54とブザー55が作動する。従って、運転者は、このスリップインジケータ54とブザー55の作動により、車両の走行状態が車両限界に近いものと思い、自然に運転を抑制する。つまり、車速を抑え、急なハンドル操作をしないようになる。これにより操舵速度が低下し、電動パワーステアリング装置10の電動モータ20の負荷が軽くなる。
また、モータ温度Tが上昇して第2基準温度T2を越えている場合には、報知開始閾値Ainだけでなく、制御開始閾値Acoも通常温度状況における値よりも小さな値(Aco1)に設定される。従って、車両の横滑りが発生した場合、その横滑り傾向が小さい段階から、挙動安定制御(横滑り抑制制御)が開始される。このため、スリップインジケータ54やブザー55による効果に加え、実際にブレーキ制動やエンジン出力制限が働いて車速が上がりにくくなる。これに伴って、ハンドル操作も安定したものとなり、操舵速度が低下して電動パワーステアリング装置10の電動モータ20の負荷が軽くなる。
このように、本実施形態においては、モータ温度Tの上昇に基づいて、挙動安定制御の開始タイミング、および、スリップインジケータ54やブザー55の報知開始タイミングを通常時に比べて早くすることで、運転者に対して自然に緩やかな運転に切り換えるように誘導する。この結果、モータ温度Tが下がり、上限電流値ilimによる操舵アシスト制限が終了する。従って、充分な操舵アシストが得られるようになる。
次に、スキッドECU51の行うトラクション制御処理について説明する。図7は、スキッドECU51の行うトラクション制御ルーチンを表す。トラクション制御ルーチンは、挙動安定制御ルーチンおよび閾値設定ルーチンと並行して所定の短い周期で繰り返し実施される。本ルーチンが起動すると、スキッドECU51は、ステップS51において、車輪速センサ53fl,53fr,53rl,53rrから車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrrを読み込む。続いて、ステップS52において、駆動輪ごとのスリップ量Bsを計算する。
駆動輪のスリップ量Bsは、{(車輪速)−(車速)}により計算することができる。後輪駆動の車両の場合、車速は、従動輪である前輪の車輪速Vfl,Vfrから算出できる。続いて、スキッドECU51は、ステップS53において、各駆動輪のスリップ量Bsがトラクション制御に係る報知開始閾値Binを越えているか否かを判断する。スリップ量Bsが報知開始閾値Bin以下である場合(S53:No)には、そのまま本ルーチンをいったん終了する。従って、トラクション制御の作動および報知器の作動が開始されない。
一方、ステップS53において、スリップ量Bsがトラクション制御に係る報知開始閾値Binを越えていると判定した場合には、続くステップS54において、スリップ量Bsがトラクション制御に係る制御開始閾値Bcoを越えているか否かを判断する。スリップ量Bsが制御開始閾値Bcoを越えていない場合(S54:No)には、ステップS55において、スリップインジケータ54の点滅とブザー55の鳴動を行う。また、スリップ量Bsが制御開始閾値Bcoを越えている場合(S54:Yes)には、ステップS56において、スリップインジケータ54の点滅とブザー55の鳴動に加えて、トラクション制御を実施する。つまり、スリップ量Bsが報知開始閾値Binと制御開始閾値Bcoとのあいだにある場合は、実際にトラクション制御を行わずに、運転者に対してスリップ状態であることを表す報知のみを行い、スリップ量Bsが制御開始閾値Bcoを越えているときに、スリップ状態の報知に加えて、実際にトラクション制御を実施する。
トラクション制御は、種々の手法が周知であるため、その中から任意の手法を採用すればよい。例えば、スリップ量Bsの大きさに応じてエンジン出力の低減指令をエンジンECU60に出力するとともに、ブレーキアクチュエータ52を作動させて駆動輪にブレーキをかけて、車両の発進・加速時における駆動輪のスリップを減少させる。
このトラクション制御ルーチンは、上述した閾値設定ルーチンと並行して所定の短い周期で繰り返される。従って、ステップS53,S54にて比較判定される閾値Bin,Bcoは、閾値設定ルーチンにて設定されたものとなっている。そして、この閾値Bin,Bcoは、モータ温度Tの状態を表す温度フラグFにより設定される。このため、モータ温度Tが第1基準温度T1以下となって操舵アシストを制限する必要がない低い温度状況(つまり、温度フラグF=0)においては、閾値Bcoがトラクション制御を開始すべき最適値(Bco0)に設定され、かつ、閾値Binがトラクション制御の開始と同時にその旨を報知するように閾値Bcoと同じ値に設定される。このため、モータ温度Tが操舵アシスト制限を行う必要のない通常温度となる状況であれば、従来通りのタイミングでトラクション制御と報知動作とを行うことができる。
一方、モータ温度Tが上昇して第1基準温度T1を越えると、その段階で報知開始閾値Binが通常温度状況における値よりも小さな値(Bin1)に設定される。従って、駆動輪のスリップが発生した場合、そのスリップ傾向が小さい段階から、つまり、通常時よりも早い段階から、スリップインジケータ54とブザー55が作動する。従って、運転者は、このスリップインジケータ54とブザー55の作動により、車両の走行状態が車両限界に近いものと思い、自然に運転を抑制する。つまり、車速を抑え、急なハンドル操作をしないようになる。これにより操舵速度が低下し、電動パワーステアリング装置の電動モータ20の負荷が軽くなる。
また、モータ温度Tが上昇して第2基準温度T2を越えている場合には、報知開始閾値Binだけでなく、制御開始閾値Bcoも通常温度状況における値よりも小さな値(Bco1)に設定される。従って、駆動輪のスリップが発生した場合、そのスリップ傾向が小さい段階からトラクション制御が開始される。このため、スリップインジケータ54やブザー55による効果に加え、実際にブレーキ制動やエンジン出力制限が働いて車速が上がりにくくなる。これに伴って、ハンドル操作も安定したものとなり、操舵速度が低下して電動パワーステアリング装置の電動モータ20の負荷が軽くなる。
このように、本実施形態においては、モータ温度Tの上昇に基づいてトラクション制御の開始タイミング、および、スリップインジケータ54やブザー55の報知開始タイミングを通常時に比べて早くすることで、運転者に対して自然に緩やかな運転に切り換えるように誘導する。この結果、モータ温度Tが下がり、上限電流値ilimによる操舵アシスト制限が終了する。従って、充分な操舵アシストが得られるようになる。
また、本実施形態における車両の制御システムにおいては、スキッド制御装置50と電動パワーステアリング装置10との協調制御が行われ、車両の走行安定性と操縦性が確保される構成を採用している。こうした協調制御を行う車両においては、モータ温度Tの上昇に伴ってスキッド制御の開始が早められるため、電動パワーステアリング装置10における協調制御でのモータ制御量が少なくなり、過熱保護のために電流制限が働いている分をカバーできる。尚、スキッド制御装置50と電動パワーステアリング装置10との協調制御とは、車両が横滑りなどで安定を失った場合に、電動パワーステアリング装置10による操舵アシストにより、運転者の操舵操作を容易にするものである。例えば、摩擦係数が左右輪で異なる状況でブレーキ制動を働かせたとき、左右の制動力差を打ち消す方向に操舵トルクをアシストする。また、後輪横滑り傾向にある場合には、スピンを抑制する方向に操舵トルクをアシストする。また、前輪横滑り傾向にある場合には、運転者のハンドル操作が軽くなる方向に操舵トルクをアシストし、逆に運転者がハンドルを切りすぎていれば切り込み操作が重くなるようにアシストする。
以上、本実施形態に係る車両の制御システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上述した挙動安定制御においては、ヨーレート偏差Δγに基づいて車両の横滑り傾向を判定しているが、後輪横滑り傾向を検出する場合には、ヨーレートγと加速度Gとから車体のスリップ角および車体のスリップ角速度を算出により検出し、これらの検出値が閾値を越える場合に、挙動安定制御を開始するようにするとよい。この挙動安定制御を行う場合、後輪横滑り傾向の程度に応じて、ブレーキアクチュエータ52を作動させて旋回外側の前後輪にブレーキをかけ、車両の外向きにモーメントを発生させて後輪横滑り傾向を抑制する。こうした後輪横滑り抑制制御を行う場合であっても、上述したようにモータ温度Tに応じて、制御開始閾値と報知開始閾値とを設定する。尚、前輪横滑り抑制制御と後輪横滑り抑制制御との両方を行うようにすることが好ましい。
また、本実施形態においては、電動モータ20の通電量を制限するにあたって、モータ温度Tの上昇に伴って低下する上限電流値ilimを設定したが、これに代えて、モータ温度Tの上昇に伴って低下する電流制限係数α(0≦α≦1)を目標電流値ias*に乗じる構成であってもよい。
また、例えば、電動モータ20へ電力を供給する回路の途中に、車載電源電圧を昇圧してモータ駆動回路に電源供給する昇圧回路を設けた構成を採用することもできる。こうした昇圧回路は、例えば、昇圧コイルとスイッチング素子とコンデンサとにより構成することができるが、電動モータ20の過負荷時において昇圧回路自身が発熱するおそれがある。従って、温度センサ24を昇圧回路に設けるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、スキッド制御装置50は、車両の横滑り抑制制御と駆動輪のスリップ抑制制御との両方を行う構成であるが、必ずしも両方の制御を行う必要はなく、何れか一方の制御を行う構成であってもよい。
また、本実施形態においては、報知器としてスリップインジケータ54とブザー55とを備えているが、必ずしも両方を備える必要はなく何れか一方でもよい。また、スキッド制御の擬似的な作動音を発生する報知器を用いることもできる。
10…電動パワーステアリング装置、20…電動モータ、23…電流センサ、24…温度センサ、30…EPS・ECU、31…演算部、32…モータ駆動回路、21…操舵トルクセンサ、50…スキッド制御装置、51…スキッドECU、53fl,53fr,53rl,53rr…車輪速センサ、54…スリップインジケータ、55…ブザー、60…エンジンECU、71…操舵角センサ、72…ヨーレートセンサ、73…加速度センサ、100…通信線。
Claims (1)
- 旋回時における車両の横滑り状態あるいは加速時における駆動輪のスリップ状態を検出し、その検出値が制御開始閾値を超えたときに車両の横滑りあるいは駆動輪のスリップを抑制する制御を開始するスキッド制御装置と、
前記検出値が報知開始閾値を越えたときに前記車両の横滑り状態あるいは前記駆動輪のスリップ状態が発生していることを運転者に報知する報知器と、
電動モータを駆動制御して操舵アシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置と、
前記電動パワーステアリング装置の電動モータ、あるいは、前記電動モータへ電力を供給する回路の温度を検出する温度検出手段と、
前記検出した温度が第1基準温度を超える場合には、前記報知器の報知開始閾値を低くする前記報知開始閾値低減手段と、
前記検出した温度が前記第1基準温度より高い第2基準温度を超える場合には、前記スキッド制御装置の制御開始閾値を低くする制御開始閾値低減手段と
を備え、
前記検出した温度にしたがって前記スキッド制御装置の制御開始タイミングと前記報知器の報知開始タイミングとを制御する車両の制御システム。
Priority Applications (1)
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JP2015117996A (ja) * | 2013-12-18 | 2015-06-25 | 株式会社ユピテル | システム及びプログラム |
JP2018150039A (ja) * | 2018-03-27 | 2018-09-27 | 株式会社ユピテル | システム及びプログラム |
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-
2009
- 2009-04-13 JP JP2009096973A patent/JP2010247579A/ja active Pending
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