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JP2006068716A - 中空糸膜束の乾燥方法 - Google Patents

中空糸膜束の乾燥方法 Download PDF

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JP2006068716A JP2004259064A JP2004259064A JP2006068716A JP 2006068716 A JP2006068716 A JP 2006068716A JP 2004259064 A JP2004259064 A JP 2004259064A JP 2004259064 A JP2004259064 A JP 2004259064A JP 2006068716 A JP2006068716 A JP 2006068716A
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Hideyuki Yokota
英之 横田
Koyo Mabuchi
公洋 馬淵
Katsuro Kuze
勝朗 久世
Hirofumi Ogawa
浩文 小川
Hitoshi Ono
仁 大野
Noriaki Kato
典昭 加藤
Noriyuki Tamamura
憲幸 玉村
Hiroshi Shibano
博史 柴野
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Abstract

【課題】乾燥工程における中空糸膜の変形を抑制するとともに乾燥の均一性の向上および中空糸膜素材の劣化を低減し、高性能で、安全性が高く、かつ保存安定性やモジュール組み立て性に優れた中空糸膜束を提供する為の乾燥方法を達成することにあり、この乾燥方法を利用して、血液浄化用に適した中空糸膜束および保存安定性に優れ、かつ残血の少ない分離用モジュールを提供する。
【解決手段】マイクロ波照射により湿潤状態の中空糸膜束を乾燥する方法において、湿潤状態の中空糸膜束を1WHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなる中空状の包装体で拘束し、1WHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなるトレイに入れて中空糸膜束の長手方向が水平に対して45度以下の角度になるようにマイクロ波照射オーブン中に配置して乾燥する中空糸膜束の乾燥方法。また、乾燥上がりの中空糸膜束が特定された特性を有するポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなる中空糸膜束および分離用モジュールを提供することを可能とした。
【選択図】なし

Description

本発明は、湿潤状態の中空糸膜束の乾燥方法、中空糸膜束および分離用モジュールに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、湿潤状態の中空糸膜束の乾燥方法に関し、従来技術に比して簡略化された方法程における作業性に優れ、かつ乾燥工程での乾燥工程における中空糸膜の変形を抑制するとともに乾燥の均一性の向上および中空糸膜成分の劣化を低減し、高性能で、安全性が高く、かつモジュール組み立て性や保存安定性に優れた中空糸膜束が製造できる中空糸膜束の乾燥方法に関するものである。この乾燥方法を利用して、分離用モジュールに適した中空糸膜束および装填された中空糸膜束が高性能で安全性や性能の安定性が高く、保存安定性に優れ、かつ残血糸の少ない分離用モジュールを提供することができたものである。
近年、選択的な透過性を有する膜を利用する技術がめざましく進歩し、これまでに気体や液体の分離フィルター、医療分野における血液透析器、血液ろ過器、血液成分選択分離フィルター等の広範な分野での実用化が進んでいる。該膜の材料としては、セルロース系(再生セルロース、酢酸セルロース、化学変性セルロース等)、ポリアクリロニトリル系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスルホン系、エチレンビニルアルコール系、ポリアミド系等の樹脂が用いられてきた。このうちポリスルホン系樹脂は、その熱安定性、耐酸、耐アルカリ性に加え、製膜溶液に親水化剤を添加して製膜することにより、血液適合性が向上することから、半透膜素材として注目され研究が進められてきた。
腎不全治療などにおける血液浄化療法では、血液中の尿毒素、老廃物を除去する目的で、透析膜や限外ろ過膜を分離材として用いた血液透析器、血液ろ過器あるいは血液透析ろ過器などのモジュールが広く使用されている。特に中空糸型の膜を分離材として用いたモジュールは体外循環血液量の低減、血中の物質除去効率の高さ、さらにモジュール生産時の生産性などの利点から透析器分野での重要度が高い。
一方、中空糸膜束を接着してモジュールを作製するためには中空糸膜束を乾燥させる必要があるが、有機高分子よりなる多孔膜、なかでもポリスルホン系等の疎水性樹脂からなる透析膜、限外ろ過膜は、製膜後に乾燥させると乾燥前に比べ著しく透水量が低下することが知られている。そのため膜は常に湿潤状態か、水に浸漬させた状態で取り扱う必要があった。
この対策として従来よりとられてきた方法は、製膜後、乾燥前にグリセリン等の低揮発性有機液体を多孔膜中の空孔部分に詰めておくことであった。しかしながら、低揮発性有機液体は、一般に高粘度なため、洗浄除去に時間がかかり、膜をモジュール成型して洗浄後も微量ではあるが低揮発性有機液体由来の溶出物等(低揮発性有機液体と化学反応して生成した様々な誘導体)がモジュール封入液中にみられることに問題があった。
低揮発性有機液体を用いずに乾燥させる方法として、低揮発性有機液体の代わりに塩化カルシウム等の無機塩を用いる方法が開示されているが、洗浄除去する必要性に変わりはない。また、微量であるとしても残存した無機塩が透析患者に与える悪影響が危惧される
(特許文献1参照)。
特開平6−277470号公報
また、膜の乾燥方法として、中空糸膜に対し水蒸気による湿熱処理を行いながらマイクロ波を照射する中空糸膜の製造方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、乾燥でありながら膜の変形を防ぐために水蒸気処理していることから乾燥時間を長くする欠点があり、さらに、グリセリン等の低揮発性有機液体を付着させてからの乾燥であることから、膜からの溶出物を低減させるという目的は達成されない。
特開平11−332980号公報
低揮発性有機液体を用いずに乾燥処理をしたポリビニルピロリドンを含む親水化膜が開示されている(特許文献3および4参照)。これらには、血液から血漿成分を分離する性能が記載されているが、血漿タンパクが透過することから透析膜としては有効でないことが分かる。また、ポリビニルピロリドンを分解・変性させる温度で乾燥していることから、膜からの溶出物を低減させるという目的においては極めて好ましくない製法である。
特開平8−52331号公報 特公平8−9668号公報
また、特定の性能を有する湿潤膜をグリセリン等の低揮発性有機液体に含浸せずに120℃以下の温度で乾燥して高性能な血液浄化膜を製造する方法が開示されている(特許文献5参照)。しかし、この方法は、糸束状にして乾燥した場合には、糸束の中心部と外周部の膜とでは若干の性能差が生じること同一発明者等により明らかにされている。
特許第3281364号公報
特許文献5と同一発明者らにより特許文献5に開示されている乾燥方法の課題解決の方策として、マイクロ波を照射して乾燥する方法が開示されている(特許文献6〜9参照)。これらの方法は低揮発性有機液体に含浸せず乾燥する方法であり、かつ中空糸膜束の分離性能を低下させずに乾燥できる点では好ましい方法である。しかしながら、これらの方法はいずれもが、中空糸膜束内に気体を通風し乾燥の均一化を図る方法である。該方法は、マイクロ波照射機構に加え、中空糸膜束内に気体を通風するための補助機構の設置が必要であり乾燥機の構造が複雑になるという課題を有する。また、該方法は中空糸膜束内に気体を通風するための補助機構に被乾燥中空糸膜束を固定する必要があり、該固定部の構造が複雑になり、かつ中空糸膜束を所定の場所にセットしたり、通風量を制御したりする等乾燥の準備や乾燥操作が煩雑になるという課題を有する。
また、別の発明者により減圧により中空糸膜束内部に空気を通過させながらマイクロ波を照射して中空糸膜束を乾燥する方法が開示されている(特許文献10参照)。該方法も同様の課題を有する。
特開2003−175320号公報 特開2003−175321号公報 特開2003−175322号公報 特開2003−284931号公報 特開平9−888号公報
また、上記特許文献の方法は通風乾燥が併用されているために、通風乾燥において通風条件を厳密に制御しないと、中空糸膜束内での通風の不均一性等により乾燥工程において被乾燥中空糸膜の収縮斑等の中空糸膜の変形差が発生し中空糸膜の折れ、配列乱れおよび糸長変動等が引き起こされる。中空糸膜の折れや配列乱れが発生するとモジュール化の折に接着剤による両端の包埋部の中空糸膜に傾きが生じ、例えば、血液浄化用に使用した場合に血液の偏流が起こり残血糸の発生につながる。また、中空糸膜の折れや配列乱れが発生するとモジュール組み立て工程におけるモジュールの容器への中空糸膜束の挿入性が低下し、中空糸膜の傷や中空糸膜の断面が変形した潰れ糸が発生する。傷は血液リークにつながる。また、潰れ糸は血液の偏流原因となり残血糸の発生に繋がる。糸長変動に関しては、収縮率が大きく糸長の短い中空糸膜が発生すると、接着剤による両端の包埋時に中空糸膜の中空部に接着剤が浸入し易くなり目詰まり糸の発生につながり、血液の偏流原因となり残血糸の発生が起こる。逆に、収縮率が低く糸長の長い中空糸膜が発生すると中空糸膜折れや配列乱れの発生につながり上記の課題が引き起こされる。
また、上記特許文献の方法は中空糸膜素材の長期保存安定性に対する配慮が不足しておりその改善も必要である。中空糸膜を血液浄化療法用の分離膜として使用する場合は、親水性化合物の溶出が多くなると人体に取り異物である親水化合物の長期透析時の体内蓄積が増え副作用や合併症等を引き起こす可能性があり透析型人工腎臓装置製造承認基準において中空糸膜の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度の基準が設定されている。上記特許文献の方法においても、代表値の測定はされている。
本発明者等は、上記の透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験法で抽出された抽出液中には、従来公知のUV吸光度では測定できない過酸化水素が含まれていることを見出した。該過酸化水素が存在すると、例えばポリビニルピロリドンの酸化劣化を促進し、中空糸膜束を保存した時に該ポリビニルピロリドンの溶出量が増加する事を見出した。さらに、過酸化水素は中空糸膜束の特定部位に存在しても、その個所より中空糸膜束素材の劣化反応が開始され中空糸膜束の全体に伝播していくため、モジュールと用いられる中空糸膜束の長手方向の存在量が全領域に亘り、一定量以下を確保する必要がある事を見出した。上記特許文献の方法で実施した場合は、該過酸化水素の溶出量が多くなり該中空糸膜束を長期保存した場合にポリビニルピロリドンの酸化劣化が促進され、経時によりUV(220〜350nm)吸光度が増加という課題が発生する。
上記特許文献の方法で実施した場合は、通風の入り口側から出口側への中空糸膜束の長手方向が乾燥の不均一が起こり、過酸化水素が局所的に発生し上記課題の発生に繋がる。
また、上記特許文献の方法で実施した場合は、通風の入り口側から出口側への中空糸膜束の長手方向が乾燥の不均一化により、UV(220〜350nm)吸光度についても中空糸膜束の長手方向の変動が大きいという課題が発生する。該変動は安全性の低下につながる。また、UV(220〜350nm)吸光度の変動は中空糸膜束外表面のポリビニルピロリドンの表面濃度をも反映しており、湿潤状態の中空糸膜束を乾燥した場合に乾燥上がりに中空糸膜束表面のポリビニルピロリドン濃度の高い部分で部分的な中空糸膜同士のくっつき(固着)が発生するという課題に繋がる。該部分的な固着が発生するとモジュール組み立て性が悪化する等の問題に繋がるので改善が必要である。上記特許文献においては、これらの課題に対する配慮が全くなされていない。
上記した特許文献5〜9の乾燥方法は乾燥膜中の含水率を1質量%未満にすることが実施例において記載されている。また、上記の従来公知のマイクロ波を照射して乾燥する方法は何れもが常圧状態でマイクロ波を照射する方法であり、減圧下でマイクロ波を照射することの効果に関しては全く言及されていない。
従来技術に比して簡略化された方法により乾燥工程における作業性に優れ、かつ乾燥工程での中空糸膜の変形を抑制するとともに乾燥の均一性の向上および中空糸膜成分の劣化を低減し、高性能で、安全性が高く、かつ保存安定性やモジュール組み立て性に優れた中空糸膜束を製造することのできる中空糸膜束の乾燥方法を達成することができたものであり、この乾燥方法を利用することにより、分離用モジュールに適した中空糸膜束および装填されている中空糸膜束が高性能で安全性や性能の安定性が高く、保存安定性に優れ、かつ残血糸の少ない分離用モジュールを提供することができた。
本発明は、マイクロ波照射により湿潤状態の中空糸膜束を乾燥する方法において、湿潤状態の中空糸膜束を1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなる中空状の包装体で拘束し、1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなるトレイに入れて中空糸膜束の長手方向が水平に対して45度以下の角度になるようにマイクロ波照射オーブン中に配置して乾燥することを特徴とする中空糸膜束の乾燥方法である。
また、本発明は、その乾燥方法により、乾燥終了後の中空状の包装体で拘束された中空糸膜束の外周部と内周部との中空糸膜長さの平均値の差が3mm以内であることを特徴とするポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなる中空糸膜束を提供することができたものである。
さらに、本発明は、その乾燥方法を利用して、ポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなる中空糸膜束の両端を樹脂で固定化した分離用モジュールにおいて、(1)明細書中に記載した方法で評価される樹脂で固定化された部分の中空糸膜の傾き度が15度以上の中空糸膜の本数の割合が0.05%以下であり、(2)明細書中で記載した方法で測定される目詰まり糸の本数の割合が0.05%以下あることを同時に満足することを特徴とする分離用モジュールを提供することができたものである。
本発明の中空糸膜束の乾燥方法は、従来公知技術であった中空糸膜束内に気体を通過させ乾燥の均一化を図る通風方式を併用することも可能であるが、あえて使用しなくても十分な乾燥が遂行できるので、この通風を施すための治具が不要で乾燥機の構造が簡略化される上に、被乾燥中空糸膜束をこの通風を施すための治具に固定する必要がないので被乾燥中空糸膜束の乾燥機へ配置する作業性が向上する。また、従来公知技術の課題であった被乾燥中空糸膜束の配置方向や通風の不均一性等による乾燥工程における被乾燥中空糸膜束の中空糸膜の折れ、配列乱れ等の中空糸膜の変形や収縮斑が抑制されるので、本発明方法で乾燥された乾燥中空糸膜束は、例えば、分離用モジュール組み立て工程におけるモジュールの容器への中空糸膜束の挿入性が向上すると共に、次工程のモジュール組み立て時の接着作業が向上する。さらに、変形や収縮斑に起因した傾き中空糸膜、潰れ中空糸膜および目詰まり中空糸膜等の欠点中空糸膜の発生が抑制され、これらの欠点により引き起される残血性が改善されるという利点がある。また、中空糸膜の折れや傷発生が抑制されるので、血液リーク性が改善される。また、本発明においては湿潤状態の中空糸膜束が中空状の包装体で拘束されているので、被乾燥中空糸膜束の乾燥機へ配置する作業性が向上する上に、乾燥された中空糸膜束を用いて組立てるモジュールに装填する本数単位として中空状の包装体で拘束されおり、乾燥された中空糸膜束をそのままモジュール容器に装填し、その後に包装体を抜き取ることにより中空糸膜束をモジュール容器に装填することができ、該装填の作業性が大幅に向上でき、装填時の欠点糸の発生が抑制されるという利点がある。その上、上記包装体で拘束された被乾燥中空糸膜束がトレイに固定し乾燥機に配置されるので被乾燥中空糸膜束の乾燥機へ配置の作業性がより向上する。
さらに、従来公知技術の課題であった通風方向、すなわち、中空糸膜束の長手方向における乾燥の不均一化が改善されるので、ポリビニルピロリドンの局所的な劣化が低減され、該劣化により生成する過酸化水素溶出量が抑制される。従って、本発明により得られた中空糸膜束は、該過酸化水素により引起されるポリビニルピロリドン等の劣化が抑制されるので、長期保存をしても透析型人工腎臓装置製造承認基準であるUV(220−350nm)吸光度の平均値を0.10以下に維持することができる利点がある。また、該乾燥の均一化により中空糸膜束の長手方向におけるポリビニルピロリドンの劣化の変動が小さく、中空糸膜束の長手方向における上記のUV(220−350nm)吸光度変動が抑制され、中空糸膜束の含水率が適度な範囲に設定されており、かつその変動率が抑制されているので、これらの変動により引き起こされる中空糸膜束の部分固着の発生が抑制され、モジュール組み立て性の優れた中空糸膜束が安定して製造できるという特徴を有する。また、該中空糸膜束の長手方向におけるUV(220−350nm)吸光度変動の抑制は、血液浄化用に使用した場合の安全性の向上にも繋がる。従って、慢性腎不全の治療に用いる高透水性を有する血液浄化用等に用いられる中空糸膜束の乾燥方法として好適であるいう利点がある。また、本発明のポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなる中空糸膜束は、上記の従来公知技術で得られる中空糸膜束の有する課題特性が改善されているので、血液浄化用等に好適に使用することができるという利点がある。さらに、本発明で得られた分離用モジュールは、装填されている中空糸膜束が高性能で安全性や性能の安定性が高く、保存安定性に優れ、かつ残血糸が少ないという利点がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、マイクロ波照射により湿潤状態の中空糸膜束を乾燥する方法において、湿潤状態の中空糸膜束を1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなる中空状の包装体で拘束し、かつ中空糸膜束の長手方向が水平に対して45度以下の角度になるようにマイクロ波照射オーブン中に配置して乾燥することが好ましい。
中空糸膜束の角度は30度以下がより好ましく、0度、すなわち水平置きが最も好ましい。角度が45度以上、例えば従来技術で開示されている90度である垂直に配置した場合は、中空糸膜束の乾燥の進行に従い水により拘束されていた中空糸膜束の集合性が少なくなり中空糸膜束の動きの自由度が増し、例えば自重による変形である座屈が発生する可能性が高まる。該変形が起こると中空糸膜束の折れ曲がりに繋がる。また、中空糸膜束間の配列乱れに繋がり、モジュール組み立て時の容器への中空糸膜束の挿入性の低下、挿入時の中空糸膜束と容器あるいは中空糸膜束同士の擦れによる中空糸膜の傷や潰れ中空糸膜の発生および挿入した後の中空糸膜束を接着により容器に固定する接着工程の作業性や接着作業による接着不良、傾き中空糸膜の発生や接着剤の中空糸膜内孔への接着剤の浸入による目詰まり中空糸膜の発生増大等の課題に繋がる。従って、本発明は中空糸膜束の直径(D)と長さ(L)との比であるL/Dが2以上の中空糸膜束の乾燥に適用するのが好ましい。L/Dが3以上の中空糸膜束の乾燥に適用するのがより好ましい。
湿潤状態の中空糸膜束を1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなる中空状の包装体で拘束し乾燥機内に配置するのが好ましい。このことにより中空糸膜束の取り扱い性が向上し、乾燥機内への配置の作業性がさらに改善される。この場合の湿潤状態の中空糸膜束の拘束は次工程のモジュール組み立てを配慮して行うのが好ましい。すなわち、モジュールに必要な単位の本数の中空糸膜束をモジュールの容器の内径より少し小さめの包装体で拘束し、乾燥された中空糸膜束を包装体ごとに容器内に挿入し、挿入された状態で包装体のみを抜き出すことにより乾燥中空糸膜束の容器への挿入の作業性や該作業における中空糸膜の傷発生等のトラブル発生を抑制することができるので特に好ましい方法として推奨される。該方法においては、被乾燥中空糸膜束の単位長さも得られた乾燥中空糸膜束を充填するモジュールの容器の長さに見合う長さに設定するのが好ましい。この場合、乾燥による中空糸膜束の収縮度を配慮して被乾燥中空糸膜束の長さの設定をすることが好ましい。
湿潤状態の中空糸膜束の長さの設定は、乾燥された中空糸膜束を装填するモジュール用容器長さをA(mm)、該モジュール組立て時の中空糸膜束両端部の切り代を合わせた長さをB(mm)とした時に中空糸膜束の乾燥上がりでA+B(mm)に設定するのが好ましい。
また、中空状の包装体は断面形状が円形であるプラスチックよりなり、その外径が乾燥中空糸膜束を装填するモジュールの容器の内径の70〜99.9%であることが好ましい実施態様である。
中空状の包装体の外径が乾燥中空糸膜束を装填するモジュールの容器の内径の80〜99.0%がより好ましく、90〜98.0%がさらに好ましい。99.9%を超えた場合は、該包装体をモジュールの容器の装填が困難になるので好ましくない。逆に70%未満では、モジュール内の中空糸膜束の占める空間が小さくなるため、モジュール内に無駄な空間が生じたり、中空糸膜束のモジュール内での位置の偏りが生じ、例えば、血液浄化器として使用する場合に、透析液の偏流が起こり易くなり透析効率の低下に繋がる。また、中空糸膜束を容器内に固定する接着工程の作業性も低下する。
中空状の包装体の厚みは0.05〜1mmが好ましい。0.1〜0.8mmがより好ましく、0.15〜0.7mmがさらに好ましい。0.05mm未満では形状の保持性が低下し、変形しやすくなり中空糸膜束の形状変形の発生や容器への装填の作業性の悪化に繋がるので好ましくない。逆に、1mmを超えた場合は、形状の保持性や装填の作業性の改善効果が飽和し過剰品質になる。
中空状の包装体で拘束される中空糸膜束の充填密度は、中空状の包装体の断面積に対して、拘束される中空糸膜束の各中空糸膜の外径断面積の総和で40〜90%が好ましい。43〜80%が好ましく、46〜70%がさらに好ましい。40%未満ではモジュール組立て後のモジュール内での無駄な空間体積が増大し、モジュールの径が大きくなるので好ましくない。また、例えば、血液浄化器として用いる場合に透析液の偏流が起こり透析効率の低下につながるので好ましくない。逆に90%を超えた場合は、乾燥中空糸膜束の容器への装填の作業時の中空状の包装体を抜き取る際の抜き取りの作業性が低下する上に中空糸膜の潰れや傷の発生が起こり易くなり、欠点糸の発生につながるので好ましくない。また、中空糸膜束を容器内に固定する接着工程において、中空糸膜間の空間への接着剤の浸透性が低下し接着不良個所の増加にもつながるので好ましくない。
上記の湿潤状態の中空糸膜束を拘束する中空状の包装体の材質は1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂より選択するのが好ましい。0.018以下がより好ましく、0.016以下がさらに好ましい。該樹脂としてはポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン樹脂やエーテルスルホン樹脂等のポリスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。該樹脂を用いることによりマイクロ波の透過性が向上し、中空糸膜束の乾燥の均一性が向上するので好ましい。ポリオレフィン系樹脂は1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.0005以下と極めて低い上に、柔らかく、かつ中空糸膜束の滑り性がよく、中空糸膜の挿入や抜き取りの折に中空糸膜束に傷が付き難いという長所も兼ね備えているので特に好ましい。
一方、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂およびポリカーボネート樹脂等の1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02を超える樹脂を用いた場合は、マイクロ波の透過性が低下するために包装体が加熱され、拘束された中空糸膜束の包装体と接触部あるいは近傍の中空糸膜の温度が上昇し、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの劣化の増大や中空糸膜の長手方向の乾燥の均一性の低下および中空糸膜の収縮等が増大するので好ましくない。
また、該包装体は、シームレスのチューブ状包装体を用いる方法が好ましい。例えば、中空状のパイプ等を用いるのが好ましい。特に、フィルムやシートを予め溶断シール等でチューブ状に成型したものに湿潤状態の中空糸膜束を充填するのがより好ましい。
上記の中空糸膜束の拘束体は、トレイに入れて乾燥機に配置するのが好ましい。該方法により乾燥工程の作業性がより向上する。トレイの形状は限定なく、湿潤状態の中空糸膜束が拘束された包装体の形状の窪みをつけたり、包装体が固定できる突起を付けて包装体を固定する方式、中空状の空間を設け該空間に包装体を収納し固定する方式等が挙げられる。トレイの上面に包装体の形状に合わせた半円形の窪みを付けて、この窪みに包装体で拘束された被乾燥中空糸膜束を固定する方式が作業性の点より好ましい。一個のトレイに固定される被乾燥中空糸膜束の個数は限定されない。乾燥機への配置の作業性がさらに向上する点より複数個を固定する方式が好ましい。
上記トレイの材質は、包装体と同様に1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂より選択するのが好ましい。0.018以下がより好ましく、0.016以下がさらに好ましい。該樹脂としては上述のごとくポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン樹脂やエーテルスルホン樹脂等のポリスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。該樹脂を用いることによりマイクロ波の透過性が向上し、トレイの発熱が抑制され、中空糸膜束の乾燥の均一性が向上するので好ましい。包装体の場合と異なり、容量が大きくかつ、繰り返し使用の必要があるので、耐熱性の優れたポリスルホン系樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂の使用が好ましい。
一方、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂およびポリカーボネート樹脂等の1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02を超える樹脂を用いた場合は、マイクロ波の透過性が低下するためにトレイの発熱が増大し、トレイと接触している部分の包装体やその近傍の中空糸膜束の温度が上昇し、その部分の中空糸膜中のポリビニルピロリドンの劣化の増大や中空糸膜の長手方向の乾燥の均一性が低下、中空糸膜の収縮が増大し中空糸膜束内での品質変動が増大するので好ましくない。
本発明においては、被乾燥中空糸膜束を回転機能を有する水平に設定されたテーブル上に配置し、回転させながら乾燥することが好ましい。また、被乾燥中空糸膜束の長手方向の一端が回転テーブルの中心点に向かう方向で複数個を等間隔で放射線状に配置することが好ましい実施態様である。該対応により後述の実施事項との相乗効果により、被乾燥中空糸膜束の長手方向を含めた被乾燥中空糸膜束の乾燥の均一性を向上させることができる。本方法によれば、回転テーブルの上に置くのみで配置ができるので乾燥機への被乾燥中空糸膜束の配置の作業が極めて単純で効率的に行うことができる。また、テーブルを回転させることにより被乾燥中空糸膜束に照射されるマイクロ波のエネルギーが均一化でき、被乾燥中空糸膜束の乾燥の均一性を向上させることができる。該テーブルの回転数は3〜20rpmが好ましい。なお、テーブル上のトレイの配置場所にトレイの形状の窪みをつけたり、逆に、トレイが固定できる突起を付けてトレイの配置場所を特定化し配置の作業性を向上させる等の手段をとることも好ましい実施態様である。
上記回転テーブルは金属製の回転保持具上に厚みが3mm以上のプラスチック製のスペーサーを設置した構造よりなり、該スペーサーの上にトレイを設置するのが好ましい。スペーサーの厚みは4mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。プラスチック製のスペーサーの厚みが3mm未満では、該プラスチック製のスペーサーを支える金属製の回転保持具でマイクロ波が反射され、該反射されたマイクロ波により回転保持具側の中空糸膜の乾燥が促進され、被乾燥中空糸膜束の加熱の均一性が低下し、本発明の効果が低下するので好ましくない。該プラスチック製のスペーサーの材質も限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の汎用性樹脂であっても構わないが、耐熱性の点より、ポリカーボネート、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、全芳香族ポリエステル等のいわゆるエンジニアリングプラスチックよりなるものが好ましい。ポリスルホン系樹脂が好ましい。回転保持具を含めてプラスチック製にすることも本発明の範ちゅうに含まれる。
本発明における上記回転テーブルの位置は、乾燥機内に設置する被乾燥中空糸膜束中心がマイクロ波発振器の導波管出口の中心部付近になるように設定するのがよい。各トレイに多数本の被乾燥中空糸膜束を配置する方法の場合は、該被乾燥中空糸膜束ブロックの中心点がマイクロ波発振器の導波管出口の中心部付近になるように設定するのがよい。
本発明方法で得られる中空糸膜束が具備すべき第一の特性は、乾燥時の中空糸膜束中の中空糸膜の長手方向の収縮率変動幅が特定範囲であることが好ましい。すなわち、乾燥終了後の中空状の包装体で拘束された中空糸膜束の外周部と内周部との中空糸膜長さの平均値の差が3mm以内であることが好ましい。
ここで、中空糸膜束の外周部とは、中空糸膜束の円形断面において、中心点からの半径の1/4の外周部をいう。また、内周部とは中心点からの半径の1/4の内周部をいう。中空糸膜長さの平均値とは、外周部および内周部よりサンプリングされた中空糸膜よりそれぞれ500本をランダムに採取し、それぞれ500本の全てについて以下の方法でその糸長を測定しその平均値を求めたものである。
(糸長の測定法)
各中空糸膜の両端をそれぞれ端部より5mm内部をコクヨWクリップ口幅15mm、豆(コクヨ社製:クリーJ36)で挟み、一方のクリップを固定、もう一方のクリップをフリーとして中空糸膜を吊り下げ、この状態で糸長を定規にて測定する。
中空糸膜長さの平均値の差は2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。中空糸膜長さの平均値が3mmを超えた場合は、該中空糸膜束を用いてモジュール化した場合に、後述のごとく傾き中空糸膜の割合や目詰まり糸の割合が増大し、例えば血液浄化用に用いた場合の残血糸の増大につながるので好ましくない。
上記特性は、本発明の乾燥方法を実施することにより容易に達成することができる。本発明の乾燥方法の構成要件の総和の効果として発現されるが、中でも前述した包装体やトレイの材質選択の効果の寄与が大きい。
本発明においては、以下の要件を満たすことも好ましい実施態様である。
本発明者等は、前述のごとく透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験法で抽出された抽出液中には、従来公知のUV吸光度では測定できない過酸化水素が含まれていることを見出した。該過酸化水素が存在すると、例えばポリビニルピロリドンの酸化劣化を促進し、中空糸膜束を保存した時に該ポリビニルピロリドンの溶出量が増加する事を見出した。さらに、過酸化水素は中空糸膜束の特定部位に存在しても、その個所より中空糸膜束素材の劣化反応が開始され中空糸膜束の全体に伝播していくため、モジュールと用いられる中空糸膜束の長手方向の存在量が全領域に亘り、一定量以下を確保する必要がある事を見出した。従来公知の方法で実施した場合は、該過酸化水素の溶出量が多くなり該中空糸膜束を長期保存した場合にポリビニルピロリドンの酸化劣化が促進され、経時によりUV(220〜350nm)吸光度が増加という課題が発生することを見出した。
すなわち、以下に示す特性の中空糸膜束が得られることが好ましい。すなわち、本発明方法で得られる中空糸膜束が具備すべき第二の特性は、中空糸膜束の保存安定性を支配する中空糸膜束の過酸化水素溶出量に関する特性であり、中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々を透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施したとき、10個に分割したすべての部位で抽出液中の過酸化水素濃度が5ppm以下あることが好ましい。ここで、透析型人工腎臓装置製造承認基準の溶出試験は、該分割した中空糸膜束から1gをはかりとる。これに100mlのRO水を加え、70℃1時間抽出を行いUV(220−350nm)吸光度を測定するものであるが、該抽出液中の過酸化水素を定量することにより求めたものである。
該過酸化水素溶出量は、4ppm以下がより好ましく、3ppm以下がさらに好ましい。該過酸化水素の溶出量が5ppmを超えた場合は、過酸化水素による酸化劣化等で前記の保存安定性が悪化し、例えば、長期保存した場合にポリビニルピロリドンの溶出量が増大することがある。保存安定性としては、該ポリビニルピロリドンの溶出量の増加が最も顕著な現象であるが、その他、ポリスルホン系高分子の劣化が引き起こされて中空糸膜束が脆くなるとか、モジュール組み立てに用いるポリウレタン系接着剤の劣化を促進し該劣化物の溶出量が増加し安全性の低下につながる可能性がある。該長期保存における過酸化水素の酸化作用により引き起こされる劣化起因の溶出量の増加は透析型人工腎臓装置製造承認基準により設定されているUV(220−350nm)吸光度の測定により評価できる。
従って、本発明においては、本発明により得られた乾燥中空糸膜束をドライボックス中(雰囲気は空気)に室温で3ヶ月保存した後の中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々を透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施したとき、中空糸膜の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度が平均値で0.10以下であることをが好ましい。5ヶ月以上保存しても上記特性が維持されるのがより好ましい。そのためには、3ヶ月保存後のUV(220〜350nm)吸光度が0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。中空糸膜束の製造工程、輸送および在庫用の保管等で乾燥状態の中空糸膜束を保管することを考慮すると上記特性の付与が好ましい。
また、具備すべき第三の特性は、中空糸膜束の部分固着を支配する特性であり、乾燥上がりの中空糸膜束は、中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々を透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施したとき、中空糸膜の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度の最大値が0.10未満であり、かつ同一中空糸膜束内における最大値と最小値の差が0.05以下にすることも重要である。該抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度は、中空糸膜束の固着に悪影響を及ぼす中空糸膜表面のポリビニルピロリドン存在割合量の指標であり、該中空糸膜束の長手方向の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度変動を抑えることにより、中空糸膜束の長手方向における中空糸膜表面におけるポリビニルピロリドンの存在割合量の変動が抑制されるので中空糸膜束の部分固着の発生が抑制される。また、該変動の抑制は中空糸膜束全体のポリビニルピロリドンの溶出量を低いレベルに保つことに繋がるので、血液浄化用に使用した場合に安全性が向上する。したがって、0.04以下が好ましく、0.03以下がさらに好ましく、0.02以下がよりさらに好ましい。
該UV吸光度の最大値は、固着に影響をおよぼす外表面の親水性高分子の存在割合が少なく、かつ抽出される溶出物が存在しないという意味からUV吸光度の下限値は0であることが好ましいが、本発明に於いてUV吸光度の最大値は0.03以上0.1未満であることが好ましい。0.03に満たなくなると膜内表面の親水性高分子の存在量が十分ではないために、膜の濡れ性に乏しく、膜性能を十分に発揮できない可能性がある。より好ましくは0.04〜0.09、さらに好ましくは0.05〜0.08、最も好ましくは0.06〜0.07である。
本発明においては、前述のごとく包装体やトレイの材質として本発明で特定した特性の材質のものを選択しないと包装体と接触している中空糸膜束の最外層およびその近傍の中空糸膜の劣化や乾燥の均一性が低下することより、中空糸膜束の外周部の中空糸膜についても上記特性を有する必要がある。ここで、外周部とは中空糸膜束の円形状断面において外周から半径で1/4の範囲をいう。
本発明における中空糸膜束の構成材料としては、再生セルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース系、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体などが上げられるが、セルロース系やポリスルホン系が好ましい。また、親水性高分子を含有する疎水性高分子よりなるものが好ましい。特に、ポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂より構成されてなる系が、生体適合性に優れ、かつ透水性能や分離特性の優れた選択透過性分離膜を得ることができるので好ましい。
ポリスルホン系樹脂とは、スルホン結合を有する樹脂の総称であり特に限定されないが、例を挙げると化1、化2で示される繰り返し単位をもつポリスルホン樹脂やポリエーテルスルホン樹脂がポリスルホン系樹脂として広く市販されており、入手も容易なため好ましい。
ポリビニルピロリドンは、N−ビニルピロリドンをビニル重合させた水溶性の高分子化合物であり、BASF社より「コリドン」、ISP社より「プラスドン」、第一工業製薬社より「ピッツコール」の商品名で市販されており、それぞれ各種の分子量の製品がある。一般には、親水性の付与効率では低分子量のものが、一方、溶出量を低くする点では高分子量のものを用いるのが好適であるが、最終製品の中空糸膜束の要求特性に合わせて適宜選択される。単一の分子量のものを用いても良いし、分子量の異なる製品を2種以上混合して用いても良い。また、市販の製品を精製し、例えば分子量分布をシャープにしたものを用いても良い。ポリビニルピロリドンの分子量としては質量平均分子量10,000〜1,500,000のものを用いることができる。具体的には、例えばBASF社より市販されている分子量9,000のもの(K17)、以下同様に45,000(K30)、450,000(K60)、900,000(K80)、1,200,000(K90)を用いるのが好ましく、目的とする用途、特性、構造を得るために、それぞれ単独で用いてもよく、適宜2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明におけるポリスルホン系樹脂に対するポリビニルピロリドンの膜中の構成割合は、中空糸膜に十分な親水性や、高い含水率を付与できる範囲であれば特に限定されず任意に設定することができるが、ポリスルホン系樹脂に対するポリビニルピロリドンの質量割合で1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。1質量%未満では、膜の親水性付与効果が不足する可能性がある。一方、20質量%を超えると、親水性付与効果が飽和し、かつ親水性高分子の膜からの溶出量が増大し安全性が低下する。
本発明における中空糸膜束の製造方法は何ら限定されるものではないが、例えば特開2000−300663公報で知られるような方法が例示される。例えば、ポリエーテルスルホン(4800P、住友化学社製)16質量%とポリビニルピロリドン(K−90、BASF社製)5質量%、ジメチルアセトアミド74質量%、水5質量%を混合溶解し、脱泡したものを紡糸溶液として、50%ジメチルアセトアミド水溶液を芯液として使用し、これを2重管オリフィスの外側、内側より同時に吐出し、50cmの空走部を経て、75℃、水の凝固浴中に導き中空糸膜束を形成し、水洗後まきとり、湿潤状態の中空糸膜束を製造することができる。
本発明における乾燥方法は、例えば上記方法等により得られた湿潤状態の中空糸膜束に適用するのが好ましい実施態様である。
本発明においては、前述のごとく、従来公知技術であった中空糸膜束内に気体を通過させ乾燥の均一化を図る通風方式を併用することも可能であるが、あえて使用しなくても十分な乾燥が遂行できるので、簡略化された方法で乾燥が実施でき、かつ通風方式により引き起こされる各種課題が改善されるが、前述の本発明で得られる中空糸膜束が具備すべく特性を安定して得るには、前記の達成要件に加え中空糸膜束の乾燥の均一化を達成するための手段を取り入れることが好ましい。以下に、該方策について言及する。
マイクロ波発振器をマイクロ波照射オーブンの側壁に設置し、マイクロ波を回転テーブルの側面方向より照射することが好ましい。また、マイクロ波発振器からオーブンに向かう入射波のエネルギーEiとオーブンで反射されオーブンより発振器に向かう反射波のエネルギーErとの比(Er/Ei)が0.2以下であるマイクロ波発振器を用いてマイクロ波を照射し加熱することがより好ましい。該マイクロ波発振器からオーブンに向かう入射波のエネルギーEiとオーブンで反射されオーブンより発振器に向かう反射波のエネルギーErの測定は、マイクロ波発振器からオーブンに向かう導波管部にエネルギー検知器を設置して測定し求めたものである。Er/Eiが0.2を超えた場合は、中空糸膜束に当るマイクロ波のエネルギーが不均一となり、後述する各種の均一加熱のための手段を講じても本発明の効果を十分に発現することができなくなるので好ましくない。また、Er/Eiが大きいと反射波により発振器のマグネトロンが破壊されることがある。Er/Eiは0.15以下がより好ましく、0.10以下がさらに好ましい。本発明においては、上記のEr/Eiを0.1以下にする方法は限定されないが、特開2000−340356号公報に開示されている各種の方策を採用するのが好ましい実施態様である。
上記対応と前述した被乾燥中空糸膜束の配置により被乾燥中空糸膜束に照射されるマイクロ波の強度分布が均一化され、中空糸膜束の乾燥が均一化され、前述の本発明の中空糸膜束が具備すべき好ましい特性を付与することができる。
本発明においては、中空糸膜束中の含水率が10〜20質量%に低下した時点でマイクロ波の照射を中止し、引き続き遠赤外線照射により乾燥することが好ましい。10〜15質量%がより好ましい。含水率が10質量%未満までマイクロ波照射による乾燥を行うと、ポリビニルピロリドンの劣化が増大し過酸化水素の抽出量が増大し、中空糸膜束の保存安定性が低下するので好ましくない。また、中空糸膜束の長手方向の含水率やUV(220〜350nm)吸光度の変動率が増大し中空糸膜束の部分固着の発生が増大するので好ましくない。逆に、20質量%を超えた時点でマイクロ波照射を中止すると最終含水率に乾燥するまでのトータルの乾燥時間が長くなるので好ましくない。
本発明における上記のマイクロ波照射終了後の遠赤外線照射での乾燥をもって全乾燥が終了される。該乾燥終了後の中空糸膜束中の含水率は、1〜7質量%であることが好ましい。また、該乾燥中空糸膜束を長手方向に10分割し測定した時の各々の含水率変動率が10%以内であることが好ましい。これらの含水率の乾燥中空糸膜束を得ることにより初めて前記した本発明の中空糸膜束が保持しなければならない特性が付与できる。また、含水率が10質量%を超えた場合は、保存時菌が増殖しやすくなったり、中空糸膜の自重により糸潰れが発生したり、モジュール組み立て時に接着剤の接着障害が発生する可能性があり好ましくない。
本発明における中空糸膜束の含水率は、以下の式により計算した。
含水率(質量%)=100×(Ww−Wd)/Wd
ここで、Wwは乾燥前の中空糸膜重量(g)、Wdは、120℃の乾熱オーブンで2時間乾燥後(絶乾後)の中空糸膜重量(g)である。ここで、Wwは1〜2gの範囲内とすることで、2時間後に絶乾状態(これ以上重量変化がない状態)にすることができる。
一方、中空糸膜束中の含水率が10〜20質量%になるまではマイクロ波照射により乾燥するのが好ましい。マイクロ波乾燥は、効率的な乾燥ができるので中空糸膜束の乾燥方法としても有用な方法であることが知られているが、最終含水率である1〜7質量%になるまでマイクロ波照射による乾燥を続けると、中空糸膜中の長手方向でのポリビニルピロリドンの劣化度の変動や含水率の変動が増大し、前述した本発明の目的とした特性の中空糸膜束が得られなくなるので好ましくない。中空糸膜束中の含水率が低い状態でマイクロ波を照射することにより中空糸膜の長手方向のポリビニルピロリドンの劣化や含水率の変動が増大する原因は明確化できていないが、マイクロ波による乾燥がマイクロ波により水分子が直接励起されることで行われることと中空糸膜中の水分はポリビニルピロリドンとの親和性が強く、ポリビニルピロリドンの存在する部分に局在化されていることが寄与しているものと推察される。すなわち、この水の局在化は含水率の低下に従い増大し、水の局在化した部分の発熱が増大し、中空糸膜の温度や乾燥度合いの不均一化につながり、かつ水分子の周辺にポリビニルピロリドンが存在するために劣化が促進されるものと推察される。一方、遠赤外線乾燥等はマイクロ波に比べて励起のエネルギーが低いので、上記課題の発生が抑制されるものと考えられる。
上記の含水率管理方法は限定されない。赤外線吸収法等によりオンライン計測をしても良いし、サンプリングによるオフライン計測で行っても良い。
本発明においては、上述のごとく乾燥工程においてポリビニルピロリドンの酸化劣化を抑制することが重要である。従って、上記のマイクロ波照射や遠赤外線照射を窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で実施するのが好ましいが、経済的に不利である。一方、減圧下でマイクロ波乾燥や遠赤外線乾燥を行い、酸化劣化を抑制する方法は、乾燥効率の向上にもつながり経済的であり推奨される。両乾燥の両方ともに減圧下で行うのが最も好ましい実施態様である。例えば、マイクロ波乾燥の乾燥条件としては、20KPa以下の減圧下で出力0.1〜100kWのマイクロ波を照射することが好ましい実施態様である。また、該マイクロ波の周波数は1,000〜5,000MHzであり、乾燥処理中の中空糸膜束の最高到達温度が90℃以下であることが好ましい実施態様である。減圧という手段を併設すれば、それだけで水分の乾燥が促進されるので、マイクロ波の照射の出力を低く抑え、照射時間も短縮できる利点もあるが、温度の上昇も比較的低くすることができるので、全体的には中空糸膜束の性能低下に与える影響が少ない。さらに、減圧という手段を伴う乾燥は、乾燥温度を比較的下げることができるという利点があり、特に親水性高分子の劣化分解を著しく抑えることができるという有意な点がある。適正な乾燥温度は20〜80℃で十分足りるということになる。より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜50℃、よりさらに好ましくは30〜40℃である。
減圧を伴うということは、中空糸膜束の中心部および外周部に均等に低圧が作用することになり、水分の蒸発が均一に促進されることになり、中空糸膜の乾燥が均一になされるために、乾燥の不均一に起因する中空糸膜束の障害を是正することになる。それに、マイクロ波による加熱も、中空糸膜束の中心および外周全体にほぼ等しく作用することになるから、均一な加熱において、相乗的に機能することになり、中空糸膜束の乾燥において、特有の意義があることになる。減圧度についてはマイクロ波の出力、中空糸膜束の有する総水分含量および中空糸膜束の本数により適宜設定すれば良いが、乾燥中の中空糸膜束の温度上昇を防ぐため減圧度は20kPa以下、より好ましくは15kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下で行う。20kPa以上では水分蒸発効率が低下するばかりでなく、中空糸膜束を形成するポリマーの温度が上昇してしまい劣下してしまう可能性がある。また、減圧度は高い方が温度上昇抑制と乾燥効率を高める意味で好ましいが、装置の密閉度を維持するためにかかるコストが高くなるので0.1kPa以上が好ましい。より好ましくは0.25kPa以上、さらに好ましくは0.4kPa以上である。
乾燥時間短縮を考慮するとマイクロ波の出力は高い方が好ましいが、例えばポリビニルピロリドンを含有する中空糸膜束では過乾燥や過加熱によるポリビニルピロリドンの劣下、分解が起こったり、使用時の濡れ性低下が起こるなどの問題があるため、出力はあまり上げないのが好ましい。また0.1kW未満の出力でも中空糸膜束を乾燥することは可能であるが、乾燥時間が伸びることによる処理量低下の問題が起こる可能性がある。減圧度とマイクロ波出力の組合せの最適値は、中空糸膜束の保有水分量および中空糸膜束の処理本数により異なるものであって、試行錯誤のうえ適宜設定値を求めるのが好ましい。
例えば、本発明の乾燥条件を実施する一応の目安として、中空糸膜束1本当たり50gの水分を有する中空糸膜束を20本乾燥した場合、総水分含量は50g×20本=1,000gとなり、この時のマイクロ波の出力は1.5kW、減圧度は5kPaが適当である。
より好ましいマイクロ波出力は0.1〜80kW、さらに好ましいマイクロ波出力は0.1〜60kWである。マイクロ波の出力は、例えば、中空糸膜の総数と総含水量により決まるが、いきなり高出力のマイクロ波を照射すると、短時間で乾燥が終了するが、中空糸膜が部分的に変性することがあり、縮れのような変形を起こすことがある。マイクロ波を使用して乾燥するという場合に、例えば、中空糸膜に保水剤のようなものを用いた場合に、高出力やマイクロ波を用いて過激に乾燥することは保水剤の飛散による消失の原因にもなる。それに特に減圧下の条件をともなうと中空糸膜への影響を考えれば、従来においては減圧下でマイクロ波を照射することは意図していなかった。本発明の減圧下でマイクロ波を照射するということは、水性液体の蒸発が比較的温度が低い状態においても活発になるため、高出力マイクロ波および高温によるポリビニルピロリドンの劣化や中空糸膜の変形等の中空糸膜の損傷を防ぐという二重の効果を奏することになる。
本発明は、減圧下におけるマイクロ波により乾燥をするという、マイクロ波の出力を一定にした一段乾燥を可能としているが、別の実施態様として、乾燥の進行に応じて、マイクロ波の出力を順次段階的に下げる、いわゆる多段乾燥を好ましい態様として包含している。そこで、多段乾燥の意義を説明すると次のようになる。減圧下で、しかも30〜90℃程度の比較的低い温度で、マイクロ波で乾燥する場合に、中空糸膜束の乾燥の進み具合に合わせて、マイクロ波の出力を順次下げていくという多段乾燥方法が優れている。乾燥をする中空糸膜の総量、工業的に許容できる適正な乾燥時間などを考慮して、減圧の程度、温度、マイクロ波の出力および照射時間を決めればよい。多段乾燥は、例えば、2〜6段という任意に何段も可能であるが、生産性を考慮して工業的に適正と許容できるのは、2〜3段乾燥にするのが適当である。中空糸膜束に含まれる水分の総量にもよるが、比較的多い場合に、多段乾燥は、例えば、90℃以下の温度における、5〜20kPa程度の減圧下で、一段目は30〜100kWの範囲で、二段目は10〜30kWの範囲で、三段目は0.1〜10kWというように、マイクロ波照射時間を加味して決めることができる。マイクロ波の出力を、例えば、高い部分で90kW、低い部分で0.1kWのように、出力の較差が大きい場合には、その出力を下げる段数を例えば4〜8段と多くすればよい。本発明の場合に、減圧というマイクロ波照射に技術的な配慮をしているから、比較的マイクロ波の出力を下げた状態でもできるという有利な点がある。例えば、一段目は10〜20kWのマイクロ波により10〜100分程度、二段目は3〜10kW程度で5〜80分程度、三段目は0.1〜3kW程度で1〜60分程度という段階で乾燥する。各段のマイクロ波の出力および照射時間は、中空糸膜に含まれる水分の総量の減り具合に連動して下げていくことが好ましい。この乾燥方法は、中空糸膜束に非常に温和な乾燥方法であり、前掲の特許文献8〜10の先行技術においては期待できないことから、本発明の作用効果を有意にしている。
別の態様を説明すると、中空糸膜束の水分総量が比較的少ないという、いわゆる含水率が400質量%以下の場合には、12kW以下の低出力マイクロ波による照射が優れている場合がある。例えば、中空糸膜束総量の水分量が1〜7kg程度と比較的少量の場合には、80℃以下、好ましくは60℃以下の温度における、3〜10kPa程度の減圧下において、12kW以下の出力の、例えば1〜5kW程度のマイクロ波で10〜240分、0.5〜1kW未満のマイクロ波で3〜240分程度、0.1〜0.5kW未満のマイクロ波で1〜240分程度照射するという、乾燥の程度に応じてマイク口波の照射出力および照射時間を調整すれば乾燥が均一に行われる。減圧度は各段において、一応0.1〜20kPaという条件を設定しているが、中空糸膜の水分含量の比較的多い一段目を例えば0.1〜5kPaと減圧を高め、マイクロ波の出力を10〜30kWと高める、ニ段目、三段目を5〜20kPaの減圧下で0.1〜5kWによる一段よりやや高い圧力下でマイクロ波を照射するという、いわゆる各段の減圧度を状況に応じて適正に調整して変えることなどは、中空糸膜束の水分総量および含水率の低下の推移を考慮して任意に設定することが可能である。各段において、減圧度を変える操作は、本発明の減圧下でマイクロ波を照射するという意義をさらに大きくする。勿論、マイクロ波照射装置内におけるマイクロ波の均一な照射および排気には常時配慮する必要がある。
乾燥中の中空糸膜束の最高到達温度は、不可逆性のサーモラベルを中空糸膜束拘束体側面に貼り付けて乾燥を行い、乾燥後に取り出し表示を確認することで測定することができる。この時、乾燥中の中空糸膜束の最高到達温度は90℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下に抑える。さらに好ましくは70℃以下である。最高到達温度が90℃以上になると、膜構造が変化しやすくなり性能低下や酸化劣下を起こしてしまう場合がある。特にポリビニルピロリドンを含有する中空糸膜束では、熱によるポリビニルピロリドンの分解等が起こりやすいので温度上昇をできるだけ防ぐ必要がある。減圧度とマイクロ波出力の最適化と断続的に照射することで温度上昇を防ぐことができる。また、乾燥温度は低い方が好ましいが、減圧度の維持コスト、乾燥時間短縮の面より30℃以上が好ましい。
マイクロ波の照射周波数は、中空糸膜束への照射斑の抑制や、細孔内の水を細孔より押出す効果などを考慮すると1,000〜5,000MHzが好ましい。より好ましくは1,500〜4,000MHz、さらに好ましくは2,000〜3,000MHzである。
該マイクロ波照射による乾燥は中空糸膜束を均一に加熱し乾燥することが重要である。上記したマイクロ波乾燥においては、マイクロ波の発生時に付随発生する反射波による不均一加熱が発生するので、該反射波による不均一加熱を低減する手段を取る事が重要である。該方策は限定されず任意であるが、例えば、特開2000−340356号公報において開示されているオーブン中に反射板を設けて反射波を反射させ加熱の均一化を行う方法が好ましい実施態様の一つである。
一方、マイクロ波乾燥終了後に行う遠赤外線照射による乾燥の場合は、マイクロ波乾燥の場合と異なり、減圧下で照射しても放電現象は発生しないので、マイクロ波乾燥の場合より減圧度を高めて行うことができる。乾燥効率の点より2kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましい。遠赤外線照射の照射エネルギーは。オーブンの中心部に設けた熱電対で検出される温度で80℃以下になるように制御するのが好ましい。70℃以下で制御するのがより好ましい。
前記の遠赤外線照射はマイクロ波照射終了後に照射を開始してもよいし、マイクロ波照射時にも照射し、マイクロ波乾燥と遠赤外線乾燥とを同時進行で実施してもよい。マイクロ波と遠赤外線照射を同時に行うことにより、マイクロ波照射により励起され中空糸膜表面に移動してきた水の蒸発が遠赤外線照射により加速され乾燥効率向上につながる。また、この表面水分の効率的な蒸発により、表面水分により誘導されるポリビニルピロリドンの中空糸膜表面の濃度変動が抑制され、部分固着発生抑制につなげられるので好ましい。上述のごとくマイクロ波乾燥についても減圧下で実施するのが好ましいので、減圧下でマイクロ波乾燥と遠赤外線乾燥とを同時進行で実施して、前記の含水率になった時点でマイクロ波照射を中止し、減圧状態を維持したまま遠赤外線照射を続行し、さらなる乾燥を続けることにより乾燥を終了させる方法が好ましい。このおりに、マイクロ波の照射終了後に系の減圧度を下げて、コンディショニングを行った後に再度減圧度を上げて遠赤外線照射を開始してもよい。従って、本発明においては、加熱オーブン内に遠赤外線ヒーターが取り付けられており、かつ加熱オーブンが減圧にできる排気系が取り付けられたマイクロ波乾燥機を用いて乾燥することが好ましい実施態様である。
本発明において、遠赤外線の照射波長は1〜30μmであることが好ましい。水や有機物は波長3〜12μmの遠赤外線の吸収率が高いため、遠赤外線の波長が短すぎても長すぎても、被乾燥物の温度が上がり難くなるため、乾燥時間が延びるなど乾燥にかかるコストが増大することがある。したがって、照射する遠赤外線の波長は1.5〜26μmがより好ましく、2〜22μmがさらに好ましく、2.5〜18μmがよりさらに好ましい。
本発明において、遠赤外線を照射するための放射媒体としては、表面に酸化金属の被膜を有するステンレス媒体を使用するのが好ましい実施態様である。例えば、特開平10−5265号に記載されているようなオーステナイト系ステンレス鋼粉体にAl、Fe、TiO、CaO、MgO、KO、NaO等の酸化金属をコーティングした遠赤外線放射体を用いるのが、安価で効率的に遠赤外線を取り出すことができるため、より好ましい実施態様である。
一方、マイクロ波乾燥終了後に行う遠赤外線照射による乾燥の場合は、マイクロ波乾燥の場合と異なり、減圧下で照射しても放電現象は発生しないので、マイクロ波乾燥の場合より減圧度を高めて行うことができる。乾燥効率の点より5kPa以下が好ましく、4kPa以下がより好ましく、3kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下がよりさらに好ましい。遠赤外線照射の照射エネルギーは、オーブンの中心部に設けた熱電対で検出される温度で80℃以下になるように制御するのが好ましい。70℃以下で制御するのがより好ましい。
前記の遠赤外線照射はマイクロ波照射終了後に照射を開始してもよいし、マイクロ波照射時にも照射し、マイクロ波乾燥と遠赤外線乾燥とを同時進行で実施してもよい。マイクロ波と遠赤外線照射を同時に行うことにより、マイクロ波照射により励起され中空糸膜表面に移動してきた水の蒸発が遠赤外線照射により加速されるため乾燥効率向上につながる。また、この表面水分の効率的な蒸発により、表面水分により誘導されるポリビニルピロリドンの中空糸膜表面の濃度変動が抑制され、部分固着発生抑制につなげられるので好ましい。上述のごとくマイクロ波乾燥についても減圧下で実施するのが好ましいので、減圧下でマイクロ波乾燥と遠赤外線乾燥とを同時進行で実施して、前記の含水率になった時点でマイクロ波照射を中止し、減圧状態を維持したまま遠赤外線照射を続行し、さらなる乾燥を続ける方法が好ましい。この折に、マイクロ波の照射終了後に系の減圧度を下げて、コンディショニングを行った後に、再度減圧度を上げて遠赤外線照射を開始してもよい。従って、本発明においては、加熱オーブン内に遠赤外線ヒーターが取り付けられており、かつ加熱オーブン内を減圧(真空)にできる排気系が取り付けられたマイクロ波乾燥機を用いて乾燥することが好ましい実施態様である。
本発明においては、乾燥終了後に乾燥系内を常圧に戻す折に窒素ガス等の不活性ガスを用いることが好ましい実施態様である。乾燥終了直後は、中空糸膜束の温度が高いため、乾燥庫内を常圧に戻す際、空気等の酸素を含む気体を送入すると、ポリビニルピロリドンを含有する中空糸膜の場合、ポリビニルピロリドンが酸素と熱の影響により酸化劣化を受けることがある。したがって、乾燥終了後に乾燥庫内を常圧に戻す際に、不活性ガスを送入することにより中空糸膜束中のポリビニルピロリドンの酸化劣化が抑制される。
中空糸膜束の乾燥は、マイクロ波、遠赤外線を使用して、時間的に無制限に乾燥に供することが品質に良い影響を与えることにはならない。中空糸膜束を構成する疎水性高分子の、又は親水性高分子材料の熱劣化や、酸素、水、蒸気などの環境劣化の影響も考えられるからである。したがって、工業的な生産ということからすれば、乾燥時間にも自ずと許容される適正な時間を考慮する必要がある。本発明者等は、マイクロ波、遠赤外線という比較的過酷な乾燥条件に供する中空糸膜の品質を保護するという観点から、さらに工業的生産性という観点から考えれば、乾燥開始から終了するまでの乾燥時間は3時間以内が好ましい。より好ましくは2.5時間以内、さらに好ましくは2時間以内である。
中空糸膜束の適正な乾燥時間とは、マイクロ波による乾燥領域時間に遠赤外線による乾燥領域を加算したもの、勿論、この場合に両者を併用した乾燥手段も包含されることもありうるが、本発明者らは、マイクロ波による乾燥領域時間と遠赤外線による乾燥領域との切り換え状態がいかなる技術条件に最も依存しているかという挙動を解析したものである。図1に基づいて説明すると、実線の1、2で囲まれる領域に収まる範囲で乾燥すれば、比較的品質の良好な製品が容易に得られるということである。たとえば、図1の破線(1)、(2)の領域になれば、中空糸膜束の品質に少なからず影響が出るということである。これは、図1に示す統計学的な解釈を参酌すれば容易に理解できる。
このような解析を注視すると、比較的含水率の高い中空糸膜を乾燥する手法としては、マイクロ波による乾燥が、この場合に減圧下のマイクロ波乾燥が最適であり、それに適しているが、コンディショニングを含む遠赤外線による乾燥は、それに付随させることが適正な乾燥であるということもできる。この切り換えについて、本発明者等が検討した結果、マイクロ波による乾燥により、中空糸膜束の含水率が5〜30質量%、好ましくは8〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%に達した段階で切り換えるのが最も適しているという事実を知見したものである。
例えば、中空糸膜束の含水率が60〜400質量%という、比較的高い場合には、マイクロ波による、場合により減圧を付加して強制的に所定の含水率にまで下げて、それから、遠赤外線を併用する手法が最も適しているということを本発明者等は知見したものである。この適正な含水率10〜20質量%という範囲は、ポリマー材料、構造等により、若干の違いがあるが、その範囲であれば汎用の中空糸膜束の乾燥に適用できるということができる。
この乾燥切り換えの10〜20質量%の範囲を、中空糸膜束の品質に影響する事例を解析したものが、図2である。実施例および比較例に基づいて、何点かの事例をプロットしたものである。この傾向は、中空糸膜束の含水率10〜20質量%を境界にして、中空糸膜束のバラツキに影響しているということが容易に理解できる。マイクロ波に遠赤外線を併用するという着想は、本発明者等の知見に基づくものであるが、その切り換えの条件として、中空糸膜束の含水率10〜20質量%という範囲の設定に関しても、本発明者等の知見に基づくものであり、新規な着想である。
本発明における中空糸膜束は、前述のごとく過酸化水素溶出量が抑制されていることが好ましい。本特性を付与することに関しては、上述の乾燥方法や乾燥条件を選ぶことが重要であるが、過酸化水素の生成の原因物質であるポリビニルピロリドンの品質や取り扱い等も重要な要因であり配慮が必要である。例えば、ポリビニルピロリドンとして過酸化水素含有率が300ppm以下のものを用いて製造することが好ましい。原料として用いるポリビニルピロリドン中の該過酸化水素含有率を300ppm以下にすることで、製膜後の中空糸膜束の過酸化水素溶出量を5ppm以下に抑えることができ、本発明の中空糸膜束の品質安定化が達成できるので好ましい。したがって、原料として用いるポリビニルピロリドン中の過酸化水素含有率は250ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましく、150ppm以下がよりさらに好ましい。
該原料として用いるポリビニルピロリドン中に含有される過酸化水素は、ポリビニルピロリドンの酸化劣化の過程で発生すると推定される。従って、過酸化水素含有率を300ppm以下にするには、ポリビニルピロリドンの製造工程でポリビニルピロリドンの酸化劣化を抑える方策をとることが有効である。また、ポリビニルピロリドンの搬送や保存時の劣化を抑える手段を取る事も有効であり推奨される。例えば、アルミ箔ラミネート袋を用いて、遮光し、かつ窒素ガス等の不活性ガスで封入するとか、脱酸素剤を併せて封入し保存することが好ましい実施態様である。また、該包装体を開封し小分けする場合の計量や仕込みは、不活性ガス置換をして行い、かつその保存についても上記の対策を取るのが好ましい。また、中空糸膜束の製造工程においても、原料供給系での供給タンク等を不活性ガス置換する等の手段をとることも好ましい実施態様として推奨される。また、再結晶法や抽出法で過酸化水素量を低下させる方法をとることも排除されない。
また、ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドン、溶媒からなる紡糸溶液を撹拌、溶解する際、ポリビニルピロリドン中に過酸化水素が含まれていると、溶解タンク内に存在する酸素の影響および溶解時の加熱の影響により、過酸化水素が爆発的に増加することがわかった。したがって、溶解タンクに原料を投入する際には、予め不活性ガスにて置換された溶解タンク内に原料を投入するのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが好適に用いられる。また、溶媒、場合によっては非溶媒を添加することもあるが、これら溶媒、非溶媒中に溶存している酸素を不活性ガスで置換して用いるのも好適な実施態様である。
該過酸化水素溶出量を上記の規制された範囲に制御する方法としては、例えば、前述したごとく原料として用いるポリビニルピロリドン中の過酸化水素量を300ppm以下にすることが有効な方法であるが、該過酸化水素は上記した中空糸膜の製造過程でも生成するので、該中空糸膜の製造条件を厳密に制御する必要がある。特に、該中空糸膜を製造する際の乾燥工程での生成の寄与が大きいので、乾燥条件の最適化が重要である。特に、この乾燥条件の最適化は、過酸化水素の生成抑制に大きく寄与するので重要である。さらに、該乾燥条件の最適化は、中空糸膜の長手方向の溶出量変動を小さくすることに関して有効な手段となる。
また、過酸化水素の発生を抑制する他の方法として、製膜溶液を溶解する際、短時間に溶解することも重要な要件である。そのためには、通常、溶解温度を高くすることおよび/または撹拌速度を上げればよい。しかしながら、そうすると温度および撹拌線速度、剪断力の影響によりポリビニルピロリドンの劣化・分解が進行してしまう。事実、発明者らの検討によれば、製膜溶液中のポリビニルピロリドンの分子量は溶解温度の上昇に従い、分子量のピークトップが分解方向に移動(低分子側にシフト)したり、または低分子側に分解物と思われるショルダーが現れる現象が認められた。以上より原料の溶解速度を向上させる目的で温度を上昇させることは、ポリビニルピロリドンの劣化分解を促進し、ひいては選択透過性分離膜中にポリビニルピロリドンの分解物をブレンドしてしまうことから、例えば、得られた中空糸膜を血液浄化に使用する場合、血液中に分解物が溶出するなど、製品の品質安全上、優れたものとはならなかった。そこで、ポリビニルピロリドンの分解を抑制する目的で低温で原料を混合することを試みた。低温溶解とはいっても氷点下となるような極端な条件にするとランニングコストもかかるため、通常5℃以上70℃以下が好ましい。60℃以下がより好ましい。しかし、単純に溶解温度を下げると溶解時間の長時間化によるポリビニルピロリドン劣化分解、操業性の低下や設備の大型化を招くことになり工業的に実施する上では問題がある。
低温で時間をかけずに溶解するための溶解条件について検討を行った結果、溶解に先立ち紡糸溶液を構成する成分を混練した後に溶解させることが好ましいことを見出し本発明に到達した。該混練はポリスルホン系高分子、ポリビニルピロリドンおよび溶媒等の構成成分を一括して混練しても良いし、ポリビニルピロリドンとポリスルホン系高分子とを別個に混練しても良い。前述のごとくポリビニルピロリドンは酸素との接触により劣化が促進され過酸化水素の発生につながるので、該混練時においても不活性ガスで置換した雰囲気で行う等、酸素との接触を抑制する配慮が必要であり別ラインで行うのが好ましい。混練はポリビニルピロリドンと溶媒のみとしてポリスルホン系高分子は予備混練をせずに直接溶解タンクに供給する方法も本発明の範ちゅうに含まれる。
該混練は溶解タンクと別に混練ラインを設けて実施し混練したものを溶解タンクに供給してもよいし、混練機能を有する溶解タンクで混練と溶解の両方を実施しても良い。前者の別個の装置で実施する場合の、混練装置の種類や形式は問わない。回分式、連続式のいずれであっても構わない。スタティックミキサー等のスタティックな方法であっても良いし、ニーダーや撹拌式混練機等のダイナミックな方法であっても良い。混練の効率より後者が好ましい。後者の場合の混練方法も限定なく、ピンタイプ、スクリュータイプ、撹拌器タイプ等いずれの形式でもよい。スクリュータイプが好ましい。スクリューの形状や回転数も混練効率と発熱とのバランスより適宜選択すれば良い。一方、混練機能を有する溶解タンクを用いる場合の溶解タンクの形式も限定されないが、例えば、2本の枠型ブレードが自転、公転するいわゆるプラネタリー運動により混練効果を発現する形式の混練溶解機が推奨される。例えば、井上製作所社製のプラネタリュームミキサーやトリミックス等が本方式に該当する。
混練時のポリビニルピロリドンやポリスルホン系高分子等の樹脂成分と溶媒との比率も限定されない。樹脂/溶媒の質量比で0.1〜3が好ましい。0.5〜2がより好ましい。
前述のごとくポリビニルピロリドンの劣化を抑制し、かつ効率的な溶解を行うことが本発明の技術ポイントである。従って、少なくともポリビニルピロリドンが存在する系は窒素雰囲気下、70℃以下の低温で混練および溶解することが好ましい実施態様である。ポリビニルピロリドンとポリスルホン系高分子を別ラインで混練する場合にポリスルホン系高分子の混練ラインに本要件を適用してもよい。混練や溶解の効率と発熱とは二律背反現象である。該二律背反をできるだけ回避した装置や条件の選択が本発明の重要な要素となる。そういう意味で混練機構における冷却方法が重要であり配慮が必要である。
引き続き前記方法で混練されたものの溶解を行う。該溶解方法も限定されないが、例えば、撹拌式の溶解装置による溶解方法が適用できる。低温・短時間(3時間以内)で溶解するためには、フルード数(Fr=nd/g)が0.7以上1.3以下、撹拌レイノルズ数(Re=ndρ/μ)が50以上250以下であることが好ましい。ここでnは翼の回転数(rps)、ρは密度(Kg/m)、μは粘度(Pa・s)、gは重力加速度(=9.8m/s)、dは撹拌翼径(m)である。フルード数が大きすぎると、慣性力が強くなるためタンク内で飛散した原料が壁や天井に付着し、所期の製膜溶液組成が得られないことがある。したがって、フルード数は1.25以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましく、1.15以下がよりさらに好ましい。また、フルード数が小さすぎると、慣性力が弱まるために原料の分散性が低下し、特にポリビニルピロリドンが継粉になり、それ以上溶解することが困難となったり、均一溶解に長時間を要することがある。したがって、フルード数は0.75以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。
本願発明における製膜溶液はいわゆる低粘性流体であるため、撹拌レイノルズ数が大きすぎると、撹拌時、製膜溶液中への気泡のかみこみによる脱泡時間の長時間化や脱泡不足が起こるなどの問題が生ずることがある。そのため、撹拌レイノルズ数はより好ましくは240以下、さらに好ましくは230以下、よりさらに好ましくは220以下である。また、撹拌レイノルズ数が小さすぎると、撹拌力が小さくなるため溶解の不均一化が起こりやすくなることがある。したがって、撹拌レイノルズ数は、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましく、55以上がよりさらに好ましく、60以上が特に好ましい。さらに、このような紡糸溶液で中空糸膜を製膜すると気泡による曳糸性の低下による操業性の低下や品質面でも中空糸膜への気泡の噛み込みによりその部位が欠陥となり、膜の機密性やバースト圧の低下などを引き起こして問題となることがわかった。紡糸溶液の脱泡は効果的な対処策だが、紡糸溶液の粘度コントロールや溶剤の蒸発による紡糸溶液の組成変化を伴うこともありうるので、行う場合には慎重な対応が必要となる。
さらに、ポリビニルピロリドンは空気中の酸素の影響により酸化分解を起こす傾向にあることから、紡糸溶液の溶解は不活性気体封入下で行うのが好ましい。不活性気体としては、窒素、アルゴンなどが上げられるが、窒素を用いるのが好ましい。このとき、溶解タンク内の残存酸素濃度は3%以下であることが好ましい。窒素封入圧力を高めてやれば溶解時間短縮が望めるが、高圧にするには設備費用が嵩む点と、作業安全性の面から大気圧以上2kgf/cm以下が好ましい。
その他、本願発明に用いるような低粘性製膜溶液の溶解に用いられる撹拌翼形状としては、ディスクタービン型、パドル型、湾曲羽根ファンタービン型、矢羽根タービン型などの放射流型翼、プロペラ型、傾斜パドル型、ファウドラー型などの軸流型翼が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上のような低温溶解方法を用いることにより、親水性高分子の劣化分解が抑制された安全性の高い中空糸膜を得ることが可能となる。さらに付言すれば、製膜には原料溶解後の滞留時間が24時間以内の紡糸溶液を使用することが好ましい。なぜなら製膜溶液が保温されている間に熱エネルギーを蓄積し、原料劣化を起こす傾向が認められたためである。
本発明における中空糸膜束のその他の特性は限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドンの中空糸膜束の外表面における含有率が25〜50質量%であるのが好ましい。27〜45質量%がより好ましく、30〜45質量%がさらに好ましい。外表面のポリビニルピロリドンの含有率が25質量%未満では膜全体、特に膜内表面のポリビニルピロリドンの含有率が低くなりすぎ、血液適合性や透過性能の低下が起こる可能性がある。また本発明の乾燥方法を適用しても、プライミング性が低下することがある。血液透析器を血液浄化療法に使用する時には、生理食塩水などを血液透析器の中空糸膜束内外部に流すことにより、湿潤化および泡抜きを行う必要がある。このプライミング操作において、中空糸膜束の真円度や端部の潰れ、変形、膜素材の親水性などが、プライミング性に影響を与えると考えられるが、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなる中空糸膜束であって乾燥膜モジュールの場合には、中空糸膜束の親疎水バランスがプライミング性に大きく影響する。外表面のポリビニルピロリドンの存在割合が50質量%を超すと透析液に含まれるエンドトキシン(内毒素)が血液側へ浸入する可能性が高まり、発熱等の副作用を引き起こすことに繋がるとか、膜を乾燥させた時に膜外表面に存在するポリビニルピロリドンが介在し中空糸膜束同士が固着し、モジュール組み立て性が悪化する等の課題を引き起こす可能性がある。
上記の特性を付与する方法として、例えば、ポリスルホン系高分子に対するポリビニルピロリドンの構成割合を前記した範囲にしたり、中空糸膜束の製膜条件を最適化する等により達成できる。また、製膜された中空糸膜束を洗浄することも有効な方法である。製膜条件としては、ノズル出口のエアギャップ部の湿度調整、延伸条件、凝固浴の温度、凝固液中の溶媒と非溶媒との組成比等の最適化が、また、洗浄方法としては、温水洗浄、アルコール洗浄および遠心洗浄等が有効である。該方法の中で、製膜条件としては、エアギャップ部の湿度および外部凝固液中の溶媒と非溶媒との組成比の最適化が、洗浄方法としてはアルコール洗浄が特に有効である。
内部凝固液としては、0〜80質量%のジメチルアセトアミド(DMAc)水溶液が好ましい。より好ましくは、15〜70質量%、さらに好ましくは25〜60質量%、よりさらに好ましくは30〜50質量%である。内部凝固液濃度が低すぎると、血液接触面のち密層が厚くなるため、溶質透過性が低下する可能性がある。また内部凝固液濃度が高すぎると、ち密層の形成が不完全になりやすく、分画特性が低下する可能性がある。外部凝固液は0〜50質量%のDMAc水溶液を使用するのが好ましい。外部凝固液濃度が高すぎる場合は、外表面開孔率および外表面平均孔面積が大きくなりすぎ、透析使用時エンドトキシンの血液側への逆流入の増大や、バースト圧の低下を起こす可能性がある。したがって、外部凝固液濃度は、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下である。また、外部凝固液濃度が低すぎる場合には、紡糸溶液から持ち込まれる溶媒を希釈するために大量の水を使用する必要があり、また廃液処理のためのコストが増大する。そのため、外部凝固液濃度の下限はより好ましくは5質量%以上である。
上記中空糸膜束の製造において、完全に中空糸膜束構造が固定される以前に実質的に延伸をかけないことが好ましい。実質的に延伸をかけないとは、ノズルから吐出された紡糸溶液に弛みや過度の緊張が生じないように紡糸工程中のローラー速度をコントロールすることを意味する。吐出線速度/凝固浴第一ローラー速度比(ドラフト比)は0.7〜1.8が好ましい範囲である。前記比が0.7未満では、走行する中空糸膜束に弛みが生じ生産性の低下につながることがあるので、ドラフト比は0.8以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましく、0.95以上がよりさらに好ましい。1.8を超える場合には中空糸膜束のち密層が裂けるなど膜構造が破壊されることがある。そのため、ドラフト比は、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下、よりさらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.4以下である。ドラフト比をこの範囲に調整することにより細孔の変形や破壊を防ぐことができ、膜孔への血中タンパクの目詰まりを防ぎ経時的な性能安定性やシャープな分画特性を発現することが可能となる。
水洗浴を通過した中空糸膜束は、湿潤状態のまま綛に巻き取り、3,000〜20,000本の束にする。ついで、得られた中空糸膜束を洗浄し、過剰の溶媒、ポリビニルピロリドンを除去する。中空糸膜束の洗浄方法として、本発明では、70〜130℃の熱水、または室温〜50℃、10〜40vol%のエタノールまたはイソプロパノール水溶液に中空糸膜束を浸漬して処理するのが好ましい。
(1)熱水洗浄の場合は、中空糸膜束を過剰のRO水に浸漬し70〜90℃で15〜60分処理した後、中空糸膜束を取り出し遠心脱水を行う。この操作をRO水を更新しながら3、4回繰り返して洗浄処理を行う。
(2)加圧容器内の過剰のRO水に浸漬した中空糸膜束を121℃で2時間程度処理する方法をとることもできる。
(3)エタノールまたはイソプロパノール水溶液を使用する場合も、(1)と同様の操作を繰り返すのが好ましい。
(4)遠心洗浄器に中空糸膜束を放射状に配列し、回転中心から40℃〜90℃の洗浄水をシャワー状に吹きつけながら30分〜5時間遠心洗浄することも好ましい洗浄方法である。
前記洗浄方法を2つ以上組み合わせて行ってもよい。いずれの方法においても、処理温度が低すぎる場合には、洗浄回数を増やす等が必要になりコストアップに繋がることがある。また、処理温度が高すぎるとポリビニルピロリドンの分解が加速し、逆に洗浄効率が低下することがある。上記洗浄を行うことにより、外表面ポリビニルピロリドンの含有率の適正化を行い、固着抑制や溶出物の量を減ずることが可能となる。
本発明においては、親水性高分子の中空糸膜の外表面における含有率が25〜50質量%であるのが好ましい。外表面の親水性高分子の含有率が25質量%未満では膜全体、特に膜内表面の親水性高分子の存在割合が低くなりすぎ、血液適合性や透過性能の低下が起こる可能性がある。また乾燥膜の場合、濡れ性が低下することがある。血液透析器を血液浄化療法に使用する時には、生理食塩水などを血液透析器の中空糸膜内外部に流すことにより、湿潤化および泡抜きを行う必要がある。このプライミング操作において、中空糸膜の真円度や端部の潰れ、変形、膜素材の親水性などが、プライミング性に影響を与えると考えられるが、疎水性高分子と親水性高分子からなる中空糸膜であって乾燥膜モジュールの場合には、中空糸膜の親疎水バランスがプライミング性に大きく影響する。したがって、より好ましい親水性高分子の含有率は27質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。外表面の親水性高分子の含有率が50質量%を超すと、透析液に含まれるエンドトキシン(内毒素)が血液側へ浸入する可能性が高まり、発熱等の副作用を引き起こすことにつながるとか、膜を乾燥させた時に膜外表面に存在する親水性高分子が介在し中空糸膜同士がくっつき(固着し)、モジュール組み立て性が悪化する等の課題を引き起こす可能性がある。したがって、より好ましい含有率は47質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
なお、上記した親水性高分子の中空糸膜表面最表層の含有率は、後述のごとくESCA法で測定し算出したものであり、中空糸膜表面の最表層部分(表層からの深さ数Å〜数十Å)の存在割合の絶対値を求めたものである。通常は、ESCA法(最表層)では血液接触表面より深さが10nm(100Å)程度までの親水性高分子(PVP)含量を測定可能である。
また、本発明においては、中空糸膜外表面の開孔率が8〜25%であることが前記した特性を付与するために有効であり、好ましい実施態様である。開孔率が8%未満の場合には、透水率が低下する可能性がある。また、膜を乾燥させた時に膜外表面に存在する親水性高分子が介在し中空糸膜同士が固着し、モジュール組み立て性が悪化する等の課題を引き起こす。そのため、開孔率は9%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。逆に、開孔率が25%を超える場合には、バースト圧が低下したり、血液透析使用時、透析液側から血液側へのエンドトキシンが浸入することがある。そのため、開孔率は23%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましく、17%以下がよりさらに好ましく、特に好ましくは15%以下である。
中空糸膜の膜厚は10μm以上60μm以下が好ましい。60μmを超えると、透水性は高くても、移動速度の遅い中〜高分子量物質の透過性が低下することがある。膜厚は薄い方が物質透過性が高まり、55μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、よりさらに好ましくは47μm以下である。また、膜厚が10μm未満では、膜強度が低く偏肉度を0.6以上としても、バースト圧が低くなることがある。そのため、膜厚は20μm以上がより好ましく、さらに好ましくは25μm以上、よりさらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは35μm以上である。
上記の本発明の中空糸膜束は、上記の特性を有しており、例えば分離用モジュールの分離膜として好適に用いることができる。
本発明の分離用モジュールは、ポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなる中空糸膜束の両端を樹脂で固定化したモジュールである。
分離用モジュールの形状を図3に例示する。
分離用モジュール1は、筒状の容器2内に中空糸膜束3を装填し、中空糸膜束3の両端部を容器2の両端部に接着剤等により固定4し、容器2の両端部をキャップ5a,5bにより被覆してなる。そして、容器2の側部で一方の端部近傍には、容器2内に透析液を導入する透析液導入口6aを、他方の端部近傍には、透析液を排出する透析液排出口6bをそれぞれ突出形成してある。また、一方のキャップ5aには容器2内に血液を導入する血液導入口7aを、他方のキャップ5bには血液を排出する血液排出口7bをそれぞれ突出形成してある。
そして、血液は、矢印Aに示すように、血液導入口7aからキャップ5aと中空糸膜束3の一方の端面とにより形成される空間内に入り、中空糸膜束3の中空糸の中を通り、中空糸束3の他方の端面とキャップ5bとにより形成される空間内に入り、血液排出口7bから矢印Bに示すように排出される。一方、透析液は、矢印Cに示すように、透析液導入口6aから容器2内に入り、中空糸膜束3の中空糸の外側を流れ、矢印Dに示すように、透析液排出口6bから排出される。このとき、透析される血液の流れと透析液の流れとは逆方向のいわゆる対向流とする。この間に、中空糸膜内を流れる血液中の老廃物が中空糸膜を通して外側の透析液中に透析される。
前記容器やキャップの素材としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン等が挙げられる。また、両端部固定に用いられる接着剤の材料としてはポリウレタン等が挙げられる。
両端部固定に用いられる接着剤の固定部への注入方法は限定されないが、注入すべきモジュールを回転させることにより発生する遠心力を利用して注入する遠心接着法が推奨される。該遠心接着法の方法も限定されない。たとえば、乾燥された中空糸膜束が装填された容器の両端に目止め治具を取り付け、遠心接着機にセットする。遠心接着機を所定の回転数で回転させながら、室温付近の温度で透析液導入口6aおよび6bより所定量の未硬化の接着剤樹脂を注入した後、遠心接着機の温度を注入接着剤樹脂の硬化温度に上昇させ、硬化を終了させるか、あるいは少なくとも樹脂の流動性がなくなるまでプレ硬化させて遠心接着機を停止する。後者の場合はポスト硬化を行い硬化を終了させる。また、接着剤の注入は2回以上に分割して実施してもよい。
上記遠心接着法の場合、中空糸膜束内の空間全体に接着剤が均一に注入されることが重要である。この注入が不均一になり接着剤の注入量が不充分な箇所が生ずると接着不良に繋がる。特に、中空糸膜同士が固着した部分があると接着剤の浸透が阻害される。従って、この固着部分の解きほぐしをするために、例えば、中空糸膜束端面にノズルより空気を吹き付ける、いわゆる整糸処理等が実施されている。確かに、本整糸処理は固着中空糸膜の解きほぐしには効果があるが、この処理により端面部の中空糸膜束の変形が起こり傾き中空糸膜の発生につながるので好ましくない。
本発明の中空糸膜束は乾燥時の部分固着が抑制されているので整糸処理をしなくても接着剤の注入の均一性が確保されるという特徴を有する。従って、整糸処理は不要である。
ただし、接着剤の注入の均一性確保は重要であるので、下記対応等を実施することが好ましい。例えば、接着剤として低粘度の銘柄を選択することが好ましい。二液混合2分後の粘度が2000mPa・s以下が好ましい。1600mPa・s以下がより好ましい。また、モジュール組み立てに用いる容器に乾燥中空糸膜束を挿入する時の中空状の包装体で拘束される中空糸膜束の充填密度を低くすることが好ましい。
充填する中空糸膜束の中空糸膜本数、長さは、市場要求や中空糸膜束特性により適宜設定される。容器の長さや径は該充填する中空糸膜束の大きさに見合うように設定される。充填する中空糸膜束は前記した本発明の中空糸膜束を用いるのが好ましいが限定されない。
本発明の分離用モジュールは、ポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなる中空糸膜束の両端を樹脂で固定化した分離用モジュールにおいて、(1)下記方法で評価される樹脂で固定化された部分の中空糸膜の傾き度が15度以上の中空糸膜の本数の割合が0.05%以下であり、(2)下記方法で測定される目詰まり糸の本数の割合が0.05%以下であることを同時に満足することが好ましい。
[傾き中空糸膜の割合評価法]
所定本数の中空糸膜(例えば、10000本)を中空糸束側表面が梨地加工された厚み0.2mmのポリエチレン製のフィルムよりなる中空状包装体で拘束された乾燥中空糸膜束拘束体を所定形状(例えば、内径31mm、長さ255mm)のモジュール用容器に挿入し、中空糸膜を固定しながらポリエチレン製のフィルムよりなる包装体を抜き取る。この状態で容器の両端に目止め治具を取り付け、遠心接着機にセットする。遠心接着機を500rpmの回転数で回転させながら、透析液導入口6aおよび6bよりポッティング剤(三洋化成社製の二液硬化型ポリウレタン樹脂、主剤:ポリメディカMA−200、硬化剤:ポリメディカMB−200、配合比:52/48、二液混合2分後の粘度:1400mPa・s)を25℃にて1端面当り0.8g/秒で20gを注入した。50℃で30分間硬化をして遠心接着機を停止する。このモジュールを取り出し、室温で1晩ポスト硬化をした後、モジュール端部の両端それぞれ5mmづつを切削、開口して中空糸膜束モジュールを得る。該モジュール端面を厚さ約0.2mmで切削して評価用サンプルを作製する。以上の評価用サンプルの作製法は一例であり限定されない。例えば、モジュール化された血液浄化器の製品について評価する場合は、該モジュールの端面を厚さ約0.2mmで切削して評価用サンプルとしてもよい。この端面をプロジェクターで拡大、投影して端面の法線に対する傾きが15度以上である中空糸膜を傾き中空糸膜とする。具体的な測定方法は次のとおりである。すなわち、まず該サンプルの厚さ(d)を測定し、d×tan15度の値を算出する。サンプルをプロジェクターで20倍〜50倍程度に拡大、投影する。傾いた中空糸膜が存在すると傾き部分の影が生ずる。この影の部分のずれの長さを測定する。この長さが上記d×tan15度よりも大きい中空糸膜の本数を数える。概念図を図4に示す。
傾き中空糸膜の割合は次式で算出する。
傾き中空糸膜の割合(%)=(15度以上の傾きの中空糸膜の本数/サンプル端面の中空糸膜の全本数)×100
中空糸膜束の傾き度が15度を超えた場合は、血液が流れにくくなり、偏流が起こり残血糸の発生につながる。傾き中空糸膜の割合は0.04%以下がより好ましく、0.03%以下がさらに好ましい。0%が特に好ましい。0.05%を超えた場合は残血糸本数が増加し透析患者に不安感を与えるので好ましくない。本発明においては、本特性は両端面ともが満足するのが好ましい。
[目詰まり糸の割合]
上記方法で調製したサンプル端面を赤色のマジックインキ(R)で彩色し、かつ該端面を放射状に8分割のマーキングをし、8分割した全端面をナショナルライト付き顕微鏡(ライトスコープ100、倍率:100倍、松下電器産業社製)を用いて目詰まり糸の本数をカウントする。目詰まり糸の割合は下記式にて算出する。
目詰まり糸の割合(%)=(目詰まり糸本数/サンプル端面の中空糸膜の全本数)×100
ここで、目詰まり糸本数およびサンプル端面の中空糸膜の全本数共に、8分割した端面全ての総合計数である。
上記目詰まり糸の割合は、0.04%以下がより好ましく、0.03%以下がさらに好ましい。0%が特に好ましい。目詰まり糸の割合が0.05%を超えた場合は、血液が流れにくくなり、血液の偏流が起こり残血糸の発生につながるので好ましくない。本発明においては、本特性は両端面ともが満足するのが好ましい。
まさらに、本発明の分離用モジュールは、モジュール端面の中空糸膜束が接着剤で固定化された部分の最表面部分を下記方法で観察し評価される潰れ中空糸膜本数の割合が0.05%以下であることが好ましい。本発明においては、本特性は両側の端面の両方ともが満足するのが好ましい。0.04%以下がより好ましく、0.03%以下がさらに好ましい。0%が特に好ましい。潰れ中空糸膜の本数の割合が0.05%を超えた場合は、血液が流れにくくなり、血液の偏流が起こり残血糸の発生につながる。
[潰れ中空糸膜の割合評価法]
上記の傾き中空糸膜の割合評価に用いるサンプルの端面(モジュール端面)を放射状に8分割のマーキングをし、8分割した全端面を200倍の倍率で観察して潰れの個数をカウントした。潰れの基準は中空糸膜1本ずつにおいて短径と長径を測定し、その比が1対2よりも扁平しているものを潰れ中空糸膜とする。潰れ中空糸膜の割合は次式により求める。
潰れ中空糸膜の割合(%)=(潰れ中空糸膜本数/サンプル端面の中空糸膜の全本数)×100
ここで、潰れ糸膜本数およびサンプル端面の中空糸膜の全本数共に、8分割した端面全ての総合計数である。
また、本発明の分離用モジュールは、下記方法で測定される残血糸の割合がモジュール当りの全中空糸の本数に対して0.05%以下であることが好ましい。0.04%以下がより好ましく、0.03%以下がさらに好ましい。0%が特に好ましい。0.05%を超えた場合は残血糸本数が増加し透析患者に不安感を与えるので好ましくない。
[残血糸の割合評価法]
上記方法で得られたモジュールの透析液側を生理食塩水で満たし、健康人から採取したヘパリン加血200mlを血液バッグに詰め、血液バッグとモジュールをチューブで連結し、37℃で血液流速100ml/min、1時間循環する。循環開始前と循環60分との血液をサンプリングし、白血球数、血小板数を測定する。測定した値はヘマトクリットの値で補正する。
補正値=測定値(60分)×ヘマトクリット(0分)/ヘマトクリット(60分)
補正値から白血球と血小板の変化率を算出する。
変化率=補正値(60分)/循環開始前値×100
60分循環終了後、生理食塩水で返血し、残血している糸の本数を数える。残血糸の割合は下記式にて算出する。
残血糸の割合(%)=(残血糸の本数/モジュール中の中空糸膜の全本数)×100
さらに、本発明においては、モジュールに水を主体とした液体を充填した状態で室温にて1年間保存した後の中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々を透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施した時の中空糸膜の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度が0.10以下であることが好ましい。この中空糸膜の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度は2年以上保存しても上記特性が維持されるのがより好ましい。そのためには、この1年保存後のUV(220〜350nm)吸光度が0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。このことにより血液浄化器の長期にわたる高い安全性が維持できるので好ましい。なお、保存後のUV(220〜350nm)吸光度は中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々について測定した時の平均値で評価したものである。また、上記のモジュールの保存評価の折にモジュールに充填される液体は、水のみあるいは水に該モジュールのγ線滅菌処理時の中空糸膜束素材の劣化防止のためのピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アセトンソジウムバイサルファイト、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸およびグリセリン等を溶解した水溶液が挙げられる。
上記の分離用モジュールとして具備することが好ましい特性を付与する達成手段は限定されないが、例えば、前記した本発明の中空糸膜束を用いることにより達成することができる。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1、中空糸膜束の含水率
本発明における中空糸膜束の含水率は、以下の式により計算した。
含水率(質量%)=100×(Ww−Wd)/Wd
ここで、Wwは乾燥前の中空糸膜束(g)、Wdは、120℃の乾熱オーブンで2時間乾燥後(絶乾後)の中空糸膜重量(g)である。ここで、Wwは1〜2gの範囲内とすることで、2時間後に絶乾状態(これ以上重量変化がない状態)にすることができる。
2、中空糸膜束の含水率変動率
中空糸膜束を中空糸膜束を長手方向に2.7cmずつ10個に等分し、各々の部位から乾燥状態の中空糸膜束1gをはかりとり、上記方法で含水率を測定し下記式で算出した。
含水率変動率(%)={(含水率最大値―含水率最小値)/含水率平均値}×100
3、UV(220−350nm)吸光度
透析型人工腎臓装置製造基準に定められた方法である中空糸膜束1gに純水100mlを加え、70℃で1時間抽出した抽出液を分光光度計(日立製作所社製、U−3000)を用いて波長範囲200〜350nmの吸光度を測定し、この波長範囲での最大の吸光度を求めた。
該測定は、中空糸膜束を長手方向に2.7cmずつ10個に等分し、各々の部位から乾燥状態の中空糸膜束1gをはかりとり全サンプルについて測定した。
湿潤中空糸膜モジュールの場合は、モジュールの透析液側流路に生理食塩水を500mL/minで5分間通液し、ついで血液側流路に200mL/minで通液した。その後血液側から透析液側に200mL/minでろ過をかけながら3分間通液した後にフリーズドライして乾燥膜を得て、該乾燥膜を用いて上記測定を行った。
4、過酸化水素の定量
前記方法で抽出した抽出液2.6mlに塩化アンモニウム緩衝液(PH8.6)0.2mlとモル比で当量混合したTiClの塩化水素溶液と4−(2−ピリジルアゾ)レゾルシノールのNa塩水溶液との混合液を0.4mMに調製した発色試薬0.2mlを加え、50℃で5分間加温後、室温に冷却し508nmの吸光度を測定。標品を用いて同様に測定して求めた検量線にて定量した。
該測定は、中空糸膜束を長手方向に2.7cmずつ10個に等分し、各々の部位から乾燥状態の中空糸膜束1gをはかりとり全サンプルについて測定した。
湿潤中空糸膜モジュールの場合は、UV(220−350nm)吸光度の測定と同様に処理することにより得た乾燥膜を用いて測定した。
5、中空糸膜束の部分固着性
包装体で拘束した乾燥中空糸膜束を切断時に発生する熱により中空糸膜同士が融着しないようにSKカッターを使用し、中空糸膜束の長手方向に2cm幅で切断する。その輪切り状の中空糸膜束を除電しながら(キーエンス社製 SJ−F020)ゆっくりと机上の紙面に落とし、複数本以上の塊が発生するかどうか目視で確認した。なお、目視で確認する際、明らかに切断面の融着により塊が生じているものは部分固着ではないと分類した。融着の状態がひどい場合には適宜切断する刃物を交換する。
6、中空糸膜束の収縮度変動
乾燥上がりの中空糸膜束の円形断面において、中心点からの半径の1/4の外周部と中心点からの半径の1/4の内周部に区分をしてサンプリングをした。この外周部および内周部よりサンプリングされた中空糸膜よりそれぞれ500本をランダムに採取し、それぞれ500本の全てについて以下の方法でその糸長を測定しその平均値を求めた。両平均長の差を求め、以下の基準により判定した。◎および○を合格とした。
(糸長の測定法)
各中空糸膜の両端をそれぞれ端部より5mm内部をコクヨWクリップ口幅15mm、豆(コクヨ社製:クリーJ36)で挟み、一方のクリップを固定、もう一方のクリップをフリーとして中空糸膜を吊り下げ、この状態で糸長を定規にて測定する。
(収縮度変動の判定)
◎:外周部と内周部との中空糸膜長さの平均値の差が1mm未満
○:外周部と内周部との中空糸膜長さの平均値の差が1mmから3mm以下
×:外周部と内周部との中空糸膜長さの平均値の差が3mmを超える
7、乾燥中空糸膜束の保存安定性
乾燥中空糸膜束を湿度50%に調湿されたドライボックス中(雰囲気は空気)に室温で3ヶ月間保存した後、前記方法でUV(220−350nm)吸光度を測定した。該保存によるUV(220−350nm)吸光度の増加度で安定性を判定した。該増加度は中空糸膜束を長手方向に2.7cmずつ10個に等分し、それぞれのサンプルについて測定し、その平均値で判定した。平均値が0.1を超えないものを合格とした。
8、傾き中空糸膜の割合評価法
実施例および比較例で得られた乾燥中空糸膜束の拘束体を内径31mm、長さ255mmのモジュール用容器に挿入し、中空糸膜を固定しながら包装体を抜き取った。この状態で容器の両端を目止め治具を取り付け、遠心接着機にセットした。遠心接着機を500rpmの回転数で回転させながら、透析液導入口6aおよび6bよりポッティング剤(三洋化成社製の二液硬化型ポリウレタン樹脂、主剤:ポリメディカMA−200、硬化剤:ポリメディカMB−200、配合比:52/48、二液混合2分後の粘度:1400mPa・s)を25℃にて1端面当り0.8g/秒で20gを注入した。50℃で30分間キュアリングをして遠心接着機を停止した。このモジュールを取り出し、室温で1晩ポストキュアーをした後、モジュール端部の両端それぞれ5mmづつを切削、開口して中空糸膜束モジュールを得た。該モジュール端面を厚さ約0.2mmで切削して評価用サンプルを作製した。この端面をプロジェクターで拡大、投影して端面の法線に対する傾きが15度以上である中空糸膜を傾き中空糸膜とした。具体的な測定方法は次の通りである。すなわち、まず該サンプルの厚さ(d)を測定し、d×tan15度の値を算出した。サンプルをプロジェクターで20倍〜50倍程度に拡大、投影する。傾いた中空糸膜が存在すると傾き部分の影が生ずる。この影の部分のずれの長さを測定した。この長さが上記d×tan15度よりも大きい中空糸膜の本数を数える。概念図を図4に示した。
傾き中空糸膜の割合は次式で算出する。
傾き中空糸膜の割合(%)=(15度以上の傾きの中空糸膜の本数/サンプル端面の中空糸膜の全本数)×100
傾き中空糸膜の割合で以下の品質区分判定をした。
◎:傾き中空糸膜の割合0.03%未満
○:傾き中空糸膜の割合0.03〜0.05%
×:傾き中空糸膜の割合0.05%を超える
◎および○を合格とした。
9、潰れ中空糸膜の割合評価法
上記の傾き中空糸膜の割合評価に用いるサンプルの端面(モジュール端面)を放射状に8分割のマーキングをし、8分割した全端面を200倍の倍率で観察して潰れの個数をカウントした。潰れの基準は中空糸膜1本ずつにおいて短径と長径を測定し、その比が1対2よりも扁平しているものを潰れ中空糸膜とした。潰れ中空糸膜本数の割合は次式により求めた。
潰れ中空糸膜の割合(%)=(潰れ中空糸膜本数/サンプル端面の中空糸膜の全本数)×100
ここで、潰れ糸膜本数およびサンプル端面の中空糸膜の全本数共に、8分割した端面全ての総合計数である。
潰れ中空糸膜の割合で以下の品質区分判定をした。
◎:短尺糸の割合0.03%未満
○:短尺糸の割合0.03〜0.05%
×:短尺糸の割合0.05%を超える

◎および○を合格とした。
10、目詰まり糸の割合
上記方法で調製したサンプル端面を赤色のマジックインキ(R)で彩色し、かつ該端面を放射状に8分割のマーキングをし、8分割した全端面をナショナルライト付き顕微鏡(ライトスコープ100、倍率:100倍、松下電器産業社製)を用いて目詰まり糸の本数をカウントした。目詰まり糸の割合は下記式にて算出した。
目詰まり糸の割合(%)=(目詰まり糸本数/サンプル端面の中空糸膜の全本数)×100
ここで、目詰まり糸本数およびサンプル端面の中空糸膜の全本数共に、8分割した端面全ての総合計数である。
目詰まり糸の割合で以下の品質区分判定をした。
◎:目詰まり糸の割合0.03%未満
○:目詰まり糸の割合0.03〜0.05%
×:目詰まり糸の割合0.05%を超える
◎および○を合格とした。
11、残血糸の割合評価法
上記方法で得られたモジュールの透析液側を生理食塩水で満たし、健康人から採取したヘパリン加血200mlを血液バッグに詰め、血液バッグとモジュールをチューブで連結し、37℃で血液流速100ml/min、1時間循環する。循環開始前と循環60分との血液をサンプリングし、白血球数、血小板数を測定する。測定した値はヘマトクリットの値で補正した。
補正値=測定値(60分)×ヘマトクリット(0分)/ヘマトクリット(60分)
補正値から白血球と血小板の変化率を算出した。
変化率=補正値(60分)/循環開始前値×100
60分循環終了後、生理食塩水で返血し、残血している糸の本数を数えた。残血糸の割合は下記式にて算出した。
残血糸の割合(%)=(残血糸本数/モジュール中の中空糸膜の全本数)×100
目詰まり糸の割合で以下の品質区分判定をした。
◎:残血糸の割合0.03%未満
○:残血糸の割合0.03〜0.05%
×:残血糸の割合0.05%を超える
◎および○を合格とした。
12、透水率
透析器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子により封止した。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温した透析器の血液流路側へ純水を送り、透析液側から流出したろ液量を測定した。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させろ過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水率(mL/hr/mmHg)を算出する。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜束の透水率は膜面積と透析器の透水率から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜束の透水率(mL/m/hr/mmHg)、UFR(D)は透析器の透水率(mL/hr/mmHg)、Aは透析器の膜面積(m)である。
13、膜面積の計算
透析器の膜面積は中空糸の内径基準として求める。
A=n×π×d×L
ここで、nは透析器内の中空糸本数、πは円周率、dは中空糸の内径(m)、Lは透析器内の中空糸の有効長(m)である。
14、血液リークテスト
クエン酸を添加し、凝固を抑制した37℃の牛血液を、分離用モジュールに200mL/minで送液し、20mL/minの割合で血液をろ過する。このとき、ろ液は血液に戻し、循環系とする。60分間後に分離用モジュールのろ液を採取し、赤血球のリークに起因する赤色を目視で観察する。この血液リーク試験を各実施例、比較例ともに30本の分離用モジュールを用い、血液リークしたモジュール数を調べる。
15、分離用モジュールの中空糸膜束の保存安定性
傾き中空糸膜の割合評価法同様の方法で調製したモジュールに脱気したRO水を充填し25kGyの吸収線量でγ線を照射し架橋処理を行った。γ線照射後のモジュールを室温で一年間保存した後、前記した方法でUV(220−350nm)吸光度を測定した。該保存によるUV(220−350nm)吸光度の増加度で安定性を判定した。該増加度は中空糸膜束を長手方向に10個に等分し、それぞれのサンプルについて測定し、その平均値で判定した。平均値が透析型人工腎臓装置製造基準の基準値である0.10を超えないものを合格とした。
(実施例1)
ポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社製、スミカエクセル(R)5200P)17.3質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドン(R)K−90)2.5質量%、DMAc26.0質量%を2軸のスクリュータイプの混練機で混練した。得られた混練物をDMAc51.3質量%および水2.9質量%を仕込んだ撹拌式の溶解機に添加し、3時間撹拌をし溶解した。混練および溶解は内温が30℃以上に上がらないように冷却した。ついで真空ポンプを用いて系内を−500mmHgまで減圧した後、溶媒等が蒸発して製膜溶液組成が変化しないように直ぐに系内を密閉し15分間放置した。この操作を3回繰り返して製膜溶液の脱泡を行った。脱泡が完了した後、系内を再度窒素置換を行い弱加圧状態で維持した。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有率110ppmのものを用い、原料供給系での供給タンクや前記の溶解槽を窒素ガス置換した。また、溶解時のフルード数および撹拌レイノルズ数はそれぞれ1.1および120であった。製膜溶液を10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、75℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め−700mmHgで30分間脱気処理した50℃の60質量%DMAc水溶液を用いて吐出、紡糸管により外気と遮断された400mmの乾式部を通過後、60℃の20wt%DMAc水溶液中で凝固させ、湿潤状態のまま綛に捲き上げた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大61μm、最小59μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03、ドラフト比は1.2であった。
該中空糸膜10000本を中空糸束側表面が梨地加工された厚み0.2mmのポリエチレン製のフィルム(誘電率:2.3、誘電正接:0.0002、誘電率と誘電正接との積:0.00046)よりなる断面形状が円形の中空状の包装体(外径36mm)に挿入した後、270mmの長さに切断し、80℃の熱水中で30分間×4回洗浄した。該洗浄した中空糸膜束を拘束した包装体をトレイの上面に包装体の形状に合わせた半円形の窪みを付けた誘電率:3.5、誘電正接:0.0035、誘電率と誘電正接との積:0.01225であるポリエーテルスルホン製のトレイの窪みの部分に入れて遠心分離式脱水機で140rpmで20分間遠心分離脱水をし、含水率300質量%の脱水中空糸膜束を得た。得られた脱水中空糸膜束をトレイと共に、マイクロ波発振器を加熱オーブンの側壁に設置し、マイクロ波が水平方向に発振でき、オーブン内部に水平の回転テーブルを有し、遠赤外線ヒーターおよびオーブンを減圧にするための排気系を有したマイクロ波乾燥機の回転テーブル上に中空糸膜束の長手方向が水平になる方向で中空糸膜束10本を等間隔で長手方向の片方が回転テーブルの中心に向くよう配置した。該回転テーブルは金属製の保持治具の上に厚みが6mmのポリプロピレン製の板が固定された構造で、テーブル上面がマイクロ波発振器の導波管の中心部より約30mm下部に位置して設置されている。該回転テーブルを8rpmで回転させながら、以下の条件で乾燥した。7KPaの減圧下、1.5kWの出力で25分間中空糸膜束を加熱した後、マイクロ波照射を停止すると同時に減圧度1.5kPaに上げ3分間維持した。つづいて減圧度を7kPaに戻し、かつマイクロ波を照射し0.5kWの出力で8分間中空糸膜束を加熱した後、マイクロ波を切断し減圧度を上げ0.7kPaを3分間維持した。さらに減圧度を7kPaに戻し、0.2kWの出力で5分間マイクロ波の照射を行い中空糸膜束の加熱をした。マイクロ波照射終了後の中空糸膜束中の含水率は11質量%であった。マイクロ波切断後、減圧度を0.5kPaに上げ、遠赤外線のみを照射し、10分間維持することにより中空糸膜束の乾燥を終了した。なお、乾燥中は全期間に渡り乾燥オーブンの中心部に設けた熱電対で検出される温度で50℃になるように遠赤外線ヒーターの出力調整をした。この際の中空糸膜束表面の最高到達温度は65℃であった。なお、上記のマイクロ波乾燥機のマイクロ波発振器の導波管はマイクロ波の進行方向に向かい断面積が段々大きくなり、かつ導波管出口に円錐形の反射板が円錐の頂点が導波管内部に向く方向で設置された構造を有しており、照射されるマイクロ波のEr/Eiは0.05であった。また、最終の乾燥上がりの含水率は2.5質量%であった。得られた中空糸膜束の内径は198μm、膜厚は28μmであった。包装体中の乾燥中空糸膜束の充填率は50%であった。紡糸工程中、中空糸膜束が接触するローラーは全て表面が鏡面加工されたもの、ガイドは全て表面が梨地加工されたものを使用した。
上記乾燥は6サンプルを同時に処理した。得られた乾燥中空糸膜束の1サンプルで外周部と内周部との中空糸膜長さの平均値の差を求めた。中空糸膜の収縮変動は小さく0.5mm以下であった。また、別のサンプルで中空糸膜束の外周部(半径で1/4の範囲)の中空糸膜サンプリングし、該サンプルを長手方向に2.7cmずつ10個に等分し、各々の部位から乾燥状態の中空糸膜1gづつをはかりとり、含水率を測定した。また、透析型人工腎臓装置製造承認基準試験に準じて抽出液を得、抽出液中の過酸化水素濃度およびUV(220−350nm)吸光度を測定した。含水率の変動は小さかった。また、過酸化水素およびUV(220−350nm)吸光度は全部位において低レベルで安定していた。また、乾燥上がりの中空糸膜束長は265mmと想定して湿潤状態の中空糸膜束の長さを270mmに設定して乾燥した。これらの結果を表1〜3にまとめた。また、得られた中空糸膜束の1サンプルを乾燥状態で保存し保存安定性を評価した。乾燥状態での保存安定性は良好であり3ヶ月間保存後の中空糸膜束を10等分した各部位より得られた抽出液のUV(220−350nm)吸光度の最大値は0.03であり、最大値で見ても基準値の0.10以下が維持されていた。さらに、各部位のUV吸光度レベルは低レベルで安定していた。
上記方法で得られたポリエチレンフィルムで拘束された乾燥中空糸膜束の残りの3サンプルを内径31mm、長さ255mmのモジュール用容器に挿入し、中空糸膜を固定しながらポリエチレン製のフィルムよりなる包装体を抜き取った。この状態で容器の両端を目止め治具を取り付け、遠心接着機にセットした。遠心接着機を500rpmの回転数で回転させながら、透析液導入口6aおよび6bよりポッティング剤(三洋化成社製の二液硬化型ポリウレタン樹脂、主剤:ポリメディカMA−200、硬化剤:ポリメディカMB−200、配合比:52/48、二液混合2分後の粘度:1400mPa・s)を25℃にて1端面当り0.8g/秒で20gを注入した。50℃で30分間キュアリングをして遠心接着機を停止した。このモジュールを取り出し、室温で1晩ポストキュアーした。端面を切削、開口して中空糸膜モジュールを得た。該モジュールにRO水を充填し25kGyの吸収線量でγ線を照射し架橋処理を行った。本実施例で得られた乾燥中空糸膜束は上記乾燥工程での中空糸膜束の折れ曲がり等の変形がなく、中空糸膜束内の中空糸膜の配列乱れも少なく、かつ、部分固着も発生していないので包装体の抜き取りがスムーズに行うことができた。また、接着処理の作業性も良好であった。接着端面の中空糸膜断面観察による傾き中空糸膜および潰れ中空糸膜本数はゼロであった。また、上記方法で評価した目詰まり糸も検出されなかった。従って、残血糸もなく高品質であった。
該分離用モジュールに、クエン酸加新鮮牛血を血液流量200mL/min、ろ過速度10mL/min(m)で分離用モジュールに流したが、中空糸膜同士の固着による接着不良や血液リークはみられなかった。これらの結果を表4に示した。
また、上記分離用モジュールを室温で1年間保存した。保存後の分離用モジュールより中空糸膜束を切り出し、溶出物試験に供したところUV(220−350nm)吸光度は最大値で見ても0.04であり透析型人工腎臓装置製造承認基準値である0.10以下が維持されていた。
以下の実施例および比較例においても、本実施例と同様に6サンプルを同時に乾燥し、各種評価に供した。
(比較例1)
実施例1において、湿潤状態の中空糸膜束を拘束する包装体およびトレイの材料を、誘電率:2.9、誘電正接:0.009、誘電率と誘電正接の積0.0261のポリカーボネート樹脂に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例1の中空糸膜束を得た。本比較例の場合は、包装体およびトレイがマイクロ波乾燥の透過性の低いポリカーボネート樹脂よりなるために、該包装体およびトレイのマイクロ波による発熱が大きく、中空糸膜束外周部と内周部の中空糸膜の温度差が大きくなり、このことにより収縮率に差が生じ、該発熱の影響の大きい外周部の中空糸膜の収縮が内周部より大きくなるために、それぞれの平均中空糸膜長さの差が4mmにもなった。
また、本比較例で得られた乾燥中空糸膜束の含水率、過酸化水素濃度およびUV吸光度測定値を表1〜3に示す。ここで、過酸化水素濃度およびUV吸光度測定値は、中空糸膜束の外周部(半径で1/4の範囲)の中空糸膜について評価したものである。本比較例の方法では、上記の中空糸膜束の外周部の温度上昇により中空糸膜構成成分のポリビニルピロリドンの劣化が増大し、かつ中空糸膜束の長手方向の乾燥の均一性が低下するので、本比較例で得られた中空糸膜束の過酸化水素溶出量はレベルが高く、かつ過酸化水素溶出量のサンプリング個所による変動が大きく低品質であった。さらに、本比較例の中空糸膜束は過酸化水素溶出量が高いため、保存安定性が劣っていた。本比較例で得られた乾燥状態の中空糸膜束は、約30日の保存で、UV(220−350nm)吸光度が0.10を超えてしまった。また、乾燥上がりの中空糸膜束のUV(220−350nm)吸光度のサンプリング部位による変動が大きく、部分固着の発生があり、モジュール組み立ての作業性が劣っていた。
また、実施例1と同様の方法で分離用モジュールを組み立てたが、中空糸膜束内の中空糸膜の配列に乱れがあり包装体の抜き取りがスムーズに行えなかった。従って、包装体を抜き取った後に装填された中空糸膜束端面合わせに手間がかかり、かつ、中空糸膜束の配列乱れのため接着剤の充填性が悪く作業性に劣っていた。また、上記のごとく中空糸膜の収縮斑が大きいため、目詰まり糸本数が多数検出された。このため、残血糸が発生し低品質であった。さらに、本比較例の中空糸膜束は中空糸膜束の過酸化水素溶出量レベルが高く分離用モジュールの保存安定性が劣り、UV(220−350nm)吸光度の平均値は約2ヶ月で透析型人工腎臓装置製造承認基準値の0.10を超えてしまった。結果を表4に示す。
(比較例2)
実施例1において、被乾燥中空糸膜束を垂直に配置するように変更し、マイクロ波乾燥を常圧で2.0kWの出力で40分間照射し、次いで同じく0.9kWの出力で10分間照射するようにし、かつ遠赤外線照射も常圧下で20分間乾燥するように変更する以外は、実施例1と同様の方法により中空糸膜束を得た。本比較例では被乾燥中空糸膜束を垂直に配置したために、得られた乾燥中空糸膜束は乾燥時に発生した座屈により折れ曲がり糸が発生していた。得られた乾燥中空糸膜束の1サンプルを用いて中空糸膜束の全中空糸膜の糸長測定を行った。264mm以下の中空糸膜および268mm以上の中空糸膜が多数存在していた。
また、本比較例で得られた乾燥中空糸膜束の含水率、過酸化水素濃度およびUV吸光度測定値を表1〜3に示す。ここで、過酸化水素濃度およびUV吸光度測定値は、中空糸膜束の外周部(半径で1/4の範囲)の中空糸膜について評価したものである。本比較例の方法では、中空糸膜構成成分のポリビニルピロリドンの劣化が大きく、かつ中空糸膜束の長手方向の乾燥の均一性が劣るので、本比較例で得られた中空糸膜束の過酸化水素溶出量はレベルが高く、かつ過酸化水素溶出量のサンプリング個所による変動が大きく低品質であった。さらに、本比較例の中空糸膜束は過酸化水素溶出量が高いため、保存安定性が劣っていた。本比較例で得られた乾燥状態の中空糸膜束は、約30日の保存で、UV(220−350nm)吸光度の平均値が0.10を超えてしまった。また、乾燥上がりの中空糸膜束のUV(220−350nm)吸光度のサンプリング部位による変動が大きく、部分固着の発生があり、モジュール組み立ての作業性が劣っていた。
また、実施例1と同様の方法で分離用モジュールを組み立てたが、中空糸膜束内の中空糸膜の配列に乱れがあり包装体の抜き取りがスムーズに行えなかった。従って、包装体を抜き取った後に装填された中空糸膜束端面合わせに手間がかかり、かつ、中空糸膜束の配列乱れのため接着剤の充填性が悪く作業性に劣っていた。また、傾き中空糸膜、潰れ中空糸膜本数や目詰まり糸本数が多数検出された。このため、残血糸が多数発生し低品質であった。さらに、本比較例の中空糸膜束は中空糸膜束の過酸化水素溶出量レベルが高く分離用モジュールの保存安定性が劣り、UV(220−350nm)吸光度の平均値は約2.5ヶ月で透析型人工腎臓装置製造承認基準値の0.10を超えてしまった。結果を表4に示す。
(比較例3)
比較例1の方法において、マイクロ波乾燥機のマイクロ波発振器の導波管をマイクロ波の進行方向に向かい断面積が一定の構造で、かつ導波管出口の反射板を設置していない構造で照射されるマイクロ波のEr/Eiは0.3であるマイクロ波発振器に変更し、中空糸膜束の乾燥をマイクロ波乾燥を常圧で2.0kWの出力で40分間照射し、次いで同じく0.9kWの出力で10分間照射するようにし、かつ遠赤外線照射も常圧下で20分間乾燥するように変更する以下は、比較例1と同様にして中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束の特性を表1〜3に示す。本比較例で得られた中空糸膜束は、比較例1で得られた中空糸膜束と同様に乾燥工程での中空糸膜の変形が発生し、さらにマイクロ波乾燥の発振器の構造や乾燥条件の変更により中空糸膜束の乾燥の不均一性が増大するので比較例1で得られた中空糸膜束よりさらに品質が劣っていた。例えば、本比較例で得られた乾燥状態の中空糸膜束は、25日の保存で、透析型人工腎臓装置製造承認基準の試験法に準じて調製した抽出液のUV(220−350nm)吸光度の平均値が基準値の0.10を超えてしまった。また、乾燥上がりの中空糸膜束のUV(220−350nm)吸光度のサンプリング部位による変動が大きく、部分固着の発生があり、モジュール組み立ての作業性が比較例1で得られた中空糸膜束より劣っていた。
また、実施例1と同様の方法で分離用モジュールを組み立てたが、比較例1で得られた中空糸膜束と同様に、中空糸膜束内の中空糸膜の配列に乱れがあり包装体の抜き取りがスムーズに行えなかった。従って、包装体を抜き取った後に装填された中空糸膜束端面合わせに手間がかかり、かつ、中空糸膜束の配列乱れのため接着剤の充填性が悪く作業性に劣っていた。また、接着端面の観察の結果、傾き中空糸膜、潰れ中空糸膜本数や目詰まり糸本数が多数検出された。そのため、残血糸が多数観察され低品質であった。結果を表4に示す。
(実施例2)
実施例1と同様の方法でポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社製、スミカエクセル(R)4800P)18質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドン(R)K−90)3.8質量%、ジメチルアセトアミド(DMAc)73.2質量%、水5質量%からなる製膜溶液を得た。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有率90ppmのものを用いた。得られた製膜溶液を15μm、15μmの2段のフィルターに通した後、70℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め−700mmHgで2時間脱気処理した60℃の50質量%DMAc水溶液と同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された350mmのエアギャップ部を通過後、60℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均45μmであり、最大45.5μm、最小44.5μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.02、ドラフト比は1.3であった。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜束は85℃の水洗槽を45秒間通過させ溶媒と過剰のポリビニルピロリドンを除去した後巻き上げた。
該中空糸膜10,080本を中空糸束側表面が梨地加工された厚み0.2mmのポリプロピレンフィルム(誘電率:2.2、誘電正接:0.0002、誘電率と誘電正接との積:0.00044)よりなる断面形状が円形の中空状の包装体(外径36mm)よりなる包装体に挿入した後、30℃の40vol%イソプロパノール水溶液で30分×2回浸漬洗浄し、これを誘電率:3.3、誘電正接:0.003、誘電率と誘電正接との積:0.0099であるポリエーテルエーテルケトン樹脂よりなる実施例1で用いたと同じ形状のトレイに固定し、実施例1の乾燥法に準じた方法で乾燥し含水率3.0質量%の中空糸膜束を得た。紡糸工程中の糸道変更のためのローラーは表面が鏡面加工されたものを使用し、固定ガイドは表面が梨地処理されたものを使用した。得られた中空糸膜の内径は199μm、膜厚は27μmであった。
本実施例で得られた中空糸膜束は実施例1の中空糸膜束と同様に高品質であった。結果を表1〜3に示す。
また、得られた乾燥中空糸膜束を用いて実施例1と同様の方法により分離用モジュールを得た。得られた分離用モジュールも実施例1で得られた分離用モジュールと同様に高品質であった。結果を表4に示す。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、ポリスルホン(アモコ社製P−3500)18質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドン(R)K−60)9質量%、ジメチルアセトアミド(DMAc)68質量%、水5質量%よりなる製膜溶液を得た。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有率100ppmのものを用いた。得られた製膜溶液を15μm、15μmの2種のフィルターに通した後、40℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め減圧脱気した60℃の35質量%DMAc水溶液と同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された600mmのエアギャップ部を通過後、50℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大61μm、最小59μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03、ドラフト比は1.1であった。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜束は85℃の水洗槽を45秒間通過させ溶媒と過剰のポリビニルピロリドンを除去した後巻き上げた。該中空糸膜約10,000本の束を純水に浸漬し、121℃×1時間オートクレーブにて洗浄処理を行った。洗浄後の中空糸膜束を実施例1と同様のポリエチレンフィルムよりなる包装体に挿入し、トレイの材質を誘電率:3.1、誘電正接:0.005、誘電率と誘電正接との積:0.01550であるポリスルホン樹脂に変更する以外は、実施例1で用いたのと同じトレイに固定した後、これを実施例1の乾燥法に準じた方法で乾燥し含水率2.0質量%の乾燥中空糸膜束を得た。紡糸工程中の糸道変更のためのローラーは表面が鏡面加工されたものを使用し、固定ガイドは表面が梨地処理されたものを使用した。得られた中空糸膜束の内径は201μm、膜厚は44μmであった。
本実施例で得られた中空糸膜束は実施例1の中空糸膜束と同様に高品質であった。結果を表1〜3に示す。
また、得られた乾燥中空糸膜束を用いて実施例1と同様の方法により分離用モジュールを得た。得られた分離用モジュールも実施例1で得られた分離用モジュールと同様に高品質であった。結果を表4に示す。
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、ポリスルホン(アモコ社製P−1700)17質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドン(R)K−60)5質量%、ジメチルアセトアミド(DMAc)73質量%、水5質量%よりなる製膜溶液を得た。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有率120ppmのものを用いた。得られた製膜溶液を15μm、15μmの2種のフィルターに通した後、40℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として減圧脱気された65℃の35質量%DMAc水溶液と同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された600mmのエアギャップ部を通過後、50℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大61μm、最小59μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03、ドラフト比は1.2であった。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜束は85℃の水洗槽を45秒間通過させ溶媒と過剰のポリビニルピロリドンを除去した後巻き上げた。該中空糸膜約10,000本の束を純水に浸漬し、121℃×1時間オートクレーブにて洗浄処理を行った。紡糸工程中の糸道変更のためのローラーは表面が鏡面加工されたものを使用し、固定ガイドは表面が梨地処理されたものを使用した。
洗浄後の中空糸膜束を拘束する包装体およびトレイの材質を誘電率:3.2、誘電正接:0.0021、誘電率と誘電正接の積0.00672のポリエチレンテレフタレート樹脂に変更し、実施例1に準じ含水率が1.5質量%になるように乾燥した。得られた中空糸膜の内径は201μm、膜厚は43μmであった。
本実施例で得られた中空糸膜束は実施例1の中空糸膜束と同様に高品質であった。結果を表1〜3に示す。
また、得られた乾燥中空糸膜束を用いて実施例1と同様の方法により分離用モジュールを得た。得られた分離用モジュールも実施例1で得られた分離用モジュールと同様に高品質であった。結果を表4に示す。
(比較例4)
実施例4の方法において、湿潤状態の中空糸膜束を拘束する包装体の材質を誘電率:2.9、誘電正接:0.009、誘電率と誘電正接の積0.0261のポリカーボネート樹脂に、中空糸膜束の乾燥を以下のごとく変更する以外は、実施例4と同様にして中空糸膜束を得た。中空糸膜束の下部から8m/秒の風速にて除湿空気(湿度10%以下)を中空糸膜束の下部より上部へと通風しながら常圧で2.0kWの出力のマイクロ波を40分間照射し含水率が18質量%の中空糸膜束を得た。該中空糸膜束を熱風式乾燥機に移し、常圧下、87℃の温度で1.5時間乾燥し含水率が0.7質量%の乾燥中空糸膜束を得た。
得られた中空糸膜束の特性を表1〜3に示す。得られた乾燥中空糸膜束の1サンプルを用いて中空糸膜束の全中空糸膜の糸長測定を行った。264mm以下の中空糸膜および268mm以上の中空糸膜が多数存在していた。また、本比較例で得られた中空糸膜束の含水率の変動は高かった。さらに、過酸化水素溶出量はレベルが高く、かつ過酸化水素溶出量のサンプリング個所による変動が大きく低品質であった。さらに、本比較例の中空糸膜束は過酸化水素溶出量が高いため、保存安定性が劣っていた。本比較例で得られた乾燥状態の中空糸膜束は、約20日の保存で、UV(220−350nm)吸光度の平均値が基準値の0.10を超えてしまった。また、乾燥上がりの中空糸膜束のUV(220−350nm)吸光度のサンプリング部位による変動が大きく、部分固着の発生があり、モジュール組み立ての作業性が劣っていた。
また、本比較例で得られた乾燥中空糸膜束を用いて実施例1と同様の方法により分離用モジュールを得た。得られた分離用モジュールも比較例1や2で得られた分離用モジュールと同様に低品質であった。結果を表4に示す。
(比較例5)
実施例1において、湿潤状態の中空糸膜束を拘束する包装体およびトレイの材料を、誘電率:3、誘電正接:0.01、誘電率と誘電正接の積0.030の塩化ビニル樹脂に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例1の中空糸膜束を得た。本比較例で得られた中空糸膜束および分離用モジュールは比較例1で得られた中空糸膜束や分離用モジュールと同様に低品質であった。
本発明の中空糸膜束の乾燥方法は、従来公知技術であった中空糸膜束内に気体を通過させ乾燥の均一化を図る通風方式を排除しており、この通風を施すための治具が不要で乾燥機の構造が簡略化される上に、被乾燥中空糸膜束をこの通風を施すための治具に固定する必要がないので被乾燥中空糸膜束の乾燥機へ配置する作業性が向上する。また、従来公知技術の課題であった被乾燥中空糸膜束の配置方向や通風の不均一性等による乾燥工程における被乾燥中空糸膜束の中空糸膜の折れ、配列乱れ等の中空糸膜の変形や収縮斑が抑制されるので、本発明方法で乾燥された乾燥中空糸膜束は、例えば、分離用モジュール用のモジュール組み立て工程におけるモジュールの容器への中空糸膜束の挿入性が向上すると共に、次工程のモジュール組み立て時の接着作業が向上する。さらに、変形や収縮斑に起因した傾き中空糸膜、潰れ中空糸膜および目詰まり中空糸膜等の欠点中空糸膜の発生が抑制され、これらの欠点により引き起される残血性が改善されるという利点がある。また、中空糸膜の折れや傷発生が抑制されるので、血液リーク性が改善される。また、本発明においては湿潤状態の中空糸膜束が中空状の包装体で拘束されているので、被乾燥中空糸膜束の乾燥機へ配置する作業性が向上する上に、乾燥された中空糸膜束を用いて組立てるモジュールに装填する本数単位として中空状の包装体で拘束されおり、乾燥された中空糸膜束をそのままモジュールの容器に装填し、その後に包装体を抜き取ることにより中空糸膜束を容器に装填することができ、該装填の作業性が大幅に向上でき、装填時の欠点糸の発生が抑制されるという利点がある。その上、上記包装体で拘束された被乾燥中空糸膜束がトレイに固定し乾燥機に配置されるので被乾燥中空糸膜束の乾燥機へ配置の作業性がより向上する。
さらに、従来公知技術の課題であった通風方向、すなわち、中空糸膜束の長手方向における乾燥の不均一化が改善されるので、ポリビニルピロリドンの局所的な劣化が低減され、該劣化により生成する過酸化水素溶出量が抑制される。従って、本発明により得られた中空糸膜束は、該過酸化水素により引起されるポリビニルピロリドン等の劣化が抑制されるので、長期保存をしても透析型人工腎臓装置製造承認基準であるUV(220−350nm)吸光度の平均値を0.10以下に維持することができる利点がある。また、該乾燥の均一化により中空糸膜束の長手方向におけるポリビニルピロリドンの劣化の変動が小さく、中空糸膜束の長手方向における上記のUV(220−350nm)吸光度変動が抑制され、中空糸膜束の含水率が適度な範囲に設定されており、かつその変動率が抑制されているので、これらの変動により引き起こされる中空糸膜束の部分固着の発生が抑制され、モジュール組み立て性の優れた中空糸膜束が安定して製造できるという特徴を有する。また、該中空糸膜束の長手方向におけるUV(220−350nm)吸光度変動の抑制は、血液浄化用に使用した場合の安全性の向上にも繋がる。従って、慢性腎不全の治療に用いる高透水性を有する血液浄化用等に用いられる中空糸膜束の乾燥方法として好適であるいう利点がある。また、本発明のポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなる中空糸膜束は、上記の従来公知技術で得られる中空糸膜束の有する課題特性が改善されているので、血液浄化用等に好適に使用することができるという利点がある。さらに、本発明で得られた分離用モジュールは、装填されている中空糸膜束が高性能で安全性や性能の安定性が高く、保存安定性に優れ、かつ残血糸が少ないという利点がある。従って、産業界に寄与することが大である。
中空糸膜束の乾燥時間と含水率との相関を示す模式図。 乾燥切り換え含水率と品質のバラツキ度との関係を示す模式図。 中空糸型分離用モジュールの断面図である。 傾き中空糸膜の割合評価法の概念図である。
符号の説明
1:分離用モジュール
2:容器
3:中空糸膜束
4:接着樹脂
5:キャップ
6a:透析液導入口
6b:透析液排出口
7a:血液導入口
7b:血液排出口

Claims (13)

  1. マイクロ波照射により湿潤状態の中空糸膜束を乾燥する方法であって、湿潤状態の中空糸膜束を1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなる中空状の包装体で拘束し、かつ中空糸膜束の長手方向が水平に対して45度以下の角度になるようにマイクロ波照射オーブン中に配置して乾燥することを特徴とする中空糸膜束の乾燥方法。
  2. マイクロ波照射により湿潤状態の中空糸膜束を乾燥する方法において、湿潤状態の中空糸膜束を1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなる中空状の包装体で拘束し、1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなるトレイに入れて中空糸膜束の長手方向が水平に対して45度以下の角度になるようにマイクロ波照射オーブン中に配置して乾燥することを特徴とする中空糸膜束の乾燥方法。
  3. 中空状の包装体が湿潤状態の中空糸膜束を収納するために、該中空糸膜束の外径に相当する内径寸法を有する包装体であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  4. 中空状の包装体で拘束される中空糸膜束の本数を、該中空糸膜束を用いて組立てるモジュールに装填する本数とし、かつ包装体で拘束される中空糸膜束の充填密度は、中空状の包装体の断面積に対して、拘束される中空糸膜束の各中空糸膜の外径断面積の総和で40〜90容量%とすることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  5. 1MHzでの誘電率と誘電正接の積が0.02以下である樹脂よりなる中空状の包装体を構成する材料が、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン樹脂やポリエーテルスルホン樹脂等のポリスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂およびポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  6. 中空状の包装体で拘束し、かつ中空糸膜束の長手方向が水平になるようにマイクロ波照射オーブン中に配置して乾燥することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  7. マイクロ波発振器をマイクロ波照射オーブンの側壁に設置し、マイクロ波を水平方向に発振し被乾燥中空糸膜束にマイクロ波照射することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  8. マイクロ波発振器からオーブンに向かう入射波のエネルギーEiとオーブンで反射されオーブンより発振器に向かう反射波のエネルギーErとの比(Er/Ei)が0.2以下であるマイクロ波発振器を用いてマイクロ波を照射することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  9. 湿潤状態の中空糸膜束の直径(D)と長さ(L)との比であるL/Dが2以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  10. 20kPa以下の減圧下で乾燥することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  11. 中空糸膜の含水率が10質量%以上の状態でマイクロ波照射を停止し、引き続き遠赤外線照射により乾燥することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  12. 中空糸膜の含水率が10〜20質量%の状態でマイクロ波照射を停止し、引き続き遠赤外線照射により乾燥することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。
  13. 中空糸膜束がポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系樹脂よりなることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の中空糸膜束の乾燥方法。

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