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JP2007291511A - 靭性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

靭性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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JP2007291511A JP2007078177A JP2007078177A JP2007291511A JP 2007291511 A JP2007291511 A JP 2007291511A JP 2007078177 A JP2007078177 A JP 2007078177A JP 2007078177 A JP2007078177 A JP 2007078177A JP 2007291511 A JP2007291511 A JP 2007291511A
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Hirofumi Otsubo
浩文 大坪
Tomoyuki Yokota
智之 横田
Shigeru Endo
茂 遠藤
Nobuo Shikauchi
伸夫 鹿内
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JFE Steel Corp
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Abstract

【課題】靭性および板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.3%、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.1〜3%、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、平均粒径が40μm以上のフェライト相とパーライト相とからなる組織を有する鋼素材を、(Ac変態点+30℃)〜(Ac1変態点+100℃)の温度域の温度に加熱したのち、累積圧下率80%以上、圧延終了温度550℃以上とする小圧下多パス圧延を施し、ついで空冷する。これにより、平均粒径:3μm以下の微細フェライト相を30面積%以上含むフェライト相を主相とし、第二相が伸長したパーライト相で、平均短軸径が5μm以下である組織を有し、靭性および板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板となる。さらにNb、V、Tiのうちの1種または2種以上、およびCu、Ni、Cr、Moのうちの1種または2種以上を含有してもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、タンク等の溶接鋼構造物用として好適な高張力厚鋼板に係り、とくに靭性、さらには板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性の改善に関する。なお、ここでいう「高張力厚鋼板」とは、板厚:10 mm以上で、引張強さ:500MPa以上を有する鋼板をいうものとする。
従来から、高強度で高靭性の鋼板を目標として、強度、靭性の向上方法について種々の研究が行われてきた。そして、強度と靭性をともに向上させるには、結晶粒の微細化が有効であることが知られている。結晶粒微細化の手法として、工業的に広く利用されているものに加工熱処理(TMCP:Thermo-Mechanical Control Process)がある。例えばフェライトを主体とする組織においては、TMCPを適用することにより比較的容易に、平均粒径:5μm程度までの結晶粒の微細化が達成されている。
最近、強度、靭性の更なる向上を目的として、結晶粒の更なる微細化方法が追求されている。そして、フェライト結晶粒径を1μm前後までの微細化が可能であるとする種々の方法が提案されている。これらを大別すると、
(1)オーステナイト(γ)からフェライト(α)ヘの変態を利用する方法、
(2)フェライト(α)の再結晶を利用する方法
に分類できる。
(1)のγからαヘの変態を利用する方法は、準安定γ域から(γ+α)二相域の温度域で、大圧下加工を加え、γ→α変態後に、2μm前後以下の微細フェライト粒と第二相粒からなる組織を得ようとする方法である。一方、(2)のαの再結晶を利用する方法(以下、「フェライト連続再結晶法」ともいう)は、α温度域で加工を行い、αの連続再結晶を利用して、2μm前後以下の微細フェライト粒からなる組織を得ようとする方法である。このフェライト連続再結晶法では、累積圧下効果を利用できるため、小圧下多パス圧延が可能となる。また変態を利用しないため、冷却による組織の不均一を生ずることがないという利点がある。小圧下多パス圧延は、厚鋼板の安定製造に最も適していると考えられる。
このフェライトの連続再結晶では、新しい粒の核生成・成長による従来の不連続再結晶とは異なり、回復により生じる小傾角粒界で囲まれたサブグレインが、歪の増大とともに大傾角化して、大角粒界に囲まれた粒となる、というメカニズムによる。このため、フェライト粒径は、温度と歪速度の関数である、Zener−Hollomonパラメータで一義的に決まり、歪を与えるほど連続再結晶が促進され、超微細粒を形成する領域が増加することになる。
このようなフェライト連続再結晶法を利用し、結晶粒を微細化した鋼材の製造方法については、すでに、多くの提案が成されている。例えば特許文献1には、C:0.03〜0.45%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.02〜5.0%、Al:0.001〜0.1%を含有する鋼片を、鋳造後室温まで冷却しその後再加熱するか、あるいは鋳造後冷却することなく、予備的な熱間加工を行うかまたは予備的な熱間加工を行わずに、一度600℃〜室温までの温度域に冷却したのち、700〜500℃の温度域に加熱し、該温度域で1パスまたはパス間時間を20s以内とする2パス以上の加工を歪速度0.1〜20/s、総歪量0.8〜5となる条件で行い、放冷する、靭性に優れた高張力鋼の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された技術によれば、フェライトの動的再結晶により結晶粒を1μm以下に微細化でき、靭性に優れた高張力鋼材を安価に提供できるとしている。
また、特許文献2には、C:0.05〜0.30mass%を含む鋼に、累積歪75%以上、かつ最終10%以上の圧延を650℃以下の温度で行い、粒径2.5μm以下のフェライトと粒状炭化物からなる組織を有し、粒状炭化物の体積率(%)と直径(μm)との比が8以上となる高強度超微細組織鋼の製造方法が提案されている。特許文献2に記載された技術によれば、引張強さ650MPa以上の高強度を有するとともに、超微細粒に特有の均一伸びの低下を抑制することができ、強度・均一伸びバランス、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られるとしている。
また、特許文献3には、鋼材に、350〜750℃の温度範囲において、板厚方向、板幅方向、板長手方向の累積圧下歪ε、ε、εのうち、少なくとも2つが0.3以上であり、かつ総累積圧下歪ε+ε+εが1.8以上となる多方向圧下温間多パス圧延を行なう超微細粒組織を有する厚鋼板の製造方法が提案されている。特許文献3に記載された技術によれば、多方向で温間圧延を行うことにより、フェライトの連続再結晶が促進され、合金元素を添加することなく、大角粒界に囲まれた粒径1μm以下の超微細粒を有する厚鋼板を製造することができ、高強度でかつ高靭性の厚鋼板となるとしている。
また、非特許文献1には、フェライト連続再結晶法を利用して製造された超微細粒厚鋼板の特性が記載され、超微細粒厚鋼板では、延性−脆性遷移温度(vTrs)が顕著に低温となることが示されている。
また、温間圧延から若干圧延温度を高めた二相域圧延を利用して、超微細粒を確保し、高靭性を得る方法も提案されている。例えば、特許文献4には、C、Si、Mn、P、S、Al、Nを適正量含有し、組織が、マルテンサイトあるいはベイナイト単相またはそれらの混合組織、あるいはフェライト割合が20%未満で、フェライトとマルテンサイト、ベイナイト、パーライトのうちの1種又は2種以上からなる混合組織、あるいはフェライト割合が20%以上でフェライトの平均粒径が20μm以下であり、フェライト単相組織あるいはフェライトとマルテンサイト、ベイナイト、パーライトのうちの1種又は2種以上からなる混合組織、を有する鋼を、Ac変態点〜(Ac変態点−100℃)の温度に加熱し、圧延中の鋼の温度を(Ac変態点−50℃)〜(Ac変態点−50℃)の範囲内として累積圧下率50〜90%の圧延を施す、靭性と疲労強度とに優れた高張力鋼の製造方法が提案されている。特許文献4に記載された技術で製造された鋼板は、平均フェライト粒径が1〜3μm程度の超微細粒組織を有し、引張強さ490MPa以上を有し、優れた靭性と、さらには脆性亀裂伝播停止特性、同時に良好な溶接継手疲労特性を有するとされる。
一方、船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、タンクなどの構造物に使用される鋼材は、強度、靭性などの機械的性質や溶接性に優れていることに加えて、構造安全性を確保するため、耐疲労特性に優れていることが要求される。疲労特性は、疲労亀裂発生特性と、疲労亀裂伝播特性で評価される。
溶接構造物の場合、溶接止端部は、応力集中部になりやすく、溶接による引張残留応力も作用するため疲労亀裂の発生源となることが多い。その防止策としては、なめ付け溶接等により止端部形状を改善して応力集中を緩和することや、ショットピーニングにより圧縮残留応力を導入することが知られている。しかしながら、溶接構造物には多数の溶接止端部があり、止端部ごとにその形状や残留応力状態を改善することは多大の労力と時間とを要し、施工コストの高騰を招くため、これらの方法は工業的規模での実施には不適当である。そのため、溶接構造物の耐疲労特性の向上は、使用される鋼材自体の耐疲労亀裂伝播特性の向上により図られることが多い。
例えば、特許文献5には、C:0.015〜0.20%、Si:0.40〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%を含み、P、Sを適正量に調整し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、ミクロ偏析を利用して、フェライト面積率:80%以上で、厚さ:30〜100μmの層と、マルテンサイト面積率:20%以上で、厚さ:10〜30μmの層とを板厚方向に交互に層状に配置した、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板が記載されている。
特許第3383148号公報 特開2001−240935号公報 特開2003−253332号公報 特開2002−363644号公報 特開平8-73980号公報 鉄と鋼、vol.89(2003)、No.7、p.765
鋼材の靭性は、シャルピー衝撃試験における延性−脆性遷移温度による評価に加え、シャルピー衝撃試験における吸収エネルギーでも評価される。実際、造船や建築分野で用いられる溶接構造用鋼板においては、通常、シャルピー衝撃試験の所定温度における吸収エネルギー値が規格値として指定されている場合がある。
フェライト連続再結晶法を利用した、特許文献1〜3に記載された技術で製造された鋼材は、シャルピー衝撃試験における延性−脆性遷移温度が顕著に低温となり、延性−脆性遷移温度で評価した場合には、優れた靭性を有しているといえる。しかし、非特許文献1に示されているように、フェライト連続再結晶法を利用して製造された超微細粒鋼板では、シャルピー衝撃試験における延性−脆性遷移温度は、顕著に低温となるが、吸収エネルギーは、室温で100J程度と非常に低い値しか示さない。靭性を吸収エネルギー値で評価した場合には、フェライト連続再結晶法を利用して製造された超微細粒鋼板は、優れた靭性を有しているとは言い難いことになる。
フェライト連続再結晶法を利用して製造された超微細粒鋼材では、吸収エネルギーが室温で100J程度と非常に低い値しか示さない理由については、現在のところ、明確になっているとはいえないが、(1)板面に平行にBCC金属のへき開面である(100)面が揃うことによるセパレーションの発生、あるいは(2)フェライトの連続再結晶が不十分で部分的であり、脆い加工硬化フェライトが存在する、などの理由が考えられる。非特許文献1には、多方向圧下を行なうことにより、集合組織の集積が緩和され、フェライトの連続再結晶が促進されて、セパレーションの発生が低減し、吸収エネルギーが増加することが示されている。しかし、通常の厚板圧延プロセスでは、多方向圧下を採用することは難しいという問題がある。
また、特許文献4に記載された技術は、累積圧下量が50%以上と比較的小さく、フェライトの連続再結晶法を意図的に利用した技術ではないが、特許文献4に記載された技術で製造された鋼材は、引張強さ460MPa以上の高強度と、フェライト粒径が1〜3μmの超微細粒を有し、延性−脆性遷移温度が−120℃以下という低温となるが、最近要求されるような高い吸収エネルギー値を満足するまでに至っておらず、吸収エネルギー値で評価した場合の靭性に問題を残していた。
また、特許文献5に記載された技術では、ミクロ偏析を利用して、マルテンサイトを層状に分布させるために、圧延後に、二相域の特定温度範囲まで自然冷却したのち、急速冷却を行う必要がある。このため、自然冷却といえども、冷却時に鋼板の板厚方向で均一な温度とすることは困難であり、急速冷却開始時の温度分布の不均一により、マルテンサイトの分布が板厚方向で不均一となる場合があり問題を残していた。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、シャルピー衝撃試験において高い吸収エネルギーを示し、靭性に優れ、さらには板厚方向の耐疲労亀裂伝播停止特性に優れた高張力厚鋼板およびかかる鋼板の簡便で安定した製造方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「靭性に優れた」とは、シャルピー衝撃試験の試験温度:20℃における吸収エネルギーが180J以上である場合をいうものとする。また、ここでいう「板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた」とは、ASTM E647の規定に準拠した方法で求めた、ΔK=15MPa√mにおける板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycle以下の場合をいう。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、フェライト連続再結晶法を利用して得られた超微細粒厚鋼板の、シャルピー衝撃試験における吸収エネルギー値に及ぼす、金属組織の影響について鋭意研究した。本発明者らは、まずフェライトの連続再結晶の促進度合いに着目した。そして、鋼板組織を、平均粒径3μm以下の微細フェライト相が、鋼板表層から中心部にいたるまで、フェライト相全量に対する面積率で30%以上含まれる組織とすることにより、シャルピー吸収エネルギー値が顕著に増加することを見出した。
そして、上記した鋼板組織は、工業的に極めて簡易的なプロセスで実現できることを新規に見出した。すなわち、出発素材として、粗いフェライト+パーライト組織を有する鋼片を用い、該鋼片を二相温度域の特定温度範囲内に加熱して、フェライト面積率の高い、フェライト+オーステナイトの二相状態として、累積圧下率80%以上の小圧下多パス圧延を施し、フェライトの連続再結晶を誘起させ、その後空冷するプロセスとすればよいことを見出した。
本発明者らの検討によれば、上記したプロセスでは、鋼片の組織中にはフェライトよりも変形抵抗の高いオーステナイトが混在する。そのため、オーステナイトが存在しない場合と比べ、圧延に際しフェライトに、より効率的に歪が集中し、フェライトの連続再結晶が顕著に促進されることになる。その結果、歪が入りにくい板厚中心部においても、フェライトの連続再結晶が促進され、板厚中心部において、微細フェライト相がフェライト相全量に対する面積率で30%以上となると考えられる。
さらに、本発明者らは、上記したプロセスでは、上記したフェライト相に加えて、第二相である伸長したパーライト相を、平均短軸径が5μm以下の、圧延面に平行に伸長した層状のパーライト相とすることができることを知見した。これにより、疲労亀裂の板厚方向の進展を抑制することができ、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性をも顕著に向上できることを見出した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)フェライト相を主相とし、第二相が伸長したパーライト相である組織を有する高張力厚鋼板であって、前記フェライト相が、平均粒径:3μm以下の微細フェライト相をフェライト相全量に対する面積率で30%以上含み、前記パーライト相の平均短軸径が5μm以下であることを特徴とする、靭性および板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた高張力厚鋼板。
(2)(1)において、前記高張力厚鋼板が、質量%で、C:0.03〜0.3%、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.1〜3%、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする高張力厚鋼板。
(3)(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成であることを特徴とする高張力厚鋼板。
(4)(2)または(3)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜3%、Ni:0.01〜3%、Cr:0.01〜3%、Mo:0.01〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成であることを特徴とする高張力厚鋼板。
(5)質量%で、C:0.03〜0.3%、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.1〜3%、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、平均粒径が40μm以上のフェライト相とパーライト相とからなる組織を有する鋼素材を、(Ac変態点+30℃)〜(Ac変態点+100℃)の温度域の温度に加熱したのち、該鋼素材に、累積圧下率:80%以上、圧延終了温度:550℃以上とする小圧下多パス圧延を施し、ついで空冷することを特徴とする靭性および板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた高張力厚鋼板の製造方法。
(6)(5)において、前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
(7)(5)または(6)において、前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜3%、Ni:0.01〜3%、Cr:0.01〜3%、Mo:0.01〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、シャルピー衝撃試験において、高い吸収エネルギー値を示し、靭性に優れ、さらに板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた高張力厚鋼板を工業的に容易に、しかも安定して製造することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明厚鋼板の組成限定理由について説明する。以下、とくに断らないかぎり、質量%は単に%と記す。
C:0.03〜0.3%
Cは、セメンタイトの形成を介してフェライトの連続再結晶を促進させる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.3%を超える含有は、溶接性が低下する。このため、Cは0.03〜0.3%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.15%である。
Si:0.03〜1.5%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶強化により鋼の強度を増加させる作用を有する有効な元素である。このような効果は、0.03%以上の含有で認められる。一方、1.5%を超える含有は、表面性状を損なううえ、靭性が極端に低下する。このため、Siは0.03〜1.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.5%である。
Mn:0.1〜3%
Mnは、鋼中では強化元素として作用する。このような効果は0.1%以上の含有で認められる。一方、3%を超える多量の含有は、溶接性を低下させるとともに、材料コストの高騰を招く。このため、Mnは0.1〜3%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.1〜1.5%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であるが、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超える含有は、介在物量を増加させるとともに、靭性をも低下させる。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.06%以下である。
N:0.01%以下
Nは、鋼中のAlと結合しAlNを形成し、圧延加工時の結晶粒の微細化を介して鋼の強化にも寄与する元素であり、このような効果を得るためには、0.002%以上含有することが望ましい。一方、0.01%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、Nは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは、0.002〜0.005%である。
上記した成分が基本成分であるが、本発明では基本成分に加えてさらに、Nb:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Cu:0.01〜3%、Ni:0.01〜3%、Cr:0.01〜3%、Mo:0.01〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上、を含有することができる。
Nb:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種以上
Nb、V、Tiはいずれも、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、鋼を強化する効果を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、Nb、V、Tiを、それぞれ0.001%以上含有することが望ましい。一方、Nb:0.05%、V:0.1%、Ti:0.1%を超えて多量に含有すると、鋳片に割れを生じ、製造コストの高騰を招く。このため、Nb:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%、の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
Cu:0.01〜3%、Ni:0.01〜3%、Cr:0.01〜3%、Mo:0.01〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Moはいずれも、鋼の焼入れ性を高め、強度向上に直接寄与するとともに、靭性、高温強度あるいは耐候性などをも向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。このような効果は、Cu、Ni、Cr、Mo、それぞれ0.01%以上の含有で顕著となるが、Cu:3%、Ni:3%、Cr:3%、Mo:1%をそれぞれ超える過度の含有は、靭性、溶接性を低下させる。このため、Cuは0.01〜3%、Niは0.01〜3%、Crは0.01〜3%、Moは0.01〜1%の範囲に、それぞれ限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、P:0.04%以下、S:0.02%以下が許容できる。P:0.04%、S:0.02%をそれぞれ超える含有は、靭性を低下させる。
なお、本発明の効果が損なわれない限り、上記した成分以外に、B、REM、Zr、Ca、Mg等の元素を微量(0.01%以下程度)含有してもよい。
また、本発明厚鋼板は、好ましくは、上記した組成を有し、さらに、板厚方向の全域で、フェライト相を主相とし、第二相が伸長したパーライト相である組織を有する。なお、主相であるフェライト相は、組織全量に対する面積率で、70%以上とすることが好ましい。
本発明の厚鋼板では、主相であるフェライト相は、板厚方向の全域に亘り、平均粒径:3μm以下の微細フェライト相をフェライト相全量に対する面積率で30%以上含む相とする。微細フェライト相の平均粒径を3μm以下とすることにより、延性−脆性遷移温度を顕著に低下させることが可能となる。微細フェライト相の平均粒径が3μmを超えて粗大化すると、厚鋼板の基本特性である所望の強度・靭性を確保することが困難となる。また、微細フェライト相が、フェライト相全量に対する面積率で30%未満では、厚鋼板の基本特性である所望の強度・靭性を確保することが困難となり、とくに、展伸したフェライト、すなわち加工硬化フェライト、の影響により、シャルピー衝撃試験における吸収エネルギー値が低下する。
なお、本発明の厚鋼板は、主相であるフェライト相以外の第二相は、圧延面に平行に伸長したパーライト相とする組織を有する。第二相であるパーライト相は、靭性改善の観点から、組織全量に対する面積率で30%以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは20%以下である。
主相であるフェライト相を上記した微細なフェライト相とすることに加えて、本発明の厚鋼板では、第二相である圧延面に平行に伸長したパーライト相を、短軸方向の平均径(平均短軸径)が5μm以下であるパーライト相とする。第二相として、平均短軸径が5μm以下の、圧延面に平行に伸長したパーライト相を分散させた組織とすることにより、板厚方向の疲労亀裂の伝播が抑制され、耐疲労亀裂伝播特性が向上する。なお、伸長した方向(長軸方向)の径については特に限定する必要はない。パーライト相の平均短軸径が5μmを超えて大きくなると、板厚方向の疲労亀裂伝播速度の低減が少なくなり、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性の顕著な向上が認められなくなる。このため、第二相である、伸長したパーライト相の平均短軸径を5μm以下に限定した。
つぎに、上記した組成、組織を有する本発明高張力厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明で使用する鋼素材は、上記した組成を有し、さらに粗大なフェライト+パーライト組織を有する鋼素材とする。本発明で使用する鋼素材の組織限定理由はつぎのとおりである。
鋼素材の圧延前の組織(圧延前組織)を、粗大なフェライト+パーライト組織とすることにより、圧延に際し、二相温度域に加熱すると、パーライト領域が逆変態してある程度粗大なオーステナイトとなる。この粗大なオーステナイトの影響で、その後に二相温度域における小圧下多パス圧延を施すと、フェライト粒に効果的に圧延による歪(圧延歪)を分配することができ、フェライトの連続再結晶が促進され、平均粒径で3μm以下の超微細なフェライト相を含むフェライト相を主相とした組織を形成することができる。
このようなことは、鋼素材が平均粒径が40μm以上である粗大なフェライト+パーライト組織を有する場合に顕著となる。鋼素材のフェライト粒径を40μm以上とすると、パーライトの大きさもそれに応じて粗大となり、二相温度域加熱時にある程度粗大なオーステナイトに逆変態する。平均粒径が40μm未満のフェライト+パーライト組織では、その後に二相温度域圧延を施しても、上記したようなフェライトの連続再結晶を促進することはできず、微細なフェライト相を多く含むフェライト相を主相とした組織を形成することができない。このようなことから、鋼素材の圧延前組織における、フェライトの平均粒径を40μm以上に限定した。
一方、鋼素材の圧延前組織が、ベイナイトやマルテンサイト主体の組織である場合には、鋼素材を二相温度域に加熱すると、微細に分散したセメンタイトを核生成サイトとして微細なオーステナイトが析出するとともに、ベイナイトやマルテンサイトが焼戻された組織となる。このような微細なオーステナイトが存在する組織に、二相温度域での圧延を施すと、フェライト相に効果的に圧延歪を分配することはできず、フェライトの連続再結晶が促進されず、微細なフェライト相を形成させることができなくなる。
このように、圧延前の鋼素材の組織(圧延前組織)が、粗大なフェライト+パーライト組織でない場合には、その後に二相温度域圧延を施しても、微細なフェライト相を多く含むフェライト相を主相とする組織を得ることが困難である。
上記した組成および組織を有する鋼素材の製造方法は、とくに限定する必要なく、公知の方法がいずれも適用できる。上記した組成の溶鋼を通常の溶製方法で溶製し、通常の鋳造方法で所定の寸法形状の鋼素材(スラブ)とすることが好ましい。上記した組織を確保するために、鋳造のまま、あるいは鋳造後、オーステナイト再結晶域で圧延し、その後空冷とすることが好ましい。これにより、フェライト+パーライト組織でフェライト粒が40μm以上の粗大組織を得ることができる。
ついで、上記した組成および組織を有する鋼素材は、(Ac変態点+30℃)〜(Ac1変態点+100℃)の温度域の温度に加熱される。鋼素材の加熱は、Ac変態点未満の温度から行い、加熱速度はとくに限定されない。加熱温度が(Ac変態点+30℃)未満では、加熱時に形成されるオーステナイトの面積率が5%以下と少なく、その後の圧延でフェライトに効果的に歪を導入することができず、フェライトの連続再結晶が促進されず、微細なフェライト相を形成することができなくなる。一方、加熱温度が、(Ac1変態点+100℃)を超えて高温となると、加熱時に形成されるオーステナイトの面積率が50%を超え、冷却後に生成するパーライトの量が増えて逆に靭性の低下を招く。このようなことから、鋼素材の加熱温度は、(Ac変態点+30℃)〜(Ac1変態点+100℃)の温度域の温度に限定した。
ついで、上記した条件で加熱された鋼素材に、累積圧下率80%以上、圧延終了温度550℃以上とする小圧下多パス圧延を施し厚鋼板とする。
上記した条件で加熱された鋼素材に、累積圧下率:80%以上の小圧下多パス圧延を施すことにより、フェライトの連続再結晶が生じ、平均結晶粒径で3μm以下という、フェライト結晶粒の微細化を、板厚方向全域に亘り、達成できる。これにより、厚鋼板の高靭化が可能となる。累積圧下率:80%未満ではフェライトの連続再結晶が十分に促進されず、微細フェライト相をフェライト相全量に対する面積率で30%以上とすることができず、靭性の向上、とくに高い吸収エネルギー値を確保できなくなる。
小圧下多パス圧延を二相温度域の温度で開始しても、多パス圧延の過程で鋼板からの抜熱により、圧延温度が低下する。連続再結晶したフェライトの粒径は圧延温度が低くなるほど微細になるため、強度・靭性向上の観点からは、多少、圧延温度が低下しても大きな問題とはならない。しかし、圧延温度が550℃より低下すると、厚板製造設備への負荷が大きくなるうえ、フェライトの連続再結晶が生じにくくなり、単に加工を受けて展伸しただけのフェライトとなる領域が増加し、靭性向上、とくに高い吸収エネルギー値の確保が困難となる。このため、圧延終了温度を550℃以上の温度に限定した。
なお、ここでいう「小圧下多パス圧延」とは、平均圧下率が5〜15%の圧延パスを複数回行い所定の累積圧下率とする圧延をいうものとする。1パスあたりの圧下率が5%未満では、圧延時の抜熱が大きくなり、フェライトの連続再結晶が生じにくくなる。また、1パスあたりの圧下率が15%を超えると圧延負荷が過大となる。
なお、各圧延パスでの歪速度はとくに限定する必要はなく、通常の厚板製造設備における歪速度である5〜30/s程度あれば十分である。また、フェライトの連続再結晶を生じさせるためには、上記した温度域での各圧延パス間の時間を10s以下とすることが好ましい。
上記した多パス圧延を終了後、厚鋼板は、空冷される。これにより、厚鋼板の組織を、板厚方向全域に亘り、微細フェライトを含むフェライト相を主相とし、第二相が圧延面に平行に伸長したパーライト相である組織とすることができる。さらに、上記した条件で圧延すれば、フェライト相が上記した平均粒径で3μm以下の微細フェライトになることに加えて、第二相であるパーライト相が圧延面に平行に伸長し、伸長方向(長軸方向)と直交する短軸方向の径(短軸径)を平均で5μm以下とすることができる。
表1に示す組成の溶鋼を溶製し、インゴット(150kg)に鋳造した。そしてこれらインゴットを分塊圧延し、鋼素材(板厚120mm)とした。得られた鋼素材の組織を表2に示す。なお、鋼素材の製造においては、分塊圧延条件を制御し、オーステナイト粒径を調整して、γ→α変態後のフェライト平均粒径を20〜100μmの範囲に調整した。なお、一部の鋼素材では、分塊圧延後に水冷し、組織をベイナイト組織とした。
次いで該鋼素材に、表2に示す加熱温度に加熱したのち、実験圧延設備を用いて、表2に示す条件で小圧下多パス圧延を施し、圧延終了後空冷し、表2に示す板厚の厚鋼板とした。参考として、小圧下多パス圧延の加熱時のオーステナイトの面積率を表2に併記した。加熱時のオーステナイト面積率は、圧延用とは別に同一鋼素材を用意し、該鋼素材を加熱した状態から水冷して組徽を観察することにより求めた。
また、小圧下多パス圧延の1パス当りの平均圧下率は11%、圧延パス数は8〜20パス、パス間時間は概ね8s程度、また歪速度は10/s程度であった。
なお、各鋼素材の変態点(Ac、Ac)は、次式から算出した。
Ac(℃)=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−22.9Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo−39.7V−5.7Ti+233Nb−169sol.Al−895B
Ac(℃)=937−476.5C+56Si−19.7Mn−16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo
+124.8V+136.3Ti−19Nb+198 sol.Al+3315B
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、Nb、Al、B:元素含有量(質量%))
得られた厚鋼板について、組織観察、引張試験、衝撃試験、疲労亀裂伝播試験を実施し、組織、強度、靭性、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性を評価した。
組織観察は、得られた厚鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向断面の表面から板厚中央部までの領域について、走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて撮像し、画像解析装置を用いて、それぞれの、フェライト相の平均結晶粒径および面積率、平均粒径3μm以下の粒径を有する微細フェライト相のフェライト相全量に対する面積率、および第二相の種類、面積率を測定した。なお、第二相がパーライト相である場合には、その短軸径を測定し、平均短軸径を算出した。なお、フェライト相の平均結晶粒径は、画像解析装置を用いてフェライト粒それぞれの面積を測定し、その面積から円相当径を算出し該結晶粒の粒径とし、その平均値をその鋼板のフェライト相の平均結晶粒径とした。また、パーライト相の平均短軸径は、各パーライト相の短軸径をそれぞれ、画像解析装置を用いて測定し、各パーライト相の短軸径を算術平均し、その平均値をその鋼板の平均短軸径とした。なお、測定する視野数は3視野以上とした。
引張試験は、得られた厚鋼板の板厚中心部から引張方向が圧延方向(板長方向)となるように、JIS 14A号試験片(6mmφ:平行部直径)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTSを求めた。
衝撃試験は、得られた厚鋼板の板厚中心部から圧延方向に、Vノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、20℃における吸収エネルギーvE20(J)および破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。なお、20℃における吸収エネルギーvE20(J)は試験片3本の平均値とした。
疲労亀裂伝播試験は、得られた厚鋼板から、図1に示す寸法形状の試験片を採取し、室温大気中で、ASTM E647の規定に準拠して疲労亀裂伝播試験を実施し、 板厚方向の疲労亀裂伝播速度を測定した。なお、試験片には予め、疲労予亀裂を導入した。また、試験条件は、周波数:30Hz、応力比:0.1とし、応力拡大係数範囲ΔKが、ΔK=15MPa√mにおける疲労亀裂伝播速度(m/cycle)を求めた。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2007291511
Figure 2007291511
Figure 2007291511
本発明例はいずれも、目標の引張強さ:500MPa以上の強度と、目標の20℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーvE20が180J以上の高靭性を有し、靭性に優れた高張力厚鋼板となっている。なお、本発明例の破面遷移温度vTrsはいずれも、−100℃より低温であった。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、強度が不足しているか、あるいは靭性が不足しているか、あるいは強度、靭性がともに低下している。
また、本発明例はいずれも、板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycle以下と、優れた板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性を有している。一方、本発明の範囲を外れる比較例では、板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えており、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性が低下している。
鋼素材の加熱温度が本発明範囲を低く外れた比較例(鋼板No.1、No.2)では、圧延開始時のオーステナイトの面積率が0%、4%と低いため、累積圧下率90%の多パス圧延を施しているにもかかわらず、フェライトの連続再結晶が十分に誘起せず、中央部で微細なフェライト相の面積率が30%未満と少なく、吸収エネルギー値vE20が低下し、さらに板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えている。また、鋼素材の加熱温度が本発明範囲を高く外れた比較例(鋼板No.5)では、圧延開始時のオーステナイト面積率が65%と高くなり、オーステナイトから変態したフェライト相が増加し、微細フェライト相の面積率が表層部および中央部で30%未満と低下して、吸収エネルギー値vE20が低下し、さらに板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えている。
また、鋼素材のフェライト相の平均粒径が本発明の範囲を低く外れた比較例(鋼板No.6)では、圧延前の加熱状態でのオーステナイト粒径が適正範囲を外れ、フェライトに効果的にひずみを集中させることができなかったため、フェライトの連続再結晶が促進されず、吸収エネルギー値vE20が低下し、さらに板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えている。
鋼素材の組織が本発明の範囲を外れた比較例(鋼板No.8)では、圧延時の変形抵抗が高かったため、歪が表層部により偏りやすくなり、表層部ではフェライトの遠続再結晶は促進されたが、板厚中心部ではフェライトの連続再結晶は促進されず、微細フェライト相の面積率が低下して、吸収エネルギー値vE20が低下し、さらに板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えている。
また、小圧下多パス圧延での累積圧下率が本発明範囲を低く外れた比較例(鋼板No.9、No.10 )では、小圧下多パス圧延でフェライトの連続再結晶が十分に促進されず微細フェライト面積率が低く、吸収エネルギー値vE20が低下し、さらに板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えている。
また、小圧下多パス圧延の圧延終了温度が本発明範囲を低く外れた比較例(鋼板No.12 )では、微細フェライト面積率が低下し、伸長したフェライト相が増加するため、吸収エネルギー値vE20が低下し、さらに板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えている。
また、鋼素材の加熱温度が本発明範囲を高く外れた比較例(鋼板No.17、No.18、No.19)では、加熱時に形成されるオーステナイトの面積率が50%を超え、冷却時に生成するパーライトの量が増加し、またフェライトの連続再結晶が誘起されにくく、微細なフェライト面積率が低く、吸収エネルギー値vE20が低下するうえ、パーライト相の短軸径も5μmを超えて大きくなり、板厚方向の疲労亀裂伝播速度が8.0×10-9m/cycleを超えている。
実施例で使用した疲労亀裂伝播試験の試験片寸法形状の概略を示す説明図である。

Claims (7)

  1. フェライト相を主相とし、第二相が伸長したパーライト相である組織を有する高張力厚鋼板であって、前記フェライト相が、平均粒径:3μm以下の微細フェライト相をフェライト相全量に対する面積率で30%以上含み、前記パーライト相の平均短軸径が5μm以下であることを特徴とする、靭性および板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた高張力厚鋼板。
  2. 前記高張力厚鋼板が、質量%で、
    C:0.03〜0.3%、 Si:0.03〜1.5%、
    Mn:0.1〜3%、 Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、請求項1に記載の高張力厚鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成であることを特徴とする、請求項2に記載の高張力厚鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜3%、Ni:0.01〜3%、Cr:0.01〜3%、Mo:0.01〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成であることを特徴とする請求項2または3に記載の高張力厚鋼板。
  5. 質量%で、
    C:0.03〜0.3%、 Si:0.03〜1.5%、
    Mn:0.1〜3%、 Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、平均粒径が40μm以上のフェライト相とパーライト相とからなる組織を有する鋼素材を、(Ac変態点+30℃)〜(Ac変態点+100℃)の温度域の温度に加熱したのち、該鋼素材に、累積圧下率:80%以上、圧延終了温度:550℃以上とする小圧下多パス圧延を施し、ついで空冷することを特徴とする靭性および板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた高張力厚鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする請求項5に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
  7. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜3%、Ni:0.01〜3%、Cr:0.01〜3%、Mo:0.01〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする請求項5または6に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
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