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JP2007314689A - 水性塗料組成物 - Google Patents

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JP2007314689A
JP2007314689A JP2006146755A JP2006146755A JP2007314689A JP 2007314689 A JP2007314689 A JP 2007314689A JP 2006146755 A JP2006146755 A JP 2006146755A JP 2006146755 A JP2006146755 A JP 2006146755A JP 2007314689 A JP2007314689 A JP 2007314689A
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Satoshi Okamoto
岡本  聡
Toshio Kaneko
敏雄 金子
Yoshiaki Okumura
美明 奥村
Hisaichi Muramoto
壽市 村本
Eisaku Okada
栄作 岡田
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Nippon Paint Co Ltd
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Abstract

【課題】化成処理液およびカチオン電着塗料組成物の両工程を短縮統合する複層塗膜形成方法に最適な水性塗料組成物の提供。
【解決手段】(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、(B)硬化剤および(C)希土類金属化合物を含有する水性塗料組成物であって、該没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)が、(a)式
【化1】
Figure 2007314689

(式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。)を有する、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(b)1価の活性水素化合物;(c)2価の活性水素化合物;(d)没食子酸および(e)第2級モノアミン化合物を反応させて得られる、数平均分子量1,000〜5,000の樹脂であることを特徴とする水性塗料組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性塗料組成物に関する。特に、本発明は、金属素材、とりわけ未処理冷延鋼板に施される電着塗装前の前処理(下地処理)工程と、電着塗装工程とが統合することができる水性塗料組成物に関する。
自動車車体は、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板等の金属素材を成形し、この金属成形物を被塗物として塗装し、次いで組み立て等を行うことにより製造される。このような金属成形物は一般に、電着塗膜に対する密着性等を付与するために、電着塗装前にリン酸亜鉛化成処理等の防錆処理が行われている。
カチオン電着塗料組成物を用いる電着塗装は、耐食性、つきまわり性に優れており、均一な塗膜を形成させることができるため、自動車車体、部品用プライマーを中心に広く使用されている。
しかしながら、従来のカチオン電着塗料組成物においては、被塗物にリン酸亜鉛などの前処理がなされている素材に対しては、電着塗装により十分な耐食性を発現させることができるものの、被塗物の前処理(化成処理など)が不十分である場合は、耐食性確保が困難であるという問題があった。
特開平8−53637号公報(特許文献1)には、カチオン基を有する親水性フィルム形成性樹脂および硬化剤を、中和剤を含む水性媒体中に分散してなる陰極電着塗料組成物において、塗料固形分を基準にして、アルミニウム塩、カルシウム塩および亜鉛塩より選ばれた少なくとも1種のリンモリブデン酸塩を0.1〜20重量%、およびセリウム化合物を金属として0.01〜2.0重量%含むことを特徴とする陰極電着塗料組成物が記載されている。これにより、表面未処理冷延鋼板に対する耐食性を改良可能することができると記載されている。
特開平8−53638号公報(特許文献2)には、カチオン基を有する親水性フィルム形成性樹脂および硬化剤を、中和剤を含む水性媒体中に分散してなる陰極電着塗料組成物において、塗料固形分を基準にして、銅化合物およびセリウム化合物を金属として合計0.01〜2.0重量%含み、金属として銅/セリウム重量比が1/20〜20/1であることを特徴とする陰極電着塗料組成物が記載されている。これも同様に、表面未処理冷延鋼板に対する耐食性を改良可能することができると記載されている。
しかしながら、上記電着塗料組成物を用いる塗装はいずれも、印加電圧100〜450V条件の一段階電着塗装による一段階電着塗装が行われている。このような電解、電着条件においては、セリウムあるいはセリウム―銅による皮膜形成が不充分となる。そのため、これらの発明による耐食性の改良レベルは、何れも、従来のリン酸塩による従来化成処理に匹敵する下地密着性を発現し、かつ電着塗装後における耐食性を発現する程には至っていない。
現状としては、前処理工程および電着塗装工程において、それぞれ別個の溶液である化成処理液およびカチオン電着塗料組成物は、それぞれの液中に含まれる成分を安定に溶解あるいは分散するpHの領域が異なる。そのため、これらの工程を組み合わせることは容易ではなかった。さらに、電着塗装においては、化成処理剤が少量でも混入するとによって、塗装効率、防食性能および仕上がり外観等に悪影響が生じる。そのため、被塗物を前処理した後、電着塗装を行う前に、被塗物を念入りに水洗する必要がある。このため、前処理および電着塗装は、より長大な塗装工程設備を必要としていた。
特開2000−63710号公報(特許文献3)には、電着塗装に適する水性塗料組成物が開示されており、その中で希土類金属化合物が、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、及びサマリウム(Sm)からなる群より選択される化合物が開示されている。
しかしながら、上記複層塗膜形成方法にこれらの希土類金属化合物を含む水性塗料組成物を適用しても、現行の前処理、電着塗装よりなる2段工程と比較して、同等の性能を有する複層塗膜を得る目的に対しては、必ずしも充分ではなかった。
特開平8−53637号公報 特開平8−53638号公報 特開2000−63710号公報
本発明は、上記の現状に鑑み、従来は別々の化成処理液およびカチオン電着塗料組成物を用いて、前処理およびカチオン電着塗装を行っていたのに対して、両工程を画期的に短縮統合する複層塗膜形成方法に最適な水性塗料組成物の提供を目的とする。
本発明は、少なくとも(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、(B)硬化剤および(C)希土類金属化合物を含有する水性塗料組成物であって、該没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)、(a)式
Figure 2007314689
(式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。)を有する、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(b)1価の活性水素化合物;(c)2価の活性水素化合物;(d)没食子酸および(e)第2級モノアミン化合物を反応させて得られる、数平均分子量1,000〜5,000の樹脂であることを特徴とする水性塗料組成物に関するものである。
また上記(B)硬化剤は、ブロックポリイソシアネートであることを特徴とする水性塗料組成物に関するものである。
上記希土類金属化合物(C)は、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選択される少なくとも1種の希土類金属を含む化合物である、水性塗料組成物に関するものである。
ここで、上記希土類金属化合物(C)は、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して0.05〜10重量%含まれていることが好ましい。
本発明の水性塗料組成物は、さらに亜鉛化合物(D)を含んでいると一層好ましく、希土類金属化合物(C):亜鉛化合物(D)の配合重量比は、1:20〜20:1であることが好ましい。
本発明は、一種の水性塗料組成物を用いて、少なくとも2段階の印加電圧にて通電することによって、陰極電解処理(前処理工程)及び電着塗装工程を実用的に区分かつ連続的に実施し、かつ効率的に統合する上で最適の水性塗料組成物を提供する。これにより、従来の化成処理などの前処理、そして電着塗装からなる塗装工程を、大幅に短縮することができるばかりか、従来の工程である化成処理および電着工程により得られる塗膜と比較して同等の優れた塗膜密着性および耐食性(塩水噴霧、塩水浸漬、および乾湿サイクル腐食試験などに対する性能が優れる)である複層塗膜を得ることが可能である。
本発明の方法によれば、従来、電着塗装の前に実施されていた前処理工程(特に、化成処理工程)を削減することができるか、あるいは化成処理を行っても工程を大きく短縮(即ち、処理時間の短縮や水洗時間の短縮など)することができ、技術的効果が大きい。また、電着塗装工程では、前処理のための低電圧印加工程が追加されるが、印加電圧を変化させるだけで、前処理と塗装処理とを連続することができるので、低電圧印加工程の追加は殆ど電着塗装工程に実質的な影響を与えない。
以下、本発明の水性塗料組成物について詳述する。
成分(A)
本発明の水性塗料組成物に含まれる没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)は、(a)式
Figure 2007314689
(式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。)を有する、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(b)1価の活性水素化合物;(c)2価の活性水素化合物;(d)没食子酸および(e)第2級モノアミン化合物を反応させて得られる、数平均分子量1,000〜5,000の樹脂であり、従来の没食子酸を変性しないカチオン性樹脂を含むバインダーと比較してより防食性が極めて高く、上記複層塗膜形成方法によって、高耐食性能を有する塗膜を得ることができることを見出した。
本発明の水性塗料組成物に用いられる没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)は、(a)式
Figure 2007314689
(式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。)を有する、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に、(b)1価の活性水素化合物と(c)2価の活性水素化合物を出発樹脂(a)のエポキシ基に対して1未満の当量比で反応させて反応中間体(X)を得た後、さらに(d)没食子酸および(e)第2級モノアミン化合物を(a)、(b)および(c)の反応生成物中に残っているエポキシ基を開環するように該反応生成物に反応させることにより得られるものである。
また上記(b)1価の活性水素化合物は、モノカルボン酸化合物、モノアルコール化合物、モノフェノール化合物又はモノチオール化合物である。
さらに上記(c)2価の活性水素化合物は、ジオール化合物、ジカルボン酸化合物、二官能ポリエステルポリオールまたは二官能ポリエーテルポリオールである。
以下に上記(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の製造方法を述べる。
本発明の水性塗料組成物に用いられる(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、基本的に、以下に説明する成分(a)〜(e)を配合し反応せしめることによって製造されるものである。但し、没食子酸(成分(d))とエポキシ樹脂(具体的には、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(a))との反応は反応順序や反応量について後述のするような制御が必要である。
成分(a)
成分(a)は分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂であり、一分子中にエポキシ基を2個含むエポキシ化合物である。この成分(a)のエポキシ化合物は、本発明の樹脂の基本骨格をなす構成要素の一つであり、樹脂組成物からなる水性塗料塗膜の防食性を左右する。そのために本発明において、成分(a)は、数平均分子量300〜2,000の範囲における、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂であることが極めて重要である。特開平5−306327号公報に記載される様に、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、樹脂のガラス転移温度が高いにもかかわらず、熱流動性が優れているため、塗膜の平滑性を損なうことなく耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られる。
分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(成分(a))は、ポリエポキシ化合物とブロックジイソシアネート化合物とを反応させる方法(I)と、ブロック化されていないジイソシアネート化合物を直接ポリエポキシ化合物と反応させる方法(II)がある。方法(I)および(II)のどちらも採用し得るが、方法(II)はジイソシアネートの三量化など副反応が起こり易いため、方法(I)が好ましい。
ポリエポキシ化合物は、具体的には、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ(株)、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3,000〜4,000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807(同、エポキシ当量170)などがある。
ビスフェノール型エポキシ樹脂のほか、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、および脂肪族、脂環族もしくは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルも使用することができる。
ジイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族および脂環族ジイソシアネートを使用し得る。
方法(II)ではこれらジイソシアネート化合物を直接ポリエポキシ化合物と反応させるが、好ましい方法(I)ではこれらジイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたブロックジイソシアネートを使用する。このためブロック剤であらかじめジイソシアネートをブロックした後にエポキシ化合物と混合し反応させても良いし、エポキシ化合物にブロック剤を溶解させておき、イソシアネートを加えることによりエポキシ化合物存在下で、ブロックジイソシアネートを発生させた後、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を合成することも可能である。
使用し得るプロック剤はこの分野では良く知られており、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、シクロヘキサノール等の脂肪族アルコール;フェノール、ニトロフェノール、エチルフェノール等のフェノール類;メチルエチルケトオキシムなどのオキシム類;ε−カプロラクタム等のラクタム類を含む。
ブロックジイソシアネートnモルに対し、ジエポキシ化合物n+1の反応により鎖中に複数のオキサゾリドン環を有し、末端エポキシ基を有するオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂が得られる。反応温度は好ましくは60℃〜200℃である。反応が進行するにつれジイソシアネート化合物のブロック剤が再生されるが、これは系内にそのまま存在させてもよいし、デカンター等を使用して系外へ除去することもできる。
エポキシ化合物とカルバミン酸エステル(ウレタン)との反応による2−オキサゾリジノン化合物の合成法において、触媒として第三級アミンを使用することにより反応を円滑に進行させることができる。この原理はブロックイソシアネート化合物とポリエポキシ化合物との反応にも有利に適用することができる。この目的に使用し得る三級アミンとしては、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、ピリジン、キノリン、イミダゾールなどがある。
第3級アミンに加え、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ、塩化第一スズ、オクテン酸スズ、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、1,3−ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン、1,3−ジクロルテトラブチルジスタノキサン、ジブチルジブトキシスズ等のスズ化合物を併用してもよい。
成分(a)の分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の分子量が300を下回ると、最終生成物である本発明の水性塗料用樹脂の分子量が過度に低くなる結果、バインダー樹脂から硬化形成される塗膜の強度等の機械的物性が低下する恐れがある。また分子量が2,000を上回ると、本発明の水性塗料用樹脂の分子量が過度に高くなる結果、バインダー樹脂の熱フロー時における高粘度のために硬化形成される塗膜の肌(外観)不良を招く恐れがある。
成分(b)
成分(b)の1価の活性水素化合物は、モノカルボン酸化合物、モノアルコール化合物、モノフェノール化合物又はモノチオール化合物である。これらは主に成分(a)中に残存するエポキシ基の一部と付加反応し、本発明の樹脂にアルキル基を導入するための構成要素である。
本発明の樹脂を水性媒体中に分散する場合に、成分(b)の分子中の該当するアルキル基に基づく疎水性を付与し、後述の成分(e)によって導入される3級アミノ基に基づく親水性とバランス化させることによって、適度な乳化分散性を樹脂分子に付与するために有効である。
従って、成分(b)であるモノカルボン酸化合物、モノアルコール化合物、モノフェノール化合物又はモノチオール化合物は適当な大きさのアルキル基を有することが好ましい。アルキル基の大きさは炭素数4〜18程度が好ましい。
成分(b)の例としては、モノカルボン酸として、n−ブタン酸、n−ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクチル酸、2−エチル3−メチル5,5’−ジメチルヘキサン酸、ヤシ油、ダイズ油あるいはアマニ油等の植物性脂肪酸;モノアルコールとして、n−ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n―オクチルアルコール、n−ステアリルアルコール、n−ドデシルアルコール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル;モノフェノールとして、ノニルフェノール;モノチオールとして、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等が挙げられる。
成分(c)
成分(c)の2価の活性水素化合物は、成分(a)であるエポキシ化合物と相互に連結反応することで、本発明の樹脂の基本骨格となる線状高分子を形成するために必要な構成要素である。具体的には、ジオール化合物、ジカルボン酸化合物、二官能ポリエステルポリオールまたは二官能ポリエーテルポリオールである。
成分(c)の例としては、ジオール化合物として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルカンジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)あるいは1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシン)等の芳香族ジオール;ジカルボン酸として、コハク酸,アジピン酸,アゼライン酸,ドデカン二酸,ダイマー酸,C18−C20長鎖脂肪族ジカルボン酸、末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸ポリカルボン酸またはその無水物とポリオールとのエステル化反応により得られる二官能ポリエステルポリオール、ポリオールを開始剤とするカプロラクトンの重合反応によって得られる二官能ポリカプロラクトンポリオール等の二官能ポリエステルポリオール(分子量300〜3,000);およびポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、それらのランダムまたはブロック共重合体などの二官能ポリエーテルポリオール(分子量300〜3,000)などが挙げられる。
成分(e)
成分(e)は第2級モノアミン化合物である。この第2級モノアミン化合物は、主に成分(a)中に存在するエポキシ基の一部と付加反応し、本発明の樹脂に第3級アミノ基を導入するものである。第3級アミノ基は、たとえば、有機又は無機酸と中和することによって親水性基を成し、樹脂を水中に分散させるために必要な構成要素である。
この際に成分(e)は一分子中に少なくとも1個の1級水酸基を有する、少なくとも1種類の第2級アミン(e1)を含んでいることが好ましい。これは本発明の水性樹脂が水性塗料塗膜を形成する場合、例えば、塗料組成物中に別途存在するブロックイソシアネートに代表される架橋剤と相互に架橋反応する樹脂構成要素となるからである。その例としては、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、4−(メチルアミノ)ブタノール、4−(エチルアミノ)ブタノール、ジエタノールアミン、ジブタノールアミン等を挙げることができる。
成分(e)はその他に、一分子中に炭素数2〜18の範囲のアルキル基を有するジアルキルアミン(e2)を含んでいてもよい。その例としては、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、メチルブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ジn−オクチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−メチルラウリルアミン、N−エチル−イソ−アミルアミン、ジステアリルアミン等を挙げることができる。
それ以外の第2級モノアミンとしては、ジフェニルアミン、ジベンジルアミンあるいはアミノエチルエタノールアミン・メチルイソブチルケチミン、ジエチレントリアミン・メチルイソブチルジケチミンの様なケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン(e3)も必用に応じて使用することができる。
また、これら成分(e)とは別にトリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酸塩などの第3級アミン酸塩の所定量を反応させ、樹脂骨格に第4級アンモニウム塩基を必要に応じて一部導入してもかまわない。
さらに、合成樹脂の分子量調整のための鎖長延長剤として、第1級アミンを一部導入してもかまわない。
成分(d)
成分(d)は没食子酸(1,3,5−トリヒドロキシ安息香酸)であり、この多価フェノールカルボン酸化合物は、本発明の樹脂に対して、例えば電着塗料を成した際に、形成される塗装塗膜の防食性を著しく向上させる上で、極めて重要な構成要素である。
没食子酸は、被塗物である鋼材表面に発生した水酸化鉄、酸化鉄等から成る錆に浸透し、ポリフェノール(ピロガロール)性水酸基により錆とキレートを形成して、錆を安定化すると同時に錆の進行を防止し、さらに上記水酸基の還元作用による赤錆を安定な黒錆に転化する防食作用が広く知られている、天然物タンニンの加水分解生成物から誘導される有用な化合物である。
本発明は、この有用な化合物の効果を最大限に発揮するための樹脂製造方法を提供するものであるが、本発明の水性塗料用樹脂を製造しようとする際に、例えば成分(a)における2官能性エポキシ化合物と、成分(d)における3官能以上の多価フェノール化合物とをそのまま反応させると、実際には反応系の著しい粘度上昇やゲル化が懸念されるなど反応制御が困難である。
また同時に、上記防食機能を有するポリフェノール性水酸基の多くが、反応により消失することとなり、期待する防食機能が十分に発現されない恐れがある。
従って、それを回避するために、本発明では上記の製法上の課題を解決するための新規な製造上の手段を提供している。次に本発明の樹脂の製造方法について具体的に説明する。
製法
成分(a)〜(e)を樹脂構成要素として反応させる場合においては、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に、(b)1価の活性水素化合物と(c)2価の活性水素化合物を出発樹脂(a)のエポキシ基に対して1未満の当量比で反応させて適度な分子鎖長延長を行うことにより反応中間体(X)を得る。この反応中間体の合成段階においては、上述の理由により(d)没食子酸は配合しない。
次いで(e)第2級モノアミン化合物を反応中間体(X)中に残っているエポキシ基を開環するように反応させる際に、(d)没食子酸を同時に反応させる。
その際に、アミン化合物添加に伴う塩基性雰囲気下において、没食子酸のカルボキシル基と樹脂のエポキシ基との反応選択性が向上し、没食子酸のフェノール性水酸基と樹脂中のエポキシ基との反応が抑制されると推定されるが、反応系の著しい粘度上昇やゲル化が回避されることを見出した。
その際に、反応中間体(X)中のエポキシ基に対して、(d)没食子酸と(e)第2級モノアミンがほぼ当量となるように配合し、付加反応させることが好ましい。
上記一連の樹脂合成反応を行うにあたり、出発原料となる(a)分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜1,000のものを選択することが好ましい。前記のように成分(a)の好ましい平均分子量範囲が300〜2,000だからである。
次に(b)1価の活性水素化合物と(c)2価の活性水素化合物を出発樹脂(a)のエポキシ基に対して1未満の当量比で反応させて反応中間体(X)を得るが、その残存エポキシ当量は500〜3,000になるように設計することが好ましい。反応中間体(X)のエポキシ当量が500未満では、合成樹脂の仕上がり粘度が低すぎる、あるいは同エポキシ当量が3,000を超えると、合成樹脂の仕上がり粘度が高すぎる、などの理由で水性塗料組成物の設計上好ましくない。
さらに、反応中間体(X)に(d)没食子酸及び(e)第2級モノアミンを反応させるにあたり、反応中間体(X)中のエポキシ基1当量当たり(d)没食子酸が0.02〜0.5当量、好ましくは0.05〜0.3当量となるような割合で反応を行うのが好ましい。没食子酸の反応当量が0.05未満であると、没食子酸の付加変性量が不足するために、目的とする没食子酸による防食効果がなくなる。また0.5当量を超えると、相対して(e)第2級アミンの反応当量が0.5当量未満と過度に少なくなり、仕上がる合成樹脂の水分散性が不足するために、目的の水性塗料組成物の調製が不可能になる恐れがある。
本発明における水性塗料用樹脂の製造方法においては、反応中間体形成後のアミン変性の際に、同時に没食子酸変性を行うことによって反応を制御し、没食子酸の複数水酸基と樹脂のエポキシ基との反応による反応系の著しい粘度上昇やゲル化などの懸念される不良現象を実用上防止できることが判った。また同時に、上記防食機能を有するポリフェノール性水酸基の多くが、反応により消失することが無いため、期待する防食機能が十分に発現されるようになった。
没食子酸は、水性塗料用樹脂中に、樹脂固形分に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.4〜4重量%の量で配合される。没食子酸の量が上記上限を超えると、親水性が高くなり、防食性が発揮されなくなる。
上記のように本発明の水性塗料用樹脂は、エポキシ基体樹脂へのオキサゾリドン環の含有に加えて、没食子酸変性によるキレート化作用、及びアルカリ雰囲気下における還元作用による非常に高い耐食性、耐熱性が付与できる。
没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)
本発明の水性塗料組成物の成分(A)の樹脂は、水性塗料用樹脂、即ち没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)であり、数平均分子量が1,000〜5,000の範囲、好ましくは1,200〜4,000、より好ましくは1,500〜3,000となるように調製することが好ましい。数平均分子量が1,000未満の場合は、硬化形成塗膜の耐溶剤性及び耐食性等の物性が劣ることがある。反対に5,000を超える場合は、樹脂溶液の粘度制御が難しく合成が困難なばかりか、得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難となることがある。さらに高粘度であるがゆえに加熱・硬化時のフロー性が悪く塗膜外観を著しく損ねる場合がある。
上記水性塗料用樹脂は、ヒドロキシル価(KOH換算mg/g樹脂固形分)が50〜250の範囲となるように分子設計することが好ましい。ヒドロキシル価が50未満では塗膜の硬化不良を招き、反対に250を超えると硬化後塗膜中に過剰の水酸基が残存する結果、耐水性が低下することがある。ヒドロキシル価は好ましくは60〜240、より好ましくは80〜220である。
また上記水性塗料用樹脂は、アミン価(KOH換算mg/g樹脂固形分)が40〜150の範囲となるように分子設計することが好ましい。アミン価が40未満では前記酸中和による水媒体中での乳化分散不良を招き、反対に150を超えると硬化後塗膜中に過剰のアミノ基が残存する結果、耐水性が低下することがある。より好ましいアミン価は、50〜120である。更に好ましいアミン価は、50〜100である。
成分(B)
本発明における硬化剤(B)としては、加熱時に樹脂成分を硬化させることが可能であれば、どのような種類のものでも良いが、その中でも電着樹脂の硬化剤として好適なブロックポリイソシアネートが推奨される。
上記ブロックポリイソシアネートの原料であるポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらを適当な封止剤でブロック化することにより、上記ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
上記封止剤の例としては、n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(又は芳香族)アルコール類、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類、フェノール、パラーt−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類、ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、及びε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。とくにオキシム類及びラクタム類の封止剤は低温で解離するため、低温硬化性の観点から好適である。
上記ブロックポリイソシアネートは封止剤の単独あるいは複数種の使用によってあらかじめブロック化しておくことが望まれる。ブロック化率については、あらかじめ樹脂組成物と反応させる目的がなければ、塗料の貯蔵安定性確保のためにも100%にしておくことが好ましい。
上記没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)は、該樹脂中のアミノ基を適当量の塩酸、硝酸、次亜リン酸等の無機酸、または蟻酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸、アセチルグリシン酸等の有機酸で中和処理し、カチオン化エマルションとして水中に乳化分散させることによって調製される。また乳化分散する際には、通常、(B)硬化剤をコアとし、(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂をシェル(殻)として含むエマルション粒子を形成させる。
該エマルション粒子の平均粒子径は、0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.3μm、より好ましくは0.05〜0.2μmである。平均粒子径が0.01μm未満であると、樹脂成分を水分散するのに必要な中和剤が過量となり、一定電気量あたりの電着塗着効率が低下する。また平均粒子径0.5μmを超えると、粒子の分散性が低下するために、電着塗料の貯蔵安定性が低くなるので好ましくない。
成分(C)
本発明で用いられる水性塗料組成物に含まれる希土類金属化合物(C)は、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選択される少なくとも1種の希土類金属を含む化合物であるのが好ましい。このうちより好ましい希土類金属としては、イッテルビウム(Yb)、ネオジム(Nd)、及びプラセオジム(Pr)である。これらの希土類金属を含む希土類金属化合物が水性塗料組成物に含まれることによって、下地密着性に優れた前処理皮膜を得ることができる。
上記希土類金属化合物(C)としては、水溶性であるか又は水分散性である化合物を使用することができる。なかでも、水に対する溶解度が1g/dm以上である水可溶性化合物を用いる場合は、少量の使用で高い耐食効果が得られるため、好ましい。これを用いることにより、鉛化合物と同等、又はそれ以上の優れた防食性を有する塗膜が得ることができる。
好ましい希土類金属化合物(C)としては、例えば、蟻酸セリウム、蟻酸イットリウム、蟻酸プラセオジム、蟻酸イッテルビウム、酢酸セリウム、酢酸イットリウム、酢酸プラセオジム、酢酸ネオジム、酢酸イッテルビウム、乳酸セリウム、乳酸イットリウム、乳酸イッテルビウム、乳酸ネオジム、乳酸プラセオジム、シュウ酸イッテルビウム等の有機酸塩;硝酸セリウム、硝酸イットリウム、硝酸ネオジム、硝酸サマリウム、硝酸イッテルビウム、硝酸プラセオジム、アミド硫酸ネオジム、アミド硫酸イッテルビウム等の無機酸塩又は無機化合物等を挙げることができる。希土類金属化合物(C)として、希土類金属の硝酸塩を用いるのがより好ましい。
本発明の複層塗膜形成方法に用いられる水性塗料組成物は、希土類金属化合物(C)に加えてさらに亜鉛化合物(D)を含有していてもよい。さらに亜鉛化合物(D)が含まれることによって、前処理工程における電解反応生成物として、アルカリ難溶性の希土類金属―亜鉛の複合化合物を形成することができる。このため、複層塗膜のより高い密着性および電着塗装後の防錆性を発現することができる。
希土類金属化合物(C)と併用する目的の亜鉛化合物(D)としては、例えば蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛などのカルボン酸塩、硝酸亜鉛あるいは硫酸亜鉛などの無機酸塩に代表される水溶性塩が挙げられる。さらに、塗料組成物中で亜鉛イオンを生じる酸化亜鉛と縮合リン酸亜鉛との複合化合物、および(ポリ)リン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛などを用いることもできる。これらの亜鉛化合物は、一般に顔料(水分散性化合物)として用いることができるものである。
上述のように希土類金属化合物(C)および亜鉛化合物(D)は、いずれも水溶性もしくは水分散性化合物であるのが好ましい。
希土類化合物(C)に加えて亜鉛化合物(D)を使用する場合は、希土類金属の重量:銅または亜鉛の重量比が1:20〜20:1で配合されていることが好ましい。
希土類金属の重量:亜鉛の重量の比が上記範囲を超える場合は、複合化合物の形成による密着性および耐食性の向上効果が低下する恐れがある。なお、上記重量比は、希土類金属化合物(C)、及び亜鉛化合物(D)それぞれに含まれる金属量を算出し、各成分の金属量の重量比を示したものである。
本発明に用いられる水性塗料組成物は、水性塗料組成物中に含まれる希土類金属化合物(C)の量が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して合計0.05〜10重量%である。
水性塗料組成物がさらに亜鉛化合物(D)を含む場合は、これらの金属は、塗料固形分に対して、金属量に換算して、合計0.05〜10重量%含むことが好ましい。金属換算量が0.05重量%未満では、十分な下地防錆に基づく耐食性が得られない場合がある。また、金属換算量が10重量%を超えると、水性塗料組成物成分の分散安定性や電着塗膜の平滑性および耐水性が低下する場合がある。希土類金属(C)の金属換算量、希土類金属化合物(C)および亜鉛化合物(D)の金属換算量は、より好ましくは0.08〜8重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
上記希土類金属化合物(C)、希土類金属化合物(C)および亜鉛化合物(D)の、水性塗料組成物への導入は、特に制限されるものではなく、通常の顔料分散法と同様にして行うことができる。例えば、分散用樹脂中に予め希土類金属化合物(C)、そして必要に応じた亜鉛化合物(D)を分散させて分散ペーストを作製し、この分散ペーストを水性塗料組成物へ配合することができる。また、希土類金属化合物(C)または亜鉛化合物(D)として、水溶性希土類金属化合物または水溶性亜鉛化合物を用いる場合には、塗料用樹脂エマルジョン作製後にそのまま加えてもよい。なお、顔料分散用樹脂としては、カチオン電着塗料用の一般的なもの(エポキシ系スルホニウム塩型樹脂、エポキシ系4級アンモニウム塩型樹脂、エポキシ系3級アミン型樹脂、アクリル系4級アンモニウム塩型樹脂など)が用いることができる。
その他の成分
本発明の塗装方法において用いられる水性塗料組成物においては、必ずしも必要成分ではないが、目的に応じて、さらに顔料を配合してもよい。但しここでいう顔料には、希土類金属化合物(C)及び亜鉛化合物(D)は含まれない。顔料としては、通常塗料に使用されるものならばとくに制限なく使用することができる。その例としては、カーボンブラック、二酸化チタン、グラファイト等の着色顔料、カオリン、珪酸アルミ(クレー)、タルク、炭酸カルシウム、また無機コロイド(シリカゾル、アルミナゾル、チタンゾル、ジルコニアゾルなど)等の体質顔料、リン酸系顔料(リンモリブデン酸アルミニウム、(ポリ)リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなど)やモリブデン酸系顔料(リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛など)、等の重金属フリー型防錆顔料が挙げられる。
さらにビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤も合わせて使用できる。これら無機コロイドおよびシランカップリング剤を併用すると、下地塗膜密着性の向上などに作用し、結果として耐食性が向上する効果がもたらされる利点がある。
これらの中でも、本発明の水性塗料組成物に使用する顔料としてとくに重要なものは、二酸化チタン、カーボンブラック、珪酸アルミ(クレー)、シリカ、リンモリブデン酸アルミ、ポリリン酸亜鉛である。とくに二酸化チタン、カーボンブラックは着色顔料として隠蔽性が高く、しかも安価であることから、電着塗料用に最適である。
なお、上記顔料は単独で使用することもできるが、目的に合わせて複数種を使用するのが一般的である。
前記水性塗料組成物中に含有される前記顔料(P)および樹脂固形分(V)の合計重量(P+V)に対する前記顔料の重量比{P/(P+V)}(以後、PWCと称する)が、5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。但し、ここでいう顔料には、希土類金属化合物(C)、亜鉛化合物(D)は含まないものと定義する。
上記重量比が5重量%未満では、顔料不足により塗膜に対する水、酸素などの腐食要因の遮断性が過度に低下し、実用レベルでの耐候性や耐食性を発現できないことがある。
ただし、そのような不都合を生じない場合は、顔料濃度を極力ゼロとし、クリア、もしくはクリアに近い水性塗料組成物を調製して、本発明に用いてもよい。
また、上記重量比が30重量%を超えると、顔料過多により硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が著しく悪くなることがあるので注意を要する。
上記樹脂固形分(V)は、水性塗料の主樹脂である前記(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、および(B)硬化剤の他、顔料分散樹脂をも含めた電着塗膜を構成する全樹脂バインダーの合計固形分量を示す。
水性塗料組成物
上記水性塗料組成物は、全固形分濃度が5〜40重量%、好ましくは、10〜25重量%の範囲となるように調整する。全固形分濃度の調節には水性媒体(水単独かまたは水と親水性有機溶剤との混合物)を用いる。
また水性塗料組成物のpHは、5〜7であるのが好ましく、5.5〜6.5であるのがさらに好ましい。pHが5未満であると、電着塗装効率や膜外観が低下することがある。また7を超えると、塗料組成物中の希土類金属イオン、基体樹脂エマルションの安定性が低下する傾向がある。pHが高い場合は、硝酸、硫酸などの無機酸、あるいは蟻酸、酢酸などの有機酸を用いてpHを下げることができる。pHが低い場合は、アミンなどの有機塩基、あるいはアンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基を用いてpHを上げることができる。これらの無機酸、有機酸、無機塩基および有機塩基を必要に応じた量で用いることによりpHを調整することができる。使用する酸および塩基の種類は、特に制限されるものではない。
本発明に用いる水性塗料組成物は、塗料伝導度は1,500〜4,000μS/cmであるのが好ましい。塗料伝導度が1,500μS/cm未満では、前処理工程により得られる効果が不充分になり、また前処理皮膜や電着塗膜のつきまわり性が不足する恐れがある。また4,000μS/cmを超えると、前処理皮膜や電着塗膜の外観不良を招く恐れがあるので好ましくない。なお、本明細書において「前処理皮膜」とは、希土類金属化合物(C)の電解生成物、希土類金属化合物(C)および亜鉛化合物(D)の電解生成物が、被塗物上に析出することにより得られる被膜をいう。
水性塗料組成物の塗料電導度は、市販の導電率計を使用して測定することができる。導電率計として、例えば東亜電波工業株式会社製CM−305などが挙げられる。
さらに塗料組成物中には少量の添加剤を導入しても良い。添加剤の例としては紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、塗膜表面平滑剤、硬化触媒(ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジベンゾエートあるいはジオクチル錫ジベンゾエートなどの有機スズ化合物)などを挙げることができる。
複層塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物に被塗物を浸漬させて、以下の複層塗膜形成方法により塗装が行われる。
上記複層塗膜形成方法とは、
上記水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として、50V未満の電圧を印加する前処理工程、および
上記水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50〜450Vの電圧を印加する、電着工程、を包含する。
被塗物として、未処理の金属素材、例えば冷延鋼板、高強度鋼、高張力鋼、鋳鉄、亜鉛及び亜鉛めっき鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられる。これらの中でも、本発明の方法によって特に優れた耐食効果を得ることができる素材は、冷延鋼板である。
上記方法により調製された本発明の水性塗料組成物に、被塗物を陰極として浸漬する。そして前処理工程において、50V未満の電圧を印加して、被塗物に対して陰極電解を行うことによって、主に希土類金属化合物(C)の電解反応生成物、希土類金属化合物(C)および亜鉛化合物(D)の電解反応生成物を、極めて優先的に析出させることが可能であることが見いだされた。
印加電圧が50V以上であると、上記複合金属水酸化物の析出よりも、むしろ塗料ビヒクルである(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂および(B)硬化剤の析出が顕著化するので、前処理皮膜形成の目的に反するために好ましくない。
希土類金属化合物(C)の電解反応生成物、希土類金属化合物(C)の電解反応生成物、または希土類金属化合物(C)および亜鉛化合物(D)の電解反応生成物の選択的析出を可能とする前処理工程の印加電圧として、好ましい範囲は1〜40V、より好ましい範囲は1〜20Vである。
前処理工程では、水性塗料組成物を含む浴槽の浴温を15〜35℃に調整した上で行うのが好ましい。前処理工程に続いて行われる電着塗装において通常用いられる浴温と同程度の温度で前処理工程を行うのが、前処理工程後に連続して行われる電着塗装工程との関係上好ましいからである。
前処理における通電時間は、通常10〜300秒、好ましくは30〜180秒である。
処理時間が短すぎる場合は皮膜生成しないか、生成しても厚みが不足することとなり、耐食性が劣る恐れがある。また通電時間が長すぎる場合は、時として無光沢のヤケあるいはコゲと呼ばれる外観不良が発生する。また、過剰の処理時間は生産性を極端に低下させる恐れがあり好ましくない。
前処理における、希土類金属化合物(C)、あるいは希土類金属化合物(C)および(D)銅化合物、または希土類金属化合物(C)および亜鉛化合物(D)の電解反応生成物の析出量を、0.01mg/m以上にすることによって、特異的に高い防錆皮膜を形成することができる。好ましい析出量は、0.1〜100mg/mである。
5mg/m未満においては、形成皮膜による下地密着性が低下するために、必要な防錆性が発現しない。逆に、1,000mg/mを超えると、皮膜の表面平滑性が損なわれるので、電着塗膜形成後の外観が低下する場合があるので好ましくない。
本発明の前処理工程によって、電解生成物が析出する機構は以下のように考えられる。前処理工程における上記電解条件によって、陰極の金属表面では溶存酸素や水素イオン、水等の浴中化学種が還元を受け、水酸化物イオン(OH)が生成する。この被処理金属表面で生成した水酸化物イオンが、まず該金属表面近傍の希土類金属イオンと反応することで、希土類金属の水酸化物の沈殿が生成し、皮膜として金属表面に析出する。
こうして析出した電解生成物である、希土類金属の水酸化物からなる皮膜は、下地の基材および電着塗膜との密着性に特に優れており、電着塗装後の焼付け乾燥過程において、少なくとも一部が、希土類の水酸化物より脱水生成した酸化物からなる被膜に変化し、高い耐食性を示すようになると考えられる。
また、水性塗料組成物中にさらに亜鉛化合物(D)を含めることによって、電解反応生成物として、アルカリ難溶性の希土類金属―亜鉛の複合化合物を析出させることができる。こうして得られる複合化合物は、得られる複層塗膜のより高い密着性および電着塗装後の耐食性を発現することができる。
しかも本発明の前処理工程の上記電解条件においては、主に上記前処理錆皮膜が優先的に形成し、(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂および(B)硬化剤の析出による電着塗膜の形成は抑制される傾向にあるので、極めて好都合である。
本発明の電着塗装工程では、印加電圧を50〜450V、好ましくは100〜400Vまで昇圧することで、塗料ビヒクルである(A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹および(B)硬化剤、そして必要に応じた顔料を、優先的に析出させることができる。印加電圧が50V未満では、上記電着塗料のビヒクル成分の析出性が不足する恐れがある。また印加電圧が450Vを超えると、上記ビヒクル成分が適正量を超えて析出する結果、実用に耐えない膜外観を呈する恐れがあるので好ましくない。
通電時間は30〜300秒、好ましくは30〜180秒である。処理時間が30秒より短い場合は、電着塗膜が生成しないか、生成しても厚みが不足しているために耐食性が劣る恐れがある。また過剰の処理時間は生産性を極端に低下させる恐れがあり好ましくない。
こうして得られる未硬化複層塗膜を、120〜200℃、好ましくは140〜180℃にて硬化反応を行うことによって、高い架橋度の電着硬化塗膜を得ることができる。ただし、200℃を超えると、塗膜が過度に堅く、かつ脆くなり、一方120℃未満では硬化が充分でなく、耐溶剤性や膜強度等の膜物性が低くなる恐れがあり好ましくない。
以下に製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。各例中の「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
製造例1(没食子酸・オキサゾリドン環変性アミン化エポキシ樹脂)
成分(a)の製造
攪拌機、デカンター、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)2400部とメタノール141部、メチルイソブチルケトン168部、ジラウリン酸ジブチル錫0.5部を仕込み、40℃で攪拌し均一に溶解させた後、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20重量比混合物)320部を30分間かけて滴下したところ発熱し、70℃まで上昇した。これにN,N−ジメチルベンジルアミン5部を加え、系内の温度を120℃まで昇温し、メタノールを留去しながらエポキシ当量が232になるまで120℃で3時間反応を続けて、(a)分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を得た。また赤外吸収スペクトル等の測定から、樹脂中にオキサゾリドン環(吸収波数;1750cm−1)を有していることが確認された。
反応中間体(X)の製造(成分(a)と(b)及び(c)との反応)
上記成分(a)に対して、さらにメチルイソブチルケトン644部、成分(b):2−エチルヘキサン酸413部、成分(c):ビスフェノールA341部を加え、系内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が840になるまで反応させた後、系内の温度が90℃になるまで冷却した。
水性塗料用樹脂の製造(反応中間体(X)と成分(d)及び(e)との反応)
ついで成分(d):没食子酸144部、成分(e1):N−メチルエタノールアミン142部、成分(e2):ジ(2−エチルヘキシル)アミン157部、及び成分(e3):ジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)197部の混合物を添加し120℃で1時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン145部で希釈し、固形分80重量%の水性塗料用樹脂ワニスを得た。この樹脂の数平均分子量は1,800、アミン価56、水酸基価は180であった。
比較製造例1(従来型アミン変性エポキシ樹脂の製造)
成分(a)の製造
攪拌機、デカンター、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)2,400部とメタノール141部、メチルイソブチルケトン168部、ジラウリン酸ジブチル錫0.5部を仕込み、40℃で攪拌し均一に溶解させた後、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20重量比混合物)320部を30分間かけて滴下したところ発熱し、70℃まで上昇した。これにN,N−ジメチルベンジルアミン5部を加え、系内の温度を120℃まで昇温し、メタノールを留去しながらエポキシ当量が232になるまで120℃で3時間反応を続けて、(a)分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を得た。また赤外吸収スペクトル等の測定から、樹脂中にオキサゾリドン環(吸収波数;1750cm−1)を有していることが確認された。
反応中間体(Y)の製造(成分(a)と(b)及び(c)との反応)
上記成分(a)に対して、さらにメチルイソブチルケトン644部、成分(b):2−エチルヘキサン酸413部、成分(c):ビスフェノールA341部を加え、系内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が840になるまで反応させた後、系内の温度が90℃になるまで冷却した。
水性塗料用樹脂の製造(反応中間体(Y)と成分(e)との反応)
ついで成分(e1):N−メチルエタノールアミン148部、成分(e2):ジ(2−エチルヘキシル)アミン386部、及び成分(e3):ジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)205部の混合物を添加し120℃で1時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン223部で希釈し、固形分80重量%の水性塗料用樹脂ワニスを得た。この樹脂の数平均分子量は1,840、アミン価70、水酸基価は160であった。
製造例2(ブロックポリイソシアネート硬化剤の製造)
攪拌機、窒素導入管、冷却管及び温度計を備え付けた反応容器にイソホロンジイソシアネート222部を入れ、メチルイソブチルケトン56部で希釈した後ブチル錫ラウレート0.2部を加え、50℃まで昇温の後、メチルエチルケトオキシム17部を内容物温度が70℃を超えないように加えた。そして赤外吸収スペクトルによりイソシアネート残基の吸収が実質上消滅するまで70℃で1時間保温し、その後n−ブタノール43部で希釈することによって固形分70%の目的のブロックポリイソシアネートを得た。
製造例3(製造例1の水性塗料用樹脂による樹脂エマルションの製造)
製造例1で得られた水性塗料用樹脂1,250部中へ、上記製造例2で製造したブロックポリイソシアネート硬化剤357部、酢酸20部を加えた後、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性エポキシ樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E1と記す)を得た。
比較製造例2(比較製造例1の水性塗料用樹脂による樹脂エマルションの製造)
比較製造例1で得られた水性塗料用樹脂1,250部中へ、上記製造例2で製造したブロックポリイソシアネート硬化剤357部、酢酸20部を加えた後、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性エポキシ樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E2と記す)を得た。
実施例及び比較例(水性塗料組成物の調製)
製造例2及び比較製造例2で得られた各種カチオン樹脂エマルション(E1〜E2)及び脱イオン水を使用してクリア塗料組成物(固形分濃度は全て20%)を調製した。各塗料中には硬化促進剤としてジブチル錫オキシドの乳化エマルションペーストを錫量にして塗料固形分量の1.5%になるように配合した。
希土類金属化合物、あるいは希土類金属化合物と亜鉛化合物は、酢酸塩または硝酸塩などは水溶性であるので、水性塗料組成物へ直接加えて、表1〜4に示す金属としての添加量(重量%)に調節することによって各水性塗料組成物を調製した。以上の各種材料の組み合わせは下記表1〜4に示した。
(複層塗膜の調製及び耐食試験)
実施例および比較例における各水性塗料組成物の調製においては、表1〜4に示すように、各希土類金属化合物を金属量に換算して0.5重量%含めた。また、亜鉛化合物を併用する場合(実施例6〜10、比較例6〜10)は、希土類金属化合物を金属量にして0.3重量%に変更した上で、さらに亜鉛化合物を金属量に換算して0.2重量%を含めた。こうして得られた水性塗料組成物を浴槽に注ぎ、陰極として表面未処理冷延鋼板を浸漬した。次いで、すべての実施例と比較例において、印加電圧を2段階にて昇圧することによって、前処理工程(印加電圧5V、通電時間60秒)及び電着塗装工程(印加電圧180V、通電時間150秒)を連続的に実施した。電着塗装工程における電着塗膜の乾燥膜厚が20μmになるように塗装した後、170×20分で硬化し、塗膜評価を行った。表1〜4に、実施例及び比較例の各水性塗料組成物から調製した複層塗膜の耐食試験結果を示した。
Figure 2007314689
(注)各成分配合:表中の数値は金属量に換算した重量である。
Figure 2007314689
(注)各成分配合:表中の数値は金属量に換算した重量である。
Figure 2007314689
(注)各成分配合:表中の数値は金属量に換算した重量である。
Figure 2007314689
(注)各成分配合:表中の数値は金属量に換算した重量である。
表中の評価試験の手順について以下に示す。
耐食試験
・塩水噴霧試験:ナイフにて素地に達するクロスカットを入れた塗板を、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験を行った。試験時間840時間において、下記項目について評価した。
・ブリスター評価:試験後の評価板片面全体における塗面のブリスター状態(個数)にて評価した。
◎;非常に少ない
○;少ない
△;やや多い
×;多い
・剥離評価:試験後の評価板を水洗、乾燥した後テープを剥離し、カット部からの片側最大剥離幅にて評価した(mm)。
◎:2mm未満
○:2〜3mm未満
△:3〜6mm未満
×:6mm以上
塗料電導度の測定
実施例及び比較例によって得られた水性塗料組成物200mlを含む電着浴において、25℃で、導電率計(東亜電波工業株式会社製 CM−305)を用いて電導度を測定した。
表1〜4から明らかなように、本発明の没食子酸・アミン変性エポキシ樹脂をバインダーとして用いた水性塗料組成物により得られる複層塗膜は、それぞれ相対する従来型アミン変性エポキシ樹脂を用いた水性塗料組成物により得られる複層塗膜と比較して、より優れた耐食性を有することが確認された。
本発明の水性塗料組成物は、一種の水性塗料組成物を用いて、少なくとも2段階の印加電圧にて通電することによって、陰極電解処理(前処理工程)及び電着塗装工程を実用的に区分かつ連続的に実施することができる、複層塗膜形成方法により、前処理工程および電着塗装工程を効率的に統合しつつ、かつ従来よりも優れた塗膜密着性および耐食性を有する複層塗膜を得ることができる。

Claims (4)

  1. (A)没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、(B)硬化剤および(C)希土類金属化合物を含有する水性塗料組成物であって、該没食子酸・アミン変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(A)が、(a)式
    Figure 2007314689
    (式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。)を有する、分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(b)1価の活性水素化合物;(c)2価の活性水素化合物;(d)没食子酸および(e)第2級モノアミン化合物を反応させて得られる、数平均分子量1,000〜5,000の樹脂であることを特徴とする水性塗料組成物。
  2. 前記希土類金属化合物(C)が、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選択される少なくとも1種の希土類金属を含む化合物である水性塗料組成物。
  3. 前記希土類金属化合物(C)が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して0.05〜10重量%含まれていることを特徴とする水性塗料組成物。
  4. さらに亜鉛化合物(D)を含み、前記希土類金属化合物(C):亜鉛化合物の配合重量比が1:20〜20:1であることを特徴とする水性塗料組成物。
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