以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の吸収体の一実施形態の斜視図が示されている。図1に示す実施形態の吸収体1は、使い捨ておむつや生理用ナプキンを始めとする各種吸収性物品の吸収体として好適に用いられるものであり、実質的に縦長の扁平な形状をしている。吸収体1は、長繊維を有する親水性ウエブ2が、液透過性シート4で包まれて構成されている。ウエブ2には高吸収性ポリマー3が埋没担持されている。長繊維を有する親水性ウエブ2は、吸収体の長手方向に高度に配向している。吸収体1は、長繊維を有する親水性ウエブ2の配向方向に伸縮性を有している。
長繊維は親水性を有するものである。親水性を有する長繊維として本発明において用いられるものには、本来的に親水性を有する長繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された長繊維の双方が包含される。また、長繊維自体は親水性を有さないが、ウエブ全体として親水性を有するものも包含される。長繊維自体は親水性を有さないが、ウエブ全体として親水性を有するものとしては、例えば親水性を有さない長繊維からなるウエブに親水性を有する材料からなるウエブを一体化させたものが挙げられる。好ましい長繊維は本来的に親水性を有する長繊維であり、特にナイロンやアクリル、アセテートやレーヨンなどの長繊維が好ましい。とりわけ水分率が10%未満の繊維であるアセテートは湿潤しても嵩高性が保持されるので特に好ましい。ここで、水分率は25℃、相対湿度65%の環境下で測定した値である。
本明細書において親水性ウエブとは、その配向方向について測定されたクレム吸水高さが好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であるものを言う。クレム吸水高さは、JIS P8141に準じて測定される。吸水開始から30秒後の値を読み取り、サンプル3点の平均値をもって測定値とする。サンプルによっては幅方向でクレム吸水高さにばらつきが出るが、その場合は幅方向で略平均(目視)した値を測定値とする。
長繊維の繊維径に特に制限はない。一般に1.0〜7.8dtex、特に1.3〜7.0dtex、更に1.7〜5.6dtexの長繊維を用いることで満足すべき結果が得られる。本明細書において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。
ウエブ2はその密度が0.005〜0.20g/cm3、特に0.01〜0.10g/cm3であることが、液の透過性を良好にする点、吸収体1を柔軟に保つ点、液を素早く吸収する点等から好ましい。
長繊維としては捲縮しているものが用いられる。捲縮とは、JISL0208における「繊維の縮れ(crimp)」をいう。長繊維はその捲縮率(JIS L 0208)が10〜60%であり、好ましくは20〜60%、更に好ましくは20〜50%である。捲縮した長繊維からウエブ2を形成することで、吸収体1に十分な伸縮性を付与することができる。長繊維を捲縮させる手段に特に制限はない。また、捲縮は二次元的でもよく或いは三次元的でもよい。捲縮率は、長繊維をまっすぐに、かつ繊維自身を伸長させずに引き伸ばしたときの長さ(A)と、自然状態における繊維の始点と終点との間に結んだ直線の長さ(B)との差の、伸ばしたときの長さに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=(A−B)/A × 100 (%)
自然状態とは、長繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。
前述の通り、本実施形態においては、捲縮した長繊維のウエブの持つ伸縮性を利用して吸収体1に伸縮性を付与している。更に、吸収体1の構成材料として長繊維のウエブを用いることで、吸収体1を柔軟にできるという利点もある。詳細には次の通りである。吸収性物品の吸液材料としては粉砕パルプが一般的に用いられている。粉砕パルプはごわごわした材料であることから、粉砕パルプを用いたおむつは、伸縮応答性が良好でない傾向にある。また、着用者の身体にフィットしづらい傾向にある。これに対して長繊維のウエブは柔軟な材料であることから、これを吸収性物品の吸収体1として用いることで、吸収体1を柔軟にすることができ、吸収体1の伸縮応答性を良好にすることができる。また、吸収体1を着用者の身体にフィットさせやすくなる。
吸収性物品の吸液材料として一般的に用いられている粉砕パルプは、吸液によって吸収体としての一体的な構造が壊れやすい。これに対して長繊維のウエブは吸液しても吸収体としての一体的な構造が壊れにくい。この観点からも、吸収体1として長繊維のウエブを用いることは有利である。
長繊維の捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ8〜18個であることが好ましい。
吸収体1において、長繊維を有する親水性ウエブ2は一方向に高度に配向している。従って、吸収体1に吸収された液は、該ウエブ2の配向方向に拡散しやすくなる。このことを利用して、例えば長繊維を有する親水性ウエブ2の配向方向が、吸収性物品の長手方向と一致するように吸収体1を吸収性物品に配すれば、吸収性物品の幅方向からの液漏れ(いわゆる横漏れ)を効果的に防止することができる。
長繊維の配向は、長繊維の始点と終点を結んだベクトルが平面方向に向いていればよく、始点と終点の間でねじれやからみあい等が生じていることに起因して長繊維の一部が垂直方向(吸収体の厚み方向)に向いていても、長繊維が全体として平面方向に向いているものを含む。本明細書において高度に配向とは、繊維の配向に関して配向度が好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.4以上であることを言う。配向度は、KANZAKI社のMicrowave molecular orientation analyzer MOA-2001Aを用いて測定する。サンプルサイズは長手方向100mm、幅50mmとし、3点の平均値を配向度とする(サンプルサイズがこの大きさに満たない場合は、複数のサンプルを互いに重ならないように配して測定する。)。
長繊維を有する親水性ウエブ2に埋没担持される高吸収性ポリマー3としては、一般に粒子状のものが用いられる。しかし繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状が不定形タイプ、塊状タイプ又は俵状タイプである場合には、ウエブ2に対して同量以上、20倍以下の坪量で埋没担持させることができる。また、球粒凝集タイプや球状タイプの場合には、ウエブ2に対して同量以上、5倍以下の坪量で埋没担持させることができる。これらの粒子形状は、特に高吸収量と薄型化を両立させたい場合は前者を、風合い(高吸収性ポリマーのしゃり感の低減)を重視する場合は後者を選択することが望ましい。埋没担持とは、高吸収性ポリマーがウエブを形成する長繊維によって形成される空間内に入り込んで、着用者の激しい動作によっても該ポリマーの極端な移動や脱落が起こりにくくなっている状態を言う。埋没担持された状態では、高吸収性ポリマーが長繊維に絡みつき又は引っ掛かりによって付着している。或いは高吸収ポリマー自身の粘着性によって長繊維に付着している。長繊維が形成する空間は、外部から応力を受けると変形しやすい。しかし長繊維全体で応力を吸収することができるので、当該空間が破壊されることが防止される。高吸収性ポリマーは、その一部がウエブ中に埋没担持されているか、或いは吸収体の製造条件によってはそのほぼ全部がウエブ中に均一に埋没担持される場合もある。
「均一」とは、ウエブの厚み方向あるいは幅方向において、高吸収性ポリマーが完全に一様に配されている場合、及びウエブの一部を取り出した時に、高吸収性ポリマーの存在量のばらつきが、坪量で2倍以内の分布を持つ場合をいう。このようなばらつきは、吸収体を製造する上で、まれに高吸収性ポリマーが過剰に供給され、部分的に散布量が極端に高い部分が生じることに起因して生ずるものである。つまり前記の「均一」は、不可避的にばらつきが生ずる場合を包含するものであり、意図的にばらつきが生じるように高吸収性ポリマーを分布させた場合は含まれない。
先に述べた通り、長繊維は捲縮を有するものであるから、粒子を保持し得る多数の空間を有している。その空間内に高吸収性ポリマー3が保持される。その結果、多量の高吸収性ポリマー3を散布してもその極端な移動や脱落が起こりにくくなる。また着用者が激しい動作を行っても吸収体1の構造が破壊されにくくなる。使用する高吸収性ポリマーによって、捲縮率や使用する長繊維の量を適宜調節する。捲縮を有さないか、又は捲縮の程度が小さい長繊維のみからウエブを構成し、これを吸収体として用いると、高吸収性ポリマーを多量に用いた場合にその極端な移動や脱落が起こりやすい。逆に捲縮率が高すぎる長繊維を用いると、長繊維間に高吸収性ポリマーを入り込ませるのが容易でなく、やはり高吸収性ポリマーを多量に用いた場合にその極端な移動や脱落が起こりやすい。
高吸収性ポリマーは、捲縮した長繊維によって形成される空間内に安定的に保持されるので、本実施形態に係る吸収体1は高吸収性ポリマーを多量に保持することができる。従来の吸収体においても繊維材料の量を多くすれば高吸収性ポリマーを多量に保持することは可能であったが、その場合には吸収体の坪量及び厚みが大きくなってしまう。これに対して本発明においては、繊維材料の量に対して高吸収性ポリマーの量が相対的に大きくなっている。具体的には、吸収体全体で見たとき、好ましくは高吸収性ポリマーの坪量がウエブの坪量以上、更に好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上となっている。これによって吸収体1の薄型化及び低坪量化が図られている。その結果、吸収体1の伸縮応答性が良好になっている。ウエブの坪量に対する高吸収性ポリマーの坪量の比率の上限値は、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落防止の観点から決定される。長繊維の捲縮の程度にもよるが、該上限値が20倍以下、好ましくは15倍以下、更に好ましくは10倍以下であれば、着用者が激しい動作を行っても高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落は起こりにくい。
高吸収性ポリマーの長繊維ウエブへの担持性は、ウエブによって形成される網目構造、及び高吸収性ポリマーの物性に関係している。網目構造の観点からは、本発明においては、ウエブの立体規則性、即ちウエブの捲縮率、繊度、密度等を制御することによって網目を制御し、ポリマーの担持性が発現するようにしている。本発明においては、ウエブの構成繊維同士が接着されていないので、ウエブに形成される網目の大きさが、高吸収性ポリマーを保持可能な程度に変化し得る。ウエブにおける網目の大きさが変化し得ることで、不織布などの結合点を有する繊維集合体に高吸収性ポリマーを担持させる場合に比較して、ポリマーの担持性が高くなる。網目の大きさは、例えば(イ)繊維にテンションを加えた状態下に高吸収性ポリマーを散布した後、テンションを解放することにより、或いは(ロ)予めウエブのテンションを制御して特定の捲縮率を発現させた状態下に高吸収性ポリマーを散布し、更にウエブにテンションや圧力を加えることにより、制御することができる。
一方、ポリマーの担持性に関係しているポリマーの物性には形状、粒度分布、粒子サイズ、嵩密度、表面性状、内部摩擦係数、流動性、分散性、水分率、帯電性、付着性、凝集性などがある。これらのうち、ポリマーの粒度分布及び粒子サイズについては、前述のウエブの網目構造と密接に関連している。高吸収性ポリマーの担持性は、更に着用者の動きによって吸収体に外力や振動が伝わったとき、吸収体内部におけるポリマーと長繊維との衝突回数にも影響を受ける。衝突回数の多いポリマーほど高吸収性ポリマーが長繊維の作り出す網目によってふるい分けが進み、結果担持性が低くなる。衝突回数は、ポリマーの流動性に影響を受けている。衝突回数は、流動性の高いポリマーほど多くなる。また、流動性が高く、一旦ウエブの拘束から逃れたポリマーは、その後容易に移動して、ウエブに担持され難くなる。
ポリマーの流動性に関して、塊状タイプのポリマーと球粒凝集タイプのポリマーを比較すると、球粒凝集タイプのポリマーの方が、塊状タイプのポリマーよりも流動性が高い。その結果、球粒凝集タイプのポリマーよりも、塊状タイプのポリマーの方が担持性が高い。また球粒凝集タイプのポリマーは、表面が滑らかなので、繊維との摩擦や繊維への引っかかりの程度が塊状タイプのポリマーよりも低い。この観点からも、塊状タイプのポリマーの方が、球粒凝集タイプのポリマーよりも担持性が高い。
捲縮を有する長繊維ウエブに高吸収性ポリマーを担持させた後に、様々な後加工を施すことで、ウエブ中に高吸収性ポリマーを一層効率よく担持することができる。前記の手段としては、例えば(1)ウエブ全体を、紙や不織布などのシート材で包むか又は該シート材を重ねる、(2)ウエブ全体を、高吸収性ポリマーを含むか又は含まないフラッフパルプの積繊体を重ねる、(3)ホットメルト粘着剤、熱、超音波を用いた接合手段でウエブの構造を拘束する、などが挙げられる。
高吸収性ポリマーが埋没担持される程度の評価として、次の方法によって測定される担持率を採用することができる。先ず、長繊維を用いて、長手方向に200mm、幅方向に100mmの大きさの均一な厚みのウエブを作製する。このとき、ウエブの坪量が26g/m2になるように長繊維の量を調節する。その後にウエブを繊維配向方向に伸縮させて捲縮率を調整する。この操作によりウエブの坪量は最初の坪量26g/m2から変化するので、ウエブの重量を測定し、正確な坪量を計算する。捲縮率を調整した状態でポリマーを散布し100×200mmを切り取る。このポリマーの散布は、ウエブを横にした状態で、その上から高吸収性ポリマーを散布坪量がウエブの坪量の10倍量になるように手で均一に散布する。ポリマーの散布が完了したら、ウエブ全体を坪量16g/m2のティッシュで包んだあとゴムロールで圧縮後、長繊維の引き伸ばしを解除する。ティッシュとウエブは接着剤により接着されている。
次に、ウエブの中央部から100mm×100mmの測定サンプルを切り出す。切断面のティッシュが切断により圧着され、切断面がふさがれている場合は切断面のティッシュの圧着状態を解除する。切り出された測定サンプルを、長繊維が鉛直方向を向くようにつり下げる。この状態下に、振幅5cm、1回/秒の速度で測定サンプルを水平方向に往復振動させる。この往復振動によって落下したポリマーの重量を測定し、その値をS1とする。
そして、S1の値及び往復振動させる前の測定サンプルに含まれていた高吸収性ポリマーの重量S0(即ちウエブ重量の10倍)の値を用い、以下の式から担持率を算出する。
担持率(%)={1−(S1/S0)}×100
このようにして測定された担持率の値が60%以上、特に70%以上、とりわけ80%以上である場合、高吸収性ポリマーの脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
高吸収性ポリマーが埋没担持される程度の評価として、前記の担持率に加えて次の方法によって測定される移動率も採用することができる。先ず、前記の担持率の測定に用いた100mm×100mmの測定サンプルの初期重量W0を予め測定しておく。担持率の測定が終わった後の測定サンプルを、長繊維の延びる方向と直交する方向にわたって切断し上下に二等分する。二等分された2つの分断片それぞれの重量を測定し、測定サンプルの初期重量W0の1/2から変化量の大きい方の分断片の重量を、移動率を算出するための重量W1として採用する。例えば2つの分断片の重量がW1’,W1”であるとすると、これらW1’,W1”が以下の式を満たす場合、W1=W1’とする。
|W1’−W0/2|>|W1”−W0/2|
このようにして決定されたW1の値と、測定サンプルの初期重量W0の値を用い、以下の式から移動率を算出する。
移動率(%)={1−W1/(W0/2)}×100
このようにして測定された移動率の値が40%以下、特に30%以下、とりわけ20%以下である場合、高吸収性ポリマーの移動が起こり難くなっている状態であると言える。
前記の担持率の測定を行った測定サンプルに対して、次の評価法を行うこともできる。担持率の測定を行った測定サンプルに対して、生理食塩水(0.9重量%NaCl)を50g均等に散布して、測定サンプルの膨らみ方を目視観察する。測定サンプルの厚みのばらつきが2倍以内の場合、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
ウエブへの高吸収性ポリマーの埋没担持性が十分でない時は、ホットメルト粘着剤、各種バインダー(例えばアクリル系エマルジョン粘着剤など)、カルボキシメチルセルロースやエチルセルロースなどの糖誘導体、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂等をウエブに適宜添加できる。さらに、凹凸加工や植毛を施したシートなどを併用しても良い。
捲縮した長繊維からなるウエブに高吸収性ポリマーを埋没担持させるには、例えば次の方法を用いることができる。先ず、先に述べた捲縮率を有する長繊維のウエブを用意する。このウエブを所定手段によって開繊する。開繊には例えば圧縮空気を利用した空気開繊装置を用いることができる。次に、開繊されたウエブを所定の長さに引き伸ばす。この場合長繊維を完全に引き伸ばすことを要せず、高吸収性ポリマーがウエブ内に安定的に埋没保持される程度に引き伸ばせば足りる。
長繊維を引き伸ばした状態下に、ホットメルト粘着剤などの各種接着剤をウエブに塗工する。塗工パターンは吸収体1の伸縮を阻害しない方法であればよい。例えば、線状又は点状のパターンで接着させることが好ましい。具体的にはスパイラルスプレー方式、スロットスプレー方式、コントロールシム方式(ホットメルトはΩ状の曲線を描く)、ビード方式などの塗工が挙げられる。また、コーター方式を用いるのであればストライプ状の塗工などが挙げられる。特に、散点状の接着を首尾良く行い得るスプレー塗工を用いることが好ましい。接着剤の塗工は、ウエブでの液の透過が妨げられない程度の低量であることが好ましい。具体的には塗工量が好ましくは1〜20g/m2、更に好ましくは2〜10g/m2、一層好ましくは3〜7g/m2である。
また、ウエブ全体を均一に塗工しても良いし、部分的に非接着領域を設けても良い。非接着領域は接着領域に対して高い伸縮性を有することになり、吸収体中で伸縮性の異なる領域を形成することができる。
さらに、本発明の吸収体を用いた吸収性物品を構成する場合、該吸収体を他の部材(例えば表面シートや防漏シート、あるいは弾性体と組み合わせたシートや伸縮性を有するシートなど)と複合化する必要がある。他の部材は必ずしも吸収体と同様の伸縮性を示さないので、他の部材との複合化においては、吸収体全体を接着するよりも部分的に接着する方が望ましい。他の部材との複合化の方法としては、ホットメルトを用いた接着の他、熱や超音波による接着が挙げられる。
接着剤の塗工完了後に、ウエブ上に高吸収性ポリマーを層状に散布する。散布完了後に長繊維の引き伸ばし状態を解除する。これによって引き伸ばされていた長繊維が収縮する。その結果、高吸収性ポリマーは長繊維の収縮によって形成された空間内に保持される。このようにして、ウエブ中に高吸収性ポリマーが埋没担持される。必要に応じ、その上に、別途用意しておいたウエブを重ね合わせてもよい。これによって2つのウエブどうしが散点状に接着される。
高吸収性ポリマー3が埋没担持されたウエブ2は、液透過性シート4で包まれている。液透過性シート4としては、例えば繊維材シートや、穿孔フィルムなどを用いることができる。液の透過が良好な観点から、液透過性シート4は親水性の繊維シートからなることが好ましい。親水性の繊維シートとしては、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布を用いることができる。不織布としては、コットンやレーヨンなどの親水性繊維からなる不織布や、合成樹脂の繊維に親水化処理を施してなる不織布が挙げられる。具体的には、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの各種エラストマー樹脂からなる不織布でもよい。
液透過性シート4の坪量は、シート4の液の透過性、吸収体1の柔軟性やフィット性などに影響を与える要因の一つになる。この観点から、液透過性シート4の坪量は5〜250g/m2、特に10〜40g/m2であることが好ましい。
高吸収性ポリマー3が埋没担持されたウエブ2と、液透過性シート4とは、例えば、高吸収性ポリマー散布完了後に長繊維の引き伸ばし状態を解除させたウエブ2を、ホットメルト粘着剤等で塗工した液透過性シート4により接合して複合化することができる。また、ウエブ2を伸長状態下でホットメルト粘着剤等によって液透過性シート4に接合して複合化することができる。このようにして得られた吸収体1は、捲縮した親水性長繊維の収縮力に起因して、ウエブ2がその配向方向に収縮する。その収縮に伴い液透過性シートも収縮する。従って、このような構成の吸収体1は、液透過性シート自体に伸縮加工を施さなくても、ウエブ2の配向方向に伸長可能となる。このような構成の吸収体1は、ウエブ2の伸縮範囲での伸縮が可能であり、吸収体1の表面がウエブの収縮にあわせて凹凸となる。その結果、吸収体1の表面積を向上させることができるので、液吸収速度の向上や縦方向の拡散の抑制が図れるといったメリットがある。また、液透過性シート4に開孔等を施していないので、高吸収性ポリマーが吸収体1から露出する可能性が少ないというメリットもある。
更に図1に示すように、液透過性シート4には、該シート4が伸長可能となる加工が施されていてもよい。これによって吸収体1は全体として、ウエブ2の配向方向における伸縮可能範囲が拡大するようになっている。具体的には、吸収体1におけるウエブ2は、捲縮した親水性長繊維を有しているので、その配向方向によらず本来的に伸縮性を有する。これに加えて液透過性シート4が伸長可能であれば、吸収体1はその全体として伸長可能となる。一方、伸長状態にある吸収体1の当該伸長状態を解くと、捲縮した親水性長繊維による収縮力に起因して、ウエブ2はその配向方向に収縮する。この収縮に連れて液透過性シート4も収縮する。このようなメカニズムによって、吸収体1はその全体が、ウエブ2の配向方向に伸縮可能となっている。このような構成の吸収体1は、一層薄型で且つ伸縮性を有するものとなり、また吸収体1の表面がフラットなので、液の拡散がスムーズに行われるといったメリットがある。また、液透過性シート4に開孔が施されないので、伸長下においては高粘性液の吸収に優れ、且つ収縮後においては吸収した液の閉塞性が高まるといったメリットもある。図1に示す構成の吸収体1を得るための加工方法は、具体的な吸収性物品の設計方針によって決定されればよい。
吸収体1の伸縮の方向は、長繊維を有する親水性ウエブ2の配向方向に依存しない。なぜなら、前記の長繊維は捲縮を有しているので、ウエブ2は配向方向および配向方向に直交する方向、その他あらゆる方向に伸長可能だからである。これは長繊維同士が接着していても接着していなくても同様である。吸収体1の伸縮の方向は、ウエブ2を包む液透過性シート4の伸長可能な方向に依存する。すなわち、液透過性シート4が一定方向にのみ伸長可能なものであれば、吸収体1はその方向にのみ伸縮可能になる。液透過性シート4として不織布や織物等を用いた場合は、不織布や織物等は繊維配向方向に直交する方向に対しても伸長性を有しているので、吸収体1の伸縮の方向は繊維配向方向に制限されない。しかし吸収体1の最大伸度(伸びやすさ)は異方性を持ち得る。すなわち、液透過性シート4に伸長可能となる加工が施されていない場合は、不織布や織物等は繊維配向方向において最大点伸度が大きく、繊維配向と直交する方向においては繊維配向方向に比べて最大点伸度が小さい。
吸収体1の伸びやすさの方向は、液透過性シート4に施される伸長可能となる加工方法によってコントロール可能である。例えば、液透過性シート4の長手方向に直交するようにスリット加工を施した場合は、液透過性シート4が長手方向に伸びやすくなるので、吸収体1も長手方向に伸びやすくなる。また、液透過性シート4の長手方向に準じてスリット加工を施した場合には、液透過性シート4が長手方向に直交する方向(横方向)に伸びやすくなるので、吸収体1も横方向に伸びやすくなる。
吸収体1が伸縮可能になっていることで、該吸収体1を備えた吸収性物品は、着用者の身体へのフィット性が良好となる。フィット性の向上は、吸収性物品における伸縮性を有する部位、例えば弾性部材が配されている部位に、吸収体1を配することで一層顕著なものとなる。この場合、吸収体1の最大点伸度を有する方向と、吸収性物品に配された弾性部材の最大点伸度を有する方向とがと一致するように、吸収体1を吸収性物品に組み込む。
本実施形態の吸収体1においては、ウエブ2の配向方向と交差する方向に延びるスリット5が多数形成されるように、液透過性シート4にスリット加工が施されている。本実施形態においてはスリット5は、ウエブ2の配向方向と直交する方向に延びている。尤も、スリット5の延びる方向はこれに限られず、液透過性シート4がウエブ2の配向方向に実質的に伸長可能であれば、スリット5の延びる方向は、ウエブ2の配向方向と交差する如何なる方向であってもよい。
ウエブ2の配向方向と直交する方向に延びるスリット5が液透過性シート4に多数形成されていることで、吸収体1をウエブ2の配向方向に引き伸ばすと、図2に示すようにスリット5が開孔して液透過性シート4が伸長する。これによって吸収体1はその全体が伸長する。
吸収体1の伸縮応答性を良好にするために、吸収体1は薄型で低坪量のものであることが好ましい。吸収体1の厚さや坪量は、吸収性物品の具体的な用途に応じて適切な値が選択される。例えば使い捨ておむつの吸収体として用いる場合には、ウエブ2はその坪量が5〜200g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましい。一方、高吸収性ポリマーの散布坪量は20〜500g/m2、特に50〜300g/m2であることが好ましい。
生理用ナプキンの吸収体として用いる場合には、ウエブ2はその坪量が5〜100g/m2、特に10〜50g/m2であることが好ましい。一方、高吸収性ポリマーの散布坪量は10〜200g/m2、特に15〜100g/m2であることが好ましい。失禁パッドの吸収体として用いる場合には、各ウエブ2はその坪量が5〜200g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましい。一方、高吸収性ポリマーの散布坪量は10〜500g/m2、特に15〜350g/m2であることが好ましい。
本実施形態に係る吸収体1におけるウエブ2及び高吸収性ポリマー3の合計の坪量は、該吸収体1を例えば使い捨ておむつに用いる場合には、120〜400g/m2、特に150〜300g/m2であることが好ましい。生理用ナプキンに用いる場合には、35〜200g/m2、特に50〜150g/m2であることが好ましい。失禁パッドに用いる場合には、35〜500g/m2、特に50〜400g/m2であることが好ましい。
吸収体1が使い捨ておむつに用いられる場合には、その厚みが1〜4mm、特に1.5〜3mmという薄型のものであることが好ましい。生理用ナプキンに用いられる場合には、0.5〜3mm、1〜2mmであることが好ましい。失禁パッドとして用いられる場合には、0.5〜4mm、特に1〜3mmであることが好ましい。
吸収体1は高吸収性ポリマーの他に、他の粒子、例えば、活性炭やシリカ、アルミナ、酸化チタン、各種粘度鉱物(ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、カンクリナイト等)等の有機、無機粒子(消臭剤や抗菌剤)を含んでいてもよい。無機粒子は一部金属サイトを置換したものを用いることができる。或いは、各種有機、無機緩衝剤、すなわち、酢酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸、乳酸及びこれらの塩を単独であるいは組み合わせたものや、各種アミノ酸を含んでいてもよい。これら成分の働きは、吸収体1に吸収された液の臭いや素材由来の臭いを抑制することである。また、各種有機、無機緩衝剤は、排泄物、例えば尿の分解で発生するアンモニアを中和し、おむつを中性〜弱酸性に保つ効果があり、それによって、万一、吸収体1から肌への排泄物の液戻りがあっても、肌への影響が少なくなる。或いは長繊維のウエブとして、アセテート繊維など、分子構造内にエステルを有する繊維を用いても、アルカリによる損傷を防ぐ効果が期待できる。
また、液保持性と吸収速度の向上、ドライの向上を目的に、親水性の微粉又は短繊維をウエブ2中に共存させることができる。親水性の微粉又は短繊維としては、フィブリル化されているか又はフィブリル化されていないセルロースパウダー、カルボキシメチルセルロース及びその金属塩、カルボキシエチルセルロース及びその金属塩、ヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、シルクパウダー、ナイロンパウダー、レーヨン、コットン、羊毛などの短繊維が挙げられる。これらのうち、セルロースパウダーを用いると、前記の効果を最大限向上させ得るので好ましい。親水性の微粉又は短繊維は、高吸収性ポリマーの散布前にウエブに散布してもよく、或いは高吸収ポリマーと混合しておき、両者を同時にウエブに散布してもよい。
吸収体1は柔軟であることが望ましい。柔軟性の評価として、ハンドルオ・メーターによる測定値を用いることができる。この測定値が4N以下、特に2N以下であることが好ましい。ハンドルオ・メーターによる測定方法はJIS L1096(剛軟性測定法)に準じる。幅60mmの溝を刻んだ支持台上に、長手方向に150mm、幅方向に100mm切断した吸収体を、溝と直交する方向に配置する。吸収体の中央を厚み2mmのブレードで押した時に要する力を測定する。本発明で用いた装置は、大栄科学精機製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)、HOM−3型である。3点の平均値を測定値とする。吸収体を、後述する図5に示すおむつの側部吸収体として用いる場合には、長手方向に150mm、幅方向に50mmの大きさにサンプリングする。レッグフラップ部の側部吸収体の近傍には通常弾性部材が配されているため、サンプリングはレッグフラップ部を最大に伸長した状態で行い、測定はレッグフラップ部が自然に収縮した状態(引張りを開放した状態)で行う。
次に、本発明の吸収体の第2及び第3の実施形態を、図3及び図4を参照しながら説明する。これらの実施形態に関し特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図3及び図4において、図1及び図2と同じ部材に同じ符号を付してある。
図3に示す第2の実施形態の吸収体1においては、液透過性シート4にクレープ加工又はプリーツ加工が施されている。これらの加工は、ウエブ2の配向方向と直交する方向に延びる皺又はプリーツが多数形成されるように施される。クレープ加工は、主として液透過性シート4が紙からなる場合に施される加工であり、一般にドクターブレードを用いて行われる。好ましいクレープ率は少なくとも10%、一層好ましくは20%である。クレープ率は標準状態で100mm×100mmに切断したサンプルを水中に浸漬した後引き上げ、寸法の変化量から次式で算出する。
クレープ率(%)=((水に浸漬した後の寸法)/(水に浸漬する前の寸法)−1)×100
一方、プリーツ加工は、主として液透過性シート4が不織布からなる場合に施される加工である。クレープ加工又はプリーツ加工が施された液透過性シートは、皺又はプリーツの形成に起因する弛みを有しているので、この弛みを引き伸ばす分だけ伸長性を有する。
図4に示す第3の実施形態の吸収体1においては、吸収体1の全体が波形に賦形されている。つまり、吸収体1を構成するウエブ2及び液透過性シート4が波形に賦形されている。波形の賦形は、ウエブ2の配向方向に延びている。このような形状を吸収体1を製造するには、互いに噛み合い形状になっているギアからなる一対のロール間に、液透過性シート4で包んだウエブ2からなる吸収体を通す操作を行う。これによって、波形賦形加工がウエブ2及び液透過性シート4に同時に施される。波形賦形加工が施された液透過性シート4は、その波形形状に起因して伸長性を有する。
次に、本発明の吸収体を備えた吸収性物品について説明する。図5には、吸収性物品の一例としての使い捨ておむつの斜視図が示されている。図6は、図5におけるVI−VI線断面図である。図5におけるVI−VI線は、おむつ10における股下部に当たる部分である。図5及び図6に示すおむつ10は、液透過性の表面シート11、液不透過性又は撥水性の裏面シート12及びこれら両シート11,12間に介在される中央吸収体13を有し、実質的に縦長に形成されている。液透過性の表面シート11は、裏面シート12より幅が狭いもので形成されている。中央吸収体13と裏面シート12との間には、撥水性不織布14が介在配置されている。おむつ10を構成するこれら各種部材としては、当該技術分野において公知の材料を用いることができる。
おむつ10は、中央吸収体13の前後端縁からそれぞれ前後方向に延出するウエストフラップ17,17を備えている。一方のウエストフラップ17の左右両側部には一対のファスニングテープ18,18が取り付けられている。ファスニングテープ18における表面、即ちおむつ10における表面シート11と同じ側の面には、該ファスニングテープ18を裏面シート12に止着させるための止着手段18aが設けられている。止着手段18aとしては例えばメカニカルファスナのフック部材又はループ部材や、粘着剤などが挙げられる。ウエストフラップ17の端部には、おむつ10の幅方向へ延びるウエスト弾性ストランド17a,17aが伸長状態で配されている。
おむつ10は、中央吸収体13の左右両側縁からそれぞれ側方に延出するレッグフラップ15,15を備えている。レッグフラップ15,15には、おむつ着用者におむつ10をフィットさせるためのレッグ弾性ストランド15aがそれぞれ設けられている。レッグ弾性ストランド15aはおむつ10の左右両側部に配置され、おむつ10の長手方向に延びている。レッグ弾性ストランド15aは、裏面シート12と撥水性不織布14によって挟持固定されている。
おむつ10の表面シート側における左右両側には一対の立体ガード16,16がそれぞれ形成されている。立体ガード16,16の自由端には立体ガード弾性部材16aが配されてギャザーが形成されている。
図6に示すように、レッグフラップ15においては、撥水性不織布14と、立体ガード16を構成するシートとの間に、本発明の吸収体(以下、側部吸収体という)1が配されている。側部吸収体1は、ウエブの配向方向(図6においては紙面と直交する方向)がレッグ弾性ストランド15aの延びる方向と一致するように配されている。
図5及び図6に示すおむつ10によれば、立体ガード16を乗り越えておむつの横方向に流れだした液が、レッグフラップ15に配された側部吸収体1によって吸収されるので、脚周りからの液漏れが効果的に防止される。また、側部吸収体1におけるウエブの配向方向は、おむつ10の長手方向に一致しているので、側部吸収体1によって吸収された液は、おむつ10の長手方向に優先的に拡散する。これによっても脚周りからの液漏れが効果的に防止される。特に、側部吸収体1は、レッグフラップ15に配されたレッグ弾性ストランド15aと同方向に伸縮するものなので、おむつ10の着用状態において、レッグフラップ15が着用者の脚周りにぴったりとフィットし、レッグフラップ15と着用者の身体との間に隙間が生じづらい。これによって脚周りからの液漏れが一層効果的に防止される。パルプを主体とする従来の吸収体を用いた場合には、吸収体に伸縮性を付与しようとすると、より太く、より多くの本数のレッグ弾性ストランドを用いなければならず、それによって大量の粘着剤が必要となり、べたつきの発生や柔軟性の低下などの不都合を招いていた。更に、高吸収容量を確保するためには吸収体が厚くなり、それによってフィット性の低下という不都合も招いていた。これに対して、ウエブを有する本発明の伸縮性吸収体を用いれば、従来の吸収体が有するそのような不都合を解消することができる。
図5及び図6に示すおむつの変形例として、図7に示すおむつを挙げることができる。図7は、図5におけるVII−VII線断面図である。図5におけるVII−VII線は、おむつ10における腹側部に当たる部分である。この部分は、いわゆる前漏れが起こりやすく、吸収体に高吸収容量が要求される部分である。この部分においては、中央吸収体13と撥水性不織布14との間に、長繊維を有する親水性ウエブ19が配されている。ウエブ19は、液の移動に関して左右の側部吸収体1,1を連結している。ウエブ19は、おむつ10の幅方向と一致する方向に高度に配向している。
ウエブ19としては、側部吸収体1を構成するウエブ2と同様のものを用いることができる。しかし、場合によっては、ウエブ19は高吸収性ポリマーを埋没担持していなくてもよく、またウエブ19を構成する長繊維が捲縮していなくてもよい。
図7に示すおむつ10によれば、一方の立体ガード16を乗り越えておむつの横方向に流れだした液が、一方のレッグフラップ15に配された側部吸収体1によって吸収される。一方の側部吸収体1に吸収された液は、左右の側部吸収体1,1を連結するウエブ19によっておむつ10の幅方向中央域に向かって素早く拡散し、高吸収容量を有する中央吸収体13に導かれる。そして中央吸収体13によって吸収される。つまり、側部吸収体1から中央吸収体13への液のフィードバックが起こる。更に、液が、中央吸収体13を越えて、他方の側部吸収体1へ達し、そこでも吸収される。液のこのような吸収メカニズムによって吸収体の吸収性能を全体として有効活用でき、液漏れを更に一層効果的に防止することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、種々の変更が可能である。例えば、図5及び図6では、本発明の吸収体の吸収性物品への適用の一例として、使い捨ておむつのレッグフラップの側部吸収体を例示したが、本発明の吸収体の適用部位はこれに限られない。例えば図5ないし図7に示すおむつにおいて、側部吸収体と共に、又は側部吸収体に代えて、中央吸収体として、本発明の吸収体を用いることもできる。また、図5ないし図7に示すおむつにおいて、ウエストフラップ17に、本発明の吸収体を配することもできる。その場合には、吸収体におけるウエブの配向方向がおむつの幅方向と一致するように吸収体を配する。そうすることによって、吸収された液をおむつの幅方向に拡散させることができ、ウエスト開口部からの液漏れを効果的に防止することができる。更に、使い捨ておむつ以外の吸収性物品、例えば生理用ナプキンや失禁パッドなどの吸収体に、本発明の吸収体を適用してもよい。
また、本発明に係る吸収体を用いる吸収性物品においては、レッグ部やウエスト部に弾性領域を形成する方法として、従来のように糸ゴムなどの弾性部材を伸長下に固定して張力を解除する方法のほかに、自然状態から伸長可能な伸縮材を用いる方法がある。該伸縮材としては例えば、非伸長性の不織布に伸長性の不織布を複合化した後に、非伸長性の不織布を切断することで得られる伸縮性シートが挙げられる。特に後者の伸縮材を用いると、締め付けによる跡が肌につきにくいというメリットがある。後者の伸縮材を、従来の伸縮不能な吸収体と組み合わせて用いると、伸縮材の伸縮物性が阻害されるという不都合があったが、該伸縮材を本発明に係る伸縮吸収体と組み合わせて用いることで、跡つきの防止と伸縮特性との両立を図れるようになった。
また前記の各実施形態においては、吸収体に含まれる繊維材料が、親水性を有する長繊維のウエブから構成されていたが、吸収体の伸縮性が阻害されない範囲において、該長繊維に加えて、フラップパルプ等の通常用いられる吸液性の繊維や、合成樹脂の短繊維を吸収体に配合してもよい。
また、本発明に係る吸収体を有する吸収性物品においては、ウエブ2を包む液透過性シート4のみならず、表面シートに伸長可能な加工を施してもよい。液透過性シートと表面シートに施す加工は、同じでもよく或いは異なっていてもよい。例えば、表面シートと吸収体とを複合化した後に、該表面シートに伸長可能な加工を施してもよい。或いは、液透過性シートに伸長可能な加工(例えばスリット加工)を施した後、別な伸長加工(例えばプリーツ加工処理)を施した表面シートを複合化してもよい。更には、液透過性シートに伸長可能な加工(例えばスリット加工)を施した後、伸長可能な表面シート、例えば、開孔フィルムや開孔不織布を積層しても良い。
〔実施例1〕
先ず、捲縮したアセテート繊維のウエブを用意した。この繊維の繊維径は2.1dtex、ウエブの全繊維量は2.5万dtexであった。このウエブを、空気開繊装置を用いて幅100mmに開繊して開繊ウエブを得た。開繊ウエブを最大伸長長さまで引き伸ばした。この状態下に、開繊ウエブの上面にホットメルト粘着剤をスプレー塗工した。塗工量は5g/m2であった。次いで、ホットメルト粘着剤の塗工面に、高吸収性ポリマーの粒子を散布坪量130g/m2で層状に均一散布した。散布完了後、開繊ウエブの引き伸ばし状態を解除した。これによって、開繊ウエブは収縮して高吸収性ポリマーの粒子が開繊ウエブ中に埋没担持された第1積層体を得た。以後、この操作と同様の操作をもう一度繰り返して、高吸収性ポリマーの粒子が埋没担持されたウエブからなる第2積層体を得た。このようにして得られた第1積層体と第2積層体の間に、坪量50g/m2のフラッフパルプ層を挟んだ。
更に、第2積層体の下に坪量100g/m2のフラッフパルプ層を配した。これら全体を、ホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み、中央吸収体を得た。このときウエブの捲縮率は30%、繊維1cm当たりの捲縮数は15個、また、このウエブを含む中央吸収体の担持率は30%、移動率は11%であった。中央吸収体全体には、ウエブの配向方向に直交する方向にスリット加工が施されている。スリット加工は、中央吸収体の厚み方向にわたり、該吸収体を貫くように施された。スリットは、図8に示すように、1つのスリットの幅が2mm、幅方向に隣り合うスリットとの間隔が2mm、長手方向のスリット間隔が2mmで、互いのスリットが交互に存在するように形成した。スリットは、その長手方向が、ウエブの配向方向と直交するように形成した。これによって、中央吸収体はウエブの配向方向に伸縮可能となった。中央吸収体においては、肌から最も遠い面側に、坪量100g/m2のフラッフパルプ層が位置している。中央吸収体全体の坪量は488g/m2、厚さは2.2mmであった。また各ウエブの坪量は13g/m2であった。
表面シートとして坪量25g/m2のエアスルー不織布を用いた。表面シートには直径5mmの金属ピンで開孔処理が施されていた。エアスルー不織布は、芯がポリプロピレン、鞘が直鎖状低密度ポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維(太さ2.1dtex、界面活性剤で表面処理、液透過性を有する)から構成されていた。裏面シートとして坪量20g/m2の多孔質フィルムに、坪量20g/m2のポリプロピレン製スパンボンド不織布をホットメルト1.5g/m2で接着して複合化したものを用いた。多孔質フィルムは、密度0.925g/cm2の直鎖上低密度ポリエチレン樹脂100重量部に、炭酸カルシウム150重量部、及び第三成分としてエステル化合物4重量部を均一混合したものを、インフレーション成形した後、縦方向に2倍に1軸延伸したフィルムであった。それ以外は、通常の使い捨ておむつの製造方法に従い、使い捨ておむつを得た。中央吸収体は、ウエブの配向方向が、おむつの長手方向に一致するように配した。
〔実施例2〕
実施例1において、積層体の上下にフラッフパルプ層を配せず、各ウエブの坪量を60g/m2とし、積層体を包むティッシュペーパーの代わりに、親水化処理した坪量16g/m2のスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMS)を用いた。この不織布には実施例1と同様のスリット加工が施されていた。これら以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
〔実施例3〕
実施例1において、積層体の上下にフラッフパルプ層を配せず、各ウエブの坪量を60g/m2とし、ウエブが伸長下にある状態に、親水化処理した坪量16g/m2のスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMS)で包んだ。これら以外は実施例1と同様にして吸収体を得た。得られた吸収体を用いて、実施例2と同様にして使い捨ておむつを得た。
〔実施例4〕
側部吸収体を次のように製造した。先ず捲縮したアセテート繊維のウエブを用意した。この繊維の繊維径は2.1dtex、ウエブの全繊維量は2.5万dtexであった。このウエブを、空気開繊装置を用いて幅50mmに開繊して開繊ウエブを得た。開繊ウエブを最大伸長長さまで引き伸ばした。この状態下に、開繊ウエブの上面にホットメルト粘着剤をスプレー塗工した。塗工量は5g/m2であった。次いで、ホットメルト粘着剤の塗工面に、高吸収性ポリマーの粒子を散布坪量150g/m2で層状に均一散布した。散布完了後、別の開繊ウエブを重ね、引き伸ばし状態を解除した。これによって開繊ウエブは収縮して高吸収性ポリマーの粒子は開繊ウエブ中に埋設保持された。次いでこれら全体を坪量16g/m2の親水化処理したスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMS、実施例3と同様のスリット加工を施したもの)で包み、側部吸収体を得た。このとき、ウエブの捲縮率は30%、1cm当たりの捲縮数は15個であった。また、このウエブを含む側部吸収体の担持率は95%、移動率は11%で側部吸収体全体の坪量は173g/m2、厚さは1.0mmであった。また各ウエブの坪量は13g/m2であった。この側部吸収体を、実施例1で得られた使い捨ておむつに組み込み、図5に示す使い捨ておむつを得た。側部吸収体は、ウエブの配向方向が、おむつの長手方向に一致するように配した。
〔比較例1〕
開繊したフラッフパルプ100重量部と高吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量520g/m2の混合体を得た。フラッフパルプ及び高吸収ポリマーの坪量はそれぞれ260g/m2であった。得られた混合体を坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み中央吸収体を得た。混合体とティッシュペーパーの間は、ホットメルト粘着剤5g/m2をスプレー塗工し接着した。吸収体全体の坪量は 562g/m2、厚さは4.3mmであった。これら以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
〔比較例2〕
側部吸収体を次のように製造した。開繊したフラッフパルプ100重量部と高吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量300g/m2の混合体を得た。フラッフパルプ及び高吸収ポリマーの坪量はそれぞれ150g/m2であった。得られた混合体を坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み吸収体を得た。混合体とティッシュペーパーの間は、ホットメルト粘着剤5g/m2をスプレー塗工し接着した。吸収体全体の坪量は342g/m2、厚さは2.6mmであった。この側部吸収体を、比較例1で得られた使い捨ておむつに組み込み、使い捨ておむつを得た。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたおむつにおける吸収体について、以下の方法で吸収容量、柔軟性及び構造安定性を評価した。また、おむつについてフィット性を評価した。それらの結果を以下の表1に示す。
〔吸収容量〕
得られた吸収体を45°の傾斜版に固定し、吸収体の上方側の端部から200mmの位置に生理食塩水を一定量、一定間隔ごとに繰り返し注入した。吸収体の下方側の端部からもれだすまでの注入量を比較した。比較例1の吸収容量を1.0とした時の相対値を以下の計算式を用いて算出した。
吸収容量(相対値)=(サンプルの吸収容量)/(比較例1の吸収容量)
〔柔軟性〕
吸収体についてハンドルオ・メーター試験を行い、以下の判断基準に従って柔軟性を評価した。数値が小さい程、当てやすさやフィット性が良好であることを示す。
○:ハンドルオ・メーターの測定値が2N以下である。
△:ハンドルオ・メーターの測定値が2Nを超え、4N以下である。
×:ハンドルオ・メーターの測定値が4Nを超える。
〔構造安定性〕
(1)ドライ時
50mm×200mmに作製した吸収体の中央部を切断し、50×100mmの吸収体を得た。切断面を真下にして、振幅5cmで1回/1秒の速度で20回振動を与えたとき、切断面からの落下したポリマーの量を測定した。以下の判断基準に従って高吸収ポリマーの埋没担持性を評価した。
混合した高吸収ポリマーのうち、
○:脱落した高吸収ポリマーの割合が0%を超え、10%以下である。
△:脱落した高吸収ポリマーの量が10%を超え、25%以下である。
×:脱落した高吸収ポリマーの量が25%を超える
(2)ウエット時
50×200mmに切断した吸収体全面に、生理食塩水100gをほぼ均等に吸収させた後、静かに吸収体を持ち上げたとき、吸収体が破壊しないかどうかを目視判定した。
○:脱落した高吸収ポリマーの割合が10%以下であり、吸収体の破壊がない。
△:脱落した高吸収ポリマーの割合が10%を超え、25%以下であり、吸収体の破壊がない。
×:脱落した高吸収ポリマーの割合が25%を超える、あるいは吸収体が破壊する。
〔フィット性〕
得られたおむつを、Mサイズおむつ使用の乳幼児5名(7ヶ月〜14ヶ月児)に装着させ、母親の印象を聞き取った。
○:すっきりフィットしていて、股間がもこもこしていない。
△:ややすっきりしている。
×:もこもこ感があってすっきりせず、フィットしていない。