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JP2008286859A - 光学フィルムおよびその製造方法、位相差板、楕円偏光板、並びに画像表示装置 - Google Patents

光学フィルムおよびその製造方法、位相差板、楕円偏光板、並びに画像表示装置 Download PDF

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JP2008286859A JP2007129326A JP2007129326A JP2008286859A JP 2008286859 A JP2008286859 A JP 2008286859A JP 2007129326 A JP2007129326 A JP 2007129326A JP 2007129326 A JP2007129326 A JP 2007129326A JP 2008286859 A JP2008286859 A JP 2008286859A
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JP2007129326A
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Hiroyuki Kawanishi
弘之 川西
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Fujifilm Corp
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Fujifilm Corp
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Abstract

【課題】面内および膜厚方向レターデーションの発現性に優れ、偏光板加工適性に優れた光学フィルムを提供する。
【解決手段】ラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、線熱膨張係数が80ppm以下である光学フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルムおよびその製造方法に関する。また本発明は、該光学フィルムを用いた位相差板、楕円偏光板および画像表示装置に関する。
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能であるなど様々な利点を有していることから、パーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は、液晶セル内の液晶分子の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流であった。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大したりするために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1にはディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In-Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。特にVAモードはコントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことからテレビ用の液晶表示装置(LCD)として着目されている(特許文献1)。
このような液晶表示装置の視野角度を拡大して、斜め方向から見た場合にも高いコントラストを維持し、階調反転が発生し難い液晶表示装置として、視野角補償用の位相差フィルムを用いた液晶表示装置も知られている。視野角補償用の位相差フィルムとしては、例えば面内のレターデーション(Re)が概ね0でありフィルム面に垂直な方向に光学軸を有する負の一軸性位相差フィルム、Reが100nm以下でありフィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)が100nm以上である二軸性の位相差フィルムなどが知られている。これらの位相差フィルムの材質としては、例えばポリカーボネート系高分子、ポリアリレート系高分子、ポリエステル系高分子などの芳香族系高分子や、アクリル系高分子、環状ポリオレフィン系高分子などが知られている(特許文献2)。
特許文献3には、特定の光弾性係数および、Re、Rth発現性を有する高分子を用いることで、視野角補償機能を有し、かつ高温暴露時のコントラストのムラを低減する技術が開示されている。
特許文献4には、特定の化学構造を有すことで、比較的薄膜で可視光領域(波長400〜700nmの領域)で1/4波長板、或いは1/2波長板の波長分散特性を示す位相差板が開示されている。
特許第2587398号公報 特開平11−95208号公報 特開2001−27707号公報 特開2006−171464号公報
特許文献2では、芳香族系高分子からなる位相差フィルムを用いているため、高温に暴露した際に液晶表示装置のコントラストのムラが発生しやすいという問題があった。また、アクリル系高分子や環状ポリオレフィン系高分子からなるフィルムは、液晶表示装置で要求される高いRe、Rthとするために、2枚または3枚以上を重ね合せて用いる必要があり、近年の価格競争の激しい液晶表示装置業界においては、高コスト、生産性低下につながり好ましくない。このため、1枚でかつ高温暴露時のコントラストムラを低減する技術が要望されている。
特許文献3では、改良したとされる高温暴露時のコントラストムラ抑制は不十分であり、近年要求されている液晶表示装置の表示性能品質を確保できないことが判明した。さらに保護フィルム、偏光子、位相差フィルムの順に積層した偏光板形態での高温暴露試験では、偏光板のカールが発生し、コントラストムラがさらに悪化することが判明した。このコントラストムラは光学用フィルム、およびその偏光板を液晶表示装置に積載したときにも、目視でムラとして認識されるレベルのものであり、高温暴露時のコントラストムラを低減した光学用フィルムの開発が要望されている。
本発明の目的は、面内および膜厚方向レターデーションの発現性に優れ、偏光板加工適性に優れた光学フィルムを提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような特徴を有する光学フィルムを安価で生産性よく製造する方法を提供することである。
本発明は以下の手段によって上記目的を達成したものである。
[1] ラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムであり、フィルムの線熱膨張係数が80ppm以下である光学フィルム。
[2] 前記線熱膨張係数が20ppm〜80ppmであることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記ラクトン環含有重合体が下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
Figure 2008286859
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
[4] 前記熱可塑性樹脂組成物が、シアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体を含む単量体組成物を共重合させた構造を有する重合体をさらに含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[5] 前記熱可塑性樹脂組成物が、アクリロニトリルとスチレンを含む単量体組成物を共重合させた構造を有する重合体をさらに含むことを特徴とする[4]に記載の光学フィルム。
[6] 面内のレターデーションが0〜15nmであり、膜厚方向のレターデーションが300nm以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[7] ラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムをプレス延伸する工程を含むことを特徴とする、フィルムの線熱膨張係数が80ppm以下の光学フィルムの製造方法。
[8] 前記線熱膨張係数が20ppm〜80ppmであることを特徴とする[7]に記載の光学フィルムの製造方法。
[9] 前記プレス延伸を前記フィルムのガラス転移温度以上の温度で行うことを特徴とする[7]または[8]に記載の光学フィルムの製造方法。
[10] 前記プレス延伸をTg〜(Tg+10)℃で行うことを特徴とする[9]に記載の光学フィルムの製造方法。
[11] 前記プレス延伸の面積延伸倍率が1.5〜5倍であることを特徴とする[7]〜[10]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[12] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする位相差板。
[13] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルムと偏光板とを貼り合わせて形成したことを特徴とする楕円偏光板。
[14] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルム、[12]に記載の位相差板、または[13]に記載の楕円偏光板を少なくとも1枚以上用いたことを特徴とする画像表示装置。
本発明の光学フィルムは、面内および膜厚方向レターデーションの発現性に優れており、偏光板加工時の切断面から発生する製造故障を低減することができる。また、本発明の製造方法によれば、本発明の光学フィルムを効率よく安価に製造することができる。さらに、本発明の位相差板、楕円偏光板および画像表示装置は、光学的性質が優れている。
以下において、本発明の光学フィルムとその製造方法等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
〔ラクトン環含有重合体〕
本発明の光学フィルムは、ラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなる。
ラクトン環含有重合体は、重合体中にラクトン環構造を有するものであり、好ましくは下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有するものである。
Figure 2008286859
式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。ここでいう有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。有機残基の炭素数は1〜15が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、1〜5がさらにより好ましい。有機残基として、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアルコシ基などを挙げることができ、アルキル基が好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、などを挙げることができる。R1、R2、R3として、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、さらにより好ましくは水素原子、メチル基である。
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5質量%以上であれば、十分な耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が得られやすい傾向がある。また、ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90質量%以下であれば、より高い成形加工性が得られやすい傾向がある。
ラクトン環含有重合体は、一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、特に限定されないが、ラクトン環含有重合体の製造方法として後に説明するような、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(2a)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
Figure 2008286859
(式中、R4は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アセテート基、シアノ基、−CO−R5基、または−CO−O−R6基を表し、R5およびR6は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。炭素数1〜20の有機残基については、上記一般式(1)における有機残基の説明を参照することができる。
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%であり、水酸基含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。一般式(2a)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
ラクトン環含有重合体の製造方法については、特に限定はされないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を得た後に、得られた重合体(a)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行う方法である。
重合工程においては、例えば下記一般式(1a)で表される単量体を含む単量体組成物を用いて重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得ることができる。
Figure 2008286859
(式中、R7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。炭素数1〜20の有機残基については、上記一般式(1)における有機残基の説明を参照することができる。)
一般式(1a)で表される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸tert−ブチルなどが挙げられる。これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。一般式(1a)で表される単量体は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合工程に供する単量体組成物中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。重合工程に供する単量体組成物中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合が5質量%以上であれば、十分な耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が得られやすい傾向がある。重合工程に供する単量体組成物中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合が90質量%以下であれば、ラクトン環化時にゲル化が起きるのを十分に防ぐことができ、より高い成形加工性を有する重合体が得られやすい傾向がある。
重合工程に供する単量体組成物中には、一般式(1a)で表される単量体以外の単量体を含んでいてもよい。このような単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、上記一般式(2a)で表される単量体が好ましく挙げられる。一般式(1a)で表される単量体以外の単量体は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、一般式(1a)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
一般式(1a)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。
水酸基含有単量体としては、一般式(1a)で表される単量体以外の水酸基含有単量体であれば特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
一般式(1a)で表される単量体以外の水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
一般式(2a)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
一般式(2a)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
単量体組成物を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
重合温度、重合時間は、使用する単量体の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃、重合時間が1〜10時間である。
溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃のものが好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50質量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50質量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、重合反応混合物中の重合体の濃度があまりに低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができ、特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させるために分子鎖中の水酸基とエステル基の割合を高めた場合であってもゲル化を十分に抑制できる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。
以上の重合工程を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれているが、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で続くラクトン環化縮合工程に導入することが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)であり、重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。重合工程で得られた重合体(a)は、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
重合体(a)へラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不十分であると、耐熱性が十分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在してしまったりするので好ましくない。
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは、上記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
重合体(a)を加熱処理する方法については特に限定されず、公知の方法が利用できる。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
環化縮合反応を行う際には、特開2001−151814号公報に示されているように有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、重合体(a)に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。触媒の使用量が0.001質量%以上であれば、環化縮合反応の反応率の向上を十分に図りやすくなる傾向があり、一方、5質量%以下であれば、着色や架橋を防いで良好な溶融賦形性が得られやすくなる傾向がある。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応は溶剤の存在下で行い、且つ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こったりする問題等が生じる。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、使用する装置については特に限定されないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、前記脱揮装置と前記押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置またはベント付き押出機を用いることがより好ましい。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。反応処理温度が150℃以上であれば、環化縮合反応が十分に進行して残存揮発分量を抑えやすくなる傾向があり、350℃以下であれば、着色や分解を防ぎやすくなる傾向がある。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPa以上であれば、アルコールを含めた揮発分の残存を十分に防ぎやすくなる傾向があり、1.33hPa以下であれば、工業的な実施がより容易になる傾向がある。
前記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
前記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。上記温度が150℃以上であれば、環化縮合反応が十分に進行して残存揮発分量を抑えやすくなる傾向があり、350℃以下であれば、着色や分解を防ぎやすくなる傾向がある。
前記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPa以上であれば、アルコールを含めた揮発分の残存を十分に防ぎやすくなる傾向があり、1.33hPa以下であれば、工業的な実施がより容易になる傾向がある。
なお、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が悪化するおそれがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)を溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機等の上記反応装置系に通してもよい。
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行ってもよい。例えば、重合体(a)を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体(a)を、2軸押出機を用いて、250℃近い、あるいはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化縮合反応が起こる前に一部分解等が生じ、得られるラクトン環含有重合体の物性が悪くなるおそれがある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、予め環化縮合反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有重合体の物性の悪化を抑制できるので好ましい。特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、すなわち、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基をあらかじめ環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、予め釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置のついた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機等で、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特にこの形態の場合、環化縮合反応用の触媒が存在していることがより好ましい。
上述のように、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、本発明においてラクトン環含有重合体を得る上で好ましい形態である。この形態により、ガラス転移温度がより高く、環化縮合反応率もより高まり、耐熱性に優れたラクトン環含有重合体が得られる。この場合、環化縮合反応率の目安としては、実施例に示すダイナッミクTG測定における、150〜300℃間での質量減少率が2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用できる。より好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュウ形状、スクリュウ運転条件等を調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、および、前記(i)または(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体(a)と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去したのちに環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前にあらかじめ行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなどでもよいが、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体(a)の質量に対し、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。方法(i)の加熱温度と加熱時間は特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜などを用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法等が挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下となっても何ら問題はない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、すなわち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での質量減少率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。質量減少率が2%以下であれば、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行ったときに、環化縮合反応率が十分高いレベルまで上がり、得られるラクトン環含有重合体の物性が向上すやすい傾向がある。なお、上記の環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。
重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤を、そのまま脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよいし、必要に応じて、前記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を単離してから溶剤を再添加する等のその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入しても構わない。
脱揮工程は環化縮合反応と同時に終了することには限らず、環化縮合反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での質量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。さらに、高い環化縮合反応率によってラクトン環構造が重合体に十分に導入されるため、得られたラクトン環含有重合体が十分に高い耐熱性を有している。
ラクトン環含有重合体は、15質量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。着色度(YI)が6以下であれば、着色を防いでより高い透明性が得られやすい傾向がある。
ラクトン環含有重合体は、熱質量分析(TG)における5%質量減少温度が、280℃以上であることが好ましく、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。熱質量分析(TG)における5%質量減少温度は、熱安定性の指標である。これが280℃以上であれば、十分な熱安定性を発揮しやすい。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、最も好ましくは140℃以上である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である。残存揮発分の総量が5000ppm以下であれば、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークしたりするなどの成形不良をより効果的に防ぎやすくなる傾向がある。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の目安である。
〔その他の熱可塑性樹脂〕
本発明にかかるその他の熱可塑性樹脂は、ラクトン環含有重合体とブレンドしてフィルム状にした際に、ガラス転移温度が120℃以上、面方向の100μmあたりの位相差が20nm以下で、全光線透過率が85%以上の性能を有するものであれば、特に種類は問わないが、熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂の方が、透明性や機械強度を向上させる点において好ましい。
本発明にかかる光学フィルム中のラクトン環含有重合体とその他の熱可塑樹脂の含有割合は、好ましくは60〜99:1〜40質量%、より好ましくは70〜97:3〜30質量%、さらに好ましくは80〜95:5〜20質量%である。光学フィルム中のラクトン環含有重合体の含有割合が60質量%以上であれば、本発明の効果をより十分に発揮できる傾向がある。
本発明にかかるその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。ゴム質重合体は、表面に本発明のラクトン環重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下である事が好ましく、70nm以下である事がさらに好ましい。
ラクトン環含有重合体と熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂としては、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体、具体的にはアクリロニトリル−スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル酸エステル類を50質量%以上含有する重合体を用いるとよい。それらの中でもアクリロニトリル−スチレン系共重合体を用いるとガラス転移温度が120℃以上、Reが20nm以下で、全光線透過率が85%以上である光学フィルムが容易に得られる。なお、ラクトン環含有重合体とその他の熱可塑性樹脂とが熱力学的に相溶することは、これらを混合して得られた熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点を測定することによって確認することができる。具体的には、示差走査熱量測定器により測定されるガラス転移点がラクトン環含有重合体とその他の熱可塑性樹脂との混合物について1点のみ観測されることによって、熱力学的に相溶していると言える。
その他の熱可塑性樹脂としてアクリロニトリル−スチレン系共重合体を用いる場合、その製造方法は、乳化重合法や懸濁重合法、溶液重合法、バルク重合法等を用いる事が可能であるが、得られる光学フィルムの透明性や光学性能の観点から溶液重合法かバルク重合法で得られたものである事が好ましい。
本発明にかかる光学フィルム成形用熱可塑樹脂組成物は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。
光学用面状熱可塑性樹脂成形体中のその他の添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%である。
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、各種光学用途に応じた特性を十分に発揮できる、光学フィルムである。
本発明の光学フィルムのガラス転移温度は、通常120℃以上であり、好ましくは125℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。
本発明の光学フィルムは、面内の100μmあたりの位相差(Re)が通常20nm以下であり、好ましくは15nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。また、膜厚方向の100μmあたりの位相差(Rth)は通常300nm以下であり、好ましくは250nm以下であり、より好ましくは200nm以下である。
本発明の光学フィルムは、全光線透過率が通常85%以上であり、好ましくは87%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
本発明の光学フィルムは、位相差の入射角依存性が小さく、入射角0°の100μmあたりの位相差R0と入射角40°の100μmあたりの位相差R40との差(R40−R0)が、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。
本発明の光学フィルムの膜厚は、1μm以上500μm未満が好ましく、より好ましくは10μm以上300μm未満である。膜厚が1μmよりも薄い光学フィルムは、強度に乏しいため好ましくないし、延伸を行う場合に破断等が起こりやすい。
本発明の光学フィルムは、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した引張強度が10MPa以上100MPa未満であることが好ましく、より好ましくは30MPa以上100MPa未満である。10MPa以上であれば、十分な機械的強度が得られやすくなる傾向がある。100MPa以下であれば、より高い加工性が得られやすくなる傾向がある。
本発明の光学フィルムは、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した伸び率が1%以上であることが好ましく3%以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、通常は100%以下が好ましい。1%以上であれば、十分な靭性が得られやすくなる傾向がある。
本発明の光学フィルムは、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した引張弾性率が0.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは1GPa以上、さらに好ましくは2GPa以上である。上限は特に限定されないが、通常は20GPa以下が好ましい。0.5GPa以上であれば、十分な機械的強度が得られやすくなる傾向がある。
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ラクトン環含有重合体と、その他の熱可塑樹脂やその他の添加剤などを、従来公知の混合方法にて混合し、予め熱可塑性樹脂組成物としてから、光学フィルムを製造する事ができる。この熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、例えば、オムニミキサー等の混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練する方法を採用することができる。この場合、押出混練に用いる混練機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等、従来公知の混練機を用いることができる。
フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。この際、前述のように予め押出し混練した熱可塑性樹脂組成物を用いてもよいし、ラクトン環含有重合体と、その他の熱可塑樹脂やその他の添加剤などを、別々に溶液に溶解して均一な混合液とした後、溶液キャスト法(溶液流延法)や溶融押出法のフィルム成形工程に供してもよい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、およびこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどが挙げられる。
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
上記Tダイ法でフィルム成形する場合は、公知の単軸押出し機や2軸押出し機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出したフィルムを巻取りロール状のフィルムを得る事ができる。この際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出し方向に延伸を加えることで、一軸延伸工程とする事も可能である。また、押出し方向と垂直な方向にフィルムを延伸する工程を加える事で、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などの工程を加えることも可能である。
本発明の光学フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸する場合は、一軸延伸フィルムでもよいし、2軸延伸フィルムでもよい。2軸延伸フィルムとする場合は、同時2軸延伸したものでもよいし、逐次2軸延伸したものでもよい。2軸延伸した場合は、機械強度が向上しフィルム性能が向上する。本発明の光学フィルムは、その他の熱可塑性樹脂を混合する事により、延伸しても位相差の増大を抑制する事ができ、光学等方性を保つ事ができる。
本発明の光学フィルムは、熱プレス法で作成されることがより好ましい。熱プレス延伸法とは、プレス圧縮力を用いてダイ内で同時2軸延伸する方法で、引張り延伸する方法である。プレス延伸することでフィルムシートの分子鎖の面配向を促進させ、透明性を維持したまま線膨張係数を増加させることができる。
本発明の光学フィルムの線熱膨張係数は80ppm以下であり、好ましくは70ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。本発明の光学フィルムの線熱膨張係数の下限値は、好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは30ppm以上であり、さらに好ましくは35ppm以上であり、さらにより好ましくは40ppm以上である。例えば、35〜80ppm、40〜70ppm、40〜60ppm、または40〜50ppmの範囲内の線熱膨張係数を有する光学フィルムを選択することができる。
光学フィルムの線熱膨張係数が80ppmを超えると、極端に切りくずの発生量が大きくなり、著しく生産性が劣ってしまう。一方、光学フィルムの線熱膨張係数が低すぎると、切りくずの発生量は抑えられるものの、ひび割れの程度がやや大きくなる傾向がある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、偏光板加工時の切断面から発生する製造故障を低減するには、偏光板の保護フィルムの自由体積を減少させて、分子鎖間の相互作用を増加させることで、偏光板断面の形状が安定化することを新たに見出した。つまり、偏光板に刃をいれて切断するときに、切りくず、切り粉、ひび割れ、糸引き、などの故障が発生せず、偏光板製造時に安定して製造を行うことができ偏光板の得率も飛躍的に向上し、偏光板の面状故障も激減することを見出した。こうして熱プレス法により、フィルムの線熱膨張係数を減少させることで、結果自由体積が減少し、分子鎖間の相互作用を増加させることで、偏光板加工時の故障を低減させることができたと考えられる。
延伸温度としては、フィルム原料の熱可塑樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)近辺で行うことが好ましく、具体的には、(Tg−30)℃〜(Tg+100)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(Tg−20)℃〜(Tg+80)℃である。(Tg−30)℃以上であれば、十分な延伸倍率が得られやすくなる傾向がある。(Tg+100)℃以下であれば、樹脂の流動(フロー)を防ぎ安定な延伸が行いやすくなる傾向がある。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.3〜10倍の範囲、さらに好ましくは1.5〜5倍の範囲で行われる。1.1倍以上であれば、延伸に伴う靭性の向上を図りやすい傾向がある。25倍以下であれば、延伸倍率を上げるだけの効果が得られやすい傾向がある。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分以上であれば、効率よく延伸でき製造コストを低く抑えやすくなる傾向がある。20000%/分以下であれば、延伸フィルムの破断等をより防ぎやすくなる傾向がある。
フィルムの光学等方性や力学特性を安定化させるため、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率および重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC17A)を用いて測定して求めた。
<ダイナミックTG>
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:Thermo Plus2 TG-8120 Dynamic TG((株)リガク社製)
測定条件:試料量5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で質量減少速度値0.005%/秒以下で制御)
<脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合>
脱アルコール反応率を、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる質量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において質量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による質量減少から求めた。
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の質量減少率の測定を行い、得られた実測質量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論質量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)を(Y)とする。なお、理論質量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X、Y)を脱アルコール計算式:
1−(実測質量減少率(X)/理論質量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。そして、この脱アルコール反応率だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有量(質量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合を算出することができる。
例として、後述の実施例1で得られるペレットにおいてラクトン環構造の占める割合を計算する。この重合体の理論質量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(質量比)は組成上20.0質量%であるから、(32/116)×20.0≒5.52質量%となる。他方、ダイナミックTG測定のよる実測質量減少率(X)は0.17質量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.17/5.52)≒0.969となるので、脱アルコール反応率は96.9%である。そして、重合体ではこの脱アルコール反応率分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該重合体中における含有率(20.0質量%)に、脱アルコール反応率(96.9%=0.969)を乗じると、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合は19.4(20.0×0.969)質量%となる。
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。展開液はテトラヒドロフランを用いた。
<樹脂の熱分析>
樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50ml/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
<メルトフローレート>
メルトフローレートは、JIS−K6874に基づき、試験温度240℃、荷重10kgで測定した。
<光学特性>
屈折率異方性(リタデーション:Re)は、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した。可視光透過率は、日本電色工業社製NDH−1001DPを用いて測定した。
<線熱膨張係数>
TMA8310(理学電気(株)製、Thermo Plusシリーズ)により測定し、0〜200℃の平均値を算出して、それを線熱膨張係数とした。
<偏光板加工適性>
トムソン刃で、25℃・相対湿度60%環境湿度下でフィルムを切断し、その切断面の形状および、切り粉発生状況を、目視にて観察した。
◎ フィルム断面形状の乱れおよび切り粉の発生は殆どない
○ フィルム断面形状はほぼきれいであり、切り粉の発生も何ら問題がないレベル。
△ フィルム断面形状はややあれ気味で、切り粉の発生も僅かに認められる。
× フィルム断面形状はかなり荒れており、切り粉の発生数もかなり多い。
〔製造例1〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、8000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として5.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(アクゾ化薬製、商品名:カヤカルボン Bic−75)を添加すると同時に、10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜120℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜120℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレット(1A)を得た。
得られたペレット(1A)について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.17質量%の質量減少を検知した。また、ペレットの重量平均分子量は133,000であり、メルトフローレートは6.5g/10分、ガラス転移温度は131℃であった。
〔実施例1〜3、比較例1、2〕
製造例1で得られたペレット(1A)とアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂(東洋スチレン社製;商品名 トーヨーAS AS20)を1A/AS樹脂=90/10の重量比で単軸押出し機(φ=30mm)を用いて混錬することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
このペレットをメチルエチルケトンに溶解させ、溶液キャスト法で180μmのフィルム(1B)を作成した。このフィルムをガラス転移温度+10℃(137℃)で面積比1.5倍、2倍、3倍で10分間それぞれ熱プレス延伸し、(1C)、(1D)、(1E)を得た。得られたフィルム(1B)、(1C)、(1D)、(1E)の光学特性(Re、Rth)、線熱膨張係数、偏光板加工適性の評価を行った結果を表1に示した。
また、このペレットをメチルエチルケトンに溶解させ、溶液キャスト法で60μmのフィルム(1F)を作成し、この評価結果も表1に示した。
Figure 2008286859
フィルム1B、1Fのように線熱膨張係数の大きなものは、偏光板加工適性が悪いが、熱プレス延伸により線熱膨張係数を低くすることで偏光板加工適性が良化していくことが分かる(1C〜1E)。熱プレスを行うことで、自由体積を減少させ分子鎖間の凝集力を増加させることで、偏光板加工適性が良化したことを示していると考えられる。
〔実施例4〜6、比較例3、4〕
実施例1と同様に1A/AS樹脂=80/20の質量比で単軸押出し機を用いて混錬することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は125℃であった。
このペレットを用いて実施例1と同様に180μmキャストフィルム(2B)を作成した。このフィルムをガラス転移温度+10℃(135℃)で面積比1.5倍、2倍、3倍で10分間それぞれ熱プレス延伸し、(2C)、(2D)、(2E)を得た。得られたフィルム(2B)、(2C)、(2D)、(2E)の光学特性(Re、Rth)、線熱膨張係数、偏光板加工適性の評価を行った結果を表2に示した。
また、このペレットをメチルエチルケトンに溶解させ、溶液キャスト法で60μmのフィルム(2F)を作成し、この評価結果も表2に示した。
得られたフィルム(2B)、(2C)の光学特性の評価を行った結果を表2に示した。
Figure 2008286859
フィルム2B、2Fのように線熱膨張係数の大きなものは、偏光板加工適性が悪いが、熱プレス延伸により線熱膨張係数を低くすることで偏光板加工適性が良化していくことが分かる(2C〜2E)。熱プレスを行うことで、自由体積を減少させ分子鎖間の凝集力を増加させることで、偏光板加工適性が良化したことを示していると考えられる。
本発明の光学フィルムは、面内および膜厚方向レターデーションの発現性に優れており、偏光板加工時の切断面から発生する製造故障を低減することができる。このため、偏光板の製造に好ましく用いることができ、工業上の利用可能性が高い。また、本発明の製造方法によれば、本発明の光学フィルムを効率よく安価に製造することができる。さらに、本発明の位相差板、楕円偏光板および画像表示装置は、光学的性質が優れている。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。

Claims (14)

  1. ラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムであり、フィルムの線熱膨張係数が80ppm以下である光学フィルム。
  2. 前記線熱膨張係数が20ppm〜80ppmであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記ラクトン環含有重合体が下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
    Figure 2008286859
    (式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
  4. 前記熱可塑性樹脂組成物が、シアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体を含む単量体組成物を共重合させた構造を有する重合体をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  5. 前記熱可塑性樹脂組成物が、アクリロニトリルとスチレンを含む単量体組成物を共重合させた構造を有する重合体をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム。
  6. 面内のレターデーションが0〜15nmであり、膜厚方向のレターデーションが300nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  7. ラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムをプレス延伸する工程を含むことを特徴とする、フィルムの線熱膨張係数が80ppm以下の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記線熱膨張係数が20ppm〜80ppmであることを特徴とする請求項7に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 前記プレス延伸を前記フィルムのガラス転移温度以上の温度で行うことを特徴とする請求項7または8に記載の光学フィルムの製造方法。
  10. 前記プレス延伸をTg〜(Tg+10)℃で行うことを特徴とする請求項9に記載の光学フィルムの製造方法。
  11. 前記プレス延伸の面積延伸倍率が1.5〜5倍であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  12. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする位相差板。
  13. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルムと偏光板とを貼り合わせて形成したことを特徴とする楕円偏光板。
  14. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム、請求項12に記載の位相差板、または請求項13に記載の楕円偏光板を少なくとも1枚以上用いたことを特徴とする画像表示装置。
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