以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について詳細に説明する。
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成を示した図であり、回転式(ロータリ)現像装置を用いたデジタルカラープリンタを示している。図1に示す画像形成装置は、本体1に、静電潜像を形成してトナー像を担持させる被帯電体あるいは像担持体である感光体ドラム11、帯電ロールを用いて感光体ドラム11に電荷を与えて帯電させる帯電装置12、図示しない画像処理装置(IPS:Image Processing System)からの画像信号に基づいて、帯電された感光体ドラム11を例えばROS(Raster Output Scanner)を用いて露光する露光装置13、露光装置13によって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置14を備えている。
この現像装置14は、回転式(ロータリ)現像装置であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色のトナー像を形成するために、各々の色のトナーを含んだ4つの現像器50が備えられ、感光体ドラム11を現像する現像ロール51が現像装置14の周上に設けられている。現像装置14は、現像装置中心14aを中心として、90度ずつ回動することで所望の現像器50が備える現像ロール51を感光体ドラム11に対峙させている。より具体的には、1つのプリント出力に対して、Y、M、C、Kの現像器50を、この順に感光体ドラム11に対峙させ、フルカラーの出力を可能としている。また、各々の現像器50は、現像装置中心14aに配置されたコイルスプリング55によって法線上に押圧され、位置決めのためのトラッキングロールが感光体ドラム11に確実に当接できるように構成されている。感光体ドラム11は、図の矢印方向(時計方向)に回動し、現像装置14は、感光体ドラム11の回動(時計方向)とは接線方向の動きが同じとなるように、反時計方向に回動する。
また、感光体ドラム11上における現像装置14の下流側には、現像器50によって現像されて感光体ドラム11上に形成されたトナー像を一旦保持する中間転写ベルト15、中間転写ベルト15上に重畳されて形成されたトナー像を用紙に転写する二次転写ロール16、用紙上に形成されたトナー像を加熱および押圧して定着する定着装置17を備えている。また、感光体ドラム11の周りには、中間転写ベルト15への一次転写の後に感光体ドラム11上に残ったトナー(残留トナー)を掻き取るクリーニングブレード18、このクリーニングブレード18より掻き取られたトナーを回収してトナーを溜めるトナー回収ボトル19を備えている。中間転写ベルト15は、1つのプリント画像を形成する際に4回転する。二次転写ロール16は、最初の3回転の間、即ち、Y、M、Cのトナー像を保持する際には中間転写ベルト15から離間しており、最後のKのトナー像が重畳されるにあたって、中間転写ベルト15に接触するように構成されている。
中間転写ベルト15は、感光体ドラム11に対して所定範囲だけ巻きつくように、ラップ状に接触(当接)し、所謂ラップ転写を可能としている。この中間転写ベルト15は、例えば、0.5mm程度の厚さ、および周長443mmであり、耐油性および耐候性に優れているクロロプレンや、耐候性に優れているEPDM等が用いられている。本実施の形態では、中間転写ベルト15自身に駆動源を設けず、ラップによる接触を利用して感光体ドラム11の回転に従動するように構成されており、接触部分の回転方向が同じとなるように、反時計方向に回動している。
この中間転写ベルト15の内側には、感光体ドラム11における回動の上流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップインロール21、感光体ドラム11に形成されたトナー像を中間転写ベルト15上に転写させる一次転写ロール22、ラップ位置の下流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップアウトロール23を備えている。一次転写ロール22には、一次転写を助けるために所定の一次転写バイアスが付与されている。また、ラップインロール21およびラップアウトロール23は、GNDまたはフローティングの状態に置かれている。
更に、中間転写ベルト15の内側には、二次転写ロール16による二次転写を助けるバックアップロール24が設けられている。二次転写ロール16およびバックアップロール24によって二次転写が行なわれる二次転写部にて、このバックアップロール24と二次転写ロール16との間には、所定の電位差が必要であり、例えば一方の二次転写ロール16を高圧に接続した場合には、対向する他方のバックアップロール24はGNDに接続されている。
中間転写ベルト15上における二次転写部の下流側には、二次転写の後に中間転写ベルト15上のトナーを取り除く中間転写体クリーナ30が設けられている。この中間転写体クリーナ30は、二次転写の後に残ったトナーを掻き取るスクレーパ25、スクレーパ25によるクリーニングにて残ったトナーを更に掻き取るためのブラシロール26、スクレーパ25およびブラシロール26により掻き取られたトナーを回収する第2トナー回収ボトル29を備えている。中間転写ベルト15の内側には、このスクレーパ25によるクリーニング作業を助けるクリーニングバックアップロール27、ブラシロール26によるクリーニング作業を助けるクリーニングバックアップロール28を備えている。
スクレーパ25は、例えばステンレス等の厚さ0.1mm程度の薄板からなり、所定の電界がかけられている。また、ブラシロール26は、導電性の処理がなされたナイロン、アクリル等のブラシであり、駆動源からの動力を受けて回転駆動し、掻き落としたトナーは、第2トナー回収ボトル29に設けられた窓から第2トナー回収ボトル29内に収容される。スクレーパ25およびブラシロール26は、二次転写ロール16が中間転写ベルト15に接触して二次転写を行なった後の中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取る。そのために、画像形成の最初では、重畳途中のトナー像が掻き取られることのないように中間転写ベルト15から離間しており、所定のタイミングで、これらが一体となって中間転写ベルト15に接触するように構成されている。
図1に示すように、本実施の形態では、中間転写ベルト15を比較的細長くなるレイアウトとし、ラップインロール21、ラップアウトロール23、バックアップロール24、クリーニングバックアップロール27、およびクリーニングバックアップロール28などによって中間転写ベルト15を扁平支持している。そして、この扁平支持された中間転写ベルト15の長手方向の一方の端に、二次転写ロール16が当接する二次転写部を設け、長手方向の他の一方の端に、中間転写体クリーナ30を配設した。そして、中間転写ベルト15が感光体ドラム11に対してラップ状に当接する位置の近くに、二次転写ロール16が当接する二次転写部を設けている。言い換えると、感光体ドラム11が、中間転写体クリーナ30が設けられている位置よりも、二次転写ロール16が当接する二次転写部により近い位置に配置されている。このように、本実施の形態では、各色ごとに回動する中間転写ベルト15を用いた装置にて、ラップ状に感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部の直後に(比較的近傍に)二次転写部を設けるといったレイアウトを採用している。
用紙搬送系としては、用紙やOHPシートなどの各種記録媒体を収容する給紙カセット31、この給紙カセット31から用紙を繰り出して給紙するフィードロール32、給紙される用紙を1枚ずつ捌くリタードロール33、給紙カセット31からフィードロール32等を介して搬送された用紙に対して転写のためのタイミングを取り、位置合わせを行なうためのレジロール34、定着装置17内に設けられ、用紙上に形成されたトナー像を熱するヒートロール35、ヒートロール35に対向して設けられ加熱に際して用紙を押圧するプレッシャロール36、定着された後に用紙を機外に排出する排出ロール37、装置上部に設けられ、排出ロール37により排出された用紙を集積(スタック)する排出トレイ38を備えている。
また、図1に示すように、本実施の形態が適用される画像形成装置は、縦方向の用紙搬送パスとして、用紙搬送路70が設けられている。この用紙搬送路70は、装置内に設けられる搬送ガイド71と、箱体であるトナー回収ボトル19の外壁とによって構成されている。即ち、本実施の形態では、レジロール34と二次転写部との間に設けられ、略鉛直方向の下方から上方に向けて用紙を搬送する用紙搬送路70を、その一面をトナー回収ボトル19の外壁によって形成し、他の一面を搬送ガイド71によって構成している。
更に、本実施の形態が適用される画像形成装置は、画像形成装置の各部材の動きを制御する制御部40、中間転写ベルト15に隣接して設けられ中間転写ベルト15上に形成されたトナーのパッチを検出する反射型フォトセンサである位置センサ41を備えている。この位置センサ41は、中間転写ベルト15の長手方向に形成されたパッチを読み取ることで、中間転写ベルト15の回転方向における位置を検出することが可能である。より具体的には、位置センサ41によってパッチが検出されたところから所定のタイミングで露光することで、Y、M、C、Kの位置合わせを可能としている。また、この位置センサ41の出力に基づいて、中間転写ベルト15上に形成されたトナーの濃度検知を行い、この検知結果から制御部40による濃度制御を実行することも可能である。
次に、図1に示す画像形成装置を用いた画像形成プロセスについて説明する。画像形成装置では、外部接続されたPC(パーソナルコンピュータ)や画像読取装置等からの出力要求を受け、制御部40からの指示に基づき、画像形成プロセスが開始される。フルカラーのプリント出力の場合、現像装置14は、まず、イエロー(Y)の現像器50を感光体ドラム11に対峙させるように回動する。最初に、イエローのトナー像を形成する際、時計方向に回動する感光体ドラム11は、帯電装置12にて帯電された後、露光装置13からの例えばレーザ光によって、露光部にてイエローに対応する画像情報に基づく露光が行なわれ、静電潜像が形成される。その後、現像ロール51によって現像が実行された後、ラップ状の接触範囲(ラップ範囲)にて中間転写ベルト15にイエローのトナー像が転写される。このとき、二次転写ロール16、スクレーパ25およびブラシロール26は中間転写ベルト15からはリトラクト(離間)しており、これらによって中間転写ベルト15上のトナー像が掻き取られることはない。
一次転写を終えた感光体ドラム11の表面は、クリーニングブレード18によって残ったトナーが掻き取られ、次のトナー像形成のために帯電装置12との対向部へ移動する。このクリーニングブレード18によって掻き取られた残留トナーは、トナー回収ボトル19に溜められる。また、現像のタイミングに間に合うようにして現像装置14が回動して、マゼンタの現像器50が感光体ドラム11に対峙する。露光装置13によってマゼンタの画像情報に基づく露光が行なわれた潜像から、順に、マゼンタのトナー像が形成されて中間転写ベルト15に重畳される。同様にして、シアン、黒のトナー像が、順次、中間転写ベルト15上に重畳されて一次転写が終了する。
二次転写ロール16は、露光装置13によるシアンのトナー像に対する一次転写が終了し、シアンまでが重畳されたトナー像が二次転写部(二次転写ロール16によって二次転写が行なわれる場所)を通過した後のインターイメージにて、黒の静電潜像を形成するための露光(黒の露光)を開始する前に、中間転写ベルト15に対してアドバンスし(押し出し)、二次転写ロール16が中間転写ベルト15に当接(コンタクト)した状態で、二次転写に備える。また、スクレーパ25およびブラシロール26は、黒の露光が終了した後、クリーナ部(スクレーパ25およびブラシロール26によるクリーナが行なわれる場所)がインターイメージであるときに、中間転写ベルト15に対してアドバンスする。このインターイメージは、中間転写ベルト15や感光体ドラム11上においてトナー像が形成されていない(トナー像の形成が予定されていない)領域部分、露光による書き込みが予定されていない部分と言うことができる。
一方、給紙カセット31からは、制御部40による制御に基づいて所定のタイミングでフィードロール32が駆動され、順次、用紙が取り出されるとともに、リタードロール33により1枚ずつに捌かれ、レジロール34へ到達する。レジロール34は、二次転写部における二次転写のタイミングに合わせて回転し、所定のタイミングで用紙を二次転写部へ送り出すように機能している。給紙カセット31に収容された用紙は、搬送装置によって略鉛直方向に搬送され、二次転写ロール16およびバックアップロール24による二次転写部に搬送され、トナー像が転写される。
二次転写部にてトナー画像が転写された用紙は、定着装置17に搬送される。定着装置17にて、用紙上のトナー像は、ヒートロール35により加熱され、プレッシャロール36により用紙に押圧されて、定着される。その後、排出ロール37を経て装置外に出力され、本体1の上部に設けられた排出トレイ38に収容される。以上のようにして、一枚のカラープリントを出力する際の画像形成プロセスが終了する。このように、本実施の形態では、本体1のサイズを非常に小さくし、比較的細長い、扁平状にされたレイアウトを有する中間転写ベルト15を用い、縦パスの搬送にて二次転写を行っている。
次に、感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置14、および中間転写ベルト15の構成について詳述する。
図2は、感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置14、および中間転写ベルト15の関係を説明するための図である。感光体ドラム11は、直径47mm程度の管状部材であり、アルミパイプの表面に感光層が形成され、そのアルミパイプの両端に設けられたアルミ製のフランジ(図示せず)を介して、中心部の軸11aからモータ(図示せず)の駆動力を受けている。例えば、A4縦方向の長さ(297mm)のカラー画像を1分間に5枚(5ppm)の速さでプリントアウトする場合には、感光体ドラム11上にて4色の画像×5枚の20画像を1分間に形成する必要がある。感光体ドラム11は1画像の形成で3回転、即ち、約150mm/sec、毎秒1回転程度で回転するように構成されている。また、感光体ドラム11の偏芯等による色ずれを軽減するために、感光体ドラム11上における画像の形成位置を各色で同じ場所に形成することが望ましい。
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触配置される帯電部材としての帯電ロール81と、この帯電ロール81に接触配置される回転部材あるいは回転体としてのクリーニングロール82とを有している。帯電ロール81は、金属製の回転軸81aと、この回転軸81aの周面に形成されるエピクロルヒドリンゴム層81bと、このエピクロルヒドリンゴム層81bの周面に形成されるナイロン樹脂層81cとを備えている。一方、クリーニングロール82は、金属製の回転軸82aと、この回転軸82aの周面に形成される多孔質弾性層としての発泡ポリウレタン層82bとを有している。ここで、帯電ロール81は特に駆動源を持たず、当接する感光体ドラム11の回転に伴って従動回転するようになっている。また、クリーニングロール82も特に駆動源を持たず、当接する帯電ロール81の回転に伴って従動回転するようになっている。そして、帯電ロール81の直径は例えば10mmであり、クリーニングロール82の直径は帯電ロール81よりも小さい6mmである。このように帯電ロール81およびクリーニングロール82の直径を定めることで、帯電ロール81の回転に伴って従動回転するクリーニングロール82の駆動に必要なトルクを低減している。
また、帯電ロール81には、図示しない帯電電源が接続されており、直流電圧(−550V)に交流電圧(ピークトゥピーク値1500V以上)の帯電バイアスが印加されている。一方、クリーニングロール82には特にバイアスは印加されていないが、帯電ロール81の回転軸81aおよびクリーニングロール82の回転軸82aは同一の軸受けにて回転可能に軸支されており、その結果、クリーニングロール82は帯電ロール81と同電位になっている。
現像装置14を構成する各々(Y,M,C,K)の現像器50は、現像剤を担持する現像剤担持体である現像ロール51、現像ロール51と感光体ドラム11との距離を一定に保つための位置決め部材であるトラッキングロール52、現像ロール51に供給される現像剤を撹拌するサプライオーガ53およびアドミックスオーガ54を各々備えている。現像ロール51は、例えば直径16mmの管状部材からなり、内部に配設されるマグネットロール(図示せず)によって、現像剤中に含まれるキャリアを磁力で吸着し、この現像ロール51の表面に現像剤の磁気ブラシを形成して、キャリアに吸着したトナーを感光体ドラム11の現像領域へと搬送している。このようにして形成された磁気ブラシは、感光体ドラム11の表面に穂先が接触して現像するために、感光体ドラム11と現像ロール51との距離は、ある一定の間隔に常時、保たれている必要がある。
そこで、現像ロール51の両端部(装置のIn側とOut側、または装置の右側と左側)に、この現像ロール51よりも若干(0.3mm程度)半径の大きなトラッキングロール52が、現像ロール51と同軸に設けられている。例えば現像ロール51をφ16mmとすると、トラッキングロール52はφ16.6mmとなる。このトラッキングロール52としては、ポリアセタールなどの合成樹脂製のものが用いられ、現像装置14に配置される4つの現像器50の各々に設けられている。現像装置14は、現像器50の切り替えに際して、0.7秒に90度の回転速度で所望の現像ロール51を感光体ドラム11に対峙させている。このとき、トラッキングロール52は、周上に軌跡を描いて感光体ドラム11に当接するとともに、図1に示したコイルスプリング55による所定の弾性力によって、衝撃が低減されて感光体ドラム11に当接する。
一方、中間転写ベルト15は、ラップインロール21およびラップアウトロール23とによって、図2に示すようなラップ範囲に対して感光体ドラム11を覆うようにして接触している。ラップインロール21およびラップアウトロール23は、感光体ドラム11とは接触しておらず、感光体ドラム11のふらつき等による中間転写ベルト15の挟み込みを防止して、中間転写ベルト15に対するダメージを抑制している。図2に示すようなラップ範囲(ラップ状の接触範囲)は、感光体ドラム11の周縁部にて、約90度程度の角度で形成される弧の範囲である。この中間転写ベルト15は弾性ベルトであり、比較的強い荷重で感光体ドラム11を押圧している。特に、本実施の形態では、中間転写ベルト15自身に駆動力を与えておらず、感光体ドラム11の駆動を受けて中間転写ベルト15は従動するように構成されている。
次に、図1に示した本実施の形態における画像形成装置の保守性について説明する。図3は、本実施の形態における画像形成装置の保守作業を説明するための図である。図3に示す画像形成装置では、本体1の回動支点61を中心として、本体1における筐体の一部である開閉カバー62を開閉させることが可能である。開閉カバー62には、排出トレイ38が含まれているとともに、この排出トレイ38の裏側に設けられた位置センサ41も同時に開閉される。この回動支点61は、現像装置中心14aと同程度の高さに設けられており、この回動支点61を中心として開閉カバー62を開放することが可能である。開閉カバー62による装置の開放部をこのように形成することによって、現像装置14よりも上方にある部材、例えば、中間転写ベルト15や中間転写体クリーナ30の挿脱を容易に行なうことができる。
ユーザやサービス作業者が保守作業を行なう場合には、まず、例えば本体1の装置上面における開閉カバー62の一部を掴み、図3に示す(i)の方向に対して、本体1における開閉カバー62を、回動支点61を中心に回動させる。開閉カバー62の回動によって、装置内部、即ち、中間転写ベルト15や中間転写体クリーナ30などの画像形成部位の配置上方が開放される。本実施の形態の画像形成装置における各部材の配置では、現像装置14と中間転写ベルト15や中間転写体クリーナ30などが上下方向にレイアウトされている。また、中間転写ベルト15や中間転写体クリーナ30などが本体1における筐体の近傍に設けられ、特に、中間転写ベルト15と、筐体を形成する排出トレイ38とが略並行になるように配置されている。そのために、排出トレイ38を含む開閉カバー62を回動することによって、現像装置14の上方にある中間転写手段の上方が開放された状態になる。
次に、図3に示す(ii)のように、交換部品であるカートリッジ63が取り出される。本実施の形態にて、カートリッジ63としては、中間転写ベルト15およびこの中間転写ベルト15の内側にある各種ロール(21〜24、27、28)、中間転写ベルト15の中間転写体クリーナ30、中間転写ベルト15に接触する感光体ドラム11、感光体ドラム11に接触して帯電する帯電装置12、および感光体ドラム11をクリーニングするクリーニングブレード18を含むトナー回収ボトル19が該当する。これらの交換部品は、カートリッジ化されて一体となっている。
これらの交換部品であるカートリッジ63は、開閉カバー62の開放によって上方が開放され、図3に示す(ii)の矢印方向に一体的に引き上げ可能となり、本体1から離脱させることができる。即ち、開閉カバー62の開放によって、本体1の他の機構部と干渉することがなく、カートリッジ63をスムーズに取り出すことができる。本実施の形態では、交換部品でない現像装置14の鉛直上方に、交換部品である中間転写ベルト15を配置している。また、用紙の搬送路として、縦方向の用紙パスを採用しており、定着装置17を図1に示す右上に配置している。そのために、カートリッジ63の取り出し方向は、図3に示す(ii)の矢印方向とすることが好ましい。
また、カートリッジ63を取り出した後、図3の(iii)に示すように、トナー回収ボトル19だけをカートリッジ63から取り外すことができる。これによって、感光体ドラム11や中間転写ベルト15などが寿命に達していない状態にて、トナー回収ボトル19が廃トナーで満杯になった場合などに、トナー回収ボトル19だけをカートリッジ63から取り外して交換することも可能である。
次に、図4を参照しながら、このデジタルカラープリンタで用いられる現像剤Dについて詳細に説明する。現像剤Dは、図4(a)に示すように、磁性を有するキャリアCと、イエロー、マゼンタ、シアン、あるいは黒に着色されたトナーTとを含んでいる。また、現像剤Dは、図4(b)に示すように外添剤Sを含んでいる。
現像剤Dにおいて、キャリアCとしては、平均粒径が約35μmのフェライトビーズが用いられる。
また、外添剤Sとしては、平均粒径5〜200nmのシリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、およびセリア(CeO2)等の無機微粒子が用いられる。
さらに、トナーTは、負極性に帯電する極性を有するものであって、懸濁重合法、乳化凝集合一法、溶解懸濁法等により、ポリエステルやスチレンアクリルなどのバインダ樹脂に着色剤、ワックスを内添してなる微粒子である。粒径は、コールターカウンター(コールター社製)による測定結果で体積平均粒径が約6.4μmであった。トナー形状(球形の度合)は形状係数で表し、光学顕微鏡(ミクロフォトFXA:ニコン社製)で得たトナーの拡大写真を、イメージアナライザLuzex3(ニレコ社製)により画像解析を行い、次の式で算出した。
この式は、トナーTの投影面積と、それに外接する円の面積との比で表しており、真球の場合に100となり、形状が球形から離れるにつれて数字が大きくなっていく。形状係数が小さければ、転写の際に転写されずに残る残留トナーの量が減少していくため、トナーTの形状係数は100〜140程度であることが望ましく、本実施の形態では、トナーTの形状係数は134であった。なお、トナーTの体積平均粒径は、良好な画像を形成するという観点からすれば、3〜10μmの範囲内であることが好ましい。
ここで、表1には、本実施の形態で用いたマゼンタの現像剤Dの構成例を示している。なお、シアンの現像剤Dでは赤色顔料が青色顔料、イエローの現像剤Dでは赤色顔料が黄色顔料、黒の現像剤Dでは赤色顔料がポリエチレンとなる。
また、表2には、本実施の形態で用いたマゼンタのトナーTの構成例を示している。上述した現像剤Dの場合と同様、シアンのトナーTでは赤色顔料が青色顔料、イエローのトナーTでは赤色顔料が黄色顔料となる。さらに、表3には、黒のトナーTの構成例を示している。
さらに、外添剤Sについては、トナーTに対し、シリカを1.48重量%だけ添加している。また、シリカの他に、チタニアを0.8重量%、そしてセリアを0.7重量%、それぞれ添加している。
ここで、外添剤Sとして使用されるシリカの平均粒径は100nm、その形状係数は140以下であり、略球形となっている。
次に、上述した画像形成プロセスにおける現像剤D(キャリアC、トナーT、および外添剤S)の挙動について説明する。
現像器50内において、各色の現像剤Dはサプライオーガ53およびアドミックスオーガ54によって攪拌搬送され、キャリアCとトナーTとが摩擦されることによってトナーTが負極性に帯電せしめられる。このようにして攪拌搬送された現像剤Dは、現像ロール51に転移して搬送され、感光体ドラム11との対向部で磁気ブラシを形成し、感光体ドラム11上の静電潜像を現像する。このとき、一部のトナーTおよびこのトナーTに付着した外添剤Sは感光体ドラム11上に転移するが、残りのトナーT、キャリアCおよび外添剤Sは現像ロール51上に残る。
次に、感光体ドラム11に転移・付着したトナーTおよび外添剤Sは、感光体ドラム11の回転に伴って中間転写ベルト15と接するラップ範囲まで搬送され、感光体ドラム11上のトナーTのほとんどは中間転写ベルト15に一次転写される。このとき、トナーTに付着した外添剤Sの一部も中間転写ベルト15側に転移する。一方、一次転写後の感光体ドラム11表面には、一次転写されなかったトナーTと外添剤Sとが残存する。ここで、本実施の形態では、外添剤SがトナーTの離型性を高めるための転写補助剤として機能しており、外添剤Sが一次転写後の感光体ドラム11に残りやすくなっている。
そして、一次転写後に中間転写ベルト15上に残ったトナーTおよび外添剤Sは、感光体ドラム11の回転に伴ってクリーニングブレード18との対向部まで到達する。このとき、感光体ドラム11に付着したトナーTおよびこのトナーTに付着した外添剤Sは、クリーニングブレード18によって掻き取られる。一方、例えば感光体ドラム11に直接付着した外添剤Sは、その粒径が小さいためにクリーニングブレード18をすり抜け、さらなる感光体ドラム11の回転に伴って帯電ロール81との対向部(帯電ニップ部)まで搬送される。このとき、外添剤Sに含まれるチタニアやセリアは、だいたいがトナーTに付着した状態を維持しており、そのほとんどがトナーTとともにクリーニングブレード18によって掻き取られる。一方、外添剤Sに含まれるシリカは、トナーTに付着していないものが多く、その多くがクリーニングブレード18をすり抜ける。本発明者の調査によれば、クリーニングブレード18をすり抜け、帯電ロール81に転移・付着する外添剤Sの90%以上がシリカである。
帯電ニップ部に搬送された外添剤Sは、感光体ドラム11から帯電ロール81に転移・付着する。帯電ロール81に付着した外添剤Sは、帯電ロール81の回転に伴ってクリーニングロール82との対向部(クリーニングニップ部)まで搬送される。そして、クリーニングニップ部に搬送された異物としての外添剤Sは、帯電ロール81からクリーニングロール82へと転移・付着する。
ここで、帯電ロール81に付着した外添剤Sの挙動を説明するために、本発明者が行った実験について説明する。本発明者は、帯電ロール81の外周面に予め多量の外添剤Sを付着させた状態で感光体ドラム11を空回転させることで、帯電ロール81およびクリーニングロール82を従動回転させ、外添剤Sの挙動を観察した。
図5は、帯電ロール81とクリーニングロール82とが接するクリーニングニップ部よりも上流側(プレニップ側)の帯電ロール81の表面を撮影したSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。図5より、クリーニングニップ部のプレニップ側では、帯電ロール81に多量の外添剤S(白い点で示される)が付着していることがわかる。また、図6は、上記クリーニングニップ部よりも下流側(ポストニップ側)の帯電ロール81の表面を撮影したSEM写真である。図6より、クリーニングニップ部のポストニップ側では、多くの外添剤Sがクリーニングロール82側に転移したために帯電ロール81に付着する外添剤Sの量が減少していること、および、新たに凝集して巨大化した外添剤S(白い巨大な点で示される:以下の説明では凝集外添剤GSという)が付着していることがわかる。なお、この凝集外添剤GSの径は数μm〜10μm程度であり、外添剤S単体の粒径(シリカの場合100nm)に比べ非常に大きなものとなっている。さらに、図7は、感光体ドラム11と帯電ロール81とが接する帯電ニップ部よりも下流側(ポストニップ側)の感光体ドラム11の表面を撮影したSEM写真である。図7より、帯電ニップ部のポストニップ側では、帯電ロール81に付着していた凝集外添剤GSが感光体ドラム11に転移・付着していることがわかる。
図5〜図7に示すSEM写真より、外添剤Sは、帯電ロール81およびクリーニングロール82間で、図8に示すような挙動を行っているものと考えられる。
感光体ドラム11(図2参照)から帯電ロール81に転移・付着した異物としての外添剤Sは、帯電ロール81の回転に伴ってクリーニングニップ部Nに到達し、帯電ロール81からクリーニングロール82に転移・付着する。クリーニングロール82に付着した外添剤Sは、クリーニングロール82の回転に伴って搬送されるが、この間に、クリーニングロール82上で外添剤S同士が凝集し、凝集体としての凝集外添剤GSを形成する。このように外添剤Sが凝集するのは、外添剤Sの粒径が小さく且つ略球形であるために、ファンデルワールス力が強く働き、且つ、外添剤S単体では不安定になりやすいためであると考えられる。また、本実施の形態では、クリーニングロール82の表面に多孔質弾性層である発泡ポリウレタン層82bを形成しているため、発泡ポリウレタン層82b表面に存在する発泡孔A内に外添剤Sが集まりやすくなることも一つの理由であると考えられる。
そして、クリーニングロール82に付着した凝集外添剤GSは、クリーニングロール82の回転に伴って再びクリーニングニップ部Nに到達する。ここで、クリーニングロール82は帯電ロール81に所定の圧力で押圧されており、また、クリーニングロール82は発泡ポリウレタン層82bを有している。このため、クリーニングニップ部Nにおいて、発泡ポリウレタン層82bは圧縮され、発泡部Fがつぶされた状態になっている。そして、クリーニングニップ部Nを通過した後、発泡ポリウレタン層82bは自身が有する弾性力(反発力)により元の状態に復元されようとする。このとき、クリーニングロール82(発泡ポリウレタン層82b)の外周面に担持される凝集外添剤GSは、この弾性力によって外側に向けて付勢され、クリーニングロール82の表面からはじき出される。
クリーニングロール82からはじき出された凝集外添剤GSは、今度は帯電ロール81に転移・付着する。そして、帯電ロール81に付着した凝集外添剤GSは、帯電ロール81の回転に伴って感光体ドラム11(図2参照)と対向する帯電ニップ部まで搬送され、さらに感光体ドラム11へと転移・付着する。その後、感光体ドラム11(図2参照)に付着した凝集外添剤GSは、例えば現像器50によって回収されたり、中間転写ベルト15に一次転写されたりすることになる。
このように、本実施の形態では、帯電ロール81からクリーニングロール82に転移・付着した外添剤Sが、クリーニングロール82上で凝集して凝集外添剤GSを形成し、その後再び帯電ロール81上に戻されている。このため、クリーニングロール82に外添剤Sが堆積して目詰まりを起こすといったことがなく、クリーニングロール82のクリーニング性能を長期にわたって維持することができる。したがって、帯電ロール81の表面はきれいな状態が維持されることになり、帯電ロール81の帯電性能を長期にわたって維持することが可能となる。
また、帯電ロール81に転移・付着した凝集外添剤GSは、その後、感光体ドラム11(図2参照)に転移する。したがって、帯電ロール81に凝集外添剤GSが付着したままとなって、帯電不良が発生するといった事態を防止することができる。
特に、本実施の形態では、外添剤SとしてトナーTとの離型性がよいシリカを用いているために、一次転写後の感光体ドラム11にシリカが残りやすい。そして、感光体ドラム11(図2参照)上に残ったシリカは、クリーニングブレード18をすり抜けて帯電ロール81に付着しやすい。これに対し、本実施の形態では、上述したクリーニングロール82を用いて帯電ロール81のクリーニングを行っているため、帯電ロール81に多量のシリカが付着し、帯電不良を生じさせるという事態を防止することができる。
なお、粉砕法で製造された不定型な外添剤Sでは、外添剤S同士が密になりにくいために外添剤S同士に働く凝集力が弱くなる。このような場合には、凝集外添剤GSが形成されにくくなる。また、不定型な外添剤Sでは、外添剤S自身がクリーニングロール82の発泡ポリウレタン層82bに突き刺さってしまうことも考えられる。すると、凝集外添剤GSが形成されたとしてもクリーニングロール82から剥がれにくくなってしまう。したがって、凝集性および剥離性を考慮すると、外添剤Sとして形状係数が140以下である略球形のものを使用することが好ましいといえる。
このように、本実施の形態では、帯電ロール81に付着した外添剤Sをクリーニングロール82の発泡ポリウレタン層82bに転移させ、発泡ポリウレタン層82b上に転移・付着した外添剤Sによって凝集外添剤GSを形成させ、形成された凝集外添剤GSをクリーニングロール82の反発力によって帯電ロール81に再び転移させている。したがって、外添剤Sの凝集や凝集外添剤GSの再転移には、発泡ポリウレタン層82bが重要な役割を担っているといえる。
そこで、本発明者は、発泡ポリウレタン層82bに形成される発泡孔A(発泡部F)の大きさと、得られるクリーニング性能(帯電ロール81から外添剤Sを転移させ、且つ、外添剤Sを凝集して得られた凝集外添剤GSを帯電ロール81(および帯電ロール81から感光体ドラム11(図2参照))に転移させる性能)との関係について実験を行った。この実験では、セル数および硬度がそれぞれ異なる12種類のサンプル1〜12を、クリーニングロール82の発泡ポリウレタン層82bとして用いた。なお、セル数とは、発泡ポリウレタン層82bにおける25mmあたりの発泡孔Aの個数をいう。そして、帯電ロール81の外周面に予め多量の外添剤Sを付着させた状態で感光体ドラム11を空回転させることで、帯電ロール81および各サンプルにて発泡ポリウレタン層82bが形成されたクリーニングロール82を従動回転させ、帯電ロール81上の外添剤Sの状態を観察した。なお、このとき、帯電バイアスの印加は行っていない。
そして、帯電ロール81を例えば300回転させた後、帯電ロール81の表面状態を評価した。なお、この例では、評価値(汚れグレード)が0〜2であるものを良、2を超えるものを不良とした。また、この実験は、高温高湿環境下であるAゾーン(28℃/85%RH)、および、低温低湿環境下であるCゾーン(10℃/15%RH)で行った。表4は、この実験で発泡ポリウレタン層82bとして用いた各サンプル1〜12のセル数(個/25mm)および硬度を示している。なお、ここでいう硬度とは、φ50mmの円板を各サンプルに対して0.5mmだけ押し込んだときの荷重で表されるものである。
図9は、クリーニングロール82の発泡ポリウレタン層82bとして上記各サンプル1〜12を使用した場合に得られたクリーニング性能を示したものである。なお、同図において、サンプル1は例えば(1)で示されている。また、同図において「C」は上述したCゾーン、「A」は上述したAゾーンにおける結果をそれぞれ示している。図9より、発泡ポリウレタン層82bを構成する発泡ポリウレタンのセル数が40(個/mm)〜80(個/mm)の範囲内である場合に、Aゾーン、Cゾーンともに帯電ロール81の汚れグレードが低下し、良好なクリーニング性能が得られることが判明した。
一方、セル数が120(個/mm)以上となると、特にCゾーンにおいてクリーニング性能の低下が見られることがわかった。この理由については、次のようなことが考えられる。発泡ポリウレタン層82bを構成する発泡ポリウレタンのセル数が多くなると、発泡孔Aや発泡部Fの直径(セル径と呼ぶ)が小さくなる。発泡孔Aや発泡部Fの直径が小さくなると、発泡ポリウレタン層82bの基材(ウレタン)で支持される部位が相対的に多くなるため、発泡ポリウレタン層82bの変形が生じにくくなる。また、セル径が小さくなると、発泡孔Aに侵入した外添剤Sによって形成される凝集外添剤GSの吐き出しが困難になる。この理由としては、発泡孔A自体が小さくなるために発泡孔Aから凝集外添剤GSが離れにくくなることが考えられる。また、上述した理由により発泡ポリウレタン層82bの変形が生じにくくなるために、クリーニングニップ部Nを通過した後に発泡ポリウレタン層82bに生じる復元力(反発力)が小さくなることが考えられる。さらに、発泡ポリウレタン層82bに変形が生じにくくなると、クリーニングロール82による帯電ロール81への押し付け力が増加し、帯電ロール81に外添剤Sを擦り付けてしまうことも考えられる。
他方、発泡ポリウレタン層82b自身の硬度については、特に好ましい範囲があるわけではなく、発泡ポリウレタン層82bを構成する発泡ポリウレタンのセル数が40(個/mm)〜80(個/mm)の範囲内であれば、いずれも良好なクリーニング性能を得られることがわかった。
以上の結果により、クリーニングロール82を構成する発泡ポリウレタン層82bのセル数は、40(個/mm)〜80(個/mm)の範囲から選択することが好ましいことが理解される。
また、本発明者が行った実験によれば、上述したサンプル1〜9を発泡ポリウレタン層82bとしたクリーニングロール82によって帯電ロール81のクリーニングを行った場合には、例えば10万枚の用紙に対する画像形成動作を行っても、感光体ドラム11の帯電不良は起こらなかった。一方、上記特許文献1に記載される固定配置型のスポンジ部材を用いて帯電ロール81のクリーニングを行った場合には、約3000枚の用紙に対する画像形成動作を行った時点で、スポンジ部材が目詰まりを起こし、感光体ドラム11の帯電不良が発生した。この結果からも、多孔質弾性層である発泡ポリウレタン層82bを備えたクリーニングロール82を使用することの有用性が理解される。
また、本実施の形態では、クリーニングロール82において外添剤Sを凝集して凝集外添剤GSを形成した後、クリーニングロール82から帯電ロール81へと転移・付着せしめられた凝集外添剤GSを、感光体ドラム11に再び転移させている。帯電ロール81に付着している凝集外添剤GSを感光体ドラム11により多く転移させるためには、帯電ロール81が良好な離型性を有していることが重要であると考えられる。
そこで、本発明者は、このような離型性のパラメータの一つとして水の接触角に着目した。そして、水の接触角が異なる3種類のナイロン樹脂層81c(図2参照)が形成された帯電ロール81を用いて、帯電ロール81から感光体ドラム11への凝集外添剤GSの転移すなわち帯電ロール81のクリーニング性能に関する評価試験を行った。
では、図10を参照しつつ、水の接触角θについて説明する。通常の環境下では物質(例えば感光体ドラム11上の感光層や帯電ロール81上のナイロン樹脂層81c)の表面が疎水性物質で覆われているため、程度の差はあるが水をはじく性質がある。どの程度水をはじくかは、水滴と物質表面との接触角θによって表すことができる。水の接触角が大きいと、撥水性が高いといえる。接触角θは、例えばガラスなどの無機材料の場合は20°〜30°、一般的な樹脂では70°〜90°、撥水性のあるシリコーンやフッ素樹脂では90°程度となる。水の接触角θは、例えば以下に説明する液滴法によって測定することができる。固体(図中に示す感光体ドラム11や帯電ロール81)と水Wとの固液界面・水平線と、液滴端Wbottomでの水Wに対する接線、これら二つの線がなす角度が水の接触角θとなる。また、固液界面・水平線と、液滴端Wbottomと液頂点Wtopとを結ぶ線、これら二つの線がなす角を測定角θ’とする。このとき、接触角θは測定角θ’の2倍の値となり、このことを利用して接触角θを測定することができる。
そして、この評価試験では、水の接触角が90°である感光体ドラム11に対し、水の接触角がそれぞれ65°(サンプルα)、95°(サンプルβ)、および110°(サンプルγ)の帯電ロール81を用いた。なお、クリーニングロール82は、上述したようにセル数が40(個/25mm)〜80(個/25mm)の発泡ポリウレタン層82bを有している。そして、帯電ロール81の外周面に予め多量の外添剤Sを付着させた状態で感光体ドラム11を空回転させることで、帯電ロール81および各サンプルにて発泡ポリウレタン層82bが形成されたクリーニングロール82を従動回転させ、帯電ロール81上の外添剤Sの状態を観察した。なお、このとき、帯電バイアスの印加は行っていない。
そして、帯電ロール81を例えば300回転させた後、帯電ロール81の表面状態を評価した。なお、この例では、評価値(汚れグレード)が0〜2であるものを良、2を超えるものを不良とした。また、この実験は、高温高湿環境下であるAゾーン(28℃/85%RH)、および、低温低湿環境下であるCゾーン(10℃/15%RH)で行った。
図11は、帯電ロール81のナイロン樹脂層81cとして上記サンプルα、β、γを使用した場合に得られたクリーニング性能を示したものである。なお、同図において「C」は上述したCゾーン、「A」は上述したAゾーンにおける結果をそれぞれ示している。図10より、水の接触角が感光体ドラム11(水の接触角:90°)より大きいサンプルβ(水の接触角:95°)およびサンプルγ(水の接触角:110°)では、Cゾーン、Aゾーンともに帯電ロール81の汚れグレードが低下し、良好なクリーニング性能が得られることが判明した。一方、水の接触角が感光体ドラム11より低いサンプルα(水の接触角:65°)では、Cゾーン、Aゾーンともに帯電ロール81の汚れグレードが上昇してしまい、特にAゾーンでは汚れグレードが2を超えた。この理由については、次のようなことが考えられる。帯電ロール81における水の接触角が感光体ドラム11における水の接触角よりも小さいと、感光体ドラム11よりも帯電ロール81の方の離型性が悪くなる。したがって、帯電ロール81と感光体ドラム11とが接する部位を、帯電ロール81に付着した凝集外添剤GSが通過する際に、帯電ロール81から感光体ドラム11に転移しにくくなるものと考えられる。
以上の結果より、帯電ロール81の水の接触角は、感光体ドラム11の水の接触角よりも大きくすることが好ましいことが理解される。
また、本発明者が行った実験によれば、帯電ロール81のナイロン樹脂層81cとして上述したサンプルβを用いた場合には、7万枚の用紙に対する画像形成動作を行った後も、外添剤S等による帯電ロール81の目詰まりは生じず、感光体ドラム11の帯電不良は起こらなかった。さらに、帯電ロール81のナイロン樹脂層81cとして上述したサンプルγを用いた場合には、10万枚の用紙に対する画像形成動作を行った後も、外添剤S等による帯電ロール81の目詰まりは生じず、感光体ドラム11の帯電不良は起こらなかった。なお、帯電ロール81のナイロン樹脂層81cとして上述したサンプルαを用いた場合には、2万枚の用紙に対する画像形成動作を行った時点で、外添剤S等による帯電ロール81の目詰まりが生じ、感光体ドラム11の帯電不良が発生した。
一方、上記特許文献1に記載される固定配置型のスポンジ部材を用いて帯電ロール81のクリーニングを行った場合には、約3000枚の用紙に対する画像形成動作を行った時点で、スポンジ部材が目詰まりを起こし、感光体ドラム11の帯電不良が発生した。
この結果から、多孔質弾性層である発泡ポリウレタン層82bを備えたクリーニングロール82を使用すること、および、帯電ロール81の水の接触角を感光体ドラム11の水の接触角よりも大きくすることの有用性が理解される。
このように、本実施の形態では、帯電ロール81における水の接触角を、感光体ドラム11における水の接触角よりも大きくすることにより、クリーニングロール82から帯電ロール81に転移・付着した凝集外添剤GSを感光体ドラム11に転移させやすくなった。これにより、クリーニングロール82から帯電ロール81に転移・付着した凝集外添剤GSがそのまま帯電ロール81表面に残るという事態を回避できる。したがって、帯電ロール81の表面は常時きれいな状態に維持されることになり、帯電ロール81における異物の除去性能を長期にわたって維持することができる。また、帯電ロール81における異物の除去性能を長期にわたって維持できることにより、帯電ロール81による感光体ドラム11の帯電性能を長期にわたって維持することができ、感光体ドラム11の帯電不良の発生を防止することができる。
1…本体、11…感光体ドラム、12…帯電装置、13…露光装置、14…現像装置、15…中間転写ベルト、16…二次転写ロール、17…定着装置、18…クリーニングブレード、22…一次転写ロール、50…現像器、81…帯電ロール、81a…回転軸、81b…エピクロルヒドリンゴム層、81c…ナイロン樹脂層、82…クリーニングロール、82a…回転軸、82b…発泡ポリウレタン層、D…現像剤、C…キャリア、T…トナー、S…外添剤、A…発泡孔、GS…凝集外添剤、N…クリーニングニップ部