本発明は、粉鉄鉱石類などの焼結原料を、石炭やコークスなどの固体燃料を熱源として焼結する際に、高MgO含有副原料を配合する焼結鉱の製造方法に関する。
通常の焼結鉱の製造方法は、概略以下のように製造される。つまり、先ず、焼結原料をドラムミキサーやデイスクペレタイザーなどの造粒機で水分を調節しながら混合、造粒して擬似粒子化した後、焼結機の焼結パレットに層状に装入し、焼結原料表層中の固体燃料に着火し、焼結原料の上から下の厚み方向に吸引通風することによって、焼結原料の燃焼点を順次下層側に移行させ、焼結反応を進行させることにより行なわれる。
焼成後の焼結パレット内の焼結ケーキは、高炉用焼結鉱として適した所定粒径となるように解砕、整粒される。この際、所定粒径より小さい焼結鉱や、高炉までの搬送中の崩壊により発生じた焼結粉は、それぞれ、焼結返鉱、焼結篩下粉と呼ばれ、再度、焼結原料中に配合し使用される。
焼結原料は、主原料である約10mm以下の鉄鉱石粉及び製鉄ダスト(製鉄ダスト、製鋼ダスト、スケール等)などからなる鉄含有原料に、焼結反応と成分調整のために必要である石灰石、ドロマイト、転炉スラグ、蛇紋岩、珪石及びかんらん岩などからなる副原料と、熱源であるコークス粉及び無煙炭などからなる炭材と、上記焼結返鉱及び焼結篩下粉を、それぞれ所定の割合で配合して構成されている。
焼結鉱は、高炉で溶銑を製造する際の主要原料であり、高炉の操業や溶銑品質及び生産性を良好に維持するために、特に、冷間強度(タンブラー強度TIで72%以上)、被還元性(JIS−RI)、耐還元粉化特性(RDI)、及び、高温溶融特性(滴下開始温度が1410〜1430℃)などの品質が要求される。また、これら焼結鉱の品質及び焼結鉱製造時の生産性や、成品歩留は焼結原料の主要原料である鉄鉱石などの鉄含有原料に大きく左右される。
ここで、高温溶融溶融特性とは、高炉内で焼結鉱が、還元、融着を経て滴下までに至る際の通気抵抗や特性温度を総称している。そのうち、還元により生成したメタルが浸炭し、滴下に至る性状は溶け落ち性と呼ばれる。この溶け落ち性は、主に、滴下開始温度で評価され、高炉操業上重要な指標である。
滴下開始温度が低すぎると、未還元のスラグもメタルと随伴して炉床へ滴下することになり、吸熱反応である直接還元が炉床部で増加することになるため、炉熱低下を招き好ましくない。逆に、高すぎると、滴下物が残留しやすくなり、不均一な滴下により高炉炉下部の安定性や通気性が損なわれる。以上の結果、滴下開始温度には最適な範囲が存在し、通常は、1410〜1430℃の範囲が最も望ましい。
上記焼結原料中に配合されるCaO、SiO2、MgOなどのスラグ形成元素を含有する副原料は、焼結過程において融液を生成し、焼結反応を良好に進行させ、焼結鉱の生産性や成品歩留を維持しつつ、高炉原料として要求される強度、被還元性、耐還元粉化性、高温溶融特性などの焼結鉱の品質、さらには、高炉出銑時のスラグ排出(排滓性)を良好に維持するために配合される。
副原料として焼結鉱中に含有させるMgOは、高炉内において、焼結鉱の高炉シャフト部でのCO還元ガスとの反応における耐還元粉化性、及び、高炉溶融帯での溶け落ち性などの高温溶融特性を改善し、さらには、高炉炉底部でのスラグ流動性を改善し出銑時の排滓性を良好に維持するために必要なスラグ成分である。
従来から、MgO含有副原料として蛇紋岩(3MgO・2SiO2・2H2O)が古くから用いられてきた。蛇紋岩は、焼結過程では、加熱によりフォルステライト(2MgO・SiO2)へ分解し、初期融液と溶融同化する。しかし、副原料中のMgOが、焼結反応において生成する初期融液中に過度に溶融すると、融液の融点を上昇させ、焼結鉱の結合相を形成するために必要な融液量が減少し、焼結鉱の強度や成品歩留が低下させる原因となる。
このため、従来、蛇紋岩をMgO含有副原料として配合する場合には、蛇紋岩の粒径を粗くし、焼成過程で、低融点の初期融液との同化を遅らせ、未溶融のまま焼結鉱中に残存させることにより、焼結鉱中のMgO含有量を確保することが行なわれていた。
しかし、この方法では、焼結鉱中に残留する蛇紋岩の未溶融部分の粒度がばらつくため、焼結鉱組織や構造が不均一となり、焼結鉱の強度と歩留の低下を招いていた。そのため、蛇紋岩の粗粒化によるMgOの同化反応の抑制方法では、安定した十分な効果を得ることが難しかった。
また、蛇紋岩をMgO含有副原料として使用する場合は、蛇紋岩中にSiO2が高濃度で含有されているため、焼結反応で焼結強度に寄与しないSiO2融液が増加し、焼結鉱中に含有されるSiO2のスラグ成分が高くなってしまい、高炉での焼結鉱の強度や被還元性及び還元粉化性などの品質を低下させる問題があった。
また、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)をMgO含有副原料として使用する方法も、従来から知られている。ドロマイトは、焼結過程では、加熱によりCaOとMgOへ分解し、初期融液と溶融同化する。
例えば、MgOを18.0質量%以上含有するドロマイトを焼結原料中に配合し、CaO濃度が6〜9%の低スラグ焼結鉱を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。
この方法は、MgOとともにCaOを高濃度で含有するドロマイト(CaCO3・MgCO3)を、MgO源及びCaO源として用い、焼成過程において生成する融液の流動性を向上させ、少ない融液量で効率よく鉱石粒子の結合性を強めて、強度に優れた低スラグ焼結鉱を製造するものである。
しかしながら、ドロマイト中に多く含まれるCaOは、加熱後にMgOと隣接するために、石灰石(CaCO3)中のCaOに比べて、溶融及び融液中への同化が遅く、強度や還元性に優れたカルシウムフェライト(CaO・Fe2O3)結合相を生成するために寄与しないか、又は、寄与が小さく、そのため、焼結鉱の強度や歩留を十分に向上することが困難である。
一方、これらの蛇紋岩及びドロマイトに替わるMgO含有副原料として、マグネサイト(MgCO3)及びブルーサイト(Mg(OH)2)の炭酸マグネシウムを主体としたMgO含有副原料、又は、水酸化マグネシウムを主体としたMgO含有副原料も提案されている。マグネサイトとブルーサイトは、焼結過程では、加熱によりMgOへ分解し、初期融液と溶融同化する。
例えば、SiO2・MgO系副原料(蛇紋岩)及びCaO・MgO系副原料(ドロマイト)のいずれをも用いずに、マグネサイト及びブルーサイトの内の1種又は2種をMgO添加源副原料として用い、焼結鉱中のスラグ成分を調整し、SiO2含有率が4.6%以下、塩基度が1.0〜3.0、MgO含有率が0.5%超の高品質低SiO2焼結鉱の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2、5〜7、参照)。
また、この方法において、マグネサイト及びブルーサイトの内の1種又は2種からなるMgO含有副原料の粒径が1mm以下のものの割合が30%未満となるように粒度調整する方法も提案されている(例えば、特許文献3、参照)。
また、水酸化マグネシウムを主成分とする海水マグネシア・クリンカーの製造工程における中間成品を、微粉状又はスラリー状でMgO含有副原料として用いる方法も提案されている(例えば、特許文献4、参照)。
マグネサイト及びブルーサイトは、いずれも、MgO源以外のSiO2、CaO、Al2O3などのスラグ成分が少ないため、蛇紋岩中のSiO2や、ドロマイト中のCaOなどのスラグ成分量に起因する焼結鉱の強度及び被還元性低下の問題を回避することができる。
しかしながら、マグネサイト(MgCO3)は、炭酸マグネシウムを主体とするため、加熱時のMgOへの熱分解(脱CO2ガス化)により大きな吸熱反応が生じ、焼成温度が低下する。
また、熱分解によるCO2ガス発生により鉱物が多孔質化し、生成した融液が鉱物粒子内部に急速に浸透するため、MgOと融液との同化、溶解が速まり、MgOによる融液の高融点化及び融液生成量の減少を招き、その結果、焼結鉱の強度と歩留を低下させる問題があった。
この対策として、特許文献3などでは、MgO含有副原料の粒径が1mm以下のものの割合を30%未満に制限することにより融液中へのMgOの溶解を抑制する方法が提案され、ある程度の効果は得られるものの、焼結鉱の強度及び製品歩留を安定して十分に向上できるものではなかった。
また、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を主成分とするブルーサイト又は海水マグネシア・クリンカーは、炭酸マグネシウム(MgCO3)を主成分とするマグネサイトなどに比べて、加熱焼成時の多孔質化による融液との急激な同化、溶解を抑制できるため、焼結鉱の強度及び歩留の低下は少ない。
しかし、ブルーサイト又は海水マグネシア・クリンカーの粒度が大きい場合には、焼結鉱中に未滓化状態の残留MgOが多くなるため、MgOによる耐還元粉化性及び高温溶融特性を充分に向上することは困難であった。
特に、上述のMgO含有副原料の中で、水酸化マグネシウムを主成分とするブルーサイトは、MgO源以外のスラグ成分が少なく、炭酸マグネシウムを主成分とするマグネサイトに比べて、低イグロス(加熱後質量変化が低い)であり、加熱焼成時の多孔質化に伴うMgOの融液への同化が抑制できる点で有利である。
しかし、ブルーサイトを用いて低スラグ焼結鉱を製造する際に、焼結鉱中のMgO形態による高炉内での焼結鉱の還元挙動、特に、高炉炉下部における焼結鉱の高温溶融特性への影響は解明されておらず、焼結鉱の強度とともに、高炉シャフト部での被還元性及び耐還元粉化性と、高炉炉下部での焼結鉱の高温溶融性を両立させるための焼結鉱の製造条件は、十分に検討されていないのが現状である。
特開平10−273738号公報
特開2000−178659号公報
特開2000−178660号公報
特公昭50−40095号公報
特開2001−294945号公報
特開2001−348622号公報
特開2001−348623号公報
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑みて、焼結鉱を製造する際の生産性や成品歩留を低下させることなく、特に、高炉用原料として要求される冷間強度(タンブラー強度TIで72%以上)、被還元性(JIS−RI)、耐還元粉化特性(RDI)、及び、高温溶融特性(滴下開始温度が1410〜1430℃)などを満足する焼結鉱を製造するための低スラグ焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)MgO含有副原料として、粒径0.25mm以下の割合が25質量%未満で、かつ粒径5mm以上の割合が10質量%未満である粒度分布を有するブルーサイトを、その他の副原料及び鉄含有原料(但し、焼結返鉱及び焼結篩下粉を除く)の合計量に対して、0.5〜2.0質量%配合し、焼結機で焼成することを特徴とするブルーサイトを用いた焼結鉱の製造方法。
(2)前記ブルーサイトの水酸化マグネシウム含有量がMgO換算で50質量%以上であることを特徴とする上記(1)記載のブルーサイトを用いた焼結鉱の製造方法。
(3)前記焼成によって得られた焼結鉱中のMgO含有量が1.0〜1.5質量%、T.Fe量が58.5〜60.5質量%であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のブルーサイトを用いた焼結鉱の製造方法。
本発明によれば、水酸化マグネシウムを主成分とするブルーサイトをMgO含有副原料として用い、焼結原料への配合条件を最適化することにより、焼結鉱を製造する際の生産性や成品歩留を低下させることなく、特に、高炉用原料として要求される冷間強度(タンブラー強度TIで72%以上)、被還元性(JIS−RI)、耐還元粉化特性(RDI)、及び、高温溶融特性(滴下開始温度が1410〜1430℃)などの特性に優れた低スラグ焼結鉱を製造することが可能となる。
そして、本発明により製造された焼結鉱を用いて高炉操業を行なえば、高炉シャフト部内での通気性及び還元性、高炉炉下部内での通気通液性、さらには、高炉炉底部での出滓銑を、良好に維持することができ、低燃料比・高出銑鉄の操業が可能となる。
以下に、本発明の詳細について説明する。
表1に、MgO含有副原料として、代表的な蛇紋岩、ドロマイト、マグネサイト、及び、ブルーサイトに含有する各スラグ成分含有量及びイグロス量(加熱後質量減少量)を示す。
表1に示すように、ブルーサイトは、その主成分がMg(OH)2であり、かつ、MgO以外を含有する不純物量も少ないため、従来から知れているMgO含有副原料の中でもMgO換算量が最も高い。また、MgO以外のスラグ成分を比較すると、ブルーサイト中のSiO2含有量は、蛇紋岩に比べて低く、そのCaO含有量は、ドロマイトに比べて低いことを特徴とする。
MgO含有副原料中のSiO2含有量が多い場合は、焼結組織中に強度及び被還元性を低下させるシリケートスラグ系の結合相が増加し、焼結鉱の強度や成品歩留が低下し、高炉での被還元性などを低下させることが懸念される。
また、MgO含有副原料中のCaO含有量を多くし、その分、CaO含有副原料を低減する場合は、焼成過程におけるカルシウムフェライト(CaO・Fe2O3)融液の生成速度が遅れるので、焼結組織中のカルシウムフェライト主体の結合相が減少し、焼結鉱の強度や歩留を十分に向上させることができない。
また、MgO含有副原料中のMgが炭酸化物の形態で存在するマグネサイトは、炭酸マグネシウムが加熱時に熱分解(脱CO2化)する際のイグロス量(加熱後質量減少量)が大きく、焼成過程での多孔質化に起因する焼結強度及び歩留の低下が大きくなる。
以上の点を踏まえ、本発明は、焼結鉱中のスラグ量低下により冷間強度及び被還元性を向上させ、かつ、MgOにより高炉での焼結鉱の耐還元粉化特性及び高温溶融特性を向上させるために、最もMgO換算量が高く、MgO以外のスラグ成分量が比較的少なく、かつ、イグロス量(加熱後質量減少量)が低い水酸化マグネシウムの形態でMgを含有するブルーサイトを、Mg含有副原料として用いる。
また、ブルーサイトの水酸化マグネシウム含有量は、鉱物によってばらつきがあることから、上記特徴を利用して後述する本願発明の安定した効果を得るために、ブルーサイトの水酸化マグネシウム含有量は、MgO換算量で50質量%以上とすることが好ましい。
また、本発明では、ブルーサイトのSiO2、CaOなどのスラグ成分量が低い特徴を利用して、焼結鉱中の低スラグ化、焼結鉱の強度、成品歩留、及び、被還元性を良好に維持し、かつ、高含有量のMgOを有効に利用し、焼結鉱の耐還元粉化特性及び高温溶融特性を安定的に向上させるために、ブルーサイトの粒度分布を、以下のように限定する必要がある。
図1に、ブルーサイト中に含有する粒径が0.25mm以下の微細粒の割合(a)、又は、粒径が5mm以上の粗粒の割合(b)と、焼結鉱の強度(TI)との関係を示す。
また、図2に、ブルーサイト中に含有する粒径が0.25mm以下の微細粒の割合(a)、又は、粒径が5mm以上の粗粒の割合(b)と、焼結鉱の高温溶融特性(Td)との関係を示す。
なお、焼結鉱の強度は、鍋試験により得られた焼結鉱のTIを測定し、焼結鉱の高温溶融特性は、Tdを測定した。
焼結鉱のタンブラー強度(TI)は、JIS M 8712に準じて測定される。10−40mmに篩い分けた15kgの焼結鉱試料を、回転ドラム内に充填した後、200回転させ、その後、篩い分け、+6.3mmの割合で表示する。
また、焼結鉱の滴下開始温度(Td)は、高炉内の還元を模擬した試験装置(高温荷重軟化装置)を用いて、800gの焼結鉱試料を、所定の温度、還元ガス、荷重条件で加熱した際、試料を装入したるつぼから、メタルが滴下を開始した温度として測定する。
図1から、焼結鉱の強度(TI)は、ブルーサイト中に含有する粒径が0.25mm以下の微細粒の割合が25質量%以上になると、急激に低下し、TIで72%未満に低下する(図1a)。これは、上記微細粒の割合の増加により、焼結過程で生成する融液中へのMgOの溶融割合が増加することにより、融液の融点及び粘度が上昇し、焼結組織中の結合相が不足し、鉄鉱石粒子間の結合が不十分となるためであると考えられる。
また、焼結鉱の高温溶融特性(Td)も、ブルーサイト中に含有する粒径が0.25mm以下の微細粒の割合が25質量%以上になると低下し、滴下開始温度が1410℃未満となる(図1b)。
これは、上記微細粒の割合の増加により、焼結鉱中の滓化されたMgO量が増加するため、高炉融着帯の下部に相当する部位で、焼結鉱から生成するスラグ中のMgO量が増加し、スラグの融点が低くなり流動性が高くなる結果、滴下開始温度を低下させるためのメタルの浸炭が、低温で過度に促進されるためであると考えられる。
したがって、焼結鉱の強度(TI)及び高温溶融特性(Td)を、ともに良好に維持するために、ブルーサイト中に含有する粒径0.25mm以下の微細粒の割合は、25質量%未満とする。
また、図2から解るように、焼結鉱の強度(TI)は、ブルーサイト中に含有する粒径5mm以上の粗粒の割合が増加するほど向上する(図2a)ので、強度向上の点で、粗粒の割合を制限する必要はない。これは、上記粗粒の割合の増加により、焼結過程で生成する融液中へのMgOが抑制され、融液の融点及び粘度が低くなることにより、焼結組織中の結合相が増加し、鉄鉱石粒子間の結合が十分となるためであると考えられる。
しかし、焼結鉱の高温溶融特性(Td)は、ブルーサイト中に含有する粒径5mm以上の粗粒の割合が10質量%以上となると、滴下開始温度が1430℃超となる(図2b)ため、好ましくない。したがって、焼結鉱の高温溶融特性(Td)を良好に維持するために、ブルーサイト中に含有する粒径5mm以上の微細粒の割合は10質量%未満とする。
これは、上記粗粒の割合の増加により、焼結鉱中のスラグに滓化したMgOが減少し、高炉融着帯の下部に相当する部位で、焼結鉱から生成するスラグ中のMgO量が減少し、スラグの融点が高まり流動性が低くなる結果、滴下開始温度を低下させるためのメタルへの浸炭が抑制されるためであると考えられる。
以上から、本発明では、焼結鉱の強度(TI)及び高温溶融特性(Td)を十分に向上するためには、ブルーサイトの粒度分布を、粒径0.25mm以下の割合が25質量%未満で、かつ、粒径5mm以上の割合が10質量%未満となるように規定する。
なお、ブルーサイトの粒度分布を、粒径0.25mm以下の割合が25質量%未満で、かつ、粒径5mm以上の割合が10質量%未満となるように調整する方法は、ブルーサイトの破砕の程度を調整する方法が最も簡便であるが、粉砕した後、篩目が0.25mm及び5mmの篩を用いて篩分けすることにより、行うことも可能である。
また、ブルーサイトを粉砕した後、篩目が0.25mmの篩を用いて篩分けした後に、篩下粉を造粒することにより、粒度分布を調整することも可能である。
また、本発明では、焼結鉱の強度(TI)及び高温溶融特性(Td)を十分に向上するためには、上記ブルーサイトの粒度分布の規定に加えて、ブルーサイトの配合量の割合を、以下のように規定する必要がある。
なお、本発明では、ブルーサイトの配合量の割合を、ブルーサイト以外のその他の副原料及び鉄含有原料(但し焼結返鉱及び焼結篩下粉を除く)の合計量に対する質量%として規定する。
ブルーサイトの配合量が0.5質量%未満になると、焼結鉱中のMgO含有量が低くなり、高炉内での焼結鉱の耐還元粉化特性(RDI)及び高温溶融特性(Td)を十分に向上することは困難となる。
また、ブルーサイトの配合量が0.5質量%未満では、例え、他のMgO含有副原料で焼結鉱中のMgO含有量を高くしても、前述のブルーサイトの、MgO換算量が高く、MgO以外のスラグ成分量が比較的少なく、かつ、イグロス量(加熱後質量減少量)が低い水酸化マグネシウムの形態でMgを含有する特質による、焼結鉱中の低スラグ化、焼結鉱の強度、成品歩留、及び、被還元性を良好に維持し、かつ、高含有量のMgOを有効に利用し、焼結鉱の耐還元粉化特性及び高温溶融特性を安定的に向上させる効果は、十分に発揮できない。
一方、ブルーサイトの配合量が2.0質量%を超えると、焼結過程で生成する融液中に溶解するMgO量が増加し、融液の融点が高まり、粘性が低下し、焼結鉱石の結合相が不足し、鉱石粒子間の結合が不十分となるため、焼結鉱の強度や歩留が低下する。
このため、ブルーサイトの配合量の上限は、その他の副原料及び鉄含有原料(但し焼結返鉱及び焼結篩下粉を除く)の合計量に対して、2.0質量%とする必要がある。
したがって、焼結鉱の強度(TI)、成品歩留、高炉内での焼結鉱の耐還元粉化特性(RDI)及び高温溶融特性(Td)を十分に向上するためには、ブルーサイトの配合量を、その他の副原料及び鉄含有原料(但し焼結返鉱及び焼結篩下粉を除く)の合計量に対して、0.5〜2.0質量%とする。
図3に、鍋試験により得られた焼結鉱中のT.Fe量と焼結鉱の強度(TI)又は焼結鉱の高温溶融特性(Td)との関係を示す。
なお、ブルーサイトは、粒径0.25mm以下の割合が19.8質量%、粒径5mm以上の割合が4.2質量%の粒度分布を有するものを用いた。
図3から、焼結鉱の強度(TI)は、T.Feが60.5質量%以上となると、急激低下し、TIで72%未満に低下することが解る(図3a)。
これは、焼結鉱中のT.Fe量が60.5質量%以上に増加すると、焼成過程において融液の生成量が過度に減少するため、焼結鉱の強度を維持するための結合相が減少するためであると考えられる。
また、焼結鉱の高温溶融特性(Td)は、T.Feが58.5質量%以下となると滴下開始温度が1410℃未満に低下し、また、T.Feが60.5質量%以上となると滴下開始温度が1430℃超となり、何れの場合も、高温溶融特性(Td)は悪化する(図3)。
これは、焼結鉱中のT.Fe量が58.8質量%未満にまで低下すると、焼結鉱中の被還元性が低下するとともに、スラグ量も増加するため、高炉融着帯の下部に相当する部位で、焼結鉱から生成する未還元FeOを含むスラグ量が増加する結果、生成メタルの過度の凝集を促すうえ、生成スラグのメタル相からの分離も進む結果、滴下開始温度が低下することによる。
この場合、メタルと随伴して滴下するスラグ量も増加するため、吸熱反応であるスラグ中のFeOの直接還元が滴下後に起こり、炉下部の熱容量を奪うため、好ましくない。逆に、焼結鉱中のT.Fe量が60.5質量%を超えるまで増加すると、高炉融着帯の下部に相当する部位で、スラグ量が減少する結果、生成メタルの浸炭が遅れる結果、メタルの滴下開始温度が上昇すると考えられる。
したがって、焼結鉱の強度(TI)及び高温溶融特性(Td)を、ともに良好に維持するためには、焼結鉱中のT.Feを58.5〜60.5質量%とする必要がある。
本発明では、焼結鉱中のMgO含有量が1.0質量%未満になると、高炉内での焼結鉱の耐還元粉化特性(RDI)及び高温溶融特性(Td)を十分に向上することは困難となる。
一方、焼結鉱中のMgO含有量が1.5質量%を超えると、焼結過程で生成する融液中のMgO量が増加し、融液の融点が高まり、粘性が低下し、焼結鉱石の結合相が不足し、鉱石粒子間の結合が不十分となるため、焼結鉱の強度や歩留が低下する。
したがって、焼結鉱の強度(TI)、成品歩留、高炉内での焼結鉱の耐還元粉化特性(RDI)及び高温溶融特性(Td)を十分に向上するためには、焼結鉱中のMgO含有量を1.0〜1.5質量%とする。
以下、実施例により本発明の効果について説明する。
[実施例1]
鍋試験により、表2に示す粒度及びMgO換算量を有する蛇紋岩、ドロマイト、マグネサイト、ブルーサイトのMgO含有副原料を、表3に示す焼結原料に対して、表2に示す配合割合で配合し、その後、焼成し、焼結鉱を製造した。
なお、焼結原料は、表3に示すように7種類の鉄鉱石を一般的な条件の混合比で配合し、新原料(副原料と、返鉱、粉コークスを除く鉄含有原料との合計)に対して、返鉱を20質量%、粉コークスを5質量%の割合で配合した。焼結鉱中のT.Feの質量%が所定の値となるよう、石灰石と珪石の配合割合を調整した。
得られた焼結鉱については、強度(TIタンブラー強度)、還元粉化性(RDI)、被還元性(JIS−RI)を測定し、さらに、高炉内の還元を模擬した模擬試験装置(高温荷重軟化装置)で高温溶融特性(滴下開始温度Td)を測定し、評価した。
なお、焼結鉱の還元粉化性(RDI)は、JIS M8720に準じて測定する。16−20mmに篩い分けた500gの焼結鉱試料を、550℃のもとで、COを30%、N2を70%含む還元ガスで30分間還元し、その後に、回転ドラム内に充填し、900回転させた後、篩い分け、−2.83mmの割合で表示する。
また、焼結鉱の被還元性(JIS−RI)は、JIS M8713に準じて測定する。19.0−22.4mmに篩い分けた500gの焼結鉱試料を、900℃のもとで、COを30%、N2を70%含む還元ガスで180分間還元した後、還元前の被還元酸素量に対する還元酸素量の割合で表示する。
表2から解るように、蛇紋岩を配合したNo1の比較例は、粒度分布は本発明の範囲を満足しているが、副原料中のMgO換算量が低く、かつ、SiO2量が高いため、焼結鉱の強度と歩留の低下が顕著であり、被還元性も低下した。
ドロマイトを配合したNo2の比較例は、粒度分布は本発明の範囲を満足しているが、副原料中のMgO換算量が低く、かつ、CaO量が高いため、焼結鉱の強度と歩留の低下が顕著であった。
マグネサイトを配合したNo6の比較例では、粒度分布は本発明の範囲を満足しているが、副原料中のMgO換算量が低く、かつ、炭酸マグネシウムの形態でMgO源が存在するため、焼結鉱の滴下開始温度が低下し、強度と歩留の低下も見られた。
粗粒の割合が本発明の規定範囲より高いブルーサイトを配合したNo3、5及び8の比較例では、焼結鉱の強度と歩留は良好であったが、顕著な滴下開始温度の上昇が見られた。
微細粒の割合が本発明の規定範囲より高いブルーサイトを配合したNo4、7の比較例では、焼結鉱の強度と歩留の低下が顕著に見られ、滴下開始温度も適正範囲より低くなった。
ブルーサイトの配合割合が本発明の規定範囲より低いNo9の比較例では、焼結鉱の耐還元粉化特性が悪化し、滴下開始温度も適正範囲より高くなった。
ブルーサイトの配合割合が本発明の規定範囲より高いNo10の比較例では、焼結鉱の強度と歩留の低下が見られた。
一方、No11〜14は、本発明で規定する粒度分布、配合割合を満足するブルーサイトを配合した発明であり、焼結鉱の強度と歩留が良好であり、かつ耐還元粉化特性及び高温溶融特性も良好であった。
[実施例2]
上記のブルーサイトを、焼結のMgO原料として配合し、焼結鉱の品質、生産効率、及び、高炉操業成績を有効面積600m2の焼結機と有効容積5500m3の高炉において、調査した。結果を表4に示す。各水準は約1ヶ月間の操業結果の平均を示した。
最初MgO含有副原料として蛇紋岩を配合した条件で操業を実施した後、表4に示すように焼結鉱のMgOを1.2質量%に保ちながら、MgO含有副原料として、蛇紋岩からブルーサイトに置換しつつ、石灰石と珪石の配合を調整して、T.Feを増加させた。その結果、表4に示すように、焼結鉱の強度と歩留を維持しながら、焼結鉱の低スラグ化による被還元性向上によりシャフト効率が改善された。
さらに、滴下開始温度Tdも過度に上昇することなく適性温度範囲に保たれたので、炉下部の通気性を良好に保つことができた。以上の結果、出銑比が上昇し、還元材比を低下することができた。
にブルーサイト中に含有する粒径が0.25mm以下の微細粒の割合(a)、又は、粒径が5mm以上の粗粒の割合(b)と、焼結鉱の強度(TI)との関係を示す図である。
ブルーサイト中に含有する粒径が0.25mm以下の微細粒の割合(a)又は、粒径が5mm以上の粗粒の割合(b)と、焼結鉱の高温溶融特性(Td)との関係を示す図である。
焼結鉱中のT.Fe量と焼結鉱の強度(TI)、又は、焼結鉱の高温溶融特性(Td)との関係を示す図である。