JP2007306910A - 組換え微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を、枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子のゲノム上における上流に導入してなるか、或いは微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に連結した遺伝子断片を導入し、且つglcT遺伝子、ptsG遺伝子、ptsH遺伝子、ptsI遺伝子、glvR遺伝子、glvA遺伝子、glvC遺伝子、treP遺伝子、treA遺伝子及び当該遺伝子に相当する遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子を欠失又は不活性化してなる微生物株に、目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物。
【選択図】なし
Description
しかしながら、prsA遺伝子を過剰発現しており、且つ、斯かるPTS系による糖質の取り込みを抑制する遺伝子の不活性化を施した微生物はこれまで知られておらず、特にその様な微生物がprsA遺伝子を過剰発現している微生物に比べ、有用なタンパク質又はポリペプチドの優れた生産性を示すことは予想すらされていない。
Nature,390,249,1997 Science,277,1453,1997 Mol. Microbiology, 8,:727 (1993) Mol. Gene. Genet., 209:335 (1987) Plasmid, 18:8 (1987) Mol. Microbiol., 25:65 (1997) J. Bacteriol., 183:5110 (2001) J. Bacteriol., 178:4576 (1996)
本明細書に記載の枯草菌の各遺伝子及び遺伝子領域の名称は、Nature, 390, 249-256,(1997)で報告され、JAFAN: Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis (BSORF DB)でインターネット公開(http://bacillus.genome.ad.jp/、2004年3月10日更新)された枯草菌ゲノムデータに基づいて記載している。
なお、ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列には、1若しくは数個、好ましくは1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
なお、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価なタンパク質とは、prsA遺伝子によりコードされるタンパク質と実質的に同じ機能を有し、細胞膜を通過して細胞質外に輸送された後のタンパク質の折りたたみを容易にするシャペロン様の機能を有すると考えられるタンパク質をいう。
特に、本発明微生物の宿主として枯草菌を用いる場合、prsA遺伝子の本来の転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位から、spoVG遺伝子の転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位への相同組換えによる置換は、Mol.Gen.Genet.,223,268,1990記載の方法等を利用して行うことが出来る。
ここで用いる導入用DNA断片は、親微生物ゲノム上の導入部位の上流に隣接する約0.1〜3、好ましくは0.4〜3kb断片(以下、断片(1))と、下流に隣接する約0.1〜3、好ましくは0.4〜3kb断片(以下、断片(2))の間に、当該転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む断片(以下、断片(3))、prsA遺伝子断片(以下、断片(4))、及び薬剤耐性マーカー遺伝子断片(以下、断片(5))を挿入したDNA断片である。まず、1回目のPCRによって、断片(1)〜断片(5)の5断片を調製する。
この際、例えば、断片(1)の下流末端に断片(3)の上流側10〜30塩基対配列、断片(4)の上流末端に断片(3)の下流側10〜30塩基対配列、断片(4)の下流末端に断片(5)の上流側10〜30塩基対配列、更に断片(2)の上流側に断片(5)の下流側10〜30塩基対配列が付加される様にデザインしたプライマーを用いる(図1)。
斯かる遺伝子の欠失又は不活性化は、上記各遺伝子単独の欠失又は不活性化でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また当該遺伝子以外の遺伝子の強化や欠失又は不活性化を併せて行っても良い。尚、遺伝子の欠失や不活性化には、当該遺伝子中の全部又は一部の塩基の置換・欠失の他、当該遺伝子中への塩基の挿入が含まれる。
また、以下の実施例において、遺伝子の上流・下流とは、複製開始点からの位置ではなく、上流とは各操作・工程において対象として捉えている遺伝子の開始コドンの5'側に続く領域を示し、一方、下流とは各操作・工程において対象として捉えている遺伝子の終始コドンの3'側に続く領域を示す。
以下の様に、prsA遺伝子の発現を強化した変異株の構築を行った(図2参照)。枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したPVG-FWとPVG-R、及びprsA/PVG-FとprsA/Em2-Rのプライマーセットを用いてspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む0.2kb断片(A)、及びprsA遺伝子を含む0.9kb断片(B)をPCRにより増幅した。またプラスミドpMUTIN4(Microbiology. 144, 3097 (1998))を鋳型として、表1に示したemf2とemr2のプライマーセットを用いてエリスロマイシン(Em)耐性遺伝子を含む1.3kb断片(C)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したPVG-FW2とemr2のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(A)(B)(C)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位がprsA遺伝子の上流に連結し(spoVG遺伝子の開始コドンの位置にprsA遺伝子の開始コドンが位置する様に連結)、更にその下流にEm耐性遺伝子が結合した2.4kbのDNA断片(D)を得た。続いて枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したamyEfw2とamyE/PVG2-R、及びamyE/Em2-FとamyErv2のプライマーセットを用いてamyE遺伝子の5'側領域を含む1.0kb断片(E)、及びamyE遺伝子の3'側領域を含む1.0kb断片(F)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(E)(F)(D)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(E)(D)(F)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にprsA遺伝子が連結し、更にその下流にEm耐性遺伝子が結合した2.4kbのDNA断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長4.3kbのDNA断片(G)を得た。得られた4.3kbのDNA断片(G)を用いてコンピテントセル法により枯草菌168株を形質転換し、エリスロマイシン(1μg/mL)とリンコマイシン(25μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示すamyEfw2とprsA/Em2-R、及びprsA/PVG-FとamyErv2のプライマーセットを用いたPCRを行うことによって2.4kb及び3.3kbのDNA断片の増幅を確認し、枯草菌168株ゲノム上のamyE遺伝子部位にspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にprsA遺伝子が連結したDNA断片が挿入されたことを確認した。この様にして得られた菌株をprsA-Ka株と命名した。
実施例1にて得られたprsA-Ka株の異種タンパク質生産性評価は、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるバチルス属細菌由来のアルカリアミラーゼの生産性を指標として以下の様に行った。
バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-K38株(FERM BP-6946)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示されるK38matu-F2(ALAA)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリアミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur.J.Biochem.,268,2974,2001)をコードする配列番号3で示される塩基配列の1.5kbのDNA断片(H)を増幅した。またバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とS237ppp-R2(ALAA)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域、及び分泌シグナル配列をコードする領域を含む0.6kbのDNA断片(I)を増幅した。次いで、得られた(H)(I)の2断片を混合して鋳型とし、表1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、アルカリセルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域、及び分泌シグナル配列をコードする領域の下流にアルカリアミラーゼ遺伝子が連結した2.1kbのDNA断片(J)を得た。得られた2.2kbのDNA断片(J)をシャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入し、アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を構築した。
実施例1にて得られたprsA-Ka株及び対照として枯草菌168株にアルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を、プロトプラスト形質転換法によって導入した。これによって得られた菌株を10mLのLB培地で一夜37℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.05mLを50mLの2xL−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で5日間、振盪培養を行った。培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清のアルカリアミラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産されたアルカリアミラーゼの量を求めた。培養上清中のアミラーゼの活性測定にはリキテックAmy EPS(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を使用した。すなわち1% NaCl-1/7.5M リン酸緩衝液 (pH7.4 和光純薬工業)で適宜希釈したサンプル溶液50μLに、100μLのR1・R2混合液(R1(カップリング酵素):R2(アミラーゼ基質)=5:1(Vol.))を加えて混和し、30℃にて反応を行った際に遊離するp-ニトロフェノール量を405nmにおける吸光度(OD405nm)変化により定量した。1分間に1μmolのp-ニトロフェノールを遊離させる酵素量を1Uとした。この結果、表2に示した様に、宿主としてprsA-Ka株を用いた場合、対照の168株(野生型)の場合と比較して高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められた。これはprsA-Ka株にてprsA遺伝子の発現が野生株より高まり、細胞膜上のPrsAタンパク質量が増加したことにより、タンパク質の分泌効率が向上した結果によるものと推測された。
図3に基づいて、ゲノム中glcT遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換方法を説明する。尚、glcT遺伝子は枯草菌PTS系に関与するptsGHIオペロンの発現を正に制御する転写制御因子(アンチターミネーター)をコードする遺伝子である。
枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表1に示したglcT-FW及びglcT/Cm-Rのプライマーセットを用いて、ゲノム中のglcT遺伝子の上流に隣接する1.0kb断片(A)をPCRにより増幅した。また、上記ゲノムDNAを鋳型とし、glcT/Cm-F及びglcT-RVのプライマーセットを用いて、ゲノム中のglcT遺伝子の下流に隣接する1.0kb断片(B)をPCRにより増幅した。
さらに、プラスミドpC194 DNAを鋳型とし、表1に示したcatf及びcatrのプライマーセットを用いて、0.85kbのクロラムフェニコール(Cm)耐性遺伝子領域(C)をPCRにより調製した。
次に、図3に示すように、得られた1.0kb断片(A)、1.0kb断片(B)及びCm耐性遺伝子領域(C)の3断片を混合して鋳型として、表1に示したglcT-FW2及びglcT-RV2のプライマーセットを用いたSOE-PCR法によって、3断片が1.0kb断片(A)、Cm耐性遺伝子領域(C)、1.0kb断片(B)の順に含まれる2.8kbのDNA断片(D)を得た。
さらに、コンピテントセル形質転換法によって、得られたDNA断片(D)を用いて、168株の形質転換を行った。形質転換後、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。
得られた形質転換体のゲノムDNAを抽出し、PCRによってglcT遺伝子がCm耐性遺伝子に置換していることを確認した。以上のようにして、glcT遺伝子欠失株(ΔglcT株)を構築した。また上記形質転換における168株に替えて実施例1にて構築したprsA-Ka株を用いることにより、prsA-Ka株ゲノム中のglcT遺伝子をCm耐性遺伝子にて置換した菌株(prsAKΔglcT株)を構築した。
実施例3に示したglcT遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換と同様にして、168株ゲノム中のglvR遺伝子、glvC遺伝子のクロラムフェニコール耐性遺伝子による置換を行い、glvR遺伝子欠失株(ΔglvR株)、glvC遺伝子欠失株(ΔglvC株)を構築した。各菌株の構築には表1に示すプライマーを使用し、それぞれのプライマーとΔglcT株の構築に用いたプライマーとの対応を表3に示した。尚、glvR遺伝子、glvC遺伝子はいずれも枯草菌のPTS系によるマルトース取り込みに関与することが知られているタンパク質をコードする遺伝子である。各遺伝子の機能は表6に示したとおりである。
実施例3及び4にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。図4に示した様に、prsAKΔglcT株、prsAKΔglvR株、prsAKΔglvC株においてprsA-Ka株より高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められ、それぞれの株のprsA-Ka株に対する生産量の増加(図4の斜線部分に相当)は、ΔglcT株、ΔglvR株、ΔglvC株各々で示された枯草菌168株に対する生産量増加(図4の黒塗りで示す部分に相当)より顕著であった。即ち、prsAKΔglcT株、prsAKΔglvR株、prsAKΔglvC株では、prsA遺伝子発現強化と各々の遺伝子欠失との組合せがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。
枯草菌168株ゲノム上のtreR遺伝子を、実施例3に示したglcT遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換と同様にして、クロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換してΔtreR株を構築した。使用したプライマーを表1に示し、それぞれのプライマーとΔglcT株の構築に用いたプライマーとの対応を表4に示した。また実施例1にて構築したprsA-Ka株のゲノム上のtreR遺伝子を同様にクロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換することにより、prsAKΔtreR株を構築した。尚、treR遺伝子は枯草菌PTS系トレハロース取り込みに関与するtreオペロンの発現を抑制する負の転写制御因子をコード遺伝子である。treR遺伝子の遺伝子番号及び機能は表6に示したとおりである。
実施例1にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。表5に示した様に、prsA-Ka株に対してtreR遺伝子欠失を行うことによるアルカリアミラーゼの分泌生産性は著しく低下し、168株以下となった。即ち、prsA遺伝子発現強化とtreR遺伝子欠失との組合せによる相乗効果は認められず、むしろprsA遺伝子発現強化の効果を損なうことが示された。treR遺伝子がコードするTreRはトレハロースの取り込み系をコードするtreP遺伝子及びtreA遺伝子の発現を抑制するリプレッサーであり、treR遺伝子欠失はtreP遺伝子及びtreA遺伝子の高発現をもたらして低生産化を引き起こしたものと考えられた。即ち、treP遺伝子及び/又はtreA遺伝子の不活性化においては、生産性は向上するものと推測された。
treR遺伝子の欠失によりtreP遺伝子及びtreA遺伝子が高発現すると、培地中にトレハロースが存在する場合にはその取り込みが促進されることが推測される。しかしながら実施例7のアミラーゼ分泌生産評価において、菌株の培養にはマルトースを主要炭素源とする2xL−マルトース培地を使用しており、treR遺伝子欠失がマルトース取り込みに影響を及ぼしているか否かについて検討を行った。ΔtreR株を、枯草菌168株、ΔglcT株、ΔglvR株、ΔglvC株と共に2xL−マルトース培地にて培養した際の培養液上清中糖濃度変化を測定した。糖濃度の測定にはF-キット スターチ(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を使用した。即ち、イオン交換水で適宜希釈したサンプル溶液10μLに、20μLの溶液I(糖加水分解酵素)を加えて混和し、60℃にて20分間の反応を行ってマルトースをグルコースに分解した。つづいて100μLの溶液II・イオン交換水・溶液III混合液(溶液I(NADP溶液):イオン交換水:溶液II(グルコース変換酵素)=100:100:2(Vol.))を加えて混和し、室温にて15分間の反応を行った後に生成するNADPH量を340nmにおける吸光度(OD340nm)を測定することにより定量した。グルコース標準溶液をサンプル溶液に代えて用いた場合のNADPH生成量を併せて測定し、サンプル溶液中のグルコース換算での糖濃度を算出した。その結果、図5に示す様に、ΔglcT株、ΔglvR株、ΔglvC株においては培養液中糖濃度の減少が168株に比べて鈍化しているのに対し、ΔtreR株では糖濃度は速やかに減少していた。培養液中の糖の大部分はマルトースであると考えられ、即ち、マルトースの取り込みが抑制されるglcT遺伝子、glvR遺伝子、glvC遺伝子の欠失は実施例5に示す様に酵素生産におけるprsA遺伝子強化との相乗効果を示し、一方、マルトースの取り込みを促進するtreR遺伝子の欠失では、実施例7に示す様にprsA遺伝子強化の効果を減少させることが明らかとなった(図5)。この結果は、培地中の糖の取り込み抑制は酵素生産に有効であり、逆に糖の取り込み促進は阻害的であることを示唆していると考えられる。尚、treR遺伝子欠失によるマルトースの速やかな取り込みは、treP遺伝子及びtreA遺伝子がコードするトレハロース取り込み系の発現量増加がその要因であると考えられた。即ち、実施例7の結果と合わせ、treP遺伝子及び/又はtreA遺伝子の不活性化は、prsA遺伝子強化との組み合わせにおいて、糖の取り込みを抑制することにより酵素生産性を向上させるものと考えられた。
本発明に関連のある遺伝子について、遺伝子番号、及び機能を表6に示した。
バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来のprsA遺伝子(配列番号53)は、枯草菌prsA遺伝子に相当する遺伝子である。実施例1の方法と同様の方法にて、バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子の発現を強化した変異株の構築を行った。すなわち、バチルス セレウス(Bacillus cereus)から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表7に示したBce/PVG-FとBce/emf2-Rのプライマーセットを用いてバチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子を含む0.9kb断片(A)をPCRにより増幅した。また上記比較例にて構築したprsA-Ka株より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表1に示したamyEfw2とPVG-R、及びemf2とamyErv2のプライマーセットを用いて、amyE遺伝子の5’側領域の下流にspoVG遺伝子転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む領域が連結した1.2kb断片(B)、及びエリスロマイシン耐性遺伝子の下流にamyE遺伝子の3'側領域が連結した2.3kb断片(C)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(B)(A)(C)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にバチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子が連結し、更にその下流にエリスロマイシン耐性遺伝子が結合した遺伝子断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長4.3kbのDNA断片(D)を得た。得られた4.3kbDNA断片(D)を用いて枯草菌168株を形質転換し、prsAbc-K株を構築した。
次いで、実施例3と同様の方法にて、prsAbc-K株のゲノム上よりglcT遺伝子をクロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換したprsAbcKΔglcT株を構築した。
構築した上記prsAbc-K株及びprsAbcKΔglcT株について、実施例2と同様の方法によりアルカリアミラーゼ分泌生産評価を行った。対照として枯草菌168株とΔglcT株についても評価を行った。その結果、図6に示すようにprsAbc-K株にて168株を大きく上回る分泌生産が認められた。更にprsAbc-K株よりglcT遺伝子を欠失した菌株においては一層顕著な生産性向上が認められ、実施例5で見られたのと同様、バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来のprsA遺伝子発現強化とglcT遺伝子欠失との組み合わせがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。すなわち、枯草菌prsA遺伝子に相当する遺伝子を用いれば、枯草菌prsA遺伝子を用いた場合と同様の有効性が得られることが確認された。
Claims (11)
- 微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を、枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子のゲノム上における上流に導入してなるか、或いは微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に連結した遺伝子断片を導入し、且つglcT遺伝子、ptsG遺伝子、ptsH遺伝子、ptsI遺伝子、glvR遺伝子、glvA遺伝子、glvC遺伝子、treP遺伝子、treA遺伝子及び当該遺伝子に相当する遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子を欠失又は不活性化してなる微生物株に、目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物。
- 微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位が、枯草菌のspoVG遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子由来のものである請求項1項記載の組換え微生物。
- glcT遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を欠失又は不活性化するものである請求項1又は2記載の組換え微生物。
- glvC遺伝子、glvR遺伝子及び当該遺伝子に相当する遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子を欠失又は不活性化するものである請求項1又は2記載の組換え微生物。
- 微生物がバチルス属(Bacillus)細菌である請求項1〜4のいずれか1項記載の組換え微生物。
- バチルス(Bacillus)属細菌が枯草菌(Bacillus subtilis)である請求項5記載の組換え微生物。
- 目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の上流に転写開始制御領域、翻訳開始制御領域又は分泌用シグナル領域のいずれか1以上の領域を結合した請求項1〜5のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域を結合した請求項7記載の組換え微生物。
- 分泌シグナル領域がバチルス(Bacillus)属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1kb領域由来のものである請求項7又は8記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が、配列番号5で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜659の塩基配列、配列番号7で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列又は当該塩基配列のいずれかと70%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、又は当該塩基配列の一部が欠失した塩基配列からなるDNA断片である請求項7〜9のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の組換え微生物を用いる目的のタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
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