本発明は有機発光素子を有する表示装置に関する。
近年、有機発光素子を用いる表示装置が次世代平面表示装置として注目されている。この有機発光素子を用いる表示装置は、白色光,広視野角,高速応答性といった優れた特性を有している。
この種の表示装置においては、画素部に有機発光素子が構成されており、有機発光素子は、ガラス基板上に、ITO等の陽極層と、正孔輸送層,発光層,電子輸送層等からなる有機層と、Al等の陰極層とで形成された構造となっている。
上記の両極層間に数V程度の電圧を印加すると、陽極層に正孔が注入され、陰極層に電子が注入され、正孔と電子がそれぞれ正孔輸送層または電子輸送層を経由して発光層で結合し、エキシトンが生成される。このエキシトンが基底状態に戻る際に発光層が発光する。発光光は透明性を有する陽極層を透過して取り出される。発光光が基板を通過して基板の裏面から取り出される構造をボトムエミッション,発光光が基板を通過せず基板の表面から取り出される構造をトップエミッションと呼ばれている。
有機発光素子を画素に用いる表示装置には、単純マトリクス型有機発光表示装置と画素内に薄膜トランジスタを1つ以上用いるアクティブマトリクス型有機発光表示装置がある。それぞれの表示装置を駆動し任意の画像を表示する駆動方式は電圧駆動方式と電流駆動方式とがある。
単純マトリクス型有機発光表示装置は、複数の陽極ラインと陰極ラインが交差した位置に正孔輸送層,発光層,電子輸送層等の有機層が形成されており、各画素は1フレーム期間中、選択時間のみ点灯する。
アクティブマトリクス型有機発光表示装置では、各画素を構成する有機EL(発光)素子に、1〜4個、またはそれ以上の薄膜トランジスタのスイッチング素子及び容量から構成される駆動素子が接続されており、1フレーム期間中の全点灯が可能となる。
電流駆動方式は、画像信号情報を電流値に変換し電流信号を発光素子に伝達入力することにより発光素子の輝度を制御する。このとき有機発光素子は入力された電流値に従った発光輝度を発光する。
電圧駆動方式は、画像信号情報を電圧値に変換し電圧信号を発光素子に伝達入力することにより発光素子の輝度を制御する。このとき有機発光素子は入力された電圧値に従った発光輝度を発光する。
有機発光素子には発光経過時間に伴う電流効率の低下と駆動電圧の上昇という2つの劣化がある。この現象は有機材料を取り替えても観測され有機発光素子構造自体に原因があると考えられている。
有機発光素子においては、駆動電圧の低下及び発光効率向上を目的として、仕事関数が酸化錫インジウム(ITO)よりも大きな金属酸化物薄材料を5nm〜30nmの膜を使用した下記特許文献1が開示されているが、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇に関する記述はない。
有機発光素子には発光経過時間に伴う電流効率の低下と駆動電圧の上昇という2つの劣化がある。
電流駆動方式で駆動される有機発光素子において、有機発光素子の電流効率の低下が輝度低下の原因となるが、有機発光素子の駆動電圧の上昇は輝度低下の原因とはならない。
電圧駆動方式で駆動される有機発光素子において、電流効率の低下と駆動電圧の上昇との両方が輝度低下の原因となる。
従って電圧駆動方式で駆動される有機発光素子を備えた表示装置は、電流駆動方式の表示装置よりも輝度低下が発生し易く、その結果、焼付きが発生しやすいという課題がある。
ここでいう電圧駆動方式で駆動する表示装置とは、画像信号情報を電圧値に変換し電圧信号を発光素子に伝達入力するための信号線を有した表示装置のことである。有機発光素子は入力された電圧値に従った発光輝度を発光する。
有機発光素子には、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇という劣化があるため、電圧駆動方式で駆動される有機発光素子を備えた表示装置において、焼付きが発生し易いという課題がある。
本発明の目的は、有機発光素子の発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制し、有機発光素子を用い電圧駆動方式で駆動する表示装置において、焼付きが少ない表示装置を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、基板と、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを有する有機発光層と、有機発光層と基板間に配置された下部電極と、下部電極に対して基板と反対側に配置された上部電極と、を備え、正孔輸送層は正孔輸送材料と金属酸化材料とで構成された構成とする。
また、その正孔輸送材料は、金属酸化材料の仕事関数は、5.5eV 以上であるものを用いる構成とする。
また、正孔輸送層は、正孔輸送材料と金属酸化材料とで構成された混合層、または正孔輸送材料からなる層と金属酸化材料からなる層とで構成された2層構造とする構成とする。
また、基板と、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを有する有機発光層と、有機発光層と基板間に配置された下部電極と、下部電極に対して基板と反対側に配置された上部電極と、を備え、正孔輸送層は、正孔輸送材料とフタロシアニン類の材料とで構成される構成とする。
また、正孔輸送層は、正孔輸送材料とフタロシアニン類の材料とで構成された混合層、または正孔輸送材料からなる層とフタロシアニン類の材料からなる層とで構成された2層構造とする構成とする。
また、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層と、一対の偏光板と、を有する液晶表示素子と、その液晶表示素子に光を照射する照明部と、を有し、照明部は、基板と、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを有する有機発光層と、有機発光層と基板間に配置された下部電極と、下部電極に対して基板と反対側に配置された上部電極と、を有し、正孔輸送層は正孔輸送材料と金属酸化材料とで構成された構成とする。
また、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層と、一対の偏光板と、を有する液晶表示素子と、その液晶表示素子に光を照射する照明部と、を有し、照明部は、基板と、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを有する有機発光層と、有機発光層と基板間に配置された下部電極と、下部電極に対して基板と反対側に配置された上部電極と、を有し、前記正孔輸送層は、正孔輸送材料とフタロシアニン類の材料とで構成される構成とする。
本発明は、有機発光素子の発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制し、有機発光素子を用い電圧駆動方式で駆動する表示装置において、焼付きが少ない表示装置を提供することができる。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図2を用いて説明する。
本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、下部電極である陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,上部電極である陰極層6を、この順に配置しており、前記正孔輸送層3は図2に示すように、正孔輸送材料8と金属酸化材料9との混合層7で構成されることを特徴とする構造となっている。
ここで正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5を有機発光層とすると、下部電極は、基板1と有機発光層との間に配置され、上部電極は、下部電極に対して基板1が配置された位置とは反対側に配置されている。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は、正孔の注入効率を高める仕事関数の大きな導電膜が望ましい。本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図2に示す混合層7を形成する。混合層7は正孔輸送材料8と金属酸化材料9との混合で形成されている。
混合層7は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と金属酸化材料9の共蒸着膜を形成する。
正孔輸送材料8とは正孔を輸送する材料を指し、本実施例では、4,4−ビス〔N−
(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
正孔を輸送する材料として、具体的には、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニル−[1,1′−ビフェニル]−4,4′ジアミン(TPD)、4,
4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4′,4″−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン(p−
DPA−TDAB)が望ましい。また、もちろんこれらの材料に限られるわけではなく、また、これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。
金属酸化材料9とは陽極層との安定な界面を形成し、結果として有機発光素子の発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制可能な材料を指し、本実施例では、V2O5(5酸化バナジウム)を用いた。V2O5の仕事関数は5.5eV である。このときMo製昇華ボードにV2O5を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
その他に、例えば酸化モリブデン,酸化ルテニウム,酸化アルミニウム,酸化ビスマス,酸化ガリウム,酸化ゲルマニウム,酸化マグネシウム,酸化アンチモン,酸化珪素,酸化チタン,酸化タングステン,酸化イットリウム,酸化ジルコニウム,酸化イリジウム,酸化レニウム,酸化バナジウムなどの仕事関数が5.5eV以上の酸化物を用いる。
混合層7のパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層7を形成するにあたり、正孔輸送材料8と金属酸化材料9の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8と金属酸化材料9の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層7の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側の金属酸化材料9の濃度が高く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層2側の金属酸化材料9の濃度が低く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が高くても差し支えない。また、混合層7の金属酸化材料9の濃度分布、または正孔輸送材料8の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層7の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例では、これらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±
0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例によれば、正孔輸送層3として用いる金属酸化材料9を含む混合層7は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と金属酸化材料9からなる混合層7であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても混合層7は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。
従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と金属酸化材料9からなる混合層7であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図3を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、下部電極である陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,上部電極である陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は図3に示すように、正孔輸送材料8と金属酸化材料9からなる2層構造の正孔輸送層13であることを特徴とする構造となっている。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2もしくは、膜厚50nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図3に示す正孔輸送材料8と金属酸化材料9からなる2層構造の正孔輸送層13を形成する。
正孔輸送層13は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と金属酸化材料9の2層構造膜を形成する。
金属酸化材料9は、V2O5(5酸化バナジウム)を用い真空蒸着法にて膜厚3nmの金属酸化材料9の層を形成した。V2O5の仕事関数は5.5eV である。このときMo製昇華ボードにV2O5を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。
正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚47nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
正孔輸送層13のパターンはシャドウマスクを用いて形成した。正孔輸送層13の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また金属酸化材料9の膜厚は3nmに限定しない。また、正孔輸送材料8の膜厚は47nmに限定しない。正孔輸送層13の正孔輸送材料8と金属酸化材料9の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。
正孔輸送層13を形成する正孔輸送材料8と金属酸化材料9は2種類同時に蒸着してもよく、各々の蒸着レートを調節して正孔輸送層を形成してもよい。本実施例の場合、正孔輸送材料8の蒸着レートは例えばほぼ0nm/sec に近い蒸着レートに制御し、金属酸化材料9の蒸着レートは正孔輸送材料8の蒸着レートより大きければよく、例えば1.0±0.05nm/sec で蒸着してもよい。その後、正孔輸送材料8の蒸着レートは例えば1.0±0.05nm/secで蒸着し、金属酸化材料9の蒸着レートは正孔輸送材料8の蒸着レートより小さく制御し例えばほぼ0nm/sec で蒸着する。こうすることにより、あまりにも小さいほぼ0nm/sec という蒸着レートは基板1の上に形成された陽極層2まで到達することができないので、図3に示す正孔輸送層13を形成することができる。このような手法で製造された有機発光素子は有機膜を成膜する時間が短縮するので、その結果生産コストを低減することができ、安価な表示装置を提供することができる。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例によれば、正孔輸送層3として用いる金属酸化材料9を含む2層構造の正孔輸送層13は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と金属酸化材料9からなる2層構造の正孔輸送層13であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を下部電極である陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3、上部電極である陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層13は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と金属酸化材料9からなる正孔輸送層13であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は照明装置としても好適であり、特に、一対の基板と、その一対の基板間に挟持された液晶層と、一対の基板の外側に配置された一対の偏光板とを有する液晶表示素子において、そのバックライトである照明部に上述した有機発光素子、つまり基板1,正孔輸送層3と発光層4と電子輸送層5とを有する有機発光層、その有機発光層を挟持する上部電極及び下部電極、を備えた有機発光素子を用いるのに好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図4を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は図4に示すように、正孔輸送材料8と混合層7からなる2層構造の正孔輸送層14であることを特徴とする構造となっている。また本実施例で示す有機発光素子12は、正孔輸送層14の正孔輸送材料8が発光層4側に配置されることを特徴とする。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図4に示す正孔輸送材料8と混合層7からなる2層構造の正孔輸送層14を形成する。
正孔輸送層14は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と混合層7からなる2層構造膜を形成する。
陽極層2の上に形成する混合層7は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚10nmの正孔輸送材料8と金属酸化材料9の共蒸着膜で形成する。
正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。
金属酸化材料9は、V2O5(5酸化バナジウム) を用いた。V2O5の仕事関数は5.5
eVである。このときMo製昇華ボードにV2O5 を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層7を形成するにあたり、正孔輸送材料8と金属酸化材料9の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8と金属酸化材料9の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層7の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側の金属酸化材料9の濃度が高く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層側の金属酸化材料9の濃度が低く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が高くても差し支えない。また、混合層7の金属酸化材料9の濃度分布、または正孔輸送材料8の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層7の膜厚は本実施例で示した10nmに限定しない。
混合層7の上に形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚40nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約
60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
正孔輸送層14の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また混合層7の膜厚は10nm、正孔輸送材料8の膜厚は40nmに限定しない。正孔輸送層14の正孔輸送材料8と混合層7の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。正孔輸送層14の正孔輸送材料8は次に形成する発光層4と接している。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例によれば、金属酸化材料9を含む混合層7から形成される2層構造の正孔輸送層14は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層7からなる2層構造の正孔輸送層14であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層14は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層7からなる2層構造の正孔輸送層14であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は照明装置としても他の実施例と同様に好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図5を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は図5に示すように、正孔輸送材料8と混合層7と金属酸化材料9からなる3層構造の正孔輸送層15であることを特徴とする構造となっている。また本実施例で示す有機発光素子12は、正孔輸送層15の正孔輸送材料8が発光層4側に配置されることを特徴とする。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図5に示す正孔輸送材料8と混合層7と金属酸化材料9からなる3層構造の正孔輸送層14を形成する。
正孔輸送層15は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と混合層7と金属酸化材料9からなる3層構造膜を形成する。
陽極層2の上に形成する金属酸化材料9は、V2O5(5酸化バナジウム)を用いた。
V2O5の仕事関数は5.5eVである。このときMo製昇華ボードにV2O5を約40mg 入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。本実施例で示す金属酸化材料9の膜厚は3nmである。
混合層7は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚7nmの正孔輸送材料8と金属酸化材料9の共蒸着膜で形成する。
正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
金属酸化材料9は、V2O5(5酸化バナジウム)を用いた。V2O5 の仕事関数は5.5
eVである。このときMo製昇華ボードにV2O5 を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層7を形成するにあたり、正孔輸送材料8と金属酸化材料9の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8と金属酸化材料9の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層7の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側の金属酸化材料9の濃度が高く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層2側の金属酸化材料9の濃度が低く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が高くても差し支えない。また、混合層7の金属酸化材料9の濃度分布、または正孔輸送材料8の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層7の膜厚は本実施例で示した7nmに限定しない。
混合層7の上に形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚40nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約
60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
正孔輸送層14の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また混合層7の膜厚は7nm、正孔輸送材料8の膜厚は40nm、金属酸化材料9の膜厚は3nmに限定しない。正孔輸送層14の正孔輸送材料8と混合層7と金属酸化材料9の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。正孔輸送層15の正孔輸送材料8は次に形成する発光層4と接している。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg 入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec ,0.01±0.005
nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例の有機発光素子12によれば、正孔輸送層3として用いる正孔輸送層15は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層7と金属酸化材料9からなる3層構造の正孔輸送層15であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層15は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層7と金属酸化材料9からなる3層構造の正孔輸送層15であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図6を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は図6に示すように、正孔輸送材料8と金属酸化材料9と混合層7からなる3層構造の正孔輸送層16であることを特徴とする構造となっている。また本実施例で示す有機発光素子12は、正孔輸送層16の正孔輸送材料8が発光層4側に配置されることを特徴とする。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図6に示す正孔輸送材料8と金属酸化材料9と混合層7からなる3層構造の正孔輸送層16を形成する。
正孔輸送層16は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と金属酸化材料9と混合層7からなる3層構造膜を形成する。
陽極層2の上に形成する混合層7は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚7nmの正孔輸送材料8と金属酸化材料9の共蒸着膜で形成する。
正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。
金属酸化材料9は、V2O5(5酸化バナジウム)を用いた。V2O5 の仕事関数は5.5
eVである。このときMo製昇華ボードにV2O5 を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層7を形成するにあたり、正孔輸送材料8と金属酸化材料9の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8と金属酸化材料の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層7の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側の金属酸化材料9の濃度が高く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層側の金属酸化材料9の濃度が低く、発光層4側の金属酸化材料9の濃度が高くても差し支えない。また、混合層7の金属酸化材料の濃度分布、または正孔輸送材料の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層7の膜厚は本実施例で示した7nmに限定しない。
混合層7の上に形成する金属酸化材料9は、V2O5(5酸化バナジウム)を用いた。
V2O5の仕事関数は5.5eVである。このときMo製昇華ボードにV2O5を約40mg 入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。本実施例で示す金属酸化材料9の膜厚は3nmである。
金属酸化材料9の上に形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚40nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
正孔輸送層16の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また混合層7の膜厚は7nm、正孔輸送材料8の膜厚は40nm、金属酸化材料9の膜厚は3nmに限定しない。正孔輸送層16の正孔輸送材料8と混合層7と金属酸化材料9の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。正孔輸送層16の正孔輸送材料8は次に形成する発光層4と接している。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg 入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec ,0.01±0.005
nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例の有機発光素子12によれば、正孔輸送層3として用いる正孔輸送層16は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と金属酸化材料9と混合層7からなる3層構造の正孔輸送層16であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層16は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と金属酸化材料9と混合層7からなる3層構造の正孔輸送層16であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図7を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、下部電極である陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,上部電極である陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11との混合層10で構成されることを特徴とする構造となっている。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図6に示す混合層10を形成する。混合層10は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11との混合で形成されている。
混合層10は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の共蒸着膜を形成する。
正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。
フタロシアニン類11とは陽極層との安定な界面を形成し、結果として有機発光素子の発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制可能な材料を指し、銅フタロシアニンなどの仕事関数が5.2eV 以上の物質である。本実施例では、銅フタロシアニン(CuPc)を用いた。CuPcの仕事関数は5.2eV である。このときMo製昇華ボードにCuPcを約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
フタロシアニン類例は、結晶性の膜でアモルファスではないので、銅フタロシアニン膜自体が熱に対して安定である。そのため、陽極層との安定な界面を形成し、結果として有機発光素子の発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層10を形成するにあたり、正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層10の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側のフタロシアニン類11の濃度が高く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層側のフタロシアニン類11の濃度が低く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が高くても差し支えない。また、混合層10のフタロシアニン類11の濃度分布、または正孔輸送材料8の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層10の膜厚は本実施例で示した
50nmに限定しない。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg 入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
つまり、ここで言う発光層とは、注入された正孔,電子が再結合し、材料固有の波長で発光する層をさす。発光層を形成するホスト材料自体が発光する場合とホストに微量添加したドーパント材料が発光する場合がある。具体的なホスト材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体(DPVBi),骨格にベンゼン環を有するシロール誘導体(2PSP),トリフェニルアミン構造を両端に有するオキソジアゾール誘導体(EM2),フェナンスレン基を有するペリノン誘導体(P1),トリフェニルアミン構造を両端に有するオリゴチオフェン誘導体(BMA−3T),ペリレン誘導体(tBu−PTC),トリス(8−キノリノール)アルミニウム,ポリパラフェニレンビニレン誘導体,ポリチオフェン誘導体,ポリパラフェニレン誘導体,ポリシラン誘導体,ポリアセチレン誘導体が望ましい。また、もちろんこれらの材料に限られるわけではなく、また、これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。次に、具体的なドーパント材料としては、キナクリドン,クマリン6,ナイルレッド,ルブレン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM),ジカルバゾール誘導体が望ましい。また、もちろんこれらの材料に限られるわけではなく、また、これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
ここで言う電子輸送層とは、電子を輸送し、発光層へ注入する役割を有する。そのため、電子移動度が高いことが望ましい。具体的には、トリス(8−キノリノール)アルミニウム,オキサジアゾール誘導体,シロール誘導体,亜鉛ベンゾチアゾール錯体が望ましい。また、もちろんこれらの材料に限られるわけではなく、また、これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
ここで言う陰極層は、電子の注入効率を高める仕事関数の小さな導電膜が望ましい。具体的には、マグネシウム・銀合金,アルミニウム・リチウム合金,アルミニウム・カルシウム合金,アルミニウム・マグネシウム合金,金属カルシウムが挙げられるが、これらの材料に限定されるわけではない。一般的はアルミニウム(以下、Al)とフッ化リチウム(以下、LiF)を共蒸着した陰極層、または前記電子輸送層の次にLiF,Alの順に蒸着した陰極層が使用されている。
本実施例の有機発光素子12によれば、正孔輸送層3として用いる混合層10は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11からなる混合層10であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても混合層10は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11からなる混合層10であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図8を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、下部電極である陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,上部電極である陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11からなる2層構造の正孔輸送層17であることを特徴とする構造となっている。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図8に示す正孔輸送材料8とフタロシアニン類
11からなる2層構造の正孔輸送層13を形成する。
正孔輸送層13は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と金属酸化材料9の2層構造膜を形成する。
フタロシアニン類11は、銅フタロシアニン(CuPc)を用い真空蒸着法にて膜厚3nmのフタロシアニン類11の層を形成した。銅フタロシアニンの仕事関数は5.5eVである。このときMo製昇華ボードに銅フタロシアニンを約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚47nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。正孔輸送層13の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また金属酸化材料9の膜厚は3nm、正孔輸送材料8の膜厚47nmに限定しない。正孔輸送層13の正孔輸送材料8と銅フタロシアニン
11の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。また実施例2にて述べたように正孔輸送材料8銅フタロシアニン11の蒸着を制御する手法を用いて2層構造の正孔輸送層17を形成してもよい。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例の有機発光素子12によれば、正孔輸送層3として用いる正孔輸送層17は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類
11からなる2層構造の正孔輸送層17であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を下部電極である陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,上部電極である陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層17は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11からなる2層構造の正孔輸送層17であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図9を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、下部電極である陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,上部電極である陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層10からなる2層構造の正孔輸送層18であることを特徴とする構造となっている。また本実施例で示す有機発光素子12は、正孔輸送層18の正孔輸送材料8が発光層4側に配置されることを特徴とする。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図9に示す正孔輸送材料8と混合層10からなる2層構造の正孔輸送層18を形成する。
正孔輸送層18は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と混合層10からなる2層構造膜を形成する。
陽極層2の上に形成する混合層10は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚10nmの正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の共蒸着膜で形成する。
混合層10に用いる正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05
nm/secに制御して蒸着する。
混合層10に用いるフタロシアニン類11は、銅フタロシアニン(CuPc)を用いた。銅フタロシアニンの仕事関数は5.2eV である。このときMo製昇華ボードに銅フタロシアニンを約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層10を形成するにあたり、正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層10の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側のフタロシアニン類11の濃度が高く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層側のフタロシアニン類11の濃度が低く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が高くても差し支えない。また、混合層10のフタロシアニン類11の濃度分布、または正孔輸送材料8の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層10の膜厚は本実施例で示した
10nmに限定しない。
混合層10の上に形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚40nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
正孔輸送層18の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また混合層7の膜厚は10nm、正孔輸送材料8の膜厚は40nmに限定しない。正孔輸送層18の正孔輸送材料8と混合層10の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。正孔輸送層18の正孔輸送材料8は次に形成する発光層4と接している。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg 入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例の有機発光素子12によれば、正孔輸送層3として用いる正孔輸送層18は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層10からなる2層構造の正孔輸送層18であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層18は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層10からなる2層構造の正孔輸送層18であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は上述した他の実施例と同様に照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図10を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、下部電極である陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,上部電極である陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層10とフタロシアニン類11からなる3層構造の正孔輸送層19であることを特徴とする構造となっている。また本実施例で示す有機発光素子12は、正孔輸送層19の正孔輸送材料8が発光層4側に配置されることを特徴とする。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図10に示す正孔輸送材料8と混合層10とフタロシアニン類11からなる3層構造の正孔輸送層19を形成する。
正孔輸送層19は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8と混合層10とフタロシアニン類11からなる3層構造膜を形成する。
陽極層2の上に形成するフタロシアニン類11は、銅フタロシアニン(CuPc)を用いた。銅フタロシアニンの仕事関数は5.2eV である。このときMo製昇華ボードに銅フタロシアニンを約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。本実施例ではフタロシアニン類11の膜厚は3nmである。
混合層10は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚7nmの正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の共蒸着膜で形成する。
混合層10を形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
混合層10を形成するフタロシアニン類11は、銅フタロシアニン(CuPc)を用いた。銅フタロシアニンの仕事関数は5.2eV である。このときMo製昇華ボードに銅フタロシアニンを約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層10を形成するにあたり、正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層10の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側のフタロシアニン類11の濃度が高く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層2側のフタロシアニン類11の濃度が低く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が高くても差し支えない。また、混合層10のフタロシアニン類11の濃度分布、または正孔輸送材料8の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層10の膜厚は本実施例で示した7nmに限定しない。
混合層10の上に形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚40nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
正孔輸送層19の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また混合層10の膜厚は7nm、正孔輸送材料8の膜厚は40nm、フタロシアニン類11の膜厚は3nmに限定しない。正孔輸送層19の正孔輸送材料8と混合層10とフタロシアニン類11の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。正孔輸送層19の正孔輸送材料8は次に形成する発光層4と接している。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg 入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例の有機発光素子12によれば、正孔輸送層3として用いる正孔輸送層19は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層7とフタロシアニン類11からなる3層構造の正孔輸送層19であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。
図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層19は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8と混合層7とフタロシアニン類11からなる3層構造の正孔輸送層19であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は上述した他の実施例と同様に照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施例は、電圧駆動方式で駆動する表示装置における、有機発光素子12の構造について図1と図11を用いて説明する。本実施例で説明する有機発光素子12は発光光を基板1側から取り出す構造の有機発光素子である。
図1は本実施例の有機発光素子を示す断面図である。図1において有機発光素子12は、基板1の上に、下部電極である陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,上部電極である陰極層6を備えており、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11と混合層10からなる3層構造の正孔輸送層20であることを特徴とする構造となっている。また本実施例で示す有機発光素子12は、正孔輸送層20の正孔輸送材料8が発光層4側に配置されることを特徴とする。
基板1は例えば透明材料である石英,ガラス板,ポリエステル,ポリメチルメタクリレート,ポリカーボネート,ポリサルホン等のプラスチックフィルムやシート等が用いられる。
基板1上に形成される有機発光素子12の陽極層2は本実施例において、例えば透明な導電性材料であるインジウムチンオキサイド(ITO),SnO2 もしくは、膜厚50
nm程度の金(Au)をスパッタリング,真空蒸着法等によって基板1の一面に形成されている。
陽極層2の上に、正孔輸送層3として図11に示す正孔輸送材料8とフタロシアニン類11と混合層10からなる3層構造の正孔輸送層20を形成する。
正孔輸送層20は、真空蒸着法にて、膜厚50nmの正孔輸送材料8とフタロシアニン類11と混合層10からなる3層構造膜を形成する。
陽極層2の上に形成する混合層10は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚7nmの正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の共蒸着膜で形成する。
混合層10を形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用いた。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/secに制御して蒸着する。
混合層10を形成するフタロシアニン類11は、銅フタロシアニン(CuPc)を用いた。銅フタロシアニンの仕事関数は5.2eV である。このときMo製昇華ボードに銅フタロシアニンを約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。
このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。混合層10を形成するにあたり、正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは1:1で共蒸着を行ったが、これに限定するものではない。また正孔輸送材料8とフタロシアニン類11の蒸着レートは一定と限るものではなく、任意の混合層10の膜厚を形成する途中で蒸着レートを変動して、例えば陽極層2側のフタロシアニン類11の濃度が高く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が低くても差し支えない。またその逆で、陽極層側のフタロシアニン類11の濃度が低く、発光層4側のフタロシアニン類11の濃度が高くても差し支えない。また、混合層10のフタロシアニン類11の濃度分布、または正孔輸送材料8の濃度分布を一定ではなく任意に変動しても差し支えない。混合層10の膜厚は本実施例で示した7nmに限定しない。
混合層10の上に形成するフタロシアニン類11は、銅フタロシアニン(CuPc)を用いた。銅フタロシアニンの仕事関数は5.2eVである。このときMo製昇華ボードに銅フタロシアニンを約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。本実施例で示すフタロシアニン類11の膜厚は3nmである。
フタロシアニン類11の上に形成する正孔輸送材料8は、4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル膜(以下、α−NPD膜と称する。)を用い真空蒸着法にて膜厚40nmの正孔輸送材料8の層を形成した。Mo製昇華ボードにα−NPDを約60mg入れ、α−NPD膜の形成は蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着する。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
正孔輸送層20の膜厚は本実施例で示した50nmに限定しない。また混合層10の膜厚は7nm、正孔輸送材料8の膜厚は40nm、フタロシアニン類11の膜厚は3nmに限定しない。正孔輸送層20の正孔輸送材料8と混合層10とフタロシアニン類11の膜厚比率は任意の膜厚比であっても差し支えない。正孔輸送層20の正孔輸送材料8は次に形成する発光層4と接している。
ここでいう発光層4は赤色,緑色,青色の発光材料があり、本実施例ではこれらどの発光色の材料を用いても差し支えない。また三重項材料を用いても差し支えない。
青色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、真空蒸着法にて膜厚40nmのジスチリルアリーレン誘導体膜(以下、DPVBiと略記)を形成した。Mo製昇華ボートにDPVBiの原料を、それぞれ約40mg 入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれAlq,Qcと称する。)を形成する。2個のMo製昇華ボードにAlq,
Qcの原料を、それぞれ約40mg,約10mg ずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。Alq+Qc共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する発光材料を発光層4として用いる場合は、二元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのAlqとナイルレッドの共蒸着膜(以下、Nrと略記)を形成した。2個のMo製昇華ボートにAlq,Nrの原料を、それぞれ約10mg,約5mg入れ、蒸着速度をそれぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成する。
緑色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとイリジウム錯体(Ir(ppy)3)の共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,Ir(ppy)3の原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+Ir(ppy)3共蒸着膜は緑色発光層として機能する。
赤色に発光する三重項(燐光)材料を発光層4として用いる場合は、2元同時真空蒸着法にて、膜厚40nmのCBPとPtOEPの共蒸着膜を形成する。2個のMo製昇華ボードにCBP,PtOEPの原料を、それぞれ約40mg,約10mgずつ入れ、蒸着速度を、それぞれ0.40±0.05nm/sec,0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。CBP+PtOEP共蒸着膜は赤色発光層として機能する。
電子輸送層5は、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成する。このとき、
Mo製昇華ボードに原料を約40mg入れ、蒸着速度を0.15±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
陰極層6の形成は、Mo製昇華ボートにAl,LiFの原料をそれぞれ約10mg,約5mg入れ、先ず膜厚0.5nmのLiFを0.01±0.005nm/secに制御して蒸着した。その後、膜厚100nmのAlを10.0±0.05nm/sec に制御して蒸着した。このときのパターンはシャドウマスクを用いて形成した。
本実施例の有機発光素子12によれば、正孔輸送層3として用いる正孔輸送層20は陽極層2との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇がほぼ0Vである有機発光素子12を製作することができる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類
11と混合層10からなる3層構造の正孔輸送層20であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。本実施例では発光光を基板1側から取り出す構造の表示装置について述べたが、図12に示す構造の有機発光素子21を複数個有する表示装置にも適用可能である。有機発光素子21は、基板1の上に本実施例で示した各々の層を陰極層6,電子輸送層5,発光層4,正孔輸送層3,陽極層2の順番で形成する。図12に示す有機発光素子21の場合においても正孔輸送層20は陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる。従って、陽極層2,正孔輸送層3,発光層4,電子輸送層5,陰極層6とを有した有機発光素子21を複数個有し、電圧駆動方式で駆動する表示装置において、前記正孔輸送層3は正孔輸送材料8とフタロシアニン類11と混合層10からなる3層構造の正孔輸送層20であることを特徴とする本実施例の表示装置は、焼付きを低減することができる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例において、発光層4の発光色を組み合わせて白色光を発光する表示装置は上述した他の実施例と同様に照明装置としても好適であり、特に液晶表示装置におけるバックライト照明装置に好適である。
以下、本発明の表示装置の実施例について図13,図14を用いて説明する。図13は図14に示すA−A′に沿う断面図である。図14は本実施例の表示装置における画素領域の平面図である。
本実施例における表示装置の特徴は、複数の画素とこの画素を駆動する薄膜トランジスタを有し、電圧駆動方式で駆動するアクティブ型表示装置において、前記複数の画素にはそれぞれ有機発光素子を有しており、該有機発光素子は、基板上に、下部電極である陽極層、正孔輸送層,発光層,電子輸送層、上部電極である陰極層を有して構成され、前記陽極層側から前記有機発光層の発光光を取り出すものであり、前記陽極層は、低抵抗材料からなる補助電極に接続されており、該有機発光素子は、前記陰極層,前記電子輸送層,前記発光層,前記正孔輸送層,前記陽極層の順に形成され、前記正孔輸送層は正孔輸送材料と金属酸化材料またはフタロシアニン類とで構成された実施例1〜10記載の正孔輸送層3を有する有機発光素子12であることを特徴とする。
以下、この実施例の有機発光表示装置の製造方法について説明する。
ガラス基板116上に減圧化学気相成長法(LPCVD法)を用いて膜厚50nmのアモルファスシリコン(a−Si)膜を形成する。次に、膜全面をレーザアニールした。これにより、a−Siが結晶化され、多結晶シリコン(p−Si)となった。次に、p−
Si膜を、ドライエッチングでパターン化し、第1トランジスタ101の活性層103,第2トランジスタ102の活性層103′、及び容量下部電極105を形成した。
次に、プラズマ増強化学気相成長法(PECVD法)を用いゲート絶縁膜117として膜厚100nmのSiO2膜を形成した。
次に、ゲート電極107,107′として膜厚50nmのTiW膜をスパッタリング法により作製し、パターニングした。併せて、走査線106、及び容量上部電極108もパターニングした。
次に、イオン注入法によりゲート絶縁膜117の上部から、パターン化されたp−Si層にNイオンを注入した。上部にゲート電極がある領域にはNイオンが注入されず、活性層103及び103′となる。
次に、基板116を不活性N2 雰囲気下で、加熱活性化処理を行い、ドーピングが有効に行われるようにした。その上に、第1層間絶縁層118として窒化シリコン(SiNX)膜を成膜した。膜厚は200nmである。
次に、活性層103及び103′の両端上部のゲート絶縁膜117及び第1層間絶縁膜118に、コンタクト正孔を形成した。さらに、第2トランジスタのゲート電極107′上部の第1層間絶縁膜118にコンタクト正孔を形成した。その上に、スパッタリング法にて膜厚500nmのAl膜を形成する。ホトリソグラフティ工程により信号線109,電源線110を形成する。また、第1トランジスタ101のソース電極112及びドレイン電極113,第2トランジスタ102のソース電極112′及びドレイン電極113′を形成する。
容量下部電極105と第1トランジスタ101のドレイン電極113を接続する。また、第1トランジスタ101のソース電極112と信号線109を接続する。また、第1トランジスタのドレイン電極113を第2トランジスタのゲート電極107′に接続する。また、第2トランジスタのドレイン電極113′を電源線110に接続する。また、容量上部電極108を電源線110に接続する。
次に、第2層間絶縁膜119としてSiNX 膜を成膜した。膜厚は500nmである。第2トランジスタのドレイン電極113′上部にコンタクト正孔を設ける。その上にスパッタリング法を用いて、厚さ150nmのAl膜を形成し、ホトリソグラフティ法を用いて陰極層115を形成する。
次に、第3層間絶縁膜120として、スピンコート法を用い、JSR社製ポジ型感光性保護膜(PC452)を形成し、ベーク処理を行った。PC452で形成された第3層間絶縁膜120の膜厚は1μmで、陰極層115のエッジを3μm覆った。
陰極層115まで形成したガラス基板116をアセトン,純水の順に、それぞれ超音波洗浄を3分間行った。洗浄後、スピン乾燥させた。
次に、画素となる有機発光素子の構造を説明する。陰極層115上に、LiF124を真空蒸着法により0.5nm形成した。パターン形成はシャドウマスクを用いた。
その上に、真空蒸着法により膜厚20nmのAlq膜を形成した。Alq膜は、電子輸送層123として機能する。パターン形成はシャドウマスクを用いた。その上に、二元同時真空蒸着法にて、膜厚20nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウムとキナクリドンの共蒸着膜(以下、それぞれ、Alq,Qcと略記)を形成した。蒸着速度を、40:1に制御して蒸着した。Alq+Qc共蒸着膜は、発光層122として機能する。パターン形成はシャドウマスクを用いた。発光層122は、実施例1〜10記載の発光層4の発光材料を用いても差し支えない。次に正孔輸送層121として実施例1〜10記載の正孔輸送層を形成する。正孔輸送層121は陽極層125から発光層122へ正孔を輸送する層として機能する。実施例1〜10記載の正孔輸送層121は陽極層125との安定な界面を形成するので、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇をほぼ0Vに抑制することができる。
次に、スパッタリング法により、膜厚100nmのIn−Zn−O膜(以下、IZO膜と略記)を形成した。同膜は陽極層125として機能し、非晶酸化物膜である。ターゲットには、In/(In+Zn)=0.83 であるターゲットを用いた。成膜条件は、Ar:O2 混合ガスを雰囲気として真空度1Pa、スパッタクリング出力を0.2W/cm2 とした。In−ZnO膜からなる陽極層125は陽極として機能し、その透過率は80%であった。次に、スパッタング法により、膜厚50nmのSiOxNy膜を形成した。同膜は保護層126として機能する。
本実施例の有機発光素子は、発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇をほぼ0Vに抑制することができるので、焼付きが少ない表示装置を提供できる。
本実施例の表示装置の有機発光素子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えても良い。負の電圧を印加する回路は例えば表示装置を起動する時や、停止する時などに例えば−6V程度の負の電圧を印加することにより、有機発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。従って焼付きの少ない表示装置を提供することができる。
本実施例の発光層122は実施例1〜10記載の赤色,緑色,青色発光材料を組み合わせて白色を発光する表示装置は、照明装置としても好適であり、カラーフィルタと組み合わせることによりカラー画像表示装置としても好適であり、また上述した他の実施例と同様に液晶表示装置におけるバックライト照明装置としても好適である。
この実施例は、陽極層2と、正孔輸送層3と、発光層4と、電子輸送層5と、陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、前記複数の画素とこの画素を駆動する薄膜トランジスタを有するアクティブ型有機発光表示装置において、前記有機発光素子12は実施例1〜10記載の正孔輸送層3を有する有機発光素子12であることを特徴とする表示装置について述べる。
図15は第12の実施例である、電圧駆動方式有機ELディスプレイの構成図である。表示領域202には画素201がマトリクス状に配置されており、画素201には垂直方向配線群203及び水平方向配線群204が接続されている。また垂直方向配線群203の一端は信号及び電源電圧出力回路205に、水平方向配線群204の一端は垂直走査回路206に接続されている。図面を簡略化するために図15には6画素しか記載していないが、実際には本実施例における画素数は240画素(水平)×RGB×320画素(垂直)である。また表示領域202内における画素は全て同一のガラス基板上に設けられている。
次に上記画素201の構成を説明する。
図16は上記画素201の画素回路図である。垂直方向配線群203は信号線216と電源線217より構成されており、また水平方向配線群204はリセット線218と電源制御線219により構成される。各画素201には有機発光素子12が設けられており、有機発光素子12の一端は共通電極に接続され、他端は電源制御スイッチ212及び駆動TFT 213を介して電源線217に接続されている。駆動TFT 213のゲート−ドレイン間にはリセットスイッチ214が接続されている。また駆動TFT 213のゲートは記憶容量215を介して信号線216に接続されている。なおリセットスイッチ
214はリセット線218,電源制御スイッチ212は電源制御線219により制御される。
次に第12の実施例の動作について説明する。
垂直走査回路206によって書込みを選択された画素201では、始めに電源制御スイッチ212がオンすることによって、有機発光素子12が駆動TFT 213に接続され、更にリセット線9によってリセットスイッチ214がオンになると、リセットスイッチ214によってダイオード接続された駆動TFT 213と有機発光素子12は、電源制御スイッチ212によって電源線217に接続され電流が流れる。次いで電源制御スイッチ212がオフすると、駆動TFT 213のドレイン端が閾値電圧Vthになった時点で、駆動TFT 213はターンオフする。このとき信号線216には映像信号電圧が印加されており、この映像信号電圧と上記閾値電圧Vthの差が記憶容量215に入力される。次いでリセットスイッチ214がオフになった時点で、この画素への信号電圧書込みは終了する。このようにして、フレーム期間の前半では各画素への信号電圧書込みが順次行われる。
画素への書込みが完了すると、フレーム期間の後半が画素の階調発光期間である。この期間には信号線216には下に凸の三角波電圧が入力される。このとき信号線216の電圧値が先に書込まれた映像信号電圧より小さい期間では、駆動TFT 213のゲート電圧は先の閾値電圧Vthであるため、有機発光素子12は点灯状態になる。従ってあらかじめ書込まれた映像信号電圧値と信号線216に印加される三角波電圧の大小関係によって、有機発光素子12のフレーム期間の後半内の点灯時間が規定される。従って有機発光素子12は映像信号電圧に対応する発光期間で点灯し、電圧駆動方式によって輝度階調を実現することができる。
なおこのような画素等価回路を有する有機ELディスプレイの回路構成及びその駆動方法に関しては、特開2003−122301号に詳しく記載されている。
なお本実施例においては有機発光素子12に代えて、図12に示す有機発光素子21を用いることも可能であるが、その場合は電流の方向が逆転するため、TFTのn形とp形の極性を入れ替え、電圧の関係も反転させる必要があることは言うまでもない。
本実施例で用いる有機発光素子12は実施例1〜10記載の正孔輸送層3を有する有機発光素子12を用いているため、陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる有機発光素子12を製作することができる。
このように電圧駆動方式で駆動する場合、実施例1〜10記載の正孔輸送層で構成された有機発光素子12は、陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる有機発光素子12を製作することができるので、焼付きが少ない表示装置を提供することができる。
この実施例は、陽極層2と、正孔輸送層3と、発光層4と、電子輸送層5と、陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、前記複数の画素とこの画素を駆動する薄膜トランジスタを有するアクティブ型有機発光表示装置において、前記有機発光素子12は実施例1〜10記載の正孔輸送層3を有する有機発光素子12であることを特徴とする表示装置について述べる。
第13の実施例である、電流駆動方式有機ELディスプレイの構成図は、図15に示した第12の実施例における有機ELディスプレイの構成図と基本的には同様であるために説明は省略する。
以下に本実施例における画素233の構成を説明する。
図17は上記画素233の画素回路図である。画素233には有機発光素子12が設けられており、有機発光素子12の一端は共通電極に接続され、他端はAZBスイッチ222,駆動TFT(Thin Film-Transistor)223を介して電源線229に接続されている。駆動TFT 223のゲート−ドレイン間にはAZスイッチ224が、ゲート−ソース間には記憶容量227が接続されている。また駆動TFT 223のゲートはオフセットキャンセル容量225及び画素スイッチ226を介して信号線228に接続されている。なおAZBスイッチ222はAZB制御線232、AZスイッチ224はAZ制御線231、画素スイッチ226はゲート線230により制御される。
次に本従来例の動作について説明する。
書込みを選択された画素では、始めにゲート線230によって画素スイッチ226がオン、AZ制御線231によってAZスイッチ224がオン、になる。このときAZBスイッチ222はオンであるため、有機発光素子12にはダイオード接続された駆動TFT 223を介して電源線229から電流が流れる。次にAZB制御線232によってAZBスイッチ222がオフすると、駆動TFT 223のドレイン端が閾値電圧Vthになった時点で、駆動TFT 223はターンオフする。このとき信号線228には「0レベル」の信号電圧が印加されており、この電圧と上記閾値電圧Vthの差がオフセットキャンセル容量225に入力される。次いでAZ制御線231によってAZスイッチ224がオフした後に信号線228には映像信号電圧が印加される。このとき駆動TFT 223のゲートには上記閾値電圧Vthに上記映像信号電圧に対応した電圧が生じ、この電圧はゲート線230によって画素スイッチ226がオフすることによって、記憶容量227に記憶される。この後AZBスイッチ222がオンすることによって、画素への信号電圧書込みが完了し、有機発光素子12は上記映像信号電圧に対応した輝度で次の書込み期間まで発光を続ける。
なおこのような画素等価回路を有する有機ELディスプレイの回路構成及びその駆動方法に関しては、例えば1998 SID Digest of Technical Papers, pp.11-14 等に詳しく記載されている。
なお本実施例においては有機発光素子12に代えて、図12に示す有機発光素子21を用いることも可能であるが、その場合は電流の方向が逆転するため、TFTのn形とp形の極性を入れ替え、電圧の関係も反転させる必要があることは言うまでもない。
本実施例で用いる有機発光素子12は実施例1〜10記載の正孔輸送層3を有する有機発光素子12を用いているため、陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる有機発光素子12を製作することができる。
このように電流駆動方式で駆動する場合、実施例1〜10記載の正孔輸送層で構成された有機発光素子12は、陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる有機発光素子12を製作することができるので、消費電力が小さい表示装置を提供することができる。
この実施例は、陽極層2と、正孔輸送層3と、発光層4と、電子輸送層5と、陰極層6とを有した有機発光素子12を複数個有し、単純マトリクス型有機発光表示装置において、有機発光素子12は実施例1〜10記載の正孔輸送層3を有する有機発光素子12であることを特徴とする表示装置について述べる。
図18は第14の実施例である、単純マトリクス型有機ELディスプレイの構成図である。表示領域242には画素241がマトリクス状に配置されており、画素241には垂直方向配線243及び水平方向配線244が接続されている。また垂直方向配線243の一端は水平信号回路245に、水平方向配線244の一端は垂直信号回路246に接続されている。図面を簡略化するために図18には6画素しか記載していないが、実際には本実施例における画素数は96画素(水平)×RGB×96画素(垂直)である。また表示領域242内における画素は全て同一のガラス基板上に設けられている。
なお各画素241には、垂直方向配線243及び水平方向配線244間に、有機発光素子12が設けられている。
次に本従来例の動作について説明する。
垂直信号回路246は駆動電圧を順次、水平方向配線244に印加する。この印加走査に合せて、水平信号回路245は発光駆動電圧ないし発光駆動電流を垂直方向配線243に入力する。このとき垂直信号回路246によって選択された画素241は、選択された期間内、水平信号回路245によって入力された発光駆動電圧ないし発光駆動電流に対応する発光を行う。この走査を繰り返すことにより、表示領域242上には画像が表示される。
このように前記単純マトリクス表示装置を駆動する方式は電圧駆動方式であっても電流駆動方式であっても差し支えない。
電圧駆動方式で駆動する場合、実施例1〜10記載の正孔輸送層で構成された有機発光素子12は、陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる有機発光素子12を製作することができるので、焼付きが少ない表示装置を提供することができる。
また、電流駆動方式で駆動する場合、実施例1〜10記載の正孔輸送層で構成された有機発光素子12は、陽極層2との安定な界面を形成するので発光経過時間に伴う駆動電圧の上昇を抑制できる有機発光素子12を製作することができるので、消費電力が小さい表示装置を提供することができる。
なお本実施例においても、有機発光素子12に代えて、図12に示す有機発光素子21を用いることも可能である。
本発明を用いれば、焼付きの少ない薄型自発光表示装置が実現可能であり、テレビや各種情報端末等の表示装置や照明器具等に利用可能である。
本発明の実施例1の有機発光素子を示す断面図である。
本発明の実施例1の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例2の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例3の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例4の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例5の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例6の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例7の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例8の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例9の正孔輸送層を示す断面図である。
本発明の実施例10の正孔輸送層を示す断面図である。
発光光を基板1側とは逆側から取り出す構造の有機発光素子を示す断面図である。
図14に示すA−A′に沿う断面図である。
本発明の実施例13を示す画素領域の平面図である。
本発明の実施例12のディスプレイ構成図である。
本発明の実施例12の画素回路図である。
本発明の実施例13の画素回路図である。
本発明の実施例14のディスプレイ構成図である。
符号の説明
1,116…基板、2,125…陽極層、3,121…正孔輸送層、4,122…発光層、5,123…電子輸送層、6,115…陰極層、7…混合層、8…正孔輸送材料、9…金属酸化材料、12…有機発光素子、101…第1トランジスタ、102…第2トランジスタ、103…活性層、105…容量下部電極、106…走査線、107…ゲート電極、108…容量上部電極、109,216,228…信号線、112,112′…ソース電極、113…ドレイン電極、117…ゲート絶縁膜、118…第1層間絶縁膜、119…第2層間絶縁膜、120…第3層間絶縁膜、124…LiF、126…保護層、127…バッファ層、128…補助電極、136…平坦化層、141,201,233…画素、142,202…表示領域、143…垂直方向配線、144…水平方向配線、145…水平信号回路、146…垂直信号回路、203…垂直方向配線群、204…水平方向配線群、205…電源電圧出力回路、206…垂直走査回路、209…リセット線、212…電源制御スイッチ、213,223…駆動TFT、214…リセットスイッチ、215,
227…記憶容量、217,229…電源線、218…リセット線、219…電源制御線、222…AZBスイッチ、224…AZスイッチ、225…オフセットキャンセル容量、226…画素スイッチ、230…ゲート線、231,232…AZB制御線。