JP2008131456A - 車車間通信の通信開始順設定システム及びその通信開始順設定方法 - Google Patents

Abstract

【課題】車車間通信を行う際にその混信を生じ難くすることができる車車間通信の通信開始順設定システム及びその通信開始順設定方法を提供する。
【解決手段】地上に設けた交差点発信機４が、車車間通信開始許可として指定位置情報Dを載せた車車間通信開始指令Kを定期的に発信する。その指定位置情報Dは、例えば東→南→西→北というように呼び出しエリアが順に回される。車両３は、路車間通信機６でその車車間通信開始指令Ｋを受信すると、その指令Ｋに含まれる指定位置情報Ｄが、自身のＧＰＳユニット８で求めた現在車両位置と合致するか否かと確認し、これらが一致すれば、自身に車車間通信開始許可が与えられたと認識し、車車間通信発信機７ａから車両情報Ｒを発信して周囲車両との間で車車間通信を行う。
【選択図】図１

Description

本発明は、車両が車車間通信を行う際にその通信開始順を設定する車車間通信の通信開始順設定システム及びその通信開始順設定方法に関する。

近年、自動車交通の安全と効率の更なる向上が望まれているが、その一対処方法としては、車両間で走行に関する車両情報のやり取りを無線で行って事故等を未然に防ぐ車車間通信がある。車車間通信技術は、今日において広く技術開発が進んでいるが、その一例が例えば特許文献１に開示されている。この種の車車間通信は、各車両に車車間通信用の通信機を各々搭載し、この通信機の通信エリアに互いの車両が入り込むと、これら通信機を介して互いの位置情報や走行速度情報等を交換し合うことにより相手側の車両の走行状態を認識し合い、交差点等の死角の悪い場所で車両の存在を運転者に通知したり、前方走行する車両の速度状態から減速割合を算出して急減速による衝突事故や渋滞発生を抑えたりする。
特開２００４−１１８６０８号公報

ところが、車車間通信の通信開始について考えた場合、例えば互いの車両が同時に車車間通信を開始してしまうと、これら信号の周波数が共に同じであると、信号同士が重畳して車車間通信が混信する状態となってしまうことがある。このように車車間通信混信時は、車車間通信を行う車両同士が互いに自身の位置情報や走行速度情報を相手側に正確に伝達することができないので、この場合は車両衝突回避や渋滞発生通知等の車車間通信の利点を享受できない状況になることから、車車間通信を行う上において混信を防ぎたい要望があった。

本発明の目的は、車車間通信を行う際にその混信を生じ難くすることができる車車間通信の通信開始順設定システム及びその通信開始順設定方法を提供することにある。

前記問題点を解決するために、本発明では、車両が持つ固有の車両情報を通信相手の他車両に無線で送信することにより、当該車両情報を互いの車両間で共有し合う車車間通信の通信開始順を決める車車間通信の通信開始順設定システムであって、地上側に少なくとも１以上設けられ、周囲に複数存在する車両の中でその１台を車車間通信開始車両として特定し得る要求信号を発信する第１通信機と、各車両に各々設けられ、前記第１通信機と無線通信が可能な第２通信機とを備え、前記車両は、前記第２通信機で受信した前記要求信号を用いて自身に前記車車間通信の通信開始許可権が与えられているか否かを判別し、自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識した際は自身の車両情報を発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行い、逆に自身に前記通信開始許可権が無いと認識した際は受信待機状態のままで待つことを要旨とする。

この構成によれば、地上に設置された第１発信機から、その周囲に複数車両が存在する場合にその中の１台を車車間通信開始車両として特定し得る要求信号が、車道に向かって発信される。各車両は、各々搭載した第２通信機でこの要求信号を受信すると、自身に車車間通信の通信開始許可権が与えられているか否かを判別する。この判別時において、車両は自身に車車間通信の通信開始許可権が与えられていると判断すると、自身の車両情報を他車両に向けて発信して車車間通信を行う。他車両は、自身に車車間通信の通信開始許可権が与えられていなければ受信待機状態のままでいることから、その車両情報を受信する動作をとって車車間通信を成立させる。このため、車両が車車間通信を行う場合に、これら車両が同時に車車間通信を開始することがなくなり、車車間通信に混信を発生し難くすることが可能となる。

本発明では、前記各車両に各々設けられ、自身が搭載された前記車両の現在位置を各自検出する複数の車両位置検出手段を備え、前記第１通信機は、アンテナ指向性として無指向性を有するものが前記地上側に１つ設けられ、前記車車間通信開始の許可を車両位置で指定すべく位置情報を前記要求信号に含ませて要求信号発信を行うとともに、前記車両は、前記要求信号の位置情報から指定される位置範囲に、前記車両位置検出手段で求められる自身の前記現在位置が含まれていれば、自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識し、自身の前記車両情報を前記発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行うことを要旨とする。

この構成によれば、無指向性アンテナは周囲全方向に向かって信号発信が可能であるので、第１発信機として無指向性アンテナを用いれば、第１発信機から全方向に要求信号が発信可能となる。このため、第１発信機が１機で済み、第１発信機に要する部品コストを低く済ますことが可能となる。

本発明では、前記第１通信機は、前記要求信号を出力する度に前記位置情報を順に変えて当該要求信号を定期的に発信することを要旨とする。
この構成によれば、周りに存在する車両に対して車車間通信許可権を付与する呼びかけを順番に行うことになり、車車間通信開始車両の特定を効果的に行うことが可能となる。

本発明では、前記位置情報は、前記車両の前記現在位置を２次元的に指定し得る２次元位置情報であることを要旨とする。
この構成によれば、１つの車道に複数の車線があってそこに車両が並んで存在していた場合であっても、位置情報が車両を２次元的に指定し得る２次元位置情報であれば、車車間通信開始許可権を与えるに際し、これら車両の中の一台を車車間通信開始車両として特定することが可能となる。従って、車車間通信開始車両の特定性が高くなり、車車間通信の通信開始順設定システムが機能的に高いものとなる。

本発明では、前記第１通信機は、アンテナ指向性として指向性を有するものが当該指向方向を異ならせて前記地上側に複数設けられ、前記車車間通信開始を許可する許可情報を前記要求信号に含ませて要求発信信号を行うとともに、前記車両は、前記第２通信機で前記要求信号を受信すると、その受信を以て自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識し、自身の前記車両情報を前記発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行うことを要旨とする。

この構成によれば、車車間通信開始許可を指令する許可情報のみ含む要求信号が、複数存在する第１発信機から順番に発信され、複数車両が車道を走行している際、その要求信号を受信した車両が信号受信順に車両情報を発信する動作をとって車車間通信を行う。従って、第１発信機が発信する要求信号に位置情報を持たせる必要がなくなるので、第１発信機が要求信号発信時に行う通信処理が簡素になる。

本発明では、前記車両は、これら車両のうち前記通信開始許可権が自身に与えられたと認識した車両が他車両に前記車車間通信として前記車両情報を発信のみする動作を、前記通信開始許可権を受けた車両が順に繰り返すことを要旨とする。

この構成によれば、車車間通信の通信開始許可権を受けた車両は、車車間通信として車両情報を周囲に発信するのみの動作をとり、第１通信機の通信エリアに複数車両が進入した際は、自身に車車間通信の通信開始許可権を受けた車両が、車両情報を発信する動作を順に行う動作をとる。このため、第１通信機の通信エリアに３台以上の車両が進入したとしても、混信なくこれら車両間で車車間通信を行うことが可能となる。

本発明では、車両が持つ固有の車両情報を通信相手の他車両に無線で発信することにより当該車両情報を互いの車両間で共有し合う車車間通信の通信開始順を決める車車間通信の通信開始順設定方法であって、周囲に複数存在する車両の中の１台を車車間通信開始車両として特定し得る要求信号を発信可能な第１通信機を地上側に少なくとも１以上設け、前記第１通信機と無線通信が可能な第２通信機を各車両に各々設け、前記車両は、前記第２通信機で受信した前記要求信号を用いて自身に前記車車間通信の通信開始許可権が与えられているか否かを判別し、自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識した際は自身の車両情報を発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行い、逆に自身に前記通信開始許可権が無いと認識した際は受信待機態のままで待つことを要旨とする。

本発明によれば、車車間通信を行う際にその混信を生じ難くすることができる。

（第１実施形態）
以下、本発明を具体化した車車間通信の通信開始順設定システム及びその通信開始順設定方法の第１実施形態を図１及び図２に従って説明する。

図１に示すように、路車間には、走行中の車両同士が車車間通信を行う際にその通信をどの車両が優先して行うかを設定する車車間通信開始順設定システム１が設けられている。これを以下に説明すると、車道の交差点２の中央位置には、交差点２に進入する車両３に対して車車間通信開始の呼びかけを行う交差点発信機４が設けられている。交差点発信機４は、指向性を持たない発信アンテナが用いられ、交差点２を超える各道路まで広範囲に亘り発信信号が届くように高周波高強度で信号発信を行う。なお、交差点発信機４が第１通信機に相当する。

車両３には、通信先との間で無線通信を行う際の通信系コントロールユニットとして通信制御ユニット５が搭載されている。通信制御ユニット５には、路上に設置された各種通信機と高周波帯信号で無線通信が可能な路車間通信機６と、他車両を通信相手として高周波帯信号で無線通信が可能な車車間通信機７とが接続されている。本例の車車間通信機７には、他車両に向けて各種車両情報を発信可能な車車間通信発信機７ａと、他車両から発進された各種車両情報を受信可能な車車間通信受信機７ｂとが設けられている。なお、路車間通信機６が第２通信機に相当し、車車間通信発信機７ａが発信機に相当する。

通信制御ユニット５は、例えばＣＰＵ、ＲＯＭ、ＲＡＭ及び入出力回路等の各種デバイスから成り、交差点発信機４との間の路車間通信により車車間通信開始順設定処理を行い、交差点発信機４から自身が車車間通信開始の許可権を与えられたか否かを逐次監視し、その通信時において車車間通信の許可権が与えられた際は車車間通信を開始させる。このとき、通信制御ユニット５は、車車間通信開始順設定処理で自身が車車間通信を開始してもよいと判断した際、車車間通信として車車間通信機７から周囲車両に車両位置情報や走行速度情報等の車両情報Ｒを発信することにより、他車両との間でこれら車両情報を共有し合う。

交差点発信機４は、交差点２に周囲から入り込む複数車両の中でその１台を車車間通信開始車両として特定し得る車車間通信開始指令Ｋを逐次発信する。車車間通信開始指令Ｋには、車両がその指定位置エリアに在れば車車間通信を許可する判定要素として用いられる指定位置情報Ｄと、その指定位置情報Ｄで指定されるエリアに車両が存在していれば車車間通信を開始するように要求する通信開始要求Ｄａとが含まれている。指定位置情報Ｄは、例えば北緯を指定する情報（北緯Ｎ度の範囲）や、東経を指定する情報（東経Ｅ度の範囲）などの位置情報から成る。なお、車車間通信開始指令Ｋが要求信号に相当し、指定位置情報Ｄが位置情報に相当する。

交差点発信機４には、人工衛星から得た電波信号を利用し三角測量の原理を用いて自身の現在位置を特定するＧＰＳユニット(Global Positioning System Unit)４ｘが設けられている。交差点発信機４は、ＧＰＳユニット４ｘから得られる自身の発信機位置を基準に、その発信機位置からの離れ距離を指定することで東経範囲や北緯範囲を設定し、これを指定位置情報Ｄとして導出する。なお、この指定位置情報Ｄは、ＧＰＳユニット４ｘで求められるものに限らず、このＧＰＳユニット４ｘを省略して予め交差点発信機４に登録されていてもよい。

各車両３ａ，３ｂには、交差点発信機４に設けたＧＰＳユニット４ｘと同様構造のＧＰＳユニット８が設けられている。ＧＰＳユニット８は、電気配線を介して通信制御ユニット５に接続され、割り出したその時々の位置情報を車両位置情報Ｐとして通信制御ユニット５に逐次出力する。通信制御ユニット５は、ＧＰＳユニット８から車両位置情報Ｐを得ると、その車両位置情報Ｐから決まる位置を今現在車両が位置する走行位置として認識する。なお、ＧＰＳユニット８が車両位置検出手段に相当する。

通信制御ユニット５は、走行車両が交差点２へ進入する際、交差点発信機４が発信する車車間通信開始指令Ｋを路車間通信機６で受信すると、その車車間通信開始指令Ｋに含まれる指定位置情報Ｄと、ＧＰＳユニット８により得たその時の車両位置情報Ｐとを比較する。そして、通信制御ユニット５は、車両位置情報Ｐから導出される車両位置が指定位置情報Ｄのエリアに含まれていれば、自身に車車間通信開始の許可権が与えられたと判断し、周囲に在る他車両に向かって各種車両情報Ｒを発信することにより、その車両との間で車車間通信を行う。

次に、図１に示すように東西に延びる車道９と南北に延びる車道１０とが交わる交差点２で、西側から車両３ａが交差点２に近づき、北側から車両３ｂが交差点２に近づく場合を例に挙げて本例の車車間通信開始順設定システム１の動作を説明する。また、この時の交差点発信機４の車両呼び出しエリアは、説明の便宜上、図１及び図２に示すように例えば東位置を１番目に呼び出すエリアとして、東→南→西→北の順番でこれが繰り返されるものとする。更に、車車間通信を行っていない時の各車両３ａ，３ｂは、交差点発信機４が発信する車車間通信開始指令Ｋの受信を待つ車車間通信の受信待機状態をとる。

この場合、交差点発信機４はまず最初に、例えば東経Ｅ１〜Ｅ２の範囲という形式で東位置を指定した第１指定位置情報Ｄ１を含む第１車車間通信開始指令Ｋ１を交差点２全体に発信する。続いて、交差点発信機４は、車車間通信開始指令Ｋを交差点周囲に発信するに際し、例えば北緯Ｎ１〜Ｎ２という形式で交差点２の南位置を指定する第２指定位置情報Ｄ２を含む第２車車間通信開始指令Ｋ２を、次発信では例えば東経Ｅ３〜Ｅ４という形式で交差点２の西位置を指定する第３指定位置情報Ｄ３を含む第３車車間通信開始指令Ｋ３を、次発信では例えば北緯Ｎ３〜Ｎ４という形式で交差点２の北位置を指定する第４指定位置情報Ｄ４を含む第４車車間通信開始指令Ｋ４を各々発信し、この指定位置が東→南→西→北へ順に遷移する指令発信動作を数十msの短い間隔で繰り返し行う。

ここで、西側から走行してきた車両３ａと、北側から走行してきた車両３ｂとがほぼ同時に交差点２に進入してきた場合を考えると、交差点発信機４が第１車車間通信開始指令Ｋ１を発信した際は、これら車両３ａ，３ｂは第１指定位置情報Ｄ１を受信するが、第１指定位置情報Ｄ１で呼び出し指定された指定位置と、各車両３ａ，３ｂがＧＰＳユニット８から求める車両位置とは異なることから、この車車間通信開始指令Ｋ１には応答しない。また、続いて交差点発信機４は第２車車間通信開始指令Ｋ２を発信するが、この時も交差点発信機４が呼び出すエリアが車両走行位置と合致しないことから、この時も車車間通信開始指令Ｋ２に応答しない。

続いて、交差点発信機４は第３車車間通信開始指令Ｋ３を発信するが、この時は第３車車間通信開始指令Ｋ３で呼び出し指定された指定位置と、西側から走行する車両３ａの走行位置とが合致することから、車両３ａが第３車車間通信開始指令Ｋ３の応答し、車車間通信開始の許可権が自身に与えられたと認識する。このとき、北側から走行する車両３ｂも第３車車間通信開始指令Ｋ３を受信するが、第３車車間通信開始指令Ｋ３で呼び出すエリアは車両３ｂの走行位置と合致しないことから、車両３ｂはこの第３車車間通信開始指令Ｋ３に応答せず、車車間通信の受信待機状態を維持する。

車両３ａが自身に車車間通信開始の許可権が与えられたと認識すると、この時の車両３ａは、この許可権取得を持って車車間通信を開始し、周囲の他車両に向けて自身の車車間通信発信機７ａから車両情報Ｒを発信する。この車両情報Ｒには、例えば車車間通信開始の要求指令や、自身のＧＰＳユニット８で求めた車両位置情報Ｐ等が含まれる。北側から走行してきた車両３ｂは、自身の車車間通信受信機７ｂで車両情報Ｒを受信すると、これを以て起動状態に移行し、車両情報Ｒのデータを読み取って車両３ａの車両位置等を認識する。車両３ａ及び車両３ｂの各車車間通信機７は、車車間通信を行った後は再び受信待機状態に戻る動作をとる。

続いて、交差点発信機４は第４車車間通信開始指令Ｋ４を発信するが、この時は北側から走行する車両３ｂの走行位置が呼び出し指定位置に合致することから、車両３ｂが第４車車間通信開始指令Ｋ４に応答し、一方で車両３ｂはこの第４車車間通信開始指令Ｋには応答せず、車車間通信の受信待機状態を維持する。このとき、車両３ｂは車車間通信開始許可権の取得を持って車車間通信を開始し、周囲の他車両に向けて自身の車車間通信発信機７ａから車両情報Ｒを発信する。

西側から走行してきた車両３ａは、自身の車車間通信受信機７ｂで車両情報Ｒを受信すると、これを以て起動状態に移行し、車両情報Ｒのデータを読み取って車両３ｂの車両位置等を認識する。そして、このように交差点２に複数車両が進入している際、これら車両のうち、交差点発信機４により車車間通信開始の許可権が付与されたものが順に車両情報Ｒを発信する動作が、これら車両間で繰り返されることによって車車間通信が行われ、このような通信形態を用いることで、これら車両間でお互いの車両情報Ｒを共有し合う。

従って、本例においては、交差点２で複数の走行車両が進入してきた際、道路に設置した交差点発信機４が、この走行位置にいれば車車間通信を開始してもよいという通知をその指定位置を順に変えて車両に投げかけることにより、複数の車両のうち特定の一台にのみ車車間通信開始の許可権を与えている。このため、交差点２の周囲に複数の走行車両が存在していても、これら車両のどれか一台が優先的に車両情報Ｒを発信して車車間通信を行うことになる。よって、例えば複数の走行車両が同時に車車間通信を始めてしまった場合に生じ得る通信の混信という問題が生じず、車車間通信をより確実に実施させることが可能となる。

また、車車間通信開始指令Ｋに含まれる指定位置情報Ｄは、東経や北緯のみを指定した１次元的情報に限らず、これは例えば東経及び北緯の両方を指定する２次元的情報でもよい。この場合、仮に１つの車道９（１０）に車線が複数存在していたとしても、これら車線を走行する車両の中の一台に優先的に車車間通信を開始させることが可能となる。従って、車車間通信開始車両の特定性が高くなり、車車間通信開始順設定システム１が機能的に高いものとなる。

なお、本例で述べた車車間通信は、交差点２に進入した複数車両のうち、自身に車車間通信開始の許可権が与えられたものが、他車両に対して車両情報Ｒを単方向で発信するものに限定されない。例えば、車車間通信開始の優先権が与えられた車両が車車間通信の通信マスタとなって周囲車両の中の一台と車車間通信を開始し、この通信先車両に向けて自身から車両情報Ｒを発信し、それに応答した通信先車両から車両情報Ｒを発信させてその車両情報Ｒを受ける車車間通信でもよい。この場合、特定の車両との間で車車間通信を行っている際に、車車間通信を行っていない他車両から車両情報Ｒが発信されても、その時に自身が実施している車車間通信が終了するまではこの信号受信を無視する処理が必要となる。

本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
（１）交差点２に設置した交差点発信機４から、その周囲に複数車両が存在する場合にその中の一台を車車間通信開始車両として特定し得る車車間通信開始指令Ｋを発信させ、この車車間通信開始指令Ｋを車両が受信した際、車車間通信開始指令Ｋから特定される指定位置が車両自身の走行位置と一致すれば、その位置一致車両が優先的に車両情報Ｒを発信して車車間通信を行う。このため、車車間通信を行う場合、これら車両が同時に車車間通信を開始して互いに車両情報Ｒを発信し合うことがなくなり、車車間通信に混信を生じ難くすることができる。

（２）交差点発信機４に無指向性アンテナを用いているので、この種の無指向性アンテナは周囲全方位に向かって信号発信が可能であることから、交差点発信機４として無指向性アンテナを用いれば、これ一台で車車間通信開始指令Ｋを全方位に発信可能となる。よって、交差点発信機４が１機で済むことになり、この種の発信機に要する部品コストを低く済ますことができる。

（３）交差点発信機４が車車間通信開始指令Ｋを周囲に発信する際は、車車間通信開始車両の特定を例えば東→南→西→北の周方向に順に回して行うので、車車間通信開始車両特定を効果的に行うことができる。

（４）車車間通信開始指令Ｋに含まれる指定位置情報を２次元位置情報とした場合、１つの車道９（１０）に複数の車線があってそこに車両が並んで存在していたとしても、車車間通信許可権を与えるに際し、これらの車両の中の一台を車車間通信開始車両として特定することができる。このため、車車間通信開始車両の特定性が高くなり、車車間通信開始順設定システム１が機能的に高くなる。

（５）交差点発信機４にＧＰＳユニット４ｘを設け、このＧＰＳユニット４ｘで求まる発信機位置を基準に指定位置情報Ｄを設定し、これを車車間通信開始指令Ｋに含ませて交差点発信機４から周囲の車両に発信する。この場合、仮に交差点発信機４の配置位置が変えられたとしても、指定位置情報Ｄ自体を全て書き換える必要は生じず、データ書き換えの手間が省ける点で有益である。

（６）車車間通信は、交差点２に進入した複数車両のうち、自身に車車間通信開始の許可権が与えられたものが、他車両に対して車両情報Ｒを単方向で発信する通信である。このため、交差点発信機４の通信エリアに３台以上の車両が進入したとしても、これら車両は順番に車両情報Ｒを発信する信号発信状態をとるので、これら進入車両の間で混信なく車車間通信を行うことができる。

（第２実施形態）
次に、本発明を具体化した第２実施形態を図３及び図４に従って説明する。なお、第２実施形態は、第１実施形態に記載の交差点発信機の種類を変えただけであり、それ以外の基本的な構成については同様であることから、同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。

図３に示すように、車道９と車道１０との交差点２においてその各入口位置には、車車間通信開始指令Ｋを発信すべく交差点入口数に応じた数（本例は４機）の交差点発信機４ａ〜４ｄが設置されている。なお、本例においては、交差点２の東に位置する交差点発信機を第１交差点発信機４ａ、交差点２の南に位置する交差点発信機を第２交差点発信機４ｂ、交差点２の西に位置する交差点発信機を第３交差点発信機４ｃ、交差点２の北に位置する交差点発信機を第４交差点発信機４ｄとする。

これら交差点発信機４ａ〜４ｄは、これら発信機４ａ〜４ｄの発信タイミングを制御する通信コントローラ２１に接続されている。また、交差点発信機４ａ〜４ｄは、発信信号に指向性を有する発信アンテナであって、交差点２への走行車両の進入方向に対して反対方向に車車間通信開始指令Ｋを発信する。本例の車車間通信開始指令Ｋには、第１実施形態で述べた指定位置情報Ｄは含まれず、通信開始要求Ｄａのみが含まれている。通信コントローラ２１は、これら交差点発信機４ａ〜４ｄが車車間通信開始指令Ｋを予め決められた順番に、且つこの順で繰り返して信号発信するように発信制御する。

次に、本例の車車間通信開始順設定システム１の動作を説明するが、この場合も第１実施形態と同様に、西側から車両３ａが交差点２に近づき、北側から車両３ｂが交差点２に近づくこととし、交差点発信機４ａ〜４ｄの車車間通信開始指令発信が４ａ→４ｂ→４ｃ→４ｄの順に、これが繰り返されることとする。この場合、まず最初に第１交差点発信機４ａが車車間通信開始指令Ｋを発信し、その後は第２交差点発信機４ｂ→第３交差点発信機４→第４交差点発信機４の順で車車間通信開始指令Ｋを発信し、この順序で指令発信動作が繰り返し行われる。

ここで、西側から走行してきた車両３ａと、北側から走行してきた車両３ｂとがほぼ同時に交差点２に進入した場合を考えると、第１交差点発信機４が発信した車車間通信開始指令Ｋは信号発信向きが東向きであるので、両車両３ａ，３ｂは共に車車間通信開始指令Ｋを受信しない。また、続いて第２交差点発信機４が車車間通信開始指令Ｋを発信するが、第２交差点発信機４の信号発信向きは南向きであるので、この時も両車両３ａ，３ｂは共に車車間通信開始指令Ｋを受け取らない。

続いて、第３交差点発信機４ｃが車車間通信開始指令Ｋを発信するが、第３交差点発信機４ｃの信号発信向きは西側であることから、西側から走行してくる車両３ａは自身の路車間通信機６で車車間通信開始指令Ｋを受信する状態となり、車車間通信開始の許可権が自身に与えられたと認識する。このとき、第３交差点発信機４ｃが指令発信状態となっても第４交差点発信機４ｄは指令発信状態となっていないことから、北側から走行する車両３ｂは車車間通信開始指令Ｋを受ける状態にはならず、この車両３ｂは受信待機状態を維持したままとなる。

そして、車車間通信開始の許可権が与えられたと認識した車両３ａは、自身に車車間通信開始の優先権が与えられたと認識して車車間通信を開始し、周囲を走行する車両３ｂに向けて車車間通信発信機７ａから車両情報Ｒを発信する。北側から走行してきた車両３ｂは、自身の車車間通信受信機７ｂで車両情報Ｒを受信すると、これを以て車車間通信待機状態から起動状態になり、車両３ａから送られてきた車両情報Ｒを読み取って車両３ａの位置を認識する。

続いて、第４交差点発信機４ｄが車車間通信開始指令Ｋを発信するが、この時は車両３ｂが車車間通信開始指令Ｋを受信することから、自身に車車間通信開始の優先権があると認識する。そして、車両３ｂは、車車間通信を開始して自身の車車間通信発信機７ａから周囲車両に向けて車両情報Ｒを発信する。車両３ａは、自身の車車間通信受信機７ｂで車両情報Ｒを受信すると、このデータを読み取って車両３ｂの位置を認識する。そして、交差点発信機４ａ〜４ｄが車車間通信開始指令Ｋを発信するに際して車車間通信許可権を得た車両が車両情報Ｒを発信する動作が交差点２内の車両間で繰り返される。

本実施形態の構成によれば、第１実施形態に記載の（１）や（６）の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
（７）指向性を持つ複数（本例は４機）の交差点発信機４ａ〜４ｄを地上に設置し、通信開始要求Ｄａのみを有する車車間通信開始指令Ｋをこれら交差点発信機４ａ〜４ｄから順に発信させ、その車車間通信開始指令Ｋを受信する動作をとった車両が優先的に車両情報Ｒを発信して車車間通信を行う。従って、本例においては、交差点発信機４ａ〜４ｄが発信する車車間通信開始指令Ｋに指定位置情報Ｄを持たせる必要がなくなるので、交差点発信機４ａ〜４ｄが車車間通信開始指令発信時に行う通信処理を簡単な処理とすることができる。

なお、本実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ 第１及び第２実施形態において、車車間通信開始順設定システム１の設置箇所は必ずしも交差点２に限らず、これは例えば車道脇等の道路沿いであってもよい。

・ 第１及び第２実施形態において、交差点２の形状は、東西に延びる車道９と南北に延びる車道１０とが直交に交差する十字路に限らず、これは例えばＴ字路でもよい。
・ 第１及び第２実施形態において、車両３と交差点発信機４との間で行う無線通信として電波通信を用いた場合、この周波数帯は通常広く用いられるＵＨＦ帯やＶＨＦ帯に限らず、適宜設定変更可能である。また、車両３と交差点発信機４との間の無線通信は、必ずしも電波通信に限らず、例えば赤外線通信等を用いてもよい。

・ 第１及び第２実施形態において、交差点発信機４が車車間通信開始指定を行う際のその指定順は、必ずしも東→南→西→北に限定されず、この順序は適宜設定変更可能である。

次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
（１）請求項１〜４のいずれか一項において、前記第１通信機は、前記要求信号を発信する度に、前記位置情報の指定位置を自身の中心回りに沿って順次切り換える。この場合、位置情報の指定位置設定を簡単に行うことができる。

第１実施形態における車車間通信開始順設定システムの概略構成図。 車両及び交差点発信機間で行われる信号授受のタイミングチャート。 第２実施形態における車車間通信開始順設定システムの概略構成図。 車車間通信開始順を設定する際の交差点発信機の動作状態遷移図。

符号の説明

３（３ａ，３ｂ）…車両、４（４ａ〜４ｄ）…第１通信機としての交差点発信機、６…第２通信機としての路車間通信機、７ａ…発信機としての車車間通信発信機、８…車両位置検出手段としてのＧＰＳユニット、９，１０…車道、Ｋ（Ｋ１〜Ｋ４）…要求信号としての車車間通信開始指令、Ｒ…車両情報、Ｄ（Ｄ１〜Ｄ４）…位置情報としての指定位置情報。

Claims (7)

1. 車両が持つ固有の車両情報を通信相手の他車両に無線で送信することにより、当該車両情報を互いの車両間で共有し合う車車間通信の通信開始順を決める車車間通信の通信開始順設定システムであって、
   地上側に少なくとも１以上設けられ、周囲に複数存在する車両の中でその１台を車車間通信開始車両として特定し得る要求信号を発信する第１通信機と、
   各車両に各々設けられ、前記第１通信機と無線通信が可能な第２通信機とを備え、
   前記車両は、前記第２通信機で受信した前記要求信号を用いて自身に前記車車間通信の通信開始許可権が与えられているか否かを判別し、自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識した際は自身の車両情報を発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行い、逆に自身に前記通信開始許可権が無いと認識した際は受信待機状態のままで待つことを特徴とする車車間通信の通信開始順設定システム。
2. 前記各車両に各々設けられ、自身が搭載された前記車両の現在位置を各自検出する複数の車両位置検出手段を備え、
   前記第１通信機は、アンテナ指向性として無指向性を有するものが前記地上側に１つ設けられ、前記車車間通信開始の許可を車両位置で指定すべく位置情報を前記要求信号に含ませて要求信号発信を行うとともに、
   前記車両は、前記要求信号の位置情報から指定される位置範囲に、前記車両位置検出手段で求められる自身の前記現在位置が含まれていれば、自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識し、自身の前記車両情報を前記発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行うことを特徴とする請求項１に記載の車車間通信の通信開始順設定システム。
3. 前記第１通信機は、前記要求信号を出力する度に前記位置情報を順に変えて当該要求信号を定期的に発信することを特徴とする請求項２に記載の車車間通信の通信開始順設定システム。
4. 前記位置情報は、前記車両の前記現在位置を２次元的に指定し得る２次元位置情報であることを特徴とする請求項２又は３に記載の車車間通信の通信開始順設定システム。
5. 前記第１通信機は、アンテナ指向性として指向性を有するものが当該指向方向を異ならせて前記地上側に複数設けられ、前記車車間通信開始を許可する許可情報を前記要求信号に含ませて要求発信信号を行うとともに、
   前記車両は、前記第２通信機で前記要求信号を受信すると、その受信を以て自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識し、自身の前記車両情報を前記発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行うことを特徴とする請求項１に記載の車車間通信の通信開始順設定システム。
6. 前記車両は、これら車両のうち前記通信開始許可権が自身に与えられたと認識した車両が他車両に前記車車間通信として前記車両情報を発信のみする動作を、前記通信開始許可権を受けた車両が順に繰り返すことを特徴とする請求項１〜５のうちいずれか一項に記載の車車間通信の通信開始順設定システム。
7. 車両が持つ固有の車両情報を通信相手の他車両に無線で発信することにより当該車両情報を互いの車両間で共有し合う車車間通信の通信開始順を決める車車間通信の通信開始順設定方法であって、
   周囲に複数存在する車両の中の１台を車車間通信開始車両として特定し得る要求信号を発信可能な第１通信機を地上側に少なくとも１以上設け、前記第１通信機と無線通信が可能な第２通信機を各車両に各々設け、前記車両は、前記第２通信機で受信した前記要求信号を用いて自身に前記車車間通信の通信開始許可権が与えられているか否かを判別し、自身に前記通信開始許可権が与えられたと認識した際は自身の車両情報を発信機から他車両に発信して前記車車間通信を行い、逆に自身に前記通信開始許可権が無いと認識した際は受信待機態のままで待つことを特徴とする車車間通信の通信開始順設定方法。

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