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JP4839169B2 - 組換え微生物 - Google Patents

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Description

本発明は、有用なタンパク質又はポリペプチドの生産に用いる組換え微生物、及びタンパク質又はポリペプチドの生産方法に関する。
微生物による有用物質の工業的生産は、アルコール飲料や味噌、醤油等の食品類をはじめとし、アミノ酸、有機酸、核酸関連物質、抗生物質、糖質、脂質、タンパク質等、その種類は多岐に渡っており、またその用途についても食品、医薬や、洗剤、化粧品等の日用品、或いは各種化成品原料に至るまで幅広い分野に広がっている。
こうした微生物による有用物質の工業生産においては、その生産性の向上が重要な課題の一つであり、その手法として、突然変異等の遺伝学的手法による生産菌の育種が行われてきた。特に最近では、微生物遺伝学、バイオテクノロジーの発展により、遺伝子組換え技術等を用いたより効率的な生産菌の育種が行われるようになっている。さらに、近年のゲノム解析技術の急速な発展を受けて、対象とする微生物のゲノム情報を解読し、これらを積極的に産業に応用しようとする試みもなされている。ゲノム情報の公開されている産業的に有用な宿主微生物としては、枯草菌Bacillus subtilis Marburg No.168(非特許文献1)、大腸菌Escherichia coli K-12 MG1655(非特許文献2)、コリネバクテリウムCorynebacterium glutamicum ATCC132032などが挙げられ、これらのゲノム情報を利用し、改良を加えた菌株が開発されている。
しかしながら、上記のような取り組みにも関わらず、必ずしも既存の菌株の生産効率が高いとは言えない状況であった。
ところで、枯草菌のfus遺伝子、tufA遺伝子、及びtsf遺伝子等は、それぞれEF-Tu、EF-G、EF-Tsと呼ばれる翻訳伸長因子をコードすることが知られている。
EF-Tsは、EF-Tuに結合し、EF-Tuに結合するGDTの解離を促進することによりその機能を調節していることが、大腸菌等において示されている(非特許文献3)。EF-Tsは、生物種を超えて広く保存されており、バチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)のEF-Tsが大腸菌のEF-Tuに強く結合すること(非特許文献4)やヒトのEF-Tsに相当するEF-1βと大腸菌のEF-Tsの間に構造上の高い類似性が認められること(非特許文献5)が知られている。
尚、EF-Tuは翻訳の際にリボソームへアミノ酸を運搬するトランスファーRNA(アミノアシルtRNA)に結合し、一時的な対形成を行うことを介して、tRNAのアンチコドンがメッセンジャーRNA(mRNA)の配列に対して適切か否かの峻別に必要な時間を確保することに関与している(非特許文献6)。この他、枯草菌の翻訳伸長因子としては、翻訳過程の最初のペプチド結合形成に関与するEF-P等が知られており、EF-Pはefp遺伝子にコードされる。
また、リボソーム上におけるタンパク質合成は、mRNAの配列に従って行われ、終止コドンの出現により終結する。このような一連のタンパク質合成が終結した後、次のタンパク質合成を速やかに開始するためにはリボソームが迅速にmRNAから解離することが不可欠である。かかる機能には、タンパク質合成の終結を速やかに完了させ、翻訳促進に寄与しているリボソームリサイクリングファクター(ribosome recycling factor)、すなわちfrr遺伝子がコードするFrrタンパク質が関わっている。
Frrタンパク質は大腸菌やシュードモナス属細菌、また枯草菌をはじめとするバチルス属細菌等の原核生物に広く保存されており、シュードモナス アルギノーサのfrr遺伝子が大腸菌のfrr遺伝子変異を相補することが示されている(非特許文献7)。
これらの遺伝子は細胞の生育に極めて重要であり、それらの変異は生育自体に大きな影響を及ぼすため、細胞内の個別の機能に対する影響の解析は難しい。このため、これらの遺伝子が目的タンパク質又は目的ポリペプチドの生産性に関係するか否かについては知られていなかった。
Nature,390,249,1997 Science,277,1453,1997 J. Biol. Chem.,256,5591,1981 J. Bacteriol., 153, 1266, 1983 Structure, 15, 217, 1999 Biochemistry 3rd Edition, Edited by L. Stryer, W. H. FREEMAN AND COMPANY, pp733, (1988) J. Bacteriol., 181, 1281, 1999
本発明は、目的タンパク質又は目的ポリペプチドの生産性が向上する微生物を提供することを目的とする。
本発明者らは、翻訳伸長因子やリボソーム再生因子であるTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質について、それらをコードする遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を改変して強化するか又は当該遺伝子を導入させ、これらTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質の発現量を増大させることによって、その宿主微生物の目的タンパク質又は目的ポリペプチドの生産性が向上することを見出した。
すなわち、本発明は、目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子を有する微生物であって、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を強化した微生物、又はTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子を導入してなる微生物を提供するものである。
また、本発明は、上記微生物を用いる目的タンパク質又は目的ポリペプチドの製造方法を提供するものである。
本発明の微生物は、目的タンパク質又は目的ポリペプチドの高い生産性を実現する。これにより、培地成分をタンパク質又はポリペプチドの生産に効率的に利用することで、エネルギーロス、炭素源、窒素源といった培地成分の浪費を抑えることが可能になる。
この明細書においてアミノ酸配列及び塩基配列の同一性は、Lipman-Pearson法 (Science,227,1435,1985)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本明細書において、転写開始制御領域は、プロモーター及び転写開始点を含む領域であり、リボソーム結合部位は、開始コドンと共に翻訳開始制御領域を形成するShine-Dalgarno(SD)配列(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74, 5463 (1974))に相当する部位である。
本発明の微生物を作製する際に、親微生物として利用される微生物としては、特に限定されず、野生型のものでも変異を施したものでものよいが、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質を有する微生物が好ましい。具体的には、枯草菌などのバチルス(Bacillus)属細菌や、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、或いは酵母等が挙げられ、中でもバチルス(Bacillus)属細菌が好ましい。更に、全ゲノム情報が明らかにされ、遺伝子工学、ゲノム工学技術が確立されている点や、タンパク質を菌体外に分泌生産させる能力を有する点から特に枯草菌が好ましい。
本発明の微生物は、目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子を有する微生物であって、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を強化するか又は当該遺伝子を導入してなるものである。
Tsfタンパク質とは、EF-Tsと呼ばれる翻訳伸長因子である。EF-Tsは、EF-Tuに結合し、EF-Tuに結合するGDTの解離を促進することによりその機能を調節していることが、大腸菌等において示されている(非特許文献3)。EF-Tsは、生物種を超えて広く保存されており、バチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)のEF-Tsが大腸菌のEF-Tuに強く結合すること(非特許文献4)やヒトのEF-Tsに相当するEF-1βと大腸菌のEF-Tsの間に構造上の高い類似性が認められること(非特許文献5)が知られている。
Frrタンパク質は、翻訳の終了段階でリボソームをmRNAから解離させ、リボソームを次のサイクルの翻訳のためにリサイクルする役割を持つ因子である。
翻訳伸長因子としては、Tsfタンパク質の他、Fusタンパク質及びTufAタンパク質等や翻訳過程の最初のペプチド結合形成に関与するEfpタンパク質等が知られている。Efpタンパク質(翻訳伸長因子EF-P)はefp遺伝子にコードされる。
Tsfタンパク質、Frrタンパク質、Efpタンパク質としては、例えば、それぞれ、配列番号7、配列番号9、配列番号11で示される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質が挙げられる。かかるタンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号8、配列番号10、配列番号12で示されるアミノ酸配列である。かかる配列からなるタンパク質は、JAFAN:Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis (BSORF DB)でインターネット公開(http://bacillus.genome.ad.jp/、2004年3月10日更新)により、それぞれ遺伝子番号BG19025、BG12587、BG11460として開示された遺伝子によりそれぞれコードされるタンパク質である。
Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子を制御する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位の強化は、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子を制御する本来の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位の全部若しくは一部を他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位に置換すること、又は他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位をTsfタンパク質又はFrrタンパク質をコードする遺伝子の上流に挿入することにより行うことができる。
尚、ここで遺伝子の上流とは、対象となる遺伝子の開始コドンの上流側であれば特に限定されないが、隣接する2000塩基対以内の領域が好ましく、500塩基対以内の領域がより好ましく、100塩基対以内の領域が更に好ましく、50塩基対以内の領域が特に好ましい。
ここで上記他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位としては、本来の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位より強力な転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位であればよく、かかる転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位としては、例えば、spoVG遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位やaprE遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位のような公知のものが挙げられる。
spoVG遺伝子の転写開始制御領域としては、より具体的には、配列番号13の塩基番号38〜210の塩基配列からなる領域、又はこれらの配列と相同な配列からなり転写開始制御領域としての機能を有する領域が挙げられる。
また、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位としては、より具体的には、配列番号13の塩基番号38〜230の塩基配列からなる領域、又はこれらの配列と相同な配列からなり転写開始制御領域とリボソーム結合部位としての機能を有する領域が挙げられる。配列番号13で示される塩基番号38〜210の塩基配列や塩基番号38〜230の塩基配列と相同な塩基配列としては、例えば、(A)配列番号13で示される塩基番号38〜210又は塩基番号38〜230の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAからなる塩基配列、(B)配列番号13で示される塩基番号38〜210又は塩基番号38〜230の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列等が挙げられる。
なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning −A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5xデンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
また、塩基配列の同一性はLipman-Pearson法 (Science,227,1435,1985)によって計算される。また、他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位は、公知の方法により本来の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位に変異を導入してその機能を強化したものでもよい。
斯かる転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位は、例えば、本来の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位にPCR法や変異原処理などの公知の方法によりランダムに変異を導入したり、或いは部位特異的変異により1若しくは2以上の塩基の欠失、置換若しくは付加を行ったのち、変異が導入された転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位の制御下にβ-ガラクトシダーゼや緑色蛍光タンパク質等をコードする遺伝子、或いは薬剤耐性遺伝子等の適当な遺伝子を置き、その遺伝子の発現量を調べ、発現量が変異導入前の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位で行った場合に比較して増大されている転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を選択することにより得ることができる。
上記1若しくは2以上の塩基の欠失、置換若しくは付加には、1若しくは数個、好ましくは1〜10個の塩基の欠失、置換若しくは付加が含まれ、付加には、両末端への1〜数個の塩基の付加が含まれる。
当該他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位への置換は、例えば相同組換えによる公知の方法を用いればよい。
すなわち、まず、当該他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片の上流にtsf遺伝子及び/又はfrr遺伝子の本来の転写開始制御領域の上流領域を含むDNA断片と薬剤耐性遺伝子断片を、一方、当該他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片の下流に該遺伝子の翻訳開始制御領域と構造遺伝子領域の一部又は全部或いは該遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部を含むDNA断片を、SOE(splicing by overlap extension)−PCR法(Gene,77,61,1989)などの公知の方法により結合させる。
次に、かかる結合によりできたDNA断片を、公知の方法により宿主微生物に導入すると、微生物内の染色体上の領域のうち、導入したDNA断片と相同性のある部位において、相同組換えが起こり、本来の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位が当該他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位に置換された形質転換体を、上記薬剤耐性遺伝子を指標として分離することができる。これにより、導入された転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位は、遺伝的に安定に保持されることとなる。
尚、具体的に導入用DNA断片を宿主微生物に導入する方法としては、コンピテントセル形質転換方法(J. Bacterial. 93, 1925 (1967))、プロトプラスト形質転換法(Mol. Gen. Genet. 168, 111 (1979))、或いはエレクトロポレーション法(FEMS Microbiol. Lett. 55, 135 (1990))等が挙げられ、特にコンピテントセル形質転換方法が好ましい。
また、本明細書において、遺伝子の上流・下流とは、複製開始点からの位置ではなく、上流とは対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示し、一方、下流とは対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
また、当該他の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位の挿入は、挿入したい転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位の両末端に付加するDNA断片の配列を適切に選択すれば、上述の置換の方法と同様の方法により行うことができる。
例えば、かかる転写開始制御領域の上流に、本来の転写開始制御領域の上流領域を含むDNA断片と薬剤耐性遺伝子断片とを結合させ、下流に本来の転写開始制御領域の一部又は全部を含むDNA断片を結合させる。
次に、かかる結合によりできたDNA断片を宿主微生物に導入したのち、薬剤耐性遺伝子を指標として形質転換体を分離することができる。
このようにして分離した形質転換体のゲノム上では、本来の転写開始制御領域と当該他の転写開始制御領域とがそれぞれ間をあけずに隣接した状態で安定に保持されることとなる。
Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子の導入は、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸断片であって、その上流側で、転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片と適正な形で結合している核酸断片を導入すればよい。
このような断片は、(1)その両端に宿主が有する染色体の一部配列からなる核酸断片が付加された核酸断片として導入することにより、又は(2)適当なベクターに導入された核酸断片として導入することにより、宿主微生物に遺伝的に安定に保持させることができる。
なお、導入するTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする塩基配列は、導入する核酸断片が、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする塩基配列である限り、宿主微生物が本来有するTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする塩基配列と一致しないものであってもよい。
上記(1)の断片を導入すれば、核酸断片に付加された宿主染色体が有する配列に相当する部位において相同組換えが起こり、導入した核酸断片が微生物内の染色体に組み込まれる。核酸断片の宿主微生物内への導入方法としては、コンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、或いはエレクトロポレーション法等が挙げられ、特にコンピテントセル形質転換方法が好ましい。
なお、宿主において導入を起こさせる染色体の領域としては、必須でない遺伝子の内部、若しくは必須でない遺伝子上流の非遺伝子領域の内部が好ましく、例えば、aprE遺伝子、sacB遺伝子、nprE遺伝子、amyE遺伝子の内部、若しくは当該遺伝子上流の非遺伝子領域の内部が挙げられるが、amyE遺伝子の内部が好ましい。
ここで必須でない遺伝子とは、破壊されたとしても、少なくともある条件においては、宿主は生存することができる遺伝子の意である。また、導入に際して、必須でない遺伝子、若しくは必須でない遺伝子上流の非遺伝子領域の一部又は全部の欠失を伴ってもなんら問題は生じない。
また、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子の上流に結合する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位としては、宿主微生物において機能を有するものであればよく、例えば、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子の本来の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位、又はその他の公知の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位が挙げられる。
公知の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位としては、枯草菌spoVG遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位が好ましい。
ここで、枯草菌spoVG遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位とは、JAFAN:Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis (BSORF DB)でインターネット公開(http://bacillus.genome.ad.jp/、2004年3月10日更新)により、遺伝子番号BG101126として開示された遺伝子spoVGを制御する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位である。
spoVG遺伝子の転写開始制御領域として、より具体的には、配列番号13の塩基番号38〜210の塩基配列からなる領域、又はこれらの配列と相同な配列からなり転写開始制御領域としての機能を有する領域が挙げられる。
また、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位として、より具体的には、配列番号13の塩基番号38〜230の塩基配列からなる領域、又はこれらの配列と相同な配列からなり転写開始制御領域とリボソーム結合部位としての機能を有する領域が挙げられる。
かかる転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片と、タンパク質をコードする構造遺伝子の塩基配列を含む核酸断片との結合は、例えば、SOE-PCR法により行うことができる。
すなわち、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする構造遺伝子と本来の翻訳開始制御領域若しくはTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする構造遺伝子の塩基配列を含む核酸断片と、当該転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片とを増幅するが、その際、例えば、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする構造遺伝子と本来の翻訳開始制御領域若しくは該タンパク質をコードする構造遺伝子の塩基配列を含む核酸断片の増幅に用いる上流側プライマーの5'末端に、当該転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片の下流側10〜30塩基対配列が、逆に当該転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片の増幅に用いる下流側プライマーの5'末端には、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を含む核酸断片の上流側10〜30塩基対配列が、それぞれ付加される様にデザインしたプライマーを用いることにより、両者に共通する配列がそれぞれの断片の結合する片端に付加されるように増幅する。
次いでかかる断片を鋳型として含む反応系において、当該転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含むDNA断片の5'側とTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする構造遺伝子と本来の翻訳開始制御領域若しくはTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする構造遺伝子の塩基配列を含む核酸断片の3'側にハイブリダイズするプライマーを用いたPCR法を行うことにより、上記のような結合を行うことができる。
ベクターにより導入する場合、ベクターとしては、例えば、プラスミド、YAC、BACなどの人工染色体、トランスポゾンを用いたベクター、コスミドが挙げられ、プラスミドとしては例えば、pUB110、pHY300PLKが挙げられる。上記で示した核酸断片を微生物に導入する方法としては、プロトプラスト法、コンピテントセル法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
本発明の微生物は、かくして作製された微生物に、目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子を有せしめることによって作製することができる。
ここで、「目的タンパク質又は目的ポリペプチド」は、製造又は精製が目的の一つであるタンパク質又はポリペプチドをいう。また、「目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子を有する微生物」において、遺伝子とは、その微生物が本来有する遺伝子を含むのみならず、その微生物は本来有しない遺伝子、すなわち外来の遺伝子を含む意である。
目的タンパク質又は目的ポリペプチド遺伝子は特に限定されず、食品用、医薬品用、化粧品用、洗浄剤用、繊維処理用、医療検査薬用等として有用な酵素や生理活性因子等のタンパク質やポリペプチドが挙げられ、洗剤、食品、繊維、飼料、化学品、医療、診断など各種産業用酵素や、生理活性ペプチドなどが含まれるが、産業用酵素が好ましい。
また、産業用酵素の機能別には、酸化還元酵素 (Oxidoreductase) 、転移酵素 (Transferase) 、加水分解酵素 (Hydrolase) 、脱離酵素 (Lyase)、異性化酵素 (Isomerase) 、合成酵素 (Ligase/Synthetase) 等が含まれるが、好適にはセルラーゼ、α-アミラーゼ、プロテアーゼ等の加水分解酵素の遺伝子が挙げられる。具体的には、α-アミラーゼが挙げられ、中でも微生物由来、好ましくはBacillus属細菌由来、より好ましくはBacillus sp. KSM-K38株由来のα-アミラーゼが挙げられる。
Bacillus sp. KSM-K38株由来のα-アミラーゼのより具体的な例としては、配列番号6のアミノ酸番号1〜480のアミノ酸配列からなるBacillus属細菌由来のアルカリアミラーゼや、当該アミノ酸配列と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアミラーゼが挙げられる。尚、アミノ酸配列の同一性はLipman-Pearson法 (Science,227,1435,1985)によって計算される。
また、セルラーゼの具体例としては、多糖加水分解酵素の分類(Biochem.J.,280,309,1991)中でファミリー5に属するセルラーゼが挙げられ、中でも微生物由来、特にBacillus属細菌由来のセルラーゼが挙げられる。より具体的な例として、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)、又はバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-64株(FERM BP-2886)由来のアルカリセルラーゼが挙げられ、更に具体的な例としては、配列番号2のアミノ酸番号1〜795のアミノ酸配列からなるBacillus属細菌由来のアルカリセルラーゼ、又は、配列番号4のアミノ酸番号1〜793のアミノ酸配列からなるBacillus属細菌由来のアルカリセルラーゼ、或いは当該アミノ酸配列と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるセルラーゼが挙げられる。
また、プロテアーゼの具体例としては、微生物由来、特にバチルス属細菌由来のセリンプロテアーゼや金属プロテアーゼ等が挙げられる。
また、目的タンパク質又は目的ポリペプチド遺伝子は、その上流に当該遺伝子の転写、翻訳、分泌に関わる制御領域、すなわち、プロモーター及び転写開始点を含む転写開始制御領域、リボソーム結合部位及び開始コドンを含む翻訳開始制御領域、並びに分泌シグナルペプチド領域から選ばれる1以上の領域が適正な形で結合されていることが望ましい。
特に、転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が結合されていることが好ましく、更に分泌シグナルペプチド領域がバチルス属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1 kb領域であるものが、目的タンパク質又は目的ポリペプチド遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。
例えば、特開2000-210081号公報や特開平4-190793号公報等に記載されているBacillus属細菌、すなわちKSM-S237株(FERM BP-7875)、KSM-64株(FERM BP-2886)由来のセルラーゼ遺伝子と当該セルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌用シグナルペプチド領域が目的タンパク質又は目的ポリペプチドの構造遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。
より具体的には、配列番号1で示される塩基配列の塩基番号1〜659の塩基配列、又は配列番号3で示される塩基配列の塩基番号1〜696の塩基配列、或いは当該塩基配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、あるいは上記いずれかの塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加した塩基配列からなるDNA断片が、目的タンパク質又は目的ポリペプチドの構造遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。
尚、ここで、上記塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加した塩基配列からなるDNA断片とは、上記塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加しているが、遺伝子の転写、翻訳、分泌に関る機能を保持しているDNA断片を意味する。
このような目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子を有せしめることは、例えば、(1)ベクターによる導入、(2)ゲノムへの挿入を行う方法により行うことができる。
(1)ベクターによって導入する場合、その上流に「当該遺伝子の転写、翻訳、分泌に関わる制御領域、すなわち、プロモーター及び転写開始点を含む転写開始制御領域、リボソーム結合部位及び開始コドンを含む翻訳開始制御領域及び分泌シグナルペプチド領域から選ばれる1以上の領域」が適正な形で結合されている目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子を含むベクターを、コンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、或いはエレクトロポレーション法等の適当な形質転換法により導入すればよい。
ここで、ベクターとしては、目的とする遺伝子を宿主に導入し、増殖、発現させるための適当な運搬体核酸分子であれば特に限定されず、プラスミドのみならず、例えば、YAC,BACなどの人工染色体、トランスポゾンを用いたベクター、コスミドが挙げられ、プラスミドとしては例えば、pUB110、pHY300PLKが挙げられる。
また、(2)ゲノムへの挿入は、例えば相同組換えによる方法を用いればよい。すなわち、目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子に導入を起こさせる染色体領域の一部を結合したDNA断片を、微生物細胞内に取り込ませ、当該染色体領域の一部領域における相同組換えを起こさせることによって、ゲノムに組み込ませることができる。
ここで、導入を起こさせる染色体領域としては、特に制限されないが、必須でない遺伝子領域若しくは必須でない遺伝子領域上流の非遺伝子領域が好ましい。
かくして作製された微生物は、目的タンパク質又は目的ポリペプチドの生産性が高いものである。かかる効果は、翻訳伸張反応の活性化などによって翻訳効率が向上したことにもとづくと推測される。
本発明の組換え微生物を用いた目的タンパク質又は目的ポリペプチドの生産は、当該菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須成分を含む培地に接種し、通常の微生物培養法にて培養し、培養終了後、タンパク質又はポリペプチドを採取・精製することにより行えばよい。
以下の実施例におけるDNA断片増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)には、GeneAmp PCR System(アプライドバイオシステムズ)を使用し、Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ)と付属の試薬類を用いてDNA増幅を行った。PCRの反応液組成は、適宜希釈した鋳型DNAを1μL、センス及びアンチセンスプライマーを各々20pmol及びPyrobest DNA Polymeraseを2.5U添加して、反応液総量を50μLとした。PCRの反応条件は、98℃で10秒間、55℃で30秒間及び72℃で1〜5分間(目的増幅産物に応じて調整。目安は1kbあたり1分間)の3段階の温度変化を30回繰り返した後、72℃で5分間反応させることにより行った。
また、以下の実施例において、遺伝子の上流・下流とは、複製開始点からの位置ではなく、上流とは各操作・工程において対象として捉えている遺伝子の開始コドンの5’側に続く領域を示し、一方、下流とは各操作・工程において対象として捉えている遺伝子の終始コドンの3’側に続く領域を示す。
また、枯草菌の形質転換は以下の様に行った。すなわち、枯草菌株をSPI培地(0.20% 硫酸アンモニウム、1.40% リン酸水素二カリウム、0.60% リン酸二水素カリウム、0.10% クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50% グルコース、0.02% カザミノ酸 (Difco)、5mM 硫酸マグネシウム、0.25μM 塩化マンガン、50μg/mL トリプトファン)において37℃で、生育度(OD600)の値が1程度になるまで振盪培養した。振盪培養後、培養液の一部を9倍量のSPII培地(0.20% 硫酸アンモニウム、1.40% リン酸水素二カリウム、0.60% リン酸二水素カリウム、0.10% クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50% グルコース、0.01% カザミノ酸 (Difco)、5mM 硫酸マグネシウム、0.40μM 塩化マンガン、5μg/mL トリプトファン)に接種し、更に生育度(OD600)の値が0.4程度になるまで振盪培養することで、枯草菌株のコンピテントセルを調製した。次いで調製したコンピテントセル懸濁液(SPII培地における培養液)100μLに各種DNA断片を含む溶液(SOE−PCRの反応液等)5μLを添加し、37℃で1時間振盪培養後、適切な薬剤を含むLB寒天培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、1.5%寒天)に全量を塗沫した。37℃における静置培養の後、生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体のゲノムを抽出し、これを鋳型とするPCRによって目的とするゲノム構造の改変が為されたことを確認した。
培養上清中のアミラーゼの活性測定には、リキテックAmy EPS(ロシュ・ダイアグノスティック社)を使用した。すなわち1% NaCl-1/7.5M リン酸緩衝液 (pH7.4 和光純薬工業)で適宜希釈したサンプル溶液50μLに、100μLのR1・R2混合液(R1(カップリング酵素):R2(アミラーゼ基質)=5:1(Vol.))を加えて混和し、30℃にて反応を行った際に遊離するp-ニトロフェノール量を405nmにおける吸光度(OD405nm)変化により定量した。1分間に1μmolのp-ニトロフェノールを遊離させる酵素量を1Uとした。
実施例1 tsf遺伝子発現強化株の構築
以下の様に、tsf遺伝子の発現を強化した変異株の構築を行った(図1参照。)。
枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したPVG-FWとPVG-R、及びtsf/PVG-Fとtsf/Cm-Rのプライマーセットを用いてspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む0.2kb断片(A)、及びtsf遺伝子を含む0.9 kb断片(B)をPCRにより増幅した。またプラスミドpC194(J. Bacteriol. 150 (2), 815 (1982))を鋳型として、表1に示したcatfとcatrのプライマーセットを用いてクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む0.85kb断片(C)をPCRにより増幅した。
次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したPVG-FW2とcatr2のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(A)(B)(C)の順になる様に結合させ、spoVG転写開始制御領域とリボソーム結合部位がtsf遺伝子の上流に連結し(spoVG遺伝子の開始コドンの位置にtsf遺伝子の開始コドンが位置する様に連結)、更にその下流にクロラムフェニコール耐性遺伝子が結合した1.9kbのDNA断片(D)を得た。続いて枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したamyEfw2とamyE/PVG2-R、及びamyE/Cm2-FとamyErv2のプライマーセットを用いてamyE遺伝子の5'側領域を含む1.0kb断片(E)、及びamyE遺伝子の3'側領域を含む1.0kb断片(F)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(E)(F)(D)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(E)(D)(F)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にtsf遺伝子が連結し、更にその下流にクロラムフェニコール耐性遺伝子が結合した1.9kbのDNA断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長3.8kbのDNA断片(G)を得た。得られた3.8kbのDNA断片(G)を用いてコンピテントセル法により枯草菌168株を形質転換し、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示すamyEfw2とtsf/Cm-R、及びtsf/PVG-FとamyErv2のプライマーセットを用いたPCRを行うことによって2.1kb及び2.7kbのDNA断片の増幅を確認し、枯草菌168株ゲノム上のamyE遺伝子部位にspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にtsf遺伝子が連結したDNA断片が挿入されたことを確認した。この様にして得られた菌株を168PVG(tsf)株と命名した。
実施例2 frr遺伝子発現強化株の構築
また、168PVG(tsf)株構築において用いたプライマーのうち、tsf/PVG-Fを表1に示すfrr/PVG-Fに、またtsf/Cm-Rを表1に示すfrr/Cm-Rに替えて用いることにより、同様の方法にてfrr遺伝子発現強化株168PVG(frr)株を構築した(図2参照。)。
Figure 0004839169
実施例3 枯草菌変異株のアルカリアミラーゼ分泌生産評価−1
実施例1及び2にて得られた168PVG(tsf)株及び168PVG(frr)株の目的タンパク質生産性 評価は、配列番号6のアミノ酸番号1〜480で示されるアミノ酸配列からなるバチルス属細菌由来のアルカリアミラーゼの生産性を指標として、以下の様に行った。
バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-K38株より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示されるK38matu-F2(ALAA)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリアミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur.J.Biochem.,268,2974,2001)をコードする配列番号5で示される塩基配列の1.5kbのDNA断片(H)を増幅した。またバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とS237ppp-R2(ALAA)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル配列をコードする領域を含む0.6kbのDNA断片(I)を増幅した。
次いで、得られた1.5kbのDNA断片(H)及び0.6kbのDNA断片(I)の2断片を混合して鋳型とし、表1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、アルカリセルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル配列をコードする領域の下流にアルカリアミラーゼ遺伝子が連結した2.1kbのDNA断片(J)を得た。得られた2.2kbのDNA断片(J)をシャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入し、アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を構築した。
実施例1にて得られた168PVG(tsf)株及び168PVG(frr)株、更に対照として枯草菌168株にアルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を、プロトプラスト形質転換法によって導入した。これによって得られた菌株を10mLのLB培地で一夜37℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.05mLを50mLの2xL−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で5日間、振盪培養を行った。培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清のアルカリアミラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産されたアルカリアミラーゼの量を求めた。
この結果、表2に示した様に、宿主として168PVG(tsf)株及び168PVG(frr)株を用いた場合、対照の168株(野生型)の場合と比較して高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められた。これは、168PVG(tsf)株にてtsf遺伝子の発現が野生株より高まり翻訳伸長因子であるEF-Ts(Tsfタンパク質)の細胞内量が増加したこと、或いは168PVG(frr)株にてfrr遺伝子の発現が野生株より高まりリボソームリサイクリングファクター(Frrタンパク質)の細胞内量が増加した結果、それぞれの株におけるタンパク質の翻訳効率が向上したことによるものと推測された。
Figure 0004839169
比較例 efp遺伝子発現強化株のアルカリアミラーゼ分泌生産評価
実施例1に示した168PVG(tsf)株の構築と同様に、tsf遺伝子同様、翻訳伸長因子をコードするefp遺伝子の発現を強化した168PVG(efp)株の構築を行った。すなわち、168PVG(tsf)株構築において用いたプライマーのうち、tsf/PVG-Fを表1に示すefp/PVG-Fに、またtsf/Cm-Rを表1に示すefp/Cm-Rに替えて用いることにより、同様の方法にてefp遺伝子発現強化株168PVG(efp)株を構築した。構築した168PVG(efp)株のアルカリアミラーゼ分泌生産評価を実施例3と同様に行ったところ、表3に示した様に、168PVG(efp)株の生産性は野生株である168株と同等であり、efp遺伝子の発現強化により翻訳伸長因子EF-P(Efpタンパク質)の細胞内量が増加しても、タンパク質の翻訳効率は向上しないものと考えられた。
Figure 0004839169
Tsfタンパク質をコードする遺伝子を導入する方法(tsf遺伝子の発現を強化した変異株の構築)の概略を示す図である。 Frrタンパク質をコードする遺伝子を導入する方法(frr遺伝子の発現を強化した変異株の構築)の概略を示す図である。

Claims (6)

  1. 目的タンパク質又は目的ポリペプチドをコードする遺伝子を有し、その上流に、転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が結合し、分泌シグナル領域がバチルス属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1kb領域由来のものである、微生物であって、Tsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする遺伝子を制御する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位の全部若しくは一部を枯草菌spoVG遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位に置換するか若しくは枯草菌spoVG遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を挿入した微生物、又はTsfタンパク質及び/又はFrrタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸断片であって、その上流側で枯草菌spoVG遺伝子の転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位と結合している核酸断片を導入してなる微生物。
  2. 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が、配列番号1で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜659の塩基配列、配列番号3で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列又は当該塩基配列のいずれかと90%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片である請求項記載の組換え微生物。
  3. 微生物が、バチルス属細菌である請求項1又は2記載の微生物。
  4. バチルス属細菌が、枯草菌である請求項記載の微生物。
  5. 目的タンパク質が、Bacillus sp. KSM-K38株由来のα-アミラーゼである請求項1〜のいずれか1項記載の微生物。
  6. 請求項1〜のいずれか1項記載の微生物を用いる、目的タンパク質又は目的ポリペプチドの製造方法。
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