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JP2010087029A - 表面修飾方法および有機薄膜の形成方法 - Google Patents

表面修飾方法および有機薄膜の形成方法 Download PDF

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JP2010087029A JP2008251558A JP2008251558A JP2010087029A JP 2010087029 A JP2010087029 A JP 2010087029A JP 2008251558 A JP2008251558 A JP 2008251558A JP 2008251558 A JP2008251558 A JP 2008251558A JP 2010087029 A JP2010087029 A JP 2010087029A
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Abstract

【課題】無機化合物の表面を溶液プロセスによって効率的に特定の有機化合物で修飾し、有機薄膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】無機化合物の最表層に、下記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する化合物の単分子膜を形成し、次いで前記化合物において前記無機化合物に結合していない下記一般式(1)で表される官能基の一部もしくは全部を水素原子に変換する、無機化合物の表面修飾方法および有機薄膜の製造方法。
Figure 2010087029

(式中、Rは置換基を表し、nは1又は2の整数を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、無機化合物の表面を特定の有機化合物で修飾する方法、及び無機化合物上に有機薄膜を形成する方法に関する。
近年、有機分子の化学吸着によって形成される単層膜(Self-Assembled Monolayer;以下「SAM」と略する)、及びSAMを積層して作製する多層膜(Self-Assembled Multilayer)に関する研究が大きく進展し、基礎・応用の両面から注目されるようになってきている。SAMは、いわゆる自己集積化/自己組織化によって形成される単分子膜であり、有機分子の化学吸着過程で固体表面上に形成される分子会合体である。吸着分子同士の相互作用によって会合体の構成分子が密に集合し、分子配向および配列が高度に規則的な構造が自発的に形成されている。
このSAMを用いたマイクロパターニングの工学的応用が検討されており、金属や半導体、無機酸化物のエッチングマスクに用いることが可能である。このような特徴を活かして、有機電子デバイス構築、DNAやタンパク質を選択配置した生体機能分子アレイの作製や、構造規制された成長空間で行う細胞培養実験にも、マイクロパターン化SAMが使用されており、バイオチップなどの生体機能マイクロデバイスへの応用展開が期待されている(例えば、非特許文献1及び2を参照。)。
SAMを形成する有機分子の官能基と基板との組み合わせとして、下記表1に示すものが従来知られている(例えば、非特許文献3を参照。)。
Figure 2010087029
基板の中でも有機エレクトロニクスにおいて特に重要なものは、シリコン基板およびその熱酸化膜とのSAMである。上記表1の中でも、表面酸化膜と有機シラン分子による表面処理は広範囲にわたって研究が行われている(例えば、非特許文献4を参照。)。
さらに近年、有機ホスホン酸と酸化膜(二酸化ケイ素SiO2)とのSAMが数多く報告されている(例えば、非特許文献5を参照。)。図1に、有機ホスホン酸と酸化膜(二酸化ケイ素SiO2)とのSAMの模式図を示す。
一方、スルホン酸およびその誘導体と酸化膜(二酸化チタンTiO2)とがSAMを形成することが報告された文献はほとんどなく、非特許文献6にのみ下記構造のSAMについて記載されているにすぎない。
Figure 2010087029
また、スルホン酸およびその誘導体と二酸化ケイ素とがSAMを形成することが報告された文献は見いだせないが、下記スキームに示すようにシラノールがパラトルエンスルホン酸と高い収率で脱水縮合を起こすことは古くから知られている(例えば、非特許文献7を参照。)。
Figure 2010087029
さらに、軸配位子としてヒドロキシ基を有するシリコンフタロシアニンがパラトルエンスルホン酸と高い収率で脱水縮合を起こすことも報告されている(例えば、非特許文献8を参照。)。
ところで、ユビキタスな情報社会を迎え、いつでもどこでも使用できる情報端末が求められている。そのため、フレキシブルかつ軽量で安価な電子デバイスが望まれているが、従来のシリコンのような無機半導体材料を用いた電子デバイスでは、これらの要望に十分に対応できていない。そこで、近年、これらの要望に対応可能な有機半導体材料を用いた電子デバイスの研究が活発になされている(例えば、非特許文献9及び10を参照。)。
有機半導体材料を光電変換材料として用いることにより、光センサ(例えば、特許文献1〜3を参照。)や有機薄膜太陽電池(例えば、非特許文献11及び12を参照。)などの有機光電変換素子が得られる。これらは、シリコンなどの無機半導体材料を用いた素子と比べて製造工程が容易であり、特に湿式プロセスによる成膜が可能な有機半導体材料を用いれば、低温、低コストで大面積の素子を作製できる可能性を秘めている。
現在までに報告されている有機薄膜光電変換素子で最も高い効率を示すものは、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))とPCBM([6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル)のブレンド膜を光電変換層として用いた素子である(例えば、非特許文献11及び12を参照。)。このブレンド膜においては、p型材料であるP3HTとn型材料であるPCBMの接触界面が多いため電荷分離が高効率に起こる。また、両者が相分離して微小なドメインを形成しており、発生した電荷は数珠つなぎになった各ドメインを通ってそれぞれの電極から取り出される。しかし、電荷輸送は偶然形成される電荷輸送経路に依存しており、その再現性や耐久性には問題があった。したがって、電荷分離と電荷輸送を高いレベルで両立できるp型材料とn型材料の複合構造の形成方法が求められている。
また、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))に代表される高分子有機半導体材料は、低分子有機半導体材料と比べ、昇華精製や再結晶ができず高純度化が困難である、分子量に分布があるため再現性の高い材料を得ることが難しい、などの問題があるが、一方で、低分子有機半導体材料で高い電荷輸送能を示すペンタセン、フタロシアニンなどの材料は一般に溶解性が低く結晶性が高いため、塗布成膜適性が低いという問題があった。適切な置換基の導入により、低分子有機半導体材料を塗布して素子を作製した例も報告されているが、低分子からなるp型材料とn型材料の混合溶液を塗布することにより光電変換層を作製すると、一般にp型材料とn型材料が分子レベルで混合された膜となってしまい、電荷輸送経路がうまく形成されないため、高い性能の素子を得ることは難しかった(例えば、非特許文献13を参照。)。一方で、pn積層型の光電変換層を塗布成膜により作製することも、下層にダメージを与えずに上層を塗布することが難しく、上層か下層のどちらかを真空蒸着法により作製する必要があった(例えば、非特許文献14を参照。)。したがって、低分子化合物を用いて溶液塗布法により作製可能で高効率を示す有機薄膜光電変換素子の開発が求められている。
有機半導体などは基板最表層および分子数層の分子配列が移動度に重要な影響を与えることが一般に知られている。すなわち有機分子のSiO2上への配列が重要になる。
さらに近年、有機薄膜太陽電池として有機無機ハイブリッドとも呼ぶべき材料構成に注目が集まっている。これはp型材料とn型材料のいずれかを有機材料、もう一方を無機材料とする方法である。特によく知られているのがn型材料としてTiO2やZnOなどの金属酸化物を用い、p型材料として有機材料を用いる組み合わせである(例えば、非特許文献15を参照。)。
しかし、いわゆる有機−無機ハイブリッド材料では有機材料と無機材料との相溶性が悪く、そのため薄膜太陽電池の系でも有機−無機ハイブリッド材料を用いた場合には、相互の距離が遠く、電荷分離能が低下することが問題とされてきた。電荷分離能を向上させるためには界面が多ければ多いほどよいが、p型材料とn型材料とが分子レベルで混合された膜を作製すると、電荷の再結合が起こるために電荷輸送能が低下する。すなわち電荷分離と電荷輸送とはトレードオフの関係にあり、ある程度のドメインサイズを保ちながらも相互の距離が近いことが求められていた。
特開2003−234460号公報 特開2003−332551号公報 特開2005−268609号公報 関隆広監修,「機能物質の集積膜と応用展開」,シーエムシー出版 国武豊喜監修,「自己組織化ナノマテリアル」,フロンティア出版 Chemical Reviews,2005,105,1103. 永田員也,「機能材料」,2007年9月号,Vol.27,No.9,p.18 J.Am.Chem.Soc.,2003,Vol.125,p.16074-16080. Applied Surface Science,1998,Vol.125,p.85-92. Zeitschrift.Naturforsch.B Anorg.Chem.Org.Chem.,1980,Vol.35,p.31-34. Inorg.Chem.,2001,Vol.40,p.932-939. Chemical Reviews,2007,Vol.107,p.1296-1323. Organic Field-Effect Transistors,2007年,CRC Press,159-228頁 Organic Photovoltaics,2005年,Taylor&Francis,49-104頁 Chemical Reviews,2007,Vol.107,p.1324-1338. Materials Today,2007,Vol.10,p.34-41. 「最新機能性色素大全集」,2007年,技術情報協会,320-328頁 Inorganica.Chimica.Acta,2008,Vol.361,p.581.
本発明は、上記の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、無機化合物の表面を溶液プロセスによって効率的に特定の有機化合物で修飾し、有機薄膜を形成する方法を提供することにある。
そこで本発明者は鋭意検討を重ねた結果、溶液プロセスに適した溶解性を有する特定の有機化合物を用いて無機化合物の表面にSAMを形成し、かつこれに熱などの外部刺激を加えることにより置換基の脱離反応を速やかに進行させ、無機化合物の表面を効率的に修飾し、有機薄膜を形成しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
[1]無機化合物の最表層に、下記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する化合物の単分子膜を形成し、次いで前記化合物において前記無機化合物に結合していない下記一般式(1)で表される官能基の一部もしくは全部を水素原子に変換することを特徴とする無機化合物の表面修飾方法。
Figure 2010087029
(式中、Rは置換基を表し、nは1又は2の整数を表す。)
[2]前記無機化合物が金属酸化物であることを特徴とする[1]項に記載の方法。
[3]前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物を、水または有機溶媒に溶解させて前記無機化合物上に塗布し、前記無機化合物と共有結合を形成させることを特徴とする[1]又は[2]項に記載の方法。
[4]前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物が、前記一般式(1)で表される官能基が、連結基を介してもしくは直接、π共役系化合物残基に連結してなることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]無機化合物の最表層に、下記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する化合物の単分子膜を形成し、次いで前記化合物において前記無機化合物に結合していない下記一般式(1)で表される官能基の一部もしくは全部を水素原子に変換することを特徴とする有機薄膜の製造方法。
Figure 2010087029
(式中、Rは置換基を表し、nは1又は2の整数を表す。)
[6]前記無機化合物が金属酸化物であることを特徴とする[5]項に記載の方法。
[7]前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物を、水または有機溶媒に溶解させて前記無機化合物上に塗布し、前記無機化合物と共有結合を形成させることを特徴とする[5]又は[6]項に記載の方法。
[8]前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物が、前記一般式(1)で表される官能基が、連結基を介してもしくは直接、π共役系化合物残基に連結してなることを特徴とする[5]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9][5]〜[8]のいずれか1項に記載の方法により得られた有機薄膜を含む有機電子デバイス。
本発明により、特定の置換基を有する有機化合物を前駆体として用いることにより、溶液プロセスにより無機化合物の基板上への成膜が容易に行うことができ、かつ、得られる膜に熱などの外部刺激を加えることにより置換基の脱離反応が効率的に進行し、無機化合物の表面を効率的に修飾し、有機薄膜を形成することができる。得られた有機半導体膜は、化学的安定性および半導体動作安定性が高く、良好な半導体特性を示し、有機電子デバイスに利用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の無機化合物の表面修飾方法および有機薄膜の製造方法は、下記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する染料化合物(以下、「本発明に用いられる有機化合物」という)を用いて、無機化合物の最表層に単分子膜を形成し、次いで該化合物において無機化合物に結合していない一般式(1)で表される官能基の一部または全部を脱離させて水素原子に変換することを特徴とする。
[本発明に用いられる有機化合物]
(一般式(1)で表される官能基)
まず、下記一般式(1)で表される官能基について説明する。
Figure 2010087029
前記一般式(1)中、Rは置換基を表し、nは1又は2の整数を表す。
Rで表される置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基等の環状構造を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等の環状構造を含む。)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
さらに詳しくは、Rで表される置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。これらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。より具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。また、Rはさらに置換基によって置換されていても良い。
ここでRとしては、ヒドロキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシル基、シリル基が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基であり、特に好ましくはヒドロキシ基、炭素数1〜30の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基である。
前記一般式(1)中、nは1又は2の整数を表し、最も好ましくは2である。
前記一般式(1)で表される官能基は、最も好ましくは下記一般式(2)又は(3)で表される官能基である。
Figure 2010087029
Figure 2010087029
本発明では、上記官能基の金属塩は、化合物の単分子膜の形成を阻害し、しかも該官能基が水素原子に置換されにくいため、好ましくない。これは、スルホン酸及びスルフィン酸の金属塩置換基は基板最表層のヒドロキシ基と脱水縮合せず、かつ、スルホン酸及びスルフィン酸の金属塩置換基から三酸化硫黄もしくは二酸化硫黄が脱離した後の化合物がスルホン酸及びスルフィン酸が脱離した後の化合物と比べエネルギーレベルが高いため脱離し難いためと考えられる。
本発明に用いられる有機化合物は、前記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する染料化合物であり、好ましくは、前記一般式(1)で表される官能基が、連結基を介してもしくは直接、π共役系化合物残基に連結してなる。
(連結基)
連結基は2価のものが好ましい。好ましい連結基の具体例としては、アルキレン基(シクロアルキレン基を含む)、アルケニレン基(シクロアルケニレン基を含む)、アルキニレン基、アリーレン基、へテロ環連結基(ヘテロアリーレン基を含む)、カルボニル連結基(−C(=O)−)、チオカルボニル連結基(−C(=S)−)、酸素原子連結基(−O−)、窒素原子連結基(−N(Ra)−、ここでRaは前記一般式(1)のRと同様である)、硫黄原子連結基(−S−)、シリレン基(−Si(Rb)(Rc)−、ここでRb及びRcは、それぞれ前記一般式(1)のRと同様であり、互いに結合して環を形成してもよい)、およびこれらの組み合わせからなる連結基などが挙げられる。なお、本発明において、シクロアルキレン基には、ビシクロアルキニレン基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含されるものであり、シクロアルケニレン基には、ビシクロアルケニレン基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含されるものである。
また、連結基は、先にRについて説明した一価の置換基から水素原子を一個取り去った二価の基が更に好ましい。好ましい連結基の具体例としては、アリール基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基などの一価の置換基から水素原子を一個取り去った二価の基であり、最も好ましくは、ヘテロ環基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基から水素原子を一個取り去った二価の基である。
(π共役系化合物)
本発明におけるπ共役系化合物としては、広いπ共役平面を有する化合物であればいかなるものでもよいが、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環などの芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環が2つ以上、縮環された、及び/又は共有結合で連結された構造であることが好ましい。
本発明におけるπ共役系化合物の具体例としては、テトラセン、ペンタセン、トリフェニレン、ヘキサベンゾコロネンなどの縮合多環化合物、クォーターチオフェンやセキシチオフェンなどのヘテロ環オリゴマー、フタロシアニン類、ポルフィリン類などが挙げられる。
化合物の化学的安定性、半導体動作安定性および半導体特性の観点からは、本発明に用いられる有機化合物は、下記一般式(P)で表されるフタロシアニン化合物であることが特に好ましい。ここで、フタロシアニン化合物は、フタロシアニン骨格を有する化合物をいい、フタロシアニンに置換基が結合した誘導体である。
Figure 2010087029
(式中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。複数のQは同一でも異なっていてもよい。R2は置換基を表す。mは1〜16の整数を表す。mが2以上の場合、複数の−SO22基は同一でも異なっていてもよい。−SO22基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環における水素原子と置換する。)
前記一般式(P)中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。複数のQは同一でも異なっていてもよい。ここで、芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。
Qにより形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。Qにより形成される芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のRで挙げたものが適用できる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基および縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、前述のRとして挙げたものが適用できる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
前記一般式(P)中、−SO22基は、分子内のどこに結合していてもよいが、好ましくは、Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環における水素原子と置換する。R2は前記一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(P)中、mは1〜16の整数を表す。mが2以上の場合、複数の−SO22基は同一でも異なっていてもよい。mは、好ましくは1〜8の整数であり、さらに好ましくは1〜4の整数である。
前記一般式(P)中、Mは金属原子または水素原子を表す。Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。
Mが金属原子を表す場合、安定な錯体を形成するものであれば金属はいかなるものでも良く、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Hg、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Pd、Cd、Sn、Pt、Pb、Sr、V、Mn、Ti、In又はGaなどを使用することができる。また、金属原子には置換基が結合していてもよく、置換基としては前述のRで挙げたものを用いることができる。また、単一金属原子の他、3価以上の金属原子と他の元素とが結合して2価になっている原子団、例えば、AlCl、Ti=O、V=O、SiCl2等も含まれる。
Mとして好ましくはMg、Ca、AlCl、SiCl2、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Sn、SnCl2、Pt、Pb、V=O、Mn又はTi=Oであり、より好ましくはFe、Co、Ni、Cu又はZnであり、特に好ましくはCu又はZnである。なお、Mが水素原子である場合も好ましく、Mが水素原子である場合の一般式(P)は下記一般式(P’)で表される。
Figure 2010087029
前記一般式(P’)において、Q、R2及びmは、それぞれ前記一般式(P)におけるQ、R2及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
(異性体の存在)
一般に、複数の置換基を有するフタロシアニン化合物には、置換基の結合している位置の異なる位置異性体が存在し得る。本発明に用いられる有機化合物においても例外ではなく、場合によっては数種類の位置異性体が考えられる。本発明においては、フタロシアニン化合物は単一の化合物として用いても良いし、位置異性体の混合物として用いることもできる。位置異性体の混合物として用いる場合には、混合している位置異性体の数、それぞれの位置異性体における置換基の置換位置、および位置異性体の混合比率はいかなるものでも良い。
(好ましい具体例)
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表2〜6にフタロシアニン化合物の具体例をそれぞれ示す。表2〜6中、置換基の*印は、下記一般式(1−A)で表されるフタロシアニン化合物への結合部位を示す。また、表2〜6において、例えば「Rα1/Rα2」という表記は「Rα1又はRα2のいずれか一方」という意味を表しており、従ってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。また、Rα1〜Rα8又はRβ1〜Rβ8が無置換の場合、即ち水素原子が結合している場合は表記を省略している。Buはブチル基を、Meはメチル基を表す。
Figure 2010087029
Figure 2010087029
Figure 2010087029
Figure 2010087029
Figure 2010087029
(合成法)
本発明におけるフタロシアニン化合物のフタロシアニン環形成反応は、白井汪芳、小林長夫編・著「フタロシアニン−化学と機能−」(アイピーシー社、1997年刊)の第1〜62頁、廣橋亮、坂本恵一、奥村映子編「機能性色素としてのフタロシアニン」(アイピーシー社、2004年刊)の第29〜77頁に準じて行うことができる。
フタロシアニン化合物の代表的な合成方法としては、これらの文献に記載のワイラー法、フタロニトリル法、リチウム法、サブフタロシアニン法、および塩素化フタロシアニン法などが挙げられる。本発明においては、フタロニトリル法を好ましく用いることができる。具体的には、t−ブチルスルホニルフタロニトリル等のような前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物を原料として、フタロシアニン環形成反応を行うことが好ましい。フタロシアニン環形成反応において、いかなる反応条件を用いても良い。環形成反応においては、フタロシアニンの中心金属となる種々の金属を添加することが好ましいが、中心金属を持たないフタロシアニン化合物を合成後に、所望の金属を導入しても良い。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いても良いが、好ましくは高沸点の溶媒である。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いても良い。最適な反応条件は、目的とするフタロシアニン化合物の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件を参考に設定することができる。
上記のフタロシアニン化合物の合成に使用する原料としては、無水フタル酸、フタルイミド、フタル酸およびその塩、フタル酸ジアミド、フタロニトリル、1,3−ジイミノイソインドリンなどの誘導体を用いることができる。これらの原料は公知のいかなる方法で合成しても良い。
また、本発明に用いられる有機化合物は、特開2005−119165号公報等の記載を参照して調製することもできる。
(純度)
後述するように本発明の方法により得られる有機薄膜(有機半導体薄膜)は、有機電子デバイスに用いることができる。有機電子デバイスにおいては、高いキャリア移動度を示すための条件として、有機半導体材料が高純度であることが挙げられる。有機半導体膜中に不純物が微量でも含まれると、不純物がキャリアのトラップとなり、あるいは結晶構造に欠陥をもたらすため、移動度の低下を引き起こす。したがって、このような観点からは、不純物の濃度は低いことが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは1%以下である場合である。材料の純度は、例えば液体クロマトグラフィー(HPLC)により調べることができる。
[無機化合物]
本発明に用いられる無機化合物としては、特に制限はない。例えば金属/化合物半導体(Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Hg、Fe、GaAs、InP、Si、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、SnSe、FeS2、PbS、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2等)、酸化物/酸化膜(ZrO2、TiSrO3、TiO2、Nb23、Al23、AgO、CuO、Ta25、Zr/Al23、ガラス、マイカ、SiO2、SnO2、WO3、GeO2、ZrO2、ZnO、V25、KTaO3、酸化インジウムスズ(ITO)、ステンレス鋼(SUS)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))、窒化シリコン(Si34、SiNx)などが好ましい。
本発明に用いられる無機化合物の形状は特に制限されないが、好ましくは板状であり、本発明では、無機化合物の基板が好ましく用いられる。さらに基板表層の表面処理がいかようになされていてもよく、例えば、二酸化ケイ素表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)やオクタデシルトリクロロシラン(OTS)、Oxcide−NH2等、水素終端化シリコンSi−H等、ハロゲン化シリコンSi−X(X=Cl、Br、I等)、水素終端化ダイヤモンドC−H等の塗布により表面処理したものを用いることができる。
本発明においては、無機化合物の基板の最表層には、ヒドロキシ基が存在することが特に好ましい。そのため、無機化合物が金属酸化物であることが好ましく、酸化物/酸化膜(ZrO2、TiSrO3、TiO2、Nb23、Al23、AgO、CuO、Ta25、Zr/Al23、ガラス、マイカ、SiO2、SnO2、WO3、GeO2、ZrO2、ZnO、V25、KTaO3、ITO、SUS、PZT)などが好ましく用いられる。
また、例えば、無機化合物の基板の最表層をオゾン処理してヒドロキシ基を基板上にあらわにさせたり、金属表面上にヒドロキシ基含有のアルカンチオールのSAM膜を形成したりしたものを用いることもできる。
[単分子膜の形成]
本発明の方法では、無機化合物の最表層に、本発明に用いられる有機化合物の単分子膜を形成する。該単分子膜は、本発明に用いられる有機化合物を無機化合物の基板上に成膜し、次いで加熱することにより本発明に用いられる有機化合物と無機化合物とを共有結合させることで形成することができる。
(成膜方法)
本発明に用いられる有機化合物を無機化合物の基板上に成膜する方法は、いかなる方法でも良いが、真空プロセスあるいは溶液プロセスにより成膜することが可能である。真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられる。
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を用いて成膜する方法をさす。具体的には、キャスト法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スピンコート法、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir-Blodgett)(LB)法などの通常の方法を用いることができる。本発明においては溶液プロセスによる成膜がより好ましく、特に、キャスト法、スピンコート法、ディッピング(浸漬)コーティング法、又はインクジェット法を用いることが好ましい。
(塗布条件)
溶液プロセスを用いて基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼン等の炭化水素系溶媒;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒;例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキサイド等の極性溶媒)および/または水に溶解、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。
その塗布液中の本発明に用いられる有機化合物の濃度は、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜10質量%であり、これにより任意の厚さの膜を形成できる。
本発明に用いられる有機化合物は、特に溶液プロセスによる成膜に適している。溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して薄膜が形成する過程があり、溶液プロセスに適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で結晶化してしまい良好な薄膜を形成させることが困難である。本発明に用いられる有機化合物は、このような結晶化が起こりにくい点でも優れている。
また、成膜の際に樹脂バインダーを用いることも可能である。この場合、層を形成する材料とバインダー樹脂とを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。樹脂バインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン等の光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン等の導電性ポリマー等を挙げることができる。樹脂バインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用しても良い。薄膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高い樹脂バインダーが好ましく、電荷移動度を考慮すると極性基を含まない構造の樹脂バインダーや光伝導性ポリマー、導電性ポリマーが好ましい。
樹脂バインダーは使わない方が有機半導体の特性上好ましいが、目的によっては使用することもある。この場合の樹脂バインダーの使用量は、特に制限はないが、本発明に用いられる有機化合物からなる膜中、好ましくは0.1〜30質量%で用いられる。
また、成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃〜200℃の間であることが好ましい。
(共有結合の形成)
本発明に用いられる有機化合物と無機化合物との間で共有結合の形成は、50℃以上、好ましくは100℃以上で引き起こされる。また、上限は500℃以下、好ましくは400℃以下である。高温ほど反応時間は短く、低温ほど結合形成反応に必要な時間は長くなる。用途によっては、部分的に変換して特性を調整することも可能である。
加熱には、ヒーターを用いた伝熱による加熱の他、赤外線ランプ、半導体レーザーなどの化合物が吸収する波長の光を照射することを利用してもよい。また、本発明に用いられる有機化合物の近傍に光を吸収する層を設け、光をこの層で吸収させることにより加熱してもよい。これらの加熱は、窒素やアルゴン、真空中などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
(官能基の変換)
本発明の方法では、本発明に用いられる有機化合物の単分子膜を形成した後、加熱することにより、該化合物において無機化合物の基板に結合していない前記一般式(1)で表される官能基の一部もしくは全部を水素原子に変換する。前記一般式(1)で表される官能基を脱離させて水素原子に変換することにより、本発明に用いられる有機化合物は溶媒不溶性化合物に転換される。例えば、本発明に用いられる有機化合物が前記一般式(P)で表されるフタロシアニン化合物である場合、無機化合物の基板表面に無置換のフタロシアニンの薄膜を形成することができ、無機化合物の基板表面を無置換のフタロシアニンで修飾できる。
無機化合物の基板に結合していない前記一般式(1)で表される官能基を水素原子に変換するための加熱温度は、200℃以上、好ましくは250℃以上である。また、上限は500℃以下、好ましくは400℃以下である。高温ほど反応時間は短く、低温ほど脱離反応に必要な時間は長くなる。用途によっては、部分的に変換して特性を調整することも可能である。加熱は、前記の共有結合の形成と同様の手段で行うことができる。
(膜厚)
上記の方法で得られる有機薄膜は単分子膜である。そのため、膜厚は、本発明に用いられる有機化合物によって異なるが、一般に0.1〜100nmであり、好ましくは1〜50nmであり、さらに好ましくは1〜20nmである。
[有機電子デバイス]
本発明の有機電子デバイスは、前記の方法により得られた有機薄膜(有機半導体膜)を含む。ここで、有機電子デバイスとは、有機半導体を含有しかつ2つ以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、化学物質などにより制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場などを発生させるデバイスである。例としては、有機光電変換素子、有機電界効果トランジスタ、有機電界発光素子、ガスセンサ、有機整流素子、有機インバータ、情報記録素子などが挙げられる。有機光電変換素子は光センサ用途、エネルギー変換用途(太陽電池)のいずれにも用いることができる。これらの中で、好ましくは有機電界効果トランジスタもしくは有機光電変換素子であり、特に好ましくは有機電界効果トランジスタである。
前記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する染料化合物を有機半導体の前駆体として用いることにより、基板上への成膜が容易で、かつ得られる膜に熱などの外部刺激を加えることにより置換基の脱離反応が効率的に進行し、化学的安定性および半導体動作安定性が高く良好な半導体特性を示す有機半導体膜が得られる。本発明の有機半導体膜およびこれを用いた電子デバイス(特に電界効果トランジスタ(FET))は、高純度であり、半導体動作安定性が高く、良好な半導体特性を示す。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1
(分子量の測定)
市販の4置換スルホン酸亜鉛フタロシアニン(例示化合物A−53、Frontier Scientific社製、商品名:ZnPcS−834)の分子量について、マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)により測定したところ、895(=〔M+〕:極性ネガ)であった。なお、MALDI−TOF−MS測定は、Applied Biosystems社製Voyager−DE PRO(商品名)を使用し、マトリックスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(東京化成社製)を用いて行った。
(質量減少率の測定)
また、この化合物について熱分析(TG/DTA測定)を行った。TG/DTA測定は、Seiko Instruments Inc.製EXSTAR6000(商品名)を用い、N2気流下(流量200ml/min)、30℃〜550℃の範囲において10℃/分で昇温を行い、質量減少率を求めた。測定結果を図2に示す。図2は、質量減少率の温度変化を示すグラフである。
4置換スルホン酸亜鉛フタロシアニン(例示化合物A−53)を250℃で加熱したところ、水溶性を示した。TG/DTAにおける初期の質量減少は溶剤もしくは水に起因すると考えられる。その後400℃まで加熱し、その残留物のMSスペクトルを測定したところ、MSスペクトルのピークは576(=〔M+〕:極性ポジ)に変化した。これは、スルホン酸基が脱離して、4置換スルホン酸亜鉛フタロシアニンから亜鉛フタロシアニン顔料に変化したことを意味する。
参考例2
市販の4置換スルホン酸無金属フタロシアニン(例示化合物A−54、Frontier Scientific社製、商品名:Pcs−834)について、参考例1と同様にして分子量および質量減少率を測定した。MSスペクトルは832(=〔M+〕−1:極性ネガ)であった。質量減少率の測定結果を図3に示す。
4置換スルホン酸無金属フタロシアニン(例示化合物A−54)を250℃で加熱したところ、水溶性を示した。TG/DTAにおける初期の質量減少は溶剤もしくは水に起因すると考えられる。その後400℃まで加熱し、その残留物のMSスペクトルを測定したところMSスペクトルのピークは514(=〔M+〕:極性ポジ)に変化した。これは、スルホン酸基が脱離して、4置換スルホン酸無金属フタロシアニンから無金属フタロシアニン顔料に変化したことを意味する。
参考例3
市販の4置換スルホン酸ナトリウム銅フタロシアニン(アルドリッチ社製)について、参考例1と同様にして質量減少率を測定した。TG/DTAを測定した結果を図4に示す。
図4は、4置換スルホン酸ナトリウム銅フタロシアニンのTG/DTA測定結果を示すグラフである。図4中、一番上の曲線は、温度に対する質量変化(TG)を示し、一番下の曲線は、温度に対する熱の出入り(エンタルピー変化)(DTA)を示し、真中の曲線は、TGの時間当たりの変化量(微分値)(DTG)を示す。
図4中の一番上の曲線から、質量減少がほとんどないことがわかった。また、図4中の一番下の曲線から、エンタルピー変化がほとんどないことがわかった。これらの結果から、4置換スルホン酸ナトリウム銅フタロシアニンは、400℃では、4置換スルホン酸亜鉛フタロシアニンや4置換スルホン酸無金属フタロシアニンに比べてスルホン酸基が脱離しにくいことがわかった。これは、スルホン酸ナトリウム置換基から三酸化硫黄が脱離した後の化合物が、スルホン酸が脱離した後の化合物と比べエネルギーレベルが高いためと考えられる。
実施例1
市販の4置換スルホン酸亜鉛フタロシアニン(例示化合物A−53、Frontier Scientific社製、商品名:ZnPcS−834)0.1gを5mlの水に溶解させた溶液に、熱酸化膜付シリコンウエハをUVオゾン処理した基板を5分間浸漬させ、150℃で30分加熱した。その後に水で洗い流した基板の膜厚を、自動エリプソメータ(溝尻光学工業所社製、DHA-XA series、商品名)を用いて測定したところ、基板上に10Åの単分子膜が形成されていることがわかった。さらにこれを400℃で30分加熱した。同様に膜厚を測定したところ、8Åの単分子膜が形成されたことがわかった。
以上の結果から、(1)150℃の加熱により、基板最表層のSiO2上のヒドロキシ基とフタロシアニンに置換されたスルホン酸基とが脱水縮合して共有結合を形成し、単分子膜が形成された後に、(2)400℃の加熱により、フタロシアニンに置換されたスルホン酸基のうち、基板に結合していないスルホン酸基が脱離して水素原子に変換され、無置換のフタロシアニンの単分子膜が形成されたことがわかった。
比較例1
4置換スルホン酸亜鉛フタロシアニン(例示化合物A−53)の代わりに4置換スルホン酸ナトリウム銅フタロシアニン(アルドリッチ社製)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。基板の膜厚を実施例1と同様にして自動エリプソメータを用いて測定したところ、膜厚は0Åであり、基板上に単分子膜が形成されていないことがわかった。これは、スルホン酸ナトリウム置換基は基板最表層のSiO2上のヒドロキシ基と脱水縮合しないため、加熱後も水による洗浄で洗い流されてしまうためと考えられる。
実施例2
(太陽電池の作製)
ITO電極がパターニングされたガラス基板(2.5cm×2.5cm)を、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄した後、乾燥した。さらに、ITO電極表面の有機汚染物質を除去するためにUVオゾン処理を30分間行った。次に、ITO基板上にPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)水溶液(BaytronP(標準品)、シュタルク社製)をスピンコート(4000rpm、60秒間)し、120℃で10分間乾燥することにより、膜厚約50nmのホール輸送性バッファ層を形成させた。膜厚は、触針式膜厚計(アルバック社製、商品名:DEKTAK 6M)により測定した(以下同)。
次いで、上記の水溶性の4置換スルホン酸亜鉛フタロシアニン(例示化合物A−53)と酸化チタンとのナノ粒子(粒径80nm、アルドリッチ社製)をホモジナイザーで乳化した水混合溶液(15mg+15mg/mL)をバッファ層の上に1000rpmでスピンコートすることで、厚さ200nm以下の厚みがほぼ均一な有機半導体(有機光電変換層)前駆体膜を形成させた。窒素雰囲気下、10℃/分で400℃まで加熱し、400℃で5分間保持することで有機半導体膜へと変換し、光電変換層を作製した。この光電変換層の上に、真空蒸着装置(アルバック社製、商品名:EBX−8C)を用いて、2×10-4以下の真空度で、バッファ層としてLiFを約1nm、金属電極としてアルミニウムを約80nm、順次真空蒸着することにより、有効面積0.04cm2の有機光電変換素子を得た。
この素子にソーラーシミュレータ(Oriel社製、150W簡易型)を用いてAM1.5、100mW/cm2の擬似太陽光を照射し、電気化学アナライザー(BAS社製、商品名:ALSモデル660B)を用いて電流−電圧特性を測定した。その結果、光電流および光起電力が発生し、良好な光電変換特性を示した。これは有機−無機界面で脱水による結合が生成したことにより、相互間距離が短く、電荷分離能が高いためと考えられる。
比較例2
実施例2において水溶性フタロシアニン(例示化合物A−53)の代わりに参考例3の4置換スルホン酸ナトリウム銅フタロシアニン(アルドリッチ社製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして有機光電変換素子を作製した。作製した試料について実施例2と同様にして光電変換特性を測定したが、全く光電変換特性を示さなかった。これは、界面で結合が形成せず、また置換基の脱離能も低いために、相互間距離が遠く、電荷分離能が低いためと考えられる。
従来の有機ホスホン酸と酸化膜(二酸化ケイ素SiO2)とのSAMの模式図である。 参考例1の質量減少率の温度変化を示すグラフである。 参考例2の質量減少率の温度変化を示すグラフである。 参考例3のTG/DTA測定結果を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 無機化合物の最表層に、下記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する化合物の単分子膜を形成し、次いで前記化合物において前記無機化合物に結合していない下記一般式(1)で表される官能基の一部もしくは全部を水素原子に変換することを特徴とする無機化合物の表面修飾方法。
    Figure 2010087029
    (式中、Rは置換基を表し、nは1又は2の整数を表す。)
  2. 前記無機化合物が金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物を、水または有機溶媒に溶解させて前記無機化合物上に塗布し、前記無機化合物と共有結合を形成させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物が、前記一般式(1)で表される官能基が、連結基を介してもしくは直接、π共役系化合物残基に連結してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 無機化合物の最表層に、下記一般式(1)で表される官能基を2つ以上有する化合物の単分子膜を形成し、次いで前記化合物において前記無機化合物に結合していない下記一般式(1)で表される官能基の一部もしくは全部を水素原子に変換することを特徴とする有機薄膜の製造方法。
    Figure 2010087029
    (式中、Rは置換基を表し、nは1又は2の整数を表す。)
  6. 前記無機化合物が金属酸化物であることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物を、水または有機溶媒に溶解させて前記無機化合物上に塗布し、前記無機化合物と共有結合を形成させることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記一般式(1)で表される官能基を有する化合物が、前記一般式(1)で表される官能基が、連結基を介してもしくは直接、π共役系化合物残基に連結してなることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法により得られた有機薄膜を含む有機電子デバイス。
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JP2024096140A (ja) * 2018-10-05 2024-07-12 株式会社半導体エネルギー研究所 認証システム

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