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JP2007302767A - 易ゲル化デンプン部分分解物 - Google Patents

易ゲル化デンプン部分分解物 Download PDF

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Abstract

【課題】室温温度の水への溶解し易さを確保し、かつ、良好な粘度維持を可能とした調製時の取り扱いが容易であり、溶解に際して加熱を要することなくゲル化性を発現する易ゲル化デンプン部分分解物を提供する。
【解決手段】馬鈴薯デンプンをはじめとする天然デンプンを原料デンプンとし、これを主としてα−アミラーゼ等により分解して、分子量分散度{重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}を200〜3000とし、かつ、デキストロース当量(DE)を0.5〜5.5として制御することにより得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、易ゲル化デンプン部分分解物に関し、特に食品加工、食品添加分野等に好適な素材となる易ゲル化デンプン分解物に関する。
デンプンを軽度に加水分解して得られるデンプン部分分解物は、直鎖構造や分枝構造を有する糖鎖であり、デキストリン、マルトデキストリン、マルトオリゴ糖等と呼ばれる。これらデキストリン類のデンプン部分分解物は、食品の粘性付与剤、結着剤、噴霧乾燥用の基材等の用途に利用されている。
加えて、デキストリン類は水溶時の濃度に依存して濁りや沈澱を伴いゲル化を呈することが知られている。例えば、低濃度では牛乳やヨーグルト様であり、高濃度ではバター、ショートニング等の油脂様の性状となる。
このため、デキストリン類の水溶物が呈する種々特有な感触(テクスチャ)、舌触り等を利用し、油脂代替食品、擬似油脂状物としての活用が提案されている(例えば特許文献1,特許文献2参照)。例えば、ハム、ソーセージ等の畜肉加工食品にあっては、脂身の小塊片の代用品として用いられることもあり、食品の低カロリー化素材のとして注目されている。
一般に液状のデキストリン類は経時変化により、外観の濁りや沈澱が生じ易い欠点があり、その多くは粉末状に乾燥されて流通されている。ところが、既存のデンプンの部分分解物であるデキストリン類の乾燥粉末から前記の擬似油脂状物を得る場合、適切に加熱しなければ十分な分散、溶解は行われない。デキストリン類の分散、溶解に濃淡が生じると、粘度の不均一さやデンプン粉の感触が残り、舌触り等を悪くして商品価値を下げてしまう問題がある。
前記の畜肉加工分野においては、常温またはそれ以下の低温度環境下で加工されることが大半であり、低温処理に関する設備は充実されている。しかしながら、あえてデキストリン類処理のために加熱等に要する専用装置を必要とすることは、畜肉加工業者において設備負担の増加を招くこととなり、極力負担の回避が望まれる。このように、既存のデンプン部分分解物であるデキストリン類の乾燥粉末では、調製時の取り扱い易さは必ずしも良好とは言えず、需要者の利便性に応えた新規のデンプン部分分解物が求められていた。
特表2000−503208号公報(WO97/25875) 特許第3169430号公報
その後、発明者らは、デンプン部分分解物について室温温度の水への溶解し易さを確保しながらも、良好な粘度維持を可能とすべく鋭意研究するところ、分子量分散度及びデキストロース当量を指標として好適に分解を制御することにより、粘度と溶解性を制御可能であることを見出した。
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、室温温度の水への溶解し易さを確保し、かつ、良好な粘度維持を可能とした調製時の取り扱いが容易な易ゲル化デンプン部分分解物を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、原料デンプンを分解して、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)を200〜3000とし、かつ、デキストロース当量(DE)を0.5〜5.5としたことを特徴とする易ゲル化デンプン部分分解物に係る。
請求項2の発明は、前記原料デンプンが天然デンプンである請求項1に記載の易ゲル化デンプン部分分解物に係る。
請求項3の発明は、前記原料デンプンが馬鈴薯デンプンである請求項1に記載の易ゲル化デンプン部分分解物に係る。
請求項1の発明に係る易ゲル化デンプン部分分解物によると、原料デンプンを分解して、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)を200〜3000とし、かつ、デキストロース当量(DE)を0.5〜5.5としたため、室温温度の水への溶解し易さを確保すると同時に、良好な粘度維持を可能とすることができる。この結果、各種加工時の調製における取り扱いの利便性が大きく向上する。
請求項2の発明に係る易ゲル化デンプン部分分解物によると、請求項1の発明において、前記原料デンプンが天然デンプンであるため、安価かつ容易に原料調達が可能である。
請求項3の発明に係る易ゲル化デンプン部分分解物によると、請求項1の発明において、前記原料デンプンが馬鈴薯デンプンであるため、分子量分散度や粘度の指標において他の原料デンプンと比較して良好な結果を得ることができ、室温温度の水への溶解性と共に、良好な粘度維持性能を得ることができる。また、馬鈴薯デンプンの水溶後のゲル化物は無味無臭であり、舌触りにおいて粉の感触が無いことから、加工用としても好都合である。
本発明の易ゲル化デンプン部分分解物は、請求項1の発明に規定するように、原料となるデンプンを分子量分散度及びデキストロース当量を制御して得た分解処理物である。通常デンプンは、α−D−グルコピラノース(以下、D−グルコースとする。)がα−1,4結合により直鎖状につながったアミロースと、D−グルコースがα−1,4結合による直鎖部分とα−1,6結合による分枝部分を有するアミロペクチンからなる。適宜デンプン内のα−1,4結合の分解が進行することに伴い、様々な分子量のデキストリン類が生成される。この結果、デンプン部分分解物の水溶化及びゲル化(保水)が進行するものと考えられる。
デンプンの分解手法としては、常法の酸環境下による加水分解、酵素的加水分解のいずれかまたは両方の併用とすることも可能である。しかし、酸加水分解法を用いる場合には、塩酸、リン酸等の強酸の使用による設備の劣化を考慮しなければならない。これに対し酵素処理によると、比較的穏和な水素イオン濃度域での反応が可能であり、その取り扱いは比較的安全である。また、使用する酵素に応じて至適温度(最適温度)、至適pH(最適pH)を制御することにより容易に反応系を制御することができる。つまり、デンプンの分解状況に合わせて加温、加熱し、酵素を失活させることにより適切な時点で反応停止とすることができる。実施例においては、酵素的分解のみを用いた。
デンプンの分解に用いる酵素としては、デンプンのα−1,4結合を加水分解可能な酵素であればいずれでも良く、α-アミラーゼ[1,4−α−D−glucan glucanohydrolase(EC 3.2.1.1)]等の種々の酵素が最適である。これらの酵素の多くは、Aspergillus属、Bacillus属等に由来する。むろん、速度反応論の見知から、反応性を高めるため至適温度は高いほど望ましい。従って、至適温度を70ないし90℃とする同属の好熱菌等由来のα-アミラーゼであるほど好ましい。
デンプン部分分解物の水溶化については、その分解の進行度に起因することが以前から知られている。これには、デキストロース当量(Dextrose Equivalent:以下、DEとする。)を指標に用いて評価することができる。未分解ならばDE=0であり、完全分解ならばDE=100と示される。例えば、油脂代替食品等の開示として特表2005−527214号公報(同公報のDEはLuff−Schoorl法による。)がある。
本発明においても、1つの指標としてデキストロース当量(本発明はベルトラン法に基づく。)を用いることにより、デンプンの分解促進状況を把握することができる。後述の実施例から自明なように、その数値を0.5〜5.5とし、比較的軽度の分解に抑制していることが必須となる。さらには、デキストロース当量を3.0〜4.5とすることがより望ましい。
ところが、デキストロース当量のみの評価では、単に分解生成物の分解の程度をおおまかに把握しているに過ぎず、この指標のみから、水への溶解し易さと粘度維持の両立点を得ることはなかった。
以前より、デンプンの部分分解物であるデキストリン類について、その溶解時の性状を安定化させる手法が提唱されている。例えば、特昭61−205494号公報のようにイオン交換樹脂を用いる方法であり、分枝デキストリン類と直鎖オリゴ糖類を分画することが可能である。特昭61−205494号公報の方法によると、液状で安定なデキストリン類を望む場合、一度、所望の分解物のDEよりも高いDEまで分解した後、高分子成分を分画、回収して調製していた。この場合、分解の程度が高まることにより、粉末化されていても冷水への溶解性は確保されるものの、ゲル化の性質は失われてしまう。
これに対して、溶解後にゲル化が望まれる場合には、デンプン部分分解物は広い分子量分布を有していることが望まれる。しかし、あまりにも広汎な分子量分布を有する場合、当然ながら水溶性が損なわれるため、加熱処理が不可欠である。また、ゲル化は冷却により生じる。従って、デキストリン類からなるゲル化物を得るためには、専用の加熱溶解の設備のみならず相応の冷却設備も必要となる。すなわち、デンプン部分分解物における「易水溶化」と「ゲル化」は相反する性質であり、互いの両立は非常に困難とされてきた。
発明者らは、デンプン部分分解物における水への溶解性と粘度(ゲル化)の関係を検討するに当たり、前出のデキストロース当量に加え、デンプン部分分解物の分子量分布を適切に制御できれば、水溶化とゲル化の相反する性質を両立できる知見に至った。
デンプン等の天然高分子化合物や樹脂高分子化合物の性質を把握する上で平均分子量が広く用いられる。この平均分子量は、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)等が一般に用いられる。数平均分子量(Mn)は分子の構成を単純に数で平均化した指標である。重量平均分子量(Mw)は、各分子の数に分子量を乗じた後に平均を求めた指標である。重量平均分子量は構成する分子の大きさの影響を鋭敏に受ける。このため、数平均分子量では反映され難いようなごく少量の大分子の影響も平均分子量としての値の考慮に入れることができる。さらに、Z平均分子量は前記の重量平均分子量よりも大分子の影響を受ける。
当初、デキストロース当量と数平均分子量により、デンプン部分分解物の構成の把握を試みていた。しかし、デンプンの分解物が水溶時に好適なゲル化性を発現するためには、高分子量成分の存在が必須である。数平均分子量のみの評価では、デンプン部分分解物中に存在する大分子の影響が減殺される。また、数平均分子量は、デキストロース当量とほぼ逆相関の関係が成立する重複した指標であり、これのみでは正確さに欠けることが明らかとなった。次に、重量平均分子量の採否を検討するところ、同指標の分布は広汎過ぎるため、実施例の好適なゲル化性の評価には不十分であった。Z平均分子量も重量平均分子量の場合と同様である。
このような経緯を踏まえ、デンプン部分分解物中に存在する大分子の影響及び各々の分子量を有する分子の分布の仕方をより重視する必要がある。よって、本発明においては、分子量分布の評価に当たり、{重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}として示される「分子量分散度」を採用し、これをデキストロース当量と併用することにより解決を図った。なお、{Z平均分子量(Mz)/数平均分子量(Mn)}として示される「分散度」を検討したものの、数値範囲の広がり方が大きく、ゲル化性の良否の判断精度がやや劣る。
そこで、室温温度の水への溶解し易さ、並びに溶解後のゲル化性の発現を考慮して、分子量分散度{重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}は200〜3000、好ましくは400〜2000の範囲となる。分子量分散度が200以下ならば、実用的なゲル化性を得ることが困難となりやすい。また、分子量分散度が3000以上ならば、極端なゲル化の強度となる他、水溶の不具合を引き起こす等、室温温度の水への溶解し易さという本発明の目的を達することができない。なお、分子量分散度400〜2000に含まれる試料は水溶性及びゲル化の強度において両立でき良好である。
実施例において、ゲル化の評価に際してはレオロジー等の物性評価として確立されているゼリー強度:JIS−K−6503(2001)が用いられる。
原料となるデンプンは、請求項2の発明に規定するように、天然デンプンが用いられる。天然デンプンは、特段の化学的等の処理を受けていないデンプンであり、安価かつ容易に原料調達が可能である。天然デンプンとしては、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、コメ、サツマイモ(甘藷デンプン)、ジャガイモ(馬鈴薯デンプン)、エンドウ、緑豆、タピオカ等が例示される。
特にこれらの中でも、請求項3の発明に規定するように、ジャガイモ(馬鈴薯デンプン)が好例である。馬鈴薯デンプンは、後述の実施例に示す分子量分散度や粘度(ゲル化)の指標において他のデンプンと比較して良好な結果が示されているためである。詳細な機構は今のところ不明である。おそらく、各デンプン毎に直鎖や分枝の分子構造が異なるため、同一の酵素反応を試みたとしても分解産物が大きく異なるものと推察される。また、馬鈴薯デンプンの水溶後のゲル化物は無味無臭であり、舌触りにおいて粉の感触が無いことから、加工用としても好都合である。
易ゲル化デンプン部分分解物を得るに際し、原料デンプンは、前掲のデキストロース当量及び分子量分散度の両指標が同時に満たされる時点まで、酵素的に部分分解される。酵素的分解の場合、両指標が同時に満たされたならば、速やかにデンプン部分分解物は加熱され、酵素の失活が行われる。また、酸加水分解の場合、速やかに中和、脱塩が行われる。こうして、最適な数値からの乖離が抑えられ、所望のデキストロース当量及び分子量分散度に規定される。
続いて、酵素分解のままでは分解産物の水溶液であるため、当該溶液に対して乾燥が行われる。乾燥することにより、防腐や保存、取り扱い易さ等の利便性が向上する。乾燥方法には、適宜の公知手法が用いられ、凍結乾燥、真空ドラムドライヤによる乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等が用いられる。デンプン部分分解物は、もとより呈味や風味維持が所望されていないため、量産性に優れた噴霧乾燥が用いられる。
易ゲル化デンプン部分分解物の製造において、作業の簡便さから通常1種類の原料デンプン(例えば、馬鈴薯デンプンのみ)を適度に制御しながら酵素分解することにより得られる。これに加えて、原料デンプンを別々に分解し、予め異なる分子量分散度に分解したデンプン分解物同士を事後的に所望の割合で混合して易ゲル化デンプン部分分解物を調製することもできる。むろん、原料デンプンの分解に当たり、単一種類のデンプンを異なる分子量分散度毎に調製して事後混合する方法や、複数種類のデンプンを異なる分子量分散度毎に調製して事後混合する方法等、適宜に選択できる。この方法の利点に次のとおりである。例えば、原料デンプンを調達するに当たり、原料の収穫地、収穫時期、収穫年等の環境要因による品質の変動がありうる。そこで、事後的にデンプン分解物同士を混ぜ合わせることにより、極力品質を安定させることができる。
本発明の易ゲル化デンプン部分分解物は、室温温度域の水に容易に溶解可能である。同時に、濃度依存的ながらその溶解液はゲル化の物性を有する。従って、例えば畜肉加工分野において切望されていた油脂代替食品、擬似油脂状物を提供することができる。具体的に、高度のゲル化物であるならば、低カロリー擬似脂塊となりうる。他に、乳脂、クリーム、マーガリン、バター、ショートニングの代用品、添加増量物等としても有望であり、食品加工や製菓の分野、あるいは、医薬品の包装やコーティングの用途、さらには嚥下障害用の薬剤を保護するゼリー様物質等の用途も想定できる。
[分析機器]
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、及び分子量分散度(Mw/Mn)の測定に当たり、HPLCによるゲル濾過クロマトグラフ法とした。同装置の示差屈折検出器は株式会社島津製作所製:RID−10A、ポンプは株式会社島津製作所製:LC−10ADvp、カラムオーブンは株式会社島津製作所製:CTO−10ASvp、カラムは昭和電工株式会社製:KS−804(8×300mm)とした。
実施例並びに比較例のいずれも、1w%(w/v)の濃度(重量パーセント濃度)に純水に希釈して溶解し、0.45μmのメンブレンフィルターを用いて濾過後、前記のHPLCに装填して計測した。キャリアには純水を用い、流速1.0mL/分、カラム温度80℃とした。分子量標準物質として昭和電工株式会社製:SHODEX STANDARD P−82(プルラン;重量平均分子量787000,194000,46700,5900)を用いた。分析により得られた分子量分布のデータは、システムインスツルメンツ株式会社製のクロマトグラム分析ソフトウエアSIC480データステーションを用い解析し、分子量分散度(Mw/Mn)等を算出した。
[ゲル化の評価]
実施例並びに比較例の水溶物のゲル強度については、溶解した試料をJIS−K−6503(2001)に準拠し、ゼリー強度として測定、評価した。溶解は25℃の水を用い、主に25w%の固形分濃度(w/v)に揃えてデンプン分解物の試料を塊にしないようにかき混ぜながら溶かした。溶解後、10℃に冷却し静置した。ゼリー強度の物性測定装置には、株式会社サン科学製:レオメーターCOMPAC−100IIを用いた。
[デキストロース当量]
DEについては、還元糖の定量法として一般的であるベルトラン法に従い、実施例並びに比較例のデンプン分解物を測定した。
[デンプンの処理]
市販の馬鈴薯デンプン(実施例1,3,5)、コーンスターチ(実施例2及び比較例6)、甘藷デンプン(実施例4)に対し、耐熱性α−アミラーゼ(大和化成株式会社製:クライスターゼT−5)を添加し、ミニクッカー(ノリタケエンジニアリング株式会社製)を用いて酵素処理により液化した。これらの液化物をスプレードライヤにより噴霧乾燥し、実施例(実施例1ないし5)並びに比較例6のデンプン分解物を得た。
次に、馬鈴薯デンプンの処理をテスト機から実際の生産装置に拡大して行った(実施例6)。前出の馬鈴薯デンプンに同様の耐熱性α−アミラーゼを添加し公知のバッチ式液化装置によりデンプンの液化物を得た。この液化物を活性炭処理並びに濾過しスプレードライヤにより噴霧乾燥し、実施例6のデンプン分解物を得た。当該デンプン分解物の水分測定には赤外線水分計を用いた。同デンプン分解物の水分含量は6.5%であった。
比較例1ないし5は市販品のデンプン部分分解物であり、対比のために用いた。比較例1はフタムラスターチ株式会社製のワキシーコーンスターチ原料デキストリン(FSD−703)、比較例2は同社製のワキシーコーンスターチ原料デキストリン(FSD−301)、比較例3は同社製のコーンスターチ原料デキストリン(FSD−807)、比較例4は同社製の甘藷デンプン原料デキストリン(FSD−607)、比較例5は同社製のコーンスターチ原料粉末水飴(HLD N−25)である。
下記の表1は、実施例1ないし6及び比較例1ないし6について、前記の測定装置、測定方法を用いて測定したデキストロース当量(DE)、分子量分散度(Mw/Mn)、ゼリー強度(25w%)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)を示す。
なお、ゼリー強度の数値と官能による評価は、概ね以下の感触、弾力等と対応する。
ゼリー強度300〜2000は、歯ごたえのある型抜きゼリー様である。
ゼリー強度100〜300は、軟らかい舌触りのカップゼリー様である。
ゼリー強度10〜100は、スムースに流動するプリン様である。
ゼリー強度0〜100は、流動性が非常に高いヨーグルト様である。
ゼリー強度0とは、水溶したものの液状のままである。
Figure 2007302767
表1から理解されるとおり、実施例のデンプン部分分解物は、室温の水への溶解性と共に粘度(ゲル化)も生じることが明らかとなった。この点は、従来品である比較例のデンプン部分分解物が水溶性のために粘度を喪失したことと大きく相違する。ゆえに、実施例のデンプン部分分解物は別途加熱処理、加熱設備を必要とすることなくゲル化可能であり、ゲル化の調製が容易となる。
ゼリー強度に注目して、デキストロース当量及び分子量分散度を検討する場合、適度にデンプンの分解が進行している必要があることから、DEの下限を0.5とすることが適当である。また、極端にデンプンの分解が進行すると、保水を担う高分子の量が減少する。従って、DEの上限を5.5とすることができる。さらに、実用的なゼリー強度の発現を考慮すると、DEは3.0〜4.5である。
次に、DEと併せて評価する分子量分散度においても、大分子量成分が少なくなりすぎると、ゲル化の強度が低下することから、分子量分散度の下限を200とすることが適当である。また、過大に分子量分散度が高まる場合、室温程度の水への溶解性に支障を来すため、適度な範囲に抑制する必要がある。そこで、分子量分散度の上限は3000と考えられる。実用的なゼリー強度の発現を考慮すると、DEと併せて分子量分散度は400〜2000である。
実施例2及び3において、同様なDE、分子量分散度を示すものの、ゼリー強度に開きが生じた要因の詳細は不明である。おそらく、原料デンプンの種類によりデンプンの構造組成が異なることが類推できる。実施例1ないし6より、総じて原料デンプンには、馬鈴薯デンプンが良好である。得られた知見から発明者らは、ある特定の分子量を有する分子の全体分子に占める存在数が何らかの影響を与えることを推察する。
上記のとおり、デキストロース当量及び分子量分散度が粘度(ゲル化)の決定要因であることを把握した発明者らは、ゼリー強度の濃度依存性を測定した。すなわち、固形分濃度(w/v)を15w%、20w%、25w%、30w%と変化させた場合のゼリー強度を測定した。表2の結果のとおり、実施例6−1,6−2,6,6−3の順である。同時に、市販のゼラチンに関しても固形分濃度(w/v)を3w%、4w%とするときのゼリー強度を測定した。これは比較例7−1,7−2の順である。
Figure 2007302767
表2から、デンプンの部分分解物のゲル化における特性に濃度依存的であることが確認できた。また、使用量(固形分濃度)によるものの、ゼラチンに匹敵、それ以上の粘度(ゼリー強度)を得ることができる。
次に、発明者らは、デンプンの部分分解物を溶解する際に温度が影響を与えるか否かについて、検証した。上記の実施例、比較例にあっては、いずれも室温として標準的な25℃の水に溶解して得た結果である。そこで、実施例6のデンプン部分分解物を25w%固形分濃度として、10℃及び15℃の水、90℃の湯に溶解後、冷却してゼリー強度を測定した。表3の結果のとおり、実施例9−1,9−2,9−3の順である。
Figure 2007302767
表3より、冷水と熱水との間におけるゼリー強度の差は軽微であり、溶解温度に関わらず、デンプン部分分解物の溶解性及びゲル化性の発現を確認することができた。
さらに、発明者らは、デンプン部分分解物の加熱劣化の有無も調べた。実施例6はデンプン部分分解物を単に水に溶解して得たゲル化物である。実施例6のゲル化物を1度煮沸後に溶解(ゾル化)して再度冷却して得たゲル化物が実施例10−1である(1回煮沸)。実施例10−1のゲル化物を再度煮沸、冷却して得たゲル化物が実施例10−2である(2回煮沸)。実施例10−2のゲル化物を再度煮沸、冷却して得たゲル化物が実施例10−2である(3回煮沸)。各実施例のゼリー強度は表4のとおりである。
Figure 2007302767
表4から明らかなように、煮沸回数に関わらず粘度(ゼリー強度)には変化が見られない。実施例のデンプン部分分解物は加熱・冷却に見られる温度変化の影響を受けにくい素材である。すなわち、温度変化を伴う用途に用いたとしても、冷却後には当初の粘性が復帰することが明らかである。従って、缶詰やレトルト食品等の加熱、冷却が繰り返される食品への用途に好適である。

Claims (3)

  1. 原料デンプンを分解して、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)を200〜3000とし、かつ、デキストロース当量(DE)を0.5〜5.5としたことを特徴とする易ゲル化デンプン部分分解物。
  2. 前記原料デンプンが天然デンプンである請求項1に記載の易ゲル化デンプン部分分解物。
  3. 前記原料デンプンが馬鈴薯デンプンである請求項1に記載の易ゲル化デンプン部分分解物。
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