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JP2008274043A - 膜及びその製造方法 - Google Patents

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JP2008274043A
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Takashi Onoe
崇 尾上
Nagatake Yamazaki
長武 山崎
Hideyasu Tanaka
秀康 田中
Izumi Hojuyama
和泉 宝珠山
Yoshikiyo Nakagawa
義清 中川
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Asahi Kasei Corp
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

【課題】寸法安定性に優れ、複屈折が調整できる透明な膜を提供する。
【解決手段】層状無機化合物(A)、(A)とは異なる複屈折性物質(B)、及び添加剤(C)からなり、層状無機化合物(A)の積層を配向させた構造を有する透明な膜であって、(C)の膜に占める割合が0質量%超過、45質量%以下である粘土膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、層状無機化合物を含有する透明な膜に関する。また、そのような膜で少なくとも一部分が構成されたディスプレイおよびその関連部材、回路基板、ガスバリア膜に関する。
近年、液晶ディスプレイをはじめとするフラットパネルディスプレイ(以降はFPDと記す)の製造技術が飛躍的に進歩し、従来のブラウン管では到底なし得ない薄型のディスプレイが現実のものとなった。現在のFPDはほぼ全てガラス基板上にデバイスが形成されており、ガラス基板以外の基板を用いた実用的なFPDは存在しない。その理由としては、ガラス基板が高耐熱性であり、高温形成が必要なディスプレイの駆動回路や部材を形成するのに適していること、線膨張係数が小さく、それら駆動回路や部材に与える応力を抑制でき、配線の破断や部品の特性変動が少ないこと、可視光域で透明なため光を取り出すことが容易であること、さらにガスバリア性が高く、外部からの酸素や水蒸気の進入を阻止するガスバリア材として用いることができ、必要により高真空を保持できること等があげられる。
しかし、ガラス基板は柔軟性がなく、割れやすい。また重量が重く、基板の変形や取り扱いの困難さが問題となっている。また、ガラス基板は、曲げて持ち運ぶ等の用途を想定した、曲げられる電子ペーパーのようなフレキシブルディスプレイには使えず、衝撃に対して割れやすく、落下させた場合にデバイスが損傷しやすいという欠点も持つことから、モバイル用途にはあまり適していない。このような観点から、ガラスと同等の耐熱性、線膨張係数、透明性、ガスバリア性等を有するディスプレイ用の基板やガスバリア膜の実用化が望まれている。
また、ディスプレイ,携帯電話端末,コンピューターといった電化製品を構成する電子部品が実装される回路基板に対して、部品実装の高密度化の要請が高まっている。また、携帯電話端末に代表される回転及び変形が要求される電化製品の増加により、フレキシブル化の要請も高まっている。そのため、フレキシブル回路基板や銅張積層板の需要及び要求も増大している。
フレキシブル回路基板としては、現在の所、ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ポリイミド等の樹脂で形成された基板や、特殊なガラスエポキシ基板が用いられている。ところが、導電性ペーストのような導電性インクを用いて回路配線を印刷や塗布で形成するプリント基板を製造する際には、十分に高い導電率の配線を得るために、導電性インクを塗布した後に一般に300℃以上の高温で焼成する必要があるが、前記のような樹脂で形成された基板を用いたフレキシブル回路基板の場合は、樹脂の耐熱性が低く線膨張係数も一般的に大きいために前述の高温焼成を行うことができず、比較的低い温度で行わなければならない。
しかしながら、低温では導電性インクの焼結が十分進まないため、金属箔や真空蒸着で得られる配線と比較して一般的に導電性能が劣るという問題があった。ポリイミド樹脂は比較的高耐熱性であるが、高価であるため、RFID(Radio frequency identification)タグのようなコストが最重視される用途に用いることは困難である。このような観点から、絶縁性を有しつつ高い耐熱性及び難燃性を有する安価なフレキシブルプリント基板の実用化が望まれている。
他方、粘土鉱物に代表される層状無機化合物は、自然界に多数の種類が数多く存在し、その多くは安価で、人体に無害、燃えない等の特徴を有する無機化合物である。層状無機化合物はその名のとおり層状(板状)の無機結晶であり、代表的なものとしては、スメクタイト族粘土や雲母に代表される粘土鉱物、マガディアイトやケニヤイト等の層状ケイ酸塩、ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物、層状リン酸塩、チタン・ニオブ酸塩や六ニオブ酸塩もしくはモリブデン酸塩といった層状遷移金属酸素酸塩、層状マンガン酸化物、層状コバルト酸化物等、多くの異なった組成を有する層状無機化合物が存在する。
層状無機化合物のなかでも、特に粘土鉱物は自然界に大量に存在し、安価でかつ分散性に優れるとうの点でさまざまな用途に好適に用いられている(例えば非特許文献1を参照)。
上記のような粘土鉱物をはじめとする層状無機化合物の利用方法の1つとして、樹脂に層状無機化合物を少量(一般的には約5質量%以下)添加したナノコンポジット材料について幅広い研究がなされ、一部実用化されている(例えば非特許文献2を参照)。それら層状無機化合物を少量添加したナノコンポジット材料の系においては、強度や難燃性の向上効果、もしくはガスバリア性の向上効果が認められている。
しかしながら、それらのナノコンポジット材料においては層状無機化合物の割合が少量であるため、本質的に樹脂の特性は大きくは向上しなかった。それらの多くは層状無機化合物の配向が揃っておらず、または延伸等によって多少配向を揃えた程度であったため、例えばガスバリア性をとってみると、層状無機化合物の添加によってガスの透過に際する移動距離が長くなるためガスの透過率が数分の一程度になる事例もあるが、一桁以上ガスバリア性が向上する事例はほとんどない。また、ガスが透過する際の気体の移動経路を長くしてガスバリア性を向上させる目的から、結晶サイズの大きな天然モンモリロナイトや合成雲母といった層状無機化合物を用いる場合が多いが、この場合は、天然モンモリロナイト由来の黄色い着色や、合成雲母の大きな結晶サイズ由来の光の散乱等の要因で、ディスプレイ等にも使えるようなヘイズ(曇度)が小さく無色で透明性の高い膜を得ることは困難であった。同様に、層状無機化合物の添加量が少ない場合には、ガスバリア性以外の他の物性、例えば耐熱性や温度変化時の寸法安定性を大幅に向上させることは難しく、高耐熱で寸法安定性に優れる層状無機化合物の本質的な特性が十分生かされているとは言い難いものであった。
寸法安定性や耐熱性を向上させ、且つ、光の散乱を抑制して透明性を上げるためには、層状無機化合物の積層を配向させる、すなわち層状無機化合物の単位構造であるナノシートの層を、層面の向きがなるべく一になるようにして密に且つ高度に配向させて積み重ねたナノコンポジット体を形成することが重要と考えられる。かつ、ポリマー等の寸法安定性や耐熱性に乏しい成分の割合を少なくする必要がある。これにより、ガスバリア性も向上すると考えられる。
従来、例えば、層状無機化合物もしくは層状無機化合物とポリマー等の添加剤が混合された分散液をガラス板や離型性を有するフィルムの上に広げ、静置,乾燥することにより、粒子の配向の揃った膜が形成することが知られている。例えば、層状無機化合物の複屈折性を利用した液晶ディスプレイ用位相差板の報告(特許文献1および2を参照)、複屈折を調整した同位相差板の報告(特許文献3を参照)、層状無機化合物と親和性の良い水可溶性樹脂を用い層状無機化合物の全固体に対する重量比を70%以上とすることで、透明性と高いガスバリア性の発現に成功した報告(特許文献4を参照)、水に分散する層状無機化合物が備える無機イオンを有機アンモニウム塩等の有機イオンに交換して有機溶媒への分散性を向上させた疎水性層状化合物と透明なポリイミドとからなる高強度で耐水性のある透明膜の報告(特許文献5を参照)、ガラス転移温度で250℃以上の樹脂と疎水性層状化合物からなる同じく高強度で耐水性のある透明膜の報告(特許文献6を参照)などの多くの報告がある。
しかしながら、特許文献1および2における膜はその厚み方向の複屈折が大きく(面内方向の屈折率に対し厚み方向の屈折率が小さい)、一般的に複屈折性が少ないことが求められる多くの光学用途(例えばディスプレイ用の基板や光学レンズなど)に適用することはできない。特許文献3は膜厚み方向の複屈折の調整を可能としているが、実際に実施されている発明は支持体上の膜の形成であって、自立膜や形成体として要求される強度や寸法安定性の発現に必要な構成要件は言及されていない。特許文献4における膜は層状無機化合物の割合が多く高いガスバリア性を発現するが、添加剤が水可溶性樹脂に限定されているため耐水性や吸湿性、さらには層状無機化合物が備えるアルカリ金属の溶出の点が懸念され、またその厚み方向の複屈折が非常に大きい。特許文献5における膜は疎水性層状化合物の含有量を20質量%未満にしないと製造工程で疎水性層状化合物が部分的に凝集し、ヘイズが増大して透明とは言い難い状態(ヘイズ値で50%以上)になるとともに、靭性の低下も顕著になることが示されている。さらに透明なポリイミドは価格が高く、コストの点からも課題が多い。また特許文献6も同様に透明性低下のため疎水性層状化合物の割合は50質量%を上限とすると記載されており、実際に作製できている透明な膜は疎水性層状化合物の含有量が約17質量%でしかなく、そのため寸法安定性の指標として適切と考えられる線膨張係数の値も25ppm/℃以上と十分小さいとは言い難いものである。また、耐熱性を向上させるためにTgが250℃以上という汎用品ではない樹脂を使わねばならず、実用的とは言い難いものであった。
すなわち、従来の層状無機化合物を添加した膜や形成体は、透明性、複屈折性、耐熱性、寸法安定性、強度、耐水性等に少なからず課題を有しており、それらの要素の多くを高次元でバランスしたものはいまだ開発されていないと考えられる。
そこで本発明は、前述のような従来技術が有する問題点を解決し、添加する樹脂のTgを超えた温度でも線膨張係数や弾性率が悪化せず、高強度で寸法安定性や耐熱性が高く、耐水性を有し、複屈折を調整できさらにはゼロ複屈折をも可能とする透明な膜を提供することを課題とする。さらに、このような膜を備えたディスプレイ用材料(例えば基板やガスバリア膜)、ガスバリア膜、回路基板を提供することを併せて課題とする。
特許3060744号公報 特開平11−95030号公報 特開2005−274595号公報 特開2007−63118号公報 特開2006−37079号公報 特開2006−265383号公報 須藤談話会編,「粘土科学への招待−粘土の素顔と魅力−」,三共出版,p.6(2000) 中條澄編,「ポリマー系ナノコンポジットの製品開発」,フロンティア出版,p.25〜90(2004)
本発明は、寸法安定性に優れ、複屈折が調整できる透明な膜を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、層状無機化合物(A)、(A)とは異なる複屈折性物質(B)、及び添加剤(C)からなり、層状無機化合物(A)の積層を配向させた構造を有する透明な膜であって、(C)の膜に占める割合が0質量%超過、45質量%以下であれば、その目的に適合しうることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、層状無機化合物を含有する透明な膜に関する。
本発明の透明膜は、自立膜として取り扱える強度を有し、線膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、しかも複屈折を調整でき、さらにはゼロ複屈折をも可能とする。
本発明は、層状無機化合物をその単位構造であるナノシートまでできる限りへき開し、層面の向きがなるべく膜面と平行になるようにして、かつ複屈折性を有する物質と、ポリマー等の添加剤と、必要に応じて酸化防止剤とともに、密に且つ高度に均一に配向させて積み重ねた膜である。そのために、膜を構成する物質を溶媒に分散させた分散液からキャスト法によって膜を形成することを特徴とする。そして、屈折率に異方性がある複屈折性物質を配向して膜に付与することで膜の複屈折性を制御すること、さらに、ナノシートを前記のように配向させ規則正しく積層させるとともに膜中における層状無機化合物の割合を多くすること、およびポリマーのような耐熱性や寸法安定性が低い添加剤の量を制限することで、高い透明性と寸法安定性や耐熱強度さらにはそれらの物性を保持したまま複屈折性を制御できることが大きな特徴である。
本発明において用いる層状無機化合物(A)について説明する。本発明における層状無機化合物(A)としては特に限定されるものではなく、粘土鉱物、層状ポリケイ酸、層状ケイ酸塩、層状複水酸化物、層状リン酸塩、チタン・ニオブ酸塩や六ニオブ酸塩もしくはモリブデン酸塩といった層状遷移金属酸素酸塩、層状マンガン酸化物、層状コバルト酸化物等を挙げることができる。しかし透明な膜とするためには、層状無機化合物に着色がないこと、もしくは着色の程度が軽微であることが必要となる。さらに、溶媒中に分散させた場合にできる限り単位層であるナノシートまでへき開して分散することが重要である。 それら層状無機化合物として、特に好適なものは粘土鉱物である。粘土鉱物としては、天然粘土でも合成粘土でもさしつかえなく、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトが好ましく、もしくは、マガディアイト、ハイドロタルサイト、カリオナイト、ハロイサイト等でも良い。しかし、膜の透明性の向上のためには合成粘土の利用が好ましく、合成サポナイト、合成ヘクトライト、合成スチーブンサイト、合成雲母、合成ハイドロタルサイト、合成カリオナイト等が好ましいが、分散性等の点で、スメクタイト族に属する粘土がさらに好ましい。ガスバリア性の観点からは、粘土結晶の層のアスペクト比が大きな天然モンモリロナイトや雲母族に属する粘土、もしくは高アスペクト比のスメクタイト族の粘土等が好ましい。
前記の層状無機化合物、特に粘土鉱物の多くは水もしくは水と高極性溶媒との混合溶媒に分散する性質を有している。従って、そのような層状無機化合物の分散媒は水もしくは水を含有するものが一般的である。しかしながら、層状無機化合物の分散媒が水もしくは水を含有するものに限定されている場合、本発明の膜の構成要素である、層状無機化合物以外の複屈折性物質およびポリマー等の添加剤もまた、水、水を含有する、もしくは水と相溶性のある溶媒に溶解もしくは分散するものを用いなければならず、その場合には用いることのできる複屈折性物質や添加剤が極めて限られてしまう。
なお、本発明における層状化合物(A)の積層を配向させた構造とは、層状化合物(A)の層面の向きがなるべく膜面と平行になるようにして積み重ねられた状態をいう。
また、本発明における透明とは、全光線透過率として70%以上、かつ、ヘイズ(曇度)として10%以下であるものをいう。
層状無機化合物(A)として、層状無機化合物の表面を親有機化処理した疎水性層状化合物を用いることも有用である。親有機化処理としては、アンモニウム塩、フォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩、カルボン酸、アミノ酸、スルフォン酸等の有機イオンを用いて処理することができる。これらの有機イオンを用いて親有機化処理することにより、電荷を有する層状無機化合物のナノシートが備える無機イオンを有機イオンに交換し有機溶媒への分散性を向上させ、疎水性層状化合物を作製することができる。カリオナイトやハイドロタルサイトまたは層状ケイ酸塩のようなナノシートの面に水酸基が露出している層状無機化合物においては、それら水酸基と有機物とを脱水反応等によって結合させ表面を親有機化処理した疎水性層状化合物も好適である。層状無機化合物を有機溶媒に分散させることにより、同様に有機溶媒に分散もしくは溶解する疎水性の複屈折性物質や添加剤も層状無機化合物が分散した分散液に均一に混合できるようになるため、選択できる複屈折性物質やポリマー等の添加剤の種類が飛躍的に増大し、耐水性のある膜が得られるばかりでなく、複屈折性や強度および寸法安定性等の膜物性を幅広く制御することが可能となる。特に、スメクタイト族に属する粘土を上記手法で親有機化した有機スメクタイトは有機化の処理のしやすさ、分散性等の点から好適である。有機イオンのうちアンモニウム塩としては、アルキル基、ベンジル基、ポリオキシエチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等を有するアンモニウム塩や、ジメチルジステアリルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩があげられる。また、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩等は、第4級アンモニウム塩に比べ分解脱離温度が高いため、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩で親有機化処理した疎水性層状化合物自体の耐熱性も高く、かつ分解脱離してできた物質によるポリマー等の添加剤への影響も低減されるため、膜の耐熱性を総合的に向上させるのに好適である。
なお、疎水性層状化合物における有機イオンの存在は、四面体シートや八面体シートの表面に強く結合しているため膜の透明性や寸法安定性等に与える影響は比較的小さい。すなわち、かさ高い有機イオンの導入によって疎水性層状化合物における無機成分(層状無機化合物としての部分)の割合が減少しても、それら有機イオンは無機成分であるナノシートと結合して一体化して挙動すると考えられ、そのため加熱時の寸法安定性や弾性率の低下等にそれら有機イオンが与える影響は小さいことが特徴である。
また、疎水性層状化合物は電荷を有する層状無機化合物の層間に存在するアルカリ金属等の無機イオンを有機イオンに交換して得るため、十分イオン交換を行った疎水性層状化合物を用いればアルカリ金属等の無機塩をほとんど含まない膜を得ることも原理的には可能であり、アルカリ金属を嫌う電子デバイス用途に好適であると考えられる。さらに、有機溶媒の種類を選択することで、水より少ない熱エネルギーで膜を乾燥させることができ、低エネルギーの製造プロセスとすることが可能である。
なお、耐水性のある膜の定義としては、水に漬けた際に溶解しないことであるが、少なくとも24℃の蒸留水に含浸して24時間後の吸水率が10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下であることが望ましい。ここで吸水率は、十分に水分を乾燥させた(100℃以上で1時間以上乾燥させることが望ましい)膜の水に漬ける前の重量をmc、水につけた後のそれをmdとした場合、次の(1)式
吸水率=(md−mc)/mc×100(%) (1)
で定義されるものである。
次に、本発明において用いる複屈折性物質(B)について説明する。複屈折性を定義する指標としては、その物質の固有複屈折の値が好適である。本発明において固有複屈折Δnは、最も屈折率が大きな方向を1つの軸としてその屈折率をnzzとし、その軸を法線方向とする面内において最小の屈折率を示す方向の屈折率の値をnxx、最大の屈折率を示す方向の屈折率の値をnyyとした場合、下記の式(2)によって与えられる値として定義できる。
Δn={nzz−(nxx+nyy)/2} (2)
例えばベンゼン環が2つ直列につながったビフェニル分子の場合、分子の長軸方向が最も屈折率が大きいのでその方法の屈折率の値をnzz、ベンゼン環に垂直な方向がnxx、ベンゼン環に平行な方向をnyyとでき、その場合のΔnの値を、例えば第一原理計算や密度汎関数法等による電子状態計算によって算出することで、好適な固有複屈折を有しているかどうか見積もることができる。
本発明においては、該複屈折性物質における最も屈折率が大きな軸の方向がナノシートの面に対して概ね垂直な方向に配向することが必要であるが、その場合のΔnの値としては、複屈折の観点から少なくとも0.03以上、好ましくは0.06以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上、最も好ましくは0.3以上であることが好ましい。配向度が同じ場合、Δnが大きければ大きいほど少量の添加で大きく複屈折を変化することができる。ただし、あまりにもΔnが大きいと、該複屈折性物質の添加量の微妙な変化でRthが所定の値にならなかったり、もしくは該複屈折性物質の配向の微妙な変動によってRthが大きく変化してしまう場合もあるので、選択する該複屈折性物質の種類によっては必ずしもΔnの値が大きければ大きいと良いわけではない。Δnの値としては、少なくとも2.0以下、好ましくは1.5以下であることが好ましい。
なお、複屈折性物質としては、その固有複屈折Δnの値が0.03以上であり、かつ後述するように、膜中の層状無機化合物に対し、そのnzz方向がナノシートの法線方向に概ね向いて配向しうるものであれば特に限定されるものではなく、例えばパイ電子系を有する低分子物質、棒状、針状もしくは板状の無機微結晶等を挙げることができる。特に配向のしやすさの観点から、低分子物質、さらにメソゲン基を有する低分子物質が好ましい。
本発明において、nx,nyおよびnzは、それぞれx方向、y方向およびz方向の3方向の主屈折率を意味し、x方向とy方向とは互いに直行する膜の面内方向、z方向は膜の厚さ方向と定義する。このとき、膜の複屈折を定量的に表記する場合に良く用いられるレターデーション値として、面内方向のレターデーションをRe(nm)、および厚さ方向のレターデーションをRth(nm)は、膜の厚みをd(nm)として以下の式(3)および式(4)のように定義される。
Re=(nx−ny)×d (3)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d (4)
通常、層状無機化合物は等軸晶系ではないナノシートからなるため、そのようなナノシートを配向積層すると、光学軸を膜の法線方向に有する複屈折性の膜となる。一般に層状無機化合物を構成するナノシートは面内方向より膜厚方向の屈折率が小さいため、また積層する際にはナノシートの面に対して互いに平行にかつ面内の向きはランダムに配向するため、特段の工夫(例えば延伸や電子線照射もしくは電磁場の印加による配向制御等)を加えない限りnxとnyはほとんど同じとなり膜面内の複屈折はほとんど発生しない(Re〜0)。対して、膜厚方向はnx>nzかつny>nzの関係が成立するため、前述のようなナノシートが配向積層した膜は光学的に負の一軸性を示す(Rth>0)。従って、光学的な負の一軸性を好適に用いる用途、例えば層状無機化合物の量を調節してVA型等の垂直配向型液晶セルの位相差補正等には好適に用いることができ、例えば特許文献1および2はその好適例である。
しかしながら、膜を構成する層状無機化合物の量が多くなる、すなわち同じ膜厚でも層状無機化合物の構成割合が多くなる場合、さらには膜厚自体が厚くなることによって膜を構成する層状無機化合物の絶対量が多くなる場合にはRthは増大してしまう。このため、本発明のような層状無機化合物の割合を多くして、かつ自立膜として取り扱える十分な強度を有する厚みの膜を得ようとした場合、必然的にRthの値が正に大きな膜が形成されることとなる。また、一般にIPS型の液晶セルに好適に用いられる偏光板の位相差補正に必要とされる、nx>nz>nyの関係を有する膜を作製することは上記の方法では困難である。
偏光している光が複屈折性を有する媒質を通過する際にはその偏光状態は変化する。Rthの値が0でない膜を偏光している光が透過する場合、膜を通過する光の方向が膜の法線方向からずれる(傾く)と、その偏光状態は変化する。Rthの絶対値が大きければ大きいほど、膜を通過する光の方向が膜の法線方向からずれればずれるほど、光の偏光状態の変化は大きくなり、例えば直線偏光を入射してもそれが楕円偏光もしくは円偏光に変換される。このことは、偏光特性を用いたデバイス、例えば液晶ディスプレイ等に大きな影響を与える。液晶ディスプレイでは通常2枚の偏光板を用い、その偏光板に挟まれた液晶セル中の液晶層の位相差を電圧で制御することにより偏光特性を変換し、偏光板を通過できる光の量を制御することで画像を形成している。現状、液晶セルを形成する基板はガラスであり、ガラスは極めて複屈折が小さいためRthの値も小さく、そのためガラス基板をその法線方向に対して斜めに偏光が通過してもその状態はほとんど変わらない。このため、ガラス基板を斜めに通過した光に対しても、偏光板を透過できる量は設計どおりに制御することができる。
しかるに、仮にガラス基板の代わりに、例えば前述のようなナノシートが配向積層したRthの絶対値が0nmでない膜を基板として用いた場合、基板の法線方向に対して斜めに通過した直線偏光は楕円偏光等に変換されて状態が変わってしまう結果、本来は偏光板で遮蔽されるべき光は偏光板を通過する。このため、設計どおりの光の透過量制御ができなくなる。このことは、液晶ディスプレイにおいて黒が浮く(光が漏れる)ことによる視野角の低下(斜め方向から見た場合のコントラストの低下)という、好ましくない現象を発生させる原因となる。よって、Rthの絶対値が大きな膜、少なくともRthの絶対値が2000nmを超えるような膜は液晶ディスプレイにおいて偏光を制御する部材として好適ではなく、少なくとも一般的には2000nm以下、1000nm以下であることが多く、500nm以下であることが最も一般的である。
従って、現行ガラス基板の代替としてフィルム材料を用いる場合には、そのRthの絶対値はガラスと同様、0nmに近いことが一般的には好ましい。しかし、厳密にはガラスといえどもそのRthの値は、例えば800μmの厚みの場合で数十nmの値を有していることが多いので、完全にRthが0nmの膜の作成は困難であり、また必要性も少ない。従って、事実上0nmとみなせるRthの値としては、少なくとも−50nm以上50nm以下、好ましくは−20nm以上20nm以下であることが好ましい。上記の値は、150μmの膜厚において達成していることが好適であり、より好適には膜厚200μm以上においても達成できていることがさらに好ましい。またReの絶対値も0nmに近いことが一般に好ましい。0nmに近い値として−10nm以上10nm以下であることが好ましい。
上記はあくまで現行の液晶ディスプレイ用のガラス基板を本発明の膜で代替する場合に要求されるRthについてであって、実際には偏光板やその他の光学フィルム、例えば位相差板や偏光板を保護するトリアセチルセルロース(TAC)フィルム等も多くの場合複屈折性を有しているため、それらのRthを補償するということも含めて考慮すると、現行ガラス基板の代替として本発明のようなフィルム材料を用いる場合にそのRthは必ずしも0nmに近づける必要はなく、絶対値が2000nm以下の範囲で適切な値に制御して用いることができる。偏光板や位相差板およびTACフィルム等が有するRthの量とその符号は材料によって幅を有するため好適な値は一概には定義できないものの、液晶分子を除く液晶パネルを構成する全材料のRthの総計は、絶対値で通常2000nm以下であり、1000nm以下であることが多く、500nm以下であることが最も一般的である。よって、液晶パネルを構成する各種材料が有する固有のRthの値を好適に補償しうる範囲としても、本発明の膜が担うべきRthの値の範囲としては、少なくとも絶対値で2000nm以下であり、好適には絶対値で1000nm以下であることが多く、より好適には絶対値で500nm以下であり、現状の多くの部材との適合性を鑑みた場合には絶対値で350nm以下が好適と考えられる。上記の値は、膜厚150μmの膜厚において達成していれば好適であり、より好適には膜厚200μm以上において達成できていることがさらに好ましい。なお、IPS液晶パネルの基板に用いるのであれば、あらかじめ基板のRthを負にしておくことで、作製手法が現状限られているnx>nz>nyの関係を有する位相差板の役割の一部を基板に担わせることも可能である。
本発明では、上記のようなナノシートが配向積層した際に発生する膜の複屈折性を、層状無機化合物とは異なる複屈折性物質を配向させて膜に付与することで制御することが可能である。例えば、固有複屈折を有する低分子物質や光の波長より十分小さい無機微結晶を膜に添加し膜中で配向させることにより、本発明における膜の複屈折性を制御することが可能である。そして、本発明では膜中で配向積層している層状無機化合物もしくは層状無機化合物に結合している物質との物理的および化学的な相互作用を利用して、前述の固有複屈折を有する低分子物質や無機微結晶をまた容易に膜中で配向させることが可能である。この複屈折性を有する物質の添加量と配向する向きの制御およびその配向する程度(配向度)によって、Rthをより大きくしたり、もしくは反対にRthを小さくして大きすぎるRthの値を適切に調整したり、場合によってはRthを負の値としたり、さらには複屈折性を有する物質の種類や添加量等を調整してRthが0のゼロ複屈折膜を作製したりと、Rthを自在に調整することができる。
複屈折性を有する低分子物質としては、メソゲン基を有する分子を挙げることができる。メソゲン基とは、液晶分子において液晶性を発揮する剛直な直線状中間部分を意味する。このメソゲン基としては、配向時に分子が変形して分極率異方性が低下しないよう剛直性を有していること、かつ分極率異方性を大きくするために、2つ以上の芳香環又は脂環を有していることが好ましい。2つ以上の芳香環又は脂環は、これを結合する連結基を有してもよく、芳香環としては、ベンゼン環のような芳香族炭化水素環、もしくは芳香族性ヘテロ環が挙げられる。なかでも2つ以上のベンゼン環を有するものであることが、異方性が大きく剛直な分子となるため好ましい。そのような分子としては、フルオレン、ナフタレン、カルバゾール、ビフェニル、4−ビフェニルカルボン酸、4−ヒドロキシビフェニル、2−ヒドロキシビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、スチルベン、ジフェニルアセトン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、ベンズアルデヒドアジン、4−ベンゾイルビフェニル、カルコン、1,3−ジフェノキシベンゼン、フェナントレン、トラン等、さらには特許文献3に記載されているメソゲン基を有する低分子物質が挙げられる。特に、4−ヒドロキシビフェニルは耐熱安定性の点から好適であり、フェナントレンや4−ビフェニルカルボン酸はRthの低減効果が大きい点で好適である。
このメソゲン基を有する低分子物質は、分子の長軸方向に非局在化した電子密度分布を有しているため、分子の長軸方向の分極率が他の方向の分極率より大きく、そのため分子の長軸方向への固有複屈折が大きい。また、このようなメソゲン基を有する低分子物質においては、ナノシートと相互作用する際、ナノシートもしくはナノシートに結合している物質(例えばナノシート表面に結合している有機イオン)との相互作用、および該低分子物質同士の相互作用によって、分子の長軸方向をナノシートの面に対しておよそ垂直な方向に配して配向するものを数多く認めることができる。結果、ナノシートに対しておよそ垂直に立って配向した該低分子物質の大きな長軸方向への固有複屈折の効果により、該低分子物質を含有するナノシートが配向積層した膜の膜厚方向の屈折率は、該低分子物質を入れないものと比較して大きくなり、Rthの値としては小さくなる。該低分子物質を入れる量を増やす、該低分子物質の長軸方向への固有複屈折がより大きな分子を用いる、または該低分子物質のナノシートの面に対する垂直配向の度合が90度により近くなるような分子を用いること等によりRthの値をより小さくでき、Rth<0nmとすることも容易である。無論、上記のRthを可変する要素を最適化することで、Rthを絶対値で20nm以下、すなわちほぼ0nmとすることも可能である。この方法では、膜厚が厚くなっても該低分子物質に関する上記可変要素を調整することでRthの調整効果を自在に制御できるため、十分な自立強度を得るために厚くした膜でもRthを0nmもしくは負の値にすることが可能な点で優れている。この方法により、通常Rth>0nmであるナノシートの配向膜のレターデーションを任意に調整することができる。
メソゲン基を有する低分子物質以外にも、複屈折性を有する無機微結晶を添加することで、Rthの値を制御することも可能である。複屈折性を有する無機微結晶としては、膜中で少なくともある1軸に対して配向しうるものであれば良い。例えば、細長い針状の結晶であれば、膜中のナノシートに挟まれるような形で針の長手方向は膜面と平行に、面内において針の向く方向はランダムに配向すると考えられる。ナノシートと同様の板状結晶であれば、ナノシートと同様に平行に配向積層するものと考えられる。Rthを減少させるには膜中で前述のように配向した場合に膜厚方向の屈折率が大きくなるような無機微結晶である必要があり、そのような無機微結晶はそれほど多くはないが、例えば針状の炭酸ストロンチウムを挙げることができる。針状の無機微結晶のサイズとしては、長手方向の平均長さが200nm以下、針径が平均20nm以下程度が好ましい。これより結晶のサイズが大きいと可視光が透過する際に散乱の原因となり、特に短波長側において透過率の低下が顕著となる可能性がある。
複屈折性物質等によってRthの制御を行わない層状無機化合物を含有する膜において、Rthの値は膜における層状無機化合物の体積割合と層状無機化合物自体の複屈折性の大きさ、および膜面に対する配向度によって決定される。すなわち、膜中においてナノシートが完全にばらばらの方向を向いている場合には配向度は0%であり、各々のナノシートが有する複屈折は相殺されてRthはほぼ0nmとなる。対して、本発明のようにナノシートが配向積層した場合には、各々のナノシートの面が平均的にどの程度膜面から傾いているか、すなわち配向度が100%の状態からどの程度乱れているかによって、Rthはやや幅を有すると考えられる。しかし、本発明および本発明と同様のキャスト法で作られた従来報告されているナノシートの積層体は概ね各々のナノシートが膜面に対してほぼ平行に積層されていると考えてよい状態にある。このとき、複屈折性物質の添加等によって複屈折の制御を行わない限り、膜厚をdnm、膜中の層状無機化合物の割合をa質量%とした場合、Rthは概ね下記式(5)
Rth>P×a×d (5)
の範囲の値となり、ある一定値以下にはならない。ここで、Pは層状無機化合物自体の複屈折性の大きさと膜面に対する配向度に依存する値で、少なくとも0.00005以上、一般的には0.0001以上、より一般的には0.00015以上、通常は0.0002以上である。特に、スメクタイト族の粘土や雲母族の粘土を用いて配向積層した場合ではPの値は通常0.0002以上、小さくても0.00015以上であり、それよりPの値が小さい場合にはその膜におけるナノシートは配向した状態とはいい難いものである。
なお、ここで、aは膜中の層状無機化合物の割合であるが、複屈折を発現する結晶性の無機成分の割合に対応し、疎水性層状化合物等でナノシートに結合している有機イオン等は含まれないことに留意する必要がある。このaの値は膜の組成比から計算によって容易に求めることができる。例えば、無機成分であるナノシート6部に対して有機成分である有機カチオンが4部の割合で結合した疎水性層状化合物が65質量%、複屈折性物質が10質量%、ポリマーが25質量%の膜の場合、計算されるaの値は39質量%となる。もしくは、X線回折スペクトルによるナノシートの層間距離分布と透過型電子顕微鏡(TEM)による画像解析から見積もることもできる。また、層状無機化合物以外に無機成分を有さない膜であれば、実験的には以下のようにして決められるものである。すなわち、膜を例えば150℃で1時間以上十分乾燥させた直後に測定した膜の質量をma、その膜を800℃で2時間加熱し残った灰分の質量をmbとしたとき、aの値は下記式(6)
a=mb/ma×100 (6)
として差し支えない。もしくは複屈折性物質や添加剤が影響を受けない場合、酸によって層状無機化合物のみを溶解させ、その際の重量変化からaを求めることも可能である。
しかるに、本発明においては複屈折性物質を配向させることで、式(4)で与えられる従来の範囲より小さなRthを有する膜を作製することができ、前述したようにRthがほぼ0nmの膜、さらにはRth<0nmの膜の作製も可能である。Rth<0の場合、その下限について定義することは困難であるが、複屈折性物質が有する固有複屈折の値、添加できる量の上限、および利用用途等を考えると、概ねRthとして−3000nm程度が下限と考えられ、一般的には−2000nm程度までが好適な利用範囲と考えられるる。特に液晶ディスプレイの基板用途を考えた場合には、少なくとも−2000nm、通常は−1000nm、好ましくは−500nm程度、現状の多くの部材との適合性を鑑みた場合には−350nmまでが好適な範囲である。
前記のようにRthの値を調整する方法として、複屈折性物質の添加量を制御する方法が有効である。特に、低分子からなる複屈折性物質はポリマーのような高分子と異なり、添加したことにおける膜の物性、例えば引っ張り強度や弾性率および線膨張係数等への影響が小さく、膜の質量に対して20質量%程度までであればほとんど影響しない。複屈折性物質の好ましい添加量としては、複屈折性物質の固有複屈折や配向度に依存するものの、膜の質量に対して少なくとも0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、10質量%以上であっても良い。透明性・Rthの値の観点から、複屈折性物質の好ましい添加量としては、少なくとも40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。
なお、膜を構成する層状無機化合物の量が多い場合でも、ナノシートの向きがばらばらで平均化されている場合、複屈折性も平均化されてしまい複屈折はほとんど発生せず、Rth〜0nmとなる。しかし、このような膜においてはナノシートが配向積層していないため、本発明のような低い線膨張係数や高温化における高い粘弾性率さらには引っ張り強度等を得ることができず、さらには光の散乱が増大するため高い透明性を得ることが困難である。
本発明において用いる添加剤(C)について説明する。本発明において、膜の強度を向上させる、透明性を向上させる、耐熱黄変を抑制する等、膜の物性を改良するために必要に応じて様々な添加剤を用いることができる。例えば、難燃性を付与したい場合には三酸化アンチモンのような無機系難燃剤を、可塑性を付与したい場合にはフタル酸時メチルのような可塑剤を、加熱時の酸化劣化を抑制する場合にはヒンダードフェノール、ヒンダードアミンやリン系もしくはイオウ系の酸化防止剤等を添加してもよい。それらの添加剤は単独で用いても良いし、2種類以上を併用して用いても良い。
添加剤として、膜に自立性を付与し、強度や柔軟性を向上させる添加剤は特に重要である。そのような添加剤として好ましいものはポリマーである。一般に、層状無機化合物や前述の疎水性層状化合物だけからなる膜はもろく、柔軟性にも乏しく、自立強度を有しているとは言い難いものが多い。ナノシートのアスペクト比が大きく分散性に優れた天然モンモリロナイトからなる膜においては、それのみからなる膜でもある程度の強度を有するものも作製可能であるが、天然モンモリロナイトは着色しており、層状無機化合物の割合を多くすると透明性を得ることが困難である。本発明では添加剤の種類と量を最適化することで、複屈折性を制御しつつ、膜の自立性を高め、透明で耐熱強度を有し、かつ寸法安定性のある膜とすることができる。
水に分散する層状無機化合物を用いて溶媒に水を用いている場合には、添加剤も親水性を有し水への分散性又は溶解性が高い添加剤を用いる必要がある。例えば、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、セルロース繊維、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸、ポリアミノ酸、多価フェノール、安息香酸類化合物が好適である。あるいは、ラテックスやエマルジョンといった、水分散系の材料を用いてもよい。なお、それらは水への分散性又は溶解性が高いため、膜の耐水性は低いものが多い。そこで、塩や他の反応性モノマーやポリマー又はオリゴマー等を加えて、添加剤そのものの耐水性を向上させてもよい。なお、本発明においては、この中でも添加剤として、ポリビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂のような親水性ポリマーが好ましいものとして挙げられる。
前述したように、耐水性の高い疎水性層状化合物を用い、分散媒として水以外の溶媒を用いた場合には、添加剤も同様に有機溶媒に溶解もしくは分散するような添加剤を用いることができる。この場合、一般に耐水性のある膜を得ることができる。なお、本発明においては、この中でも添加剤として疎水性ポリマーが好ましいものとして挙げられる。例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、を用いることができる。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂が、耐熱性、寸法安定性等の点から好適である。また、ガスバリア性の観点からは、エチレン−ビニルアルコール共重合体(エバール)も好適である。
また、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
その他では、熱硬化性または光硬化性樹脂を用いることもでき、例えば、潜在性光カチオン重合開始剤を含むエポキシ樹脂等やシリコーン樹脂等があげられる。なお、上記光硬化性樹脂を硬化させる場合には、光照射と同時に熱を加えてもよい。また、本発明において熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂と併用して硬化剤、硬化触媒等を用いてもよいが、それらは熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の硬化に一般的に用いられるものであれば特に限定されない。硬化剤の具体例としては、多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂があげられ、硬化触媒の具体例としては、イミダゾール等があげられる。これらの硬化剤、硬化触媒は単独又は2種以上混合して使用することができる。さらに、前述した樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、透明な膜とする必要性から、上記の添加剤も透明もしくは着色が少ないことが好ましい。
なお、本発明においては、複屈折を制御しつつ膜の強度や柔軟性を高めるための添加剤の1つとして、ポリビニルアセタール樹脂を特に好適なものとして挙げることができる。ポリビニルアセタールはポリビニルアルコールに各種アルデヒドまたはケトンをアセタール化反応させて、アセタール基を側鎖に導入した構造を持つ。またアセタール基を導入した際に反応が完全には進まず、アセチル基や水酸基を持つ構造を取る。アセタール基・アセチル基・水酸基のそれぞれの組成比を変えることによって、物理的・化学的性質を変化させることができる。また、重合度を変えることによって、熱的性質・機械的性質・溶液粘度を変化させることができる。市販品として代表的なものに、積水化学株式会社製のエスレックK,エスレックB(商標名)等がある。本発明において用いるポリビニルアセタール樹脂の種類は特に限定されるものではないが、透明な膜を製造する場合には、ポリビニルアセタール樹脂も透明もしくは着色が少ないことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂のアセタール炭素上の置換基としては、ブチル基、アセチル基、フェニル基、ナフチル基、水素基等が上げられる。前述した樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前述したポリマーは2種類以上の上記置換基をアセタール炭素上に持つものであってもよい。ポリビニルアセタール樹脂にはアセタール基のほかに水酸気を含んでも良い。水酸基の量としては25%以上が、粘土等の層状無機化合物とよく交じり合い好ましい。また水酸基が多すぎると耐水性がなくなるので60%以下が好ましく、特に好ましくは40%以下である。上記特性を満たすポリビニルアセタール樹脂として、積水化学株式会社製のポリビニルブチラール樹脂エスレックBが挙げられる。エスレックBでは水酸基の量が25%から40%であり、特に好ましいのは水酸基の量が33±3wt%であるBX−1である。
さらには透明ポリイミド等の高価な樹脂と異なり、ポリビニルアセタール樹脂は1kgで約1000円以下と安価で、コストの点でも幅広い用途へ適用することが可能である。
ポリビニルアセタール樹脂を溶解させる溶媒としては、溶解性に優れるという点において、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−オクタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサン、イソホロン、N,N−ジメチルアセとアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、プロピレンクロライド、エチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、酢酸等を溶媒として用いることが好適である。その中でもテトラヒドロフランはポリビニルアセタール樹脂の溶媒としては非常に好ましく、ポリビニルアセタール樹脂をテトラヒドロフランに溶解した溶液を作製し、それとは別に層状無機化合物を例えばトルエン等のテトラヒドロフランとは別の分散しやすい溶媒に分散させた分散液を作製し、両者を混合してナノシートが分散した含有液を調製する方法が望ましい。なお、ポリビニルアセタール樹脂の好適溶媒が上記のような有機溶媒であるため、分散させる層状無機化合物としては、前記の疎水性層状化合物であることが好ましい。さらにポリビニルアセタール樹脂を溶解する際に、まずは樹脂を膨潤させる溶剤を加えた後、ポリビニルアセタール樹脂の溶解性に優れる溶剤を加えることは、樹脂の溶解が容易、溶解に要する時間の短縮という点で好適である。また、添加溶剤としてアルコールを加えることは、溶液粘度が低く保て、貯蔵中の粘度変化も少なくなるという点で好適である。
本発明の膜においては、前述のような添加剤のうち、ポリマーの添加量を低くすることが重要である。一般にポリマー、特に有機物からなるポリマーは寸法安定性や耐熱強度が低く、ガラス転移温度以上に加熱すると大きく伸びてしまったり、弾性が低下して柔らかくなってしまったりするため、用いることのできる温度に制限があった。このため、高温プロセスを必要とする用途、例えばディスプレイの基板に用いることは困難であった。それらの問題を解決すべく、従来層状無機化合物の添加が検討されてきたが、従来の層状無機化合物を含有した膜においては透明性等の物性を低下させないために層状無機化合物以外の添加剤、例えば強度発現のためのポリマーの割合が45質量%を超えるものが大部分であり、そのため十分に低い線膨張係数、例えば20ppm/℃以下といった値を透明性等の低下無しに達成することが極めて困難であった。
本発明においては、このような問題を解決するため、ナノシートの層を密に且つ高度に配向させ、さらに添加剤を平均的に層間にインターカレート(ナノシートの層間に目的物質が挿入されていること)させ、単位構造であるナノシートの層を層面の向きがなるべく一になるようにして積み重ね、層面に垂直な方向に高い周期性を有するナノシートの配向膜とし、かつ膜の組成に占めるポリマーの添加量を少なくとも45質量%以下、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、もっとも好ましくは10質量%以下とすることで、加熱による伸び縮みが少ない高い寸法安定性(低い線膨張係数)を有し、高温でも粘弾性の低下が少ないという特徴を有することができる。特に、ポリビニルアセタール樹脂を用いた場合、ガスバリア性、寸法安定性の観点から、ポリマーの添加量を45質量%以下にすることが好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
本発明における、層状無機化合物、複屈折性物質、および添加剤が均一に膜中で分散し、複屈折性物質を配向させ所望のRthとした膜を得るためには、以下のような製造方法が好適である。
用いる層状無機化合物を溶媒に分散させ、できるだけ単層のナノシートにまでへき開させた分散液を作製する。分散方法としては、長時間攪拌したり振とうしたりする方法、ホモジナイザー等の装置でせん断力を加える方法等、従来の層状無機化合物の分散で用いられてきた公知の方法を用いることができる。この分散液に、前記複屈折性物質を入れ、よく攪拌し、ナノシートと前記複屈折性物質が均一に混合分散したナノシート分散液を作製する。このとき、前記複屈折性物質の分散性を向上し凝集の発生を抑制するために、前記複屈折性物質を予め溶媒に十分に溶解もしくは分散させた状態で、層状無機化合物が分散した分散液と混合することがより好ましい。このとき、層状無機化合物を分散させるのに用いる溶媒と、前記複屈折性物質を溶解もしくは分散させる溶媒とは同じである必要はなく、互いに相溶性があれば異なる溶媒を用いても良い。
次に、前記のナノシート分散液に、他の添加剤、例えばポリマーや酸化防止剤等を添加し、所定の成分を所定比率含んだナノシート含有液を形成する。それら添加剤の添加方法としては、それら添加剤を固体の状態でそのままナノシート分散液に投入して混合する方法でも良いが、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液を別途に調製し、両者を混合してナノシート含有液を調製する方法が望ましい。この方法を用いれば、溶媒への溶解過程や分散過程で増粘効果を示す添加剤や、層状無機化合物や前記複屈折性物質を分散もしくは溶解させるのに用いる溶媒に対する添加剤の溶解性が低い場合でも、ナノシート含有液中でより分散させることが可能である。そのため、使用可能な添加剤の種類や添加量を広く検討することができる。また、層状無機化合物と添加剤をそれぞれ十分分散もしくは溶解させた状態で混合することで、添加剤による作用で層状無機化合物が凝集して不均一な塊を形成するのを抑制することができる。前記複屈折性物質に関しても同様である。このことにより、層状無機化合物や複屈折性物質や添加剤がより均一に分散したナノシート含有液が得られるので、凝集物の発生を押さえ、膜形成工程でナノシートの層の間に複屈折性物質や添加剤を平均的に挿入することができ、結果として膜を構成する要素物質が均一に分布した、十分な機械的強度やフレキシビリティーを有する膜を製造することができ、高い透明性を付与することができる。
なお、前記複屈折性物質においては、層状無機化合物と複屈折性物質が混合された前記ナノシート分散液の段階でナノシートの面に対してある配向をもって結合した状態を形成するものもある。特に、メソゲン系の低分子物質においてこの傾向が現れることが多い。 この場合、複屈折性物質の層状無機化合物に対する配向制御を設計どおりに行うためにも、他の添加剤、例えばポリマー等をナノシートの分散液に添加する前に複屈折性物質を添加するほうが好ましい。対して、製膜時におけるナノシートの配向積層過程において層間に取り込まれることで配向が決定するような複屈折性物質の場合には、複屈折性物質をナノシートが分散した液に添加する順番は前述のようにする必要は必ずしもなく、例えばポリマーや酸化防止剤等と同時に添加もしくはそれらを添加した後に添加しても良い。
なお、ナノシート含有液中に含まれる層状無機化合物は1種類でも良いし、異なる2種類以上の層状無機化合物を用いても良い。同様に、複屈折性物質も1種類でも良いし、異なる2種類以上の複屈折性物質を用いても良い。さらには、添加剤も1種類でも良いし、異なる2種類以上の添加剤を用いても良い。ナノシート含有液を作製するにあたっては、層状無機化合物の種類等が異なる2種類以上のナノシート分散液を用いてナノシート含有液を作製しても良いし、添加剤の種類等が異なる2種類以上の添加剤含有液を用いてナノシート含有液を作製しても良い。もしくは、複数の種類のナノシート分散液と複数の種類の添加剤含有液をそれぞれ混合してナノシート含有液を作製しても良い。
上記手法によって得られたナノシート含有液中における層状無機化合物は、できるだけその単位構成要素であるナノシートにまでへき開して均一に分散していることが望ましい。層状無機化合物のへき開が不十分な場合、ナノシート間に複屈折性物質やポリマー等の添加剤が十分にインターカレーションされず、Rthが設計どおりに制御されない、膜強度が低下する、耐熱性が低下する、凝集した状態の層状無機化合物による光の散乱で透明性が低下する等の問題が発生する。さらには、ナノシートが多数凝集した状態で膜を製造してもナノシートの配向が低下するため、寸法安定性等の低下が発生する。しかし、全ての層状無機化合物が単一のナノシートの状態にまで分散した分散液を作るのは一般に困難であり、多少の凝集状態が存在することが普通である。層状無機化合物のへき開の状態を評価することは困難であるが、例えば層状無機化合物のみを分散させた分散液に対して、動的散乱法による粒子径分布測定、希薄液とした後に乾燥して1つ1つのナノシートの厚みを原子間力顕微鏡で測定する手法、および粘度測定等を実施することによっておおよそのへき開状態を知ることができる。もしくは後述するように、膜中におけるナノシートの層間距離をX線回折スペクトルもしくはTEMで観察する方法によっても推定することができる。もしくは分散状態の目安を示す広く知られている方法として、放置状態における分散液の沈降高さ比を調べる方法がある。へき開が進んで粒子体積が小さくなり均一に分散した層状無機化合物の分散液は、放置しても沈降しにくくなる特徴を有するため、層状無機化合物のみを分散させた分散液の状態で、すなわち、少なくとも24℃の大気中で12時間放置した際の沈降高さ比が少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の分散液を用いてナノシート含有液を調製することが望ましい。この沈降高さ比は該分散液における層状無機化合物の固形分濃度に依存するため、該分散液作製の際には上記を満足する固形分濃度の分散液を作製するようにしなければならない。これより沈降高さ比が小さい、すなわち層状無機化合物の膨潤力(分散能)より重力の方が勝り層状無機化合物が沈殿してきている分散液においては、層状無機化合物のへき開が不足しナノシートが多数結合した状態のままの大きな塊となっていることが予想され、本発明のようなナノシートが配向積層し、かつその層間に複屈折性物質やポリマー等の添加剤が平均的に挿入された膜を形成することは一般に困難である。
上記手法によって得られたナノシート含有液には多くの場合、主として空気由来の気体成分が混入している、よって、そのようなナノシート含有液に含まれる気体成分を減少させ、製膜した際にそれら気体成分由来の気泡や空隙が生じないよう、そのような気体成分を除去する必要がある。除去方法としては、減圧下におき真空脱泡を行う、超音波を照射する等、任意の公知の手法を使うことができる。
本発明におけるナノシート含有液の固形分濃度は、好適には1から20質量%、より好ましくは3から15質量%、さらに好ましくは5から12質量%である。このとき、固形分の濃度が薄すぎる場合、乾燥に時間がかかりすぎるという問題がある。また、固形分の濃度が高すぎる場合、層状無機化合物や複屈折性物質や添加剤が良好に分散しにくくなり、また粘度が上がりすぎて、もしくはチクソトロピー性が顕著になりすぎて気体成分の除去が極めて困難になり、結果、得られる膜の配向が悪く均一性が低下して、透明性、ガスバリア性、および寸法安定性等が悪化するという問題がある。
本発明において用いる溶媒の種類は特に限定されるものではないが、水や有機溶媒を用いることができる。また、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール等の有機物や塩などを少量溶解させた水を用いることもできる。有機物,塩などを添加する目的は、ナノシート含有液における粘土の分散性を変化させる、ナノシート含有液の粘性を変化させる、膜の乾燥のしやすさを変化させる、膜の均一性を向上させる等である。
特に、疎水性層状化合物を分散させる溶媒としては、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン)、エーテル類(例えばエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例えばn−オクタン)、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール)、ハロゲン化炭化水素(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)や、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、フタル酸ジオクチル、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等を用いることができる。
なお、疎水性層状化合物を十分に分散させるのに、メタノール等の高極性溶媒、特に双極子モーメントが1.60デバイ以上の分子からなる溶媒を添加することは効果的である。疎水性層状化合物の分散液にメタノールを少量添加すると、凝集している疎水性層状化合物の層の間にメタノールが侵入して層間隔を広げ、十分な時間とせん断力を加えると疎水性層状化合物の単位層近くまで分散することができる。これによって疎水性層状化合物の分散が極めて促進されナノシートの凝集物が極めて少なくなるため、疎水性層状化合物が大部分単位層であるナノシート近くまで剥離し、複屈折性物質と添加剤と疎水性層状化合物が極めて均一に混合されたナノシート含有液を得ることができ、透明性等の物性が奏される。そのような溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸、酢酸、プロピオンサ酸、ギ酸メチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸エチル、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。なかでもメタノールは1.67デバイの双極子モーメントを有し、さらに分子量が32.04と小さく、また多くの溶媒と相溶性が高いため好適である。やや効果は劣るものの、安全性の点からはエタノールも1.68デバイの双極子モーメントを有し、分子量も46.07と小さく、同様に多くの溶媒と相溶性が高いため好適である。
疎水性層状化合物が分散可能な有機溶媒の種類は、疎水性を発現させるナノシート表面に結合した有機物の種類に大きく依存するため、適切なものを選択する必要がある。また、最終的にナノシート含有液中で混合される複屈折性物質や添加剤の溶解性や分散性にも注意して選択する必要がある。疎水性層状化合物の分散性と、複屈折性物質や添加剤の溶解性や分散性の双方に良好な有機溶媒を選択することは一般に好ましいが、ナノシート分散液の分散溶媒と、複屈折性物質や添加剤含有液の溶媒とが同じである必要は必ずしもなく、混合してナノシート含有液を得た際に層状無機化合物も複屈折性物質も添加剤も良好に分散状態を保持するものであれば特に限定されない。
ナノシート含有液中の溶媒を減少させる固液分離手段の方法としては加熱蒸発法が好ましいが特に限定されるものではなく、遠心分離、ろ過、圧搾等、公知の任意の固液分離の技術を用いることができる。上記の固形分濃度を高める濃縮工程は減圧下で行ってもよく、特にナノシート含有液の液の厚みを薄く、かつ攪拌等により液に流れを生じさせながら行うと溶媒の蒸発量が多くなり短時間で濃縮できるため効果的である。重要なことは、上記のようにナノシート含有液を濃縮してしまうと前記したように残留している気体成分の除去が困難になってくるため、ナノシート含有液に含まれる気体成分を十分減少させた後に濃縮をしなければならない点にある。
このようにして得られたナノシート含有液を支持体の表面に一定の厚さで塗布した後に、溶媒をゆっくりと除去して膜を形成する。溶媒を除去する方法は特に限定されるものではないが、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、不活性ガス雰囲気下放置、及び加熱蒸発法が好ましい。あるいは、これらの方法のうち、複数を組み合わせてもよい。
これらの方法のうち例えば加熱蒸発法を用いる場合は、例えば平坦なトレイを支持体として用い、これにナノシート含有液を塗布するとよい。支持体の材質は特に限定されるものではないが、溶媒による影響を受けないこと、および加熱時の温度に耐えられることが必要であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレンのような樹脂フィルムもしくは樹脂基板、ガラスやシリコンウェハ、もしくは真鍮、銅、ステンレス、もしくはアルミニウムのような金属から成る基板等を挙げることができる。それらは熱伝導率が高いほうが一般には好ましい。
溶媒の蒸発に伴いナノシート含有液が固化して乾燥していく過程では体積収縮が発生し、得られる膜には前記体積収縮に伴う応力が作用する。したがって、膜の強度がこの応力に耐えられない場合には、乾燥過程で膜が割れてしまう場合があり、この場合大面積の膜を作製することが困難となり、適用できる用途が限られてしまう問題がある。
そのような場合、乾燥収縮に伴う応力を吸収するために支持体を変形しやすい柔軟性を有するものとし、乾燥中に膜自体が支持体とともに変形すること、又は、収縮応力を緩和する形状に支持体を積極的に変形させながら乾燥することにより、膜内部に残存する応力を緩和し、膜の割れの発生を抑制することができる。
支持体は、変形しやすく柔軟性を有するものであれば特に限定されるものではないが、乾燥後の膜の剥離性、ロール状にして膜を連続生産すること、及び膜の製造コストへの影響を考慮すると、PET等の樹脂製フィルムが好適である。
支持体の表面のうち少なくとも膜と接触する部分には、支持体から膜が容易に剥離するようにする剥離容易化処理又が施されていることが好ましい。剥離容易化処理としては、例えば紫外線照射処理、電子線照射処理、イオンビーム照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理(例えばリモートプラズマ処理,フレームプラズマ処理)、物理的処理(例えば接触面積が少なくなるように表面を加工する機械処理)があげられる。また、シリコーン樹脂のような密着性を低下させる樹脂を塗布する処理や、光,熱等の物理的刺激を受けて柔らかさやヤング率が変化する又は発泡することによって密着性を低下させる剥離性付与剤を塗布する処理があげられる。あるいは、これらの処理のうち複数を組み合わせてもよい。
支持体の表面は、できる限り平滑であることが好ましい。平滑でない場合には、膜の表面に支持体の表面の荒れが転写されるため、膜の表面平滑性を低下させる。さらに光が乱反射し、透過率の低下やヘイズを増大させる原因となる。
前記のように、変形可能な支持体を用いることで膜作製時の収縮応力による膜の破損を抑制することができる。このことにより、大きな面積の膜でも高い収率で作製することが可能となるため、ディスプレイのような大面積の膜を必要とする用途に対して好適である。また、本発明によれば、ロール状に巻かれたフィルムからなる支持体を用いてロールによる連続生産をする場合に、連続した膜を得ることが容易となるため、長尺物の膜(例えば粘土テープ)を作製することが容易となる。
加熱蒸発法の場合のナノシート含有液の溶媒除去の具体例としては、例えば強制送風式オーブン等において、30℃以上150℃以下、好ましくは30℃以上120℃以下、より好ましくは50℃以上90℃以下の温度条件下で、10分以上7時間以下、好ましくは20分以上3時間以下、より好ましくは20分以上2時間以下で乾燥し、膜を得る。しかし最適な乾燥時間は、膜の膜厚、ナノシート含有液の固形分濃度、用いる溶媒等によって変わるため、ナノシート含有液の組成に大きく依存する。ただし、あまり沸点が低すぎるとナノシート含有液を調製している最中に溶媒が揮発して固形分濃度が上昇してしまうばかりでなく、引火爆発等の危険性も上昇するため、量産性と安全性の両面から適宜選択して用いることが好ましい。
このような製造方法を経ることにより、本発明の膜は、ナノシートが高度に配向して積層し、層間に複屈折性物質や添加剤が平均的に挿入された均一性に優れた膜となる。また、混入した気泡による膜の破損が少ない。結果、得られた膜は高い機械的強度を得る。また線膨張係数が小さく、高温まで高い粘弾性を有し、合成粘土等の着色のない層状無機化合物を用いることで透明となる。自立膜として利用可能な機械的強度の定義は困難ではあるが、一般に引っ張り強度として少なくとも10MPa以上、好ましくは15MPa以上、より好ましくは20MPa以上あれば手で持って扱える強度を有していると定義することが可能である。
なお、取り扱いが容易な自立膜として利用可能な機械的強度を有するためには、膜の膜厚としては少なくとも10μm以上必要であり、好ましくは15μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上であることが望ましい。膜厚の上限を規定する要因はあまりないが、あまりにも膜厚が厚いと透明性の低下や用いる原材料費の増大によるコストの問題等が発生しうるので、少なくとも20000μm以下、好ましくは1000μm以下、最も好ましくは500μm以下、の厚さとすることが望ましい。
本発明の膜はナノシートの配向積層によってガスバリア性が向上しており、同様な本発明の膜もしくは他の樹脂フィルム等の面に薄く形成することでガスバリア層として機能させることもできる。その場合、膜の膜厚としては、十分なガスバリア性を有するために、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、3μm以上であることがさらにまた好ましく、6μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。ただし、あまり厚くしすぎると、応力の発生によって膜が反ってしまったり界面の剥離を起こしたりするため、同様に1000μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm未満であることがさらに好ましく、より好適には50μmm未満である。
本発明の膜においては、可視光域全体に渡って高い透明性を有し、ヘイズが小さく着色がなく、且つ、透明性の面内ムラが少ないものを得ることが可能である。透明性としては、全光線透過率として少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%、さらに好ましくは88%以上であるものを得ることができる。また、ヘイズ(曇度)として好ましくは10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下であるものを得ることができる。また、400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率として少なくとも75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上であるものを得ることができる。層状無機化合物や複屈折性物質および添加剤の種類を適切に選択すること、成膜時のプロセスを最適化すること等により、それらの光学特性を複数満たした、例えば、全光線透過率が85%以上でありヘイズが5%以下であり400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率が85%以上の膜を得ることもできる。
また、平行光の光線透過率の上限は膜の屈折率によって決定される。層状無機化合物のなかで一般な粘土の屈折率は約1.5前後であることが多いため、屈折率の低い添加剤を加えても、平行光の光線透過率は一般に95%程度を上限とすると考えられる。そのため、全光線透過率も95%を上限とすると考えられる。無論、膜の表面に、例えば低屈折率の反射防止膜や光干渉を利用した多層反射防止膜、もしくはアンチグレア処理をした膜を積層する等すれば、さらに透過率を向上させることは可能である。
本発明における膜は寸法安定性が高い、すなわち温度変化に対して寸法の変化量が少ないことについても特徴である。温度変化に対する寸法安定性は線膨張係数によって評価することができる。本発明における膜の線膨張係数は、50℃から少なくとも160℃付近までの、好ましくは200℃付近までの、より好ましくは260℃付近までの平均の線膨張係数の絶対値として、少なくとも20ppm以下であり、好ましくは15ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは7ppm以下、とりわけ好ましくは5ppm以下であり、3ppm以下のものを得ることも可能である。特に、添加剤の割合が30質量%以下である場合においては、樹脂の種類と硬化条件等の最適化により、1ppm以下という極めて小さな線膨張係数を有する膜を得ることもできる。また、上記温度範囲における平均の値でなく、例えば30℃くらいの狭い温度範囲における温度変化に対する寸法安定性を見ても急激な寸法変化を生じない、すなわち線膨張係数の急変が少ない膜であることも特徴である。例えば、50℃から80℃の温度範囲における線膨張係数の値と、65℃から95℃の温度範囲における値と、130℃から160℃の温度範囲における値は皆それぞれ絶対値で20ppm以下であり、他の温度領域で見ても同様であることが特徴である。さらに、上記のような特性が、添加する樹脂のガラス転移温度によらず発現することが大きな特徴である。通常、樹脂はガラス転移温度を超えると大きく伸びてしまうため、ガラス転移温度を境に線膨張係数は大きく変化する。しかし、樹脂の割合を抑制した本発明の膜においては、事実上、寸法安定性の点において樹脂のガラス転移温度による影響がほとんど現れない場合が多く、温度変化に対して高い寸法安定性を示すことが特徴である。
このような小さな線膨張係数の値、かつ添加した樹脂のガラス転移温度を超えても線膨張係数の値が大きく変化しないという特徴は、従来の樹脂からなるフィルムや、もしくは層状無機化合物を含有していても樹脂が主体でナノシートの層が高度にかつ緻密に配向して積層していなかった従来のナノコンポジットフィルムでは、特に透明なフィルムにおいては到達し得なかった極めて小さな値であり、同様に線膨張係数の小さな無機物質等から成る電子デバイスを実装する基板等の用途に対して極めてふさわしい特性であるといえる。
さらに、本発明における膜は高温でも貯蔵弾性率の低下が少ないことが特徴である。一般に、通常の樹脂、特に非晶質のものはそのガラス転移温度を超えると急速にその貯蔵弾性率が低下する傾向があり、このためガラス転移温度以上に加熱すると変形しやすくなってしまう。本発明における膜は高温まで高い貯蔵弾性率を有することが特徴であり、ガラス転移温度を超えても急速な貯蔵弾性率の低下は起こらないことが特徴である。このような貯蔵弾性率の温度依存は、動的粘弾性測定装置によって測定することができる。本発明における膜は、動的粘弾性測定装置によって測定された貯蔵弾性率として、少なくとも160℃まで、好ましくは200℃まで、より好ましくは260℃まで、さらに好ましくは300℃以上の温度まで、添加する樹脂のガラス転移温度に依存せず少なくとも100MPa以上、好適には500MPa以上、より好適な場合には1000MPa以上の貯蔵弾性率を有する。
なお、前述のような本発明の膜におけるような配向積層形態は、従来の層状無機化合物が無秩序に樹脂中に分散した樹脂形成体を延伸する方法でもある程度形成することが可能であるが、通常の樹脂加工において可能な延伸倍率で得られる層状無機化合物の配向の程度には限界があり、かつ前述したように層状無機化合物の割合を多くすることでポリマー等の延伸可能な添加剤の割合を少なくすると延伸できる成分の量が少なくなるため延伸そのものが困難となり、本発明の膜が有するような物性を発現するだけの層状無機化合物の配向積層構造を形成することは難しい。従って、本発明における膜は基本的に前述したような溶液からのキャスト法による製膜方法が好適である。
本発明の膜において、層状無機化合物と複屈折性物質および添加剤が均一に混合分散され、ナノシートの層が高度に配向して積層したものであるかどうかを確認する手法としては、X線回折装置によるX線回折スペクトルの分析、およびTEMによる積層状態の直接観察が有効である。従来、X線回折測定によってガラス基板等の支持体上に形成された膜の配向積層状態や粘土を含むナノコンポジット体におけるナノシートの分散や剥離状態等の様々な研究・評価が行われており、一般的には層状無機化合物の001面の一次回折によってX線回折スペクトルに生じる主ピーク(最も低2θ側にある底面反射ピーク)の強度、位置、および低2θ領域におけるX線回折スペクトルのバックグラウンドの持ち上がり等によって、ナノシートの積層状態(層の平均間隔)や分散状態を知ることができる。本発明の膜はナノシートの層が高度に配向して積層したものであるのに対し、従来のナノコンポジット材料のように添加剤の量が多く、ナノシートの層の間に添加剤がインターカレートされてナノシートの層の間隔が開いたもの、さらにはナノシートの層の配向が乱れたものは、線膨張係数が20ppmより大きくなる等、性能が低い。
本発明の膜における平均層間距離は、X線回折スペクトルにおける001面の一次回折ピークの位置から換算される値として、少なくとも10nm以下、好ましくは7nm以下、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは4nm以下、よりさらに好ましくは3.5nm以下であり、最も好ましくは3nm以下である。この好ましい平均層間距離は、前記一次回折ピークのトップ位置(2θの値)に換算すると、一般的な銅のKα線である1.54Åの波長を用いた場合、ナノシートの1枚の層の厚みが約1nmであるスメクタイト族の粘土や合成雲母族の粘土からなる膜においては、2θで0.8以上9.0以下の領域に対応する。
なお、前記層間距離の最小値はナノシートのみからなる組成物のそれに相当するが、本発明の膜では複屈折性物質や添加剤が平均的にインターカレートされているため、ナノシートのみからなる組成物のそれより平均層間距離が大きくなっていることが必要である。このことを確認する手法として、X線回折スペクトルにおける前記一次回折ピークのピークトップ位置が、ナノシートのみからなる組成物のそれより低2θ側にシフトしているかどうかが目安となる。
なお、膜におけるナノシートの平均層間距離が前記好ましい範囲にあるかどうかは、TEMによる観察で直接層間距離を測長することでも確認することができる。
本発明において、複屈折性物質がどの程度ナノシート層間にインターカレーションしているか、および配向しているかは、前述のX線回折による分析やTEMによる測定以外、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察、円偏光二色性分光法(偏光IR測定)、等によって見積もることが可能である。また、複屈折性物質が可溶な溶媒に膜を浸漬させた際の溶媒への抽出量によっても見積もることが可能である。そのような溶剤(アルカリ性、酸性の水も含む)で溶解、抽出して成分分離して分析する分離手法としては、逐次溶解法、逐次沈殿法、透析、限外ろ過法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、電気泳動法、電気透析法等を挙げることができる。
化学反応による複屈折性物質やポリマー等の添加剤の変質等は、前記のような溶媒抽出もしくは加熱によって発生(分解生成)した物質を、液体もしくはガスクロマトグラフィー、もしくは飛行時間型の質量分析装置による分析、核磁気共鳴装置(NMR)による構造解析、X線回折法、X線光電子分光法、赤外吸収分光法、ラマン分光法、紫外可視吸収スペクトル、蛍光・リン光分析法、光音響分光法、光散乱法、中性子散乱法、浸透圧法、超遠心法、粘度法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等によって分析することが可能である。また、酸によって層状無機化合物を溶解させ有機成分のみを残した状態とし、さらに複屈折性物質を前記のようにして溶出させることでほぼポリマー成分のみを分離し、ポリマーの状態を分析することもできる。前述のように、本発明における膜の組成の状態は、一般的に知られているこれらの分離・分析方法を用いて分析することができる。また、添加剤としてのポリマーの分析は、熱分解や加水分解、酸化分解などの化学分解によって生成したフラグメントを前述の手法で分離・分析することでも可能である。
そして、本発明の膜は自立膜として利用できる強度を有しているため、種々の用途に用いることができる。例えば、複屈折制御性、柔軟性、低線膨張性、耐熱強度、透明性等を生かして、汎用の光学フィルムとして幅広い用途に用いることが可能である。なかでも、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイや電子ペーパーの基板に用いることは好適である。特に、膜の複屈折を任意に制御できるため、液晶ディプレイの部材として好適である。すなわち、バックプレーンとなるアクティブマトリックス駆動回路を、膜に高温下で直接形成することが可能となる。そうすれば、ガラス基板等の耐熱性のある支持体上に前記駆動回路を形成した後に樹脂フィルムに転写する等の従来方法を用いなくてもよいので、ディスプレイの製造工程を少なくすることができ、コスト的にも優位である。それら駆動回路は従来のシリコンをベースとした半導体によって構成しても良いが、ペンタセンやチオフェン類に代表される有機半導体やアモルファス無機半導体を用いても良い。なお、有機ELディスプレイや電子ペーパーのバックプレーン、すなわち光を取り出す方向と反対方向であれば、透明性は一般に不要であるが、本発明の膜の透明性を生かして、ディスプレイの視認側であるフロントプレーン側に用いることもできる。なお、本発明の膜を適用可能な液晶ディスプレイの方式としては、TN、STN、VA、IPSといった種類のものが挙げられるが、Rthを自由に調整することができるため、特に限定されるものではない。また、有機ELディスプレイも、トップエミッション型、ボトムエミッション型、双方に適用することができる。さらには、電子ペーパーとしても、例えば電気泳動駆動式、電子粉流体方式、液晶を用いた方式等、特に限定されず用いることができる。それらを駆動する回路としても、パッシブマトリクス方式およびアクティブマトリクス方式の双方に用いることができる。
その他には、絶縁性である特徴を生かして、膜を電気回路のフレキシブル基板として広範囲に用いることもできる。電気回路の基板として利用する場合にも、電子部品を実装する際の位置合わせに画像処理を用いる事が多く、その場合には透明性が要求されるため、本発明の膜は好適である。特に、基板上の導体部分を導電性インクの塗布又は印刷で形成したフレキシブルプリント基板においては、膜の耐熱性と低い線膨張係数を生かして導電性インクをより高温で焼成することが可能なため、塗布又は印刷で形成した導体部分の抵抗率をより低くすることが可能である。このようなフレキシブル基板及びフレキシブルプリント基板の好適な用途としては、RFIDタグの基板、銅張積層板等があげられる。さらに透明な膜であれば、太陽電池のように光を通過する必要があるデバイスにも適用することができる。
なお、前述したディスプレイ,フレキシブル基板,フレキシブルプリント基板,太陽電池、有機半導体又はアモルファス無機半導体を有する電子デバイス等に対して、本発明の膜を適用する際には、膜をそのまま適用してもよいし、必要に応じて膜に別の機能を有する膜(例えば主として無機材料からなる水蒸気バリア膜、樹脂材料等からなる補強材、傷等を防ぐ保護層、表面を平滑化する平滑化層)等を付与して用いてもよい。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
疎水性層状化合物として有機変性合成スメクタイト(コープケミカル株式会社製のルーセンタイトSAN)、添加剤としてポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製のエスレックBX−1、複屈折性物質としてフェナントレン(和光純薬株式会社製)を使用した。
疎水性層状化合物8.5gとメタノール8.5gおよびトルエン68gを回転子とともに300ml三角フラスコに入れ、25℃で2時間攪拌して均一な疎水性層状化合物の分散液を得た。また、ポリビニルブチラール1.5gとトルエン1.5gおよびテトラヒドロフラン12.0gを回転子とともに300ml三角フラスコに入れ、25℃で2時間攪拌して均一な添加剤含有液を得た。また、フェナントレン0.76gとトルエン6.74gを回転子とともに50ml三角フラスコに入れ、25℃で2時間攪拌して均一な複屈折性物質含有液を得た。
次に、この疎水性層状化合物の分散液と添加剤含有液と複屈折性物質含有液とを回転子とともに500ml三角フラスコに入れ、25℃で2時間撹拌して、均一なナノシート含有液を得た。そして、約25℃のナノシート含有液を減圧脱気装置に入れ、約5分、回転子で攪拌しながら十分に脱気を行った。
次に、深さ3mmの金属製トレイのうち平坦部分に離型剤を施したPET製フィルムを敷き、その上にこのナノシート含有液を流し入れ、ガラス棒を用い、金属製トレイの上部を滑らせて、余分なナノシート含有液を除去することで、均一な厚さのナノシート含有液膜を形成した。この金属製トレイをホットプレート上に置き、60℃の温度条件下で約4時間加熱して乾燥させた。生成した膜をトレイから剥離し、厚さ115μmの、層状無機化合物の含有量が47〜55wt%、ポリマーの含有量が14wt%の均一な膜を得た。
膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、膜の透明性を確認するため、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計「UV−2500PC」で波長200nm以上800nm以下の波長範囲における透過率を測定したところ、380nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに、日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH2000」で測定した膜の全光線透過率は91.7%であり、ヘイズ(曇度)は4.5%であった。なお、ここでいう全光線透過率及びヘイズとは、日本工業規格に規定されたプラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法JIS K 7361、プラスチックの光学的試験方法JIS K 7105、プラスチック透明材料のヘイズの求め方JIS K 7136に準拠して求めたものである。
この膜の寸法安定性を確認するため、株式会社島津製作所の「TMA−60」で線膨張係数を測定した。測定の際、試料幅は5mm、荷重は10gとし、昇温レート5℃/分で260℃まで加熱した後31℃まで冷却した後、同様に昇温レート5℃/分で260℃まで加熱して測定したところ、50℃から260℃の範囲における平均の線膨張係数の絶対値は1.1ppm/℃で、前記温度範囲において係数はほぼ一定であった。すなわち、50℃から260℃のいかなる任意の範囲においても、少なくとも30℃温度上昇時、実際には10℃上昇時の膨張率の変化から計算された線膨張係数の値は20ppm以下、実際には10ppm以下であり、50℃から260℃まで温度が上昇する際に特定温度領域で大きく延びたり縮んだりするような現象は認められなかった。
この膜がナノシートの層が高度に配向して緻密に積層したものであるかどうかを確認するため、株式会社リガクのX線回折装置「RINT−2500」でX線回折による分析を実施した。用いたX線波長は、Cu/Kαの1.54056Åである。得られたX線回折スペクトルには、2θで2.89の位置(層間距離に換算して3.05nm)に明瞭なピークが認められ、膜におけるナノシートの層が高度に積層してかつ緻密に配向していることが示された。また、ナノシートの層間距離が添加剤を加えない疎水性層状化合物のみから成る膜の場合の2.25nm(シリコン基板上に該疎水性層状化合物のみから成る層状無機化合物の分散液を滴下乾燥して得た膜を同様にX線回折で分析して得た値)から増大していることより、添加物であるポリマーおよび複屈折性物質がナノシートの層間にインターカレートし規則正しく積層していることが確認できた。
この膜が耐水性のあるものであるかどうかを確認するため、1日間における吸水率の測定を実施した。上記作製した膜を5cm四方の大きさに切り取り、これを200mlの精製水の入った500mlビーカーに入れ、24℃の恒温室で24時間放置後、膜を引き上げ、表面の水分を拭き取って重量の増減を測定したところ4.1%重量の増加が見られたものの、目視で認められる変化は認められなかった。
この膜の強度を確認するため、100Nのロードセルを搭載したミネベア製の「TG−1kN」による引っ張り強度測定を実施した。測定の際、試料幅は1cm,試料長は10cm,チャック間距離は2cm,引っ張り速度は10cm/minで測定を行なったところ、20.9MPa強度であり、自立膜として使用可能な機械的強度を十分有していた。
この膜の厚み方向のレターデーション値を確認するために、王子計測機器株式会社製の位相差測定装置「KOBRA−WR」を用い、入射角40°において三次元屈折率を測定し、膜厚150μmに換算したレターデーション値の測定を行なったところ、この膜のRthは−17nmであった。また、この膜のReは0.3nmであった。
この膜膜の貯蔵弾性率を確認するために株式会社オリエンテック製の動的粘弾性装置バイブロン「DDV−01FP」による動的粘弾性測定を実施した。測定の際、サンプルサイズは3mm×57mm,チャック間距離は50mm,周波数は1Hz,荷重は6g,昇温速度は3℃/min,温度範囲は30℃から350℃まで,サンプル振幅は16μmで測定を行なったところ、測定開始時の貯蔵弾性率は3645MPaであり、100℃において最低値1129MPaとなったものの貯蔵弾性率が急激に低下するところが見られず、すべての温度範囲で1000MPa以上を保っていた。(図1を参照)
フェナントレンの固有複屈折を、計算プログラムとしてGaussian03、計算方法として密度汎関数法、汎関数としてB3LYP、基底関数として6−311++G**レベルを用いて計算した結果、複数構造の存在を考慮してもΔnとして1.20〜1.32という値が得られ、十分に大きな固有複屈折を有していることが分かった。
〔実施例2〕
複屈折性物質を4−ヒドロキシビフェニルに変え、4−ヒドロキシビフェニル(和光純薬株式会社製)0.85g添加した以外は実施例1と同様に膜を作製した。得られた膜は、膜厚は150μm、層状無機化合物の含有量が47〜55wt%、ポリマーの含有量が14wt%であった。実施例1と同様にして透過率を測定したところ、紫外可視吸収スペクトルの形状は、いずれも実施例1の膜とほとんど同様であり、400nm以上の光線透過率はすべて85%以上であった。
さらに、実施例1と同様にして膜の吸水性を測定したところ、2.1g重量の増加が見られたものの、目視で認められる変化は認められなかった。
さらに、実施例1と同様にして膜の全光線透過率を測定したところ、90.9%であった。さらに、実施例1と同様にして膜のヘイズ(曇度)を測定したところ、3.2%であった。
さらに、実施例1と同様にして引っ張り強度測定を実施したところ、30.0MPaであった。
さらに、実施例1と同様にして吸水率測定を実施したところ、2.1%の重量の増加が見られた。
さらに、実施例1と同様にして線膨張係数の絶対値の測定を実施したところ、0.9ppmで、前記温度範囲において係数はほぼ一定であった。すなわち、50℃から260℃のいかなる任意の範囲においても、10℃温度上昇時の膨張率の変化から計算された線膨張係数の値は20ppm以下、実際には10ppm以下であり、50℃から260℃まで温度が上昇する際に特定温度領域で大きく延びたり縮んだりするような現象は認められなかった。
さらに、実施例1と同様にしてレターデーション測定を実施したところ、Rthは1033nmであり、Reは1.5nmであった。
さらに、この膜を160℃のオーブンの中で1時間加熱した後、実施例1と同様にしてRthを実施したところ、+893nmであり、加熱によってRthは増加せず、高温で加熱した後でも複屈折性物質の効果によってRthがよく低減されていることが分かった。
さらに、実施例1と同様にして動的粘弾性測定を実施したところ、実施例1の場合と同様に貯蔵弾性率が急激に低下するところが見られず、すべての温度範囲で100MPa以上を保っていた。
4−ヒドロキシビフェニルの固有複屈折を実施例1と同様に計算した結果、Δnとして0.92〜0.97という値が得られ、十分に大きな固有複屈折を有していることが分かった。
〔実施例3〕
実施例1において、フェナントレンの量を0.95gとした以外は実施例1と同様にして膜を作製した。得られた膜は、膜厚は115μm、層状無機化合物の含有量が47〜54wt%、ポリマーの含有量が14wt%であった。
実施例1と同様にしてレターデーション測定を実施したところ、Rthは−613nmであり、Reは0.4nmであった。
さらに、実施例1と同様にして膜の全光線透過率を測定したところ、91.6%であった。さらに、実施例1と同様にして膜のヘイズ(曇度)を測定したところ、4.9%であった。
さらに、実施例1と同様にして引っ張り強度測定を実施したところ、21.8MPaであった。
さらに、実施例1と同様にして線膨張係数の絶対値の測定を実施したところ、0.9ppmで、前記温度範囲において係数はほぼ一定であった。すなわち、50℃から260℃のいかなる任意の範囲においても、10℃温度上昇時の膨張率の変化から計算された線膨張係数の値は20ppm以下、実際には10ppm以下であり、50℃から260℃まで温度が上昇する際に特定温度領域で大きく延びたり縮んだりするような現象は認められなかった。
〔比較例1〕
実施例1において、複屈折性物質含有液を用いずに層状無機化合物の分散液のみを用いて同様の方法で膜を作製した。得られた膜は、膜厚は138μm、層状無機化合物の含有量が51〜60wt%、ポリマーの含有量が15wt%であった。この膜のRthを実施例1と同様に測定したところ、+2427nmであり。
さらに、実施例1と同様にして膜の全光線透過率を測定したところ、91.4%であった。さらに、実施例1と同様にして膜のヘイズ(曇度)を測定したところ、3.2%であった。
さらに、実施例1と同様にして引っ張り強度測定を実施したところ、28.6MPaであった。
さらに、実施例1と同様にして線膨張係数の絶対値の測定を実施したところ、0.6ppmで、前記温度範囲において係数はほぼ一定であった。すなわち、50℃から260℃のいかなる任意の範囲においても、10℃温度上昇時の膨張率の変化から計算された線膨張係数の値は20ppm以下、実際には数ppm以下であり、50℃から260℃まで温度が上昇する際に特定温度領域で大きく延びたり縮んだりするような現象は認められなかった。
〔比較例2〕
実施例1と同じ条件にて、層状無機化合物の分散液とポリビニルブチラール樹脂溶液の混合割合を変え、膜における樹脂割合が46wt%となるように膜を作製した。得られた膜は、膜厚は131μm、層状無機化合物の含有量が28〜32wt%、ポリマーの含有量が46wt%であった。
さらに、実施例1と同様にして膜の全光線透過率を測定したところ、91.7%であった。さらに、実施例1と同様にして膜のヘイズ(曇度)を測定したところ、3.6%であった。
さらに、実施例1と同様にして引っ張り強度測定を実施したところ、40.5MPaであった。
さらに、実施例1と同様にして線膨張係数の絶対値の測定を実施したところ、21ppmであった。
〔比較例3〕
実施例1における添加剤含有液のみを用いて、実施例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂のみからなる膜厚228μmの膜を作製した。実施例1と同様にしてこの膜の、線膨張係数の絶対値の測定を実施したところ、膜の伸びが非常に大きく、測定不可能であった。
さらに、実施例1と同様にして動的粘弾性測定を実施したところ、測定開始時の貯蔵弾性率は1451MPaであり、60℃付近から貯蔵弾性率が急激に低下し、93℃において1.6MPaとなって、事実上貯蔵弾性率が事実上0となってしまった。(図1を参照)
さらに、実施例1と同様にして膜の全光線透過率を測定したところ、92.3%であった。さらに、実施例1と同様にして膜のヘイズ(曇度)を測定したところ、0.6%であった。
さらに、実施例1と同様にして引っ張り強度測定を実施したところ、27.0MPaであった。
膜の各温度における貯蔵弾性率を表したグラフである。

Claims (25)

  1. 層状無機化合物(A)と、(A)とは異なる複屈折性物質(B)と、添加剤(C)と、からなり、該層状無機化合物(A)の積層を配向させた構造を有する透明な膜であって、該添加剤(C)の膜に占める割合が0質量%超過、45質量%以下であることを特徴とする膜。
  2. 前記添加剤(C)がポリマーである請求項1に記載の膜。
  3. 前記複屈折性物質(B)として0.03以上の固有複屈折を有する低分子物質を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜。
  4. 前記低分子物質がメソゲン基を有することを特徴とする請求項3に記載の膜。
  5. 前記添加剤(C)がポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜。
  6. 膜厚をdnm、前記層状無機化合物(A)の割合をa質量%とした場合、厚み方向のレターデーション値(Rth、単位nm)が下記の式(1)を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜。
    −3000<Rth<0.0002×a×d (1)
  7. 膜の厚み方向のレターデーション値が膜厚150μm換算で−50nm以上50nm以下であることを特徴とする請求1〜6のいずれか一項に記載の膜。
  8. 酸化防止剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の膜。
  9. 前記層状無機化合物(A)が1種類以上の合成粘土からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の膜。
  10. 前記層状無機化合物(A)の表面を親有機化処理した疎水性層状化合物を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の膜。
  11. 膜厚が0.1μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の膜。
  12. 動的粘弾性測定装置にて、測定周波数1Hz、サンプル振幅16μm、厚み1μmあたりの荷重0.05gの条件で測定された貯蔵弾性率が30℃から350℃までの温度範囲で100MPa以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の膜。
  13. 50℃から260℃の範囲における平均の膜の線膨張係数が、−20ppm以上20ppm以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の膜。
  14. 50℃から260℃の範囲において温度を30℃上昇させた際の膜の線膨張係数が、どの温度領域においても−20ppm以上20ppm以下であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の膜。
  15. 引っ張り強度が10MPa以上である請求項1〜14のいずれか一項に記載の膜。
  16. 24℃の蒸留水に含浸して24時間後の吸水率が5%以下であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の膜。
  17. 膜の面内のレターデーション値が−10nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の膜。
  18. 全光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の膜。
  19. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の膜からなる光学フィルム材料。
  20. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の膜からなる表示素子材料。
  21. 表示素子が液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項20に記載の表示素子材料。
  22. 表示素子が電子ペーパーであることを特徴とする請求項20に記載の表示素子材料。
  23. 表示素子が有機物もしくは無機物の電界発光を用いたものであることを特徴とする請求項21に記載の表示素子材料。
  24. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の膜で構成されていることを特徴とするガスバリア膜。
  25. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の膜を基板に用いた電子回路。
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