以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明にかかる第1の成分は、実質的に下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上からなる。ここで、一般式(1)中のR1およびR3の双方が水素原子である場合、一般式(1)で表される化合物はポリアルキレングリコールである。また、一般式(1)中のR1またはR3の一方が水素原子である場合、一般式(1)で表される化合物はポリアルキレングリコールのモノエーテル化物である。また、一般式(1)中のR1およびR3の双方がアルキル基である場合、一般式(1)で表される化合物はポリアルキレングリコールのジエーテル化物である。
R1−O−(R2−O)n−R3 (1)
[式(1)中、R1およびR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはアルキル基を示し、R2はアルキレン基を示し、nは一般式(1)で表される化合物の重量平均分子量が300〜2000となるような整数を示す。]
一般式(1)中のR1またはR3の一方または双方がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は任意に選択することができるが、アルキル基の炭素数は1〜18であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が18を超えると、焼鈍後に残渣が残る恐れがある。アルキル基は直鎖状であっても、分枝状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、scc−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖状または分枝状のペンチル基、直鎖状または分枝状のヘキシル基、直鎖状または分枝状のへプチル基、直鎖状または分枝状のオクチル基、直鎖状または分枝状のノニル基、直鎖状または分枝状のデシル基、直鎖状または分枝状のウンデシル基、直鎖状または分枝状のドデシル基、直鎖状または分枝状のトリデシル基、直鎖状または分枝状のテトラデシル基、直鎖状または分枝状のペンタデシル基、直鎖状または分枝状のヘキサデシル基、直鎖状または分枝状のヘプタデシル基、および直鎖状または分枝状のオクタデシル基等が挙げられる。
また、一般式(1)中のR2で表されるアルキレン基の炭素数は特に限定するものではないが、一般的には炭素数2〜10であることが好ましい。炭素数2〜10のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基(1−メチルエチレン基および2−メチルエチレン基を含む)、トリメチレン基、ブチレン基(1−エチルエチレン基および2−エチルエチレン基を含む)、1,2−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基(1−ブチルエチレン基および2−ブチルエチレン基を含む)、1−エチル−1−メチルエチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基、1,1,2−トリメチルエチレン基、1,2,2−トリメチルエチレン基、へキシレン基(1−ブチルエチレン基および2−ブチルエチレン基を含む)、1−メチル−1−プロピルエチレン基、1−メチル−2−プロピルエチレン基、2−メチル−2−プロピルエチレン基、1,1−ジエチルエチレン基、1,2−ジエチルエチレン基、2,2−ジエチルエチレン基、1−エチル−1,2−ジメチルエチレン基、1−エチル−2,2−ジメチルエチレン基、2−エチル−1,1−ジメチルエチレン基、2−エチル−1,2−ジメチルエチレン基、1,1,2,2−テトラメチルエチレン基、ヘプチレン基(1−ペンチルエチレン基および2−ペンチルエチレン基を含む)、オクチレン基(1−ヘキシルエチレン基および2−ヘキシルエチレン基を含む)、ノニレン基(1−ヘプチルエチレン基および2−ヘプチルエチレン基を含む)、デシレン基(1−オクチルエチレン基および2−オクチルエチレン基を含む)等を挙げることができる。
上記アルキレン基の中でも、吸湿性が低く、潤滑性に優れ、加水分解が起こりにくい等の点から、R2は炭素数3以上のアルキレン基であることが好ましく、炭素数4以上のアルキレン基であることがより好ましい。また、R2で表されるアルキレン基の炭素数は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
なお、一般式(1)で表される化合物は、同一分子内のR2が1種である単独重合体でもよく、同一分子内のR2が2種以上である共重合体であってもよい。さらに、一般式(1)で表される化合物が共重合体である場合には、当該共重合体を構成するモノマー比およびモノマーの配列は特に限定されず、ランダム共重合体、交互共重合体およびブロック共重合体のいずれであってもよい。
一般式(1)で表される化合物が単独重合体である場合には、吸湿性が低く、潤滑性が優れ、加水分解が起こりにくい等の点から、R2は炭素数4〜6のアルキレン基であることが好ましく、原料モノマーの入手容易性からブチレン基であることがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物が共重合体である場合には、吸湿性が低く、潤滑性が優れ、加水分解が起こりにくい、焼鈍時の残渣分を一層低減することができる等の点から、R2は炭素数3〜6のアルキレン基であることが好ましく、さらに、原料モノマー入手の容易性からプロピレン基またはブチレン基であることがより好ましい。
また、上記一般式(1)中のnは一般式(1)で表される化合物の重量平均分子量が300〜2000、好ましくは500〜1800、より好ましくは800〜1500となるような整数である。一般式(1)で表される化合物の重量平均分子量が300未満であると、引火点が低くなりすぎて発火、着火などの危険が危惧される。一方、一般式(1)で表される化合物の重量平均分子量が2000を超えると、一般式(1)で表される化合物が分解しやすい構造を有している場合であっても、残渣が残る可能性がある。
本発明にかかる第1の成分は、上記一般式(1)で表される化合物の1種で構成されていてもよく、あるいは2種以上で構成されていてもよい。なお、第1の成分が2種以上の化合物の混合物である場合、当該混合物の40℃における動粘度が20〜500mm2/sであれば各成分の混合比は特に制限されない。また、混合物の40℃における動粘度は20〜500mm2/sであることが必要であるが、混合物に含まれる全ての成分が40℃における動粘度20〜500mm2/sという条件を満たさなくてもよい。
本発明にかかる第1の成分の40℃における動粘度は、前述の通り500mm2/s以下であり、好ましくは300mm2/s以下、より好ましくは150mm2/s以下である。第1の成分の40℃動粘度が500mm2/sを超えると、焼鈍性および脱脂性が不十分となる。また、第1の成分の40℃における動粘度は、前述の通り20mm2/s以上であり、好ましくは30mm2/s以上、より好ましくは50mm2/s以上である。第1の成分の40℃動粘度が20mm2/s以下の場合は、潤滑性が不十分となる。
本発明の温間プレス加工用油剤組成物における第1の成分の含有量は、組成物全量基準で、前述の通り95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。当該含有量が95質量%を超えると、潤滑性が不十分となる。また、第1の成分の含有量は、組成物全量基準で、前述の通り5質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、最も好ましくは50質量%以上である。当該含有量が5質量未満の場合には、焼鈍性および脱脂性が不十分となる。
また、本発明の温間プレス加工用油剤組成物における第2の成分は、実質的に多価アルコールエステルおよびコンプレックスエステルから選ばれる1種または2種以上からなる。
多価アルコールエステルを構成する多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、およびこれらの混合物等が挙げられる。
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等が好ましい。さらに、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等がより好ましい。これらの中でも、より高い熱・酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびこれらの混合物等が最も好ましい。
また、多価アルコールエステルを構成するカルボン酸は、一塩基酸または多塩基酸のいずれであってもよい。
多価アルコールエステルを構成する一塩基酸としては、通常、炭素数6〜24の脂肪酸が用いられる。かかる一塩基酸は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、さらに飽和または不飽和のいずれであってもよい。具体的には、直鎖状または分岐鎖状のヘキサン酸、直鎖状または分岐鎖状のオクタン酸、直鎖状または分岐状のノナン酸、直鎖状または分岐状のデカン酸、直鎖状または分岐状のウンデカン酸、直鎖状または分岐状のドデカン酸、直鎖状または分岐状のトリデカン酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のノナデカン酸、直鎖状または分岐状のエイコサン酸、直鎖状または分岐鎖状のヘンエイコサン酸、直鎖状または分岐状のドコサン酸、直鎖状または分岐状のトリコサン酸、直鎖状または分岐状のテトラコサン酸、などの飽和脂肪酸;直鎖状または分岐状のヘキセン酸、直鎖状または分岐状のヘプテン酸、直鎖状または分岐状のオクテン酸、直鎖状または分岐状のオクテン酸、直鎖状または分岐状のノネン酸、直鎖状または分岐状のデセン酸、直鎖状または分岐状のウンデセン酸、直鎖状または分岐状のドデセン酸、直鎖状または分岐状のトリデセン酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン酸、直鎖状または分岐状のペンタデセン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状または分岐状のオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のノナデセン酸、直鎖状または分岐状のエイコセン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコセン酸、直鎖状または分岐状のドコセン酸、直鎖状または分岐状のトリコセン酸、直鎖状または分岐状のテトラコセン酸などの不飽和脂肪酸、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、炭素数8〜20の飽和脂肪酸、炭素数8〜20の不飽和脂肪酸、およびこれらの2種以上の混合物が好ましい。
また、多価アルコールエステルを構成する多塩基酸としては、炭素数2〜16の二塩基酸およびトリメリット酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、また、飽和または不飽和のいずれであってもよい。具体的には、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状または分岐状のブタン二酸、直鎖状または分岐状のペンタン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサン二酸、直鎖状または分岐状のオクタン二酸、直鎖状または分岐状のノナン二酸、直鎖状または分岐状のデカン二酸、直鎖状または分岐状のウンデカン二酸、直鎖状または分岐状のドデカン二酸、直鎖状または分岐状のトリデカン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン二酸;直鎖状または分岐状のヘキセン二酸、直鎖状または分岐状のオクテン二酸、直鎖状または分岐状のノネン二酸、直鎖状または分岐状のデセン二酸、直鎖状または分岐状のウンデセン二酸、直鎖状または分岐状のドデセン二酸、直鎖状または分岐状のトリデセン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン二酸、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
多価アルコールエステルを構成する多価アルコールとカルボン酸の組み合わせは任意であり、例えば下記に示す組み合わせが挙げられる。
(1)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(2)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(3)多価アルコールと一塩基酸および多塩基酸の混合カルボン酸とのエステル。
なお、多価アルコールエステルは、多価アルコールの全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のままで残存している部分エステルであってもよい。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いる場合、多塩基酸中の全てのカルボキシル基がエステル化された完全エステルであってもよく、カルボキシル基の一部がエステル化されずにカルボキシル基のままで残存している部分エステルであってもよい。
上記(1)〜(3)に示した組み合わせの中でも、より潤滑性に優れる点から、(1)多価アルコールと一塩基酸とのエステルが好ましい。
多価アルコールエステルの炭素数は特に制限されないが、潤滑性の向上効果に優れる点から、7以上が好ましく、9以上がより好ましく、11以上がさらに好ましい。また、炭素数が大きすぎると、焼鈍性に問題が生ずるおそれがあることから、エステルの炭素数は、26以下が好ましく、24以下がより好ましく、22以下がさらに好ましい。
また、コンプレックスエステルとは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよび多価アルコールとのエステルである。
コンプレックスエステルを構成する一価アルコールとしては、通常炭素数1〜24のものが用いられ、このようなアルコールは直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。炭素数1〜24の一価アルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐状のプロパノール、直鎖状または分岐状のブタノール、直鎖状または分岐状のペンタノール、直鎖状または分岐状のヘキサノール、直鎖状または分岐状のヘプタノール、直鎖状または分岐状のオクタノール、直鎖状または分岐状のノナノール、直鎖状または分岐状のデカノール、直鎖状または分岐状のウンデカノール、直鎖状または分岐状のドデカノール、直鎖状または分岐状のトリデカノール、直鎖状または分岐状のテトラデカノール、直鎖状または分岐状のペンタデカノール、直鎖状または分岐状のヘキサデカノール、直鎖状または分岐状のヘプタデカノール、直鎖状または分岐状のオクタデカノール、直鎖状または分岐状のノナデカノール、直鎖状または分岐状のエイコサノール、直鎖状または分岐状のヘンエイコサノール、直鎖状または分岐状のトリコサノール、直鎖状または分岐状のテトラコサノールおよびこれらの混合物が挙げられる。
また、コンプレックスエステルを構成する脂肪酸、二塩基酸および多価アルコールとしては、それぞれ多価アルコールエステルの説明において例示された脂肪酸、二塩基酸および多価アルコールと同様のものを使用することができる。
本発明にかかる第2の成分は多価アルコールエステルおよびコンプレックスエステルからなる群より選ばれる1種で構成されていてもよく、あるいは2種以上で構成されていてもよい。なお、第2の成分が2種以上の化合物の混合物である場合、当該混合物の40℃における動粘度が10〜1000mm2/sであれば各成分の混合比は特に制限されない。また、混合物の40℃における動粘度は10〜1000mm2/sであることが必要であるが、混合物に含まれる全ての成分が40℃における動粘度10〜1000mm2/sという条件を満たさなくてもよい。
本発明にかかる第2の成分の40℃における動粘度は、前述の通り1000mm2/s以下であり、好ましくは500mm2/s以下、より好ましくは350mm2/s以下である。第2の成分の40℃動粘度が1000mm2/sを超えると、焼鈍性および脱脂性が不十分となる。また、第2の成分の40℃における動粘度は、前述の通り10mm2/s以上であり、好ましくは20mm2/s以上、より好ましくは30mm2/s以上である。40℃動粘度が10mm2/s以下の場合は、潤滑性が不十分となる。
本発明の温間プレス加工用油剤組成物における第2の成分の含有量は、組成物全量基準で、前述の通り95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。当該含有量が95質量%を超えると、焼鈍性および脱脂性が不十分となる。また、第2の成分の含有量は、組成物全量基準で、前述の通り5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。当該含有量が5質量未満の場合には、潤滑性が不十分となる。
本発明の温間プレス加工用油剤組成物は、上記の第1の成分と第2の成分とからなるものであってもよいが、その他の基油をさらに含有してもよい。その他の基油としては、具体的には、鉱油または合成油が挙げられる。鉱油としては、原油を常圧蒸留および/または減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理のうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、あるいはノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油などが挙げられる。また、合成油としては、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、炭素数5〜20のα−オレフィンのオリゴマー、エチレンと炭素数5〜20のα−オレフィンとのコオリゴマー等のポリオレフィンまたはこれらの水素化物;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;ジアルキルジフェニルエーテル等のフェニルエーテル;シリコーン油;パーフルオロエーテル等のフルオロエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、第1の成分および第2の成分以外の基油の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、本発明の温間プレス加工用油剤組成物は、加工効率の向上の点から極圧剤をさらに含有することが好ましい。好ましい極圧剤としては、リン化合物および硫黄化合物が挙げられる。
リン化合物としては、具体的には例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびホスホロチオネート、下記一般式(2)または(3)で表されるリン化合物の金属塩等が挙げられる。これらのリン化合物は、リン酸、亜リン酸またはチオリン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
[式(2)中、X1、X2およびX3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、X1、X2またはX3の少なくとも2つは酸素原子であり、R4、R5およびR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表す]
[式(3)中、X4、X5、X6およびX7は同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、X4、X5、X6またはX7の少なくとも3つは酸素原子であり、R7、R8およびR9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
より具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等;
ホスホロチオネートとしては、トリブチルホスホロチオネート、トリペンチルホスホロチオネート、トリヘキシルホスホロチオネート、トリヘプチルホスホロチオネート、トリオクチルホスホロチオネート、トリノニルホスホロチオネート、トリデシルホスホロチオネート、トリウンデシルホスホロチオネート、トリドデシルホスホロチオネート、トリトリデシルホスホロチオネート、トリテトラデシルホスホロチオネート、トリペンタデシルホスホロチオネート、トリヘキサデシルホスホロチオネート、トリヘプタデシルホスホロチオネート、トリオクタデシルホスホロチオネート、トリオレイルホスホロチオネート、トリフェニルホスホロチオネート、トリクレジルホスホロチオネート、トリキシレニルホスホロチオネート、クレジルジフェニルホスホロチオネート、キシレニルジフェニルホスホロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスホロチオネート等
が挙げられる。
また、上記一般式(2)または(3)で表されるリン化合物の金属塩に関し、式中のR4〜R9で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基等が挙げられる。
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルカリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルカリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
上記アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアラルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
R4〜R9で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数3〜18のアルキル基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
R4、R5およびR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または上記炭化水素基を表すが、R4、R5およびR6のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
また、R7、R8よびR9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または上記炭化水素基を表すが、R7、R8およびR9のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
一般式(2)で表されるリン化合物において、X1〜X3のうちの少なくとも2つは酸素原子であることが必要であるが、X1〜X3の全てが酸素原子であることが好ましい。
また、一般式(3)で表されるリン化合物において、X4〜X7のうちの少なくとも3つは酸素原子であることが必要であるが、X4〜X7の全てが酸素原子であることが好ましい。
一般式(2)で表されるリン化合物としては、例えば、亜リン酸、モノチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステルが好ましく、亜リン酸ジエステルがより好ましい。
また、一般式(3)で表されるリン化合物としては、例えば、リン酸、モノチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルが好ましく、リン酸ジエステルがより好ましい。
一般式(2)または(3)で表されるリン化合物の金属塩としては、当該リン化合物の酸性水素の一部または全部を金属塩基で中和した塩が挙げられる。かかる金属塩基としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等が挙げられ、その金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属および亜鉛が好ましい。
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2molを反応させた場合、下記式(4)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1molとを反応させた場合、下記式(5)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
また、これらの2種以上の混合物も使用できる。
本発明においては、上記リン化合物の中でも、より高い加工効率が得られることから、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩およびホスホロチオネートが好ましく、さらに、一層高い加工効率が達成できる点からは、リン酸エステルがより好ましい。
本発明で用いられる硫黄化合物としては、金属加工油組成物の特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、ジヒドロカルビルポリサルファイド、硫化脂肪酸、硫化オレフィン、硫化エステル、硫化鉱油、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、チオカーバメート化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物が好ましく用いられる。
ジヒドロカルビルポリサルファイドとは、一般的にポリサルファイドまたは硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(6):
R10−Sa−R11 (6)
[式(6)中、R10およびR11は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルカリール基あるいは炭素数6〜20のアラルキル基を表し、aは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す。]
で表される化合物を意味する。
上記一般式(6)中のR10およびR11としては、具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝ペンチル基、直鎖または分枝ヘキシル基、直鎖または分枝ヘプチル基、直鎖または分枝オクチル基、直鎖または分枝ノニル基、直鎖または分枝デシル基、直鎖または分枝ウンデシル基、直鎖または分枝ドデシル基、直鎖または分枝トリデシル基、直鎖または分枝テトラデシル基、直鎖または分枝ペンタデシル基、直鎖または分枝ヘキサデシル基、直鎖または分枝ヘプタデシル基、直鎖または分枝オクタデシル基、直鎖または分枝ノナデシル基、直鎖または分枝イコシル基などの直鎖状または分枝状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝オクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝デシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、メチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)などのアルカリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)、フェニルプロピル基(全ての異性体を含む)などのアラルキル基;などを挙げることができる。
これらの中でも、一般式(6)中のR10およびR11としては、プロピレン、1−ブテンまたはイソブチレンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、または炭素数6〜8のアリール基、アルカリール基あるいはアラルキル基であることが好ましい。これらの好ましい基としては例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分枝状ヘキシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン3量体から誘導される分枝状ノニル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン4量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン5量体から誘導される分枝状ペンタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン6量体から誘導される分枝状オクタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ブテン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)などのアルキル基;フェニル基、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)などのアルカリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)などのアラルキル基が挙げられる。
さらに、上記一般式(6)中のR10およびR11としては、加工効率および工具寿命の向上の点から、別個に、エチレンまたはプロピレンから誘導された炭素数3〜18の分枝状アルキル基であることがより好ましく、エチレンまたはプロピレンから誘導された炭素数6〜15の分枝状アルキル基であることが特に好ましい。
硫化脂肪酸の例としては硫化オレイン酸など、硫化エステルの例としては、硫化オレイン酸メチルや硫化米ぬか脂肪酸オクチルおよびこれらの混合物などを挙げることができる。
硫化オレフィンとしては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。この化合物は、炭素数2〜15のオレフィンまたはその二〜四量体を、硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得られ、該オレフィンとしては、プロピレン、イソブテン、ジイソブテンなどが好ましい。
R12−Sb−R13 (7)
[式中、R12は炭素数2〜15のアルケニル基を示し、R13は炭素数2〜15のアルキル基またはアルケニル基を示し、bは1〜8の整数を示す。]
硫化エステルとしては、具体的には例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸または上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;およびこれらの混合物などを任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。
硫化鉱油とは、鉱油に単体硫黄を溶解させたものをいう。ここで、本発明にかかる硫化鉱油に用いられる鉱油としては特に制限されないが、第1の成分および第2の成分と併用可能な基油の説明において例示された鉱油を使用することができる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状または溶融液体状の単体硫黄を用いると基油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄は液体同士を混合するので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備などの特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴うなど取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解に要する時間が十分に短いので特に好ましい。また、本発明にかかる硫化鉱油における硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化鉱油全量を基準として好ましくは0.05〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物およびジチオカルバミン酸モリブデン化合物の好ましい例としては、それぞれ下記一般式(8)〜(11)で表される化合物が挙げられる。
式(8)〜(11)中、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28およびR29は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表し、X8およびX9はそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表す。
R14〜R29で表される炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基(全ての分枝異性体を含む)、ブチル基(全ての分枝異性体を含む)、ペンチル基(全ての分枝異性体を含む)、ヘキシル基(全ての分枝異性体を含む)、ヘプチル基(全ての分枝異性体を含む)、オクチル基(全ての分枝異性体を含む)、ノニル基(全ての分枝異性体を含む)、デシル基(全ての分枝異性体を含む)、ウンデシル基(全ての分枝異性体を含む)、ドデシル基(全ての分枝異性体を含む)、トリデシル基(全ての分枝異性体を含む)、テトラデシル基(全ての分枝異性体を含む)、ペンタデシル基(全ての分枝異性体を含む)、ヘキサデシル基(全ての分枝異性体を含む)、ヘプタデシル基(全ての分枝異性体を含む)、オクタデシル基(全ての分枝異性体を含む)、ノナデシル基(全ての分枝異性体を含む)、イコシル基(全ての分枝異性体を含む)、ヘンイコシル基(全ての分枝異性体を含む)、ドコシル基(全ての分枝異性体を含む)、トリコシル基(全ての分枝異性体を含む)、テトラコシル基(全ての分枝異性体を含む)などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基(全ての置換異性体を含む)、エチルシクロペンチル基(全ての置換異性体を含む)、ジメチルシクロペンチル基(全ての置換異性体を含む)、プロピルシクロペンチル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての置換異性体を含む)、トリメチルシクロペンチル基(全ての置換異性体を含む)、ブチルシクロペンチル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロペンチル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(全ての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロペンチル基(全ての置換異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基(全ての置換異性体を含む)、エチルシクロヘキシル基(全ての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘキシル基(全ての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘキシル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘキシル基(全ての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘキシル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘキシル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘキシル基(全ての置換異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基(全ての置換異性体を含む)、エチルシクロヘプチル基(全ての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘプチル基(全ての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘプチル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘプチル基(全ての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘプチル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘプチル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘプチル基(全ての置換異性体を含む)などのアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(全ての置換異性体を含む)、キシリル基(全ての置換異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての置換異性体を含む)、プロピルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルフェニル基(全ての置換異性体を含む)、トリメチルフェニル基(全ての置換異性体を含む)、ブチルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての置換異性体を含む)、ジメチルエチルフェニル基(全ての置換異性体を含む)、ペンチルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプチルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクチルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ノニルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、デシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ウンデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ドデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、トリデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、テトラデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ペンタデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキサデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプタデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクタデシルフェニル基(全ての分枝異性体、置換異性体を含む)などのアルカリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基(全ての分枝異性体を含む)、フェニルブチル基(全ての分枝異性体を含む)などのアラルキル基などが挙げられる。
チアジアゾール化合物としては、例えば、下記一般式(12)で表される1,3,4−チアジアゾール、下記一般式(13)で表される1,2,4−チアジアゾール化合物および下記一般式(14)で表される1,4,5−チアジアゾール化合物が挙げられる。
一般式(12)〜(14)中、R30、R31、R32、R33、R34およびR35は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示し、c、d、e、f、gおよびhは同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜8の整数を示す。
このようなチアジアゾール化合物の具体例としては、2,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾールおよびこれらの混合物などを好ましく挙げることができる。
アルキルチオカルバモイル化合物としては、例えば、下記一般式(15)で表される化合物が挙げられる。
一般式(15)中、R36、R37、R38およびR39は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基を示し、qは1〜8の整数を示す。
このようなアルキルチオカルバモイル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルチオカルバモイル)モノスルフィド、ビス(ジブチルチオカルバモイル)モノスルフィド、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジブチルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジアミルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジオクチルチオカルバモイル)ジスルフィドおよびこれらの混合物などを好ましく挙げることができる。
アルキルチオカーバメート化合物としては、例えば、下記一般式(16)で示される化合物が挙げられる。
一般式(16)中、R40、R41、R42およびR43は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基を示し、R44は炭素数1〜10のアルキル基を示す。
このようなアルキルチオカーバメート化合物の具体例としては、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、メチレンビス[ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカーバメート]などを好ましく挙げることができる。
さらに、チオテルペン化合物としては、例えば、五硫化リンとピネンの反応物を、ジアルキルチオジプロピオネート化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートおよびこれらの混合物などを挙げることができる。
本発明においては、上記硫黄化合物の中でも、ジヒドロカルビルポリサルファイド、硫化エステル、硫化油脂およびチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、加工効率の向上効果が一層高水準で得られるので好ましく、さらに硫化エステルを用いることがより好ましい。
本発明の温間プレス加工用油剤組成物は、リン化合物または硫黄化合物の一方のみを含有するものであってもよく、リン化合物と硫黄化合物の双方を含有するものであってもよい。加工効率および工具寿命の向上効果がより高められる点からは、リン化合物単独または硫黄化合物およびリン化合物の双方を含有することが好ましく、リン化合物単独がより好ましい。
上記極圧剤の含有量は任意であるが、加工効率向上の点から、組成物全量基準で、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらにより好ましい。また、異常摩耗の防止の点から、極圧剤の含有量は、組成物全量基準で、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の温間プレス加工用油剤組成物は油性剤をさらに含有してもよい。本発明で使用される油性剤としては、通常潤滑油の油性剤として用いられているものが含まれる。しかしながら、より加工性を向上させるために下記(1)〜(3)から選ばれる1種または2種以上の油性剤を使用することが好ましい。
(1)エステル油性剤
(2)一価アルコール油性剤
(3)カルボン酸油性剤。
(1)エステル油性剤を構成するアルコールは一価アルコールでも多価アルコールでも良い。また、(1)エステル油性剤を構成するカルボン酸は一塩基酸でも多塩基酸であっても良い。
一価アルコールとしては、上記第2の成分にかかるコンプレックスエステルの説明において例示された一価アルコールを用いることができる。
また、多価アルコールとしては、上記第2の成分にかかる多価アルコールエステルの説明において例示された多価アルコールを用いることができる。
これらの中でも特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等がより好ましい。さらに好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等である。
(1)エステル油性剤を構成する一塩基酸としては、上記第2の成分にかかる多価アルコールエステルの説明において例示された一塩基酸を用いることができる。
また、(1)エステル油性剤を構成する多塩基酸としては、上記第2の成分にかかる多価アルコールエステルの説明において例示された多塩基酸を用いることができる。
(1)エステル油性剤としては、任意のアルコールとカルボン酸の組み合わせによるエステルが使用可能であり、特に限定されるものではない。アルコールとカルボン酸の組合せとしては、具体的には、下記(1a)〜(1g)を例示することができる。
(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステル
(1b)多価アルコールと一塩基酸のエステル
(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステル
(1d)多価アルコールと多塩基酸のエステル
(1e)一価アルコール、多価アルコールの混合物と多塩基酸との混合エステル
(1f)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸の混合物との混合エステル
(1g)一価アルコール、多価アルコールの混合物と一塩基酸、多塩基酸の混合物との混合エステル。
なお、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルを示す。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでも良く、カルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであっても良い。
本発明で用いられるエステルとしては、上記した何れのものも使用可能であるが、この中でもより加工性に優れる点から、(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルまたは(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステルが好ましく、(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルがより好ましく、(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルと(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステルを併用することが最も好ましい。
本発明において油性剤として用いられる(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルの合計炭素数には特に制限はないが、当該合計炭素数は7以上が好ましく、9以上がより好ましく、11以上が特に好ましい。また、当該合計炭素数は26以下が好ましく、24以下がより好ましく、22以下が特に好ましい。また、一価アルコールの炭素数は、特に制限されないが、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6がさらにより好ましく、1〜4が特に好ましい。また、一塩基酸の炭素数は、特に制限されないが、8〜22が好ましく、10〜20がより好ましく、12〜18が特に好ましい。上記の合計炭素数、アルコールの炭素数および一塩基酸の炭素数がそれぞれ上記上限値を超えると、ステインや腐食の発生を増大させるおそれが大きくなる傾向にあり、また、冬季において流動性を失い扱いが困難になるおそれが大きくなる傾向にあり、さらには、基油への溶解性が低下して析出するおそれが大きくなる傾向にある。また、上記の合計炭素数、アルコールの炭素数および一塩基酸の炭素数がそれぞれ上記下限値未満の場合には、潤滑性の低下および臭気による作業環境悪化が生じるおそれが大きくなる傾向にある。
本発明において油性剤として用いられる(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステルの形態は特に制限されないが、下記一般式(17)で表されるジエステル、またはトリメリット酸のエステルであることが好ましい。
R44−O−CO(CH2)mCO−O−R45 (17)
[一般式(17)中、R44およびR45は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜10の炭化水素基を示し、mは4〜8の整数を示す。]
上記一般式(17)におけるR44およびR45の炭素数は、3以上であることが好ましい。なお、R44およびR45の炭素数が3未満であると、潤滑性の向上効果が期待できなくなる恐れがあり、また、臭気により作業環境が悪化する傾向にある。また、R44およびR45の炭素数は、10以下であることが好ましい。なお、R44およびR45の炭素数が10を超えると、ステインや腐食の発生を増大させる恐れ、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れ、並びに基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる傾向にある。
一般式(1)中のR44およびR45としては、アルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基等が挙げられ、特にアルキル基が好ましい。このアルキル基には直鎖アルキル基または分岐アルキル基が含まれ、直鎖アルキル基と分岐アルキル基が混在していてもよいが、分岐アルキル基が好ましい。R44およびR45としては具体的には例えば、直鎖または分岐のプロピル基、直鎖または分岐のブチル基、直鎖または分岐のペンチル基、直鎖または分岐のヘキシル基、直鎖または分岐のヘプチル基、直鎖または分岐のオクチル基、直鎖または分岐のノニル基、直鎖または分岐のデシル基等を挙げることができる。
また、上記一般式(17)中のmは4〜8の整数を示す。ステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる、基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる等の点から、mは8以下であることが好ましい。また、潤滑性能の向上効果が期待できなくなる恐れがある、臭気により作業環境が悪化する等の点から、mは4以上であることが好ましい。このうち、原料の入手のしやすさ、および価格の点からmは4または6であることが特に好ましい。
上記一般式(17)で表されるジエステルは任意の方法で得られるが、例えば炭素数6〜10(炭素数6から順に、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸)の直鎖飽和ジカルボン酸またはその誘導体と炭素数3〜10のアルコールとをエステル化させる方法等が例示される。トリメリット酸をエステル化する1価アルコールの炭素数は特に制限はないが、ステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる、基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる等の点から、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6がさらに好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。トリメリット酸のエステルは、部分エステル(モノエステルまたはジエステル)でも完全エステル(トリエステル)でもよい。
(2)一価アルコール油性剤としては、具体的には例えば、上記第2の成分にかかるコンプレックスエステルの説明において例示された一価アルコールを用いることができる。(2)一価アルコール油性剤としては、潤滑性能の点および臭気による作業環境悪化の点から、炭素数6以上の一価アルコールが好ましく、炭素数8以上のアルコールがより好ましく、炭素数10以上のアルコールがさらにより好ましく、炭素数12以上のアルコールが最も好ましい。また、ステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる点、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる点および基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる点から、炭素数20以下のアルコールが好ましく、炭素数18以下のアルコールがより好ましい。
(3)カルボン酸油性剤としては、一塩基酸でも多塩基酸でも良い。具体的には例えば、上記第2の成分にかかる多価アルコールエステルの説明において例示された一塩基酸または多塩基酸を用いることができる。これらの中でも、より加工性に優れる点から一価のカルボン酸が好ましい。また、より加工性に優れる点から、炭素数6以上のカルボン酸が好ましく、炭素数8以上のカルボン酸がより好ましく、炭素数10以上のカルボン酸が最も好ましい。また、炭素数が大き過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、炭素数20以下のカルボン酸が好ましく、炭素数18以下のカルボン酸がより好ましく、炭素数16以下のカルボン酸が最も好ましい。
本発明の温間プレス加工用油剤組成物においては、上記各種油性剤の中から選ばれる1種のみを用いても良く、また2種以上を組み合わせて用いても良いが、潤滑性の点から、(1)エステル油性剤および(2)一価アルコール油性剤が好ましく、(1)エステル油性剤がより好ましい。
上記油性剤の含有量は、加工性の点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、脱脂性の点から、油性剤の含有量は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、一層好ましくは15質量%以下、特に好ましくは12質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。
また、本発明の温間プレス加工用油剤組成物は酸化防止剤をさらに含有していることが好ましい。酸化防止剤の添加により、構成成分の変質によるべたつきを防止することができ、また、熱・酸化安定性を向上させることができる。
本発明において使用可能な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤、その他食品添加剤として使用されている酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のフェノール系化合物が使用可能であり、特に制限されるものでないが、例えば下記の一般式(18)および一般式(19)で表される化合物の中から選ばれる1種または2種以上のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
[式(18)中、R46は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R47は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R48は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記一般式(i)または(ii):
(一般式(18−i)中、R49は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R50は炭素数1〜24のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
(一般式(18−ii)中、R51は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R52は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R53は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、pは0または1を示す。)
で表される基を示す。]
[一般式(21)中、R54およびR56は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、R55およびR57は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R58およびR59は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Aは炭素数1〜18のアルキレン基または下記の一般式(19−i):
−R60−S−R61− (19−i)
(一般式(19−i)中、R60およびR61は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す)
で表される基を示す。]
また、本発明に使用されるアミン系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアミン系化合物が使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、下記の一般式(20)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンまたはN−p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、並びに下記一般式(21)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンの中から選ばれる1種または2種以上の芳香族アミンが好ましいものとして挙げられる。
[式(20)中、R62は水素原子またはアルキル基を示す。]
[式(21)中、R63およびR64は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基を示す。]
アミン系酸化防止剤の具体例としては、4−ブチル−4’−オクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ドデシルフェニル−α−ナフチルアミンおよびこれらの混合物などが挙げられる。
本発明に使用されるジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤としては、上記硫黄化合物の説明において例示された一般式(8)で表される化合物などが挙げられる。
また、食品添加剤として使用されている酸化防止剤も使用可能であり、上述したフェノール系酸化防止剤と一部重複するが、例えば、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)を挙げることができる。
これらの酸化防止剤の中でも、アミン系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤、並びに上記食品添加剤として使用されている酸化防止剤が好ましく、アミン系酸化防止剤およびジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤を併用することがさらに好ましい。さらに、生分解性を重視する場合には、上記食品添加剤として使用されているものがより好ましく、中でもアスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、または2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)が好ましく、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、または3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールがより好ましい。
酸化防止剤の含有量に特に制限はないが、良好な熱・酸化安定性を維持させるためにその含有量は、組成物全量基準で0.01質量%以上が好ましく、さらに好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。一方それ以上添加しても効果の向上が期待できないことからその含有量は10質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは3質量%以下である。
また、本発明の温間プレス加工用油剤組成物は、上記以外の従来公知の添加剤をさらに含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、上記したリン化合物、硫黄化合物以外の極圧剤(塩素系極圧剤を含む);アミン、アルカノールアミン、アミド、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、多価アルコールの部分エステル等の腐食防止剤;ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等の金属不活性化剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミンアミノアミド等の無灰分散剤;等が挙げられる。これら公知の添加剤を使用する場合の含有量は特に制限されないが、これら公知の添加剤の合計含有量が組成物全量基準で0.1〜10質量%となるような量で添加するのが一般的である。
本発明の温間プレス加工用油剤組成物の40℃における動粘度は、焼鈍後残渣の残存率の増加を抑制する観点から、1000mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは500mm2/s以下であり、最も好ましくは350mm2/s以下である。一方、潤滑性が低下する恐れがあることから、40℃における動粘度は20mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは25mm2/s以上であり、最も好ましくは30mm2/s以上である。
上記構成を有する本発明の温間プレス加工用油剤組成物によれば、温間プレス加工において加工性、焼鈍性および脱脂性の全てを高水準でバランスよく満たすことが可能となる。
また、本発明の温間プレス加工方法は、上記本発明の温間プレス加工用油剤組成物を用い、温度100〜350℃に加熱された被加工材をプレス成形することを特徴とする。
本発明の温間プレス加工方法の好ましい態様としては、本発明の温間プレス加工用油剤組成物をコイル状の板材に所定量塗布する工程と、油剤が塗布された板材を切断する工程と、切断された板材を100〜350℃に加熱する工程と、加熱された板材を温間プレス成形する工程とを備える温間プレス加工方法が挙げられる。
また、本発明の温間プレス加工方法の別の好ましい態様としては、油剤が塗布されていない状態のコイル状の板材を切断する工程と、切断された板材を100〜350℃に加熱する工程と、加熱された板材に本発明の温間プレス加工用油剤組成物を所定量塗布する工程と、塗布後の板材を温間プレス成形する工程とを備える温間プレス加工方法が挙げられる。
本発明の温間プレス加工方法における材料の加熱温度は、前述の通り100℃以上であり、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。加熱温度が100℃未満の場合には加工性が低下する。また、材料の加熱温度は、前述の通り350℃以下であり、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。加熱温度が350℃を超えると、油剤の分解、焼き付きが起こりやすくなる。
また、本発明の温間プレス加工方法において、本発明のプレス加工用油剤組成物の材料への塗布方法は特に制限されず、スプレー法、静電塗装法および滴下、ロールでの塗布法などを適用することができる。本発明のプレス加工用油剤組成物の材料への塗布量は適宜選定することができるが、3g/m2が好ましく、1g/m2がより好ましい。
本発明の温間プレス加工用油剤組成物が適用される被加工材の材質は特に制限されないが、非鉄金属の加工用油剤として好適であり、特に、アルミニウム、マグネシウム、あるいはこれらの合金の加工用油剤として非常に優れた効果を発揮することができる。